説明

安定化されたピコプラチンの経口投与剤型

本発明は、コアとコーティングとを含む、抗癌薬ピコプラチンのための経口投与剤型であり、酸化還元−活性金属塩を含まない投与剤型を提供する。錠剤のコアは、約10〜60重量%のピコプラチンであり、平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物であるピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物を含む約40〜80重量%の充填剤と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤とを含む、実質的に乾燥の粉末である。投与剤型は、分散剤をさらに含みうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、抗癌有機白金薬物ピコプラチン(picoplatin)の安定化された経口投与剤型、経口投与剤型の調製方法、および癌処置における経口投与剤型の使用方法である。
【背景技術】
【0002】
ピコプラチンは、シスプラチンおよびカルボプラチン等の旧世代の有機白金薬物に対する耐性を有するものを含む、様々な型の悪性疾患の処置に有望な、新世代の有機白金薬物である。ピコプラチンは、小細胞肺癌、結直腸癌、およびホルモン抵抗性前立腺癌を含む様々な種類の癌または腫瘍の処置において有望である。
【0003】
構造的に、ピコプラチンは、
【0004】
【化1】

であり、シス―アンミンジクロロ(2―メチルピリジン)白金(II)、あるいは、[SP―4―3]―アンミン(ジクロロ)(2―メチルピリジン)白金(II)と命名される。化合物は、四配位であり三つの異なるリガンドタイプを有する二価白金の平面四角形錯体である。二つのリガンドはアニオン性であり、二つは中性である;したがって、ピコプラチンにおける白金は+2電荷を担持するため、ピコプラチン自体は中性化合物であり、対イオンの存在は不要である。分子中にα―ピコリン(2―メチルピリジン)の存在をさす「ピコプラチン」の名称は、この物質のUnited States Adopted Name(USAN)、British Approved Name(BAN)、およびInternational Nonproprietary Name(INN)である。ピコプラチンは、JM473、NX473、ZD0473、およびAMD473のような文献においても引用され、米国特許第5,665,771号、第6,518,428号、および米国特許出願第10/276,503号に開示される。
【0005】
四配位平面四角形白金(II)は、塩素分子を伴う等、八面体Pt(IV)錯体に酸化しやすいことが周知である。また、平面四角形白金(II)錯体は、リガンド置換反応において、ハロゲン化物、アミン、チオ化合物、および一定の条件下で水等、様々な求核剤によるアキシャルアタック(axial attack)を受けやすい。したがって、ピコプラチンは、純粋形状において比較的安定しているが、求核分子的実体の存在下など、一定の条件下で分解されやすくなりうる。非特許文献1を参照。ピコプラチンは、患者に投与されると、塩化物リガンドのいずれかの置換により生じる二つの異なる水の形状へある程度代謝的に変換されると考えられる。これらの(中性の水による塩素アニオンの置換により生じる)カチオン種は反応性であり、細胞DNAと相互作用して、架橋および最終的な細胞死をもたらす。
【0006】
ピコプラチンは、光の存在下で不安定であることもわかっている。それは、特にスペクトルの青色/紫端で可視光を吸収し、それが光分解をもたらす。経口投与剤型への、活性成分の露光を減らすように適合されたコーティング(coating)の提供は、公知技術である。例えば、医薬品のためのOPADRY(登録商標)コーティングの製造者Colorcon Inc.は、そのウェブサイトwww.colorcon.comで、「フィルムコーティングは、光分解されやすい活性物質を含むコア(core)に保護を提供する能力をもつ。フィルムコーティングは、フィルムコーティング中の二酸化チタン等の不透明化(遮蔽)剤を用いて、この保護を与えうる。これは、光を反射して、錠剤コアに入る光の量を減らす能力を有する。」としている。
【0007】
ピコプラチンは、以前には、静脈内(IV)投与により、溶液において患者に提供されている。標準条件下のピコプラチンは固体であり、水中での溶解性はわずかで乏しい。ピコプラチンの比較的低い水中溶解性(約1mg/mL)により、100mg以上の範囲の全量を患者に提供するために、相当の体積の液体が静脈内送達されることが必要となる(すなわち、100mgの用量を提供するために、0.5mg/mLの濃度で、200mLほどの液体がIV注入により導入されなければならない)。癌患者のための典型的なヒト投与量は、投与あたり数百ミリグラムのオーダーとなり得、二三週間毎に繰り返されうるため、IV経路によるこの物質の各投与で、相当の体積の液体が患者に送達されなければならない。したがって静脈内投与は、静脈への針の挿入が必要であり、比較的大きい体積のピコプラチン溶液の注入を可能にするために患者が静止していなければならない時間が比較的長くなるため、望ましくない。ピコプラチンは、IV投与剤型中のような溶液中で、特に光分解されやすいことも分かっている。ピコプラチンは経口的に生物利用可能であるが、水中での低い安定性、不安定性、毒性および催奇形性が、有効な経口投与剤型の調製への障害となる。したがって、ピコプラチンの有効な投与剤型が必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Advanced Inorganic Chemistry,F.Albert CottonおよびGeoffrey Wilkinson,Second Revised Edition(1966)and later editions,Interscience Publishers
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、投与剤型が、約10〜60重量%の粒状のピコプラチンであり、平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物であるピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物を含む約40〜80重量%の充填剤と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤と、場合によって分散剤(dispersant)とを含む固体コアと;コアの外表面上の連続コーティングとを含み;コアおよび/またはコーティングが、酸化還元−活性金属塩を実質的に含まない、ピコプラチンのための経口投与剤型を提供する。好ましくは、コーティングおよびコアの両方が、in vivoまたはin vitro(例えば貯蔵中)のピコプラチンに有害でありうる量の酸化還元−活性金属を含まない。
【0010】
コーティングは、コアのための保護カバーを形成し、内容物を酸素、光、および反応性化学物質による環境劣化から保護するとともに、投与剤型を取り扱う人を細胞傷害性ピコプラチンから保護する。コーティングは、硬または軟ゼラチン;ポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース;糖、例えばスクロース;またはヒトの摂取に適した任意の他の無毒性の水溶性材料を含みうる。
【0011】
約10ミクロン未満の平均粒径を有するピコプラチン微粒子物は、約7ミクロン未満の平均粒径を有するのが好ましく、個別微粒子物の約90%が約5ミクロン未満の直径を有するような粒径分布を有するのがより好ましい。
【0012】
コアが圧縮されて錠剤コアが形成され得た後、コートされて錠剤が得られ、成形されてピルコア(pill core)が形成され得た後、コートされてピルまたはカプセルフィル(capsule fill)のために使用できる粒状物が形成され得る。ピコプラチン微粒子物は、たとえばジェットミリング(jet−milling)により得られ得るような微粉化材料、または溶媒からの沈殿により調製されうるようなまたは微結晶性材料、または凍結乾燥方法により形成される微粒子物であり得、または所望の小さな粒径をもたらす三つの方法の任意の組み合わせにより形成されうる微粒子物であり得る。ピコプラチン微粒子物材料は、炭水化物を含む充填剤、潤滑剤、および場合によって分散剤(dispersing agent)も含む、コアの一部を形成する。充填剤は、錠剤、ピル、または粒状物経口投与剤型のコアを構成する材料の約40〜80重量%をなす。最大約5重量%の有効な量の潤滑剤と、場合によって約5〜10重量%の分散剤(「分散剤」)が含まれる。コアは、相当量の酸化還元−活性金属塩を含まない。
【0013】
コアをカバーする錠剤コーティングは、相当量の遷移金属塩等の酸化還元−活性金属塩を含まない。例えばコーティングは、酸化チタンまたは酸化鉄を含まない。驚くべきことに、酸化チタンおよび酸化鉄のような酸化還元−活性金属塩が、本投与剤型のような製剤中のピコプラチンの分解をin vivoまたはin vitroでもたらしうることが分かっている。したがって、本発明の経口投与剤型は、このような材料を特にこのような材料が入射光を減衰させるために配置されているコーティングから除外する。むしろ、本発明のコーティングは、不透明化材料として硫酸カルシウム等の酸化還元−反応性がより低い金属塩を含むことができ、追加の材料も同様にピコプラチンを生物活性の基本的に純粋な形で維持するのに適するという条件で、入射光を吸収または反射する追加の材料を含みうる。硫酸カルシウムは、ピコプラチンの分解をもたらさず、コーティング中の好ましくは細分散形状の硫酸カルシウムは、投与剤型のピコプラチンを光分解から保護するのに役立つ。
【0014】
本発明は、(a)約10〜60重量%のピコプラチンであって、平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物であるピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物を含む約40〜80重量%の充填剤と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤と、場合によって分散剤とを含む粒状物から形成される粉末を圧縮して、錠剤コアを得る工程と、(b)錠剤コアをコートして、水溶性または水分散性コーティングをその外表面上に有するコート錠(coated tablet)を得る工程とを含む方法によって調製される、ピコプラチンのための経口投与剤型も提供するが、ここでコアおよびコーティングが酸化還元−活性金属塩を実質的に含まない。
【0015】
本発明は、(a)約10〜60重量%のピコプラチンであって、平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物であるピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物を含む約40〜80重量%の充填剤と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤と、場合によって分散剤とを含む粒状物から形成される粉末を成形して、ピルコアを得る工程と、(b)ピルコアをコートして、水溶性または水分散性コーティングをその外表面上に有するコートピル(coated pill)を得る工程とを含む方法によって調製される、ピコプラチンのための経口投与剤型も提供するが、ここでコアおよびコーティングが酸化還元−活性金属塩を実質的に含まない。
【0016】
本発明は、約10〜60重量%のピコプラチンであり、平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物であるピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物を含む約40〜80重量%の充填剤と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤と、場合によって分散剤とを含む複数の顆粒をゼラチンカプセルシェルに封入してカプセル化顆粒を得る工程を含む方法により調製される、ピコプラチンのための経口投与剤型も提供する。
【0017】
本発明は、(a)約10〜60重量%のピコプラチンであり、平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物であるピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物を含む約40〜80重量%の充填剤と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤と、場合によって分散剤とを含む粒状物から形成される粉末を圧縮して、酸化還元−活性金属塩を実質的に含まない錠剤コアを得る工程と、(b)錠剤コアをゼラチンでコートして、ゲルタブ(geltab)を得る工程を含む方法により調製される、ピコプラチンのための経口投与剤型も提供する。
【0018】
本発明は、ピコプラチンのための経口投与剤型を調製する方法も提供するものであり、ここで投与剤型がコーティングおよびコアを含み、コアが、約10〜60重量%のピコプラチンであり、平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物であるピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物を含む約40〜80重量%の充填剤と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤と;場合によって約5〜10重量%の分散剤とを含む実質的に乾燥の粉末を含む、方法も提供する。コアは、酸化還元−活性金属塩を実質的に含まない。コアは、粉末粒状物から圧縮または成形され得、またはコートされた粒状物を含みうる。コアは、ピコプラチン微粒子物と、充填剤と、潤滑剤と、場合によって分散剤とを含む粉末混合物を圧縮する工程により形成され;その後、コアを実質的に完全にカバーする連続コーティングが得られるように、圧縮されたコアが、酸化還元−活性金属塩を含まないコーティング材料でコートされる。コーティングは、実質的に水溶性または水分散性の固体を含む。コーティング材料は、硬または軟ゼラチンを含むことができ、またはポリマーまたは糖、またはヒトの摂取に適した任意の他の材料を含むことができる。コーティングは、錠剤の取り扱いによるダストの放出を防止し、またはその放出量を最小化するために、圧縮された粉末コアを含ませる働きをし、湿気からおよび/または光からコアを保護できる。人を毒物の吸入または摂取にさらしうるダストが出ないように、細胞傷害性のピコプラチンを、コーティングを有するコア内に含ませることが有利である。
【0019】
一般的な不透明化剤および/または着色剤である酸化チタンまたは酸化鉄などの遷移金属塩等の酸化還元−活性金属塩を含まないコーティングは、硫酸カルシウムを含むことができ、酸化還元−活性金属塩を除く、ピコプラチン分解をもたらさず、ピコプラチンおよび他のコア成分と適合する、追加の光遮蔽材料を含みうる。コーティングは、水および/または酸素に対して実質的に不浸透性でもありうる。ピコプラチンの光分解を減らすために、錠剤を製造する方法も、抑えた照明下で行われうる。
【0020】
本発明は、本発明の経口投与剤型または本発明の方法により調製された経口投与剤型を含む固体投与剤型を、ヒトに有益な効果を提供するために適切な総投与量、頻度、および期間において、経口投与する工程を含む、癌に悩むヒトの癌を処置する方法も提供する。好ましくは薬物適合性複合コーティングされる本発明の他の固体投与剤型は、コートピル、錠剤、サシェ(sachet)等を含み、それらは複数のコーティングを含み得、例えばコア上に第一のコーティングがなされ、一つ以上のオーバーコーティングによりカバーされ、例えばゲルタブタイプの投与剤型を形成する。典型的には、総ピコプラチン用量は、投与につき約50〜400mgであり、薬物が、ほぼ毎日の間隔で少なくとも二日間から6週間毎の間隔で、哺乳類に投与される。ピコプラチン投与は、デキサメサゾン等のコルチコステロイド、パロノセトロンまたはオンダンセトロン等の5―HT3阻害剤、ロラゼパム等の精神安定剤またはその任意の組み合わせの使用等の制吐治療を伴いうる。
【0021】
本発明のコートされた固体コア等の経口摂取可能な投与剤型、例えば錠剤または微粒子物は、静脈内溶液等の液体投与剤型に対して多数の利点を有する。様々な強度のピコプラチンの経口投与剤型により、医師が個々の患者に対して、観察される副作用に応じてピコプラチンを容易に用量設定し、または効力または治療指数を最適化するために用量を増減することが可能になる。これは、ピコプラチンが単剤として与えられる場合、または他の抗癌剤、治療剤または補助剤と組み合わせて使用される場合に有利でありうる。経口摂取可能な形状のピコプラチンの他の利点には、投与の容易性、患者の便益、患者の服薬遵守の増加、および全体的な医療費の減少が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
「ピコプラチン」は、薬物の別名であるシス―アンミンジクロロ(2―メチルピリジン)白金(II)、あるいは、[SP―4―3]―アンミン(ジクロロ)(2―メチルピリジン)白金(II)をさし、その構造は上述した。それは酸化還元−活性金属錯体の一般的クラスに属する化合物であり、この場合には、白金が+2酸化状態にある第三列遷移元素白金の錯体である。
【0023】
本明細書で使用されるところの「経口投与剤型」とは、経口投与(例えば摂取)のために適合された物理的投与剤型をさし、この投与剤型は、投与剤型投与後にin vivoで薬物の完全および迅速な放出を提供するように適合された、個体あたり予め選択された用量を提供する。本発明によれば、経口投与剤型は、コアおよびコーティングを含む。コアは、平均粒径約10ミクロン未満のピコプラチン微粒子物と、充填剤と、潤滑剤とを含む実質的に乾燥の粉末を含む。
【0024】
コアは、圧縮成形、成形により形成でき、または粒状化材料でありうる。ピコプラチン微粒子物の平均粒径は、約7ミクロン未満でもありうる。ピコプラチン微粒子物中の平均粒径の分布は、粒子の個々約90%が約5ミクロン未満の粒径を有するようなものでありうる。「平均粒径」とは、当該技術分野で周知の数平均粒径を意味する。コアは、コアをカバーし、貯蔵および経口摂取の間にコアの材料を含む役目をするとともに、コアに含まれるピコプラチンを光および酸素等の様々な分解因子から保護する、コーティングにより囲まれる。コアおよびコーティング(単数または複数)(「投与剤型」)は、好ましくは任意の相当量の遷移金属塩等の酸化還元−活性金属塩を含まない。「粒状物」とは、粉末より微細でないがモノリス(monolith)よりは微細な、中間の粗さの複数の個別の顆粒で形成される固体材料の分割形状を意味する。
【0025】
経口投与剤型は実質的に水溶性であり、経口投与のために適合される。「実質的に水溶性」とは、投与剤型が、製剤の活性成分ピコプラチンが患者の胃腸(GI)管の粘膜から患者の血流に吸収され得るように、GI管内で溶解または分散できるように、十分に水溶性であることを意味する。したがって、摂取された物質の典型的なGI管内滞留時間以内、例えば患者による錠剤摂取の後、数時間以内、好ましくは約30分未満の時間以内、より好ましくは数分以内に溶解が起こる。しかし、通常は迅速溶解が好ましいが、必要に応じて、投与剤型がさらにコーティングされるか他の方法により、ピコプラチンの放出制御または持続放出を可能にするように適合されうる。
【0026】
投与剤型は、コート錠でありうる。「コート錠」とは、本明細書においては、圧縮された粉末コアと、コアをカバーする硬性または軟性の構造の密着したコーティングとを有する投与剤型を意味する。コーティングは、可塑性材料でありうる。本明細書において用いられるところの「可塑性」材料は、一旦形成された形を維持するために十分な剛性を有するが、圧力下で成形できる、例えば軟ゼラチンなどの比較的可鍛性の固体材料である。コーティングは、圧力下で成形できるか、粘稠溶液として適用された後乾燥させうる、例えばゼラチン、合成ポリマー、例えばポリビニルアルコール、または半合成ポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの、水溶性または水分散性物質でありうる。コーティングは、粘稠性溶液によりコアをコートした後で、そのようにして適用されたコーティングを乾燥させることを可能にするために十分に粘稠性の溶液を形成する、糖、例えばスクロース等の水溶性固形物の層でありうる。
【0027】
投与剤型は、ゲルタブでありうる。本明細書において使用されるところの「ゲルタブ」という用語は、圧縮成形された粉末コアを囲む軟ゼラチンまたは他の軟性の柔軟なゲル様材料でありうるコーティングを含む投与剤型をさす。このようなコーティングは、酸化還元−活性金属塩を含まないのも好ましい。
【0028】
投与剤型は、コートピルでありうる。本明細書において使用されるところの「ピル」という用語は、結合剤がピコプラチン微粒子物および他の成分を密着した塊に保つのを補助する、成形されているが圧縮されていないコアである。投与剤型は、微粒子物が粒状化され、顆粒が個々または少数でコートされ、複数の微粒子物がパッケージに封入された後投与されて総投与量が提供されうる、サシェでもありうる。
【0029】
本明細書において使用されるところの「光減衰性(light−attenuating)」コーティングという用語は、コーティングによりピコプラチンを含むコアに伝達される光の強度を減衰させるように適合または処理された、錠剤をカバーするコーティング層をさす。本明細書に定義の範囲内では、コーティングは、全入射光を完全に遮断または反射せずとも、光減衰性でありうる。「不透明」コーティングは、ほとんどの入射光を遮断または反射する。「不透明化(opaquifying)」(または「不透明化(opacifying)」)剤は、不透明化剤を含む材料を通過する光の強度が入射光の強度と比較して減少するように、入射光を減衰、反射、分散または吸収する働きをする材料または構造体である。固形であってもピコプラチンの光分解の可能性があるため、光減衰性コーティングが望ましい。光減衰性コーティングの例は、硫酸カルシウムを含むコーティング、例えば分散された固体硫酸カルシウムを含むOPADRY(登録商標)等の可塑化ヒドロキシルプロピルメチルセルロースにより形成されるコーティングである。遷移金属塩等の酸化還元−活性金属塩が含まれないという条件で、硫酸マグネシウム等の他の塩類を用いてもよい。
【0030】
プロセスは、製造施設で一般に使用される光強度より低い光強度、すなわち書面を読むために十分な強度の照明が使用される場合と本明細書で定義されるところの、「抑えた照明(subdued illumination)」下で行われる。抑えた光は、「安全光」として知られるスペクトル分布の光、すなわち、モルベース(molar basis)でピコプラチン光吸収がより低い強さである、スペクトルの赤色領域の周波数から主に構成される光も指しうる。ピコプラチンの潜在的感光性のため、実質的に光減衰性の錠剤コーティングの使用に加え、本発明のプロセスの実行の間の抑えた照明が、経口投与剤型中のピコプラチンの安定性を増強し、高純度を維持するのに役立つ。
【0031】
本明細書において使用されるところの「コア」という用語は、最終投与剤型に圧縮成形され、または成形され、または平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物としてピコプラチンを含む粒状物として用いられうる、粗い粒状物に由来し得る粉末を指す。コアは、本明細書に定義される用語として、炭水化物を含む充填剤および潤滑剤をさらに含む。コアは、分散剤/崩壊剤、抗酸化剤、バッファー、着色剤等の他の成分を含むこともできる。コアは、任意の酸化還元−活性金属または金属塩を含まないのが好ましい。
【0032】
コアが、酸化還元−活性金属塩を含まないコーティングによりカバーされて、本発明の経口投与剤型が提供される。本明細書において使用されるところの「コーティング」という用語は、コアをカバーまたはシールするのに適した、水溶性または水分散性の固体をさす。上に記載されるものなどの例には、コート錠、ピル、顆粒、またはゲルタブのコーティングが含まれる。コーティングは、不透明化材料、例えば硫酸カルシウム、抗酸化剤、着色剤、フレーバー剤等の成分を含みうる。コーティングは、投与剤型中の活性成分ピコプラチンの量等、医療提供者または患者に有用な情報を伝達する目に見える印または文字、数字、記号等のエンボス字も含みうる。第二コーティングが、第一コーティングの外側表面にあってもよい。第二コーティングも、酸化還元−活性金属塩を含まないのが好ましい。
【0033】
「実質的に乾燥の」材料とは、外からの水が加えられておらず、含有される水の重量%が比較的低く、典型的には約5重量%未満、好ましくは約1〜3重量%未満の水、より好ましくは約1重量%未満の水である、固体の物質を意味する。実質的に乾燥の材料は、本明細書の定義の範囲内では、絶対的に無水である必要はないが、材料中に存在する残留水分の量が制限される。例えば、5重量%の水を含むラクトース一水和物は、投与剤型において炭水化物として使用できる。
【0034】
本明細書において使用されるところの「酸化還元−活性金属塩」という用語は、ピコプラチンと酸化還元反応を生じうる金属の塩類をさし、Fe+3等の遷移金属塩を含むが、第一族および第二族金属の塩類、すなわちNa、K、Mg、Ca等のアルカリおよびアルカリ土類金属を除く。
【0035】
本明細書において使用されるところの「遷移金属塩」という用語は、チタン、鉄、銅、亜鉛等の遷移金属の塩類をさす。この用語は、アルミニウムまたはケイ素の塩類を含まない。用語は、酸化チタンおよび酸化鉄等の遷移金属の酸化物を特に含む。ピコプラチン自体が一般には遷移金属塩であるとは理解されないと認識されており、本発明の経口投与剤型の活性な医薬品成分として、ピコプラチンは投与剤型から除外されない。本明細書において使用されるところの「遷移金属塩」および「酸化還元−活性金属塩」という用語は、ピコプラチンおよび/またはピコプラチンに由来するPt―含有製造不純物または分解産物を特に除外する。「酸化還元−活性金属塩を実質的に含まない」とは、コーティングおよび/またはコアが、ピコプラチンを劣化させうる、例えば生物活性を減少させうる量の酸化還元−活性金属塩、例えば遷移金属塩を含まないことを意味する。
【0036】
酸化還元−活性金属塩または遷移金属塩を「実質的に含まない」とは、コーティングまたはコアが、単独または組み合わせにおいて、in vitro、例えば貯蔵中、またはin vivo、例えば摂取後に、ピコプラチンの分解に有意に寄与しない一つ以上のこれらの塩類のレベルを有することを意味する。通常、このような量は、それらを完全に除外するように調合または調製される補助剤中に通常存在するこのような塩類の微量の全量を超えない。
【0037】
「粉末」は、比較的微細な粒子に分割される固体の物理的形状の材料を意味する。粉末は、粉砕粉末でありうる。粉末のタイプの具体例は、微粉化粉末、すなわち構成粒子が直径約10ミクロン以下の粉末である。このような粉末は、粗い粉末または固体塊を所望の微粉度に挽くことにより作ることができる。微粉化粉末を形成する好ましい方法は、ジェットミリングによる。錠剤コアを形成する粉材は、20―メッシュまたは30―メッシュスのふるい(screen)を通るのに十分な微粉度でありうるが平均粒径10ミクロン未満である必要はない、炭水化物等のより粗い粉末と組み合わせるか、その中に取り入れた、ピコプラチン微粒子物、平均粒径10ミクロン未満の微粉末を含む。
【0038】
本明細書に開示される固体ピコプラチンの物理的形状の文脈における「微粒子物」とは、平均ピコプラチン粒径が約10ミクロン未満、好ましくは約7ミクロン未満であり、好ましくは、ピコプラチン試料中のピコプラチンの個別粒子の少なくとも約90%が約5ミクロン未満の個別粒径を有する、非常に微細な粉末を意味する。ピコプラチン微細微粒子物の性質が、患者のGI管内におけるその迅速および完全な溶解を助ける。ピコプラチン微粒子物は、微粉化材料、微結晶性材料、凍結乾燥材料、またはその任意の組み合わせでありうる。
【0039】
「微粉化」材料は、粉末を構成する粒子の大部分が約10ミクロン以下の粒径を有する粉末である。好ましくは、平均粒径は、約7ミクロン未満である。粒径は、最低約1ミクロン以下の範囲に及びうる。微粉化固体は、結晶質または非晶質でありうる。
【0040】
「微結晶性」材料は、固体が結晶形であり、晶子(crystallite)が主に特定の大きさである、微細微粒子物である。当該技術分野で公知のように、微結晶性材料は、材料がその中で不溶性である第二の液状材料の添加によるなど、溶媒からの材料の沈殿により調製できる。
【0041】
「凍結乾燥」材料は、材料の溶液を凍結乾燥する工程により得られた固体である。凍結乾燥は、周知のように、水および/または有機溶媒が完全に除去されると、微細粉末状の固体材料が残るような、材料の冷凍溶液からの水および/または有機溶媒等の溶媒の真空昇華を含む。
【0042】
投与剤型のコアを形成しうる「圧縮成形」粉末は、粉末を圧縮するために十分な圧力をかけ、これにより個別粉末粒子間から空気または場合によって不活性ガスを除去し、粒子同士を融合または付着させた粉末である。粒子は、少なくともその後にコーティング材料を適用するために必要な限られた量の処理を可能にするのに十分な強さで付着し合う。コアの形成において粒子が互いに付着し合うのを補助するために、結合剤が粉末中に存在してもよい。あるいは、充填剤の炭水化物が、結合剤としての役割を果たしうる。例えば患者のGI管内での投与剤型の溶解時には、粒子が分散し、溶解する。
【0043】
投与剤型のコアを形成しうる「成形」粉末は、粉末の付着を引き起こす役割をする結合剤の使用等により、圧縮を伴わずに凝集塊に集められた粉末である。投与剤型のコアを形成しうる「顆粒」は、各微粒子物が、コーティングでカバーされてサシェを形成する等、複数のコートされた粒状化粒子が提供されうる、比較的小さなサイズの微粒子物である。
【0044】
本明細書において使用されるところの「充填剤」という用語は、炭水化物を含む、水溶性または水分散性の固体組成物をさす。経口投与剤型のコアは、約40〜80重量%の充填剤を含みうる。充填剤は、微粒子物状ピコプラチンを分散させ、10ミクロン未満のピコプラチン粒子の凝集を阻害し、ピコプラチンを化学的に安定化させ、水性媒体中におけるピコプラチンの分散または溶解を補助する役目をする。コアのバルクは、ピコプラチン、潤滑剤、および分散剤に加えて、あるとすれば一般に充填剤により提供されるが、追加の成分がコア中に存在してもよい。
【0045】
本明細書において使用されるところの「炭水化物」という用語には、単量体、二量体、オリゴマー、ポリマー糖誘導体、例えばグルコース、フラクトース、ラクトース、スクロース、リボース、セルロース、改変セルロース(例えばセルロースエーテル等)等が含まれる。炭水化物分子は、ほぼ1:2:1のモル比の炭素、水素および酸素を含む。しかし、デオキシ糖およびそれらのオリゴマー/ポリマー等、この式から外れる分子も、物質に水溶性または水吸収性を与えるために十分なヒドロキシル基が存在するという条件で、本明細書において使用されるところの「炭水化物」という用語の中に含まれる。炭水化物は、本発明の原理から逸脱することなく、硫黄(例えば糖スルホン酸)およびリン(例えば糖リン酸)等の他の要素も含みうる。
【0046】
「実質的に水溶性の」炭水化物とは、炭水化物が、数時間以内、好ましくは数分以内に胃腸(GI)管内の水性環境で溶解することを可能にするために十分に水溶性であることを意味する。実質的に水溶性の炭水化物の例は、単糖、例えばグルコースである。
【0047】
「実質的に水分散性の炭水化物」とは、水に完全に溶解しないとしても十分親水性であるため水中に自由に分散する炭水化物を意味する。
【0048】
「実質的に水吸収性の」炭水化物とは、水中で完全にまたは何ら相当程度にも溶解しないが、なおその物理的構造中に水を取り込み、吸着し、または吸収する炭水化物を意味する。例えば、微結晶性セルロース等のセルロースは、水中で溶解しないが、水の存在下で水和し、その重量の数倍の水を吸収する。例えばセルロースによるこの水の吸収は、ピコプラチンの溶解を助けうる。水吸収性の炭水化物によるこの水の吸収が、微細微粒子物状ピコプラチンの表面にごく近くに物理的に近接して水分子を保つことにより、GI管内でピコプラチンの溶解を助ける働きをすると考えられる。
【0049】
「セルロース」という用語は、本明細書において、大部分がβ(1―4)―結合D―グルコースユニットの線状ポリマーからなるポリマー炭水化物材料を意味する。セルロースは、木材パルプ、綿または細菌等の自然のソースから典型的に得られる。セルロースは、挽かれるか粉砕されて、微細微粒子物状材料がつくられうる。あるいは、Avicel(登録商標)の商標の下で販売されるような微結晶性セルロースが用いられうる。例えば、Avicel(登録商標)は、Avicel PH101(登録商標)でありうる。微結晶性セルロースとは、結晶ドメインをよりそのままに残しながら主にセルロース試料の無定形領域を加水分解する働きをする、部分的酸加水分解を受け易くなっているセルロースを意味する。微結晶性セルロースは、微粉末の物理的形状をとる。
【0050】
本明細書で使用されるところの「改変セルロース」という用語は、化学的または生物学的に改変されたセルロースを意味する。例えば、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、すなわち当技術分野で周知の、ナトリウム塩としてペンダントカルボキシメチル基を持つセルロースは、本明細書の意味の範囲内で改変セルロースである。同様に、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースは、本明細書で定めた意味の範囲内で改変セルロースである。架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム、別名「クロスカルメロースナトリウム」は、本明細書の意味の範囲内で架橋改変セルロースである。クロスカルメロースナトリウムは、本明細書の用語の意味の範囲内で分散剤または崩壊剤である。
【0051】
本明細書における意味の範囲内で「潤滑剤」または「流動促進剤(glidant)」は、粒子の表面をコートし、粉末処理工程の間、例えば錠剤のためのコアを形成する際等の微粒子物間運動による摩擦を減らす役割をする物質である。摩擦の低減は、本発明の経口投与剤型を製造するために典型的に使用される例えば粉砕、粉末処理、および圧縮プロセスの間の、静電気蓄積、および粒子集塊または凝集の減少に役立つ。
【0052】
「分散剤」または「崩壊剤」は、水性媒体への曝露時、例えば患者のGI管内で錠剤コアの分散を助ける、本発明の投与剤型の構成要素でありうる物質である。分散剤が、水性媒体中における固体ピコプラチン粒子の表面の溶媒和を増加させ、これにより表面湿潤の促進により固体の溶解を助けながら、粒子―粒子接着および集塊を減らす働きをすると考えられる。分散剤の例には、クロスカルメロースナトリウムおよびポビドンが含まれる。ポリ(ビニルピロリドン)としても知られるポビドンは、ポリ(ビニル)バックボーンに沿って複数のピロリドンユニットを持つポリマー材料である。
【0053】
投与剤型のコーティングは、改変セルロース等のポリマーを含みうる。好ましい改変セルロース材料には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロースエーテルが含まれる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むコーティングのために適合された市販の製剤は、1936 West Point Pike,West Point,PA 19486のColorcon,Inc.により販売される、OPADRY(登録商標)である。
【0054】
投与剤型のコーティングは、軟ゼラチンまたは硬ゼラチン等のゼラチンも含みうる。本明細書において使用されるところの「ゼラチン」という用語は、約98〜99乾燥重量%タンパク質である、コラーゲン由来の材料である。ゼラチンのおおよそのアミノ酸組成は:21%グリシン、12%プロリン、12%ヒドロキシプロリン、10%グルタミン酸、9%アラニン、8%アルギニン、6%アスパラギン酸、4%リシン、4%セリン、3%ロイシン、2%バリン、2%フェニルアラニン、2%スレオニン、1%イソロイシン、1%ヒドロキシリシン、<1%メチオニンおよびヒスチジン、および<0.5%チロシンである。
【0055】
投与剤型のコーティングは、当該技術分野で周知のように、糖、例えばスクロースも含みうる。例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,21st ed.,2006,Lippincott WilliamsおよびWilkins,Edward M.Rudnic,Ph.D.およびJoseph B.Schwartz,Ph.D.によるChapter 45,“Oral Solid Dosage Forms”を参照。
【0056】
投与剤型のコーティングは、当該技術分野で周知のようにポリビニルアセテートの加水分解より調製できるポリビニルアルコール(PVA)等の合成ポリマーも含みうる。PVAの例は、DuPont,Inc.の製品であるElvanol(登録商標)である。
【0057】
本発明は、投与剤型がコーティングおよびコアを含むコート錠であり、コアが、約10〜60重量%、好ましくは約15〜40重量%のピコプラチンであり、平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物であるピコプラチンと、約40〜80重量%の実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物と、最高約5重量%の有効な量の潤滑剤とを含む実質的に乾燥粉末を含み、投与剤型が、ピコプラチン自体以外の酸化還元−活性金属塩を実質的に含まない、ピコプラチンのための経口投与剤型を提供する。
【0058】
ピコプラチンの経口投与のために適合された投与剤型は、実質的に水溶性の材料で形成されるコーティングを含む。コーティングは、製剤が放出されて溶解し、患者の胃腸(GI)管の粘膜から患者の血流に吸収されるように、GI内での溶解を可能にするために十分に水溶性である。コーティングは、酸化還元−活性金属塩を含まないが、当然のことながら、コーティングプロセスの間などに生じうるコアピコプラチン材料によるコーティング材料の汚染により生じうるような、微量のピコプラチンを含みうる。
【0059】
コアをなすピコプラチンおよび他の成分に適合するという条件で、ヒトの摂取に適した十分な物理的強度および膜形成能力の任意の無毒性水溶性材料を用いて、コーティングを形成しうる。「適合する」という用語は、投与剤型の製造中、貯蔵中、および投与後における、コーティング材料のコア材料との適合性を含む。用語は、化学的適合性、すなわちコーティング材料の成分によりもたらされるピコプラチンまたは任意の他のコア成分の分子分解がないことを含む。用語は、生化学的適合性、すなわち投与剤型投与後のピコプラチンの迅速および完全な溶解、および投与後に投与剤型から放出されるピコプラチンの生物学的利用能の望ましい属性を、コーティング成分が干渉しないことも含む。
【0060】
例えば、コーティング材料は、当技術分野で周知のように、硬ゼラチンまたは軟ゼラチン等のゼラチンを含みうる。本明細書で使用されるとろこの「ゼラチン」という用語は、約98〜99乾燥重量%タンパク質である、コラーゲン由来の材料である。ゼラチンのおおよそのアミノ酸組成は:21%グリシン、12%プロリン、12%ヒドロキシプロリン、10%グルタミン酸、9%アラニン、8%アルギニン、6%アスパラギン酸塩、4%リシン、4%セリン、3%ロイシン、2%バリン、2%フェニルアラニン、2%スレオニン、1%イソロイシン、1%ヒドロキシリシン、<1%メチオニンおよびヒスチジン、および<0.5%チロシンである。硬ゼラチンおよび軟ゼラチンは、その構造または粘稠度が異なり、軟ゼラチンは硬ゼラチンより、可鍛性およびゲル様である。
【0061】
コーティング材料は、錠剤コアの粉末の周りに硬く滑らかなコーティングを形成できる、糖、たとえばスクロースを含みうる。当該技術分野で周知のもののような糖コート錠は、参照により全体として本明細書に組み込まれる、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,21st ed.,2006,Lippincott WilliamsおよびWilkinsに詳細に記載されている。糖コーティングは、可塑剤、抗酸化剤、着色剤、フレーバー剤等の追加の材料を含みうる。
【0062】
コーティング材料は、錠剤コアをコートするための好ましい材料である、改変セルロース等のポリマーを含みうる。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはメチルセルロース、またはヒドロキシプロピルセルロース等の改変セルロースが、錠剤コーティングに用いられうる。コーティング材料における使用に適している改変セルロースの例は、Colorcon Inc.(www.colorcon.com)により製造されるヒドロキシプロピルメチルセルロースの一形状である、OPADRY(登録商標)である。コーティングは、必要に応じて、ポリマーのための可塑剤も含みうる。可塑剤の例は、ポリエチレングリコールである。コーティングは、Antifoam C Emulsion等の消泡剤も含みうる。
【0063】
錠剤コーティングは、含有ピコプラチンの、錠剤に当たりうる一切の入射光に対する露光を減らすために適応されうる。固体の形状も含めて、光に対するピコプラチンの公知の不安定性により、入射光の減衰が、錠剤中に含有されるピコプラチンの純度を維持するのに役立つ。コーティングは、入射光を相当程度に、好ましくは典型的な部屋照明レベルで少なくとも約50%、または少なくとも約75%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、減衰させることができる。これは、酸化還元−活性金属塩を含まない不透明化剤のコーティング材料への取り込みにより達成でき、例えば微分散CaSO等の光反射物質が取り込まれうる。適切な不透明化コーティング材料の例は、分散された固形のCaSOを含むように調合されたOPADRY(登録商標)である。不透明化剤は、光を吸収または反射することにより、入射光を減衰させるために役立つ。酸化還元−活性金属塩を含まない他の不透明化剤が、含まれてもよい。酸化チタンおよび酸化鉄等の薬剤は、コーティングの不透明化剤としての使用から特に除外される。コーティングは、着色剤が酸化還元−活性金属塩を含まないという条件で、着色剤も含むことができ、両者が錠剤中のピコプラチンの露光を減らし、医療提供者および患者への錠剤の特定を助けるために役立ちうる。
【0064】
用量単位コアは、平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物としてのピコプラチンと、炭水化物と、潤滑剤とを含む粉末を含む。複数のタイプの炭水化物、潤滑剤または両者が存在しうる。患者のGI管内でピコプラチン含有粉末の粒子を分散させるのに役立ちうる分散剤等、追加の成分もコア中に存在してよい。存在しうる他の成分には、結合剤等の安定剤、抗酸化剤、バッファー、着色剤または他の抗癌薬を含む他の薬物が含まれる。
【0065】
上述したように、ピコプラチンは、四配位白金(II)錯体であり、このような錯体は、本発明の単位投与剤型が回避または最小化するように適合される一定の不安定性をもつことが知られている。例えば、四配位白金(II)錯体は、上記の通り、塩素分子が付加されやすい。塩化物(ハロゲン化物)および酸化試薬(oxidizing reagent)(例えば大気の分子酸素)が存在するときに、塩素分子がin situで形成されうる。したがって、塩化物が製剤から除外されるのが好ましい。例えば、殺菌剤として使用されうる亜塩素酸塩およびポビドンヨードを含む固体酸化剤は、製剤から除外されるのが好ましい。また、分散剤/崩壊剤等の様々な賦形剤に見られる=NH、―NH2、およびSHを含む部分を含む化合物は、ピコプラチンのような四配位白金(II)錯体とin situまたはin vivoで反応しうるため、投与剤型が、例えば分散剤または着色剤の官能基として、そのような化合物をいずれも含まないのが好ましい。
【0066】
酸化鉄および酸化チタン等の酸化還元−活性金属塩の存在下におけるピコプラチンの不安定性のため、酸化還元−活性金属塩が経口投与剤型から除外される。このために、酸化還元−活性金属塩はコアまたはコーティングのいずれにおいても投与剤型に含まれないが、当然ながらピコプラチン自体は、それ自体酸化還元−活性金属塩とみなされうるが、その除外に含まれない。特に、コーティングは、不透明化剤として酸化チタンのような金属酸化物を含まず、微細に分散されて反射コーティングを提供できる硫酸カルシウム等の他の材料を使用する。驚くべきことに、酸化チタンが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばOPADRY(登録商標))等の周知のコーティング材料に組み込まれると、実施例に示されるように、ピコプラチンの2―ピコリンおよびトリクロロアミノプラチネート(trichloroaminoplatinate)等の物質への分解をもたらしうることが分かっている。したがって、本発明のコーティング材料は、酸化チタンを組み込まない。光減衰のために、無機または有機成分がコーティング材料に含まれうる。微細に挽かれた形状の硫酸カルシウムがコーティングに不透明度を与えることが分かっており、ピコプラチンの分解をもたらさない。適切な着色剤が、錠剤コーティングの光減衰のために同様に使用されうる。
【0067】
錠剤中の固体ピコプラチンの分解しやすさは、アミノ基等の反応性官能基の存在下で中程度でありうるが、固体材料の比較的不活性の性質のため、製剤の調合等のプロセス、および特に胃中溶解プロセスの間に、反応性成分の非存在がピコプラチン純度維持を助けうる。固体材料が最初に胃酸中に放出される際に存在する微小環境中では、投与剤型成分の局所的高濃度が、溶解するピコプラチン微粒子物の表面に物理的にごく近接して存在する。これらの小微粒子物が溶液中に完全に通るためには少なくとも数分かかり得、その間に、同様に溶解するピコプラチン以外の製剤の成分が、局所的高濃度で、溶解するピコプラチン粒子に隣接して存在する。したがって、これらの胃微小環境中に局所的高濃度で存在しうる物質における、ピコプラチン反応性官能基の非存在が有利である。
【0068】
コアの粉末に含まれるピコプラチンは、平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物である。ピコプラチン微粒子物は、微粉化材料、微結晶性材料、凍結乾燥材料、またはその任意の組み合わせでありうる。ピコプラチンは、ジェットミリングまたは適度に小さな平均粒径の微粉化粉末を提供できる任意の他のプロセスにより、粉砕または微粉化されうる。微粉化ピコプラチンは、微細微粒子物の存在から生じる好ましい表面積対質量比のため、投与剤型投与後に患者のGI管内における有効な量のピコプラチンの迅速および完全な溶解を助ける。微粉化ピコプラチンは、結晶または無定形固体ピコプラチンで構成されうる。
【0069】
ピコプラチン微粒子物は、粉末が適度に小さな物理的寸法の結晶で構成される、微結晶性固体でもありうる。微結晶性材料は、当該技術分野で公知のように、たとえば高剪断または振動等を伴い、材料が溶解しない液体を添加して溶液から固体を沈殿させて形成されうる。
【0070】
ピコプラチン微粒子物は、ピコプラチン溶液の凍結乾燥により形成されるような、凍結乾燥粉末でもありうる。ピコプラチン微粒子物は、上に列挙した微細微粒子物を形成する方法の任意の組み合わせにより形成されることもできている。例えば、微結晶性材料は、ジェットミリング等により微粉化されて粒径が小さくなり得、または凍結乾燥により水溶液から回収された材料が、微粉化されるなどしうる。
【0071】
ピコプラチン、炭水化物、潤滑剤、および存在しうる任意の他の成分の混合物は、粉末の形状でもありうるが、ピコプラチン微粒子物ほど微細な粉末ではない。粉末は、ピコプラチン微粒子物と他の成分粒子の混合物であり得、または、好ましくは、粉末をなす粒子は、実質的にそれらの全ての中に、炭水化物等の他成分の粒子中に分散された複数の微細な構造のピコプラチン微粒子物を取り込んでいてよい。成分ピコプラチン粒子の表面積がより大きく、これらのピコプラチン粒子が炭水化物および任意の分散剤または崩壊剤とより密接に混合されるほど、患者への錠剤投与後にピコプラチンがより迅速および完全に溶解または分散するため、混合物が、ピコプラチン微粒子物が製剤の追加の成分と密接に混合された密接混合物(intimate mixture)であることが好ましい。ピコプラチンの迅速および完全な溶解は、患者に最大限に有効な処置を提供する観点から、一般に望ましい。
【0072】
コアの粉末は、実質的に乾燥の形状である;炭水化物および分散剤等の成分の含水量は、製剤中の水の重量%を最小限にするようにコントロールされる。水は、ある条件下で、ピコプラチンと反応して分解をもたらしうる。したがって、投与剤型の含水量は、組成物の5重量%未満、好ましくは1〜3重量%未満、より好ましくは1重量%未満に限られるのが好ましい。一定の炭水化物、例えばラクトースは、5重量%の水を含む一水和物等の水和物の形状で存在しうると理解される。このような水和物が使用されうるが、実行可能な限り外からの水が排除されるのが好ましい。
【0073】
コアの少なくとも約10重量%をなし、コアの最大約60重量%をなしうるピコプラチンは、好ましくは無水であり、調合プロセスの間に、その乾燥状態を維持する条件下で処理される。当該技術分野で周知のように、乾燥した不活性大気下での運転等、適切な工学的制御を用いることにより、乾燥を維持できる。
【0074】
コアの約40〜80重量%を含む充填剤は、炭水化物を含む。適切な炭水化物は、単糖、二糖、糖アルコール、セルロース、改変セルロースおよびその混合物からなる群より選択されうる。炭水化物は水溶性、水分散性、または水吸収性である。すなわち充填剤は、水中に完全溶解し、水中に自由に分散し、または十分に親水性であるために相当量の水をその構造中に吸収する。例えば、フラクトースは水溶性であり、一定のヘミセルロースは水分散性であり、セルロースは水吸収性である。二つ以上の炭水化物が、投与剤型中に存在しうる。全炭水化物が、製剤の約40〜80重量%で存在するのが好ましい。
【0075】
単糖の例は、フラクトースである。他の例には、グルコース、キシロース、マンノース、ガラクトース、リボース等が含まれるがこれに限定されない。二糖の例には、ラクトースおよびスクロースが含まれる。
【0076】
糖アルコールの例には、ソルビトール、リビトール、マンニトールおよびキシリトールが含まれる。ヘミセルロースの例は、木材由来のアルカリ可溶性ヘミセルロースである。
【0077】
セルロースの例は、微結晶性セルロースである。別のセルロースは、粉末形状に挽いてある高グレード木材パルプセルロース等の微細に挽いたセルロースまたは粉砕したセルロースである。
【0078】
改変セルロースの例は、カルボキシルメチルセルロースナトリウムである。他の例には、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、およびメチルヒドロキシルプロピルセルロースが含まれるがこれに限定されない。改変セルロースのいくつかの例は水溶性であるが、他は水分散性または水吸収性である。
【0079】
本発明の製剤は、潤滑剤を有効な量含む。潤滑剤、例えば脂肪酸の塩、より具体的にはステアリン酸マグネシウムは、粉砕工程の間等の粒子集塊の回避を助けることにより、コアの粉末、特に10ミクロン未満のピコプラチン粉末を取り扱う際の加工助剤として役立ちうる。潤滑剤は、コアの最大約5重量%存在しうる。
【0080】
患者のGI管内等の水性媒体中における錠剤コアの分散を増強する働きをする分散剤は、迅速な溶解を促進する。分散剤は、最初に水性媒体に遭遇したときの粒子の分散を助け、したがって微細なピコプラチン粉末の好ましい表面積対質量比を保持するのを助ける傾向がある。分散剤の例は、架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム、別名クロスカルメロースである。別の例は、ポビドン、別名ポリビドン、ポリ(ビニルピロリドン)、またはPVPである。製剤は、約5〜10重量%の分散剤を含みうる。二つ以上の分散剤が、投与剤型中に存在しうる。
【0081】
投与剤型は、他の成分を含みうるが、酸化還元−活性金属塩を含まず、好ましくは酸化剤、またはハロゲン、=NH、―NH、または―SH部分を含む化合物を含まない。このような基を好ましく欠いている他の化合物が含まれてよい。例えば、抗酸化剤が含まれうる。例には、BHAまたはBHTが含まれる。食用色素等の着色剤が含まれうる。
【0082】
したがって、ピコプラチン対炭水化物充填剤対(存在する場合には)分散剤対潤滑剤の比率は、約1:1.5〜3.0:0.1〜0.3:0.25〜0.1である。一実施形態においては、投与剤型は、コーティングによりカバーされた、約50mgの微粉化ピコプラチン、約116mgのラクトース、約20mgの微結晶性セルロース、約8mgのクロスカルメロースナトリウム、約4mgのポビドン、および約2mgのステアリン酸マグネシウムを、圧縮成形された混合物として含む、約200mgのコア材料を含む。コーティングは、コーティングへのCaSOの取り込み等により不透明化されうる。
【0083】
本発明は、更にピコプラチンのための経口投与剤型を調製するプロセスを提供するものであり、投与剤型がコーティングおよびコアを含み、コアが、約20〜55重量%のピコプラチンであって平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物であるピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物を含む約40〜80st%の充填剤と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤とを含む実質的に乾燥の粉末を含み;投与剤型が酸化還元−活性金属塩を含まず;プロセスが、ピコプラチン微粒子物、炭水化物、および潤滑剤の粉末混合物のコアを形成する工程と、その後、コアを実質的に完全にカバーする保護コーティングが得られるようにコアをコーティング材料でコートする工程を含むプロセスをさらに提供する。
【0084】
本発明のプロセスで使用する成分材料は、本発明の単位投与剤型のために上記した通りである。本発明のプロセスには、実質的に乾燥の製剤の粉末を調製する工程が含まれる。そして、粉末がコーティングを施すのに適する錠剤形状に圧縮成形または圧縮された後、圧縮成形されたコアを適切なコーティング材料でコートして本発明のコート錠またはゲルタブを提供する。あるいは、結合剤の添加等により粉末が成形され得てコアが提供され、それが上記のようにコートされる。または、粉末が粒状化され、顆粒が個々にコーティングでコートされうる。
【0085】
本発明のプロセスの実行方法の非限定的な例として、ラクトース、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤が、それぞれ20―メッシュ篩または30―メッシュ篩を通るように挽かれ得、その後、平均粒径10ミクロン未満のピコプラチン微粒子物と造粒機内で混合されうる。ピコプラチンおよびラクトースは、場合によって任意の他の成分の添加前に混合されうる。ピコプラチン微粒子物は、ジェットミリングプロセスにより、または微結晶形成により、または凍結乾燥、または必要な寸法の微粒子物を提供するこれらの方法の任意の組み合わせにより、前もって調製されていればよい。分散剤、例えば20―メッシュ篩または30―メッシュ篩を通る粉末形状のポビドンが、造粒機中の混合物に加えられうる。その後、成分材料の混合物を形成するために、高―剪断造粒の使用等により固体の混合が行われうる。わずかに水溶性のピコプラチン(1mg/mL未満または約0.1%の水中溶解性を有する)の、水溶性、水分散性、または水吸収性炭水化物、潤滑剤、および場合によって分散剤との混合は、患者のGI管中での有効な量のピコプラチンの迅速および実質的に完全な溶解を増強するために役立つ。様々な材料の粒子が単に混合されて粉末が形成されうるが、ピコプラチン微粒子物が、典型的により大きな炭水化物微粒子物の中または表面上に取り込まれるように、十分完全に混合することが好ましい。可能な限り、酸化還元−活性金属の存在が、製造プロセスおよび装置から除外される。
【0086】
粉砕および混合プロセスの後、製剤が乾燥され得る。例えばトレイ上に薄層に広げられた後、乾燥条件下で保たれうる。例えば、トレイ上の粉末が、約40〜80℃等の適度な温度に暖め得、部分的真空下、または乾燥剤、例えばPの存在下で保たれうる。含水量が固体混合物の5重量%未満、より好ましくは1〜3重量%未満、さらに好ましくは1重量%未満であるように、残留水分がコントロールされうる。
【0087】
乾燥後、追加の粉砕が行われうる。バルク材料が、必要に応じて、存在し得るより大きな粒子を除去するために、篩を通してふるいに分けられ得る。例えば、混合粉末試料の主要な部分は、20―メッシュ篩を通過しうる。好ましくは、粉末のバルクは、30―メッシュ篩を通過できる。
【0088】
粉末は、制御された大気下での貯蔵、調製プロセスへの適切な乾燥工程の挿入、および大気中の湿気の非存在下での貯蔵等の適切な工学技術および制御の使用により、実質的に乾燥に保たれうる。また、光不安定であることが周知のピコプラチンの光分解の量を最小限にするために、粉末が抑制光下で処理されうる。入射光の制御は、不透明ベッセル中での材料処理、遮蔽下または暗中での運搬および乾燥、または光学処理に使用されうるような安全光の使用等の適切な工学制御により行われうる。本発明のプロセスを行う際の入射光を最小限にすることが望ましい。さらに、プロセスの間のピコプラチンの分解を生じ得る金属との接触が、回避されるのが好ましい。
【0089】
プロセスの最終混合、乾燥、および篩分け(screening)工程が行われた後、粉末が圧縮成形され、コーティング材料でコートされる。錠剤コアをなすこととなる実質的に乾燥の粉末の圧縮成形は、当該技術分野で公知の任意の適切な方法を用いて行われうる。例えば、乾式造粒圧縮成形または直接圧縮が使用でき、錠剤成形機において粉体床の不可逆的変形が生じて、コーティングに適する圧縮成形コアが提供される。炭水化物、例えばラクトースは、凝集性を有しうるため、結合剤として役立つ。したがって、追加の結合剤は必要ないが、必要に応じて加えられうる。圧縮成形は、微細微粒子物ピコプラチンを炭水化物および潤滑剤、場合によって分散剤とともに、凝集しているが好ましくは完全に融合していない塊に圧縮するために役立つ。適切な圧縮成形または圧縮技術が、参照により全体として本明細書に組み込まれる、Remington,The Science and Practice of Pharmacy,21st ed.,2006,Lippincott WilliamsおよびWilkinsに記載されている。例えば、Edward M.Rudnic,Ph.D.およびJoseph B.Schwartz,Ph.D.によるChapter 45,“Oral Solid Dosage Forms”を参照。
【0090】
圧縮成形コア、あるいは成形または粒状化コアは、その後、ゼラチン、糖、またはポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース等の改変セルロースを含みうる、当該技術分野で周知の適切なコーティング剤でコートされうる。例えば、参照により全体として本明細書に組み込まれる、Stuart C.Porter,Ph.D.による、Remington,“Coating of Pharmaceutical Dosage Forms”のChapter 46を参照。好ましいコーティング材料には、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の改変セルロースが含まれる。コーティングは、当該技術分野で公知の任意の適切な技術により施され、乾燥されうる。上記のように、コーティング材料には、CaSO等の不透明化剤、着色剤、抗酸化剤等が含まれうる。コーティング材料へのBHA、BHT、またはトコフェロール等の抗酸化剤の取り込みを用いて、ピコプラチンの分解をもたらしうる酸素の量の排除または低減のために望ましい、酸素浸透に対するバリアを提供できる。
【0091】
本発明の投与剤型または本発明の方法により調製される投与剤型は、名目組成と比較して含有ピコプラチンの実際量において±10%の広がりを有しうる。例えば、名目50mgのピコプラチンを含む名目200mgの重量を有する投与剤型は、個々の試料についての測定で約45〜55mgのピコプラチンを有しうる。投与剤型は、低く限られた量の様々な不純物を有する。例えば、テトラクロロプラチネートカリウム塩、ピコリン、トリクロロピコリンプラチネート(trichloropicolineplatinate)またはトリクロロアミノプラチネート等の、ピコプラチンの分解または製造等からの、可能性のある幾つかの残留不純物の各々を、約1%を超えて含むべきでない。
【0092】
本発明は、癌に悩まされるヒトの癌を処置する方法も提供するものであり、本発明の経口投与剤型または本発明のプロセスにより調製される経口投与剤型を含む、固体または液体投与剤型を、ヒトに有益な効果を提供するために適切な総投与量、頻度、および期間で、経口投与する工程を含む方法も提供する。好ましくは薬物適合コーティングを伴う、本発明の他の固体投与剤型には、ピル、錠剤、サシェ等が含まれる。典型的に、総ピコプラチン用量は投与あたり約50〜400mgであり、ほぼ毎日の間隔で少なくとも2日間から、6週間毎の間隔で、薬物が哺乳類に投与される。頻度はメトロノーム式でありうる、すなわち、投与剤型が、例えば毎日数日間投与された後、数日間投与剤型が投与されず、その後その順序が複数回繰り返されうる。ピコプラチン投与は、デキサメサゾン等のコルチコステロイド、パロノセトロンまたはオンダンセトロン等の5―HT3阻害剤、ロラゼパム等の精神安定剤、またはこれらの任意の組み合わせの使用等、制吐治療を伴いうる。
【0093】
投与剤型は経口投与されるように適合され、典型的な経口用量には、複数の錠剤が含まれる。例えば、患者に400mgの総用量を提供するために、それぞれ50mgのピコプラチンを含む八つの錠剤が用いられうる。
【0094】
ピコプラチンが、シスプラチン オキサリプラチンおよびカルボプラチン等の「第一世代」および「第二世代」有機白金抗癌薬に対する抵抗をもつか抵抗をつけた腫瘍に対して活性でありうることがよく知られている。例えば、本発明の経口投与剤型または本発明のプロセスにより調製された経口投与剤型を用いて、固形悪性腫瘍の患者等、非血液系悪性疾患の患者、特に固形腫瘍がシスプラチン オキサリプラチンまたはカルボプラチン難治性である患者を処置できる。本発明の経口投与剤型または本発明のプロセスにより調製される経口投与剤型により処置できる固形悪性疾患の具体的なタイプには、小細胞肺癌、非小細胞肺癌を含む肺癌、頭頚部癌、卵巣癌、前立腺癌(例えばHRPC)、結腸直腸癌、肉腫、乳癌、類癌腫等が含まれるがこれに限られない。
【0095】
複数の本発明の経口投与剤型または本発明のプロセスにより調製された経口投与剤型が、約50mg〜400mgから約2000〜3000mgまでのピコプラチンの範囲の、単一の総投与量として患者に与えられうる。総投与量は、適切な数の投与剤型の形状で与えられうる、すなわち200mgの用量のピコプラチンなら、それぞれ50mgのピコプラチンを含む4単位投与剤型が投与されうる。2000mg等のより大きな用量では、ピコプラチン微粒子物をより多く含むより大きい単位投与剤型が用いられうる。例えばそれぞれ約200mgのピコプラチンを含む10個の錠剤が用いられうる。あるいは、単一の投与剤型がより頻繁に、例えば毎日与えられうる。所与の投与のための複数の投与剤型の全数が、短い時間間隔内に、例えば約五分間以内に投与されることが好ましい。したがって、所与の投与が名目200mgのピコプラチンを含み、各々名目50mgのピコプラチン含む投与剤型が使用される場合には、四つのカプセル全てが約5分以内に患者に投与されるべきである。合計50〜400mgのピコプラチンの投与量レベルでは、平均患者体表面積を1.7mと仮定すると、これらの用量は、mが患者の体表面積をさし、100%吸収を仮定すると、それぞれ約30〜235mg/mに等しい。吸収率が100%未満の場合、それに応じて経口用量が増加されうる。この投薬は医学的に必要とするとおり、繰り返されうる。例えば、投薬は医学的に必要とするとみなされるとおり、毎日、毎週、ほぼ二週間毎、ほぼ三週間毎、ほぼ四週間毎、ほぼ五週間毎、またはほぼ六週間毎に繰り返されうる。
【0096】
本発明の固体投与剤型は、ヒトへの経口投与のために適合され、投与剤型に含まれる全ピコプラチンの少なくとも約10%が、投与剤型の摂取後にヒトに生物利用可能である。または、本発明の固体投与剤型は、ヒトへの経口投与のために適合され、投与剤型に含まれる全ピコプラチンの少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%が、ヒトによる投与剤型の経口摂取後にヒトに生物利用可能である。
【0097】
本発明のピコプラチン経口投与剤型は、ヒトによる経口摂取後に、最大40%の生物学的利用能、または最大約50%の生物学的利用能を有する。より具体的には、本発明のピコプラチン経口投与剤型は、経口摂取後にヒトにおいて、約10〜40%、または約20〜40%、または約30〜40%の生物学的利用能を有する。あるいは、本発明のピコプラチン経口投与剤型は、経口摂取後にヒトにおいて、約30〜50%、または約40〜50%の生物学的利用能を有する。
【0098】
本発明の処置方法は、本発明の錠剤投与の約30分前以内、または実質的に投与とほぼ同時に、患者に制吐治療を施す工程をさらに含みうる。制吐治療は、コルチコステロイドまたは5―HT3受容体アンタゴニスト、または両方の投与を含みうる。例えば、コルチコステロイドは、デキサメサゾンでありうる。5―HT3受容体アンタゴニストは、パレノセトロン(palenosetron)またはオンダンセトロンでありうる。精神安定剤、例えばロラゼパム等の追加の制吐剤が投与されてもよい。
【0099】
本発明の処置方法は、本発明の、または本発明の方法により調製された単位投与剤型または複数の投与剤型とともに、追加の薬物または放射線治療を施す工程をさらに含みうる。追加の薬物は、抗癌薬でありうる。例えば、追加の抗癌薬は、タキサン、タキソール誘導体、成長因子受容体阻害剤、例えば抗EGFR抗体、Her2阻害剤、ビンカアルカロイド誘導体、第二有機白金化合物、ヌクレオチド類似体(例えば5―FU)、マスタード剤、アルキル化剤等を含みうるがこれに限定されない。あるいは、追加の薬物は、感染等の癌の合併症を処置するため、または発熱等の癌の症状の軽減を患者に提供するために、選択されうる。
【0100】
本発明は、処置コースを提供ために、本発明の投与剤型または本発明の方法に従って調製された投与剤型を十分な数含むパッケージを含む、キットをさらに提供する。キットは、投与の用量または頻度を指示する指示書等の教材をさらに含みうる。例えば、キットは、一週間等の長期間に十分な一日用量を含み、または、投与を繰り返す頻度が低い場合には、複数の単独投与のための投与剤型を含みうる。
【0101】
本発明の実施形態の理解を助けるために、一定の実施例が以下に提供されるが、それらは、請求項に記載される本発明を制限するものと考えるべきでない。
【実施例】
【0102】
(実施例1)
TiO対CaSOを含む溶液中のピコプラチンからの不純物の形成
ピコプラチン溶液が、TiO、クリアOPADRY(TiOなし)、およびTiOまたはCaSOを含む標準的なコーティングOPADRY溶液と混合された。静置の後、溶液が、ピコプラチン分解産物2―ピコリンおよびトリクロロアミンネプラチネート(trichloroaminneplatinate)(TCAP)につきHPLCにより分析された。結果が表1に示される。
【0103】
【表1】

CsSO OPADRYコーティングは、TiOまたはTiO OPADRYの産物において観察される、ピコプラチンの分解を引き起こさないことが示された。
(実施例2)
時間の関数としてのピコプラチンからのTCAP形成に対するFe2+濃度の効果
FeSO4の溶液が作られ、水中ピコプラチン溶液に加えられて、示すような最終Fe2+濃度が提供された。指定の時点で、ピコプラチンからの%変換率としてのTCAPの割合がHPLCにより決定され、表2に示される。
【0104】
【表2】

全ての刊行物、特許および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明が前述の明細書において、その一定の好ましい実施形態に関連して記載され、多くの詳細が説明のために記載されているが、当業者には当然のことながら、本発明は追加の実施形態が可能であり、本明細書に記載される詳細の一部は、本発明の基本的原理から逸脱することなく、相当に変更されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピコプラチンのための経口投与剤型であり、該投与剤型が、約10〜60重量%の微粒子物ピコプラチンであって平均粒径約10ミクロンの微粒子物である該ピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物を含む約40〜80重量%の充填剤と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤とを含む固体コアと;該コアの外表面上の連続コーティングとを含み;該コアと該コーティングとが、酸化還元−活性金属塩を実質的に含まない、経口投与剤型。
【請求項2】
実質的に均一に全体に分散された前記ピコプラチン微粒子物を有する粉末を圧縮する工程によって前記コアを形成し錠剤を産する、請求項1に記載の経口投与剤型。
【請求項3】
実質的に均一に全体に分散された前記ピコプラチン微粒子物を有する粉末を成形する工程により前記コアを形成しピルを産する、請求項1に記載の経口投与剤型。
【請求項4】
前記粉末が、粒状物からふるいまたは粉砕により形成される、請求項2または3に記載の経口投与剤型。
【請求項5】
前記コアが、前記ピコプラチンと、充填剤と、潤滑剤と、場合によって分散剤との混合物の造粒により形成される粒状物である、請求項1に記載の経口投与剤型。
【請求項6】
前記ピコプラチンが、前記粒状物に実質的に均一に全体に分散される、請求項5に記載の経口投与剤型。
【請求項7】
カプセルに封入された、複数の請求項5または6に記載の前記コートされた粒状物。
【請求項8】
前記コーティングが、硬ゼラチンまたは軟ゼラチンを含む、請求項1、2、3、5または6に記載の経口投与剤型。
【請求項9】
前記コーティングが、糖、好ましくはスクロースを含む、請求項1、2、3、5または6に記載の経口投与剤型。
【請求項10】
前記コーティングが、膜形成ポリマーを含む、請求項1、2、3、5または6に記載の経口投与剤型。
【請求項11】
前記ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、またはポリビニルアルコールを含む、請求項10に記載の経口投与剤型。
【請求項12】
前記コーティングが、中に分散された硫酸カルシウムを含むヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、請求項1、2、3、5または6に記載の経口投与剤型。
【請求項13】
前記コーティングが、可塑剤を含む、請求項10に記載の経口投与剤型。
【請求項14】
前記可塑剤が、ポリエチレングリコールである、請求項13に記載の経口投与剤型。
【請求項15】
前記コーティングが、消泡剤を含む、請求項10に記載の経口投与剤型。
【請求項16】
前記コーティングが、中に分散された固体としての硫酸カルシウムを含む、請求項10に記載の経口投与剤型。
【請求項17】
前記充填剤が、前記コアの約60〜80重量%を含む、請求項1、2、3、5または6に記載の経口投与剤型。
【請求項18】
前記炭水化物が、単糖、二糖、糖アルコール、セルロース、改変セルロース、またはその混合物を含む、請求項1、2、3、5または6に記載の経口投与剤型。
【請求項19】
前記炭水化物が、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、微結晶性セルロース、またはその混合物を含む、請求項18に記載の経口投与剤型。
【請求項20】
前記潤滑剤が、脂肪酸のアルカリ土類金属塩を含む、請求項1、2、3、5または6に記載の経口投与剤型。
【請求項21】
前記脂肪酸のアルカリ土類金属塩が、ステアリン酸マグネシウムである、請求項20に記載の経口投与剤型。
【請求項22】
前記コアが、約5〜10重量%の分散剤をさらに含む、請求項1、2、3、5または6に記載の経口投与剤型。
【請求項23】
前記分散剤が、クロスカルメロースナトリウムまたはポリビニルピロリドンを含む、請求項22に記載の経口投与剤型。
【請求項24】
前記改変セルロースが、セルロースエーテルを含む、請求項18に記載の経口投与剤型。
【請求項25】
前記セルロースエーテルが、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、またはメチルヒドロキシプロピルセルロース、またはその組み合わせである、請求項24に記載の経口投与剤型。
【請求項26】
前記炭水化物が、微細微粒子物形状のセルロースを含む、請求項18のいずれか一つに記載の経口投与剤型。
【請求項27】
前記微細微粒子物形状のセルロースが、微結晶性セルロースである、請求項26に記載の経口投与剤型。
【請求項28】
前記微粒子物ピコプラチンが、微粉化ピコプラチン、微結晶性ピコプラチン、凍結乾燥ピコプラチン、またはその任意の組み合わせである、請求項1、2、3、5または6に記載の経口投与剤型。
【請求項29】
前記ピコプラチン微粒子物が、平均粒径約7ミクロン未満である、請求項28に記載の経口投与剤型。
【請求項30】
前記ピコプラチン粒子の約90%が、約5ミクロン未満の粒径を有する、請求項29に記載の経口投与剤型。
【請求項31】
前記ピコプラチン微粒子物が、ジェットミリングにより微粉化されている、請求項28に記載の経口投与剤型。
【請求項32】
前記コーティングが、第二コーティングをさらに含む第一コーティングであり、ここで該第二コーティングが、該第一コーティングの外表面上に実質的に連続的に処理される、請求項1、2、3、5または6に記載の経口投与剤型。
【請求項33】
ピコプラチン:炭水化物:分散剤(存在する場合):潤滑剤の比率が、1:1.5〜3.0:0.1〜0.3:0.25〜0.1である、請求項1、2、3、5または6に記載の経口投与剤型。
【請求項34】
前記酸化還元−活性金属塩が、TiOを含む、請求項1、2、3、5または6に記載の経口投与剤型。
【請求項35】
前記酸化還元−活性金属塩が、Feを含む、請求項1、2、3、5または6に記載の経口投与剤型。
【請求項36】
ピコプラチンのための経口投与剤型を調製するためのプロセスであり、該プロセスが:
約10〜60重量%のピコプラチンであって平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物である該ピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物を含む約40〜80重量%の充填剤と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤と、場合によって約5〜10重量%の分散剤とを含む固体コアを形成する工程と;該コアの外表面上に連続コーティングを施す工程とを含み、該コアおよび該コーティングが、酸化還元−活性金属塩を含まない、プロセス。
【請求項37】
前記コアを形成する前記工程が、
(a)前記ピコプラチン微粒子物、前記充填剤、前記潤滑剤、および場合によって前記分散剤を、粒状物に形成する工程であり、該ピコプラチン微粒子物が実質的に均一に全体に分散される、工程と、
(b)該粒状物を粉末にする工程であり、該ピコプラチン微粒子物が実質的に均一に全体に分散される、工程と;
(c)該粉末を錠剤コアに圧縮成形する工程、または該粉末をピルコアに成形する工程
を含む、請求項36に記載のプロセス。
【請求項38】
前記ピコプラチン微粒子物が、微粉化ピコプラチン、微結晶性ピコプラチン、凍結乾燥ピコプラチン、またはその任意の組み合わせである、請求項36または37に記載のプロセス。
【請求項39】
前記ピコプラチン微粒子物が、平均粒径約1〜7ミクロンである、請求項36または37に記載のプロセス。
【請求項40】
前記ピコプラチン粒子の約90%が、約5ミクロン未満の粒径を有する、請求項36または37に記載のプロセス。
【請求項41】
前記ピコプラチン微粒子物が、前記コアに実質的に均一に全体に分散される、請求項36または37に記載のプロセス。
【請求項42】
前記ピコプラチン微粒子物が、ジェットミリングにより産出される、請求項36または37に記載のプロセス。
【請求項43】
前記充填剤が、前記コアの約60〜80重量%を含む、請求項36または37に記載のプロセス。
【請求項44】
前記炭水化物が、単糖、二糖、糖アルコール、セルロース、改変セルロース、またはその混合物を含む、請求項36または37に記載のプロセス。
【請求項45】
前記炭水化物が、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、微結晶性セルロース、またはその混合物を含む、請求項44に記載のプロセス。
【請求項46】
前記改変セルロースが、セルロースエーテルを含む、請求項44に記載のプロセス。
【請求項47】
前記セルロースエーテルが、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはその混合物を含む、請求項46に記載のプロセス。
【請求項48】
前記セルロースが、微細微粒子物形状のセルロースを含む、請求項45に記載のプロセス。
【請求項49】
前記微細微粒子物形状のセルロースが、微結晶性セルロースを含む、請求項48に記載のプロセス。
【請求項50】
前記潤滑剤が、脂肪酸のアルカリ土類金属塩を含む、請求項36または37に記載のプロセス。
【請求項51】
前記脂肪酸のアルカリ土類金属塩が、ステアリン酸マグネシウムである、請求項50に記載のプロセス。
【請求項52】
前記コアが、約5〜10重量%の分散剤をさらに含む、請求項36または37に記載のプロセス。
【請求項53】
前記分散剤が、クロスカルメロースナトリウムまたはポリビニルピロリドンを含む、請求項52に記載のプロセス。
【請求項54】
請求項36または37に記載のプロセスにより調製される経口投薬。
【請求項55】
約50〜200mgのピコプラチン微粒子物を含む、請求項54に記載の経口投与剤型。
【請求項56】
癌で悩まされる患者の癌を処置する方法であり、請求項1、2、3、5または6に記載の1つの経口投与剤型または複数の該経口投与剤型を、該患者に有益な効果を提供するために適切な投与あたりの総用量、頻度、および期間で投与する工程を含む、方法。
【請求項57】
癌を処置する方法であり、癌で悩まされる患者に、請求項36または37に記載のプロセスにより調製される前記経口投与剤型の一つ以上を有効な量、投与する工程を含む、方法。
【請求項58】
(a)約10〜60重量%のピコプラチンであって平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物である該ピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物を含む約40〜80重量%の充填剤と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤と、場合によって分散剤とを含む顆粒から形成される粉末を圧縮して錠剤コアを産する工程と、(b)該錠剤コアをコートして外表面上に水溶性または水分散性コーティングを有するコート錠を産する工程とを含むプロセスであって、該コアおよび該コーティングが、酸化還元−活性金属塩を実質的に含まない、プロセスにより調製されるピコプラチンのための経口投与剤型。
【請求項59】
(a)約10〜60重量%のピコプラチンであって平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物である該ピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物を含む約40〜80重量%の充填剤と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤と、場合によって分散剤とを含む顆粒から形成される粉末を成形してピルコアを産する工程と、(b)該ピルコアをコートして外表面上に水溶性または水分散性コーティングを有するコートピルを産する工程とを含む、プロセスであって、該コアおよび該コーティングが、酸化還元−活性金属塩を実質的に含まない、プロセスにより調製されるピコプラチンのための経口投与剤型。
【請求項60】
(a)約10〜60重量%のピコプラチンであって平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物である該ピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物を含む約40〜80重量%の充填剤と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤と、場合によって分散剤とを含む顆粒から形成される粉末を圧縮して錠剤コアを産する工程と、(b)該錠剤コアをゼラチンでコートしてゲルタブを産する工程とを含むプロセスであり、該コアおよび該ゼラチンが、酸化還元−活性金属塩を実質的に含まない、プロセスにより調製されるピコプラチンのための経口投与剤型。
【請求項61】
ピコプラチンのための経口投与剤型であり、該投与剤型が、約10〜60重量%の微粒子物ピコプラチンであって平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物である該ピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物を含む約40〜80重量%の充填剤と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤とを含む固体コアと;該コアの外表面上に連続コーティングとを含み;該コーティングが、二酸化チタンを実質的に含まない、経口投与剤型。
【請求項62】
ピコプラチンのための経口投与剤型であり、該投与剤型が、約10〜60重量%の微粒子物ピコプラチンであって平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物である該ピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物を含む約40〜80重量%の充填剤と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤とを含む固体コアと;該コアの外表面上に連続コーティングとを含み;該コーティングが、Feを実質的に含まない、経口投与剤型。
【請求項63】
ピコプラチンのための経口投与剤型であり、該投与剤型が、約10〜60重量%の微粒子物ピコプラチンであって平均粒径約10ミクロン未満の微粒子物である該ピコプラチンと、実質的に水溶性、水分散性、または水吸収性の炭水化物を含む約40〜80重量%の充填剤と、最大約5重量%の有効な量の潤滑剤とを含む固体コアと;該コアの外表面上に連続コーティングとを含み;該コーティングが、Fe+2を実質的に含まない、経口投与剤型。
【請求項64】
前記コーティングが、可塑化セルロースまたは改変セルロースを含む、請求項58〜63のいずれか一項に記載の投与剤型。
【請求項65】
前記コーティングが、糖を含む、請求項58〜63のいずれか一項に記載の投与剤型。
【請求項66】
前記コーティングが、ゼラチンを含む、請求項58〜63のいずれか一項に記載の投与剤型。
【請求項67】
前記コーティングが、不透明化量のCaSOを含む、請求項58〜63のいずれか一項に記載の投与剤型。
【請求項68】
前記投与剤型が、前記コーティングの表面上に第二の最外部連続コーティングを含む、請求項58〜63のいずれか一項に記載の投与剤型。

【公表番号】特表2010−518089(P2010−518089A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549128(P2009−549128)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/001752
【国際公開番号】WO2008/097661
【国際公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【出願人】(398003681)ポニアード ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (10)
【出願人】(500579888)ジェンザイム・コーポレーション (34)
【Fターム(参考)】