説明

安全運転支援装置

【課題】リアルタイム性を大きく損なうことなく、受信した情報の各々に基づくユーザへの有意な注意喚起を、音声メッセージによって行う「安全運転支援装置」を提供する。
【解決手段】出力する音声メッセージを、全て、対象物の位置/方向を表す位置提示メッセージ要素と、対象の種別を表す種別提示メッセージ要素と、対象物の状態を表す状態表示メッセージ要素とを、当該順序で読み上げた音声メッセージとする。そして、出力しようとする音声メッセージと同じ位置提示メッセージ要素が過去所定期間内に出力した音声メッセージに所定数以上連続して含まれているときには、出力しようとする音声メッセージの位置提示メッセージ要素のみを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の運転者に周辺の状況を提示する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の運転者に周辺の状況を提示する技術としては、交差点等に設置された路側機から、当該交差点周辺の他車や歩行者等の情報を、自動車に搭載された安全運転支援装置に送信し、安全運転支援装置において、受信した情報に基づいて他車や歩行者等に対する、ユーザの注意を喚起する技術が知られている(たとえば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-272598号公報
【特許文献2】特開2007-251287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、上述のような車載の安全運転支援装置において、ユーザの他車や歩行者等に対する注意喚起を、音声メッセージの出力によって行う場合、次のような問題が生じる。
すなわち、路側機から受信した情報に基づく注意喚起のための音声メッセージの出力中に、新たな情報を路側機から受信した場合に、現在行っている音声メッセージの出力を即時中止して、新たな情報に基づく注意喚起のための音声メッセージの出力を行えば、現在行っている音声メッセージの出力が中途半端なものとなり、ユーザに対する有意な注意喚起を行うことができなくなる可能性が生じる。
【0005】
一方、このような場合に、現在行っている音声メッセージの出力を完了した後に、新たな情報に基づく注意喚起のための音声メッセージの出力を行うようにすれば、新たな情報に基づく注意喚起が遅れることになるため、注意喚起のリアルタイム性が大きく損なわれることになる。
【0006】
そして、このために、短期間で受信した複数の情報の各々に基づく、リアルタイム性に優れた、ユーザの注意喚起を充分に行うことができなくなる恐れが生じる。
そこで、本発明は、自動車に搭載された安全運転支援装置において、周辺の他車や歩行者等の障害物の存在を短期間に複数検出した場合でも、リアルタイム性を大きく損なうことなく、検出した各障害物に対する、ユーザへの有意な注意喚起を、音声メッセージによって行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題達成のために、本発明は、自動車に搭載され、周辺の障害物に対する注意を喚起する音声メッセージを出力する安全運転支援装置に、障害物を検知する障害物検知手段と、前記障害物検知手段が検知した注意を喚起すべき障害物について、当該障害物の位置または方向を示す言葉を含む第1要素と、当該障害物の種類を示す言葉を含む第2要素と、当該障害物の状態を示す言葉を含む第3要素とを、当該順序で連結して構成されるメッセージを音声出力する音声出力手段とを備え、前記音声出力手段において、前記メッセージを音声出力する際に、今回音声出力するメッセージの第1要素と同じ第1要素が、過去直近に音声出力したn(但し、nは1以上の整数)個のメッセージに含まれており、かつ、当該n個のメッセージを過去所定期間内において音声出力している場合に、今回音声出力するメッセージの第3要素の音声出力を省略するようにしたものである。
【0008】
ここで、このような安全運転支援装置は、前記音声出力手段において、前記メッセージを音声出力する際に、今回音声出力するメッセージの第1要素と同じ第1要素が、過去直近に音声出力したm(但し、n<m)個のメッセージに含まれており、かつ、当該m個のメッセージを過去所定期間内において音声出力している場合に、今回音声出力するメッセージの第2要素と第3要素の音声出力を省略するように構成してもよい。
【0009】
または、前記音声出力手段において、前記メッセージを音声出力する際に、今回音声出力するメッセージの第1要素と同じ第1要素が、過去直近に音声出力したn(但し、nは1以上の整数)個のメッセージに含まれており、かつ、当該n個のメッセージを過去所定期間内において音声出力している場合に、今回音声出力するメッセージの第2要素と第3要素の音声出力を省略するように構成してもよい。
【0010】
これらの安全運転支援装置によれば、前記メッセージを音声出力する際に、今回音声出力するメッセージの第1要素と同じ第1要素が、過去所定期間内において繰り返し出力されている場合には、第3要素、または、第2要素及び第3要素の音声出力が省略される。
したがって、検知された注意を喚起すべき各障害物についてのメッセージの第1要素は必ず出力されるので、ユーザの安全運転を確保する上でユーザに伝達することが最も必要と考えられる、各障害物の位置または方向については、ユーザの注意を必ず喚起することができる。一方で、第3要素、または、第2要素及び第3要素の音声出力の省略により、メッセージの平均の音声出力時間が短縮されるので、そのような省略を行わなかった場合に比べ各メッセージの音声出力のリアルタイム性が向上する。また、このような省略を行うことにより、短期間に同じようなメッセージが繰り返し音声出力されることによるユーザの煩わしさを低減することができる。
【0011】
なお、以上の各安全運転支援装置において、前記障害物検知手段は、路側機または他車に搭載された車載機である外部の情報提供装置から受信した、当該安全運転支援装置を搭載した前記自動車周辺の物体に関する情報に基づいて、前記障害物を検知するものであってよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、自動車に搭載された安全運転支援装置において、周辺の他車や歩行者等の障害物の存在を短期間に複数検出した場合でも、リアルタイム性を大きく損なうことなく、検出した各障害物に対する、ユーザへの有意な注意喚起を、音声メッセージによって行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る安全運転支援端末の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る安全運転支援情報提供システムの構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る音声データとメッセージ出力ルールテーブルを示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るメッセージ出力処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係るメッセージ出力処理の処理例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るメッセージ出力処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係るメッセージ出力処理の処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る安全運転支援端末の構成を示す。
安全運転支援端末は自動車に搭載されるシステムであり、図示するように、安全運転支援端末1は、表示装置11と、スピーカ12と、操作部13と、警告画像生成部14と、音声生成部15と、メモリ16、制御部17、車両状態センサ18、交通情報受信機19、記憶装置20とを備えている。
【0015】
ここで、車両状態センサ18は、車速や、方向指示器の操作状態などの、自動車の各種状態を検出するセンサである。また、交通情報受信機19は、交差点などに設置された路側機から、電波/光ビーコンやDSRCを介して、交通情報を受信する受信機である。
ここで、路側機は、安全運転支援情報提供システムを構成する装置であり、図2aに示すように、この安全運転支援情報提供システムは、交差点への各進入路に各々設置された路側機200、交差点の周辺を監視するカメラ300やレーダ装置400、カメラ300やレーダ装置400の監視内容から交差点周辺の状況を認識して各路側機200から送信する交通情報を生成し、各路側機200に提供する安全運転支援情報提供装置500などを含んで構成される。
【0016】
また、安全運転支援情報提供装置500が、各路側機200に提供する交通情報としては、図2bに示すように、交差点の路側機200に対する位置や交差点の形状を表す交差点データと、対象物データとがある。ここで、各路側機200から送信される各対象物データは、当該路側機200の近傍を走行する自動車の後方や、交差点周辺に存在する他車両や歩行者の各々を対象物として、各対象物毎に送信されるものである。そして、各対象物データは、当該対象物のトラック、普通車、二輪車、自転車、歩行者といった種別を表す対象物種別と、対象物の位置(対象物の存在する道路/歩道/横断歩道の識別や、対象物の座標)を表す対象物位置と、当該対象物の移動方向や移動速度を表す対象物速度との情報などを含むものである。
【0017】
そして、安全運転支援端末1の交通情報受信機19は、図2bに示すように、このような安全運転支援情報提供システムを構成する路側機200の近傍に位置するときに、当該近傍に位置する路側機200から、交通情報として、前述した交差点データや、対象物データを受信する。
【0018】
次に、安全運転支援端末1の記憶装置20には、予め、メッセージ要素データと、メッセージ出力ルールテーブルとが格納されている。
図3aに示すように、メッセージ要素データは、位置提示メッセージ要素群と、種別提示メッセージ要素群と、状態表示メッセージ要素群とより構成される。
そして、位置提示メッセージ要素群は、「左後ろ」、「左前」、「左の歩道」、「左折先」、「右前」、「右後ろ」...といった、対象物の自車から見た位置を各々示す、複数の位置提示メッセージ要素よりなり、各位置メッセージ要素には、各々固有の要素番号が与えられている。
【0019】
また、種別提示メッセージ要素群は、「から二輪車」、「に自転車」、「に歩行者」、「から路面電車」、「からトラック」...といった、対象物の種別を各々示す、複数の種別提示メッセージ要素よりなり、各種別提示メッセージ要素には、各々固有の要素番号が与えられている。
【0020】
そして、状態表示メッセージ群は、「が近づいています」、「がいます」、「があります」といった、対象物の自車から見た状態を各々示す、複数の種別提示メッセージ要素よりなり、各状態提示メッセージ要素には、各々固有の要素番号が与えられている。
次に、メッセージ出力ルールテーブルは、図3bに示すように、安全運転支援端末1から出力する音声メッセージ毎に対応して設けられたエントリ(図の各行)を備え、各エントリには、対応する音声メッセージを出力する条件を表すメッセージ出力条件と、対応する音声メッセージを規定する出力メッセージとが登録されている。
【0021】
そして、メッセージ出力条件は、自車条件と対象物条件とよりなり、自車条件とは、車両状態センサ18の検出内容より求まる、左折時、右折時、停止中、低速走行中などの自車の状態の条件を表す。また、対象物条件は、交通情報受信機19が受信した交差点データを必要に応じて参照しつつ交通情報受信機19が受信した対象物データから求まる、左前/左後ろ/右前/右横断歩道といった対象物の位置と、二輪車/自転車/歩行者/トラックといった対象物の種別と、自車に対して順走/逆送といった対象物の状態の条件を表す。なお、自車状態条件と対象物条件との双方が満たされたときに、メッセージ出力条件は満たされる。
【0022】
次に、安全運転支援端末1から出力する音声メッセージは、全て、一つの位置提示メッセージ要素と、一つの種別提示メッセージ要素と、一つの状態表示メッセージ要素とを、当該順序で読み上げた音声メッセージとなっており、メッセージ出力ルールテーブルの各エントリの、出力メッセージには、対応する音声メッセージに用いられる、位置提示メッセージ要素の要素番号と、種別提示メッセージ要素の要素番号と、状態表示メッセージ要素の要素番号との組み合わせが登録されている。
【0023】
すなわち、たとえば、図3bの一番目のエントリは、自車が左折しようとしているときに、自車の左後ろに自車と順走している二輪車が存在していることを表す対象物データを受信したときに、位置提示メッセージ要素「左後ろ」と、種別提示メッセージ要素「から二輪車」と、状態表示メッセージ要素「が近づいています。」とを組み合わせて、「左後ろから二輪車が近づいています。」という音声メッセージを出力すべきことを表している。
【0024】
なお、自車が左折しようとしているかどうかは、車両状態センサ18の方向指示器の操作状態の検出内容より求める。
また、同様に、図3bの二番目のエントリは、自車が左折しようとしているときに、自車の左前に自転車が存在していることを表す対象物データを受信したときに、位置提示メッセージ要素「左前」と、種別提示メッセージ要素「に自転車」と、状態表示メッセージ要素「がいます。」とを組み合わせて、「左前に自転車がいます。」という音声メッセージを出力すべきことを表している。なお、図3bの二番目のエントリのメッセージ出力条件の対象物条件の状態の「*」は、対象物の状態は任意であることを表している。
【0025】
以下、このような安全運転支援端末1において安全運転支援のために行う音声メッセージ出力動作について説明する。
まず、交通情報受信機19は受信した交差点データを保存すると共に、交通情報受信機19は受信した対象物データを受信キューに格納する処理を行う。
一方、制御部17は、音声メッセージの出力のために、図4に示すメッセージ出力処理を実行する。
図示するように、このメッセージ出力処理では、受信キューに対象物データが格納されているかどうかを調べ(ステップ402)、格納されていれば受信キューより対象物データを一つ取り出し(ステップ404)、受信キューから取り出した対象物データについてのメッセージを出力する必要があるかどうかを判定する(ステップ406)。受信キューから取り出した対象物データについてのメッセージを出力する必要があるかどうかの判定は、保存した交差点データを必要に応じて参照しつつ求まる受信キューから取り出した対象物データが表す対象物の状態と、車両状態センサ18の出力より求まる自車の状態との組み合わせによって満たされるメッセージ条件が登録されたエントリがメッセージ出力ルールテーブルに存在する場合に、メッセージを出力する必要があると判定することにより行う。
【0026】
そして、メッセージを出力する必要がない場合(ステップ406)にはステップ402の処理に戻る。
一方、メッセージを出力する必要がある場合には、最後に受信キューから取り出した対象物データについて出力するメッセージを生成する(ステップ408)。この受信キューから取り出した対象物データについて出力するメッセージの生成は、受信キューから取り出した対象物データが表す対象物の状態と、車両状態センサ18の出力より求まる自車の状態との組み合わせによって満たされるメッセージ条件が登録された、メッセージ出力ルールテーブルのエントリに登録された出力メッセージを、受信キューから取り出した対象物データについて出力するメッセージとすることにより生成する。
【0027】
そして、受信キューから取り出した対象物データ対象物データについて出力するメッセージを生成したならば、まず、生成したメッセージを構成する位置提示メッセージ要素を読み上げた音声のスピーカ12への音声出力を音声生成部15に行わせる(ステップ410)。
【0028】
そして、種別提示メッセージ要素を読み上げた音声のスピーカ12への音声出力が完了したならば、受信キューに対象物データが、まだ格納されているかどうかを調べ(ステップ412)、格納されていれば受信キューより対象物データを一つ取り出し(ステップ414)、受信キューから取り出した対象物データについてのメッセージを出力する必要があるかどうかを判定する(ステップ416)処理を、受信キューに対象物データが存在しなくなるか(ステップ412)、メッセージを出力する必要がある対象物データが受信キューから取り出されるまで(ステップ416)繰り返す。
【0029】
そして、メッセージを出力する必要がある対象物データが受信キューから取り出された場合には(ステップ416)、ステップ408からの処理に戻り、ステップ414で最後に受信キューから取り出した対象物データについて出力するメッセージの生成からの処理を行う。
【0030】
一方、ステップ412で、受信キューに対象物データが存在しないと判定された場合には、ステップ408で最後に生成したメッセージを構成する種別提示メッセージ要素を読み上げた音声のスピーカ12への音声出力を音声生成部15に行わせる(ステップ418)。
【0031】
そして、種別提示メッセージ要素を読み上げた音声のスピーカ12への音声出力が完了したならば、受信キューに対象物データが、まだ格納されているかどうかを調べ(ステップ420)、格納されていれば受信キューより対象物データを一つ取り出し(ステップ422)、受信キューから取り出した対象物データについてのメッセージを出力する必要があるかどうかを判定する(ステップ424)処理を、受信キューに対象物データが存在しなくなるか(ステップ420)、メッセージを出力する必要がある対象物データが受信キューから取り出されるまで(ステップ424)繰り返す。
【0032】
そして、メッセージを出力する必要がある対象物データが受信キューから取り出された場合には(ステップ424)、ステップ408からの処理に戻り、ステップ422で最後に受信キューから取り出した対象物データについて出力するメッセージの生成からの処理を行う。
【0033】
一方、ステップ420で、受信キューに対象物データが存在しないと判定された場合には、ステップ408で最後に生成したメッセージを構成する状態提示メッセージ要素を読み上げた音声のスピーカ12への音声出力を音声生成部15に開始させる(ステップ426)。
【0034】
そして、受信キューにおける対象物データの格納の発生と(ステップ428)、状態提示メッセージ要素を読み上げた音声のスピーカ12への音声出力の終了と(ステップ436)を監視する。
そして、受信キューにおける対象物データの格納が発生したならば(ステップ428)、受信キューより対象物データを一つ取り出し(ステップ430)、受信キューから取り出した対象物データが、当該対象物データについてのメッセージを出力する必要があるかどうかを判定する(ステップ432)処理を、受信キューに対象物データが存在しなくなるか(ステップ428)、メッセージを出力する必要がある対象物データが受信キューから取り出されるまで(ステップ432)繰り返す。
【0035】
そして、メッセージを出力する必要がある対象物データが受信キューから取り出された場合には(ステップ432)、音声生成部15に状態提示メッセージ要素を読み上げた音声のスピーカ12への音声出力を停止させ(ステップ434)、ステップ408からの処理に戻り、ステップ430で最後に受信キューから取り出した対象物データについて出力するメッセージの生成からの処理を行う。一方、受信キューに対象物データが存在しなくなった場合には、ステップ428、434の監視に戻る。
【0036】
一方、ステップ434で、状態提示メッセージ要素を読み上げた音声のスピーカ12への音声出力が最後まで終了した場合には(ステップ434)、最初のステップ402からの処理に戻る。
以上、制御部17が行うメッセージ出力処理について説明した。
以下、このようなメッセージ出力処理の処理例を図5に示す。
いま、図示するように、t1の時点で対象物データを受信すると、t1に受信した対象物データについてのメッセージM1(「左後ろ」、「から自転車」、「が近づいてきます」)が生成され、メッセージM1の音声出力が開始される。
そして、その後、メッセージM1の状態提示メッセージ要素「が近づいてきます。」の音声出力中の時点t2で、新たな対象物データを受信すると、メッセージM1の音声出力は即時に中止され、時点t2で受信した対象物データについてのメッセージM2(「左前」、「に歩行者」、「がいます。」)が生成され、メッセージM2の音声出力が開始される。
【0037】
そして、その後、メッセージM2の種別提示メッセージ要素「に歩行者」の音声出力中の時点t3で、新たな対象物データを受信すると、メッセージM2の種別提示メッセージ要素「に歩行者」の音声出力が完了する時点t5までメッセージM2の音声出力が継続された後、メッセージM2の音声出力は停止される。そして、時点t3で受信した対象物データについてのメッセージM3(「左の歩道」、「に歩行者」、「がいます。」)が生成され、メッセージM3の音声出力が開始される。
【0038】
そして、その後、メッセージM3の、位置提示メッセージ要素「左の歩道」の音声出力中の時点t4で、新たな対象物データを受信すると、メッセージM3の位置提示メッセージ要素「左の歩道」の音声出力が完了する時点t6までメッセージM3の音声出力が継続された後、メッセージM3の音声出力は停止される。そして、時点t4で受信した対象物データについてのメッセージM4(「左後ろ」、「から二輪車」、「が近づいてきます。」)が生成され、メッセージM4の音声出力が開始される。
【0039】
結果、時刻t1、t2、t3、t4において受信した4つの対象物データに対して出力される音声は、
(M1)「左後ろ」「から自転車」、「が近づいてき」(M2)「左前」「に歩行者」(M3)「左の歩道」(M4)「左後ろ」「から二輪車」、「が近づいてきます。」
となる。
【0040】
このように、図4のメッセージ出力処理によれば、受信した各対象物データについてのメッセージM1-M4のうちの位置提示メッセージ要素は必ず音声出力される。また、受信した各対象物データについてのメッセージのうちの種別提示メッセージ要素は、その音声出力開始前に、次にメッセージを出力すべき対象物データが発生している場合には音声出力されないが、他の場合には必ず最後まで音声出力される。また、受信した各対象物データについてのメッセージのうちの状態提示メッセージ要素は、その音声出力開始前に、次にメッセージを出力すべき対象物データが発生している場合には音声出力されず、また、音声出力を開始した後に、次にメッセージを出力すべき対象物データが発生した場合には、即時に音声出力が停止される。
【0041】
よって、注意を喚起すべき各障害物についてのメッセージの位置提示メッセージ要素は必ず出力されるので、ユーザの安全運転を確保する上でユーザに伝達する重要性や緊急性が最も大きいと考えられる、各障害物の位置または方向については、ユーザの注意を必ず喚起することができる。一方で、位置提示メッセージ要素の音声出力が完了した時点で、メッセージ全ての音声出力を待つことなく、メッセージの音声出力を中断して、新たに検知された障害物に対する注意を喚起するメッセージの音声出力を開始するので、各メッセージの音声出力のリアルタイム性も大きく損なわれることはない。
【0042】
ただし、図4に示したメッセージ出力処理は、種別提示メッセージ要素についても状態提示メッセージ要素と同様に、その音声出力開始前に、次にメッセージを出力すべき対象物データが発生している場合には音声出力せず、また、音声出力を開始した後に、次にメッセージを出力すべき対象物データが発生した場合には、即時に、その音声出力を停止するように構成してもよい。
【0043】
また、以上の実施形態における制御部17のメッセージ処理は、図6に示すように行うようにしてもよい。
すなわち、まず、受信キューに対象物データが格納されているかどうかを調べ(ステップ602)、格納されていれば受信キューより対象物データを一つ取り出し(ステップ604)、受信キューから取り出した対象物データについてのメッセージを出力する必要があるかどうかを判定する(ステップ606)。そして、メッセージを出力する必要がない場合にはステップ602の処理に戻る。
【0044】
一方、メッセージを出力する必要がある場合には(ステップ606)、ステップ604で受信キューから取り出した対象物データについて出力するメッセージを生成する(ステップ608)。そして、生成したメッセージを構成する位置提示メッセージ要素を読み上げた音声のスピーカ12への音声出力を音声生成部15に行わせる(ステップ610)。
【0045】
そして、音声出力を行った位置提示メッセージ要素の要素番号と、音声出力を行った時期を音声出力履歴として記憶する(ステップ612)。
そして、最後にステップ610で行った音声出力の完了までに、最後にステップ610で音声出力した位置提示メッセージ要素と同じ位置提示メッセージ要素をn(2<n)回以上、Ta(たとえば、10秒)期間内に連続して行っているかどうかを、音声出力履歴を参照して調べ(ステップ614)、行っていればステップ602からの処理に戻る。
【0046】
一方、n回以上Ta期間内に連続して行っていない場合には、生成したメッセージを構成する種別提示メッセージ要素を読み上げた音声のスピーカ12への音声出力を音声生成部15に行わせる(ステップ616)。
そして、最後にステップ610で行った音声出力の完了までに、最後にステップ610で音声出力した位置提示メッセージ要素と同じ位置提示メッセージ要素をm回(1<m<n)以上、Ta期間内に連続して行っているかどうかを、音声出力履歴を参照して調べ(ステップ618)、行っていればステップ602からの処理に戻る。
【0047】
一方、m回以上Ta期間内に連続して行っていない場合には、生成したメッセージを構成する状態提示メッセージ要素を読み上げた音声のスピーカ12への音声出力を音声生成部15に行わせる(ステップ620)。そして、ステップ602からの処理に戻る。
ここで、このようなメッセージ出力処理の処理例を図7に示す。但し、この例では、n=3、m=2とした場合についてのものである。
図示するように、いま、t1の時点で対象物データを受信すると、t1に受信した対象物データについてのメッセージM1(「右前」、「からトラック」、「が近づいてきます」)が生成され、メッセージM1が音声出力される。
そして、その後、t2の時点で、新たに対象物データを受信すると、t2に受信した対象物データについてのメッセージM2(「右前」、「から二輪車」、「が近づいてきます」)が生成され、メッセージM2の位置提示メッセージ要素「右前」の音声出力が行われる。
【0048】
そして、メッセージM2の位置提示メッセージ要素「右前」の音声出力が終了した時点で、最後に音声出力した位置提示メッセージ要素「右前」を、それまでに3回連続してTa期間内に出力しているか、どうかが調べられ、図示した場合では、3回連続してTa期間内に出力していないので、メッセージM2の位置提示メッセージ要素「右前」に続く種別提示メッセージ要素「から二輪車」が音声出力される。
【0049】
そして、メッセージM2の種別提示メッセージ要素「から二輪車」の音声出力が終了した時点で、最後に音声出力した位置提示メッセージ要素「右前」を、それまでに2回連続してTa期間内に出力しているかどうかが調べられ、図示した場合は、2回連続してTa期間内に出力しているので、この時点で、メッセージM2の音声出力が、メッセージM2の状態提示メッセージ要素の音声を出力を行うことなく中止される。
【0050】
そして、その後、t3の時点で、新たに対象物データを受信すると、t3に受信した対象物データについてのメッセージM3(「右前」、「から対向車」、「が近づいてきます」)が生成され、メッセージM3の位置提示メッセージ要素「右前」の音声出力が行われる。
【0051】
そして、メッセージM3の位置提示メッセージ要素「右前」の音声出力が終了した時点で、最後に音声出力した位置提示メッセージ要素「右前」を、それまでに3回連続してTa期間内に出力しているか、どうかが調べられ、図示した場合では、3回連続してTa期間内に出力しているので、この時点で、メッセージM3の音声出力が、メッセージM3の種別提示メッセージ要素、状態提示メッセージ要素の音声を出力を行うことなく中止される。
【0052】
また、その後のt4の時点で、新たに対象物データを受信すると、t4に受信した対象物データについてのメッセージM4(「右前」、「に自転車」、「がいます」)が生成され、メッセージM4の位置提示メッセージ要素「右前」の音声出力が行われる。
そして、メッセージM4の位置提示メッセージ要素「右前」の音声出力が終了した時点で、最後に音声出力した位置提示メッセージ要素「右前」を、それまでに3回連続してTa期間内に出力しているか、どうかが調べられ、この場合も、3回連続してTa期間内に出力しているので、この時点で、メッセージM4の音声出力が、メッセージM4の種別提示メッセージ要素、状態提示メッセージ要素の音声を出力を行うことなく中止される。
【0053】
結果、時刻t1、t2、t3、t4において受信した4つの対象物データに対して出力される音声は、
(M1)「左前」「からトラック」、「が近づいてきます。」(M2)「左前」「から二輪車」(M3)「右前」(M4)「右前」
となる。
【0054】
このように、図6のメッセージ出力処理によれば、受信した各対象物データについてのメッセージM1-M4のうちの位置提示メッセージ要素は必ず音声出力される。また、受信した各対象物データについてのメッセージのうちの種別提示メッセージ要素は、直前に同じ位置提示メッセージ要素の音声出力を短時間にn回以上繰り返している場合には、音声出力されないが、他の場合には音声出力されることになる。また、受信した各対象物データについてのメッセージのうちの状態提示メッセージ要素は、直前に同じ位置提示メッセージ要素の音声出力を短時間にm回以上繰り返している場合には、音声出力されないが、他の場合には音声出力されることになる。
【0055】
ただし、図6に示したメッセージ出力処理は、また、受信した各対象物データについてのメッセージのうちの種別提示メッセージ要素についても、状態提示メッセージ提示要素と同様に、直前に同じ位置提示メッセージ要素の音声出力を短時間にm(1<m)回以上繰り返している場合には、音声出力しないように構成してもよい。
【0056】
以上、図6に示したメッセージ出力処理によれば、メッセージを音声出力する際に、今回音声出力するメッセージの位置提示メッセージ要素と同じ位置提示メッセージ要素が、過去所定期間内において同じ位置提示メッセージが繰り返し出力されている場合には、状態提示メッセージ、または、種別提示メッセージ及び状態提示メッセージの音声出力が省略される。
【0057】
したがって、注意を喚起すべき各障害物についてのメッセージの位置提示メッセージは必ず出力されるので、ユーザの安全運転を確保する上でユーザに伝達することが最も必要と考えられる、各障害物の位置または方向については、ユーザの注意を必ず喚起することができる。一方で、状態提示メッセージ、または、種別提示メッセージ及び状態提示メッセージの音声出力の省略により、メッセージの平均の音声出力時間が短縮されるので、そのような省略を行わなかった場合に比べ各メッセージの音声出力のリアルタイム性が向上する。また、このような省略を行うことにより、短期間に同じようなメッセージが繰り返し音声出力されることによるユーザの煩わしさを低減することができる。
【0058】
ここで、このような、図6に示したメッセージ処理の位置提示メッセージ要素の連続出力に応じた制御は、図4に示したメッセージ出力処理に組み込むようにしてもよい。
すなわち、図4のメッセージ出力処理のステップ410において、位置提示メッセージ要素の音声出力を行ったならば、最後にステップ410で行った音声出力の完了までに、最後にステップ410で音声出力した位置提示メッセージ要素と同じ位置提示メッセージ要素をn(2<n)回以上、Ta(たとえば、10秒)以内に連続して行っているかどうかを調べ、行っていればステップ402からの処理に戻り、行っていなければステップ412の処理に進むようにする。また、ステップ418において、種別提示メッセージ要素の音声出力を行ったならば、最後にステップ410で行った音声出力の完了までに、最後にステップ410で音声出力した位置提示メッセージ要素と同じ位置提示メッセージ要素をm(1<m<n)回以上、Ta期間内に連続して行っているかどうかを調べ、行っていればステップ402からの処理に戻り、行っていなければステップ420の処理に進むようにする。
【0059】
なお、以上の実施形態は、上述のように交通情報受信機19で路側機200から受信した情報に基づいて、注意を喚起するメッセージの音声出力の対象とする周辺の対象物を検知するようにしたが、注意を喚起するメッセージの音声出力の対象とする周辺の対象物は、自動車に搭載した周辺を監視するためのセンサなどにより検知するようにしてもよい。また、他車から、当該他車の位置や種別や移動方向/速度等の情報や、当該他車においてセンサで検出した当該他車周辺の対象物の位置や種別や移動方向/速度等の情報を、車車間通信で受信するようにし、注意を喚起するメッセージの音声出力の対象とする周辺の対象物を、当該他車から受信した情報に基づいて検知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…安全運転支援端末、11…表示装置、12…スピーカ、13…操作部、14…警告画像生成部、15…音声生成部、16…メモリ、17…制御部、18…車両状態センサ、19…交通情報受信機、20…記憶装置、200…路側機、300…カメラ、400…レーダ装置、500…安全運転支援情報提供装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載され、周辺の障害物に対する注意を喚起する音声メッセージを出力する安全運転支援装置であって、
障害物を検知する障害物検知手段と、
前記障害物検知手段が検知した注意を喚起すべき障害物について、当該障害物の位置または方向を示す言葉を含む第1要素と、当該障害物の種類を示す言葉を含む第2要素と、当該障害物の状態を示す言葉を含む第3要素とを、当該順序で連結して構成されるメッセージを音声出力する音声出力手段とを有し、
前記音声出力手段は、
前記メッセージを音声出力する際に、今回音声出力するメッセージの第1要素と同じ第1要素が、過去直近に音声出力したn(但し、nは1以上の整数)個のメッセージに含まれており、かつ、当該n個のメッセージを過去所定期間内において音声出力している場合に、今回音声出力するメッセージの第3要素の音声出力を省略することを特徴とする安全運転支援装置。
【請求項2】
請求項1記載の安全運転支援装置であって、
前記音声出力手段は、
前記メッセージを音声出力する際に、今回音声出力するメッセージの第1要素と同じ第1要素が、過去直近に音声出力したm(但し、n<m)個のメッセージに含まれており、かつ、当該m個のメッセージを前記過去所定期間内において音声出力している場合に、今回音声出力するメッセージ第2要素と第3要素の音声出力を省略することを特徴とする安全運転支援装置。
【請求項3】
自動車に搭載され、周辺の障害物に対する注意を喚起する音声メッセージを出力する安全運転支援装置であって、
障害物を検知する障害物検知手段と、
前記障害物検知手段が検知した注意を喚起すべき障害物について、当該障害物の位置または方向を示す言葉を含む第1要素と、当該障害物の種類を示す言葉を含む第2要素と、当該障害物の状態を示す言葉を含む第3要素とを、当該順序で連結して構成されるメッセージを音声出力する音声出力手段とを有し、
前記音声出力手段は、
前記メッセージを音声出力する際に、今回音声出力するメッセージの第1要素と同じ第1要素が、過去直近に音声出力したn(但し、nは1以上の整数)個のメッセージに含まれており、かつ、当該n個のメッセージを過去所定期間内において音声出力している場合に、今回音声出力するメッセージの第2要素と第3要素の音声出力を省略することを特徴とする安全運転支援装置。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の安全運転支援装置であって、
前記障害物検知手段は、路側機または他車に搭載された車載機である外部の情報提供装置から受信した、当該安全運転支援装置を搭載した前記自動車周辺の物体に関する情報に基づいて、前記障害物を検知することを特徴とする安全運転支援装置。
【請求項5】
自動車に搭載された安全運転支援装置において、周辺の障害物に対する注意を喚起する音声メッセージを出力する音声メッセージ出力方法であって、
前記安全運転支援装置が、障害物を検知する障害物検知ステップと、
前記安全運転支援装置が、前記障害物検知ステップで検知した注意を喚起すべき障害物について、当該障害物の位置または方向を示す言葉を含む第1要素と、当該障害物の種類を示す言葉を含む第2要素と、当該障害物の状態を示す言葉を含む第3要素とを、当該順序で連結して構成されるメッセージを音声出力する音声出力ステップとを有し、
前記音声出力ステップにおいて、前記メッセージを音声出力する際に、今回音声出力するメッセージの第1要素と同じ第1要素が、過去直近に音声出力したn(但し、nは1以上の整数)個のメッセージに含まれており、かつ、当該n個のメッセージを過去所定期間内において音声出力している場合に、今回音声出力するメッセージの第3要素の音声出力を省略することを特徴とする音声メッセージ出力方法。
【請求項6】
請求項5記載の音声メッセージ出力方法であって、
前記音声出力ステップにおいて、前記メッセージを音声出力する際に、今回音声出力するメッセージの第1要素と同じ第1要素が、過去直近に音声出力したm(但し、n<m)個のメッセージに含まれており、かつ、当該m個のメッセージを前記過去所定期間内において音声出力している場合に、今回音声出力するメッセージの第2要素と第3要素の音声出力を省略することを特徴とする音声メッセージ出力方法。
【請求項7】
自動車に搭載された安全運転支援装置において、周辺の障害物に対する注意を喚起する音声メッセージを出力する音声メッセージ出力方法であって、
前記安全運転支援装置が、障害物を検知する障害物検知ステップと、
前記安全運転支援装置が、前記障害物検知ステップで検知した注意を喚起すべき障害物について、当該障害物の位置または方向を示す言葉を含む第1要素と、当該障害物の種類を示す言葉を含む第2要素と、当該障害物の状態を示す言葉を含む第3要素とを、当該順序で連結して構成されるメッセージを音声出力する音声出力ステップとを有し、
前記音声出力ステップにおいて、前記メッセージを音声出力する際に、今回音声出力するメッセージの第1要素と同じ第1要素が、過去直近に音声出力したn(但し、nは1以上の整数)個のメッセージに含まれており、かつ、当該n個のメッセージを過去所定期間内において音声出力している場合に、今回音声出力するメッセージの第2要素と第3要素の音声出力を省略することを特徴とする音声メッセージ出力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−58259(P2013−58259A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−273211(P2012−273211)
【出願日】平成24年12月14日(2012.12.14)
【分割の表示】特願2008−245501(P2008−245501)の分割
【原出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】