説明

安全運転監視装置

【課題】二輪車に乗車している人、特に自転車に乗車している児童・幼児、に対してヘルメットの着用を促すことで、二輪車に乗車している人の安全に対する意識を高め、ヘルメットの着用率の向上を図る安全運転監視装置を提供する。
【解決手段】安全運転監視装置1は、画像処理部12において、カメラ2から入力されている撮像画像を処理し、撮像されている人物を検出する。画像処理部12は、人物を検出すると、その人物がヘルメットを着用しているかどうかを判定する。また、ヘルメットを着用していない人物であれば、二輪車に乗車しているか、児童・幼児であるか等を判断する。そして、これらの判断結果に基づいて、ヘルメットの着用を促す音声メッセージの出力を行う。これにより、二輪車に乗車している人の安全に対する意識を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路を走行している自転車やバイク等の二輪車に乗車している人の安全を監視する安全運転監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路上を走行している移動物体が、自動車(四輪車)、バイク(二輪車)、自転車(二輪車)、歩行者のいずれであるかを判別し検出する装置があった(特許文献1、2等参照)。また、特許文献1では、自動車専用道路の入口で自転車を検出する等、検出した物体の種別が適正でない場合に、その旨を通知する警報を出力する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3843753号公報
【特許文献2】特許第4120430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2等は、道路上を走行している移動物体の種別を検出するものであり、自動車(四輪車)、バイク(二輪車)、自転車(二輪車)等に乗車している人の安全を監視するものではなかった。
【0005】
一方、最近では、自転車による事故が増加しており、特に、13歳未満の児童・幼児については、自転車に乗車する場合における、ヘルメットの着用の義務化についての議論がなされている。また、すでに、ヘルメットの着用を啓発する活動を行っている自治体や、学校等の団体もある。
【0006】
この発明の目的は、二輪車に乗車している人、特に自転車に乗車している児童・幼児、に対してヘルメットの着用を促すことで、二輪車に乗車している人の安全に対する意識を高め、ヘルメットの着用率の向上を図る安全運転監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の安全運転監視装置は、上記目的を達成するために以下のように構成した。
【0008】
この発明では、画像処理手段が、道路を撮像している撮像装置の撮像画像を処理し、当該道路を走行している二輪車に乗車している人物の顔、および頭部を検出する。また、ヘルメット着用判定手段が、二輪車に乗車している人物の顔の幅と、頭部の幅との比に基づいてヘルメットを着用しているかどうかを判定する。そして、出力手段がヘルメットを着用していない人に対して警告出力を行う。例えば、出力手段は、警告出力として、ヘルメットの着用を促す音声メッセージ「危険ですので、自転車に乗るときは、ヘルメットを着用しましょう。」を出力する。これにより、二輪車に乗車している人の安全に対する意識を高め、ヘルメットの着用率の向上を図ることができる。
【0009】
また、二輪車に乗車している人物の顔画像から、この人物の年齢を推定し、13歳未満である児童・幼児に対してのみ、ヘルメットの着用を促す音声メッセージ等の警告出力を行うようにしてもよい。また、二輪車が自転車でなく、バイクであるときには、道路交通法でヘルメットの着用が義務づけられていることから、乗車している人の年齢に関係なく、ヘルメットの着用を促す音声メッセージの出力を行えばよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、二輪車に乗車している人、特に自転車に乗車している児童・幼児、に対してヘルメットの着用を促すことができる。また、これにより、二輪車に乗車している人が、安全に対する意識を高め、ヘルメットの着用率の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】安全運転監視装置の主要部の構成を示す図である。
【図2】安全運転監視装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】ヘルメットの着用有無を判定する処理を説明する図である。
【図4】幼児と保護者が自転車に2人乗りしている自転車を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態である安全運転監視装置について説明する。
【0013】
図1は、この安全運転監視装置の主要部の構成を示す図である。この安全運転監視装置1は、制御部11と、画像処理部12と、撮像画像記憶部13と、出力部14と、を備えている。制御部11は、安全運転監視装置1本体各部の動作を制御する。
【0014】
画像処理部12は、カメラ2から入力される撮像画像を処理する。カメラ2は、一般的なビデオカメラであり、1秒間に数十フレーム(例えば、30フレーム)のフレーム画像を画像処理部12に入力する。カメラ2は、道路上の対象エリアが撮像領域に収まるように取り付けられている。画像処理部12は、カメラ12から入力されたフレーム画像を順番に処理し、撮像されている人物の検出を行う。また、画像処理部12は、検出した人物が二輪車に乗車しているかどうか、その二輪車が自転車、またはバイクのどちらであるか、検出した人物の年齢推定、検出した人物がヘルメットを着用しているかどうか等についての判定も行う。
【0015】
撮像画像記憶部13は、カメラ2から入力されたフレーム画像を選択的に記憶する。制御部11が、撮像画像記憶部13に記憶するフレーム画像を選択する。出力部14にはスピーカ3が接続されている。出力部14は、スピーカ3から報知する音声メッセージにかかる音声信号を出力する。スピーカ3は、カメラ2の撮像領域内に位置している人物に聞こえる音量で音声メッセージを報知する。スピーカ3から報知する音声メッセージは、制御部11が画像処理部12の判定結果に基づいて決定する。
【0016】
以下、この安全運転監視装置1の動作について詳細に説明する。
【0017】
図2は、この安全運転監視装置の動作を示すフローチャートである。安全運転監視装置1は、画像処理部12において、カメラ2から入力されているフレーム画像を順番に処理する。画像処理部12は、処理対象のフレーム画像に撮像されている人物の検出を行う(s1)。s1では、処理対象のフレーム画像全体に対して、目、鼻、口等の顔部品の特徴点の抽出を行い、これらの顔部品の特徴点が抽出できたときに、人物が撮像されていると判定する。画像処理部12は、s1で人物が検出できなければ、処理対象のフレーム画像を、1フレーム後の画像に更新し、s1にかかる処理を行う。
【0018】
なお、s1では、処理対象のフレーム画像に撮像されている人物が複数人いれば、これら複数人の人物を検出する。
【0019】
安全運転監視装置1は、s1で検出した人物が二輪車(自転車、またはバイク)に乗車しているかどうかを判定する(s2)。s2では、s1で検出した人物の下部に、二輪車の特徴であるタイヤが撮像されているかどうかを検出することにより判定する。タイヤの検出は、例えば、二輪車のタイヤのモデル画像とのパターンマッチングにより行えばよい。安全運転監視装置1は、s2で二輪車に乗車していない人物、例えば歩行者、であると判定すると、s1に戻る。
【0020】
安全運転監視装置1は、s2で二輪車に乗車している人物であると判定すると、この二輪車が自転車であるか、バイクであるかを判定する(s3)。s3では、s2で検出したタイヤの幅が予め定めた長さよりも短ければ自転車であると判定する。言い換えれば、s2で検出したタイヤの幅が予め定めた長さ以上であればバイクであると判定する。安全運転監視装置1は、s3でバイクであると判定すると、後述するs6以降の処理を実行する。
【0021】
安全運転監視装置1は、s3で自転車であると判定すると、s1で検出した人物の年齢を推定する(s4)。s4では、s1で検出した人物の顔画像から、目尻、ほうれい線、口元、顎等の特徴量を抽出し、ここで抽出した特徴量を用いて、この人物の年齢を推定する。この人物の撮像画像を処理して、その人物の年齢や性別を推定する技術については、ニューラルネットワークを利用したものがあり、公知であるので、ここでは詳細な説明を省略する。安全運転監視装置1は、s4で推定した年齢が13歳以上(児童・幼児でない場合)であると(s5)、s1に戻り、上述した処理を繰り返す。
【0022】
安全運転監視装置1は、s3バイクであると判定した場合、およびs4で推定した年齢が13歳未満であった場合(児童・幼児であった場合)、s1で検出した人物が、ヘルメットを着用しているかどうかを判定する(s6)。
【0023】
図3は、このヘルメットの着用/未着用を判定する処理を説明する図である。図3(A)〜(C)は、ヘルメットを着用している人物の顔画像を示しており、図3(D)〜(F)は、ヘルメットを着用していない人物の顔画像を示している。s6では、図3(A)、(D)に破線で示すように、s1で検出した人物の目の上部を、この人物の頭部として検出する。また、s1で検出した人物の顔の幅aを検出する。顔の幅を検出する位置は、ここでは、図3(B)、(E)に示すように、この人物の目の高さにしている。さらに、図3(C)、(F)に示すように、この人物について検出した頭部の最大幅を、この人物の頭部の幅bとして検出する。安全運転監視装置1は、ここで検出した頭部の幅bと、顔の幅aとの比(b/a)が、予め定めた値以上であるかどうかによって、ヘルメットを着用しているかどうかを判定する。具体的には、この比(b/a)が予め定めた値以上であれば、ヘルメットを着用していると判定し、この比(b/a)が予め定めた値未満であれば、ヘルメットを着用していないと判定する。
【0024】
なお、上述した顔の幅aや、頭部の幅bは、カメラ2の撮像倍率等を考慮せず、この撮像画像における長さを検出してもよい。
【0025】
また、髪型による誤判定を防止するために、ヘルメットのモデル画像とのパターンマッチングや、頭部の光沢、頭部の色等も考慮して、s6にかかる判定を行うようにしてもよい。
【0026】
安全運転監視装置1は、s6でヘルメットを着用していると判定すると、s1に戻り、上述した処理を繰り返す。一方、s6でヘルメットを着用していないと判定すると、今回の処理対象であったフレーム画像を撮像画像記憶部13に記憶する(s7)。また、安全運転監視装置1は、出力部14から、今回ヘルメットを着用していないと判定した人物に対する警告出力として、ヘルメットの着用を促す音声メッセージにかかる音声信号を出力する(s8)。この音声信号は、スピーカ3に入力される。これにより、今回ヘルメットを着用していないと判定した人物に対して、ヘルメットの着用を促す音声メッセージが報知される。s8では、上述したs3の判定結果に応じて、音声メッセージを選択している。例えば、s3で自転車であると判定した場合には、「危険ですので、自転車に乗るときは、ヘルメットを着用しましょう。」等の音声メッセージを選択し、s3でバイクであると判定した場合には、「道路交通法でヘルメットの着用が義務づけられています。」等の音声メッセージを選択する。
【0027】
これにより、自転車に乗車している児童・幼児、に対してヘルメットの着用を促すことができる。また、道路交通法に違反して、ヘルメットを着用しないでバイクに乗車している人に対する警告も行える。したがって、二輪車に乗車している人の安全に対する意識を高め、ヘルメットの着用率を向上させることができる。
【0028】
また、安全運転監視装置1は、s3で自転車に乗車していると判定したときに、その自転車が2人乗りであるかどうかを検出する機能を持たせてもよい。例えば、図4に示すように、保護者が児童・幼児を乗せて2人乗りしている自転車であるかどうかを検出する機能を持たせてもよい。この機能は、1台の自転車に対して、検出された顔が2つであるかどうかを判定する機能で実現できる。そして、2人乗りしている自転車の場合、少なくとも一方がヘルメットを着用していない児童・幼児であれば、s8で、ヘルメットの着用を促す音声メッセージにかかる音声信号を出力する構成とすればよい。この場合には、例えば「子供の安全のため、ヘルメットを着用させましょう。」等の音声メッセージを選択すればよい。
【0029】
また、自転車に乗っている2人が、ともに児童・幼児でない場合には、道路交通法で自転車の2人乗りが禁止されていることを通知する音声メッセージをスピーカ3から報知するようにしてもよい。例えば「自転車の2人乗りは、道路交通法で禁止されています。すぐに、やめてください。」等の音声メッセージをスピーカ3から報知すればよい。
【0030】
さらには、撮像画像を処理して、携帯電話で通話しながら自転車に乗っている人や、夜間に前照灯を点灯させていない自転車等を検出する機能を付加してもよい。この場合には、「携帯電話の使用は危険です。自転車を停止して、通話してください。」や「安全のため、前照灯を点灯させましょう。」等の音声メッセージを選択し、スピーカ3から報知する構成とすればよい。
【0031】
さらに、検出した人物に対して音声メッセージを報知する原因となったカメラ2の撮像画像は、撮像画像記憶部13に記憶されるので、自転車に乗るときにヘルメットの着用を推進している学校や自治体等に、この撮像画像を提供することもできる。
【符号の説明】
【0032】
1−安全運転監視装置
2−カメラ
3−スピーカ
11−制御部
12−画像処理部
13−撮像画像記憶部
14−出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路を撮像している撮像装置の撮像画像を処理し、当該道路を走行している二輪車に乗車している人物の顔、および頭部を検出する画像処理手段と、
前記画像処理手段が検出した二輪車に乗車している人物の顔の幅と、頭部の幅との比に基づいて、ヘルメットを着用しているかどうかを判定するヘルメット着用判定手段と、
前記ヘルメット着用判定手段がヘルメットを着用していないと判定したときに、警告出力を行う出力手段と、を備えた安全運転監視装置。
【請求項2】
前記画像処理手段が検出した二輪車に乗車している人物の顔画像から、この人物の年齢を推定する年齢推定手段を備え、
前記出力手段は、前記年齢推定手段が推定した年齢が予め定めた年齢以上であれば、前記警告出力を行わない、請求項1に記載の安全運転監視装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、道路を走行している二輪車が自転車であるか、バイクであるかについても検出する手段であり、
前記出力手段は、前記画像処理手段がバイクを二輪車として検出した場合には、前記年齢推定手段が推定した年齢が予め定めた年齢以上であっても、前記警告出力を行う手段である、請求項2に記載の安全運転監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−211427(P2010−211427A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−55808(P2009−55808)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】