説明

安定なナノ粒子状薬物懸濁液

液状医薬組成物は、約3μmを超えないD90粒径を有するABT−263などの、Bcl−2ファミリータンパク質の固形微粒子状阻害化合物を懸濁させた水性媒質を含み、該水性媒質は、少なくとも1種の薬学的に許容される界面活性剤および少なくとも1種の薬学的に許容される重炭酸ナトリウムなどの塩基化剤を、粒径増加を抑制するのに一緒になって有効である量でさらに含む。該組成物は、1種以上の抗アポトーシス性Bcl−2ファミリータンパク質の過剰発現を特徴とする疾患、例えば、がんを治療するために、それを必要とする対象に経口または非経口で投与するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全開示を参照により本明細書に組み込む2009年6月18日出願の米国特許仮出願第61/218281号に基づく優先権の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、低溶解性の微粒子状薬物化合物を含む液状懸濁液製剤およびこのような製剤を調製する方法に関する。本発明は、特に、Bcl−2ファミリータンパク質を標的とするアポトーシス促進化合物の部類に適用可能であり、そのため、本発明は、さらに、このようなタンパク質の過剰発現を特徴とする疾患を治療するための液状懸濁液製剤の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
アポトーシスの回避は、がんの顕著な特徴である(HanahanおよびWeinberg(2000)Cell 100:57−70)。がん細胞は、正常細胞にアポトーシスをもたらす、DNA損傷、腫瘍遺伝子の活性化、異常な細胞周期の進行および過酷な微小環境などの細胞ストレスによる継続的攻撃に打ち勝たなければならない。がん細胞がアポトーシスを回避する主な手段の1つは、Bcl−2ファミリーの抗アポトーシスタンパク質の上向き制御による。
【0004】
Bcl−2タンパク質のBH3結合溝を占拠する化合物が、例えば、Brunckoら(2007)によってJ.Med.Chem.50:641−662に記載されている。これらの化合物には、次式:
【0005】
【化1】

を有し、ABT−737としても知られる、N−(4−(4−((4’−クロロ−(1,1’−ビフェニル)−2−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)−4−(((1R)−3−(ジメチルアミノ)−1−((フェニルスルファニル)メチル)プロピル)アミノ)−3−ニトロベンゼン−スルホンアミドが含まれていた。
【0006】
ABT−737は、Bcl−2ファミリーのタンパク質(特に、Bcl−2、Bcl−XおよびBcl−w)に高い親和性(<1nM)で結合する。それは、小細胞肺がん(SCLC)およびリンパ系悪性腫瘍に対して単剤活性を示し、他の化学療法剤のアポトーシス促進効果を増強する。ABT−737および関連化合物、ならびにこのような化合物を作製する方法は、Brunckoらによる米国特許出願公開第2007/0072860号中に開示されている。
【0007】
より最近になって、Bcl−2ファミリータンパク質に対して高い結合親和性を有するさらなる一連の化合物が同定されている。これらの化合物およびそれらを作製する方法は、参照によりその全体で本明細書に組み込むBrunckoらの米国特許出願公開第2007/0027135号(本明細書中では「‘135出願公開」と呼ぶ)中に開示されており、後記のそれらの式から構造的にABT−737に関連していることがわかる。
【0008】
‘135出願公開は、Bcl−2ファミリータンパク質の以前から知られている阻害剤は、経口投与後に強力な細胞性効力または高い全身暴露のどちらかを有することができるとはいえ、それらは、双方の特性を所持しないと述べている。化合物の細胞性効力の典型的な尺度は、50%の細胞性効果を誘発する濃度(EC50)である。化合物の経口投与後の全身暴露の典型的な尺度は、経口投与からの時間に対して化合物の血漿中濃度をグラフ化することによって得られる曲線下面積(AUC)である。‘135出願公開中で、以前から知られている化合物は、低いAUC/EC50比を有し、それらが経口で効果的でないことを意味していると述べられている。対比してみると、上式の化合物は、経口投与後の細胞性効力および全身暴露に関して高められた特性を示し、以前から知られている化合物のそれに比べて有意により高いAUC/EC50比をもたらすと述べられている。
【0009】
‘135出願公開中で「実施例1」として識別される1つの化合物は、ABT−263としても知られる、N−(4−(4−((2−(4−クロロフェニル)−5,5−ジメチル−1−シクロヘキサ−1−エン−1−イル)メチル)ピペラジン−1−イル)ベンゾイル)−4−(((1R)−3−(モルホリン−4−イル)−1−((フェニルスルファニル)メチル)プロピル)アミノ)−3−((トリフルオロメチル)スルホニル)ベンゼンスルホンアミドである。この化合物は、974.6g/モルの分子量を有し、次式を有する:
【0010】
【化2】

【0011】
ABT−263は、Bcl−2およびBcl−Xに対して高い親和性(<1nM)で結合し、Bcl−wに対して類似した高い親和性を有すると思われる。そのAUC/EC50比は、‘135出願公開中で56と報告されており、ABT−737に関して報告されているもの(4.5)に比べて1桁を超えて大きい。‘135出願公開によりAUCを測定する場合、各化合物は、ラットに対して、PEG−400(平均分子量が約400のポリエチレングリコール)中に10%のDMSO(ジメチルスルホキシド)を含む媒体中の2mg/mL溶液として経口胃管栄養法によって5mg/kgの単回投与で投与された。
【0012】
経口バイオアベイラビリティー(例えば、静脈内投与後のAUCに対する経口投与後のAUCの比率によって表現されるような)は、‘135出願公開中に報告されていないが、該刊行物から、ABT−737に対してよりもABT−263に対して実質的により大きいと結論付けることができる。
【0013】
最近、Tseらの論文(2008)Cancer Res.68(9):3421−3428は、それへの補足データ中で、イヌモデルにおいて、ABT−263のPEG−400/DMSO中溶液の経口バイオアベイラビリティーは22.4%であり、ABT−263の60%Phosal(商標)PG(ホスファチジルコリン+プロピレングリコール)+30%PEG−400+10%エタノール中溶液のそれは47.6%であることを報告した。
【0014】
酸化反応は、特に溶液状態で製剤化される場合、医薬の重要な分解経路になる。酸化は、分子状酸素による基質の無触媒性自動酸化、光分解性開始、溶血性熱開裂および金属触媒作用を含むいくつかの経路によって起こり得る。種々の官能基が、酸化に対して特定の感受性を示す。とりわけ、チオエーテルは、硫黄原子のα−位での水素引抜きを介してまたはα−ペルオキシルラジカルの直接的付加によってまたはスルフィドをスルフィン、スルホンまたはスルホキシドに変換する1電子移動過程を介して分解することがある(HovorkaおよびSchoneich(2001)J.Pharm.Sci. 90:253−269)。
【0015】
ABT−263を含む‘135出願公開中に開示の化合物によって所持される(フェニルスルファニル)メチル基は、例えば酸素またはスーパーオキシド、過酸化水素またはヒドロキシルラジカルなどの反応性酸素種の存在下で酸化されやすいチオエーテル結合を有することがわかる。‘135出願公開は、そこに開示の化合物を投与するのに有用であるといわれる賦形剤の広範なリスト中の抗酸化剤を包含する。
【0016】
しかし、活性成分の酸化にそれほど敏感でない医薬組成物が有利である。さらに、上記の‘135出願公開またはTseら(2008)の溶液組成物に比べて活性成分のより高い負荷量を可能にする組成物が、さらに有利であろう。
【0017】
ABT−263を含む、水溶性が極めて低い‘135出願公開に含まれる化合物のため、特に、許容される経口バイオアベイラビリティーを維持する必要があり、その経口バイオアベイラビリティーが、胃腸管の水性媒質に対する溶解度に強く依存する場合に、製剤者にとって困難が高まる。貧水溶性の薬物のバイオアベイラビリティーを向上させる取組みとして、粒径の縮小が一般に試みられるが、粒径縮小の極限に相当すると考えられる溶液形態の当該薬物を用いて得られるものと類似したバイオアベイラビリティーを、任意の大きさの固体粒子を用いて達成することは困難であることが多い。
【0018】
貧水溶性薬物粒子の液体媒質中の懸濁液を得ようとする製剤者にとっての別の難題は、懸濁される粒子、特に大きさがおよそ1μm以下の極めて小さな粒子が、例えば粒子の凝集を介して時間とともに粒径の増加を示す傾向があることである。このような粒径増加は、懸濁液を不安定にしおよび/またはそのバイオアベイラビリティーを低下させることがある。界面活性剤などの表面改質剤が、広範に使用されるが、必ずしも成功するとは限らない。WertzおよびRydeに対する米国特許第7459283号には、界面安定化剤としてリソチームを有するナノ粒子状活性薬剤を含む組成物が記載されている。
【0019】
Moeschwitzerら(2004)は、Eur.J.Pharmaceut.Biopharmaceut.58:615−619に、薬物を、8.4%重炭酸ナトリウムおよび1%ポロキサマー188を含む水性媒質中に分散させることによる、オメプラゾールのナノ懸濁液製剤(そこでは、ナノ結晶(直径<1,000nm)の液相への分散液と定義されている)の調製を報告している。物理的安定性の試験は、0℃、3日間での中等度の粒径増加を明らかにし、著者らは、この大きさの増加は、「もちろん、これらのナノ懸濁液が、2年間の長期安定性を所持しないことを示している」と結論付けた。オメプラゾールの化学的安定性は、報告によれば、5mg/mLの水性溶液に対して、50または100mg/mLのナノ懸濁液として製剤化することによって大きく改善され、著者らは、このような安定性について、ナノ粒子の結晶性構造を含む考え得る説明を挙げている。
【0020】
これに関して、ABT−263は、‘135出願公開により調製した場合、それは非晶質固体であり、すなわち、それは、例えばオメプラゾールの結晶性を欠くので、ナノ懸濁液製剤のための貧弱な候補であると思われる。
【0021】
改善された療法が必要とされる疾患の特定の種類が、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。NHLは、米国において6番目に最も広く認められる部類の新たながんであり、主として60−70歳の患者において見出される。NHLは、単一の疾患ではないが、関連疾患のファミリーであり、臨床的特性および組織学を含むいくつかの特徴に基づいて分類される。
【0022】
1つの分類方法は、様々な組織学的サブタイプを、疾患の本来の病歴に基づいて、すなわち、疾患が緩徐進行性であるか侵襲性であるかに基づいて2つの主要範疇に配置する。一般に、緩徐進行性サブタイプは、徐々に成長し、一般には治療不能であり、一方、侵襲性サブタイプは、急速に成長し、治癒できる可能性がある。濾胞性リンパ腫は、最も一般的な緩徐性サブタイプであり、びまん性大細胞型リンパ腫は、最も一般的な侵襲性サブタイプを構成する。腫瘍性タンパク質Bcl−2は、当初、非ホジキンB細胞リンパ腫と記載された。
【0023】
濾胞性リンパ腫の治療は、典型的には、生物学に基づいたまたは併用の化学療法からなる。リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾンとの併用療法(R−CHOP)は、リツキシマブ、シクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾンとの併用療法(RCVP)と同様、定型的に使用される。リツキシマブ(B細胞の表面上で均一に発現されるリンタンパク質CD20を標的とする)またはフルダラビンでの単剤療法も使用される。化学療法レジメンへのリツキシマブの付加は、改善された応答率および増大した無進行性生き残りを提供することができる。
【0024】
放射免疫療法剤、高投与量化学療法および幹細胞移植を利用して、不応性または再発性NHLを治療することができる。現在のところ、治癒をもたらす承認済みの治療レジメンは存在せず、現行ガイドラインは、一次治療の設定においてさえ、患者を臨床試験の文脈で治療することを推奨している。
【0025】
侵襲性大細胞型B細胞リンパ腫を有する患者の一次治療は、典型的には、リツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニゾン(R−CHOP)または投与量を調節したエトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシンおよびリツキシマブ(DA−EPOCH−R)からなる。
【0026】
殆どのリンパ腫は、これらの療法のいずれか1つに始めは応答するが、腫瘍は、典型的には再発し、結局、不応性になる。患者が受け入れるレジメンの数が増加するにつれて、疾患はより化学療法に抵抗性となる。一次治療に対する平均応答は約75%、二次治療に対して60%、三次治療に対して50%、四次治療に対して約35−40%である。多様な再発性設定における単剤で20%にほぼ近い応答率は、肯定的に考えられ、さらなる研究を正当化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0072860号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0027135号明細書
【特許文献3】米国特許第7459283号明細書
【非特許文献】
【0028】
【非特許文献1】HanahanおよびWeinberg(2000)Cell,100:57−70
【非特許文献2】Brunckoら(2007)J.Med.Chem.50:641−662
【非特許文献3】Tseら、(2008)Cancer Res.68(9):3421−3428
【非特許文献4】HovorkaおよびSchoneich(2001)J.Pharm.Sci. 90:253−269
【非特許文献5】Moeschwitzerら(2004)Eur.J.Pharmaceut.Biopharmaceut.58:615−619
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
現行の化学療法剤は、種々の機構を介してアポトーシスを誘導することによってそれらの抗腫瘍応答を誘発する。しかし、多くの腫瘍は、最終的に、これらの薬剤に対して抵抗性となる。Bcl−2およびBcl−Xは、インビトロでの、より最近ではインビボでの短期生き残りアッセイにおいて化学療法抵抗性を付与することが示された。このことは、Bcl−2およびBcl−Xの機能を抑制することを目的にした改善された療法を開発することができれば、このような化学療法抵抗性を、成功裡に克服することができることを示唆している。
【0030】
Bcl−2およびBcl−XなどのBcl−2ファミリータンパク質を標的にするアポトーシス促進薬は、治療上有効な範囲の濃度を維持するために、連続的例えば毎日、血漿中濃度を補充するレジメンにより投与するのが最善である。これは、毎日の非経口、例えば静脈内(i.v.)または腹腔内(i.p.)投与によって達成することができる。しかし、毎日の非経口投与は、臨床環境において、特に外来患者にとって実際的でないことが多い。例えば、がん患者における化学療法としてのアポトーシス促進剤の臨床的有用性を高めるために、許容される経口バイオアベイラビリティーを有するが、溶液製剤に比べて制約が少ない剤形が、極めて望ましい。このような剤形およびその経口投与のためのレジメンは、NHLを含む多くのタイプのがんの治療における重要な進歩を意味し、他の化学療法剤との併用療法をより容易に可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
(発明の要旨)
これより、約3μmを超えないD90粒径を有する固体微粒子状化合物が懸濁されている水性媒質を含む液状医薬組成物が提供され、該化合物は、式I:
【0032】
【化3】

[式中、
は、クロロまたはフルオロであり、
(1)Xは、アゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、1,4−オキサゼパン−4−イル、ピロリジン−1−イル、−N(CH、−N(CH)(CH(CH)、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イルまたは2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イルであり、Rは、
【0033】
【化4】

であり、Xは、−CH−、−C(CH−または−CHCH−であり、
およびXは、双方とも−Hまたは双方ともメチルであり、
は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードであるか、
(2)Xは、アゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、ピロリジン−1−イル、−N(CH)(CH(CH)または7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イルであり、Rは、
【0034】
【化5】

であり、X、XおよびXは、上記の通りであるか、
(3)Xは、モルホリン−4−イルまたは−N(CHであり、Rは、
【0035】
【化6】

であり、Xは上記の通りである。]
の化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物であり;
該水性媒質が、さらに、少なくとも1種の薬学的に許容される界面活性剤および少なくとも1種の薬学的に許容される塩基化剤を、粒径増加を抑制するのに一緒になって有効である量で含む。
【0036】
本発明の組成物は、経口投与用を主として意図しているが、非経口経路を含む他の投与経路に対しても一般には適している。
【0037】
さらに、約3μmを超えないD90粒径を有する微粒子状形態の式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物;ならびに(a)少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の塩基化剤および(b)少なくとも1種の分散剤または増量剤を含む薬学的に許容される賦形剤を含む固形医薬組成物が提供され、前記組成物は水性媒質中に分散可能であり、界面活性剤および塩基化剤が、粒径増加を抑制するのに一緒になって有効である量で存在する懸濁液を提供する。
【0038】
さらに、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物を含む活性医薬成分(API)を準備すること;該APIを少なくとも1種の薬学的に許容される塩基化剤の存在下で約3μmを超えないD90粒径まで湿式粉砕して粉砕された原体を準備すること;および粉砕された原体を少なくとも1種の薬学的に許容される界面活性剤の助けを借りて水性媒質中に懸濁させることを含む医薬組成物を調製する方法が提供され、少なくとも1種の塩基化剤および少なくとも1種の界面活性剤は、生じる懸濁液中に、粒径増加を抑制するのに一緒になって有効である量で存在する。
【0039】
上記実施形態のいずれかにより、薬物化合物またはAPIは、例えば、ABT−263またはその結晶性塩、例えば、ABT−263二塩酸塩(ABT−263bis−HCl)でよい。
【0040】
さらに、疾患を有する対象に治療有効量の前記のような組成物、例えば、ABT−263遊離塩基またはABT−263二塩酸塩を含む組成物などを経口で投与することを含む、アポトーシス機能不全および/または抗アポトーシス性Bcl−2ファミリータンパク質の過剰発現を特徴とする疾患を治療する方法が提供される。このような疾患の例には、がんを含む多くの腫瘍性疾患が含まれる。本発明の方法により治療できるがんの例示的な具体的部類が、非ホジキンリンパ腫(NHL)である。本発明の方法により治療できるがんの別の例示的な具体的部類が、慢性リンパ球性白血病である。本発明の方法により治療できるがんのさらに別の例示的具体的部類が、例えば小児患者における急性リンパ球性白血病である。
【0041】
よりさらに、ABT−263またはその結晶性塩を含む前記のような組成物を、1日あたり約50から約500mgのABT−263遊離塩基に相当する投与量で、約3時間から約7日の平均投与間隔で対象に投与することを含む、ヒトがん患者、例えば、NHL、慢性リンパ球性白血病または急性リンパ球性白血病を有する患者の血流中において、ABT−263および/またはその1種以上の代謝産物の治療上有効な血漿中濃度を維持するための方法が提供される。
【0042】
上記で提供したものより特定の態様を含む本発明のさらなる実施形態は、後に続く詳細な説明中で見出され、またはそれらの詳細な説明から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の組成物(製剤II)および実施例3に記載のようなABT−263二塩酸塩の脂質媒質中比較溶液(製剤C)の、イヌ(そうでないことを示した場合以外は非絶食)への経口投与に続く24時間にわたるABT−263の血漿中濃度をグラフで表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(詳細な説明)
本開示による懸濁液組成物は、ナノ化された固体微粒子状薬物化合物を含む。本明細書に記載の懸濁液中で、薬物のナノ粒子は、感知できるほどには凝集せず、結果として安定な製剤の製造につながることがわかる。
【0045】
文脈がそうでないことを要求しない限り、用語「ナノ粒子」は、本明細書中で使用される場合、約3μm(3,000nm)を超えない大きさ(すなわち、粒子の最長寸法での直径)の粒子を意味する。「ナノ粒子」は、本明細書中で言及する場合、それゆえ、「サブミクロン」粒子、すなわち約1μm未満の大きさを有する粒子のみならず、約1から約3μmの「ミクロン化された」粒子も包含する。同様に、形容詞「ナノ化された」は、本明細書中で使用される場合、直ぐ上で定義したナノ粒子を指す。文脈がそうでないことを要求しない限り、本明細書中の懸濁液またはその他の組成物に適用される場合の用語「ナノ粒子状」、同様に用語「ナノ懸濁液」は、約3μmを超えないD90粒径を有することを意味する。
【0046】
組成物のD90粒径は、当業者に知られたいずれかの通常の粒径測定技術によって測定した場合に、組成物中の90容積%の粒子が、そのパラメーターに比べて、それらの最長寸法においてより小さいようなパラメーターである。このような技術には、例えば、沈降フィールドフロー分別、光子相関分光法、光散乱およびディスク遠心が含まれる。本発明の種々の実施形態において、約3,000nmを超えない、約2,000nmを超えない、約1,500nmを超えない、約1,000nmを超えない、約900nmを超えない、約800nmを超えない、約700nmを超えない、約600nmを超えないまたは約500nmを超えないD90粒径を有する懸濁液が、提供される。
【0047】
組成物のD50粒径は、当業者に知られたいずれかの通常の粒径測定技術によって測定した場合に、組成物中の50容積%の粒子が、そのパラメーターに比べて、それらの最長寸法においてより小さいようなパラメーターである。D50粒径は、それゆえ、容積メディアン粒径の尺度であるが、時には、「平均(average)」または「平均(mean)」粒径と呼ばれる。本発明の種々の実施形態において、約1,000nmを超えない、約900nmを超えない、約800nmを超えない、約700nmを超えない、約600nmを超えない、約500nmを超えない、約400nmを超えない、約350nmを超えないまたは約300nmを超えないD50粒径を有する懸濁液が提供される。
【0048】
特定の実施形態において、本発明の懸濁液は、約1,000nmを超えないD90粒径および約400nmを超えないD50粒径を有する。別の特定の実施形態において、本発明の懸濁液は、約800nmを超えないD90粒径および約350nmを超えないD50粒径を有する。
【0049】
本明細書中で、用語「低溶解度」および「貧溶性」は、約100μg/mLを超えない水への溶解度を指す。本発明は、本質的に非水溶性である薬物、すなわち、約10μg/mL未満の溶解度を有する薬物に対して特に好都合であり得る。理論によって拘束されるものではないが、このような薬物にとってのナノ粒子懸濁液の利点は、部分的には、周知のWhitney−Noyes式により表面積に比例する改善された溶出速度からのみならず、Kelvin式による改善された溶解度からも生じる。これは、増強されたバイオアベイラビリティーをもたらし、また食物効果を潜在的に低減することもができる。
【0050】
多くの化合物の水への溶解度は、pH依存性であること;このような化合物の場合、本明細書中で重要な溶解度は、生理学的に意味のあるpH、例えば約1から約8のpHにおける溶解度であることを認識するであろう。したがって、種々の実施形態において、薬物は、約1から約8のpH範囲の少なくとも1点で約100μg/mL未満の、例えば、約30μg/mL未満のまたは約10μg/mL未満の、水に対する溶解度を有する。例示的には、ABT−263は、pH2で4μg/mL未満の水に対する溶解度を有する。
【0051】
本発明の組成物において、薬物化合物は、前に示したような式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩、もしくは代謝産物である。
【0052】
さらなる実施形態において、化合物は、式I(式中のXはフルオロである。)を有する。
【0053】
よりさらなる実施形態において、化合物は、式I(式中のXはモルホリン−4−イルである。)を有する。
【0054】
よりさらなる実施形態において、化合物は、式Iを有し、式中のRは、
【0055】
【化7】

(Xは、−O−、−CH−、−C(CH−または−CHCH−であり;XおよびXは、双方とも−Hまたは双方ともメチルであり;Xはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)である。この実施形態により例示すれば、Xは、−C(CH−でよく、および/またはXおよびXのそれぞれは、−Hでよく、および/またはXはクロロでよい。
【0056】
よりさらなる実施形態において、化合物は、式Iを有し、式中のRは、
【0057】
【化8】

(Xは、−O−、−CH−、−C(CH−または−CHCH−であり;XおよびXは、双方とも−Hまたは双方ともメチルであり;Xはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)である。この実施形態により例示すれば、Xは、−C(CH−でよく、および/またはXおよびXのそれぞれは、−Hでよく、および/またはXはクロロでよい。
【0058】
よりさらなる実施形態において、化合物は、式I(式中のXは、フルオロであり、Xはモルホリン−4−イルである。)を有する。
【0059】
よりさらなる実施形態において、化合物は、式Iを有し、式I中のXはフルオロであり、Rは、
【0060】
【化9】

(Xは、−O−、−CH−、−C(CH−または−CHCH−であり;XおよびXは、双方とも−Hまたは双方ともメチルであり;Xはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)である。この実施形態により例示すれば、Xは、−C(CH−でよく、および/またはXおよびXのそれぞれは、−Hでよく、および/またはXはクロロでよい。
【0061】
よりさらなる実施形態において、化合物は、式Iを有し、式中のXはモルホリン−4−イルであり、Rは、
【0062】
【化10】

(Xは、−O−、−CH−、−C(CH−または−CHCH−であり;XおよびXは、双方とも−Hまたは双方ともメチルであり;Xはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)である。この実施形態により例示すれば、Xは、−C(CH−でよく、および/またはXおよびXのそれぞれは、−Hでよく、および/またはXはクロロでよい。
【0063】
よりさらなる実施形態において、化合物は、式Iを有し、式中のXはフルオロであり、Xはモルホリン−4−イルであり、Rは、
【0064】
【化11】

(Xは、−O−、−CH−、−C(CH−または−CHCH−であり;XおよびXは、双方とも−Hまたは双方ともメチルであり;Xはフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードである。)である。この実施形態により例示すれば、Xは、−C(CH−でよく、および/またはXおよびXのそれぞれは、−Hでよく、および/またはXはクロロでよい。
【0065】
式Iの化合物は、R−またはS−配置の状態で非対称的に置換された炭素原子を含むことができ;このような化合物は、ラセミ化合物として、または一方の配置が他方よりも過剰で、例えば少なくとも約85:15のエナンチオマー比率で存在することができる。化合物は、例えば、少なくとも約95:5の、場合によっては少なくとも約98:2のまたは少なくとも約99:1のエナンチオマー比率を有し、実質的にエナンチオマーとして純粋であることができる。
【0066】
式Iの化合物は、Z−またはE−配置の炭素−炭素二重結合または炭素−窒素二重結合を、代わりにまたは付加的に含むことができ、用語「Z」は、より大きな置換基がこのような二重結合の同一側に存在する配置を意味し、用語「E」は、より大きな置換基が二重結合の反対側に存在する配置を意味する。化合物は、代わりに、Z−およびE−異性体の混合物として存在することができる。
【0067】
式Iの化合物は、代わりにまたは付加的に、プロトンが、ある原子から別の原子に移行する互変異性体またはその平衡混合物として存在することができる。互変異性体の例には、例示すれば、ケト−エノール、フェノール−ケト、オキシム−ニトロソ、ニトロ−アシニトロ、イミン−エナミンなどが含まれる。
【0068】
一部の実施形態において、式Iの化合物は、ナノ粒子懸濁液中に、その親化合物形態の単独でまたは該化合物の塩またはプロドラッグ形態と一緒に存在する。
【0069】
式Iの化合物は、酸付加塩、塩基付加塩または双性イオンを形成することができる。式Iの化合物の塩は、単離中にまたは化合物の精製後に調製することができる。酸付加塩は、式Iの化合物の酸との反応に由来する塩である。例えば、式Iの化合物の酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリセロリン酸塩、グルタミン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩を含む塩を、本発明の組成物中で使用することができる。化合物と、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムなどのカチオンの重炭酸塩、炭酸塩、水酸化物またはリン酸塩との反応に由来するものを含む塩基付加塩も、同様に使用することができる。
【0070】
式Iの化合物は、典型的には、プロトン化が可能な複数の窒素原子を有し、結果として、当量の化合物につき1当量を超える、例えば約1.2から約2当量の、約1.5から約2当量のまたは約1.8から約2当量の酸と酸付加塩を形成する能力がある。
【0071】
ABT−263は、同様に、酸付加塩、塩基付加塩または双性イオンを形成することができる。ABT−263の塩は、単離中にまたは化合物の精製後に調製することができる。ATB−263と酸との反応に由来する酸付加塩には、前に列挙したものが含まれる。前に列挙したものを含む塩基付加塩も同様に使用できる。ABT−263は、プロトン化が可能な少なくとも2つの窒素原子を有し、結果として、当量の化合物につき1当量を超える、例えば約1.2から約2当量の、約1.5から約2当量のまたは約1.8から約2当量の酸と酸付加塩を形成する能力がある。
【0072】
例示的に、ABT−263の場合、例えば、二塩酸塩(bis−HCl)および二臭化水素酸塩(bis−HBr)を含む、ビス塩を形成することができる。
【0073】
例えば、1047.5g/モルの分子量を有し、次式:
【0074】
【化12】

で表されるABT−263二塩酸塩は、種々の方法、例えば、以下のように概略を示すことができる方法によって調製することができる。
【0075】
ABT−263遊離塩基は、例示すれば、その全開示を参照により本明細書に組み込む、前に挙げた米国特許出願公開第2007/0027135号の実施例1に記載のように調製される。適切な重量のABT−263遊離塩基を酢酸エチルに溶解する。ABT−263溶液に、塩酸のエタノール中溶液(例えば、80gのエタノール中に約4.3kgのHCl)を、1モルのABT−263につき少なくとも2モルのHClを提供する、および生じるABT−263二塩酸塩を結晶化するのに十分なエタノール(少なくとも約20容)を提供する量で添加される。溶液を、撹拌しながら約45℃まで加熱し、種晶を、エタノール中のスラリーとして添加する。約6時間後、生じるスラリーを、約20℃まで約1時間にわたって冷却し、その温度で約36時間混合する。スラリーを濾過して、ABT−263二塩酸塩のエタノール溶媒和物である結晶性固体を回収する。この固体を真空および窒素下で穏やかに撹拌しながら約8日間乾燥すると、白色の脱溶媒和されたABT−263二塩酸塩の結晶が得られる。この材料は、本発明の組成物を調製するためのAPIとして適している。
【0076】
本明細書中で、用語「遊離塩基」は、親化合物を指すのに便宜的に使用されるが、該親化合物は、厳密に言えば、双性イオンであり、したがって、必ずしも真の塩基として挙動しないことを同時に認識されたい。
【0077】
式Iの化合物およびこのような化合物の調製方法は、前に挙げた米国特許出願公開第2007/0027135号中におよび/または前に挙げた米国特許出願公開第2007/0072860号中に開示されており、そのいずれも参照によりその全体で本明細書に組み込む。本明細書中で使用される置換基に関する用語は、それらの刊行物中と同様に厳密に定義される。
【0078】
−NH、−C(O)OH、−OHまたは−SH部分を有する式Iの化合物は、それに対して、インビボでの代謝過程によって除去されて遊離の−NH、−C(O)OH、−OHまたは−SH部分を有する親化合物を放出できるプロドラッグ形成部分を結合することができる。プロドラッグの塩も使用できる。
【0079】
理論によって拘束されるものではないが、式Iの化合物の治療効力は、少なくとも部分的には、Bcl−2、Bcl−XまたはBcl−wなどのBcl−2ファミリータンパク質へ、該タンパク質の抗アポトーシス作用を例えば該タンパク質のBH3結合溝を占拠することによって阻害するような方式で結合するそれら化合物の能力のためであると思われる。一般に、Bcl−2ファミリータンパク質に対して高い結合親和性を、例えば、約5nMを超えない、好ましくは約1nMを超えないKを有する化合物を選択するのが望ましいことがわかる。
【0080】
ナノ粒子懸濁液は、式Iの化合物またはその塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物を、結晶性、半結晶性または非晶性でよい離散した固体状態相として含む。ABT−263の場合、‘135出願公開により調製されるようなその遊離塩基形態は、非晶性またはガラス状固体であり、ナノ懸濁液の調製では、例えばABT−263二塩酸塩などの結晶性塩形態の薬物を使用するのが一般には好ましい。しかし、重炭酸ナトリウムなどの塩基化剤の存在下で塩を懸濁させると、塩の遊離塩基への部分的転換が起こり、少なくとも部分的に非晶性になる固体状態相が生じる。したがって、一実施形態において、ナノ懸濁液は、ABT−263遊離塩基、ABt−263二塩酸塩またはこれらの組合せを含む。ABT−263ナノ懸濁液中の薬物粒子が少なくとも部分的に非晶性である可能性があるにもかかわらず、後記実施例2で例証されるように、著しく高い度合いの物理的安定性が、このようなナノ懸濁液において観察された。
【0081】
本発明者らは、本明細書に記載のようなナノ粒子懸濁液が、製品の許容される貯蔵寿命を提供する物理的安定性の利点のみならず、商業的製品にとって望ましい製造方法の強健性をも提供することを見出した。
【0082】
式Iの化合物またはその塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物は、本発明のナノ粒子懸濁液中に、該組成物がそれを必要とする対象に適切なレジメンにより投与される場合に治療上有効であり得る量で存在する。本明細書中で、投与量は、文脈がそうでないことを要求しない限り、親化合物に相当する(遊離塩基に相当する)量として表される。典型的には、適切な頻度、例えば、1日2回から1週1回で投与できる単位用量(1回に投与される量)は、当該化合物に応じて約10から約1,000mgである。投与頻度が1日1回(q.d.)である場合、単位用量と1日量とは同一である。例示すれば、例えば、薬物がABT−263であるなら、単位用量は、典型的には、約25から約1,000mg、より典型的には約50から約500mg、例えば、約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450または約500mgの遊離塩基に相当する。剤形が、懸濁液または固形形態のナノ粒子組成物を閉じ込めているカプセル殻から構成される、または固形形態のナノ粒子組成物を含む錠剤であるなら、単位用量は、単一のカプセルもしくは錠剤で、または複数のカプセルもしくは錠剤で、最も典型的には1から約10個のカプセルもしくは錠剤で送達可能にすることができる。
【0083】
単位用量が多ければ多いほど、その中に比較的高濃度の薬物を含む懸濁液を選択することが益々望ましくなる。典型的には、懸濁液中の薬物濃度は、少なくとも約10mg/mL、例えば、約10から約500mg/mLであるが、より低い濃度やより高い濃度も、特定の事例において許容され、または達成可能である。例示すれば、例えば、薬物がABT−263である場合、種々の実施形態における薬物濃度は、遊離塩基に相当する重量で、少なくとも約10mg/mL、例えば、約10から約400mg/mLまたは少なくとも約20mg/mL、例えば、約20から約200mg/mL、例えば、約20、約25、約30、約40、約50、約75、約100、約125、約150または約200mg/mLである。
【0084】
本発明の組成物は、良好な貯蔵安定特性を有する。とりわけ、それらは、物理的に安定であり、少なくとも、それらは、例えば粒子の凝集を介して時間と共に粒径が増加する許容できない傾向を有さない。粒子の凝集は、ナノ粒子懸濁液にありがちな問題である。界面活性剤などの表面改質剤は、ナノ粒子が凝集する傾向を低減する上で重要であり、理論によって拘束されるものではないが、本発明の組成物中に存在する少なくとも1種の界面活性剤は、これに関して役立つと考えられる。
【0085】
本明細書中で、「塩基化剤」は、懸濁液の媒質のpHを高める任意の薬剤である。限定はされないが、ナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属の水酸化物および重炭酸塩をはじめとする任意の薬学的に許容される塩基化剤を使用することができる。本明細書中では、特に重炭酸ナトリウムを引き合いに出して本発明を説明するが、所望により、重炭酸ナトリウムを他の塩基化剤に代えることができることを認識するであろう。
【0086】
本発明の組成物中で有用な重炭酸ナトリウムの量は、厳密に規定されるものではなく、当業者は、例えば、定型的な貯蔵安定性試験によって、任意の特定の組成物に対してその量を容易に最適化することができる。一般に、約20から約200mg/mL、例えば約40から約160mg/mLの量の重炭酸ナトリウムを用いて、良好な結果を得ることができる。
【0087】
界面活性剤の選択および量も、同様に厳密に規定されものではなく、製剤される予定の個々の薬物化合物および所望される薬物負荷量にある程度までおそらく依存するであろう。界面活性剤の非限定的例には、個々にまたは組合せの状態で、第4級アンモニウム化合物、例えば塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムおよび塩化セチルピリジニウム;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、例えばノノキシノール9、ノノキシノール10およびオクトキシノール9;ポロキサマー(ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとのブロックコポリマー)、例えばポロキサマー188およびポロキサマー237;ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよびオイル、例えばポリオキシエチレン(8)(カプリル/カプリン酸)モノ−およびジグリセリド、ポリオキシエチレン(35)ヒマシ油およびポリオキシエチレン(40)水素化ヒマシ油;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばセテス−10、ラウレス−4、ラウレス−23、オレス−2、オレス−10、オレス−20、ステアレス−2、ステアレス−10、ステアレス−20、ステアレス−100およびポリオキシエチレン(20)セトステアリルエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン(20)、ステアリン酸ポリオキシエチレン(40)およびステアリン酸ポリオキシエチレン(100);ソルビタンエステル、例えば、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタンおよびモノステアリン酸ソルビタン;ポリオキシエチレンソルビタンエステル、例えばポリソルベート20およびポリソルベート80;プロピレングリコール脂肪酸エステル、例えばラウリン酸プロピレングリコール;ラウリル硫酸ナトリウム;脂肪酸およびその塩、例えばオレイン酸、オレイン酸ナトリウムおよびオレイン酸トリエタノールアミン;グリセリル脂肪酸エステル、例えばモノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリルおよびパルミトステアリン酸グリセリル;α−トコフェリルポリエチレングリコールスクシネート(TPGS);チロキサポールなどが含まれる。一実施形態において、少なくとも1種の界面活性剤が、ポロキサマーまたはポロキサマー混合物である。ポロキサマー188が、1つの具体例である、1種以上の界面活性剤が、典型的には、全体で約10から約100mg/mLを構成する。ポロキサマー188の場合、例示すれば、適切な量は、約10から約100mg/mL、例えば約15から約60mg/mLである。
【0088】
懸濁液の水性媒質は、水、生理食塩水などの注射可能な水性流体(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水またはPBS)、または果実ジュースまたは炭酸飲料などの飲用可能な液体の形態を取ることができる。一実施形態において、ナノ粒子状薬物化合物、少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の塩基化剤(および場合によってはさらなる成分)は、使用直前に本発明の懸濁液組成物を形成するのに適した水性媒質を用いて再構成するための乾燥粉末混合物として調製される。このような再構成可能な粉末は、前に挙げた成分に加えて、少なくとも1種の薬学的に許容される分散剤または増量剤、典型的には、糖などの水溶性材料、例えばデキストロース、マンニトールまたはデキストランを;リン酸塩、例えばリン酸ナトリウムまたはリン酸カリウムを;有機酸、例えばクエン酸もしくは酒石酸またはそれらの塩を;またはこのような材料の混合物を含むべきである。別法として、乾燥粉末混合物を、対象に投与して、胃腸液中でナノ粒子を再懸濁させることができ;このような投与のためは、粉末混合物を、所望により、錠剤に形成することができ、またはカプセル中に充填することができる。
【0089】
式Iの化合物の場合、物理的に安定であるのみならず化学的にも安定な製剤を提供することが望ましい。より詳細には、このような製剤は、例えば、その(フェニルスルファニル)メチル基のチオエーテル結合の位置で、式Iの化合物の許容できない程度の酸化分解を示してはならない。
【0090】
これに関して、ABT−263遊離塩基、ABT−263二塩酸塩またはこれらの組合せなどの式Iの化合物を含む本発明の化合物は、当技術分野でこれまでに、例えば‘135出願公開またはTseら(2008)、同上中に開示されているABT−263の溶液組成物に優るかなりの利点を所持する。本明細書中で提供されるようなナノ懸濁液中に存在するABT−263の固体状態形態は(結晶性、半結晶性または非晶性のいずれにせよ)、溶液中のABT−263に比べて酸化分解に対して有意により抵抗性があると思われる。
【0091】
しかし、所望により、酸化分解に対するなんらかの残存する傾向は、懸濁液組成物中に適切な抗酸化剤を含めることによってさらに低減させることができる。
【0092】
「抗酸化剤」または「抗酸化」特性を有する化合物は、別の化学物質またはそれ自体の酸化を防止、抑制、低減または遅延させる化学化合物である。抗酸化剤は、本明細書に記載のような脂質製剤の安定性および貯蔵寿命を、例えば、製剤中の式Iの化合物の酸化を防止、抑制、低減または遅延させることによって改善することができる。
【0093】
安定性および貯蔵寿命の増強は、例えば、製剤中でのスルホキシドの出現または蓄積の速度を監視することによって評価することができる。全体中のスルホキシドは、サンプリングおよび分析を繰り返すことによって監視することができ;別法として、サンプルを、より具体的には、式Iの化合物のスルホキシド分解生成物、すなわち、次式を有する化合物:
【0094】
【化13】

(式中、X、XおよびRは、前に定義した通りである。)、または次式:
【0095】
【化14】

を有するABT−263のスルホキシド分解生成物について分析することができる。
【0096】
本明細書中でのスルホキシド分解生成物に対する言及は、スルホキシド基中の硫黄原子立体中心での双方のジアステレオマーを包含すると解される。
【0097】
本明細書中の抗酸化剤の「抗酸化剤としての有効量」は、抗酸化剤を含む製剤において、抗酸化剤を含まない別の類似の製剤と比較して、
(a)分解生成物、例えば前記のスルホキシド分解生成物の形成または蓄積の実質的低減(例えば、少なくとも約25%の、少なくとも約50%の、少なくとも約75%の、少なくとも約80%の、少なくとも約85%のまたは少なくとも約90%の低減);および/または
(b)分解生成物が閾値レベルに到達するのに必要とされる時間の実質的増加(例えば、少なくとも約30日、少なくとも約60日、少なくとも約90日または少なくとも約180日の増加)
を提供する量であり、(a)分解生成物の形成もしくは蓄積の低減または(b)製剤中で分解生成物が閾値レベルに到達するのに必要とされる時間の増加の程度を判定するための貯蔵安定性試験は、任意の適切な温度または温度範囲で行うことができる。例示すれば、約5℃での試験は、冷蔵条件下での貯蔵安定性を示すことができ、約20−25℃での試験は、典型的な外界条件下での貯蔵安定性を示すことができ、約30℃以上の温度での試験は、加速経時変化試験において有用であり得る。分解生成物の任意の適切な閾値レベルは、終点として、存在する式Iの化合物の初期量の例えば約0.2%から約2%の範囲で選択することができる。
【0098】
種々の例示的実施形態において、抗酸化剤は、外界条件下(例えば、約20−25℃)で
紫外線に対して不透明な密閉容器中に貯蔵した場合の製剤中に、例えば言及した貯蔵期間の終末点で存在するスルホキシド分解生成物の量によって測定した場合に、薬物の酸化分解を、
(a)少なくとも約3ヶ月間約1%未満に、
(b)少なくとも約6ヶ月間約1%未満に、
(c)少なくとも約1年間約1%未満に、
(d)少なくとも約3ヶ月間約0.5%未満に、
(e)少なくとも約6ヶ月間約0.5%未満にまたは
(f)少なくとも約1年間約0.5%未満に、保持するのに有効な量で含められる。
【0099】
医薬組成物中で使用される抗酸化剤は、最も典型的には、三重項または一重項酸素、スーパーオキシド、パーオキシドおよび遊離ヒドロキシルラジカルなどの酸化性種の生成を抑制する薬剤またはそれらが生成される場合にこのような酸化性種を除去する薬剤である。これらの部類の一般的に使用される抗酸化剤の例には、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、パルミチン酸レチニル、トコフェロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸およびパルミチン酸アスコルビルが含まれる。しかし、本明細書中で有用な抗酸化剤は、理論によって拘束されるものではないが、主として競合基質として、すなわち「犠牲的な」抗酸化剤として機能すると思われ、酸化性種によって優先的に攻撃され、それによって薬物を過剰な分解から保護する、より重いカルコゲン系抗酸化剤(heavier−chalcogen antioxidants)である。
【0100】
一部の実施形態において、HCAは、1種以上の式IIの抗酸化性化合物:
【0101】
【化15】

を含み、式中
nは、0、1または2であり、
は、SまたはSeであり、
は、NHR(Rはアルキルまたはアルキルカルボニルである。)、OHまたはHであり、
は、COOR(RはHまたはアルキルである。)またはCHOHであり、
は、Hまたはアルキルであり、
アルキル基は、カルボキシル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノおよびアルキルカルボニルアミノ、これらの薬学的に許容される塩からなる群から独立に選択される1つもしくは複数の置換基で独立に場合によって置換され、または、YはSであり、およびRは、H、その−S−S−ダイマー、もしくはこのようなダイマーの薬学的に許容される塩である。
【0102】
他の実施形態において、HCAは、式IIIの抗酸化化合物:
【0103】
【化16】

であり、
Yは、S、SeまたはS−Sであり、
およびRは、H、アルキルおよび(CHから独立に選択され、nは0−10であり、Rは、アリールカルボニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、カルボキシルまたはCHR置換アルキルであり、RおよびRは、独立に、CO、CHOH、水素またはNHR10であり、RはH、アルキル、置換アルキルまたはアリールアルキルであり、R10は、水素、アルキル、アルキルカルボニルまたはアルコキシカルボニルである。
【0104】
式IIまたは式IIIにより置換基の一部を形成する「アルキル」置換基または「アルキル」もしくは「アルコキシ」基は、1から約18個の炭素原子を有するものであり、直鎖または分枝鎖からなることができる。
【0105】
式IIIにより置換基の一部を形成する「アリール」基は、置換されていないまたは1つ以上のヒドロキシ、アルコキシまたはアルキル基で置換されたフェニル基である。
【0106】
一部の実施形態において、式II中のRは、C1−4アルキル(例えば、メチルもしくはエチル)または(C1−4アルキル)カルボニル(例えば、アセチル)である。
【0107】
一部の実施形態において、式II中のRは、HまたはC1−18アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル(例えば、n−プロピルもしくはイソプロピル)、ブチル(例えば、n−ブチル、イソブチルもしくはt−ブチル)、オクチル(例えば、n−オクチルもしくは2−エチルヘキシル)、ドデシル(例えば、ラウリル)、トリデシル、テトラデシル、ヘキサデシルまたはオクタデシル(例えば、ステアリル)である。
【0108】
は、典型的には、HまたはC1−4アルキル(例えば、メチルもしくはエチル)である。
【0109】
HCAは、例えば、天然もしくは合成のアミノ酸、またはそのアルキルエステルもしくはN−アシル誘導体などの誘導体、またはこのようなアミノ酸もしくは誘導体の塩でよい。アミノ酸もしくはその誘導体が、天然供給源に由来する場合、それは、典型的にはL−配置であるが、必要なら、D−異性体およびD,L−異性体混合物に代えることができると解される。
【0110】
本明細書中で有用なHCAの非限定的例には、β−アルキルメルカプトケトン、システイン、シスチン、ホモシステイン、メチオニン、チオジグリコール酸、チオジプロピオン酸、チオグリセロール、セレノシステイン、セレノメチオニンおよびこれらの塩、エステル、アミドおよびチオエーテル、ならびにこれらの組合せが含まれる。より詳細には、1つ以上のHCAは、N−アセチルシステイン、N−アセチルシステインブチルエステル、N−アセチルシステインドデシルエステル、N−アセチル−システインエチルエステル、N−アセチルシステインメチルエステル、N−アセチルシステインオクチルエステル、N−アセチル−システインプロピルエステル、N−アセチルシステインステアリルエステル、N−アセチルシステインテトラデシルエステル、N−アセチルシステイントリデシルエステル、N−アセチルメチオニン、N−アセチルメチオニンブチルエステル、N−アセチルメチオニンドデシルエステル、N−アセチルメチオニンエチルエステル、N−アセチルメチオニンメチルエステル、N−アセチルメチオニンオクチルエステル、N−アセチルメチオニンプロピルエステル、N−アセチルメチオニンステアリルエステル、N−アセチルメチオニンテトラデシルエステル、N−アセチルメチオニントリデシルエステル、N−アセチル−セレノシステイン、N−アセチルセレノシステインブチルエステル、N−アセチルセレノシステインドデシルエステル、N−アセチルセレノシステインエチルエステル、N−アセチルセレノシステインメチルエステル、N−アセチルセレノ−システインオクチルエステル、N−アセチルセレノシステインプロピルエステル、N−アセチルセレノシステインステアリルエステル、N−アセチルセレノシステインテトラデシルエステル、N−アセチルセレノシステイントリデシルエステル、N−アセチルセレノ−メチオニン、N−アセチルセレノメチオニンブチルエステル、N−アセチルセレノメチオニンドデシルエステル、N−アセチルセレノメチオニンエチルエステル、N−アセチルセレノメチオニンメチルエステル、N−アセチルセレノメチオニンオクチルエステル、N−アセチルセレノメチオニンプロピルエステル、N−アセチルセレノメチオニンステアリルエステル、N−アセチルセレノメチオニンテトラデシルエステル、N−アセチルセレノ−メチオニントリデシルエステル、システイン、システインブチルエステル、システインドデシルエステル、システインエチルエステル、システインメチルエステル、システインオクチルエステル、システインプロピルエステル、システインステアリルエステル、システインテトラデシルエステル、システイントリデシルエステル、シスチン、シスチンジブチルエステル、シスチンジ(ドデシル)エステル、シスチンジエチルエステル、シスチンジメチルエステル、シスチンジオクチルエステル、シスチンジプロピルエステル、シスチンジステアリルエステル、シスチンジ(テトラデシル)エステル、シスチンジ(トリデシル)エステル、N,N−ジアセチルシスチン、N,N−ジアセチルシスチンジブチルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジエチルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジ(ドデシル)エステル、N,N−ジアセチルシスチンジメチルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジオクチルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジプロピルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジステアリルエステル、N,N−ジアセチルシスチンジ(テトラデシル)エステル、N,N−ジアセチルシスチンジ(トリデシル)エステル、ジブチルチオジグリコレート、ジブチルチオジプロピオネート、ジ(ドデシル)チオジグリコレート、ジ(ドデシル)チオジプロピオネート、ジエチルチオジグリコレート、ジエチルチオジプロピオネート、ジメチルチオジグリコレート、ジメチルチオジプロピオネート、ジオクチルチオジグリコレート、ジオクチルチオジプロピオネート、ジプロピルチオジグリコレート、ジプロピルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジグリコレート、ジステアリルチオジプロピオネート、ジ(テトラデシル)チオジグリコレート、ジ(テトラデシル)チオジプロピオネート、ホモシステイン、ホモシステインブチルエステル、ホモシステインドデシルエステル、ホモシステインエチルエステル、ホモシステインメチルエステル、ホモシステインオクチルエステル、ホモシステインプロピルエステル、ホモシステインステアリルエステル、ホモシステインテトラデシルエステル、ホモシステイントリデシルエステル、メチオニン、メチオニンブチルエステル、メチオニンドデシルエステル、メチオニンエチルエステル、メチオニンメチルエステル、メチオニンオクチルエステル、メチオニンプロピルエステル、メチオニンステアリルエステル、メチオニンテトラデシルエステル、メチオニントリデシルエステル、S−メチルシステイン、S−メチル−システインブチルエステル、S−メチルシステインドデシルエステル、S−メチルシステインエチルエステル、S−メチルシステインメチルエステル、S−メチルシステインオクチルエステル、S−メチルシステインプロピルエステル、S−メチルシステインステアリルエステル、S−メチルシステインテトラデシルエステル、S−メチルシステイントリデシルエステル、セレノシステイン、セレノシステインブチルエステル、セレノシステインドデシルエステル、セレノシステインエチルエステル、セレノシステインメチルエステル、セレノシステインオクチルエステル、セレノシステインプロピルエステル、セレノシステインステアリルエステル、セレノシステインテトラデシルエステル、セレノシステイントリデシルエステル、セレノメチオニン、セレノメチオニンブチルエステル、セレノメチオニンドデシルエステル、セレノメチオニンエチルエステル、セレノメチオニンメチルエステル、セレノメチオニンオクチルエステル、セレノ−メチオニンプロピルエステル、セレノメチオニンステアリルエステル、セレノメチオニンテトラデシルエステル、セレノメチオニントリデシルエステル、チオジグリコール酸、チオジプロピオン酸、チオグリセロール、これらの異性体および異性体混合物、ならびにこれらの塩から選択することができる。
【0111】
HCA化合物の塩は、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリセロリン酸塩、グルタミン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、パモン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびウンデカン酸塩などの酸付加塩でよい。特定の実施形態において、前に個別的に述べた化合物の1つの塩酸塩は、組成物中に抗酸化剤として有効な量で存在する。
【0112】
理論によって拘束されるものではないが、前に例示したものなどのより重いカルコゲン系抗酸化剤は、それ自体より容易に酸化され得ること、したがって薬物化合物よりも優先的に酸化されることによって、活性化合物を保護すると一般には考えられる。一般に、薬物化合物に対して許容される程度の保護を提供するためのこの操作方式に関して、抗酸化剤は、十分な量で、例えば、薬物化合物に対して少なくとも約1:10のモル比で存在しなければならない。一部の実施形態において、抗酸化剤の薬物化合物に対するモル比は、約1:10から約2:1、例えば、約1:5から約1.5:1である。最良の結果は、時には、モル比がほぼ1:1、すなわち約8:10から約10:8である場合に得られる。
【0113】
別の部類の硫黄含有抗酸化剤、すなわち亜硫酸塩、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸塩およびチオ硫酸塩の部類の無機抗酸化剤が、本発明の組成物中で有用であることがある。これらの抗酸化剤は、水溶液中で使用される。亜硫酸、重亜硫酸、メタ重亜硫酸およびチオ硫酸のナトリウムおよびカリウム塩、とりわけメタ重硫酸ナトリウムおよびカリウムは、本発明の実施形態による有用な抗酸化剤である。このような硫黄含有抗酸化剤は、薬物化合物の濃度に対して等価なモルを提供するものに比べてより低い濃度で、例えば、薬物化合物に対して1:20またはより小さい、モル比で有効である可能性がある。
【0114】
スルホキシドの形成をさらに最小化するために、EDTAまたはその塩などのキレート化剤(例えば、EDTA二ナトリウムまたはEDTAカルシウム二ナトリウム)が、例えば、組成物の約0.002重量%から約0.02重量%の量で、場合によっては添加される。キレート化剤は、酸化分解を促進できる金属イオンを封鎖する。
【0115】
スルホキシドの形成は、低い過酸化物価を有する製剤成分を選択することによってさらに最小化することができる。過酸化物価は、医薬賦形剤の十分に確立された特性であり、一般には1kgの賦形剤あたりの過酸化物のミリ当量(meq/kg)に相当する単位で表現される(本明細書でも同様)。一部の賦形剤は、本質的に低い過酸化物価を有するが、他のもの、例えばオレイル部分などの不飽和脂肪酸および/またはポリオキシエチレン鎖を有するものは、過酸化物の供給源であることがある。
【0116】
懸濁液組成物のその他の場合による成分としては、緩衝液、着色剤、風味剤、保存剤、甘味剤、等張化剤およびこれらの組合せが挙げられる。
【0117】
本発明の実施形態において、医薬組成物を調製する方法は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物、例えば、ABT−263またはその結晶性塩を含む活性医薬成分(API)を準備すること;該APIを、重炭酸ナトリウムなどの少なくとも1種の塩基化剤の存在下で約3μmを超えないD90粒径まで湿式粉砕して湿式粉砕された原体を準備すること;および粉砕された原体を、少なくとも1種の界面活性剤の助けを借りて水性媒質中に懸濁させることを含み;少なくとも1種の塩基化剤および少なくとも1種の界面活性剤は、生じる懸濁液中に、粒径増加を抑制するのに一緒になって有効な量で存在する。
【0118】
任意の適切な湿式粉砕法を使用できる。有用であることが見出されている特定の湿式粉砕法は、後記実施例1中に例示的に記載のような高圧ホモジナイズである。
【0119】
本発明は、本明細書に記載の任意の方法によって調製される組成物に限定されるものではないが、前記の方法によって調製される組成物は、本発明の特定の実施形態である。
【0120】
一実施形態において、方法は、懸濁液に少なくとも1種の薬学的に許容される分散剤または増量剤を添加すること;懸濁液を乾燥(例えば、フリーズドライもしくは凍結乾燥、または別法として噴霧乾燥)して再構成が可能な乾燥粉末を提供すること;および場合によっては粉末を錠剤にする(例えば成型または圧縮によって)または粉末をカプセル中に充填して単位剤形を調製することをさらに含む。
【0121】
重炭酸ナトリウムの安定化効果に加えて、重炭酸ナトリウムの存在下で、より小さい粒径まで、例えば約700nmを超えないD90粒径まで湿式粉砕することが可能であることが見出される。後記実施例2に例示的に示すように、重炭酸ナトリウムの不在下で、同一の処理パラメーターを使用すると、D90粒径を約1,000nm未満に低下させることはできない。本発明の方法中で使用される湿式粉砕法は、乾式粉砕法に比較して、それがAPIの高温への暴露を低減し、それによってAPIの熱分解の危険を低減するという利点を有する。一実施形態において、処理温度は、約5℃から約30℃の目標温度で、例えば、約1から約5℃以内に制御される。これは、冷水浴中に浸漬された熱交換器を通して製剤を移動することなどの通常手段によって達成することができる。
【0122】
組成物は、湿式粉砕用にその最終濃度で調製することができ、または高濃度で調製して、湿式粉砕の後に所望濃度まで希釈することができる。少なくとも1種の界面活性剤および所望により場合による付加的成分を、湿式粉砕の前または後に添加することができる。
【0123】
本発明の組成物は、典型的には、「経口送達性」すなわち経口投与用に適合されるが、このような組成物は、それを必要とする対象に、限定はされないが、非経口、舌下、頬側、鼻腔内、肺、局所、経皮、皮内、眼、耳、直腸、膣、胃内、頭蓋内、滑液嚢内および関節内経路を含むその他の投与経路によって薬物を送達するのに有用である可能性がある。特定の実施形態において、組成物は、経口および/または非経口投与用に適合される。
【0124】
本明細書中で、用語「経口投与」および「経口で投与される」は、対象への経口(p.o.)での投与、すなわち、組成物を、例えば、適切な量の水またはその他の飲用液体の助けを借りて直ちに嚥下する投与を指す。本明細書中で、「経口投与」は、組成物の即時嚥下を必要としない口内投与、例えば、舌下もしくは頬側投与、または歯周組織などの口内組織への局所投与から区別される。
【0125】
予想外に、本発明のナノ粒子状ABT−263二塩酸塩の懸濁液は、経口で投与された場合に、薬物の標準溶液、例えば‘135出願公開中に開示されているようなPEG−400中10%DMSOからなる担体中溶液と比較して、高められた生体吸収性を提供することが分かっている。実際、生体吸収性は、現在臨床試験中のABT−263二塩酸塩の脂質溶液製剤(本明細書では「製剤C」)を用いて得られるものと類似していることが見出される(後記実施例3参照)。高められた生体吸収性は、例えば、AUC、例えば、AUC0−24またはAUC0−∞によって測定されるような、より高いCmaxまたは増加したバイオアベイラビリティーの1つ以上を有する薬物動態(PK)プロフィールによって証明することができる。例示すれば、バイオアベイラビリティーは、例えば、試験組成物の経口送達に関して、AUCを、適切な溶媒中での薬物の静脈内(i.v.)送達に関するAUCのパーセンテージとして計算するパラメーターFを使用し、経口およびi.v.投与の間の任意の相違を考慮して、パーセンテージとして表現できる。
【0126】
バイオアベイラビリティーは、ヒトまたは任意の適切なモデル種におけるPK試験によって測定することができる。本発明の目的には、後記実施例3に例示的に記載のようにイヌモデルが一般に適している。種々の例示的実施形態において、薬物がABT−263二塩酸塩などのABT−263の結晶性塩である場合、本発明の組成物は、絶食または非絶食動物に対して約2.5から約10mg/kgの単回投与として投与した場合に、イヌモデルにおいて、少なくとも約15%、少なくとも約20%または少なくとも約25%から約50%までまたはそれを超える経口バイオアベイラビリティーを示す。
【0127】
本明細書中に概括的にまたは具体性をもって記載した組成物を含む本明細書に包含される組成物は、対象に、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物である薬物を経口で送達するのに有用である。したがって、対象にこのような薬物を送達するための本発明の方法は、前記のような組成物を経口で投与することを含む。
【0128】
対象は、ヒトまたは非ヒト(例えば、家畜、動物園の動物、使役動物または伴侶動物、またはモデルとして使用される実験動物)でよいが、重要な実施形態において、対象は、例えばアポトーシス機能不全および/または抗アポトーシス性Bcl−2ファミリータンパク質の過剰発現を特徴とする疾患を治療するために薬物を必要とするヒト患者である。ヒト対象は、任意の年齢の、しかし典型的には成人の男性または女性でよい。
【0129】
組成物は、通常的には、治療上有効な1日用量の薬物を提供する量で投与される。本明細書中で、用語「一日用量」は、投与頻度に無関係に1日につき投与される薬物の量を意味する。例えば、対象が150mgの単位用量を1日に2回服用するなら、1日用量は300mgである。用語「1日用量」の使用は、指定の投与量を1日1回必ず投与することを意味しないと解される。しかし、特定の実施形態において、投与頻度は、1日1回(q.d.)であり、1日用量と単位用量とは、この実施形態では同じことである。
【0130】
治療上有効な用量を構成するものは、個々の化合物、対象(対象の種および体重を含む)、治療すべき疾患(例えば、がんの個々のタイプ)、疾患のステージおよび/または重症度、個々の対象の化合物に対する耐性、化合物が単剤療法または1種以上のその他の薬物、例えば、がんを治療するためのその他の化学療法剤との組合せで投与されるかどうかおよびその他の因子に依存する。したがって、1日用量は、広範な余裕内で、例えば約10から約1,000mgの範囲内で変えることができる。より多いまたはより少ない1日用量が、特定の状況において適切である可能性がある。本明細書中での「治療上有効な」用量の言及は、該薬物が、このような単回用量が投与される場合にのみ治療上有効であることを必ずしも必要とせず、典型的には、治療効力は、適切な投与頻度および投与継続期間を含むレジメンにより繰り返し投与される組成物に依存すると理解される。選択される1日用量が、がんの治療に関して利益を提供するのに十分であると同時に、有害な副作用を許容できないまたは耐えられない程度までに誘発するのに十分であってはならないことが強く優先される。適切な治療有効用量は、前に言及したような因子を考慮に入れ、本明細書の開示および本明細書中に挙げた技術に基づいて、過度な実験なしに通常の医師によって選択できる。医師は、例えば、比較的低い1日用量を用いてがん患者で治療過程を開始し、有害な副作用の危険を低減するために数日または数週間にわたって用量を上方に用量設定することができる。
【0131】
例示すれば、ABT−263の適切な用量は、一般に、約25から約1,000mg/日、より典型的には約50から約500mg/日または約200から約400mg/日、例えば、約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450または約500mg/日であり、約3時間から約7日、例えば約8時間から約3日または約12時間から約2日の平均投与間隔で投与される。殆どの場合、1日1回(q.d.)の投与レジメンが適している。
【0132】
本明細書中で、「平均投与間隔」は、その期間の間に投与される単位用量の数で除した期間、例えば1日または1週間として定義される。例えば、薬物が1日に3回、午前8時頃、正午頃および午後6時頃に投与されるなら、平均投与間隔は(24時間を3で除して)8時間である。薬物が、錠剤またはカプセルなどの離散性剤形として製剤化されるなら、1回に投与される複数(例えば、2から約10)の剤形が、平均投与間隔を定義する目的に関して単位用量と見なされる。
【0133】
薬物化合物が、例えばABT−263二塩酸塩の形態のABT−263である場合、1日当たり投与量および投与間隔は、一部の実施形態において、ABT−263の血漿中濃度を約0.5から約10μg/mLの範囲に維持するように選択することができる。したがって、このような実施形態によるABT−263治療の過程中に、定常状態での血漿中ピーク濃度(Cmax)は、一般に、約10μg/mLを超えてはならず、および定常状態での血漿中谷濃度(Cmin)は一般に約0.5μg/mL未満に降下してはならない。さらに、上に示した範囲内で、定常状態において約5を超えない、例えば約3を超えないCmax/Cmin比を提供するのに有効な1日当たり投与量および平均投与間隔を選択するのが望ましいことが見出される。より長い投与間隔は、より大きなCmax/Cmin比をもたらす傾向があることが理解されるであろう。例示すれば、定常状態において、ABT−263の約3から約8μg/mLのCmaxおよび約1から約5μg/mLのCminを本発明の方法による目標とすることができる。定常状態でのCmaxおよびCminの値は、ヒトでのPK試験で確立することができ、例えば、限定はされないが、米国食品医薬品庁(FDA)などの規制当局にとって許容されるものを含む標準的なプロトコールにより実施される。
【0134】
本発明の実施形態による投与は、食物を摂取または摂取しないで、すなわち非絶食または絶食状態で行うことができる。しかし、本発明の組成物は明確な食物効果を示すことがあるので、本発明の組成物を非絶食患者に投与することが一般には好ましい。
【0135】
本発明の組成物は、単剤療法でまたは例えば他の化学療法剤とのもしくは電離放射線との併用療法で使用するのに適している。本発明の特定の利点は、それが、1日1回の経口投与を、その他の経口投与薬での治療を1日1回のレジメンで受けている患者にとって好都合であるレジメンを可能にすることである。経口投与は、患者自身または患者宅の介護者によって容易に成し遂げられ、病院または居住ケア施設内の患者にとっても好都合な投与経路である。
【0136】
例示すれば、併用療法は、本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物を、ボルテゾミブ、カルボプラチン、シスプラチン、シクロホスファミド、ダカルバジン、デキサメタゾン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エトポシド、フルダラビン、イリノテカン、パクリタキセル、ラパマイシン、リツキシマブ、ビンクリスチンなどの1種以上と同時に、例えばCHOP(シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾン)、RCVP(リツキシマブ+シクロホスファミド+ビンクリスチン+プレドニゾン)、R−CHOP(リツキシマブ+CHOP)またはDA−EPOCH−R(用量を調節したエトポシド、プレドニゾン、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシンおよびリツキシマブ)などの多剤療法で投与することを含む。
【0137】
本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物は、限定はされないが、アルキル化剤、血管形成阻害剤、抗体、代謝拮抗剤、有糸分裂阻害剤、抗増殖剤、抗ウイルス剤、オーロラキナーゼ阻害剤、その他のアポトーシス促進剤(例えば、Bcl−X、Bcl−wおよびBfl−1阻害剤)、細胞死受容体経路の活性化剤、Bcr−Ab1キナーゼ阻害剤、BiTE(二重特異性T−細胞誘引体(engager))抗体、抗体−薬物複合体、生物応答調節剤、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)阻害剤、細胞周期阻害剤、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)阻害剤、二重可変ドメイン結合性タンパク質(DVD)、ヒト表皮増殖因子受容体2(ErbB2またはHER/2neu)受容体阻害剤、増殖因子阻害剤、熱ショックタンパク質(HSP)−90阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、ホルモン療法剤、免疫剤、アポトーシスタンパク質の阻害剤(IAP)、挿入型抗菌剤、キナーゼ阻害剤、キネシン阻害剤、JAK2阻害剤、ラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)阻害剤、ミクロRNA、マイトジェン活性化細胞外シグナル調節キナーゼ(MEK)阻害剤、多価結合性タンパク質、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ポリ−ADP(アデノシンジホスフェート)−リボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤、白金化学療法剤、ポロ様キナーゼ(PLK)阻害剤、ホスホイノシチド−3キナーゼ(PI3K)阻害剤、プロテアソーム阻害剤、プリン類似体、ピリミジン類似体、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、レチノイド、デルトイド、植物アルカロイド、小型阻害性リボ核酸(siRNA)、トポイソメラーゼ阻害剤、ユビキチンリガーゼ阻害剤などを含む1種以上の治療剤との併用療法で投与することができる。
【0138】
BiTE抗体は、T−細胞に、2つの細胞を同時に拘束することによってがん細胞を攻撃するように命令する二重特異性抗体である。T−細胞は、次いで、標的のがん細胞を攻撃する。BiTE抗体の例には、限定はされないが、アデカツムマブ(Micromet MT201)、ビリナツモマブ(Micromet MT103)などが含まれる。理論によって拘束されるものではないが、T−細胞が標的がん細胞のアポトーシスを誘発する機構の1つは、パーフォリンおよびグランザイムBを含む細胞溶解性顆粒成分のエクソサイトーシスによるものである。これに関して、Bcl−2は、パーフォリンおよびグランザイムBの双方によるアポトーシスの誘導を減衰することがわかっている。これらのデータは、Bcl−2の阻害が、がん細胞に向けられると、T−細胞によって誘発される細胞傷害効果を増強する可能性があることを示唆する(Suttonら(1997)J.Immunol.158:5783−5790)。
【0139】
siRNAは、内因性RNA塩基または化学的に修飾されたヌクレオチドを有する分子である。該修飾は、細胞活性を破壊せず、むしろ、安定性の増加および/または細胞能力の増大を付与する。化学修飾の例には、ホスホロチオエート基、2’−デオキシヌクレオチド、2’−OCH−含有リボヌクレオチド、2’−F−リボヌクレオチド、2’−メトキシエチルリボヌクレオチドおよびこれらの組合せなどが含まれる。siRNAは、様々な長さ(例えば10−200bps)および構造(例えば、ヘアピン、1本/2本鎖、バルジ、ニック/ギャップ、不適正塩基対)を有することができ、細胞中で処理されて活性な遺伝子抑制を提供する。2本鎖siRNA(dsRNA)は、それぞれの鎖(平滑末端)または非対称末端(オーバーハング)上に同一数のヌクレオチドを有することができる。1−2のヌクレオチドのオーバーハングは、センスおよび/またはアンチセンス鎖上に存在することができ、与えられた鎖の5’−および/または3’−末端上に存在することができる。例えば、Mcl−1を標的とするsiRNAは、種々の腫瘍細胞系においてABT−263またはABT−737の活性を増強することが示された(Tseら(2008)Cancer Res.68:3421−3428およびその中の参考文献)。
【0140】
多価結合性タンパク質は、2つ以上の抗原結合部位を含む結合性タンパク質である。多価結合性タンパク質は、3つ以上の抗原結合部位を有するように遺伝子操作され、一般に、天然に存在する抗体ではない。用語「多重特異的結合性タンパク質」は、2種以上の関連または非関連標的を拘束する能力のある結合性タンパク質を意味する。二重可変ドメイン(DVD)結合性タンパク質は、2つ以上の抗原結合部位を含むタンパク質を拘束する四価または多価の結合性タンパク質である。このようなDVDは、単一特異性(すなわち、1種の抗原を拘束する能力のある)または多特異性(すなわち、2種以上の抗原を拘束する能力のある)でよい。2つの重鎖DVDポリペプチドおよび2つの軽鎖DVDポリペプチドを含むDVD結合性タンパク質は、DVDIgと呼ばれる。DVDIgのそれぞれ半分は、重鎖DVDポリペプチド、軽鎖DVDポリペプチドおよび2つの抗原結合部位を含む。各結合部位は、抗原結合部位につき抗原結合に関与する全部で6つのCDRと共に重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む。
【0141】
アルキル化剤には、アルトレタミン、AMD−473、AP−5280、アパジコン、ベンダムスチン、ブロスタリシン、ブスルファン、カルボコン、カルムスチン(BCNU)、クロルアンブシル、クロルエタジン(商標)(ラロムスチン、VNP40101M)、シクロホスファミド、ダカルバジン、エストラムスチン、ホテムスチン、グルホスファミド、イホスファミド、KW−2170、ロムスチン(CCNU)、マホスファミド、メルファラン、ミトブロニトール、ミトラクトール、ニムスチン、ナイトロゲンマスタードN−オキシド、ラニムスチン、テモゾロミド、チオテパ、トレオスルファン、トロホスファミドなどが含まれる。
【0142】
血管新生阻害剤には、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、内皮特異的受容体チロシンキナーゼ(Tie−2)阻害剤、インスリン増殖因子−2受容体(IGFR−2)阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ−2(MMP−2)阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ−9(MMP−9)阻害剤、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)阻害剤、トロンボスポンジン類似体、血管内皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ(VEGFR)阻害剤などが含まれる。
【0143】
代謝拮抗剤には、Alimta(商標)(ペメトレキセド二ナトリウム)、LY231514、MTA)、5−アザシチジン、Xeloda(商標)(カペシタビン)、カルモフール、Leustat(商標)(クラドリビン)、クロファラビン、シタラビン、シタラビンオクホスファート、シトシンアラビノシド、デシタビン、デフェロキサミン、ドキシフルリジン、エフロルニチン、EICAR(5−エチニル−1−β−D−リボフラノシルイミダゾール−4−カルボキサミド)、エノシタビン、エチニルシチジン、フルダラビン、5−フルオロウラシル(5−FU)の単独またはロイコボリンとの併用、Gemzar(商標)(ゲムシタビン)、ヒドロキシウレア、Alkeran(商標)(メルファラン)、メルカプトプリン、6−メルカプトプリンリボシド、メトトレキサート、ミコフェノール酸、ネララビン、ノラトレキセド、オクホスファート、ペリトレクソール、ペントスタチン、ラルチトレキセド、リバビリン、S−1、トリアピン、トリメトレキサート、TS−1、チオゾフリン、テガフール、ビダラビン、UFTなどが含まれる。
【0144】
抗ウイルス剤には、リトナビル、ヒドロキシクロロキンなどが含まれる。
【0145】
オーロラキナーゼ阻害剤には、ABT−348、AZD−1152、MLN−8054、VX−680、オーロラA特異的キナーゼ阻害剤、オーロラB特異的キナーゼ阻害剤、全オーロラキナーゼ阻害剤などが含まれる。
【0146】
ABT−263または本明細書中の式Iの化合物以外のBcl−2ファミリータンパク質阻害剤には、AT−101((−)ゴシポール)、Bcl−2を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドであるGenasense(商標)(G3139またはオブリメルセン)、IPI−194、IPI−565、ABT−737、GX−070(オバトクラックス)などが含まれる。
【0147】
Ber−Ab1キナーゼ阻害剤には、ダサチニブ(BMS−354825)、Gleevec(商標)(イマチニブ)などが含まれる。
【0148】
CDK阻害剤には、AZD−5438、BMI−1040、BMS−387032、CVT−2584、フラボピリドール、GPC−286199、MCS−5A、PD0332991、PHA−690509、セリシクリブ(CYC−202またはR−ロスコビチン)、ZK−304709などが含まれる。
【0149】
COX−2阻害剤には、ABT−963、Arcoxia(商標)(エトリコキシブ)、Bextra(商標)(バルデコキシブ)、BMS−347070、Celebrex(商標)(セレコキシブ)、COX−189(ルミラコキシブ)、CT−3、Deramaxx(商標)(デラコキシブ)、JTE−522、4−メチル−2−(3,4−ジメチルフェニル)−1−(4−スルファモイルフェニル)−1H−ピロール、MK−663(エトリコキシブ)、NS−398、パレコキシブ、RS−57067、SC−58125、SD−8381、SVT−2016、S−2474、T−614、Vioxx(商標)(ロフェコキシブ)などが含まれる。
【0150】
EGFR阻害剤には、ABX−FGF、抗EGFR免疫リポソーム、EGF−ワクチン、EMD−7200、Erbitux(商標)(セツキシマブ)、HR3、IgA抗体、Iressa(商標)(ゲフィニチブ)、Tarceva(商標)(エルロチニブまたはOSI−774)、TP−38、EGFR融合タンパク質、Tykerb(商標)(ラパチニブ)などが含まれる。
【0151】
ErbB2受容体阻害剤には、CP−724714、CI−1033(カネルチニブ)、Herceptin(商標)(トラスツズマブ)、Tykerb(商標)(ラパチニブ)、Omnitarg(商標)(2C4、ペツズマブ)、TAK−165、GW−572016(イオナファミブ)、GW−282974、EKB−569、PI−166、dHER2(HER2ワクチン)、APC−8024(HER2ワクチン)、抗HER/2neu二重特異性抗体、B7.her2IgG3、AS HER2三官能性二重特異性抗体、mAB AR−209、mAB 2B−1などが含まれる。
【0152】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤には、デプシペプチド、LAQ−824、MS−275、トラポキシン、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、TSA、バルプロン酸などが含まれる。
【0153】
HSP−90阻害剤には、17AAG、CNF−101、CNF−1010、CNF−2024、17−DMAG、ゲルダナマイシン、IPI−504、KOS−953、Mycograb(商標)(HSP−90に対するヒト組換え抗体)、nab−17AAG、NCS−683664、PU24FCl、PU−3、ラジシコール、SNX−2112、STA−9090、VER−49009などが含まれる。
【0154】
アポトーシスタンパク質の阻害剤には、HGS−1029、GDC−0145、GDC−0152、LCL−161、LBW−242などが含まれる。
【0155】
抗体−薬物複合体には、抗CD22−MC−MMAF、抗CD22−MC−MMAE、抗CD22−MCC−DMI、CR−011−vcMMAE、PSMA−ADC、MEDI−547、SGN−19A、SGN−35、SGN−75などが含まれる。
【0156】
細胞死受容体経路の活性化剤には、TRAILおよび抗体、またはその他のアポマブ(apomab)、コナツムマブ、ETR2−ST01、GDC0145(レキサツムマブ)、HGS−1029、LBY−135、PRO−1762、トラスツズマブなどのTRAILまたは細胞死受容体(例えば、DR4およびDR5)を標的とするその他の薬剤が含まれる。
【0157】
キネシン阻害剤には、AZD−4877およびARRY−520などのEg5阻害剤、GSK−923295AなどのCENPE阻害剤などが含まれる。
【0158】
JAK2阻害剤には、CEP−701(レスタウルチニブ)、XL019、INCB−018424などが含まれる。
【0159】
MEK阻害剤には、ARRY−142886、ARRY−438162、PD−325901、PD−98059などが含まれる。
【0160】
mTOR阻害剤には、AP−23573、CCI−779、エベロリムス、RAD−001、ラパマイシン、テムシロリムス、PI−103、PP242、PP30およびTorin1を含むATP−競合TORC1/TORC2阻害剤などが含まれる。
【0161】
非ステロイド性抗炎症薬には、Amigesic(商標)(サルサラート)、Dolobid(商標)(ジフルニサル)、Motrin(商標)(イブプロフェン)、Orudis(商標)(ケトプロフェン)、Relafen(商標)(ナブメトン)、Feldene(商標)(ピロキシカム)、イブプロフェンクリーム、Aleve(商標)およびNaprosyn(商標)(ナプロキセン)、Voltaren(商標)(ジクロフェナク)、Indocin(商標)(インドメタシン)、Clinoril(商標)(スリンダク)、Tolectin(商標)(トルメチン)、Lodine(商標)(エトドラク)、Toradol(商標)(ケトロラク)、Daypro(商標)(オキサプロジン)などが含まれる。
【0162】
PDGFR阻害剤には、CP−673451、CP−898596などが含まれる。
【0163】
白金系化学療法剤には、シスプラチン、Eloxatin(商標)(オキサリプラチン)、エプタプラチン、ロバプラチン、ネダプラチン、Paraplatin(商標)(カルボプラチン)、ピコプラチン、サトラプラチンなどが含まれる。
【0164】
ポロ様キナーゼ阻害剤には、BI−2536などが含まれる。
【0165】
ホスホイノシチド−3キナーゼ阻害剤には、ウォルトマンニン、LY−294002、XL−147、CAL−120、ONC−21、AEZS−127、ETP−45658、PX−866、GDC−0941、BGT226、BEZ235、XL765などが含まれる。
【0166】
トロンボスポンジン類似体には、ABT−510、ABT−567、ABT−898、TSP−1などが含まれる。
【0167】
VEGFR阻害剤には、Avastin(商標)(バベシズマブ)、ABT−869、AEE−788、Angiozyme(商標)(血管新生を阻害するリボザイム(Ribozyme Pharmaceuticals(Boulder、コロラド州)およびChiron(Emeryville、カリフォルニア州))、アキシチニブ(AG−13736)、AZD−2171、CP−547632、IM−862、Macugen(商標)(ペガプタニブ)、Nexavar(商標)(ソラフェニブ、BAY43−9006)、パゾパニブ(GW−786034)、バタラニブ(PTK−787またはZK−222584)、Sutent(商標)(スニチニブまたはSU−11248)、VEGFトラップ、Zactima(商標)(バンデタニブまたはZD−6474)などが含まれる。
【0168】
抗菌剤には、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アムルビシン、アンナマイシン、Adriamycin(商標)(ドキソルビシン)、Blenoxane(商標)(ブレオマイシン)、ダウノルビシン、Caelyx(商標)およびMyocet(商標)(リポソーム化ドキソルビシン)などのインターカレート型抗菌剤、エルサミトルシン、エピルビシン、グラルビシン、イダルビシン、ミトマイシンC、ネモルビシン、ネオカルジノスタチン、ペプロマイシン、ピラルビシン、レベッカマイシン、スチマラマー、ストレプトゾシン、Valstar(商標)(バルルビシン)、ジノスタチンなどが含まれる。
【0169】
トポイソメラーゼ阻害剤には、アクラルビシン、9−アミノカンプトテシン、アモナフィド、アムサクリン、ベカテカリン、ベロテカン、BN−80915、Camptosar(商標)(塩酸イリノテカン)、カンプトテシン、Cardioxane(商標)(デキストラゾキサン)、ジフロモテカン、エドテカリン、Ellence(商標)およびPharmorubicin(商標)(エピルビシン)、エトポシド、エクサテカン、10−ヒドロキシカンプトテシン、ギマテカン、ルートテカン、ミトキサントロン、オラテシン、ピラルブシン、ピクサントロン、ルビテカン、ソブゾキサン、SN−38、タフルポシド、トポテカンなどが含まれる。
【0170】
抗体には、Avastin(商標)(ベバシズマブ)、CD40特異的抗体、chTNT−1/B、デノスマブ、Erbitux(商標)(セツキシマブ)、Humax−CD4(商標)(ザノリムマブ)、IGF1R特異的抗体、リンツズマブ、Panorex(商標)(エドレコロマブ)、Rencarex(商標)(WXG250)、Rituxan(商標)(リツキシマブ)、チシリムマブ、トラスツズマブ、CD20−抗体IおよびII型などが含まれる。
【0171】
ホルモン療法剤には、Arimidex(商標)(アナストロゾール)、Aromasin(商標)(エキセメスタン)、アルゾキシフェン、Casodex(商標)(ビカルタミド)、Cetrotide(商標)(セトロレリックス)、デガレリックス、デスロレリン、Desopan(商標)(トリロスタン)、デキサメタゾン、Drogenil(商標)(フルタミド)、Evista(商標)(ラロキシフェン)、Afema(商標)(ファドロゾール)、Fareston(商標)(トレミフェン)、Faslodex(商標)(フルベストラント)、Femara(商標)(レトロゾール)、フォルメスタン、グルココルチコイド類、Hectorol(商標)(ドキセルカルシフェロール)、Renagel(商標)(炭酸セベラマー)、ラソフォキシフェン、酢酸ロイプロリド、Megace(商標)(メゲストロール)、Mifeprex(商標)(ミフェプリストン)、Nilandron(商標)(ニルタミド)、Nolvadex(商標)(クエン酸タモキシフェン)を含むタモキシフェン、Plenaxis(商標)(アバレリックス)、プレドニゾン、Propecia(商標)(フィナステリド)、リロスタン、Suprefact(商標)(ブセレリン)、Trelstar(商標)(トリプトレリン)を含むルテイン化ホルモン放出ホルモン(LHRH)、Vantas(商標)(ヒストレリンインプラント)を含むヒストレリン、Modrastane(商標)(トリロスタン)、Zoladex(商標)(ゴセレリン)などが含まれる。
【0172】
デルトイドおよびレチノイドには、セオカルシトール(EB1089またはCB1093)、レキサカルシトール(KH1060)、フェンレチニド、Panretin(商標)(アリトレチノイン)、Atragen(商標)(リポソーム化トレチノイン)を含むトレチノイン、Targretin(商標)(ベキサロテン)、LGD−1550などが含まれる。
【0173】
PARP阻害薬には、ABT−888、オラパリブ、KU−59436、AZD−2281、AG−014699、BSI−201、BGP−15、INO−1001、ONO−2231などが含まれる。
【0174】
植物アルカロイドには、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビンなどが含まれる。
【0175】
プロテアソーム阻害剤には、Velcade(商標)(ボルテゾミブ)、MG132、NPI−0052、PR−171などが含まれる。
【0176】
免疫剤の例には、インターフェロンおよびその他の免疫増強剤が含まれる。インターフェロンには、インターフェロンα、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンβ、インターフェロンγ−1a、Actimmune(商標)(インターフェロンγ−1b)、インターフェロンγ−n1、これらの組合せなどが含まれる。その他の薬剤には、アルファフェロン(IFN−α)、BAM−002(酸化グルタチオン)、Beromun(商標)(タソネルミン)、Bexxar(商標)(トシツモマブ)、Campath(商標)(アレムツズマブ)、CTLA4(細胞障害性リンパ球抗原4)、ダカルバジン、デニロイキン、エプラツズマブ、Granocyte(商標)(レノグラスチム)、レンチナン、ロイコサイトαインターフェロン、イミキモド、MDX−010(抗CTLA−4)、メラノーマワクチン、ミツモマブ、モルグラモスチム、Mylotarg(商標)(ゲムツズマブオゾガマイシン)、Neupogen(商標)(フィルグラスチム)、OncoVaC−CL、Ovarex(商標)(オレゴボモマブ)、ペムツモマブ(Y−muHMFG1)、Provenge(商標)(シプロイセル−T)、サルガラモスチム、シゾフィラン、テセロイキン、Theracys(商標)(BCGまたはカルメット−ゲラン桿菌)、ウベニメクス、Virulizin(商標)(免疫療法剤、Lorus Pharmaceuticals)、Z−100(丸山ワクチンまたはSSM)、WF−10(テトラクロロデカオキシドまたはTCDO)、Proleukin(商標)(アルデスロイキン)、Zadaxin(商標)(チマルファシン)、Zenapax(商標)(ダクリズマブ)、Zevalin(商標)(90Y−イブリツモマブチウキセタン)などが含まれる。
【0177】
生物応答調節剤は、生存生物体の防御機構または組織細胞の生存、増殖もしくは分化などの生物学的応答を、それらが抗腫瘍活性を有するような方向に向けて修正する薬剤であり、クレスチン、レンチナン、シゾフィラン、ピシバニル、PF−3512676(CpG−8954)、ウベニメクスなどが含まれる。
【0178】
ピリミジン類似体にはシタラビン(シトシンアラビノシド、araCまたはアラビノシドC)、ドキシフルリジン、Fludara(商標)(フルダラビン)、5−FU(5−フルオロウラシル)、フロクスリジン、Gemzar(商標)(ゲムシタビン)、Tomudex(商標)(ラルチトレキセド)、トリアセチルウリジン、Troxatyl(商標)(トロキサシタビン)などが含まれる。
【0179】
プリン類似体には、Lanvis(商標)(チオグアニン)、Purinethol(商標)(メルカプトプリン)などが含まれる。
【0180】
抗有糸分裂剤には、バタブリン、エポチロンD(KOS−862)、N−(2−((4−ヒドロキシフェニル)アミノ)ピリジン−3−イル)−4−メトキシベンゼンスルホンアミド、イクサベピロン(BMS−247550)、パクリタキセル、Taxotere(商標)(ドセタキセル)、ラロタキセル(PNU−100940、RPR−109881またはXRP−9881)、パツピロン、ビンフルニン、ZK−EPO(合成エポチロン)などが含まれる。
【0181】
ユビキチンリガーゼ阻害剤には、ナトリン類などのMDM2阻害剤、MLN4924などのNEDD8阻害剤などが含まれる。
【0182】
本発明の組成物は、また、放射線療法の効力を増強する放射線増感剤として使用することができる。放射線療法の例には、限定はされないが、外部ビーム放射線療法(XBRT)、遠隔療法、小線源療法、密封線源放射線療法、非密封線源放射線療法などが含まれる。
【0183】
付加的または代わりに、本発明の組成物は、Abraxane(商標)(ABI−007)、ABT−100(ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤)、Advexin(商標)(Ad5CMV−p53ワクチンまたはコンツスゲンラデノベック(contusugene ladenovec))、Altocor(商標)またはMevacor(商標)(ロバスタチン)、Ampligen(商標)(ポリ(I)−ポリ(C12U)、合成RNA)、Aptosyn(商標)(エクシスリンド)、Aredia(商標)(パミドロン酸)、アルグラビン、L−アスパラギナーゼ、アタメスタン(1−メチル−3,17−ジオン−アンドロスタ−1,4−ジエン)、Avage(商標)(タザロテン)、AVE−8062(コンブレタスタチン誘導体)、BEC2(ミツモマブ)、カケクチンまたはカケキシン(腫瘍壊死因子)、Canvaxin(商標)(メラノーマワクチン)、CeaVac(商標)(がんワクチン)、Celeuk(商標)(セルモロイキン)、ヒスタミン含有Ceplene(商標)(二塩酸ヒスタミン)、Cervarix(商標)(AS04アジュバンド吸収型ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン)、CHOP(Cytoxan(商標)(シクロホスファミド)+Adriamycin(商標)(ドキソルビシン)+Oncovin(商標)(ビンクリスチン)+プレドニゾン)、コンブレタスタチンA4P、Cypat(商標)(シプロテロン)、DAB(389)EGF(His−Alaリンカーを介してヒト上皮増殖因子に融合されたジフテリア毒素の触媒および転座ドメイン)、ダカルバジン、ダクチノマイシン、Dimericine(商標)(T4N5リポソームローション)、5,6−ジメチルキサンテノン−4−酢酸(DMXAA)、デスコデルモリド、DX−8951f(メシル酸エクサテカン)、エニルウラシル(エチニルウラシル)、スクアラミン含有Evizon(商標)(乳酸スクアラミン)、エンザスタウリン、EPO−906(エポチロンB)、Gardasil(商標)(四価ヒトパピローマウイルス(6、11、16,18型)組換えワクチン)、Gastrimmune(商標)、Genasense(商標)(オブリメルセン)、GMK(ガングリオシド複合ワクチン)、GVAX(商標)(前立腺がんワクチン)、ハロフギノン、ヒステレリン、ヒドロキシカルバミド、イバンドロン酸、IGN−101、IL−13−PE38、IL−13−PE38QQR(シントレデキンベスドトクス)、IL−13−シュードモナス外毒素、インターフェロン−α、インターフェロン−γ、Junovan(商標)およびMepact(商標)(ミファムルチド)、ロナファルニブ、5,10−メチレンテトラヒドロフォーレート、ミルテフォシン(ヘキサデシル−ホスホコリン)、Neovastat(商標)(AE−941)、Neutrexin(商標)(グルクロン酸トリメトレキサート)、Nipent(商標)(ペントスタチン)、Onconase(商標)(ランピルナーゼ、リボヌクレアーゼ酵素)、Oncophage(商標)(ビテスペン、メラノーマワクチン治療)、OncoVAX(商標)(IL−2ワクチン)、Orathecin(商標)(ルビテカン)、Osidem(商標)(抗体をベースにした細胞薬)、Ovarex(商標)MAb(ネズミモノクロナール抗体)、パクリタキセルのアルブミン安定化ナノ粒子、パクリタキセル、Pandimex(商標)(チョウセンニンジンからの、20(S)−プロトパナキサジオール(aPPD)および20(S)−プロトパナキサトリオール(aPPT)を含むアグリコンサポニン)、パニツムマブ、Panvac(商標)−VF(治験がんワクチン)、ペグアスパルガーゼ、ペグインターフェロンα(PEGインターフェロンA)、フェノキソジオール、プロカルバジン、レビマスタット、Removab(商標)(カツマクソマブ)、Revlimid(商標)(レナリドミド)、RSR13(エファプロキシラル)、Somatuline(商標)LA(ランレオチド)、Soriatane(商標)(アシトレチン)、スタウロスポリン(Streptomyces staurospores)、タラボスタット(PT100)、Targretin(商標)(ベキサロテン)、Taxoprexin(商標)(ドコサヘキサエン酸(DHA)+パクリタキセル)、Telcyta(商標)(カンホスファミド、TLK−286)、Temodar(商標)(テモゾロミド)、テスミリフェン、テトランドリン、サリドマイド、Theratope(商標)(STn−KLHワクチン)、Thymitaq(商標)(二塩酸ノラトレキセド)、TNFerade(商標)(アデノベクター:腫瘍壊死因子−αのための遺伝子を含むDNA担体)、Tracleer(商標)またはZavesca(商標)(ボセンタン)、TransMID−107R(商標)(KSB−311、ジフテリア毒素)、トレチノイン(レチン−A)、Trisenox(商標)(三酸化ヒ素)、Ukrain(商標)(より大きなクサノオウ植物由来のアルカロイドの誘導体)、Virulizin(商標)、Vitaxin(商標)(抗−αvβ3抗体)、Xcytrin(商標)(モテキサフィンガドリニウム)、Xinlay(商標)(アトラセンタン)、Xyotax(商標)(パクリタキセルポリグルメックス)、Yondelis(商標)(トラベクテジン)、ZD−6126(N−アセチルコルチノール−O−ホスフェート)、Zinecard(商標)(デクスラゾキサン)、ゾレドラン酸、ゾルビシンなどから選択される1種以上の抗腫瘍または化学療法剤との併用療法で投与することができる。
【0184】
一実施形態において、本発明の組成物、例えばATB−263を含む組成物は、その間に1種以上の抗アポトーシス性Bcl−2タンパク質、抗アポトーシス性Bcl−Xタンパク質および抗アポトーシス性Bcl−wタンパク質を過剰発現している疾患を治療するために、それを必要とする対象に治療有効量で投与される。
【0185】
別の実施形態において、本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物は、異常な細胞増殖および/または調節不全型アポトーシスの疾患を治療するために、それを必要とする対象に治療有効量で投与される。
【0186】
このような疾患の例には、限定はされないが、がん、中皮腫、膀胱がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部のがん、皮膚または眼内のメラノーマ、卵巣がん、乳がん、子宮がん、卵管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸部の癌、膣の癌、外陰部の癌、骨がん、結腸がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、消化管(胃、結腸直腸および/または十二指腸)がん、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ球性白血病、食道がん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、尿道のがん、ペニスのがん、精巣がん、幹細胞(肝管および/または胆管)がん、原発性または続発性中枢神経系腫瘍、原発性または続発性脳腫瘍、ホジキン病、慢性または急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞またはB細胞起源のリンパ系悪性腫瘍、メラノーマ、多発性骨髄腫、口腔がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、小細胞肺がん、腎臓および/または尿管のがん、腎細胞癌、腎盂の癌、中枢神経系の新生物、原発性中枢神経系リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質がん、胆嚢がん、脾臓のがん、胆管細胞癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫またはこれらの組合せが含まれる。
【0187】
より詳細な実施形態において、本発明の組成物、例えばABT−263を含む組成物は、膀胱がん、脳がん、乳がん、骨髄がん、子宮頸部がん、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ球性白血病、結腸直腸がん、食道がん、肝細胞がん、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞またはB細胞起源のリンパ系悪性腫瘍、メラノーマ、骨髄性白血病、口腔がん、卵巣がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、小細胞肺がんまたは脾臓がんを治療するために、それを必要とする対象に治療有効量で投与される。
【0188】
これらの実施形態のいずれかにより、組成物を、単剤療法でまたは1種以上のさらなる治療剤との併用療法で投与することができる。
【0189】
例えば、対象における中皮腫、膀胱がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部のがん、皮膚または眼内のメラノーマ、卵巣がん、乳がん、子宮がん、卵管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸部の癌、膣の癌、外陰部の癌、骨がん、結腸がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、消化管(胃、結腸直腸および/または十二指腸)がん、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ球性白血病、食道がん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、尿道のがん、ペニスのがん、精巣がん、幹細胞(肝管および/または胆管)がん、原発性または続発性中枢神経系腫瘍、原発性または続発性脳腫瘍、ホジキン病、慢性または急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞またはB細胞起源のリンパ系悪性腫瘍、メラノーマ、多発性骨髄腫、口腔がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、小細胞肺がん、腎臓および/または尿管のがん、腎細胞癌、腎盂の癌、中枢神経系の新生物、原発性中枢神経系リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質がん、胆嚢がん、脾臓のがん、胆管細胞癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫またはこれらの組合せを治療するための方法は、対象に、治療有効量の(a)本発明の組成物、例えば、ABT−263を含む組成物および(b)エトポシド、ビンクリスチン、CHOP、リツキシマブ、ラパマイシン、R−CHOP、RCVP、DA−EPOCH−Rまたはボルテゾミブの1種以上を投与することを含む。
【0190】
特定の実施形態において、本発明の組成物、例えば、ATB−263を含む組成物は、B細胞リンパ腫または非ホジキンリンパ腫などのリンパ系悪性腫瘍を治療するために、治療有効量のエトポシド、ビンクリスチン、CHOP、リツキシマブ、ラパマイシン、R−CHOP、RCVP、DA−EPOCH−Rまたはボルテゾミブとの併用療法において、それを必要とする対象に治療有効量で投与される。
【0191】
本発明は、また、ABT−263またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物を、より詳細にはABT−263の結晶性塩、例えば、ABT−263二塩酸塩を含むナノ粒子懸濁液を、1日に約50から約500mgのATB−263遊離塩基に相当する投与量で、約3時間から約7日の平均投与間隔で対象に投与することを含む、ヒトがん患者の血流中でABT−263および/またはその1種以上の代謝産物の治療上有効な血漿中濃度を維持する方法を提供する。
【0192】
何が治療上有効な血漿中濃度を構成するかは、とりわけ、患者に存在する個々のがん、がんのステージ、重症度および侵襲性、ならびに求める結果(例えば、安定化、腫瘍増殖の減速、腫瘍縮退、転移リスクの低減など)に依存する。血漿中濃度が、がんの治療に関して利益を提供するのに十分であると同時に、許容できないまたは耐えられない程度までの有害副作用を誘発するのに十分であってはならないことが、強く優先される。
【0193】
一般に癌を、およびとりわけ非ホジキンリンパ腫などのリンパ系悪性腫瘍を治療するには、ABT−263の血漿中濃度を、殆どの場合、約0.5から約10μg/mLの範囲に維持すべきである。したがって、ABT−263療法の過程中で、定常状態でのCmaxは、一般に、約10μg/mLを超えてはならず、および定常状態でのCminは、一般に、約0.5μg/mL未満に降下してはならない。上記に示す範囲内で、定常状態において約5を超えない、例えば約3を超えないCmax/Cmin比を提供するのに有効な1日投与量および平均投与間隔を選択することが、さらに望ましいことが見出される。より長い投与間隔は、より大きなCmax/Cmin比をもたらす傾向のあることが理解される。例示すれば、定常状態において、ABT−263に関して、約3から約8μg/mLのCmaxおよび約1から約5μg/mLのCminを本発明による目標とすることができる。
【0194】
治療上有効な血漿中ABT−263のレベルを維持するのに有効な1日投与量は、本発明の実施形態によれば、約50から約500mgである。殆どの場合、適切な1日投与量は、約200から約400mgである。例示すれば、1日投与量は、例えば、約50、約100、約150、約200、約250、約300、約350、約400、約450または約500mgでよい。
【0195】
治療上有効な血漿中ABT−263のレベルを維持するのに有効な平均投与間隔は、本発明の実施形態によれば、約3時間から約7日である。殆どの場合、適切な平均投与間隔は、約8時間から約3日または約12時間から約2日である。1日1回(q.d.)の投与レジメンが、適切であることが多い。
【0196】
本発明の実施形態の場合、ABT−263は、医薬組成物中に実例的にはABT−263二塩酸塩またはその他の結晶性ABT−263塩の形態で存在する。前により完全に定義したような本発明の任意のABT−263組成物を使用できる。
【0197】
他の実施形態においても同様に、本発明の実施形態による投与は、食物を摂取してまたは摂取しないで、すなわち非絶食または絶食条件で行うことができる。一般には、非絶食患者に本発明の組成物を投与することが好ましい。
【実施例】
【0198】
以下の実施例は、単なる例示にすぎず、いかなる意味でも本開示を限定するものではない。
【0199】
実施例中に示される濃度および投与量を含むABT−263の量は、すべて、そうでないことを明示しない限り、遊離塩基に相当する投与量として表される。ABT−263を二塩酸塩として使用する場合、1.076mgのABT−263二塩酸塩が、1mgのABT−263遊離塩基に相当する。
【0200】
実施例1:例示的ナノ粒子懸濁液の調製
ABT−263ナノ粒子懸濁液製剤を、下記に記載のように、高圧ホモジナイズによって調製した。製剤は、水中で次の組成(すべてのパーセンテージは、重量/容積として表した。)を有した:
製剤I(比較例)
ABT−263二塩酸塩 5%(4.65%の遊離塩基に相当)
ポロキサマー188 3%
製剤II(本発明の例示)
ABT−263二塩酸塩 5%(4.65%の遊離塩基に相当)
ポロキサマー188 3%
NaHCO 8.4%
【0201】
示した量のポロキサマー188(Pluronic(商標)F68)および製剤IIの場合には重炭酸ナトリウム(NaHCO)を含む水溶液を調製した。5%(重量/容積)(50mg/mL)の懸濁液を提供するのに十分な量の結晶性ABT−263二塩酸塩を、Sonifier(商標)ホモジナイザー(Branson Ultrasonic社、Danbury、コネチカット州)を使用して、それぞれの水溶液中に分散させた。生じる分散液を、次いで、Microfluidizer(商標)M−110L処理装置(Microfluidics International社、Newton、マサチューセッツ州)のサンプル槽に仕込み、12,000psi(ほぼ82.5MPa)で2時間処理した。サンプルの温度は、分散液を、チラーに連結された水浴に浸漬された熱交換器を通して流すことによって、始めから最後まで20±2℃の温度に維持した。
【0202】
そうして得られた懸濁液(製剤IおよびII)を、調製直後および5℃で14日間貯蔵した後に、粒径測定にかけた(実施例2参照)。製剤IIを、イヌでの経口薬物動態(PK)試験に供した(実施例3参照)。
【0203】
実施例2:ナノ懸濁液の粒径安定性に対する重炭酸ナトリウムの効果
製剤IおよびIIを、それらの粒径分布(D90およびD50)について比較した。粒径測定は、懸濁液の調製直後(t=0)および5℃で14日間貯蔵した後に実施した。さらに、t=0の時点で、1mLの各懸濁液を20mLの0.9%塩化ナトリウム(NaCl)溶液で希釈した懸濁液について、粒径を測定した。データを表1に示す。
【0204】
【表1】

【0205】
実施例3:例示ナノ懸濁液の薬物動態
実施例1の製剤IIの単回投与薬物動態を、非絶食ビーグル犬(n=4)において5mg/kgの経口投与の後に評価した。製剤は、2つの方法、すなわち経口胃管栄養法およびカプセルによって投与した。ヒスタミンで前処置された絶食イヌ(n=4)にも、製剤IIを経口胃管栄養法でのみ投与した。比較の目的で、ABT−263二塩酸塩の液体媒質中溶液製剤(製剤C、ABT−263二塩酸塩粉末から、Phosal 53MCT(商標)とエタノールとの90:10混合物中に25mg/mLの濃度で溶解して調製される。)を、非絶食イヌに投与した。製剤Cは、臨床試験においてABT−263を評価するのに使用した。Phosal 53MCT(商標)は、Phospholipid GmbH社によって供給される専売混合物であり、53%のホスファチジルコリンおよび29%の中鎖グリセリドを含む。
【0206】
一連のヘパリン処置血液サンプルを、各動物の頸静脈から、投与前および投与の0.25、0.5、1、1.5、2、3、4、6、9、12、15および24時間後に得た。血漿を、遠心(ほぼ4℃において2,000rpmで10分間)で分離し、アセトニトリルでのタンパク質沈降を利用してABT−263を単離した。
【0207】
ABT−263および内部標準を、アセトニトリル/0.1%トリフルオロ酢酸(容積で50:50)の移動相を0.7mL/分の流速で使用する、50×3mm Keystone Betasil CN(商標)5μmカラムで、互いからおよび共抽出された汚染物質から分離した。分析は、加熱ネブライザーインターフェースを備えたSciex API3000(商標)生体分子質量分析計で実施した。ABT−263および内部標準のピーク面積を、Sciex MacQuan(商標)ソフトウェアを利用して測定した。各サンプルの血漿中薬物濃度を、濃度に対してスパイクされた血漿標準のピーク面積比(親/内部標準)の最小二乗線形回帰解析(重みを付けない)によって計算した。血漿中濃度データを、WinNonlin3(Pharsight)を利用する多次指数関数的曲線フィッティングに供した。
【0208】
0から投与後t時間(最後に血漿中濃度を測定した時間、ここでは、24時間)までの血漿中濃度−時間曲線下面積(AUC0−24)を、血漿中濃度−時間プロフィール用の線形台形公式を利用して計算した。
【0209】
投与後24時間にわたる平均血漿中濃度を図1に示す。
【0210】
計算された平均PKパラメーターを表2に要約する。
【0211】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
約3μmを超えないD90粒径を有する固体微粒子状化合物を懸濁している水性媒質を含む液状医薬組成物であって;該化合物が、式I:
【化1】

[式中、
は、クロロまたはフルオロであり、ならびに
(1)Xは、アゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、1,4−オキサゼパン−4−イル、ピロリジン−1−イル、−N(CH、−N(CH)(CH(CH)、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル、もしくは2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イルであり、ならびにRは、
【化2】

であり、Xは、−CH−、−C(CH−または−CHCH−であり、
およびXは双方とも−Hまたは双方ともメチルであり、ならびに
は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードであるか、
または
(2)Xは、アゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、ピロリジン−1−イル、−N(CH)(CH(CH)もしくは7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イルであり、ならびにRは、
【化3】

であり、X、XおよびXは、上記の通りであるであるか、または
(3)Xは、モルホリン−4−イルもしくは−N(CHであり、ならびにRは、
【化4】

であり、Xは上記の通りである。]
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物であり;ならびに該水性媒質が、さらに、少なくとも1種の薬学的に許容される界面活性剤および少なくとも1種の薬学的に許容される塩基化剤を、一緒になって粒径増加を抑制するのに有効である量で含む、組成物。
【請求項2】
化合物が、約800nmを超えないD90粒径および/または約350nmを超えないD50粒径を有する、請求項1の組成物。
【請求項3】
薬物化合物が、約20から約200mg/mLの量で存在する、請求項1または請求項2の組成物。
【請求項4】
少なくとも1種の界面活性剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ノノキシノール9、ノノキシノール10、オクトキシノール9、ポロキサマー、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド、ポリオキシエチレン脂肪酸オイル、ポリオキシエチレン(8)(カプリル/カプリン酸)モノ−およびジグリセリド、ポリオキシエチレン(35)ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)水素化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、セテス−10、ラウレス−4、ラウレス−23、オレス−2、オレス−10、オレス−20、ステアレス−2、ステアレス−10、ステアレス−20、ステアレス−100、ポリオキシエチレン(20)セトステアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシエチレン(20)、ステアリン酸ポリオキシエチレン(40)、ステアリン酸ポリオキシエチレン(100)、ソルビタンエステル、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリソルベート20、ポリソルベート80、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ラウリン酸プロピレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン、グリセリル脂肪酸エステル、モノオレイン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、TPGS、チロキサポールおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から3のいずれかの組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の界面活性剤が、約10から約100mg/mLの界面活性剤総量で存在する、請求項1から4のいずれかの組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の塩基化剤が、重炭酸ナトリウムを含む、請求項1から5のいずれかの組成物。
【請求項7】
重炭酸ナトリウムが、約20から約200mg/mLの量で存在する、請求項6の組成物。
【請求項8】
化合物が、ABT−263またはその結晶性塩である、請求項1から7のいずれかの組成物。
【請求項9】
化合物が、ABT−263遊離塩基、ABT−263二塩酸塩またはこれらの組合せである、請求項1から7のいずれかの組成物。
【請求項10】
少なくとも1種の界面活性剤が、ポロキサマーを含み、および約10から約100mg/mLの界面活性剤総量で存在する、請求項9の組成物。
【請求項11】
少なくとも1種の界面活性剤が、ポロキサマー188を含み、および約15から約60mg/mLの界面活性剤総量で存在する、請求項9の組成物。
【請求項12】
少なくとも1種の塩基化剤が、重炭酸ナトリウムを含み、および約40から約160mg/mLの量で存在する、請求項9から11のいずれかの組成物。
【請求項13】
水性媒質が、生理食塩水媒質である、請求項1から12のいずれかの組成物。
【請求項14】
非経口または経口投与用に適合されている、請求項1から13のいずれかの組成物。
【請求項15】
約3μmを超えないD90粒径を有する微粒子状形態の式Iの化合物:
【化5】

[式中、
は、クロロまたはフルオロであり、ならびに
(1)Xは、アゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、1,4−オキサゼパン−4−イル、ピロリジン−1−イル、−N(CH、−N(CH)(CH(CH)、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル、もしくは2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イルであり、ならびにRは、
【化6】

であり、Xは、−CH−、−C(CH−または−CHCH−であり、
およびXは、双方とも−Hまたは双方ともメチルであり、ならびに
は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードであるか、
または
(2)Xは、アゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、ピロリジン−1−イル、−N(CH)(CH(CH)もしくは7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イルであり、ならびにRは、
【化7】

であり、X、XおよびXは、上記の通りであるか、または
(3)Xは、モルホリン−4−イルもしくは−N(CHであり、ならびにRは、
【化8】

であり、Xは上記の通りである。]
またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物;ならびに(a)少なくとも1種の界面活性剤および少なくとも1種の塩基化剤および(b)少なくとも1種の分散剤または増量剤を含む薬学的に許容される賦形剤を含む固形医薬組成物であって;水性媒体に分散性であり、界面活性剤および塩基化剤が粒径増加を抑制するのに一緒になって有効である量で存在する懸濁液を提供する、組成物。
【請求項16】
医薬組成物を調製する方法であって、活性医薬成分(API)を少なくとも1種の薬学的に許容される塩基化剤の存在下で、約3μmを超えないD90粒径まで湿式粉砕して粉砕された原体を準備することおよび粉砕された原体を水性媒質に少なくとも1種の薬学的に許容される界面活性剤の力を借りて懸濁させることを含み;少なくとも1種の塩基化剤および少なくとも1種の界面活性剤が、生じる懸濁液中に粒径増加を抑制するのに一緒になって有効である量で存在し;APIが、式Iの化合物:
【化9】

[式中、
は、クロロまたはフルオロであり、ならびに
(1)Xは、アゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、1,4−オキサゼパン−4−イル、ピロリジン−1−イル、−N(CH、−N(CH)(CH(CH)、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イル、もしくは2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−イルであり、ならびにRは、
【化10】

であり、Xは、−CH−、−C(CH−または−CHCH−であり、
およびXは、双方とも−Hまたは双方ともメチルであり、ならびに
は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードであるか、
または
(2)Xは、アゼパン−1−イル、モルホリン−4−イル、ピロリジン−1−イル、−N(CH)(CH(CH)もしくは7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン−7−イルであり、ならびにRは、
【化11】

であり、X、XおよびXは、上記の通りであるか、または
(3)Xは、モルホリン−4−イルもしくは−N(CHであり、ならびにRは、
【化12】

であり、Xは上記の通りである。]、
またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、プロドラッグの塩もしくは代謝産物を含む、方法。
【請求項17】
APIが、ABT−263二塩酸塩を含む、請求項16の方法。
【請求項18】
APIが、約800nmを超えないD90粒径および/または約350nmを超えないD50粒径まで粉砕される、請求項16または請求項17の方法。
【請求項19】
湿式粉砕が、高圧ホモジナイズを含む、請求項16から18のいずれかの方法。
【請求項20】
少なくとも1種の界面活性剤が、湿式粉砕の前に、APIおよび少なくとも1種の塩基化剤に添加される、請求項16から19のいずれかの方法。
【請求項21】
少なくとも1種の塩基化剤が、重炭酸ナトリウムを含む、請求項16から20のいずれかの方法。
【請求項22】
懸濁液に分散剤または増量剤を添加することおよび再構成可能な粉末を提供するために懸濁液を乾燥することをさらに含む、請求項16から21のいずれかの方法。
【請求項23】
アポトーシス機能不全および/または抗アポトーシス性Bcl−2ファミリータンパク質の過剰発現を特徴とする疾患を、該疾患を有する対象に治療有効量の組成物を投与することによって治療するための、請求項1から15のいずれかの組成物の使用。
【請求項24】
組成物が、非経口または経口で投与される、請求項23の使用。
【請求項25】
疾患が、腫瘍性疾患である、請求項23または請求項24の使用。
【請求項26】
腫瘍性疾患が、がん、中皮腫、膀胱がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部のがん、皮膚または眼内メラノーマ、卵巣がん、乳がん、子宮がん、卵管の癌、子宮内膜の癌、子宮頸部の癌、膣の癌、外陰部の癌、骨がん、結腸がん、直腸がん、肛門領域のがん、胃がん、消化管(胃、結腸直腸および/または十二指腸)がん、慢性リンパ球性白血病、急性リンパ球性白血病、食道がん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、副甲状腺のがん、副腎のがん、軟組織の肉腫、尿道のがん、ペニスのがん、精巣がん、肝細胞(肝管および/または胆管)がん、原発性または続発性中枢神経系腫瘍、原発性または続発性脳腫瘍、ホジキン病、慢性または急性白血病、慢性骨髄性白血病、リンパ球性リンパ腫、リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、T細胞またはB細胞起源のリンパ系悪性腫瘍、メラノーマ、多発性骨髄腫、口腔がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、小細胞肺がん、腎臓および/または尿管のがん、腎細胞癌、腎盂の癌、中枢神経系の新生物、原発性中枢神経系リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、副腎皮質がん、胆嚢がん、脾臓のがん、胆管細胞癌、線維肉腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項25の使用。
【請求項27】
腫瘍性疾患が、リンパ系悪性腫瘍である、請求項25の使用。
【請求項28】
リンパ系悪性腫瘍が、非ホジキンリンパ腫である、請求項27の使用。
【請求項29】
腫瘍性疾患が、慢性リンパ球性白血病または急性リンパ球性白血病である、請求項25の使用。
【請求項30】
投与される組成物が、ABT−263遊離塩基、ABT−263二塩酸塩またはこれらの組合せを含み、および組成物が、約3時間から約7日の平均治療間隔で、1日につき約50から約500mgのABT−263遊離塩基に相当する投与量で経口投与される、請求項23から29のいずれかの使用。
【請求項31】
組成物が、1日1回、1日につき約200から約400mgのABT−263遊離塩基に相当する投与量で投与される、請求項30の使用。
【請求項32】
組成物を患者に約3時間から約7日の平均投与間隔で1日につき約50から約500mgのABT−263遊離塩基に相当する投与量で投与することによって、ヒトがん患者の血流中でABT−263および/またはその1種以上の代謝産物の治療上有効な血漿中濃度を維持するための、請求項8の組成物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2012−530704(P2012−530704A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516170(P2012−516170)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/038526
【国際公開番号】WO2010/147899
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】