説明

安定なペプチド及びポリペプチドアナログ治療剤

本発明は、蛋白質分解に対して耐性のあるペプチド及びポリペプチドアナログの組成物、その医薬としての使用及びその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテイナーゼによる開裂に対して耐性のあるペプチド又はポリペプチドアナログの組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ポリペプチド及びペプチド治療剤は、医療において幅広く使用されている。組換えDNA技術又はペプチド合成のいずれかによるそれらの生産の容易さから、これらのものが今後も様々な状況で引き続き使用されることは確実である。従って、ホルモン、サイトカイン及び成長因子のようなポリペプチド治療剤は、治療剤の重要な部類を占める。しかしながら、ある種の天然ポリペプチドは、生体内で蛋白質分解又は異性化によって容易に不活性化され得る。このような不活性化は、該治療剤の一貫した又は持続した血中レベルを所定期間にわたって維持することが望まれる場合には不便である。そのときには、繰り返し投与することが必要だからである。ある場合には、ポリペプチドの蛋白質分解産物の1種以上が、そのままのポリペプチドの活性化に対して拮抗的であり得る。これらの場合には、追加の治療剤単独の添加は、該蛋白質分解産物のアンタゴニストの影響を克服するには不十分であり得る。
【0003】
さらに例示すると、血液中に長期にわたって存在することが有益であり得るペプチドホルモンの一部類としては、グルカゴン様ペプチド1及び2(それぞれGLP−1及びGLP−2)、グルコース依存性インスリン分泌刺激ペプチド(GIP)、神経ペプチドY(NPY)、膵臓ポリペプチド(PP)及びペプチドYY(PYY)が挙げられる。GLP−1は、グルコース代謝及び胃腸分泌・代謝における調節機能を有する重要なペプチドホルモンである。近年の試みにより、GLP−1は、膵臓内のβ細胞に対する成長因子であり、そして恐らくその他の器官においても同様に細胞分化に関わっていることが示されている。GLP−2は、消化管の疾患の治療において治療用途を有する33アミノ酸ペプチドである。特に、GLP−2が、適切な消化管機能を向上させ且つ維持し並びに腸組織の成長を促進させるための栄養剤として作用することが確認された(例えば、米国特許第5834428号、同5789379号及び5990077号並びに国際公開WO98/52600号パンフレットを参照)。GIPは、小腸内の内分泌細胞から合成され且つ分泌される42アミノ酸ペプチドである(例えば、R.A.Pederson外,Endocrinology99,780−785(1976)及びT.D.Usdin外,Endocrinology133,2861−2870(1993)を参照)。GIPの注入は、肝臓に及ぼすグルカゴンの影響を抑制すると同時に、インスリンの効果を向上させることが示された。さらに、GIPは、肝臓の血流に、門脈を介した流れを増加させ及び肝臓動脈を介した流れを抑制させるという二重の影響を及ぼす。神経ペプチドYは、36アミノ酸の膵臓ポリペプチドファミリーの一員である。このものは、ほ乳類の中枢神経系及び末梢神経系の両方において高度に濃縮されており、摂食の増加を生じさせることが知られている最も効能のある物質であり、しかもII型糖尿病の遺伝的基礎においてある種の役割を果たし得る(例えば、米国特許第6410701号、同6075009号、同5026685号、同5328899号及びK.Tatemoto,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79,5485−5489(1982)を参照)。ペプチドYY(PYY)及び膵臓ポリペプチド(PP)は、記憶喪失、鬱病、不安、てんかん、痛み、高血圧並びに睡眠及び摂食障害に関わる構造的に関連のあるペプチドホルモンである。
【0004】
これらのポリペプチドホルモン及びその他のポリペプチド因子は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)のような、セリンプロテイナーゼ酵素のプロリン後開裂クラスの一員によって分解すると考えられる。DPP−IVは、末位から2番目(P1)の位置に好ましくはプロリン残基、又はN末端残基(P2)がヒスチジン又はチロシン、トリプトファン若しくはフェニルアラニンのような大きな芳香族である場合には、アラニン残基を含有するペプチド鎖からN末端ジペプチドを開裂させる膜関連セリンペプチダーゼである。GLP−1、GIP及びGLP−2のアミノ末端配列は、それぞれ、His−Ala−Glu、Tyr−Ala−Glu及びHis−Ala−Aspである。NPY、PP及びPYYのアミノ末端配列は、それぞれ、Tyr−Pro−Ser、Ala−Pro−Leu及びTyr−Pro−Ileである。従って、DPP−IVは、生体内でこれらのポリペプチドホルモン並びにその他のポリペプチドのそれぞれの活性を調節することに関わる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
Xaa−Ala又はXaa−Proジペプチド(ここで、Xaaは所定のアミノ酸残基である)の上記の生物活性ペプチドホルモンのN末端からのDPP−IV仲介除去は、これらのものを不活性にし又はさらに拮抗的にする。従って、DPP−IVのようなセリンプロテイナーゼによるペプチドホルモンの開裂及び不活性化は、治療用ポリペプチドの使用について蛋白質分解によって課せられる大きな制限を例示する一つの例に過ぎない。よって、DPP−IV仲介不活性化のような蛋白質分解に対して安定性を示すアナログの発見が非常に興味のあるところである。従って、斯界には、蛋白質分解耐性ペプチドホルモンに対する要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要約
本発明は、一般に、プロテイナーゼによる開裂に対して耐性のあるペプチド又はポリペプチドアナログ(例えば、蛋白質分解に対して耐性のあるアナログ)(ここでは、「P'1アナログ」という。)の組成物を提供する。
【0007】
本発明の一態様は、P'1位置(アミド開裂部位のカルボキシ末端側に対する残基)でのプロリン後開裂プロテイナーゼに対する基質の修飾が該天然基質についての酵素仲介開裂に対して非常に小さな感受性を有する基質アナログを産生し得ると共に、該天然基質の生物学的活性もなお維持し得るという発見に関わる。例えば、P'1残基(DPP−IV開裂部位の)でのアミノ酸アナログによるプロリン後開裂セリンプロテイナーゼDPP−IVの基質の修飾は、DPP−IVによる開裂に対して非常に小さな感受性を有する基質アナログを生じさせるが、該内在性基質の生物学的活性もなお保持する。
【0008】
本発明の別の態様は、四置換Cβ炭素を有するアミノ酸アナログによるP'1残基(開裂部位の)でのプロテイナーゼ基質の修飾が、例えば、さらに長い生物学的作用の持続期間及び/又は野生型ポリペプチドに対する減少したクリアランスを有し得る、得られたアナログの生体内での半減期を著しく増大させ得るというより一般的な観察に関わる。この発見及び多様なプロテイナーゼによって開裂する基質に対するその適用性に基づき、本発明は、セリンプロテイナーゼ、メタロプロテイナーゼ、アスパラギン酸プロテイナーゼ及びシステインプロテイナーゼのようなプロテイナーゼに対する基質のP'1アナログを作製するための方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、主題である「P'1アナログ」の1種以上を含む医薬組成物も提供する。代表的な医薬組成物は、薬剤として許容できるキャリア又は賦形剤と共に処方される1種以上のP'1アナログを含む。
【0010】
本発明の別の態様は、治療上有効な量の該P'1アナログの1種以上を投与することを含む、被検体の疾患の治療方法である。主題のP'1アナログは、単独で投与でき、又は、特定の病気の兆候に適切なその他の療法を含む治療計画の一部分として投与できる。例示として、糖尿病の治療のためのP'1アナログの投与は、単独で使用でき、或いは、食事制限及び運動と組み合わせて及び/又はインスリンの投与と組み合わせて使用できる。さらに代表的な組合せ治療法は、P'1アナログの投与及び天然ポリペプチドを開裂させる特定の酵素の阻害剤の投与を含む。このような阻害剤は、特定の酵素に特異的であることができ(例えば、DPP−IV特異的阻害剤)又はこの酵素の部類に対してさらに一般的であることができる(例えば、セリンプロテアーゼ阻害剤)。
【0011】
本発明の別の態様は、診断の目的で主題のP'1アナログを使用することである。
【0012】
本発明の別の態様は、プロテイナーゼ耐性ペプチドを与えるための薬剤を製造するために主題のP'1アナログを使用することである。
【0013】
本発明の別の態様は、治療剤の製造にP'1アナログを使用することである。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、P'1アナログ、その医薬組成物及び/又は該P'1アナログを含むキットを同定し、製造し、マーケティングし、流通させ、及びライセンス契約することを含むビジネスの実施方法である。
【0015】
前述の態様のうち任意のものにおいて、本発明は、P'1アナログが、グルカゴン様ペプチド、NPY、PPY、セクレチン、GLP−1、GLP−2及びGIPのようなペプチドホルモンのアナログである組成物及び方法を意図する。しかしながら、本発明は、プロテイナーゼによって開裂する任意のポリペプチド又はペプチドホルモンをここに記載されるような開裂部位で修飾して蛋白質分解に対して耐性のあるP'1アナログを与えることができることを認識している。さらに、本発明は、多数の部類のプロテイナーゼのうち任意のものに対して耐性のあるP'1アナログがこれらの酵素の開裂部位についての知識及び本出願の教示に基づき容易にデザインできることも認識している。プロテイナーゼの代表的な部類としては、メタロプロテイナーゼ、アスパラギン酸プロテイナーゼ、システインプロテイナーゼ及びセリンプロテイナーゼが挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面の簡単な説明
図1は、DPP IVによる天然GLP−1分解の概略図である。
図2は、GLP−1(7〜37)の2つの異なるペプチドアナログがDPP−IVによる開裂に対して耐性であることを示すHPLC/MSの結果をまとめている。
図3は、3−ジメチルアスパルテート置換GLP−1アナログが天然GLP−1の機能活性を維持することを示している。左のグラフは、GLP−1及びGLP−1(3−DMA)が、同一ではないが類似する親和性で受容体に結合することを示している。右のグラフは、GLP−1及びGLP−1(3−DMA)が、GLP−1又はGLP−1アナログへの暴露後のcAMP産生によって測定されるときに、実施的に同一のシグナル伝達能力を有することを示している。
図4は、3−ブチルメチルグリシン置換GLP−1(GLP−1(BM))アナログが天然GLP−1の機能活性を維持することを示している。このグラフは、GLP−1及びGLP−1(BM)が、GLP−1又はGLP−1アナログへの暴露後のcAMP産生によって測定されるときに、実質的に同一のシグナル伝達能力を有することを示している。
図5は、ヒトDPP−IVで2時間にわたって処理されたGLP−1(7〜37)アミド(下)と未処理ペプチド(上)とのHPLC/MSによる比較を示している。DPP−IVによるGLP−1(7〜37)の処理は、ペプチドの時間依存欠失を生じさせたことに留意されたい。
図6は、P'1グルタミン酸の代わりに第三ロイシン(TLE)残基を含有するGLP−1アナログをヒトDPP−IVで2時間処理したHPLC/MSによる結果(下)を未処理ペプチド(上)と比較して示している。TLE−GLPアナログは、DPP−IVによる分解に対して耐性であったことに留意されたい。
図7は、セリンプロテアーゼであるトロンビンに対するモデルペプチド基質のP'1位置での第三ロイシン(TLE)の置換がトロンビンによる開裂に対して耐性のあるペプチドアナログの産生を生じさせることを示している。
図8は、生理食塩水のコントロール溶液と比較した、糖尿病マウスにおけるエキセンジン−4に対する3つの異なる投与量(40μg、4μg及び0.4μg)についての血中グルコースの経時的パーセント変化を示している。
図9は、生理食塩水又はGLP−1コントロールについての血中グルコースのパーセント変化と比較した、糖尿病マウスにおけるGLP−1(TPA1B4)アナログに対する40μgの投与量での血中グルコースの経時的パーセント変化を示している。
図10は、生理食塩水のコントロールと比較した、糖尿病マウスにおけるGLP−1(TPA1B4)アナログに対する3つの異なる投与量(800μg、80μg及び8μg)についての血中グルコースの経時的パーセント変化を示している。
図11は、生理食塩水又はGLP−1コントロールに対する血中グルコースのパーセント変化と比較した、糖尿病マウスにおけるGLP−1アナログ(TPA1B4)に対する20mg/kgの投与量での血中グルコースの経時的パーセント変化を示している。
図12は、生理食塩水又はGLP−1コントロールに対する血中グルコースレベルと比較した、GLP−1アナログに対する20mg/kgの投与量での経時的血中グルコースレベルを示している。
図13は、生理食塩水コントロールと比較した、エキセンジン−4に対する3つの異なる投与量(8μg、0.8μg及び0.08μg)についての血中グルコースの経時的パーセント変化を示している。
図14は、生理食塩水のコントロールと比較した、GLP−1に対する800μgの投与量についての血中グルコースの経時的パーセント変化を示している。
図15は、生理食塩水のコントロールと比較した、GLP−1アナログ(P1732)に対する2つの異なる投与量(8μg及び0.8μg)についての血中グルコースのパーセント変化を示している。
図16は、天然型アミノ酸がβ位(3位)でR1及びR4によって修飾された式(II)の代表的な具体例を示している。
【0017】
発明の詳細な説明
I.概要
本発明は、一般に、例えば、蛋白質分解酵素による開裂に対して減少した感受性に起因する増大した生体内半減期を有し、なお元の基質の所望の活性を保持するペプチド及びP'1アナログに関する。本発明のP'1アナログとしては、成長因子、サイトカイン、ペプチドホルモン並びにその他のポリペプチド及びペプチドであって生体内でのその活性及び/又は半減期が蛋白質分解開裂によって通常調節されるもののアナログが挙げられる。
【0018】
本発明の一態様は、P'1位置(アミド開裂部位のカルボキシ末端側に対する残基)でのプロリン後開裂プロテイナーゼに対する基質の修飾が、天然基質に対して大きく減少した酵素仲介開裂に対する感受性を有する基質アナログを生じさせ得、該天然基質の生物学的活性をなお保持し得るという発見に関わる。例えば、プロリン後開裂セリンプロテイナーゼDPP−IVの基質のP'1残基(該DPP−IV開裂部位の)でのアミノ酸アナログによる修飾は、DPP−IVによる開裂に対して減少した感受性を有する基質アナログを生じさせるが、原基質の生物学的活性をなお保持させる。
【0019】
P'1残基を別の天然型アミノ酸で置換することが予期されるが、好ましい具体例では、該P'1残基は、非天然型アミノ酸アナログ、さらに好ましくは、例えば立体構造的及び/又は電子的性質に関して類似の特性を保持する構造的アナログであるもので置換される。例示すると、ある具体例では、本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)のようなプロリン後開裂プロテイナーゼによる蛋白質分解に対する感受性を少なくする修飾ポリペプチドであって、該ポリペプチドがそのP'1位置で次式:
【化1】

(式中、
1及びR2は、独立して、低級アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシル、カルボキシル、カルボキシアミド、カルボニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アミン若しくはシアノから選択され、又は、R1及びR2は互いに4〜7個の原子の環を形成し、
3は、低級アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アミノ、アルコキシル、ハロゲン、カルボキシル、カルボキシアミド、カルボニル、シアノ、チオアルキル、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、−(CH2m4−、−(CH2mOH、−(CH2mCOOH、−(CH2)O−低級アルキル、−(CH2mO−低級アルケニル、−(CH2nO(CH2m4、−(CH2mSH、−(CH2mS−低級アルキル、−(CH2mS−低級アルケニル、−(CH2nS(CH2m−R4、(CH2mNH2、−(CH2mNC(=NH)NH2、−(CH2mC(=O)NH2又は−(CH2mNH2から選択され、
4は、それぞれの存在について独立して、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
mは0、1又は2であり、
nは0、1又は2である。)
のアミノ酸又はアミノ酸アナログによって修飾されたものを提供する。
【0020】
ある好ましい具体例では、R1及びR2は、それぞれ独立して、低級アルキル(好ましくは、メチル、エチル又はプロピル、さらに好ましくはメチル)のような小さな疎水性基、ハロゲン又はハロゲン化低級アルキルを表す。
【0021】
ある種の好ましい具体例では、R3は低級アルキル、より好ましくは、メチル、エチル又はプロピル、さらに好ましくはメチルを表す。その他の好ましい具体例では、R3は、フェニル又はヒドロキシフェニル(好ましくは、p−ヒドロキシ)のようなアリールを表す。さらにその他の好ましい具体例では、R3はヒドロキシル基を表す。さらに他の好ましい具体例では、R3は−(CH2mCOOHを表し、好ましくは、この場合mは好ましくは0又は1である。
【0022】
ある種の好ましい具体例では、nは0である。
【0023】
このような基質アナログのある種の好ましい具体例では、P'1は、次式II:
【化2】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、低級アルキル又はハロゲンを表し、R3は低級アルキル、アリール、ヒドロキシル基、−(CH2mCOOH、−(CH2mNH2、−(CH2mNC(=NH)NH2、−(CH2mC(=O)NH2、−SH又は−(CH2mSCH3を表し、mは0、1又2である。)
で表されるような、四置換Cβ炭素を有するアミノ酸アナログである。
【0024】
ある種の好ましい具体例では、R1及びR2は、独立して、メチル、エチル又はプロピル、さらに好ましくはメチルから選択される。
【0025】
ある種の好ましい具体例では、R3は、低級アルキル、さらに好ましくは、メチル、エチル又はプロピル、さらに好ましくはメチルを表す。その他の好ましい具体例では、R3は、フェニル、ヒドロキシフェニル(好ましくは、p−ヒドロキシ)、インドール又はイミダゾールのようなアリールを表す。さらに他の好ましい具体例では、R3はヒドロキシル基を表す。ある種の好ましい具体例では、R3は−COOH又は−CH2COOHを表す。さらに他の好ましい具体例では、R3はCH2CH2NC(=NH)NH2、−CH2C(=O)NH2、−CH2CH2C(=O)NH2、−SH又は−CH2SCH3を表す。
【0026】
本発明の別の態様は、四置換Cβ炭素を有するアミノ酸アナログによるプロテイナーゼ基質のP'1残基(開裂部位の)での修飾が、例えば、野生型ポリペプチドに対して長い生物学的作用の持続期間及び/又は減少したクリアランスを有し得る得られたアナログの生体内での半減期を著しく増大させ得るという、より一般的な観察に関する。この発見及び多種多様のプロテイナーゼによって開裂する基質に対するその適用性に基づき、本発明は、セリンプロテイナーゼ、メタロプロテイナーゼ、アスパラギン酸プロテイナーゼ及びシステインプロテイナーゼのようなプロテイナーゼに対する基質のP'1アナログを作製するための方法を提供する。
【0027】
ある種の好ましい具体例では、P'1は、次式II:
【化3】

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立して、低級アルキル又はハロゲンを表し、R3は低級アルキル、アリール、ヒドロキシル基、−(CH2mCOOH、−(CH2mNC(=NH)NH2、−(CH2mC(=O)NH2、−(CH2mNH2、−SH、−(CH2mSCH3を表し、mは0、1又は2である。)
で表されるような、四置換Cβ炭素を有するアミノ酸アナログである。
【0028】
ある種の好ましい具体例では、R1及びR2は、それぞれ独立して、メチル、エチル又はプロピル、さらに好ましくはメチルを表す。
【0029】
ある種の好ましい具体例では、R3は、低級アルキル、より好ましくは、メチル、エチル又はプロピル、さらに好ましくはメチルを表す。その他の好ましい具体例では、R3は、フェニル、ヒドロキシフェニル(好ましくは、p−ヒドロキシ)、インドール又はイミダゾールのようなアリール基を表す。さらに他の好ましい具体例では、R3はヒドロキシル基を表す。ある種の好ましい具体例では、R3は、−COOH又は−CH2COOHを表す。さらに他の好ましい具体例では、R3は−CH2CH2NC(=NH)NH2、−CH2C(=O)NH2、−CH2CH2C(=O)NH2、−SH又は−CH2SCH3を表す。修飾された天然型アミノ酸の好ましい具体例については、図16を参照されたい。
【0030】
II.定義
用語「基質」とは、触媒による作用を受け且つ酵素によって産物に化学的に変換される酵素の基質をいう。
【0031】
ペプチド基質に対する結合部位は、酵素の表面にわたる一連の「特異性サブ部位」からなる。用語「特異性サブ部位」とは、酵素に対する基質の一部分と相互作用し得る酵素上のポケット又はその他の部位をいう。
【0032】
ペプチド及び蛋白質基質とプロテイナーゼ、例えばセリン及びシステインプロテイナーゼなどとの相互作用を議論するにあたり、本願は、Schechter及びBerger[(1967)Biochem.Biophys.Res.Commun.27:157−162)]の 命名法を使用している。基質又は阻害剤の個々のアミノ酸残基は、−P2−P1−P'1−P'2−などと表され、そして酵素の対応するサブ部位は、S2,S1,S'1,S'2,などと表される。該基質の切断されやすい結合は、P1とP'1の残基を結合させるアミド結合である。
【0033】
「P'1残基」とは、基質ポリペプチドのアミド骨格のプロテイナーゼ仲介開裂によって得られる産物ポリペプチドの新たなアミノ末端になる基質ポリペプチドのアミノ酸残基をいう。さらに例示すると、基質ポリペプチドは、次の一般スキーム:
【化4】

によって表される蛋白質分解反応に付されるアミド骨格結合を含む。
【0034】
用語「アミノ酸残基」とは、アミノ酸を意味する。一般に、天然型アミノ酸を示すためにここで使用する略号は、IUPAC−IUB委員会が推奨する生化学命名法に基づいている(Bichemistry(1972)11:1726−1732参照)。例えば、Met、Ile、Leu、Ala及びGlyは、それぞれ、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、アラニン及びグリシンの「残基」を表す。残基とは、相当するα−アミノ酸からそのカルボキシル基のOH部分及びそのα−アミノ基のH部分を除去することによって誘導される基を意味する。
【0035】
用語「アミノ酸側鎖」とは、K.D.Kopple,「Peptides and Amino Acids」,W.A.Benjamin社,ニューヨーク及びアムステルダム,1966,2及び33頁に定義されるように、その骨格を除いたアミノ酸残基の部分であり、一般的なアミノ酸のこのような側鎖の例は、−CH2CH2SCH3(メチオニンの側鎖)、−CH2(CH3)−CH2CH3(イソロイシンの側鎖)、−CH2CH(CH32(ロイシンの側鎖)又はH−(グリシンの側鎖)である。これらの側鎖は、骨格のCα炭素からぶら下がっている。
【0036】
用語「四置換Cβ炭素」とは、(i)アミノ酸骨格のCα炭素から直接ぶら下がり、しかも(ii)4個のペンダント置換基(Cα炭素を含む)を含む(それらはいずれも水素ではない)を含む炭素原子をいう。
【0037】
ここで使用するときに、「蛋白質」とは、本質的に20個のアミノ酸のうち任意のものからなる重合体をいう。比較的大きな蛋白質に関してしばしば「ポリペプチド」が使用され、そして小さな蛋白質に関してしばしば「ペプチド」が使用されるが、斯界におけるこれらの用語の使用は重複しており、且つ一様ではない。文脈から明白でない限り、用語「ペプチド」、「蛋白質」及び「ポリペプチド」は、区別無く使用する。
【0038】
ここで使用するときに、用語「核酸」とは、デオキシリボ核酸(DNA)及び、しかるべき場合には、リボ核酸(RNA)のようなポリヌクレオチドをいう。また、この用語には、均等物として、核酸アナログから作られたRNA又はDNAのアナログ、及び、記載される具体例に適用できるものとして、単鎖(センス又はアンチセンス)及び二重鎖ポリヌクレオチドが含まれるものとする。
【0039】
国際生化学・分子生物学連合(1984)は、ペプチド結合加水分化酵素のサブセット(サブクラスE.C3.4)に対して用語「ペプチダーゼ」を使用することを推奨している。広く使用される用語「プロテアーゼ」は、「ペプチダーゼ」と同義であり、そして、これらのものは、本明細書では区別なく使用されている。ペプチダーゼは、2つの酵素群:エンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼを含む。エンドペプチダーゼは、蛋白質内の点でペプチド結合を開裂させ、そしてエキソペプチダーゼは、N又はC末端のいずれかから順次アミノ酸を除去する。
【0040】
また、用語「プロテイナーゼ」もエンドペプチダーゼの同義語として使用する。プロテイナーゼは、それらの触媒機構に従って分類される。4つの機構クラスが国際生化学・分子生物学連合によって認識されている:セリンプロテイナーゼ、システインプロテイナーゼ、アスパラギン酸プロテイナーゼ及びメタロプロテイナーゼ。
【0041】
「セリンプロテイナーゼ」のクラスは、2つの別個のファミリーを含む:キモトリプシン、トリプシン、エラスターゼ又はカリクレインのようなほ乳類酵素を含むキモトリプシンファミリー及びスブチリシンのような細菌酵素を含むスブチリシンファミリー。これら2つのファミリーにおいて一般的な三次元構造は異なるが、これらのものは、同一の活性部位形状及び同一の機構による触媒進行を有する。セリンプロテイナーゼは、基質残基と相互作用する様々な酵素サブ部位(Schechter及びBergerの命名法を参照)内のアミノ酸置換に関連する異なる基質特異性を示す。触媒3構造を形成する3個の残基が該触媒プロセスに必須である:His−57、Asp−102及びSer−195(キモトリプシノゲンの番号付け)。
【0042】
「システインプロテイナーゼ」のファミリーとしては、パパイン、アクチニジン又はブロメラインのような植物ペプチダーゼ、いくつかのほ乳類リソソームカテプシン、サイトソルカルパイン(カルシウム活性化)及びいくつかの寄生生物ペプチダーゼ(例えば、トリパノソーマ、シストソーマ)が挙げられる。パパインが原型であり、そしてこれは、このファミリーのうち最もよく研究されたものである。
【0043】
「アスパラギン酸プロテイナーゼ」の大部分がペプシンファミリーに属する。ペプシンファミリーとしては、ペプシン及びキモシン並びにリソソームカテプシンDのような消化酵素、レニンのようなプロセシング酵素及びある種の真菌ペプチダーゼ(ペニシロペプシン、リゾプスペプシン、エンドチアペプシン)が含まれる。第2のファミリーは、レトロペプシンとも呼ばれるAIDSウイルス(HIV)由来のペプチダーゼのようなウイルスペプチダーゼを含む。
【0044】
「メタロプロテイナーゼ」は、細菌、真菌並びに高等生物に見出される。これらのものは、それらの配列及びそれらの構造において広く異なるが、酵素の大部分は、触媒として活性な亜鉛原子を含有する。多くの酵素は、亜鉛に対する2つのヒスチジンリガンドを与える配列HEXXHを含有するが、第3のリガンドは、グルタミン酸(サーモリシン、ネプリリシン、アラニルアミノペプチダーゼ)又はヒスチジン(アスタシン)である。
【0045】
ここで使用するときに、用語「アゴニスト」とは、ある種の動物に投与されたときに同様の生物学的効果を生じさせるように、対象の天然基質の生物活性を保持するペプチド又はP'1アナログをいうものとする。
【0046】
用語「アンタゴニスト」とは、対象の天然基質の生物活性を保持せず又は少なくとも天然基質に対して減少したレベルの活性を保持し、且つ、該天然基質の生物学的作用を阻害するペプチド又はP'1アナログをいう。
【0047】
用語「アナログ」とは、受容体分子全体又はそれらの断片に対する機能が実質的に類似する分子をいう。
【0048】
元の化学化合物、例えばアミノ酸アナログについて用語「小さな修飾を有する誘導体」は、元の化学化合物に化学的に類似する化合物をいうために使用する。好ましくは、小さな修飾を有する誘導体は、小さな構造的な修飾を有し、しかして元の化合物の「構造的アナログ」とみなされ得る。
【0049】
「心臓関連疾患」には、心臓及び/又はそれに関連する組織(例えば、心膜、大動脈及び関連するその他の血管)に関係する任意の慢性又は急性の病理学的症状が含まれ、そしてこれには、虚血−再灌流障害、鬱血性心不全、心停止、心筋梗塞、薬剤(例えば、ドキソルビシン、ヘルセプチン、チオリダジン及びシサプリド)のような化合物によって引き起こされる心臓毒性、寄生生物の感染(細菌、真菌、リケッチア及びウイルス、例えば、梅毒、慢性トリパノソーマクルース感染)による心臓損傷、劇症心アミロイドーシス、心臓手術、心臓移植、外傷性心臓傷害(例えば、心臓貫通性又は鈍的傷害及び大動脈弁破裂)、胸部大動脈瘤の外科的修復、副腎大動脈瘤、心筋梗塞又は心臓麻痺による心臓性ショック、神経性ショック及びアナフィラキシーが含まれる。
【0050】
ここで使用するときに、「取り扱い説明書」とは、キット若しくはパッケージ医薬品の使用に関する該当する材料若しくは方法を説明する製品ラベル及び/又は書類を意味する。これらの材料には、基礎的な情報、成分のリスト、提案される投与量、見込まれる副作用に関する警告、薬剤を投与するための指示、技術サポート及び任意の他の関連する書類が含まれ得る。
【0051】
本明細書において、語句「薬剤として許容できる」は、音響医療判断の範囲内にある、ヒト及び動物の組織との接触使用に好適な、実質的に非発熱性の、過度の毒性、炎症、アレルギー反応又はその他の問題若しくは合併症のない、適当な利益/リスクの比率に見合ったリガンド、材料、組成物及び/又は剤形をいうために使用する。
【0052】
ここで使用するときに、語句「薬剤として許容できるキャリア」とは、主題の化学物質を身体のある種の器官若しくは部分から身体の別の器官若しくは部分に運び又は輸送することを伴う、液体若しくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又はカプセル化材料のような薬剤として許容できる材料、組成物又はビヒクルを意味する。それぞれのキャリアは、処方物のその他の成分と相溶性があり、患者に対して有害ではなく及び実質的に非発熱性であるという意味において「許容できる」ものでなければならない。薬剤として許容できるキャリアとしての役割を果たし得る材料のいくつかの例としては、(1)ラクトース、グルコース及びスクロースのような糖類、(2)トウモロコシ澱粉及び馬鈴薯澱粉のような澱粉、(3)セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース、(4)粉末トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)ココアバター及び座剤ワックスのような賦形剤、(9)ピーナッツ油、綿実油、紅花油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油のような油、(10)プロピレングリコールのようなグリコール、(11)グリセリン、ソルビット、マンニット及びポリエチレングリコールのようなポリオール、(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルのようなエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムのような緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱性物質を有しない水、(17)等張生理食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)燐酸塩緩衝液並びに(21)医薬組成物に使用されるその他の非毒性相溶物質が挙げられる。ある種の具体例では、本発明の医薬組成物は非発熱性である、即ち、患者に投与されたときに有意な体温の上昇を誘導しない。
【0053】
用語「薬剤として許容できる塩」とは、阻害剤の比較的非毒性の無機及び有機酸付加塩をいう。これらの塩は、該阻害剤の最後の単離及び精製中にその場で調製でき、又はその遊離塩基の形態の精製阻害剤と好適な有機又は無機酸とを別々に反応させ、そしてこのようにして形成された塩を単離することによって調製できる。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、燐酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、燐酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩及びラウリルスルホン酸塩などが挙げられる(例えば、Berge外,(1977)「Pharmaceutical Salts」,J.Pharm.Sci.66:1−19を参照)。
【0054】
その他の場合には、本発明の方法に有用な阻害剤は、1個以上の酸性官能基を含むことができ、しかして薬剤として許容できる塩基と共に薬剤として許容できる塩を形成することができる。これらの場合において、用語「薬剤として許容できる塩」とは、阻害剤の比較的非毒性の無機及び有機塩基付加塩をいう。これらの塩は、同様に、該阻害剤の最後の単離及び精製中にその場で調製でき、又はその遊離酸の形態の精製阻害剤と、薬剤として許容できる金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩若しくは重炭酸塩、アンモニア若しくは薬剤として許容できる有機第一、第二若しくは第三アミンのような好適な塩基とを別々に反応させることによって調製できる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びアルミニウムの塩などが挙げられる。塩基付加塩の形成のために有用な代表的な有機アミンとしては、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジンなどが挙げられる(例えば、Berge外,前出を参照)。
【0055】
用語「予防する」は、斯界に認識されており、また、局所再発(例えば、痛み)のような状態、癌のような病気、心不全のような症候群の複合又は任意のその他の病状に関して使用するときには斯界においてよく理解されており、しかも被検体における病状の頻度を、組成物を受容していない被検体と比較して減少させ又はその発病を遅延させる組成物を投与することを包含する。従って、癌の予防は、例えば、治療を受けていない対照の集団に対して、予防的治療を受けた患者の集団における検出可能な癌性増殖の数を減少させること、及び/又は治療を受けていない対照の集団に対する治療を受けた集団における検出可能な癌性増殖の出現を、例えば統計学的に及び/又は臨床学的に有意な量で遅延させることを包含する。感染の予防は、例えば、治療を受けていない対照の集団に対する治療を受けた集団における感染の診断数を減少させること、及び/又は治療を受けていない対照の集団に対する治療を受けた集団における感染症状の発症を遅延させることを包含する。痛みの予防は、例えば、治療を受けていない対照の集団に対する治療を受けた集団における被験者が経験する痛覚の大きさを低減させ、或いはそれを遅延させることを包含する。
【0056】
治療への使用に関して、例えば本発明のポリペプチド又はペプチドアナログのような化合物の「治療上有効な量」とは、所望の投与方式の一部分として投与(動物、好ましくはヒトに)されたときに、治療されるべき疾患又は状態についての臨床学的に許容できる基準又は美容目的に従って、例えば任意の医療に適用できる合理的な利益/リスクの比率で症状を緩和し、状態を改善させ又は病状の発病を遅延させる、調製物中のポリペプチド又はペプチドの量をいう。
【0057】
用語「アルキル」とは、特定された炭素原子の数を有し又は特定がなされない場合には30個までの炭素原子を有する完全に飽和された分岐又は非分岐炭素鎖をいう。例えば、「低級アルキル」とは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチル並びにこれらのアルキルの位置異性体のような、1〜10個の炭素原子を有するアルキルをいう。10〜30個の炭素原子のアルキルとしては、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘネイコシル、ドコシル、トリコシル及びテトラコシルが挙げられる。好ましい具体例では、直鎖又は分岐鎖アルキルは、その骨格に30個又はそれよりも小数の炭素原子(直鎖についてはC1〜C30、分岐鎖についてはC3〜C30)、より好ましくは20個又はそれよりも小数を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、それらの環構造内に3〜10個の炭素原子、より好ましくはそれらの環構造内に5、6又は7個の炭素を有する。
【0058】
さらに、本明細書、実施例及び請求の範囲を通して使用するときに、用語「アルキル」(又は「低級アルキル」)は、非置換及び置換アルキル鎖の両方を含むことを意図し、そしてその後者は、炭化水素主鎖の1個以上の炭素原子上の水素を置換する置換基を有するアルキル部分をいう。このような置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル又はアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート又はチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、シアノ、ニトロ、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル又は芳香族若しくは複素環式芳香族部分を挙げることができる。当業者であれば、炭化水素鎖上で置換される部分は、適宜、それ自体置換され得ることを理解するであろう。例えば、置換アルキルの置換基としては、アミノ、アジド、アミド、ホスホリル(ホスホネート及びホスフィネートを含む)、スルホニル(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイル及びスルホネートを含む)及びシリル基並びにエステル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート及びエステルを含む)、−CF3、−CNなどの置換及び非置換形態を挙げることができる。代表的な置換アルキルは以下に記載される。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシル、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、−CF3、−CNなどで置換され得る。
【0059】
炭素数を特に特定しない限り、ここで使用するときに「低級アルキル」とは、上に定義されるようなアルキル基であるが、ただし、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル及びt−ブチルのような、その主鎖構造内に1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子を有するものを意味する。同様に、「低級アルケニル」及び「低級アルキニル」も同様の鎖長を有する。本願全体を通して、好ましいアルキル基は低級アルキルである。好ましい具体例では、アルキルとしてここに示される置換基は低級アルキルである。
【0060】
ここで使用するときに、用語「炭素環」とは、芳香族又は非芳香族環であって該環のそれぞれの原子が炭素であるものをいう。
【0061】
ここで使用するときに、用語「アリール」には、0〜4個のヘテロ原子を含み得る5、6及び7員の単環芳香族基、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジンなどが含まれる。また、環構造内にヘテロ原子を有するこれらのアリール基は、「アリール複素環」又は「複素環式芳香族」とも呼ばれ得る。この芳香族環は、一つ以上の環の位置で、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又は複素環式芳香族部分、−CF3、−CNなどで置換され得る。また、用語「アリール」には、2個以上の炭素が2個の隣接する環(これらの環は「縮合環」である)であってそれらの環のうち少なくとも一方が芳香族であり、例えば、他方の環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール及び/又はヘテロシクリルであることができるものに共通する2個以上の環を有する多環式環系も含まれる。
【0062】
「アルケニル」とは、任意の分岐又は非分岐不飽和炭素鎖基であって、特定された炭素原子の数を有し又は炭素原子の数についての限定が特定されない場合には26個までの炭素原子を有し、且つ、該基内に1個以上の二重結合を有するものをいう。6〜26個の炭素原子のアルケニルは、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘネイコセニル、ドコセニル、トリコセニル及びテトラコセニルによって例示され、それらの様々な異性体の形態では、不飽和結合は、該基のどこにでも位置でき、且つ、二重結合について(Z)又は(E)立体配置のいずれかを有することができる。
【0063】
用語「アルキニル」とは、アルケニルの範囲のヒドロカルビル基であるが、ただし該基内に1個以上の三重結合を有するものをいう。
【0064】
ここで使用するときに、用語「アルコキシル」又は「アルコキシ」とは、以下に定義するように、アルキル基であってそれに酸素基が結合したものをいう。代表的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、t−ブトキシなどが挙げられる。「エーテル」とは、酸素によって共有結合した2個の炭化水素である。従って、該アルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH2m−R1(ここで、m及びR1は以下に記載される)のうちの一つによって表され得るようなアルコキシルであり、又はそれに類似するものである。
【0065】
用語「ヘテロシクリル」又は「複素環式基」とは、3〜10員環構造、より好ましくは3〜7員環であって、その環構造が1〜4個のヘテロ原子を含むものをいう。また、複素環は多環式環であることもできる。ヘテロシクリル基としては、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、例えば、アゼチジノン及びピロリジノン、スルタム、スルトンなどが挙げられる。該複素環式環は、一つ以上の位置で、上記のような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、スルファモイル、スルフィニル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族又は複素環式芳香族部分、−CF3、−CNなどで置換され得る。
【0066】
用語「アルキルチオ」とは、上に定義されるように、アルキル基であってそれに硫黄基が結合したものをいう。好ましい具体例では、「アルキルチオ」部分は、−(S)−アルキル、−(S)−アルケニル、−(S)−アルキニル及び−(S)−(CH2m−R1(ここで、m及びR1は以下に定義される)のうちの一つによって表される。代表的なアルキルチオ基としては、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。
【0067】
ここで使用するときに、用語「ニトロ」とは、−NO2を意味し、用語「ハロゲン」とは、F、Cl、Br又はIを意味し、用語「スルフヒドリル」とは、−SHを意味し、用語「ヒドロキシル」とは、−OHを意味し、そして用語「スルホニル」とは、−SO2−を意味する。
【0068】
用語「アミン」及び「アミノ」は斯界に認識されており、そして非置換及び置換アミンの両方、例えば、次の一般式:
【化5】

(式中、R3、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R1を表し、又は、R3とR5は、それらが結合するN原子と共に環構造内に4〜8個の原子を有する複素環を完成させ、R1はアルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル又はポリシクリルを表し、mはゼロ又は1〜8の範囲の整数である。)
によって表され得る部分をいう。好ましい具体例では、R3又はR5のうちの一つのみがカルボニルであることができ、例えば、R3、R5及び窒素は共にイミドを形成しない。さらに好ましい具体例では、R3及びR5(及び随意としてR6)は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル又は−(CH2m−R1を表す。従って、ここで使用するときに、用語「アルキルアミン」とは、上に定義されるように、アミン基であってそれに置換又は非置換アルキルが結合したものをいう。即ち、R3及びR5のうちの一つがアルキル基である。ある種の具体例では、アミノ基又はアルキルアミンは塩基性であるが、これは、このものがpKa≧7.00を有することを意味する。これらの官能基のプロトン化された形態は、7.00以上の水に対するpKaを有する。
【0069】
用語「カルボニル」は斯界に認識されており、そして次の一般式:
【化6】

(式中、Xは結合であり又は酸素若しくは硫黄を表し、R7は水素、アルキル、アルケニル、−(CH2m−R1又は薬剤として許容できる塩を表し、R8は水素、アルキル、アルケニル又は−(CH2m−R1(ここで、m及びR1は上に定義した通りである)を表す。)
によって表すことができるような部分を包含する。Xが酸素であり、しかもR7又はR8が水素でない場合には、この式は「エステル」を表す。Xが酸素であり、しかもR7が上に定義されるようなものである場合には、該部分は、ここではカルボキシル基と呼ばれ、そして具体的には、R7が水素である場合には、この式は「カルボン酸」を表す。Xが酸素であり、しかもR8が水素である場合には、この式は「ホルメート」を表す。一般に、上記式の酸素原子が硫黄で置換される場合には、この式は「チオカルボニル」基を表す。Xが硫黄であり、しかもR7又はR8が水素でない場合には、この式は「チオエステル」基を表す。Xが硫黄であり、しかもR7が水素である場合には、この式は「チオカルボン酸」基を表す。Xが硫黄であり、しかもR8が水素である場合には、この式は「チオホルメート」基を表す。一方、Xが結合であり、しかもR7が水素でない場合には、上記式は「ケトン」基を表す。Xが結合であり、しかもR7が水素である場合には、上記式は「アルデヒド」基を表す。
【0070】
ここで使用するときに、用語「置換」とは、有機化合物の全ての許容され得る置換基を含むことを意図する。多種多様な態様では、この許容され得る置換基としては、有機化合物の非環式及び環式、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基が挙げられる。例示の置換基としては、例えば、上記のものが挙げられる。この許容され得る置換基は、好適な有機化合物について1個以上で且つ同一又は異なるものであることができる。本発明の目的上、窒素のようなヘテロ原子は、水素置換基及び/又は該ヘテロ原子の原子価を満足するここに記載される有機化合物の任意の許容され得る置換基を有し得る。本発明は、この有機化合物の許容され得る置換基によっていかなる態様にも限定されるものではない。「置換」又は「で置換された」には、このような置換が、置換される原子及び置換基の容認される原子価に従い、しかもこの置換が、例えば、転位、環化、脱離などによるような変換を自発的に受けない安定な化合物を生じさせるという暗黙の条件が含まれるものとする。
【0071】
用語「スルファモイル」は斯界に認識されており、そして次の一般式:
【化7】

(式中、R3及びR5は上に定義される通りである。)
によって表すことができる部分を包含する。
【0072】
用語「スルフェート」は斯界に認識されており、そして次の一般式:
【化8】

(式中、R7は上に定義される通りである。)
によって表すことができる部分を包含する。
【0073】
用語「スルファミド」は斯界に認められており、そして次の一般式:
【化9】

(式中、R2及びR4は上に定義されるとおりである。)
によって表すことができる部分を包含する。
【0074】
用語「スルホネート」は斯界に認められており、そして次の一般式:
【化10】

(式中、R7は電子対、水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールである。)
によって表すことができる部分を包含する。
【0075】
ここで使用するときに、用語「スルホキシド」又は「スルフィニル」とは、次の一般式:
【化11】

(式中、R12は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アラルキル又はアリールよりなる群から選択される。)
によって表すことができる部分をいう。
【0076】
類似の置換をアルケニル及びアルキニル基になして、例えば、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニル又はアルキニルを生じさせることができる。
【0077】
ここで使用するときに、それぞれの表現、例えば、アルキル、m、nなどの定義は、これが任意の構造において1回以上出現するときには、その同一の構造内の他のところのその定義とは無関係であることを意図する。
【0078】
本発明の目的上、化学元素は、元素の周期律表,CAS版,Handbook of Chemistry and Physics,第67版,1986−87,内表紙に従って確認される。また、本発明の目的上、用語「炭化水素」には、少なくとも1個の水素及び少なくとも1個の炭素原子を有する全ての見込まれる化合物が含まれるものとする。多種多様な態様では、この見込まれる炭化水素としては、置換されていても置換されていなくてもよい非環式及び環式、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の有機化合物が挙げられる。
【0079】
III.代表的な具体例
(a)P'1アナログ
本発明は、プロテイナーゼ仲介開裂に対して耐性のあるペプチド及びP'1アナログの製造法及び使用を提供する。特定のプロテイナーゼ(例えば、メタロプロテイナーゼ、システインプロテイナーゼ、アスパラギン酸プロテイナーゼ又はセリンプロテイナーゼ)によって典型的に開裂する天然ポリペプチドであれば、プロテイナーゼによって開裂する天然ポリペプチド内の部位(開裂部位)を容易に決定できる。開裂部位が同定されたならば、P'1アナログは、本発明の方法に従って容易に作製できる。酵素学の技術分野における理解の深さをもってすれば、大多数のプロテイナーゼの好ましい開裂部位は周知であり、しかも所定の天然ポリペプチド内のコンセンサス開裂部位の同定は、単純にアミノ酸配列を調査することによって迅速且つ容易に達成できる。
【0080】
特定のポリペプチド内の開裂部位が知られておらず又は単純にアミノ酸配列を調査することによって迅速に決定できない場合には、該開裂部位は、開裂を可能にするように単純に天然ポリペプチドとプロテイナーゼをインキュベートし、この開裂したポリペプチド種を分離し(例えば、電気泳動によって)、そしてこの開裂したペプチド断片の配列を決定することによって決定できる。開裂したペプチド断片の末端の配列を決定し、そしてこの配列と全長ポリペプチド配列とを比較することによって、プロテイナーゼが作用する天然ポリペプチド内の開裂部位を迅速且つ容易に同定し又は確認することができる。
【0081】
プロテイナーゼの基質特異性を迅速に決定するための別の代表的な方法は、国際公開WO0061789号によって提供されている。
【0082】
本発明は、プロテイナーゼ耐性P'1アナログを構築するための一般化できる方法を提供する。本発明は、メタロプロテイナーゼ、システインプロテイナーゼ、アスパラギン酸プロテイナーゼ及びセリンプロテイナーゼに対して耐性のあるP'1アナログのデザイン及び使用を意図している。例えば、この主題のアナログは、アミノペプチダーゼ(EC3.4.11.−)、ジペプチダーゼ(EC3.4.13.−)、ジペプチジルペプチダーゼ又はトリペプチジルペプチダーゼ(EC3.4.14.−)、ペプチジルジペプチダーゼ(EC3.4.15.−)、セリン型カルボキシペプチダーゼ(EC3.4.16.−)、メタロカルボキシペプチダーゼ(EC3.4.17.−)、システイン型カルボキシペプチダーゼ(EC3.4.18.−)、オメガペプチダーゼ(EC3.4.19.−)、セリンプロテイナーゼ(EC3.4.21.−)、システインプロテイナーゼ(EC3.4.22.−)、アスパラギン酸プロテイナーゼ(EC3.4.23.−)、メタロプロテイナーゼ(EC3.4.24.−)又は知られていない機構のプロテイナーゼ(EC3.4.99.−)から選択されるプロテイナーゼによる開裂に対して耐性にし得る。プロテイナーゼのそれぞれの部類に従うECの記号は、国際生化学・分子生物学連合の推奨(1984)において使用されるものであり、これらのサブクラスの見出しは、参考のためにここに提供される。
【0083】
プロテイナーゼ耐性P'1アナログが意図される代表的なプロテイナーゼをさらに例示すると、プロテイナーゼの完全ではないリストとして、ロイシルアミノペプチダーゼ、膜アラニンアミノペプチダーゼ、シスチニルアミノペプチダーゼ、トリペプチドアミノペプチダーゼ、プロリルアミノペプチダーゼ、アミノペプチダーゼB、グルタミルアミノペプチダーゼ、Xaa−Proアミノペプチダーゼ、細菌ロイシルアミノペプチダーゼ、クロストリジウムアミノペプチダーゼ、細胞質ゾルアラニルアミノペプチダーゼ、リシルアミノペプチダーゼ、Xaa−Trpアミノペプチダーゼ、トリプトファニルアミノペプチダーゼ、メチオニルアミノペプチダーゼ、D−立体特異的アミノペプチダーゼ、アミノペプチダーゼEy、液胞アミノペプチダーゼI、Xaa−Hisジペプチダーゼ、Xaa−Argジペプチダーゼ、Xaa−メチル−Hisジペプチダーゼ、Cys−Glyジペプチダーゼ、Glu−Glnジペプチダーゼ、Pro−Xaaジペプチダーゼ、Xaa−Proジペプチダーゼ、Met−Xaaジペプチダーゼ、非立体特異的ジペプチダーゼ、細胞質ゾル非特異的ジペプチダーゼ、膜ジペプチダーゼ、β−Ala−Hisジペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼI(DPP−I)、ジペプチジルペプチダーゼII(DPP−II)、ジペプチジルペプチダーゼIII(DPP−III)、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)、ジペプチジルジペプチダーゼ、トリペプチジルペプチダーゼI、トリペプチジルペプチダーゼII、Xaa−Proジペプチジルペプチダーゼ、ペプチジルジペプチダーゼA、ペプチジルジペプチダーゼB、ペプチジルジペプチダーゼDcp、リソソームPro−Xカルボキシペプチダーゼ、セリン型D−Ala−D−Alaカルボキシペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼC、カルボキシペプチダーゼD、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB、リシン(アルギニン)カルボキシペプチダーゼ、Gly−Xカルボキシペプチダーゼ、アラニンカルボキシペプチダーゼ、ムラモイルペンタペプチドカルボキシペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼH、グルタメートカルボキシペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼM、ムラモイルテトラペプチドカルボキシペプチダーゼ、亜鉛D−Ala−D−Alaカルボキシペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼA2、膜Pro−Xカルボキシペプチダーゼ、チューブリニル−Tyrカルボキシペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼT、熱安定性カルボキシペプチダーゼ1、カルボキシペプチダーゼU、グルタメートカルボキシペプチダーゼII、メタロカルボキシペプチダーゼD、システイン型カルボキシペプチダーゼ、アシルアミノアシルペプチダーゼ、ペプチジルグリシンアミダーゼ、ピログルタミルペプチダーゼI、β−アスパルチルペプチダーゼ、ピログルタミルペプチダーゼII、N−ホルミルメチオニルペプチダーゼ、プテロイルポリ−γ−グルタメートカルボキシペプチダーゼ、γ−グルタミルヒドラーゼ、γ−D−グルタミル−メソ−ジアミノピメレートペプチダーゼI、キモトリプシン、キモトリプシンC、メトリジン、トリプシン、トロンビン、凝固因子Xa、プラスミン、エンテロペプチダーゼ、アクロシン、α−溶解性エンドペプチダーゼ、グルタミルエンドペプチダーゼ、カテプシンG、凝固因子VIIa、凝固因子IXa、ククミシン、プロリルオリゴペプチダーゼ、凝固因子XIa、ブラキウリン、血漿カリクレイン、組織カリクレイン、膵臓エラスターゼ、白血球エラスターゼ、凝固因子XIIa、キマーゼ、補体成分Clr、補体成分Cls、補体活性化第一経路C3/C5コンバターゼ、補体因子I、補体因子D、補体活性化第二経路C3/C5コンバターゼ、セレビシン、ヒポデルミンC、リシルエンドペプチダーゼ、エンドペプチダーゼLa、γ−レニン、ベノンビンAB、ロイシルエンドペプチダーゼ、トリプターゼ、スクテラリン、ケキシン、スブチリシン、オリジン、プロテイナーゼK、テルモミコリン、テルミターゼ、エンドペプチダーゼSo、T−プラスミノゲン活性因子、蛋白質C(活性化)、膵臓エンドペプチダーゼE、膵臓エラスターゼII、IgA特異的セリンエンドペプチダーゼ、U−プラスミノゲン活性因子、ベノンビンA、フリン、ミエロブラスチン、セメノゲラーゼ、グランザイムA、グランザイムB、ストレプトグリシンA、ストレプトグリシンB、グルタミルエンドペプチダーゼII、オリゴペプチダーゼB、リムルス凝固因子C、リムルス凝固因子B、リムルス凝固酵素、オムプチン、レプレッサーlexA、シグナルペプチダーゼI、トガビリン、フラビリン、エンドペプチダーゼClp、プロ蛋白質コンバターゼ1、プロ蛋白質コンバターゼ2、ヘビ毒因子V活性因子、ラクトセピン、カテプシンB、パパイン、フィカイン、キモパパイン、アスクレパイン、クロストリパイン、ストレプトパイン、アクチニダイン、カテプシンL、カテプシンH、カルパイン、カテプシンT、グリシルエンドペプチダーゼ、癌プロコアギュラント、カテプシンS、ピコルナイン3C、ピコルナイン2A、カリカイン、アナナイン、幹ブロメライン、果実ブロメライン、レグマイン、ヒストリサイン、カスパーゼ−1、ギンギパインR、カテプシンK、ペプシンA、ペプシンB、ガストリクシン、キモシン、カテプシンD、ネオペンテシン、レニン、レトロペプシン、前オピオメラノコルチン変換酵素、アスペルギロペプシンI、アスペルギロペプシンII、ペニシロペプシン、リゾプスペプシン、エンドチアペプシン、ムコロペプシン、カンジダペプシン、サッカロペプシン、ロドトルラペプシン、フィサロペプシン、アクロシリンドロペプシン、ポリポロペプシン、ピクノポロペプシン、シタリドペプシンA、シタリドペプシンB、キサントモノナペプシン、カテプシンE、バリヤーペプシン、シグナルペプチダーゼII、シュードモナペプシン、プラスメプシンI、プラスメプシンII、フィテプシン、アトロリシンA、微生物コラゲナーゼ、ロイコリシン、間質コラゲナーゼ、ネプリリシン、エンベリシン、IgA特異的メタロエンドペプチダーゼ、プロコラーゲンN−エンドペプチダーゼ、チメットオリゴペプチダーゼ、ニューロリシン、ストロメリシン1、メプリンA、プロコラーゲンC−エンドペプチダーゼ、ペプチジル−Lysメタロエンドペプチダーゼ、アスタシン、ストロメリシン2、マトリリシン、ゲラチナーゼA、エアロモノリシン、プソイドリシン、テルモリシン、バシロリシン、エアロリシン、ココリシン、ミコリシン、β−溶解性メタロエンドペプチダーゼ、ペプチジル−Aspメタロエンドペプチダーゼ、好中球コラゲナーゼ、ゲラチナーゼB、リーシュマノリシン、サッカロリシン、オートリシン、デウテロリシン、セラリシン、アトロリシンB、アトロリシンC、アトロキサーゼ、アトロリシンE、アトロリシンF、アダマリシン、ホルリリシン、ルベルリシン、ボトロパシン、オフィオリシン、トリメレリシンI、トリメレリシンII、ムクロリシン、ピトリリシン、インスリシン、O−シアロ糖蛋白質エンドペプチダーゼ、ルセルリシン、ミトコンドリア仲介ペプチダーゼ、ダクチリシン、ナルジリシン、マグノリシン、メプリンB、ミトコンドリアプロセシングペプチダーゼ、マクロファージエラスターゼ、コリオリシンL、コリオリシンH、テントキシリシン、ボントキシリシン、オリゴペプチダーゼA、エンドセリン変換酵素1、フィブロラーゼ、ジャラルハギン、フラギリシン及び多触媒エンドペプチダーゼ複合体が挙げられる。
【0084】
本発明の一態様は、NH2−Xaa−Ala−Yaa−及びNH2−Xaa−Pro−Yaa−(ここで、Xaa及びYaaは、それぞれ独立して、アミノ酸残基を表す。)から選択されるN末端配列を有するポリペプチドホルモンのプロテイナーゼ耐性アナログをコードするポリペプチド配列である。ある種の具体例では、Xaaは、芳香族側鎖を有するアミノ酸である。ある種の具体例では、Xaaは、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン及びフェニルアラニンから選択される。ある種の具体例では、Yaaは、酸性側鎖を有するアミノ酸残基である。ある種の具体例では、Yaaは、アスパラギン酸及びグルタミン酸から選択される。
【0085】
例示として、ある種の具体例では、プロテイナーゼは、セリンプロテイナーゼである。いくつかの具体例では、プロテイナーゼは、ジペプチジルペプチダーゼである。代表的なジペプチジルペプチダーゼは、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)である。DPP−IV活性は、大多数の生物活性蛋白質及びポリペプチドの生物学的活性を変化させる。米国特許第6090786号に開示された見込まれるDPP−IV基質の他に、本発明は、GLP−1、GLP−2及びGIPのアナログに関するものでもある。ある種の具体例では、ペプチドホルモンは、ほ乳類に見出される天然型の種類である。ある種の具体例では、ペプチドホルモンは、天然型(野生型)ペプチドホルモンの天然変異型又は人工変異型の種類である。しかして、天然及び合成ペプチドホルモンは、修飾のために予期されるペプチドホルモンの範囲内にある。従って、ある種の具体例では、本発明は、上記のペプチドホルモンのDPP−IV蛋白質分解耐性アナログを提供する。
【0086】
プロテイナーゼ耐性P'1アナログのさらなる例示を与えるために、表1はDPP−IVの基質であるいくつかのヒトホルモンのリストを与えている。それぞれのペプチドホルモンにおけるP'1アミノ酸に星印を付けている。Xが、例えば上記の式IIで表される側鎖を有するアミノ酸アナログである代表的なアナログが示されている。当業者であれば、その他のセリンプロテイナーゼに対する基質を含む同様の表を容易に作成でき、そしてP'1アミノ酸を容易に同定できる。同様に、当業者であれば、所定のアスパラギン酸プロテイナーゼ、システインプロテイナーゼ又はメタロプロテイナーゼに対する基質を含む表を容易に作成でき、そしてP'1アミノ酸を同定できる。
【0087】
【表1】

【0088】
GLP−1(7〜37)、GLP−1(7〜36)NH2、GLP−1(7〜36)−エキセンジンテイルNH2、GLP−2、GIP及びエキセンジン−3アナログの具体例では、Xは、式(II)のアミノ酸アナログである。好ましい具体例では、Xは式(II)のアミノ酸アナログであって、R1及びR2が独立してメチル、エチル又はプロピルを表すものである。最も好ましい具体例では、Xは式(II)のアミノ酸アナログであって、R1及びR2の両方がメチルであり、R3が−COOH及び−CH2−COOHから選択されるものである。
【0089】
NPYアナログの好ましい具体例では、Xは、式(II)のアミノ酸アナログである。好ましい具体例では、Xは、式(II)のアミノ酸アナログであってR1及びR2がそれぞれ独立してメチル、エチル又はプロピルを表すものである。最も好ましい具体例では、Xは、式(II)のアミノ酸アナログであって、R1及びR2の両方がメチルであり、R3が−OHを表すものである。
【0090】
膵臓ポリペプチドPP及びペプチドYY(PYY)アナログの好ましい具体例では、Xは、式(II)のアミノ酸アナログである。好ましい具体例では、Xは、式(II)のアミノ酸アナログであってR1、R2及びR3がそれぞれ独立してメチル、エチル又はプロピルを表すものである。最も好ましい具体例では、Xは、式(II)のアミノ酸アナログであって、R1及びR2の両方がメチルであり、R3が−CH(CH32又は−CH2−CH3を表すものである。
【0091】
エキセンジン−4アナログの好ましい具体例では、Xは、式(II)のアミノ酸アナログである。好ましい具体例では、Xは、式(II)のアミノ酸アナログであってR1及びR2がそれぞれ独立してメチル、エチル又はプロピルを表し、R3が−(CH2m−C(=O)NH2(ここで、mは0、1又は2である。)を表すものである。最も好ましい具体例では、Xは、式(II)のアミノ酸アナログであって、R1及びR2の両方がメチルであり、R3が−CH2−C(=O)NH2を表すものである。
【0092】
さらに一般的には、本発明は、アミノ酸配列:
Xaa−Ala−Yaa−R又はXaa−Pro−Yaa−R'
(ここで、Xaa及びYaaはアミノ酸残基を表し、R及びR'は、それぞれ独立して、1〜約100個のアミノ酸残基を含むポリペプチド鎖を表し、ここで、該アナログ配列において、Yaaは、式I又は式IIによって表されるアミノ酸残基によって置換されている。)
を有するペプチド及びポリペプチド因子についてのアナログの生成を具体的に意図している。さらに、本発明は、変異体P'1アナログを生じさせるために野生型ポリペプチドとは配列が異なる変異体ポリペプチドの修飾を意図している。このような変異体は、野生型ポリペプチドに少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%又は99%以上一致する。ある種の具体例では、Rは、
GTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR、
GTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRPSSGAPPPS−NH2
GTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR−NH2
GSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTKITD、及び
GTFISDYSIAMDKIHQQDFVNWLLAQKGKKNDWKHNITQ、又はそれらに対して5個又はそれよりも小数のアミノ酸残基ずつ異なる、さらに好ましくは4、3又は2個以下のアミノ酸残基ずつ異なる配列
よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。ある種の具体例では、Rは、
KPDNPGEDAPAEDMARYYSALRHYINLITRQRY、
EPVYPGDNATPEQMAQYAADLRRY、及び
KPEAPGEDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY、
又はそれらに対して5個又はそれよりも小数のアミノ酸残基ずつ異なる、さらに好ましくは4、3又は2個以下のアミノ酸残基ずつ異なる配列
よりなる群から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0093】
プロテイナーゼ耐性GHRHアナログは、本発明の一般化できる方法及び組成物のさらなる例示を与える。成長ホルモン(GH)経路の調節された発現は、最適な直線的成長並びに炭水化物代謝、蛋白質代謝及び脂質代謝の恒常性にとって必須である。成長ホルモンの合成及び下垂体前葉からのその脈動的分泌は、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)によって刺激され、そしてソマトスタチンによって抑制される(両者とも視床下部ホルモンである)。成長ホルモンは、主に肝臓内並びにその他の標的器官内でのインスリン様成長因子−I(IGF−I)の産生を増加させる。
【0094】
直線的成長速度及び体組成は、ヒト及び家畜の両方において、広範囲の病状のGH又はGHRH交換療法に応答する。これらの病状の病因は、有意に変化し得る。50%のヒトGHの欠乏では、GHRH−GH−IGF−I軸は、機能的にそのままの状態であるが、その標的組織における好適な生物学的応答を誘導しない。類似する表現型が、GH軸並びに非GH欠乏低身長における異なる点での遺伝的欠陥によって生じる。GHRH−GH−IGF−I軸が機能的である成長遅延を特徴とするいくつかの病状、例えば、ターナー症候群、軟骨低形成症、クローン病、子宮内発育不全又は慢性腎不全においては、GHRH又はGHの治療的投与が成長促進に有効であることが示されている。
【0095】
高齢者では、GH分泌及びIGF−I産生の減少を生じさせるGHRH−GH−IGF−I軸の活性のかなりの減少がある。これらの変化は、骨格筋量の損失(筋肉減少症)、骨粗鬆症、脂肪沈着の増加及び除脂肪体重の減少に関わる。これらの変化の進行が組換えGH治療によって相殺され得ることが立証されている。
【0096】
しかしながら、現在のGH治療は、頻繁な皮下又は静脈内注射、インスリン抵抗性及び耐糖能傷害を含め、いくつかの欠点を有する。また、GHで治療された子供も、早期の骨端閉鎖及び主要大腿骨骨端のずれを受けやすい。家畜では、GHRH及びGHは、乳の生産を刺激し、飼料から乳への変換を増大させ、主として除脂肪体重を増加させることによって成長を持続させ、そして全体的な飼料効率を増加させる。GHRHによって、加熱及び冷凍屠殺重量が増加し、そして屠殺体の脂質(軟組織量のパーセンテージ)が減少する。
【0097】
GHRH蛋白質治療は、実質的に副作用なしに正常の周期的GH分泌を同調させ且つ刺激するが、その生体内での該分子の短い半減期は、頻繁な(1日当たり1〜3回)静脈内、皮下又は鼻腔内(300倍以上の投与量で)投与を必要とする。従って、組換えGHRH投与は、長期的治療としては現実的ではない。
【0098】
GHRHは、以下に示されるような第1の配列を有する。P'1アミノ酸(この場合にはアスパラギン酸)は、星印及び下線が付けてある。
YA*AIFTNSYRKVLGQLSARKLLQDIMSRQQGESNQERGARARL。
【0099】
GHRHは、プロリン後開裂酵素であるプロリルエンドペプチダーゼ(PEP)によって開裂する。PEPは、アルギニンバソプレッシン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、チロトロピン放出ホルモン、α−メラノサイト分泌ホルモン、基質P、オキシトシン、ブラジキニン、ニューロテンシン及びアンギオテンシン(Ag)I及びIIのような神経刺激性ペプチドを含むGHRHの他に、様々な基質を開裂させる細胞質ゾルエンドペプチダーゼである。
【0100】
従って、ある種の具体例では、本発明は、次の一般式:
Tyr−Ala−Yaa−R
(式中、Yaaは、上記式I又は式IIで表される側鎖を有するアミノ酸を表し、Rは、配列AIFTNSYRKVLGQLSARKLLQDIMSRQQGESNQERGARARL又はそれらに対して5個又はそれよりも少数のアミノ酸残基ずつ異なる、さらに好ましくは4、3又2個以下のアミノ酸残基ずつ異なる配列を有するポリペプチド鎖を表す。)
で表されるアミノ酸配列を有するGHRHアナログを意図する。ある種の具体例では、R1及びR2は、それぞれ独立して、メチル、エチル又はプロピル、さらに好ましくはメチルを表し、R3は−COOH又は−CH2COOHを表す。
【0101】
追加の例をさらに与えると、アンギオテンシン(ANG)−(1・・・7)に対する主な作用部位のうちの2つは、血管系及び腎臓である。ANG−(1・・・7)は、肺の膜によって主としてANG−(1・・・5)に加水分解される。ANG変換酵素(ACE)阻害剤であるリシノプリルは、ANG−(1・・・5)の生成並びにさらに小さな代謝産物の生成を止めた。従って、開裂に対して耐性のある(ANG)−(1・・・7)ペプチドアナログの部類は、ACE阻害剤と同一又は類似の効果を有し得た。換言すれば、このようなペプチドアナログは、(ANG)−(1・・・7)の有効濃度及び/又は半減期を増大させるであろう。
【0102】
病気の治療用の治療剤の生成に対する重要な適用についてのさらに別の例は、IGFBP−3である。血清及びその他の体液中のIGFBP−3は、プロテイナーゼによって開裂し、そしてその蛋白質分解産物は、IGFに対して非常に減少した親和性を有し又はそれを全く有しない。増大したIGFBP−3蛋白質分解が、妊娠及びある種の癌の両方を含む様々な臨床的及び生理学的状態で観察されている。従って、プロテイナーゼ耐性IGFBP−3アナログのデザインは、例えば、増大したIGFBP−3蛋白質分解に関わる癌において、好適なIGFBP−3レベルを維持するのに特に有用であり得る。
【0103】
上に挙げた例は、単なる例示であることを意味する。本発明は、実質的には、プロテイナーゼに対する基質である任意のポリペプチドを開裂部位での3置換によって操作してプロテイナーゼ耐性P'1アナログを作製することができる、一般化可能な方法を提供する。プロテイナーゼに対する基質であり、そのためその開裂部位で操作してプロテイナーゼ耐性P'1アナログを生じさせることができる代表的なポリペプチドとしては、エンケファリン、Leu−エンケファリン、Met−エンケファリン、アンギオテンシンI、アンギオテンシンII、バソプレッシン、エンドテリン、血管作用性小腸ペプチド、ニューロテンシン、エンドルフィン、インスリン、グラルニシジン、パラセルシン、δ−睡眠誘発ペプチド、ゴナドトロピン放出ホルモン、ヒト甲状腺ホルモン(1〜34)、Wrighton他,1996,Science 273:458−463に記載された短縮されたエリトロポエチンアナログ、具体的にはEMP−1、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP、ANF)、ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(hBNP)、セクロピン、キネテンシン、ニューロフィシン、エラフィン、グアメリン、アトリオペプチンI、アトリオペプチンII、アトリオペプチンIII、デルトルフィンI、デルトルフィンII、バソトシン、ブラジキニン、ダイノルフィン、ダイノルフィンA、ダイノルフィンB、成長ホルモン放出因子、成長ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、オキシトシン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、カルシトニン遺伝子関連ペプチドII、成長ホルモン放出ペプチド、タキキニン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、脳性ナトリウム利尿ペプチド、コレシストキニン、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、ジアゼパルン(diazeparn)結合阻害因子断片、FMRFアミド、ガラニン、胃放出ポリペプチド、胃抑制ポリペプチド、ガストリン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド−1、グルカゴン様ペプチド−2、LHRH、メラニン凝集ホルモン、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、α−MSH、モルヒネ調節ペプチド、モチリン、ニューロキニンA、ニューロキニンB、ニューロメジン13、ニューロメジンC、ニューロメジンK、ニューロメジンN、ニューロメジンU、神経ペプチドK、神経ペプチドY、下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、膵臓ポリペプチド、ペプチドYY、ペプチドヒスチジン−メチオニンアミド(PHM)、セクレチン、ソマトスタチン、基質K、チロトロピン放出ホルモン(TRH)、キオトルフィン、メラノスタチン(MIF−1)、トロンボポエチンアナログ、特にAF12505、インスリン様成長因子I(57〜70)、インスリン様成長因子I(30〜41)、インスリン様成長因子I(24〜41)、インスリン様成長因子II(33〜40)、インスリン様成長因子II(33〜40)、インスリン様成長因子II(69〜84)、成長ホルモン(GH)放出ペプチド−6(GHRP−6)、β−インターロイキン1(163〜171)、β−インターロイキンII(44〜56)、インターロイキンII(60〜70)、上皮成長因子、ビバリルジン(ヒルログ)、ヒルログ−I、C型ナトリウム利尿ペプチド、オルニプレッシン(8−オミチンバソプレッシンとしても知られている)、オクトレオチド、エプチフィバチド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、エンドモルフィン−1、エンドモルフィン−2、ノシセプチン、アンギオテンシノゲン、アドレノモジュリン、抗不整脈ペプチド(AA−P)、アンタゴニストG、インドリシジン、オステオカルシン、コルチスタチン29、コルチスタチン14、PD−145065、PD−142893、フィブリノゲン結合阻害剤ペプチド、レプチン、、GR83074、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、アンギオテンシノゲン、ロイペプチン及びそれらの任意の修飾又は短縮アナログが挙げられる。
【0104】
多くの具体例では、アナログは、天然基質の試験管内又は生体内活性の一つ以上を保持するように選択されるであろう。この試験内又は生体内活性は、特定のポリペプチドに好適な当業者であれば入手できる任意のプロトコールを使用して測定できる。P'1アナログが同一又は類似の機能活性を保持するかどうかを確認するために測定できる代表的な機能活性としては、細胞ベースアッセイ又は細胞フリーアッセイにおいてポリペプチドがその受容体に結合する能力、ポリペプチドに応答する細胞においてポリペプチドが変化(例えば、増殖、分化、生存、成長、移行など)を誘導する能力、ポリペプチドに応答する細胞においてポリペプチドが1種以上の他の遺伝子又は蛋白質の発現を調節する能力が挙げられる。
【0105】
ある種の具体例では、アナログは、天然ポリペプチドと実質的に同様の活性を有する(例えば、天然ポリペプチドと同程度の活性の約80%、90%、100%、110%又は120%)。いくつかの具体例では、アナログは、天然ポリペプチドよりも活性が低い(例えば、天然ポリペプチドと同程度の活性の約50%、60%、70%又は75%)。生体内又は細胞培養基のように、活性の減少がなお十分な時間にわたって十分な局所濃度のアナログを与える場合には、いくぶん活性が低いアナログが有用であり得ることに触れておく。従って、プロテイナーゼ耐性によって得られる半減期の増加は、アナログの構築によって生じる活性の減少を相殺できる。さらに他の具体例では、アナログは、天然ポリペプチドよりも活性である(例えば、天然ポリペプチドと同程度の活性の約130%、150%、175%、200%、300%、500%、800%又はさらに1000%)。前述のうち任意のものにおいて、「活性」とは、天然ポリペプチドの1種以上の機能を意味する。例えば、ポリペプチドの活性(例えば、生物学的機能)は、受容体結合、補因子相互作用、DNA結合能、転写活性化因子又は転写抑制因子として作用する能力、特定のシグナル伝達経路に関与する能力及び細胞挙動(例えば、増殖、分化、生存又は移行)に影響を及ぼす能力であることができる。
【0106】
このような活性は、例えば、比結合定数(例えば、受容体結合についての)、有効濃度(EC50)及び/又は有効量(ED50)として表され得る。
【0107】
代表的なP'1アナログは、天然ポリペプチドを典型的に開裂させるプロテイナーゼに対する該P'1アナログの耐性のため、天然ポリペプチドと比較して増大した半減期を有する(試験管内及び/又は生体内で)。しかしながら、様々なP'1アナログが異なる半減期(並びに天然ポリペプチドと比較して異なる半減期の変化)を有することが一般的に認識されるであろう。当業者であれば、試験管内及び/又は生体内半減期は、標準的な方法を使用して容易に測定できる。ある種の具体例では、該アナログは、同様の半減期測定アッセイ条件下で、天然ポリペプチドの試験管内及び/又は生体内半減期のおよそ0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.3、1.5、2、3、5、10、25、30、50、75、100又はさらに100倍以上の試験管内又は生体内半減期を有する。
【0108】
(b)ペプチドホルモンアナログの合成
本発明のペプチドは、標準的な固相合成によって調製できる。例えば、Stewart,J.M.他,Solid Phase Synthesis(Pierce Chemical社,第2版,1984)を参照されたい。
【0109】
本発明のアナログは、ペプチド合成のための標準的な固相技術を使用して調製できる。一般的に知られているように、必要な長さのペプチドは、市販の器具及び試薬を使用して、干渉基の遮断、反応するアミノ酸の保護、対合、脱保護及び未反応残基のキャッピングのための業者の指示に従って調製できる。好適な器具は、例えば、カリフォルニア州フォスターシティーのアプライド・バイオシステムズ社又はカリフォルニア州サンラファエルのバイオサーチ社から入手できる。
【0110】
好ましい方法では、これらのペプチドを、好適な側鎖保護を有するt−ブトキシカルボニル−α−アミノ酸を使用する標準的な自動固相合成プロトコールを使用して合成する。完成したポリペプチドを、標準的な弗化水素法を使用して、同時側鎖脱保護によって固相担体から除去する。粗ペプチドを半準備逆相HPLC(Vydac C18)によって0.1%トリフルオル酢酸(TFA)のアセトニトリル勾配を使用してさらに精製する。これらのペプチドを真空乾燥させて0.1%TFA水溶液からアセトニトリルを除去し、そして凍結乾燥させる。純度を分析RP−HPLCによって確認する。これらのペプチドを凍結乾燥させることができ、次いで水又は重量で1〜2mg/mLの濃度の0.01M酢酸に可溶化させることができる。
【0111】
上記合成方法の使用は、非コードアミノ酸又はD型アミノ酸がペプチドに生じる場合に必要である。しかしながら、遺伝子がコードされているペプチドについては、手段として、市販の発現系で容易に合成されるDNA配列を使用する組換え技術を用いることもできる。
【0112】
従って、本発明の一態様は、ポリペプチドのアナログの製造方法において、該ペプチドがメタロプロテイナーゼ、セリンプロテイナーゼ、アスパラギン酸プロテイナーゼ及びシステインプロテイナーゼよりなる群から選択されるプロテイナーゼに対して耐性である、ポリペプチドアナログの製造方法である。一具体例では、このアナログは、セリンプロテイナーゼに対して耐性である。別の具体例では、該セリンプロテイナーゼは、プロリン後開裂ジペプチジルペプチダーゼのようなジペプチジルペプチダーゼである。さらに別の具体例では、該プロリン後開裂ジペプチジルペプチダーゼは、DPP−IVである。前述のうち任意のものにおいては、このプロテイナーゼ耐性ペプチドアナログの製造は、ペプチドホルモン内の1個以上のアミノ酸残基を上に示される式I又は式IIによって表されるアミノ酸残基で置換することを含み得る。
【0113】
本発明の別の態様は、ペプチドホルモンのアナログの製造方法において、該ペプチドホルモンがN末端アミノ酸配列Xaa−Ala−Yaa−R又はXaa−Pro−Yaa−R'を有し、ここで、Xaa及びYaaは、アミノ酸残基を表し、そしてR及びR'は、それぞれ独立して、1〜約100個のアミノ酸残基(好ましくは、約<90、<80、<70、<60、<50、<40、<30、<20又はさらに<10のアミノ酸残基)を含むポリペプチド鎖を表し、しかも該アナログ配列において、Yaaは、上記式I又は式IIによって表されるアミノ酸残基によって置換されている、ペプチドホルモンのアナログの製造方法である。
【0114】
(c)機能アッセイ
ここで詳しく概説するように、本発明は、プロテイナーゼ耐性P'1アナログを作製するための一般化可能な方法を提供する。所定の基質内における特定の酵素に対する開裂部位の知識及びプロテイナーゼ耐性アナログを構築するためにここに与えられる手引きに基づき、例えば、セリンプロテイナーゼ、メタロプロテイナーゼ、アスパラギン酸プロテイナーゼ及びシステインプロテイナーゼによる開裂に対して耐性のある多数のP'1アナログを容易に構築することができる。いったん候補のP'1アナログを作製したならば、該P'1アナログの活性(例えば、プロテイナーゼ基質としての該候補アナログの適合性)を容易に測定することができ、そして天然ポリペプチドの活性と比較することができる。
【0115】
候補P'1アナログが蛋白質分解に対して耐性かどうかを評価するための様々な方法が斯界において利用できる。例えば、特定のプロテイナーゼがP'1アナログを開裂する能力は、試験管内での細胞フリー系で測定できる。細胞フリーアッセイ系の一具体例では、候補の基質(例えば、P'1アナログ及び/又は天然ポリペプチド)を放射活性のような検出可能な標識で末端標識する。標識された基質をプロテイナーゼの存在下でインキュベートする。経時的に、該反応混合物の試料を停止させ、そしてゲルに流すことができる。放射活性バンドの寸法の変化は、該ペプチドがプロテイナーゼによって開裂することを示しており、そしてこの変化が生じる比率は、該ポリペプチドがプロテイナーゼによって開裂する比率を示す。この比率を天然ポリペプチドで観察される比率と比較することができる。
【0116】
さらに例示すると、特定のP'1アナログを試験するための代表的な実験は次のことを包含する。天然ポリペプチド及び推定のP'1アナログをそれぞれ放射活性標識する(注意:標識する目的のために必要なことは、ポリペプチドの開裂が全長標識ポリペプチドとは寸法の異なる放射活性断片を生じさせることだけである)。標識天然ポリペプチド及びP'1アナログを特定のプロテイナーゼと共にインキュベートする。インキュベーション後に、天然ポリペプチドとP'1アナログの両方をゲル電気泳動法によって分離し、そしてこれらの標識種の移動を試験する。この特定のプロテイナーゼは、天然ポリペプチドを開裂させることが知られているので、天然ペプチドの標識断片の寸法の変化(酵素とのインキュベーション前後)を確認することを予期するであろう(小さな断片は開裂産物に相当する)。しかしながら、P'1アナログが蛋白質分解に対して耐性である場合には、プロテイナーゼとのインキュベーション後のこの移動度の変化は生じないか、又は天然蛋白質の蛋白質分解について生じるよりもかなり緩やかに生じるかのいずれかであろう。
【0117】
また、天然ポリペプチドと比較したプロテイナーゼがP'1アナログを開裂させる能力比は、細胞ベースの試験管内系でも評価できる。このような細胞ベースアッセイの一つでは、所定のプロテイナーゼを発現する細胞と天然ポリペプチド又はP'1アナログとを該天然ポリペプチド又はP'1アナログが該細胞内で発現するように接触させる。上記の細胞フリーアッセイと同様に、該天然ポリペプチド及びP'1アナログを検出できるように標識する。天然ポリペプチド及びP'1アナログの開裂を、該細胞から蛋白質を抽出し、そして標識蛋白質の移動度を測定することによって測定し、比較することができる。
【0118】
細胞ベースアッセイのさらなる例では、所定のプロテイナーゼを発現しない細胞と、検出できるように標識された天然ポリペプチド又はP'1アナログとを、該天然ポリペプチド又はP'1アナログが該細胞内で発現するように接触させる。この細胞と特定のプロテイナーゼとを、該プロテイナーゼが該細胞内で発現するようにさらに接触させる。該天然ポリペプチド及びP'1アナログの開裂を、該細胞から蛋白質を抽出し、そして標識蛋白質の移動度を測定することによって測定し、比較する。
【0119】
上記細胞ベースアッセイのうち任意のものにおいて、本発明は、多数の一次細胞又は細胞株のうち任意のものを使用することを意図する。場合によっては、試験管内分析を実施するために、特定の細胞又は細胞株を選択することが有利であるかもしれない。例えば、場合によっては、当業者が最終的にP'1アナログを使用することを望む細胞型にさらに密接に関わる細胞系を選択することが有利であるかもしれない。しかしながら、その他の場合には、主として利便性に基づき選択される恐らくは関連のない細胞型又は細胞株において候補のP'1アナログの初期スクリーニング及び試験を実施し、且つ、その後、必要に応じて特定の細胞株又は動物において安全性及び有効性試験を実施することが最も有用であり得る。
【0120】
細胞フリーアッセイ及び細胞ベースアッセイの他に、特定のP'1アナログのプロテイナーゼ耐性は、多数の動物モデルのうち任意のものを使用して生体内で測定できる。所定のP'1アナログの蛋白質分解の初期試験は、野生型の動物で評価できる。このような初期試験中には、該P'1アナログの見込まれる正又は負の効果は問題にならないが、むしろ問題は、ある特定のP'1アナログが蛋白質分解に対して耐性かどうかである。いったん特定のP'1アナログが、上記の細胞フリーアッセイ、細胞ベースアッセイ又は生体内アッセイのうち任意のものを使用して蛋白質分解に対して耐性であることが示されたら、さらに該P'1アナログの試験管内及び生体内試験を実施して該P'1アナログの治療上の有効性を確認することができる。
【0121】
プロテイナーゼ耐性P'1アナログの特定の機能活性を評価するために追加のアッセイが使用できる。このようなアッセイは、特定のP'1アナログに基づき選択できる。例えば、ポリペプチドが成長因子であるときには、該成長因子アナログの機能活性は、細胞フリーアッセイ又は細胞ベースアッセイにおいて該成長因子がその成長因子受容体に結合する能力を測定し、そしてこれと天然成長因子の該能力とを比較することによって評価できる。該ポリペプチドがペプチドホルモンであるときには、該ペプチドホルモンアナログの機能活性は、細胞フリーアッセイ又は細胞ベースアッセイにおいて該ペプチドホルモンアナログがその受容体に結合する能力を測定し、そしてこれと天然ペプチドホルモンの該能力とを比較することによって評価できる。ポリペプチドが転写因子であるときには、該転写因子アナログの機能活性は、適切なDNAコンセンサス配列に結合する能力又は適切なコンセンサス配列を含有するレポーター構築物を活性化させる能力を測定し、そしてこれと天然転写因子のコンセンサス配列の該能力とを比較することによって評価できる。これらの例のうち任意のものでは、機能活性は動物モデルでも測定できる。
【0122】
次に例示する例は、特定のポリペプチドのアナログの機能活性を評価する見込まれる方法を提供する。
【0123】
1.インスリン分泌活性のアッセイ
ある種の具体例では、本発明のP'1アナログは、ペプチドホルモンアナログである。活性なGLP−1ペプチド7〜34、7〜35、7〜36及び7〜37は、インスリン分泌活性を有し、そして本発明は、これらの活性GLP−1のペプチドアナログを作製するための方法を提供する。蛋白質分解に対するGLP−1ペプチドアナログの耐性は、容易に測定できる。さらに、該GLP−1ペプチドアナログの機能活性は、ペプチドホルモンアナログのインスリン分泌特性を試験することによって立証できる。インスリン分泌活性は、例えば、それぞれ、所定のペプチドアナログを動物細胞に与え、又はこのアナログを動物に注入し、そしてその培地又は該動物の循環系への免疫反応性インスリン(IRI)の放出を監視することによって決定できる。IRIの存在は、インスリンを特異的に検出できる放射免疫測定法を使用することによって検出できる。
【0124】
db/dbマウスは、マウスの遺伝的に肥満で且つ糖尿病の系統である。このdb/dbマウスは、その肥満の進行に不随して高血糖症及び高インスリン血症を発症するため、肥満性2型糖尿病(NIDDM)のモデルとしての役割を果たす。db/dbマウスは、例えば、The Jackson Laboratories(メイン州バーハーバー)から購入できる。代表的な具体例において、ペプチドホルモンアナログ又はコントロールを含む療法によるマウスの治療については、眼窩洞下血液試料をそれぞれの動物の投与前及び投与後任意の時間(例えば、60分)に得る。血中グルコースの測定を、グルコース計測器を使用するようないくつかの慣用技術のうち任意のものによって行うことができる。コントロールとペプチドホルモンアナログ投与動物との血中グルコースレベルを比較する。
【0125】
また、外因性GLP−1アナログの代謝の成り行きも非糖尿病の被検体及びII型糖尿病の被検体のいずれで追跡することができ、そして候補のアナログの効果を決定する。例えば、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)、特異的放射免疫測定法(RIA)及び酵素免疫測定法(ELISA)の組み合わせを使用することができ、それによってそのままの生物学的に活性なGLP−1及びその代謝産物を検出することができる。例えば、Deacon外,(1995)Diabetes44:1126−1131を参照されたい。例示すると、GLP−1アナログの投与後に、そのままのペプチドを、NH2−末端に向けられるRIA又はELISAを使用して測定することができると共に、これらのアッセイとCO2H−末端特異的RIAとの間の濃度の差によってNH2末端短縮代謝産物の決定を可能にすることができる。アナログがなければ、皮下のGLP−1は、時間依存的な態様で容易に分解され、GLP−1(9〜36)アミドと共にHLPCで同時溶出し且つ同一の免疫反応性プロファイルを有する代謝産物を形成する。例えば、糖尿病患者への皮下GLP−1投与の30分後(n=8)に、血漿の免疫反応性の増大の88.5+1.9%を占める代謝産物がCO2H末端RIAによって検出されるが、これは健康な被検体で測定されるレベル(78.4+3.2%;n=8;P<0.05)よりも高い。Deacon外,上記参照。また、静脈内に注入されたGLP−1も広く分解された。
【0126】
GLP−1アナログのインスリン分泌活性を測定するその他の方法は、米国特許第5545618号に開示されている。
【0127】
(d)医薬品
治療としての使用のために、選択されたP'1アナログを薬剤として許容できるキャリアと共に処方するが、これは、選択される投与経路、即ち、経口、静脈内又は非経口経路に適合する剤形を使用して、P'1アナログの治療上有効な量を、該ペプチドを所望の組織に供給するように被検体に投与するために適切である。ある種の具体例では、これらのアナログは非発熱性である。即ち、臨床学的に許容できる量以上でも患者の体温の上昇を引き起こさない。好適な薬剤として許容できるキャリアは、希釈剤、賦形剤などのような、ペプチドベースの薬剤と共に慣用されているものである。一般的に薬剤処方についての手引きとしては、「Remington's Pharmaceutical Sciences」,第17版,マック出版社,ペンシルバニア州イーストン,1985を参照されたい。本発明の一具体例では、これらの化合物は、例えば、完全非経口栄養療法中に患者用の液体栄養補給剤として使用するときには注入による、又は、例えば、皮下、筋肉内若しくは静脈内の注射による投与のために処方されるため、滅菌水溶液及び非発熱性の形態の水溶液として利用され、そして随意として生理学的に許容できるpH、例えば、僅かに酸性のpH又は生理的pHに緩衝化される。従って、これらの化合物は、滅菌水のようなビヒクル又は望ましくは、生理食塩水、燐酸塩緩衝化生理食塩水若しくは5%デキストロース溶液で投与できる。所望ならば、P'1アナログの水溶性は、酢酸又は水酸化ナトリウムのような溶解促進剤を取り入れることによって向上できる。
【0128】
本発明のP'1アナログは、薬剤として許容できる塩の形態で与えることができる。このような塩の例としては、有機酸(例えば、酢酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、メタスルホン酸又はトルエンスルホン酸)、無機酸(例えば、塩酸、硫酸又はホスホン酸)及び高分子酸(例えば、タンニン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリ乳酸、ポリグリコール酸又はポリ乳酸とグリコール酸との共重合体)によって形成されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
薬剤として有効な量の本発明のP'1アナログ及び薬剤として許容できるキャリア物質(例えば、炭酸マグネシウム、ラクトース又は該治療用アナログがミセルを形成できる燐脂質)は、共に被検体への投与(例えば、経口、静脈内、経皮、肺内、膣内、皮下、経鼻、イオン導入、気管内、頭蓋内、心筋内、周皮内、筋肉内)用の医薬組成物(例えば、丸剤、錠剤、カプセル剤又は液体)を形成する。経口投与されるべきこの丸剤、錠剤又はカプセル剤は、その活性組成物を、胃内の胃酸又は腸内酵素から、消化されていない状態で小腸を通過するのを可能にするのに十分な時間にわたって保護するための物質で被覆できる。またこの医薬組成物は、皮下投与又は筋肉内投与用の生分解性又は非生分解性徐放処方物の形態であることもできる。例えば、米国特許第3773919号及び同4767628号並びに国際公開第WO94/15587号を参照されたい。また、連続投与は、埋め込み型ポンプ又は外部ポンプ(例えば、INFUSAID(商標)ポンプ)を使用して達成することもできる。また、投与は、断続的に、例えば、毎日1回の注射、又は、例えば低投与量の徐放処方物で連続的に実施することもできる。
【0130】
本発明の医薬組成物又は診断用組成物は、疾患を治療又は診断するのに十分な量で個体に投与される。上記病気又は疾患を治療するための本発明のペプチドの有効投与量は、投与の態様、被検体の年齢及び体重並びに治療を受ける被検体の病状に応じて変化し、そして最終的には治療する内科医又は獣医によって決定されるであろう。
【0131】
また、上記一般式によって包含される、グルコース代謝異常、脂質代謝異常又は摂食障害に関連する病気又は疾患を治療する際に使用するためのペプチドも本発明の範囲内にあることが意図される。
【0132】
本発明のその他の特徴及び利点は、詳細な説明及び請求の範囲から明らかであろう。
【0133】
(v)使用方法
(1)診断上の使用
本発明のペプチドホルモンアナログは、グルコース代謝、脂質代謝、食品摂取及び高血圧に関連する病状を含む(これらに限定されない)様々な病状を診断し又は治療するために、放射線同位元素標識された又は標識されていない形態で使用できる。
【0134】
好ましくは、本発明の放射線同位元素標識複合体がこのような診断及び治療に使用される。本発明の化合物の放射線同位元素標識の具体例は、WO93/18797及びWoltering外,(1994),Surgery116,1139−1147に記載されるように、放射線同位元素誘導外科処置において使用できる。好ましい具体例では、99Tcのようなγ放出性放射性核種と本発明の化合物との複合体を使用してSSTR発現腫瘍を診断し、そしてその後、188Re又は186Reのようなβ放出性放射性核種と該化合物との複合体を使用して腫瘍を治療する。
【0135】
診断の目的のために、本発明の診断用又は放射線診断用の薬剤の有効診断量を、好ましくは静脈内に投与する。有効診断量とは、磁気共鳴、コンピュータ断層撮影、γ線シンチグラフィー、SPECT、PETなどのような慣用の方法を使用して生体内での該標識の局在及び検出を達成するのに必要な診断用又は放射線診断用薬剤の量と定義される。
【0136】
シンチグラフィー用画像を使用する診断については、好ましくは、本発明の99Tc標識化合物は、単一単位注射量で投与される。本発明によって提供されるこの99Tc標識化合物は、水性生理食塩媒体のような静脈注射用の任意の慣用の媒体で、又は血液血漿媒体で静脈内に投与できる。一般に、投与されるべき単位投与量は、約0.01mCi〜約100mCi、好ましくは1mCi〜50mCiの放射活性を有する。単位投与量で注射されるべき溶液は、約0.01mL〜約10mLである。静脈内投与後に、生体内での画像化をおよそ数分で行うことができる。しかしながら、画像化は、所望ならば、放射線同位元素標識化合物が患者に注射された後1時間又はさらにそれ以上で行うことができる。ほとんどの場合、投与された量のうち十分な量が約0.1時間以内に画像化されるべき領域内に蓄積してシンチフォトの撮影が可能になるであろう。診断目的でのシンチグラフィー画像化の任意の慣用方法が本発明に従って利用できる。
【0137】
(2)治療方法
P'1アナログは、所定のポリペプチド医薬組成物で治療され得る任意の病気又は病状を治療する改善方法を提供し、ここで、該ポリペプチドは、生体内でプロテイナーゼによって正常に開裂する。蛋白質分解が治療の利用性を減少させ又は無くし、そして場合によっては機能的に拮抗する産物の生産に至らせるとすれば、特定の病気及び病状を治療するために使用できる多くのポリペプチド療法の安全性及び有効性が大きく損なわれる。従って、プロテイナーゼ耐性P'1アナログの方法及び組成物は、多数の様々な病気及び病状のうち任意のものを治療する改善方法を提供する。
【0138】
様々な病気及び病状を治療する改善方法におけるP'1アナログの適用性をさらに明確に例示するために、本出願人は、次の限定されない例を提供する。ある種の具体例では、本発明のP'1アナログは、ペプチドホルモンアナログである。これらのペプチドホルモンは、ある種の具体例では、血中グルコースレベルを低下させ、肥満を低減させ、耐糖能障害を緩和し、肝臓でのグルコース再生を抑制し、血中脂質レベルを低下させ、そしてアルドースレダクターゼを阻害する能力を有する。しかして、これらのものは、鬱血性心不全、高血糖、肥満、高脂質血症、糖尿病合併症(網膜症、腎症、ニューロパシー、白内障、冠動脈疾患及び動脈硬化症を含む)並びにさらに肥満関連高血圧症及び骨粗鬆症の予防及び/又は治療のために有用である。従って、本発明の一態様は、治療上有効な量の1種以上のペプチドホルモンアナログ、例えば、ここに開示されるペプチドホルモンアナログを投与することを含む患者又は被検体の病気を治療するための方法である。
【0139】
ある種の具体例では、治療方法に使用するための蛋白質分解耐性アナログは、活性なGLP−1ペプチドのP'1アナログを含む。GLP−1(7〜34)、GLP−1(7〜35)、GLP−1(7〜36)及びGLP−1(7〜37)を含め、 様々な長さのGLP−1ペプチドが生物学的に活性であることが知られている。これらの配列を以下に挙げる:
GLP−1(7〜37):HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG;
GLP−1(7〜36):HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR(−NH2);
GLP−1(7〜35):HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVK;及び
GLP−1(7〜34):HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLV。
【0140】
ある種の具体例では、本発明は、グルコース代謝を改変させるための方法に関する。GLP−1ペプチドのP'1アナログを、糖尿病に罹患した患者に投与することができる。糖尿病は、インスリン分泌の相対的な又は絶対的な減少、インスリン感受性の減少又はインスリン抵抗性によって生じる高血糖によって特徴付けられる病気である。この病気の罹患率及び死亡率は、血管、腎臓及び神経の合併症に起因する。経口グルコース負荷試験は、糖尿病を診断するために使用される臨床試験である。経口グルコース負荷試験では、グルコース負荷又はチャレンジに対する患者の生理学的応答が評価される。グルコースを摂取した後に、該グルコースチャレンジに対する患者の生理学的応答が評価される。一般に、これは、いくらかの所定の時点についての患者の血中グルコースレベル(患者の血漿、血清又は全血液中のグルコース濃度)を決定することによって達成される。
【0141】
従って、一態様では、本発明は、心臓に関連する病気、高血糖、肥満、高脂質血症、糖尿病合併症(網膜症、腎症、ニューロパシー、白内障、冠動脈疾患及び動脈硬化症を含む)並びにさらに肥満関連高血圧症及び骨粗鬆症を治療するための蛋白質分解耐性GLP−1アナログの治療上の及び関連する使用に関する。
【0142】
ある種の具体例では、主題のGLP−1アナログは、様々な心臓に関連する病気のための治療計画の一部分として使用できる。代表的な心臓関連疾患としては、心筋梗塞、虚血−再灌流障害、鬱血性心不全及び心停止が挙げられる。また、主題のGLP−1アナログは、心臓関連疾患の予防にも使用できる。
【0143】
ある種の具体例では、主題のアナログを使用して鬱病、分裂情動精神病、睡眠時無呼吸、乏しい集中力による多動症候群、記憶喪失、健忘症及びナルコレプシーの治療又は改善のために覚醒を誘導することができる。
【0144】
ある種の具体例では、治療上有効な量の蛋白質分解耐性GLP−2アナログを消化管疾患にかかった患者に投与することができる。GLP−2は栄養剤として作用して消化管組織の成長を促進させることが突き止められている。GLP−2の効果は、特に、小腸の成長の増大を特徴とするため、ここでは、「小腸栄養」効果という。
【0145】
従って、一態様では、本発明は、消化管組織、具体的には小腸組織の成長及び増殖を促進させるためのGLP−2の治療上の及び関連する使用に関する。例えば、主題の方法は、例えば、腸粘膜上皮の向上した成長及び修復が望まれる場合には、腸組織の損傷、炎症又は切除を治療するための治療計画の一部分として使用できる。
【0146】
小腸組織に関して、このような成長は、治療を受けていないコントロールに対する小腸質量及び長さの増加として測定されるのが便利である。また、小腸に及ぼす主題GLP−2アナログの効果も陰窩に絨毛軸を加えた高さの増加として明らかになる。このような活性を、ここでは「腸栄養」活性という。また、この主題の方法の有効性は、陰窩細胞増殖の増大及び/又は小腸上皮アポトーシスの減少としても検出可能である。これらの細胞の効果は、遠位空腸及び特に近位空腸を含め空腸に関して、また遠位回腸において最も有意に確認できる。ある種の化合物は、該化合物で治療を受けたとき(又はそれ自体このものを発現するように遺伝子操作されたとき)に、試験動物が有意に増加した小腸重量、増加した陰窩+絨毛軸高さ又は増大した陰窩細胞増殖又は減少した小腸上皮アポトーシスを示す場合には、「腸栄養」効果を有するとみなされる。このような消化管の成長を決定するために好適なモデルは、米国特許第5834428号に記載されている。
【0147】
一般に、増加した腸質量及びその結果としての増大した小腸上皮機能のいずれの恩恵を被るであろう患者が、主題の方法による治療の候補者である。治療できる特定の病状としては、コムギ由来のα−グリアジンに対する毒性反応によって生じ、しかも腸の絨毛のおびただしい欠損を特徴とするセリアック病、感染によって生じ、しかも絨毛の部分的な平坦化を特徴とする熱帯性スプルー、共通の一般免疫不全又は低γ−グロブリン血症の患者に共通して観察され、しかも絨毛高さの有意な減少を特徴とする低γ−グロブリン血症性スプルーを含めたスプルーの様々な形態が挙げられる。該治療の治療上の有効性は、絨毛の形態を試験するための腸生検によって、栄養吸収の生化学的評価によって、患者の体重増加によって、又はこれらの病状に関連する症状の改善によって監視できる。主題の方法によって治療できる又は主題の方法が予防に有用であり得るその他の病状としては、放射線性腸炎、感染性又は感染後腸炎、限局性腸炎(クローン病)、毒剤又はその他の化学療法剤による小腸損傷及び短腸症候群の患者が挙げられる。
【0148】
より一般的には、本発明は、消化管疾患を治療するための治療方法を提供する。ここで使用するときに、用語「消化管」とは、胃及び腸を含め、食物が通過する管を意味する。ここで使用するときに、用語「消化管疾患」とは、例えば、潰瘍性又は炎症性腸疾患、吸収不良症候群を含めて先天的又は後天的消化・吸収疾患、消化管の上皮障壁機能の欠損によって生じた疾患及び蛋白漏出性胃腸疾患を含め、消化管上皮での定性的又は定量的異常に伴って生じる疾患を意味する。潰瘍性疾患としては、例えば、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、小腸潰瘍、結腸潰瘍及び直腸潰瘍が挙げられる。炎症性腸疾患としては、例えば、食道炎、胃炎、十二指腸炎、腸炎、大腸炎、クローン病、直腸炎、消化管ベーチェット病、放射線性腸炎、放射線性大腸炎、放射線性直腸炎、腸炎及び薬物性腸炎が挙げられる。吸収不良症候群としては、二糖類分解酵素欠損症、グルコース−ガラクトース吸収不良、フルクトース吸収不良のような本態性吸収不良症候群、二次性吸収不良症候群、例えば、静脈内若しくは非経口栄養摂取又は基本食による消化管内の粘膜の萎縮によって生じる疾患、短腸症候群のような小腸の切除及びシャントによって生じる疾患、盲管症候群及び胃の切除によって生じる疾患のような不消化性吸収不良症候群、例えばダンピング症候群が挙げられる。
【0149】
ここで使用するときに、用語「消化管疾患用の治療剤」とは、例えば、消化管潰瘍用の治療剤、炎症性消化管疾患用の治療剤、消化管内の粘膜萎縮用の治療剤及び消化管損傷用の治療剤、粘膜障壁機能の回復用の薬剤を含めて消化管の機能のための改善剤及び消化・吸収機能のための改善剤を含め、消化管疾患の予防及び治療用の薬剤を意味する。潰瘍としては、消化管潰瘍及びただれ、急性潰瘍、即ち、急性粘膜病変が挙げられる。
【0150】
主題の方法は、腸粘膜の増殖を促進させるため、消化・吸収が不十分である病理学的状態の治療及び予防、即ち、粘膜萎縮の治療及び予防又は消化管組織の形成不全及び外科的切除によるこれらの組織の減少の治療並びに消化・吸収の改善に使用できる。さらに、主題の方法は、腸炎、クローン病及び潰瘍性大腸炎のような炎症性疾患による異常粘膜状態の治療に使用でき、また術後の消化管機能の低下、例えば、ダンピング症候群の治療並びに胃の蠕動運動及び胃から空腸に至る食物の迅速な移動の抑制と共に十二指腸潰瘍の治療にも使用できる。さらに、外科的侵入の治癒を促進させ並びに消化管の機能を改善させる際にグリセンチンが効果的に使用できる。従って、本発明は、有効成分としてグリセンチンを含む消化管粘膜の萎縮用の治療剤、消化管の創傷用の治療剤及び消化管の機能を改善させるための薬剤も提供する。
【0151】
さらに、主題の方法は、膵臓ペプチド、ペプチドYY及び神経ペプチドY(これらの全ては、膵臓ポリペプチドファミリーの一員である)の薬物動態を改変させるために使用できる。特に、DPP−IVは、受容体選択性を改変させる態様でこれらのペプチドをプロセシングすることに関わっているため、これらのペプチドのそれぞれのDPP−IV耐性アナログは容易にデザインできる。
【0152】
神経ペプチドY(NPY)は、血管平滑筋収縮の調節並びに血圧の調節に作用すると考えられる。また、NPYは、心筋収縮性も低下させる。また、NPYは、知られている最も強力な食欲刺激因子でもある(Wilding外,(1992)J Endocrinology132:299−302)。中枢誘発食物摂取(食欲刺激)効果は、主としてNPY Y1受容体によって仲介され、そして体脂肪貯蔵の増加を生じさせる(Stanley外,(1989)Physiology and Behavior46:173−177)。例として、NPYの一つの見込まれる使用は、食欲を増大させる治療剤の製造時である。世界の大部分の国が体重を減らそうと努力しているが、多くの状況においては、その目標は体重を増加させることである。摂食障害の発生率は、世界中で上昇中である。やがて、摂食障害の個人は、食欲の異常喪失を患い、そしてこの食欲喪失は、再摂食を極めて困難にする。このような困難さは、多くの場合、個人の体重が生命を脅かすほど低いレベルに達したときでさえも持続する。従って、食欲を刺激する薬剤の使用は、医療提供者がひどい栄養失調状態にある摂食障害の患者の再摂食を促し且つサポートする能力を大きく向上させよう。
【0153】
長期にわたる栄養失調の期間後に再摂食しようと試みる個人が直面する困難さは、摂食障害の個人に限定されない。任意の原因による栄養失調が食欲の重大な抑制を生じさせ得、そしてこれは、これらの個人における適切な栄養摂取を迅速且つ容易に促進させる障害となり得る。食欲を刺激する治療剤は、栄養失調の個人の治療の際に大きな有用性を有するであろう。
【0154】
食欲の喪失及び消耗症候群は、多くの場合、他の病気及び病状と関係がある。例えば、様々な形態の癌及びAIDSにかかった患者は、多くの場合、消耗を経験する。この有意な体重の減少並びに筋肉質量の損失は、エネルギーの損失及びさらには免疫系の抑制を含む様々な他の合併症に至り得る。従って、他の病気に関連する食欲の喪失及び消耗に対抗するのを助成する治療剤及び治療は、多数の病気のうち任意のものと闘う患者の生活の質を大きく改善させるであろう。
【0155】
最後の例は、農業分野において食欲を刺激し且つ体重増加を刺激する治療剤の投与に関する。このような薬剤は、より高い平均体重及び/又はより高い平均脂肪含有量の商業用家畜のような動物を育てるのを助成するために使用できた。例として、このような治療剤を、動物用飼料又は水で、ウシ、ブタ、ニワトリ、ヒツジ、シチメンチョウ、ヤギ、バッファロー、ダチョウなどに投与して、食品産業における販売用のさらに大きな動物を産み出すことができた。
【0156】
ペプチドYY(PYY)及び膵臓ポリペプチド(PP)は、摂食障害、胃腸障害及び膵臓癌に関わっている(米国特許第5574010号を参照)。
【0157】
また、DPP−IVは、成長ホルモン放出因子(GHRF)の代謝及び不活性化にも関わっている。GHRFは、グルカゴン、セクレチン、血管作用性小腸ペプチド(VIP)、ペプチドヒスチジンイソロイシン(PHI)、下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)、胃抑制ペプチド(GIP)及びヘロデルミンを含む相同ペプチドファミリーの一員である(Kubiak外,(1994)Peptide Res7:153)。GHRFは、視床下部によって分泌され、且つ、下垂体前葉からの成長ホルモン(GH)の放出を刺激する。従って、主題の方法は、ある種の成長ホルモンが欠乏した子供のための臨床治療を改善させるために使用でき、また栄養を改善させ且つ体組成(筋肉対脂肪)を改変させるための成人の臨床治療に使用できる。また、主題の方法は、獣医業務において、例えば、より高い収量のミルク生産及びより高い収量の有蹄家畜を開発するためにも使用できる。
【0158】
本発明は、P'1アナログのみが治療計画を構成する治療方法並びにより複合的な多因子治療計画の一部分としての1種以上のP'1アナログの投与を利用する治療方法にP'1アナログを使用することを意図する。例えば、糖尿病及び/又は糖尿病の合併症を治療する方法の場合には、本発明は、GLP−1アナログのようなP'1アナログを投与することによって糖尿病を治療する方法を意図する。さらに、本発明は、ある状況では、好ましくは1種以上のP'1アナログを投与することがあり得ることを意図する。例えば、この治療方法は、2種以上のP'1アナログの投与を含み得る。このようなP'1アナログは、同一のポリペプチドのアナログであってよく(例えば、2種の異なるGLP−1アナログ)、又は別個のポリペプチドのアナログであってもよい。さらに、本発明は、1種以上のP'1アナログの投与が複合的な治療計画の一部分として使用できることを意図する。糖尿病又は糖尿病の合併症を治療する方法の場合には、代表的な治療計画は、1種以上のP'1アナログの投与、インスリンの投与、食事の調節及び運動の調節を包含し得る。
【0159】
多面治療計画のさらなる例では、本発明は、1種以上のP'1アナログ、及び天然蛋白質を内因的に開裂させる特定の酵素の酵素活性を阻害する1種以上の薬剤の投与を意図する。GLP−1の場合には、代表的な方法は、1種以上のペプチドアナログを1種以上のDPP−IV阻害剤と共に投与することを含むであろう。特定の酵素の阻害剤は特異的であることができ(例えば、DPP−IVの活性のみを調節する阻害剤)、又は、該阻害剤は、さらに無差別的であってもよい(例えば、多様なセリンプロテアーゼの活性を調節する阻害剤)。さらに、本発明は、1種以上のP'1アナログ、及び天然蛋白質を内因的に開裂する特定の酵素を分解させる1種以上の酵素の投与を意図する。GLP−1の場合には、代表的な方法は、1種以上のペプチドアナログを、DPP−IVを分解させる1種以上の酵素と共に投与することを含むであろう。このような酵素は特異的であることができ(例えば、DPP−IVのみを分解させる酵素)、又は、該酵素は、多様な他の蛋白質を分解することができる(例えば、いくつかのセリンプロテアーゼを分解させる酵素)。
【0160】
(f)ビジネス方法
本発明のその他の態様は、ビジネスを行う所定の方法を提供する。特に、本発明の該方法を実施して、ペプチドホルモンアナログのようなある種のペプチダーゼ耐性P'1アナログを同定することができる。この技術的段階は、1つ以上の追加段階と組み合わされると、製薬、農薬、生物工学又は好ましくは生命科学ビジネスを実施するための新規な方法を提供する。例えば、本発明に従うP'1アナログを様々な病気のモデルにおいて治療剤としての有効性について試験することができ、次いで、見込まれる治療組成物を毒性及びその他の安全性のプロファイリングについて試験してから、得られた病気治療用組成物を処方し、包装し、そしてその後市場調査することができる。或いは、このような処方物を開発し且つ市場調査する又はこのような段階を実施するための権利を報酬のために第三者にライセンス供与することができる。本発明の他の態様では、このようにして同定されたP'1アナログは、生物学的背景又は治療的背景における該P'1アナログの機能又は副作用についてより一層の理解が得られるように、報酬のために第三者に提供できる情報の形の有用性を有し得る。
【0161】
ある種の具体例では、最初に同定されたP'1アナログをさらなる最適化に付して、例えば、リードアナログの構造をさらに改良することができる。このような最適化は、蛋白質分解に対する最大限の耐性と、溶解性、透過性、生物学的利用能、毒性、変異原性及び薬物動態を含むその他の望ましい薬理的特性とを組み合わせるアナログの開発に至り得る。
【0162】
上に列挙したパラメーターについての問題点に対処するために、リードアナログに構造的修飾がなされる。しかしながら、これらの修飾は、該アナログの有効性及び活性に及ぼす見込まれる影響を考慮に入れなければならない。例えば、ある動物モデルで試験されたときにリードアナログの毒性が高い場合には、プロテイナーゼ耐性の所望の特性を保持しつつ毒性を低減させようとして該アナログに修飾をなすことができる。
【0163】
候補のアナログ(該アナログが修飾されて生体内特性を改善させるように変化するかどうか)又はその組み合わせを動物モデルにおいて有効性及び毒性について試験しなければならない。このような治療プロファイリングは、製薬技術において一般的に使用される。ヒトにおいて実験的治療剤を試験する前に、広範囲にわたる治療プロファイリング(前臨床試験)を完了させて安全性及び有効性についての初期パラメーターを確立しなければならない。前臨床試験は、試験管内で(即ち、試験管、ビーカー、ペトリ皿などの中で)及び動物内で実行される研究によって、治療剤、その生物学的利用能、吸収、分布、代謝及び排出についての作用機構を確立する。動物研究を使用して該治療剤が所望の結果を与えるかどうかを評価する。実験的治療剤の投与量を変化させて投与して該治療剤の有効性を試験し、生じ得る有害な副作用を同定し、そして毒性を評価する。
【0164】
簡単に言うと、当業者であれば、候補のプロテイナーゼ耐性アナログの同定が投与のために有用な医薬品を開発する際の第1段階であることを認識するであろう。病状又は病気を治療するのに有効な量の該P'1アナログを含む医薬品の投与は、安全で且つ有効でなければならない。斯界において日常的に使用されている初期段階の薬剤試験は、見込まれる医薬品の安全性及び有効性の問題に対処するのを助成する。P'1アナログの特定の場合には、該医薬品の有効性は、まず細胞培養液中で、次いでマウス又はラットモデルで容易に評価できた。所定のP'1アナログが使用されるであろう特定の病気の兆候にとって適切な細胞培養系及び動物モデルは、当業者であれば容易に選択できる。簡単に言えば、マウス又はラットに該医薬品の変化投与量を様々な時間スケジュールで投与できた。投与経路は、該薬剤の特定の特性及びP'1アナログの放出が望まれる細胞型に基づいて適切に選択されよう。コントロールのマウスには偽薬(例えば、キャリア又は賦形剤単独)を投与することができる。
【0165】
一具体例では、治療プロファイリングの段階は、細胞培養液及び動物でのアナログの毒性試験、候補アナログの薬物動態及び代謝の分析並びに病気の動物モデルでの有効性の決定を包含する。ある場合には、この方法は、構造と活性の関係を分析し、そして有効性、安全性及び薬物動態プロファイルに基づきリードアナログを最適化することを包含できる。このような段階の目標は、ヒトでの臨床試験の前に新薬臨床試験開始届(「IND」)をFDAに提出するに至らせるための前臨床研究用のアナログ候補の選択である。
【0166】
前例の最適化と治療プロファイリングとの間で、一つの目標は、特定のプロテアーゼに耐性があり且つ最低限の副作用で投与できるP'1アナログを開発することである。試験管内で使用するためのアナログの場合には、代表的なアナログは、培養状態の細胞に対して甚だしく毒性であるべきではなく、培養状態の細胞に対して変異原性であるべきではなく、そして培養状態の細胞に対して発癌性であるべきではない。生体内での使用のためのアナログの場合には、代表的なアナログは、甚だしく毒性であるべきではなく(例えば、患者に投与されたときに許容できる副作用しか有しないべきである)、変異原性であるべきではなく、そして発癌性であるべきではない。
【0167】
毒性プロファイリングとは、有効量の医薬品が投与されるときに生じ得る潜在的に有害な副作用の評価を意味する。副作用は有害であっても有害でなくてもよく、そして医薬品に関わる副作用が許容できる副作用かどうかの決定は、米国食品医薬品局によって規制承認審査中になされる。この決定は、厳重な規則に従うものではなく、そして許容できる副作用であるとみなされる決定は、(a)治療されるべき病状の深刻さ及び(b)その他の治療の利用可能性及び現在のところこれらの利用可能な治療に関わる副作用を含む要因により変化する。例えば、用語「癌」には、誤調節された細胞成長、増殖及び分化に関連する病状の複合群が含まれる。癌の多くの形態は、特に、激痛、それがもたらされた組織の機能の喪失及び死を生じさせる破壊的な病気である。化学療法剤は、癌の多くの形態のための標準的な治療の重要な部分である。化学療法剤自体は、脱毛、ひどい吐き気、体重減少及び不妊症を含む重大な副作用を有するが、このような副作用は、治療しようとする病気が重大であれば許容できると考えられる。本発明において、副作用が重大だとみなされるかどうかは、治療されるべき病状及び該病状を治療するための他の方法の利用可能性に依存するであろう。
【0168】
毒性試験は、有効性試験と並行して実行でき、そして該医薬品の有効量が投与されたマウスを該調製物に対する有害反応について監視することができる。
【0169】
動物研究において安全で且つ有効であることが証明されている1種以上のプロテイナーゼ耐性P'1アナログは、医薬品に処方できる。次いで、このような医薬品を市場調査し、配布し、そして販売することができる。代表的なP'1アナログ及びこのようなアナログの医薬品を市場調査し、そして単独で販売することができ又は医薬パッケージ品及び/又はキットとして販売できる。さらに、前述の態様のうち任意のものでは、1種以上のP'1アナログのデザインに基づきビジネスを実行する方法は、随意として、患者及び/又は患者の保険料提供者に請求書を送るためのシステム並びに患者及び/又は患者の保険料提供者から適切な償還を受けるためのシステムを含み得る。
【0170】
次の実施例は、例示の目的で示すものであり、限定の目的で示すものではない。
【実施例】
【0171】
例1:プロテイナーゼ耐性GLP−1アナログ
GLP−1の投与は、糖尿病のための候補治療法である。しかしながら、GLP−1の投与に基づく治療の有効性に対する障害のうちの一つは、DPP−IVによるGLP−1の迅速な生体内分解である。DPP−IVは、GLP−1をそのアラニンとグルタミン酸との間のN末端の近くで開裂させ、そしてこれまでの研究から、この開裂は、外因性GLP−1の投与後極めて迅速に生じることが示されている(図1)。
【0172】
蛋白質分解に対して耐性のあるペプチドアナログを生成させるために、本出願人は、GLP−1のP'1位置で四置換を含有するアナログを構築した。次の例では、GLP−1(7〜37)を使用した。簡単に言えば、本出願人は、GLP−1のP'1グルタミン酸で置換を行った。なされ且つ試験された2つの特定の置換は、3−ジメチルアスパルテート及び3−ブチルメチルグリシンであった。得られたGLP−1アナログをGLP−1(3DMA)(ここで、P'1の置換は、3−ジメチルアスパルテートであった)及びGLP−1(BM)(ここで、P'1の置換は3−ブチルメチルグリシンであった)と呼んだ。
【0173】
図2は、GLP−1(3DMA)とGLP−1(BM)の両方が天然GLP−1と比較してDPP−IVによる開裂に対して耐性であったことを示した実験をまとめている。しかしながら、蛋白質分解に対して耐性であるだけでなく、天然ペプチドの生物学的活性の全て又は大部分をも保持するペプチドアナログを生成させることが最も望ましい。従って、本出願人は、DPP−IVによる分解に対して強い耐性を示すこれらのGLP−1アナログが天然GLP−1の生物学的活性をも保持するかどうか確認するために一連の実験を実施した。
【0174】
例2:プロテイナーゼ耐性GLP−1アナログは、天然GLP−1の機能活性を保持する
本出願人は、天然GLP−1ペプチドと比較したGLP−1(3DMA)とGLP−1(BM)の機能活性を評価するために一連の実験を実施した。図3〜4は、これらの実験の結果をまとめている。簡単に言えば、本出願人は、GLP−1の2つの機能特性:GLP−1のその受容体への結合及びcAMPの産生によって検定されるようなシグナル伝達を試験した。図3は、GLP−1(3DMA)の活性を試験した実験をまとめている。左のパネルは、受容体結合速度を比較している。本出願人は、GLP−1(3−DMA)がGLP−1受容体に結合する能力を保持したことを特に言及しておく。さらに、本出願人は、その結合が天然ペプチドと類似するが、同一ではないことも特に言及しておく。
【0175】
さらなる分析を、GLP−1(3DMA)が天然ペプチドに類似する態様のGLP−1シグナル伝達を増強するかどうかを評価するためのアッセイをまとめている右手パネルに与える。COS−7細胞(およそ106/10cmプレート)にヒトGLP−1受容体をコードするcDNAを瞬間的にトランスフェクトした。トランスフェクションの1日後に、これらの細胞をトリプシン処理し、そして24ウェルプレートに接種した(およそ105/ウェルの密度)。トランスフェクションの2日後に、これらの細胞を室温で1時間天然GLP−1(0.3μM)、GLP−1(3DMA)(10μM)と共にインキュベートし、又はいずれかのペプチドの非存在下にインキュベートした。受容体仲介シグナル伝達と関連のあるcAMP含有量を細胞溶解物中で近接シンチレーションラジオイムノアッセイによって測定した。図3に示すように、GLP−1(3DMA)は、GLP−1受容体を介したシグナル伝達を天然GLP−1と区別できない範囲にまで高めた。
【0176】
図4は、GLP−1(BM)の活性を測定した類似の実験をまとめている。簡単に言えば、COS−7細胞(ほぼ106/10cmプレート)にヒトGLP−1受容体をコードするcDNAを瞬間的にトランスフェクトした。トランスフェクションの1日後に、これらの細胞をトリプシン処理し、そして24ウェルプレートに接種した(およそ105/ウェルの密度)。トランスフェクションの2日後に、これらの細胞を室温で1時間天然GLP−1(0.3μM)、GLP−1(BM)(10μM)と共にインキュベートし、又はいずれかのペプチドの非存在下にインキュベートした。受容体仲介シグナル伝達と関連のあるcAMP含有量を細胞溶解物中で近接シンチレーションラジオイムノアッセイによって測定した。図4に示すように、GLP−1(BM)は、GLP−1受容体を介したシグナル伝達を天然GLP−1と区別できない範囲にまで高めた。
【0177】
例3:t−ロイシン置換GLP−1アナログは、DPP−IV分解に対して耐性である
例1及び2に与えられるデータは、GLP−1のP'1位置での2つの別個の置換がプロテイナーゼ耐性ペプチドアナログを生じさせたことを示した。また、本出願人は、P'1位置での第3の置換もプロテイナーゼ耐性ペプチドアナログを生じさせることも立証している。簡単に言えば、GLP−1(7〜37)のP'1グルタミン酸をt−ロイシン(TLE)で置換し、DPP−IVがこのペプチドアナログを開裂させる能力を評価した。
【0178】
図5は、ヒトDPP−IVでの2時間の処理後のGLP−1(7〜37)(下のクロマトグラム)と、プロテイナーゼの非存在下でのGLP−1(7〜37)(上のクロマトグラム)との比較HPLC/MS分析を示している。予期されるように、DPP−IVでの処理は、GLP−1の時間依存的分解を生じさせた。
【0179】
図6は、TLE−修飾GLP−1(7〜37)アナログのHPLC/MS分析を示している。TLE修飾GLP−1アナログをヒトDPP−IVで2時間処理し、そして該アナログの経時的分解を、DPP−IVの非存在下でのアナログのそれと比較した。クロマトグラムの比較(注意:上のパネルは未処理ペプチドアナログに相当し、そして下のパネルは処理ペプチドアナログに相当する)から、TLE修飾GLP−1がDPP−IVによる分解に耐性であることが示された。
【0180】
例4:P'1位置での置換は、その他のプロテイナーゼに対する耐性を与える
先の例は、P'1位置での様々な置換がセリンプロテアーゼDPP−IVによる分解に対する耐性を与えることを示す幅広い証拠を与える。しかしながら、プロテイナーゼ耐性を与えるためのP'1位置での4置換というこの方法は、DPP−IVによって開裂する基質に対して特異的ではない。また、本出願人は、モデル基質のP'1位置での4置換がトロンビンによる開裂に対する耐性を与えることも立証した。トロンビンはセリンプロテイナーゼであるが、このものは、DPP−IVの開裂部位とは別の開裂部位を認識し、そしてここにまとめた結果は、多数のプロテイナーゼのうち任意のものによる分解に耐性のあるP'1アナログを構築するための本発明の方法の幅広い適用性を示している。
【0181】
図7は、モデルトロンビン基質のP'1位置でのt−ロイシン(TLE)の置換が蛋白質分解に対する耐性を与えることを示した実験をまとめている。簡単に言えば、ペプチドWALAPRSFAは、トロンビンに対するモデル基質である。トロンビンは、アルギニン残基の後を開裂させる。従って、このモデルペプチドのセリン残基は、P'1位置である。
【0182】
【化12】

上の図式において、P'1位置セリン残基は、太字で示されており、そして矢印はアルギニン残基の後のトロンビンによる開裂部位を示している。
【0183】
P'1位置での4置換がトロンビン蛋白質分解に対する耐性を与える能力を試験するために、本出願人は、P'1位置がt−ロイシン(TLE)を含むモデルペプチドを調製した。このモデルペプチドアナログを以下に示すが、ここで、XはTLE置換を示すために使用している:WALAPRXFA。
【0184】
トロンビンによるモデルペプチドアナログの消化と天然モデルペプチドの消化とを比較するために、ペプチドを10nMトロンビンを含んでなる0.1MのHEPES(pH8、0.14MのNaCl、5mMのCaCl2、0.5%のPEG6000)溶液で4時間にわたって23℃で消化させた。消化後に、該消化産物のC18逆相HPLCを未消化ペプチドと比較し、そしてその主ピークのマススペクトルを図7において各クロマトグラムについて示している。図7に示すように、非修飾ペプチドは、トロンビンで効率的に開裂して開裂産物WALAPRを生じた。対照的に、TLE置換ペプチドアナログは、これらの条件下でもトロンビンで開裂しなかった。
【0185】
例5:安定なジメチルアスパラギン酸GLP−1アナログについての生体内での結果
図8は、生理食塩水コントロール溶液と比較した、糖尿病マウスにおけるエキセンジン−4に対する3つの異なる投与量(40μg、4μg及び0.4μg)についての血中グルコース濃度の経時的パーセント変化を示している。
【0186】
図9は、生理食塩水又はGLP−1コントロールについての血中グルコースのパーセント変化と比較した、糖尿病マウスにおける40μgの投与量でのGLP−1(TPA1B4)についての血中グルコースの経時的パーセント変化を示している。
【0187】
図10は、生理食塩水コントロールと比較した、糖尿病マウスにおけるGLP−1(TPA1B4)アナログに対する3つの異なる投与量(800μg、80μg及び8μg)についての血中グルコースの経時的パーセント変化を示している。
【0188】
GLP−1アナログTPA1B4は、C末端アミド及び9の位置にβ−ジメチルアスパルテート残基を有するGLP−1残基7〜36のアナログである。TPA1B4についての配列は、
HAXGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR−NH2
である。
【0189】
生体内実験を、生後5〜7週間目で購入し且つ該実験の開始前に2週間にわたって動物施設の条件に調整した雌のBKS.Cg−m+/−LePr(db)/Jマウスを使用して実行した。このマウスを、加圧され、個々に通風されたケージ内に収容した。標準的な齧歯類の食餌を、自由に与えられる食物と水と共に使用した。血中グルコースをThereaSenseフリースタイル血中グルコースモニターで測定した。尾の静脈に針で切れ目を入れて、それぞれの測定のために少量の血液(約10μL)を得た。GLP−1アナログ(TPA1B4)及びエキセンジン−4を燐酸緩衝化生理食塩水(PBS)中に溶解させ、0.2mLの指示投与量の腹腔内注射によって投与した。この実験のための生理食塩水コントロールは、PBSの0.2mLの注射であった。血中グルコースの測定は、t=0、30分、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間(及び6時間)で行った。図8及び9の値は、5匹のマウスの平均である。
【0190】
図11は、生理食塩水又はGLP−1コントロールについての血中グルコースのパーセント変化と比較した、糖尿病マウスにおける20mg/kgの投与量のGLP−1アナログ(TPA1B4)についての血中グルコースの経時パーセント変化を示している。
【0191】
図12は、生理食塩水又はGLP−1コントロールについての血中グルコースレベルと比較した、糖尿病マウスにおける20mg/kgの投与量のGLP−1アナログ(TPA1B4)についての血中グルコースレベルを示している。
【0192】
雌のBKS.Cg−m+/−LePr(db)/Jマウスを生後5〜7週間目に購入し、そして実験の開始前に2週間にわたって動物施設条件に調整した。これらのマウスを、加圧され、個々に通風されたケージに収容した。標準的な齧歯類の食餌を、自由に与えられる食物及び水と共に使用した。血中グルコースをThereaSenseフリースタイル血中グルコースモニターで測定した。尾の静脈に針で切れ目を入れてそれぞれの測定のために少量の血液(約10μL)を得た。これらのマウスを、その投与量の投与の前で且つ実験を通して2時間にわたり絶食させた。GLP−1アナログ(TPA1B4)及びGLP−1をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に溶解させ、そして0.4mLの指示投与量の腹腔内注射によって投与した。この実験のための生理食塩水コントロールは、PBSの0.4mLの注射であった。血中グルコース測定は、t=0、30分、1時間及び4時間で行った。プロットした値は、10匹のマウスの平均である。
【0193】
図13は、生理食塩水コントロールと比較した、エキセンジン−4に対する3つの異なる投与量(8μg、0.8μg及び0.08μg)についての血中グルコースの経時的パーセント変化を示している。
【0194】
図14は、生理食塩水コントロールと比較した、GLP−1に対する800μgの投与量についての血中グルコースの経時パーセント変化を示している。
【0195】
図15は、生理食塩水コントロールと比較した、GLP−1アナログ(P1732)に対する2つの異なる投与量(8μg及び0.8μg)についての血中グルコースのパーセント変化を示している。
【0196】
GLP−1アナログP1732は、C末端アミド及び9の位置にβ−ジメチルアスパルテート残基を有するエキセンジン−4テイルの一部分を取り込んだGLP−1残基7〜36のアナログである。P1732についての配列は、
HAXGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRPSSGAPPPS−NH2
である。
【0197】
生体内実験を、生後5〜7週間目に購入し、そして実験開始前2週間にわたって動物施設条件に調節した雌のBKS.Cg−m+/−LePr(db)/Jマウスを使用して実行した。これらのマウスを、加圧され、個々に通風されたケージ内に収容した。標準的な齧歯類の食餌を、自由に与えられる食物及び水と共に使用した。血中グルコースをThereaSenseフリースタイル血中グルコースモニターで測定した。尾の静脈に針で切れ目を入れてそれぞれの測定のために少量の血液(〜10μL)を得た。これらのマウスを該投与量の投与前2時間にわたって且つ実験を通して絶食させた。GLP−1アナログ(P1732)を燐酸緩衝化生理食塩水(PBS)に溶解させ、そして0.4mLの指示投与量の腹腔内注射によって投与した。この実験のための生理食塩水コントロールは、PBSの0.4mL注射であった。血中グルコースの測定は、注射の前並びに注射後30、60及び240分に行った。プロットした値は、P1732のデータについては5匹のマウス、そして生理食塩水コントロールについては10匹のマウスの平均である。
【0198】
図16は、式(II)の代表的具体例を示しており、ここで、天然型アミノ酸は、R1及びR2(ここで、R1及びR2は独立して低級アルキル又はハロゲンである)と共にβ位(3−位)で修飾されている。好ましい具体例では、R1及びR2は、両者とも低級アルキルである。より好ましい具体例では、R1及びR2は、独立してメチル、エチル又はプロピルである。最も好ましい具体例では、R1及びR2の両方がメチルである。
【0199】
全ての刊行物、特許及び特許出願は、それぞれ個々の刊行物、特許又は特許出願がその全体において引用によって加えられるように具体的且つ個別的に示された場合には、その同一の範囲にまで、それらの全体の引用によってここに加えるものとする。
【0200】
均等
当業者であれば、せいぜい日常的な実験を使用して、ここに記載された化合物及びその使用方法に対する多数の均等を認識し、又は確認することができるであろう。このような均等は、本発明の範囲内にあるとみなされ、そして請求の範囲によって包含される。
【図面の簡単な説明】
【0201】
【図1】DPP−IVによる天然GLP−1の分解の概略図である。
【図2】GLP−1(7〜37)の2つの異なるペプチドアナログがDPP−IVによる開裂に対して耐性であることを立証するHPLC/MSの結果をまとめた図である。
【図3】3−ジメチルアスパラギン酸置換GLP−1アナログが天然GLP−1の機能活性を維持することを示す図である。
【図4】3−ブチルメチルグリシン置換GLP−1(GLP−1(BM))アナログが天然GLP−1の機能活性を維持することを示す図である。
【図5】ヒトDPP−IVで2時間にわたって処理されたGLP−1(7〜37)(下)と未処理ペプチド(上)とのHPLC/MSによる比較図である。
【図6】P'1グルタミン酸の代わりに第三ロイシン(TLE)残基を含有するGLP−1アナログをヒトDPP−IVで2時間処理したHPLC/MSによる結果(下)を未処理ペプチド(上)と比較して示す図である。
【図7】セリンプロテアーゼであるトロンビンに対するモデルペプチド基質のP'1位置での第三ロイシン(TLE)の置換がトロンビンによる開裂に対して耐性のあるペプチドの産生を生じさせることを示す図である。
【図8】生理食塩水のコントロール溶液と比較した、糖尿病マウスにおけるエキセンジン−4に対する3つの異なる投与量(40μg、4μg及び0.4μg)についての血中グルコースの経時的パーセント変化を示す図である。
【図9】生理食塩水又はGLP−1コントロールについての血中グルコースのパーセント変化と比較した、糖尿病マウスにおけるGLP−1(TPA1B4)アナログに対する40μgの投与量での血中グルコースの経時的パーセント変化を示す図である。
【図10】生理食塩水と比較した、糖尿病マウスにおけるGLP−1(TPA1B4)アナログに対する3つの異なる投与量(800μg、80μg及び8μg)についての血中グルコースの経時的パーセント変化を示す図である。
【図11】生理食塩水又はGLP−1コントロールに対する血中グルコースの%変化と比較した、糖尿病マウスにおけるGLP−1アナログ(TPA1B4)に対する20mg/kgの投与量での血中グルコースの経時的パーセント変化を示す図である。
【図12】生理食塩水又はGLP−1コントロールに対する血中グルコースレベルと比較した、エキセンジン−4に対する3つの異なる投与量(8μg、0.8μg及び0.08μg)についての血中グルコースの経時的パーセント変化を示している。
【図13】生理食塩水と比較した、エキセンジン−4に対する3つの異なる投与量(8μg、0.8μg及び0.08μg)についての血中グルコースの経時的パーセント変化を示す図である。
【図14】生理食塩水の対照と比較した、GLP−1に対する800μgの投与量についての血中グルコースの経時的パーセント変化を示す図である。
【図15】生理食塩水の対照と比較した、GLP−1アナログ(P1732)に対する2つの異なる投与量(8μg及び0.8μg)についての血中グルコースのパーセント変化を示す図である。
【図16】天然型アミノ酸がβ位(3位)でR1及びR4によって修飾された式(II)の代表的な具体例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的に活性なペプチド又はペプチド因子のプロテイナーゼ耐性アナログであって、そのペプチド又はポリペプチド因子が、標的プロテイナーゼによって生理学的条件下で開裂するプロテイナーゼ基質配列を含むアミノ酸配列を有し、ここで、該アナログは、該プロテイナーゼ基質配列のP'1残基が4置換Cβ炭素を有するアミノ酸アナログで置換された該ペプチド又はポリペプチド因子に相当するアミノ酸配列を有し、そのP'1残基の置換が、該標的プロテイナーゼによる開裂に対する該アナログの感受性を、該ペプチド又はポリペプチド因子に対して減少させる、生物学的に活性なペプチド又はペプチド因子のプロテイナーゼ耐性アナログ。
【請求項2】
アミノ酸アナログが次式II:
【化1】

(式中、
1及びR2は、独立して低級アルキル又はハロゲンから選択され、
3は、低級アルキル、アリール、ヒドロキシル基、−(CH2m−COOH、−(CH2m−NH2、−(CH2m−N−C(=NH)NH2、−(CH2m−C(=O)NH2、−SH又は−(CH2m−S−CH3から選択され、
mは0、1又は2である)
で表される、請求項1に記載のプロテイナーゼ耐性アナログ。
【請求項3】
1及びR2が独立してメチル、エチル又はプロピルから選択される、請求項2に記載のプロテイナーゼ耐性アナログ。
【請求項4】
1及びR2の両方がメチルである、請求項2に記載のプロテイナーゼ耐性アナログ。
【請求項5】
3が低級アルキル、フェニル、ヒドロキシフェニル、インドール、イミダゾール、ヒドロキシル、−COOH、−CH2COOH、−CH2CH2−NC(=NH)NH2、−CH2C(=O)NH2、−CH2CH2C(=O)NH2、−SH又は−CH2SCH3から選択される、請求項2に記載のプロテイナーゼ耐性アナログ。
【請求項6】
活性なペプチド又はポリペプチド因子の生物学的活性の少なくとも50パーセントを保持する、請求項2に記載のプロテイナーゼ耐性アナログ。
【請求項7】
標的プロテイナーゼがセリンプロテイナーゼ、メタロプロテイナーゼ、アスパラギン酸プロテイナーゼ又はシステインプロテイナーゼである、請求項2に記載のプロテイナーゼ耐性アナログ。
【請求項8】
前記生物学的に活性なポリペプチド因子がGLP−1、GLP−2、GIP、NPY、PP及びPYYから選択される、請求項2に記載のプロテイナーゼ耐性アナログ。
【請求項9】
前記生物学的に活性なポリペプチド因子がエンケファリン、Leu−エンケファリン、Met−エンケファリン、アンギオテンシンI、アンギオテンシンII、バソプレッシン、エンドテリン、血管作用性小腸ペプチド、ニューロテンシン、エンドルフィン、インスリン、グラルニシジン、パラセルシン、δ−睡眠誘発ペプチド、ゴナドトロピン放出ホルモン、ヒト甲状腺ホルモン(1〜34)、Wrighton他,1996,Science 273:458−463に記載された短縮されたエリトロポエチンアナログ、具体的にはEMP−1、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP、ANF)、ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(hBNP)、セクロピン、キネテンシン、ニューロフィシン、エラフィン、グアメリン、アトリオペプチンI、アトリオペプチンII、アトリオペプチンIII、デルトルフィンI、デルトルフィンII、バソトシン、ブラジキニン、ダイノルフィン、ダイノルフィンA、ダイノルフィンB、成長ホルモン放出因子、成長ホルモン、成長ホルモン放出ペプチド、オキシトシン、カルシトニン、カルシトニン遺伝子関連ペプチド、カルシトニン遺伝子関連ペプチドII、成長ホルモン放出ペプチド、タキキニン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、脳性ナトリウム利尿ペプチド、コレシストキニン、副腎皮質刺激ホルモン放出因子、ジアゼパルン結合阻害剤断片、FMRFアミド、ガラニン、胃放出ポリペプチド、胃抑制ポリペプチド、ガストリン、ガストリン放出ペプチド、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド−1、グルカゴン様ペプチド−2、LHRH、メラニン凝集ホルモン、メラノサイト刺激ホルモン(MSH)、α−MSH、モルヒネ調節ペプチド、モチリン、ニューロキニンA、ニューロキニンB、ニューロメジン13、ニューロメジンC、ニューロメジンK、ニューロメジンN、ニューロメジンU、神経ペプチドK、神経ペプチドY、下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)、膵臓ポリペプチド、ペプチドYY、ペプチドヒスチジン−メチオニンアミド(PHM)、セクレチン、ソマトスタチン、基質K、チロトロピン放出ホルモン(TRH)、キオトルフィン、メラノスタチン(MIF−1)、トロンボポエチンアナログ、特にAF12505、インスリン様成長因子I(57〜70)、インスリン様成長因子I(30〜41)、インスリン様成長因子I(24〜41)、インスリン様成長因子II(33〜40)、インスリン様成長因子II(33〜40)、インスリン様成長因子II(69〜84)、成長ホルモン(GH)放出ペプチド−6(GHRP−6)、β−インターロイキン1(163〜171)、β−インターロイキンII(44〜56)、インターロイキンII(60〜70)、上皮成長因子、ビバリルジン(ヒルログ)、ヒルログ−I、C型ナトリウム利尿ペプチド、オルニプレッシン(8−オミチンバソプレッシンとしても知られている)、オクトレオチド、エプチフィバチド、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、エンドモルフィン−1、エンドモルフィン−2、ノシセプチン、アンギオテンシノゲン、アドレノモジュリン、抗不整脈ペプチド(AA−P)、アンタゴニストG、インドリシジン、オステオカルシン、コルチスタチン29、コルチスタチン14、PD−145065、PD−142893、フィブリノゲン結合阻害剤ペプチド、レプチン、、GR83074、副甲状腺ホルモン関連ペプチド、アンギオテンシノゲン、ロイペプチン及びそれらの任意の修飾された又は短縮されたアナログよりなる群から選択される、請求項2に記載のプロテイナーゼ耐性アナログ。
【請求項10】
生物学的に活性なペプチド又はポリペプチド因子のプロテイナーゼ耐性アナログであって、そのペプチド又はポリペプチド因子が、標的プロリン後開裂プロテイナーゼによって生理学的条件下で開裂するプロテイナーゼ基質配列を含むアミノ酸配列を有し、ここで、該アナログは、該プロテイナーゼ基質配列のP'1残基が次式I:
【化2】

(式中、
1及びR2は、独立して、低級アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシル、カルボキシル、カルボキシアミド、カルボニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アミン若しくはシアノから選択され、又は、R1及びR2は互いに4〜7個の原子の環を形成し、
3は低級アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アミノ、アルコキシ、ハロゲン、カルボキシル、カルボキシアミド、カルボニル、シアノ、チオアルキル、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アジド、スルフェート、スルホネート、スルホンアミド、−(CH2m−R4、−(CH2mOH、−(CH2mCOOH、−(CH2mO−低級アルキル、−(CH2mO−低級アルケニル、−(CH2nO(CH2m−R4、−(CH2mSH、−(CH2mS−低級アルキル、−(CH2mS−低級アルケニル、−(CH2nS(CH2m−R4、−(CH2mNH2、−(CH2mN−C(=NH)NH2、−(CH2mC(=O)NH2又は−(CH2mNH2から選択され、
4は、それぞれ独立して、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環を表し、
mは0、1又は2であり、
nは0、1又は2である)
のアミノ酸アナログで置換された該ペプチド又はポリペプチド因子に相当するアミノ酸配列を有する、生物学的に活性なペプチド又はポリペプチド因子のプロテイナーゼ耐性アナログ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のプロテイナーゼ耐性アナログを含む医薬品。
【請求項12】
パッケージ医薬品であって、
薬剤として許容できる賦形剤中の請求項1〜10のいずれかに記載のプロテイナーゼ耐性アナログと、
患者に投与するためのラベル及び/又は取り扱い説明書と
を含む、パッケージ医薬品。
【請求項13】
パッケージ獣医薬品であって、
許容できる賦形剤中の請求項1〜10のいずれかに記載のプロテイナーゼ耐性アナログと、
動物に投与するためのラベル及び/又は取り扱い説明書と
を含む、パッケージ獣医薬品。
【請求項14】
プロテイナーゼ耐性アナログの投与が有益であろう病気の治療又は予防方法であって、請求項1〜10のいずれかに記載の生物学的に活性なペプチド又はポリペプチド因子を投与することを含む、該病気の治療又は予防方法。
【請求項15】
プロテイナーゼ耐性アナログがGLP−1、GIP又はPYYのアナログであり、しかも病気がインスリン抵抗性、グルコース不耐症、心臓関連疾患、高血糖症、高インスリン血症、肥満、高脂質血症、高リポ蛋白血症、消化管粘膜の異常、摂食障害及び胃腸疾患のうちの一つ以上から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
プロテイナーゼ耐性アナログがGLP−2のアナログであり、しかも病気がクローン病及び炎症性腸疾患のうちの一つ以上から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
エキセンジン−4のC末端アミノ酸配列をさらに含む、請求項1〜10のいずれかに記載のプロテイナーゼ耐性アナログ。
【請求項18】
エキセンジン−4のC末端アミノ酸配列がPSSGAPPPSである、請求項17に記載のプロテイナーゼ耐性アナログ。
【請求項19】
生物学的に活性なペプチド又はポリペプチド因子のプロテイナーゼ耐性アナログであって、そのペプチド又はポリペプチド因子が次のアミノ酸配列:
HAXGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRPSSGAPPPS−NH2
(ここで、Xは次式II:
【化3】

(式中、
1及びR2は、独立して低級アルキル又はハロゲンから選択され、
3は低級アルキル、アリール、ヒドロキシル基、−(CH2m−COOH、−(CH2m−NH2、−(CH2m−N−C(=NH)NH2、−(CH2m−C(=O)NH2、−SH又は−(CH2m−S−CH3から選択され、
mは0、1又は2である)
のアミノ酸アナログである)
を有する、プロテイナーゼ耐性アナログ。
【請求項20】
プロテイナーゼ耐性アナログの投与が有益であろう病気又は病状の治療又は予防方法でにおいて、生物学的に活性なペプチド又はポリペプチド因子のプロテイナーゼ耐性アナログを投与することを含み、ここで、該ペプチド又はポリペプチド因子が次のアミノ酸配列:
HAXGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRPSSGAPPPS−NH2
(ここで、Xは次式II:
【化4】

(式中、
1及びR2は、独立して低級アルキル又はハロゲンから選択され、
3は低級アルキル、アリール、ヒドロキシル基、−(CH2m−COOH、−(CH2m−NH2、−(CH2m−N−C(=NH)NH2、−(CH2m−C(=O)NH2、−SH又は−(CH2m−S−CH3から選択され、
mは0、1又は2である)
のアミノ酸アナログである)
を有する、該病気又は病状の治療又は予防方法。
【請求項21】
病気又は病状が、心臓関連疾患、高血糖症、肥満、高脂質血症、糖尿病合併症、肥満関連高血圧症、骨粗鬆症、鬱病、分裂情動精神病、睡眠時無呼吸、乏しい集中力による多動症候群、記憶喪失、健忘症、ナルコレプシー及び胃腸病から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
病気又は病状が、心筋梗塞、虚血−再潅流障害、鬱血性心不全及び心停止から選択される心臓関連疾患である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
病気又は病状が鬱病、分裂情動精神病、睡眠時無呼吸、多動症候群、記憶喪失、健忘症及びナルコレプシーから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
病気又は病状が限局性腸炎(クローン病)及び炎症性腸疾患から選択される胃腸病である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
生物学的に活性なペプチド又はポリペプチド因子のプロテイナーゼ耐性アナログを投与することを含むグルコース代謝の改変方法であって、そのペプチド又はポリペプチド因子が次のアミノ酸配列:
HAXGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRPSSGAPPPS−−NH2
(ここで、Xは次式II:
【化5】

(式中、
1及びR2は、独立して低級アルキル又はハロゲンから選択され、
3は低級アルキル、アリール、ヒドロキシル基、−(CH2m−COOH、−(CH2m−NH2、−(CH2m−N−C(=NH)NH2、−(CH2m−C(=O)NH2、−SH又は−(CH2m−S−CH3から選択され、
mは0、1又は2である)
のアミノ酸アナログである)
を有する、グルコース代謝の改変方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2007−530442(P2007−530442A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533167(P2006−533167)
【出願日】平成16年5月17日(2004.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/015488
【国際公開番号】WO2004/103390
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(303043726)トラスティーズ オブ タフツ カレッジ (26)
【Fターム(参考)】