説明

安定化されたトポテカンリポソーム組成物および方法

凍結乾燥形態から、0.05から0.25ミクロンの間の大きさの範囲に選択されたリポソームの大きさを有し、約85〜100%のリポソームにトラップされたトポテカンを有する注射可能なリポソーム懸濁液に復元できるトポテカンリポソーム組成物が開示される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(技術分野)
本発明は、新規で安定なトポテカンリポソーム組成物、特に長期間凍結乾燥形態において明らかなトポテカン分解を伴うことなく貯蔵できる組成物に関する。本発明はさらに、選択されたリポソームの大きさおよび85〜100%の間のリポソームにトラップされたトポテカンを有する復元されたトポテカンリポソーム組成物に関する。本発明はさらに前記組成物の調製法に関する。
【0002】
(従来技術)
本発明は、通常のリポソーム懸濁液中に存在する水性媒体中で貯蔵する間に化学分解されやすいトポテカンなどのカンプトテシン類似体の安定な凍結乾燥されたリポソーム組成物を提供する。特に、本発明は凍結乾燥されたリポソーム固体組成物であって、カンプトテシン類似体、例えばトポテカンがリポソームに内部中にトラップされ、水性媒体で復元され、任意にさらに希釈されると、静脈内(非経口)投与によりすぐに投与することができる形態におけるリポソーム懸濁液組成物を提供する。
カンプトテシン類似体、例えば(S)−10−[(ジメチルアミノ)メチル−4−エチル−4,9−ジヒドロキシ−1H−ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2−b]キノロン−3,14(4H,12H)ジオン一塩酸塩(通常、トポテカン塩酸塩と称する)は抗腫瘍薬および抗ウイルス治療薬の両方として実証された有用性を有する。
【0003】
カンプトテシンに関する1つの問題は、水不溶性であり、これにより薬剤の送達が妨害される。化合物の水溶性を改善するためにカンプトテシンの多くの類似体が調製されてきた。トポテカンは、トポイソメラーゼ1の阻害剤であるカンプトテシンの半合成水溶性類似体である。トポテカンは他のカンプトテシン類似体と同様に、トポイソメラーゼIとDNAの間の共役複合体を安定化させ、その結果、酵素結合DNA開裂および一本鎖切断をもたらす。
注射用トポテカンHCl(Hycamtin、GlaxoSmithKline)は難治性卵巣癌の二次治療に関して安全かつ有効であると米国食品医薬品局により承認されている。ハイカムチン(トポテカン塩酸塩)についての現行の治療法の1つは、1.5mg/mのトポテカンの用量を静脈内注入により30分かけて毎日、連続して5日間、21日の治療単位の第1日から始めて投与することを含む。この高頻度の非経口投与の1つの欠点は、患者が不快なことである。別の欠点は、この非経口投与は、患者が医院を訪れることを必要とし、患者にとって不便である。従って、患者に不便および不快を最小限に抑える投薬計画を可能にするトポテカンの徐法性処方を開発することが必要とされる。
【0004】
カンプトテシンおよびその類似体、例えばトポテカンに関連する別の問題は、前記化合物が水性環境においてα−ヒドロキシラクトン環で加水分解を受けやすいことである。ラクトン環は開環して薬剤のカルボキシレート形態、トポイソメラーゼIに対してほとんど活性を示さない形態になる。カンプトテシンおよびその類似体のラクトン環安定性を向上されるための様々な方法が記載されている。例えば、ラクトン部分の加水分解は、化合物が低pH環境中に維持されるならば軽減されることがわかっている。別の方法は、化合物をリポソーム中にトラップすることである。いくつかのカンプトテシン/リポソーム組成物が記載されている(Constantinidesら(WO95/08986);Burke(米国特許第5,552,156号);Moynihan(WO9913816);Slater(US6355268)、およびMadden(US20020119990)(それぞれは全体として本発明の一部として参照される)。
【0005】
カンプトテシン類似体、特にトポテカンを、酸性内部を有するリポソーム中に封入することは、ラクトン環の安定性を向上させることができるが、このようなカプセル化は、水性媒体中のトポテカンの望ましくない化学的分解を防止しない。Kearneyら(International Journal of Pharmaceutics,127,(1996),229)は、水性媒体中のトポテカンが温度およびpHに依存した分解を受け、これは側鎖の脱アミノ化を介して進行し、その結果、10−ヒドロキシカンプトテシンおよびカンプトテシン二量体が形成されることを報告している。これらの分解生成物、特にカンプトテシン二量体は実際に水中に不溶性であり、針状結晶として沈殿する。リポソームトポテカン懸濁液処方を数ヶ月貯蔵した場合、結晶の数および大きさは、USP<788>試験により許容される異質粒子状物質を越えた。トポテカンの分解を克服するための一方法は、貯蔵媒体のpHを3より低くすることである。従来のリポソーム処方において、このような低pH環境をリポソーム内部または外部に提供することは不可能である。問題として、リポソームの脂質成分はこのような低pH環境において貯蔵安定性が不確定である。
【0006】
別の可能な方法は凍結乾燥によりリポソームを脱水することである。かかる薬剤封入リポソーム組成物を凍結乾燥し、その後復元して適用可能な投与形態を形成することが試みられてきた。しかしながら、通常の凍結乾燥および復元プロセスの結果、復元に際して、フリーな(封入されていない)薬物が実質的に放出された。例えば、通常の凍結乾燥および復元手順の結果、リポソームにトラップされた薬剤が実質的に放出され、典型的に20〜30%のフリーな(封入されていない)薬剤が復元されたリポソーム懸濁液中で検出される(T.Madden、第11章、“Liposomes Rational Design” Ed, A.S. Janoff, Marcel Dekker, New York 1999)。従って、貯蔵に際して安定性を維持できるリポソーム処方の利点を提供するカンプトテシン組成物を開発する必要性がある。
【特許文献1】WO95/08986
【特許文献2】米国特許第5,552,156号
【特許文献3】WO9913816
【特許文献4】US6355268
【特許文献5】US20020119990
【非特許文献1】Kearneyら、International Journal of Pharmaceutics,127,(1996),229
【非特許文献2】T.Madden、第11章、“Liposomes Rational Design” Ed, A.S. Janoff, Marcel Dekker, New York 1999
【0007】
(発明の開示)
本発明は、トポテカン、リポソームおよびクリプロテクタントを含む安定な凍結乾燥されたリポソーム組成物であって、トポテカンがリポソームの内部に実質的にトラップされているものに関する。特に、前記組成物中の少なくとも約85%のリポソームは、リポソームにトラップされたトポテカンであり、前記組成物中の約85%のリポソームは約0.05〜約0.25ミクロンの大きさを有する。本発明はさらに、トポテカン、リポソームおよびクリプロテクタントを含む復元されたリポソームトポテカン組成物であって、前記組成物中の約85%のリポソームが約0.05〜約0.25ミクロンの大きさを有し、前記組成物中の少なくとも約85%のトポテカンがリポソームにトラップされたトポテカンであり、トポテカン/脂質比が約0.02〜約0.4または約2〜40重量%であり、脂質がリポソームを形成するコレステロールおよびベシクル形成脂質の混合物(例えば、リン脂質またはリン脂質の混合物)であるものに関する。もう一つ別の態様において、本発明は、注射に適した水性リポソームトポテカン組成物の調製法に関し、ここにおいて、注射可能な組成物は少なくとも約85%のリポソームにトラップされたトポテカンからなる。このプロセスは、前記の凍結された組成物を水性媒体中で復元することを含む。もう一つ別の態様において、本発明は、復元された凍結乾燥物に関して行われたUSP<788>粒状物質試験により証明されるように著しいトポテカンの分解を引き起こすことなく、長期間保存できる凍結乾燥されたリポソームトポテカンに関する。さらにもう一つ別の態様において、本発明は二段階復元プロセスに関し、ここにおいて前記の凍結乾燥された組成物をまず復元して、生理学的浸透圧が似ている濃縮組成物を形成し、濃縮組成物を水性媒体で希釈して、静脈内注射に適した水性組成物を提供する。
【0008】
(図面の簡単な記載)
図1は、凍結乾燥前のCryo−TEMリポソームトポテカン懸濁液処方の顕微鏡画像である。
図2は、凍結乾燥後のCryo−TEMリポソームトポテカン(復元された懸濁液)の顕微鏡画像である。
【0009】
(発明の詳細な記載)
一態様において、本発明は、選択されたリポソームの大きさの特性を有し、長期間保存に関して安定であり、リポソームにトラップされた形態において少なくとも約85%のトポテカンを含有するリポソームトポテカン処方を提供する。もう一つ別の態様において、本発明は凍結乾燥されたリポソームトポテカン組成物を提供し、ここにおいて、リポソーム内部のトポテカンの大部分は沈殿した状態である。さらにもう一つ別の態様において、本発明は凍結乾燥されたリポソームトポテカンの調製法であって、長期間保存後、および復元後に、あらかじめ選択されたリポソームの大きさを有し、封入されていないトポテカンが比較的少なく、USP<788>粒状物質試験に合格する、使用できる状態のリポソーム組成物を提供する。さらに別の態様において、本発明は凍結乾燥されたリポソームトポテカン組成物であって、あらかじめ決められた体積の水性媒体で復元すると、主に約0.05から0.25ミクロンの間の選択された大きさの範囲にあるリポソームの大きさおよび、0.02から0.4または約2〜40重量%のトポテカン/脂質比で、全トポテカンの約85%〜100%を含有するリポソームにトラップされたトポテカンにより特徴づけられるリポソーム濃縮物を提供する、凍結乾燥されたリポソームトポテカン組成物を提供する。さらにもう一つの態様において、本発明は、類似した生理学的浸透圧の濃縮物を提供する低浸透圧媒体または蒸留水で復元された復元トポテカンリポソーム組成物を提供する。
【0010】
1.リポソームトポテカン調製
二段階からなる凍結乾燥物の調製に用いられるリポソームトポテカン懸濁液の調製法であって、第一段階は、中空リポソームの調製を含み、第二段階は遠隔挿入技術を用いて中空リポソーム中にトポテカンを挿入することからなる。
A.中空リポソーム調製
中空リポソーム懸濁液は、例えば、Szokaら、Ann. Rev. Biophys. Bioeng.9:467(1980);米国特許第4,235,871号;第4,501,728号;第4,837,028号、“Liposomes,” Marc J.Ostro編、Marcel Dekker, Inc.,New York,1983 第1章;およびHopeら、Chem. Phys. Lip. 40:89(1986)(これらは全て本発明の一部として参照される)に記載されている様々な方法を用いて調製することができる。様々なプロセスを用いて調製することができる。リポソームを生成するためのプロトコルは、一般に:脂質成分を有機溶媒中で混合し;脂質を乾燥し、水性緩衝溶液中に再懸濁させ;リポソームの整粒(例えば押出による)を行うことを含み、これらは全て当該分野において周知である。このような緩衝溶液は、当該分野において周知のように、あらかじめ決められたpHを有し、あらかじめ決められた塩および/または他の構成成分、例えばシュークロースを含有するように選択することができる。
【0011】
リポソームの別の調製法も利用できる。例えば、脂質粒子の自己集合に基づく洗剤透析を含む方法がWheelerら、米国特許第5,976,567号に記載されている。中空リポソームのもう一つ別の製造法は、選択された溶媒系中のリポソーム脂質の溶液が選択された比で、クリオプロテクタント、塩、および所定のpHの緩衝液構成成分を含有する水性媒体を含有する混合チャンバー中に注入される溶媒注入による。脂質溶液ならびに水性媒体は、典型的には、脂質の主鎖ゲル−液晶化遷移温度Tmより高い温度に維持される。混合チャンバー中で形成されるリポソーム分散液を次いで、サイジング装置、例えば、リポソームを特定の直径範囲に整粒するために設計されたLipex Biomembranes押出機(Northern Lipids、バンクーバー、カナダ)によりいくつかの経路を経て整粒することができる。装置は、整粒目的でポリカーボネート膜またはセラミックフィルターを含むことができる。生成されるリポソームを次いでダイアフィルトレーション(diafiltration)プロセスに付して、過剰のリポソーム媒体を薬剤挿入プロセスに好適な媒体と交換することができる。好ましい本発明のクリプロテクタントは、凍結乾燥前に約5%〜約20%、特に約5%〜約15%のリポソーム懸濁液の濃度のシュークロース、トレハロースまたはラクトースである。
【0012】
B.脂質成分
中空リポソームは、コレステロールおよび/または標準ベシクル形成脂質(一般に、天然のリン脂質、たとえばホスファチジルコリン(PC)、例えば卵、大豆または他の植物源から得られるものあるいは部分的または完全に合成の様々な脂質鎖長および不飽和度を有し、本発明における使用に好適なものから形成することができる。
合成、半合成および天然生成物のスフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、例えばこれらに限定されないが、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)、大豆ホスファチジルコリン(soy PC)、卵ホスファチジルコリン(egg PC)、水素化卵ホスファチジルコリン(HEPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)およびジミリストイルホスファチジル1コリン(DMPC)は本発明において用いられる好適なホスファチジルコリンである。これらのリン脂質はすべて商業的に入手可能である。本発明の一態様において、水素化大豆ホスファチジルコリンおよび/またはジステアロイルホスファチジルコリンはホスファチジルコリンとして使用される。好ましくは、水素化大豆ホスファチジルコリはホスファチジルコリンである。
【0013】
ホスファチジルグリセロール(PG)およびリン酸(PA)も本発明において用いられる好適なリン脂質であり、これらに限定されないが、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジラウリルホスファチジルグリセロール(DLPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ジミリストイルホスファチジン酸(DMPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)、ジラウリルホスファチジン酸(DLPA)、およびジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)が挙げられる。ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)は、処方において用いられる場合に好ましい負に荷電した脂質である。他の好適なリン脂質としては、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、およびラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、およびパルミチン酸鎖を含有するホスファチジン酸;負に荷電したリン脂質、例えば、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)およびホスファチジン酸(PA);負に荷電したステロール、例えば、コレステロールスルフェートおよびコレステロールヘミスクシネート;およびステロール、例えばコレステロールが挙げられる。使用される脂質は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルトアミド、およびポリグリセロールが挙げられる。脂質の選択は、一般に、例えばリポソームの大きさおよび血流中のリポソームの安定性および貯蔵安定性を考慮することにより導かれる。
【0014】
本発明において用いられる好ましいリポソーム組成物は、スフィンゴミエリンおよびコレステロールを含むものを包含する。リポソーム組成物中のスフィンゴミエリンとコレステロールの比は、変化し得るが、一般に、約75/25モル%/モル%スフィンゴミエリン/コレステロール〜約30/70モル%/モル%スフィンゴミエリン/コレステロールの範囲である。一態様において、約70/30モル%/モル%スフィンゴミエリン/コレステロール〜約55/45モル%/モル%スフィンゴミエリン/コレステロールを含有するリポソーム組成物を使用できる。さらにもう一つの具体例において、約55/45モル%/モル%スフィンゴミエリン/コレステロールを含有するリポソーム組成物を使用できる。他の脂質は、必要に応じて、例えば脂質酸化を防止するため、またはリガンドをリポソーム表面上に結合させるために本発明の組成物中に含めることができる。一般に、他の脂質を含める場合、このような脂質を含めると、結果としてスフィンゴミエリン/コレステロール比が減少する。この種類のリポソームはスフィンゴソームとして知られ、米国特許第5,814,335号(その開示は本発明の一部として参照される)にさらに詳細に記載されている。
【0015】
C.カンプトテシン類似体での中空リポソームの挿入
リポソームにトラップされたカンプトテシンの調製は、カンプトテシン薬剤をリポソーム中に挿入することを必要とする。挿入は受動的または能動的の何れかである。受動的挿入は一般に、薬剤を前記緩衝溶液に復元/水和時に添加することを必要とする。挿入プロセス中に、薬剤はリポソームの水性内部内にトラップされるようになり、ここでは、脂溶性でないならば、またベシクルが未反応のままであるならば大部分は残存する(このようなプロセスは、例えば、PCT公開番号WO95/08986(その開示は本発明の一部として参照される)において用いられる)。
【0016】
能動的挿入は、色々な意味で好ましく、貫膜pHまたはイオン勾配を用いることにより100%近い封入効率でリポソーム中に様々な治療薬を挿入することができる(Mayerら、Biochim.Biophys.Acta 1025:143−151(1990)およびMaddenら、Chem.Phys.Lipids 53:37−46(1990)参照)。多くの能動的挿入法が当業者に公知である。このような方法はすべて、貫膜勾配(例えば濃度勾配またはpH勾配)のある形態の確立を含み、これは治療化合物をリポソームの内部に引き込み、ここで貫膜勾配が維持される限り存在できる。非常に多量の所望の薬剤を、リポソーム内部中に薬剤がその水溶性限界を超え、リポソーム内部中の溶液から析出する程度まで挿入することができ、これにより連続した薬剤吸収をその濃度勾配より低くすることができる。
【0017】
本発明に関する使用に特に好ましいのは、米国特許第5.837,282号(その開示は本発明の一部として参照される)に記載されているイオノフォアによる薬剤挿入法である。この方法は、前から存在する貫膜一価または二価イオン勾配から貫膜pH勾配を生成させるためにリポソーム膜においてイオノフォアを使用する。
能動的挿入のもう一つ別の好ましい方法は、米国特許第5,316,771号および第5,192,549号に記載されている貫膜アンモニウムイオン勾配を使用する。さらにもう一つ別の好ましい両親媒性薬剤物質の挿入法は、米国特許第5.785,987号に記載され、ここにおいて、両親媒性薬剤物質を挿入するためにアルキルアンモニウム勾配が使用される。
【0018】
もう一つ別の好ましい能動的挿入法は、リポソーム内部でモノマーまたはポリマー多価酸を使用し、貫膜勾配法により挿入されたトポテカンで共沈物が形成され、この沈殿法はトポテカンをリポソーム中にさらに挿入するための推進力としての働きをする。多価酸はポリマーまたは非ポリマー有機または無機であってよい。例えば、多価酸は、ポリ硫酸塩、ポリスルホン酸塩、ポリリン酸塩またはポリカルボン酸塩、たとえば酒石酸塩、クエン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ジエチレンチアミン五酢酸塩、またはポリアクリル酸塩であってよい。この具体例において、沈殿剤はポリマーであってもよいし、あるいはは非ポリマーであってもよい。ポリマー化合物は、例えば、ポリアクリレート、硫酸コンドロイチンA、硫酸デキストラン、ポリビニル硫酸、またはポリリン酸である。
【0019】
リポソーム内のトポテカンの能動的挿入法全てにおいて、リポソーム内部に存在するカウンターイオンは、トポテカンがリポソームの内部に移動する際に沈殿するように選択される。例えば、イオノフォアによる挿入法において、MgSO溶液がリポソーム内部に存在し、Mgイオンがイオノフォアにより輸送されるので、SO(硫酸塩)アニオンがリポソーム内部に残される。トポテカンは、リポソーム中に挿入されるので、フリーな硫酸塩アニオンと結合し、硫酸トポテカンの沈殿を形成する。同様に、貫膜アンモニウムまたはアルキルアンモニウム勾配のいずれかでのリポソーム挿入の場合、トポテカンがリポソーム内部で硫酸トポテカンの沈殿を形成できるように硫酸アンモニウムまたは硫酸アルキルアンモニウムが選択される。
【0020】
II.リポソーム懸濁液の凍結乾燥
リポソームトポテカン懸濁液を調製したら、これを凍結乾燥する。凍結乾燥プロセスの間、リポソーム構造は破損されるようになり、封入されたトポテカンの漏出に至る。このような破損は、脂質濃度に関してある所定の比で存在し得るクリオプロテクタントの使用により防止できる。これらのクリオプロテクタントは、リポソームの内部ならびに外部媒体の両方で存在する。
これらのクリオプロテクタントは、糖、例えばシュークロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、シクロデキストリンおよびその誘導体から選択することができる。
これらのクリオプロテクタントは、ポリマー、たとえばポリエチレングリコール、デキストラン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシエチルデンプンであってもよい。
これらのクリオプロテクタントは単独または組み合わせとして使用できる。
【0021】
クリオプロテクタントは、水和媒体中に溶解されたこれらのクリオプロテクタントを使用することにより、中空リポソームの調製の間にリポソーム内水性層中に導入される。外部から、クリオプロテクタントは、薬剤の挿入プロセス完了後に行われるダイアフィルトレーションの間に導入される。所望のクリオプロテクタントを、ダイアフィルトレーションにより任意のリポソーム懸濁液処方の外部緩衝液の交換により導入することもできる。
リポソーム懸濁液をバイアル中に充填し、凍結乾燥する。
凍結乾燥プロセスの間、リポソーム懸濁液をまず凍結させ、凍結した物質を適当な温度、真空で第一乾燥工程に付し、凍結した物体を崩壊させることなく真空下で氷が昇華する。典型的には、第一乾燥のシェルフ温度は、0〜250mTorrの範囲の適当な圧力で−18℃〜−36℃の間の範囲で変化し得る。処方、大きさ、バイアルの形状、バイアルの数および凍結乾燥機の種類は、第一乾燥を完了するために必要な時間を制御し、この時間は数時間から数日まで変化し得る。第一乾燥が完了したら、シェルフ温度を所望の設定値に上昇させ、第二乾燥を行う。典型的には、シェルフ温度は、0から250mTorrの範囲の適当な圧力で0〜30℃の範囲内で変化し得る。第二乾燥の期間は、最終生成物について許容される残留湿分のレベルにより規定される。典型的には、第二乾燥は、2、3時間から数時間まで続く。
凍結乾燥された生成物中の残留湿分レベルは、所望の温度および期間の凍結乾燥物の貯蔵安定性に影響を及ぼす。望ましくは、凍結乾燥物中の残留湿分の量は、6%未満、さらに好ましくは4%未満でなければならない。
【0022】
III.凍結乾燥物の復元
所望の段階で、典型的には患者に投与する前に、所定の温度で長時間貯蔵されていた凍結乾燥物は、リポソーム懸濁液を得るために適当な媒体で復元する必要がある。復元媒体は、滅菌水、注射用水、pH緩衝溶液または5%デキストロース溶液(D5W)を包含する。復元は、通常室温で行われるが、他の温度も検討できる。
本発明の復元された凍結乾燥物は:
a.主に(約85%)、約0.05〜0.25ミクロンの間の選択された大きさの範囲内のリポソームの大きさを有するリポソーム、
b.約0.02から0.4の間のトポテカン/脂質重量比で約85〜100%のリポソームにトラップされたトポテカンであるリポソームにトラップされたトポテカン、
c.USP<788>粒状物質試験に合格するリポソーム懸濁液からなる。
【0023】
USP粒状物質試験は、光学顕微鏡により観察されるように異質粒状物質の数を明らかにする。USP<788>によると、10ミクロン以上の大きさを有する異質粒状物質の上限は3000であり、25ミクロン以上の大きさを有する粒子については300である。
本発明の復元された懸濁液は、脂質およびトポテカンの両方に関して、最小の化学分解を示す。
本発明の凍結乾燥された組成物の利点は、これらが冷蔵庫または室温で、明らかな脂質分解(酸化的または加水分解的)がなく、トポテカンの化学分解が最小で長期間保存できることである。
【0024】
トポテカンリポソーム凍結乾燥組成物は、容易に復元されて、所望のリポソームの粒度分布および少なくとも約85%、さらに典型的には90〜100%のリポソームにトラップされたトポテカンを有する濃縮物にすることもできる。トポテカンリポソーム濃縮物は、リポソームの大きさまたはリポソームに結合した薬剤のパーセンテージを明らかに変えることなく非経口投与用に希釈することができる。一段または二段(濃縮物を希釈することによる)のいずれかを用いて調製された、本発明の復元されたトポテカンリポソーム組成物は、リポソームの粒度分布、リポソームおよびトポテカン成分の両方の結合性、ならびに低率の未封入トポテカンのために、有利な生体内分布特性を有する。
【0025】
(実施例)
以下の実施例は、本発明に従って形成されたリポソームトポテカン懸濁液、凍結乾燥粉末および復元された懸濁液の調製法および性質を説明する。実施例は本発明の範囲を限定することを意図しない。
材料
トポテカンHClはGlaxoSmithKlineから入手し、卵スフィンゴミエリンおよびコレステロールはAvanti Polar Lipids,Inc.,(バーミンガム、AL)から入手し;シュークロース、トレハロース二水和物、ラクトース、硫酸マグネシウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩、およびカルシマイシンはSigma Chemical(セントルイス、MO)から入手し;200度エタノールはAAPER Alcohol andChemical Co.(シェルビービル、KY)から入手した。
【0026】
実施例1
リポソームにトラップされたトポテカン懸濁液の調製は、大規模(例えば>100g)または小規模(例えば<100g)で行うことができる。リポソームにトラップされたトポテカン懸濁液の調製に有用な能動的挿入方法は、米国特許第5,837,282号、第5,316,771号、第5,192,549号、第6,355,268号、第6,465,008号、および米国特許出願公開番号2002011990および20020110586に記載されている。リポソームにトラップされたトポテカン懸濁液のlab−benchスケールの調製法を以下に例示する。
【0027】
中空リポソームの調製
0.6gのコレステロールおよび1.3gのスフィンゴミエリンを含有するエタノール溶液(7.5mL)を60℃で調製する。この温エタノール溶液を、連続して撹拌しながら60℃に温度調節された50mLの水和緩衝液中に注入する。水和緩衝液は、353mMのMgSOおよび235mMのシュークロースからなる。多重膜リポソーム懸濁液を、65℃に温度調節された100mLサーモバレル押出機を用いて窒素圧下で押し出すことにより整粒する。押出機は、80nmの等しい孔径を有する2枚(nucleopore)のポリカーボネート膜が積層されている。(約)110nmの所望の平均粒径が得られるまで、押出プロセスを繰り返す。結果として得られるリポソーム懸濁液を35℃に冷却し、残存するエタノールおよびリポソームの外側に存在するMgSOを除去するために、300mMシュークロースおよび10mMリン酸ナトリウム(pH6)からなる緩衝液を用いたダイアフィルトレーションに付す。中空リポソーム懸濁液の濃度を40mg/mL脂質に調節する。
【0028】
トポテカンの中空リポソーム中への挿入
インキュベート(60℃)された10mLの中空リポソーム(濃度:40mg/mL脂質)、2.6mLの250mM EDTAナトリウム(pH6に調節)、1.3mLの1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6)、および0.1mLカルシマイシン(濃度2mg/mL)の混合物に、300mMシュークロース/酒石酸緩衝液(1mg/mL)中で調製された4mLのトポテカン溶液(10mg/mL)を含有する溶液を添加する。結果として得られる混合物をインキュベーション温度で30分間維持し(挿入プロセス)、次いで15℃に冷却する。結果として得られる挿入されたリポソームを、封入されていないトポテカンならびに挿入に用いられた他の加工助剤を除去するために300mMシュークロース/10mMリン酸ナトリウム(pH6)を用いたダイアフィルトレーションに付す。洗浄が完了したら、リポソームトポテカン懸濁液の濃度を40mg/mL脂質に調節する(約4mg/mLトポテカン)。
別法として、ダイアフィルトレーションプロセスの間、300mMシュークロース/10mMリン酸ナトリウム(pH6)緩衝液を300mMトレハロース/10mM酒石酸ナトリウム緩衝液(pH4)と置換することができる。
【0029】
実施例2
リポソームトポテカンの凍結乾燥
1mLのリポソームトポテカン懸濁組成物(4mg/mLトポテカンを含有)のサンプルを、凍結乾燥用の3mLバイアル中に充填した。Lyostar II凍結乾燥機(FTS Kinetics(ニューヨーク)により販売)を用いて凍結乾燥を行った。
使用した凍結乾燥サイクル
凍結条件
シェルフ温度 −40℃
ランプ速度 2.5℃/分
保持時間 15分
最終凍結設定温度 −40℃
特別凍結時間 60分
真空開始設定値 20
第一凍結乾燥
シェルフ設定値 −10℃
ランプ速度 2.5
時間 900分
真空設定値 100ミリTorr
第二乾燥
シェルフ設定値 0℃
ランプ速度 0.5
時間 540分
真空設定値 100ミリTorr
最終保持
シェルフ設定値 5℃
時間 15分
真空設定値 100ミリTorr
【0030】
一方において外部媒体中にシュークロースを含有し、他方においてトレハロースを含有するリポソームトポテカンサンプルの別の組を、第一乾燥温度を−30℃に設定する以外は、前記と同じ凍結乾燥サイクルを用いて凍結乾燥した。表1に実験をまとめる。
【表1】

【0031】
実施例3
復元および復元された生成物の分析
実施例2から得られる凍結乾燥物は、黄色がかったケーキとして得られ、これは振とうせずに容易に復元されて、リポソーム懸濁液を形成した。1mLの精製(miliQ)水を用いてサンプルを復元した。
凍結乾燥前のもとのリポソーム懸濁液、および凍結乾燥物の復元後の対応する生成物の粒径を、Nicomp380粒度分析器を用いて動的光散乱法により測定した。サンプル中に存在する全トポテカンを、HPLC法を用い、リポソームトポテカンサンプルをメタノール中に溶解させた後に測定した。リポソームトポテカンサンプル中の封入されていないトポテカンを、30KDミクロンフィルターを用いて単離し、サンプルHPLC分析を用いて定量化した。得られたデータを表2に示す。表に示されたデータによると、凍結乾燥および復元はもとのリポソームサンプルの粒径を保持している。90%より多くのトポテカンが凍結乾燥の間にリポソーム中に保持されていた。
【0032】
【表2】

*凍結乾燥前のサンプルについてのデータ
【0033】
実施例4
リポソームトポテカンの凍結乾燥
リポソームトポテカン懸濁液処方(4mg/mLトポテカンを含有)の1mLのサンプルを凍結乾燥用の3mLバイアル中に充填した。Lyostar II凍結乾燥機(FTS Kinetics(ニューヨーク)により販売)を用いて凍結乾燥を行った。
使用した凍結乾燥サイクル
凍結条件
シェルフ温度 −50℃
ランプ速度 2.5℃/分
保持時間 60分
最終凍結設定値 −50℃
特別凍結時間 300分
真空開始設定値 20mTorr
第一凍結乾燥
シェルフ設定値 −27℃
ランプ速度 0.1℃/分
時間 3600分
真空設定値 100ミリTorr
シェルフ設定値 20℃
ランプ速度 0.1℃/分
時間 480分
真空設定値 100ミリTorr
第二乾燥
シェルフ設定値 5℃
ランプ速度 0.5℃/分
時間 480分
真空設定値 100ミリTorr
最終保持
シェルフ設定値 5℃
時間 60分
真空設定値 100ミリTorr
pH6またはpH4のいずれかに調節された外部pHを有するリポソームトポテカン懸濁液サンプルの様々なバッチを、前記サイクルを用いて凍結乾燥した。
【0034】
実施例5
リポソームトポテカン凍結乾燥物を様々な条件下、例えば、−15、5および25℃で貯蔵した。これらのサンプルを定期的に1、2および3ヶ月で抜き取り、分析した。もとのリポソーム懸濁液の凍結乾燥前、および凍結乾燥物の復元後の対応する生成物の粒径を、Nicomp380粒径分析器を用いて動的光散乱技術により測定した。全トポテカンおよび未封入トポテカンの測定のためにHPLC法を用いる。この方法は、トポテカンの定量のための定組成溶離、およびそれに続く不純物分析のための勾配法を用いる。移動相Aは、1/9/0.01の比のアセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸からなり、一方、移動相Bは、アセトニトリル/水/トリフルオロ酢酸の4/6/0.01の比の混合物である。分析は、Cosmosil C18カラム(または有効同等物)上で行い、UV検出は228nmである。全トポテカン含量および不純物を測定するために用いられるサンプルの調製は、リポソームトポテカンサンプルをメタノールおよびトリフルオロ酢酸(100/0.022の比)からなる希釈媒体中に溶解させることにより行われる。リポソームトポテカンを、30K分子量カットオフを有するcentriconフィルターを通すことにより未封入トポテカンを単離し;濾液を次に分析する。
【0035】
表3および4に示す貯蔵安定性データによると、様々な条件で3ヶ月まで貯蔵した後に未封入トポテカンレベル、トポテカン分解物および復元された凍結乾燥物の粒径に有意な変化はない。
【表3】

【0036】
【表4】

【0037】
表5および6はそれぞれ、様々な条件での貯蔵する間の、pH6でのリポソームトポテカン懸濁液処方の針状粒子状物質数およびその対応する凍結乾燥物から得られるデータを示す。表5からのデータから、5℃で3ヶ月、または25℃で1ヶ月間貯蔵した場合に針状結晶が形成されるために、リポソームトポテカン懸濁液処方はUSP粒子状物質試験に合格しないことがわかる。同じ処方を凍結乾燥し、5℃または25℃のいずれかで貯蔵した場合、針状結晶数に変化はなく、従って、凍結乾燥された処方はUSP<788>粒状物質試験に合格する。
【0038】
【表5】

*多すぎて計数不可
【0039】
【表6】

【0040】
実施例6
Cryo−TEM分析
リポソーム結合性が凍結乾燥プロセスにより影響をうけるかどうかを確認するために、リポソームトポテカン懸濁液および実施例2からの凍結乾燥物のサンプルをCryo−TEM分析に付す。
A.リポソームトポテカン懸濁液のサンプルを300mMシュークロース緩衝液で1:1に希釈し、新たにグロー放電した400メッシュ銅格子上の有孔炭素−forvarフィルム上に、ガラス化前に室温(〜22℃)まで温める。サンプルの4μlアリコートをピペットでとる。
格子をゴム輪により閉じられたピンセットによりつかむ。ピンセットを、Plexiglasフリージングステーション中に位置する窒素ガス推進プランジャーに格子をおろして取り付ける。フリージングステーションは常に加湿され、薄い霧が形成され得るが、作業するために十分な視界は保守できる。格子の数インチ下、液体窒素中に浸漬した金属カップ中に液体エタンを入れる。格子上のサンプルのアリコートを、1対の先端が広くなったピンセットに取り付けられた1片の折りたたんだ濾紙で格子の両側を3秒間拭き取る。拭き取った直後に、ガス推進プランジャーを活性化することにより過冷却されたエタン中に格子を押し込む。ガラス状になったサンプルを液体窒素中に浸漬した小さな格子ボックスに移す。格子ボックスを低温貯蔵デュワー中、液体窒素下で貯蔵する。
【0041】
低温移動ステーションを用いてGatanシングルティルトクリオホルダー中にガラス化したサンプルは移され、Philips CM−12透過電子顕微鏡における観察の間、液体窒素温度またはその付近に維持される。画像を、低用量条件下、1.2μデフォーカス下でKodak SO−163電子画像フィルム上に記録することができる。電子顕微鏡写真は、CreoScitex EverSmart Supreme Scanner上、1270dpiでデジタル化することができる。
リポソームトポテカン懸濁液のサンプルのcryo−TEN画像を図1に示す。サンプルは、使用したコレステロールおよびスフィンゴミエリンのエタノール溶液の濃度が実施例1に記載されているものの半分である以外は、実施例1に従って行われた(例えば、相対的スケールで:0.6gのコレステロールの15mLのエタノール溶液および1.3gおよび100mLの水和緩衝液を用いて実施例1を行う)大規模調製から得られた。
【0042】
B.実施例2からの凍結乾燥物を1mLのmilliQ水で復元し、サンプルを次のようにして分析した:サンプルを300mMシュークロース緩衝液で1:1に希釈し、ガラス化の前に室温(〜22℃)まで温めた。新たにグロー放電した400メッシュ銅格子上の有孔炭素−formvarフィルム上にサンプルの4μlアリコートをピペットでとった。
格子をゴム輪により閉じられたピンセットによりつかむ。ピンセットを、Plexiglasフリージングステーション中に位置する窒素ガス推進プランジャーに格子をおろして直ぐに取り付けた。凍結ステーションを絶えず加湿した;薄い霧が形成されたが、作業するために十分な視界は保守された。格子の数インチ下、液体窒素中に浸漬した金属カップ中に液体エタンを入れる。格子上のサンプルのアリコートを、1対の先端が広くなったピンセット中に取り付けられた1片の折りたたんだ濾紙で格子の両側を3秒間拭き取った。拭き取った直後に、ガス推進プランジャーを活性化することにより過冷却されたエタン中に格子を押し込んだ。ガラス状になったサンプルを液体窒素中に浸漬した小さな格子ボックスに移す。格子ボックスを低温貯蔵デュワー中、液体窒素下で貯蔵する。
【0043】
低温移動ステーションを用いてGatanシングルティルトクリオホルダー中にガラス化したサンプルは移され、Philips CM−12透過電子顕微鏡における観察の間に液体窒素温度またはその付近に維持される。画像を、定用量条件下、1.2μデフォーカス下でKodak SO−163電子画像フィルム上に記録した。電子顕微鏡写真は、CreoScitex EverSmart Supreme Scanner上、1270dpiでデジタル化した。凍結乾燥されたサンプルの復元後のcryo−EM画像を図2に示す。
凍結乾燥/復元前(図1)および後(図2)に採取されたサンプルのcryo−TEM画像の比較から、リポソーム内部のトポテカン結晶は凍結乾燥により影響を受けず、凍結乾燥および復元プロセスの間、リポソーム構造はそのまま保持されることがわかる。
【0044】
本発明を特定の処方、調製条件、およびその用途に関して記載したが、本発明の精神から逸脱することなく様々な修正または変更を行うことができると理解される。当業者らは、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正を行うことができることを慣例の実験から認識するであろう。本明細書に記載された雑誌、特許および他の特許出願はそれぞれ全体として全文が記載されているかのように本発明の一部として参照される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、凍結乾燥前のCryo−TEMリポソームトポテカン懸濁液処方の顕微鏡画像である。
【図2】図2は、凍結乾燥後のCryo−TEMリポソームトポテカン(復元された懸濁液)の顕微鏡画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トポテカン、リポソームおよびクリプロテクタントを含む凍結乾燥されたトポテカンリポソーム組成物であって、トポテカンが実質的にリポソーム内部にトラップされている凍結乾燥されたトポテカン組成物。
【請求項2】
トポテカン、リポソームおよびクリプロテクタントを含む凍結乾燥されたトポテカンリポソーム組成物であって、水で復元されてその復元組成物を形成し、ここにおいて、前記組成物中少なくとも約85%のトポテカンがリポソームにトラップされたトポテカンであり、前記組成物中約85%のリポソームが約0.05〜約0.25ミクロンの大きさを有するところの、凍結乾燥されたトポテカンリポソーム組成物。
【請求項3】
トポテカン、リポソームおよびクリプロテクタントを含む復元された凍結乾燥トポテカンリポソーム組成物であって、
前記組成物中の約85%のリポソームが約0.05〜約0.25ミクロンの大きさを有し;
前記組成物中のトポテカンの少なくとも約85%がリポソームにトラップされたトポテカンであり;
トポテカン/脂質比が約0.02から約0.4(重量)の間であり、脂質構成成分が、コレステロールおよびリポソームを形成するベシクル形成脂質を含むところの、
復元された凍結乾燥トポテカンリポソーム組成物。
【請求項4】
2%以下のトポテカン分解生成物を含む請求項1または請求項4記載の凍結乾燥されたトポテカンリポソーム組成物。
【請求項5】
長期間の貯蔵後の復元により針状粒状物質の数および大きさが有意に増大しない請求項1または請求項4記載の凍結乾燥されたトポテカンリポソーム組成物。
【請求項6】
クリプロテクタントが1またはそれ以上のシュークロース、トレハロースおよびラクトースを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の凍結乾燥されたトポテカンリポソーム組成物。
【請求項7】
注射に適した水性リポソームトポテカン組成物を調製する方法であって、前記組成物が少なくとも約85%のリポソームにトラップされたトポテカンを含み;
請求項1または請求項2記載の凍結乾燥された組成物を復元して、前記水性組成物を得ることを含む方法。
【請求項8】
注射に適した水性リポソームトポテカン組成物を調製する方法であって、前記組成物が少なくとも約85%のリポソームにトラップされたトポテカンを含み;
請求項1または請求項2記載の凍結乾燥された組成物を復元して、トポテカンリポソーム濃縮物を形成し;
トポテカンリポソーム濃縮物を水性媒体で希釈して、静脈内注射に適したリポソーム濃度を有する前記水性組成物を提供することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−522085(P2007−522085A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517707(P2006−517707)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/020592
【国際公開番号】WO2005/002546
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(591002957)スミスクライン・ビーチャム・コーポレイション (341)
【氏名又は名称原語表記】SMITHKLINE BEECHAM CORPORATION
【Fターム(参考)】