説明

安定化アルキルグリコシド組成物およびその方法

本発明は、ペプチド、ポリペプチド、またはその類縁体、例えば、副甲状腺ホルモン(PTH)またはPTH類縁体、アミリン、インスリン、ペプチドTまたはその類縁体、ガストリン、ガストリン放出ペプチド、ガストリン放出ペプチド様(GRP)タンパク質、上皮成長因子またはその類縁体の安定性を高め、凝集および免疫原性を低減し、生物活性を高め、かつ線維形成を低減または防止するための、アルキルグリコシド含有組成物およびその方法に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般には治療上有用な製剤におけるペプチドまたはタンパク質の安定性を高め、凝集および免疫原性を低減し、生物活性を高め、かつ線維形成を低減または防止する組成物およびその方法に関し、具体的には少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質薬物および少なくとも1つのアルキルグリコシドまたは糖類アルキルエステル界面活性剤を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
タンパク質は効力および安全性に影響をおよぼす多くの物理的および化学的変化を起こす。これらには二量体化、三量体化、およびより高次の凝集体を含む凝集に加えて、結晶化および沈降がある。凝集は、有効性の消失、薬物動態の変化、安定性または製品の貯蔵寿命の低減、および望まれない免疫原性の誘導を含む、ペプチドまたはタンパク質を基本とする治療薬に対する多くの有害作用の根元となる重要な問題として急速に現れつつある。加えて、自己会合性ペプチドのバイオアベイラビリティおよび薬物動態は、凝集体のサイズおよび皮下部位での非共有結合による分子間相互作用の崩壊しやすさによって影響されうる。うわべは無害の溶液製剤条件によって仲介される疎水性凝集は、治療用ペプチドの皮下バイオアベイラビリティおよび薬物動態に劇的な影響を有することがあり、極端な場合には、その吸収を完全に妨げることもある(Clodfelter 1998)。製造工程中に、タンパク質は様々な手段を用いて精製および濃縮される。これらの手段には限外ろ過、アフィニティクロマトグラフィ、選択吸収クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、凍結乾燥、透析、および沈降または塩析が含まれる。そのような濃縮は凝集を引き起こすことがあり、これは次いでタンパク質治療薬の免疫原性を高めることもある。この問題を避けるための1つの手段は、低濃度で、それに応じて大量のタンパク質溶液で作業することである。しかし、大量で作業しなければならないということは、当然、製造工程における非効率をもたらす。最終仕上げ(fill-and-finish)操作中に、濃縮タンパク質溶液はピストンポンプにより圧搾され、それにより変性および凝集を引き起こす高せん断および機械的応力が加わる。前述の手段による精製および濃縮中に本発明において記載するアルキルグリコシドをタンパク質溶液に加えることにより、凝集を低減または除去して、製造工程におけるより高い効率を提供し、望ましくは免疫原性が低い最終生成物を提供することができる。この適用において有効であると判明したアルキルグリコシドの濃度は、臨界ミセル濃度よりも少なくともいくらか高くなければならない。
【0003】
多くの生成物は比較的高い濃度の注射によって送達した場合にのみ有効である。溶液濃度を高くする傾向は凝集に有利なタンパク質-タンパク質相互作用の可能性を増大させるため、凝集の防止は薬学的製剤技術者の主な問題になっている。したがって、タンパク質凝集は生物学的生成物の製法の収率および効力に影響することもある。凝集はより高い温度によって仲介されることが多いため、タンパク質治療薬は、輸送および保存中の冷蔵温度の持続的連鎖を保証するために、特定のいわゆる「コールド-チェーン」による取り扱い条件を必要とする(DePalma Jan 15 2006)。コールド-チェーン条件は薬物の保存および輸送費用を著しく増大させる。本発明は、厳密なコールド-チェーン維持管理の必要を軽減し、いくつかの場合には解消する。
【0004】
この5年間に、FDAおよび他の規制当局は凝集事象の監視を高め、したがって生物薬剤会社はそれらを理解するための努力を増している。特に懸念されるのは、望ましくない免疫原性の誘導である。自己会合性ペプチドの免疫原性は、非共有結合による分子間相互作用の結果生じる凝集体の形成によって影響を受けることがある。例えば、インターフェロンは凝集して抗体応答を引き起こすことが明らかにされている(Hermeling et al. 2006)。エリスロポエチンに対する抗体応答は、組換えEPOの投与を受けている患者の一部で「純赤血球無形成症」を生じることが明らかにされており(Casadevall et al. 2002)、これはEPO療法の生命を脅かす可能性のある副作用である。インスリンは、冷蔵保存後に見られる温度よりも高い温度で撹拌すると、タンパク質凝集の結果として急速に失活することが周知である(Pezron et al. 2002;Sluzky et al. 1991)。組換えAAV2の凝集は、精製中の収率低下を引き起こし、インビボ投与後、免疫原性に対して有害な影響を有する(Wright 2005)。
【0005】
組換えヒト第VIII因子(rFVIII)、すなわち多領域糖タンパク質は血友病Aの治療のための置換療法において用いられる。残念ながら、治療した患者の15%〜30%は阻害抗体を発生する。製剤中に凝集タンパク質が存在すると、抗体発生応答を増強すると一般に考えられている(Purohit et al. 2006)。
【0006】
酵素も、凝集の結果として失活することが公知である。例えば、ウロキナーゼの熱失活は凝集を介して起こる(Porter et al. 1993)。
【0007】
加えて、うわべは無害の溶液製剤条件によって仲介される疎水性凝集は、治療用ペプチドの皮下バイオアベイラビリティおよび薬物動態に劇的な影響を有することがあり、極端な場合には、その吸収を完全に妨げることもある(Clodfelter et al. 1998)。治療上有効な用量を達成するために投与しなければならない製剤の量を少量に抑え、それにより患者の不快感を最小限としうるように、ペプチドまたはタンパク質治療薬は高濃度で製剤化されることが多い。残念ながら、高いタンパク質またはペプチド濃度は凝集を誘導することが多い。加えて、タンパク質凝集は、生成物の無菌性を維持するために含まれる抗菌保存剤ベンジルアルコールなどの必要な賦形剤によって誘導されることもある(Roy et al. 2005)。
【0008】
凍結乾燥中のタンパク質安定化も問題を生じさせている。タンパク質治療薬は、凝集体形成および沈降の結果、凍結乾燥および再構成後に生物活性を失うことが多い。いくつかの再構成媒質添加物は凝集の著しい低減をもたらすことが判明している。これらには、アルキルグリコシドを含まない、硫酸化多糖、ポリリン酸塩、アミノ酸および様々な界面活性剤が含まれる(Zhang et al. 1995)。いくつかの場合には、Fortical、Unigeneの鼻送達カルシトニン生成物などの、アルコール、有機溶媒の組み合わせを用いてもよい。Roccatanoら(2002)は、様々なポリペプチドを安定化するためにトリフルオロエタノール混合物を用いた。残念ながら、そのような物質は粘膜組織に対して刺激が強く、患者の不快感または局所毒性を引き起こすことがある。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、一般には治療上有用な製剤におけるペプチドまたはタンパク質を安定化し、凝集および免疫原性を低減する組成物に関する。より具体的には、本発明は、少なくとも1つの自己会合性、または自己凝集性ペプチドまたはタンパク質薬物および少なくとも1つの界面活性剤を含む治療用組成物であって、界面活性剤はさらに少なくとも1つのアルキルグリコシドおよび/または糖類アルキルエステルからなる組成物を提供する。さらに、本発明は、脊椎動物に投与した場合に、凝集を防止または低減し、それにより治療薬の貯蔵寿命を延ばすか、または治療薬の機能特性に対して害を引き起こすことなく耐容されうる、温度および撹拌などの条件の範囲を拡大する組成物を提供する。
【0010】
したがって、本発明の一つの局面において、治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたはその変異体の安定性を高め、凝集を低減し、または免疫原性を低減するための、治療上活性なペプチドまたはポリペプチドおよびその変異体、ならびに安定化剤からなる薬学的組成物であって、安定化剤は少なくとも1つのアルキルグリコシドであり、かつアルキルグリコシドは治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたはその変異体を安定化する組成物が提供される。ペプチド、ポリペプチドまたはその変異体には、インスリンもしくはその類縁体、インターフェロン、エリスロポエチン、ペプチドTもしくはその類縁体、D-アラニンペプチドTアミド(DAPTA)、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン(PTH)もしくはPTH 1-31(Ostabolin C(商標))、PTH 1-34およびPTH 3-34などであるが、それらに限定されるわけではない、その活性断片、インスリン、天然もしくは改変アミリン、Hematide(商標)、ガストリン、ガストリン放出ペプチド(GRP)、およびガストリン放出ペプチド様タンパク質、表皮成長因子(EGF)、またはグルカゴン様ペプチド-1が含まれるが、それらに限定されるわけではない。同様に、本発明のアルキルグリコシドには、ドデシルマルトシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルマルトシド、スクロースモノドデカノエート、スクロースモノトリデカノエート、およびスクロースモノテトラデカノエートが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0011】
本発明の一つの局面において、アミリンおよび少なくとも1つのアルキルグリコシドを含む薬学的組成物が提供される。本発明の別の局面において、真性糖尿病または低血糖症の治療法であって、対象にアミリンおよび少なくとも1つのアルキルグリコシドを含む薬学的組成物を投与することによる方法が提供される。本発明の別の局面において、肥満の治療法であって、対象にアミリンおよび少なくとも1つのアルキルグリコシドを含む薬学的組成物を投与することによる方法が提供される。アルキルグリコシドは、例えば、ドデシルマルトシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルマルトシド、スクロースモノドデカノエート、スクロースモノトリデカノエート、およびスクロースモノテトラデカノエートであってもよい。
【0012】
本発明の別の局面において、治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたはその変異体の安定性を高める方法であって、治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたはその変異体、安定化剤および緩衝化剤を混合することによる方法が提供され、ここで安定化剤は少なくとも1つのアルキルグリコシド界面活性剤であり、界面活性剤は治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたはその変異体の安定性を高める。
【0013】
本発明は、治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたはその変異体の凝集を低減する方法であって、治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたはその変異体、凝集低減剤を混合することによる方法を提供し、ここで安定化剤は少なくとも1つのアルキルグリコシド界面活性剤であり、界面活性剤は治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたはその変異体の凝集を低減する。
【0014】
本発明のさらに別の局面において、脊椎動物への投与後に治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたはその変異体の免疫原性を低減する方法であって、治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたはその変異体、免疫原性低減剤を混合することによる方法が提供され、ここで免疫原性低減剤は少なくとも1つのアルキルグリコシドまたは界面活性剤であり、界面活性剤は治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたはその変異体の免疫原性を低減する。
【0015】
本発明の一つの局面において、HIVを有する、またはHIVを有するリスクが高い対象を治療するための製剤であって、対象に対しD-アラニンペプチドTアミド(DAPTA)、および少なくとも1つのアルキルグリコシドを含む組成物の予防上または治療上有効な量を含む製剤がある。
【0016】
本発明の別の局面において、HIVを有する、またはHIVを有するリスクが高い対象を治療するための鼻内製剤であって、対象に対しD-アラニンペプチドTアミド(DAPTA)、および少なくとも1つのアルキルグリコシドを含む組成物の予防上または治療上有効な量を含む鼻内製剤がある。
【0017】
さらに、本発明は、CCR5仲介性疾患を有する、またはCCR5仲介性疾患を有するリスクが高い対象を治療するための製剤であって、D-アラニンペプチドTアミド(DAPTA)および少なくとも1つのアルキルグリコシドを含む組成物の予防上または治療上有効な量を含む製剤を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、CCR5仲介性疾患を有する、またはCCR5仲介性疾患を有するリスクが高い対象を治療するための鼻内製剤であって、D-アラニンペプチドTアミド(DAPTA)および少なくとも1つのアルキルグリコシドを含む組成物の予防上または治療上有効な量を含む鼻内製剤を提供する。
【0019】
本発明のさらに別の局面において、HIVを有する、またはHIVを有するリスクが高い対象の治療法であって、対象に対しD-アラニンペプチドTアミド(DAPTA)および少なくとも1つのアルキルグリコシド界面活性剤を含む組成物の予防上または治療上有効な量を投与し、それにより対象を治療する方法が提供される。
【0020】
本発明は、炎症性疾患の治療法であって、それを必要としている対象に治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたはその変異体、安定化剤、および緩衝化剤を含む治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたは変異体の組成物の治療上有効な量を投与することによる方法も提供し、ここで安定化剤は少なくとも1つのアルキルグリコシドであり、治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたはその変異体はペプチドTまたはその類縁体である。
【0021】
本発明の別の局面は、そうでなければ自己凝集性の治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたはその変異体の非凝集水溶液を製造する方法であって、自己凝集性の治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたはその変異体の水溶液中に少なくとも1つのアルキルグリコシド界面活性剤を混合し、治療上活性なペプチド、ポリペプチドまたはその変異体を濃縮することによる方法である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、細い平行配列のβシートに束ねられ、線維の長軸に垂直に重ねられた、整列された線維ペプチド凝集体を示す図である。
【図2】図2は、「A」モノドデカノエート(SDD)または「B」ドデシルマルトシド(DDM)と混合した、pH6.5でのポリペプチドインスリンの光散乱測定値を示すグラフである。
【図3】図3は、「A」モノドデカノエート(SDD)または「B」ドデシルマルトシド(DDM)と混合した、pH7.4でのポリペプチドインスリンの光散乱測定値を示すグラフである。
【図4】図4は、0.124%または0.125%いずれかのドデシルマルトシド(DDM)と混合した、pH6.5でのポリペプチドヒト成長ホルモン(hGH)の光散乱測定値を示すグラフである。
【図5】図5は、異なる期間摂氏4度(6時間◆)または摂氏25度(1週間■、2週間▲、3週間xおよび4週間*週間ならびに2か月●)で保存した、未処理DAPTA凝集の時間依存性の効果を示すグラフである。
【図6】図6は、TFEおよび/またはドデシルマルトシド(「A3」)、もしくはスクロースモノドデカノエート(「B3」)と混合したDAPTAがマクロファージにおけるHIV感染を阻害することを示すグラフである。
【図7】図7は、10%未満のβアノマーを含む0.1%ドデシルマルトシド(△)、10%未満のβアノマーを含む0.2%ドデシルマルトシド(x)、99%を超えるβアノマーを含む0.1%ドデシルマルトシド(+)、および99%を超えるβアノマーを含む0.2%ドデシルマルトシド(●)と混合した、pH7.6でのポリペプチドインスリンの光散乱測定値を示すグラフである。
【図8】図8は、ドデシルマルトシド(DDM)と混合した(下線)および混合していない(上線)、pH3.5でのポリペプチドOstabolin C(商標)(環状PTH 1-31)の光散乱測定値を示すグラフである。
【図9】図9は、ドデシルマルトシド(DDM)と混合した(下線)および混合していない(上線)、pH5.0でのポリペプチドOstabolin C(商標)(環状PTH 1-31)の光散乱測定値を示すグラフである。
【図10】図10は、ドデシルマルトシド(DDM)と混合した(下線)および混合していない(上線)、pH3.0でのポリペプチドPTH 1-34の光散乱測定値を示すグラフである。
【図11】図11は、ドデシルマルトシド(DDM)と混合した(下線)および混合していない(上線)、pH5.0でのポリペプチドPTH 1-34の光散乱測定値を示すグラフである。
【図12】図12は、ドデシルマルトシド(DDM)と混合した(下線)および混合していない(上線)、pH5.0でのポリペプチドPTH 1-34の光散乱測定値を示すグラフである。
【図13】図13は、ドデシルマルトシド(DDM)と混合した、および混合していない、ベータインターフェロンポリペプチドの光散乱測定値を示すグラフである。
【図14】図14は、ドデシルマルトシド(DDM)と混合した、および混合していない、ポリペプチドPramlintide(登録商標)の光散乱測定値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
本発明は、以下の具体的態様の詳細な説明およびその中に含まれる実施例を参照することによって、より容易に理解されると考えられる。
【0024】
本発明は、高濃度か低濃度かに関わらず、少なくとも1つのペプチドまたはタンパク質、ならびに少なくとも1つのアルキルグリコシドおよび/または糖類アルキルエステル界面活性剤(以下、「アルキルグリコシド」と呼ぶ)を含む製剤を記載する。本明細書において用いられる「アルキルグリコシド」とは、当技術分野において公知のとおり、任意の疎水性アルキルに連結によってつながれた任意の糖を意味する。疎水性アルキル鎖と親水性糖類との間の連結には、他に可能性がある中でも、グリコシド、エステル、チオグリコシド、チオエステル、エーテル、アミドまたはウレイド結合または連結が含まれうる。その例を本明細書に記載する。アルキルグリコシドおよびアルキル糖類なる用語は本明細書において交換可能に用いてもよい。
【0025】
特に定義されないかぎり、本明細書において用いられるすべての技術および科学用語は、本発明が属する分野の技術者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験において、本明細書に記載のものと類似または等価の任意の方法および材料を用いることができるが、好ましい方法および材料をここで記載する。本明細書において言及するすべての出版物はそれらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0026】
本明細書において用いられる「安定化物質」または「安定化剤」なる用語は、溶液もしくは混合物もしくは懸濁液もしくは組成物もしくは治療用組成物にそれを安定もしくは不変の状態に維持するために加える化学物質または化合物であるか;またはそれがより安定もしくは不変の状態を引き起こす原子もしくは分子の変化に関与する反応を生じるがゆえに用いられるものである。
【0027】
本明細書において用いられる「凝集する」または「凝集」なる用語は、例えば、ペプチド、ポリペプチド、またはその変異体の凝集におけるような、一緒になる、またはひとまとめにもしくは全部集めるための手段である。凝集体は自己凝集性でありえ、あるいは他の因子、例えば、凝集剤もしくは沈降剤、または抗体、またはそれによりペプチド、ポリペプチド、もしくはその変異体が一緒になる原因となる他の手段および方法によって凝集しうる。
【0028】
本明細書において用いられる「免疫原性」なる用語は、物質が免疫応答を誘導する程度であり;一方、「抗原性」なる用語は、免疫応答を誘導する能力を記載するために用いられる。
【0029】
本明細書において用いられる、その文法的変化を含む「付与する」なる用語は、与える、または伝えることを意味する。
【0030】
本明細書において用いられる、その文法的変化を含む「促進する」なる用語は、もたらすことを助けることを意味する。
【0031】
本明細書において用いられる、その文法的変化を含む「抵抗性」なる用語は、特定の効果を遅らせる、またはそれに対抗する(例えば、組織接続装置を汚す血漿因子の付着に対抗する)ことを意味する。
【0032】
本明細書において用いられる、その文法的変化を含む「滅菌する」なる用語は、生存微生物が実質的にない状態にすることを意味する。
【0033】
本明細書において用いられる「薬物」は、核酸、小分子、ポリペプチドまたはペプチドなどを含むが、それらに限定されるわけではない、任意の治療用化合物または分子である。ペプチドは小サイズから中サイズ(すなわち、最大約75kDa)の任意の医療用または診断用に有用なペプチドまたはタンパク質でありうる。改善されたポリペプチド吸収のメカニズムはMeezanらの米国特許第5,661,130号に記載されており、その参照文献は全体が参照により本明細書に組み入れられる。本発明はすべてのそのようなペプチドと混合することができるが、ペプチドの利益が改善される程度はペプチドの分子量や物理的および化学的性質、ならびに用いる特定の界面活性剤に応じて変動しうる。ポリペプチドの例には、インスリン様成長因子-I(IGF-Iまたはソマトメジン-C)、インスリン、カルシトニン、レプチン、hGH、ヒト副甲状腺ホルモン(PTH)またはPTH 1-31(Ostabolin C(商標))、PTH 1-34およびPTH 3-34などであるが、それらに限定されるわけではない、その活性断片、メラトニン、GLP-1またはグルカゴン様ペプチド-1、GiP、OB-3ペプチド、下垂体アデニル酸シクラーゼ神経ペプチド活性化ポリペプチド(PACAP)、GM-1ガングリオシド、神経成長因子(NGF)、D-tryp6)-LHRH、ナファレリン、FGF、VEGF、VEGFアンタゴニスト、ロイプロリド、インターフェロン-アルファ、インターフェロン-ベータ、インターフェロン-ガンマ、低分子量ヘパリン、PYY、LHRH、LH、GDNF、G-CSF、グレリンアンタゴニスト、グレリン、KGF、イミトレックス、インテグレリン、ネシリチド、サンドスタチン、酢酸セトロレリックス、酢酸ガニレリックス、ビバリルジン、ザフィルルカスト、エキサニチド(Exanitide)、酢酸プラムリンチド、バソプレシン、デスモプレシン、グルカゴン、ACTH、GHRHおよび類縁体、オキシトシン、コルチコトロピン放出ホルモン、TRHrh、心房性ナトリウム利尿ペプチド、チロキシン放出ホルモン、FSH、プロラクチン、トブラマイシン、トリプトレリン、ゴセレリン、フゼオン、ヘマチド(Hematide)、ブセレリン、オクトレオチド、ゴナドレリン、フェリプレシン、デスロレリン、バソプレシン、8-L-Arg、エプチフィバチド、GM-CSF、EPO、インターロイキン-11、エンドスタチン、アンジオスタチン、N-アセチルオキシントモジュリン30-37、オキシントモジュリン、ウラリチド、キセレセプト(Xerecept)、Apo A-IV、rNAPc2、セクレチン、チモペンチン、ニューロメジンU、ニューロテンシン、トロンボスポンジン-1阻害剤、FGF-18、FGF-20、FGF-21、酢酸エルカトニン、酢酸アンチド、酢酸ダイノルフィンA(1-13)、シンカリド、酢酸チモペンチン、チモシンアルファ1酢酸塩(チマルファシン)、酢酸フェルチレリン、CRF酢酸塩、CRF(ヒツジ)、ヒスレリン(Hisrelin)、チマルファシン、エカランチド、オキシコルチン、ウロコルチン、アリクストラ、シュピーゲルマーヌクレオチドアプタマー、CGRP(カルシトニン遺伝子関連タンパク質)、ウロコルチン、アミリン、IL-21、メラノタン、バルプレオチド(valpreotide)、ACV-1神経障害性疼痛ペプチド、ガストリン、ガストリン放出ペプチド(GRP)、ガストリン放出ペプチド様ペプチド、または表皮成長因子が含まれる。表Iも参照されたい。
【0034】
本明細書において用いられる「治療用組成物」は、水性または有機性担体または賦形剤との混合物を含むことができ、例えば、錠剤、ペレット、カプセル剤、凍結乾燥剤、坐剤、液剤、乳剤、懸濁剤、または使用に適した他の形態のための通常の非毒性で、薬学的に許容される担体と混ぜ合わせることができる。担体は、上で開示したものに加えて、アルギン酸塩、コラーゲン、グルコース、ラクトース、マンノース、アカシアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプンペースト、三ケイ酸マグネシウム、タルク、トウモロコシデンプン、ケラチン、コロイドシリカ、ジャガイモデンプン、尿素、中鎖長トリグリセリド、デキストラン、および固体、半固体、または液体の形での、製剤の製造における使用に適した他の担体が含まれうる。加えて、補助的な安定化剤、増粘剤または着色剤、例えば、トリウロースなどの安定化乾燥剤を用いることもできる。
【0035】
本明細書において用いられる「治療標的」なる用語は、したがって、改変力を発揮することが可能な分析物と定義してもよく、ここで「改変」は、活性、合成、産生、および循環レベルを含む、機能における変更と定義される。したがって、改変は、少なくとも1つの特定の疾患関連バイオポリマーマーカー、またはその存在、レベルもしくは活性がバイオポリマーマーカーの存在、レベル、活性もしくは一般的機能の変更に直接的もしくは間接的のいずれかで関連づけられ、薬学的物質、バイオポリマーマーカーに結合する生体分子、またはそれにバイオポリマーマーカーが結合する生体分子もしくは複合体が含まれうる、任意の化合物もしくは生体分子のレベルまたは生理的活性をもたらす。バイオポリマーマーカーおよび治療用部分の結合が、バイオポリマーマーカーまたは結合した部分の活性化(アゴニスト)、阻害(アンタゴニスト)、または活性もしくは産生の増大もしくは低減(調節物質)を引き起こすこともある。そのような治療用部分の例には、オリゴヌクレオチド、タンパク質(例えば、受容体)、RNA、DNA、酵素、ペプチドまたは小分子が含まれるが、それらに限定されるわけではない。免疫療法用部分に関して、そのような部分は天然エピトープに特異的な鍵となるリンパ球の病原性を低下させる能力を有する主エピトープペプチドの有効な類縁体と定義しうる。類縁体は、自然に生じ、内因性自己エピトープを標的とするT細胞によって認識されうるペプチド配列における、構造上の類似性を有するが、同一性は有していないと定義される。この類縁体の重要な機能は、T細胞のアネルギーまたは死滅につながるT細胞活性化の変更である。
【0036】
本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」または「治療上有効な担体」は、水性もしくは非水性(固体)、例えば、アルコール性もしくは油性、またはその混合物であり、界面活性剤、緩和剤、滑沢剤、安定化剤、色素、香料、保存剤、pH調節のための酸もしくは塩基、溶媒、乳化剤、ゲル化剤、加湿剤、安定化剤、湿潤剤、徐放剤、保水剤、または薬学的組成物の特定の形態に一般に含まれる他の成分を含みうる。薬学的に許容される担体は当技術分野において周知で、例えば、水もしくは生理的緩衝化食塩水などの水性溶液またはグリコール、グリセロール、およびオリーブ油といった油など他の溶媒もしくは媒体または注射用有機エステルが含まれる。薬学的に許容される担体は、例えば、特異的阻害剤、例えば、グルコース、スクロースもしくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート化剤、低分子量タンパク質または他の安定化剤もしくは賦形剤を安定化する、またはその吸収を高めるよう作用する、生理的に許容される化合物を含むことができる。
【0037】
薬学的組成物は、生理的条件に近づけるために必要とされる場合には、他の薬学的に許容される補助物質を含むこともでき、そのような「物質」には、pH調節剤および緩衝化剤、張性調節剤など、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。加えて、ペプチド、ポリペプチドまたはその変異体懸濁液は、脂質を保存中のフリーラジカルおよび脂質過酸化損傷に対して保護する脂質保護剤を含んでいてもよい。アルファ-トコフェロールなどの親油性フリーラジカル失活剤およびフェリオキサミンなどの水溶性鉄特異的キレート化剤が適切である。
【0038】
本明細書において用いられる「界面活性剤」は、水の界面張力を改変する物質である表面活性物質である。典型的には、界面活性剤は分子内に1つの親油性基と1つの親水性基を有する。おおまかには、この群にはセッケン、洗剤、乳化剤、分散剤および湿潤剤、ならびにいくつかの防腐剤の群が含まれる。より具体的には、界面活性剤にはステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムおよびモノステアリン酸グリセリン;ならびにポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどの親水性ポリマーが含まれる。
【0039】
本明細書において用いられる「アルキルグリコシド」とは、当技術分野において周知のとおり、任意の疎水性アルキルに連結によってつながれた任意の糖を意味する。疎水性アルキルは、望まれる疎水性および糖類部分の親水性に依存して、任意の所望のサイズで選択することができる。一つの局面において、アルキル鎖の範囲は9から24炭素原子であり;さらに範囲は10から14炭素原子である。
【0040】
本明細書において用いられる「臨界ミセル濃度」または「CMC」は、溶液中でミセル(球状ミセル、円形ロッド、層状構造など)の形成が開始される溶液中の両親媒性成分(アルキルグリコシド)の濃度である。
【0041】
本明細書において用いられる「糖類」は、直鎖または環状の単糖、オリゴ糖または多糖を含む。オリゴ糖は2つ以上の単糖残基を有する糖類である。
【0042】
本明細書において用いられる「スクロースエステル」は、脂肪酸のスクロースエステルである。スクロースエステルは、反応に利用可能なスクロース中の8つのヒドロキシル基およびスクロースと反応しうる酢酸からより大きく、より嵩高い脂肪までの多くの脂肪酸基があるため、多くの形態をとることができる。この柔軟性は、用いる脂肪酸部分に基づき、多くの生成物および官能基を作りうることを意味する。スクロースエステルは、特に界面活性剤および乳化剤として、食品および非食品に使用され、薬剤、化粧品、洗剤および食品添加物における適用が増加している。これらは生体分解性、非毒性で、皮膚に対してマイルドである。
【0043】
本明細書において用いられる「適切な」アルキルグリコシドとは、本発明の限定的特徴を満たすもの、すなわち、アルキルグリコシドは非毒性および非イオン性であり、かつ眼、鼻、鼻涙、舌下、口腔、吸入経路または皮下、筋肉内、もしくは静脈内経路などの注射経路により化合物と共に投与した場合に化合物の免疫原性または凝集を低減するものを意味する。適切な化合物は実施例に示す方法を用いて決定することができる。
【0044】
ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質、またはペプチド、ポリペプチドもしくはその変異体なる用語は本明細書において交換可能に用いてもよい。本明細書において用いられる「ポリペプチド」なる用語は、ペプチド結合、関連する天然の構造的変異体、およびその合成非天然類縁体を介して連結されたアミノ酸残基、関連する天然の構造的変異体、およびその合成非天然類縁体を意味すると解釈される。合成ポリペプチドは、例えば、自動ポリペプチド合成機を用いて合成することができる。「タンパク質」なる用語は典型的には大きいポリペプチドを意味する。「ペプチド」なる用語は典型的には短いポリペプチドを意味する。「ポリペプチド」とは、ペプチド結合または改変ペプチド結合によって互いにつながれた2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質を意味する。「ポリペプチド」とは、一般にペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーと呼ばれる短鎖ならびに一般にタンパク質と呼ばれるより長い鎖の両方を意味する。ポリペプチドは20遺伝子によってコードされるアミノ酸以外のアミノ酸を含んでいてもよい。「ポリペプチド」には、プロセシングおよび他の翻訳後修飾などの天然プロセスによるが、化学修飾技術によっても改変されるものが含まれる。そのような改変は基本の教科書およびより詳細な研究書、ならびに膨大な研究文献に詳細に記載され、当業者には周知である。同じ型の改変が所与のポリペプチドのいくつかの部位に同じまたは様々な程度で存在しうることが理解されるであろう。同様に、所与のポリペプチドは多くの型の改変を含んでいてもよい。改変は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノまたはカルボキシル末端を含む、ポリペプチドのどこでも起こりうる。改変には、例えば、アセチル化、アシル化、AD Pリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合による付着、ヘム部分の共有結合による付着、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合による付着、脂質または脂質誘導体の共有結合による付着、ホスホチジルイノシトールの共有結合による付着、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、システインの共有結合による架橋形成の形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化およびADP-リボシル化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化などの転移RNAによるアミノ酸のタンパク質への追加、およびユビキチン結合が含まれる。例えば、PROTEINS--STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES, 2nd Ed., T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York (1993)およびWold, F., Posttranslational Protein Modifications: Perspectives and Prospects, pgs. 1 12 in POSTTRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS, B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York (1983);Seifter et al., Meth. Enzymol. 182:626 646 (1990)およびRattan et al., Protein Synthesis: Posttranslational Modifications and Aging, Ann. N. Y. Acad. Sci. 663: 48 62 (1992)を参照されたい。ポリペプチドは分枝、または分枝のある、もしくは分枝のない環状でありうる。環状、分枝および分枝環状ポリペプチドは翻訳後の天然プロセスによって生じてもよく、同様に完全に合成的な方法によって作製してもよい。
【0045】
本明細書において用いられる「物質」なる用語は、化学化合物、化学化合物の混合物、未確定の組成の試料、コンビナトリアル小分子アレイ、生体高分子、バクテリオファージペプチドディスプレイライブラリ、バクテリオファージ抗体(例えば、scFv)ディスプレイライブラリ、ポリソームペプチドディスプレイライブラリ、または細菌、植物、真菌、もしくは動物の細胞もしくは組織などの生物材料から作製した抽出物を意味すると解釈される。適切な技術はファージまたは類似のベクターにおける組換え抗体のライブラリの選択を含む。Huse et al. (1989) Science 246: 1275 1281;およびWard et al. (1989) Nature 341: 544 546を参照されたい。Huseによって記載されたプロトコルはファージディスプレイ技術との組み合わせでより効率的になる。例えば、Dower et al., WO 91/17271およびMcCafferty et al., WO 92/01047を参照されたい。
【0046】
本明細書において用いられる「単離された」なる用語は、その天然の状態から「人の手によって」改変された、すなわち、天然で生じる場合、その元の環境から変更もしくは除去されている、またはその両方であることを意味すると解釈される。例えば、生きている生物中に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離されて」いないが、その天然状態の共存する材料から分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、この用語が本明細書において用いられるとおり、「単離されて」いる。
【0047】
本明細書において用いられる「変異体」なる用語は、基準のポリヌクレオチドまたはポリペプチドとそれぞれ異なるが、基本的特性は保持している、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドを意味すると解釈される。ポリヌクレオチドの典型的変異体は別の基準ポリヌクレオチドとヌクレオチド配列が異なる。変異体のヌクレオチド配列における変化は、基準ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列を変えてもよく、変えなくてもよい。ヌクレオチド変化は、以下に論じるとおり、基準配列によってコードされるポリペプチドのアミノ酸置換、付加、欠失、融合および切断を引き起こしうる。ポリペプチドの典型的変異体は別の基準ポリペプチドとアミノ酸配列が異なる。一般に、相違は基準ポリペプチドおよび変異体の配列が全体としては非常に類似しており、多くの領域で同一であるように制限される。変異体および基準ポリペプチドは、任意の組み合わせの1つまたは複数の置換、付加、欠失によってアミノ酸配列が異なっていてもよい。置換または挿入されたアミノ酸残基は遺伝子コードによってコードされるものであってもよく、そうでなくてもよい。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの変異体は、対立遺伝子変異体などの天然であってもよく、または天然に生じることが知られていない変異体であってもよい。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの非天然変異体は、突然変異誘発技術、直接合成、および当業者には公知の他の組換え法によって作製してもよい。
【0048】
「界面活性剤」なる用語は、「表面活性物質」なる語句の短縮による。薬学的適用において、界面活性剤は液体薬学的製剤において有用であり、ここで界面活性剤は乳化剤、可溶化剤、および湿潤剤として作用して、いくつかの目的を満たす。乳化剤は親油性または部分親油性物質の水溶液を安定化する。可溶化剤は薬学的組成物の成分の溶解性を高めて、達成しうる濃度を高める。湿潤剤は流体の表面張力を低下させる化学添加物で、それが適用される表面上で容易に拡がるように誘導し、したがって流体による表面の「湿潤」を引き起こす。湿潤剤は、薬学的製剤が接触する粘膜または他の表面領域との密接な接触を液体製剤が達成する手段を提供する。
【0049】
界面活性剤の効果は薬学的製剤の物理的特性または性能に関して有益でありうるが、これらは多くの場合皮膚および他の組織に対して刺激性で、特に鼻、口、眼、膣、直腸、口腔または舌下領域などで見られるものなどの粘膜に対して刺激性である。加えて、多くの、事実ほとんどの界面活性剤はタンパク質を変性させ、したがってそれらの生体機能を破壊する。その結果、これらは適用が制限される。界面活性剤はその効果を臨界ミセル濃度(CM)よりも高い濃度で発揮するため、これらを薬学的製剤中で低い濃度または少量で有効に用いうるように、CMCが低い界面活性剤が望ましい。本発明の典型的なアルキルグリコシドは純水または水溶液中1mM未満のCMCを有する。アルキルグリコシドのいくつかのCMC値を以下に列挙する:
水中でのいくつかのアルキルグリコシドのCMC:
オクチルマルトシド 19.5mM
デシルマルトシド 1.8mM
ドデシルβ-D-マルトシド 0.17mM
トリデシルマルトシド 0.03mM
テトラデシルマルトシド 0.01mM
スクロースドデカノエート 0.3mM
【0050】
本発明の界面活性剤は、糖類を含むこともできる。本明細書において用いられる「糖類」は、糖鎖を形成するための直鎖または環状の単糖、オリゴ糖もしくは多糖、またはその組み合わせを含む。オリゴ糖は2つ以上の単糖残基を有する糖類である。糖類は、例えば、任意の現在市販されている糖類種から選択することもでき、または合成することもできる。多くの使用可能な糖類のいくつかの例には、グルコース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、スクロースおよびトレハロースが含まれる。好ましい糖類には、マルトース、スクロースおよびグルコースが含まれる。
【0051】
本発明の界面活性剤は同様にスクロースエステルからなりうる。本明細書において用いられる「スクロースエステル」は、脂肪酸のスクロースエステルである。スクロースエステルは、反応に利用可能なスクロース中の8つのヒドロキシル基およびスクロースと反応しうる酢酸からより大きく、より嵩高い脂肪までの多くの脂肪酸基があるため、多くの形態をとることができる。この柔軟性は、用いる脂肪酸部分に基づき、多くの生成物および官能基を作りうることを意味する。スクロースエステルは、特に界面活性剤および乳化剤として、食品および非食品に使用され、薬剤、化粧品、洗剤および食品添加物における適用が増加している。これらは生体分解性、非毒性で、皮膚に対してマイルドである。
【0052】
合成的に入手可能な何千何万ものアルキルグリコシドがあるが、ドデシル、トリデシルおよびテトラデシルマルトシドならびにスクロースドデカノエート、トリデカノエート、およびテトラデカノエートのアルキルグリコシドは望ましく低いCMCを有するため、特に有用である。したがって、前述の例は例示であるが、リストは本明細書に記載のものに限定されるわけではない。特許請求の範囲の基準に適合する前述の化合物の誘導体も、グリコシドを選択する際には考慮すべきである。本明細書において教示する方法および実施例に従って、すべての化合物の有効性をスクリーニングすることができる。
【0053】
本発明の一つの態様において、本発明は、対象に投与したときに、組成物中のペプチドまたはタンパク質の会合または凝集を低減、防止、または減少する、例えば、ペプチドもしくはタンパク質の自己会合もしくは自己凝集を低減する、または他のペプチドもしくはタンパク質との会合もしくは凝集を低減する組成物を提供する。
【0054】
高いタンパク質濃度での自己会合は、治療用製剤において問題である。濃縮インスリン製剤は自己凝集によって失活する。これらの、特に高いタンパク質濃度での自己会合性タンパク質相互作用は、多くの治療薬の生物活性を低減、改変または抹消する。注射または他の手段によって送達するための高濃度の治療用タンパク質製剤は、これらのタンパク質相互作用が原因で、物理的に不安定である、または不溶性になることがある。
【0055】
タンパク質製剤の主な課題は、製造可能で、安定な剤形を開発することである。加工および取り扱いのために重要な物理的安定性は、特徴づけがあまりされておらず、予測が難しいことが多い。タンパク質相互作用および溶解特性によって規定される、会合、凝集、結晶化および沈降などの、様々な物理的不安定現象に遭遇する。これはいくつかの製造、安定性、分析、および送達に関する課題をもたらす。
【0056】
高い用量(およそmg/kgで)を必要とするタンパク質薬物のそのような製剤の開発は、多くの臨床状況で必要とされている。例えば、SC経路を用いて、約<1.5mLが許容される投与量である。これには、十分な用量を達成するために>100mg/mLのタンパク質濃度が必要となりうる。
【0057】
一般に、タンパク質濃度が高いほど用いる注射量を少なくすることができ、これは患者の快適、便宜、およびコンプライアンスのために非常に重要である。注射は多くの人にとって不快な投与様式であるため、ペプチド治療薬を投与する他の手段が求められている。特定のペプチドおよびタンパク質治療薬は、例えば、鼻内投与によって投与してもよい。一例は鼻噴霧で投与されるカルシトニンである。しかし、かなりの量が流れ出ることなく、鼻に実用的に投薬しうる量には限度がある。
【0058】
典型的な製剤パラメーターには、最適な溶液pH、緩衝剤、および安定化賦形剤の選択が含まれる。加えて、凍結乾燥ケークの再構成は凍結乾燥または粉末製剤にとって重要である。さらなる、そして意味のある問題は、自己会合後のタンパク質製剤の粘度における変化を含む。粘度の変化は送達特性を著しく変更しうる。これは、おそらくは、鼻内、肺、または口腔噴霧用の噴霧(エアロゾル)送達において最も重要である。さらに、高い粘度はシリンジまたはivラインによる注射送達をより困難または不可能にすることもある。
【0059】
有用な治療活性を有する多くのペプチドおよびタンパク質分子(以下、タンパク質治療薬と呼ぶ)がすでに発見され、また発見され続けており、したがって、製剤技術改善の必要が高まっている。例には、特に、インスリン、成長ホルモン、インターフェロン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、およびエリスロポエチンが含まれる。表Iにペプチドおよびタンパク質治療薬の例を挙げる。
【0060】
(表1)ペプチドおよびタンパク質治療薬の例

【0061】
タンパク質およびペプチドの完全性および生理活性を安定化し、維持するための多くの試みが報告されている。いくつかの試みは、特にインスリンポンプシステムの、熱変性および凝集に対する安定化をもたらした。ポリマー界面活性剤はThurow and Geisen (1984)によって研究され、Chawla et al., (1985)はポリオール界面活性剤を用いた。これらの化合物によるインスリンの安定化は、立体的性質のものであると考えられた。用いた他のシステムの中には、糖類(Arakawa and Timasheff, 1982)、アミノ酸などのオスモライト(Arakawa and Timasheff, 1985)、および尿素などの水の構造を破壊する物質(Sato et al., 1983)がある。これらの化合物はその作用を、タンパク質の分子間疎水性相互作用を調節することによって発揮する。
【0062】
したがって、本明細書において用いられる「会合」または「凝集」なる用語は交換可能に用いられる。タンパク質会合または凝集は任意のポリペプチド鎖の一般的特性で、過程は少なくとも部分的に折りたたまれていない状態から始まりうる。ペプチドまたはタンパク質凝集は不溶性の細胞内複合体、例えば、神経変性疾患におけるアミロイド斑を形成しうる。ペプチドまたはタンパク質凝集は、ペプチドもしくはタンパク質のクラスもしくはファミリーの1つの型もしくはサブタイプの間で、またはペプチドもしくはタンパク質の異なるクラスもしくはファミリーのもう1つの型もしくはサブタイプと起こりえ;前者はペプチドまたはタンパク質「自己凝集」または「自己会合」の例である。
【0063】
多くのタンパク質治療薬は高濃度で凝集を起こすため、前述の理由で自己会合を防止する手段を見いだすことが望まれた。高濃度のタンパク質の自己凝集を防止する、または粘度を調節する際に有用な物質は、本質的に非毒性で、非毒性生成物へと代謝されなければならない。理想的には、物質は生理的物質であるか、または生理的分子に代謝されるべきで、患者の組織または器官に蓄積しやすいものであるべきではない。
【0064】
ドデシルマルトシドはインスリンの自己会合を防止し、したがって生物活性の失活を防止することが明らかにされている。しかし、様々なペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が本発明に含まれる。有望な新しいクラスの治療薬であるヒューマニンペプチドも凝集し、したがってその生物活性を制限し、研究者はそのような凝集を低減するためにタンパク質配列の改変に頼らなければならなかった。
【0065】
島アミロイドポリペプチド(IAPP)としても公知の天然ヒトアミリンは、膵β細胞によってインスリンと同時に(およそ100:1の比で)分泌される37アミノ酸のペプチドホルモンである。アミリンは、CGRPおよびカルシトニンを含む関連ペプチドのファミリーのメンバーである。アミリンは主に膵ベータ細胞で合成され、グルコースおよびアルギニンなどの栄養刺激に反応して分泌される。アミリンは一般にII型糖尿病を患っている、またはインスリノーマを有する患者の膵島で見いだされる。アミリンはヒトII型糖尿病の膵島におけるアミロイド沈着物の主成分として単離、精製され、化学的に特徴付けられた。
【0066】
燃料代謝におけるアミリンの生理的役割と、糖尿病および肥満などの障害へのその連関は周知である。例えば、アミリンはグリコーゲン合成活性を低下させ、グリコーゲンホスホリラーゼの不活性b型から活性a型への変換を促進し、グリコーゲンの正味の消失を促進し(インスリン存在下または非存在下で)、グルコース-6-リン酸レベルを高め、乳酸生成量を高めることが知られている。加えて、アミリンはインスリンの分泌に影響をおよぼし、血漿グルコースの上昇後に血漿乳酸の急激な上昇を刺激し、胃を空にするのを遅らせ、血管拡張剤として作用し、食物摂取を抑制することが明らかにされている。アミリンの生理的役割ならびに糖尿病および肥満治療のためのアミリンおよびその合成類縁体の使用についてのさらなる議論は、例えば、米国特許第6,417,164号;第6,143,718号;第6,110,707号;第5,814,600号;第5,641,744号;第5,424,394号;第5,367,052号;第5,312,008号;第5,175,145号;第5,124,314号;および第5,112,945号において提供され、これらは参照により本明細書に組み入れられる。
【0067】
アミリン分子は以下の2つの重要な翻訳後修飾を有する:C末端がアミド化され、2位および7位のシステインがジスルフィド橋により架橋されてN末端ループを形成する。インビトロで、アミリンのヒト型は溶液中で線維形成により凝集する。線維形成反応中、初期の前線維(prefibrillar)構造はインスリノーマ細胞培養に対して非常に毒性である。アミリンは溶液中で線維を形成する傾向があるため、アミリンの天然型は低い溶解および安定特性を示し、それによりタンパク質の治療薬としての適切性および有効な使用を低減している。
【0068】
線維形成を引き起こすペプチドの溶解および安定特性を高める試みにおいて、ヒトアミリンペプチドの様々な改変合成類縁体が作製されている。例えば、公知の糖尿病治療薬である酢酸プラムリンチドは、指定の位置で以下のアミノ酸:Pro25 Pro28 Pro29により置換されたヒトアミリンの合成類縁体である。しかし、改変ヒトアミリンペプチドのそのような合成類縁体は天然ヒトアミリンよりも有効性および/または効力が低い。加えて、天然タンパク質の合成類縁体は天然タンパク質に比べて高い免疫原性を示し、望まれない免疫原性副作用を引き起こす。
【0069】
したがって、アミリンの天然型を、溶液中でアミリンの線維形成を防止することができる本発明の安定化剤と混合して含む組成物は、以前に試みられた組成物と比べて、高い安定性、低い凝集、および低い免疫原性を示す治療用組成物をもたらす。したがって、一つの局面において、本発明はアミリンの安定性を高め、凝集を低減し、または免疫原性を低減するための薬学的組成物であって、アミリンおよびアルキルグリコシドなどの安定化剤を含む組成物を提供する。
【0070】
真性糖尿病の治療において有用な他のペプチドは、ガストリン、ガストリン放出ペプチド(GRP)、およびガストリン放出ペプチド様タンパク質である。ガストリンは十二指腸および胃の幽門洞のG細胞によって産生される直鎖ペプチドである。これは血流中に分泌される。ガストリンは主にガストリン-34、ガストリン-17、ガストリン-14として公知の3つの形で見いだされる。ガストリン放出ペプチド(GRP)はガストリン放出ペプチドのボンベシン様ファミリーのメンバーである。これはブタの腸から最初に単離された27アミノ酸のペプチドである。GRPの1つの生物学的役割は、胃粘膜からのガストリンの放出の刺激である。ガストリン放出ペプチド様活性を有するさらなるペプチドも、例えば、米国特許第4,613,586号に開示されるとおり公知であり、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。ガストリンおよびその類縁体は、単独またはGLP-1類縁体もしくはEGF類縁体との組み合わせで、2型糖尿病患者において、治療後最大6か月にわたりヘモグロビンA1Cを含む血糖コントロールパラメーターを低減する際に有効であることが明らかにされている。
【0071】
したがって、本発明の一つの局面は、糖尿病の治療法であって、対象に、アルキルグリコシドによって安定化した、ガストリン、ガストリン放出ペプチド(GRP)、およびガストリン放出ペプチド様タンパク質を単独またはEGFおよび/またはGLP-1との組み合わせで含む、高い安定性、低い凝集および低い免疫原性を示す組成物を投与することによる方法を含む。
【0072】
ペプチドT、特にその半減期がより長い類縁体D-Ala-ペプチドT-アミド(DAPTA)は、反復投与後に単球レザバー中の残留感染性ウイルスを除去することが明らかにされている、HIV感染症治療のための非常に有望な治療薬であるが、これは非常に急速な凝集および不活化を起こし、したがって有用性が制限される(Ruff et al. 2001;Ruff et al. 2003;Polianova et al., 2003)。
【0073】
DAPTAと呼ばれるペプチドT類縁体は、HIV-1 gp120のV2領域に関連するオクタペプチドであり、少なくとも6か月間、血漿および持続的に感染している抗療性マクロファージレザバーを低減する、非毒性のCCR5 HIV侵入阻害剤であることが判明している。ケモカイン受容体CCR5は、感染の初期および中期に優位を占めるHIV分離株、ならびに脳を占有し、神経AIDSを引き起こすものの伝播において重大な役割を果たす。CCR5はしたがって、侵入阻害剤の設計のための魅力的な治療標的である。
【0074】
ペプチドTはいくつかの類縁体を有する。臨床上最も有用であるのは、D-ala1-ペプチドT-アミドであるDAPTAである。しかし、他の有用なペプチドT類縁体には下記が含まれる:D-ala1-ペプチドT(C末端のアミドがない);D-ala1Thr8-ペプチドTアミド;血管作用性兆ペプチド(VIP);Thr-Thr-Ser-Tyr-Thr(活性5量体);およびRANTESアンタゴニスト。RANTESはオクタペプチドで(Brain Research (1999) 838:27-36)、Regulated on Activation, Normal T Expressed and Secretedの頭字語である。これはCCL5としても公知である。RANTESはサイトカインのインターロイキン-8スーパーファミリーのメンバーであるサイトカインである。RANTESはタンパク質である。これは記憶Tリンパ球および単球の選択的誘引物質である。これはHIVの補助受容体であるCCR5に結合する。RANTESを阻止することでHIVの細胞への侵入が防止される。
【0075】
著しい治療薬の成功にも関わらず、治癒に対する大きな障害物が残っている。現行の抗ウイルス薬は細胞ウイルスレザバーを洗い流すことができず、そのため体内で再感染が起こる。毒性、ウイルス耐性、複雑な治療法、および高い費用が、世界のAIDSとの戦いにおける現行の治療薬の有効性を大幅に制限している。
【0076】
DAPTAはほぼ20年間臨床で試験されており、完全に非毒性で、第I相およびプラシーボ対照第II相NIH試験で有効であることが判明している。このオクタペプチドは製造が容易で、非常に低用量で有効であるため、費用は非常に低いものとなろう(年間500ドル未満)。これは簡便な鼻噴霧剤として投与してもよい。この薬物は他の抗ウイルス療法と共に試験されており、交差耐性を生じることなく相乗的治療の利点を有すると期待され、少なくとも6か月間はウイルス耐性を生じないことが明らかにされている。
【0077】
DAPTAは最近、CCR5受容体において受容体阻止侵入阻害剤として作用することが証明され(Polionova et al., 2005)、作用機序はHIV-1療法にとって非常に望ましいものであることが示されている(Moore, 2006)。HIVエンベロープ(gp-120)由来ペプチドT配列は、その受容体に付着するウイルスの部分についてのコンピューター補助データベース検索で1985年後半に推測された。次いで、NIHで、ペプチド受容体薬理学の洗練された知識により、発明者らはウイルス結合および感染を阻止する小さい持続性のペプチド治療薬を創製することができた(Pert et al PNAS 1986)。
【0078】
1987年に、DAPTAはエンベロープ(gp120)結合を強力に(10pM)阻止し、ウイルスの感染性を阻害するとの報告は、大規模な検索後にgp-120受容体活性ペプチド配列を見つけることができなかった米国HIVウイルス学団体からしつこい反論を受けた。インビトロでのDAPTAの抗ウイルス効果再現の失敗に基づく反論は、AIDSを有する4名のほぼ末期の男性における劇的な改善が見られたスウェーデンからの報告(Wetterberg, et al., 1987)にも関わらず、NHI/NIAD中で臨床試験における興味を大きく低下させた。科学的な論争は、DAPTAは、1987年に一般に使用されているGallo実験室適応株において優勢であり、HIV感染早期に優位を占めるHIV分離株を表すものではない、CxCR4ではなくCCR5ケモカイン補助受容体を標的とすることが示されて(Ruff et al., 2001)解決した。ペプチドTケモカイン補助受容体が知られる9年前の、DAPTAの強力な抗ウイルス活性の最初の報告は、現在ではCCR5使用ウイルスであることが認められているRuscettiのより生理的に主要な分離株を用いていた。
【0079】
1987年から1990年の間に、いくらかの私的資金でNIMHによって行われた第I相臨床試験は、毒性の完全な欠如、末梢神経障害の改善、およびNIMHの焦点である神経AIDSにおける明白なプラスの利点を示した。1990年から1995年の間に行われた第II相プラシーボ対照NIMH試験は3つの施設および240名の患者を含んでいた。この1100万ドルの努力は、DAPTAはより認知上の障害がある患者に対しプラシーボと比べて有意な臨床上の利点を有し、CD4細胞増加は統計学的有意性にわずかにおよばないことを示した。この試験からの保存凍結血漿におけるウイルスレベルについての最近の盲検的NIMH分析により、有意な(p<0.04)治療効果が明らかとなった。
【0080】
11名の試験において(Polionova, et al., 2003)、すべての患者で白血球から分離することができる実ウイルスは漸進的に少なくなり、抗療性の持続的に感染した単球レザバーは大幅に低減するか、または検出不可能なレベルまで洗い流された。小規模試験において、成長ホルモン分泌抑制の逆転が小児で報告されている。最近数年間に、製剤化されたペプチドの特性の分析および詳細な構造試験(MacPhee、発行されていない)から、DAPTAは保存後に凝集する非常に強い傾向があり、バイオアベイラビリティおよび抗ウイルス活性の両方を失う結果となることが明らかにされている。DAPTAのこの特性は時に最適以下の臨床結果につながり(Simpson et al., 1996)、さらにはインビトロで偽陰性の結果につながることが今では明らかである。DAPTAは、炎症性皮膚疾患において乾癬性病変を消散させることも明らかにされている(Raychaudhuria et al., 1999)。
【0081】
さらに、他の報告はDAPTAの凝集し、線維を形成する傾向を記載している。例えば、ペプチドT溶液は濃化して「ゲル化」することが報告されており、活性および/または粘膜、例えば、鼻上皮を通って輸送される能力を損失する可能性が問題であった。製剤から塩化ナトリウムを除去し、濃度を5mg/mLに低下させると、問題が解決されるようであった。しかし、わずか1mg/mLでも、室温での分光偏光分析により、より希釈された0.1mg/mlでの205.4nmの大きいピークから237.2nmの大きいピークへのシフトが明らかとなり、ペプチドTは凝集段階においてより高い濃度でそれ自体と相互作用しており、これがゲル化につながるであろうことが示された。電子顕微鏡により、ペプチドTが線維を形成することが確認され、発明者らが知るかぎり、ペプチドTはこれまでに記載されたいかなる他の小ペプチドよりも容易に線維を形成する(図1)。本発明において、この凝集現象は生物活性の消失をもたらすことが明らかにされている。さらに、この凝集または線維形成する傾向は製造ごとに変動するだけでなく、以下の実施例に例示するとおり、バッチごとにも予測不可能に変動する。
【0082】
線維形成は濃度および温度依存性で、線維は冷蔵温度および1mg/mL以上の濃度で最も速く形成する。例えば、以下の実施例で示すとおり、冷蔵庫で何週間もの間保存すると、0.1mg/mLでもペプチドT溶液はHIV感染を阻止する実質的にすべての能力を徐々に、かつ漸進的に失った。同様に、ペプチドTの製剤を、例えば、冷蔵庫(約4℃)で数か月間保存すると、鼻内定量噴霧により投与した後に、血漿に侵入する能力の10分の1への低下を示した。線維の効果は非常に関連性があり、重要であると考えられるため、Advanced ImmuniTy, Inc.(AITI)は乾癬を治療するためにペプチドTを投与する臨床試験を停止した。
【0083】
慢性神経炎症はアルツハイマー病の進行において顕著な役割を果たす。この疾患の早期に海馬内で反応性小膠細胞および星状細胞が観察される。疫学的知見により、抗炎症療法がアルツハイマー病の発症を遅らせることが示唆される。ケモカイン受容体5(CCR5)アップレギュレーションは老人斑近くの膠細胞の動員および蓄積に影響をおよぼす可能性があり;活性化小膠細胞はCCR5を発現し、反応性星状細胞はケモカインを発現する。Rosi、PertおよびRuffは以前、リポ多糖の第4脳室への慢性注入により誘導した神経炎症は、アルツハイマー病に関連する行動、神経化学的、電気生理学的および神経病理学的変化の多くを再現することを示した(Pert et al. 2005)。
【0084】
別の態様において、本発明は、ペプチドまたはタンパク質薬物、および凝集を低減または防止するが、ペプチドまたはタンパク質を変性せず、したがって脊椎動物への投与後にペプチドまたはタンパク質治療薬の免疫原性を低減または除去し、かつ適用部位または全身のいずれかで刺激性ではないが、非毒性である、約1mM未満、好ましくは約0.5mM未満のCMCを有する界面活性剤を有する組成物を提供する。そのような界面活性剤-ペプチド/タンパク質薬物組成物が本明細書において提供される。
【0085】
一つの態様において、本発明は、少なくとも1つの自己会合性ペプチドまたはタンパク質薬物および少なくとも1つの界面活性剤を含む組成物であって、界面活性剤はさらに少なくとも1つのアルキルグリコシドを含む組成物が、自己会合性タンパク質またはペプチドの凝集が大きく低減または除去され、その結果、免疫原性の低減もしくは除去、凝集が原因の生物活性消失の低減もしくは除去、より長い貯蔵寿命、または自発的凝集後の失活の低減もしくは除去の結果としてのコールド-チェーン条件の軽減などの、1つまたは複数の利益をもたらす、安定で、非刺激性の製剤を形成するとの発見に基づいている。
【0086】
本明細書において用いられる「非毒性」とは、アルキルグリコシド分子がヒトへの投与および消費に適切であるために十分低い毒性を有することを意味する。好ましいアルキルグリコシドはそれらを適用する組織に対して非刺激性である。いかなるアルキルグリコシドも、インビボで細胞に損傷を引き起こさないなどの、組織に対して毒性が最小限または非毒性のものであるべきである。毒性の判定は、インビトロではなくインビボで行うことが重要である。賦形剤の相対毒性に関して多くの混乱および誤報がある。これは主に、現在、インビトロ試験法に対する信頼が保証されておらず、正当に批判されていないことによる。例えば、インビトロおよびインビボの結果を直接比較している最近の試験は、鼻の刺激または毒性を予測する際のインビトロ試験とインビボ試験との間に相間がないことを明らかに示している。詳細に試験された例は塩化ベンザルコニウム(BAC)である。BACは1935年以来、最大0.1%の濃度で鼻用および眼用製品中で用いられている。しかし、最近数年間に、BACを組み込んでいる製品に関連するヒト上皮への損傷および鼻炎の悪化の対立する報告が出されている。
【0087】
この主題についての大規模な総説および科学的発行物の解析により、Marpleら(Marple 2004)は、現在のデータは生じた任意の懸念がインビトロ実験からの結果に限定されていることを示すと結論づけた。まったく対照的に、インビボデータの解析により、BACを含む局所製剤を長期間使用しても、鼻粘膜に有意な損傷を起こさないことが示唆された。解析データは、鼻毛の機能および超微細構造の変化を、光学顕微鏡、透過電子顕微鏡、走査電子顕微鏡、および倒立相顕微鏡を含む様々な型の顕微鏡によって評価した、14のインビボ試験から得たものであった(Ainge 1994;Berg 1995;Braat 1995;Graf 1999;Holm 1998;Klossek 2001;McMahon 1997)。直接粘膜線毛クリアランスはインディゴカーミンサッカリン輸送時間またはサッカリンクリアランス時間の測定によって評価され、鼻炎の悪化は鼻上皮の厚みの変化によって判定された。同様に、十分に対照比較した二重盲検鼻生検試験において、BAC、BAC+プラシーボ、またはBAC単独を含むプロピオン酸フルチカゾン水性鼻噴霧剤の投与を6週間受けている、通年アレルギー性鼻炎の患者22名が試験された(Braat 1995)。各群のインディゴカーミンサッカリン輸送時間および存在する線毛細胞の数の間に統計学的差はなく、生検組織の走査および透過電子顕微鏡検査によりBACの影響は無いことが示された。
【0088】
0.02%の塩化ベンザルコニウムにより引き起こされる鼻刺激を調べる別の最近の試験において、サッカリン輸送時間、前鼻気圧測定、鼻分泌物の評価、匂い定位試験、および前鼻鏡検査は識別しうる負の効果をまったく示さなかった(Lange 2004)。
【0089】
65名の健常志願者で、2週間にわたって行われた、McMahonらによる類似の試験において(McMahon 1997)、二重盲検により、0.02%のBACを含む、または含まない鼻噴霧を1日2回受けた対象間で、有意差は見られなかった。評価された症状には、聴覚鼻腔測定、サッカリンクリアランス時間、および線毛拍動頻度が含まれた。BACは適用後に粘膜線毛クリアランスのわずかな延長を引き起こしたが、2週間の持続する定期的使用後に鼻粘膜機能に対して検出可能な影響はないと報告された。
【0090】
インビトロ試験とヒトにおけるインビボでの経験との間に相間はないことを強調する別の試験(Riechelmann 2004)および相間の欠如の単純かつもっともらしい説明を示す試験で、15名のヒト供与者から分離した鼻毛におけるBACの影響が調べられた。インビトロ試験において、BACは線毛毒性であるようであった。しかし、ここでも、インビボ試験において、BACはサッカリン輸送時間または炎症促進効果の指標、すなわち、ミエロペルオキシダーゼ、ならびにIL-6およびサブスタンスPの分泌を変えることはなかった。著者らは、BAC関連の炎症促進効果は観察されないため、BACのいかなる線毛毒性効果も、おそらくは分泌物の成分によって中和されると結論付けている。これは本質的に粘膜線毛クリアランス過程における鼻分泌物の機能であるため、これはそれほど驚くべきことではない。
【0091】
したがって、毒性のインビトロでの予測はヒト対象における実際のインビボでの経験と相関せず、インビボでの結果がそのような評価をする際に好ましい。
【0092】
任意の所与のアルキルグリコシドの毒性は、用いるアルキルグリコシドの濃度によって変動することもある。選択したアルキルグリコシドが体によって代謝または排出され、この代謝または排出が害があるほど毒性ではない様式で行われるならば、これもまた有益である。
【0093】
本発明の別の態様において、フッ化有機溶媒、ポリペプチドもしくはその変異体、またはペプチド、ポリペプチドもしくはその変異体をフッ化有機溶媒と混合する。フッ化有機溶媒2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)はペプチド鎖内の構成らせん含有量を誘導する。例えば、TFEはペプチドアクチンの残基1〜20内で最大48%のらせん含有量を誘導する(Sonnichsen et al., 1992)。さらに、ペプチド鎖内の構造変化を誘導する別のフッ化有機溶媒は1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)である。
【0094】
TFEまたはHFIPの特定の性質によって、これらはペプチド、ポリペプチド、またはその変異体にとって理想的な溶媒となる。
【0095】
TFEおよびHFIPは高純度で市販されている。したがって、本発明の別の局面において、ペプチド、ポリペプチドおよび/またはその変異体をTFEもしくはHFIP単独と、または本明細書に記載の任意のアルキルグリコシドと共に混合することができる。
【0096】
多くのアルキルグリコシドを、公知の手順で、すなわち、例えば、Rosevear et al., Biochemistry 19:4108-4115 (1980)もしくはKoeltzow and Urfer, J. Am. Oil Chem. Soc., 61:1651-1655 (1984)、米国特許第3,219,656号および米国特許第3,839,318号に記載のとおり化学的に、または、例えば、Li et al., J. Biol. Chem., 266:10723-10726 (1991)もしくはGopalan et al., J. Biol. Chem. 267:9629-9638 (1992)に記載のとおり酵素的に合成することができる。
【0097】
疎水性アルキルと親水性糖類との間の連結には、他に可能性がある中でも、グリコシド、チオグリコシド(Horton)、アミド(Carbohydrates as Organic Raw Materials, F. W. Lichtenthaler ed., VCH Publishers, New York, 1991)、ウレイド(オーストリア特許第386,414号(1988);Chem. Abstr. 110:137536p (1989);Gruber, H. and Greber, G., ''Reactive Sucrose Derivatives'' in Carbohydrates as Organic Raw Materials, pp. 95-116参照)またはエステル連結(Sugar Esters: Preparation and Application, J. C. Colbert ed., (Noyes Data Corp., New Jersey), (1974))が含まれうる。
【0098】
治療用組成物のために有用なアルキルグリコシドをそこから選択しうる例には下記が含まれる:オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、およびオクタデシル-D-マルトシド、-グルコシドまたは-スクロシド(すなわち、スクロースエステル)などのアルキルグリコシド(Koeltzow and Urfer; Anatrace Inc., Maumee, Ohio;Calbiochem, San Diego, Calif.;Fluka Chemie, Switzerlandに従い合成);ヘプチル、オクチル、ドデシル-、トリデシル-、およびテトラデシル-β-D-チオマルトシドなどのアルキルチオマルトシド(Defaye, J. and Pederson, C., ''Hydrogen Fluoride, Solvent and Reagent for Carbohydrate Conversion Technology'' in Carbohydrates as Organic Raw Materials, 247-265 (F. W. Lichtenthaler, ed.) VCH Publishers, New York (1991);Ferenci, T., J. Bacteriol, 144:7-11 (1980)に従い合成);ヘプチル-またはオクチル1-チオβ-またはβ-D-グルコピラノシドなどのアルキルチオグルコシド(Anatrace, Inc., Maumee, Ohio;Saito, S. and Tsuchiya, T. Chem. Pharm. Bull. 33:503-508 (1985)参照);アルキルチオスクロース(例えば、Binder, T. P. and Robyt, J. F., Carbohydr. Res. 140:9-20 (1985)に従い合成);アルキルマルトトリオシド(Koeltzow and Urferに従い合成);スクロースアミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド;(オーストリア特許第382,381号(1987);Chem. Abstr., 108:114719 (1988)およびGruber and Greber pp. 95-116に従い合成);アルキル鎖にアミド連結によって連結されたパラチノースおよびイソマルタミンの誘導体(Kunz, M., ''Sucrose-based Hydrophilic Building Blocks as Intermediates for the Synthesis of Surfactants and Polymers'' in Carbohydrates as Organic Raw Materials, 127-153に従い合成);アルキル鎖に尿素によって連結されたイソマルタミンの誘導体(Kunzに従い合成);スクロースアミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸ウレイド(Gruber and Greber, pp. 95-116に従い合成);ならびにスクロースアミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド;(オーストリア特許第382,381号(1987)、Chem. Abstr., 108:114719 (1988)およびGruber and Greber, pp. 95-116に従い合成)。
【0099】
いくつかの好ましいグリコシドには、9、10、12、13または14炭素原子のアルキル鎖にグリコシドまたはエステル連結によって連結されたマルトース、スクロース、およびグルコース、例えば、ノニル-、デシル-、ドデシル-およびテトラデシルスクロシド、グルコシド、およびマルトシドが含まれる。これらの組成物はアルコールまたは脂肪酸と糖類に分解されるため非毒性で、かつ両親媒性である。
【0100】
前述の例は、本明細書において特許請求する方法で用いるアルキルグリコシドの型の例示であり;一覧は網羅的ではない。アルキルグリコシドを選択する際には、特許請求の範囲の基準に合う前述の化合物の誘導体も考慮すべきである。すべての化合物を、実施例に教示する方法に従い、有効性についてスクリーニングすることができる。
【0101】
糖化学において、アノマーは、アノマー炭素または還元炭素とも呼ばれるヘミアセタール(またはヘミケタール)炭素の立体配置だけが異なる、糖またはグリコシドの環状立体異性体(αまたはβと指定)対のいずれかである。構造がグルコースのアキシャル位にアノマー炭素上のヒドロキシル基を有するものと類似である場合、糖はアルファアノマーである。しかし、ヒドロキシルがエカトリアルである場合、糖はベータアノマーである。例えば、グルコースの2つの環状型であるα-D-グルコピラノースおよびβ-D-グルコピラノースはアノマーである。同様に、アルキルグリコシドはアノマーとして出現する。例えば、ドデシルβ-D-マルトシドおよびドデシルα-D-マルトシドはドデシルマルトシドの2つの環状型である。2つの異なるアノマーは2つの別の化学構造であり、したがって異なる物理的および化学的性質を有する。本発明の一つの局面において、本発明のアルキルグリコシドはβアノマーである。別の局面において、本発明のアルキルグリコシドはドデシルβ-D-マルトシドである。
【0102】
これまでに、界面活性剤として用いる特定のアルキルグリコシドの個々のアノマーの薬物組成物を安定化する能力は試験されたことがない。本発明は、部分的には、アルキルグリコシドのαおよびβアノマーは薬物を含む組成物を安定化するその能力が異なるとの発見に基づいている。アノマーはいずれも薬物を含む組成物を安定化させるいくらかの能力を有するが、アルキルグリコシドのαアノマーは弱い安定化剤である(図7)。例えば、インスリンを10%未満のドデシルβ-D-マルトシドを含むドデシルα-D-マルトシドと混合して含む組成物は、約14日間安定なままであり、14日目の時点で組成物は不安定化し始める。しかし、インスリンおよび1%未満のドデシルα-D-マルトシドの混入があるドデシルβ-D-マルトシドを含む組成物は、約82日から88日間安定なままであった。アルキルグリコシドのαアノマーの存在は、βアノマーの薬物を安定化する能力を低下させる。したがって、界面活性剤として用いるアルキルグリコシドのβアノマーのαアノマー混入が少ないほど、組成物はより長く安定なままとなる。
【0103】
薬学的組成物または製剤中で用いるための市販のアルキル糖類は、典型的にはαおよびβアノマー両方の混合物を含む。単一のアノマーを注文することが望ましい場合であっても、典型的なロットストックはαまたはβアノマーのいずれかが混入している。例えば、商業的供給源からのドデシルβ-D-マルトシドの保存溶液を分析すると、ドデシルβ-D-マルトシドの保存溶液は典型的には約2%から10%のドデシルα-D-マルトシドが混入していることが判明する。
【0104】
したがって、本発明の一つの局面において、用いるアルキルグリコシドは実質的に純粋なアルキルグリコシドである。本明細書において用いられる「実質的に純粋」とは、約2%未満のαアノマー型、好ましくは約1.5%未満のαアノマー型、より好ましくは約1%未満のαアノマー型を含むβアノマー型を意味する。一つの局面において、実質的に純粋なアルキルグリコシドは98%よりも多いβアノマーを含む。別の局面において、実質的に純粋なアルキルグリコシドは99%よりも多いβアノマーを含む。別の局面において、実質的に純粋なアルキルグリコシドは99.5%よりも多いβアノマーを含む。別の局面において、実質的に純粋なアルキルグリコシドは99.9%よりも多いβアノマーを含む。
【0105】
少なくとも1つの薬物および少なくとも1つの界面活性剤を含む本発明の組成物であって、界面活性剤がさらに少なくとも1つのアルキルグリコシドからなる組成物は、滴剤、噴霧剤、エアロゾル剤、凍結乾燥剤、注射剤、および徐放性様式からなる群より選択される様式で投与することができる。噴霧剤およびエアロゾル剤は適当なディスペンサーの使用によって達成することができる。凍結乾燥剤は、マンニトール、ゼラチン、生体適合性ゲルまたはポリマーなどの他の化合物を含んでいてもよい。徐放性様式は眼内挿入物、侵食性微小粒子、膨潤性粘膜付着性粒子、pH感受性微小粒子、ナノ粒子/ラテックス系、イオン交換樹脂ならびに他のポリマーゲルおよびインプラントでありうる(Ocusert, Alza Corp., California; Joshi, A., S. Ping and K. J. Himmelstein, 特許出願WO 91/19481)。
【0106】
本発明は、有機溶媒の必要を軽減し、場合によっては解消することもある。凝集を防止するためにトレハロース、ラクトース、およびマンニトールが用いられてきた。抗IgEヒト化モノクローナル抗体の凝集は、モル比300:1から500:1(賦形剤:タンパク質)の範囲以上のトレハロースと共に製剤化することにより最小化された。しかし、粉末は過度に粘着性で、エアロゾル投与には不適切であり、または保存中に望まれないタンパク質糖化を示した(Andya 1999)。発見された各添加物は、異物代謝、刺激もしくは毒性、または高い費用を含む、治療薬への添加物として制限を有する。本発明は、それらは天然の糖、脂肪酸、または長鎖アルコールからなるため有効で、非刺激性または毒性であり、異物代謝を必要とせず、また乾燥したペプチドまたはタンパク質製剤の水溶液中または水性再構成後、唾液などの水性体液によるインサイチューでの生理的な水性再構成後の凝集を最小化するためにも用いうる賦形剤を提供する。
【0107】
別の態様において、本発明は、それを必要としている対象に、本発明の治療用組成物の有効量を投与する方法を提供する。本明細書において用いられる「治療上有効な量」は、本明細書における目的のための「有効量」と交換可能で、当技術分野において公知のものなどの考察によって決定される。この量は、その疾患を患っている治療した対象において所望の薬物仲介効果を達成するのに有効でなければならない。治療上有効な量には、当業者によって選択される適当な尺度、例えば、生存率改善、より速い回復、または症状の寛解、改善もしくは除去が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0108】
本発明の一つの局面において、薬物組成物の貯蔵寿命を延長する方法であって、薬物を少なくとも1つのアルキルグリコシドを含む界面活性剤と混合すること、および組成物を脊椎動物に投与することによる方法を記載する。本明細書において用いられる「貯蔵寿命」なる語句は、製品が使用または消費のために不適切となることなく保存しうる期間としておおまかに記載される。本明細書に記載の組成物の「貯蔵寿命」は、組成物の品質の耐容される低下に対応する期間を指すこともできる。本明細書において用いられる組成物の貯蔵寿命は、有効期限とは区別される;「貯蔵寿命」は本明細書に記載の組成物の品質に関係する一方、「有効期限」は組成物の製造および試験条件により関係する。例えば、その「有効期限」を過ぎた組成物はまだ安全かつ有効でありうるが、製造者によって最適な品質はもはや保証されない。
【0109】
貯蔵寿命は光透過、ガス伝導、熱伝導、湿度伝導、または機械的ストレスによって影響される。ほぼすべての化学反応は普通の温度で起こる。これらの分解過程は特徴的に高温ほど速く起こる。通常引用される経験則は、化学反応は温度が摂氏10度上がるごとにそれらの速度は二倍になるというものである。理由は活性化エネルギー障壁と関係がある。本明細書に記載の組成物は、摂氏25度で少なくとも1か月の保存後に、ペプチドまたはタンパク質が少なくとも2倍のレベルの生物活性を保持することを可能にする。貯蔵寿命を延長する他の方法は当技術分野において公知で、それらが記載の組成物の貯蔵寿命を延長するかぎりは、本出願に含まれる。
【0110】
本発明の別の局面は、高分子の状態を特徴付けるための非破壊的技術としての光散乱を提供する。光散乱は、それらのオリゴマー(すなわち、凝集)状態を含む、高分子の範囲を調べるために日常的に用いることができる。最も重要なことには、光散乱は高分子の溶液特性の評価を可能にする。散乱光の強度を角度の関数として測定することができ、または固定した角度で測定することもできる。例えば、励起光路が検出光路に対して通常90度に設定され、フィルターが同じ光波長の通過を可能にするよう選択されている、フィルター蛍光光度計を、光散乱を測定するための好都合な手段として用いることができる。高分子の場合、光散乱はレイリー散乱と呼ぶことが多く、モノマーまたは凝集体のモル質量および平方二乗平均半径を出すことができる。凝集体は、最大で直接見える白濁(光散乱現象)または見える沈降物の形成までのサイズで広く変動しうる。さらに、凝集を直接観察するために、超遠心分離による沈降平衡を含む他の方法を用いてもよい。
【0111】
一つの態様において、本発明は、組成物または分子の生物活性、例えば、受容体結合または酵素活性を増大または維持するために、分子を化学的に改変する方法に関する。分子は、必須ではないが、好ましくは、ポリペプチドである。方法は組成物中の分子をポリエチレングリコールなどのポリマーに結合することを含むことができる。
【0112】
本方法は、ペプチドまたはタンパク質薬物の免疫原性を低減または除去し、非刺激性で、抗菌活性を有し、薬物の安定性またはバイオアベイラビリティを高め、その薬物のバイオアベイラビリティ変動が低減し、初回通過肝クリアランスを回避し、かつ任意の有害作用を低減または除去する組成物を含むが、それらに限定されるわけではない、本明細書に記載の組成物のすべての局面を含む。本明細書において用いられる「免疫原性」なる用語は、特定の物質または組成物または薬剤の免疫応答を誘発する能力である。本発明のペプチドの免疫原性は、当技術分野において公知の方法によって確認することができる。
【0113】
本発明の別の局面において、少なくとも1つの薬物と混合した少なくとも1つのアルキルグリコシドを含む薬物組成物を投与し、脊椎動物に送達する方法であって、ここでアルキルは9から24炭素原子、またはさらに10から14の範囲の炭素原子を有し、かつ界面活性剤は薬物の安定性およびバイオアベイラビリティを高める。
【0114】
本発明の方法では、界面活性剤は、その界面活性剤の1日推奨摂取量よりも何倍も高いNOAELを有する。例えば、NOAELは界面活性剤の1日摂取量よりも10×から1000×高い。
【0115】
本発明の別の局面において、薬物を少なくとも1つのアルキルグリコシドおよび/またはスクロースエステルを含む界面活性剤と混合することにより、ペプチドまたはタンパク質薬物組成物の免疫原性を低減または除去する方法であって、ここでアルキルは10から14炭素原子を有する。
【0116】
本発明の方法を、例えば、ヒトを含むが、それに限定されるわけではない、治療を必要としている脊椎動物対象に送達する。さらに、治療中の状態に依存して、これらの治療用組成物を製剤化し、全身または局所投与してもよい。製剤および投与の技術は、''Remington's Pharmaceutical Sciences'' (Mack Publishing Co, Easton Pa.)の最新版に見いだしうる。適切な経路には、例えば、鼻内;口腔;膣;直腸;ならびに筋肉内、皮下、静脈内、腹腔内、または鼻内投与を含む、非経口送達などの、経口または経粘膜投与が含まれうる。
【0117】
しかし、治療を必要としている任意の特定の対象のための、具体的な用量レベルおよび投薬の頻度は変動することがあり、用いる具体的化合物の活性、その化合物の代謝的安定性および作用期間、年齢、体重、全身の健康、性別、食餌、投与の様式および時期、排出の速度、薬物併用、特定の状態の重症度、ならびに治療を受けている宿主を含む様々な因子に依存することが理解されるであろう。
【0118】
他の製剤成分には、特に、緩衝剤および生理的塩、アプロチニンおよびダイズトリプシン阻害剤などの非毒性プロテアーゼ阻害剤、ならびにアルファ-1-抗トリプシンが含まれうる。緩衝剤には酢酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、ポリリジン、ポリグルタミン酸塩、キトサン、硫酸デキストランなどの有機物、またはリン酸塩、および硫酸塩などの無機物が含まれうる。本出願の全体を通して、様々な出版物が参照される。当業者であれば、これらの出版物の参照される開示は、本発明が属する最先端技術をより十分に記載するために、参照により本出願に組み入れられることを理解するであろう。
【0119】
本出願の全体を通して、様々な出版物が参照される。これらの出版物の開示はその全体が、本発明が属する最先端技術をより十分に記載するために、参照により本出願に組み入れられる。
【0120】
本発明を以下の実施例においてより詳しく記載するが、その中の多くの改変および変更は当業者には明らかであるため、それらは例示を意図するにすぎない。以下の実施例は例示を意図するが、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0121】
実施例1
免疫原性が低減されたインスリン組成物
体重300から350グラムの間のSD(Sprague-Dawley)ラット(Charles River, Charlotte, NC)3匹ずつの6つの群に下記のいずれかを投与する:1)5mM酢酸ナトリウム緩衝液、0.9%食塩水、0.18%ドデシルマルトシド(緩衝液A1)または0.125%スクロースモノドデカノエート(緩衝液A2)中、pH6.0のインスリンの複数回鼻内(i.n.)投与;2)5mM酢酸ナトリウム緩衝液、0.9%食塩水(すなわち、アルキル糖類を含まない(緩衝液B)中、pH6.0のインスリンからなる鼻内対照;3)緩衝液A中のインスリンの複数回皮下注射(s.c.)、および;または4)緩衝液B中のインスリンの複数回皮下注射(s.c.)。インスリンの鼻内および皮下用量(ラット1匹あたりインスリン0.5U)を1週間に1回投与し、等量(0.5U)のインスリンを20マイクロリットルの量で鼻内または100マイクロリットルで皮下注射により投与する。前述の溶液それぞれの3mLの一定量を、21×70mmの褐色4ドラムねじ口バイアルで、まずバイアルおよび内容物を凍結し、それらをLabconcoの750mLガラス凍結乾燥容器に入れてLabconco Freezon 4.5凍結乾燥器で36時間凍結乾燥する。
【0122】
各ラットから1週間に1回12週間、次のインスリン投与前に採血する。500μlの血液試料を、眼窩出血により血清毛管採血管に採取する。採血後、毛管の遠心分離による凝血後に、血清を各血液試料から調製する。すべての血清試料を抗体測定まで-70℃で保存する。
【0123】
0.125%ドデシルマルトシド(DDM)もしくはスクロースドデカノエート(SDD)を含む(緩衝液A)または含まない(緩衝液B)pH6の5mM酢酸Na緩衝液、0.9%NaCl中で調製したヒトインスリン(組換え、大腸菌内で発現、Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)溶液。インスリン溶液を試験の第1日に作製し、その後の実験期間中、室温で保存する。
【0124】
試料採取のために、ラットをPlexiglas麻酔誘導箱内で2%イソフルランにより麻酔し、採血およびインスリン投与をしやすくする。
【0125】
抗ヒトインスリン抗体の検定:抗ヒトインスリン抗体の検定を、Immunodiagnostic Systems Limited(IDS, Fountain Hills, AZ)抗ヒトインスリンELISAキットを用い、アルカリ性ホスファターゼ標識したヤギ抗ヒトIgGをアルカリ性ホスファターゼ標識したヤギ抗ラットIgG(Sigma-Aldrich)で置き換える改変をして行う。ヒトインスリンをマイクロウェル上に固定する。陽性対照、陰性対照、および希釈した患者血清試料を適当なマイクロウェルに加える。ラット血清試料および対照中のヒトインスリンに特異的なラットIgG抗体はマイクロウェル上のインスリン分子に結合する。未反応の血清材料を洗浄した後、ラットIgGに特異的な酵素(アルカリ性ホスファターゼ)標識したヤギ抗体を抗原-抗体複合体に加える。十分に洗浄して結合していない酵素を除去した後、基質、パラニトロフェニルリン酸(PNPP)溶液を加え、発色を肉眼で採点する。2つの品質対照(陽性および陰性)を提供して、検定結果をモニターし、妥当性確認する。陰性対照と比較して色の変化が見られない場合は(-)と評価する。眼に見える発色は+/-、+ 、++、+++の範囲の漸増尺度で採点する。色の強度は抗インスリン抗体の濃度に正比例する。
【0126】
試験開始時には抗体は観察されない。2〜3週間後、非アルキルグリコシド製剤を投与した群で抗体価の発生が見られる。抗体価はその後数週間にわたり増大する。以下の表IIおよびIIIを参照されたい。ELISAによる相対的抗体価に基づき、アルキルグリコシドを含む製剤では抗体応答が低い結果となることがわかる。
【0127】
凍結乾燥製剤を3mLの水で再構成して、凍結乾燥前と同じ薬物濃度を得る。1群あたりラット3匹の6つの群の第二のセットに、凍結乾燥し、再構成した製剤を投与し、前述のとおりに血液試料を採取した後、アルキルグリコシドを含む製剤は本質的に免疫原性を示さないが、アルキルグリコシドを含まない製剤は非凍結乾燥、非アルキルグリコシド含有製剤で見られるものと類似の抗体応答を誘発する。したがって、凍結乾燥および再構成はアルキルグリコシド存在下で免疫原性の増大を引き起こさないが、アルキルグリコシド非存在下では免疫原性を増大させる。
【0128】
(表2)アルキルグリコシドであるドデシルマルトシド(DDM)存在下でのインスリンの鼻内送達後の免疫原性

【0129】
(表3)アルキルグリコシドであるスクロースモノドデカノエート(SDD)存在下でのインスリンの鼻内送達

【0130】
実施例2
インスリンアルキル糖類組成物は貯蔵寿命が延長される
インスリン製剤の有効性は、糖尿病のOb-Obマウスモデルにおいて糖負荷試験を実施することにより示しうる。糖負荷試験において、グルコースのボーラスをOb-Ob糖尿病マウスに腹腔内注射により投与する。動物は糖尿病であるため、グルコースレベルは長時間高いままとなる。グルコースボーラス投与時にOb-Obマウスにインスリン(0.5Uを含む20マイクロリットル、一方の鼻孔に投与)を鼻内投与した後、血糖レベルははるかに速く正常レベルに戻ることが認められる。インスリン製剤が古くなるにつれて、インスリンは自己凝集の結果、活性を失う。DDMおよびSDD存在下では、インスリン製剤は活性を保持することが認められる。以下の表を参照されたい。
【0131】
(表4)アルキルグリコシド製剤存在下でのインスリンはより長期の活性を有する

*群内比較のため、すべての後続群の初期グルコースレベルは190に規準化している。
【0132】
実施例3
TFEは線維形成および凝集を有効に低減する
本発明の一つの態様において、ペプチドTまたはその類縁体、例えば、D-Ala-ペプチドT-アミド(DAPTA)溶液を調製する方法が提供される。本発明の一つの局面において、ペプチドTまたはその類縁体は高い効力または生物活性を有し、線維は含まない。線維形成は、部分的には、塩、温度、製造、およびペプチド濃度に依存する。しかし、線維形成に貢献する他の物理化学的要素が企図される。以下はペプチドTおよび/またはその類縁体における線維形成を低減または阻害する方法を記載する。本明細書に記載の方法は、そのような条件または媒質非存在下でのペプチドTおよび/または類縁体製剤よりも、効力および生物活性が10倍高い、ペプチドTおよび/または類縁体製剤を提供する。例えば、ペプチドTまたはその類縁体製剤は、改善または増強または上昇したペプチド血中濃度、例えば、上昇したDAPTAの血中濃度を有する。
【0133】
円偏光二色性(CD)試験により、ほぼ0.1mMまたは約0.1mMまたは0.1mM未満の閾濃度があり、それにより線維形成の速度は大きく低減されることが明らかである。本明細書に記載のペプチドTまたは類縁体製剤は、DAPTA濃度をほぼ0.1mMまたは0.1mM未満に調節することに関与するが、それらに限定されるわけではない。
【0134】
加えて、産官の試験製剤で一般に用いられるNaClを除去すると、ペプチドT製剤のゲル化を大きく阻害する。水性/アルコール溶液の固体ペプチドTとの混合はただちに行う(すなわち、最初の適用前に)。混合し、短期間、例えば、1日未満、1週間未満、2週間未満、3週間未満などの間十分な溶液を保持することができるよう設計された瓶または装置内で混合を行うこともできる。いったん再構成すると、ペプチドT製剤、または薬物は室温、または周囲温度にすべきである。
【0135】
線維形成過程は、ゆっくり生じる核形成の種から開始すると考えられ、これはあまり明らかにされていない。しかし、いったん開始すると、伸長と、次いで積み重ねははるかに急速に進みうる。それゆえ、本明細書に記載の方法の一局面は、いかなる核形成の種も除去し、したがって線維形成を防止することである。核形成の種は製造過程、例えば、ペプチドの凍結乾燥からの様々な混入物または初期の凝集体でありうる。異なる製造過程または同じ製造過程でも予測不能で制御されないバッチ間の変動性が、以下の実施例に例示するとおり、多かれ少なかれ核形成の種を生じると考えられる。混入物または凝集体を除去するための様々な方法には、精密ろ過、限外ろ過、アフィニティクロマトグラフィ、選択吸収クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、凍結乾燥、透析、および沈降または塩析が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0136】
さらに、本明細書に記載の方法は、ペプチド線維または凝集体構造を、例えば、アルファヘリックスの形成を誘導することにより破壊し、それにより線維形成を除去または防止する溶媒を含む。トリフルオロエタノール(TFE)および1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)はアミロイドおよび他のペプチドに対してこの特性を有することが明らかにされている。本発明は、ペプチドを安定化し、線維形成を防止する、様々な変異体、突然変異体(例えば、欠失)も含む。例えば、アルツハイマー病に関連する、いわゆるアミロイド-β(例えば、1〜42残基)ペプチドは、非常に線維形成性が高いが、残基14〜23を欠くペプチドは線維形成性ではない(Tjernberg et al., 1999, J. Biol. Chem. 274:12619-12625)。同様に、線維を安定化する、およびまたは線維形成を阻害、低減もしくは防止するペプチドTおよび/またはDAPTAを含むその類縁体は、したがって、野生型配列と比べて、欠失および/または突然変異を含みうる。
【0137】
さらに、本明細書に記載のペプチドTまたは類縁体製剤の方法は、最終仕上げ段階または溶媒からの最終凍結乾燥の前に、様々なろ過段階およびさらなる溶媒との混合段階にかけてもよい。本明細書に記載の方法は、核形成の種を阻止または除去する、pHの改変、塩の添加などのさらなる段階も含むことができる。本明細書に記載の方法は、不安定もしくは不調和ならせん、または不調和ならせんの特定の領域を、その領域に結合して安定性を可能にすることにより安定化するペプチドまたは物質を利用することができる。次いで、特定した物質を、線維形成を阻害する、例えば、α-ヘリックスの配座を安定化する能力について試験する。線維形成を阻害する、および/またはα-ヘリックスの配座を安定化する化合物を特定するための別のアプローチは、本明細書に記載のものなどの方法を用いて、線維形成を阻害する、およびα-ヘリックスの配座を安定化する分子について化学ライブラリをスクリーニングすることである。したがって、本明細書に記載の方法は、後続のα-ヘリックス安定化の検定において用いることになるものについて試験化合物をあらかじめスクリーニングするための、試験化合物、例えば、前述の化学ライブラリから特定した化合物の存在下および非存在下で、薬物、またはペプチドTもしくはその類縁体、例えば、DAPTAの線維形成を検出するための検定を含む。同様に、線維形成を防止する際の候補化合物の予測される有効性を確認するために、候補化合物の線維形成を阻害する能力を用いることもできる。
【0138】
EDTA、緩衝剤、保存剤、キレート化剤など、ならびに記載したアルキルグリコシドおよび/またはアルキル糖類などのGRAS(すなわち、FDAの規制においていわゆる一般に安全と認められる(Generally Recognized As Safe))試薬を添加して、または添加しない、5mg/mL、0.5mg/mL、および0.05mg/mL以下の濃度を用いて、線維形成をさらに抑制および防止してもよい。DAPTAペプチドはアルコール(-OH)基を含むトレオニンが多いため、単純な糖は、それらの(-OH)基によって結合を切断し、積み重ねを引き起こすことがある。分子間結合を減らすためのペプチドの一次配列、または側鎖の改変は有用であると考えられ、企図される。これらの改善は効力を増強することになり、必要とされる投与薬物が減り、薬物の有用な保存期間が延長される。
【0139】
線維形成を、本明細書に記載の、分光偏光シフトの検査、電子顕微鏡検査、および/または他の方法、例えば、色素結合技術によってモニターすることができる。加えて、比活性のための生物学的試験、例えば、抗ウイルス(Ruff, MR, et al., 2001)、化学誘引物質(Redwine, 1999)、MAPキナーゼのアゴニストもしくはアンタゴニスト(Ruff, pert, Meucci, 未出版のデータ)、または転写因子を用いることもできる。
【0140】
生物物理学的試験により、以前の臨床試験においてDAPTAの製剤中で用いたものと同様または同じく、DAPTAは水溶液中で線維性凝集体を形成する傾向を有することが判明した。これらの線維性凝集体は生物学的に不活性で、モノマーとは明確に異なる薬動力学的および薬力学的性質を有すると予想される。水溶液中のDAPTA凝集体およびDAPTA線維形成の詳細な試験を本明細書に記載する。
【0141】
ペプチド保存
ペプチドを明記された合成日から、乾燥粉末として、-20℃で保存した。
【0142】
DAPTA溶液の調製
DAPTAを水に溶解し、溶液を様々な温度で、様々な時間維持した。線維を調製するために、DAPTAを水中10mg/mLで調製し、4℃で終夜保存した。
【0143】
線維形成の判定
ペプチドTまたはその類縁体の線維形成を、電子顕微鏡検査を用いて判定することができる。DAPTA溶液の2μlの一定量をホルムバール/カーボンコーティングしたニッケルEM格子に適用した。格子を10μlの蒸留水で3×洗浄し、10μlの2%酢酸ウラニルで染色した。試料をLaB6フィラメント(120kv)を備えたFEI TEM Tecnai顕微鏡で検査し、Megaview II CCDカメラで撮像した。
【0144】
ペプチドTまたはその類縁体の線維形成を、色素結合を用いて判定することもできる。コンゴーレッドをPBS(5mMリン酸カリウム、150mM NaCl、pH7.4)に溶解して7ug/mLの濃度とした。溶液を4℃に冷却し、DAPTAを10mg/mLの保存水溶液として加えて、色素溶液中の最終ペプチド濃度0.48mg/mLとした。粉末溶解直後のペプチド溶液を、凝集したペプチドを含むエイジングさせた保存溶液と比較した。スペクトルを4℃で400〜700nmの間で収集した。
【0145】
ペプチドTまたはその類縁体の線維形成を、円偏光二色性(CD)分光法を用いて判定することもできる。新しく調製したペプチドまたは線維性凝集体を含むペプチドのいずれかの10mg/mL水溶液を4℃で蒸留水に加えて、50ug/mLの濃度とした。CDスペクトルをJasco model J-810分光計で、光路長0.1cmの石英キュベット、190〜250nmの間、1分間隔、および応答時間2秒を用いて収集した。
【0146】
ペプチドTまたはその類縁体の線維形成を判定するさらに別の方法は、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法を用いて実施する。DAPTAを重水に溶解して10mg/mlの濃度とし、線維形成を促進する温度および時間条件下でインキュベートした。次いで、25ulの試料を、6umスペーサーで分離したNaClウィンドウを有するあらかじめ冷却した透過セルに入れた。FTIRスペクトルをBioRad FTS-175Cフーリエ変換分光計で、透過モードで、DTGS検出器を用いて収集した。2506の干渉図形を2cm-1解像度で記録した。水蒸気を差引き、スペクトルの基準線を補正した。
【0147】
結果は以下のとおりであった。ペプチドTまたはその類縁体、例えば、DAPTAは溶液中で凝集し、いくつかの場合にはよく整列された束となる。線維形成は本明細書に記載の様々な技術(例えば、EM、FTIR、CDおよび色素結合)によって追求されてきた。予備的X線回折試験により、整列された線維性凝集体は、細い平行配列のβシートに束ねられ、線維の長軸に垂直に重ねられた、ペプチドからなることが示唆される(図1)。
【0148】
溶液中で、EM、FTIR、およびCDならびに色素結合によって、DAPTAは整列された凝集体を形成することを示すことができる。凝集は濃度、イオン強度の上昇、および温度低下によって促進される。凝集の速度論は、調製と調製の間で変動するようであるが、凝集は、EMで測定して、検査したDAPTAのすべてのバッチに関連する特性のようである。
【0149】
線維形成は、0.9%食塩水中で調製した溶液(10mg/ml)中、4℃で保存した場合に1時間以内に観察することができる。室温または周囲温度では、線維形成は48時間以内に観察することができるが、調製と調製の間で変動がある。蒸留水中で、10mg/mlのDAPTA溶液は、4℃で2時間以内、室温で1〜7日以内に、凝集体を容易に形成する。
【0150】
凝集はインビトロでの生物活性の消失に関連することが明らかにされている。典型的には、推奨プロトコルはDAPTAを4℃の0.1mM水溶液で保存することである。しかし、これらの条件下でDAPTAは、EMによって観察および確認され、本明細書において開示されるとおり、線維を形成することが判明した。これらの条件下で保存したDAPTAは、HPLCにより測定して、ペプチドの化学的完全性は変わっていないようであっても、活性が低減していることが観察され;約6週間までに、以下の実施例において開示するとおり、DAPTA製剤は、インビトロでのHIV取り込み阻害によって測定して、実質的な活性の消失を示した。したがって、DAPTAを4℃で0.1mM以下の濃度の溶液で維持するという、現在推奨されるプロトコルは、ペプチド凝集体を生成し、不活性な製剤を生じる。
【0151】
一つの態様において、ペプチド凝集体を加温することにより凝集ペプチドの水溶液を部分的に解離することができ、例えば、0.45%NaCl中5mg/mLのDAPTA溶液は、37℃で約17〜24時間、例えば、17〜18時間振盪しながら加温すると、可逆的に解離する。実験は室温または周囲温度で振盪を実施する以外は並行して行った。経時的なTFEによる処理および熱は実質的にすべてのDAPTAをそれに有利なβシート型からアルファ-ヘリックス配座へと駆動し、それゆえDAPTAをモノマーに解離する。したがって、実質的にすべての凝集の種は、βシートを形成する少なくとも2つまたは2つ以上のDAPTA分子を有する。βシート形成の低減または阻害後、DAPTA溶液を凝集することなく凍結乾燥することができる。次いで、凍結乾燥したペプチドを水などで再構成することができ、水中で長期間保存することが可能である。
【0152】
凝集はトリフルオロエタノール(TFE)存在下で低減する。TFEは、特定の型のタンパク質-タンパク質相互作用を低減する特性があるため、これを選択した。DAPTAを蒸留水、または60%から100%の間のTFEを含む溶液のいずれかに溶解した。インビトロでのHIV感染力の阻害を検定することにより凝集を評価した。60%から100%の間の濃度のTFEを含む溶液中で保存したDAPTAは、等しい条件下でTFE非存在下または水中で保存したDAPTAと比べて、より高い活性を保持した。また、TFEはDAPTAのすでに形成された凝集体を解離することも可能である。蒸留水中で形成されたDAPTAの凝集体は、EMで測定して、TFEの80%までの添加により破壊された。
【0153】
実施例4
TFAおよび/またはアルキルグリコシドを含むDAPTA組成物は高い生物活性および長い貯蔵寿命を有する
「インビトロ」での試験において、DAPTAはCD4分子の受容体部位を阻止することにより、HIVがCD4細胞に感染することを防止すると報告されている(Bridge et al. 1989;Pert and Ruff 1986;Pert et al. 1988;Ruff et al. 1987;Ruff et al. 1991)。DAPTAは、CD4受容体に結合するHIV表面分子、VIPの区画およびgp120の区画の両方を模擬し、競合する、オクタペプチドである。Brennemanら(1998)は、DAPTAおよびVIPは「インビトロ」でのgp120誘導性の神経細胞死を防止しうると報告した。Simpsonら(1996)は、DAPTAの第II相二重盲検有効性試験において、疼痛のある末梢神経障害を治療する上でDAPTA(6mg/日、12週間)とプラシーボとの間に統計学的に有意な差はないと報告した。
【0154】
薬物は神経心理学的機能に対しても効果はないようであった。試験は81名のAIDSを有する参加者を登録した。Heseltineら(1998)は、軽度から重度の認知障害を有する215名を、DAPTA(2mgを鼻内に1日3回)またはプラシーボのいずれかで6か月間と、続いて非盲検のDAPTAによりさらに6か月間治療した。少なくとも4か月間の治療を完了した全員の解析により、2群間の神経心理学的能力に差はないことが判明した。解析を群間の基準時CD4数の不均衡を考慮して調節した後、DAPTAの投与を受けた参加者はより大きい改善を示した(p=0.07)。特に、DAPTAは、基準時にCD4数が200よりも大きいか、またはより明白な認知障害を有する人に対して有益であった。基準時の欠損スコアが0.5を超える人は全般的な認知改善を示したが、プラシーボ群は認知能力の全般的悪化を経験した。Kostenは、早期AIDS痴呆を有する注射薬使用者9名で1日15mgまたは1.5mgのDAPTAの、プラシーボ対照、二重盲検、交差試験を行った。神経心理学的能力は高用量のDAPTAを投与した患者4/5名で改善されたのに比べ、低用量群では1/4名にすぎなかった(Kosten et al., 1997)。参加者はメタドンおよびAZT単剤療法も受けていた。Bridgeら(1989)は、AIDSを有する14名におけるDAPTAの第I相安全性および用量試験を報告した。薬物を0.1から3.2mg/kg/日で静脈内に12週間投与した。治療を完了した最初の6名の患者は鼻内薬物(25mg/日を8週間)を継続した。認知および神経運動機能は、中等度の神経心理学的障害を有する患者で、対照群に比べて改善した。MacFaddenおよびDoob (1991)は、DAPTA(皮下に1日10mgの初期用量で、最小有効量をもとめるために2名の患者で2.5mgまで漸減した)で治療したHIV関連の末梢神経障害を有する9名のうち、全員が下肢痛の完全または主観的に有意な消散を経験し、効果は治療開始の早くも2日後に認められた。無痛期間は治療期間中(3から70週間)持続したが、薬物停止後1週間以内に疼痛は徐々に再発し、治療再開後消散した。2名の参加者で、2.5mg/日に用量を減らすと、疼痛の再発が起こり、用量を5mgに増やすと消散した。薬物の有害作用は認められなかった。
【0155】
培養した単球をHIVのSF-163株に感染させた。細胞上清中のP24抗原のレベルを測定し、これは感染性ウイルスの存在の指標である。ウイルスのみの対照と指定された対照において、P24抗原の濃度は約154.5ピコグラム/mLである。DAPTAは比較的速やかに凝集し、有意からほぼ完全な活性消失を引き起こすことが認められた。したがって、使用前に7日間エイジングさせた試料13、14および15は、ウイルスのみの対照で見られたものと類似のP24抗原の濃度を示し、したがって本質的に活性を持たない。DAPTAの溶液を80%トリフルオロエタノール存在下で調製すると、溶液はP24抗原のレベル低下で見られるとおり、長期間活性を保持したままである。残念ながら、トリフルオロエタノールは治療用製剤で用いるのに望ましい溶媒ではない。ドデシルマルトシドまたはスクロースモノドデカノエートをDAPTAの溶液に加えると、ここでもP24抗原のレベル低下で見られるとおり、活性は長期間保持されることがわかる。この実験で用いたドデシルマルトシドまたはスクロースモノドデカノエートの濃度は約0125%から0.2%/mLであった。アルキル糖類は凝集を防止することによってDAPTAを有意に安定化し、したがってこの非常に有望な抗HIV治療薬の貯蔵寿命を延長する。以下の表を参照されたい。
【0156】
本発明の別の態様において、DAPTA製剤を80%TFEと混合し、37℃で約17〜18時間振盪した。製剤をspeedvacを用いて凍結乾燥し、凍結乾燥粉末として、アルキルグリコシドと共に、またはアルキルグリコシドなしでH2Oに溶解するまで保存した。これらの実験は、本明細書に記載の界面活性剤、例えば、ドデシルマルトシド(DDM)またはスクロースモノドデカノエート(SDD)などのアルキルグリコシド存在下で、界面活性剤非存在下での並行試験と比べて、ペプチド凝集の低減に関して有意な改善が見られることを示している。
【0157】
本発明の一つの局面において、TFEをほぼ最後の段階としてDAPTAに導入し、溶媒を蒸発させることができる。
【0158】
したがって、本明細書に記載の発明は、ペプチドTの合成製剤、例えば、DAPTAは、原料および合成日とは無関係に、分光法、例えば、X線回折、およびEMによる直接の視覚化によって確認されるとおり、凝集体を形成することを示す。これらのペプチド凝集体はペプチド濃度の増大、温度の低下、イオン強度の増大によって促進され、時間依存性である(時間)。インビトロ試験は、ペプチド凝集はペプチド、ポリペプチド、またはその変異体、例えば、DAPTAの生物活性を低減することを示している。さらに、TFEまたはHFIPなどの共溶媒の使用は凝集体の形成を低減し、すでに形成された凝集体を破壊する。最後に、ペプチド凝集体の整列された構造は、特定の相互作用が原因であることを示唆している。したがって、TFEは一般には薬学的製剤およびまたは治療用組成物に含まれないが、その特性は本明細書に記載の発明の役に立つ。さらに、線維形成を阻害するか、または凝集形成を防止もしくは低減するために、他の賦形剤または物質もしくは共物質(co-agent)をペプチド治療用製剤に含むことができる。
【0159】
(表5)DAPTAはアルキルグリコシド存在下で安定性および薬物貯蔵寿命を延長する

【0160】
実施例5
光散乱測定を用いてのアルキル糖類によるタンパク質安定化の定量的測定
本試験は、37℃で様々なpHの溶液中の様々なタンパク質の凝集に対する、本明細書に記載のアルキル糖類界面活性剤の効果を評価し、実証するために実施した。アルキル糖類を含む、組換えヒトインスリン(Humulin-R、Eli Lillyにより製造)およびヒト成長ホルモンすなわちhGH(Humatrope、Eli Lillyにより製造)溶液を、アルキル糖類を含まない同一の対照タンパク質溶液と共に調製した。溶液を回転プラットフォーム振盪機(LabLine温度調節振盪機)上、150rpmで、最大3週間、37℃でインキュベートした。タンパク質凝集を、励起波長および発光波長を両方500nmに設定したShimadzu RF-500記録蛍光分光光度計を用いての光散乱の測定により評価した。測定は第0日および3週間の間の様々な間隔で行った。
【0161】
インスリン調製
4.0mg/mlタンパク質のHumulin-R U-100(Lilly HI-210、100ユニット/ml)組換えヒトインスリン保存溶液の希釈により、0.5mg/mlのHumulin-R(インスリン)および1.0mg/mlのリゾチームの溶液25mlを、pH5.5、6.5および7.4のクエン酸緩衝液中、ドデシルマルトシドおよびスクロースドデカノエートなしで、および最終界面活性剤濃度0.250%、0.125%および0.062%のドデシルマルトシドおよびスクロースドデカノエートと共に調製した。最終緩衝液組成は以下のとおりであった:5mMクエン酸+0.1%EDTA、NaOHでpH5.5、6.5および7.4に滴定。各溶液を50mlガラスバイアル中で、パラフィルムで蓋をして保存した。第0日の光散乱測定を、pH6.5および7.4のインスリン試料で行い、次いで試料をパラフィルムで再度密封し、150rpmで振盪しながら37℃でインキュベートした(図2および3)。
【0162】
ヒト成長ホルモン(hGH)調製
Humatropeヒト成長ホルモン(hGH)5mg凍結乾燥。Humatropeのバイアルを9.0mlの緩衝液に溶解し、次いで2つの10mlガラスバイアルに分け、4℃で終夜保存した。溶解性は良好であった。緩衝液を対照バイアルに、最終量5mlまで加えた。緩衝液および保存溶液からのドデシルマルトシドを第二のバイアルに最終濃度0.125%で最終量5mlまで加えた。各バイアルの最終緩衝液組成は以下のとおりであった:5mMクエン酸+0.1%EDTA、NaOHでpH6.5に滴定。対応する対照溶液はドデシルマルトシドを含まなかった。第0日の光散乱測定を、2つのhGH試料で行い、次いで試料をパラフィルムで再度密封し、150rpmで振盪しながら37℃でインキュベートした(図4)。
【0163】
光散乱測定
光散乱を各タンパク質試料について、3週間の試験中の選択した時点で、蛍光分光光度計(ShimadzuモデルRF-1501)で測定した。励起波長および発光波長はいずれも500nmに設定し、試料を光路長1cmの使い捨てキュベットで読み取った。各読み取りのために、装置を1mlの適当な緩衝液でゼロ合わせし、次いで一定量のタンパク質試料を加え、複数回反転して混合し、キュベットの気泡をチェックした後、3回の安定な値を記録した。蛍光分光光度計を高感度に設定し、測定可能最高値は1000ユニットであった。第0日のインスリン試料を50ulの一定量で測定し、その後の時点では10μlの一定量で測定した。2つのhGH試料の光散乱測定は、第0日および各時点で5μlおよび10μlの一定量を用いた。光散乱値を測定した後、各タンパク質試料をパラフィルムで再度密封し、150rpmで振盪中の37℃に戻した。結果を以下の表ならびに図2、3および4に示す。20日間にわたってpH5.5のインスリンの結果はpH6.5と本質的に同じであった。それぞれの場合に、「A」はドデシルマルトシドを指し;「B」はスクロースドデカノエートを指す。
【0164】
(表6)インスリン光散乱測定
(3回の測定値の平均)

A=ドデシルマルトシド;B=スクロースドデカノエート
【0165】
(表7)hGH光散乱測定
(5μLおよび10μLの試料サイズでの3回の測定値の平均)

A=ドデシルマルトシド
【0166】
実施例6
D-ALAペプチドTアミド(DAPTA)の様々な保存粉末試料の線維形成傾向
ペプチドを明記された合成日から、乾燥粉末として、-20℃で保存し、次いで多くの臨床試験で用いられている10mg/mlの濃度で水に溶解し、溶液を様々な温度および期間で維持した。試料を電子顕微鏡で、ホルムバール/カーボンコーティングしたニッケルEM格子に適用した、0.9%食塩水中のDapta溶液の2μlの一定量を用いて検査した。格子を10μlの蒸留水で3×洗浄し、10μlの2%酢酸ウラニルで染色した。試料をLaB6フィラメント(120kv)を備えたFEI TEM Tecnai顕微鏡で検査し、Megaview II CCDカメラで撮像した。この方法により、線維は最も容易かつ確実に視覚化された。検査した100視野のうち、+++++は線維が最も容易に検出されることを意味し、+は線維がめったに検出されないことを意味する。
【0167】
結果:
Phoenix Pharmaceuticals
2003年4月
コード:057-03
ロット#:20569 +++++
Peptech(ヨーロッパ)-デンマーク
1995年2月
a)ロット#171101、製品#3022 +
b)ロット#17543 ++
Calbiotech
1995年3月
a)ロット#101601 ++
b)ロット#101801 +
Peptide Technologies Corp.
3-20 +++
Penninsula Labs
a)GMP#539、ロット#036299 +++
b)コード#9301、ロット#036299 +++
c)3/9/95、ロット#022376 ++++
d)コード#7444、ロット#801688 +++
【0168】
実施例7
溶液で保存後のDAPTAの時間依存的な抗ウイルス活性消失
臨床製剤と同等のDAPTAの水溶液(水中0.1mM)を調製し、周囲温度で様々な時間保存した後に、それらの生物学的効力を試験した。DAPTAは合成品であった(Peninsula, Belmont, CA、純度95%)。ペプチドを水に5mg/mlで溶解し、周囲温度、約23〜27℃で保存し、試料の生物活性をHIV感染検定で試験した。
【0169】
HIV感染の阻害を、GHOST CD4 CCR5細胞をHIV BaL、R5指向性分離株に感染させる感染検定を用いて試験する(Ruff, MR et al., 2001)。感染の48時間後に、感染をhGFP遺伝子(緑色蛍光タンパク質)のウイルス誘導により検出する。プレートリーダーでトレイを測定して、蛍光強度を判定する。すべての感染は、ウェル(96穴プレート)ごとに約1000感染単位のHIV-1を含む新鮮培地を加えることにより実施する。
【0170】
次いで、試料を抗ウイルス試験前に周囲温度(約25℃)で14日間保存することによりエイジングさせた。結果を図5に示す。図5において、6時間の短時間試料だけを4℃で保存するが、他の試料は37℃で保存する。図5は、組成物を長く保存するほど、活性が低くなる、すなわちペプチドTが有する感染に対する保護効果が低くなることを示している。
【0171】
実施例8
DAPTA凝集に対する濃度ならびに処理の時間および温度の影響
DAPTA凝集に対するTFE濃度の影響
DAPTAはPeninsula Labs, CAが合成した(純度95%)。ペプチドを水中の表示の濃度のTFEに溶解し、次いで37℃で24時間振盪または撹拌した。以下の表を参照されたい。続いてペプチドを乾燥し、TFE/水混合物を減圧下で除去した。乾燥したDAPTAを水性溶液、例えば、水中で再構成または懸濁し、ペプチドの抗ウイルス活性を検定するまで、約3日間保存した。試験は0.1nM DAPTAを用いて三つ組みで行い、結果を以下の表VIIIに平均で示す。TFEは除去するが、ヒトの消費にとって許容される範囲内のTFEの残留する微量が残ることもある。
【0172】
HIV感染の阻害を、以前にRuff, MR et al., 2001によって記載されたGHOST CD4を用いての感染検定を用いて試験した。CCR5細胞をHIV BaL、R5指向性分離株に感染させる。感染の約48時間後に、感染をhGFP遺伝子(緑色蛍光タンパク質)のウイルス誘導により検出する。プレートリーダーでトレイを測定して、蛍光強度を判定した。すべての感染は、ウェル(96穴プレート)ごとに約1000感染単位のHIV-1を含む新鮮培地を加えることにより実施した。
【0173】
(表8)DAPTA凝集に対するTFE濃度の影響

【0174】
DAPTA凝集に対するTFE中での振盪時間の影響
DAPTAを、前述のとおり、約80%TFE/水の溶液に溶解し、摂氏37度で様々な期間振盪した。以下の表IXを参照されたい。ここでも、前述のとおり、ペプチドを蒸発または乾燥し、水性溶液、例えば、水中に約3日間再懸濁し、抗HIV活性を試験した。
【0175】
(表9)DAPTA凝集に対するTFE中での振盪時間の影響

【0176】
凝集に対するTFEに溶解したDAPTAの温度の影響
DAPTAを、前述のとおり、80%TFEに溶解し、以下の表Xに表示の温度で約24時間振盪した。ここでも、前述のとおり、ペプチドを蒸発または乾燥し、水性溶液、例えば、水中に約3日間再懸濁し、抗HIV活性を試験した。
【0177】
(表10)凝集に対するTFEに溶解したDAPTAの温度の影響

【0178】
実施例9
様々な製剤を用いてのDAPTAの安定化
ヒトの水ひにより精製した単球を、7日間培養することによりマクロファージに分化させた(Ruff, MR, et al 2001)。HIV-1(ADA)株を表示したペプチド製剤と共に、またはペプチド製剤なしで加え、感染を37℃で2時間進行させた。ウイルス/ペプチド混合物を洗浄により除去し、細胞培養物を10日間維持した。上清から試料を取り、ウイルス感染の尺度としてHIV逆転写酵素のレベルを定量した。培養を三つ組みで行い、平均および標準偏差を示す。
【0179】
DAPTAはD-ala1-ペプチドT-アミドであり、GMP品質のDAPTAをBachemから入手した。ペプチド製剤の安定性を、ペプチド粉末を80%トリフルオロエタノール(TFE)/20%水中に再構成(0.5mg/ml)し、これを次いで終夜振盪し、speed-vacで乾燥することにより判定し、「TFE Tx」、またはペプチドをTFE処理しなかった。次いで、ペプチドを、TFE処理し、または処理せずに、水または0.1%EDTAを含む表示のアルキルグリコシド(1mg/ml)組成物中で再構成(0.5mg/ml)した。次いで、試料を、抗ウイルス試験前に周囲温度(約25℃)で14日間保存することによりエイジングさせた。図6において、A3はドデシルマルトシドを示し、B3はスクロースモノドデカノエートを示す。
【0180】
実施例10
光散乱測定を用いてのアルキル糖類によるタンパク質安定化の定量的測定
本試験は、37℃の溶液中での様々なタンパク質の凝集に対する、本明細書に記載の異なるアノマー濃度を有する異なるアルキル糖類界面活性剤の効果を評価し、実証するために実施した。αおよびβアノマーの異なる濃度を有するアルキル糖類を含む、組換えヒトインスリン(Humulin-R、Eli Lillyにより製造)溶液を、アルキル糖類を含まない同一の対照タンパク質溶液と共に調製した。溶液を回転プラットフォーム振盪機(LabLine温度調節振盪機)上、150rpmで、最大3か月間、37℃でインキュベートした。タンパク質凝集を、励起波長および発光波長を両方500nmに設定したShimadzu RF-500記録蛍光分光光度計を用いての光散乱の測定により評価した。測定は第0日および88日間の間の様々な間隔で行った。
【0181】
インスリン調製
4.0mg/mlタンパク質のHumulin-R U-100(Lilly HI-210、100ユニット/ml)組換えヒトインスリン保存溶液の希釈により、0.5mg/mlのHumulin-R(インスリン)および1.0mg/mlのリゾチームの溶液25mlを、pH7.6のクエン酸緩衝液中、ドデシルマルトシドなしで、および最終界面活性剤濃度0.10%および0.20%の、αおよびβアノマーの異なる濃度を有するドデシルマルトシドと共に調製した。以下の合計5つの溶液を調製した:1)インスリン、およびドデシルマルトシドなしの緩衝液を含む対照溶液;2)10%未満のβアノマーおよび90%よりも多いαアノマーを含む0.10%最終ドデシルマルトシド濃度を有する溶液;3)10%未満のβアノマーおよび90%よりも多いαアノマーを含む0.20%最終ドデシルマルトシド濃度を有する溶液;4)99%よりも多いβアノマーおよび1.0%未満のαアノマーを含む0.10%最終ドデシルマルトシド濃度を有する溶液;ならびに5)99%よりも多いβアノマーおよび1.0%未満のαアノマーを含む0.20%最終ドデシルマルトシド濃度を有する溶液。最終緩衝液組成は以下のとおりであった:5mMクエン酸+0.1%EDTA、NaOHでpH7.6に滴定。各溶液を50mlガラスバイアル中で、パラフィルムで蓋をして保存した。第0日の光散乱測定を、pH7.6のインスリン試料で行い、次いで試料をパラフィルムで再度密封し、150rpmで振盪しながら37℃でインキュベートした。
【0182】
光散乱測定
光散乱を各タンパク質試料について、3週間の試験中の選択した時点で、蛍光分光光度計(ShimadzuモデルRF-1501)で測定した。励起波長および発光波長はいずれも500nmに設定し、試料を光路長1cmの使い捨てキュベットで読み取った。各読み取りのために、装置を1mlの適当な緩衝液でゼロ合わせし、次いで一定量のタンパク質試料を加え、複数回反転して混合し、キュベットの気泡をチェックした後、3回の安定な値を記録した。蛍光分光光度計を高感度に設定し、測定可能最高値は1000ユニットであった。第0日のインスリン試料を50ulの一定量で測定し、その後の時点では10μlの一定量で測定した。光散乱値を測定した後、各タンパク質試料をパラフィルムで再度密封し、150rpmで振盪中の37℃に戻した。結果を以下の表および図7に示す。
【0183】
(表11)インスリン光散乱測定
(3回の測定値の平均)

【0184】
実施例11
アルキル糖類による副甲状腺ホルモンおよび類縁体の安定化
本試験は、温度を40℃に上げて凝集または変性過程の速度を高め、したがって安定化効果のより迅速なスクリーニングを可能にする、加速試験プロトコルを用いての、溶液中の様々なタンパク質の凝集に対する、本明細書に記載のアルキル糖類界面活性剤の効果を示した。本試験は、凝集に対し各タンパク質を安定化する際のドデシルマルトシドの有効性を評価するために、サーモスタットで40℃に調節したオービタルシェーカー上、150RPMで持続的に撹拌した後の、Ostabolin C(商標)、およびPTH 1-34の凝集を検査した。
【0185】
Ostabolin C(商標)(すなわち、環状PTH 1-31)(Polypeptide Laboratories Inc.)、ロット番号PPL-CPTH310501AおよびPTH 1-34(Polypeptide Laboratories Inc.)、ロット番号PPL-PTH340601試験品の水溶液を以下のとおりに調製した。pH3.5、10mMグリシン、0.8%NaCl、0.1%EDTA;およびpH5.0 10mM酢酸塩、0.1%EDTA中で調製した、2.25mg/mLの濃度の試験品タンパク質の4mLの一定量を調製し、ガラス血清バイアル内に別々に対になった2mLの一定量に均等分配する。各対のタンパク質溶液の1つのバイアルに、水中3.875%ドデシルマルトシド100μLを加える(最終濃度0.18%ドデシルマルトシド)。第二のバイアルに、対照として注射用滅菌水100μLを加える。光散乱の評価をするために各試験品から50μLの一定量を抜き出した後、試験品をサーモスタットで40℃に調節した150RPMのLab-Lineオービタルシェーカーに置く。
【0186】
溶液を回転プラットフォーム振盪機(LabLine温度調節振盪機)上、150rpmで、最大3週間、40℃でインキュベートした。指定の間隔で光散乱測定を以下のとおりに行った。各試験品の50μLの一定量を抜き出し、使い捨ての半微量蛍光キュベット(Plastibrand(登録商標) Model No. 7591)中の注射用滅菌水1mLに加える。キュベットを10回反転し、気泡混入の有無について検査する。気泡があれば、キュベットを軽くたたいて気泡を除去する。光散乱を、励起および発光モノクロメーターを両方500nmに設定したShimadzu Spectrofluorophotometer Model RF-1502を用いて評価する。各読み取りの前に、蛍光計をまず、対応する滅菌水1mlを含むキュベットでゼロあわせし、使い捨てキュベットから生じる固有の蛍光背景の任意の変動による測定値の変動を解消した。
【0187】
結果を図8、9、10および11に示す。
【0188】
実施例12
37℃でのアルキル糖類によるPTH 1-34の安定化
次いで、PTH 1-34の試験を、撹拌中の温度を37℃に下げた他は前述のとおりに繰り返した。結果を図12に示す。PTH 1-34は、40℃で行った実施例11の加速安定性試験で得た結果に比べて、37℃では有意に安定性が高い。
【0189】
実施例13
アルキル糖類によるインターフェロンおよびアミリン由来ペプチドの安定化
本試験は、凝集に対し各タンパク質を安定化する際のドデシルマルトシドの有効性を評価するために、サーモスタットで37℃に調節したオービタルシェーカー上、150RPMで持続的に撹拌した後の、インターフェロン、アミリン関連ペプチド(Pramlintide(登録商標))およびカルシトニン(Fortical(登録商標))の凝集に対する、本明細書に記載のアルキル糖類界面活性剤の効果を示した。
【0190】
ベータインターフェロン1a(Rebif(登録商標))、ロット番号Y09A2635、ベータインターフェロン1b(Betaseron(登録商標))、ロット番号YA0549A、アミリン関連ペプチド(Pramlintide(登録商標))、ロット番号905182、およびFortical(登録商標)サケカルシトニン鼻噴霧剤、ロット番号249793試験品を以下のとおりに調製した。
【0191】
Rebif(登録商標)ベータインターフェロン1a、Betaseron(登録商標)ベータインターフェロン1b、サケカルシトニン、およびPramlintide(登録商標)の1mLの一定量をガラス血清バイアルに加える。各タンパク質溶液の1つのバイアルに水中4.2%ドデシルマルトシドA3 50μLを加える(最終濃度0.2%ドデシルマルトシド)。第二のバイアルに、対照として注射用滅菌水50μLを加える。光散乱の評価をするために各試験品から25μLの一定量を抜き出した後、試験品をサーモスタットで37℃に調節した150RPMのLab-Lineオービタルシェーカーに置く。
【0192】
指定の間隔で光散乱測定を以下のとおりに行った。各試験品の25μLの一定量を抜き出し、使い捨ての半微量蛍光キュベット(Plastibrand(登録商標) Model No. 7591)中の注射用滅菌水1mLに加える。キュベットを10回反転し、気泡混入の有無について検査する。気泡があれば、キュベットを軽くたたいて気泡を除去する。光散乱を、励起および発光モノクロメーターを両方500nmに設定したShimadzu Spectrofluorophotometer Model RF-1502を用いて評価する。各読み取りの前に、蛍光計をまず、対応する滅菌水1mlを含むキュベットでゼロあわせし、使い捨てキュベットから生じる固有の蛍光背景の任意の変動による測定値の変動を解消した。
【0193】
結果を図13および14に示す。インターフェロンはいずれも、光散乱の増大によって示されるとおり凝集を示し、Betaseron(登録商標)は光散乱のはるかに大きい増大を示した。38日間の試験期間を通じて、光散乱の増大は多かれ少なかれ線形であった。Betaseron(登録商標)は、38日間の試験期間を通じて、0.2%ドデシルマルトシド/ProTek(商標) A3による最大の安定化効果を示す。Rebif(登録商標)は、それよりは小さいが、0.2%ドデシルマルトシド/ProTek(商標) A3による大きい安定化への一貫した傾向を示した。Pramlintide(登録商標)は、0.2%ドデシルマルトシド/ProTek(商標) A3存在下で有意な安定化(約5倍)を示した。カルシトニンは、500nmでの光散乱により測定して、賦形剤存在下、または非存在下のいずれでも安定であるようであった。インターフェロンはいずれも、ドデシルマルトシド(登録商標) A3存在下で光散乱の2分の1の低減を示した。インスリンおよび成長ホルモンによる初期の試験は、0.0625%wt/volという低い濃度のドデシルマルトシドにより、凝集に対する同じ等価で最大の安定化を示したため、低濃度でもベータインターフェロンに対して等しく有効であることがわかる。
【0194】
引用文献





【0195】
本プロセスを前述の実施例においてその特定の態様の具体的詳細に関して記載してきたが、改変および変更は本発明の精神および範囲内に含まれることが理解されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
副甲状腺ホルモン(PTH)またはその類縁体の安定性を高め、凝集を低減し、または免疫原性を低減するための薬学的組成物であって、
PTHまたはその類縁体;および
少なくとも1つのアルキルグリコシドを含む安定化剤
を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
PTH類縁体がPTH(1-31)、PTH(1-34)またはPTH(3-34)である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
PTH類縁体が環状である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
緩衝化剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
アルキルグリコシドがアルキル鎖を有し、かつアルキル鎖が約10から16個の間の炭素原子を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
アルキルグリコシドが、ドデシルマルトシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルマルトシド、スクロースモノドデカノエート、スクロースモノトリデカノエート、およびスクロースモノテトラデカノエートからなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
アルキルグリコシドが約1mM未満の臨界ミセル濃度(CMC)を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
アルキルグリコシドが約0.5mM未満のCMCを有する、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
凝集阻害剤、電荷改変剤、pH調節剤、分解酵素阻害剤、粘液溶解または粘液清浄剤、キトサン、および線毛抑制(ciliostatic)剤からなる群より選択される粘膜送達増強剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
粘膜送達増強剤がキトサンである、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
粘膜送達増強剤が線毛抑制剤である、請求項9記載の組成物。
【請求項12】
塩化ベンザルコニウムまたはクロロエタノールをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
界面活性剤、胆汁酸塩、リン脂質添加剤、混合ミセル、リポソーム、または担体、アルコール、エナミン、酸化窒素供与化合物、長鎖両親媒性分子、小さな疎水性透過増強物質、ナトリウムまたはサリチル酸誘導体、アセト酢酸のグリセロールエステル、シクロデキストリンまたはベータシクロデキストリン誘導体、中鎖脂肪酸、キレート化剤、アミノ酸またはその塩、N-アセチルアミノ酸またはその塩、選択された膜成分の分解酵素およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される膜透過増強剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
上皮接合生理の調節剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
血管拡張剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
選択的輸送増強剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
凍結乾燥型である、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
凍結乾燥組成物が再構成後に50%よりも高い生物活性を保持している、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
摂氏約25から37度の温度で、150RPMで撹拌した後、少なくとも1週間、光散乱の増大がないことにより判定して、変性に対して安定である、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
摂氏約25から37度の温度で、150RPMで撹拌した後、少なくとも2週間、光散乱の増大がないことにより判定して、変性に対して安定である、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
摂氏約4度で保存した場合に、少なくとも1年間、光散乱の増大がないことにより判定して、変性に対して安定である、請求項1記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物の安定性が、インビボまたはインビトロ検定においてポリペプチドの生物活性を判定することにより判定される、請求項1記載の組成物。
【請求項23】
凍結乾燥組成物がアルブミン、コラーゲン、アルギン酸塩、およびマンニトールからなる群より選択される充填剤をさらに含む、請求項18記載の組成物。
【請求項24】
凍結乾燥組成物を哺乳動物対象に投与する前に再構成する、請求項17記載の組成物。
【請求項25】
非経口、鼻内、肺、または口腔送達用に製剤化された、請求項1記載の組成物。
【請求項26】
副甲状腺ホルモン(PTH)またはその類縁体、安定化剤および緩衝化剤を混合して組成物を形成する段階であって、ここで安定化剤が少なくとも1つのアルキルグリコシド界面活性剤であり、それにより副甲状腺ホルモン(PTH)またはその類縁体の安定性を高める、段階
を含む、副甲状腺ホルモン(PTH)またはその類縁体の安定性を高めるための方法。
【請求項27】
PTH類縁体がPTH(1-31)、PTH(1-34)またはPTH(3-34)である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
PTH類縁体が環状である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
アルキルグリコシドが、ドデシルマルトシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルマルトシド、スクロースモノドデカノエート、スクロースモノトリデカノエートおよびスクロースモノテトラデカノエートからなる群より選択される、請求項26記載の方法。
【請求項30】
アルキルグリコシドが約1mM未満の臨界ミセル濃度(CMC)を有する、請求項26記載の方法。
【請求項31】
アルキルグリコシドが約0.5mM未満のCMCを有する、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が、凝集阻害剤、電荷改変剤、pH調節剤、分解酵素阻害剤、粘液溶解または粘液清浄剤、キトサン、および線毛抑制剤からなる群より選択される粘膜送達増強剤をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項33】
粘膜送達増強剤がキトサンである、請求項32記載の方法。
【請求項34】
粘膜送達増強剤が線毛抑制剤である、請求項32記載の方法。
【請求項35】
前記組成物が塩化ベンザルコニウムまたはクロロエタノールをさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項36】
前記組成物が、界面活性剤、胆汁酸塩、リン脂質添加剤、混合ミセル、リポソーム、または担体、アルコール、エナミン、酸化窒素供与化合物、長鎖両親媒性分子、小さな疎水性透過増強物質、ナトリウムまたはサリチル酸誘導体、アセト酢酸のグリセロールエステル、シクロデキストリンまたはベータシクロデキストリン誘導体、中鎖脂肪酸、キレート化剤、アミノ酸またはその塩、N-アセチルアミノ酸またはその塩、選択された膜成分の分解酵素およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される膜透過増強剤をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項37】
前記組成物が上皮接合生理の調節剤をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項38】
前記組成物が血管拡張剤をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項39】
前記組成物が選択的輸送増強剤をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項40】
前記組成物が凍結乾燥型である、請求項26記載の方法。
【請求項41】
前記組成物が再構成後に50%よりも高い生物活性を保持している、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記組成物が摂氏約25から37度の温度で保存した場合に、少なくとも1週間、光散乱の増大がないことにより判定して、変性に対して安定である、請求項26記載の方法。
【請求項43】
前記組成物が摂氏約25から37度の温度で保存した場合に、少なくとも2週間、光散乱の増大がないことにより判定して、変性に対して安定である、請求項42記載の方法。
【請求項44】
摂氏約4度で保存した場合に、少なくとも1年間、光散乱の増大がないことにより判定して、変性に対して安定である、請求項26記載の方法。
【請求項45】
前記組成物の安定性をインビボまたはインビトロ検定においてポリペプチドの生物活性を判定することにより判定する、請求項26記載の方法。
【請求項46】
前記組成物がアルブミン、コラーゲン、アルギン酸塩、およびマンニトールからなる群より選択される充填剤をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項47】
前記組成物を哺乳動物対象に投与する前に再構成する、請求項40記載の方法。
【請求項48】
前記組成物の安定性を光散乱により判定する、請求項26記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−531431(P2012−531431A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517745(P2012−517745)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/039870
【国際公開番号】WO2010/151703
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511151008)イージス セラピューティクス リミテッド ライアビリティ カンパニー (2)
【Fターム(参考)】