説明

安定な結晶性5−メチルテトラヒドロ葉酸塩

【課題】
本発明は、結晶性N−〔4−〔〔(2−アミノ−1,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−4−オキソ−5−メチル−(6S)−、−(6R)−及び−(6R,S)−プテリジニル)メチル〕アミノ〕ベンゾイル〕−L−グルタミン酸塩(以下5−メチルテトラヒドロ葉酸塩と呼称する。)、その使用並びにその製造方法に関する。
【解決手段】
本発明は5−メチル−(6R,S)−、−(6S)−及び−(6R)−テトラヒドロ葉酸の安定な結晶性塩、この塩の製造方法及びこれらを薬剤を製造するための成分として、この塩を含有する栄養剤補助物質及び調合物としてこれらを使用する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶性N−〔4−〔〔(2−アミノ−1,4,5,6,7,8−ヘキサヒドロ−4−オキソ−5−メチル−(6S)−、−(6R)−及び−(6R,S)−プテリジニル)メチル〕アミノ〕ベンゾイル〕−L−グルタミン酸塩(以下5−メチルテトラヒドロ葉酸塩と呼称する。)、その使用方法並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラヒドロ葉酸塩は主に5−ホルミルテトラヒドロ葉酸及びその塩(ロイコボリン)又は5−メチルテトラヒドロ葉酸及びその塩として巨大赤芽球葉酸−貧血の処置に、解毒薬として葉酸−拮抗剤、特に癌治療に於けるアミノプテリン及びメソトレキサートの相容性の増加に(“抗葉酸塩救剤”)、フッ素化されたピリミジンの治療上の効果の増加に及び自動免疫疾患、たとえば乾癬及びリュウマチ性関節炎の処置に、特定の駆虫剤、たとえばトリメトプリム−スルファメトキサゾールの相容性の増加に並びに化学療法に於けるジデアザテトラヒドロ葉酸塩の毒性の減少に使用される。5−メチルテトラヒドロ葉酸は特に薬剤として及び栄養剤補助物質、たとえばビタミン調合物として、神経管欠損を予防するために、うつ病疾患を処置するために及びホモシステインレベルに影響を与えるために使用される。
【0003】
5−メチルテトラヒドロ葉酸及びその塩は著しく不安定であって、この場合特にその高い酸化敏感性が注目され〔A.L.Fitzhugh, Pteridines 4(4),187−191(1993)参照〕、したがって上記葉酸及びその塩を薬学的有効物質又は栄養剤補助物質として容認できる純度で製造するのは困難である。
【0004】
5−メチルテトラヒドロ葉酸の不安定性を克服するために、種々の方法、たとえば可能な限り完全な酸素の除去又は酸化防止剤、たとえばアスコルビン酸又は還元されたL−グルタチオンの添加が行われる。しかし完全な酸素除去はこの使用において極めて多くの費用を用いてさえもほとんど実現できず、酸化防止剤の添加は同様にいつもできるとは限らない。したがって従来まだ高純度で、十分に安定な5−メチルテトラヒドロ葉酸の製造に適する工業的に実施可能な方法を見い出すことができなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A.L.Fitzhugh, Pteridines 4(4),187−191(1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
今や、驚くべきことに本発明者は、化学的高純度で、かつ十分な安定性を有する5−メチルテトラヒドロ葉酸塩が、対応する塩を、60℃以上での溶液の熱処理後に、極性媒体から結晶化させることによって得られることを見い出した。このようにして得られた結晶性の高い5−メチルテトラヒドロ葉酸塩は、室温で実質上無制限に安定である。これらは薬剤形又は栄養剤補助物質を製造するための成分として又は出発化合物として適当である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって本発明の対象は結晶性5−メチルテトラヒドロ葉酸塩である。結晶化のための5−メチルテトラヒドロ葉酸塩として、アルカリ土類金属塩、特にカルシウム塩を使用
するのが好ましい。大気下で25℃及び相対大気湿度60%で6ケ月保存後、結晶性5−メチルテトラヒドロ葉酸塩は従来決して得られなかった純度>98%(出発値に対して)を従来決して得られなかった安定性>98%(出発値に対して)と共に有する。結晶性5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸−カルシウム塩は4つの異なる結晶変態で存在し(タイプI、タイプII、タイプIII、タイプIV)、かつ粉末X線回折測定で鮮明なバンドを示す(図1〜4及び表1〜4参照)。種々の結晶変態に関して選択された2θ値は、6.5、13.3、16.8及び20.1(タイプI);又は5.3、6.9、18.7及び21.1(タイプII);又は6.8、10.2、15.4及び22.5(タイプIII)又は6.6、15.9、20.2及び22.5(タイプIV)である。結晶性5−メチルテトラヒドロ葉酸カルシウム塩は、5−メチルテトラヒドロ葉酸1当量に対して水少なくとも1当量の結晶水含量を示す。したがって変態−タイプIは一般に≧3当量の水を、変態−タイプIIは一般に≦2当量の水を及び変態−タイプIII及びIVは一般に≦3当量の水を含有する。
【0008】
5−メチル−(6R)−テトラヒドロ葉酸塩及び5−メチル−(6R,S)−テトラヒドロ葉酸塩も同様に高い結晶性形で得ることができる。
【0009】
更に、本発明の対象は5−メチルテトラヒドロ葉酸塩の高い結晶性塩を製造する方法に於て、5−メチルテトラヒドロ葉酸の対応する塩を結晶化させることを特徴とする、上記方法である。その際この5−メチルテトラヒドロ葉酸塩の結晶化は、60℃以上、特に85℃以上での熱処理後に極性媒体から行われる。
【0010】
極性媒体として、特に水又は水及び水と混和しうる有機溶剤、たとえば水溶性アルコール、たとえばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、エチレングリコール、低級脂肪族水溶性カルボン酸、たとえばギ酸、酢酸、乳酸又は水溶性アミド、たとえばホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1−メチルピロリドン、2−メチルピロリドン、2−ピペリジノンから成る混合物が適当である。使用される溶剤の種類及び混合割合に関して特別の制限はない。というのは結晶性5−メチルテトラヒドロ葉酸塩が一般に対応する非晶質形に比してより低い溶解度を示すからである。
【0011】
結晶化は溶液から行われるのが好ましい。しかし懸濁液からの結晶化も同様に可能である。
【発明の効果】
【0012】
大気湿度の調節下に60℃以上での更なる熱処理によって、種々の結晶変態を相互に変化させることができる。したがって60℃以上での熱処理の後に極性媒体から結晶化させて製造されるタイプIは、70℃以上で減圧下に乾燥してタイプIIに、90℃以上で熱処理してタイプIIIに、そして95℃以上で温度処理してタイプIVに変化させることができる。タイプIIを90℃で湿室中で水処理して再びタイプIに戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸の結晶性カルシウム塩(タイプI)の粉末回折図である。
【図2】図2は、本発明の5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸の結晶性カルシウム塩(タイプII)の粉末回折図である。
【図3】図3は、本発明の5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸の結晶性カルシウム塩(タイプIII)の粉末回折図である。
【図4】図4は、本発明の5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸の結晶性カルシウム塩(タイプIV)の粉末回折図である。
【図5】図5は、5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸の非晶質カルシウム塩の粉末回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
5−メチルテトラヒドロ葉酸塩の結晶化は、自然発生で又は対応する結晶性5−メチルテトラヒドロ葉酸塩を結晶種として入れて行われる。
【0015】
結晶化の出発化合物として非晶質の又は結晶性の純粋な5−メチル−(6S)−又は−(6R)−テトラヒドロ葉酸が適するが、ラセミ性5−メチル−(6R,S)−テトラヒドロ葉酸及び濃厚な5−メチル−(6S)−、−(6R)−又は−(6R,S)−テトラヒドロ葉酸を使用することができる。
【0016】
結晶化のために出発化合物として、非晶質の又は一部結晶性の光学的に純粋な5−メチルテトラヒドロ葉酸又はその塩の使用によって、従来決して得られなかった純度及び従来同様に決して得られなかった安定性の実質上結晶性5−メチルテトラヒドロ葉酸塩が本法によって得られる。
【0017】
本発明は、結晶性の高い5−メチルテトラヒドロ葉酸塩を薬剤又は栄養剤補助物質の製造のための成分として又は他のテトラヒドロ葉酸−誘導体の製造のための成分として使用することに関する。というのは結晶性5−メチルテトラヒドロ葉酸塩が固形でのその優れた安定性に基づき、時間的に実質上制限されない、一定の極めて良好な品質を所持するからである。同様に、本発明は結晶性の高い5−メチルテトラヒドロ葉酸塩を含有する製剤にも関する。製剤の製造は、公知方法によって行われる。その使用は、テトラヒドロホラート、たとえば5−ホルミルテトラヒドロ葉酸(ロイコボリン)の領域から公知物質の使用と同様に行われる。
【実施例】
【0018】
上記説明から、当業者は十分に本発明を実施することができる。したがって本発明を下記例によって具体的に説明するが、本発明はこの例によって限定されない。
【0019】
下記例中に記載される温度は“℃”である。その他に明記しない限り含有量の記載は重量%を意味する。
【0020】
本発明を説明するための例
例中に記載される5−メチルテトラヒドロ葉酸塩の含有量は、それぞれHPLCによって測定され、そして%−表面で記載される。水分含有量はカールフィシャー法で測定される。
【0021】
〔例1〕(安定性)
結晶性5−メチルテトラヒドロ葉酸塩の安定性測定のために、この物質を比較試料と一緒に25℃及び相対湿度60%で大気下に保存する。周期的間隔で5−メチルテトラヒドロ葉酸塩の残存含有量を測定し、出発値と比較して記載する。
【0022】
【表1】

結晶性5−メチルテトラヒドロ葉酸塩は、比較的長い負荷期間後、まだ極めて淡い色で
ある。これに反して非晶質の試料は速やかに極めて強く着色する。
【0023】
〔例2〕(粉末X線図)
結晶性5−メチルテトラヒドロ葉酸塩の構造性質(結晶度)を調べるために、これらの物質による粉末X線図(回折スペクトル)を採用する。
【0024】
結晶性5−メチルテトラヒドロ葉酸塩は鮮明なバンド及び低い基底を有する十分に分割されたスペクトルを生じる。このスペクトルは、高い結晶性部分を示す。
【0025】
スペクトルの例は、図1(タイプI)、図2(タイプII)、図3(タイプIII)及び図4(タイプIV)に並びに表1(タイプI)、表2(タイプII)、表3(タイプIII)及び表4(タイプIV)に示される。比較として同一条件下で非晶質の試料から同様にスペクトルを取り、図5(非晶質)として記載する。
【0026】
〔表1〕
5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸の結晶性カルシウム塩(タイプI)
回折メーター:透過
モノクロメーター:Curved Ge(111)
波長:1.54098 Cu
検出器:ライナーPSD
スキャンモード:Debye−Scherrer/Moving PSD/Fixed omega
2θスキャン
!ピークサーチパラメーター:期待半値幅 : .150
! 有意水準 : 2.5
! ピーク高さ水準:10
ピークリスト〔範囲1:2θ=5.000 34.980 .020 Imax=765〕
【0027】
【数1】

【0028】
〔表2〕
5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸の結晶性カルシウム塩(タイプII)
回折メーター:透過
モノクロメーター:Curved Ge(111)
波長:1.54098 Cu
検出器:ライナーPSD
スキャンモード:Debye−Scherrer/Moving PSD/Fixed omega
2θスキャン
!ピークサーチパラメーター:期待半値幅 : .150
! 有意水準 : 2.5
! ピーク高さ水準:10
ピークリスト〔範囲1:2θ=5.000 34.980 .020 Imax=526〕
【0029】
【数2】

【0030】
〔表3〕
5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸の結晶性カルシウム塩(タイプIII)
回折メーター:透過
モノクロメーター:Curved Ge(111)
波長:1.540598 Cu
検出器:ライナーPSD
スキャンモード:Debye−Scherrer/Moving PSD/Fixed omega
2θスキャン
!ピークサーチパラメーター:期待半値幅 : .150
! 有意水準 : 2.5
! ピーク高さ水準:10
ピークリスト〔範囲1:2θ=5.000 34.980 .020 Imax=817〕
【0031】
【数3】

【0032】
〔表4〕
5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸の結晶性カルシウム塩(タイプIV)
回折メーター:透過
モノクロメーター:Curved Ge(111)
波長:1.540598 Cu
検出器:ライナーPSD
スキャンモード:Debye−Scherrer/Moving PSD/Fixed omega
2θスキャン
!ピークサーチパラメーター:期待半値幅 : .150
! 有意水準 : 2.5
! ピーク高さ水準:10
ピークリスト〔範囲1:2θ=5.000 34.980 .020 Imax=473〕
【0033】
【数4】

【0034】
以下に、結晶性5−メチル(6S)−テトラヒドロ葉酸カルシウム塩の種々の結晶変態に関して選択された2θ値を記載する。
タイプ 選択された2θ値
タイプI 6.5、13.3、16.8及び20.1
タイプII 5.3、 6.9、18.7及び21.1
タイプIII 6.8、10.2、15.4及び22.5
タイプIV 6.6、15.9、20.2及び22.5
【0035】
〔例3〕(溶解度)
結晶性5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸カルシウム塩の溶解度を次の表に記載
する。
タイプ 20℃での溶解度
0.9%NaCl 水
タイプI 1.6% 1.1%
タイプII 5.8% 3.8%
タイプIII 1.5% 1.0%
【0036】
〔例4〕(非晶質5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸カルシウム塩)
の導入下に室温で水75mlに5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸7.5gを添加して、30%水酸化ナトリウム溶液でpH12に調整する。得られた澄明な溶液を37%塩酸でpH7.5に調整し、これに水11.7ml中に塩化カルシウム6HO7.15gを含有する溶液を加える。得られた白色懸濁液を5時間攪拌して室温で吸引濾取し、水で十分に洗滌して、45℃で減圧乾燥する。
【0037】
含有率98.0%及び6S−割合99.6%の白色非晶質5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸カルシウム塩5.8gが得られる。
【0038】
また湿室中で60℃でこの物質を処理した後、分極マイクロスコープで及びX線回折測定で結晶性割合を測定することができる。
【0039】
〔例5〕(結晶性5−メチル−(6R,S)−テトラヒドロ葉酸カルシウム塩)
5−メチル−(6R,S)−テトラヒドロ葉酸70gを水780ml中に入れ、30%NaOH45.2gでpH7.5に調整する。澄明な淡い赤色溶液を水140ml中に塩化カルシウム6HO62.7gを含有する溶液を加え、濾過して、少量の水で十分に洗滌する。得られた粗精製物を水中に懸濁させて、90℃で湿室中で24時間処理する。
【0040】
含有率99.1%の白色結晶性5−メチル−(6R,S)−テトラヒドロ葉酸カルシウム塩74.0gが得られる。
【0041】
〔例6〕(結晶性5−メチル−(6R)−テトラヒドロ葉酸カルシウム塩)
5−メチル−(6R)−テトラヒドロ葉酸16.5gを92℃の水100ml及び塩化カルシウム6HO50g中に入れる。澄明な淡い黄色懸濁液を10分間、91℃で攪拌し、濾過し、少量の水で十分に洗滌して、35℃で減圧乾燥する。
【0042】
含有率97.9%及び水分含有率7.8%の淡いベージュ色の結晶性5−メチル−(6R)−テトラヒドロ葉酸カルシウム塩15.4gが得られる。
【0043】
〔例7〕(タイプI)
水130kgを予め入れ、ついで5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸12.8kgを添加する。30%NaOH約9.1kgでpH−値11.6に調整し、ついで37%塩酸約1.9kgで7.6に調整する。澄明な溶液に炭0.3kg及びセルフロック(cellflock)0.3kgを含有する懸濁液を添加し、濾過して、水13Lで十分に洗滌する。濾液に塩化カルシウム・2HO8.3kgを含有する溶液を添加し、90℃に加熱して、30分間攪拌する。生成物を熱い状態で濾過して、水2×20kgで十分に洗滌する。得られた湿性粗生成物を水115L中に懸濁させ、90℃に加熱して、直ちに熱いうちに濾過し、水2×20kgで十分に洗滌して、40℃で減圧乾燥させる。
【0044】
純度99.0%及び水分含有率14.5%の白色結晶性5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸カルシウム塩(タイプI)11.6Kgが得られる。
【0045】
〔例8〕(タイプI)
水1600mlを予め入れ、ついで5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸194kgを添加する。30%NaOH約80mlでpH−値7.0に調整する。澄明な溶液に、水190ml中に炭20kg及びセルフロック20gを含有する懸濁液を添加し、濾過して、水で十分に洗滌する。濾液に5.5M塩化カルシウム溶液950mlを添加し、90℃に加熱して、60分間攪拌する。生成物を熱い状態で濾過して、水で十分に洗滌し、ついで45℃で減圧乾燥させる。
【0046】
純度99.7%及び6S−割合99.9%の白色結晶性5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸カルシウム塩(タイプI)156.2gが得られる。
【0047】
〔例9〕(タイプI、及びタイプIIへの変化)
水554gを予め入れ、ついで5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸53.1kgを添加する。30%NaOHでpH値を7.5に調整する。澄明な溶液に炭1.3g、セルフロック1.3g及び水19.5gを添加する。懸濁液を濾過して、水55mlで十分に洗滌する。濾液に水84.6g中に塩化カルシウム・6HO52.0gを含有する溶液を添加し、90℃に加熱して、結晶性5−メチルテトラヒドロ葉カルシウム塩100mgを結晶種として入れる。結晶化させた後に、生成物を90℃の熱い状態で濾過して、水2×103gで十分に洗滌する。得られた湿性粗生成物を90℃で水480ml中に懸濁させ、90℃に加熱して、直ちに熱いうちに濾過し、上述のように十分に洗滌して、45℃で減圧乾燥させる。
【0048】
純度98.8%及び水分含有率12.2%の白色結晶性5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸カルシウム塩(タイプI)47.5gが得られる。
【0049】
30分間70℃で減圧乾燥することによって、この変態タイプIを水分含有率5.0%の変態タイプIIに変えることができる。
【0050】
〔例10〕(タイプIII)
5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸カルシウム塩15.8gを水140ml中でNの導入下に95℃に加熱して、95℃で30分後、白色懸濁液を熱い状態で吸引濾取し、水で十分に洗滌して、35℃で減圧乾燥する。
【0051】
含有率98.9%及び6S−割合99.9%の白色結晶性5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸カルシウム塩(タイプIII)14.0gが得られる。
【0052】
〔例11〕(タイプIV)
5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸カルシウム塩20.0gを水180ml中でNの導入下に100℃に加熱して、100℃で30分後、白色懸濁液を熱い状態で吸引濾取し、水で十分に洗滌して、25℃で減圧乾燥する。
【0053】
含有率98.3%及び水分含有率9.9%の白色結晶性5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸カルシウム塩(タイプIV)16.9gが得られる。
【0054】
65℃で減圧乾燥して、その他の結晶変態を得ることなく、この生成物の水分含有率を5.5%に減少させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−メチル−(6R,S)−、−(6S)−及び−(6R)−テトラヒドロ葉酸の結晶性塩
【請求項2】
5−メチル−(6S)−及び−(6R)−テトラヒドロ葉酸の結晶性塩
【請求項3】
5−メチル−(6S)−及び−(6R)−テトラヒドロ葉酸の結晶性カルシウム塩。
【請求項4】
2θ値6.5、13.3、16.8及び20.1を有する5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸の結晶性カルシウム塩。
【請求項5】
2θ値5.3、6.9、18.7及び21.1を有する5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸の結晶性カルシウム塩。
【請求項6】
2θ値6.8、10.2、15.4及び22.5を有する5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸の結晶性カルシウム塩。
【請求項7】
2θ値6.6、15.9、20.2及び22.5を有する5−メチル−(6S)−テトラヒドロ葉酸の結晶性カルシウム塩。
【請求項8】
熱処理の後に極性媒体から5−メチル−(6R,S)−、−(6S)−及び−(6R)−テトラヒドロ葉酸塩を結晶化させることを特徴とする、5−メチル−(6R,S)−、−(6S)−及び−(6R)−テトラヒドロ葉酸の結晶性塩の製造方法。
【請求項9】
60℃以上の熱処理の後に結晶化を行う、請求項8記載の方法。
【請求項10】
85℃以上の熱処理の後に結晶化を行う、請求項8記載の方法。
【請求項11】
溶液から結晶化を行う、請求項8記載の方法。
【請求項12】
懸濁液から結晶化を行う、請求項8記載の方法。
【請求項13】
水から又は水及び水と混和しうる有機溶剤との混合物から結晶化を行う、請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
5−メチル−(6S)−又は−(6R)−テトラヒドロ葉酸の結晶性塩を、薬剤を製造するための成分として又は栄養剤補助物質として使用する方法。
【請求項15】
5−メチル−(6S)−又は−(6R)−テトラヒドロ葉酸の結晶性塩を含有する調合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−47279(P2013−47279A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264085(P2012−264085)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2000−112606(P2000−112606)の分割
【原出願日】平成12年4月13日(2000.4.13)
【出願人】(592010450)メルック・エプロバ・アクチエンゲゼルシヤフト (10)
【Fターム(参考)】