安定な殺生物剤組成物

【課題】殺生物剤粒子の凝集または不安定性が抑制された1種より多い殺生物剤を含む溶媒系防汚コーティング組成物を提供する。
【解決手段】(a)多価金属カチオンおよび多価有機アニオンを含む1種以上のポリマー系殺生物剤、(b)1種以上のポリマー封入殺生物剤、並びに(c)トリグリセリド分子1モルあたりのエチレンオキシド単位の平均モル数10〜45を有する、1種以上のエトキシ化トリグリセリドを含む、溶媒系コーティング組成物。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
1種より多い殺生物剤を含む溶媒系防汚コーティング組成物を製造することが多くの場合望まれる。具体的には、その殺生物剤の1種が、ポリマーによって封入されている粒子の形態であり、および別の殺生物剤が多価金属カチオンと多価有機アニオンとのポリマー系複合体であるそのような組成物を製造することが多くの場合望まれる。このような場合には、この2種類の殺生物剤は多くの場合不適合性であり、このことはこのコーティング組成物を不安定にし、粒子の凝集または不安定性の他の徴候を生じさせる。
【0002】
米国特許7,377,968号は、マイクロ封入されたDCOIT(4,5−ジクロロ2−n−オクチル−3(2H)−イソチアゾロン)を含み、かつフリーのDCOITを含むコーティング組成物を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許7,377,968号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリマーによって封入されている粒子の形態の第1の殺生物剤および多価金属カチオンと多価有機アニオンとのポリマー系複合体の形態の第2の殺生物剤を含み、粒子の凝集に対して抵抗性の溶媒系防汚コーティング組成物を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下が本発明の提示である。
本発明の第1の形態は、(a)多価金属カチオンおよび多価有機アニオンを含む1種以上のポリマー系殺生物剤、(b)1種以上のポリマー封入殺生物剤、並びに(c)トリグリセリド分子1モルあたりのエチレンオキシド単位の平均モル数10〜45を有する、1種以上のエトキシ化トリグリセリドを含む、溶媒系コーティング組成物である。
【0006】
本発明の第2の形態は第1の形態に記載される組成物を製造する方法である。本発明の第3の形態は第1の形態に記載される組成物を使用する方法である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下が本発明の詳細な説明である。
本明細書において使用される場合、文脈が明らかに他のことを示さない限りは、以下の用語は指定された定義を有する。
【0008】
殺生物剤はバクテリア、真菌、藻類または海洋汚損(marine fouling)生物の1種以上の種の成長を阻害することができるかまたはこれらの種を殺すことができる化合物である。海洋汚損生物は水面下に沈められている表面上で成長する傾向があり、硬質および軟質汚損生物、例えば、藻類、被嚢類、ヒドロ虫、双殻類、コケムシ、多毛類、蠕虫、海綿動物、およびフジツボを包含する。
【0009】
コーティング組成物は基体の表面上に層として適用されることができ、かつ基体の表面に付着する乾燥層(乾燥塗膜)を形成することができる組成物である。
【0010】
海洋コーティング組成物は海洋対象物の表面上に乾燥塗膜を形成することができるコーティング組成物である。乾燥塗膜の形成後には、コーティングされた表面の一部分または全てが有意な時間量(1日あたり少なくとも1時間)にわたって水面下にとどまる場合でさえ、有用な長期間にわたってこの乾燥塗膜が表面に付着するであろう。海洋対象物はその対象物の一部分もしくは全部が有意な時間量にわたって水面下にある環境下での使用に供されるものである。海洋対象物の例には船、桟橋、ドック、杭、漁網、熱交換器、ダム、および配管構造物、例えば、取水口スクリーンが挙げられる。
【0011】
1種以上の海洋汚損生物の成長を阻害するのに有効な海洋コーティング組成物は海洋防汚(MAF)コーティング組成物である。海洋防汚剤は、海洋コーティング組成物に添加され、かつ1種以上の海洋汚損生物の成長を阻害するこの海洋コーティング組成物の能力を向上させる化合物である。軟質汚損生物の成長を阻害するこの海洋コーティング組成物の能力を向上させる海洋防汚剤は「補助殺生物剤(co−biocide)」である。硬質汚損生物の成長を阻害するこの海洋コーティング組成物の能力を向上させる海洋防汚剤は「主殺生物剤」である。
【0012】
液体組成物は標準大気で0℃〜60℃を含む温度範囲にわたって液体状態である。溶媒系組成物は連続液体媒体を有する液体組成物であって、この連続液体媒体は水ではない1種以上の化合物を含む。溶媒系組成物の連続液体媒体はこの連続液体媒体の重量を基準にして0重量%〜10重量%の水を含む。
【0013】
ポリマー(同義語としてポリマー系化合物と称される)は、より小さな化学繰り返し単位の反応生成物から構成される比較的大きな分子である。ポリマーは1,000以上の数平均分子量を有する。ポリマーは繰り返し単位が全て同じであるホモポリマー、または2種以上の異なる繰り返し単位が存在するコポリマーであることができる。
【0014】
脂肪酸は8以上の炭素原子の線状鎖を少なくとも1つ含みかつカルボキシル基を含む化合物である。トリグリセリドは3つの脂肪酸がグリセロールの1つの分子上の3つのヒドロキシル基とエステル結合を形成した場合に生じるであろう構造を有する化合物である。トリグリセリドのこの3つの脂肪酸部分のそれぞれは、脂肪酸の「残基」と称される。いくつかの脂肪酸残基は、1以上の炭素原子に結合した1以上のヒドロキシル基を含む。
【0015】
エチレンオキシド単位は二官能性基
【化1】

である。エトキシ化化合物は構造
【化2】

を有し、式中nは1以上であり、Rは任意の有機基である。Rは追加のエチレンオキシド単位を含んでいてよく、もしくは含まなくてもよく、または追加のエチレンオキシド単位に結合されていて良く、もしくは結合されていなくても良い。
【0016】
有機化合物または基は1以上の炭素原子を含む化合物または基である。カテゴリー「有機化合物または基」は以下のものを除く:二酸化炭素および二硫化炭素のような炭素の二元化合物;金属シアン化物、金属カルボニル、ホスゲンおよびカルボニルスルフィドのような炭素の三元化合物;並びに金属炭酸塩。
【0017】
多価カチオンは2以上のプロトンと等価の正の電荷を有するカチオンである。多価アニオンは2以上の電子と等価の負の電荷を有するアニオンである。
【0018】
本明細書において使用される場合、用語「最終塗料」は、完成されておりよってコーティングとしての使用に供されるのに適している本発明の組成物を説明する。ある物質の「ほとんど」の語句が本明細書において使用される場合には、それは最終塗料中に存在するその物質の全量を基準にしてその物質の50%以上を意味する。
【0019】
非イオン性界面活性剤は、5〜9のいずれかのpHで25℃で水中に溶かされたときにイオン化されない表面活性化合物である。非イオン性界面活性剤はその分子の疎水性の部分およびその分子の親水性の部分を有する。非イオン性界面活性剤はそれぞれ「HLB」(親水性/親油性バランス)数を有する。界面活性剤についてのこのHLB数は多くの場合その界面活性剤の製造者から入手可能であり、多くのHLB値は、例えば、米国ウィスコンシン州54968プリンストンのMCパブリッシングカンパニーにより毎年出版されるMcCutcheon’s Detergents and Emulsifiers(マカッチョンの洗浄剤および乳化剤)のような出版物中で表にされている。
【0020】
本明細書において使用される場合、用語「キシレン」とはジメチルベンゼンのあらゆる異性体または異性体の混合物をいう。通常、キシレンは1,2−ジメチルベンゼン、1,3−ジメチルベンゼン、および1,4−ジメチルベンゼンの3種類全ての異性体の混合物である。
【0021】
本発明の組成物は溶媒系コーティング組成物である。連続液体媒体中の水の好ましい量は、連続液体媒体の重量を基準にして10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
【0022】
好ましい連続媒体は、脂肪族化合物(例えば、ミネラルスピリッツ)、芳香族化合物、アルキル置換芳香族化合物(例えば、キシレン、ソルベソ(Solveso)溶媒、およびアロマティック(Aromatic)100、およびアロマティック150溶媒)、ケトン(例えば、メチルイソブチルケトンおよびメチルイソアミルケトン)、アルコール(例えば、n−ブタノールおよびプロピレングリコールメチルエーテル)、並びにこれらの混合物から選択される1種以上の溶媒を含む。好ましいのはアルキル置換芳香族化合物およびアルキル置換芳香族化合物とケトンとの混合物であり;より好ましいのはキシレン、およびキシレンとメチルイソブチルケトンとの混合物である。
【0023】
本発明の組成物は、多価金属カチオンおよび多価有機アニオンを含む1種以上のポリマー系殺生物剤(a)を含む。多価金属カチオンの金属部分として、好ましい金属はアルカリ土類金属および遷移金属であり;より好ましいのは遷移金属であり;より好ましいのは周期表の列4からの遷移金属であり;より好ましいのは亜鉛およびマンガンであり;より好ましいのは亜鉛である。2種以上の異なる金属の混合物が使用されうる。好ましい金属カチオンは+2の電荷を有する。
【0024】
好ましい多価有機アニオンは2以上の別個のアニオン性基を有する。好ましくはこの2以上のアニオン性基はそれぞれ−1の電荷を有する。好ましいのはアニオン基が少なくとも2つのメチレン基を含む原子の鎖で隔てられている化合物である。すなわち、好ましい多価有機アニオンは構造
【化3】

を有し、ここで
【化4】

はアニオン性基を表し、波線は
【化5】

がCHに直接結合されうるか、またはそこに1以上の原子が存在しうることを表す。好ましいアニオン性基はジチオカルバマートイオンであり、これは構造
【化6】

を有する。好ましい多価有機アニオンはエチレンビスジチオカルバマートイオンであり、これは構造
【化7】

を有する。
【0025】
本発明の殺生物剤(a)はポリマー系である。二価金属イオン(すなわち、電荷+2の金属イオン)および構造
【化8】

の多価アニオンを有するポリマー系殺生物剤の中には、このポリマー系殺生物剤が構造
【化9】

(式中、kは2以上であり、M+2は二価の金属イオンを表す;このポリマー系殺生物剤について示される構造においては、左端のアニオンは右端のカチオンと近接して環状構造を形成することができることが企図される)を有することが企図される。
【0026】
好ましくは、ポリマー系殺生物剤(a)の量は、本発明の組成物の重量を基準にして、0.3重量%以上、好ましくは1重量%以上、より好ましくは3重量%以上である。好ましくはポリマー系殺生物剤(a)の量は、本発明の組成物の重量を基準にして、10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、より好ましくは6重量%以下である。
【0027】
ポリマー封入殺生物剤(b)の殺生物剤部分は好ましくは以下の特性を有する。好ましい殺生物剤は水中で25℃で、水の重量を基準にして、2重量%以下、より好ましくは1重量%以下の溶解度を有する。好ましい殺生物剤はイソチアゾロンであり;より好ましいのは4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3(2H)−イソチアゾロン(DCOIT)、2−n−オクチル−3(2H)−イソチアゾロン(OIT)、ベンゾイソチアゾロン(BIT)、それらのアルキル誘導体、並びにそれらの混合物であり;より好ましいのはDCOIT、OIT、BITおよびそれらの混合物であり;より好ましいのはDCOITである。
【0028】
封入用(encapsulating)ポリマーシェルの内側の殺生物剤は、水中で25℃で水の重量を基準にして0.01重量%〜5重量%の溶解度を有する溶媒である、部分的に水混和性の溶媒と混合されることができる。この溶媒が存在する場合には、好ましいのは1気圧で100℃以上の沸点を有する溶媒である。
【0029】
ポリマー封入殺生物剤(b)のポリマー部分は以下の特性を有する。好ましいポリマーは、本発明の組成物中に使用される溶媒に対して非浸透性であり、かつ水に対して有用な程度の浸透性を有する。好ましいポリマーは、アルデヒドベースの縮合樹脂、および親水性ドーパントとアルデヒドベースの縮合樹脂とのブレンドである。ドーパントが使用される場合には、好ましいドーパントは部分的におよび完全に加水分解されたポリビニルアルコール(PVOH)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物である。ドーパントが使用される場合には、より好ましいドーパントは部分的にまたは完全に加水分解されたPVOHである。
【0030】
アルデヒドベースの縮合樹脂は、アルデヒドと1種以上のアルデヒド反応性化合物との反応生成物である。好ましいアルデヒドはホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、およびこれらの混合物である。好ましいアルデヒド反応性化合物はアミン、アミド、尿素類、フェノールおよびこれらの混合物である。フェノールは芳香環の部分である炭素原子に1以上のヒドロキシル基が結合されている化合物であり;フェノールは芳香環に結合されているさらなる置換基を有していてよく、または有していなくてもよい。より好ましいアルデヒド反応性化合物はメラミン、尿素、レゾルシノール、およびこれらの混合物である。好ましいアルデヒドベースの縮合樹脂は尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−尿素−ホルムアルデヒド樹脂、尿素−レゾルシノール−グルタルアルデヒド樹脂、尿素−レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂、およびカチオン性尿素樹脂である。カチオン性尿素樹脂はアルデヒドベースの縮合樹脂であり、これは尿素を用いて(および、場合によっては、1種以上の追加のアルデヒド反応性化合物を用いて)製造され、そしてその樹脂が形成された後で、1種以上の試薬と反応させられて、この樹脂に共有結合したカチオン性基を生じさせる。
【0031】
ある実施形態においては、ポリマー封入殺生物剤はまずアクリル系ポリマーに封入され、次いで残りの部分が親水性ドーパントおよびアルデヒドベースの縮合樹脂のブレンド中に封入される。
【0032】
ポリマー封入殺生物剤の粒子が球状でない場合には、本明細書においては、その粒子の直径は、その粒子と同じ体積を有する球体の直径であると見なされる。ポリマー封入殺生物剤の粒子は好ましくは、100ナノメートル以上の重量平均直径を有する。ポリマー封入殺生物剤の粒子は好ましくは100マイクロメートル以下、より好ましくは50マイクロメートル以下の重量平均直径を有する。
【0033】
ポリマー封入殺生物剤(b)の量は活性物重量パーセントで特徴付けられ、これは実際の殺生物剤(封入用ポリマーの重量を含まない)の重量を本発明の組成物の重量で割ったものであって、パーセントとして表される。ポリマー封入殺生物剤(b)の好ましい活性物重量パーセントは0.1%以上、より好ましくは0.3%以上、より好ましくは1%以上である。ポリマー封入殺生物剤(b)の好ましい活性物重量パーセントは10%以下、より好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下である。
【0034】
いくつかの実施形態においては、本発明の組成物中に幾分かのDCOITが封入形態で存在し、さらなるDCOITが非封入(すなわち、溶媒中に溶解された)形態で存在することが企図される。そのような実施形態においては、本発明の組成物中のDCOITの全重量パーセントは、封入DCOITの活性物重量パーセントと、非封入DCOITの通常の重量パーセント(すなわち、本発明の組成物の重量のパーセンテージとして表される非封入DCOITの重量)との合計であると見なされる。
【0035】
本発明の組成物は1種以上のエトキシ化トリグリセリドを含む。好ましいエトキシ化トリグリセリドは1種以上の天然に存在するトリグリセリドとエチレンオキシドとの反応生成物である。好ましい天然に存在するトリグリセリドは、1以上の脂肪酸の残基において1以上の炭素原子に結合されている1以上のヒドロキシル基を有する。より好ましいのはひまし油である。
【0036】
エトキシ化トリグリセリドを特徴付ける有用な方法はNEOであり、これはトリグリセリド分子の1モルあたりのエチレンオキシド単位の平均モル数である。好ましくは、NEOは5以上、より好ましくは10以上である。好ましくは、NEOは55以下、より好ましくは45以下である。
【0037】
エトキシ化トリグリセリドの好ましい量は、本発明の組成物の重量を基準にして、0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.4重量%以上である。エトキシ化トリグリセリドの好ましい量は本発明の組成物の重量を基準にして5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.75重量%以下である。
【0038】
好ましいエトキシ化トリグリセリドは非イオン性界面活性剤である。好ましいエトキシ化トリグリセリドは7〜15のHLB値を有する。
【0039】
好ましくは、ポリマー系殺生物剤(a)およびポリマー封入殺生物剤(b)は両方とも補助殺生物剤である。
【0040】
ポリマー系殺生物剤(a)およびポリマー封入殺生物剤(b)以外の補助殺生物剤が存在する場合には、ポリマー系殺生物剤(a)およびポリマー封入殺生物剤(b)以外のこの補助殺生物剤は好ましくは亜鉛ピリチオン、銅ピリチオン、トリルフルイニド(tolyl fluinid)、ジクロフルイニド(dichlo fluinid)、ジヨードメチル−p−トリルスルホン(DIMTS)、2−メチルチオ−4−tert−ブチルアミノ−6−イソプロピルアミノ−s−トリアジン、ジクロロフェニルジメチルウレア、亜鉛,ビス(N,N−ジメチルカルバモジチオアト−kS,kS’)[m−[[N,N’−1,2−エタンジイルビス[カルバモジチオアト−kS,kS’]](2−)]]ジ−(TOC3204F)、非封入DCOIT、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
好ましくは、本発明の組成物は1種以上の主殺生物剤を含む。好ましい主殺生物剤は、酸化第一銅、チオシアン酸第一銅、過剰なDCOIT、スピノサド、スピネトラム、メデトミジン、シペルメトリン、トラロピル(tralopyr)、TPBPおよびこれらの混合物からなる群から選択される。「過剰なDCOIT」とは、本発明の組成物中に、DCOITの全重量パーセントで3%を超えて存在する量のDCOITを意味する。例えば、本発明の組成物中のDCOITの全重量パーセントが7%であったなら、本明細書においては、組成物の補助殺生物剤部分が3重量パーセントの量でDCOITを含んでおり、組成物の主殺生物剤部分が4重量パーセントの量でDCOITを含んでいたと見なされる。
【0042】
好ましくは、本発明の組成物は1種以上のバインダーを含む。バインダーは膜を形成することができる物質であり;すなわち、溶媒系組成物中にバインダーが存在する場合で、その組成物が基体上に層として適用され、次いで周囲温度(0℃〜45℃の任意の温度でありうる)で乾燥させられるかまたは乾燥して、乾燥塗膜を形成する場合に、このバインダーはその乾燥塗膜中で連続膜を形成することができる。乾燥プロセス中またはその後で、バインダーは、分子量を増大させるおよび/または架橋を生じさせる化学反応を受けてよく、または受けなくてもよく;このような化学反応が起こる場合には、この化学反応はバインダーが膜を形成するのを妨げるであろうことが企図される。好ましいバインダーは組成物の連続液体媒体に可溶性である。好ましいバインダーは1種以上のロジン、1種以上のポリマー、またはこれらの混合物を含む。好ましいロジンには、非修飾ロジンおよびアルキル化ロジンエステルが挙げられる。好ましいポリマーには、アクリル樹脂酸塩が挙げられ;より好ましいのはアクリル樹脂酸の亜鉛および銅塩である。
【0043】
1種以上のバインダーが存在する場合には、全てのバインダーの好ましい全量は、組成物の全重量を基準にして5重量%以上、より好ましくは10重量%以上である。1種以上のバインダーが存在する場合には、全てのバインダーの好ましい全量は、組成物の全重量を基準にして30重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。
【0044】
好ましくは、本発明の組成物は1種以上の顔料をさらに含む。顔料は粒子状固体である。顔料は−10℃〜95℃の範囲を含む温度範囲にわたって固体である。顔料は粒子の形態で存在し、この粒子は球形、ほぼ球形、不規則に角が取れた、粗い方形、シート状、薄板状、針状、ブラシの毛状、糸状、またはこれらの組み合わせであり得る。顔料は有機物質(例えば、ポリマー系)、または無機物質(例えば、酸化物、炭酸塩、クレイなど)でありうる。粒子が球状でない場合には、本明細書においては、その直径はその粒子と同じ体積を有する球体の直径であると見なされる。
【0045】
顔料粒子が本発明の組成物中に存在する場合には、その粒子の好ましい重量平均直径は0.2マイクロメートル〜10マイクロメートルである。
【0046】
1種以上の顔料が存在する場合には、顔料の好ましい全量は、組成物の全重量を基準にして20重量%以上、より好ましくは40重量%以上である。1種以上の顔料が存在する場合には、顔料の好ましい全量は、組成物の全重量を基準にして75重量%以下、より好ましくは65重量%以下である。
【0047】
本発明のコーティング組成物は、場合によっては、1種以上のアジュバントをさらに含む。いくつかのアジュバントには、例えば、分散剤、造膜助剤、増粘剤、着色剤、ワックス、追加の殺生物剤、およびこれらの混合物が挙げられる。好ましいのは海洋防汚塗料における使用に適するアジュバントを含む組成物である。
【0048】
本発明の実施においては、溶媒をポリマー封入殺生物剤と混合する前に、および溶媒をポリマー系殺生物剤と混合する前に、溶媒のほとんどもしくは全てを1種以上のエトキシ化トリグリセリドのほとんどもしくは全てと混合することが好ましい。
【0049】
本発明の組成物を製造する好ましい方法の説明において、本明細書においては、以下のものを「主成分」と表示することが有用である:あらゆるポリマー封入殺生物剤、あらゆるポリマー系殺生物剤、およびあらゆるエトキシ化トリグリセリド。本発明の溶媒系コーティング組成物中に存在する全ての他の成分は、本明細書においては、「二次成分」と表示される。
【0050】
以下の説明において、いくつかのプロセスは「第一工程」、「第二工程」などと表示される。これら工程は標記の「第一」、「第二」などによって特定される順に行われるであろうことが企図される。記載が他のことを示さない限りは、その標記された工程の前、その際、またはその後で他の工程が行われうることがさらに企図される。
【0051】
本発明の組成物の製造における好ましい第一工程は「ベース塗料」を製造することである。本明細書において使用される場合、ベース塗料は全ての二次成分のほとんどもしくは全てを含むが、主成分をほとんどもしくは全く含まない混合物である。「主成分をほとんどもしくは全く含まない」とは、ベース塗料中の主成分の全重量が(最終塗料中に存在することとなる全ての主成分の全重量を基準にして)5重量%以下であることを意味する。より好ましくは、ベース塗料中の全ての二次成分の量は、最終塗料中に存在することとなる全ての二次成分の重量を基準にして75重量%以上、より好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。より好ましくは、ベース塗料中の主成分の量は、最終塗料中に存在するすることとなる全ての主成分の重量を基準にして1重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0重量%である。その中で全ての成分を完全に混合するために、ベース塗料がかき混ぜられ、振とうされ、粉砕され、ミルにかけられ、または他の方法で攪拌されることが好ましい。
【0052】
本発明の組成物の製造における好ましい第二工程は1種以上のエトキシ化トリグリセリドのほとんどもしくは全てをベース塗料に添加して、第二混合物を形成することである。より好ましくは、第二混合物中の全てのエトキシ化トリグリセリドの量は、最終塗料中に存在することとなる全てのエトキシ化トリグリセリドの重量を基準にして、75重量%以上、より好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、より好ましくは100重量%である。その中で全ての成分を完全に混合するために、第二混合物がかき混ぜられ、振とうされ、または他の方法で攪拌されることが好ましい。第二工程の完了時に、エトキシ化トリグリセリドが第二混合物全体にわたって充分に分布していることが好ましい。
【0053】
本発明の組成物の製造における好ましい第三工程は第二混合物に、1種以上のポリマー封入殺生物剤のほとんどもしくは全て、および1種以上のポリマー系殺生物剤のほとんどもしくは全てを添加して、最終塗料を製造することである。1種以上のポリマー封入殺生物剤と1種以上のポリマー系殺生物剤とが任意の順に添加されることができ、同時に添加されることができ、混合物として、またはその任意の組み合わせとして添加されることができることが企図される。その中で全ての成分を完全に混合するために、最終塗料がかき混ぜられ、振とうされ、または他の方法で攪拌されることが好ましい。
【0054】
例えば、本明細書において上述の好ましい第一工程、好ましい第二工程、および好ましい第三工程を使用するいくつかの実施形態は以下のように行われる。ベース塗料は、ベース塗料中の溶媒の量が、最終塗料に望ましいよりも幾分か少ないこと以外は、二次成分の全てを使用して製造され;そのようなベース塗料は多くの場合「高固形分」と称される。上述の好ましい第二工程および好ましい第三工程が行われ、次いで追加の溶媒が添加される。
【0055】
好ましくは、アジュバントが使用される場合には、アジュバントは、本明細書において上述の好ましい第二工程の前にベース塗料に添加される。
【0056】
最終塗料は本発明の組成物であり、かつ好ましくはさらなる添加なしに使用に供される。
【0057】
本発明の組成物は好ましくはコーティングとして;より好ましくは防汚コーティングとして;より好ましくは海洋防汚コーティングとして使用される。
【0058】
本発明の組成物がコーティングとしての使用に供される場合には、組成物の層が基体に適用される。この層の厚さは好ましくは、乾燥膜厚さが50マイクロメートル以上、より好ましくは100マイクロメートル以上であるように選択される。この層の厚さは好ましくは、乾燥膜厚さが1ミリメートル以下、より好ましくは500マイクロメートル以下、より好ましくは300マイクロメートル以下であるように選択される。
以下は本発明の実施例である。
【実施例】
【0059】
以下の非イオン性界面活性剤が試験された:
【表1】

注(1):エトックス(Ethox)ケミカルズエルエルシー
注(2):ザダウケミカルカンパニー
注(3):HLBは不明である。
【0060】
以下の材料も使用された:
【表2】

【0061】
コーティング組成物は以下の「標準」方法を用いて製造された。
ベースはレッドデビル(Red Devil(商標))塗料ミキサーを用いて1〜2分間にわたって振とうされた。40gの塗料が100mlのプラスチックボトルに入れられた。アニオン性界面活性剤が、塗料を含むこのボトルに入れられた。このボトルは蓋をされ、次いで50℃で15分間にわたって加熱された。次いで、このボトルはレッドデビル塗料ミキサーを用いて15分間にわたって攪拌された。ZINEBがこのボトルに添加された。このボトルは蓋をされ、次いで50℃で15分間にわたって加熱された。次いで、このボトルはレッドデビル塗料ミキサーを用いて15分間にわたって攪拌された。CRがこの塗料に加えられた。このボトルは蓋をされて、次いで50℃で15分間にわたって加熱された。次いで、このボトルはレッドデビル塗料ミキサーを用いて15分間にわたって攪拌された。
【0062】
組成物中に分散された粒子のサイズはヘグマン(Hegman)ゲージで評価された。ヘグマンゲージは一連の溝を有するブロックであり、その溝はそれぞれその長さに沿って次第に浅くなっている。湿潤コーティング組成物はこの溝のディープ末端にプールされ、そしてこのコーティング組成物はスクレイパーで溝の上に拡げられる。湿潤コーティング組成物の表面が観察され、湿潤コーティング組成物表面が不均一である位置が記録される。不均一性が観察される最も深い位置での溝の深さが、分散された最も大きな粒子のサイズとして採用される。その深さは分散された粒子の粒子サイズとして報告される。
【0063】
コーティング組成物は上述のように製造され、次いでヘグマンゲージを用いて評価された。
【0064】
実施例1:様々なアニオン性界面活性剤の比較
コーティング組成物は上述のように製造され、コーティング組成物の全重量を基準にした以下の重量パーセンテージが使用された:1%非イオン性界面活性剤、5%ZINEB、および2%CR。それぞれのコーティング組成物はヘグマン装置を用いて分析された。
【0065】
結果は以下の通りであった。例番号に「C」を伴う例は比較例である。
【0066】
【表3】

【0067】
エトックス(Ethox)を含まないサンプルは全て分散した粒子のサイズの許容できない増大を示し、エトックスを含まない配合物は不安定であったことを示す。テルジトール15−S−5を含むサンプルは、2つの成功したエトックスサンプルのHLB値の間のHLBを有しているにもかかわらず、不安定さを示した。
【0068】
実施例2:添加の順序
コーティング組成物2−C1および2−2が、40gのベース、0.2gのエトックスCO−16、2gのZINEBおよび0.8gのCRを用いて、上述のように製造された。
【0069】
比較例2−C1については、これら4種類の成分は手作業で容器内で、ベース、次いでエトックスCO−16、次いでZINEB、次いでCRの順に、一緒に混合された。次いで、この混合物は50℃で15分間にわたって加熱され、次いでこの混合物は高速オービタル振とう器上に、780rpmで、15分間にわたって配置された。
【0070】
実施例2−2は上で定義された「標準」方法を用いて製造された。
【0071】
比較例2−Clおよび実施例2−2はヘグマン装置を用いて分析された。比較例2−C1は55マイクロメートルを示したが、実施例2−2は35マイクロメートルを示した。この結果は比較例2−Clが不安定さおよび粒子の凝集をもたらしすが、実施例2−2はそうではないことを示す。すなわち、成分の同時添加が不安定さをもたらすが、「標準」方法はそうではない。
【0072】
例3:非ポリマー系殺生物剤
ポリマー系ではない亜鉛ピリチオンが、ポリマー系であると見なされる亜鉛エチレンビスジチオカルバマートの代わりに使用されたこと以外は、上で定義された標準方法を用いて、例3−Clと標記されたコーティング組成物が製造された。例3−Clに関して、不安定さの証拠は観察されなかった。
【0073】
例4:エトックスCO−5を用いて上で定義された標準方法を用いて、例4−Clと標記されたコーティング組成物が製造された。4−Clにおいては、粒子サイズの増大が観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)多価金属カチオンおよび多価有機アニオンを含む1種以上のポリマー系殺生物剤、
(b)1種以上のポリマー封入殺生物剤、並びに
(c)トリグリセリド分子1モルあたりのエチレンオキシド単位の平均モル数10〜45を有する、1種以上のエトキシ化トリグリセリド
を含む、溶媒系コーティング組成物。
【請求項2】
前記ポリマー系殺生物剤が亜鉛エチレンビスジチオカルバマートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ポリマー封入殺生物剤が4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3(2H)−イソチアゾロンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記分散剤がエトキシ化ひまし油を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記エトキシ化トリグリセリドが、トリグリセリド分子1モルあたりのエチレンオキシド単位の平均モル数38〜42を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記エトキシ化トリグリセリドの量が、前記組成物の重量を基準にして0.2〜5%である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が
(i)1種以上のバインダーポリマー、1種以上のバインダー前駆体、またはこれらの混合物;並びに
(ii)1種以上の顔料;
をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
(A)(i)前記1種以上のバインダーポリマー、1種以上のバインダー前駆体、またはこれらの混合物;および
(ii)前記1種以上の顔料;
を含む溶媒系組成物を提供する工程;
(B)前記エトキシ化トリグリセリドを前記組成物(A)に添加する工程;
(C)前記工程(B)の後で、前記工程(B)において形成された混合物に、前記ポリマー系殺生物剤および前記ポリマー封入殺生物剤を添加する工程;
を含む、請求項7に記載の組成物を製造する方法。
【請求項9】
請求項7に記載の組成物の層を基体に適用し、および前記層を乾燥させるかまたは前記層を乾燥するようにすることを含む、海洋汚損に抵抗する表面を提供する方法。

【公開番号】特開2012−254979(P2012−254979A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−116280(P2012−116280)
【出願日】平成24年5月22日(2012.5.22)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】