説明

安定なサイトカイン組成物

【課題】タンパク質非共有結合二量体を安定化するための、非タンパク性の安定化剤を開発し、これに基づき、安定なタンパク質非共有結合二量体組成物を提供すること。
【解決手段】カラギナンを含有する、タンパク質非共有結合二量体の安定化剤。タンパク質非共有結合二量体、及び該タンパク質非共有結合二量体を安定化する量のカラギナンを含有する、タンパク質非共有結合二量体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイトカイン等のタンパク質二量体安定化剤、および該安定化剤を含むタンパク質二量体組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質の安定化剤として牛血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、コラーゲン、ゼラチン等がタンパク由来安定化剤として一般的に使用されている(特許文献1〜7)。またグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、糖誘導体アラビン酸およびグリコシルエチル(メタ)アクリレートなどが化学物質由来安定化剤として使用されている(特許文献8〜14)。また天然物由来の多糖類として硫酸化多糖カラギナンが乳安定化剤、コンドロイチン硫酸が食品タンパク質安定化剤、多糖類と機能性天然物成分の組成物、カラギナンオリゴ糖がタンパク質変性抑制剤、硫酸多糖類の抗ウイルス活性としての組成物、抗原性保持とアレルゲン性低減化としてカラギナン結合抗原タンパク質(特許文献15〜19、非特許文献1)が公開されている。カラギナンは増粘剤として食品や化粧品に添加されておりヒトの摂取が日常行われている。また医薬品製剤でゼラチンフリーのドラッグデリバリーソフトカプセルの製造に利用されている。しかしながら硫酸化多糖類についてはタンパク質構造安定化の直接的根拠は明らかとされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-238392号公報
【特許文献2】特開平11-12196号公報
【特許文献3】特開平5-78259号公報
【特許文献4】特開昭60-228422号公報
【特許文献5】特開昭60-260523号公報
【特許文献6】特開昭61-137828号公報
【特許文献7】特開昭60-34919号公報
【特許文献8】特開2009-34095号公報
【特許文献9】特開2009-2709号公報
【特許文献10】特開2002-20319号公報
【特許文献11】特開2000-81435号公報
【特許文献12】特開平11-246597号公報
【特許文献13】特開平10-237095号公報
【特許文献14】特開昭58-092691号公報
【特許文献15】特開2009-118742号公報
【特許文献16】特開2003-70424号公報
【特許文献17】特開2002-360161号公報
【特許文献18】特開平6-80583号公報
【特許文献19】特開平6-228201号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】カラギナンの特性と利用法、林良純、SENI GAKKAISHI(繊維と工業)Vol.65, No11, p.412-421, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ヒトおよびウシ由来のアルブミン、コラーゲン、ゼラチンはタンパク質で、医薬品、医薬部外品、化粧品に添加されていたが、プリオンタンパク質の混入のリスクから医薬品、医薬部外品、化粧品、食品への添加は回避される様になった。そのためタンパク質性の安定化剤の利用が制限されている。組換えアルブミンや組換えコラーゲンの利用が考えられるがそれらの製品は市場に出たばかりで、その利用の汎用性は未知である。またタンパク質性の安定化剤の使用を回避する必要性もある。タンパク質医薬品や医薬部外品および化粧品の経口による粘膜投与法や皮膚塗布投与法では、投与するタンパク質の活性型構造が維持されることが必要でありかつ投与が安全で無味・無臭で行われることが望ましい。しかしすでに開示されている技術ではその効果が本目的を十分満たしていない。
【0006】
また、IL−10等のサイトカインは非共有結合により二量体を形成することにより初めて生物学的な活性を発揮する。このようなタンパク質非共有結合二量体を安定化する技術は、ほとんど知られていない。
【0007】
本発明の目的は、タンパク質非共有結合二量体を安定化するための、非タンパク性の安定化剤を開発し、これに基づき、安定なタンパク質非共有結合二量体組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来のタンパク質の安定化剤の問題点に鑑み、サイトカインの粘膜投与および皮膚塗布投与の製品化にかかわる非タンパク性タンパク質安定化剤の研究を鋭意行った。その結果紅藻類由来カラギナン水溶性ゲル中でサイトカインとして用いたインターロイキン−10(IL−10)の非共有結合二量体が解離せず安定であることを見出した。
【0009】
即ち、IL−10を非タンパク質性の種々の化学物質および天然由来糖類の水溶液に溶解し、クロスリンク法により非共有結合二量体を架橋した後、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、IL−10の非共有結合二量体と解離した単量体を検出及び定量することにより、IL−10を安定化する物質のスクリーニングを行った。紅藻類の成分であるカラギナン水溶性ゲル中での長期室温保存、および4℃と40℃の低温/高温サイクルによる耐性試験の結果、カラギナン水溶性ゲル中でIL−10非共有結合二量体が長期間安定であることを見出し、カラギナンがタンパク質非共有結合二量体の安定化剤であることを明らかとした。これらの知見に基づき、更に検討を重ねた結果、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明は以下に関する。
[1]カラギナンを含有する、タンパク質非共有結合二量体の安定化剤。
[2]タンパク質がサイトカインである、[1]記載の安定化剤。
[3]サイトカインがIL−10である、[2]記載の安定化剤。
[4]タンパク質非共有結合二量体、及び該タンパク質非共有結合二量体を安定化する量のカラギナンを含有する、タンパク質非共有結合二量体組成物。
[5]カラギナン含有量が、1.17重量%以上である、[4]記載の組成物。
[6]タンパク質がサイトカインである、[4]記載の組成物。
[7]サイトカインがIL−10である、[6]記載の組成物。
[8]タンパク質非共有結合二量体に、該タンパク質非共有結合二量体を安定化する量のカラギナンを添加することを含む、該タンパク質非共有結合二量体の安定化方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、IL−10等のタンパク質非共有結合二量体を安定化することが可能となる。また、本発明によれば、IL−10等のタンパク質非共有結合二量体を含有する安定なタンパク質非共有結合二量体組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】カラギナン中でのインターロイキン10の安定性。1mg/ml(レーン1、2、3、4)あるいは0.2mg/ml(レーン5、6)のインターロイキン10に対して9倍容のPBSに溶解した1.3%カラギナン(レーン1、3、5)あるいはPBS(レーン2、4、6)を混ぜ、30〜90日間室温に置いた。クロスリンクのため等量の1mM BS3を加え、SDSサンプルバッファーを加えることで反応を停止した。0.625μgのインターロイキン10を各レーンに泳動し、SDS−PAGEとウエスタンブロッティングによりインターロイキン10を分析した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明はカラギナンを含有する、タンパク質非共有結合二量体の安定化剤を提供するものである。
【0014】
タンパク質非共有結合二量体とは、二つのタンパク質が非共有結合を介して結合することにより形成されたタンパク質の二量体を意味する。非共有結合としては、水素結合、静電結合、ファン・デル・ワールス力、疎水結合等が挙げられるが、これらに限定されない。二量体には、ホモ二量体及びヘテロ二量体が包含される。
【0015】
非共有結合二量体を形成するタンパク質としては、サイトカイン、酵素、受容体等が挙げられるが、これらに限定されない。非共有結合二量体を形成するタンパク質は好ましくはサイトカインである。非共有結合二量体を形成するサイトカインとしては、インターロイキン−10(IL−10)、インターフェロン−γ(IFN−γ)等が挙げられるが、これらに限定されない。IL−10及びIFN−γは、ホモ二量体を形成する。サイトカインは、好ましくはIL−10である。
【0016】
一態様において、本発明に用いられるタンパク質は、哺乳動物由来である。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目、イヌ、ネコ等のネコ目、ヒト、サル、アカゲザル、カニクイザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることが出来る。哺乳動物は、好ましくはげっ歯類(マウス等)又は霊長類(ヒト等)であり、最も好ましくはヒトである。本発明に用いられるタンパク質について、「生物X由来」とは、該タンパク質のアミノ酸配列が、生物Xにおいて天然に発現している該タンパク質のアミノ酸配列と同一又は実質的に同一のアミノ酸配列を有することを意味する。「実質的に同一」とは、着目したアミノ酸配列又は核酸配列が、生物Xにおいて天然に発現している因子のアミノ酸配列又は核酸配列と70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上)の同一性を有しており、且つ当該タンパク質の機能が維持されていることを意味する。
【0017】
一態様において、ヒト由来のIL−10は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む。
【0018】
本発明において用いられるタンパク質非共有結合二量体は、好ましくは単離されている。「単離」とは、目的とする成分以外の因子を除去する操作がなされ、天然に存在する状態を脱していることを意味する。「単離されたタンパク質非共有結合二量体」の純度(総タンパク質重量に占めるタンパク質非共有結合二量体重量の百分率)は、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは実質的に100%である。
【0019】
本発明で用いられるタンパク質非共有結合二量体は、天然物からの抽出物、及び組換えDNA技術を利用して製造されたもののいずれであってもよい。
【0020】
本明細書において、「タンパク質非共有結合二量体の安定化」とは、タンパク質が変性し本来の構造を失い、非共有結合二量体が解離して単量体となることにより、或いは変性したタンパク質が凝集し多量体を形成するなどして、タンパク質非共有結合二量体の生物学的な活性が低下するのを抑制することを意味する。タンパク質非共有結合二量体の安定化効果は、例えば、タンパク質非共有結合二量体の緩衝液(例、PBS)中の水溶液を、室温(25℃)において30〜90日間静置した後で、Syto, et al., Biochemistry 37, 16943-51 (1998)に記載された方法でクロスリンク反応を行い、反応生成物をSDS−PAGEにて分離し、ウエスタンブロッティングによりタンパク質非共有結合二量体、該タンパク質の単量体、及び変性したタンパク質が結合して形成される高分子体のそれぞれのバンドの強度を測定することにより、評価することができる。
【0021】
本発明で用いられるカラギナンには、カッパカラギナン、イオタカラギナン、及びラムダカラギナンが包含される。カッパカラギナン、イオタカラギナン、及びラムダカラギナンの代表的な構造式を以下に示す。
【0022】
【化1】

【0023】
カラギナンは、基本構造として、D−ガラクトースの繰り返し構造を有し、硫酸エステル残基の数で種類が分類されている。また、硫酸エステル残基の数とゲル化の程度が関連している。本発明においては、カッパカラギナン、イオタカラギナン、及びラムダカラギナンからなる群から選択されるいずれか1種を単独で、或いはこれらの群から選択される2種又は3種を組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明で用いられるカラギナンは、好ましくは単離されている。「単離されたカラギナン」の純度(総重量に占めるカラギナン重量の百分率)は、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは実質的に100%である。
【0025】
タンパク質非共有結合二量体に、該タンパク質非共有結合二量体を安定化する量のカラギナンを添加することにより、該タンパク質非共有結合二量体が安定化される。本発明はこのようなタンパク質非共有結合二量体の安定化方法をも提供する。カラギナンの添加量は、タンパク質非共有結合二量体を安定化するのに十分な量である限り、特に限定されないが、一態様において、タンパク質非共有結合二量体にカラギナンを添加することにより得られる組成物中の、カラギナンの含有量が、0.1重量%以上、好ましくは1.17重量%以上である。該組成物中のカラギナン含有量の上限は、カラギナンのゲル化速度、溶解性等の観点から、3重量%以下とすることが好適である。好ましい態様において、該組成物中、タンパク質非共有結合二量体 1重量部に対して、カラギナンが12〜2925重量部、好ましくは117〜585重量部含まれる。
【0026】
カラギナンにより、タンパク質非共有結合二量体の安定性が向上するため、タンパク質非共有結合二量体の比較的高温(例、0〜37℃、好ましくは20〜25℃)での保存が可能となる。従って、上記本発明の方法は、このような比較的高温条件下(例、0〜37℃、好ましくは20〜25℃)でのタンパク質非共有結合二量体の保存方法でもあり得る。
【0027】
また、本発明は、タンパク質非共有結合二量体、及び該タンパク質非共有結合二量体を安定化する量のカラギナンを含有する、タンパク質非共有結合二量体組成物を提供するものである。
【0028】
「タンパク質非共有結合二量体」、「安定化」、及び「カラギナン」の各用語の定義は上述の通りである。
【0029】
本発明の組成物の形態は、通常、液状、ゲル状、ペースト状、クリーム状又は固形状である。本発明において、「液状」とは液体状又は流体状をいい、若干の粘性を有する状態も含まれる。「ゲル状」とは、液体を分散媒とするコロイドであるゾルが、流動性を失った状態をいう。「ペースト状」とは、高粘性を有するが流動性のある不定形の状態をいう。「クリーム状」とは、流動性があり、不定形の乳化物をいう。「固形状」とは、通常医薬品や化粧料を使用する温度範囲(0〜50℃)で固化し、流動性を有さない状態をいう。
【0030】
本発明の組成物中の、タンパク質非共有結合二量体の含有量は、本発明の組成物中で該タンパク質非共有結合二量体が安定に存在し得る量であれば特に限定されないが、通常、0.0001〜5重量%、好ましくは0.1〜1重量%である。
【0031】
本発明の組成物中の、カラギナンの含有量は、タンパク質非共有結合二量体を安定化するのに十分な量である限り、特に限定されないが、一態様において0.1重量%以上、好ましくは1.17重量%以上である。本発明の組成物中のカラギナン含有量の上限は、カラギナンのゲル化速度、溶解性等の観点から、3重量%以下とすることが好適である。好ましい態様において、本発明の組成物中、タンパク質非共有結合二量体 1重量部に対して、カラギナンが12〜2925重量部、好ましくは117〜585重量部含まれる。
【0032】
本発明の組成物においては、タンパク質非共有結合二量体が安定化されている。例えば、本発明の組成物を、室温(25℃)において30日間保存した後で、Syto, et al., Biochemistry 37, 16943-51 (1998)に記載された方法でクロスリンク反応を行い、反応生成物をSDS−PAGEにて分離し、ウエスタンブロッティングによりタンパク質非共有結合二量体、該タンパク質の単量体、及びタンパク質非共有結合二量体同士が結合して形成される高分子体のそれぞれのバンドの強度を測定する。その結果、タンパク質非共有結合二量体の含有量が、保存開始前の通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。
【0033】
本発明の組成物は、安定であり、長期間の保存に適しているため、タンパク質非共有結合二量体を有効成分として含有する医薬品、医薬部外品、化粧品、食品等として有用である。
【0034】
本発明の組成物を医薬品又は医薬部外品として用いる場合、その剤型は、医薬製剤一般の剤型を制限なく採用することができ、具体的には、例えば、顆粒剤、細粒剤、錠剤、散剤、カプセル剤、チュアブル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、軟膏等が挙げられる。上述のように、カラギナンにより、特に、タンパク質非共有結合二量体の水中での安定性が向上する。従って、本発明の組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、軟膏、座剤等(好ましくは、水性の液剤、懸濁剤、乳剤、軟膏等)としての使用に有利である。また、カラギナンによりタンパク質非共有結合二量体の比較的高温での保存が可能となる。従って、本発明の組成物は、比較的高温での保存や使用が予想される適用態様(例、経口による粘膜投与、皮膚塗布投与等)における使用に有利である。上述の剤型は、常法により製剤化することができ、製剤上の必要に応じて、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、コーティング剤、着色剤、凝集防止剤、吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤、香料、甘味剤、保存剤、抗酸化剤などの通常の添加剤を適宜配合することができる。
【0035】
賦形剤は特に限定されず、例えば、白糖、乳糖、ブドウ糖、コーンスターチ、マンニトール、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。
【0036】
崩壊剤は特に限定されず、例えば、澱粉、寒天、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、トラガントなどが挙げられる。
【0037】
滑沢剤は特に限定されず、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸マグネシウム、オレイン酸、オレイン酸カリウム、カプリル酸、フマル酸ステアリルナトリウム、パルミチン酸マグネシウムまたはそのような潤滑剤の配合物等が挙げられる。
【0038】
結合剤は特に限定されず、例えば、デンプン及びその誘導体(アルファー化デンプン、デキストリン等)、セルロース及びその誘導体(エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、糖類(ブドウ糖、白糖等)、エタノール、ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0039】
コーティング剤は特に限定されず、例えば、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)、セラック、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピリジン類(ポリ−2−ビニルピリジン、ポリ−2−ビニル−5−エチルピリジン等)、ポリビニルアセチルジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコールフタレート、メタアクリレート・メタアクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0040】
着色剤は特に限定されず、医薬品あるいは食品に添加することが許可されているものなどを使用することができ、例えば、青色1号、黄色4号、緑色3号、赤色5号、レーキ色素、二酸化チタン、赤キャベツ色素、紅麹色素、ムラサキイモ色素、クチナシ色素、コチニール色素などが挙げられる。
【0041】
凝集防止剤は特に限定されず、医薬品あるいは食品に添加することが許可されているものを使用することができ、例えば、ステアリン酸、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ酸等などが挙げられる。
【0042】
吸収促進剤は特に限定されず、例えば、高級アルコール類、高級脂肪酸類、グリセリン脂肪酸エステルなどの界面活性剤などが挙げられる。
【0043】
溶解補助剤は特に限定されず、例えば、アジピン酸、L−アルギニン、安息香酸ナトリウム、安息香酸ベンジル、エステル化トウモロコシ油、エタノール、塩化マグネシウム、塩酸、オリーブ油、カルメロースナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、希塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、グリシン、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ゲラニオール、ゴマ油、酢酸フタル酸セルロース、サリチル酸ナトリウム、酸化マグネシウム、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン、ジブチルヒドロキシトルエン、酒石酸、ショ糖脂肪酸エステル、水酸化ナトリウム、セスキオレイン酸ソルビタン、ソルビタン脂肪酸エステル、D−ソルビトール、D−ソルビトール液、ダイズ油、大豆レシチン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリアセチン、トリオレイン酸ソルビタン、ニコチン酸アミド、乳酸、濃グリセリン、白銅、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒマシ油、氷酢酸、ブドウ糖、プロピレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポビドン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリソルベート、ポリビニルアルコール、マクロゴール、D−マンニトール、ミリスチン酸イソプロピル、無水エタノール、無水クエン酸、モノオレイン酸ソルビタン、ラウリルマクロゴール、リドカイン、リン酸、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素カリウムなどが挙げられる。
【0044】
安定化剤は特に限定されず、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチルなどが挙げられる。
【0045】
香料は特に限定されず、例えば、メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3,1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルエチニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラゾン、エチルラクテート、エチルチオアセテートなどの単品香料、更に、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウインターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミール油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワーなどの天然香料、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバーなどの調合香料などが挙げられる。
【0046】
甘味剤は特に限定されず、例えば、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビオサイド、ステビアエキス、パラメトキシシンナミックアルデヒド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチンなどが挙げられる。
【0047】
保存剤は特に限定されず、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、エタノール、エデト酸ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム、クエン酸、グリセリン、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、D−ソルビトール、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、プロピレングリコール、リン酸などが挙げられる。
【0048】
抗酸化剤は特に限定されず、例えば、クエン酸、クエン酸誘導体、ビタミンCおよびその誘導体、リコペン、ビタミンA、カロテノイド類、ビタミンBおよびその誘導体、フラボノイド類、ポリフェノール類、グルタチオン、セレン、チオ硫酸ナトリウム、ビタミンEおよびその誘導体、αリポ酸およびその誘導体、ピクノジェノール、フラバンジェノール、スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、グルタチオン還元酵素、カタラーゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0049】
本発明の組成物を化粧品として用いる場合、その種類に特に制限はなく、例えば美肌用等の基礎化粧料や、各種メーキャップ化粧料(その化粧のりをよくするためのアンダーメーキャップ化粧料を含む)等を例示することができる。
【0050】
本発明の化粧品組成物には、界面活性剤、保湿剤、細胞賦活剤、抗酸化剤、防腐剤、着色剤、香料等の他の化粧品用原料を含有させることができる。
【0051】
界面活性剤としては、N−アシルアスパラギン酸ナトリウム、N−アシルグルタミン酸ナトリウム、N−アシルメチルアラニン、ラウリル硫酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド等の非イオン性界面活性剤、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等の両性界面活性剤などが挙げられる。
【0052】
保湿剤としては、グリセリン、1,3−ブタンジオール等の多価アルコール類、アスパラギン酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸ナトリウム等のアミノ酸類、加水分解コラーゲン、加水分解卵殻膜等のタンパク質加水分解物、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類、酵母エキス、各種植物エキス、海藻エキスなどを挙げることができる。
【0053】
抗酸化剤としては、DL−α−トコフェロール、D−δ−トコフェロール、酢酸トコフェロール等のビタミンE類、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩等のアスコルビン酸類、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
【0054】
防腐剤としては、安息香酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル等のパラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール、プラトニンなどが挙げられる。
【0055】
着色剤としては、酸化亜鉛、酸化チタン等の白色顔料、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄等の着色顔料、赤色202号、赤色220号、黄色4号、黄色205号、青色404号等のタール色素、クチナシ色素、ムラサキ根エキス等の天然色素などが挙げられる。本発明の化粧品組成物には、通常0.0001〜2重量%程度を含有させることができる。
【0056】
香料としては、メントール、ハッカ油、バニリン、チョウジ抽出物、ラベンダー抽出物等が挙げられる。
【0057】
本発明の組成物を食品として用いる場合、その食品の形態は、特に限定されず、例えば、適当な風味を加えてドリンク剤、例えば清涼飲料、粉末飲料とすることができる。具体的には、ジュース、牛乳、菓子、ゼリーとして飲食することができる。また、このような食品を保健機能食品として提供することも可能であり、この保健機能食品には、特定の疾患や症状の予防や治療に用いるものであるという表示を付した飲食品、特に保健機能食品、特定保健用食品、栄養機能食品なども含まれる。
【0058】
さらに、本発明の食品組成物を濃厚流動食や、食品補助剤として利用することも可能である。食品補助剤として使用する場合、例えば錠剤、カプセル、散剤、顆粒、懸濁剤、チュアブル剤、シロップ剤等の形態に調製することができる。本発明における食品補助剤とは、食品として摂取されるもの以外に栄養を補助する目的で摂取されるものをいい、栄養補助剤、サプリメントなどもこれに含まれる。
【0059】
本明細書中で挙げられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
【0060】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0061】
カラギナンのタンパク質安定化能力
カラギナンのタンパク質安定化能力を評価するため、サイトカインIL−10を用いた。IL−10は18.5kDaの二つの単量体からなり、37kDaの非共有結合二量体を形成する (Syto, et al., Biochemistry 37, 16943-51 (1998))。単量体は2つの分子内ジスルフィド結合を持つが単体では安定に存在できず、活性も持たない。一方、生物活性を持つ二量体は非共有結合による二つの単量体からなり、安定に存在し得る。このように生物活性と構造は緊密に関連している。非共有結合二量体は生化学的なクロスリンク法(Syto, et al., Biochemistry 37, 16943-51 (1998))により簡単に検出できる。このようにIL−10はタンパクの安定性の研究に適している。
【0062】
1mg/ml及び0.2mg/mlのIL−10水溶液をそれぞれ9倍容の1.3(w/v)%イオタカラギナン水溶液と混ぜ、30〜90日間室温に置いた。尚、容易に検出できるように、ヒスタグにより標識されたIL−10を試験に使用した。IL−10のクロスリンク法は、マイナーな変更があるものの、基本的にSyto et al.,に従い実施した(Syto, et al., Biochemistry 37, 16943-51 (1998))。クロスリンクは、IL−10水溶液に対して、等容の0.2M 重炭酸ナトリウム水溶液(pH8.5)中の1mM ビススルフォサクシニミジルスベラート(BS3)(Thermo Scientific)溶液を加え、室温で30分反応させることにより行った。クロスリンク反応はSDSサンプルバッファーを加えることで停止した。タンパク質を、10%アクリルアミドゲルを用いたSDS−PAGEにより分離した。泳動後、ゲル中のタンパク質をPDVF膜(Immun-Blot, Bio-Rad, Hercules, CA)に転写した。PDVF膜を抗ヒスタグ抗体(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)及びパーオキシダーゼコンジュゲート二次抗体(Dako Denmark A/S, Glostrup, Denmark)と反応させた。シグナルはECL Plus Western blotting detection system(GE Healthcare UK Ltd, Little Chalfont Buckinghamshire, England)を用い、ChemiDoc XRS (Bio-Rad)により画像を解析した。
【0063】
図1に示す通り、30〜90日間カラギナンで処理したサンプルと、処理をしていないサンプルの双方で37kDaの二量体のバンドが確認された。クロスリンク処理をしていないサンプル(レーン1及び2)ではほとんどのIL−10分子が単量体であった。この結果は、長期の保存により、化学修飾による二量体が生じなかったことを示す。90日の実験期間中、顕著な単量体や高分子のバンドの増加は見られなかった。これらの結果から、カラギナンがIL−10の非共有結合二量体構造を安定化する働きがあることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、IL−10等のタンパク質非共有結合二量体を安定化することが可能となる。また、本発明によれば、IL−10等のタンパク質非共有結合二量体を含有する安定な、タンパク質非共有結合二量体組成物が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラギナンを含有する、タンパク質非共有結合二量体の安定化剤。
【請求項2】
タンパク質がサイトカインである、請求項1記載の安定化剤。
【請求項3】
サイトカインがIL−10である、請求項2記載の安定化剤。
【請求項4】
タンパク質非共有結合二量体、及び該タンパク質非共有結合二量体を安定化する量のカラギナンを含有する、タンパク質非共有結合二量体組成物。
【請求項5】
カラギナン含有量が、1.17重量%以上である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
タンパク質がサイトカインである、請求項4記載の組成物。
【請求項7】
サイトカインがIL−10である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
タンパク質非共有結合二量体に、該タンパク質非共有結合二量体を安定化する量のカラギナンを添加することを含む、該タンパク質非共有結合二量体の安定化方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−250944(P2012−250944A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125772(P2011−125772)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(509015958)株式会社プリベンテック (2)
【Fターム(参考)】