説明

安全機器教育用ツール及びその組み立てキット

【課題】容易に安全機器の機能を理解できると共に、安全回路の構築を容易に習得できる安全機器教育用ツール及びその組み立てキットを提供する。
【解決手段】安全機器教育用ツール1は、制御対象物の駆動制御を司る制御駆動系と、制御駆動系運転時の安全確保を司る安全系とから構成される制御システムの前記安全系に用いられる安全機器の機能や、安全機器を備えた安全回路の構築等を学習・教育するために使用されるものである。安全機器教育用ツール1は、安全入力機器Aと、安全出力機器Bと、安全判断機器Cと、報知機器Dと、各安全機器にそれぞれ起こりうる不具合と同等の状態を模擬的に出現させる不具合発生機器Eとを備えている。そして、配線ケーブルにより、各機器は、国際安全規格上で分類される所定の回路が構成されるように配線されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的な制御システムに組み込まれる安全機器の機能、安全機器を備えた安全回路の構築等を学習・教育するために使用される安全機器教育用ツール及びその組み立てキットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場等での作業者の安全確保の要請が強まっており、産業機器の制御システムには安全機器を組み込んで回路設計を行うようになっている。この種の安全機器として例えば、安全スイッチが存在する。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−207979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、安全機器の重要性が増しているにも拘らず、安全機器の機能等を教育するためのツールが存在しておらず、そのような安全機器教育用ツールが所望されていた。
【0005】
本発明は、上記の実情を鑑みて考え出されたものであり、その目的は、容易に安全機器の機能を理解できると共に、安全回路の構築を容易に習得できる安全機器教育用ツール及びその組み立てキットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、制御対象物の駆動制御を司る制御駆動系と、制御駆動系運転時の安全確保を司る安全系とから構成される制御システムの前記安全系に用いられる安全機器の教育用ツールであって、安全な状態が確保されていることを示す安全確認信号を送出する安全入力機器と、前記制御対象物の運転を許可する運転許可信号を出力する安全出力機器と、前記制御駆動系からの始動信号及び前記安全入力機器からの安全確認信号がそれぞれ入力され、始動信号が入力され且つ安全確認信号が入力された場合に限り、制御対象物の運転を許可する運転許可信号を前記安全出力機器に出力すると共に、前記運転許可信号の出力をフィードバックして信号伝達の確認を行い不一致の場合は出力を遮断する機能を有する安全判断機器と、制御対象物が運転状態であることを報知する報知機器と、前記安全入力機器、安全判断機器、及び安全出力機器にそれぞれ起こりうる不具合と同等の状態を模擬的に出現させる不具合発生機器と、を備え、前記各機器は、国際安全規格上で分類される所定の回路が構成されるように配線されていることを特徴とする。
【0007】
上記の如く、不具合発生機器を備えることにより、安全入力機器、安全判断機器、及び安全出力機器の不具合(故障に相当)を、各機器に現実に発生させるのではなく、その不具合が発生したのと同様の回路的状態を発生させることができる。そのため、不具合を目視でき、且つ必要に応じて何度も不具合を発生させることができるので、安全機器の機能、安全回路の構築等を解り易く学習者に教示することができる。
なお、安全入力機器、安全判断機器、及び安全出力機器は、一般的な制御システムに備えられている安全機器であり、そのため、実機の制御システムに即した安全機器の教育が可能である。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、制御対象物の駆動制御を司る制御駆動系と、制御駆動系運転時の安全確保を司る安全系とから構成される制御システムの前記安全系に用いられる安全機器の教育用ツールであって、安全な状態が確保されていることを示す安全確認信号を送出する安全入力機器と、前記制御駆動系からの始動信号及び前記安全入力機器からの安全確認信号がそれぞれ入力され、始動信号が入力され且つ安全確認信号が入力された場合に限り、制御対象物の運転を許可する運転許可信号を前記制御対象物に出力すると共に、前記運転許可信号の出力をフィードバックして信号伝達の確認を行い不一致の場合は出力を遮断する機能を有する安全判断機器と、制御対象物が運転状態であることを報知する報知機器と、前記安全入力機器及び安全判断機器にそれぞれ起こりうる不具合と同等の回路状態を模擬的に出現させる不具合発生機器と、を備え、前記各機器は、国際安全規格上で分類される所定の回路が構成されるように配線されていることを特徴とする。
【0009】
上記の如く、安全出力機器を省略した構成とすることもできる。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、制御対象物の駆動制御を司る制御駆動系と、制御駆動系運転時の安全確保を司る安全系とから構成される制御システムの前記安全系に用いられる安全機器の教育用ツールであって、安全な状態が確保されていることを示す安全確認信号を送出する安全入力機器と、前記制御対象物の運転を許可する運転許可信号を出力する安全出力機器と、制御対象物が運転状態であることを報知する報知機器と、前記安全入力機器、及び安全出力機器にそれぞれ起こりうる不具合と同等の状態を模擬的に出現させる不具合発生機器と、を備え、前記各機器は、国際安全規格上で分類される所定の回路が構成されるように配線されていることを特徴とする。
【0011】
上記の如く、安全判断機器を省略した構成とすることもできる。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の安全機器教育用ツールであって、前記報知機器に代えて、制御対象物自体を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5記載の発明は、安全機器教育用ツールの組み立てキットであって、請求項1乃至4のいずれかに記載の安全機器教育用ツールを構成する各機器と、各機器を取付ける取付台と、各機器を配線接続する配線ケーブルとを含むことを特徴とする。
【0014】
また、請求項6記載の発明は、請求項5記載の安全機器教育用ツールの組み立てキットであって、取扱説明が印刷された印刷物及び取扱説明が記憶された記憶媒体の少なくともいずれかの形式で表現された取扱説明書を備えたことを特徴とする。
【0015】
ここで、取扱説明とは、配線の仕方、安全回路の考え方、不具合のシュミレーション等を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安全入力機器、安全判断機器、及び安全出力機器の不具合(故障に相当)を、各機器に現実に発生させるのではなく、その不具合が発生したのと同様の回路的状態を不具合発生機器により発生させることができる。そのため、不具合を目視でき、且つ必要に応じて何度も不具合を発生させることができるので、安全機器の機能、安全回路の構築等を解り易く学習者に教示することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る安全機器教育用ツールを、実施の形態に基づいて詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
先ず、本発明に係る安全機器教育用ツールの概念構成について説明し、その後に具体的な実施の形態について説明する。
【0018】
[本発明に係る安全機器教育用ツールの概念構成]
図1は本発明に係る安全機器教育用ツールの概念構成図である。本発明に係る安全機器教育用ツール1は、制御対象物の駆動制御を司る制御駆動系と、制御駆動系運転時の安全確保を司る安全系とから構成される制御システムの前記安全系に用いられる安全機器の機能や、安全機器を備えた安全回路の構築等を学習・教育するために使用されるものである。安全機器教育用ツール1は、基本的には、安全な状態が確保されていることを示す安全確認信号を送出する安全入力機器Aと、前記制御対象物の運転を許可する運転許可信号を出力する安全出力機器Bと、前記制御駆動系からの始動信号及び前記安全入力機器Aからの安全確認信号がそれぞれ入力され、始動信号が入力され且つ安全確認信号が入力された場合に限り、制御対象物の運転を許可する運転許可信号を前記安全出力機器Bに出力すると共に、前記運転許可信号の出力をフィードバックして信号伝達の確認を行い不一致の場合は出力を遮断する機能を有する安全判断機器Cと、制御対象物が運転状態であることを報知する報知機器Dと、前記安全入力機器A、安全判断機器C、及び安全出力機器B(以下、総称して安全機器と称する場合もある。)にそれぞれ起こりうる不具合と同等の状態を模擬的に出現させる不具合発生機器Eとを備えている。そして、配線ケーブルにより、前記各機器は、国際安全規格上で分類される所定の回路が構成されるように配線されている。
【0019】
国際安全規格とは、例えば、ISO13849−1:1999(JIS B 9705−1)である。所定の分類とは、上記国際安全規格において、安全に関わる制御システム「安全関連部」が故障した場合の安全機能の維持能力を分類したカテゴリのことを意味する。安全機器教育用ツール1で構築される回路は、カテゴリB、1、2、3、4のいずれであってもよい。教育用の観点からはカテゴリ2、3、4のいずれかであることが好ましく、特に、カテゴリ3、4であるのが最も好ましい。なお、所定の分類としては、カテゴリに代えて、パフォーマンスレベルを用いてもよい。また、安全機器教育用ツール1では、配線を代えて、複数のカテゴリに属する回路を構築することも可能であり、例えば、カテゴリ3の回路とカテゴリ4の回路のいずれかを容易に出現させることができる。
【0020】
安全機器教育用ツール1の主たる特徴は不具合発生機器Eを備えていることである。即ち、安全入力機器A、安全判断機器C、及び安全出力機器Bの不具合(故障に相当)を、各機器A,B,Cに現実に発生させるのではなく、その不具合が発生したのと同様の回路的状態を不具合発生機器Eにより発生させることができることである。そのため、不具合を目視でき、且つ必要に応じて何度も不具合を発生させることができるので、安全機器の機能、安全回路の構築等を解り易く学習者に教示することができる。
【0021】
ここで、不具合としては、接点の溶着・接点の短絡等の接点系の不具合、電磁波による不具合、熱による不具合等のいずれの不具合も含まれる。従って、対象とする不具合に応じて不具合発生機器Eの具体的構成も異なる。例えば、接点系の不具合の場合には、不具合発生機器Eとしてターミナルブロック(端子台)が用いられる。即ち、安全機器の配線上にターミナルブロックを介在させ、ターミナルブロックの接点を変えることにより、安全機器の接点の溶着・接点の短絡等の接点系の不具合を発生させることができる。
【0022】
安全入力機器Aとしては、安全スイッチ(セーフティドアスイッチ)、セーフティプラグ、非接触安全スイッチ、セーフティライトカーテン、非常停止用押ボタンスイッチ、イネーブルスイッチ、グリップスイッチ、ティーチングペンダント、レーザースキャナー、セーフティリミットスイッチ、セーフティマット、両手押ボタンスイッチ、フットスイッチ、セーフティ光センサ、ロープスイッチ、セーフティカメラ等が含まれる。
安全出力機器Bとしては、安全コンタクタ、安全リレー等が含まれる。
安全判断機器Cとしは、安全リレーモジュール、セーフティコントローラ、安全PLC等が含まれる。
不具合発生機器Eとしては、ターミナルブロック、電子ブロック、表示器(例えば、小 型プログラマブル表示器)、外乱光発生器、電磁波発生器等が含まれる。
報知機器Dとしては、表示灯、ブザー、制御対象物が運転状態であることを文字等で表示する表示器等が含まれる。
【0023】
安全機器教育用ツール1には、制御駆動系からの始動信号を発生させる始動スイッチを設けてもよく、また、PLCから始動信号を出力させるようにしてもよい。さらに、例えば電源を投入した時に自動的に始動信号を出力する自動モード構成のものであってもよい。
なお、安全判断機器Cが安全出力機器Bの機能を有する場合には、安全出力機器Bを省略した構成であってもよい。また、安全入力機器Aと安全出力機器Bで構成し、安全判断機器Cを省略するようにしてもよい。また、報知機器Dに代えて、制御対象物(例えば、モータ)自体を設けるようにしてもよい。
【0024】
(実施の形態)
以下に、安全機器教育用ツール1の具体的構成、使用方法等について実施の形態に即して説明する。なお、以下の実施の形態に係る安全機器教育用ツール1には、安全入力機器Aとして安全スイッチ及び非常停止用スイッチ、安全判断機器Cとして安全リレーモジュール、安全出力機器Bとして安全コンタクタ、不具合発生機器Dとしてターミナルブロック、及び、報知機器Dとして表示灯が使用されている。
【0025】
図2は本発明の実施の形態に係る安全機器教育用ツールの平面図、図3は本発明の実施の形態に係る安全機器教育用ツールの側面図である。なお、図2及び図3は配線を省略して描いている。安全機器教育用ツール1は、スイッチングパワーサプライ2、サーキットプロテクタ3、安全リレーモジュール4、安全コンタクタ5,6、ターミナルブロック7、安全スイッチ8、アクチュエータ9、非常停止用スイッチ10、始動スイッチ11、出力表示灯12、電源用スイッチ13、DINレール14、取付台15等を含んで構成されている。DINレール14には、スイッチングパワーサプライ2、サーキットプロテクタ3、安全リレーモジュール4、コンタクタ5,6、及びターミナルブロック7が装着されている。そして、スイッチングパワーサプライ2等が装着されたDINレール14、安全スイッチ8、アクチュエータ9、非常停止用スイッチ10、始動スイッチ11、出力表示灯12、及び電源用スイッチ13は、取付台15の上面に取付けられている。また、取付台15には電源プラグ16が取付けられている。
【0026】
上記機器は所定の配線ケーブルにより、安全機器の教育用としての所定の回路が構成されている。なお、後述するように、配線等を変えることにより、国際安全規格(ISO13849−1:1999)で規定されるカテゴリ3の分類に属する回路と、国際安全規格(ISO13849−1:1999)で規定されるカテゴリ4の分類に属する回路とを、選択的に構成することが可能となっている。
【0027】
図4は安全機器教育用ツールの配線図、図4A及び図4Bは図4の一部拡大図、図4Cは安全機器教育用ツールが想定する一般的な制御システムの配線図である。図4の配線図の回路構成は国際安全規格(ISO13849−1:1999)で規定されるカテゴリ3の分類に属する回路構成となっている。安全機器教育用ツールは、例えば図4Cに示す一般的な制御システムに用いられる安全機器を備えたものであり、安全機器教育用必要な回路構成を実現するために、図4CのPLC、リレー等(制御駆動系)は省略され、且つモータ(制御対象物)に代えて出力表示灯を備える構成となっている。
【0028】
上記の安全機器教育用ツールの使用方法の概略は以下の通りである。
1.通常時の動作の確認(故障のない場合)、2.単一故障が発生(動作中にコンタクタのNO接点が溶着)した場合の動作確認、3.単一故障が発生(動作中に安全入力部の異極間が短絡)した場合の動作確認、4.単一故障が発生(動作中に安全入力部のいずれかが断線)した場合の動作確認、5.単一故障が発生(動作中に安全スイッチの接点端子間が短絡)した場合の動作確認、6.図3の回路がカテゴリ3,4である理由の理解等について、所定の操作を行うことにより学習できるようになっている。
【0029】
以下、上記各学習事項についての操作方法(安全機器教育用ツールの使用方法に相当)の概略について説明する。
【0030】
1.通常時の動作の確認(故障のない場合)
図5は通常時の動作の確認用配線図である。
安全機器教育用ツールを以下のように使用することにより、通常時の動作確認を学習できる。
【0031】
1−1.システムを動かすための安全条件の確認
電源コードをコンセントへ差し込んで、電源用スイッチ13をONにする。これにより、スイッチングパワーサプライ2へ電源が供給される。次いで、サーキットプロテクタ3をONにする。これにより、スイッチングパワーサプライ2の電源表示がONになり、安全リレーモジュール4へ電源が供給される。次いで、アクチュエータ9が安全スイッチ8に差し込んであること、非常停止用押ボタンスイッチ10が押されていないことを確認する。即ち、アクチュエータ9が安全スイッチ8に差し込んである状態では、扉が閉じていて安全スイッチ8のNC接点が閉路している状態であり、また、非常停止用押ボタンスイッチ10が押されていない状態では、非常停止用押ボタンスイッチ10のNC接点が閉路している状態である。そして、このような状態での安全スイッチ8と非常停止用押ボタンスイッチ10は、安全リレーモジュール4の安全入力部に安全状態を伝えている。つまり、安全状態は、2重の閉回路(S11−S12、S21−S22)で構成され、両回路ともに各電流が流れていることで安全状態が確認される。
【0032】
1−2.システムの動作
次いで、始動スイッチ11を押すと出力表示灯12が点灯します。システムが起動したことを表しています。
【0033】
1−3.システムの停止
アクチュエータ9を抜くか又は非常停止用押ボタンスイッチ10を押す。何れの場合も出力表示灯12が消灯します。システムが停止したことを表しています。
【0034】
1−4.システムの再起動
アクチュエータ9を差し込み且つ、非常停止用押ボタンスイッチ10を復帰(リセット)させる。このとき、出力表示灯12は消灯したままです。上記操作の後、始動スイッチ11を押すと出力表示灯12が点灯します。システムが起動したことを表しています。
上記の操作を行うことにより、通常時の動作を確認し、安全機器の機能を学習できることになります。
【0035】
なお、非常停止用押ボタンスイッチ10の復帰(リセット)方法は、押ボタン部を右に回して復帰させるか、押ボタン部を引っ張って復帰させます。
【0036】
ここで、図5の回路はカテゴリ3に分類されます。このカテゴリ3における安全機能の維持能力の概略は以下の通りです。
1、単一の故障では安全機能を損なわないこと。(停止すべきときに、確実に停止できること)2、全てではないが、故障の検出ができること。(検出した場合は安全に停止できること。)しかし、3、検出できない故障もあり、その故障の蓄積によって安全機能を損なう場合がある。(停止すべきときに、停止できなくなる)
次いで、これらを元に、システム故障時の動作検証を行なってみます。
【0037】
2.単一故障が発生(動作中にコンタクタのNO接点が溶着)した場合の動作確認
図6は単一故障が発生(動作中にコンタクタのNO接点が溶着)した場合の動作確認用配線図である。
具体的には、コンタクタのNO接点の溶着検出はできるか。非常停止用押ボタンスイッチ10を押したとき、または安全スイッチ8のアクチュエータ9を抜いたとき、システムは安全に停止できるか。を確認します。
先ず、上記1−2の項で、始動スイッチ11を押してシステムを動作(出力表示灯12を点灯)させ、その後コンタクタを溶着させた状態(以下の2−2の項参照)で、以降の動作の検証を行ないます。
【0038】
2−1.「システムは安全に停止できるか。」
安全スイッチ8のアクチュエータ9を抜く。または、非常停止用押ボタンスイッチ10を押す。これにより、安全入力部に安全状態を伝えていた2重の閉回路が両方とも開(OFF)状態となります。これにより、安全リレーモジュール4は、安全確認信号がなくなったと判断します。そのため、安全リレーモジュール4の出力(K1,K2:NO接点)は開(OFF)となり、出力は停止します。このとき、両コンタクタは無励磁状態となります。NO接点は全て開(OFF)となるべきだが、コンタクタ5の接点は溶着して閉(ON)のままの状態です。一方、コンタクタ6のNO接点は開(OFF)となり出力を遮断する。(コンタクタの一方が溶着しても、残る一方で出力を遮断します。)このようして、システムは安全に停止します(安全は確保できる。)。即ち、単一故障(コンタクタの溶着)での安全機能は喪失されない、つまり安全に停止できることが確認されます。
【0039】
2−2.「安全機器教育用ツールにおいて、模擬的にコンタクタの溶着状態を出現させる方法」
システムを動作させた状態で、図7に示すように、指若しくは細い工具でコンタクタ5のレバー20を左側で固定すると、コンタクタ5のNO接点が閉じた状態となり、溶着した場合と同じ状態になります。なお、参考までに述べると、コンタクタ操作レバー位置は、無通電時は、右側(NO接点:開、NC接点:閉)、通電時は、左側(NO接点:閉、NC接点:開)となります。
【0040】
2−3.「システムを再起動させるには?」
システムを再起動させるには、以下の方法を行います。
コンタクタ5のNO接点が溶着した状態なので、そのバックチェック用のNC接点は開(OPEN)の状態になっています。この状態では、始動スイッチ11を押しても安全リレーモジュール4の起動入力部が閉回路にならず、その入力は有効にならないので、再起動できません。この時点で、システムに故障があることが検出できます。即ち、単一故障(コンタクタ5)は検出できるので、システムの起動を許可せず、安全状態を維持できることが確認できます。
次いで、コンタクタ5の溶着を修正する(実機の場合は、電源を切ってコンタクタ5を取り替える)と再起動できる状態になります。安全機器教育用ツールでは、コンタクタ5の左側に固定していたレバーを解除します。次いで、始動スイッチ11を押すと、起動入力部が閉回路を構成できるので入力が有効となり、安全リレーモジュール4の出力が出て(K1、K2がON)、両方のコンタクタ出力もONになります。このとき、出力表示灯12が点灯します。
【0041】
3.単一故障が発生(動作中に安全入力部の異極間が短絡)した場合の動作確認
図8は単一故障が発生(動作中に安全入力部の異極間が短絡)した場合の動作確認用配線図である。
(S11−S12)回路と、(S21−S22)回路間で、異極間短絡した場合には、短絡の検出はできるか。非常停止用押ボタンスイッチ10を押したとき、または安全スイッチ8のアクチュエータ9を抜いたとき、システムは安全に停止できるか。を確認します。
先ず、上記1−2の項で、始動スイッチ11を押してシステムを動作(出力表示灯を点灯)させ、その後異極間を短絡(以下の3−2項参照)させた状態で、以降の動作の検証を行ないます。
【0042】
3−1.「システムは安全に停止できるか?」
この短絡は、直ちに安全リレーモジュール4内部で検出されて、出力(K1,K2)は開(OFF)となり、出力は停止します。即ち、安全入力部に入る2重の閉回路の電圧は、互いに異なっています。そのため短絡すると異極の回路間に過電流が流れ、それを内部で検出して出力を停止します。このとき、両コンタクタ5,6は無励磁となり、NO接点が全て開(OFF)となって出力を遮断します。このようにして、システムは安全に停止します(安全は確保できる。)。即ち、単一故障(異極間短絡)では、安全機能は喪失されない(安全に停止できる)ことが確認できます。
【0043】
3−2.「安全機器教育用ツールにおいて、模擬的に安全入力部の異極間短絡状態を出現させる方法」
短絡箇所をターミナルブロック7上で実演することができます。具体的には、システムを動作させた状態で、端子台の端子No33−34間(図9参照)を短絡させます。
【0044】
3−3.「システムを再起動させるには?」
安全リレーモジュール4は、安全入力部の異極間が短絡していることを検知しているので、始動スイッチ11を押しても再起動を許可しません。このように、単一故障(異極間短絡)は検出できるので、システムの起動を許可せず、安全状態を維持できることが確認できます。
次いで、サーキットプロテクタ3で、一旦安全リレーモジュール4の電源を落とします。
次いで、短絡部分(端子No.33−34)を修正します。これにより、再起動できる状態になります。次いで、始動スイッチ11を押すと、安全リレーモジュール4の出力が出て(K1,K2がON)、コンタクタ5,6出力もONになり、出力表示灯12が点灯します。
【0045】
4.単一故障が発生(動作中に安全入力部のいずれかが断線)した場合の動作確認
図10は単一故障が発生(動作中に安全入力部のいずれかが断線)した場合の動作確認用配線図である。
S11,S12,S21,S22の内のいずれかが断線した場合には、断線の検出はできるか。非常停止用押ボタンスイッチ10を押したとき、または安全スイッチ8のアクチュエータ9を抜いたとき、システムは安全に停止できるか。を確認します。
始動スイッチ11を押してシステムを動作(出力表示灯12を点灯)させ、その後、S11を断線させた状態で、以降の動作の検証を行ないます。
【0046】
4−1.「稼働中に断線(S11)するとシステムは安全に停止できるか?」
安全入力(2重化の閉回路)の内1箇所が断線すると、片側の回路が開の状態となり、もう片方の正常な閉回路と比較して不一致の状態が起こります。この状態は安全リレーモジュール4内で異常として検出され、出力(K1,K2)は開(OFF)となり出力は停止します。(安全リレーモジュール4は、安全状態の確認ができなくなる。)このとき、両コンタクタ5,6は無励磁となり、NO接点が全て開(OFF)となって、出力を遮断します。これにより、システムは安全に停止します(安全は確保できます。)。従って、単一故障(断線)での安全機能は喪失されない、つまり、安全に停止できることが確認されます。
【0047】
4−2.「安全機器教育用ツールでの模擬的な断線方法」
断線箇所をターミナルブロック7上で実演することができます。システムを動作させた状態で、(端子No.32)の配線を外します(図11参照)。
【0048】
4−3.「システムを再起動させるには?」
安全入力の2重化不一致状態(端子No.32が断線状態)を検出している為、始動スイッチ11を押しても安全リレーモジュール4のK1,K2はONになりません(出力はOFFのままを保持する。)。従って、単一故障(断線)は検出できることが確認されます。また、これにより、システムの起動を許可せず、安全状態を維持できることが確認されます。
次いで、サーキットプロテクタ3で、一旦安全リレーモジュール4の電源を落とし、断線部分(部品No.32)を接続し直して再び電源を投入すると、再起動できる状態になります。この状態で、始動スイッチ11を押すと、出力が出ます(出力表示灯12が点灯します。)。
【0049】
5.単一故障が発生(動作中に安全スイッチの接点端子間が短絡)した場合の動作確認
図12は単一故障が発生(動作中に安全スイッチの接点端子間が短絡)した場合の動作確認用配線図である。安全スイッチ8のアクチュエータ9を抜いて出力を停止させる場合安全スイッチ8の短絡の検出はできるか。システムは安全に停止できるか。を確認してみます。
先ず、始動スイッチ11を押してシステムを動作(出力表示灯12を点灯)させ、その後に、安全スイッチ8の接点端子間を短絡させた状態で、以降の動作の検証を行ないます。
【0050】
5−1.「安全スイッチ8のアクチュエータ9を抜いて出力を停止させる場合」
動作中に上記NC接点の端子間が短絡しても、元来導通している端子間なので、即座の短絡検出はできません。アクチュエータ9を抜くと、安全スイッチ8の接点端子(端子No.1−2)間は短絡して閉回路のままですが、もう一方の接点端子(端子No.3−4)間のNC接点は、開(OFF)となります。安全リレーモジュール4の安全入力(2重化)の内、S11−S12間は閉回路のままですが、S21−S22間は開の状態となるので、2重化不一致状態となります。この状態では安全リレーモジュール4は安全状態の確認が出来なくなり、出力K1,K2は開(OFF)となり停止します。このとき、両コンタクタ5,6は無励磁となり、NO接点が全て開(OFF)となって、出力を遮断します。従って、システムは安全に停止し、出力表示灯12は消灯します。このようにして、安全は確保できます。
上記より、単一故障(短絡)による安全機能は喪失されない。即ち、安全機能は維持していることが確認できます。
【0051】
5−2.「安全機器教育用ツールでの安全スイッチの接点端子間(No.1−2)の模擬的な短絡方法」
短絡箇所をターミナルブロック7上で実演することができます。具体的には、システムを動作させた状態で、(端子No.36−40間)を短絡させます(図13参照)。
【0052】
5−3.「システムを再起動させるには?」
アクチュエータ9を差し込む。このとき、2重化不一致状態が安全リレーモジュール4に記憶されているため、始動スイッチ11を押しても再起動しません。このようにして、単一故障(短絡)は検出できる。即ち、システムの起動を許可せず、安全状態を維持できることが確認できます。
次いで、サーキットプロテクタ3で電源を落とし短絡部分(端子No.36−40間)を修正して、再び電源を投入すると再起動できる状態になります。次いで、始動スイッチ11を押すと出力が出ます。そして、出力表示灯12が点灯します。
【0053】
6.非常停止用押ボタンスイッチ10を押して出力を停止させる場合
図12を参照して説明します。
安全スイッチ8の短絡の検出はできるか。システムは安全に停止できるか。を確認してみます。先ず、始動スイッチ11を押してシステムを動作(出力表示灯12を点灯)させ、その後に安全スイッチ8の接点端子間を短絡させた状態で、以降の動作の検証を行ないます。
【0054】
6−1.「システムは安全に停止できるか?」
動作中に安全スイッチ8のNC接点の端子間が短絡しても、元来導通している端子間なので、即座の短絡検出はできません。非常停止用押ボタンスイッチ10を押すと、安全入力部に安全状態を伝えていた2重化の閉回路が両方とも開(OFF)状態となります。安全リレーモジュール4は、安全確認信号がなくなったと判断します。このとき安全スイッチ8の短絡検出(端子No.1−2)はできていない。安全リレーモジュール4の出力(K1,K2:NO接点)は開(OFF)となり、出力は停止します。このとき、両コンタクタ5,6は無励磁となり、NO接点が全て開(OFF)となって、出力を遮断します。システムは停止します。出力表示灯12は消灯します(安全は確保できる。)。
この時点では、単一故障(短絡)による安全機能は喪失されない。しかし、故障は検出できていないことが確認できます。
【0055】
6−2.「安全スイッチ8の端子間が短絡したままでシステムを再起動できるか?」
非常停止用押ボタンスイッチ10を復帰(リセット)すると、2重の安全入力部は共に閉回路となり、安全状態を入力してしまいます。よって、再起動できる状態になります。
始動スイッチ11を押すと出力が出ます(出力表示灯12が点灯します)。このように、単一故障(内部短絡)を検出できないまま、システムは再起動できてしまうことが確認できます。
【0056】
6−3.「短絡検出ができないままでシステムを使用している場合」
図14を参照して説明します。
安全スイッチ8の端子間(端子No.1−2間)の短絡が検出できないままでシステムを使用していると、新たな故障が発生する可能性があります。ここでは新たな故障(短絡)箇所として、同じ安全スイッチ8内で端子No.3−4間の短絡の発生を想定します。
新たな短絡箇所が発生した後、安全スイッチ8のアクチュエータ9を抜いて、システムを停止しようとする場合に、安全スイッチ8の短絡の検出はできるか。システムは安全に停止できるか。を確認してみます。
前の「最初の短絡箇所」の検出ができないまま始動スイッチ11を押してシステムを動作(出力表示灯12が点灯)させる。その後「新たな短絡箇所」を短絡させた状態で動作を検証します。
【0057】
6−3−1.「システムは安全に停止できるか?」
安全スイッチ8のアクチュエータ9を抜いて、システムを停止しようとしても、内部端子(端子No.1−2及びNo.3−4)間は両方とも短絡(2重故障)しているために、2重化のどちらの閉回路も開(OFF)になりません。安全リレーモジュール4の安全入力部(S11−S12、S21−S22)には、両方とも安全状態が入力したままの状態になるので、安全リレーモジュール4の出力はONのままです。このとき、コンタクタ5,6は両方とも励磁されたままであり、システムは停止しない。出力表示灯12は点灯したままです。(危険側故障。)このようにして、故障の蓄積で安全機能は喪失されることが確認できます。
【0058】
6−3−2.「安全機器教育用ツールでの安全スイッチ8の接点端子間(No.1−2、No.3−4)の模擬的な(2箇所)短絡方法」
短絡箇所をターミナルブロック7上で実演することができます。システムを動作させた状態で、(端子No.42−37間)を短絡させます(図15参照)。なお、(端子No.36−40間)は既に短絡状態です。
【0059】
7.故障を除外しても良い箇所(まず故障しないと考えられる箇所)
図16を参照して説明します。
非常停止用押ボタンスイッチ10及び安全スイッチ8のNC接点は、IEC60947-5-1
Annex K 及びIEC60947-5-5に対応しており、直接開路動作機構の為、ISO13849-2で定義される、「良く吟味された安全原則を用いた安全コンポーネント」と解釈され、NC接点の溶着の故障を除外できます。もしNC接点が溶着していても、手あるいは扉の操作力で必ず溶着を外せると考えられています。
【0060】
8.配線回路がカテゴリ3である理由
図17を参照して説明します。このシステムでは、表1に示すように、システム起動時までに異常が検出できないケースがあるため、カテゴリ4にはなりません。
【0061】
【表1】

【0062】
次いで配線を変えて、図18に示すようにしてカテゴリ4の回路構成とします。
図18は安全機器教育用ツールの配線図、図18A及び図18Bは図18の一部拡大図である。図18の配線図の回路構成は国際安全規格(JIS B 9705−1)で規定されるカテゴリ4の分類に属する回路構成となっている。
以下、カテゴリ4の安全機器教育用ツールの動作の確認を行います。
【0063】
9.通常時の動作の確認(故障などの無い状態)
図19は通常時の動作の確認(故障などの無い状態)用配線図である。
9−1.「システムを動かす為の安全条件の確認」
非常停止用押ボタンスイッチ10が押されていない。即ち、非常停止用押ボタンスイッチ10がリセットされている状態、つまり、非常停止用押ボタンスイッチ10のNC接点が閉路している。非常停止用押ボタンスイッチ10は、安全リレーモジュール4の安全入力部に安全状態を伝えています。安全状態は、2重の閉回路(S11−S12,S21−S22)で構成され、両回路ともに各電流が流れていることで確認されます。
9−2.システムを動作させる。始動スイッチ11を押すと出力がでます(出力表示灯12が点灯します。)。
9−3.次いで、システムを安全に停止させます。非常停止用押ボタンスイッチ10を押すと出力が停止します(出力表示灯12が消灯します。)
9−4.次いで、システムを再起動させます。非常停止用押ボタンスイッチ10を復帰(リセット)すると出力が可能な状態となります(出力表示灯12は消灯したままです。)。始動スイッチ11を押すと出力が出ます(出力表示灯12が点灯します。)。
【0064】
なお、図19の回路構成はカテゴリ4です。その安全機能の維持能力の概略は、以下の通りです。
不具合(障害)発生時、安全機能が常に機能する(停止すべきときに、確実に停止できること)。
不具合(障害)はやがて検出され、安全機能の喪失を防止する。(不具合は全て検出され、常に安全に停止できること。)である。
これらを元に、以下に、システム故障時の動作検証を行なってみます。
【0065】
10.単一故障が発生(動作中にコンタクタが溶着)した場合の動作確認
図20は単一故障が発生(動作中にコンタクタが溶着)した場合の動作確認用配線図である。
コンタクタの接点溶着検出はできるか。非常停止用押ボタンスイッチ10を押したとき、システムは安全に停止できるか。を確認してみます。始動スイッチ11を押してシステムを動作(出力表示灯12が点灯)させた後、コンタクタを溶着させた状態で、以降の動作を検証します。
【0066】
10−1.「システムは安全に停止できるか?」
非常停止用押ボタンスイッチ10を押す。後は、上記と同様の操作を行う。システムは安全に停止します(安全は確保できる。)。こうして、単一故障(コンタクタの溶着)での安全機能は喪失されない。つまり、安全機能を維持していることが確認できます。
【0067】
10−2.「安全機器教育用ツールでの模擬的なコンタクタ溶着方法」
上記のカテゴリ3の場合と同様の操作を行う。
10−3.システムを再起動させるには上記カテゴリ3の場合と同様の操作を行う。
こうして、単一故障(コンタクタの溶着)は検出できる。つまり、システムの起動を許可せず、安全状態を維持できることが確認できます。
【0068】
11.単一故障が発生(動作中に安全入力部の異極間が短絡)した場合の動作確認
図21は単一故障が発生(動作中に安全入力部の異極間が短絡)した場合の動作確認用配線図である。「S11−S12」回路と、「S21−S22」回路間で、異極間短絡した場合には、短絡の検出はできるか。非常停止用押ボタンスイッチ10を押したとき、または安全スイッチ8のアクチュエータ9を抜いたとき、システムは安全に停止できるか。を確認してみます。
始動スイッチ11を押してシステムを動作(出力表示灯12が点灯)させ、その後異極間を短絡させた状態で、以降の動作を検証します。
【0069】
11−1.「システムは安全に停止できるか」
上記カテゴリ3の場合と同様の操作を行う。これにより、単一故障(異極間短絡)は検出され、安全機能は喪失されない。つまり、安全に停止できることが確認できます。
11−2.「安全機器教育用ツールでの模擬的な短絡方法」
上記カテゴリ3の場合と同様の操作を行う。
11−3.システムを再起動させるには、上記カテゴリ3の場合と同様の操作を行う。これにより、単一故障(異極間短絡)は検出できる。つまり、システムの起動を許可せず、安全状態を維持できることが確認できます。
【0070】
12.単一故障が発生(動作中に安全入力部のいずれかが断線)した場合の動作確認
図22は単一故障が発生(動作中に安全入力部のいずれかが断線)した場合の動作確認用配線図である。S11,S12,S21,S22の内のいずれかが断線した場合には、断線の検出はできるか。非常停止用押ボタンスイッチ10を押したとき、システムは安全に停止できるか。を確認してみます。始動スイッチ11を押してシステムを動作(出力表示灯12が点灯)させ、その後(S11)を断線させた状態で、以降の動作の検証を行ないます。
12−1.「稼働中に断線(S11)が発生するとシステムは安全に停止できるか。」
上記カテゴリ3の場合と同様の操作を行う。これにより、単一故障(断線)は検出され、安全機能は喪失されない。つまり、機械は安全に停止できることが確認できます。
【0071】
12−2.「安全機器教育用ツールでの模擬的な断線方法」
上記カテゴリ3の場合と同様の操作を行う。
システムを再起動させるには上記カテゴリ3の場合と同様の操作を行う。これにより、単一故障(断線)は検出できる。つまり、システムの起動を許可せず、安全状態を維持できることが確認できます。
【0072】
13.単一故障が発生(動作中に非常停止用押ボタンスイッチ10の接点端子間が短絡)した場合の動作確認
図23は単一故障が発生(動作中に非常停止用押ボタンスイッチ10の接点端子間が短絡)した場合の動作確認用配線図である。非常停止用押ボタンスイッチ10の短絡の検出はできるか。システムは安全に停止できるか。を確認してみます。
始動スイッチ11を押してシステムを動作(出力表示灯12を点灯)させ、その後に非常停止用押ボタンスイッチ10の端子間を短絡させた状態で、以降の動作の検証を行ないます。
【0073】
13−1.「システムは安全に停止できるか。」
稼働中に上記NC接点の端子間が短絡しても、元来導通している端子間なので、即座の短絡検出はできません。非常停止用押ボタンスイッチ10を押すと、(端子No.11−12間)は短絡しているが、もう一方の端子No.21−22間のNC接点は、開(OFF)となります。安全リレーモジュール4の安全入力(2重化)の内、S11−S12間は閉回路のままですが、S21−S22間は開の状態となるので、2重化不一致状態となります。安全リレーモジュール4は安全状態の確認が出来なくなり、出力(K1,K2)は開(OFF)となり出力は停止します。このとき、両コンタクタ5,6は無励磁となり、NO接点が全て開(OFF)となって、出力を遮断する。システムは安全に停止する。出力表示灯12は消灯します(安全は確保される。)。これにより、単一故障(短絡)による安全機能は喪失されない。つまり、安全機能は維持している。
【0074】
13−2.「安全機器教育用ツールでの端子間短絡の模擬的な方法」
短絡箇所をターミナルブロック7上で実演することができます。システムを動作させた状態で、端子No.39−43を短絡させて下さい(図24参照)。
13−3.「システムの再起動」
システムを再起動させるには、非常停止用押ボタンスイッチ10を復帰(リセット)させる。2重化不一致状態が安全リレーモジュール4に記憶されているため、始動スイッチ11を押しても再起動しません。これにより、単一故障(短絡)は検出できる。つまり、システムの起動を許可せず、安全状態を維持できることが確認できます。
次いで、サーキットプロテクタ3で電源を落とし短絡部分(端子No.39−43間)を修正して、再び電源を投入すると再起動できる状態になります。
次いで、始動スイッチ11を押すと出力が出ます(出力表示灯12が点灯します。)。
【0075】
14.安全機器教育用ツールがカテゴリ4である理由(非常停止用押ボタンスイッチ10を使用した場合)、安全機器教育用ツールがカテゴリ4である理由(安全スイッチ8を使用した場合)
図25(非常停止用押ボタンスイッチ10を使用した場合)の回路構成は、表2に示すように、国際安全規格の分類規格に当てはめると、カテゴリ4であることが理解される。また、図26(安全スイッチ8を使用した場合)の回路構成は、表3に示すように、国際安全規格の分類規格に当てはめると、カテゴリ4であることが理解される。
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
(その他の事項)
本発明に係る安全機器教育用ツールは、完成品としてではなく、組み立て可能なキットとして販売することも可能である。ここで、安全機器教育用ツール(または組み立てキット)は、安全機器教育用ツール本体(組み立てキットの場合は、安全機器教育用ツールを構成する各機器、各機器を取付ける取付台、各機器を配線接続する配線ケーブル等)のようなハード的な物と、取扱説明書等のソフト的な物とを含む構成であってもよく、また、ソフト的な物は無くハード的な物のみで安全機器教育用ツール(または組み立てキット)として販売するようにしてもよい。ここで、「取扱説明書」としては、配線の仕方、安全回路の考え方、不具合のシュミレーション等を記載したものが該当する。また、取扱説明が印刷された印刷物であってもよく、また、取扱説明が記憶された記憶媒体(CD、パソコンソフト等)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、一般的な制御システムに組み込まれる安全機器の機能、安全機器を備えた安全回路の構築等を学習・教育するために使用される安全機器教育用ツール及びその組み立てキットに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る安全機器教育用ツールの概念構成図。
【図2】本発明の実施の形態に係る安全機器教育用ツールの平面図。
【図3】本発明の実施の形態に係る安全機器教育用ツールの側面図。
【図4】安全機器教育用ツールの配線図(カテゴリ3)。
【図4A】図4の一部拡大図(カテゴリ3)。
【図4B】図4の一部拡大図(カテゴリ3)。
【図4C】安全機器教育用ツールが想定する一般的な制御システムの配線図。
【図5】通常時の動作の確認用配線図(カテゴリ3)。
【図6】単一故障が発生(動作中にコンタクタのNO接点が溶着)した場合の動作確認用配線図(カテゴリ3)。
【図7】コンタクタ5の斜視図。
【図8】単一故障が発生(動作中に安全入力部の異極間が短絡)した場合の動作確認用配線図(カテゴリ3)。
【図9】ターミナルブロック7の斜視図。
【図10】単一故障が発生(動作中に安全入力部のいずれかが断線)した場合の動作確認用配線図(カテゴリ3)。
【図11】ターミナルブロック7の斜視図。
【図12】単一故障が発生(動作中に安全スイッチの接点端子間が短絡)した場合の動作確認用配線図(カテゴリ3)。
【図13】ターミナルブロック7の斜視図。
【図14】短絡検出ができないままでシステムを使用している場合の動作確認用配線図(カテゴリ3)。
【図15】ターミナルブロック7の斜視図。
【図16】シテスム上故障を除外しても良い箇所の確認用配線図(カテゴリ3)。
【図17】配線回路がカテゴリ3である理由を説明するための図。
【図18】安全機器教育用ツールの配線図(カテゴリ4)。
【図18A】図18の一部拡大図(カテゴリ4)。
【図18B】図18の一部拡大図(カテゴリ4)。
【図19】通常時の動作の確認(故障などの無い状態)用配線図(カテゴリ4)。
【図20】単一故障が発生(動作中にコンタクタが溶着)した場合の動作確認用配線図(カテゴリ4)。
【図21】単一故障が発生(動作中に安全入力部の異極間が短絡)した場合の動作確認用配線図(カテゴリ4)。
【図22】単一故障が発生(動作中に安全入力部のいずれかが断線)した場合の動作確認用配線図(カテゴリ4)。
【図23】単一故障が発生((動作中に非常停止用押ボタンスイッチ10の接点端子間が短絡)した場合の動作確認用配線図(カテゴリ4)。
【図24】ターミナルブロック7の斜視図。
【図25】安全機器教育用ツールがカテゴリ4である理由(非常停止用押ボタンスイッチ10を使用した場合)を説明するための図。
【図26】安全機器教育用ツールがカテゴリ4である理由(安全スイッチ8を使用した場合)を説明するための図。
【符号の説明】
【0081】
1:安全機器教育用ツール 2:スイッチングパワーサプライ
3:サーキットプロテクタ 4:安全リレーモジュール
5,6:安全コンタクタ 7:ターミナルブロック
8:安全スイッチ 9:アクチュエータ
10:非常停止用押ボタンスイッチ 11:始動スイッチ
12:出力表示灯
A:安全入力機器 B:安全出力機器
C:安全判断機器 D:報知機器
E:不具合発生機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象物の駆動制御を司る制御駆動系と、制御駆動系運転時の安全確保を司る安全系とから構成される制御システムの前記安全系に用いられる安全機器の教育用ツールであって、
安全な状態が確保されていることを示す安全確認信号を送出する安全入力機器と、
前記制御対象物の運転を許可する運転許可信号を出力する安全出力機器と、
前記制御駆動系からの始動信号及び前記安全入力機器からの安全確認信号がそれぞれ入力され、始動信号が入力され且つ安全確認信号が入力された場合に限り、制御対象物の運転を許可する運転許可信号を前記安全出力機器に出力すると共に、前記運転許可信号の出力をフィードバックして信号伝達の確認を行い不一致の場合は出力を遮断する機能を有する安全判断機器と、
制御対象物が運転状態であることを報知する報知機器と、
前記安全入力機器、安全判断機器、及び安全出力機器にそれぞれ起こりうる不具合と同等の状態を模擬的に出現させる不具合発生機器と、
を備え、
前記各機器は、国際安全規格上で分類される所定の回路が構成されるように配線されていることを特徴とする安全機器教育用ツール。
【請求項2】
制御対象物の駆動制御を司る制御駆動系と、制御駆動系運転時の安全確保を司る安全系とから構成される制御システムの前記安全系に用いられる安全機器の教育用ツールであって、
安全な状態が確保されていることを示す安全確認信号を送出する安全入力機器と、
前記制御駆動系からの始動信号及び前記安全入力機器からの安全確認信号がそれぞれ入力され、始動信号が入力され且つ安全確認信号が入力された場合に限り、制御対象物の運転を許可する運転許可信号を前記制御対象物に出力すると共に、前記運転許可信号の出力をフィードバックして信号伝達の確認を行い不一致の場合は出力を遮断する機能を有する安全判断機器と、
制御対象物が運転状態であることを報知する報知機器と、
前記安全入力機器及び安全判断機器にそれぞれ起こりうる不具合と同等の回路状態を模擬的に出現させる不具合発生機器と、
を備え、
前記各機器は、国際安全規格上で分類される所定の回路が構成されるように配線されていることを特徴とする安全機器教育用ツール。
【請求項3】
制御対象物の駆動制御を司る制御駆動系と、制御駆動系運転時の安全確保を司る安全系とから構成される制御システムの前記安全系に用いられる安全機器の教育用ツールであって、
安全な状態が確保されていることを示す安全確認信号を送出する安全入力機器と、
前記制御対象物の運転を許可する運転許可信号を出力する安全出力機器と、
制御対象物が運転状態であることを報知する報知機器と、
前記安全入力機器、及び安全出力機器にそれぞれ起こりうる不具合と同等の状態を模擬的に出現させる不具合発生機器と、
を備え、
前記各機器は、国際安全規格上で分類される所定の回路が構成されるように配線されていることを特徴とする安全機器教育用ツール。
【請求項4】
前記報知機器に代えて、制御対象物自体を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の安全機器教育用ツール。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の安全機器教育用ツールを構成する各機器と、各機器を取付ける取付台と、各機器を配線接続する配線ケーブルとを含むことを特徴とする安全機器教育用ツールの組み立てキット。
【請求項6】
取扱説明が印刷された印刷物及び取扱説明が記憶された記憶媒体の少なくともいずれかの形式で表現された取扱説明書を備えたことを特徴とする請求項5記載の安全機器教育用ツールの組み立てキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−210621(P2009−210621A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−50582(P2008−50582)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】