説明

安定な液体インターフェロン処方物

【課題】液体インターフェロン処方物の非経口的投与のためのキット、および液体インターフェロン組成物を安定化させるための方法を提供すること。
【解決手段】4.0と7.2の間のpHを有する液体インターフェロン組成物が記載される。この組成物はインターフェロン−βならびに酸性アミノ酸、アルギニンおよびグリシンからなる群から選択されるアミノ酸である安定剤を約0.3重量%および5重量%の間で含む。必
要である場合、塩が充分なイオン強度を提供するために加えられる。液体組成物は予め凍結乾燥も予め空洞化もされていない。この液体は、好ましくはインターフェロン−βの吸着に対して不活性である物質でコーティングされた液体と接触している少なくとも1つの表面を有する容器内に含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒトインターフェロンβを安定化するための方法、および安定なインターフェロンβ液体処方物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
インターフェロンは、種々の生物学的活性(そのいくつかは、抗ウイルス性、免疫調節性、および抗増殖性である)を有するタンパク質である。それらは、比較的小さい種特異的な一本鎖ポリペプチドであり、ウイルス、ポリペプチド、マイトジェンなどのような種々のインデューサーへの暴露の応答の際に、哺乳動物細胞によって産生される。インターフェロンは、ウイルス攻撃に対して動物組織および細胞を保護し、そして重要な宿主防御機構である。ほとんどの場合において、インターフェロンは、他の型の組織および細胞に対するよりも、インターフェロンが産生されている種類の組織および細胞に対してよりよい防御を提供し、これは、ヒト由来のインターフェロンが、ヒト疾患を処置することにおいて、他の種由来のインターフェロンよりも効果的であるはずであることを示す。
【0003】
ヒトインターフェロンのいくつかの個別の型が存在し、一般的に、白血球(インターフェロンα)、線維芽(インターフェロンβ)、および免疫(インターフェロンγ)、ならびにそれらの多数の改変体に分類される。インターフェロンの一般的な議論は、以下を含む種々の教本および研究論文に見いだされ得る:非特許文献1;および非特許文献2(本明細書中で参考として援用される)。
【非特許文献1】TheInterferon System(W.E.Stewart,II,Springer-Verlag,N.Y.1979)
【非特許文献2】Interferon Therapy(World HealthOrganization Technical Reports Series676, World Health Organization, Geneva1982)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インターフェロンを投与する方法は、この重要な治療剤の臨床適用における重要な要因である。静脈内、筋肉内、または皮下注射のいずれかによるインターフェロンの全身性投与は、有毛細胞白血病、後天性免疫不全症候群(AIDS)、および関連するカポジ肉腫のような障害の処置において、いくつかの成功とともに最も頻繁に使用されている。しかし、それらの精製形態におけるタンパク質は、分解に対して特に感受性であることが公知である。インターフェロンβについて、溶液におけるインターフェロン分解の一次機構は、凝集およびアミド分解である。溶液および他の産物におけるインターフェロン安定性の欠失は、これまで、その有用性を制限してきた。
【0005】
臨床用途のための薬学的インターフェロン組成物は、インターフェロンを、複合体有機賦形剤、および非イオン性界面活性化薬剤(surface activeagent)(すなわち、界面活性剤(surfactant))、種々の糖、有機ポリオール、および/またはヒト血清アルブミンのような安定剤と組み合わせて凍結乾燥させた(すなわち、凍結乾燥させた)調製物として一般に含む。凍結乾燥した調製物は、複合体封入を必要とする欠点を有する。なぜなら、注射のために滅菌水を別々に供給することが必要であるからである。さらに、凍結乾燥した調製物は、使用する前にいくつかの操作を必要とし、従って注射のための調製の間、針を刺す可能性および成分の滴下の可能性を増加させる。これらの操作は、筋肉衰弱および貧困な調整(例えば、多発性硬化症(MS)の人々)を示す患者集団について特に問題がある。MS患者は、インターフェロンを自己投与し得、その結果、投与の際に、現在の凍結乾燥した産物よりもはるかに簡単な投薬形態の利用可能性が、標的患者集団についての重要な付加価値を示す。インターフェロンの単純な液体処方物が、凍結乾燥した調製物を使用する場合の再構築の必要性を回避するために、非常に所望される。
【0006】
インターフェロンを含む液体の非凍結乾燥処方物もまた、ヒト血清アルブミン、ポリオール、糖、およびアニオン性表面活性安定化剤のような複合体キャリアを含み得る。例えば、WO89/10756(Haraら−ポリオールおよびp-ヒドロキシベンゾエートを含む)を参照のこと。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明は、上記の問題を、ヒトインターフェロンβが、約4と7.2との間のpHを有する緩衝化溶液中におかれた場合に安定化され得るという発見とともに解決した。この溶液は、安定剤としてアミノ酸、およびいくつかの場合には塩(アミノ酸が荷電側鎖を含まない場合)を含む。インターフェロンβは、凍結乾燥されないが、一旦当業者に公知の方法を用いて供給源から調製されると、本発明の処方物に直接含まれる。
【0008】
それゆえ、本発明の1つの局面は、約0.3重量%と5重量%との間でインターフェロンおよび安定化剤(酸性アミノ酸、アルギニンおよびグリシンからなる群より選択されるアミノ酸)を含む液体組成物である。液体組成物は、予め凍結乾燥されていない。さらに、液体組成物は、容器(例えば、シリンジ)内に含まれ、ここで、この容器は液体と接する表面(これは、シリコーンまたはポリテトラフルオロエチレンのようなインターフェロンに不活性な物質でコートされる)を有することが好ましい。好ましい組成物としては、約4.0と約7.2との間のpHを有する緩衝液中の、インターフェロンβまたは組換え的に産生されたインターフェロンが挙げられる。本発明の他の処方物は以下を含む:
(1)pH5.0の20mM酢酸緩衝液。緩衝液は予め凍結乾燥されていない。ここで緩衝液は、インターフェロンβおよび以下から選択される成分を含む:(a)150mMアルギニン-HCl;(b)100mM塩化ナトリウムおよび70mMグリシン;(C)150mMアルギニン-HClおよび15mg/mlヒト血清アルブミン;(d)150mMアルギニン-HClおよび0.1%PluronicF-68;(e)140mM塩化ナトリウム;(f)140mM塩化ナトリウムおよび15mg/mlヒト血清アルブミン;ならびに(g)140mM塩化ナトリウムよび0.1%PluronicF-68;
(2)インターフェロンβ、170mM L-グルタミン酸、および150mM水酸化ナトリウムを
含むpH5.0の液体、液体は予め凍結乾燥されていない;
(3)pH7.2の20mMリン酸緩衝液。緩衝液は予め凍結乾燥されていない。ここで緩衝液はインターフェロンβおよび以下から選択される成分を含む:(a)140mMアルギニン-HCl;および(b)100mM塩化ナトリウムおよび70mMグリシン。
【0009】
本発明の別の実施態様は、液体インターフェロン処方物の非経口投与のためのキットである。このキットは、4と6との間のpHの液体処方物(この液体は予め凍結乾燥されていない薬学的有効量のインターフェロンβおよび約5重量%以下のアミノ酸安定化剤を含む)を含む容器を含み;そして使用説明書を含む。
【0010】
本発明のなお別の実施態様は、4.0と6.0との間の範囲内にpHを維持する緩衝液中で、本質的に、予め凍結乾燥されていない有効量のインターフェロンβ、および適切なイオン強度のアミノ酸安定化剤から成る、哺乳動物への非経口投与に適した液体の薬学的組成物である。この組成物は、シリンジのような保存容器内に含まれる。好ましくは、保存容器は、酸素含有/液体界面を欠く(すなわち、インターフェロン溶液は、調製および保存の間酸素含有気体に供されない)。インターフェロンβは本質的に、約2℃と約25℃との間の温度で少なくとも3ヶ月間保存する間、その抗ウイルス活性を保持する。
【0011】
液体の薬学的組成物中のインターフェロンβを安定化し、その結果、約2℃と約25℃との間の温度で少なくとも3ヶ月間保存する間、その物理的安定性を本質的に保持する本発明のプロセスは、以下を混合する工程を包含する:a)有効量のインターフェロンβ;b)適切なイオン強度で4.0と7.2との間の範囲内のpHを維持する緩衝液;およびc)アミノ酸
安定化剤。ここで、液体は予め凍結乾燥さず、そして調製および保存の間、酸素含有気体に供されていない。
【0012】
本発明の液体処方物は、凍結乾燥した処方物を越える多くの利点を有する。この利点は以下を含む:(i)液体処方物に必要な、より少量の注射容量は、大容量よりも不快感を少なくする;(ii)単純なアミノ酸での複合体賦形剤の置換は、最終産物の品質をより密接にモニターすることを可能にする;(iii)注射水(WFI)の別々の供給、ならびに別々のシリンジおよびバイアルの必要性が除かれるために、封入は非常に単純化される;(iv)水の移動がより少ないために、投薬の正確さは改良され得る;そして(v)より簡単な投与が、注射の調製の間に針を刺すことおよび内容物の滴下の機会を減少させるので、産物の安全性が改良される。
【0013】
それゆえ、本発明の目的は、注射適用における使用のための、インターフェロンβの生物学的に活性な、安定な液体処方物を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、インターフェロンβ組成物の予備凍結乾燥が必要ではない処方物を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、インターフェロンβ液体処方物における安定性の欠損を、以下によって防ぐことである:a)液体組成物の調製の間の空洞化および/または頭部空間(head-space)形成を回避すること、またはb)液体処方物を、アルゴンまたは窒素のような不活性気体からなる頭部空間とともに保存すること。
【0016】
本発明のなお別の目的は、投与の前の保存および運搬を容易にする、液体状態における長期間保存を可能にする液体処方物を提供することである。本発明の別の目的は、凍結乾燥および再構成工程が削除されて、容易に作製および投与される液体処方物を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、一般に使用される血清アルブミンに加えての別の安定剤としての単純なアミノ酸の使用であり、これは産物の品質のモニターを容易にする。
【0018】
本発明のなお別の目的は、あまり高価でなく産生され得る非凍結乾燥化インターフェロンβを含む薬学的組成物を提供することである。
【0019】
本発明の他の利点は、以下の説明の部分に示され、そして部分的に、この説明から想到されるか、または本発明の実施から理解され得る。添付の図面(これは本明細書中に援用されそして一部を構成する)、例示、およびこの説明とともに、本発明の原理の説明を提供する。
例えば、本発明は以下を提供する:
1. インターフェロン、ならびに酸性アミノ酸、アルギニンおよびグリシンからなる群から選択されるアミノ酸である安定剤を約0.3重量%〜5重量%の間で含む液体組成物であって、該液体組成物が予め凍結乾燥されていない、液体組成物。
2. 前記液体組成物を含む容器をさらに含み、該容器がインターフェロンに対して不活性な物質でコーティングされた少なくとも1つの表面を有する、項目1に記載の液体組成物。
3. 前記インターフェロンがインターフェロン−βまたは組換え産生されたインターフェロンである、項目1に記載の液体組成物。
4. 約4.0と約7.2の間とのpHを有する、項目1に記載の液体組成物。
5. 4.8〜5.2のpHを有する、項目4に記載の液体組成物。
6. 5.0のpHを有する、項目5に記載の液体組成物。
7. 前記酸性アミノ酸がグルタミン酸である、項目5に記載の液体組成物。
8. 前記アルギニンがアルギニン-HClである、項目1に記載の液体組成物。
9. 約6 IMU/mlと約50 IMU/mlとの間のインターフェロン濃度を有する、項目1に記載
の液体組成物。
10. 前記容器の前記少なくとも1つの表面が、シリコーンおよびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択される物質でコーティングされる、項目2に記載の液体組成物。
11. 前記容器が注射器である、項目10に記載の液体組成物。
12. インターフェロン−β、ならびに以下からなる群:(a)150mM アルギニン;(b)100mM塩化ナトリウムおよび70mM グリシン;(c)150mM アルギニンおよび15mg/mlヒト血清アルブミン;(d)150mM アルギニンおよび界面活性剤;(d)140mM塩化ナトリウム;(e)140mM 塩化ナトリウムおよび15mg/ml ヒト血清アルブミン;ならびに(f)140mM塩化ナトリウムおよび界面活性剤から選択される安定剤を含む20mM、pH5.0の酢酸緩衝液であって、ここで、該緩衝液が予め凍結乾燥されていない、緩衝液。
13. 前記界面活性剤が0.1%(w/v)Pluronic F-68である、項目12に記載の緩衝液。
14. 前記アルギニンがアルギニン−HClである、項目12に記載の緩衝液。
15. 前記緩衝液を含む容器をさらに含み、ここで該緩衝液と接触している該容器の少なくとも1つの表面が、シリコーンおよびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択される物質でコーティングされている、項目12に記載の緩衝液。
16. 前記容器が注射器である、項目15に記載の緩衝液。
17. pH5.0の液体組成物であって、インターフェロン−βおよび170mM L-グルタミン
酸を含み、該液体が予め凍結乾燥されていない、液体組成物。
18. アミノ酸グリシンを含み、そして塩をさらに含む、項目1に記載の液体組成物。19. 15mg/mlのヒト血清アルブミンおよび0.1%(w/v)PluronicF-68からなる群から選択される成分をさらに含む、項目17に記載の液体組成物。
20. インターフェロン−β、ならびに以下からなる群:(a)140mM アルギニン;および(b)70mMグリシンと合わせた100mM 塩化ナトリウムから選択される安定剤を含む20mM、pH7.2のリン酸緩衝液であって、ここで該緩衝液が、予め凍結乾燥されていない、緩衝液。
21. 前記液体を含む容器をさらに含み、ここで、該液体と接触している該容器の少なくとも一つの表面がシリコーンおよびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択される物質でコーティングされている、項目20に記載の液体組成物。
22. 前記容器が注射器である、項目20に記載の液体組成物。
23. 保存容器内に含まれる薬学的液体組成物であって、該液体が哺乳動物への非経口投与に適切であり、かつ有効量のインターフェロン−β、4.0から6.0の範囲内でpHを維持する緩衝剤、およびアミノ酸安定剤を含み、ここで該インターフェロン−βが予備凍結乾燥に供されておらず、そして該保存容器が、シリコーンおよびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択される物質でコーティングされている該液体組成物と接触する、少なくとも一つのその表面を有する、薬学的液体組成物。
24. 前記保存容器が酸素含有/液体接触面を欠く、項目23に記載の液体組成物。
25. 前記インターフェロン−βが、約2℃と約25℃との間の温度で少なくとも2ヶ月間にわたる保存の間、本質的にその抗ウイルス活性を維持する、項目23に記載の液体組成物。
26. 前記インターフェロン−βが予備空洞化に供されていない、項目23に記載の液体組成物。
27. 前記緩衝液が、クエン酸緩衝液、酒石酸緩衝液、フマル酸緩衝液、グルコン酸緩衝液、シュウ酸緩衝液、乳酸緩衝液および酢酸緩衝液からなる群から選択される有機酸緩衝液である、項目23に記載の液体組成物。
28. 前記アミノ酸安定剤が、酸性アミノ酸、グリシンおよびアルギニンからなる群から選択されるアミノ酸である、項目23に記載の液体組成物。
29. 前記アミノ酸が組成物の約0.3重量%〜約5.0重量%の量で加えられる、項目28に記載の液体組成物。
30. 前記液体組成物のpHが4.5〜5.5の範囲である、項目23に記載の液体組成物。
31. 前記液体組成物のpHが5.0である、項目30に記載の液体組成物。
32. 滅菌されている、項目23に記載の液体組成物。
33. 血液に対し等張性である、項目23に記載の液体組成物。
34. 前記インターフェロン−βがヒト組換えインターフェロンβである、項目23に記載の液体組成物。
35. 前記ヒト組換えインターフェロン−βの活性が6〜50 IMU/mlタンパク質の範囲である、項目34に記載の液体組成物。
36. インターフェロンならびに、酸性アミノ酸、アルギニンおよびグリシンからなる群から選択されるアミノ酸である安定剤を約0.3重量%と3.13重量%との間で含む凍結液
体組成物であって、ここで該組成物が予め凍結乾燥されていない、組成物。
37. 液体インターフェロン処方物の非経口投与のためのキットであって、ここで、該キットが:a)pHが4と6との間の液体処方物を含む容器であって、該液体が予め凍結乾燥されていない薬学的有効量のインターフェロン−β、およびアミノ酸安定剤を約3.1重量
%未満で含む容器;ならびにb)その使用についての説明書を含む、キット。
38. さらに:c)アルコール綿棒;d)針;および少なくとも1つの接着ガーゼ包帯を含む、項目37に記載のキット。
39. 前記容器が該液体処方物と接触している少なくとも1つの表面を有し、該表面が、シリコーンおよびポリテトラフルオロエチレンからなる群から選択される物質でコーティングされている注射器である、項目37に記載のキット。
40. 前記容器が注射器であり、そして該注射器に含まれる液体処方物が酸素含有/液体接触面を欠く、項目39に記載のキット。
41. 液体薬学的組成物においてインターフェロン−βを安定化させ、その結果約2℃と約25℃の間との温度で少なくとも3ヶ月間にわたる保存の間、本質的にその抗ウイルス活性を維持する方法であって、以下:a)インターフェロン−β;b)4.0〜7.2の範囲内でpHを維持する緩衝剤;およびc)アミノ酸安定剤を混合する工程であって、ここで該液体が予め凍結乾燥されておらずかつ空洞化されていない、工程を包含する、
方法。
42. 塩を混合して、適切なイオン強度を提供する工程をさらに包含する、項目41の方法。
43. 前記塩が塩化ナトリウムである、項目42の方法。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、液体に溶存した酸素の割合の関数として、大量処理液体(bulk processliquid)に残存するインターフェロンβモノマーの割合を示すグラフである。
【図2】図2は、開始物質の濃度に対する正常化したタンパク質濃度の割合対時間を、液体処方物BG9589-1について示すグラフである。「4℃」と示したサンプル(黒四角)は、2〜8℃の間でインキュベートされる。他のサンプルは、25℃(黒丸);33℃(黒三角)、および40℃(黒菱形)でインキュベートされる。
【図3】図3は、開始物質の濃度に対する正常化したタンパク質濃度の割合対時間を、液体処方物BG9589-3について示すグラフである。「4℃」と示したサンプルは、2〜8℃でインキュベートされる。他のサンプルは、25℃(黒丸);33℃(黒三角)、および40℃(黒菱形)でインキュベートされる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、現在のストラテジーおよび設計に関連する問題および欠点を克服し、そしてインターフェロンを安定化するための簡単な方法、および増強された保存安定性を有する簡単なインターフェロン処方物を提供する。本発明は、部分的に、以下の本発明者らの発見に基づく:
a)インターフェロンβは、液体を介して活性に泡立つかまたは頭部空間に静的に接触されるかのいずれかである酸素と接触させる場合、特に不安定であり、そして凝集し;
b)ヒト血清アルブミンのようなキャリアを欠くインターフェロンβ液体調製物は、ガラス表面への吸着(すなわち、化学反応または物理的結合のいずれか)に特に感受性であり;そして
c)インターフェロンβは、低イオン強度で凝集し、水性状態における安定性のためにイオン環境を必要とする。
【0022】
本発明は、それゆえ、これらの落とし穴を回避するヒトインターフェロンβを安定化するための方法、および得られた安定化インターフェロンβの液体処方物に関する。
【0023】
A.定義
用語「緩衝液」は、弱酸、および酸のアニオンを含む塩の溶液、または弱塩基およびその塩の溶液をいう。特に、用語「酢酸」は、本明細書中において使用される場合(表I(下方)も参照のこと)、好ましくは、酢酸ナトリウムおよび酢酸を含む緩衝液系をいい、そして用語「リン酸」は、好ましくは、それぞれ、二塩基性および一塩基性リン酸ナトリウム七水和物および一水和物を含む緩衝液系をいう。さらに、水酸化ナトリウムと組み合わせて酸性アミノ酸を含む表II(下方)のこれらの溶液(緩衝液としては従来は考えられないにもかかわらず、この用語は当該分野で公知であるので)は、それにもかかわらず、本明細書中の定義内に含まれる。
【0024】
用語「賦形剤」は、バルクな特徴を改変する目的のために、処理および/または保存の間に液体処方物に添加されて、安定性および/または浸透圧濃度の調整を改良する任意の化合物をいう。
【0025】
用語「安定化剤」は、安定性を改良するかまたは他に増強する賦形剤をいう。
【0026】
用語「安定性」は、必ず、機能的定義を有し、そして抗ウイルス活性のようなインターフェロン活性および/またはインターフェロン構造の比較的一時的な定常性を意味する。
【0027】
用語「空洞化された(cavitated)」は、圧力または物理的撹拌における変化のために、その調製および保存の間に少なくとも、酸素含有気泡(例えば、空気)と接触している任意の液体インターフェロン処方物をいう。用語「空洞化(cavitation)」もまた、酸素含有気体/液体界面が、液体インターフェロン処方物の調製、保存、および使用の間のいずれかの時点で形成されていることを意味する。用語「空洞化」もまた、液体インターフェロン処方物における溶存酸素レベルが、少なくとも調製および保存の間に代表的に遭遇する温度で、大気平衡値の約10%を越えることを意味する。
【0028】
本明細書中で用いられる用語「非経口」としては、皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内、腹膜内、眼内、または脊髄内注射または注入技術が挙げられる。
【0029】
表現「薬学的に受容可能な塩」は、任意の有機または無機添加塩を意味し、これは比較的非毒性であり、そして有効活性と一致した濃度で患者に無害であり、その結果、塩に起因する副作用は、本インターフェロンの有益な効果を損なわない。
【0030】
化合物の「有効量」は、結果を生じるか、または処置される特定の状態における影響を発揮する量である。「有効量」はまた、抗ウイルス活性についてのCFE試験において陽性結果(すなわち、抗ウイルス効果を発揮する)を生じる量を意味する。
【0031】
本明細書中で用いられる、インターフェロンの「薬学的に有効な量」は、医学および薬学の分野において、特定の状態を処置するのに安全かつ有効であることが公知であるその薬剤の濃度百分率を意味する。
【0032】
「血液に等張」(「等張性」と交換可能に使用される)は、十分な濃度の成分を有し、その結果その浸透圧の挙動が実質的に血液と同一である(すなわち、処方物と接触する細胞が、それらの形状を実質的に保持し、そして浸透圧による水の有効な移動を実質的に受けない)液体インターフェロン組成物をいう。
【0033】
「ポリイオン性種」(「高分子電解性種」と交換可能に使用される)は、電解質であり、そして本発明の処方物において使用される場合に、所定の重量モル浸透圧濃度についてのイオン強度を最大にする高分子量の物質をいう。この定義は、インターフェロンβが、高いイオン強度によって安定化されるが、全イオン強度は、溶液が血液に対して等張であるという必要性によって制限されるという本発明者らの発見に基づく(実施例7を参照のこと)。所定の重量モル浸透圧濃度についてのイオン強度を最大にする好ましい方法は、ポリイオン性種である賦形剤を使用することである。
【0034】
「インターフェロンに不活性」である物質は、インターフェロンと物理学的および/または化学的に反応しない特性を少なくとも有する物質を意味する。
【0035】
B.インターフェロンの作製
本発明は、一般に、天然のインターフェロン、組換えDNA技術によって生成されるインターフェロン、および化学合成または改変によって生成されるインターフェロンを含む全ての型のインターフェロンに適用可能である。また、本発明は、線維芽細胞、白血球、リンパ球、またはヒトもしくは任意の他の適切な種由来の任意の他のインターフェロン含有組織または産生組織からの、粗インターフェロン、半精製インターフェロン、および精製インターフェロンに関して使用され得る。最も好ましくは、本発明は、ヒト線維芽細胞インターフェロン(インターフェロンβ)に適用可能である。
【0036】
最も好ましいインターフェロンβは組換え形態であり、そして種々のインターフェロンを含むタンパク質を産生するための組換えDNA法は公知であり、そしてこれは、決して本発明を限定することを意図されない。例えば、米国特許第4,399,216号、同第5,149,636号、同第5,179,017号(Axelら);同第4,470,461号(Kaufman)を参照のこと。インターフェロンβの組換え形態は、産生されている。例えば、欧州特許第041313(Fiers−インターフェロンβの発現);米国特許第4,966,843号(McMormickら−CHO細胞におけるインターフェロンの発現);米国特許第5,326,859号(Suganoら−インターフェロンβをコードするDNA)を参照のこと;インターフェロンβはまた、組換え的または化学的に改変され得、そして血清含有培地または無血清培地において産生され得る。インターフェロンβの形態は、システイン欠乏(cycteine-depleted)変異体(米国特許第4,588,585号および同第4,737,462号:Markら)およびメチオニン欠乏変異体(EP260350−Wangら)のような改変体を含み得る。タンパク質の一次アミノ酸配列は、糖部分を用いる誘導体化(グリコシル化)によって、または他の補充的な分子によって議論され得る。他の改変体は、宿主細胞の翻訳後プロセシング系を介して起こり得る。鎖における個々のアミノ酸残基は、酸化、還元、または他の誘導体化によってさらに改変され得、そしてタンパク質は、活性なフラグメントを得るために切断され得る。特定の組換えインターフェロンβの正確な化学構造は、それゆえ、いくつかの要因に依存し、そして本発明の範囲を限定することを意図されない。本明細書中に記載される処方物に含まれる全てのこのようなインターフェロンβタンパク質は、適切な環境条件におかれた場合に、それらの生物活性を保持する。
【0037】
組換えインターフェロンβを産生する1つの方法は、ヒトインターフェロンβ遺伝子でトランスフェクトしたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を培養することである。組換えインターフェロンβは、ウシ胎児血清を含むバッチ懸濁培養において増殖するCHO細胞によって分泌される。細胞は、約摂氏35度(本明細書以下「℃」)でCO2インキュベーター(5%CO2)にいれた撹拌フラスコにおいて増殖され得る。複数の撹拌フラスコがプールされ得、そしてスケールアップが所望される場合、漸増するサイズの発酵槽に播種され得る。所定の発酵槽における増殖は、約6日間行われ、この時点で、活性なインターフェロンβ産物が、培養培地に蓄積する。次いで、培養物が回収され得、そして細胞は、例えば、接線方向流れ濾過(tangentialflowfiltration)によって産物を含む培地から除去される。
【0038】
C.インターフェロンの精製
インターフェロンについての精製スキームはよく特徴づけられ、そして当業者にとって入手可能である。このような方法としては、1工程または複数の工程の手順が挙げられ、これは種々のクロマトグラフィー分離工程を含む。例えば、米国特許第5,015,730号(Friesenら−アフィニティークロマトグラフィーおよびHPLC);同第4,541,952号(Hosoiら−キレートクロマトグラフィー)を参照のこと。
【0039】
例示的な方法は、インターフェロンβ分子の非常に疎水性かつ比較的塩基性の性質、ならびに金属イオンに結合するその強力な親和性を利用することを含む。例えば、KnightおよびFahey「HumanFibroblast Interferon, an Improved Purification」、J.Biol.Chem.,256:3609-3611(1981)ならびにEdyら、「Purificationof Human Fibroblast Interferon byZinc Chelate Chromatography」、J.Biol.Chem.,232:5934-5935(1981)(この両方を、本明細書中で参考として援用する)を参照のこと。
【0040】
簡単には、捕捉および精製工程は、インターフェロンβの一連のSepharose(登録商標)カラム(PharmaciaBiotechによる製造)への結合、ならびに塩およびポリオールでの溶出を含む。一旦、最終Sepharose溶出物が希釈され、そして低いpHに調整されると、その中のインターフェロンβは、SPSepharose(登録商標)(PharmaciaBiotech)に結合する。カラムロードに存在する残存タンパク質のほとんどは、その性質がモノマー性インターフェロンβより塩基性であり、そしてインターフェロンより強くカラムに結合する。DNAおよびウイルスは、このカラム上でインターフェロンβから分離する。次いで、カラムは、塩化ナトリウムを含む一連の緩衝液で洗浄される。
【0041】
ここで、インターフェロン産物は、予め亜鉛で帯電しているキレートSepharose(登録商標)(PharmaciaBiotech)カラムに結合している。Edyら(前出)を参照のこと。このカラムは、全ての続く工程と同様に、無酸素雰囲気下で操作されて、分子における遊離スルフヒドリル基が保護される。精製インターフェロンは酸性化され、そして低いpHで保持されて、いかなる残存ウイルスをも不活化する。中和の後、インターフェロンは、交差流れ(crossflow)濾過を用いて濃縮され、次いで緩衝液は中性緩衝化溶液に交換される。緩衝液交換プロセスは、亜鉛および有機化合物の濃度を減少する。これに続いて、大量のインターフェロンは、処方工程の前に、-70℃で保存され得る。
D.インターフェロンの処方
上記の例示的な精製方法において、そして第1の緩衝液交換プロセスの後に、中性緩衝化溶液が安定化剤(以下により詳細に記載される)を含むpH4〜7.2の間の緩衝液溶液と置換されることを除いて、第2の緩衝液交換プロセスが開始される。インターフェロンを含む得られる処方物は、「プロセス中間体」といわれ、そして保存のために凍結され得る。実施例7もまた参照のこと。
【0042】
凍結状態において(アルゴンまたは窒素のような不活性ガスの雰囲気下で)保存される場合、次いで、解凍され得、そして0.22ミクロンフィルターを通して風袋容器(好ましくはステンレス鋼)に汲み入れられ得る。ここでプロセス中間体は、所望の最終産物重量が達成されるまで、予め濾過滅菌された希釈剤と組み合わされる。希釈剤は、第2の緩衝液交換プロセスにおいて使用されたのと同じ緩衝液からなる。次いで、液体最終産物は、無菌手順下で、例えば、2つの0.22ミクロンフィルターを連続して用いて濾過滅菌され、そして、不活性ガス注入口、脱気バルブ/フィルターの組合せ、および流入/流出ディップ管(diptube)を含む密封された容器(好ましくは、ステンレススチール)に分配される。最終産物は、ディップ管を通して、そして密封された容器に汲み出される。窒素のような不活性ガスを用いて、最終産物は、滅菌シリンジを無菌的に充填し得るデバイスのポンプヘッドに圧縮移入される。
【0043】
滅菌シリンジを無菌的に充填するいくつかの方法が利用可能であり、そして使用される特定の方法は、本発明の範囲を制限することは意図されない。例示的な方法は、HYPAK(登録商標)オートクレーブ可能シリンジフィルター(BectonDickinsonPharmaceutical Systems, Franklin Lakes, NJ)の使用を含む。シリンジは、適切な位置の先端キャップ(tipcap)とともにオートクレーブされる。一般には、この型のデバイスは、インターフェロン処方物で充填されるシリンジを含む真空チャンバーを組み込む。チャンバーは、無菌環境におかれる。各シリンジは、プランジャーピン(plungerpin)(シリンジバレル(barrel)の開放端に合うように適合された)に合わされたその開放端を備えたチャンバに垂直にある。ピンは、ストッパーをバレルに挿入して、その中に液体を捕捉するように設計される。小さな頭部空間(headspace)は、挿入後にシリンジに入れたままである。チャンバーは、不活性な無酸素ガス(例えば、アルゴン、窒素)で、数回減圧化およびバックフラッシュ(back-flush)され、そして最終的な減圧が達成される場合、ピンは、開放シリンジバレルに短い距離で機械的に駆動され、そしてストッパーは、自動的に、それぞれのシリンジに挿入される。次いで、チャンバーは、濾過した空気を排出されて、チャンバ内の圧力を大気レベルに戻す。減圧の量は、不活性ガス含有頭部空間のサイズを決定する。
【0044】
本発明者らが使用する特定の系において、シリンジは、垂直に方向付けされ、そして回転ディスク上のスプロケット(sprocket)によって適切な位置に保持される。シリンジは、最初に、シリンジに挿入される針の下に配置される。針は、シリンジ内部を不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン)でフラッシュする。次いで、針は、シリンジの外に出される。次いで、シリンジは、シリンジに挿入される第2針の下に配置される。この針は、産物をシリンジに分配するポンプに接続される。次いで、第2針は、シリンジの外に出される。次いで、シリンジは、シリンジに挿入される第3針の下に配置される。プランジャー(予めオートクレーブした)は、不活性な無酸素ガス(例えば、窒素、アルゴン)をシリンジに吹き込まれ、次いで、針は、シリンジの外に出される。プランジャーは、液体の表面とプランジャーの底部との間に不活性ガスの頭部空間を残すように配置される。
【0045】
1.賦形剤:
賦形剤は、好ましくは、所定の重量モル浸透圧濃度についてのイオン強度を最大化するポリイオン性種(例えば、ヘパリンまたは他のポリマー種を含み得る高分子電解質)である。実施例4で議論されるように、インターフェロンβは、高いイオン強度によって安定化されるが、全イオン強度は、溶液が血液に等張である必要性によって制限される。それゆえ、所定の重量モル浸透圧濃度についてのイオン強度を最大化する好ましい方法は、ポリイオン性種を使用することである。本発明のインターフェロンβ溶液は、血液と等張である(約290ミリオスモル/キログラム)。
【0046】
本発明のための最も好ましい安定化剤は、以下のうちの1つを含み得るアミノ酸である:任意の酸性アミノ酸(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸)またはアルギニンおよびグリシンから選択されるアミノ酸。最も好ましくは、アミノ酸安定化剤は、pH5.0溶液においてその酸性形態(アルギニン-HCl)として取り込まれるアルギニンである。好ましい酸性アミノ酸は、L-グルタミン酸である。いずれの理論にも束縛されることを望まずに、ポリイオン性賦形剤が好ましいという事実は、おそらく、アルギニンおよびリジン(3つの帯電した基)が、グリシン(2つの帯電した基)よりもインターフェロンを安定化するためであり、これは同様に、試験された帯電していない種のいずれよりも安定化する。
【0047】
賦形剤がアルギニン-HClである場合、その濃度は、0.5%(w/v)〜5%の範囲であり、そして最も好ましくは3.13%(150mMアルギニン-HClに等しい)である。賦形剤がグリシンである場合、その濃度は0.50%(w/v)〜2.0%の範囲であり、そして最も好ましくは0.52%(66.7mM〜266.4mM、および最も好ましくは70mMに等しい)である。賦形剤がグルタミン酸である場合、その濃度は100mM〜200mMの範囲であり、そして最も好ましくは170mM(1.47%〜2.94%の範囲、そして最も好ましくは2.5%のw/vパーセントに等しい)である。
【0048】
本発明者らは、異なる賦形剤を、インターフェロンβの液体処方物のための安定化剤として、100mM塩化ナトリウムと組み合わせた50mM酢酸ナトリウムおよび氷酢酸のpH緩衝液系(pH5.0)を用いて分析した。液体インターフェロンサンプルは、37℃にて約1〜3週間のインキュベーションによって温度的なストレスを受けるか、または機械的ストレスとして1〜3日間、回転器におかれる。処理したサンプルは、インターフェロンβの安定性について、実施例1に記載の方法によって評価される。実施例7により詳細に記載されるように、アミノ酸賦形剤を含む(および必要に応じて塩化ナトリウムを含む)酢酸ナトリウムでpH5.0に緩衝化された処方物は、最高の安定性を示す。
【0049】
2.インターフェロン
好ましいインターフェロンは、最も好ましくは哺乳動物細胞から産生される組換えヒトインターフェロンβのような線維芽細胞インターフェロンβである。組換えヒトインターフェロンβは、遊離スルフヒドリルおよび少なくとも1つのジスルフィド結合を含み得る。特に好ましい分子は、1分子あたり、17位で1つの遊離スルフヒドリル、および31と141位との間で1つのジスルフィド結合を含む。天然のヒトIFNβで真実であることが知られているように、N-グリコシル化は、Asn-80で期待される。本発明の液体処方物の濃度の範囲は、約30μg/ml〜約250μg/mlである。好ましい濃度範囲は、48〜78μg/mlであり、そして最も好ましい濃度は、約60μg/mlである。国際標準値の点から、Biogen国際標準は、インターフェロンについてのWHO国際標準に規格化されており(Natural#Gb-23-902-531)、その結果IUにおける濃度の範囲(0.5ml注射容量について)は、約6IMU〜50IMUであり、そして最も好ましい濃度は、12IMUである。
【0050】
3.緩衝液:
本発明において使用される、約4.0〜7.2および好ましくは約4.5〜約5.5の範囲、および最も好ましくは5.0のpHを維持するための有機酸およびリン酸緩衝液は、以下のような有機酸およびその塩の従来の緩衝液であり得る:クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸一ナトリウム-クエン酸二ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸三ナトリウム混合物、クエン酸-クエン酸一ナトリウム混合物など)、コハク酸緩衝液(例えば、コハク酸-コハク酸一ナトリウム混合物、コハク酸-水酸化ナトリウム混合物、コハク酸-コハク酸二ナトリウム混合物など)、酒石酸緩衝液(例えば、酒石酸-酒石酸ナトリウム混合物、酒石酸-酒石酸カリウム混合物、酒石酸-水酸化ナトリウム混合物など)、フマル酸緩衝液(例えば、フマル酸-フマル酸一ナトリウム混合物、フマル酸-フマル酸二ナトリウム混合物、フマル酸一ナトリウム-フマル酸二ナトリウム混合物など)、グルコン酸緩衝液(例えば、グルコン酸-グルコン酸ナトリウム混合物、グルコン酸-水酸化ナトリウム混合物、グルコン酸-グルコン酸カリウム混合物など)、シュウ酸緩衝液(例えば、シュウ酸-シュウ酸ナトリウム混合物、シュウ酸-水酸化ナトリウム混合物、シュウ酸-シュウ酸カリウム混合物など)、乳酸緩衝液(例えば、乳酸-乳酸ナトリウム混合物、乳酸-水酸化ナトリウム混合物、乳酸-乳酸カリウム混合物など)、リン酸緩衝液(一塩基性リン酸ナトリウム/二塩基性リン酸ナトリウム)、および酢酸緩衝液(例えば、酢酸-酢酸ナトリウム混合物、酢酸-水酸化ナトリウム混合物など)。
【0051】
以下に記載の実施例において、本発明者らは、最も適切な緩衝液の評価のために、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムの異なる緩衝液濃度および異なるpHを使用する。インターフェロンβサンプルは、分解プロセスを加速するために、37℃にて6日間〜2週間おかれるか、または7〜9時間回転器におかれるかのいずれかである。次いで、サンプルの化学的特性が決定される。サンプルは、光学密度、ペプチドマッピング、サイズ排除HPLC、還元および非還元SDS-PAGE/ウェスタンブロット、ならびに等電点電気泳動/ウエスタンブロット(IEF)(実施例1において以下に全て記載される)によって分析される。全ての実験的なインターフェロンβサンプルは、開始インターフェロンβ材料、または2〜8℃におかれたインターフェロンβサンプルと比較される。本発明者らのデータは、pHが、本発明者らのインターフェロンβサンプルの安定性を決定する主要な因子であること、およびpH4.0〜5.0のサンプルが、pH7.0以上のものより安定であることを示す。実施例2を参照のこと。にもかかわらず、本発明者らは、生理的pH(pH7.2)でのいくつかのインターフェロンβ処方物を開発し得た。実施例6を参照のこと。
【0052】
4.空洞化
インターフェロンβ中のほとんどの遊離スルフヒドリル残基は、高いpH(8.0<pH)(これは、ジスルフィド結合が再配置を行うpHである)で酸化を受ける。本発明者らは、サイズ排除クロマトグラフィー、非還元型SDS-PAGEおよびレーザー光散乱により本発明者らのバルク中間体におけるインターフェロンβの若干の凝集を検出した。本発明者らは、凝集したインターフェロンβの形成が、溶解酸素のレベルに依存し得ることを引き続き発見した。液体インターフェロンβ処方物が空洞化されないことを確実にするために本発明者らが開発したプロセス基準には、以下が含まれる:(a)可能な場合、調製および保存の間、酸素を含むガス/液体境界面が存在しないこと;および/または(b)調製および保容器の間、泡が生じない;および/または(c)処方物中の溶解酸素のレベルが、調製温度および保存温度で大気平衡(atmosphericequilibrium)の10%未満に維持されること。実施例3を参照のこと。
【0053】
5.表面へのインターフェロンの吸着
本発明者らはまた、インターフェロンがある表面へ吸着し、そしてそのガラス容器中でのその保存は、インターフェロンと接触する容器の少なくとも1表面はコーティングされるか、またはさもなければ、吸着を抑制するかまたは実質的に排除する物質で被覆することを必要とすることを決定した。この表面は、吸着について、化学的または物理的に不活性であり得る。この目的のための例示的物質は、当業者に公知であり、そして例えば、噴霧されたまたは焼かれたシリコーン、ポリプロピレン、またはポリテトラフルオロエチレン(PIFE)を含み得る。本発明者らは、好ましい60μg/mlの液体処方物(BG9589-1,2,3および4:以下の表1に要約される)を取り、そしてスプレーされたシリコーン(BecktonDickinson)でコーティングされた1ml長のI型ガラスシリンジおよび0.75mlのI型ガラスバイアルへそれらを満たした。次いで、これらのサンプルを、タンパク質濃度決定のために逆相HPLC(rpHPLC)により分析した。このデータは、シリコーンコーティングされた前充填されたシリンジと比較して、ガラスバイアル中に満たされたこれらのサンプル中の溶液中のタンパク質が少量であることを示す。実施例5を参照のこと。
【0054】
6.好ましい処方物
本発明者らは、最終濃度が以下の表1に示される、それぞれ60μg/mlのインターフェロンβを含む4種類の液体処方物を使用して、タンパク質安定性の速度論的分析を実施した。代替処方物(そのいくつかは、PluronicF68(mfg.by BASF)のような界面活性剤を含む
)が、表2に提供される。
【0055】
表1:好ましい処方物
pHシステム | 保存剤 |最終pH
20mM酢酸塩 | 150mM アルギニン-HCl |5.0 (「BG9589-1」)
20mM酢酸塩 | 70mM グリシン |
| 100mM 塩化ナトリウム |5.0 (「BG9589-2」)
20mMリン酸塩 | 140mM アルギニン-HCl |7.2 (「BG9589-3」)
20mMリン酸塩 | 70mM グリシン |
| 100mM 塩化ナトリウム |7.2 (「BG9589-4」)

全処方成分はUSP-グレード物質である。詳細な組成は以下のようである:
BG9589-1
成分(原材料として) 量
アルギニン−HCl, USP 15.8mg
氷酢酸,USP 0.167mg
酢酸塩三水和物,USP 0.972mg
インターフェロンβ 30μgm
注射水,USP 0.5ml
BG9589-2
成分(原材料として) 量
グリシン,USP 2.628mg
氷酢酸,USP 0.185mg
酢酸塩三水和物,USP 0.932mg
インターフェロンβ-1a 30μgm
注射水,USP 0.5ml
塩化ナトリウム 2.922mg
BG9589-3
成分(原材料として) 量
アルギニン−HCl,USP 14.725mg
リン酸ナトリウム二塩基性-7H20 2.332mg
リン酸ナトリウム一塩基性-1H20 0.359
インターフェロンβ-1a 30μg
注射水,USP 0.5ml
BG9589-4
成分(原材料として) 量
リン酸ナトリウム二塩基性-7H20 1.984mg
リン酸ナトリウム一塩基性-1H20 0.359mg
インターフェロンβ-1a 30μg
グリシン 2.628mg
塩化ナトリウム 2.922mg
注射水,USP 0.5ml
表2:代替処方物
【0056】
【表2】

【0057】
他の物質は本発明の処方物中へ組み込まれ得る。これらは以下の保存剤を含み得、それら全ての好ましいパーセンテージは、w/vで:フェノール(約0.2%)、メチルパラベン(0.08%);プロピルパラベン(0.008%);m-クレゾール(0.1%);クロロブタノール(0.25%);ベンジルアルコール(0.1%);およびチメロサール(0.1%)である。タンパク質凝集および脱アミド化(データは提供されない)を決定するための分析に基づいて、最も好ましい保存剤はクロロブタノールおよびベンジルアルコールである。
【0058】
7.非経口投与のためのキット
本発明の好ましい実施態様は、本発明の液体処方物の非経口投与のための包装キットを含む。このパッケージは、本発明の液体処方物で予備充填したシリンジ、いくつかのアルコールスワッブ、少なくとも1本の針、1つ以上の接着性包帯および使用についての指示書を含み得る。本発明の液体処方物は従来的な針なし(needless)注射システムで使用され得ることがまた理解される。
【0059】
E.インターフェロンの使用
本発明のインターフェロン処方物は抗ウイルス活性を有する。実施例7を参照のこと。臨床的使用のためには、任意の特定の場合に投与されるインターフェロン量、およびインターフェロンが投与される頻度は、使用されるインターフェロンの型、処置すべき病気、およびインターフェロン処置に対する患者の応答のようなファクターに依存する。
【0060】
本発明の液体処方物の好ましい使用は、再発性多発性硬化症の処置についてである。天然のインターフェロンβおよび組換えインターフェロンβの凍結乾燥された(すなわち、再構築された)液体処方物は、再発性多発性硬化症により苦しむ患者に投与されてきた。Jacobsら、Annalsof Neurology 39: 285-294 (March 1996)、および本明細書中に援用される文献、ならびにJacobsおよびMunschauer、「Treatmentofmultiple sclerosis with interferons」(223-250頁) Treatment of multiplesclerosis:trial design, results and future perspectives (R.A. Rudnickら、編),London:Springer, 1992を参照のこと。本明細書中に記載される液体処方物の多発性硬化症を処置するための使用は、同じプロトコルに従い、Jacobsら(前出)に記載されるように可変の同じ一次の結果を測定する。
【0061】
本発明の液体処方物の有用性を評価するための1つの方法は、毒性学を実施することであり、そしてこの液体処方物の投与と関連する組織刺激作用を評価することである。本発明らは、ウサギ中の本発明の液体処方物の毒性学研究を実施した。実施例8を参照のこと。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は本発明の実施態様を例示するために提供されるが、本発明の範囲を限定するものとして見なされるべきではない。
【0063】
実施例1 アッセイ方法
いくつかの十分に特徴づけられた方法は、本発明者らの液体処方物中のインターフェロンβの物理化学的特性を決定するために用いられ、そしてこれらの方法は、同様に、他のインターフェロンの特性をモニターするために使用され得る。
【0064】
不溶性凝集体の存在/非存在を、320nmで吸収を、および580nmで透過度を測定することによってモニターする。可溶性タンパク質の濃度を、標準である処方緩衝液中にスパイクされたインターフェロンβの公知の濃度を使用して、278-280nm(1.5の吸光係数を使用して)の吸光度の測定かまたは逆相高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)によるかのいずれかによって決定する。液体処方物サンプルを、アッセイする前に遠心分離する。この可溶性凝集体のパーセンテージを、TSK-Gel(登録商標)G2000SWXLカラム(TosoHaas, Montgomeryville, PA)においてサイズ排除クロマトグラフィーによりインターフェロンβモノ
マーから凝集体を分離することにより決定する。280nmでモニターされたピーク面積を、パーセンテージ可溶性凝集体を計算するために使用する。
【0065】
ペプチド骨格の安定性を、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により確認する。インターフェロンβを、10〜20%勾配ゲル(MiniPlusSepragel(登録商標),Integrated Separation Systems, Natick, MA)において電気泳動に供する前に、ドデシル硫酸ナトリウムの存在下で、メルカプトエタノールを使用して還元する。次いで、このタンパク質をニトロセルロース膜へ電気泳動的に移動し、そして西洋ワサビと結合体化した抗インターフェロンβ抗体およびヤギ抗マウス抗体を使用して免疫検出法により展開する。例えば、GelElectrophoresisof Proteins, A Practical Approach、第2編、B.D. Hames and D.Rickwood, IRL Pressを参照のこと。
【0066】
脱アミド化および他の化学変化により生じる正味の表面電荷の変化は、ポリアクリルアミドゲル(IEF3-10 MiniPlus Sepragel(登録商標),Integrated Separation Systems)上で等電点電気泳動によりモニターする。GelElectrophoresis ofProteins, A Practical Approach(前出)を参照のこと。
【0067】
メチオニン酸化、アスパラギン脱アミド化、および他の可能性のある化学変化をまた、ペプチドマッピングによりモニターする。インターフェロンβを、ジチオスレイトールの存在下でエンドプロテアーゼLys-C(Wako Pure Chemicals)を使用して消化し、生じるペプチドフラグメントを逆相HPLCにより分離する。一般には、Kalgahtgi,K.およびHorvath,
C.「高性能液体クロマトグラフィーによる迅速ペプチドマッピング」、J. Chromatography 443,343〜354 (1988)を参照のこと。
【0068】
N-連結オリゴ糖のプロフィールを、Glyko, Inc.(Novato, CA)による発蛍光団補助炭水化物電気泳動(FluorecenceAssistedCarbohydrate Electrophoresis)(FACE(登録商標))システム使用して決定する。アスパラギン連結(N-連結)オリゴ糖を、酵素ペプチドN-グリコシダーゼFを使用して、糖タンパク質から放出し、次いで、還元性アミノ化により還元末端で蛍光団で標識し、分離し、次いでポリアクリルアミンドゲル上で定量する。
【0069】
インターフェロンの抗ウイルス活性を、W.E.Stewart II, TheInterferon System, Springer-Verlag(第2編、1981)により十分に記載されるような多数の方法により決定する。細胞変性効果抑制アッセイ(CPE)は、インターフェロン抗ウイルス活性を決定するために特に有用である。本発明者らの特に好ましい方法は、WHOTechnicalReport Series No. 725, Annex 1, (1985)(本明細書中に参考として援用される)に記載される。手短にいうと、このCPE法は、以前にWHO参照標準に対して較正されたインターフェロンβ標準の作業ストック(workingstock)を調製することにより開始される。このストックを、10%仔ウシ血清および1mlあたり10,000ユニット(U)の濃度で4mMのL-グルタミンを含むD-MEM+培地中で調製する。アッセイの日に、標準、コントロールおよびサンプルを、3種類の異なる一連の希釈:a)32U/mlで開始し、その後2倍に希釈;b)12U/mlで開始し、その後1.5倍に希釈;およびc)6U/mlで開始し、その後1.2倍に希釈;において、DMEM+に希釈する。希釈物の50μlを96ウェルマイクロタイタープレートのウェルに対して、希釈列あたり1プレートで、縦列に添加する。次いで、D-MEM+中のA549細胞(ATCCカタログ番号CCL-185,Rockville, MD)細胞を、ウェルあたり50μlで、5×105細胞/mlにて各ウェルに添加し、細胞とインターフェロンβの両方の2倍希釈を達成する。この細胞およびインターフェロンを、15〜20時間の間、5%の二酸化炭素中で、37℃で培養する。このプレート内容物を脱色用バケツ中に振盪してそして培地中の適切な希釈で100μlのEMC(脳心筋炎)ウイルスを各ウェルに添加する。このウイルスと細胞を、30時間、5%の二酸化炭素中で、37℃で培養する。このプレート内容物を脱色用バケツ中で振盪して、そして0.75%の結晶紫色素をこのプレートへ添加する。5から10分後、このプレートを滅菌水で洗浄して、そして乾燥させる。各アッセイプレートは、インターフェロンもEMCもいずれも含まない細胞増殖コントロールウェル、EMCおよび細胞は含むがインターフェロンを含まないウイルスコントロールウェル、ならびにインターフェロン標準の希釈列を含有する。プレートを、生存可能な細胞(25%を超えるコンフルエント紫染色)を有する各カラム中の最後のウェルを決定するために視覚的に試験する。この検出限界は、ウイルス細胞傷害性から防御する標準の最も低濃度として決定する。最後の陽性ウェル中のサンプル希釈を、サンプル中のインターフェロン活動度(MU/ml)を得るために標準について決定される検出限界、およびサンプル希釈因子により乗算する。各プレートからの結果は、幾何学的な手段の決定および95%の信頼区間の計算の決定のためにログ単位へ変えられる。
【0070】
実施例2:緩衝液系の選択
本発明者らは、各セットにつき9および10個の間の異なる成分を含む3セットの緩衝液を調製した。セットIは、pH4.0〜7.2の間で一連のリン酸ナトリウム溶液、および/または100mM塩化ナトリウム溶液を含む。セットIIは、pH4.0〜7.0の間でさらに一連のクエン酸ナトリウム緩衝液を含む。セットIIIは、一連のコハク酸ナトリウム、酢酸ナトリウムおよび炭酸ナトリウム緩衝液溶液を含み、全てを100mM塩化ナトリウムと合わせ、これは4.0〜7.2の範囲のpH値を有する。2つの他の溶液は、pH4.0〜7.2で塩化ナトリウムを50mM
硫酸ナトリウムで置き換えた。
【0071】
融解した、バルクインターフェロンβを異なる緩衝液中で、2〜8℃で少なくとも2回緩衝液を交換して一晩透析し、次いで、使用前に濾過滅菌する。タンパク質濃度は、278nmでの吸光度によって決定する(1.5mg−1ml.cm−1の吸光係数を用いて)。そして全てのサンプルは140μg/mlまたは150μg/mlのインターフェロンβ含んだ。サンプルを濾過し、そして部分的に2.2mlのエッペンドルフチューブに詰めて4つのセットに分割する。1セットは2〜8℃に静置する;1つのセットは37℃に6日から2週間静置した;別のセットは7〜9時間ローテータ上に配置する;そして最後のセットは0時間目のコントロールとして用いる。不溶性凝集体に起因するタンパク質の損失の割合は、種々の処置の間のタンパク質濃度の損失を開始時の濃度で除することによって算出する。
【0072】
結果:
不溶性凝集体によるタンパク質損失の割合はタンパク質濃度の損失を出発タンパク質濃度で除することによって算出する。全てのデータの統計的分析は、pH4.0および5.0の緩衝液中のインターフェロンサンプルが、より高いpHのサンプルより、凝集に起因するより低い割合のタンパク質の損失を有することを示した。37℃で、かつpH4.0および5.0でインキュベートしたインターフェロンサンプルは、凝集に起因して約10%〜15%の間で損失していた。6.0よりも大きなpH値で、損失は40〜50%まで増加した。本発明者らはまた、6.0よりも大きなpH値で、インターフェロンサンプルがより可溶性の凝集体を有することを決定した。さらに、本発明者らはペプチドマッピングによってpHが4.0から7.2に増加するにつれて、脱アミド化されたインターフェロン量が、実質的に直線状に増加することを決定した;pH7.0以上で、85%より多くのインターフェロンが研究中に脱アミド化される。本発明者らは、サンプル中のタンパク質種の等電点(pI)(すなわち、タンパク質が電場中で移動せず、そしてタンパク質の平均荷電が0であるpH)を、IEF/ウエスタンブロットで測定した。そしてブロットは、クエン酸ナトリウム中でのサンプルについてさらなるpIバンド、およびコハク酸ナトリウム中のサンプルについてバンド強度の移動を示す。リン酸塩はpH5.0では緩衝能を有さない。pH5.0での塩化ナトリウムを有する酢酸ナトリウムはバンドのパターンまたは強度に変化を示さなかった。
【0073】
実施例3:空洞化の効果
実施例2に記載されるpHスクリーニング実験の間、本発明者らは保存チューブの頭部空間がサンプルのいくらかのタンパク質の損失に重要であるようなことに気付いた。2.2ml容積チューブ中の1.5mlのサンプルには、タンパク質の損失は観察されなかった。反対に、1.2mlのサンプルでは凝集体の有意な増加が生じた。これは、精製プロセスのウイルス不活化工程の間の凝集したインターフェロンβの形成が、この工程の間の溶存酸素のレベルに依存する、という本発明者らの観察と一致している。
【0074】
簡単には、ウイルス不活化工程は、キレート化Sepharose溶出液(C章を参照のこと)のpHを7.85+/-0.25から、15%リン酸を用いて2.5〜3.5の間に調整する工程、酸性化した溶出液を120〜135分間保持する工程、そして次に0.5Nの水酸化ナトリウムを用いてpHを6.7+/-0.7に再び調整する工程を包含する。全ての工程を2〜8℃で行う。本発明者らは、この工程中のインターフェロンβ凝集体の形成と溶存酸素の量との間に関連性が存在するかどうかを決定するための研究を設計した。
【0075】
材料および方法
キレート化Sepharoseカラムからの溶出液を50mlまたは100mlのアリコートに分割し、100mlの撹拌フラスコ中に入れる。各フラスコに、1mlのアルゴン散布(argon-sparged)15%リン酸を添加する。次いでフラスコを約2分間、穏やかに撹拌し、そして撹拌せずに約2時間の間2〜8℃で維持する。この維持時間の後、6.5mlのアルゴン散布水酸化ナトリウムを添加し、そして種々の時点でサンプルをサイズ排除クロマトグラフィーによってアッセイする。液体中の溶存酸素を酸素プローブ(Orion、Model860)で連続的に測定し、そして塩基を添加した時点で記録した。10%以下の溶存酸素のレベルを有するサンプルについて、反応容器の頭部空間からアルゴンガスを一掃する。
【0076】
結果:水酸化ナトリウムを添加した時点で存在する溶存酸素の量とウイルス不活化工程を介したインターフェロンβモノマーの収量との間の明らかな関連性を示すデータを、図1に提示する。10%以下での溶存酸素濃度で得られた収量値は、他の酸素濃度での他の全ての収量とは有意に異なる。本発明者らはまた、凝集体(データはここに示さない)を特徴付け、そしてその比活性はバルク中間体から約30〜40倍が減少することを決定した。本発明者らはまた、約90%の凝集体が非還元条件下でSDS変性に耐性であることを決定し、これは共有架橋結合を示唆する。還元条件下(2%βメルカプトメタノール)で、凝集体はモノマーに崩壊し、これはジスルフィルド結合を含む架橋結合を示唆する。
【0077】
実施例4:賦形剤の選択
異なる賦形剤を含む一連のインターフェロンβ(60μg/ml)処方物を、50mM 酢酸ナトリウムおよび100mM塩化ナトリウムを含む、好ましいpH5.0の緩衝液中で調製する。賦形剤は、グリシン、アルギニン-HCl、リジン-HCl、スクロース、グリセリン、PEG3350、グルタチオンおよびPluronicF-68を含む。インターフェロンβバルク中間体を、50mM酢酸ナトリウムおよび100mM塩化ナトリウム、pH5.0の中で2〜8℃で少なくとも2回緩衝液を交換して一晩透析し、次いで使用前に濾過する。インターフェロンβ濃度は、バックグラウンドを引いた278nmでの吸光度によって決定する。全てのサンプルを、約60μg/mlのインターフェロン最終濃度まで希釈する。全ての調製したサンプルを濾過し、2mlを4mlガラスバイアル(シリコーン製ではないもの)に移し、頭部空間にアルゴンを散布し、そしてこのバイアルを封着する。サンプルのセットを2〜8℃および37℃に2週間までの期間設置する。他のサンプルは室温で3日間回転させることによって、機械的に応力をかける。
【0078】
サンプルは実施例1の手順に従って分析する。さらに、処方物の溶存酸素の割合をCiba-CorningModel 248血液ガス分析機によって測定する。「実験」値は、サンプルの酸素分圧(mmHg)−窒素をパージした緩衝液ブランクの分圧、そして「コントロール」値は、室温に保存した緩衝液ブランク中の酸素分圧−窒素をパージした緩衝液ブランクの酸素分圧である。溶存酸素の割合(「実験」/「コントロール」)は常に30%未満である。
【0079】
結果:
37℃で2週間インキュベートしたサンプルのIEF/ウエスタンブロットおよびSDS-PAGE/ウエスタンブロットは、バンド移動および強度の減少ならびにPEG3350およびグルタチオンを含むサンプル中のインターフェロンマルチマーの存在を示す。さらに1週間37℃の後、グリシン賦形剤は、本発明者らのブロットに、1本余分なバンドを示す。スクロース賦形剤はバンド強度の損失を示す。この初期スクリーニング手順は、さらなる研究のために、アルギニン-HCl、グリシン、塩化ナトリウムおよびマンニトールをより詳細に考察することを可能にした。
【0080】
実施例5:インターフェロンの吸着
溶解したバルクインターフェロンβを2〜8℃で一晩少なくとも2回緩衝液を交換して、BG9589-1、2、3および4で透析(表1を参照のこと)し、次いで使用前に濾過する。タンパク質濃度を280nmでの吸光度(1.5mg−1ml.cm−1吸光係数)によって決定する。全てのサンプルを、約60μg/mlの最終濃度まで希釈する。希釈したサンプルを濾過し、そして頭部空間に窒素を流入させた3連の1.0ml長のシリコーンを吹き付けたBDシリンジ(I型ガラス)に0.5ml、または頭部空間にアルゴンを流入させた3連の0.75mlI型ガラスバイアルに0.75mlのいずれかに満たす。タンパク質濃度を逆相HPLC(実施例1)によって決定する。
【0081】
結果:
以下の表3は逆相HPLCによって決定したタンパク質濃度を列挙する。データは、ガラスバイアルに満たされたサンプルについてのタンパク質が、シリコーンでコートした予め詰めたシリンジに比較して、より少ないことを示す。従って、シリコーン化したシリンジがインターフェロンβの液体処方物のために用いられる。
【0082】
【表3】

【0083】

【0084】
実施例6.生理学的pHでの処方物
イオン強度/リン酸塩。本発明者らは、緩衝液成分濃度を変化させるための、リン酸塩/塩化ナトリウム(pH7.2)緩衝液系中で最初の実験を行った。ここでリン酸濃度は10、50、および75mMの間で変化し、塩化ナトリウムの添加によって調節された0.2、0.4、および0.6のイオン強度を有する(イオン強度はI=Σcによって定義され、ここでcおよびzはそれぞれイオン種Iのモル濃度および原子価電荷である)。
【0085】
本発明者らは、リン酸濃度(10、50、および75mM)およびイオン強度(I=0.2、0.4、および0.6)の変因に対して完全要因設計を用いた。緩衝液中の一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウムおよび塩化ナトリウム(所望のイオン強度を達成するため)の組成は、EllisおよびMorrison「BuffersofConstant Ionic Strength for Studying pH-dependent Processes」、MethodsEnzymol.87:405-426(1982)から適合させた表計算を用いて算出する。等式は、特定のpH、リン酸濃度およびイオン強度のための各緩衝液成分の必要量の決定を可能にした。要因実験に用いた9個の溶液の各々を、PharmaciaPD-10脱塩カラムを通したインターフェロンβバルク中間体の緩衝液交換によって得る。全ての得られた溶液のpHは7.20+/-0.15である。濃度は280nmでの吸光度によってアッセイし、次いで適切な緩衝液を用いて150μg/mlインターフェロンβに希釈する。得られた溶液をアルゴン下で0.22ミクロンフィルターで滅菌濾過し、そして1.3mlを、アルゴン頭部空間を有する5mlガラスバイアルにアリコートする。サンプルを37℃で6日間インキュベートし、3連で行う。サンプルは、580nmでの透過率割合、タンパク質回収の割合、そしてIEF-PAGE/ウエスタンブロットによって分析する。
【0086】
結果:
イオン強度の変化に関する透過率割合の分析は、イオン強度が増加するに伴い透過率が増加(すなわち、不溶性タンパク質凝集体の量が減少)する傾向を示す。タンパク質回収割合のデータは類似の傾向を示すけれども、一方IEF-PAGEウエスタンブロットは、全てのサンプルが等しく脱アミド化されるようなイオン強度の変化に伴う脱アミド化の傾向を示さない。従って、37℃での6日間の保存後、サンプルは、リン酸濃度の減少およびイオン強度の増加に伴い、より少ない凝集を示す傾向があった。リン酸濃度の変化の関数としての、透過率割合および回収パーセントにおける実験の結果(ここには示さない)は、リン酸濃度の増加に伴って透過率%を減少させる弱い傾向を示すが、分散分析は、異なるリン酸濃度のサンプル間の平均値において有意差を示さない。回収割合のデータは、より低いリン酸濃度での改良されたタンパク質回収を示す(94%の信頼水準での有意差あり)。IEF-PAGEウエスタンブロットは、リン酸濃度の変化に伴う脱アミド化の識別可能な傾向を示さない。
賦形剤/塩の比。予備研究(示さず)は、いくつかの賦形剤が、高いイオン強度を維持するため、およびpH7.2で安定化効果を示すために塩(例えば塩化ナトリウム)を要求し得ることを示した。本発明者らは、賦形剤(グリシン、リジン、アルギニン、スクロースおよびマンニトール)、および等張性に寄与する塩化ナトリウムの画分(f=0、0.25、0.75および1.0)を用いる要因実験を設計した。画分は以下によって算出した:f=O/(O+O賦形剤)、ここでOおよびO賦形剤は、溶液中の塩化ナトリウムおよび賦形剤それぞれのmOsm/kgでの重量モル浸透圧濃度である。塩の画分は、異なる賦形剤にわたって塩の効果を比較する手段を提供する。全てのサンプルは、賦形剤:塩の比の変化に伴って、等張性のための添加物を含んだ(fによって定義される)。
【0087】
20mMリン酸塩、pH7.2中の各賦形剤の10%(w/v)ストック溶液を調製し、脱気し、そしてアルゴンを散布する。250mM塩化ナトリウム、20mMリン酸塩、pH7.2のストック溶液を調製し、脱気し、そしてアルゴンを散布する。バルクインターフェロンβ中間物を、pH7.2のアルゴン散布20mMリン酸緩衝液に対して徹底的に透析する。得られた溶液を280nmでの吸光度によってインターフェロンβ濃度についてアッセイし、そしてリン酸緩衝液ならびにそれぞれの賦形剤および塩のストック溶液で希釈し、60μg/mlインターフェロンβならびに所望の最終的な塩の状態および最終的な賦形剤の状態を達成する。得られたサンプルを濾過滅菌(0.22ミクロン)し、そして窒素頭部空間を有する1.0mlBectonDickinsonシリコーンスプレー化I型ガラスシリンジ(全容量0.5ml)に満たす。サンプルを40℃で保存する。
【0088】
6日目に、アルギニンサンプル、グリシンサンプル、およびスクロースサンプルを、0.22ミクロンフィルターを通す濾過前後両方で、320nmおよび280nmでの吸光度によって分析する。2週間目にアルギニン、リジン、およびマンニトールを同様に、IEF-PAGE、還元型SDS-PAGEおよび非還元型SDS-PAGEと共に分析する。コントロールサンプルは2〜8℃の間で保存し、そして同様に分析した。
【0089】
結果:
インターフェロンβ1a(コントロールのパーセントとして)の回収率は、スクロースおよびマンニトールに関してのfが増加するにつれて増加し、f=1(130mM塩化ナトリウム)で最大回収率に達する。アルギニンおよびリジンに関しては、fが増加するにつれて回収率は減少する。pH7.2でのグリシン処方物に関する最大回収率は、約f=0.75にて到達する。
【0090】
例えば、等張性になるまで加えた、グリシン、リジン、アルギニン、マンニトールおよびスクロースのような種々の賦形剤を伴うpH 7.2のリン酸緩衝液を用いる、この賦形剤スクリーニング研究により、全ての非荷電性賦形剤に関して乏しい回収率が示された。脱アミド化の程度は、これらの添加剤の影響を受けなかった。例えば、還元型SDS/PAGEおよび非還元型SDS/PAGEは、全ての処方物中の非グリコシル化インターフェロンβ種の損失を示し、そして等張性塩化ナトリウム単独およびマンニトールに関しては、より大きなマルチマーバンドを示す。つまり、従って、賦形剤のイオン特性と、生理学的pHでのこれらの緩衝液系における凝集に対してインターフェロンβを安定化させるその能力との間に高い相関が存在する。スクロースおよびマンニトールのような非イオン性添加剤は、防御を何ら提供しないようであるか、または生理学的pHでのタンパク質損失を実際に促進し得る。塩化ナトリウムは、可溶性種あたり単一の電荷を有し、マンニトールまたはスクロースのいずれよりも良好に機能する。アミノ酸は、生理学的pHで1分子あたり2つの電荷を含む。グリシンの場合では、分子自体の両性イオン性質は、インターフェロンβを安定化させるに充分ではないようである。アルギニンおよびリジンは、各々が1分子あたり3つの荷電を含み、塩化ナトリウム単独の処方物またはグリシン/塩化ナトリウム処方物のいずれよ
りも良好にインターフェロンβを安定化させる。
【0091】
実施例7:安定性および速度論研究
処方物を、不活環境下で無菌で充填し、シリンジを種々の時間にわたってある範囲の温度でインキュベートし、シリンジの内容物を分析した。簡潔には、解凍された大量のインターフェロンβを、BG9589-1、BG9589-2、BG9589-3、およびBG9589-4に対して、少なくとも2回緩衝液を交換して、2〜8℃で一晩透析する。タンパク質濃度を、1.5ml/mg/cmの吸光係数を有する280nmでの吸光度により決定する。全てのサンプルを、最終的なインターフェロンβ-1a濃度が約60μg/mlになるまで希釈する。表1の4つのインターフェロンβ-1a処方物を濾過し、そして0.5mlを、シリンジ内表面が、焼付シリコーンまたは噴霧シリコーンで覆われている、1.0ml長のBectonDickinson(BD)シリンジに分配する。サンプルをOD、サイズ排除HPLC(SEC)、等電点ゲル電気泳動(IEF)/ウェスタンブロット、還元型ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)/ウェスタンブロット、ペプチドマッピング、発蛍光団補助炭水化物電気泳動(FACE)およびCPEバイオアッセイによって分析した。シリンジの頭隙には、窒素ガスが存在する。シリンジを、90日までにわたって、2〜8℃、25℃、33℃、および40℃でインキュベートする。サンプルを、実施例1の方法に従って分析する。
【0092】
結果:
本発明者らは、種々の温度で90日までの期間にわたって、本発明者らのサンプルのタンパク質濃度を分析し、出発物質のタンパク質濃度に対して正規化した。図2は、BG9589-1が、2〜8℃(平均4℃)から25℃までの範囲の温度で3ヶ月インキュベーションした後に、完全なタンパク質安定性(タンパク質の損失なし)を示したことを説明している。体温に近い保存温度(33℃)では、タンパク質の約18%が、分解した。体温を超える保存温度(40℃)では、3ヶ月の終了時にはタンパク質の約30%が分解した。実質的に同一の結果が、BG9589-2についても得られた(データは示さず)。図3は、BG9589-3について2ヶ月保存試験の結果を示す。タンパク質分解は、4℃〜25℃での保存の中では最小であったが、より高温では、タンパク質分解は、急速であった。BG9589-4に関する結果は、図2および図3の結果と実質的に同一である。これらのデータは、還元型SDS-PAGE/ウェスタン
ブロットを用いて確認された。
【0093】
「焼付」シリンジでは、この研究の期間にわたって、検出可能な可溶性凝集物は存在しない。タンパク質濃度、CPEアッセイ、酸化AP6パーセント、および炭水化物プロフィールにおいて、有意な変化は認められなかった。還元型SDS-PAGE/ウェスタンブロットおよびIEF/ウェスタンブロットによって見られたような観察可能な変化はサンプル中で存在しなかった。開始時点と比較すると、脱アミド化パーセントに若干の増加が見られた。しかし、これらのシリンジを充填するために用いられた大量の中間体は、37%脱アミド化され、これは、シリンジへ充填後の物質の33.8%の値より高い。この後者の低い値は、アッセイの変動性に起因し得る。「噴霧」シリンジにおいては、この研究の期間にわたってもまた、検出可能な可溶性凝集物が存在しない。タンパク質濃度、CPEアッセイ、脱アミド化パーセント、酸化AP6パーセント、および炭水化物プロフィールにおいて、有意な変化は認められない。還元型SDS-PAGE/ウェスタンブロットおよびIEF/ウェスタンブロットによって見られたような観察可能な変化はサンプル中で存在しない。要約すると、これまでのところ、最終産物BG9589-1が、「焼付シリコーン」シリンジにおいて、3ヶ月まで2〜8℃で安定であり、そして「噴霧シリコーン」シリンジにおいて、6ヶ月まで2〜8℃で安定であるという結果が示された。
【0094】
本発明者らは、シリンジが無菌的に充填された後に、BG9589-1処方物およびBG9589-2処方物についての抗ウイルスCPEアッセイ(表1を参照のこと)を実施した。報告されたBG9589-1およびBG9589-2の両方の活性値は、12.0MU/mlである。抗ウイルスCPEアッセイを、2〜8℃の間で3ヶ月までにわたってサンプルを保存した後に、繰り返した。BG9589-1に関して報告された活性値は、10.2〜13.3MU/mlの95%の信頼区間で11.6MU/ml(n=8)である。
【0095】
本発明者らはまた、2〜8℃で5ヶ月にわたって、そして-70℃で6ヶ月にわたってBG9589-1の大量の中間体物質の安定性を測定した。予備的なダイアフィルタレーション研究からのBG9589-1のサンプルを、実施例1の方法によって分析した。これまでのところ、BG9589-1の製造過程の物質は、2〜8℃で5ヶ月にわたって、そして70℃で6ヶ月にわたって安定であるという結果が示された。
【0096】
この特定の研究の期間にわたって、検出可能な可溶性凝集物は存在しない。脱アミド化のパーセントおよび炭水化物プロフィールに有意な変化は認められない(脱アミド化パーセントにおける差異は、アッセイの変動性の範囲内である)。還元型SDS-PAGE/ウェスタンブロットおよびIEF/ウェスタンブロットで見られるような検出可能な変化はサンプル中で存在しなかった。タンパク質濃度にわずかな減少が存在する。-70℃でのタンパク質濃度の減少は、1サイクルの凍結/融解を経るサンプルに起因し得る。タンパク質濃度の減少は、依然として最初の濃度の15%内である。
【0097】
実施例8:前臨床研究
ウサギでの筋肉内(IM)の単回用量の局所寛容性研究を実施し、何回か新たな処方物で投与した場合のインターフェロンの局所的毒性を評価する。本発明の液体処方物、または凍結乾燥され再構成されたインターフェロンの投与に起因する注射部位の反応は、通常の生理食塩水の投与後の明らかな反応に匹敵する。
【0098】
1.インターフェロンβの4つの処方物の単回用量のIM投与に続くウサギ刺激/生物利用可能性研究
20匹の雄性ニュージーランドホワイトウサギは、各々、以下の5つの処方物のうち1つについて、インターフェロンβ-1aの30μgの筋肉内(IM)単回注射を受けた:BG9589-1(pH5.0、酢酸緩衝液、アルギニン安定化剤、0.5ml/用量);BG9589-2(pH5.0、酢酸緩衝液、グリシン/NaCl安定化剤、0.5ml/用量);BG9589-3(pH7.2、リン酸緩衝液、アルギニン安定化剤、0.5ml/用量);BG9589-4(pH7.2、リン酸緩衝液、グリシン/NaCl安定化剤、0.5ml/用量);および凍結乾燥された、1.5%HSA、1.0ml/用量を含むpH 7.2でのインターフェロンβ処方物(Jacobsら、前出を参照のこと)。
【0099】
4匹の動物を、各処理に供した。BG9589-1を受けた動物または凍結乾燥した処方物を受けた動物もまた、陰性コントロールとして対側の部位に通常の生理食塩水の等容量注射を受けた。血液サンプルを、血清インターフェロンβ活性分析のために投与後72時間の間に採取する。紅斑、瘢痕形成および浮腫に関する肉眼での真皮評価を、投与後6、12、24、48、および72時間に実施する。投与72時間後の血液採取に次いで、動物を屠殺し、注射部位を組織損傷の徴候に関して肉眼で視診する。次いで、10%中性緩衝ホルマリンで固定する。筋肉サンプル(3/注射部位)を、炎症、壊死、出血、および病変について顕微鏡検査する。
【0100】
結果:
初回刺激指数スコア(EPA真皮分類系)によって類別した場合、上記の液体処方物はいずれも、僅かな皮膚刺激より悪くは決定されなかった。1匹の動物でのBG9589-4注射部位の肉眼視診では、僅かな刺激(出血)が示された;しかし、検鏡においては、出血の徴候は全く見られず、そして肉眼での観察により、人工産物であることが決定された。簡潔には、検鏡により、液体処方物試験物質注射部位の反応は、一貫して最小から中等度であること、および凍結乾燥処方物または通常の生理食塩水の投与により誘導される反応より重篤な反応は全く見られなかったことが示される。
【0101】
加えて、液体処方物のIM投与を繰り返した後のウサギ真皮性刺激を、8日間にわたって1日おきに液体処方物または通常の生理食塩水の筋肉内注射を受けるウサギの複数の群を用いて容易に試験し得る(全部で5回の投与)。用量を、各動物の背部の予め規定された領域に、試験物質への局所的曝露が最大になるように投与する。肉眼的真皮評価を、各処置群について、各投与後4〜6時間および最終投与の24時間後に実施する。一日全体の観察を各真皮評価の時間に行う。投与後24時間の肉眼検査の後、動物を屠殺し、注射部位を組織損傷の徴候について検査する。そして組織を10%中性緩衝ホルマリンで固定する。保存された組織を、炎症、壊死、出血、および病変について検鏡する。血液サンプルもまた、最初の試験物質投与の直前に採取し、屠殺時に血液学的評価および血清化学評価を行った。
【0102】
実施例9:臨床研究
本発明の液体処方物は、これまでのインターフェロン処方物とは有意に異なっている。任意の臨床的指標に関して、ヒトに投与した場合、インターフェロンの薬物動態学的および薬力学的挙動における変化の可能性が存在する。不運なことに、インターフェロン-βの活性は、高度に種特異的であり、最も適切な薬理学的情報は、培養ヒト細胞での研究、ヒトでの研究、そしてより少ない程度のアカゲザルでの研究に由来する。薬理学的変化(もしあるならば)に関する、好ましい試験方法は、ヒトとの生物学的等価性(bioequivalence)の試行を実施することである。
【0103】
血清中のインターフェロン-βの抗ウイルスレベルは、例えば、実施例1に記載のような、細胞変性効果(CPE)バイオアッセイを用いて定量化され得る。ヒトとの生物学的等価性の研究を、任意の数の液体インターフェロン処方物および凍結乾燥インターフェロン処方物を用いて実施し得る。血清、曲線の下の面積(AUC)およびCMAX活性パラメーターの分析を通して、当業者は、凍結乾燥処方物および液体処方物が、生物学的に等価であるか否かを決定し得る。生物学的等価性研究プロトコルの1つの例として、本発明者らは、単回容量交叉二重盲検を簡潔に記載し、健常ボランティアにおける本発明の液体処方物および凍結乾燥インターフェロン-β産物の生物学的等価性を実証する。
【0104】
設計。各被験体は、二重盲検、二期交叉におけるインターフェロン-β処方物の同一の投薬量(例えば、60μg/12MU)を受ける(表4)。被験体の年齢は、18才以上45才以下であり、身長および体格について正常な体重範囲の15%以内である。血液学的、化学的、血清インターフェロン-β活性および薬力学的プロフィールのための血液サンプルを、投与直前、および各投薬後の種々の時間で、投与後144時間を通して採血する。注射疼痛および注射部位反応の評価もまた、行う。
研究の実施。インターフェロンに関連するインフルエンザ症候群に対する予防として、全ての被験体は、投与期の直前および投与期全体を通してアセトアミノフェンを受ける。
【0105】
薬物動態学。
【0106】
血清インターフェロンβ決定。血清レベルを、(CPE)アッセイにより抗ウイルス活性の単位として測定する。血清抗ウイルスレベルをAUC、CmaxおよびTmaxに関して分析する。AUC値を、投与の時点から最後の検出可能なレベルまで(AUC0-T)および投与の時点から投薬後144時間まで(AUC0-144)について算出する。処置データの標準的な記述的分析を、SASを用いて実施する(バージョン6.08、SASInstitute、Cary、NorthCarolina)。
【0107】
【表5】

【0108】
薬力学。生物学的マーカーのネオプトリンは、マクロファージおよびT細胞の活性化(C. Huberら、J Exp Med 1984;160:310〜314;September20,1996; D. Fuchsら、Immunol.Today 9:150〜155,1988)を反映する、インターフェロンにより誘導された酵素GTPシクロヒドロラーゼの産物であり、これが特徴づけられた。組換えヒトインターフェロンβの非臨床的研究および臨床的研究の両方において、ネオプトリンの誘導は、種々の組換えヒトインターフェロンβ処置の投与後に続く、血清活性レベルに相関する。
【0109】
ネオプトリンを、標準的な実験室手順により測定する。インターフェロンβの薬力学的プロフィールを、3つの血清ネオプトリンパラメーターの算出により定量的様式で記載する。第1のパラメーターであるEAUCは、ベースラインレベルに対して正規化されたネオプトリン対時間曲線の下の面積である。第2のパラメーターは、EMAXであり;このパラメーターは、実測されるピークのネオプトリンレベルとベースラインのネオプトリンレベルとの間の差である。第3のパラメーターは、誘導比、IRである;このパラメーターは、ベースラインネオプトリンレベルで除したピークのネオプトリンレベルとして算出される。
【0110】
統計。Wilcoxon-Mann-Whitney両側検定、Wilcoxon-Mann-Whitney片側検定手順を、AUCについて用い、等価性を決定する。凍結乾燥処方物に対する液体処方物からのインターフェロンの相対的生物学的利用性およびその90%信頼限界を評価するために、AUCは、対数に変換した後に、分散分析(ANOVA)を受ける。「被験体間」変動から、順序および性別を分離する。「被験体内」変動から、期間および処置に起因する成分を分離する。
等価物
本発明の他の実施態様および用途は、本明細書中および本明細書中に開示される本発明の実施を考慮することにより、当業者に明らかである。本発明の真の範囲および精神は、以下の請求の範囲により示されており、詳細および実施例は、単なる例示であると考慮されることを意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載される発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−6979(P2012−6979A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−220534(P2011−220534)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【分割の表示】特願平10−529056の分割
【原出願日】平成9年12月23日(1997.12.23)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】