説明

安定なナノ粒子処方物

本発明は、難溶性の原薬の薬学的に安定なナノ粒子処方物、このような処方物の調製法、及びその使用法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難溶性の原薬(drug substance)の薬学的に安定なナノ粒子処方物に関する。本発明はまた、そのような処方物の調製法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的に活性な多くの化合物を処方する際の大きな問題は、水に対するそれらの難溶性又は不溶性である。水不溶性の又は難溶性の生物学的に活性な薬剤の経口処方物は、不十分かつ不安定な生物学的利用能(バイオアベイラビリティ)を示す場合が多い。結果として、多くの場合、有効成分の表面積を最大限に、従って、その生物学的利用能及び溶解速度を最大限にするために、薬物の小粒子の処方物が必要とされる。原薬のナノ粒子(一般的に約1000ナノメートル(nm)未満の平均径を有する粒子である)を懸濁状態で含有する組成物は、難溶性の原薬の生物学的利用能を向上させることに成功することが示されている。
【0003】
水不溶性の又は難溶性の活性物質が処方したときに安定であることが望ましい。どのような懸濁物でも、特にナノ粒子懸濁物(ナノ懸濁物)には2つの不安定化プロセスが存在し、懸濁物をこれらに対して安定化させる必要がある。これらのプロセスとは、粒子の凝集又はフロキュレーション、及びオストワルド熟成による粒子の成長であり、これらは保存時の温度の変動による溶解度の変化に起因する。その薬物の溶解度の温度感受性が高ければ高いほど、その懸濁物はオストワルド熟成による粒子成長を起こし易い。従来のナノ懸濁物(一般的には液体媒中の懸濁物)は、薬物粒子表面に吸着された表面改質剤(例えば、非イオン性界面活性剤又はポリマー)により凝集に対する安定化が施されている。このような表面改質剤は、薬物粒子の表面から突き出た表面改質剤のポリマー鎖どうしの立体的相互作用による反発の結果として、その薬物粒子を安定化させる。この効果は、粒子上の界面活性剤/ポリマー吸着層の特性、厚み及び完全性に依存する。また、ポリマー又は非イオン性界面活性剤は結晶表面に網目様の薄膜を形成し、その結晶がその網目の開口部を通してのみ成長することを許容し、それによって結晶の成長を鈍化させるという点で、表面改質剤は結晶の成長に対しても安定化させ得る。その薄膜が凝縮し孔が少なくなればなるほど、その障壁性及び結晶成長に対して粒子を安定化させる能力がますます高くなる。とは言うものの、一定のナノ粒子懸濁処方物は、表面安定化剤又は表面改質剤が存在する場合でさえも、例えば、その処方物が表面安定化剤の曇り点を超える温度に加熱された場合は、有効成分粒子の凝集を起こし得る。それらの曇り点を超える温度で安定化剤はナノ粒子から解離し、未保護の状態のナノ粒子を残して沈降する。その後、未保護のナノ粒子は凝集して粒子のクラスターとなり得る。これを冷却すると、表面安定化剤はその溶液に再溶解し、次いで凝集した粒子を被覆し、それらがより望ましい小粒子へと解離するのを妨げ得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、表面改質剤又は安定化剤の使用を必要としない安定なナノ粒子処方物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、約1000nm未満の平均粒子径を有する難溶性の原薬の粒子及び固体又は半固体の分散媒を含む薬学的に安定なナノ粒子処方物に関する。
本発明はまた、本発明の安定なナノ粒子処方物の製造法及びその使用法も提供する。
【0006】
本発明のナノ粒子処方物の鍵となる特徴は、薬物粒子の表面上に表面改質剤又は安定化剤を吸着させなくとも安定であるそれらの能力である。従来のナノ懸濁物とは異なり、本発明の処方物の安定化機構は、表面現象に関係するものではない。固体又は半固体媒体は、薬物粒子の移動度に対する物理的作用により、凝集に対する安定化剤として作用する。媒体は、室温で固体を形成するか又は非常に粘性のある半固体としての稠度を有する場合、薬物粒子の移動を制止又は鈍化させる、従って薬物粒子が凝集するのを妨げる。一般的に、懸濁物の安定性は、媒体又は分散媒の粘度とともに向上することが知られている。固体又は半固体の媒体はまた、粒子の成長に対する物理的な障壁を形成する。非多孔性の固体又は半固体マトリクスの緊密に詰め込まれた構造は結晶に成長するための空間を与えない。さらに、液体媒体における原薬の溶解性よりも、固体又は半固体マトリクスにおける原薬の溶解性の方が小さな温度変化に対する感受性が小さく、従って半固体又は固体の懸濁物はオストワルド熟成による結晶成長を起こしにくい。
【0007】
本発明の「難溶性の原薬」は、水中での低い溶解度、すなわち生理学的なpH(2〜7.5)で約10mg/ml未満の溶解度を有する原薬である。好ましくは原薬の水溶解度は約5mg/ml未満、より好ましくは約1mg/ml未満、そして最も好ましくは約0.1mg/ml未満である。原薬は、溶融温度で分散媒又は分散マトリクスに懸濁される。従って、本明細書中で使用する場合、難溶性の原薬はまた、溶融温度(すなわち、その固体又は半固体分散媒の融点又はそれ以上の温度)の分散媒における低い溶解度を有する。好ましくは、溶融分散マトリクスにおける原薬の溶解度は約3mg/g未満であり、より好ましくは約1mg/g未満であり、そして最も好ましくは約0.5mg/gである。
【0008】
好ましい実施態様において、本発明のナノ粒子処方物は約1000nm未満、好ましくは約750nm未満、より好ましくは約600nm未満、そして特に約500nm未満の平均粒子径を有する難溶性原薬のナノ粒子を含有する。別の好ましい実施態様において、本発明のナノ粒子処方物は、原薬粒子の少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%が約1000nm未満の粒子径を有する難溶性の原薬を含有する。
【0009】
本発明のナノ粒子処方物における難溶性の原薬の量は、約0.001質量%〜約30質量%の範囲である。好ましい実施態様において、難溶性の原薬の量は約1質量%〜約20質量%の範囲である。
【0010】
本発明のナノ粒子処方物は、好ましくは治療有効量の難溶性の原薬を含有する。本明細書中で使用する場合、用語「治療有効量」は、治療対象の疾患の1つ又はそれ以上の症状の発生を予防するか又はそれをある程度軽減するのに十分な、投与される処方物中に存在する原薬の量を意味する。同様に、治療有効量の薬学的ナノ粒子処方物は、治療対象の疾患の1つ又はそれ以上の症状の発生を予防するか又はそれをある程度軽減するのに十分な、その処方物の量を意味する。有効量又は用量の決定にあっては、哺乳動物の種;その大きさ、年齢及び全般的な健康状態;関係する具体的な疾患;その疾患の併発の程度又は重篤度;個々の患者の反応;投与される特定の化合物;投与様式;投与される製剤の生物学的利用性;選択される投薬計画;併用薬の使用;及びその他の関連する状況を含むがこれらに限定されない多くの要因が担当診断医により考慮される。
【0011】
適切な原薬は、例えば、蛋白質、ペプチド、機能性食品、抗炎症薬、NSAIDS、COX−2阻害薬、鎮痛薬、抗ムスカリン薬及びムスカリン様作用薬、コルチコステロイド、エラスターゼ阻害薬、腫瘍療法薬、抗嘔吐薬、神経保護薬、心血管薬、抗血小板薬、脂質調節薬、抗凝固薬、駆虫薬、抗不整脈薬、心臓変力薬、降圧薬、利尿薬、診断薬、画像診断薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗生物質、抗ミコバクテリア薬、抗痙攣薬、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗腫瘍薬、免疫活性薬、免疫抑制薬、抗甲状腺薬、甲状腺用薬、抗うつ薬、麻酔薬、抗不安薬、睡眠薬、神経弛緩薬、収れん薬、ベータアドレナリン受容体遮断薬、ドパミン作用薬、止血薬、免疫薬(immuriological agent)、筋弛緩薬、副交感神経作用薬、副甲状腺カルシトニン、ビスホスホネート、プロスタグランジン、放射性医薬品、ステロイド、性ホルモン、刺激薬及び食欲抑制薬、交感神経作用薬、抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、血管拡張薬、並びにキサンチンを含む多種の公知の類型の薬物から選択され得る。これら及びその他の適切な薬物の詳細な説明は、例えば、Martindale,The Extra Pharmacopoeia,31st Edition(The Pharmaceutical Press,London,1996)(その開示内容の全体が参照により本明細書に組み込まれる)に見い出され得る。原薬は市販されているし、及び/又は当該分野の公知技術によって製造され得る。
【0012】
本発明の目的上好ましい難溶性の薬物の例には、7−クロロ−N,N,5−トリメチル−4−オキソ−3−フェニル−3,5−ジヒドロ−4H−ピリダジノ[4,5−b]インドール−1−アセトアミド、6−フルオロ−9−メチル−2−フェニル−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)−2,9−ジヒドロ−1H−ピリド[3,4−b]インドール−1−オン、及び2−ブチル−3−[4−[3−(ジブチルアミノ)プロピル]ベンゾイル]−1−ベンゾフラン−5−カルボン酸イソプロピルフマル酸塩が含まれる。
【0013】
7−クロロ−N,N,5−トリメチル−4−オキソ−3−フェニル−3,5−ジヒドロ−4H−ピリダジノ[4,5−b]インドール−1−アセトアミド(以下、「化合物A」)は、以下の化学構造を有する。
【化1】

【0014】
化合物Aは、例えば、神経変性疾患の治療のための神経保護薬として、又は癌の治療のための腫瘍療法薬として有用であり、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,262,045号及び特に米国特許第6,395,729号に記載される基本手順に従って製造され得る。
【0015】
6−フルオロ−9−メチル−2−フェニル−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)−2,9−ジヒドロ−1H−ピリド[3,4−b]インドール−1−オン(以下、「化合物B」)は、以下の化学構造を有する。
【化2】

【0016】
化合物Bは、例えば、不安の治療のための抗不安薬として、又はてんかん、痙縮、若しくは筋拘縮の治療のための抗痙攣薬として有用であり、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,075,021号に記載される基本手順に従って製造され得る。
【0017】
2−ブチル−3−[4−[3−(ジブチルアミノ)プロピル]ベンゾイル]−1−ベンゾフラン−5−カルボン酸イソプロピルフマル酸塩(以下、「化合物C」)は、以下の化学構造を有する。
【化3】

【0018】
化合物Cは、例えば、抗不整脈薬として不整脈の治療又は予防のために有用であり、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2003/0225100号(2003年12月4日公開)及びWO02/16339(2002年2月28日公開)に記載される基本手順に従って製造され得る。
【0019】
本発明のナノ粒子処方物において、原薬は、原薬及び薬物濃度に依存して結晶状態又は非晶質のいずれかであり得る。
【0020】
本発明の分散媒は、経口適用及び/又は局所適用のため等の薬学的製剤に適した、周囲温度では固体又は半固体であるが室温以上で融解する非表面改質物質(すなわち、薬物粒子の表面に吸着しない物質)である。好ましい分散媒は、約30℃〜約110℃で融解する媒体である。他の好ましい媒体は、約30℃〜約80℃で融解する媒体、より好ましくは約35℃〜約60℃で融解する媒体である。分散媒は、上記特性を有する単一物質であっても、又は混合した場合に周囲温度で固体又は半固体になり、好ましくは約110℃未満、より好ましくは約80℃未満、そして最も好ましくは約60℃未満で融解する物質(例えば、油及びろう)の混合物であってもよい。
【0021】
本明細書中で使用する場合、半固体分散媒は、混合した場合に液体及び固体の両方のレオロジー特性を有する物質又は物質の混合物である。放置すると、これらは高い稠度を有し、かつ所定の半固体の特性である「降伏値」として知られる力の最小値を超える力が付与されない限り(例えば、混合、流延(spreading)、又は押し出しにより)流動を始めない。固体はその降伏値を超えるずり応力が付与された場合に変形するが、半固体は降伏値を超えた後により液体に近い振る舞いをし;半固体は流動する。半固体の粘度はずり速度に依存する。好ましい半固体媒体は、ずれ揺変性の、すなわち、ずれの増加に伴ってそれらの粘度が減少する媒体である。粘度はまた温度と共に減少し;物質は室温で固体であり(降伏値を超えるずれ応力で変形し)高温で半固体(降伏値を超えるずれ応力で流動する)か、又は室温で半固体であり高温で液体であり得る。
【0022】
本発明の半固体分散媒は、場合により、所望の稠度及びテクスチャー(texture)プロフィルを生ずる多くの物質を含有し得る。軟膏様の半固体においては、例えば、局所投薬剤形に使用され得る、例えば、鉱油及びワセリン又は混和性ろう(例えば、パラフィンろう)で構成される媒体のように媒体中の全ての物質が混和性(単相媒体)である。好ましい経口用半固体分散媒の例には、植物油(例えば、ダイズ油)又は中鎖トリグリセリドと以下の一つ又はそれ以上の成分との混合物が含まれる:高融点硬化植物油(植物性ステアリン)、ベヘン酸グリセリル(Compritol(R)として販売されている)等の長鎖脂肪酸のエステル、及び/又は可食ろう、例えば、カスターワックス若しくはミツロウ。
【0023】
好ましい分散媒のさらなる例には、硬化植物油(例えば、Stepan Company,Northfield,Illinois製のWecobee(R) S及びAbitec Corporation,Columbus,Ohio製のHydrokoteTM112);トリグリセリド、例えば、硬化ココグリセリド(例えば、Sasol Inc.製のSoftisan(R)142);混合グリセリド;硬化グリセリド;合成グリセリド;分別脂肪酸のグリセリンエステル;脂肪酸の非表面活性エステル、例えば、脂肪酸のプロピレングリコールジエステル;脂肪酸、例えば、ステアリン酸及びパルミチン酸類;ココアバター及びココアバター代用物;ハード脂(hard fat)(例えば、Sasol Inc.製のSoftisan(R)154);天然ろう及び合成ろう;並びにワセリンが含まれる。
【0024】
本発明によるナノ粒子処方物は、場合により、当該分野で一般的に使用されるさらなる非表面改質性の添加剤を含み得る。このような添加剤には、使用する投与経路及び剤形によって、一つ又はそれ以上の賦形剤、甘味剤、着香剤、着色剤、保存剤、緩衝剤、及びその他の添加剤が含まれ得る。
【0025】
本発明の処方物は、一般論として、当該技術分野で公知の従来の経路により、哺乳動物、例えばヒトを含むがこれらに限定されない患者に投与される。例えば、処方物は患者に対して、例えば、ゼラチン硬カプセル若しくはゼラチン軟カプセル、錠剤、カプレット、若しくは懸濁液の形態で経口的に;例えば、錠剤、坐剤若しくは膣坐剤、パスタ、軟膏、ローション、若しくは懸濁液の形態で直腸的若しくは経膣的に;又は、例えば、パスタ、軟膏、ローション、若しくは懸濁液の形態で局所的に投与され得る。
【0026】
本発明の好ましい実施態様は、難溶性の原薬及び局所投与用の半固体分散媒を含む、軟膏又はパスタの形態のナノ粒子処方物を包含する。
【0027】
本発明はさらに、医薬における本発明のナノ粒子処方物の使用に関する。
【0028】
別の実施態様において、本発明は、有効量の本発明のナノ粒子処方物を患者に投与することからなる、本発明の薬学的ナノ粒子処方物を用いて患者、例えば、ヒト等の哺乳動物を治療する方法に関する。
【0029】
本発明の好ましい方法は、神経変性疾患又はがんを治療する方法であって、そのような処置が必要な患者に治療有効量の本発明の薬学的ナノ粒子処方物を投与することからなり、本発明の薬学的ナノ粒子処方物における難溶性の原薬は、7−クロロ−N,N,5−トリメチル−4−オキソ−3−フェニル−3,5−ジヒドロ−4H−ピリダジノ[4,5−b]インドール−1−アセトアミドである、方法に関する。
【0030】
本発明の別の好ましい方法は、不安、てんかん、痙縮、若しくは筋拘縮を治療又は予防する方法であって、そのような治療又は予防が必要な患者に治療有効量の本発明の薬学的ナノ粒子処方物を投与することからなり、本発明の薬学的ナノ粒子処方物における難溶性の原薬は、6−フルオロ−9−メチル−2−フェニル−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)−2,9−ジヒドロ−1H−ピリド[3,4−b]インドール−1−オンである、方法である。
【0031】
本発明の別の好ましい方法は、不整脈を治療又は予防する方法であって、そのような治療又は予防が必要な患者に治療有効量の本発明の薬学的ナノ粒子処方物を投与することからなり、本発明の薬学的ナノ粒子処方物における難溶性の原薬は、2−ブチル−3−[4−[3−(ジブチルアミノ)プロピル]ベンゾイル]−1−ベンゾフラン−5−カルボン酸イソプロピルフマル酸塩である、方法である。
【0032】
本発明の主題は、神経変性疾患又はがんの治療のための医薬の製造における、難溶性の原薬が7−クロロ−N,N,5−トリメチル−4−オキソ−3−フェニル−3,5−ジヒドロ−4H−ピリダジノ[4,5−b]インドール−1−アセトアミドである本発明のナノ粒子処方物の使用である。
【0033】
本発明のさらなる主題は、不安、てんかん、痙縮、若しくは筋拘縮の治療のための医薬の製造における、難溶性の原薬が6−フルオロ−9−メチル−2−フェニル−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)−2,9−ジヒドロ−1H−ピリド[3,4−b]インドール−1−オンである本発明のナノ粒子処方物の使用を包含する。
【0034】
本発明のさらなる主題は、不整脈の治療のための医薬の製造における、難溶性の原薬が2−ブチル−3−[4−[3−(ジブチルアミノ)プロピル]ベンゾイル]−1−ベンゾフラン−5−カルボン酸イソプロピルフマル酸塩である本発明のナノ粒子処方物の使用を包含する。
【0035】
別の実施態様において、本発明は、本明細書中に記載されるナノ粒子処方物を含む剤形に関する。剤形には、丸剤、カプセル剤、カプレット剤、錠剤、顆粒剤、懸濁剤、軟膏剤、ローション剤、坐剤、及びパスタ剤からなる群より選択される剤形が含まれるがこれらに限定されない。
【0036】
本発明の処方物が、他の治療薬及び/若しくは予防薬並びに/又は医学的に不適合でない医薬品と共に投与され得ることもまた当業者に明らかであろう。
【0037】
本発明の処方物の全ての成分は、薬学的に許容できるものでなければならない。本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容できる」成分とは、過度の有害な副作用(例えば、毒性、刺激、及びアレルギー反応)を生じず、合理的な利益/リスクの比にふさわしい、ヒト及び/又は他の動物による使用に適した成分である。
【0038】
本発明はさらに、室温で固体又は半固体の溶融分散媒と難溶性の原薬を混合し、その混合物をメディアミル(media milling)に供してナノ粒子処方物を形成することからなる、本発明のナノ粒子処方物の調製法に関する。
【0039】
本発明のナノ粒子処方物の好ましい調製法は、固体又は半固体の分散媒をその分散媒の融点又はそれ以上の温度範囲まで加熱して溶融分散媒を形成する工程;この溶融分散媒と一つ又はそれ以上の難溶性の原薬を混合して混合物を形成する工程;この混合物を複数の粉砕メディアと共にメディアミルに供してナノ懸濁物を形成する工程;及びこのナノ懸濁物を分散媒の融点未満の温度範囲まで冷却する工程を包含する。
【0040】
本発明のナノ粒子懸濁処方物の特に好ましい調製法において、メディアミルに供する工程は、分散媒の融点よりごく僅かに高い温度で行われる。好ましくは、この方法は分散媒の融点より約10℃未満高い温度で、より好ましくは分散媒の融点より約5℃未満高い温度で行われる。
【0041】
本発明の別の局面は、その懸濁物を分散媒の融点未満の温度まで冷却する前に粉砕したナノ懸濁物をカプセルに充填する工程を包含する。本発明のさらなる局面において、粉砕したナノ懸濁物を、冷却前に、当該分野で一般的に使用される一つ又はそれ以上の非表面改質性の薬学的に許容できる固体賦形剤、例えば、ラクトース、マンニトール、及びコーンスターチを用いて直接的に造粒処理して、乾燥工程なしで固体顆粒処方物を生成させる。
【0042】
メディアミル処理は、ナノ粒子懸濁物を調製するための当業者によく知られた方法である。この方法は、好ましくは、複数の粉砕メディア、粉砕しようとする原薬、並びに粉砕メディア及び原薬を懸濁する分散媒を含むミルチャンバーを有するミル、例えば、円筒形容器中で行われる。ミルチャンバーは、場合により、さらに非表面改質性の添加剤を含み得る。チャンバーは、分散媒の融解温度又はそれより僅かに高い温度で維持される。ミルチャンバーの内容物は、粉砕メディアにエネルギーを伝達するアジテーターで撹拌又はかき混ぜられる。加速した粉砕メディアは固体基材を破壊し、削り、砕き、又はそれ以外の方法でそのサイズを減少させるエネルギー衝突を原薬と起こして、薬物の粒子径を全体的に減少させ、薬物の平均粒子径分布を全体的に縮小し得る。排出口のふるい又はスクリーンは粉砕メディアを容器内に留置する。
【0043】
本発明の好ましい方法において、粉砕メディア、分散媒、及び粉砕されている原薬は、破砕された原薬粒子が所望のサイズまで又は到達可能な最小サイズまで小さくなるまで容器内で保持される。ナノ懸濁物(すなわち、分散媒に懸濁した薬物粒子)はその後、ミルチャンバーの排出口のセパレーター又はスクリーンによって粉砕メディアから分離される。
【0044】
本発明の別の好ましい方法において、ミル処理は再循環様式で行われる(連続方式)。再循環様式のミル処理には、粉砕されている原薬のうちの比較的大きな粒子と共に粉砕メディアをミルチャンバー内に保持し、粉砕されている原薬のうちの小さな粒子はミルチャンバー外に通過させるためのセパレーター又はスクリーンが組み入れられる。再循環法においては、しばしばポンプの助けを借りて懸濁物をミルチャンバーから貯留容器に移動させ、その後ミルチャンバーに戻す場合が多い。セパレーター又はスクリーンはミルチャンバーの排出口に設置され得る。
【0045】
本発明の第三の好ましい方法において、ミル処理は、別個の通路において行われる(不連続方式)。不連続方式において、原薬及び分散媒の混合物はミル処理チャンバーを通ってポンプで送り出され、その後シングルパスを構成する別の受取容器に送入される。この方法は、所望の粒子径が達成されるまで繰り返される。
【0046】
粉砕メディアは、一般的に、例えば、砂、鋼、炭化ケイ素、セラミック、ケイ酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム及び酸化イットリウム、ガラス、アルミナ、チタン、並びに架橋ポリスチレン及びメタクリル酸メチル等の特定のポリマー等の多様な高密度で硬い物質から選択される球形又は円筒形のビーズである。ジルコニウム等の金属製粉砕メディアからの金属混入の可能性は、分散媒のみで粉砕メディアのプレコンディショニングを行い、薬物懸濁物をミルに入れる前に初期損耗を起こさせることによって低下され得る。
【0047】
本明細書中で安定なナノ粒子処方物に関して使用する場合、「安定な」は、薬物粒子が粒子間引力により認め得る程度にフロキュレート又は凝集しないか、若しくはそれ以外の方法で経時的に粒子径が有意に増大せず;薬物粒子が化学的安定性を有し;及び/又は薬物粒子の物理的構造が、例えば、非晶質相から結晶相への変換によるなど経時的に変化しない、ナノ粒子処方物を意味する。
【0048】
以下の実施例は本発明をさらに詳説するが、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0049】
実施例1
硬化植物油中の化合物A
まず最初に、候補の分散媒Wecobee(R)S(植物油から誘導のトリグリセリド、融点約44℃)における化合物Aの溶解度を以下の方法により測定した。硬化植物油5グラムを秤量してシンチレーションバイアルに入れ、50℃に加熱した。化合物A 5gを追加し、水浴中で磁気スターラーにより撹拌した。原薬が溶解しなかったので、硬化植物油の総量が10gになるまで追加の硬化植物油を徐々に加えた。この混合物を60℃の水浴中で一晩撹拌した。この混合物を同じ温度で濾過し(濾過組立品をオーブンで60℃まで加熱した)、60℃の硬化植物油中の化合物Aの濾液溶解度を0.48mg/gと測定した。
【0050】
懸濁処方物を調製するために、以下の方法を用いた:1.0mmイットリウム安定化ジルコニアビーズ250mlをDynoMill(KDL型0.3L SSミルチャンバー、Glen Mills製)に装填した。まず、循環水浴温度(シール面の温度を制御する)及び水道水温度(ミルチャンバーの温度を制御する)を50℃に設定し、チャンバー及びビーズを加熱した。ビーズの初期洗浄及びコンディショニングのために、アジテーターを3200rpmで撹拌させながら40ml/分でダイズ油を循環させた。数分後、循環水浴温度を40℃まで下げ、60℃未満に冷却した温度に維持した。水道水温度も45℃に調整した。ダイズ油の後、溶融硬化植物油(Wecobee(R)S)をさらなるコンディショニングのため及び液体油を洗い流すために循環させた。コンディショニング及び洗浄の総時間(ダイズ油及びWecobee(R)S)はおよそ1時間であった。
【0051】
原薬懸濁物は、ホットプレート上、オーバーヘッドミキサー(Lightnin(R)
ブランド)を用い、50℃で溶融させたWecobee(R)S 700gに化合物A 150gを分散させることによって調製した。ミル処理設備から洗浄媒体を引き抜いた後、DynoMillTMを3200rpmで撹拌させながら原薬懸濁物を400ml/分で循環させた。沈降を避けるためにミキサーを用いて懸濁物の撹拌を続けたが、ミル処理の間は加熱しなかった。循環水浴温度及び循環水道水温度をさらに下げて、その温度を55℃付近まで冷却して維持し、製品温度を45℃〜50℃まで冷却し維持した。これらの温度をミル処理期間を通じて維持した。懸濁物は計5時間ミルに供した。ミル処理終了後、懸濁物を貯蔵容器に移動させ、室温に冷却するにまかせた。
【0052】
実施例2
固脂中の化合物B
まず、ダイズ油中の化合物Bの溶解度を、ダイズ油が(目視で)ほぼ透明になるまで、秤量した原薬量にダイズ油を徐々に加えていくことによって視覚的に概算した。油中の原薬の概算値は、追加した総油量から算出した。ダイズ油中の化合物Bの溶解度は1mg/ml未満であり、従って、ダイズ油中での化合物Bの溶解度の低さは同様に固脂中での溶解度の低さにつながると判断された。
【0053】
この懸濁処方物は、縦型ミルを用い、固脂(Softisan(R)154、約53〜58℃の融点範囲を有する硬化パーム油)を用いて調製した。固脂はホットプレート上で加熱して融解させた。1.0mmイットリウム安定化ジルコニアビーズ(20ml)を50mlプラスチックチューブ中、50℃に予備加熱した。化合物Bを2g、その後に溶融した固脂を10ml追加した。このチューブの上部付近を加熱テープで包み、内容物の溶融状態を維持した。この処方物を、縦型ミルを用いて2000rpmで3時間撹拌した。この固脂は比較的高い融点を有するため、ミル処理期間の最後まで加熱テープで加熱し続ける必要があった。加熱をやめると、このチューブの上部で脂肪の固化が起こった。ミル処理の最後に溶融懸濁物をスクリーンにかけ、ミル処理用ビーズを除去した。
【0054】
実施例3
硬化ココグリセリド中の化合物C
媒体(硬化ココグリセリド、Softisan(R)142として販売、約42〜44℃の融点範囲)をホットプレート上で50℃に加熱した。油中での溶解度の低さが一般的に知られている化合物C 2.5gを秤量して50ml遠心チューブに入れ、このチューブを対流式オーブンで50℃に加熱した。1mm超高密度ジルコニウムビーズ20mlを別のチューブで同じ温度に加熱した。このビーズを原薬に追加した後、Softisan(R)142を10mlさらに追加した。チューブの上部付近を加熱テープで包み、温度コントロールを低に設定した。縦型ミルのインペラーをチューブに挿入し、この処方物を2000rpmで3時間混合した。溶融させたSoftisan(R)142をさらに10ml追加し、ガラス棒で混合した。次いでこの溶融懸濁物を予備加熱した濾過組立品を用いて55℃でスクリーンにかけてミル処理用ビーズを除去した。
【0055】
実施例4
実施例1〜3の粒子径の分析
実施例1〜3の粒子径の分析を、Horiba LA−920レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて行った。サンプルの200mg部を最初に50℃の水浴中で加熱し、Aerosol(R)OT−100分散剤(Cytec Industries Inc.から販売されているジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)を含有するダイズ油25mlを追加し、次いでサンプルを撹拌した。このサンプルをこの装置に移し、撹拌し、超音波処理し、そして分析した。実施例1〜3の粒子径の分析結果を以下の表1A、1B、及び1Cに示す。
【0056】
【表1】

【0057】
上記の結果は、本発明の方法が、薬物粒子が1000nm未満の平均粒子径を有するナノ粒子処方物を調製するのに使用できることを実証する。
【0058】
実施例5
実施例1の物理的安定性
実施例1で調製したナノ粒子懸濁物の物理的安定性を測定するために、40℃/75%相対湿度(RH)で3月間、この懸濁物に負荷をかけた。このサンプルを3月の各月の終点で粒子径の安定性について分析した。
【0059】
表2は、負荷をかけたサンプルの粒子径パラメータを初期時点のものと比較して列挙する。
【表2】

【0060】
実施例6
実施例2の物理的安定性
実施例2で調製した組成物の物理的安定性を測定するために、加熱及び冷却を交互に行うことによりこの懸濁物に負荷をかけた;サンプルを1週目は50℃で、2週目は5℃で、3週目は50℃で保存した。このサンプルを3週の終点での粒子径の安定性について分析した。
【0061】
表3は、実施例2の懸濁物の初期の粒子径分布と3週の加熱/冷却負荷終了時の粒子径分布を比較する。
【表3】

【0062】
実施例7
実施例3の物理的安定性
実施例3で調製したナノ粒子処方物の物理的安定性を測定するために、50℃で2週間この処方物に負荷をかけた。表4は、実施例3の処方物の初期の粒子径分布と2週の加熱/冷却負荷終了時の粒子径分布を比較する。
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1000nm未満の平均粒子径を有する難溶性の原薬、固体又は半固体の分散媒、及び場合により非表面改質性の添加剤を含む、薬学的ナノ粒子処方物。
【請求項2】
難溶性の原薬が約750nm未満の平均粒子径を有する、請求項1に記載の処方物。
【請求項3】
難溶性の原薬が約600nm未満の平均粒子径を有する、請求項1に記載の処方物。
【請求項4】
難溶性の原薬の少なくとも95%が、約1000nm未満の粒子径を有する、請求項1に記載の処方物。
【請求項5】
処方物中の難溶性の原薬の量が約0.01質量%〜約30質量%の範囲である、請求項1に記載の処方物。
【請求項6】
処方物中の難溶性の原薬の量が約1質量%〜約20質量%の範囲である、請求項5に記載の処方物。
【請求項7】
非表面改質性の添加剤が非表面修飾性の薬学的に許容できる固体賦形剤である、請求項1に記載の処方物。
【請求項8】
難溶性の原薬が、蛋白質、ペプチド、機能性食品、抗炎症薬、NSAID、COX−2阻害薬、鎮痛薬、抗ムスカリン薬、ムスカリン様作用薬、コルチコステロイド、エラスターゼ阻害薬、腫瘍療法薬、抗嘔吐薬、神経保護薬、心血管薬、抗血小板薬、脂質調節薬、抗凝固薬、駆虫薬、抗不整脈薬、心臓変力薬、降圧薬、利尿薬、診断薬、画像診断薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬、抗生物質、抗ミコバクテリア薬、抗痙攣薬、抗糖尿病薬、抗てんかん薬、抗腫瘍薬、免疫活性薬、免疫抑制薬、抗甲状腺薬、甲状腺用薬、抗うつ薬、麻酔薬、抗不安薬、睡眠薬、神経弛緩薬、収れん薬、ベータアドレナリン受容体遮断薬、ドパミン作用薬、止血薬、免疫薬、筋弛緩薬、副交感神経作用薬、副甲状腺カルシトニン、ビスホスホネート、プロスタグランジン、放射性医薬品、性ホルモン、ステロイド、刺激薬、食欲抑制薬、交感神経作用薬、抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、血管拡張薬、及びキサンチン類からなる群より選択される1つ又はそれ以上である、請求項1に記載の処方物。
【請求項9】
難溶性の原薬が、神経保護薬、抗不整脈薬、抗痙攣薬、及び抗不安薬からなる群より選択される1つ又はそれ以上である、請求項8に記載の処方物。
【請求項10】
難溶性の原薬が、7−クロロ−N,N,5−トリメチル−4−オキソ−3−フェニル−3,5−ジヒドロ−4H−ピリダジノ[4,5−b]インドール−1−アセトアミド、6−フルオロ−9−メチル−2−フェニル−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)−2,9−ジヒドロ−1H−ピリド[3,4−b]インドール−1−オン、及び2−ブチル−3−[4−[3−(ジブチルアミノ)プロピル]ベンゾイル]−1−ベンゾフラン−5−カルボン酸イソプロピルフマル酸塩からなる群より選択される、請求項1に記載の処方物。
【請求項11】
難溶性の原薬が、7−クロロ−N,N,5−トリメチル−4−オキソ−3−フェニル−3,5−ジヒドロ−4H−ピリダジノ[4,5−b]インドール−1−アセトアミドである、請求項10に記載の処方物。
【請求項12】
難溶性の原薬が、6−フルオロ−9−メチル−2−フェニル−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)−2,9−ジヒドロ−1H−ピリド[3,4−b]インドール−1−オンである、請求項10に記載の処方物。
【請求項13】
難溶性の原薬が、2−ブチル−3−[4−[3−(ジブチルアミノ)プロピル]ベンゾイル]−1−ベンゾフラン−5−カルボン酸イソプロピルフマル酸塩である、請求項10に記載の処方物。
【請求項14】
分散媒が、硬化植物油、トリグリセリド、硬化ココグリセリド、混合グリセリド、硬化グリセリド、合成グリセリド、分別脂肪酸のグリセリンエステル、脂肪酸の非表面活性エステル、脂肪酸、ココアバター、ココアバター代用物、ハード脂、天然ろう及び合成ろう、並びにワセリンからなる群より選択される1つ又はそれ以上の物質である、請求項1に記載の処方物。
【請求項15】
分散媒が、硬化植物油、トリグリセリド、硬化ココグリセリド、混合グリセリド、硬化グリセリド、合成グリセリド、分別脂肪酸のグリセリンエステル、脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、その他の脂肪酸の非表面活性エステル、脂肪酸、ココアバター、ココアバター代用物、ハード脂、天然ろう及び合成ろう、並びにワセリンからなる群より選択される1つ又はそれ以上の物質である、請求項10に記載の処方物。
【請求項16】
分散媒が硬化植物油、ハード脂、及び硬化ココグリセリドからなる群より選択される1つ又はそれ以上の物質である、請求項15に記載の処方物。
【請求項17】
分散媒が1つ又はそれ以上の硬化植物油である、請求項11に記載の処方物。
【請求項18】
分散媒が1つ又はそれ以上のハード脂である、請求項12に記載の処方物。
【請求項19】
分散媒が1つ又はそれ以上の硬化ココグリセリドである、請求項13に記載の処方物。
【請求項20】
固体又は半固体の分散媒が2つ又はそれ以上の物質の混合物である、請求項1に記載の処方物。
【請求項21】
治療有効量の請求項1に記載の薬学的ナノ粒子処方物を患者に投与することからなる、患者の治療方法。
【請求項22】
治療有効量の請求項10に記載の薬学的ナノ粒子処方物を患者に投与することからなる、患者の治療方法。
【請求項23】
神経変性疾患又はがんを治療する方法であって、治療有効量の請求項11に記載の薬学的ナノ粒子処方物をそのような治療が必要な患者に投与することからなる、方法。
【請求項23】
不安、てんかん、痙縮、若しくは筋拘縮を治療又は予防する方法であって、治療有効量の請求項12に記載の薬学的ナノ粒子処方物をそのような治療又は予防が必要な患者に投与することからなる、方法。
【請求項24】
不整脈を治療又は予防する方法であって、治療有効量の請求項13に記載の薬学的ナノ粒子処方物をそのような治療又は予防が必要な患者に投与することからなる、方法。
【請求項25】
神経変性疾患又はがんの治療のための医薬の製造における、請求項11に記載の薬学的ナノ粒子処方物の使用。
【請求項26】
不安、てんかん、痙縮、又は筋拘縮の治療のための医薬の製造における、請求項12に記載の薬学的ナノ粒子処方物の使用。
【請求項27】
不整脈の治療のための医薬の製造における、請求項13に記載の薬学的ナノ粒子処方物の使用。
【請求項28】
(a)1つ又はそれ以上の難溶性の原薬と、室温で固体又は半固体の溶融分散媒を混合する工程、及び
(b)混合物をメディアミルに供してナノ粒子処方物を形成する工程、
を含む、請求項1に記載のナノ粒子処方物の調製法。
【請求項29】
(a)固体又は半固体の分散媒を固体又は半固体の分散媒の融点又はそれ以上の第一の温度範囲に加熱して溶融分散媒を形成する工程、
(b)1つ又はそれ以上の難溶性の原薬と溶融分散媒を混合して混合物を形成する工程、
(c)混合物を複数の粉砕メディアと共にメディアミルに供してナノ懸濁物を形成する工程、及び
(d)固体又は半固体の分散媒の融点未満の第二の温度範囲にナノ懸濁物を冷却してナノ粒子処方物を形成する工程、
を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
(a)固体又は半固体の分散媒を固体又は半固体の分散媒の融点又はそれ以上の第一の温度範囲に加熱して溶融分散媒を形成する工程、
(b)1つ又はそれ以上の難溶性の原薬と溶融分散媒を混合して混合物を形成する工程、
(c)混合物を複数の粉砕メディアと共にメディアミルに供してナノ懸濁物を形成する工程、
(d)ナノ懸濁物をカプセルに充填する工程、及び
(e)固体又は半固体の分散媒の融点未満の第二の温度範囲にカプセルを冷却してナノ粒子処方物を形成する工程、
を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
(a)固体又は半固体の分散媒を固体又は半固体の分散媒の融点又はそれ以上の第一の温度範囲に加熱して溶融分散媒を形成する工程、
(b)1つ又はそれ以上の難溶性の原薬と溶融分散媒を混合して混合物を形成する工程、
(c)混合物を複数の粉砕メディアと共にメディアミルに供してナノ懸濁物を形成する工程、及び
(d)非表面改質性の固体添加剤を用いてナノ懸濁物を造粒処理して固体処方物を形成する工程、
を含む、請求項28に記載の方法。

【公表番号】特表2008−540439(P2008−540439A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510185(P2008−510185)
【出願日】平成18年5月3日(2006.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/017059
【国際公開番号】WO2007/086911
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(507363864)サノフィ−アベンティス・ユー・エス・エルエルシー (8)
【Fターム(参考)】