説明

安定化された粒状殺病害生物剤

本発明は、少なくとも1種の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートを含有する少なくとも1種の粒状基質材料を含んでなる安定化殺病害生物組成物;安定化粒状殺病害生物組成物を製造する方法であって、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートを、粒状基質材料上又はその内部に導入することを含んでなる方法;及び、(有用な植物及び種子に損傷を与えることなく)雑草又は望ましくない植物を枯死させ、又は制御する方法であって、本発明の安定化粒状殺病害生物組成物を除草有効量、雑草又は望ましくない植物の葉、組織、又は場所に施用することを含んでなる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状殺病害生物組成物、並びにその調製法及び利用法に関する。特に、本発明は、散布用固体基質の化学安定性が改善された粒状殺病害生物組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
作物の生育を妨げる雑草や他の望ましくない植物から作物を保護することは、農業、園芸、及び他の植物栽培実務で絶えず繰り返される課題である。本課題に対処するべく、合成化学分野の研究者等は、かかる不要な植生の制御に有効な種々の化学物質や化学製剤を作製してきた。様々な種類の化学除草剤が文献に掲載され、多数が市販されている。The Pesticidal Manual, 13th Edition(British Crop Protection Council 発行、2003年)には、市販の除草剤及び開発中の一部の除草剤が記載されている。
【0003】
除草剤の多くは作物にも害を与える。従って、生育作物間の雑草を制御するには、いわゆる「選択的」除草剤を使用する必要がある。選択的除草剤は、作物に害を与えることなく雑草を枯死させるように選択される。実際のことろ、特定の施用率で全ての雑草を枯死させ、且つ作物には害を及ぼさないような、完全に選択的な除草剤は殆ど存在しない。大抵の選択的除草剤の使用は、実際には、大半の雑草を満足に制御する上で十分な量の除草剤を施用しつつ、作物に及ぶ害を最小限に留めるというバランスである。
【0004】
除草剤の製剤としては、可湿粉末、水分散性顆粒、懸濁濃縮物、可乳化濃縮物、粉末又は微粉、可流動物、溶液、懸濁液、制御放出形態(例えばマイクロカプセル)、乾式撒播又は散布可能な顆粒等が挙げられる。除草剤は、他の殺病害生物剤(例えば他の除草剤、殺虫剤、殺真菌剤等)と共に製剤することができる。剤形の選択は、施用法に影響され得る。如何なる除草剤であれ、剤形及び作用機序の双方が、活性及び選択性の双方に影響を及ぼす場合がある。従って、ある特定の選択的除草剤の最適剤形は、施用方式、植物の性質、及び制御対象となる他の病害生物に依存し得る。
【0005】
農業、園芸、及びその他の病害生物制御用途では、多くの場合、殺病害生物剤を乾式撒播又は散布可能な顆粒に製剤することが望まれる。これは、大量の水と混合(例えばタンク混合)し、処理対象の場所に噴霧するように設計された、可湿粉末や水分散性顆粒とは対照的である。化学的に安定な製品を送達するという課題は、これら2種類の方法では異なる場合がある。
【0006】
乾式撒播可能な顆粒に製剤された選択的除草剤は、大面積の栽培植物内に存在する望ましくない植生を駆除することが可能であることや、人手や機械的手段で簡単に施用できることから、重要な商品である。例えば、ゴルフ・コース、公園、芝地、庭園、森林等の地域に選択的除草剤を施用する現実的且つ省力的な手法の一つとして、回転式撒播機による粒状除草剤の散布が用いられてきた。
【0007】
散布用の粒状除草剤は、選択的除草剤を不活性材料(例えば粘土、ピーナッツの殻、粉砕したトウモロコシの穂軸等)に付着させたものでもよく、肥料/除草剤の組み合わせでもよい。この場合、選択的除草剤を肥料成分に付着させ、「雑草除去+栄養供給(weed and feed)」組成物とする。
【0008】
顆粒形態の場合、選択的除草剤を、不活性粒状基剤又は粒状肥料成分に含浸させ、吸着させ、又は被覆する。粒状除草剤は、プラスチック袋、プラスチック製の缶、ファイバー製の樽に入れて提供される。粒状除草剤の植物への施用は、その粒状除草剤を植物に適切な用量率で直接撒播することにより行なう。
【0009】
重要な選択的除草剤の分類として、トリケトン類が挙げられる。例としては、特に、米国特許第4,780,127号、第4,938,796号、第5,006,158号、第5,089,046号に開示の化合物が挙げられる。これらの開示内容は援用により本明細書に組み込まれる。公知のトリケトン除草剤には、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンがある。2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンを酸形態で使用する場合の課題の一つとして、一部の環境下における、液体状態での、固体基剤に付着させた液体状態での、或いは固体基剤上又はその内部での化学安定性が挙げられる。酸形態の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンを含有する顆粒剤形は公知である(University of Maryland Department of Natural Resource Science and Landscape Architecture Turfgrass Pathology, Weed Science and Physiology Research Summaries, 2005, p.19)。
【0010】
酸形態に加えて、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの別の公知の形態として、金属キレート(例えば銅キレート)が挙げられる。金属キレートは特に、米国特許第5,912,207号(その開示内容は援用により本明細書に組み込まれる)に開示されている。本特許には、その金属キレートが、一部の環境下では、キレート化されていない2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンと比べて予想外に優れた安定性を有することが開示されている。本’207号特許は液体として希釈及び施用される製品を対象としている。(液体施用ではなく)撒播用に固形に製剤されたキレート化2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの安定化については、本’207号特許には特に開示されていない。固体基質中でのシクロヘキサンジオンの安定化は、液体媒体中での安定化とは異なる。反応性顆粒と化合物自体との間の表面相互作用を阻止する必要があるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
長期保存時の安定性が改善された粒状2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオン組成物の開発が求められている。本発明は、かかる安定化粒状2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオン組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
従って、本発明は、少なくとも1種の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートを含有する少なくとも1種の粒状基質を含んでなる安定化殺病害生物組成物を提供する。
【0013】
粒状基質としては、不活性材料、例えば粘土、粉砕したトウモロコシの穂軸、ピーナッツの殻等、及び/又は、肥料成分、例えば尿素/ホルムアルデヒド肥料、尿素、塩化カリウム、アンモニア化合物、リン化合物、イオウ、同様の植物栄養素及び微量栄養素等、並びにこれらの混合物及び組み合わせ等、合成及び天然双方の有機材料及び無機材料が挙げられる。
【0014】
金属キレート化2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンに加えて、本発明の安定化殺病害生物組成物は、粒状基質に吸着、含浸、被覆された他の殺病害生物剤、例えば除草剤、殺虫剤、成長調節剤、殺真菌剤等、或いは他の添加剤、例えば結合剤、界面活性剤、不活性な充填剤、生体が利用できるミネラル、植物栄養素等を含んでいてもよい。
【0015】
本発明は更に、安定化粒状殺病害生物組成物を製造する方法であって、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートを粒状基質材料に混合することを含んでなる方法、並びに、雑草又は望ましくない植物を枯死させ、又は制御する方法であって、除草有効量の本発明の安定化殺病害生物組成物を、雑草又は望ましくない植物の葉、組織、又は場所に施用することを含んでなる方法を提供する。
【0016】
本明細書記載の安定化粒状除草剤は、調製、輸送、貯蔵、施用が比較的容易である。顆粒剤形は液体剤形と比べて、包装、取扱容易性、安全性の面で大きな利点がある。顆粒の粒径は、通常は約0.1〜約30mmの範囲、特に約0.25〜約20mm、とりわけ約0.5〜約15mmであるが、この範囲外のサイズも使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
シクロヘキサンジオン化合物
化合物2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンは除草剤であり、トウモロコシの発芽後に施用した場合に、広範なスペクトルの広葉の雑草を、広範囲の成長段階で制御する能力を有することが知られている。本化合物は、施用時に存在する雑草及びその後4週間に発芽する雑草を制御するべく、一般に少量(1ヘクタール当たり活性成分100〜150グラム)使用される。施用されると、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンは迅速に、葉、新芽、根、種子に吸着される。感受性の雑草は、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンによって、カロチノイド生合成が中断される。これは植物の成長に不可欠な過程であるため、植物は枯死する。雑草とは異なり、トウモロコシは2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオン耐性である。これは本活性化合物を、迅速に不活性化合物に分解するためである。活性シクロヘキサンジオン化合物は、以下の一般式を有する。
【0018】
【化1】

【0019】
1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレート
2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンを含む2−(置換ベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオン化合物の金属キレートは、特に米国特許第5,912,207号に記載されている。その開示内容は援用により本明細書に組み込まれる。一実施態様によれば、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの適切な金属キレートは、以下の一般構造を有する。
【0020】
【化2】

式中、Mは、2価又は3価の金属イオン(例えばCu+2、Co+2、Zn+2、Ni+2、Ca+2、Al+3、Ti+3、Fe+3)を表わす。
【0021】
本発明で使用される除草剤である2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートは、上記の米国特許に記載の方法により、或いは、化学系の文献において使用又は記載されている公知の方法を適用又は応用することにより調製できる。
【0022】
上述のように、本発明の金属キレート化合物の形成に有用な可能性のある金属イオンとしては、2価又は3価の金属イオン(例えばCu+2、Co+2、Zn+2、Ni+2、Ca+2、Al+3、Ti+3、Fe+3)が挙げられる。金属キレート化合物を形成するための具体的な金属イオンの選択は、所望の金属キレート錯体の強度に応じて異なる。理論に束縛されるものではないが、金属キレート錯体の強度は、金属キレート錯体からの2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの放出速度と直接関連し、ひいては本発明の粒状組成物内の金属キレートの安定性と関連しているように見える。当業者であれば過度の実験を要せず、特定の粒状組成物に用いる適切な金属イオンを容易に決定できるであろう。適切な金属イオンとしては2価の遷移金属、例えばCu+2、Ni+2、Zn+2、Co+2等、特にCu+2とZn+2、とりわけCu+2が挙げられる。
【0023】
2価又は3価の金属イオン源となり得る適切な任意の塩を、本発明に係るジオン化合物の金属キレートの形成に使用することができる。特に適切な塩としては、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩、酢酸塩が挙げられる。
【0024】
2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオン金属キレートの安定性はpHに依存する。pHは約2〜約7の範囲を採り得るが、大半の金属では約6未満の酸性pHが至適である。一般に、Cu+2のキレート組成物ではpH約4〜6、Co+2ではpH約3〜5、Ni+2及びZn+2ではpH約5がよいと考えられる。個々の金属キレート組成物に最適なpHは、公知の定型的な実験技術を用いて決定可能である。
【0025】
最終剤形に過剰な金属イオンが存在すると、得られるキレートの化学安定性が向上する可能性がある。2価の金属では、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンと金属イオンとの化学量論的モル比は2:1である。即ち、金属キレートを生成させるのに2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンに加えるべき金属イオンの最少量は、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンと金属イオンとのモル比を、2:1とするのに十分な量である。しかし、化学量論的量よりも過剰な量にすると、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの化学安定性が向上する可能性があり、この点で、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンと金属イオンとのモル比を、約2:1〜2:5とするのが有用であり、特に約2:1〜2:3のモル比が注目される。モル比は約2:3が好ましい。理論に束縛されるものではないが、かかる量によって、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンが分解せずに安定化するものと思われる。
【0026】
本明細書で使用する2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンという記載には、幾何学的異性体を生じ得るあらゆるエノール互変異性形態が含まれる。更に、場合によっては、種々の置換基及び/又はキレート化形態によって、光学異性及び/又は立体異性が生じ得る。かかる互変異性形態、ラセミ混合物、及び異性体は、何れも本発明の範囲に含まれる。
【0027】
顆粒
本発明の安定化殺病害生物組成物に有用な顆粒性基質材料は、通常は、少なくとも1種の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレート用の固体基剤として機能する材料である。適切な顆粒性基質材料としては、例えば、不活性材料、肥料成分、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0028】
顆粒性基質の調製に使用できる不活性材料(すなわちN、P、Kを含まない成分)としては、乾燥粘土、炭酸カルシウム、レンガ、軽石、葉蝋石、カオリン、ドロマイト、プラスター、木粉、粉砕したトウモロコシの穂軸、粉砕したピーナッツの殻、砂糖、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、マグネシア、雲母、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、氷晶石、バーミキュライト、焼成した石灰、石膏、パーライト、珪藻土、ベントナイト粘土、硫酸カルシウム等、並びにこれらの混合物が挙げられる。本発明の安定化殺病害生物組成物の調製に適した不活性顆粒性基質の例は、米国特許第5,014,410号、第5,219,818号、第5,229,348号、第6,231,660号、第6,375,969号、第6,416,775号、第6,613,138号に記載されている。本発明の安定化殺病害生物組成物に有用な、粉砕ピーナッツ殻を主材料とした市販の適切な不活性な粒状基質材料の例としては、BIO Plus, Inc.(マディソン、ジョージア州)から入手可能なBIO 170 Granules(登録商標)が挙げられる。粒状基質として好ましい不活性材料としては、乾燥粘土、炭酸カルシウム、ドロマイト、粉砕したトウモロコシの穂軸、ピーナッツの殻、ベントナイト粘土が挙げられる。
【0029】
本明細書に記載される「肥料成分」という語は、植物栄養素又は植物ミネラルを植物に供給し得る任意の物質として定義される。例えば、一次(N−P−K)又は二次(Ca−Mg−S)主要栄養素、及び/又は、微量栄養素(B、Cu、Fe、塩化物、Mn、Mo、及びZn)が挙げられる。
【0030】
粒状基質の調製に使用できる適切な肥料成分としては、水溶性材料と不水溶性材料とが挙げられ、例としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、尿素、メチレン尿素、植物に微量栄養素(例えば銅、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、ホウ素、モリブデン、マンガン、鉄、ニッケル)を供給可能な化合物、硫酸マグネシウム、鉄キレート、硫酸マンガン、硫酸ニッケル、硫酸亜鉛、硫酸銅、動物の糞肥料、有機肥料、及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0031】
尿素及びメチレン尿素の他に、適切な尿素系粒状基質含有肥料に使用できる他の種類の生体利用可能窒素化合物としては、メチレン尿素オリゴマー、又は、一般式NH2CONH(CH2NHCONH2nH(ただしnは1〜10の整数である)で表わされる複数のメチレン尿素の混合物が挙げられる。かかるメチレン尿素オリゴマーとしては、メチレンジウレア(NH2CONHCH2NHCONH2)、ジメチレントリウレア(NH2CONHCH2NHCONHCH2NHCONH2)、トリメチレンテトラウレア、テトラメチレンペンタウレア等が挙げられる。メチレン尿素オリゴマーの適切な混合物が市販されている。例えば、Nu-Gro Technologies(カナダ)のNutralene(登録商標)や、Homestead CorporationのMetex-40や、Nitroform(登録商標)等が挙げられる。
【0032】
尿素系肥料等の特定の肥料には、顆粒剤中に存在する場合に、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオン酸と反応してこれを不安定化することが可能な、求核成分が含まれることが明らかになった。本発明の一態様によれば、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートは実質的に安定であり、粒状肥料中のかかる求核成分と実質的に反応しないことが見出された。
【0033】
従って、本発明は雑草を制御するための安定化粒状組成物を提供する。この組成物は、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンと、求核成分含有肥料とを含んでなり、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンは、粒状組成物中で、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンと求核成分含有肥料との間の相互作用を阻止又は低減する、2価又は3価の金属イオンとのキレートの形態で供される。
【0034】
窒素、酸素、金属イオン、及び微量栄養素は、何れも求核成分として機能し得る。具体的な窒素求核成分の例としては、尿素、メチレン尿素、上述のメチレン尿素オリゴマー、並びに、(例えばモノアミノリン酸塩又はジアミノリン酸塩等に由来する)肥料中に存在し得る任意の遊離アンモニアが挙げられる。
【0035】
肥料としての適切な粒状基質としては、単肥(straight fertilizer:1種類の栄養素nのみを含有するもの)、複合肥料(compound fertilizer:2種類以上の栄養素を含有するもの)、化成肥料(complex fertilizer:化学反応する複数の成分を混合して形成される複合肥料)、小球状肥料(prilled fertilizer:大気又は他の流体状媒体(例えば油)内の自由落下液滴の固化によって作製される略球形の粒状肥料)、被覆肥料(coated fertilizer:ケーキングを阻止し、或いは溶解速度を制御する材料からなる薄層で被覆した粒状肥料)、調整肥料(conditioned fertilizer:物理的状態を向上し、或いはケーキングを阻止するため、添加剤で処理した肥料)、バルク混合肥料(bulk-blend fertilizer:2種類以上の粒状肥料を混合して複合肥料を形成したもので、同程度の粒径の顆粒を有するものが含まれる)。また、適切な基質としては、人工の均質肥料や、混合された肥料や粒状殺病害生物剤も挙げられる。
【0036】
少なくとも1種の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートを付着させるのに適した、市販の肥料粒状基質の具体例としては、The Andersons, Inc.(モーミー、オハイオ州)から入手可能な粒状肥料商品であるProfesshoinal Turf(登録商標)及びContec(登録商標)メチレン尿素肥料、及び、The Scotts Company(メアリスビル、オハイオ州)の粒状肥料商品であるTurfbuilder(登録商標)が挙げられる。
【0037】
また、粒状基質材料は、当業者に公知の種々の成分を含有していてもよい。例えば、助剤(例えば結合剤、アジュバント、再湿潤剤、崩壊助剤、脱微粉剤、安定剤、界面活性剤、染料、及び同様の任意成分)を含入することで、安全に取り扱えるとともに、処理の必要な領域への正確な施用が簡便に行なえる、安定化殺病害生物組成物を提供することができる。更に、他の殺病害生物剤(例えば除草剤、殺虫剤、殺真菌剤、成長調節剤)が、粒状基質上又はその内部に存在していてもよい。
【0038】
適切な粒状基質の調製に有用な結合剤の代表例としては、炭水化物(例えば単糖、二糖、オリゴ糖、多糖);タンパク質;脂質;糖脂質;糖タンパク質;リポタンパク質;これらの組み合わせ及び誘導体が挙げられる。
【0039】
本発明の粒状基質は、公知の方法で製造することができる。例えば、複数成分の均質バルク混合物を(乾式混合及び/又は噴霧)調製し、混合物をペレット化し、乾燥後、顆粒を篩分けして所望のサイズにする方法が挙げられる。例えば、従来の殺病害生物剤の製造方法として、押し出し式顆粒製造機、圧縮式顆粒製造機、撹拌式顆粒製造機、パン式顆粒製造機、流動床式顆粒製造機、円板ペレット化装置、パドル式ミキサー、ドラム式顆粒製造機、ピン・ミキサー等を利用することができる。通常は造粒によって直径0.1〜約30mm、特に0.25〜20mmの顆粒を得る。ペレット化/造粒の当業者であれば、過度の実験を要せずとも、変数を把握してそれを調節することにより、所望の特性を有する粒状基質材料を得ることが可能である。
【0040】
適切な顆粒は、ほぼあらゆる所望の形状にすることができる。例としては、球、円筒形、楕円形、棒、円錐形、円板、針、不規則形状等が挙げられる。理想的には、顆粒を略球形且つその表面を平滑にすれば、バルク形態の顆粒が所望の流動特性となる。
【0041】
顆粒の粒径は通常約0.1〜約30mm、特に約0.25〜約20mm、とりわけ約0.5〜約15mmであるが、この範囲外のサイズも使用できる。
【0042】
本発明によれば、少なくとも1種の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートを、粒子形成時に粒子と混合して顆粒全体に一様に分布させ(押し出し顆粒製造機)、或いは粒子形成後に粒状基質に噴霧含浸又は吸着させる。
【0043】
粒子形成後に所望により少なくとも1種の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートを加える場合には、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレート(及び他の任意の液体又は固体の活性成分)を、粒子形成後に接着剤又は固着剤の存在下又は不在下で粒状基質に加える。2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートを含浸させる代表的な方法としては、粒状基質への噴霧や、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートの懸濁液で顆粒を被覆することにより、金属キレート化2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンを吸着させる方法がある。
【0044】
本発明の安定化殺病害生物組成物の調製は、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートのミルベース(millbase)を噴霧溶液として用い、キレート材料を適切な粒状基質に噴霧含浸、被覆、吸着させて行なうことができる。本発明での使用に適したミルベースは、PCT出願WO2005/055714(その開示内容は援用により本明細書に組み込まれる)に開示の方法により、或いは化学系の文献において使用又は記載されている公知の方法を適用又は応用することにより調製できる。例えば、水、酢酸、非イオン性界面活性剤、及び2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンを混合する。次に安定剤(例えば水酸化銅)を加える。発泡防止剤を加え、更に任意により増粘剤(例えばキサンタン・ゴム)及び/又はアジュバント(例えば硝酸アンモニウム)を加えて、一様になるまで混合する。必要な場合は、ミルベースを粉砕して所望の粒径とする。
【0045】
適切なミルベースの調製に使用可能な非イオン性界面活性剤としては、例えばエトキシル化アリールアルキルフェノールが挙げられる。特にEO鎖の平均長が10〜80EO、とりわけ16〜40EOのエトキシル化トリスチリルフェノールが挙げられる。例として、Rhodia社から入手可能な商品であるSoprophor BSU、Soprophor CY/8、Soprophor S/25、Soprophor S/40-Pが挙げられる。
【0046】
一実施態様によれば、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートと、第2の固体殺病害生物活性成分との混合物を、接着剤又は固着剤を用いて粒状基質の外面に接着させる。接着性液体を使用してもよく、これは固体活性成分の添加の前又は後に付着させても、固体活性成分と同時に付着させてもよい。接着剤の選択は、粒状基質成分の種類に応じて異なるが、当業者には明らかであろう。液体接着剤の例として、これに制限されるものではないが、本明細書に記載の結合剤、例えば鉱物油、液体ポリマー(例えばポリブテン)等が挙げられる。
【0047】
当業者であれば、顆粒に添加すべき2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートの量を容易に決定することができる。例えば、意図される用途での顆粒の施用率(例えば、特定のN−P−K比率を有する肥料として)と、除草剤としての2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートの施用率とを考慮すれば、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートを顆粒に添加する適切な比率を決定することができる。
【0048】
例えば、個々の成分の量は広い範囲で変えることができるが、少なくとも1種の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートの存在量は、通常は(酸当量基準で)殺病害生物組成物の約0.02〜約60重量%、特に約0.05〜約1.0重量%、とりわけ約0.1〜0.6重量%、例えば0.25重量%程度とする。一実施態様によれば、殺病害生物組成物に対して、「充填剤」(非殺病害生物活性成分)は通常約10〜90重量%であり、界面活性剤は通常約0〜約20重量%であり、助剤は通常約0.01〜約10重量%であるが、これらの範囲外の重量も使用できる。また、充填剤、界面活性剤、助剤のうちの1種類以上を使用せずに、粒状殺病害生物組成物を調製することもできる。
【0049】
また、本発明に係る2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートを含んでなる顆粒は、他の除草剤との予混合物として製造してもよく、1種類以上の追加の除草剤又は他の農業用組成物と混合してもよい。
【0050】
本発明に係る2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートを有する粒状除草組成物に含入可能な他の除草剤の具体例としては、2,4−D、アミノピラリド、アトラジン、ベネフィン、ベンスリド、ベンタゾン、ビスピリバック、クロルスルフロン、ジカンバ、ジクワット、フロラムスルフロン、フルミオキサデン、ハロスルフロン、ヘキサジノン、イソキサベン、メフルイジド、メタンアルソン酸塩、メトスルフロン、メトスルフロン−メチル、プロナミド、リムスルフロン、スルホスフロン、トリフロキシスルフロン等が挙げられる。適切な共除草剤としては、ジカンバ、ベンタゾン、アトラジン、シマジンが挙げられる。
【0051】
上述のように、少なくとも1種の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートは、顆粒全体に均質に分布させても、顆粒に噴霧含浸、吸着、又は被覆させてもよい。
【0052】
使用法
本発明の安定化殺病害生物組成物は、農学的に重要な多数の雑草に使用可能である。かかる雑草としては、ハコベ、オランダガラシ、ヌカボ、ジギタリア属(例えばキタメヒシバ、オニメヒシバ)、カラスムギ、アワ、カラシ、ムギ、ナス、インゲンマメ、ヒエ、フトイ、ミズアオイ、オモダカ、セイヨウタンポポ;シロツメクサ;イヌムギ、スズメノテッポウ、セイバンモロコシ、ツノアイアシ、カヤツリグサ、アブティロン、ゴジカ、オナモミ、ヒユ、アカザ、サツマイモ、シュンギク、ヤエムグラ、パンジー、ショウジョウハグマ等が挙げられる。
【0053】
本発明の安定化殺病害生物組成物によって制御可能な雑草としては、オニメヒシバ、キタメヒシバ、タンポポ、シロツメクサ、ムラサキツメクサ、ハコベ、ホトケノザ、クワガタソウ、カタバミ、コネズミガヤ、コヌカグサ、ヘラオオバコ、葉の広いオオバコ、ダラー・ウィード、FLハシカグサモドキ、シロザ、タデ、ブタクサ、野生のパンジー、アカザ、ヘッジ・ウィード(hedge weed)等が挙げられる。枯死しない雑草でも、多くは発育阻害され、非競合的となり、開花が中断される。
【0054】
本発明の目的によれば、「雑草」という語には、望ましくない作物種、例えば自生(volunteer)作物等が含まれる。例えば、ゴルフ・コース等の芝生に関して言えば、コヌカグサを有する緑芝は、別種の草が栽培されているフェアウェイに見られる場合には、「自生(volunteer)」であると考えることができる。
【0055】
制御とは、雑草を枯死させ、損傷し、又は成長を抑制することを意味する。「場所(locus)」は、土、種子、及び苗、並びに既存の植生が含まれるものとする。
【0056】
本発明の利点が最も顕著となるのは、生育中の有用作物間の雑草を枯死させるために安定化殺病害生物組成物を施用する場合である。有用作物としては、例えば、トウモロコシ(飼料用トウモロコシ、ポップ・コーン、スイート・コーン);アスパラガス、ブッシュベリー(ブルーベリー)、ケインベリー、ツルコケモモ、アマ、モロコシ、オクラ、オートムギ、ペパーミント、ダイオウ、スペアミント、サトウキビ等が挙げられる。
【0057】
「作物(crops)」には、種々の芝生、例えば寒冷期の芝生(一年性ライグラス、ファイン・フェスキュー、ナガハグサ、多年生ライグラス、オニウシノケグサ)及び温暖期の芝生(エレモクロア、雑種ギョウギシバ、及びイヌシバ。通常のギョウギシバ及びコウシュンシバも挙げられる)等も含まれると解すべきである。
【0058】
加えて、「作物」には、従来法の品種改良又は遺伝子組み換えの結果、害虫及び殺病害生物剤(除草剤又は除草剤群)に対する耐性を獲得した作物も含まれると解すべきである。本発明の利点は発芽後施用により最大に発揮されるが、発芽前施用も可能である。
【0059】
一実施態様によれば、本発明の安定化殺病害生物組成物は、乾式撒播可能な顆粒の形態で、制御が望まれる場所に対し、従来法(すなわち発芽後施用)で施用される。本発明の安定化殺病害生物組成物は、除草作用が確実に発揮されるのに十分な量を施用する。施用量は、粒状除草組成物中の金属キレート化2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの量、及び組成物の使用目的に応じて異なる。
【0060】
一実施態様によれば、本発明の安定化殺病害生物組成物は、撒播時に物理的一体性を保持した顆粒として施用され、通常は灌漑水の導入時や、粒子に降雨が衝突した時に崩壊する。顆粒は湿ると崩壊(ブルーム:bloom)して土の表面を覆う。このブルームによって、顆粒による当初の被覆面積の何倍もの面積を被覆することができる。
【0061】
特に肥料及び除草剤として用いる場合、顆粒は1平方フィート当たり通常約150〜約300粒子の範囲で施用される。顆粒の施用よりも液体噴霧除草剤の方が高い割合で雑草を制御できるが、より小さな粒径(例えば約1mm顆粒)を用いれば、液体噴霧施用に匹敵する結果を得ることができる。
【0062】
2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートを含有する殺病害生物組成物は、制御が望まれる領域に従来法で施用することができる。例えば、顆粒形態の本発明の安定化殺病害生物組成物は、乾施用機(例えば回転式施用機)を用いて標的領域に施用することができる。続いて、顆粒を水で分散させればよい。水はユーザーが供与する水でもよく、雨、露滴、大気中の水分等の天然の水でもよい。例えば雨や灌漑等によって水に曝露されると、顆粒は容易に崩壊するのみならず、固体基質上に能動的に拡散し得る。
【0063】
本発明の実施に際しては、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの銅キレートを、望ましくない植生を制御する場所に発芽後に施用する。施用率は、具体的な植物種及び望ましい制御の程度に応じて異なる。一般には約5〜約500g/ha(酸当量)の施用率が用いられる。例えば、本発明の組成物の施用量は、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンが20〜300ga.i./haの割合、好ましくは40〜250ga.i./ha(酸当量)の割合で施用される量とすることができる。
【0064】
一実施態様では、顆粒形態の本発明の安定化殺病害生物組成物を十分量施用することにより、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオン(酸当量)の施用率を、0.1〜1.5ポンドa.i./A、特に0.1〜0.80ポンドa.i./A、とりわけ0.15〜0.5ポンドa.i./Aとすることができる。多くの場合、0.2〜0.25ポンドa.i./Aの割合が適切である。
【実施例】
【0065】
以下に本発明の更なる実施例を示す。
【0066】
[実施例1]
a.i.銅キレート噴霧溶液を以下のようにして調製する。
【0067】
【表1】

【0068】
水、発泡防止剤、及び界面活性剤を、適切なサイズの混合容器に装填し、一様になるまで混合する。次に酢酸を加えて一様になるまで混合し、pH約2.3とする。撹拌しながら2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンを加え、pHを維持しながら一様になるまで混合する。この時点で、高剪断ミキサーを用いて激しく混合する。水酸化銅を1.5〜2時間かけてゆっくりと加える。その間、温度を25〜35℃に維持し、pHを最高4.0まで上昇させる。次に硝酸アンモニウムを加え、均質になるまで混合する。得られた2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの銅キレートの懸濁液を、粉砕して粗物質を無くし、再懸濁させてから使用する。約5ガロン超のバッチを調製する場合は、最初に反応混合物に対して、前バッチ由来の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの銅キレート約5重量%を、「種」として供給することが好ましい。
【0069】
[実施例2]
粒状除草剤の調製
【0070】
適量の粉砕ピーナッツ殻(BIO170顆粒(商標))を、混合しながらミキサーに装填する。この不活性基質材料を、実施例1に従って調製した必要量の噴霧溶液と噴霧し、平均a.i.装填率を0.32重量%とする。安定化殺病害生物組成物の固着/粘着性を低減するため、必要に応じて流動助剤(例えばHiSil)もミキサーに装填する。
【0071】
[実施例3]
実施例2の手順において、実施例1の噴霧溶液の代わりにCallisto(登録商標)(活性成分2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオン酸を4ポンド/ガロン含有する市販液剤)(Syngenta Crop Protection, Inc.)を十分量用い、平均a.i.装填率を0.23重量%とした他は、実施例2の手順を繰り返した。
【0072】
[実施例4]
実施例1の手順において、不活性な粒状基質材料として粉砕トウモロコシ穂軸を使用し、十分量の実施例1の噴霧溶液と噴霧して、平均a.i.装填率を0.67重量%とした他は、実施例1の手順を繰り返した。
【0073】
[実施例5]
実施例4の手順において、実施例1の噴霧溶液の代わりにCallistoを十分量用い、平均a.i.装填率が0.24重量%とした他は、実施例4の手順を繰り返した。
【0074】
[実施例6]
実施例1の手順において、粒状肥料(Scotts(登録商標)Turf Builder(登録商標)芝生用肥料29−3−4(栄養素添加))(The Scotts Co.)を粒状基質材料として使用し、十分な量の実施例1の噴霧溶液と噴霧して、平均a.i.装填率を0.28%とした他は、実施例1の手順を繰り返した。
【0075】
[実施例7]
実施例6の手順において、実施例1の噴霧溶液の代わりにCallistoを十分量用い、平均a.i.装填率を0.16重量%とした他は、実施例6の手順を繰り返した。
【0076】
[実施例8]
安定性の比較
実施例1〜7で調製した材料の安定性を以下の手順で試験する。
【0077】
1)上記手順に従って被覆顆粒を得た後、標準的な「リフラー(Riffler)」を用いて材料を複数の試料に分割する。これを用いることによって、大きなバッチから、統計的な典型試料が得られる。
【0078】
2)「リフルされた(riffled)」各試料を(炉内で)38℃及び50℃の加速温度保存に供する。
【0079】
3)各温度の試料を定期的に抜き出し、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオン酸の濃度(重量%)を調べる。一般に、各温度につき2〜3個の試料を毎週抜き出す。
【0080】
4)抜き出した試料の安定性を、顆粒からa.i.材料を抽出して分析し、HPLCで評価する。
【0081】
結果を以下の表に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
上記のデータから、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの銅キレートは、顆粒上における前記活性成分の未キレート化(酸)形態に比べて、向上した安定性を示すことがわかる。
【0085】
[実施例9]
生物での比較
【0086】
十分量のCallisto(登録商標)(活性成分2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオン酸を4ポンド/ガロン含有する市販液剤)(Syngenta Crop Protection, Inc.)を粒状肥料(Scotts(登録商標)Turf Builder(登録商標)芝用肥料29−3−4(栄養素添加))(The Scotts Co.)に噴霧し、平均a.i.装填率を0.082%とする。試料2は、新たに調製した未貯蔵の対照試料である。試料3は、環境室温下で1年間保存する。試料4は、加速条件下で(50℃で19日間)保存する。
【0087】
十分な量実施例1の噴霧溶液を粒状肥料(Scotts(登録商標)Turf Builder(登録商標)芝用肥料29−3−4(栄養素添加))(The Scotts Co.)に噴霧し、平均a.i.装填率を0.082%にする。試料5は、環境室温下で1年間保存する。試料6は、加速条件下で(50℃で19日間)保存する。
【0088】
全試料をオニメヒシバに224ga.i./haの割合で施用し、処理後10日目に制御状況を評価する。試料1は未処理対照である。
【0089】
結果を以下の表3に示す。
【0090】
【表4】

【0091】
上記のデータから、室温又は加速保存条件下(50℃で19日間)で1年間保存後、粒状肥料上の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの銅キレートは、粒状肥料上の同じ活性成分の未キレート化(酸)形態と比べ、オニメヒシバに対する制御性が向上していることが分かる。
【0092】
以上の説明及び例は単なる例示を目的とするものであり、本発明が付与されるべき保護範囲を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートを含有する少なくとも1種の粒状基質材料を含んでなる殺病害生物組成物。
【請求項2】
少なくとも1種の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートが、少なくとも1種の粒状基質と均一に混合されている、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートが、少なくとも1種の粒状基質に含浸されている、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1種の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートによって、少なくとも1種の粒状基質が被覆されている、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートが、少なくとも1種の粒状基質の表面に吸着されている、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
粒状基質材料が、乾燥粘土、炭酸カルシウム、レンガ、軽石、葉蝋石、イオウ、カオリン、ドロマイト、プラスター、木粉、粉砕したトウモロコシの穂軸、粉砕したピーナッツの殻、砂糖、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、マグネシア、雲母、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン、氷晶石、バーミキュライト、焼成した石灰、石膏、パーライト、珪藻土、ベントナイト粘土、硫酸カルシウム、及びこれらの混合物から選択される不活性材料を含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
粒状基質材料が、窒素、リン、及びカリウムから選択される少なくとも1種の基本植物主要栄養素を含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
粒状基質材料が、カルシウム、マグネシウム、及びイオウから選択される少なくとも1種の二次的植物主要栄養素を含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
粒状基質材料が、ホウ素、銅、鉄、塩化物、マンガン、モリブデン、及び亜鉛から選択される少なくとも1種の植物微量栄養素を含んでなる肥料を含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
粒状基質材料が、尿素、メチレン尿素オリゴマー、及び一般式NH2CONH(CH2NHCONH2nH(ただしnは1〜10の整数である)で表される複数のメチレン尿素オリゴマーの混合物から選択される肥料である、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
単肥(straight fertilizer)を含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
複合肥料(compound fertilizer)を含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
化成肥料(complex fertilizer)を含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
小球状肥料(prilled fertilizer)を含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
被覆肥料(coated fertilizer)を含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
調整肥料(conditioned fertilizer)を含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
バルク混合肥料(bulk-blend fertilizer)を含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
金属が、Cu+2、Co+2、Zn+2、Ni+2、Ca+2、Al+3、Ti+3、Fe+3から選択される2価又は3価の金属イオンである、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
金属がCu+2である、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンと金属イオンとのモル比が約2:1〜2:5である、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンと金属イオンとのモル比が約2:1〜2:3である、請求項1記載の組成物。
【請求項22】
2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートが、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの銅キレートである、請求項1記載の組成物。
【請求項23】
ジカンバ、ベンタゾン、アトラジン、及びシマジンから選択される除草剤を更に含んでなる、請求項1記載の組成物。
【請求項24】
除草有効量の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンと、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンを求核化合物による攻撃に対して安定化させるのに有効な量の2価又は3価の金属イオンとを含んでなる粒状除草組成物。
【請求項25】
雑草制御用の安定化された粒状組成物であって、
2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンと、求核成分含有化合物とを含んでなるとともに、
2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンが、粒状組成物中で2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンと求核成分との間の相互作用を低減する、2価又は3価の金属イオンとのキレートの形態で提供される、組成物。
【請求項26】
求核成分含有化合物が尿素である、請求項25記載の組成物。
【請求項27】
求核成分含有化合物がメチレン尿素である、請求項25記載の組成物。
【請求項28】
求核成分含有化合物がメチレン尿素オリゴマーである、請求項25記載の組成物。
【請求項29】
キレートが、2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの銅キレートである、請求項25記載の組成物。
【請求項30】
有用作物間の雑草を制御する方法であって、
少なくとも1種の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートを含有する少なくとも1種の粒状基質を含んでなる、除草有効量の殺病害生物組成物を、雑草の場所に施用することを含んでなる方法。
【請求項31】
作物がトウモロコシである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
作物が、アスパラガス、ブッシュベリー(ブルーベリー)、ケインベリー、ツルコケモモ、アマ、モロコシ、オクラ、オートムギ、ペパーミント、ダイオウ、スペアミント、及びサトウキビから選択される、請求項30記載の方法。
【請求項33】
作物が芝生である、請求項30記載の方法。
【請求項34】
芝生が、寒冷期の芝生及び温暖期の芝生から選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
制御すべき雑草が、ジギタリア属、セイヨウタンポポ、及びシロツメクサから選択される、請求項30記載の方法。
【請求項36】
除草有効量の(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンを処理すべき場所に送達する方法であって、
少なくとも1種の2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートを含んでなる乾式撒播可能な粒状組成物の除草有効量を前記の場所に散布し、続いて前記の乾式撒播可能な乾燥粒状組成物を水と接触させることを含んでなる方法。
【請求項37】
2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンを含有する粒状組成物を、求核窒素化合物による攻撃に対して安定化させる方法であって、
2−(2’−ニトロ−4’−メチルスルホニルベンゾイル)−1,3−シクロヘキサンジオンの金属キレートを、粒状組成物又はその内部に被覆し、噴霧し、均一混合し、又は含浸させることを含んでなる方法。

【公表番号】特表2009−529019(P2009−529019A)
【公表日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557643(P2008−557643)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/001808
【国際公開番号】WO2007/101620
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】