説明

安定なラサギリン組成物

本発明は有効量のラサギリン又はその医薬的に許容され得る塩及び安定剤としての酸化防止剤を含む、安定なラサギリン組成物を提供する。当該組成物の剤型は薬剤学に一般的に使用される経皮及び経粘膜の投薬剤型であり、例えばパッチ、ゲル、軟膏、クリーム剤、パップ剤、フィルム剤、スプレー剤、溶液剤などが挙げられる。当該組成物は精神系疾患の治療又は予防に適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬物製剤の分野に属し、具体的に有効量のラサギリンまたはその医薬的に許容され得る塩及び安定剤としての酸化防止剤を含有し、安定なラサギリン組成物に関する。当該組成物は精神系疾患の治療または予防に適用される。
【背景技術】
【0002】
ラサギリンは不可逆的な選択的モノアミン酸化酵素B(MAOB)阻害剤であり、パーキンソン病、アルツハイマー病、うつ病、注意欠陥多動性障害(ADHD)、むずむず脚症候群、多発性硬化症と禁断症候群の治療または予防に用いることができる。ラサギリンの分子式は以下のとおりである。
【化1】

【0003】
ラサギリンは薬効が強く、また経口投与の際に、食事は血中薬物のピーク濃度を60%減少させ、そしてパーキンソン病患者は行動が不便なので、ラサギリンを経皮及び経粘膜投与することにより、肝初回通過効果を回避し、吸収をより安定にすることができる。
【0004】
経皮及び経粘膜投与の剤型はパッチ、パップ剤、ゲル、軟膏、クリーム剤、フィルム剤、スプレー剤及び溶液剤等を含む。それらの剤型は経皮及び経粘膜投与に用いられれば、それぞれの利点がある。パッチ及びパップ剤は皮膚上にしっかりと貼り付けることができ、薬物を緩やかに持続的に放出・吸収させ、且つ投薬が便利で、着物に対する汚染がない。ゲル、軟膏、クリーム剤、スプレー剤、溶液剤は調製が簡便である。フィルム剤は一般的に口腔粘膜吸収に用いられ、吸収が速く比較的完全で、肝初回通過効果も回避できる。
【0005】
中国特許出願CN101032474Aには、精神系疾患を治療または予防することに適用されるラサギリン経皮薬物パッチが開示されており、当該パッチは基質成分と化学作用を発生しない一つの不活性支持層、ラサギリンまたはその医薬的に許容され得る塩を含有する一つの基質層、及び使用前に剥離が必要な一つの保護層を含み、基質層は有機高分子材料を含んで無機又は有機物材料を調整剤とする薬物担持用貯蔵庫であり、当該貯蔵庫はラサギリンを含み、基質中にさらにラサギリン経皮吸収を促進する物質を1種又は2種以上含む。その実施例では、パッチのpH値がアルカリ性の範囲(7.0よりも大きい)に保持され、良好な経皮浸透効果が得られるが、高温安定性試験の条件下で、薬物安定性がよくなく、長期保管に不利であることが研究によって明らかにされた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
出願番号CN200810069850.1の中国特許出願(公開番号CN101606923A)には、安定な放出制御可能なラサギリン経皮パッチが開示されていおり、a)有効量のラサギリン及びその医薬的に許容され得る塩、b)少なくとも1種の親水性の重合体基質、c)当該パッチのpH値が7.0以下で、当該pH値は3.0〜6.5であることが好ましいことを含む。当該パッチはラサギリンの安定性及び良好な経皮浸透効果が保持でき、長期保管に適し、かつ皮膚に対する刺激性が小さいが、親水性の重合体基質を多く含むので、皮膚に貼ると耐汗できず、脱落しやすい。非親水性重合体を基質に組み合わせてパッチを調製すると、調製ステップが繁雑になり、基質材料の選択が厳しく、生産コストが高い。
【0007】
したがって、まだ種々の需要を満たすために新しいラサギリン組成物を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの方面はラサギリン又はその医薬的に許容され得る塩と医薬的に許容され得る酸化防止剤を含み、安定なラサギリン組成物を提供する。当該組成物は高温安定試験の条件下(60℃、10日放置)で安定性が良好であり、パッチであれば、基質の選択条件は厳しくなく、入手し易く、かつ皮膚にしっかりと貼り付けることができ、脱落し難い。
【0009】
本発明の組成物のいくつかの実施形態によれば、そのうち、前記酸化防止剤の含有量は組成物の全重量に対して0.01%〜1%である。
【0010】
本発明の組成物のいくつかの実施形態によれば、そのうち、前記ラサギリン又はその医薬的に許容され得る塩の含有量は組成物の全重量に対して0.1%〜40%である。
【0011】
本発明の組成物のいくつかの実施形態によれば、前記ラサギリンの医薬的に許容され得る塩は塩酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩又は硫酸塩を含む。本発明の組成物のいくつかの実施形態によれば、ラサギリンの遊離塩基の形態を採用することが好ましい。
【0012】
本発明の組成物のいくつかの実施形態によれば、前記酸化防止剤は医薬的に許容され得る如何なる適切な酸化防止剤でもよく、例えば、トコフェロール又はそのエステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン(化学名:2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(化学名:3−t−ブチル−4−メトキシフェノール、BHA)又は没食子酸プロピル、クエン酸又はその塩からなる群から選択される一種又は二種以上であり;アスコルビン酸パルミチン酸エステル、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール及びブチルヒドロキシ没食子酸プロピルの一種又は二種以上が好ましい。
【0013】
本発明の組成物のいくつかの実施形態によれば、前記組成物の製剤形態は経皮製剤又は粘膜投与製剤である。経皮製剤とは経皮パッチ、パップ剤、クリーム剤、膏剤、スプレー剤又はゲル剤を意味するが、経皮パッチが好ましい。粘膜投与製剤とはフィルム剤又はスプレー剤を意味する。
【0014】
本発明の組成物のいくつかの実施形態によれば、前記組成物はさらに以下の医薬品添加物(キャリア)を一種又は二種以上含む。例えば、ポリアクリル酸系重合体、シリコーン系重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ポリビニルピロリドン系重合体、エチレン酢酸ビニル系共重合体、セルロース系重合体、ポリエチレングリコール系重合体、カルボマー系重合体、ポリオキシエチレン系重合体、ゼラチン、アルギン酸又はその塩、トラガント、アラビアゴム、シリコーンオイル、水、エタノール、アセトン、プロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル、ヘキサデカノール、オクタデカノール、ステアリン酸、パラフィン、蜜蝋、羊毛脂類化合物、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、クエン酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が挙げられる。
【0015】
上記医薬品添加物の選択では、本発明の組成物の異なる製剤形態に応じて本分野の製剤の常規技術と知識に準じて適当な医薬品添加物(キャリア)を選択することができる。例えば、経皮パッチであれば、基質として上記医薬品添加物のポリアクリル酸系重合体、シリコーン系重合体等の重合体又は高分子材料を選択して、さらに適当な溶剤、例えば酢酸エチル等を選択することができる。それらの医薬品添加物の選択の組み合わせはいずれも当業者が通常の知識で理解できるものであり、例えば、CN101032474A(2007年9月12日で公開され、参照としてその全文をここに援用する)に記載のものが挙げられる。
【0016】
本発明の組成物のいくつかの実施形態によれば、前記経皮製剤には、上記酸化防止剤と医薬品添加物(キャリア)の他、さらに経皮吸収促進剤を含む。経皮吸収促進剤とはアゾン、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸及びメントールの一種又は二種以上を意味する。
【0017】
本発明の組成物のいくつかの実施形態によれば、ラサギリンは本分野で知られている何れのタイプのキャリア中にも存在していてよい。一つのキャリアの用途は薬物をパッチ、パップ剤、クリーム剤、ゲル等の投与形態に形成させることにある。キャリアにおいて、ラサギリンが塩、遊離塩基、微結晶、アモルファス、マイクロエマルション等の何れかの一種又は多種形態で存在でき、ラサギリンは遊離塩基の形式で存在することが好ましい。
【0018】
本発明の組成物のいくつかの実施形態によれば、前記キャリアは一種又は多種の重合体を含んでいてもよい。パッチでは、ポリアクリル酸系重合体、シリコーン系重合体が好ましい;ゲル剤、軟膏、クリーム剤、フィルム剤、パップ剤、及び溶液剤では、ポリアクリル酸系重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ポリビニルピロリドン系重合体、エチレン酢酸ビニル系共重合体、セルロース系重合体、ポリエチレングリコール系重合体、カルボマー系重合体、ポリオキシエチレン系重合体、ゼラチン、アルギン酸及びその塩類、トラガント、アラビアゴム、シリコーンオイル等が好ましい。
【0019】
本発明の組成物のいくつかの実施形態によれば、前記キャリアに一種又は多種の小分子化合物、例えば水、エタノール、アセトン、プロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル、中鎖及び長鎖脂肪族(C4〜24)例えばヘキサデカノール/オクタデカノール、ステアリン酸、パラフィン、蜜蝋、羊毛脂系化合物、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、クエン酸、酒石酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等を含んでもよい。
【0020】
本発明の組成物のいくつかの実施形態によれば、前記組成物はさらに皮膚促浸透剤、例えばアゾン、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸、メントールを含んでいてもよい。
【0021】
本発明の組成物に関する種々の製剤の制造方法は本分野の相関製剤の通常の制造技術により完成でき、例えばCN101032474Aに記載のものが挙げられる。
【0022】
本発明の組成物中に酸化防止剤を加えると、驚くべき安定性を示す。特に組成物が経皮パッチである場合には、ラサギリンは非常に安定であるのみならず、皮膚に貼り付ければ脱落しにくく、経皮效果がよく、基質の材料が入手し易く、操作が簡便で、工業的生産に適する。
【0023】
本発明の他の一つの方面は前述の任意の組成物の、精神系疾患を治療又は予防する薬物の調製における使用の提供である。本発明の安定なラサギリン薬物組成物は精神系疾患の治療又は予防に用いられ、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、うつ病、注意欠陥多動性障害、むずむず脚症候群、多発性硬化症と禁断症候群等が挙げられる。その用量については、透過の血中薬物濃度が有效治療量(有效血中薬物濃度)に達する必要があり、一日に一回、2〜3日に一回、又は一週間に一回等であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施例は本発明をさらに説明又は理解するためのものであるが、それらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0025】
実施例の組成物の各成分の濃度割合はいずれも組成物全重量に対する重量比(W/W)である。
【0026】
実施例1:ラサギリン及び酸化防止剤であるトコフェロールを含む経皮パッチ
【0027】
表1:ラサギリン及び酸化防止剤であるトコフェロールを含む経皮パッチの組成物処方
【表1】

【0028】
調製方法:上記表のラサギリン(遊離塩基)、重合体及び/又は酸化防止剤を酢酸エチルに入れて混合し、粘稠な基質を得、当該基質を75uμmの透明なPET薄層(保護層)上に塗布して0.2mm厚さの膜を形成し、60℃で5分間乾燥した後、ポリエチレン製バッキング層を覆うと転移でき、さらにパッチを最後の薄片に打ち抜くか又はカットする。
【0029】
皮膚に応用する前に、保護層を取り除く。
【0030】
関連物質:「関連物質」とは、ラサギリン組成物が調製プロセス又は貯蔵中で分解することにより形成される(関連)不純物を意味する。それは人体に不利な影響を与える恐れがあるので、その限度量をコントロールする必要がある。通常単一な不純物ではなく、主薬の同族体も可能であるので、不純物の構造に対する確認がしばらく不可能又は不便又は不必要であり、「関連物質」と総称する。
【0031】
関連物質の測定方法:(1)供試品溶液の調製:ラサギリンを20mg含む量で適量のサンプルを取り、保護層を剥離して50mlのメスフラスコに移し、0.1mol/L塩酸メタノール溶液を25ml加え、超音波を30分間行い、放冷し、移動相で目盛りまで希釈し、均一に振とうして、10分間遠心分離(4000回転/分間)し、上清液を取って供試品溶液とする;(2)対照溶液の調製:供試品溶液を1.0ml正確に量り取り、100mlのメスフラスコ に移し、移動相で目盛りまで希釈し、均一に振とうして、対照溶液とする;(3)測定方法:供試品溶液と対照溶液を各20μl正確に量り取り、それぞれ液体クロマトグラフに注射し、クロマトグラムを記録し、主成分自己対照法に準じて関連物質を計算する。計算公式は以下のとおりである。
【0032】
関連物質の含有量=(供試品溶液の総ピーク面積−主ピーク面積)×100%/(対照溶液の主ピーク面積×100)
【0033】
なお、総ピークには、医薬品添加物ピーク及び溶剤ピークを含まない;主ピークはラサギリンのピークである。
【0034】
関連物質を検出するための高速液体クロマトグラフィーにおいて、移動相条件:pH値2.5の過塩酸アンモニア水溶液/アセトニトリルで勾配溶出を行い(勾配溶出の条件を表1に示す)、流速1ミリリットル/分間で、カラムがBoston Crest ODSカラムで、カラム温度が25℃である。
【0035】
表2:関連物質を測定する高速液体クロマトグラフィーに用いられる勾配溶出の条件
【表2】

【0036】
本発明の組成物は高温下で安定な系を提供しており、実施例1の組成物1−1〜1−4のパッチを60℃で10日保存した後、関連物質の含有量を測定し、その結果を表3に示す。その結果は、酸化防止剤を入れたパッチの関連物質の含有量はそれを保存後も依然として5%未満であり、一方、酸化防止剤を入れなかったパッチの関連物質の含有量は5%より多いことを示す。
【0037】
表3:実施例1の組成物における関連物質の含有量
【表3】

【0038】
パッチの脱落及び変位:6名の健康な成人男性ボランティア(20歳〜40歳)であり、10cmのパッチを胸の前の皮膚に貼付し、連続3日にわたってその脱落及び変位の状態を観察した。その結果を表4に示す。
【0039】
表4:実施例1のパッチ及びCN101606923Aのパッチの脱落又は変位の状態
【表4】

【0040】
表4から明らかなように、本発明の実施例1におけるパッチは十分な接着性を保持することができ、脱落せず移動もしなかった。一方、CN101606923Aの実施例3、4、5、6により調製したパッチは人体の胸の前の皮膚に貼付して3日後、いずれも脱落又は移動の現象が発生している。
【0041】
また、CN101606923Aの実施例1及び2により調製したパッチは、ラサギリンとメタンスルホン酸がメタンスルホン酸塩を形成するので、非親水性材料に対するその溶解度が小さく、薬物担持量が小さく、本発明で提供される系に比べて、累積浸透量は著しく低い。
【0042】
実施例2:ラサギリン及び酸化防止剤であるブチルヒドロキシトルエンを含む経皮パッチ
【0043】
表5:ラサギリン及び酸化防止剤であるブチルヒドロキシトルエンを含む経皮パッチの組成物の処方
【表5】

【0044】
調製方法:処方における主成分と重合体及び/又は酸化防止剤を溶剤としての酢酸エチルに入れて混合し、粘稠な基質を得、当該基質を75umの透明なPET薄層(保護層)上に塗布して厚さ0.2mmの膜を形成し、60℃で5分間乾燥した後、ポリエチレン製バッキング層を被覆してすぐに移転可能であり、さらにパッチを最終的な薄片に打ち抜くか又はカットした。
【0045】
皮膚に適用する前に、保護層を取り除く。
【0046】
本発明の組成物は高温下で安定な薬物送達系(パッチ)を提供している。60℃の環境で10日保存した後測定したところ、本発明の組成物の関連物質は2%未満であり、一方、酸化防止剤を入れていない組成物の関連物質は5%より大きかった。その結果を表6に示す。
【0047】
表6:実施例2の組成物における関連物質の含有量
【表6】

【0048】
当該パッチを人体の胸の前の皮膚に10cmで貼付したところ、連続3日でも十分な接着性を保持し、脱落せず移動もしなかった。
【0049】
実施例3:ラサギリン及び酸化防止剤であるアスコルビン酸パルミチン酸エステルを含む経皮パッチ
【0050】
表7:ラサギリン及び酸化防止剤であるアスコルビン酸パルミチン酸エステルを含む経皮パッチの組成物の処方
【表7】

【0051】
調製方法:ラサギリン(遊離塩基)と重合体及び/又は酸化防止剤を酢酸エチルに入れて混合し、粘稠な基質を得、当該基質を75umの透明なPET薄層(保護層)上に塗布して厚さ0.2mmの膜を形成し、60℃で5分間乾燥した後、ポリエチレン製バッキング層を被覆するとすぐに転移可能であり、さらにパッチを最終的な薄片に打ち抜くか又はカットした。
【0052】
皮膚に適用する前に、保護層を取り除く。
【0053】
本発明の組成物は高温下で安定な薬物送達系を提供する。60℃の環境で10日保存した後、測定してみると本発明の組成物の関連物質は5%未満であり、一方、酸化防止剤を入れていない組成物の関連物質は5%より大きかった。測定してみると関連物質は5%未満であり、一方、酸化防止剤を入れていない系の関連物質は5%より大きかった。結果を表8に示す。
【0054】
表8:実施例3の組成物における関連物質の含有量
【表8】

【0055】
当該パッチを人体の胸の前の皮膚に10cmで貼付したところ、連続3日でも十分な接着性を保持し、脱落せず移動もしなかった。
【0056】
実施例4:ラサギリン及び酸化防止剤であるトコフェロールを含む経皮ゲル
【0057】
表9:ラサギリン及び酸化防止剤であるトコフェロールを含む経皮ゲルの組成物の処方
【表9】

【0058】
調製方法:ラサギリンと重合体及び/又は酸化防止剤をエタノール及び水に入れ、撹拌し、重合体が完全に膨潤した後ゲルを得、軟膏缶に充填し、封止して得た。ゲルはパッチに比べて調製プロセスがより簡便で、使用時に軟膏缶から適量のゲルを押し出して皮膚上に塗抹すればよい。
【0059】
本発明の組成物は高温下で安定な系を提供しており、60℃の環境で10日保存した後、測定をしてみると本発明の組成物の関連物質は5%未満であり、一方、酸化防止剤を入れていない組成物の関連物質は5%より大きかった。結果を下表10に示す。
【0060】
表10:実施例4の組成物における関連物質の含有量
【表10】

【0061】
実施例5:ラサギリン及びブチルヒドロキシトルエンを含む経皮ゲル
【0062】
表11:ラサギリン及びブチルヒドロキシトルエンを含む経皮ゲルの組成物の処方
【表11】

【0063】
調製方法:ラサギリンと重合体及び/又は酸化防止剤をエタノール及び水に入れ、撹拌し、重合体が完全に膨潤した後ゲルを得、軟膏缶に充填し、封止して得た。ゲルはパッチに比べて調製プロセスがより簡便で、使用時に軟膏缶から適量のゲルを押し出して皮膚上に塗抹すればよい。
【0064】
本発明の組成物は高温下で安定な系を提供しており、60℃で10日保存した後、測定すると、本発明の組成物の関連物質は4%未満であり、一方、酸化防止剤を入れていない組成物の関連物質は5%より大きかった。その結果を下表12に示す。
【0065】
表12:実施例5の組成物における関連物質の含有量
【表12】

【0066】
実施例6:ラサギリン及び酸化防止剤を含む経皮軟膏
【0067】
表13:ラサギリン及び酸化防止剤を含む経皮軟膏の組成物の処方
【表13】

【0068】
調製方法:ラサギリン及び酸化防止剤の各成分を羊毛脂、液体パラフィン及びワセリンの混合物に入れて、細かい糊状にすりつぶした後、100メッシュのふるいにかけ、軟膏缶に充填し、封止して得た。使用時に軟膏缶から適量の軟膏を押し出して皮膚上に塗抹すればよい。
【0069】
本発明の組成物は高温下で安定な系を提供しており、60℃の環境で10日保存した後、測定したところ、本発明の組成物の関連物質は3%未満であり、一方、酸化防止剤を入れていない組成物の関連物質は5%より大きかった。測定すると関連物質は5%未満であり、一方、酸化防止剤を入れていない系の関連物質は5%より大きかった。その結果を下表14に示す。
【0070】
表14:実施例6の組成物における関連物質の含有量
【表14】

【0071】
実施例7:ラサギリン及び酸化防止剤であるトコフェロールを含む経皮クリーム剤
【0072】
表15:ラサギリン及び酸化防止剤であるトコフェロールを含む経皮クリーム剤の組成物の処方
【表15】

【0073】
調製方法:酸化防止剤であるトコフェロール及び主成分であるラサギリンを油相に入れて、80℃に加熱して液状とし、水相、乳化剤及びラサギリンを入れて、撹拌し、均質化し、放冷した後クリーム剤とした。軟膏缶に充填し、封止して得た。使用時に軟膏缶から適量のクリーム剤を押し出して皮膚上に塗抹すればよい。
【0074】
本発明の組成物は高温下で安定な系を提供しており、60℃で10日保存した後、測定すると本発明の組成物の関連物質は5%未満であり、一方、酸化防止剤を入れていない組成物の関連物質は5%より大きかった。その結果を下表16に示す。
【0075】
表16:実施例7の組成物における関連物質の含有量
【表16】

【0076】
実施例8:ラサギリン及び酸化防止剤であるブチルヒドロキシトルエンを含む経皮クリーム剤
【0077】
表17:ラサギリン及び酸化防止剤であるブチルヒドロキシトルエンを含む経皮クリーム剤の組成物の処方
【表17】

【0078】
調製方法:トコフェロール及びラサギリンを油相に入れて、80℃に加熱して液状とし、水相、乳化剤を入れて、撹拌し、均質化し,放冷した後クリーム剤とした。軟膏缶に充填し、封止して得た。使用時に軟膏缶から適量のクリーム剤を押し出して皮膚上に塗抹すればよい。
【0079】
本発明の組成物は高温下で安定な系を提供しており、60℃で10日保存した後、測定すると本発明の組成物の関連物質は5%未満であり、一方、酸化防止剤を入れていない組成物の関連物質は5%より大きかった。その結果を下表18に示す。
【0080】
表18:実施例8の組成物における関連物質の含有量
【表18】

【0081】
実施例9:ラサギリン及び酸化防止剤であるトコフェロールを含む経皮パップ剤
【0082】
表19:ラサギリン及び酸化防止剤であるトコフェロールを含む経皮パップ剤の組成物の処方
【表19】

【0083】
調製方法:ラサギリンをアゾンに溶解させた後、酸化防止剤、架橋剤及びグリセリンを混合し、細かい糊状にすりつぶして準備した(A)。高分子キャリア材料は一部の水で膨潤させた後、酸化亜鉛(処方9−1)又は二酸化チタン(処方9−2;又はカオリン及びEDTA(処方9−3)を入れて、ペースト状にすりつぶして準備した(B)。AとBを混合し、挽き、残量水で溶解した酒石酸(処方9−1)及び残量水で溶解したクエン酸(処方9−2、9−3)を添加し、ペースト状にすりつぶし、不織布(バッキング層)上に1mmの厚さで塗布し、ケイ化表面処理した紙(保護層)を被覆し、室温下で2週間静置して架橋硬化し、パップ剤を得た。パップ剤を最終的に薄片に打ち抜くか又はカットする。
【0084】
皮膚に応用する前に、保護層を取り除く。
【0085】
本発明の組成物は高温下で安定な系を提供しており、60℃で10日保存した後、測定すると本発明の組成物の関連物質は4%未満であり、一方、酸化防止剤を入れていない組成物の関連物質は5%より大きかった。その結果を下表20に示す。
【0086】
表20:実施例9の組成物における関連物質の含有量
【表20】

【0087】
実施例10:ラサギリン及び酸化防止剤であるブチルヒドロキシトルエンを含む経皮パップ剤
【0088】
表21:ラサギリン及び酸化防止剤であるブチルヒドロキシトルエンを含む経皮パップ剤の組成物の処方
【表21】

【0089】
調製方法:ラサギリンをアゾンに溶解させた後、酸化防止剤、架橋剤及びグリセリンを混合し、細かい糊状にすりつぶして準備した(A)。高分子キャリア材料は一部の水で膨潤させた後、酸化亜鉛(処方10−1)又は二酸化チタン(処方10−2)、又はカオリン及びEDTA(処方10−3)を入れて、ペースト状にすりつぶして準備した(B)。AとBを混合し、すりつぶし、残量水で溶解した酒石酸(処方10−1)及び残量水で溶解したクエン酸(処方10−2、10−3)を入れて、ペースト状にすりつぶし、不織布(バッキング層)上に1mmの厚さで塗布し、ケイ化表面処理した紙(保護層)を被覆し、室温で2週間静置して架橋硬化し、パップ剤を得た。パップ剤は最終的に薄片に打ち抜くか又はカットした。
【0090】
皮膚に適用する前に、保護層を取り除く。
【0091】
本発明の組成物は高温下で安定な系を提供しており、60℃で10日保存した後、測定すると本発明の組成物の関連物質は4%未満であり、一方、酸化防止剤を入れていない組成物の関連物質は5%より大きかった。その結果を下表22に示す。
【0092】
表22:実施例10の組成物における関連物質の含有量
【表22】

【0093】
実施例11:ラサギリン及び酸化防止剤を含む粘膜投薬フィルム剤
【0094】
表23:ラサギリン及び酸化防止剤を含む粘膜投薬フィルム剤の組成物の処方
【表23】

【0095】
調製方法:ポリビニルアルコールを取って適量の水を入れて膨潤させ、その後水浴で加熱して溶解させ、ポリビニルアルコールのスラリーを得、ラサギリン、酸化防止剤、グリセリン、及びトゥイーン80を取って適量の水に溶解させ、ポリビニルアルコールのスラリーに入れて、均一に混合した。蒸留水を所定量まで添加し、均一に混合し、気泡を抜いてフィルムに作成して、乾燥して得た。
【0096】
使用時に、一定の大きさのフィルムを口腔粘膜に貼ればよい。
【0097】
本発明の組成物は高温下で安定な系を提供しており、60℃で10日保存した後、測定すると本発明の組成物の関連物質は未満4%であり、一方、酸化防止剤を入れていない組成物の関連物質は5%より大きかった。その結果を下表24に示す。
【0098】
表24:実施例11の組成物における関連物質の含有量
【表24】

【0099】
実施例12:ラサギリン及び酸化防止剤を含む経皮投薬スプレー剤
【0100】
表25:ラサギリン及び酸化防止剤を含む経皮投薬スプレー剤の組成物の処方
【表25】

【0101】
調製方法:ラサギリン及び酸化防止剤を取ってエタノールを入れて溶解させ、トゥイーン80%を水に溶解し、両者を混合して均一に撹拌し、充填すればよい。
【0102】
使用の時に、薬液を皮膚の表面に噴霧すればよい。
【0103】
本発明の組成物は高温下で安定な系を提供しており、60℃で10日保存した後、測定すると本発明の組成物の関連物質は未満5%であり、一方、酸化防止剤を入れていない組成物の関連物質は5%より大きかった。その結果を下表26に示す。
【0104】
表26:実施例12の組成物における関連物質の含有量
【表26】

【0105】
以上の実施例及び関連物質の測定結果から明らかなように、酸化防止剤を添加すると、ラサギリンを含むパッチ、ゲル、軟膏、クリーム剤、パップ剤、フィルム剤、スプレー剤は予想外の熱安定性を得、これは組み合わせの貯蔵に大きな利点がある。CN101032474及びCN101606923Aに記載の系に比べて、安定性がより良く、調製がより簡便である。またCN101606923Aに比べて、皮膚に対する接着性能がより良い。特にパッチでは、安定剤として酸化防止剤を添加すると、基質の材料の選択が厳しくなく、材料が入手しやすく、かつ皮膚に対する粘性がより良く、脱落しにくく、累積浸透量を高く保持できる。本発明の薬用組成物は材料の選択に厳しくなく、材料が入手しやすいので、生産コストも低減でき、工業操作が簡便である。
【0106】
以上、例を挙げて説明することにより本発明について述べた。但し、本発明はそれらの具体的な実施形態に限定されないことは理解されるべきである。当業者は本発明に種々の修正又は変更を施すことができるが、それらの修正及び変更も本発明の保護請求の範囲に属する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラサギリン又はその医薬的に許容され得る塩及び医薬的に許容され得る酸化防止剤を含む安定なラサギリン組成物。
【請求項2】
前記酸化防止剤の含有量は組成物の全重量に対して0.01%〜1%である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ラサギリン又はその医薬的に許容され得る塩の含有量は組成物の全重量に対して0.1%〜40%である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記酸化防止剤はトコフェロール又はそのエステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール又は没食子酸プロピル、クエン酸又はその塩の一種以上であり、好ましくは前記酸化防止剤はアスコルビン酸パルミチン酸エステル、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール及びブチルヒドロキシ没食子酸プロピルの一種以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は経皮製剤又は粘膜投与製剤である請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記経皮製剤は経皮パッチ、パップ剤、クリーム剤、膏剤、ゲル剤又はスプレー剤であり、好ましくは経皮パッチである請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記粘膜投与製剤はフィルム剤又はスプレー剤である請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
医薬品添加物であるポリアクリル酸系重合体、シリコーン系重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ポリビニルピロリドン系重合体、エチレン酢酸ビニル系共重合体、セルロース系重合体、ポリエチレングリコール系重合体、カルボマー系重合体、ポリオキシエチレン系重合体、ゼラチン、アルギン酸又はその塩、トラガント、アラビアゴム、シリコーンオイル、水、エタノール、アセトン、プロパノール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル、ヘキサデカノール、オクタデカノール、ステアリン酸、パラフィン、蜜蝋、羊毛脂類化合物、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、クエン酸、酒石酸及びエチレンジアミン四酢酸の一種以上をさらに含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
経皮吸収促進剤をさらに含む請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記経皮吸収促進剤はアゾン、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸及びメントールの一種以上である請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物の、精神系疾患を治療又は予防することに用いられる薬物の調製における使用。
【請求項12】
前記精神系疾患はパーキンソン病、アルツハイマー病、うつ病、注意欠陥多動性障害、むずむず脚症候群及び多発性硬化症と禁断症候群の一種以上である請求項11に記載の使用。

【公表番号】特表2013−509359(P2013−509359A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535614(P2012−535614)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際出願番号】PCT/CN2010/078189
【国際公開番号】WO2011/050728
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(508269363)重▲慶▼医葯工▲業▼研究院有限責任公司 (3)
【Fターム(参考)】