説明

安全防護柵及び安全防護装置

【課題】大きさ及び/又は形状の異なる開口部にも使用可能な、開口部からの侵入を確実に防止することができる安全防護柵及び安全防護装置を提供する。
【解決手段】本発明の安全防護柵1は、交差筋交い様に中心部を連結ピン13で回動自在に連結された2本のパイプ11と、パイプ11の両端部15にねじを介して伸縮可能に取り付けられたアイボルト様の係止具21とを含む。本発明の安全防護柵1は、上記構成により種々の大きさ及び/又は形状の開口部に取り付け使用することができ、マンホールのような開口部であっても、係止具21をマンホールのボルトに引っ掛け、上からナットを取り付ければ、簡単、確実に取り付けることができる。取り付けられた安全防護柵1は簡単に外れることはなく開口部からの侵入、開口部に顔を突っ込むことを確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開放状態のマンホールなど開口部に取り付け侵入を防止する安全防護柵及び安全防護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場における開口部など危険箇所への立入禁止は、通常、ロープを張る又は安全柵を設置することで行われる。タンクの補修を行うような場合も、開放状態のマンホールにロープ、テープ又はネットを張り、マンホールからの無断侵入を防止することが多い。タンクの内部が酸素欠乏状態であるときは、マンホールから顔を突っ込むだけで重大事故につながるため、内部への進入を防止するのみならず、顔を突っ込むことができないようにすることが重要である。さらに標識を設置し、注意を喚起することも重要である。
【0003】
マンホールに設置する安全柵に関しては、エスカレーター乗降口の床下に設けられた機械室へつながるマンホール用の安全柵として、折畳み、機械室へ収納できる安全柵が開発されている(例えば特許文献1参照)。またタンク内の酸素欠乏に対しては、マンホールの開放及びタンク内の水位が作業可能な水位であることを検出器で検出し、送気ブロアからタンク内に空気を送り込む酸素欠乏防止装置がある(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−102789号公報
【特許文献2】実開昭61−198388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タンク又は大型機器の壁面に設けられた開放状態のマンホールにロープ、テープ又はネットを張りタンク又は大型機器内への侵入を防止する場合、地面に設けられたマンホールと異なり、ロープ等をしっかりと固定する場所、固定するための部材がないためマンホールのボルトなどを利用して仮止めされる場合も多い。このため取り付けたロープ等が外れる恐れがある。また標識を取り付けるための架台もないため、標識をマンホールの横にテープで貼付する場合も多いが、剥がれる恐れがある。
【0006】
特許文献1に記載の安全柵は、エスカレーターの機械室に設けられたマンホールの安全柵としては有用と思われるが、タンク等の壁面に設けられたマンホールなどには適用することができない。また特許文献2に記載の技術は、タンク等の酸素欠乏防止に有用な技術ではあるが、マンホールからの進入を防止するための技術ではない。タンク内が酸素欠乏状態の場合、タンク内への進入はもちろん、マンホールから顔を突っ込むだけでも重大事故につながるため、開放状態のマンホールなど開口部からの侵入を確実に防止することができる安全防護柵及び安全防護装置が待たれている。1個の安全防護柵及び安全防護装置が大きさ、形状の異なる開口部に使用できれば効率的であり好ましい。
【0007】
本発明の目的は、大きさ及び/又は形状の異なる開口部にも使用可能な、開口部からの侵入を確実に防止することができる安全防護柵及び安全防護装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軸線方向に伸縮可能な係止具を両端に有する2本の棒状体を有し、前記2本の棒状体の中心部が連結ピンにより回動自在に連結されていることを特徴とする安全防護柵である。
【0009】
また本発明は、前記安全防護柵と、前記安全防護柵の棒状体に係止可能な表示体と、を含むことを特徴とする安全防護装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の安全防護柵は、2本の棒状体が連結ピンで回動自在に連結されかつ軸線方向に伸縮可能な係止具を両端に有するため、種々の大きさ及び/又は形状の開口部に取り付け使用することができる。棒状体は、両端部に係止具を備えるので、マンホールのような開口部であっても、係止具をマンホールのボルトに引っ掛け、上からナットを取り付ければ、簡単、確実に取り付けることができる。取り付けられた安全防護柵は簡単に外れることはなく開口部からの侵入、開口部に顔を突っ込むことを確実に防止することができる。
【0011】
また本発明の安全防護装置は、前記安全防護柵の棒状体に係止可能な表示体を有するので、表示体の設置を簡単かつ確実に行うことが可能であり、酸素欠乏場所の開口部などに好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態である安全防護柵1の斜視図である。
【図2】本発明の第2実施形態である安全防護柵2の斜視図である。
【図3】本発明の第3実施形態である安全防護装置5をマンホール50を覆うように取り付けた状態を示す図である。
【図4】本発明の第3実施形態である安全防護装置5をマンホール50の横に取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の第1実施形態である安全防護柵1の斜視図である。安全防護柵1は、交差筋交い様に中心部を連結ピン13で回動自在に連結された2本のパイプ11と、パイプ11の両端部15にねじを介して伸縮自在に取り付けられたアイボルト様の係止具21とを含む。
【0014】
2本のパイプ11は、金属製の同一パイプであり、それぞれパイプ11の中心部に貫通孔(図示省略)が設けられ、パイプ11を重ねた状態で貫通孔に連結ピン13が挿通され、2本のパイプ11はこの連結ピン13により回動自在に連結されている。このため連結ピン13で連結されたパイプ11は、平面視において、直線状、X状、十字状の形状を取ることができる。パイプ11の両端部15の内側には、めねじ(図示省略)が設けられている。パイプ11は、特定のパイプに限定されず汎用パイプを使用することができる。パイプ11の表面は、注意を喚起するため黄色17と黒色18とで交互に塗り分けられている。必ずしもパイプ11の表面を色分けする必要はないが、色分けは注意を喚起できる好ましい方法であり、黄色17と黒色18との色分け以外に赤色と白色との色分けを施してもよい。
【0015】
係止具21は、金属性の部材からなり、リング状の係止部23と係止部23に接続するおねじが施された軸部25とを有する。4つの係止具21は、全て同一である。リング状の係止部23は、使用する際、ボルトに挿入しボルトに係止するためボルトに挿入できる大きさである。軸部25には、反係止部端(図示省略)から係止部23近傍までおねじが施され、パイプ11の両端部15に設けられためねじ(図示省略)に螺合する。このため係止具21をパイプ11の軸線方向に移動させることが可能であり、1つのパイプ11の両端の係止部23間の距離を伸縮させることができる。さらに連結ピン13から係止部23までの距離を、4つの係止具21で異なる距離とすることもできる。パイプ11と係止具21とをねじで連結すると、連結ピン13から係止部23までの距離の調節が容易なことはもちろん、パイプ11と係止具21とがしっかりと連結されるため、パイプ11の軸線方向に直交する力に対しても強く変形しにくいので安全防護柵として好ましい。
【0016】
図2は、本発明の第2実施形態である安全防護柵2の斜視図である。図1に示す第1実施形態の安全防護柵1と同一の部材には同一の符号を付して説明を省略し、以下、第1実施形態の安全防護柵1との相違点を中心に説明する。
【0017】
安全防護柵2は、第1実施形態の安全防護柵1と基本的構成は同じであるが係止具22の構成が異なる。係止具22は、金属性の部材からなり、フック状の係止部24と係止部24に接続する棒状の軸部26及びばね28からなる。このフック状の係止部24は、ボルトに係止できる大きさである。軸部26は、パイプ11の内径よりも僅かに小さい外径を有する丸棒であり、パイプ11内を軸線方向に摺動可能である。軸部26は、パイプであってもよい。ばね28は、引きばねであり、パイプ11内に収納され一端部がパイプ11に固定され、他端部が軸部26の端部に連結されている。このため係止部24をパイプ11の反連結ピン13側に引っ張るとばね28が伸び、軸部26がパイプ11内から引き出される。これにより1つのパイプ11の両端の係止部24間の距離を伸縮させることができる。さらに連結ピン13から係止部24までの距離を、4つの係止具22で異なる距離とすることもできる。第2実施形態の安全防護柵2では、係止具22は、ばね28を介してパイプ11と伸縮かつ摺動自在に連結されているため、連結ピン13から係止部24までの距離の調節が極めて容易であり、使い勝手がよい。
【0018】
上記係止具22の変形例として、軸部26をパイプ11の外径よりも僅かに大きい内径を有するパイプとし、パイプ11外を軸線方向に摺動させるようにしてもよい。このときばね28は、軸部26内に収納し、一端をパイプ11の端部に他端を軸部26内で係止部24の近傍に固定する。さらにばね28は、引きばねに代え、圧縮コイルばねを用いてもよい。
【0019】
図3は、本発明の第3実施形態である安全防護装置5をマンホール50を覆うように取り付けた状態を示す図である。
【0020】
安全防護装置5は、第1実施形態に示す安全防護柵1と安全防護柵1に係止して使用する表示体31とを含み構成される。なお、第1実施形態に示す安全防護柵1に代え、第2実施形態に示す安全防護柵2を用いてもよい。
【0021】
表示体31は、表示板33と表示板33を収納する薄い箱状の収納箱35とを有する。表示板31は、表面及び裏面が筆記具で筆記可能な板状体である。収納箱35は、表示板33とほぼ同じ空間を有し、表示板33を収納するため上部37が開口している。さらに表面は、収納した表示板33を外部から見ることができるように周縁部39を残し開口している。また収納箱35の裏面には、安全防護柵1のパイプ11に係止させるためのフック(図示省略)が設けられている。表示体31を表示板33と表示板33を収納する薄い箱状の収納箱35とで構成し、表示板33を収納箱35に出し入れ可能に収納することで、表示板33の表面のみならず裏面も利用可能となり効率的である。
【0022】
安全防護装置5の使用例を説明する。マンホール50に設けられたマンホール50の蓋(図示省略)を止めるためのボルト52を利用して安全防護柵1を開口したマンホール50に取り付ける。対向するボルト52間の距離に合わせて安全防護柵1の係止具21を伸縮させる。安全防護柵1をX状とし、4つの係止部23をボルト52に挿入した後、座金54を被せボルト52にナット56を取り付ける。その後、必要事項を記載した表示板33を収納した収納箱35を、フック(図示省略)を利用して安全防護柵1に取り付ける。なお、安全防護柵1に代え、第2実施形態に示す安全防護柵2を使用する場合も同じ要領で使用することができる。このような安全防護装置5は、安全防護柵1が容易には変形せず、取り付け方法もボルト52に係止しナット56で止めるため取り付けた後は容易に外れることがない。なお、安全防護柵2を使用する場合、係止具23は、常にばね28でパイプ11の中心部に向って引っ張られているので、ナット56を取り付けなくても簡単に外れることはない。
【0023】
安全防護装置5の他の使用例を説明する。図4は、安全防護装置5をマンホール50の横に取り付けた状態を示す図である。図3は、開放状態のマンホール50からの侵入を防止すべく、安全防護装置5を開口したマンホール50に取り付けた状態を示すのに対して、図4は、タンク(図示省略)内で作業を行なっている状態での使用例である。タンク内の安全は確保され、作業員がタンク内に出入りするためマンホール50は開放状態である。この場合、安全防護柵1がマンホール50を塞がずマンホール50の横に位置するように、2つの係止部23をマンホール50のボルト52に挿入した後、座金54を被せボルト52にナット56を取り付ける。その後、必要事項を記載した表示板33を収納した収納箱35を、フック(図示省略)を利用して安全防護柵1に取り付ける。このような安全防護装置5における安全防護柵1は、表示体31の取り付け架台として機能する。
【0024】
第1及び第2実施形態で示すように安全防護柵1、2は、2本のパイプ11が連結ピン13で回動自在に連結され、さらに係止具21、22はパイプ11の軸線方向に伸縮可能なため、1つの安全防護柵1、2を大きさ及び/又は形状の異なるマンホール50に使用することができる。マンホール50は、円の他、楕円、四角形状のマンホール50もあるが、このようなマンホール50にも使用することができる。またマンホール50によっては、マンホール50を塞ぐ蓋がマンホール50に対しヒンジで取り付けられ、開閉できるが取り外すことができないタイプのマンホール50もある。安全防護柵1、2の係止部23、24がフックであってもよいので、このようなマンホール50にも使用することができる。マンホール50が大型で縦長のような場合には、安全防護柵1、2を2つ以上取り付けてもよい。
【0025】
第1実施形態の安全防護柵1では係止部23が全てリング、第2実施形態の安全防護柵2では係止部24が全てフックであったが、リング状の係止部23とフック状の係止部24を混在させてもよい。使用先によってはマンホール50が高温の場合もあるが、安全防護柵1、2は金属製であるので高温状態のマンホール50にも使用することができる。温度が外気温程度のマンホール50を対象とする場合には、第2実施形態の安全防護柵2において、ばね28をゴムとすることもできる。
【0026】
本発明の安全防護柵及び安全防護装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、2本のパイプが連結ピンで回動自在に連結され、パイプの両端に取り付けた係止具を軸線方向に移動可能な特徴部分を変更しない範囲で構成を変更してもよい。また上記実施形態では、開放されたマンホールへの適用例を示したが、本発明の安全防護柵及び安全防護装置は、マンホールに限定されることなく点検口その他の開口部に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1、2 安全防護柵
5 安全防護装置
11 パイプ
13 連結ピン
15 パイプの両端部
17 黄色
18 黒色
21、22 係止具
23、24 係止部
25、26 軸部
28 ばね
31 表示体
33 表示板
35 収納箱
37 収納箱の上部
39 収納箱の表面の周縁部
50 マンホール
52 ボルト
54 座金
56 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に伸縮可能な係止具を両端に有する2本の棒状体を有し、前記2本の棒状体の中心部が連結ピンにより回動自在に連結されていることを特徴とする安全防護柵。
【請求項2】
請求項1に記載の安全防護柵と、
前記安全防護柵の棒状体に係止可能な表示体と、
を含むことを特徴とする安全防護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−46998(P2012−46998A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191592(P2010−191592)
【出願日】平成22年8月28日(2010.8.28)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】