説明

安定化βクリプトキサンチン含有水およびその用途

【課題】低コストで、飲食品にも利用可能な安定化されたβクリプトキサンチン含有水を提供する。
【解決手段】本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、βクリプトキサンチンを含む水に、ビタミンCが添加されていることによって前記βクリプチキサンチンが安定化されていることを特徴とする。前記ビタミンCは、安全性に優れ、安価であり、他の安定化剤と併用することなく、単独で、βクリプトキサンチンを安定化できる。このため、本発明によれば、安全且つ低コストで、前記水中のβクリプトキサンチンを安定化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定化βクリプトキサンチン含有水およびその用途に関し、より詳細には、βクリプトキサンチンを含む飲食品、βクリプトキサンチン安定化方法、安定化βクリプトキサンチン含有水の製造方法およびβクリプトキサンチン安定化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイドの一種であるβクリプトキサンチンは、骨形成促進作用、脂質代謝改善作用、発がん抑制作用を示すことが知られており、その有用性が注目されている(特許文献1〜3)。このように有用性に優れるβクリプトキサンチンを、日常的に摂取するには、例えば、飲食品に添加物として添加されることが望まれる。
【0003】
しかしながら、βクリプトキサンチンは、不安定という問題がある。このため、βクリプトキサンチンを飲食品に添加した場合、例えば、実際に消費者が摂取するまでに、分解が進行するおそれがある。また、βクリプトキサンチンの不安定という問題に対して、安定化のための実用的な方法もない。さらには、βクリプトキサンチンを飲食品の添加剤として使用する場合、βクリプトキサンチンに対する安定化剤も、日常的に摂取しても問題がない物質であることが必要となる。
【0004】
そして、βクリプトキサンチンの飲食物としての適用範囲を広げるためには、安定化したβクリプトキサンチンを含む水の形態で、供給することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3892014号公報
【特許文献2】国際公開第2005/112904号パンフレット
【特許文献3】特開2006−219388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、飲食品として利用可能な、優れた安全性で安定化されたβクリプトキサンチンを含むβクリプトキサンチン含有水およびβクリプトキサンチン安定化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、βクリプトキサンチンを含む水に、ビタミンCが添加されていることによって前記βクリプトキサンチンが安定化されていることを特徴とする。
【0008】
本発明のβクリプトキサンチン安定化方法は、βクリプトキサンチンとビタミンCとを水に共存させることにより、前記βクリプトキサンチンを安定化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安価に、安全性に優れた安定化βクリプトキサンチンの含有水を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、複合ビタミン液剤における塩酸チアミンの分解のアレニウスプロットを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、前記βクリプトキサンチンの安定化は、例えば、前記βクリプトキサンチンの分解防止の意味を含む。本発明において、前記βクリプトキサンチンの安定化のために添加されるビタミンCを、「添加ビタミンC」という。
【0012】
以下に、本発明について、第1の形態および第2の形態をそれぞれ説明する。
【0013】
第1の形態
(1)安定化βクリプトキサンチン含有水
本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、前述のとおり、βクリプトキサンチンを含む水に、ビタミンCが添加されることによって前記βクリプトキサンチンが安定化されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、βクリプトキサンチンの他に、前記添加ビタミンCを含んでいればよく、その他の構成は、何ら制限されない。
【0015】
本発明者らは、鋭意研究の結果、水中において、添加ビタミンCとβクリプトキサンチンとを共存させることによって、βクリプトキサンチンを安定化できることを見出した。ビタミンCは、安価であり、且つ、飲食品に対する添加剤として安全性に優れることは、これまでの使用歴によって証明されている。さらに、ビタミンCによれば、他の安定化剤と併用することなく、単独で、βクリプトキサンチンを安定化することが可能である。このため、本発明によれば、安価に、安全性に優れた安定化βクリプトキサンチンの含有水を提供できる。このように安定化されたβクリプトキサンチンを含むβクリプトキサンチン含有水であれば、例えば、飲料等の飲食品として、または、飲食品への食品添加物として、適用範囲が広がり、極めて有用である。
【0016】
前記βクリプトキサンチンは、下記構造式(1)で表わすことができる。本発明において、前記βクリプトキサンチンは、下記構造式(1)で表わす化合物の誘導体でもよい。
【化1】

【0017】
前記構造式(1)のβクリプトキサンチンは、一般に、水に対して難溶性であることが知られている。前記安定化βクリプトキサンチン含有水の形態は、特に制限されず、例えば、βクリプトキサンチンが分散された水分散液が好ましい。前記分散は、例えば、懸濁の意味も含む。また、βクリプトキサンチンの誘導体が水溶性の場合、例えば、前記安定化βクリプトキサンチン含有水は、βクリプトキサンチンが溶解された水溶液でもよい。
【0018】
前記βクリプトキサンチンは、例えば、天然物由来でも、合成品でもよく、安全性の観点から、天然物由来が好ましく、より好ましくは植物由来である。前記植物は、例えば、ミカン属(Citrus)、カキノキ属(Diospyros)、マンゴー(Mangiferra)属等があげられる。前記ミカン属は、好ましくは、温州ミカン(Citrus unshiu)であり、前記カキノキ属は、好ましくは、柿(Diospyros kaki)であり、マンゴー属は、好ましくはマンゴー(Mangifera indica)である。前記ミカン属は、例えば、柑橘類を意味する。
【0019】
本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、例えば、後述するように、βクリプトキサンチンの単一精製品を水に添加して調製してもよいし、βクリプトキサンチンを含むβクリプトキサンチン供給源を水に添加して調製してもよい。
【0020】
前記ビタミンCは、例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸塩およびL−アスコルビン酸誘導体があげられ、いずれか一種類でもよいし、二種類以上の混合物でもよい。前記L−アスコルビン酸塩は、例えば、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩等があげられ、前記アルカリ金属塩は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等があげられ、前記アルカリ土類金属塩は、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩等があげられる。前記L−アスコルビン酸誘導体は、例えば、リン酸アスコルビン酸マグネシウム、リン酸アスコルビン酸ナトリウム、リン酸アスコルビン酸カリウム等があげられる。
【0021】
前記安定化βクリプトキサンチン含有水において、前記ビタミンCの濃度は、特に制限されない。前記ビタミンCの濃度は、例えば、前記安定化βクリプトキサンチン含有水におけるβクリプトキサンチンの濃度に依存することなく、設定できる。前記安定化βクリプトキサンチン含有水における前記ビタミンCの濃度は、その下限が、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、例えば、0.01質量部以上が好ましく、より好ましくは、0.015質量部以上であり、さらに好ましくは、0.02質量部以上である。また、前記安定化βクリプトキサンチン含有水における前記ビタミンCの濃度は、その上限が、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、例えば、0.2質量部以下であり、好ましくは、0.15質量部以下であり、より好ましくは、0.1質量部以下である。前記ビタミンCの濃度範囲は、例えば、0.01〜0.15質量部の範囲が好ましく、より好ましくは、0.02〜0.1質量部の範囲である。前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部とは、例えば、前記安定化βクリプトキサンチン含有水の全体100質量部ということもできる。
【0022】
前記安定化βクリプトキサンチン含有水において、前記βクリプトキサンチンの濃度は、特に制限されない。前記安定化βクリプトキサンチン含有水におけるβクリプトキサンチンの濃度は、その下限が、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、例えば、0.0015質量部以上であり、より好ましくは、0.002質量部以上である。また、前記安定化βクリプトキサンチン含有水におけるβクリプトキサンチンの濃度は、その上限が、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、例えば、0.006質量部以下であり、好ましくは、0.0045質量部以下であり、より好ましくは、0.003質量部以下である。
【0023】
前記安定化βクリプトキサンチン含有水は、特に、βクリプトキサンチン濃度が低濃度領域であることが、例えば、コスト面から好ましい。前記低濃度領域は、具体的には、前記全合計100質量部に対し、例えば、0.0015〜0.006質量部である。βクリプトキサンチンがこのような濃度範囲であれば、特に効率よく、前記添加ビタミンCにより、βクリプトキサンチンを安定化できる。前記安定化βクリプトキサンチン含有水を飲料として提供する場合、βクリプトキサンチンは、例えば、前記低濃度領域に設定される。このため、このような条件下において、本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、特に飲料として提供することが好ましい。
【0024】
本発明において、前記水に含まれる成分は、前記安定化βクリプトキサンチン含有水に含まれる水以外の成分である。前記水以外の成分は、例えば、βクリプトキサンチンおよび前記添加ビタミンCのみでもよいし、さらに、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、特に制限されず、例えば、飲食品に添加される添加剤等があげられる。前記添加剤は、例えば、香料、甘味料、糖類、酸味料、着色料、果汁、乳化剤、食物繊維、ビタミン類等があげられる。また、前記その他の成分は、例えば、前記βクリプトキサンチン供給源に含まれる、βクリプトキサンチン以外の成分でもよい。
【0025】
本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、前述のように、βクリプトキサンチンの単一精製品を水に添加して調製してもよいし、βクリプトキサンチンを含む前記βクリプトキサンチン供給源を水に添加して調製してもよい。
【0026】
前者の場合、水、βクリプトキサンチンおよび前記添加ビタミンCの添加順序は、特に制限されず、例えば、水に、前記βクリプトキサンチンおよび前記添加ビタミンCを同時に添加してもよいし、水に、前記βクリプトキサンチンを添加した後、前記添加ビタミンCを添加してもよいし、水に、前記添加ビタミンCを添加した後、前記βクリプトキサンチンを添加してもよい。
【0027】
後者の場合、水、βクリプトキサンチンを含む前記βクリプトキサンチン供給源および前記添加ビタミンCの添加順序は、特に制限されず、例えば、水に、前記βクリプトキサンチン供給源および前記添加ビタミンCを同時に添加してもよいし、水に、前記βクリプトキサンチン供給源を添加した後、前記添加ビタミンCを添加してもよいし、水に、前記添加ビタミンCを添加した後、前記βクリプトキサンチン供給源を添加してもよい。
【0028】
前記βクリプトキサンチン供給源は、例えば、前記植物の果汁または前記果汁の濃縮物を含む。前記βクリプトキサンチン供給源は、より好ましくは、ミカン属の果汁またはその濃縮物を含み、さらに好ましくは、温州ミカンの果汁またはその濃縮物を含む。そこで、本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、例えば、前記βクリプトキサンチン供給源(前記果汁または前記濃縮物)を水に添加した添加水でもよく、好ましくは、前記βクリプトキサンチン供給源(前記果汁または前記濃縮物)を水に分散させた分散水である。この場合、本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水において、βクリプトキサンチンは、例えば、柑橘類(ミカン属)の果汁由来またはその濃縮物由来のβクリプトキサンチンであり、好ましくは、ミカン果汁由来またはその濃縮物由来であり、より好ましくは、温州ミカン果汁由来またはその濃縮物由来である。
【0029】
前記βクリプトキサンチン供給源は、βクリプトキサンチン以外に、他の成分として、例えば、デキストリン、難消化性デキストリン等の賦形剤、香料、甘味料、糖類、酸味料、着色料、果汁、乳化剤、食物繊維、ビタミン類、酒精等を含んでもよい。このため、本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、例えば、前述した「水以外の成分」として、βクリプトキサンチンおよび前記添加ビタミンCの他に、前記βクリプトキサンチン供給源に含まれる、βクリプトキサンチン以外の前記他の成分を含んでもよい。
【0030】
本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水において、前記添加ビタミンCは、例えば、前記βクリプトキサンチン供給源由来のビタミンCおよび/またはそれ以外のビタミンCがあげられる。前記βクリプトキサンチン供給源由来のビタミンCは、例えば、前記βクリプトキサンチン供給源に含まれるビタミンCである。また、それ以外のビタミンCは、例えば、ビタミンCの単一品、ビタミンCを主成分として含むビタミンC組成物等があげられる。ビタミンC組成物は、例えば、ビタミンCの粗精製物でもよい。
【0031】
本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、前記添加ビタミンCとして、例えば、単一品のビタミンCを添加することが好ましい。本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水において、前記添加ビタミンCは、例えば、全部が前記単一品のビタミンCでもよいし、一部が前記単一品のビタミンCでもよい。後者の場合、前記安定化βクリプトキサンチン含有水は、前記添加ビタミンCとして、例えば、前記βクリプトキサンチン供給源由来のビタミンCを含んでもよく、具体的には、前記植物の果汁由来のビタミンCを含んでもよい。また、前記安定化βクリプトキサンチン含有水において、前記添加ビタミンは、例えば、全部が前記βクリプトキサンチン供給源由来のビタミンC(例えば、前記植物の果汁由来のビタミンC)でもよいし、一部が前記βクリプトキサンチン供給源由来のビタミンCでもよい。本発明においては、前記ビタミンC濃度を、容易且つ安価に、所望の濃度に設定できることから、前記単一品のビタミンCを添加することが好ましい。
【0032】
βクリプトキサンチンを含む前記βクリプトキサンチン供給源およびその調製方法について、温州ミカンを一例にあげて説明する。なお、例えば、温州ミカン以外のミカン属、その他の植物についても、同様である。
【0033】
前記βクリプトキサンチン供給源は、例えば、前記温州ミカンの果汁を、原料果汁として使用できる。なお、温州ミカンの他に、前述した柿、マンゴー等の植物、これらの植物の加工物等も、前記βクリプトキサンチン供給源として、また、前記βクリプトキサンチン供給源の原料素材として、使用可能である。
【0034】
前記原料果汁は、例えば、前記温州ミカンの果実全体から回収した液体画分でもよいし、前記果実の少なくともいずれかの部位から回収した液体画分でもよい。前記部位は、例えば、果肉、皮があげられる。βクリプトキサンチンは、例えば、様々な部位に存在することから、前記果汁は、果実全体から回収された液体画分が好ましい。前記果汁の回収方法は、特に制限されず、例えば、圧搾等の公知の方法が採用できる。前記果汁は、例えば、ろ過した果汁でもよい。
【0035】
前記原料果汁は、例えば、前記温州ミカンから回収して使用してもよいし、一般に流通している市販の果汁および濃縮果汁を使用してもよい。前記濃縮果汁は、例えば、公知の方法によって、1/5〜1/7に濃縮された濃縮果汁があげられる。前記濃縮果汁は、例えば、冷凍濃縮果汁を解凍したものでもよい。前記濃縮果汁は、例えば、水で希釈し、その希釈果汁を、前記原料果汁として使用することもできる。
【0036】
前記原料果汁は、例えば、前記βクリプトキサンチン供給源の製造工程において、加熱により殺菌処理を施すことが好ましい。前記殺菌処理は、例えば、液状物を加熱殺菌するための各種方法および各種装置を利用できる。前記殺菌処理の条件は、特に制限されず、短時間の処理が好ましい。前記条件は、例えば、65〜95℃、30〜600秒で保持する条件、具体的には、約95℃で約30秒保持する条件、および、これと同程度の殺菌価を示す条件があげられる。このように、短時間の殺菌処理を行うことによって、例えば、前記原料果汁における菌数を制御して、後述する各種工程における腐敗を防止できる。なお、βクリプトキサンチンは、例えば、液状の食品に対して一般的に行われている程度の加熱に対しては比較的安定であることから、前記原料果汁におけるβクリプトキサンチンは、前記殺菌処理によってはほぼ失われない。
【0037】
つぎに、前記加熱処理後の前記原料果汁を、適切な温度にまで冷却する。前記温度は、特に制限されず、例えば、後の酵素処理および遠心処理に適した所定温度に設定することが好ましい。前記所定温度は、例えば、4〜37℃である。前記冷却は、任意である。冷却方法は、特に制限されず、例えば、加熱された前記原料果汁を、前記原料果汁よりも低い温度条件の容器に充填し、空冷または水冷する方法、または、熱交換器を用いて冷却する方法等があげられる。
【0038】
その後、冷却後の前記原料果汁を、適当な容積のタンクに分配する。前記タンクの容積は、例えば、後の酵素処理および遠心処理を、効率良く行えるように設定することが好ましい。また、前記殺菌処理後の前記原料果汁または前記冷却途中の前記原料果汁を、前記タンクに充填し、前記タンクに充填した状態で、所定温度にまで冷却してもよい。
【0039】
続いて、前記冷却後の前記原料果汁に、酵素処理を施す。前記酵素処理は、任意である。前記酵素処理は、前記所定温度に冷却した前記原料果汁に、酵素を添加して行うことが好ましい。前記酵素は、特に制限されず、例えば、ペクチナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、マセレーションエンザイム、プロトペクチナーゼ等が使用できる。前記酵素は、例えば、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記酵素処理は、例えば、前記酵素を含む酵素剤を使用することもできる。前記酵素剤の形態は、特に制限されず、例えば、粉末、液状のいずれでもよい。前記原料果汁に添加する酵素量は、特に制限されず、前記酵素の種類に応じて、適宜決定できる。前記酵素処理の条件は、特に制限されず、前記酵素の種類に応じて、温度および時間等を設定できる。前記原料果汁に前記酵素を添加した後、前記原料果汁を撹拌して、前記酵素を分散させることが好ましい。前記原料果汁は、例えば、低粘度状態であるため、前記酵素の添加後、前記原料果汁を撹拌することによって、前記原料果汁全体に、前記酵素を均一に分散できる。前記酵素処理は、例えば、前記酵素の種類に応じて、前記酵素に適した温度に前記原料果汁を保持した状態で、所定時間行われる。前記酵素処理自体によって、前記原料果汁のβクリプトキサンチン量は、増減しない。
【0040】
前記酵素処理を施した前記原料果汁は、例えば、そのまま次の遠心処理に供してもよいし、前記遠心処理前に、再度加熱して、前記酵素反応を終了させる工程も含んでも良い。
【0041】
つぎに、前記酵素処理後の前記原料果汁を遠心分離する。前記遠心分離は、例えば、酵素処理を行っていない前記冷却後の前記原料果汁に対して行ってもよい。前記遠心分離によって、前記原料果汁を、濃縮によりβクリプトキサンチンを多く含む液状のパルプ画分と、βクリプトキサンチンをほとんど含まない上清画分とに分離できる。前記遠心分離に使用する遠心分離器は、特に制限されず、市販の各種遠心分離器が使用できる。前記遠心分離における流量は、例えば、毎時4〜5トン程度である。前記遠心分離の回数は、例えば、前記原料果汁に対して1回でもよいし、限外ろ過等の膜処理の実施後および遠心強度の変更等を行った後等、前記原料果汁に複数回でもよい。前記限外ろ過等の膜処理によって、前記原料果汁から、βクリプトキサンチンをほとんど含まないろ液画分を分離し、βクリプトキサンチンが濃縮された液状のパルプ残渣を得ることができる。
【0042】
このように、遠心分離によって得られるβクリプトキサンチンが濃縮された前記液状パルプは、例えば、そのままβクリプトキサンチン供給源である濃縮液として使用できる。前記液状パルプは、例えば、さらに濃縮して、ペースト化または粉末化してもよい。また、例えば、前記濃縮液、ペーストまたは前記粉末と有機溶剤とを接触させ、βクリプトキサンチンを濃縮した抽出物としてもよい。
【0043】
前記濃縮液化およびペースト化は、例えば、前記液状のパルプを、真空乾燥等の公知の濃縮方法で濃縮することによって行える。具体的には、例えば、前記パルプ画分を、さらに真空乾燥し、水分を除去して濃縮することにより、βクリプトキサンチンを含む濃縮液またはペーストが得られる。
【0044】
前記粉末化は、例えば、前記液状のパルプを、凍結乾燥および噴霧乾燥等の公知の方法で処理することによって行える。前記パルプ画分を粉末化した場合、例えば、前記粉末には、市販の賦形剤を添加することが好ましい。前記賦形剤は、例えば、デンプン、各種デキストリン、環状デキストリン、トレハロース、乳糖、オリゴ糖、ショ糖エステル、脂肪酸エステル等が使用できる。前記賦形剤の添加量の増加に従って、前記粉末におけるβクリプトキサンチン濃度が低くなるため、前記賦形剤の添加量は、例えば、最小限度にすることが好ましい。
【0045】
また、前記抽出物は、例えば、前記濃縮液(前記液状パルプ)、前記ペーストおよび前記粉末等に、有機溶媒を接触させ、前記有機溶媒を回収した後、前記有機溶媒の一部または全部を除去することによって得られる。前記有機溶媒は、例えば、エタノール、ヘキサン等が使用できる。前記有機溶媒は、一種類でもよいし、二種類以上の混合溶媒でもよい。
【0046】
このようにして得られた前記濃縮液、前記ペースト、前記粉末および前記抽出物等の濃縮物は、前記βクリプトキサンチン供給源として使用できる。本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水の製造において、前記濃縮物は、例えば、水に分散させることが好ましい。前記濃縮物を水に分散させる際、例えば、さらに、分散剤を添加してもよい。前記有機溶媒で抽出した前記抽出物を水に分散させる場合、特に、分散剤を添加することが好ましい。前記分散剤は、例えば、エタノール、乳化剤等が使用できる。前記乳化剤は、特に制限されず、公知の乳化剤が使用でき、特に食品用乳化剤が好ましい。前記乳化剤は、例えば、グリセリン脂肪酸エステル(モノグリセリド)、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル(ポリグリセリンエステル)、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、サポニン、ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖エステル)、レシチン、酵素分解レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル;例えば、アラビアガム、キサンタンガム等の植物性ガム類;例えば、デキストリン、加工澱粉等の澱粉類;例えば、カゼイン、ゼラチン等のタンパク質類等が使用できる。中でも、前記乳化剤は、例えば、HLB値が、10以上の乳化剤が好ましく、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等があげられる。このような乳化剤を使用して乳化を行えば、例えば、バイオアベイラビリティが向上するため好ましい。
【0047】
このようにして得られた各種濃縮物を前記βクリプトキサンチン供給源として、前記添加ビタミンCと共に、水に共存させることによって、前記濃縮物中のβクリプトキサンチンが安定化された前記安定化βクリプトキサンチン含有水が調製できる。
【0048】
本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、例えば、βクリプトキサンチン 0.002質量部、前記ビタミンC 0.01質量部の条件で製造し、40℃で保存した場合、約2ヵ月間、βクリプトキサンチンの分解を抑制できる。具体的には、製造時の前記安定化βクリプトキサンチン含有水におけるβクリプトキサンチン量を100%とした場合、βクリプトキサンチンの残存率(%)を、例えば、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上に維持できる。
【0049】
(2)飲食品
本発明の飲食品は、前記本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水を含むことを特徴とし、その他の構成は、特に制限されない。本発明の飲食品は、例えば、飲料類、食品類等があげられる。前記飲料類は、例えば、無果汁飲料、果汁入飲料、乳酸菌系飲料、乳飲料、粉末飲料等があげられ、前記食品類は、例えば、例えば、アイスクリーム、シャーベット、氷菓等の冷菓、プリン、ゼリー、ババロア、ヨーグルト等のデザート食品等があげられる。
【0050】
本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、例えば、飲食品の用途に限定されず、この他に、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧料、飼料、食品添加物等にも利用できる。
【0051】
(3)βクリプトキサンチン安定化方法
本発明のβクリプトキサンチン安定化方法は、前述のように、βクリプトキサンチンとビタミンCとを水に共存させることにより、βクリプトキサンチンを安定化させることを特徴とする。
【0052】
前記ビタミンCは、人為的にβクリプトキサンチンと共存させたものであり、本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水における前記添加ビタミンCに相当する。本発明のβクリプトキサンチン安定化方法は、特に示さない限り、前述した本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水の説明を引用できる。
【0053】
本発明において、βクリプトキサンチンと前記添加ビタミンCとを水に共存させる方法は、特に制限されない。水、前記βクリプトキサンチンおよび前記添加ビタミンCの添加順序は、特に制限されず、例えば、水に、前記βクリプトキサンチンおよび前記添加ビタミンCを同時に添加してもよいし、水に、前記βクリプトキサンチンを添加した後、前記添加ビタミンCを添加してもよいし、水に、前記添加ビタミンCを添加した後、前記βクリプトキサンチンを添加してもよい。
【0054】
本発明において、βクリプトキサンチンを含む前記βクリプトキサンチン供給源を使用して、水にβクリプトキサンチンと前記添加ビタミンCを共存させてもよい。この場合、前記水に、前記βクリプトキサンチン供給源および前記添加ビタミンCを添加すればよい。前記βクリプトキサンチン供給源および前記添加ビタミンCの添加順序は、特に制限されず、例えば、水に、前記βクリプトキサンチン供給源および前記添加ビタミンCを同時に添加してもよいし、水に、前記βクリプトキサンチン供給源を添加した後、前記添加ビタミンCを添加してもよいし、水に、前記添加ビタミンCを添加した後、前記βクリプトキサンチン供給源を添加してもよい。前記βクリプトキサンチン供給源は、例えば、水に分散させることが好ましい。
【0055】
本発明は、例えば、前記水中のビタミンCの濃度を調整する調整工程を含む。前記水中のビタミンC濃度は、例えば、前述の通りである。前記ビタミンCの濃度の調整は、例えば、前記βクリプトキサンチン供給源の添加により行ってもよいし、それ以外のビタミンCの添加によって行ってもよい。
【0056】
(4)安定化βクリプトキサンチン含有水の製造方法
本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水の製造方法は、水中のβクリプトキサンチンの安定化工程を含み、前記安定化工程が、前記本発明の安定化方法によって実施されることを特徴とする。本発明の製造方法は、前記本発明の安定化方法を行うことが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。本発明の製造方法は、例えば、前述した本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水および本発明の安定化方法の説明を引用できる。
【0057】
また、本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、他の側面において、前記本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水の製造方法により得られることを特徴とする。
【0058】
(5)βクリプトキサンチン安定化剤
本発明のβクリプトキサンチン安定化剤は、βクリプトキサンチンを含む水に、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、0.01質量部以上となるようにビタミンCが添加されるように用いられることを特徴とする、ビタミンCを含むβクリプトキサンチン安定化剤である。
【0059】
水中でのβクリプトキサンチンの安定化において、前記ビタミンCの濃度は、特に制限されず、前述の濃度とすることによって、効率よくβクリプトキサンチンを安定化することができる。本発明において、前記水に添加されるビタミンCの量、前記水中のβクリプトキサンチンの量等は、例えば、前述した本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水の説明を引用できる。
【0060】
第2の形態
本発明の第2の形態は、例えば、特に示さない限り、前記第1の形態における記載を援用できる。
【0061】
本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、βクリプトキサンチンを含む水(以下、「βクリプトキサンチン含有水」という)において、前記βクリプトキサンチン濃度が、前記水および前記水に含まれる成分の全合計量100質量部に対し、前記βクリプトキサンチン0.003質量部以上であることによって前記βクリプトキサンチンが安定化されていることを特徴とする。
【0062】
本発明のβクリプトキサンチンの安定化方法は、βクリプトキサンチンを含む水において、前記βクリプトキサンチン濃度を、前記水および前記水に含まれる成分の全合計量100質量部に対し、前記βクリプトキサンチン0.003質量部以上に設定することによって前記βクリプトキサンチンを安定化することを特徴とする。
【0063】
本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水の製造方法は、水中のβクリプトキサンチンの安定化工程を含み、前記安定化工程が、前記本発明の安定化方法によって実施されることを特徴とする。
【0064】
本発明の安定化βクリプトキサンチン含有飲食品の製造方法は、水中のβクリプトキサンチンの安定化工程を含み、前記安定化工程が、前記本発明の安定化方法によって実施されることを特徴とする。
【0065】
本発明者らは、鋭意研究の結果、βクリプトキサンチンを含む水において、前記βクリプトキサンチンを前記所定濃度に設定することによって、βクリプトキサンチンを安定化できることを見出した。本発明によれば、βクリプチキサンチンを前記所定濃度とすることで、安定化剤を用いることなく、安価に、水中においてβクリプトキサンチンの安定化が可能である。また、このように、余分な成分である前記安定化剤が不要であることから、安全性の高い安価なβクリプトキサンチン含有水を提供できる。このため、本発明によれば、例えば、安全性および安定性に優れた安価なβクリプトキサンチン含有水を、飲食品または飲食品の添加剤として、広い適用範囲に提供でき、極めて有用である。
【0066】
(1)βクリプトキサンチン含有水およびβクリプトキサンチンの安定化方法
本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、例えば、後述するように、βクリプトキサンチンの単一精製品を水に添加して調製されてもよいし、βクリプトキサンチンを含むβクリプトキサンチン供給源を水に添加して調製されてもよい。
【0067】
本発明において、前記βクリプトキサンチン濃度の下限は、例えば、0.0025質量部が好ましく、より好ましくは、0.003質量部である。前記βクリプトキサンチン濃度は、0.0045質量部以上で安定化効果が得られることから、その上限は、特に制限されないが、コスト面からより少ないことが効率的であるため、前記水および前記水に含まれる成分の全合計量100質量部に対し、例えば、0.006質量部であり、好ましくは、0.005質量部であり、より好ましくは、0.0045質量部である。前記βクリプトキサンチン濃度の範囲は、例えば、0.0025〜0.006質量部であることが好ましく、より好ましくは、0.003〜0.0045質量部である。
【0068】
本発明において、前記水に含まれる成分は、前記安定化βクリプトキサンチン含有水に含まれる水以外の成分である。前記水以外の成分は、例えば、βクリプトキサンチンのみでもよいし、さらに、その他の成分を含んでもよい。前記その他の成分は、特に制限されず、例えば、飲食品に添加される添加剤等があげられる。前記添加剤は、例えば、香料、甘味料、糖類、酸味料、着色料、果汁、乳化剤、食物繊維、ビタミン類等があげられる。また、前記その他の成分は、例えば、前記βクリプトキサンチン供給源に含まれる、βクリプトキサンチン以外の成分でもよい。
【0069】
前記βクリプトキサンチン供給源は、例えば、前記植物の果汁の濃縮物を含む。前記βクリプトキサンチン供給源は、好ましくは、ミカン属の果汁の濃縮物を含み、さらに好ましくは、温州ミカンの果汁の濃縮物を含む。前記βクリプトキサンチン含有水は、例えば、前記βクリプトキサンチン供給源(前記濃縮物)を水に添加した添加水でもよく、好ましくは、前記βクリプトキサンチン供給源(前記濃縮物)を水に分散させた分散水である。この場合、前記βクリプトキサンチン含有水において、βクリプトキサンチンは、例えば、ミカン属の果汁の濃縮物由来であり、より好ましくは、温州ミカンの果汁の濃縮物由来である。
【0070】
前記βクリプトキサンチン供給源は、βクリプトキサンチン以外に、他の成分として、例えば、デキストリン、難消化性デキストリン等の賦形剤や、香料、甘味料、糖類、酸味料、着色料、果汁、乳化剤、食物繊維、ビタミン類、酒精等を含んでもよい。このため、前記βクリプトキサンチン含有水は、例えば、前述した「水以外の成分」として、βクリプトキサンチンの他に、前記βクリプトキサンチン供給源に含まれる、βクリプトキサンチン以外の前記他の成分を含んでもよい。
【0071】
βクリプトキサンチンを含む前記βクリプトキサンチン供給源およびその調製方法は、例えば、前記第1の形態の一例と同様である。
【0072】
前述のようにして得られた各種濃縮物を前記βクリプトキサンチン供給源として、前記βクリプトキサンチン濃度が前述の条件となるように、水に添加することによって、水中で、βクリプトキサンチンを安定化でき、前記安定化βクリプトキサンチン含有水を調製できる。
【0073】
本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水およびβクリプトキサンチンの安定化方法によれば、例えば、前記βクリプトキサンチン含有水を、βクリプトキサンチン濃度0.003質量部に設定し、45℃で保存した場合、約1ヵ月間、βクリプトキサンチンの分解を抑制できる。具体的には、製造時の前記βクリプトキサンチンを含む水におけるβクリプトキサンチン量を100%とした場合、βクリプトキサンチンの残存率(%)を、例えば、80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上に維持できる。
【0074】
(2)安定化βクリプトキサンチン含有水の製造方法
本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水の製造方法は、前述のように、水中のβクリプトキサンチンの安定化工程を含み、前記安定化工程が、前記本発明の安定化方法によって実施されることを特徴とする。本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水の製造方法は、前記本発明の安定化方法を行うことが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水の製造方法は、例えば、前述した本発明の安定化方法の説明を引用できる。
【0075】
(3)安定化βクリプトキサンチン含有飲食品およびその製造方法
本発明の飲食品は、前述のように、前記本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水を含むことを特徴とし、その他の構成は、特に制限されない。
【0076】
本発明の安定化βクリプトキサンチン含有飲食品の製造方法は、前述のように、水中のβクリプトキサンチンの安定化工程を含み、前記安定化工程が、前記本発明の安定化方法によって実施されることを特徴とする。本発明の安定化βクリプトキサンチン含有飲食品の製造方法は、前記本発明の安定化方法を行うことが特徴であって、その他の工程および条件は、何ら制限されない。本発明の安定化βクリプトキサンチン含有飲食品の製造方法は、例えば、前述した本発明の安定化方法の説明を引用できる。
【0077】
前記飲食品は、例えば、飲料類、食品類等があげられ、例えば、前記第1の形態と同様である。
【0078】
本発明のβクリプトキサンチン含有水およびβクリプトキサンチンの安定化方法は、例えば、飲食品およびその製造に限定されず、この他に、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧料、飼料、食品添加物等の製造にも利用できる。
【実施例】
【0079】
つぎに、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例により制限されない。
【0080】
[実施例1A]
(1)βクリプトキサンチンを含むペーストの調製
温州ミカン濃縮果汁を水で希釈し、濃縮還元果汁を調製した。前記濃縮還元果汁を95℃で30秒保持し、殺菌処理を行なった。その後、遠心処理によってβクリプトキサンチンを多く含む液状パルプ画分と、βクリプトキサンチンをほとんど含まない上清画分とに分離した。得られた前記液状パルプを真空乾燥で濃縮して、水分を除去し、βクリプトキサンチンを含有するペーストを得た。前記ペーストは、水分率60%、食物繊維1.3w/w%、βクリプトキサンチン0.07w/w%、ビタミンC0.006w/w%であった。
【0081】
(2)βクリプトキサンチン含有水の調製
調製した前記温州ミカン由来のペーストと水とを混合して、混合液を調製した。前記混合は、前記ペーストに含まれるβクリプトキサンチンと前記混合する水との質量比が、1mg:50g(最終的に得られるβクリプトキサンチン含有水100質量部あたりβクリプトキサンチン0.002質量部)となるように行った。前記混合液に、ビタミンC(L−アスコルビン酸)を添加して、撹拌混合し、βクリプトキサンチン含有水を調製した。前記ビタミンCの添加により、前記βクリプトキサンチン含有水におけるL−アスコルビン酸の全量は、前記βクリプトキサンチン含有水全体100質量部に対し、0.005、0.01、0.02、0.05、0.1および0.2質量部とした。ブランクとして、前記混合液にビタミンC(L−アスコルビン酸)を添加しなかった以外は、同様にして、βクリプトキサンチン含有水を調製した。
【0082】
(3)βクリプトキサンチン安定化試験
6種類の前記βクリプトキサンチン含有水およびブランクの前記βクリプトキサンチン含有水を、それぞれ、褐色瓶に50gずつ充填した。その後、各褐色瓶を、90℃、30分間の条件で加熱殺菌処理し、40℃にて保存した。保存開始日、保存開始から1ヵ月後および2ヵ月後に、サンプリングを行い、以下に示すように、HPLCによって、各サンプルのβクリプトキサンチン量を測定した。そして、保存開始日におけるβクリプトキサンチン量を100%として、βクリプトキサンチンの残存率を求めた。
【0083】
前記サンプルは、HPLCに供する前に、アルカリ条件下、70℃で30分処理した。これによって、前記サンプル中のβクリプトキサンチンのケン化を行い、全てフリー体に変換した。前記処理後のサンプルを、液−液抽出した後濃縮しHPLCサンプルとした。
【0084】
HPLCによるβクリプトキサンチン量の測定は、J’sphere ODS−M80 250×4.6mmI.D.カラム(商品名、ワイエムシィ社製)を接続したHPLC装置を使用し、UV検出器L−4200H(商品名、日立製作所製)により、455nmの吸光度を測定することで行った。カラムの条件は、以下の通りとした。
移動層:0.1%酢酸およびα−トコフェロール50ppmを含むアセトニトリル/テトラヒドロフラン(体積比95/5)
流速:1.0mL/分
カラム温度:55℃
【0085】
前記添加L−アスコルビン酸濃度と前記βクリプトキサンチン残存率との関係を、表1に示す。
【0086】
表1に示すように、βクリプトキサンチンと添加L−アスコルビン酸とを水に共存させることにより、βクリプトキサンチンが安定化することが確認された。特に、添加L−アスコルビン酸濃度を、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、0.01質量部以上としたとき、前記βクリプトキサンチンがより安定化した。
【0087】
【表1】

【0088】
[実施例2A]
(1)βクリプトキサンチンを含む粉末の調製
温州ミカン濃縮果汁を水で希釈し、濃縮還元果汁を調製した。前記濃縮還元果汁を95℃で30秒保持し、殺菌処理を行なった。その後、遠心処理によってβクリプトキサンチンを多く含む液状パルプ画分と、βクリプトキサンチンをほとんど含まない上清画分とに分離した。得られた前記液状パルプを真空乾燥で濃縮して、水分を除去し、ペーストを得た。前記ペーストに腑形剤を添加して噴霧乾燥し、βクリプトキサンチンを含有する粉末を得た。前記粉末は、水分率2.2%、たんぱく質9.1w/w%、脂質9.4w/w%、炭水化物75.6w/w%、βクリプトキサンチン0.136w/w%であった。
【0089】
(2)βクリプトキサンチン含有水の調製
調製した前記温州ミカン由来の粉末と水とを混合して、混合液を調製した。前記混合は、前記混合液に含まれるβクリプトキサンチンと前記混合する水との質量比が、1mg:50g(最終的に得られるβクリプトキサンチン含有水100質量部あたりβクリプトキサンチン0.0022質量部)となるように行った。前記混合液に、ビタミンC(L−アスコルビン酸)を添加して、撹拌混合し、βクリプトキサンチン含有水を調製した。前記ビタミンCの添加により、前記βクリプトキサンチン含有水におけるL−アスコルビン酸の全量は、前記βクリプトキサンチン含有水全体100質量部に対し、0.005、0.01、0.02、0.1および0.2質量部とした。
【0090】
(3)βクリプトキサンチン安定化試験
5種類の前記βクリプトキサンチン含有水を、それぞれ、褐色瓶に50gずつ充填した。その後、各褐色瓶を、90℃、30分間の条件で加熱殺菌処理し、40℃にて保存した。保存開始日、保存開始から2ヵ月後に、サンプリングを行い、前記実施例1Aと同様の方法により、各サンプルのβクリプトキサンチン量を測定した。そして、保存開始日におけるβクリプトキサンチン量を100%として、βクリプトキサンチンの残存率を求めた。
【0091】
前記添加L−アスコルビン酸濃度と前記βクリプトキサンチン残存率との関係を、表2に示す。
【0092】
表2に示すように、βクリプトキサンチンと添加L−アスコルビン酸とを水に共存させることにより、βクリプトキサンチンが安定化することが確認された。特に、添加L−アスコルビン酸濃度を、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、0.02質量部以上としたとき、前記βクリプトキサンチンがより安定化した。
【0093】
【表2】

【0094】
[実施例3A]
(1)βクリプトキサンチンを含む濃縮液の調製
温州ミカン濃縮果汁を水で希釈し、濃縮還元果汁を調製した。前記濃縮還元果汁を95℃で30秒保持し、殺菌処理を行なった。その後、遠心処理によってβクリプトキサンチンを多く含む液状パルプ画分と、βクリプトキサンチンをほとんど含まない上清画分とに分離した。得られた前記液状パルプを真空乾燥で2倍に濃縮し、βクリプトキサンチンを含有する濃縮液を得た。前記濃縮液は、水分率80%、たんぱく質2.9w/w%、脂質0.3w/w%、糖質15w/w%、食物繊維2.5w/w%、βクリプトキサンチン0.03w/w%であった。
【0095】
(2)βクリプトキサンチン含有水の調製
調製した前記温州ミカン由来の濃縮液と水とを混合して、混合液を調製した。前記混合は、前記濃縮液に含まれるβクリプトキサンチンと前記混合する水との質量比が、1mg:50g(最終的に得られるβクリプトキサンチン含有水100質量部あたりβクリプトキサンチン0.0015質量部)となるように行った。前記混合液に、ビタミンC(L−アスコルビン酸)を添加して、撹拌混合し、βクリプトキサンチン含有水を調製した。前記ビタミンCの添加により、前記βクリプトキサンチン含有水におけるL−アスコルビン酸の全量は、前記βクリプトキサンチン含有水全体100質量部に対し、0.005、0.01、0.02、0.1および0.2質量部とした。
【0096】
(3)βクリプトキサンチン安定化試験
5種類の前記βクリプトキサンチン含有水を、それぞれ、褐色瓶に50gずつ充填した。その後、各褐色瓶を、90℃、30分間の条件で加熱殺菌処理し、40℃にて保存した。保存開始日、保存開始から2ヵ月後に、サンプリングを行い、前記実施例1Aと同様の方法により、各サンプルのβクリプトキサンチン量を測定した。そして、保存開始日におけるβクリプトキサンチン量を100%として、βクリプトキサンチンの残存率を求めた。
【0097】
前記添加L−アスコルビン酸濃度と前記βクリプトキサンチン残存率との関係を、表3に示す。
【0098】
表3に示すように、βクリプトキサンチンと添加L−アスコルビン酸とを水に共存させることにより、βクリプトキサンチンが安定化することが確認された。特に、添加L−アスコルビン酸濃度を、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、0.02質量部以上としたとき、前記βクリプトキサンチンがより安定化した。
【0099】
【表3】

【0100】
[実施例4A]
前記実施例1A、2Aおよび3Aで調製したβクリプトキサンチン含有水について、20℃および25℃での保存安定性を求めた。
【0101】
保存安定性は、下記文献を参照して、以下の方法により算出した。なお、特に示さない限り、下記文献の条件を援用した。
「医薬品の安定性−よりよい開発と評価のための基礎から実際まで−」、吉岡澄江、南江堂、1995年発行
【0102】
βクリプトキサンチンは、一般的に、ビタミンAに変換されることから、プロビタミンAに分類されている。そこで、βクリプトキサンチンの活性化エネルギーは、ビタミンの活性化エネルギーに近似すると仮定し、前記ビタミンの活性化エネルギーに基づいて、βクリプトキサンチンの安定化予測、すなわち、20℃および25℃の安定期間の算出を行った。具体的には、前記文献の95頁図185のグラフを参照した。前記グラフを図1に示す。図1は、複合ビタミン液剤における塩酸チアミンの分解のアレニウスプロットであり、Y軸は、log Kobs(day−1)を示し、X軸は、1/T(K−1)を示す。前記グラフに記載されている、前記複合ビタミン液剤における塩酸チアミンの分解の活性化エネルギーに基づいて、安定期間の算出を行った。
【0103】
図1において、Y軸は、ln対数ではなくlog対数で表わされているため、ln kへの換算を行った。まず、図1のプロットデータに基づき、Kobs、log10k、T(℃)および1/T(K−1)を、下記表4に示す。そして、表4のこれらのデータから、Y軸をln kに換算した。換算したln kの結果を、下記表4にあわせて示す。
【0104】
【表4】

【0105】
つぎに、換算したln kおよび図1のX軸の1/T(K−1)から、下記式(1)で表わされるアレニウス式に基づいて、−E/Rおよびln Aを算出した。その結果、−E/Rは、a=−13005、ln Aは、b=35.139となった。
y=ax+b ・・・(1)
y=ln k
x=1/T
a=−E/R
b=ln A
【0106】
そして、得られた−E/Rを用いて、前記文献142頁に記載されている下記式(2)ならびに実施例1A、2Aおよび3Aにおける保存結果(40℃で2ヵ月保存)から、20℃または25℃での可能な保存期間を算出した。
ln t90(T1)/t90(T2)=(E/R)(1/T−1/T) ・・・(2)
【0107】
その結果、前記実施例1A、2Aおよび3Aのβクリプトキサンチン含有水は、いずれも、20℃の条件において約34ヵ月、25℃の条件において約16.2ヵ月、βクリプトキサンチンを安定な状態で保存できることが算定された。この結果は、例えば、常温(20℃〜25℃)において、βクリプトキサンチンを、2年以上安定な状態で保存できることを示唆している。
【0108】
以上のように、第1の形態における、本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、βクリプトキサンチンを含む水に、ビタミンCが添加されることによって、前記βクリプトキサンチンが安定化される。ビタミンCは、安価であり、且つ、飲食品に対する添加剤として、安全性にも優れる。さらに、ビタミンCによれば、他の安定化剤と併用することなく、βクリプトキサンチンを安定化できる。このため、本発明によれば、安価に、安全性に優れた安定化βクリプトキサンチン含有水を提供できる。このように安定化されたβクリプトキサンチン含有水であれば、例えば、飲料等の飲食品として、または、飲食品への食品添加物として、適用範囲が広がり、極めて有用である。
【0109】
[実施例1B]
(1)βクリプトキサンチンを含むペーストの調製
温州ミカン濃縮果汁を水で希釈し、濃縮還元果汁を調製した。前記濃縮還元果汁を95℃で30秒保持し、殺菌処理を行なった。その後、遠心処理によってβクリプトキサンチンを多く含む液状パルプ画分と、βクリプトキサンチンをほとんど含まない上清画分とに分離した。得られた前記液状パルプを真空乾燥で濃縮して、水分を除去し、βクリプトキサンチンを含有するペーストを得た。前記ペーストは、水分率60%、食物繊維1.3w/w%、βクリプトキサンチン0.07w/w%、ビタミンC0.006w/w%であった。
【0110】
(2)βクリプトキサンチン含有水の調製
調製した前記温州ミカン由来のペーストと水とを混合して、βクリプトキサンチン含有水を調製した。前記混合は、前記βクリプトキサンチン濃度が、前記水および前記水に含まれる成分の全合計量100質量部に対し、所定の質量部となるように設定した。前記所定の質量部は、0.0031、0.0044、0.0062、0.0086、0.0176および0.0244質量部とした。このようにして、βクリプトキサンチン濃度が異なる6種類のβクリプトキサンチン含有水を調製した。前記各βクリプトキサンチン含有水を十分に撹拌し、90gをアルミパウチに充填し、85℃、30分の条件で殺菌した。比較例として、前記βクリプトキサンチン濃度を0.0011および0.0016質量部としたこと以外は、同様にして、2種類のβクリプトキサンチン含有水を調製した。
【0111】
(3)βクリプトキサンチン安定化試験
実施例の6種類の前記βクリプトキサンチン含有水および比較例の2種類の前記βクリプトキサンチン含有水を、それぞれ、45℃で1ヵ月間保存した。保存開始日、および保存開始から1ヵ月後に、サンプリングを行い、以下に示すように、HPLCによって、各サンプルのβクリプトキサンチン量を測定した。そして、保存開始日におけるβクリプトキサンチン量を100%として、βクリプトキサンチンの残存率を求めた。
【0112】
前記サンプルは、HPLCに供する前に、アルカリ条件下、70℃で30分処理した。これによって、前記サンプル中のβクリプトキサンチンのケン化を行い、全てフリー体に変換した。前記処理後のサンプルを、液−液抽出した後、濃縮し、濃縮サンプルをHPLCサンプルとした。
【0113】
HPLCによるβクリプトキサンチン量の測定は、J’sphere ODS−M80 250×4.6mmI.D.カラム(商品名、ワイエムシィ社製)を接続したHPLC装置を使用し、UV検出器L−4200H(商品名、日立製作所製)により、455nmの吸光度を測定することで行った。カラムの条件は、以下の通りとした。
移動層:0.1%酢酸およびα−トコフェロール50ppmを含むアセトニトリル/テトラヒドロフラン(体積比95/5)
流速:1.0mL/分
カラム温度:55℃
【0114】
前記βクリプトキサンチン含有水における前記βクリプトキサンチン濃度と前記βクリプトキサンチン残存率との関係を、表5に示す。表5に示すように、前記βクリプトキサンチン濃度を0.003質量部以上に設定するとことにより、βクリプトキサンチンが安定化することが確認された。
【0115】
【表5】

【0116】
[実施例2B]
(1)βクリプトキサンチンを含む粉末の調製
温州ミカン濃縮果汁を水で希釈し、濃縮還元果汁を調製した。前記濃縮還元果汁を95℃で30秒保持し、殺菌処理を行なった。その後、遠心処理によってβクリプトキサンチンを多く含む液状パルプ画分と、βクリプトキサンチンをほとんど含まない上清画分とに分離した。得られた前記液状パルプを真空乾燥で濃縮して、水分を除去し、ペーストを得た。前記ペーストに腑形剤を添加して噴霧乾燥し、βクリプトキサンチンを含有する粉末を得た。前記粉末は、水分率2.2%、たんぱく質9.1w/w%、脂質9.4w/w%、炭水化物75.6w/w%、βクリプトキサンチン0.136w/w%であった。
【0117】
(2)βクリプトキサンチン含有水の調製
調製した前記温州ミカン由来の粉末と水とを混合して、βクリプトキサンチン含有水を調製した。前記混合は、前記βクリプトキサンチン濃度が、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、所定の質量部となるように設定した。前記所定の質量部は、0.0005、0.0010、0.0022、0.0031、0.0060および0.0079質量部とした。このようにして、βクリプトキサンチン濃度が異なる6種類のβクリプトキサンチン含有水を調製した。前記各βクリプトキサンチン含有水を十分に撹拌し、90gをアルミパウチに充填し、85℃、30分の条件で殺菌した。
【0118】
(3)βクリプトキサンチン安定化試験
実施例の6種類の前記βクリプトキサンチン含有水を、それぞれ、45℃で1ヵ月間保存した。保存開始日、および保存開始から1ヵ月後に、サンプリングを行い、前記実施例1Bと同様の方法により、HPLCによって、各サンプルのβクリプトキサンチン量を測定した。そして、保存開始日におけるβクリプトキサンチン量を100%として、βクリプトキサンチンの残存率を求めた。
【0119】
前記βクリプトキサンチン含有水における前記βクリプトキサンチン濃度と前記βクリプトキサンチン残存率との関係を、表6に示す。表6に示すように、前記βクリプトキサンチン濃度を0.003質量部以上に設定することにより、βクリプトキサンチンが安定化することが確認された。
【0120】
【表6】

【0121】
[実施例3B]
(1)βクリプトキサンチンを含む濃縮液の調製
温州ミカン濃縮果汁を水で希釈し、濃縮還元果汁を調製した。前記濃縮還元果汁を95℃で30秒保持し、殺菌処理を行なった。その後、遠心処理によってβクリプトキサンチンを多く含む液状パルプ画分と、βクリプトキサンチンをほとんど含まない上清画分とに分離した。得られた前記液状パルプを真空乾燥で2倍に濃縮し、βクリプトキサンチンを含有する濃縮液を得た。前記濃縮液は、水分率80%、たんぱく質2.9w/w%、脂質0.3w/w%、糖質15w/w%、食物繊維2.5w/w%、βクリプトキサンチン0.03w/w%であった。
【0122】
(2)βクリプトキサンチン含有水の調製
調製した前記温州ミカン由来の濃縮液と水とを混合して、βクリプトキサンチン含有水を調製した。前記混合は、前記βクリプトキサンチン濃度が、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、所定の質量部となるように設定した。前記所定の質量部は、0.0007、0.0015、0.0025、0.0053および0.0072質量部とした。このようにして、βクリプトキサンチン濃度が異なる5種類のβクリプトキサンチン含有水を調製した。前記各βクリプトキサンチン含有水を十分に撹拌し、90gをアルミパウチに充填し、85℃、30分の条件で殺菌した。
【0123】
(3)βクリプトキサンチン安定化試験
実施例の5種類の前記βクリプトキサンチン含有水を、それぞれ、45℃で1ヵ月間保存した。保存開始日、および保存開始から1ヵ月後に、サンプリングを行い、前記実施例1Bと同様の方法により、HPLCによって、各サンプルのβクリプトキサンチン量を測定した。そして、保存開始日におけるβクリプトキサンチン量を100%として、βクリプトキサンチンの残存率を求めた。
【0124】
前記βクリプトキサンチン含有水における前記βクリプトキサンチン濃度と前記βクリプトキサンチン残存率との関係を、表7に示す。表7に示すように、前記βクリプトキサンチン濃度を0.003質量部以上に設定することにより、βクリプトキサンチンが安定化することが確認された。
【0125】
【表7】

【0126】
[実施例4B]
前記実施例1B、2Bおよび3Bで調製したβクリプトキサンチン含有水について、20℃および25℃での保存安定性を求めた。保存安定性の算出は、前記実施例4Aと同様に行った。
【0127】
その結果、前記実施例1B、2B、3Bのβクリプトキサンチン含有水は、20℃の条件において約32.7ヵ月、25℃の条件において約15.6ヵ月、βクリプトキサンチンを安定な状態で保存できることが算定された。この結果は、例えば、常温(20℃〜25℃)において、βクリプトキサンチンを、2年以上安定な状態で保存できることを示唆している
【0128】
以上のように、第2の形態における、本発明のβクリプトキサンチンの安定化方法は、前記βクリプトキサンチン含有水において、βクリプトキサンチンを所定濃度に設定することによって、βクリプトキサンチンを安定化できる。本発明によれば、βクリプチキサンチンを前記所定濃度とすることで、安定化剤を用いることなく、安価にβクリプトキサンチンを安定化できる。このため、本発明によれば、前記安定化剤を使用することなく安価に、βクリプトキサンチンを安定化できる。また、このように、余分な成分である前記安定化剤が不要であることから、安全性の高いβクリプトキサンチン含有水を安価に提供できる。このため、本発明によれば、例えば、安全性および安定性に優れた安価なβクリプトキサンチン含有水を、飲食品または飲食品の添加剤として、広い適用範囲に提供でき、極めて有用である。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上のように、本発明の安定化βクリプトキサンチン含有水は、βクリプトキサンチンを含む水に、ビタミンCが添加されることによって、前記βクリプトキサンチンが安定化される。ビタミンCは、安価であり、且つ、飲食品に対する添加剤として、安全性にも優れる。さらに、ビタミンCによれば、他の安定化剤と併用することなく、βクリプトキサンチンを安定化できる。このため、本発明によれば、安価に、安全性に優れた安定化βクリプトキサンチン含有水を提供できる。このように安定化されたβクリプトキサンチン含有水であれば、例えば、飲料等の飲食品として、または、飲食品への食品添加物として、適用範囲が広がり、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
βクリプトキサンチンを含む水に、ビタミンCが添加されていることによって前記βクリプトキサンチンが安定化されていることを特徴とする安定化βクリプトキサンチン含有水。
【請求項2】
前記水中の前記ビタミンCの濃度が、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、0.01質量部以上である、請求項1記載の安定化βクリプトキサンチン含有水。
【請求項3】
前記水中の前記ビタミンCの濃度が、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、0.02質量部以上である、請求項1記載の安定化βクリプトキサンチン含有水。
【請求項4】
前記水中の前記ビタミンCの濃度が、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、0.1質量部以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の安定化βクリプトキサンチン含有水。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の安定化βクリプトキサンチン含有水を含むことを特徴とする飲食品。
【請求項6】
前記安定化βクリプトキサンチン含有水に含まれるβクリプトキサンチンが、温州ミカン由来である、請求項5記載の飲食品。
【請求項7】
βクリプトキサンチンとビタミンCとを水に共存させることにより、前記βクリプトキサンチンを安定化させることを特徴とするβクリプトキサンチン安定化方法。
【請求項8】
前記水中のビタミンCの濃度が、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、0.01質量部以上である、請求項7記載の安定化方法。
【請求項9】
前記水中のビタミンCの濃度が、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、0.02質量部以上である、請求項7記載の安定化方法。
【請求項10】
前記水中のビタミンCの濃度が、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、0.1質量部以下である、請求項7から9のいずれか一項に記載の安定化方法。
【請求項11】
前記水中のビタミンCの濃度を調整する工程を含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の安定化方法。
【請求項12】
水中のβクリプトキサンチンの安定化工程を含み、前記安定化工程が、請求項7から11のいずれか一項に記載の安定化方法によって実施されることを特徴とする安定化βクリプトキサンチン含有水の製造方法。
【請求項13】
前記水中のビタミンCの濃度が、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、0.01質量部以上である、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
前記水中のビタミンC濃度を調整する工程を含む、請求項13記載の製造方法。
【請求項15】
βクリプトキサンチンを含む水に、前記水および前記水に含まれる成分の全合計100質量部に対し、0.01質量部以上となるようにビタミンCが添加されるように用いられることを特徴とする、ビタミンCを含むβクリプトキサンチン安定化剤。

【図1】
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【公開番号】特開2012−139212(P2012−139212A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260633(P2011−260633)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】