説明

安定化されたポリマー組成物

【課題】健康および環境に対して、より危険性が少なく、コストメリットのある、ハロゲン含有ポリマー組成物の熱安定化手段を提供する。
【解決手段】a)ハロゲン化ポリマー物質を40重量%より多く;b)モノメチルスズ安定化剤がメチルスズ安定化剤の25重量%を超える、モノメチルスズ安定化剤とジメチルスズ安定化剤との混合物を含むメチルスズ安定化剤を0.01〜5.0phr;並びにc)安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物を形成するためのポリ酸物質の塩を0.01〜5phr;含む、安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハロゲン含有ポリマー組成物の熱安定化に関する、より具体的には、本発明はメチルスズ安定化剤と、ポリカルボン酸、リン酸またはスルホン酸またはホウ酸のようなポリ酸物質の少なくとも1種の塩とを含むポリ(塩化ビニル)(PVC)または塩素化ポリ塩化ビニル(cPVC)組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン含有ポリマーは、通常、熱誘起劣化に対して感受性であり、高温での処理中にそのようなポリマーの物理的特性が劣化し、かつ色の変化が起こることがよく知られている。ポリマーにおける望まれない色の変化は、多くの場合、熱処理の5〜15分以内および熱処理後の段階中に起こる。このようなポリマーの例は、ハロゲンが炭素原子に直接結合しているビニルおよびビニリデンポリマーである。ポリ(塩化ビニル)、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ビニルのコポリマー、およびポリ(塩化ビニリデン)は、パイプ、窓枠、羽目板、ボトル、壁装材、包装用膜などに製造される間にその存続のために安定化を必要とする最もよく知られているポリマーである。
【0003】
より効果的な熱安定化剤の開発に多くの研究がなされてきており、そして有機スズベースの熱安定化剤が、剛性PVCのために最も有効でかつ広範囲に使用される安定化剤の1種なっている。しかし、スズ金属の高コストは、スズベースの安定化剤の経済的な魅力をより低くするそのコスト性能バランスに有意な影響を及ぼしていた。米国特許第5,100,946号は、安定化剤、および少なくとも2つのカルボキシル基を有するカルボン酸の少なくとも1種の金属塩を含む安定化PVC組成物を提供することにより当該技術分野の問題を解決することを追求している。この文献は安定化PVC組成物を提供するために、ジアルキルブチルおよびオクチルスズメルカプチド、並びに/またはアジピン酸ジナトリウム塩と組み合わせられたスルフィド架橋を有するアルキルスズメルカプトエステルを開示する。スズ金属の高コストに加えて、ブチルおよびオクチルスズ安定化剤の使用による健康および環境問題は、危険性のより少ない代替物の探索を導いてきた。よって、よりコスト効果的で、危険性の少ない安定化剤は、PVCのようなハロゲン含有ポリマーおよびコポリマーの安定化における使用に顕著な価値を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,100,946号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、少なくとも2つの酸性基を有する少なくともポリカルボン酸またはリン酸またはスルホン酸またはホウ酸の塩と、メチルスズ安定化剤との組み合わせが、驚くべきことにそして独特に、メチルスズ安定化剤の性能を向上させ、かつより低コストでより安全な熱安定化剤を提供することを見いだした。スズ安定化剤と組み合わせて、ポリ塩化ビニルおよび塩素化ポリ塩化ビニルを安定化するために、アジピン酸ナトリウムおよびリン酸二ナトリウムのようなポリカルボン酸塩およびリン酸塩の使用が提案されてきたが、ポリカルボン酸またはリン酸またはスルホン酸またはホウ酸の塩が、メチルスズ安定化剤と組み合わせられて、最も著しくは25重量%を超えるモノメチルスズメルカプタン化合物を含むメチルスズ安定化剤と組み合わせられて使用される場合に、望まれる相乗効果が観察されることが今回見いだされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の形態に従って、
a)ハロゲン化ポリマー物質を40重量%より多く;
b)モノメチルスズ安定化剤がメチルスズ安定化剤の25重量%を超える、モノメチルスズ安定化剤とジメチルスズ安定化剤との混合物を含むメチルスズ安定化剤を0.01〜5.0phr;並びに
c)ポリ酸物質の塩を0.01〜5phr;
含む、安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物が提供される。
本発明の第2の形態に従って、
a)塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレンまたはこれらの混合物を含むハロゲン化ポリマー物質を40重量%より多く;
b)モノメチルスズ安定化剤を0.3phrより多く;並びに
c)ポリ酸物質の塩を0.01〜5phr;
含む、安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において使用される場合、「ポリ酸」は2以上の酸性基を含有する物質を意味する。
本明細書において使用される場合、「phr」はハロゲン化ポリマー、すなわちPVCの100部あたりの部を意味する。
本明細書において使用される場合、「PVC組成物」はポリ(塩化ビニル)(PVC)または塩素化ポリ塩化ビニル(cPVC)組成物を意味する。本明細書において、用語「PVC」および「ハロゲン含有ポリマー混合物」などは交換可能に使用される。
本明細書において使用される場合、「ヒドロカルビル」は炭素および水素を含有する炭化水素基を意味する。
他に示されない限りは、全てのパーセンテージは重量パーセンテージであり、全ての温度は℃単位である。モノメチルスズ安定化剤およびジメチルスズ安定化剤のパーセンテージは、使用されるメチルスズ安定化剤化合物の重量パーセンテージとして表される。
【0008】
本明細書において使用される場合、「メチルスズ安定化剤」は次の式で表されうるモノおよびジメチルスズメルカプタンの混合物を意味する:
【0009】
【化1】

【0010】
式中、Rは置換もしくは非置換のヒドロカルビル基、R−O−C(=O)−R、R−C(=O)−O−Rであり、RはC−C20ヒドロカルビル基であり、Rは置換もしくは非置換のヒドロカルビル基であり、Rは置換もしくは非置換のヒドロカルビル基、または水素である。
【0011】
本発明は、安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物に関する。安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物はポリマー物質を含み、このポリマー物質はハロゲン含有ポリマー組成物、少なくとも1種のメチルスズ安定化剤および少なくとも1種のポリ酸の塩を含み、このポリ酸は少なくとも2つの酸性基を有するカルボン酸、スルホン酸、リン酸またはホウ酸である。
【0012】
ポリマー物質は剛性ポリマー物質または非塩素化可塑剤で可塑化された柔軟性ポリマー物質であることができる。剛性とはポリマーが実質的に可塑剤を含まないことを意味する。柔軟性とはポリマーが可塑剤を含むことを意味する。好適な可塑剤には、これに限定されないが、フタル酸エステル、並びにアジピン酸エステル、アゼライン酸エステル、リン酸エステルおよびエポキシド化油が挙げられる。一般的に使用される可塑剤はフタル酸ジ(2−エチルへキシル)(DOP)である。他の有用な可塑剤には、リン酸トリクレシル、フタル酸ジブチル、セバシン酸ジブチル、リン酸トリブチル、エポキシド化エステル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリオクチル、セバシン酸ジオクチルおよびアジピン酸ジオクチルが挙げられ、並びに様々な低分子量ポリマー、例えば、ポリ(プロピレングリコール)エステルがビニルのための可塑剤として現在広く利用されている。可塑剤の含有量は物質の最終用途に応じて広く変動するが、典型的には10〜60重量パーセントである。
【0013】
ハロゲン含有ポリマー物質がポリ(塩化ビニル)ホモポリマーを含むことが意図される。
安定化されるハロゲン含有ポリマーには、これらに限定されないが、ポリ(塩化ビニル)、塩素化ポリ(塩化ビニル)およびポリ塩化ビニリデンが挙げられ、ポリ(塩化ビニル)ホモポリマーが好ましい。ハロゲン含有ポリマーには、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、メタクリラート、アクリラート、スチレン、フマル酸ジアルキル、マレイン酸ジアルキル、または他のモノオレフィン酸アルキルエステル、並びに他の熱可塑性樹脂とのブレンドおよびアロイが挙げられうる。ハロゲン含有ポリマーには、ポリハロゲン化ビニルポリマー、例えば、ポリ(塩化ビニル)を挙げることができるが、臭化物もしくはフッ化物のような他のものが使用されてよい。塩素化ポリエチレンのようなハロゲン化ポリオレフィンも有用である。
【0014】
概して、ハロゲン含有ポリマーは、ハロゲン化ビニルモノマーのホモポリマー、ハロゲン化ビニルモノマーと他のモノマーとのブロックおよびグラフトコポリマーをはじめとするコポリマー、並びにハロゲン化ビニルポリマーと他のポリマーとのアロイ、ブレンドおよび混合物、をはじめとするハロゲン化ビニルポリマー組成物である。
【0015】
本発明の組成物において有用なポリマーには、塩化ビニルと共重合性エチレン性不飽和モノマー、例えば、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、他のフマル酸アルキルおよびマレイン酸アルキル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチルおよび他のアクリル酸アルキル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルおよび他のメタクリル酸アルキル、アルファクロロアクリル酸メチル、スチレン、ビニルエーテル、例えば、ビニルエチルエーテル、ビニルクロロエチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルケトン、例えば、ビニルメチルケトン、ビニルフェニルケトン、トリクロロエチレン、1−フルオロ−1−クロロ−エチレン、アクリロニトリル、クロロ−アクリロニトリル、二酢酸アリリデン、二酢酸クロロアリリデン、並びにエチレンおよびプロピレンとのコポリマーが挙げられる。
【0016】
本発明において有用なポリマーブレンドには、ポリ(塩化ビニル)とポリ(エチレン)とのブレンド、ポリ(塩化ビニル)とポリ(メタクリル酸メチル)とのブレンド、ポリ(塩化ビニル)とポリ(メタクリル酸ブチル)とのブレンド、ポリ(塩化ビニル)とポリスチレンとのブレンド、ポリ(塩化ビニル)とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマーとのブレンド、並びにポリ(塩化ビニル)とポリ(メタクリル酸メチル)とのブレンドが挙げられる。
【0017】
本発明の実施に有用なポリマーブレンドは、一方のポリマーがハロゲン含有ポリマーのマトリックスもしくは連続相を構成する、少なくとも2種の異なるポリマーの物理的なブレンドを含むことができる。本発明の組成物は、ハロゲン含有ポリマー物質がポリマーブレンドの100パーセントである実施形態を含むことが意図される。ポリマーブレンド中にハロゲン非含有ポリマー物質は、ハロゲン含有ポリマー組成物の40%、あるいは25%、あるいは10%を構成することができる。
【0018】
本発明は40〜99.9重量%の1種以上のハロゲン化ポリマーおよび0.1〜5重量%のメチルスズ安定化剤を含む配合物である。メチルスズ安定化剤の場合においては、配合物は、モノメチルスズメルカプタン含有量が25重量%を超えるモノおよびジメチル安定化剤の混合物を含む。別の安定化剤組成物は40重量%を超える、50重量%を超える、70重量%を超える、80重量%を超えるまたは90重量%を超えるモノメチルスズメルカプタンを含む。
【0019】
あるいは、重量パーセンテージで表されるのに代えて、ハロゲン含有ポリマー組成物またはブレンド中のモノメチルスズ安定化剤の量は、モノメチル/ジメチルスズメルカプタン混合物中のモノメチルスズメルカプタンのパーセンテージに、PVC配合物中に使用されるメチルスズ安定化剤のphrをかけることにより決定されうる。例えば、80%モノメチルスズメルカプタン、20%ジメチルスズ安定化剤混合物の1.0phrがPVC配合物において使用された場合には、この配合物は0.8phrのモノメチルスズ安定化剤を含むであろう。本発明のある実施形態においては、PVC配合物は0.3phrを超えるモノメチルスズ安定化剤を含む。あるいは、PVC配合物は0.4phrを超える、0.5phrを超える、0.6phrを超える、0.7phrを超える、0.8phrを超える、または0.9phrを超えるモノメチルスズ安定化剤を含む。
【0020】
本発明において有用なメチルスズ安定化剤の例には、これに限定されないが、モノおよびジメチルスズメルカプタン、例えば、モノおよびジメチルスズドデシルメルカプチド、モノおよびジメチルスズメルカプトエステル、例えば、モノおよびジメチルスズ2−エチルヘキシルチオグリコラート、並びに逆メルカプトエステル、例えば、モノおよびジメチルスズメルカプトエチルオレアートおよびメルカプトエチルタラート(mercaptoethyltallate)が挙げられる。スズ金属中心間にスルフィド架橋を含まないメチルスズ安定化剤が好ましい。
【0021】
本発明において有用な、少なくとも2つの酸性基を有する、ポリカルボン酸またはリン酸またはスルホン酸またはホウ酸の塩は天然の分子またはポリマーであることができる。この塩はナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよびリチウムのような金属塩であることができるか、またはアミンであることができる。
【0022】
このようなポリカルボキシル化合物の塩の例には、これに限定されないが、以下のものの塩、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、イタコン酸、クエン酸、グリコール酸、フタル酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸、ニトリロトリ酢酸、モノクエン酸エステルの塩、ジチオジグリコール酸、3,3−ジチオジプロピオン酸、グルタミン酸二ナトリウムおよびグルタミン酸アミドの塩が挙げられる。このようなリン酸化合物の塩の例には、これに限定されないが、リン酸三ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウム並びにリン酸エステルの一ナトリウムおよび二ナトリウム塩が挙げられる。このようなスルホン酸化合物の塩の例には、スルホコハク酸ハーフエステルおよびアミドの塩が挙げられる。このようなホウ酸の塩の例にはホウ酸ナトリウムが挙げられる。
【0023】
ポリカルボン酸の塩の非限定的なポリマー例としては、アクリル酸およびメタクリル酸の中和ホモポリマー、およびアクリル酸およびメタクリル酸とスチレンおよび(メタ)アクリルエステルモノマーとの中和コポリマーが挙げられる。コポリマー、例えば、ポリメチルメタクリラートコポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリブチルアクリラートコポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリスチレンコポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム塩も有用である。
【0024】
少なくとも2つの酸性基を有する、ポリカルボン酸またはリン酸またはスルホン酸またはホウ酸の塩はハロゲン含有ポリマー混合物に直接添加されることができ、またはハロゲン含有ポリマー混合物処理中に使用される他の成分、例えば、加工助剤、充填剤、ポリマー、耐衝撃性改良剤、顔料、滑剤および安定化剤にブレンドされうる。例えば、ポリカルボン酸、リン酸、スルホン酸、またはホウ酸の塩は水中に溶解されることができ、次いで耐衝撃性改良剤もしくは加工助剤の水性エマルションに添加され、次いで一緒に噴霧乾燥されて、ポリマーとポリカルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩またはホウ酸塩との緊密な粉体を形成することができる。
【0025】
メチルスズ安定化剤、および少なくとも2つの酸性基を有するカルボン酸、リン酸、スルホン酸またはホウ酸の塩の量は、具体的な処理条件および使用されるハロゲンポリマーに必要とされる安定性を達成するように変化しうる。上記存在するポリカルボン酸、リン酸、スルホン酸またはホウ酸の塩の使用は、より少ないスズベースの安定化剤の使用でPVC化合物が等しい安定性を達成するのを可能にする。等しいかまたはより良好な安定化および色保持を保ちつつ、メチルスズ安定化剤の量が50重量%以下に低減されうることが見いだされた。典型的には、組成物は、100部のハロゲン化ポリマーあたり0.01〜5.0、あるいは0.1〜3.0、あるいは0.1〜2.0、あるいは0.3〜1.5(100部あたりの部)のメチルスズ安定化剤を含む。
【0026】
典型的には、組成物は、100部のハロゲン化ポリマーあたり、0.01〜5.0、あるいは0.1〜3.0、あるいは0.1〜2.0、あるいは0.3〜1.5(100部あたりの部)の、少なくとも2つの酸性基を有するポリカルボン酸、リン酸、スルホン酸またはホウ酸の塩を含む。
【0027】
本発明において有用なスズベースの安定化剤は、メルカプチドおよびメルカプトエステルベースのスズ安定化剤をはじめとする有機スズ安定化剤を含むことができる。本発明において有用なメチルスズ安定化剤の好適な例には、これに限定されないが、モノおよびジメチルスズメルカプタン、例えば、モノおよびジメチルスズドデシルメルカプチド、モノおよびジメチルスズメルカプトエステル、例えば、モノおよびジメチルスズ2−エチルヘキシルチオグリコラート、並びに逆メルカプトエステル、例えば、モノおよびジメチルスズメルカプトエチルオレアートおよびメルカプトエチルタラートが挙げられる。硫黄架橋メチルスズ化合物も意図されるが好ましくはない。
【0028】
本発明の安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物は、押出、射出成形、ブロー成形およびカレンダリングのためにコンパウンドされ、繊維、ワイヤおよびケーブル、羽目板、窓枠、発泡シート、パイプ、エルボウ(elbow)および他のパイプ継ぎ手、膜、シートおよびボトルのような最終物品に形作られうる。安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物は他の成分、例えば、染料、顔料、防炎剤、内部滑剤、外部滑剤、耐衝撃性改良剤、加工助剤、発泡剤、充填剤、および加熱、老化、光への曝露もしくは風化によって引き起こされる変色もしくは劣化を抑制、低減もしくはマスクする他の添加剤と混合されうる。
【0029】
次の実施例は本発明を例示する。実施例は本発明を限定するものとして構成されていない。他に示されない限りは、「部」は樹脂の100部あたりの部(phr)である。
【実施例】
【0030】
組成物の動的安定性はBRABENDER(登録商標)PLASTICORD(ブラベンダープラスチコード)レオメーターのようなレオメーターを用いて、またはCollin(登録商標)Mill(コリンミル)のようなツーロールミルで測定されうる。様々な安定化剤添加組成物の性能は分単位の安定時間で示される。安定時間は時間の経過によるサンプルの黄色指数に基づいて特定されうる。サンプルをトルクレオメーターのサンプルチャンバーに入れ、ローターを回転しつつ加熱する。最初に、溶融時間が決定される。溶融時間は粉体が溶融される時間である。溶融トルクはメートルグラム単位の溶融時間での仕事の測定値である。サンプルが溶融すると、粘性が下がり、トルクが低下する。サンプルは平行時間(分)で平行トルクに到達し、これは実質的に一定のままであるかまたはわずかに減少し続ける。組成物は、平行トルク値で示されるように、溶融状態のままである。組成物が架橋し始めるときに、トルクの増加が観察される。用語「安定時間」は、平行トルク値を超えてトルクが増加することにより示されるような、組成物が分解または架橋し始める時間から溶融時間を引いた時間である。
【0031】
次のものは、実施例において使用された錫ベースの安定化剤のリストである:
安定化剤A=90%モノメチルスズトリ2−エチルヘキシルチオグリコラート、10%ジメチルスズビス2−エチルヘキシルチオグリコラート;
安定化剤B=75%モノメチルスズトリ2−エチルヘキシルチオグリコラート、25%ジメチルスズビス2−エチルヘキシルチオグリコラート;
安定化剤C=50%モノメチルスズトリ2−エチルヘキシルチオグリコラート、50%ジメチルスズビス2−エチルヘキシルチオグリコラート;
安定化剤D=27%モノメチルスズトリ2−エチルヘキシルチオグリコラート、73%ジメチルスズビス2−エチルヘキシルチオグリコラート;
安定化剤E=34%モノオクチルスズトリ2−エチルヘキシルチオグリコラート、66%ジオクチルスズビス2−エチルヘキシルチオグリコラート(比較);
安定化剤F=27%モノメチルスズトリメルカプトエチルタラート、73%ジメチルスズビスメルカプトエチルタラート;
安定化剤G=90%モノメチルスズトリメルカプトエチルタラート、10%ジメチルスズビスメルカプトエチルタラート;
安定化剤I=53%モノオクチルスズトリ2−エチルヘキシルチオグリコラート、47%ジオクチルスズビス2−エチルヘキシルチオグリコラート(比較)。
【0032】
実施例1
【表1】

【0033】
安定化剤およびポリ酸添加剤を含む上記混合物200グラムを加熱した195℃のローラー間に入れた。フロントローラーのローラー速度は26RPMであり、リアローラーは20RPMであった。加熱PVCサンプルは示された時間でローラーから取り出され、黄色度(熱安定性の指標)をASTM法D−1925を用いてLabscan(ラボスキャン)で測定した。脱水クエン酸三ナトリウムがポリ酸添加剤であった。
【0034】
【表2】

【0035】
実施例2
ポリ酸添加剤としてアジピン酸ナトリウムが使用されることを除いて、実施例1におけるのと同じPVC配合物および処理条件。
【0036】
【表3】

【0037】
実施例3
ポリ酸塩添加剤として使用されたクエン酸三ナトリウムを用いた、実施例1におけるのと同じPVC配合物および処理条件。
【0038】
【表4】

【0039】
実施例4
様々なポリ酸塩添加剤を用いた、実施例1におけるのと同じPVC配合物および処理条件。
【0040】
【表5】

【0041】
実施例5
【表6】

【0042】
安定化剤およびポリ酸塩添加剤を含む上記PVC混合物70グラムが、パドル速度60RPMで、BRABENDER(登録商標)PLASTICORDレオメーターの185℃に加熱された混合ボウルに入れられた。加熱PVCサンプルは示された時間にこのボウルから取り出され黄色度(熱安定性の指標)をASTM法D−1925を用いてラボスキャンで測定した。
【0043】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ハロゲン化ポリマー物質を40重量%より多く;
b)モノメチルスズ安定化剤がメチルスズ安定化剤の25重量%を超える、モノメチルスズ安定化剤とジメチルスズ安定化剤との混合物を含むメチルスズ安定化剤を0.01〜5.0phr;並びに
c)安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物を形成するためのポリ酸物質の塩を0.01〜5phr;
含む、安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物。
【請求項2】
メチルスズ安定化剤が、モノおよびジメチルスズドデシルメルカプチド、モノおよびジメチルスズ2−エチルヘキシルチオグリコラート、並びにモノおよびジメチルスズメルカプトエチルオレアートまたはメルカプトエチルタラートを含む群から選択される少なくとも1種のモノおよびジメチルスズ安定化剤を含む、請求項1に記載の安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物。
【請求項3】
モノメチルスズ安定化剤がメチルスズ安定化剤の40重量%を超える、請求項1に記載の安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物。
【請求項4】
ポリ酸物質の塩が、ポリカルボン酸、リン酸、スルホン酸またはホウ酸のいずれかの塩である、請求項1に記載の安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物。
【請求項5】
ポリカルボン酸の塩が、アジピン酸、コハク酸、イタコン酸、グルタミン酸、またはクエン酸の塩を含む、請求項4に記載の安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物。
【請求項6】
安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物が、全組成物の10〜60重量%の量の可塑剤をさらに含む、請求項1に記載の安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物。
【請求項7】
a)塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、塩素化ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレンまたはこれらの混合物を含むハロゲン化ポリマー物質を40重量%より多く;
b)モノメチルスズ安定化剤を0.3phrより多く;並びに
c)ポリ酸物質の塩を0.01〜5phr;
含む、安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物。
【請求項8】
ハロゲン含有ポリマー組成物がモノメチルスズ安定化剤を0.4phrより多く含む、請求項7に記載の安定化されたハロゲン含有ポリマー組成物。

【公開番号】特開2010−248506(P2010−248506A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−88334(P2010−88334)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】