説明

安定化合成免疫原デリバリーシステム

【課題】アジュバントとして、およびペプチド免疫原安定化剤として作用するように特異的に適合させた免疫刺激複合体の提供。
【解決手段】正の正味電荷を有し、ターゲットB細胞又はCTLエピトープ、及びTヘルパー細胞エピトープを含有するカチオン性ペプチド免疫原;及びアニオン性CpGオリゴヌクレオチドを、カチオン性ペプチド免疫原:CpGオリゴヌクレオチドの電荷比が8:1〜1:2で含有する安定化免疫刺激複合体であって、前記複合体は、沈殿物である安定化免疫刺激複合体により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定化免疫刺激複合体(stabilized immunostimulatory complex)および安定化免疫刺激複合体の調製方法に関する。特に、本発明は、インビボでの向上した免疫応答を有する、ワクチンデリバリーシステムに有用な安定化合成免疫刺激複合体を提供する。これらの免疫刺激複合体はまた、該免疫刺激複合体の放出を調節するための貯蔵庫(depot)として機能するように設計されたワクチン配合物を調製するのにも有用である。また、誘導される免疫応答の質を相乗的に改善するために特定の細胞型をターゲットとするように設計された配合物に免疫刺激複合体を組み込むこともできる。
【背景技術】
【0002】
ワクチンは、感染性疾患の防御のための予防用組成物として、さらに最近では、ガンおよび非感染性疾患の処置のための治療用組成物として、長年、成功裡に用いられている。
【0003】
伝統的にはワクチンは弱毒もしくは死滅ウイルスまたは細菌病原体に由来し、ポリオウイルスおよび百日咳菌(Bordetella pertussis)のような疾患に対して非常に有効であることが判明している。これらの成功にもかかわらず、このようなワクチンの安全性に対する懸念が高まっている。このため、これらの病原体または完全に合成されたペプチド免疫原の成分に由来するサブユニットワクチンの開発が進められている。
【0004】
サブユニットワクチンの例として、破傷風トキソイドおよびB型肝炎表面抗原などがある。これらの抗原は、しばしば免疫原性が乏しく、得られる免疫応答を向上させるためにアジュバントが必要とされる。十分特徴づけされた生物学的に活性な化合物、例えば合成ペプチドは、生物学的応答の誘導、安全性および制御目的で好ましい基質である。しかしながら、これらの免疫原は最適ではなく、動物モデルにおいて部分的かまたはごくわずかな応答しか誘導しない。合成ペプチドには、インビボで有効な免疫応答を誘導するために安定性およびアジュバント作用の双方が必要とされる。
【0005】
種々の方法を用いて、化学的および物理学的経路などの種々の過程により媒介されるインビトロおよびインビボでの分解に対して合成ペプチド免疫原を保護している。(上付き数字は本発明に関連する当分野の状況をさらに十分に記載する出版物を意味する。これらの参照文献の開示は参照により本明細書に組み込まれる。各文献の引用はこのセクションの末尾に見出される)。
【0006】
種々の方法を用いて、ペプチド溶解性を改善するか、またはインビボでの分解に対してペプチドを保護している。これには一般的には塩濃度および/または溶液のpHを修飾するような単純な方法が含まれる。ペプチドをポリエチレングリコール(PEG)またはポリエチレンオキサイド(PEO)のような水溶性化合物と結合することによって化学修飾して、双方共にその水溶性およびインビボ循環時間を改善させている。PEGまたはPEO由来のアジュバントは、免疫系を下方制御し得ることが実証されている。よって、PEGまたはPEO修飾ペプチドは、アジュバントとして効果的に機能しないと予測される。ペプチドに電荷を加えるために複数のリジンを付加することによりその水溶性を改善することができるが、一般に、結果的に免疫原性が改善されることはない。
【0007】
これらの種々の試験計画の目的はインビボで循環時間を改善するか、又はペプチドをワクチン配合物に用いる場合の物理学的条件(例えば塩、pH、温度、バッファ型)及び/又は化学的不適合性に伴う免疫原性の問題を最小限にするか又は排除することである。
【0008】
多価カチオン性ポリマーを含むポリエーテルブロック共重合体がKabanovら、米国特許第5,656,611号に開示されている。これらは、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを安定化するためのものである。ポリエーテルブロック共重合体−ポリヌクレオチド複合体を用いて細胞膜を通るポリヌクレオチドの輸送を促し、生物学的活性を改善する。しかしながら、これらのポリヌクレオチド−ポリエーテルブロック共重合体は、免疫原性ではなく、ワクチンとしては適さない。
【0009】
Allcockら、米国特許第5,562,909号は、ホスファゼン(phosphazen)多価電解質に由来する免疫アジュバントについて記載している。免疫アジュバントを溶液中で抗原と直接混合し、ポリマーおよび抗原の溶液をスプレードライすることにより、又はCohen、米国特許第5,149,543号に記載される方法により、微粒子として調製することができる。しかしながら、アジュバント作用の増強がこれらの系で示されたが、面倒な機械的方法をもちいなければならず、微粒子組成物を調製するのが困難であり、市販用製品のために規模を拡大することは困難であろう。さらに、このように形成されたポリマー−抗原複合体の安定性は、塩濃度およびpH条件に大きく依存する。
【0010】
異なる研究法が、Mossら、WO91/04052号に記載されている。ここで、固体ワクチン組成物は、抗原(ペプチドでよい)、サポニンおよび多価カチオン性アジュバント、例えばDEAEデキストランから調製される。この組合せから配合されたワクチンは、寿命が改善されており、移植片として使用するのに適するような組合せになっている。しかしながら、抗原は、最初にキャリャー分子に化学的に抱合され、徹底的に精製されなければならない。その後、精製された抗原−キャリヤをサポニンおよび多価カチオン性アジュバントと組合せて固体組成物がもたらされた。この方法により製品の物理特性、例えば粒径は調節されない。
【0011】
ヒトおよび獣医学用ワクチンと共に使用することになっている多くのアジュバントおよび/または貯蔵庫(depot)をベースとした非経口、粘膜または経皮デリバリーシステムが、免疫応答を増強するように開発されている。これには、無機塩類、油中水滴型(water-in-oil)(w/o)エマルション、リポソーム、ポリマー微粒子、ナノ粒子およびゲル/ヒドロゲルの使用が含まれている。種々の(w/o)エマルション組成物を用いる臨床試験が数多く行われている。
【0012】
臨床研究を非常に多く行っているにもかかわらず、皮下または筋内に投与される典型的な非経口用配合物は、アルミニウム塩、例えばリン酸アルミニウムまたは水酸化アルミニウム由来のアジュバントと共に調製される。ミョウバン塩は、弱毒病原体、死滅病原体および生物学的物質由来のサブユニット抗原をベースとする多くのワクチンに適し、且つ有効である。しかしながら、アルミニウムをベースとしたアジュバントは、必要とされるペプチドが多量であり、より強力なアジュバント作用が必要であるために、しばしば合成ペプチドをベースとした免疫原に関して全く無効である。ワクチン組成物における多量の免疫原とアジュバント作用の弱いミョウバンとの組合せは、免疫原耐性および反応原性(reactogenicity)、即ち不所望の副作用、例えば注射部位の腫脹および発赤に至る可能性があるので、理想的ではない。
【0013】
界面活性剤を含む鉱油中加熱死滅化ヒト型結核菌(M. tuberculosis)ミコバクテリアの懸濁液であるフロイントの完全アジュバント(FCA)は、最も強力なアジュバントの1つとして認識されている。しかしながら、注射部位の軽微な刺激から損傷および無菌性膿瘍にわたる重篤な副作用が報告されている。これらの副作用のためにFCAは、ヒトおよび獣医学用適用が禁じられている。
【0014】
よって、ミョウバン又はFCAに伴う毒性及び/又は反応原性(reactogenic)の問題がなく、安全であり、免疫原性を効果的に増強することができ、且つペプチド免疫原の有効性を長期化させてミョウバンに伴う耐性の問題を回避できるアジュバントを開発する明確な必要性がある。また、単一の組成物でペプチド免疫原の安定化することができ且つ免疫応答のアジュバント作用化(adjuvant)できる組成物及び方法を開発することも非常に望まれている。
【0015】
Jonesら10は、Aotusサルでペプチドをベースとしたマラリアワクチンと同時投与して免疫応答を増強させることができる2つの特異的CpGオリゴヌクレオチドを開示している。Jonesの研究では、用いたペプチドのイオン化点(IP)は5.96である。これは、ペプチドが理論的ゼロ電荷を有するpHに相当する11。そのアミノ酸組成のために、用いたペプチドは、選択した水性溶媒中、生理学的pHで有効に非荷電性である。よって、2つのCpGオリゴマー間で複合体形成は起こり得ない。得られた混合物は、w/oエマルションに配合された場合、一過性にアジュバント作用化することが予測される。有用なレベルの免疫原性を達成するために複数回の注射及び多量のアジュバントが必要とされる。さらに、このような組成物の長期安定性は疑わしい。実際、Jonesらは、1度の注射に際し500μgという多量のCpGオリゴヌクレオチドを用いる必要があると開示した。なお、w/oエマルションを調製するために用いた方法は、市販適用のために容易に規模を拡大することができない。異なるCpGオリゴマーが異なる哺乳動物種に有用であることをJonesらが教示したことに留意すべきである。例えば、CpGオリゴマーであるCpG ODN 1826は、マウスおよび下等霊長類に関しては分裂促進性であるが、チンパンジーまたはヒトに関しては分裂促進性でなく、その効果は予見できない。
【0016】
Kriegら、米国特許第6,194,388B1号12は、抗原と混合した場合、免疫応答を刺激する能力をベースとする治療適用に特に有用である非メチル化CpGオリゴヌクレオチドを記載している。Kriegら、米国特許第6,207,646B1号13は、非メチル化CpGオリゴヌクレオチドを使用してTh2応答をTh1応答に方向転換することについてさらに記載している。双方において、B細胞をホスホロチオエート修飾CpGオリゴマーと共に培養したB細胞刺激によりCpGオリゴマーの有効性が示された。CpGオリゴマーをどのように使用して安定化した免疫刺激複合体又はワクチンを提供できるかに関しては開示も示唆もなされていない。
【0017】
別の分野の強い興味および研究は、代替のデリバリールート、例えば粘膜、経皮または経口用に合成免疫原を配合する方法に集中している。粘膜免疫は、外分泌(例えば腸、気管支または鼻洗浄)で見出される分泌性免疫グロブリン(sIgA)の誘導により媒介される。ワクチンの経皮または粘膜デリバリーは、粘膜表面を介して入り込む大部分の病原体生物に有効であると考えられている。例えば経口投与されたコレラワクチンは、非経口投与された類似物よりもはるかに優れていることが示されている14
【0018】
Friedeら、WO99/52549号15は、粘膜使用を意図したワクチン組成物を主要アジュバントであるポリオキシエチレンエーテルまたはポリオキシエチレンエステルと抗原との組合せから誘導することができると教示している。標的抗原は、合成ペプチドであると示唆された。Friedeらは、CpGオリゴヌクレオチドをワクチン組成物に添加することにより応答が改善されることも示唆している。彼らは、ポリオキシエチレンエーテル又はポリオキシエチレンエステルとCpGオリゴヌクレオチドとの組合せが、抗原と同時に投与された場合、粘膜応答を改善できることを示した。しかしながら、その結果によりCpGオリゴヌクレオチドと記載した抗原との単純な混合物からアジュバント作用が全く欠如していることが示された。
【0019】
経皮投与されたワクチンは、最近の興味の分野を提示している。理想的には、装置、即ちパッチまたは針不要のジェット式注射器を用いて皮内ランゲルハンス細胞、即ち樹状細胞を標的化することができる。これらの特異性細胞は、免疫原の効率的な処理および提示に寄与し、全身体液性および細胞性応答を直接誘導するのに用いることができる。経皮方法により筋肉内免疫が達成された例もあった16。例えば最近の新聞では、パッチとして投与されるジフテリアワクチンについて記載された。アジュバントと同時投与された場合、種々の組成物に関してジフテリアトキソイドに対する全身抗体が見出された17
【0020】
先行技術により種々のワクチン配合物の可能性が例示されているが、粘膜または経皮デリバリーのための合成ペプチドをベースとしたワクチン配合物の開発に関して多くの現実的な制限がある。これには、
1)粘膜表面での又は皮内での粘膜液もしくは分泌物および/またはタンパク質分解酵素による免疫原分解;
2)粘膜上皮を通って、または皮内層を介する極わずかな吸収;および
3)適当なレベルの免疫応答を誘導するのに必要な濃度以下の濃度への免疫原の希釈;
などがある。
【0021】
単一のワクチン組成物で合成ペプチドをベースとした免疫原を安定させ且つアジュバント作用化させる計画はほとんど存在しない。このような組成物は、非常に効果的な非経口、粘膜、または経皮用ペプチドベースのワクチンの開発に必須である。
【0022】
必要な投与回数を減らすために免疫原応答の期間を長期化させるのも望まれている。これによりコンプライアンスの改善およびワクチン接種に関する全体的な経費の低減がなされる。
【0023】
種々の方法を用いて合成ペプチドベースの免疫原にアジュバント作用を行うことができるが、通常長期間有効な免疫原応答のためにキャリヤまたは貯蔵庫(depot)系が必要である。注目される例として、免疫原を無機塩またはゲルに吸収させることなどがある。例えば、ペプチド免疫原をポリマーマトリックス(モノリシックマトリックス)またはゲル内に封入するか、またはペプチド免疫原(コア・シェル)の周りにポリマーマトリックスを積層するのが有効な戦略であろう。または、免疫原をリポソームまたは小胞型の配合物に組み込むことができ、免疫原は脂質マトリックスに包埋されているか、または物理学的に内部水相に捕捉されているかのいずれかである。別の戦略は、鉱物ベース、植物ベース又は動物ベースの油を用いて、種々の比率の免疫原の水溶液と共に、油中水滴型(w/o)エマルションまたは水中油中水滴型(water-in-oil-in-water)(w/o/w)二重エマルションを調製するのがよい18
【0024】
多様な粒径、形態、表面疎水性および残基表面電荷が検討すべき可能性ある配合物依存性変数である。これらのパラメータの調節が、非経口投与を介するミクロンの大きさの粒子のファゴサイトーシスに19、20、および経口デリバリのための腸管内のパイエル板の特異的M細胞での粒子状物質の取り込みに21、22重要であることが解っている。同様に、これらのパラメータは、鼻内デリバリのターゲットである鼻咽頭管の鼻随伴リンパ節組織への接近に重要であることが示されている23、24
【0025】
Kroneら、米国特許第5,700,459号25は、複合化物質がポリマーである、ポリ酸およびポリ塩基に由来する微粒子形態の多価電解質複合体の使用について記載している。これらの複合体の種々の用途が記載されており、抗原または抗原性ペプチドを含むワクチン組成物が含まれる。組成物には生分解能のある材料を用いた放出制御配合物もある。一例として、多価電解質複合体微粒子に抗原を組み込む方法が記載されている。しかしながら、100μmのサイズの粒子の混合物を約1〜4μmまで粉砕して微粒子を調製するために記載された機械的な方法は面倒である。これは市販用製品のために容易に規模拡大できない。
【0026】
Eldridgeら26は、抗原をインビボで放出制御するための、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド共重合体から製造されたポリマー性生分解性マイクロスフェアを開発した。微粒子に抗原を封入するのに有用であると開示されたポリマーには、ポリ-D,L-ラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリオルトエステルおよびポリ(α−ヒドロキシ酪酸)などがある。
【0027】
抗原の放出制御は先行技術で達成されたが、記載した方法により微粒子が製造される場合、困難に遭遇した。記載した方法は規模拡大するのが困難である。また、生物学的材料が有機溶媒に暴露されること及び機械的処理されることにより変性に至る可能性があり、封入の効率が低から中程度になる。さらに、記載方法では親水性抗原は封入の効率が悪い。
【0028】
Henryら、米国特許第5,126,141号および第5,135,751号27、28は、肉体の損傷部分に適用するために付着を避けるためのポリオキシアルキレン・ポリマーおよびイオン性多糖類から形成された水性熱可逆性ゲル組成物について記載した。Rosenbergら、WO93/01286号29は、再狭窄の処置のための外科的に暴露された血管表面に、アンチセンス・オリゴヌクレオチドを局所デリバリするために同一型のポリオキシアルキレン・ポリマーを用いることを記載した。HenryらもRosenbergらも、ワクチンとしてゲル組成物を用いることを教示も示唆もしていない。
【0029】
Dunnら、米国特許第4,938,763号および第5,702,716号30、31は、生物学的に活性な材料の放出制御に有用なポリマー性組成物について記載している。生体適合性溶媒を用いて、注射時にin-situゲル化により移植体形成に至る、直接非経口注射のための抗原の溶液または懸濁液を調製した。小型合成ペプチドベースの免疫原などの種々の抗原の利用性が特許請求の範囲に記載された。しかしながら、Dunnら、米国特許第5,702,716号31は、放出制御組成物が15重量%までのゲル化速度遅延化剤を必要とすると記載した。遅延化剤は、ゲル化速度を変調するために添加され、且つ抗原の捕捉効率を高めるために必要であり、インビボで容易に抽出される。溶媒抽出は主に拡散により支配されるので、これは大きなサブユニットまたはタンパク質ベースの抗原よりも小型合成免疫原に関してより多くの問題を提示している。
【0030】
米国特許第4,938,763号30も、米国特許第5,702,716号31も、生体適合性溶媒内に懸濁された免疫刺激複合体として安定化した合成ペプチドベースの免疫原を教示も示唆もしていなかった。さらに、米国特許第4,938,763号30も、米国特許第5,702,716号31も、自己アジュバント作用があり、初回抗原刺激相および追加免疫相の双方で免疫応答を上方制御できる組成物を教示も示唆もしていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明の目的は、インビボで自己アジュバント特性を有する、合成ペプチド免疫原および安定化分子からの安定した免疫刺激複合体を開発することにある。また、本発明の目的は、インビトロおよびインビボで合成ペプチド免疫原を安定化させる単純な方法を提供することにある。
【0032】
また、本発明の目的は、これらの安定化合成ペプチドベースの免疫刺激複合体に適合する持続した、または制御された放出分配ベヒクルを提供することにある。
【0033】
また、本発明の目的は、保護応答などの免疫応答の相乗的増強を達成するための放出制御デリバリーシステムにおいて、安定化合成ペプチドベースの免疫刺激複合体および複合化されていない免疫原の組合せを用いる配合物を開発することにある。
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【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明はカチオン性ペプチドおよびアニオン性分子またはオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを有する安定化免疫刺激複合体、並びに電解質会合を介したアニオン性分子またはオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとの複合化によりカチオン性ペプチドを安定化させるための方法に関する。安定化免疫刺激複合体を免疫原デリバリーシステムとして医薬用組成物に組み込むことができる。
【0035】
本明細書で記載する「カチオン性ペプチド」は、pH5.0〜8.0の範囲で正に荷電したペプチドを意味する。リジン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)の各々に+1の電荷を、アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)の各々に−1の電荷を、配列内のその他のアミノ酸に0の電荷を割り当てることによりペプチドまたはペプチドカクテルの正味電荷を計算する。各ペプチドのN末端アミン(+1)およびC末端カルボキシル(−1)末端基からの電荷寄与は、置換されない場合、互いに効果的に相殺される。電荷は各ペプチドで合計され、平均正味電荷として表される。適当なペプチド免疫原は+1の正の平均正味電荷を有する。好ましくは、ペプチド免疫原は+2以上の範囲の正の正味電荷を有する。
【0036】
ペプチド免疫原はB細胞エピトープおよびThエピトープを有する。Thエピトープはペプチドに固有であるか、または先行技術で記載されたようにそこに付加され得る。適当なペプチド免疫原は本明細書の以下に記載する。
【0037】
本明細書で記載する「アニオン性分子」は、pH5.0〜8.0の範囲で負に荷電した分子を意味する。オリゴマーまたはポリマーの負の正味電荷は、オリゴマーの各リン酸ジエステルまたはホスホロチオエート基に−1の電荷を割り当てることにより計算される。適当なアニオン性オリゴヌクレオチドは、CpGモチーフの繰り返し数を1〜10の範囲で有する、8〜64個のヌクレオチド塩基を有する一本鎖DNA分子である。好ましくは、CpG免疫刺激一本鎖DNAは、CpGモチーフの繰り返し数を3〜8の範囲で有する、18〜48個のヌクレオチド塩基を含む。
【0038】
さらに好ましくは、アニオン性オリゴヌクレオチドは、式:5’XCGX3’(式中、CおよびGは非メチル化であり;XはA(アデニン)、G(グアニン)およびT(チミン)からなる群から選択され;XはC(シトシン)またはT(チミン)である)で表される。または、アニオン性オリゴヌクレオチドは、式:5’(XCG(X3’(式中、CおよびGは非メチル化であり;XはA、TまたはGからなる群から選択され;XはCまたはTである)で表される。
【0039】
最も好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’ TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT TTG TCG TT 3’(CpG1)配列番号1(32塩基鎖長のオリゴマー)および5’nTC GTC GTT TTG TCG TTT TGT CGT T 3’(CpG2)配列番号2(24塩基鎖長のオリゴマーにホスホロチオエート基(5’末端でnと称される)を加えたもの)からなる群から選択される。
【0040】
得られた免疫刺激複合体は典型的には、1〜50ミクロンの範囲のサイズの粒子の形態であり、相対電荷化学量論および相互作用種の分子量などの多くの因子の関数である32。粒子状免疫刺激複合体は、アジュバント作用およびインビボ特異的免疫応答の上方制御を提供する利点が加えられている。加えて、安定化免疫刺激複合体は、油中水滴型エマルション、無機塩懸濁液およびポリマー性ゲルなどの種々の方法によるワクチン配合物の調製に適している。
【0041】
本明細書で用いる「安定化」なる用語は、インビトロまたはインビボでの分解に対して合成ペプチド免疫原を保護するいずれかの材料の使用により達成され得る。これは、化学的修飾および/または物理学的会合により達成され得る。安定化剤は、合成ペプチド免疫原、オリゴ糖修飾糖ペプチドまたは脂質結合ペプチドの生理学的特性を増大させてより有効な配合物を提供することができる。
【0042】
本明細書で記載する「アジュバント」なる用語は、ヒトまたは動物における免疫原により引き出される免疫応答を増強または上方制御できるいずれかの材料を意味する。アジュバント自体は免疫原応答を誘導しても、しなくてもよい。
【0043】
安定化剤はまた、ワクチン中でアジュバントとして機能し、免疫応答を効果的に上方制御するのも好ましい。安定化剤は、免疫系の処理専門細胞、例えばマクロファージおよび樹状細胞に対する免疫原の提示を積極的に促進することによりアジュバントとして作用することができる。本発明では、安定化免疫刺激複合体は、投与されたとき、理想的には溶液中に完全なユニットとして残存する。
【0044】
安定化免疫刺激複合体は、放出制御用にも配合され、投与部位近くの「貯蔵庫(depot)」で濃縮された形態で複合体として残存することができる。これらの配合物は、免疫エフェクター細胞への免疫原の局所持続放出と合わせた安定化アジュバント免疫原の利点を相乗的に組合せている。ある組成物においては、アジュバント自体の役割はまた、免疫原貯蔵庫(depot)の近傍への免疫系の細胞の誘引作用に関与し、このような細胞を刺激し免疫応答を引き出すことができる。
【0045】
本発明の第2の態様では、免疫刺激複合体を含むワクチン組成物を調製する方法が提供される。好ましい態様として、免疫刺激複合体は、インビトロで安定化した合成ペプチドベースの免疫原であることの利点が付与され、同時にインビボで特異的免疫応答の上方制御を伴う自己アジュバント作用を有する。
【0046】
本発明の第3の態様では、免疫刺激複合体からワクチン組成物を調製する方法が提供される。免疫刺激複合体または複合化されていない免疫原と免疫刺激複合体との混合物を、溶液中の懸濁液、油中水滴型エマルション、無機塩懸濁液と組合せた懸濁液または生体適合性溶液で再構成された懸濁液として配合することができる。免疫刺激複合体は、単独で、または複合化されていない免疫原との混合物中で、ポリマー性ゲル中の生体適合性溶媒に協配合する(coformulate)こともできる。
【0047】
本発明はさらに非経口、経口、鼻腔内、直腸、口腔、膣および経皮経路などの種々の経路により投与するための有用な免疫原デリバリーシステムの生成に関連する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明の第1の態様に従って、カチオン性ペプチド免疫原は、アニオン性一本鎖DNAと複合化して安定な免疫刺激複合体を形成する。
【0049】
カチオン性ペプチド免疫原は、pH5.0〜8.0の範囲で正の正味電荷を有するペプチドである。リジン(K)、アルギニン(R)またはヒスチジン(H)の各々に+1の電荷を、アスパラギン酸(D)またはグルタミン酸(E)の各々に−1の電荷を、配列内のその他のアミノ酸に0の電荷を割り当てることによりペプチドまたはペプチドカクテルの正味電荷を計算する。各ペプチドのN末端アミン(+1)およびC末端カルボキシル(−1)末端基からの電荷寄与は、置換されない場合、互いに効果的に相殺される。電荷は、各ペプチドで合計され、平均正味電荷として表される。好ましくは、ペプチド免疫原の平均正味電荷は少なくとも+2である。
【0050】
カチオン性ペプチド免疫原は元来、そのアミノ酸配列に基づいて上記のように計算された正の正味電荷を有し得る。リジン、アルギニンもしくはヒスチジン、またはこれらのアミノ酸の混合物をペプチド免疫原のN末端またはC末端に加えることにより、正の電荷を有するようにすることができる。水溶液中でペプチド免疫原に正の電荷を提供するその他の合成部分、例えばポリエチレンイミンまたはポリアミンを加えることもできる。
【0051】
カチオン性ペプチド免疫原は、Thエピトープおよび標的B細胞エピトープを有する。Thエピトープは、ペプチドに固有であるか、または合成的にペプチドに加えることができ、標的B細胞エピトープとして機能する。好適なペプチド免疫原には、保護免疫応答または治療免疫応答を引き出すペプチドなどがあり、疾患を引き起こすことが解っている病原体またはタンパク質に由来する。これには、アレルギーの免疫治療のためのヒトまたは動物IgEペプチド、例えばWO99/67293号51記載のIgEペプチド免疫原;US 5,763,160号52記載のHIV感染の保護免疫および免疫治療のためのHIVペプチド;米国特許第6,090,388号53記載のHIVからの保護免疫並びにHIV感染及び免疫疾患の免疫治療のためのCD4ペプチド;US 5,749,551号54およびUS 6,025,468号55記載のアンドロゲンおよびエストロゲン依存性腫瘍、避妊および免疫去勢(immunocastration)の免疫治療、およびイノシシ感染(boar taint)の除去のための黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)ペプチド;USSN 09/865,294号56記載のアルツハイマー病の予防および免疫治療のためのβ−アミロイドペプチド;US 6,107,021号57記載の口蹄疫(foot-and-mouth disease)に対する保護免疫のための口蹄疫ウイルスペプチド;USSN 09/747802号58記載の尿路感染からの保護免疫のための細菌線毛由来のペプチド;WO99/66957号59記載のマラリアからの保護免疫のためのマラリア原虫(Plasmodium)ペプチド;およびWO99/66950号60に記載の家畜の成長促進のためのソマトスタチンペプチド;などがある。本明細書で取り上げた特異的ペプチド免疫原は,説明のみの目的のための実例であり、いかなる場合であっても本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【0052】
「アニオン性一本鎖DNA」は、pH5.0〜8.0の範囲で負に荷電しているポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドである。ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの負の正味電荷は、オリゴマーの各リン酸ジエステルまたはホスホロチオエート基に−1の電荷を割り当てることにより計算される。適当なアニオン性オリゴヌクレオチドは、CpGモチーフの繰り返しを伴う、8〜64個のヌクレオチド塩基を有する一本鎖DNA分子である。CpGモチーフの繰り返し数は1〜10の範囲である。好ましくは、CpG免疫刺激一本鎖DNAは、CpGモチーフの繰り返し数が3〜8の範囲である、18〜48個のヌクレオチド塩基を含む。
【0053】
好ましくは、アニオン性オリゴヌクレオチドは、式:5’XCGX3’(式中、CおよびGは非メチル化であり;XはA(アデニン)、G(グアニン)およびT(チミン)からなる群から選択され;XはC(シトシン)またはT(チミン)である)で表される。または、アニオン性オリゴヌクレオチドは、式:5’(XCG(X3’(式中、CおよびGは非メチル化であり;XはA、TまたはGからなる群から選択され;XはCまたはTである)で表される。CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端でホスホロチオエートまたはチオール・アセトアミド糖ポリマーで修飾されていてもよい34
【0054】
最も好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’ TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT TTG TCG TT 3’(CpG1)配列番号1(32塩基鎖長のオリゴマー)、及び5’nTC GTC GTT TTG TCG TTT TGT CGT T 3’(CpG2)配列番号2(24塩基鎖長のオリゴマーにホスホロチオエート架橋基(5’末端でnと称される)を加えたもの)からなる群から選択される。
【0055】
また、非メチル化シトシン−グアニン(CpG)ジヌクレオチド由来のDNA配列は、リンパ球を活性化し、IL−6、TNF−α、IL−12、IFN−γ応答などの対象の免疫応答を増強することができる33。これらの分子は、これらの知見に基づいて、合成カチオン性ペプチド免疫原の安定化させ且つ新規免疫原デリバリーシステムを提供するという双方を行うことができる好ましい相補的基質を提示する。本発明の安定化免疫刺激複合体はまた、注射部位で重要な希釈を行うことなく、インビボで免疫応答の自己アジュバント作用を提供する。
【0056】
カチオン性ペプチド免疫原由来の別個の免疫刺激複合体の形成は、主に電荷中和の作用である。安定した複合体は、天然または合成の双方により修飾されたヌクレオチド配列に由来するCpG含有免疫刺激DNA分子から形成できると予測される。なお、免疫刺激複合体の安定性における改善は、ペプチド免疫原に備わっているカチオン性電荷を増加させることにより実現させることができる。これには、ペプチドをさらにリジン、アルギニンもしくはヒスチジンまたはその他の合成部分で伸長させることを含み、これにより上述したように水溶液中で修飾されたペプチドに正の電荷が提供される。
【0057】
CpG不含免疫刺激配列(ISS)が同定され、適当な水性溶媒での合成カチオン性ペプチド免疫原と組合せた場合、これらの一本鎖DNA基質が免疫刺激複合体を形成するのに有用な材料であることが判明するであろうと予測される。
【0058】
修飾化CpGモチーフもまた想定され、ここで定義されたアニオン性一本鎖DNAは、細胞特異的取り込みの増強及び標的化するためのレクチン、糖もしくは脂質、またはインビボで循環を改善するためのポリマー、共重合体およびグラフト共重合体、例えばPEGなどの別の生物学的に機能する分子と化学的に結合している。化学的に結合したDNAは、ポリアニオン性であってもよく、続いてカチオン性ペプチド免疫原と複合化されて、潜在的に新規な物理特性又は生物学的特性を有する、修飾化免疫刺激複合体を提供することができる34、35
【0059】
ポリアニオン性オリゴマーおよびポリエチレングリコールに由来するブロックおよびグラフト共重合体は、アニオン性分子の別の種類、即ち向上した安定性及び向上したアジュバント作用をもたらすこともできる別の種類を提示することが企図される。
【0060】
本発明の別の態様では、免疫刺激複合体は、修飾CpGオリゴヌクレオチドから調製することができる。ここで、複合化を改善するために、さらにホスホロチオエートまたは別の架橋基がオリゴマーの5’末端に付加されている。
【0061】
好ましくは、免疫刺激複合体の平均凝集粒径分布は、約1〜50μmの範囲である。さらに好ましくは、免疫刺激複合体の平均凝集粒径分布は、約1〜30μmの範囲である。最も好ましくは、免疫刺激複合体の平均凝集粒径分布は、約1〜15μmの範囲である。
【0062】
CpGモチーフの繰り返しの数は、固有のアジュバント作用および免疫刺激の程度に影響し、最小数のCpGの繰り返しが必要とされるという証拠がある。また、CpGに隣接するフランキングヌクレオチド塩基の選択は、種特異的様式でアジュバント作用に直接影響すると思われるので、非常に重要であるという強力な証拠がある10、36。例えば、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドが、式:XCGX(式中、CおよびGは非メチル化であり、Xが基GpT、GpG、GpAおよびApAから選択され、及び/又はXが基TpT、CpTおよびGpTから選択される)により表される場合、ヒト細胞の免疫刺激活性が増強されることがKreigら13により実証された。
【0063】
CpGオリゴヌクレオチドは、B細胞マイトジェンとして機能でき37且つ有用なアジュバントであるが、可溶性形態のCpGオリゴヌクレオチドと混合した抗原に対して、免疫応答は一般に、投与後2週間でピークに達することが示されている。このために保護を確実にし高い抗体価を維持するために複数回反復注射が必要とされる38。よって、放出制御配合物においてこれらのオリゴヌクレオチドと共に構築物を効果的に分配する方法が強く望まれている。
【0064】
安定性に関しては、CpGバックボーンのホスホジエステル結合は、インビボでヌクレアーゼによる分解に対して感受性がある39。よって、免疫応答の期間を改善するために、リン酸基をホスホロチオエート基に修飾することができる。
【0065】
本発明の免疫刺激複合体を、非経口、粘膜および経皮などの多くの経路による分配用に配合することができる。本発明の免疫刺激複合体は、複合体のCpGオリゴヌクレオチドがインビボで非経口および粘膜応答の双方で上方制御に有用なアジュバントである点で特にワクチン配合物に望ましい40、41
【0066】
我々の実験の結果から、免疫刺激複合体の凝集粒径が、ペプチド免疫原:CpGオリゴヌクレオチドの比率に基づいて変化することがわかる。免疫刺激複合体の固有の安定性および組成物のサイズを調節する能力は、非経口経路によるファゴサイトーシスの可能性を高める19。特異的細胞、例えば経口経路によるパイエル板に位置するM細胞21または鼻腔内経路による鼻関連リンパ組織(NALT)23を標的化することによる粘膜免疫は、同様に本発明の安定化免疫原を使用することにより促進される。
【0067】
本発明の免疫刺激複合体は、制御された自己集積化法により調製される。ここで、水溶液中のアニオン性CpGオリゴヌクレオチドが、カチオン性ペプチド免疫原の水溶液に添加される。免疫刺激複合体の調製用の好適な水溶液は、蒸留脱イオン水(DDW)、生理食塩水(NS)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)からなる群から選択される。蒸留脱イオン水および生理食塩水は典型的には、約5.5のpHを呈するが、PBSではpHは7.2〜7.4の範囲で調節される。複合化プロセスは、電荷比、相互作用する電解質の分子量、溶媒のpHおよびイオン強度の関数である32
【0068】
多価アニオン性分子、例えば短鎖CpGオリゴマーは、水溶液のpHが5.5〜7.4の範囲であるとき、負の正味電荷を有する。ペプチド免疫原の正味電荷は、ペプチドのアミノ酸組成に依存し、水溶液のpHにより影響を受ける可能性がある。従って、有効な複合化のために正の正味電荷を確実にする水性溶媒を選択する。個々のペプチドに関するイオン化点(IP)またはゼロ電荷の点の試験により、選択方法を導くことができる。一般に、等電点電気泳動実験のpHグラジエントを通る分子の動きによりIPが決定される11。ペプチドが正に荷電していることを確実にするために、選択した水性溶媒のpHを、問題のペプチドの等電点よりも小さくすべきである。
【0069】
免疫刺激複合体を調製するために、以下の工程を続ける。第1に、一緒に混合したペプチドのモル比および最終ワクチン組成物中の各ペプチド成分からの電荷寄与に基づいて、望ましいペプチド免疫原またはペプチド免疫原のカクテルに関して平均モル正電荷寄与を決定する。第2に、オリゴマーのモル比および最終ワクチン組成物中のこの成分からの電荷寄与に基づいて、複合化オリゴヌクレオチドに関してモル負電荷寄与を決定する。第3に、全平均モル正電荷に基づくペプチド免疫原の量は、複合化に用いたオリゴヌクレオチドの量およびその全モル負電荷に依存する。この関係を用いて水性溶媒中で組合せるペプチド免疫原およびオリゴヌクレオチドの相対量を決定して免疫刺激複合体を形成する。過剰のカチオン性免疫原ペプチドを用いて免疫刺激複合体および過剰の非複合化ペプチドの混合物を提供する。または、過剰のオリゴヌクレオチドを用いて過剰のオリゴヌクレオチドを提供することもできる。選択したペプチド免疫原およびオリゴヌクレオチドの相対量は望ましいワクチン配合物に基づく。
【0070】
最後に、適合する水性溶媒中の計算量のアニオン性オリゴヌクレオチドを、適合する水性溶媒に同様に溶解した計算量のカチオン性ペプチド免疫原に混合しながら添加する。用いたカチオン性ペプチド免疫原のnmol量は一般に、1負電荷を提供するアニオン性オリゴヌクレオチドのnmol量に、8正電荷から0.5正電荷を提供する範囲である。これを電荷比と称する。電荷比が8:1である場合、大過剰のペプチド免疫原が存在する。電荷比が1:2である場合、少し過剰のアニオン性オリゴヌクレオチドが存在する。複合体は、溶液中で自然に懸濁液の形態を形成する。溶液から複合体を分離し、紫外線分光法(UV)または逆相高速クロマトグラフィー(RP−HPLC)により上澄溶液をアッセイすることにより、ペプチド免疫原またはオリゴヌクレオチドの残量の推定を行うことができる。
【0071】
懸濁液として調製した免疫刺激複合体をワクチン組成物として用いることができる。免疫刺激複合体を非経口的に注射する場合、最終ワクチン組成物が等張であり、このような目的に適するように水性溶媒を選択する。複合体を最初に蒸留脱イオン水で形成する場合、適当な塩濃度の水性緩衝液を添加して、最終ワクチン組成物が等張であることを確実にする。
【0072】
懸濁液または溶液として調製した免疫刺激複合体を凍結乾燥することができる。凍結乾燥した組成物を次いで再構成し、望ましいデリバリー形態に従って異なるワクチン配合物に組み込むことができる。本発明の免疫刺激複合体を、無機塩懸濁液または生体適合ポリマー性ゲルを組合せた油中水滴型エマルションとして配合することもできる。
【0073】
本発明の別の態様に従って、本発明は凍結乾燥により安定した粒子として安定化免疫刺激複合体を単離する方法を記載する。水性溶媒又は生体適合性溶媒中の懸濁液としての安定化免疫刺激複合体の再構成により、粒径分布又はインビボ有効性に本質的な変化は示されない。これは、効果を維持するために冷蔵を必要とする配合物、例えばミョウバンベースのワクチン組成物に重要な利点を提示する。この特徴は、免疫前の直接再構成及び安定した固体状態の投与形態を必要とする代替デリバリー形態、例えば肺又は鼻腔内デリバリーのための乾燥粉末エアロゾル又は噴霧などのこれらの系の利用可能性を広げる42
【0074】
本発明の別の態様により、本発明は、本発明の安定化免疫刺激複合体を有する安定した油中水滴型エマルション43を調製する、種々の方法を提供する。このようなエマルションでは、水相は、免疫刺激複合体または免疫刺激複合体と非複合化ペプチド免疫原との混合物を有し;連続油相は、合成油、鉱油、動物油または植物油を有するのが好ましい。また、油相はまた、免疫刺激乳化剤、生体適合性または代謝可能成分を有することもできる。
【0075】
特に、本発明の油中水滴型エマルションの調製に有用な油には、合成油(例えばミリスチン酸イソプロピル)、植物油(例えば落花生油)、鉱油(例えばドラケオール(Drakeol(商標))またはマルコール(Marcol(商標)))、代謝可能な動物油(metabolizable animal oil)(例えばスクアレンまたはスクアラン)、およびその混合物などがあるが、これらに限定されない。鉱油が好ましい。エマルションの安定化に有用な油ベースの乳化剤には、マンニド−オレイン酸(mannide-oleates)およびその誘導体のファミリーなどがあるが、これらに限定されない。
【0076】
必要な乳化剤の相対量は、特定の条件下で生成された油中水滴型エマルションの親水性−親油性バランス(HLB)および固有の安定性の関数である。油および乳化剤の組合せの選択方法は当業者に公知である。
【0077】
w/oエマルションは、内部水相に10v/v%〜80v/v%の水を有することができる。たいていの目的のために、最適な水濃度は、30v/v%〜50v/v%の範囲である。内部水相は、典型的には1〜10μm、好ましくは1〜5μmの大きさの非常に微細な小滴を有してなるのが特徴的である。室温でまたは冷蔵で維持する場合、調製物は安定である。
【0078】
その他の安定化剤を用いてエマルションを調製することもできる。これには界面活性剤、コロイド性粒子、タンパク質および当業者に公知のその他のポリマー化剤および安定化剤などが含まれる。
【0079】
w/oエマルションは、少なくとも1つの油溶性親油性アジュバント、例えば3-O-デスアシル-4’-モノホスホリルリピッドA(MPL)、N-アセチル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(MDP)、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)、N,N-ジオクタデシル-N’,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)プロパンジアミン(アブリジン(Avridine))、N-(2-デオキシ-2-1-ロイシルアミノ-β-D-グルコピラノシル)-N-オクタデシル-ドデカノイルアミド・ハイドロアセテート(BAY−1005)、3β−[N-(N,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、NAc−Mur−L−Thr−D−isoGln−sn−グリセロール・ジパルミトイル(ムラパルミチン(Murapalmitine))およびこれらの混合物または誘導体をさらに有することができる。w/oエマルションはまた、分散相で少なくとも1つの水溶性アジュバント、例えばポリ[ジ(カルボキシルアトフェノキシ)]ホスファゼン(PCPP)、Quillajaサポニン(QS−21)、コレラ・ホロトキシン(CT)またはコレラ・トキシンBサブユニット(CTB)、大腸菌(E.coli)由来の熱不安定性エンテロトキシン(LT)または大腸菌(E.coli)由来の熱不安定性エンテロトキシンBサブユニット(LTB)およびサイトカイン例えばインターロイキン−1β(IL−1β)、インターロイキン−2(IL−2)、インターロイキン−12(IL−12)、インターフェロン−γ(IFN−γ)並びにこれらの混合物または誘導体を有することができる。水溶性アジュバントは合成であっても天然であってもよい。フィルム形成特性を有する水溶性アジュバント、例えばオリゴマーまたはポリマーの存在はさらに、エマルションを安定化させるのに役立つことができる。w/oエマルションは免疫原の免疫系への提示を促して、さらに有効なワクチンを提供することができる。
【0080】
免疫刺激複合体または非複合化免疫原とのその混合物を有する油中水滴型エマルションは、以下のように調製することができる。第1に、水溶液中免疫刺激複合体単独の形成を確実にする比率で、または過剰の残留ペプチド免疫原を伴う混合物でペプチド免疫原およびオリゴヌクレオチドから免疫刺激複合体を調製する。第2に、水溶液を、乳化剤を含む油と混合し、均質化して水相が連続油相に分散される油中水滴型エマルションを提供する。このような油中水滴型エマルションは非経口注射に適している。
【0081】
均質化することにより、又は2個のシリンジ間を移動させることにより、又は制御孔径のメンブランフィルターを通して成分を押出すことにより水相および油相の乳化を達成することができる。低エネルギー半手動方法が迅速である。しかしながら、他の方法よりもせん断がかなり少ないので、生成されたエマルションは高せん断機械系を用いて生成されるものほど微細ではない。高せん断系の例として、ロートステーター(rotostator)、マイクロフルイダイザー(microfluidizer)およびソニフィヤー(sonifier)などが挙げられる。乳化用に公知のこれらの高せん断系に類似のその他の装置を用いることもできる。
【0082】
本発明の別の態様に従って、本発明は、本発明の安定化免疫刺激複合体を有する、生理学的に許容される無機塩の懸濁液を調製する種々の方法を提供する。このような混合系では、水相は無機塩および免疫刺激複合体の組合せ懸濁液を有し、これは溶液中に残留する、非結合ペプチド免疫原をさらに含んでもよい。
【0083】
特に、本発明の完全水性ベースの懸濁液を調製するのに有用な無機塩として、水酸化アルミニウム(例えばアルヒドロゲル(Alhydrogel(登録商標))、レヒドラゲルHPA(Rehydragel HPA(登録商標))、レヒドラゲルLV(Rehydragel LV(登録商標)))、リン酸アルミニウム(例えばアジュフォス(Adju-phos(登録商標))またはレヒラフォス(Rehyraphos(登録商標)))またはリン酸カルシウム(例えばカルフォス(Calphos(登録商標)))およびこれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
無機塩を選択し、用いる無機塩またはその組合せの好ましい濃度を決定する方法は当業者に公知である。
【0085】
その他の安定化剤を用いて無機塩懸濁液を調製することもできる。これには界面活性剤、抗酸化剤、生理学的に許容される緩衝液、等張剤(tonifier)、保存剤および当業者に公知のその他の物質などがある。
【0086】
無機塩懸濁液は、少なくとも1つのさらなるアジュバント(例えばMPL、MDP、DDA、N,N−アブリジン、BAY−1005、DC−Chol、ムラパルミチン、PCPP、QS−21、CTまたはCTB、LTまたはLTBおよびサイトカイン、例えばIL−1β、IL−2、IL−12、IFN−γ並びにこれらの混合物および誘導体)をさらに有することができる。無機塩は、貯蔵庫(depot)の形態で免疫原の免疫系への提示を促すか、または走化性(chemotaxis)として公知の過程により免疫系の特定の細胞を誘引することができる。
【0087】
免疫刺激複合体を有する無機塩懸濁液、または残留する非複合化免疫原と組合せた免疫刺激複合体の混合物は、以下のように調製できる。第1に、溶液中の全てのペプチド免疫原およびオリゴヌクレオチドの完全な複合化を確実にする電荷比で、ペプチド免疫原およびオリゴヌクレオチドから免疫刺激複合体を調製する。また別に、溶液中のペプチド免疫原およびオリゴヌクレオチドの部分的複合化を確実にする電荷比で、ペプチド免疫原およびオリゴヌクレオチドから免疫刺激複合体を調製する;第2に、水性懸濁液を、混合しながら、無機塩懸濁液と組合せて、全成分の完全な水性懸濁液を提供する。このような懸濁液の組合せは非経口注射に適している。
【0088】
補足的な方法では、免疫刺激複合体または非複合化ペプチド免疫原とのその混合物を有する無機塩懸濁液は、以下のように調製できる。第1に、ペプチド免疫原を無機塩懸濁液と混合する。無機塩、ペプチド免疫原および水性緩衝液の物理特性に依存して、この段階で、種々の比率の免疫原を無機塩に直接吸収させることができる;第2に、この懸濁液にオリゴヌクレオチドを攪拌しながら添加する。溶液中の残留した非結合ペプチド免疫原の部分的または完全複合化に至る。このような懸濁液の組合せは非経口注射に適している。図16では双方の調製方法を示している。
【0089】
本発明の別の態様に従って、安定化免疫刺激複合体または安定化免疫刺激複合体および非複合化免疫原の混合物が分散されている、in-situゲル化生分解性ポリマーを調製するための方法が提供される。免疫刺激複合体は、溶液に、又は生体適合性溶媒内の懸濁液としてのいずれかで分散させることができる。生体適合性溶媒は、合成または天然の可溶性アジュバントをさらに有することができる。生分解性ゲル化ポリマーの溶液または懸濁液は、免疫原の宿主へのデリバリー用に設計される。in-situゲル化ポリマーは、生分解性であり、分子量が約2,000〜約100,000ダルトンの範囲で且つ対数粘度数が約0.2〜1.0dl/gである、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLG)およびポリ-D,L-乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)の共重合体である。in-situゲル化ポリマーの式は、以下の式で表される。
【0090】
【化4】

【0091】
式中、R1はOHまたは炭素数1から5のアルコキシであり、R2はHであり;x:yは共重合体の各モノマーユニットの比率であり、x+y=1である。PLGの場合、R1がアルコキシであり且つモノマーユニットがラクチドおよびグリコリドであり、PLGAの場合、R1がOHであり且つモノマーユニットが乳酸およびグリコール酸である。
【0092】
in-situゲル化ポリマーを有する、安定化免疫刺激複合体または非複合化免疫原とのその混合物は、単一の相として、または生体適合性溶媒中の懸濁液として調製することができる。
【0093】
本発明に有用な生体適合性溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリジン(NMP)、トリアセチンおよびグリセリンからなる群から選択される。DMSOが好ましい。DMSOは重量パーセントで多量のポリマーを溶解する高い能力を有している。ポリマーのin-situゲル化用の溶媒として広く用いられている。DMSOは、本発明の安定化免疫刺激複合体の懸濁液を調製するためにも用いることができる。
【0094】
動物モデルにおいて、少量で用いた場合、DMSOの耐性が高いことが実証されていることは重要である44。従って、DMSOを有する組成物が非経口経路を介して投与される場合、毒性の懸念は最小限である。
【0095】
本発明に適した生分解性ポリマーとして、ポリエステルのPLA、またはPLGAファミリーが挙げられるがこれらに限定されない。これらの材料は、種々の生体適合性溶媒に5w/w%〜50w/w%の範囲の濃度で溶解することができる。いくつかの物理学的因子が生体適合性溶媒に溶解できるポリマーの実際の量に影響し得る。これにはポリマーの組成、分子量、対数粘度数および結晶化などがある。共重合体のPLG/PLGAシリーズに関しては、これらの因子は高度に変動する。例えば、ポリ-D,L-乳酸(PLA)またはポリ-D,L-ラクチド(PL)のホモポリマー、およびPLGまたはPLGAと乳酸モノマー成分の長いブロックとの共重合体は、相対的に高い対数粘度数を有する高度に結晶性の材料である。
【0096】
可溶化できるこれらの結晶性材料の相対重量パーセントは、アモルファスPLGまたはPLGA類似体よりも明らかに低く、乳酸:グリコール酸成分の比率は、およそ1:1に等しい。注射により投与できるポリマー全量の差異は、マトリックス分解速度に劇的な影響力を有し、封入された免疫原の放出速度に影響すると予期される。生体適合性溶媒中の物理学的に適合するポリマーおよび種々の物理特性を有する共重合体の混合を変化させて、新規の生物学的効果を達成することが可能であると想定される。
【0097】
本発明に適したその他の生分解性ポリマーが企図される。これには、ポリカプロラクトン類、ポリ無水物類、ポリオルソエステル類およびポリ(α−ヒドロキシ酪酸)が挙げられるがこれらに限定されない。これらのポリマーは、有用な重量パーセントで生体適合性溶媒に溶解でき、有用なマトリックス形成基質を提供することができる。
【0098】
本発明に従って、安定した形態の放出制御または放出遅延ワクチン調製物が、このようなワクチン調製物を作製する方法と一緒に提供される。放出制御または放出遅延ワクチン組成物のゲルマトリックスは、ポリ-D,L-ラクチド-コ-グリコリド(PLG)およびポリ-D,L-乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、ポリカプロラクトン類、ポリ無水物類、ポリオルソエステル類およびポリ(α−ヒドロキシ酪酸)からなる群から選択される生分解性ポリマー、生体適合性溶媒並びに安定化免疫刺激複合体を有する。
【0099】
ポリマー性ゲルは、少なくとも1つのさらなるアジュバント、例えばMPL、MDP、DDA、N,N−アブリジン、BAY−1005、DC−Chol、ムラパルミチン、PCPP、QS−21、CTまたはCTB、LTまたはLTB又はサイトカイン、例えばIL−1β、IL−2、IL−12、IFN−γ並びにこれらの混合物および誘導体をさらに有することができる。
【0100】
本発明の放出制御組成物の利点には、
(a)完全な生分解性および生体適合性ゲル配合物;
(b)免疫原性の改善に至る、免疫エフェクター細胞に提示するための免疫原の持続的放出;
(c)安定した組成物において望ましい免疫原を伴う高いゲル負荷率(loading);および
(d)自己アジュバント作用する安定化免疫刺激複合体の懸濁液を含む適応性のあるデリバリー様式;
などがある。
【0101】
ポリマーの分子量および結晶性は、インビボでの捕捉効率に直接影響する。ポリマー性ゲル化材料は、極性非プロトン性溶媒、例えばDMSOに混和性を有する。しかしながら、筋内または皮下注射の場合、DMSOは、ポリマー富化溶液を可逆的に浸透する水分で周囲の体組織に抽出される。この過程は、in-situゲル形成を制御する1次メカニズムとして提供される。この過程が進行する速度は、ゲル形成により免疫原が捕捉される前であって生体適合性溶媒が積極的に体組織へ抽出され、生理学的溶液と交換される間に、免疫原の放出の最初のバーストに直接影響する45。結晶化過程の制御は、ゲル内の免疫原の保持を改善できる重要な主要メカニズムであることが解っている46。これは、免疫原を放出できる拡散経路を制限する、形成されたゲルの内部形態に密接に関係している。
【0102】
捕捉された、または保持された免疫刺激複合体は続いて、ポリマーを形成するマトリックスのバルクが侵食されるとき、多量のブースト放出と共に、持続的形態で制限された量でゲルから放出される。これは、ゲル化に影響する多くの同一の条件、例えば分子量、結晶性の程度、組成、疎水性および添加剤の存在に依存して変化する。
【0103】
溶媒DMSOに対する有害な毒性応答の可能性は最近の研究44で取り組まれており、その研究では、DMSOに懸濁されたペプチドホルモンを含む装置がイヌ及びヒトの皮下に外科的に埋め込まれた。研究に用いたDMSOの容量は150μlであった。移植片は1年間かけてペプチドを放出するように設計され、研究の終わりに外科的に除去された。イヌでもヒトでも有害な組織反応は観察されなかった。移植片からペプチド/DMSO混合物が生理学的組織へ放出されるのを制御することは、完全生分解性のin-situゲル化ポリマー性組成物に関する毒性の可能性の懸念を評価するためのモデルとして有用である。本発明に有用なDMSOの量はその研究で用いた量と本質的に同一であることが企図される。
【0104】
ポリマーの溶解限界を越える前に、DMSO中の免疫刺激複合体の体組織への最初の抽出が行われると予測される。凝固が起こり、安定化免疫刺激複合体の放出が遅延される。続いて、安定化免疫刺激複合体は、ポリマー特性の作用である放出速度で、拡散制御経路によりDMSOと一緒に放出されるか、またはゲルに保持される。ゲル内のこれらの分子の拡散率がいくつかの因子、例えばゲル内部形態および有孔性、水のゲルへの浸透の程度並びにポリマーのバルクの加水分解により支配されることは明白である45
【0105】
ゲル中で懸濁液として分散される本発明の安定化免疫刺激複合体の場合、最初の抽出は、主にゲル化領域の近くに位置する少量の免疫刺激複合体を伴うDMSOの抽出である。従って、少量の免疫刺激複合体は、最初のゲル化相の間に効果的に捕捉されず、インビボの免疫応答の最初の初回刺激に寄与する。その後、ポリマーのバルクが十分に加水分解されて捕捉された免疫刺激複合体の完全な放出に至るまで、DMSOは、ゲルマトリックスに捕捉されたままである免疫刺激複合体のバルクと共に拡散により放出され続けると予測される。
【0106】
具体的には、α−ヒドロキシ酸由来の高分子量且つより結晶性のポリマーから配合されるポリマー性ゲルは、低分子量のアモルファス類似体よりも長時間をかけて分解される。この現象は、加水分解に不安定なエステル結合への水の接近可能性に関係していることが解っている46
【0107】
分子量8,000〜50,000ダルトンの範囲の50% D,L-ラクチドおよび50% グリコリドから成るランダムアモルファス共重合体は、最も高い分解速度を示すことが確立されている。PBS緩衝液に浸漬した場合、およそ6〜8週後に50重量%以下のポリマーが残存する47
【0108】
ゲル化速度、免疫原放出速度およびゲル内部形態を制御するパラメータを修飾するのが望ましい。具体的には、種々の孔形成物質、可塑剤、および安定化剤、例えば界面活性剤、糖、タンパク質、ポリマーおよび当業者に公知のその他の賦形剤の使用がこの目的のために有用である。
【0109】
調製物は、冷蔵した場合または室温で安定である。DMSOの凝固点は約18℃であるので、DMSOを用いる本発明のワクチン組成物は凍結する。解凍はインビボでワクチンの有効性に変化を引き起こさないことが解っている。
【0110】
本発明に従って、in-situゲル化生分解性ポリマーおよび安定化免疫刺激複合体は、別個に配合することができる。in-situゲル化ポリマーを1個のバイアル中で生体適合性溶媒に溶解し、乾燥状態の安定化免疫刺激複合体を別のバイアルにすることができる。乾燥状態の免疫刺激複合体をスプレードライまたは好ましくは凍結乾燥により調製することができる48、49。次いで乾燥した免疫刺激複合体は、生体適合性溶媒に再構成され、シリンジにより溶液または懸濁液のいずれかとして生分解性ポリマー溶液に分配する。その後、混合物は、即座にまたはその直後に免疫に用いる。
【0111】
別個のバイアルを用いることにより、いずれかの潜在的な安定性の問題を最小限にする利点が付与される。これには反応性官能側鎖、例えば遊離のアミン基またはカルボキシル基を有し得るペプチド免疫原の存在下でのポリマーの分解50、または選択的アミノ酸、例えばDMSOの存在下のペプチド免疫原のシステインおよびトリプトファンの酸化などがある。
【0112】
免疫刺激複合体を含む再構成築用のin-situゲル化ポリマー組成物を調製するために、免疫刺激複合体は、上述したように調製される。次いで、この水溶液を凍結乾燥して乾燥組成物を形成する。次いで乾燥した組成物を、計算された重量パーセンテージの生分解性ゲル化ポリマーを含有する生体適合性溶媒中の懸濁液として再構成する。最終ワクチン組成物は、in-situゲル化ポリマーを提示し、非経口注射に適している。
【0113】
本発明の組成物は、ワクチンとして、即ち治療目的として有用であることがわかる。CpGオリゴヌクレオチドと効率よく複合化するために、概してpH4.0〜8.0の範囲でカチオン性電荷を有するように修飾できるその他の生物学的材料として、タンパク質、タンパク質擬似物質、細菌、細菌ライゼート(lysate)、ウイルス、ウイルス感染細胞ライゼート、抗原、抗体、薬理学的物質、抗生物質、炭水化物、脂質、サイトカイン、ケモカイン、脂質化アミノ酸、糖脂質、ハプテン並びにこれらの組合せおよび混合物などを挙げることができる。
【0114】
これらの組成物は、皮下または筋内注射により非経口的に投与することができる。非経口的に投与する場合、免疫応答は、抗体を中和するための細胞媒介応答または局所もしくは血清抗体応答とすることができる。粘膜で投与する組成物に関しては、免疫応答は、局所分泌型抗体応答をさらに有するであろう。
【0115】
免疫刺激複合体はまた、水中油滴型(oil-in-water)(o/w)ベースのエマルションと混合物できることも当業者に容易に明らかであろう。その他の可能性として、水中油中水滴型(w/o/w)二重エマルション、生分解性ポリマー性微粒子、脂質小胞またはリポソーム構造内の安定化免疫刺激複合体の封入がある。たいていのこれらのデリバリーシステムは持続性放出配合物の開発に魅力的である。
【0116】
好ましくは、本発明のペプチド免疫刺激複合体は、無機塩、例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムおよびリン酸カルシウムと組合せて、または生分解性ポリ−D,L−ラクチド−コ−グリコリド(PLG)もしくはポリ−D,L−乳酸−コ−グリコール酸(PLGA)共重合体に基づく1回投与用の放出制御されるin-situゲル化配合物で、SEPPICの油ベースのアジュバントを用いるw/oベースのエマルションに用いることができる。
【0117】
最も好ましくは、本発明のワクチン組成物は、ペプチド免疫原と、非複合化ペプチド免疫原と混合したCpGオリゴヌクレオチドとの安定化免疫刺激複合体を有する。
【0118】
本発明の種々の態様は、医薬品の分野、特にワクチン接種、細菌およびウイルスなどの病原体での感染の診断および処置の分野において多くの応用を有することが当業者に明確である。本発明の別の用途を以下に記載する。
【0119】
ワクチン調製物
ワクチンとして用いるのに適した免疫原性組成物は、w/oエマルションとして、無機塩懸濁液と組合せた懸濁液として、またはin-situゲル化ポリマーまたは本明細書に開示するこれらの系の組合せとして、本発明の免疫刺激複合体から調製することができる。免疫刺激複合体を含む免疫原性組成物は、それが投与された宿主により免疫応答を誘導させるのに有用である。免疫応答には宿主による抗体の産生などがある。
【0120】
免疫原性組成物は、注射用として、溶液または懸濁液として、凍結乾燥またはスプレードライ粉末またはエマルションとして調製することができる。免疫刺激複合体を有する組成物は、生理学的に許容される緩衝液または賦形剤、例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールおよびこれらの組合せと混合することができる。ワクチンは、別の物質、例えば湿潤剤もしくは乳化剤、pH緩衝剤、またはその有効性をさらに高めるためのアジュバントをさらに含むことができる。ワクチンは、別の生体適合性物質をさらに含む。具体的にはin-situゲル化ポリマー、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリジン(NMP)、トリアセチン、グリセリンおよびポリビニルピロリドン(PVP)を伴うことができる。
【0121】
本発明のワクチンは、非経口的に、例えば皮下、筋内または経皮注射により投与することができる。本発明のワクチンは、口腔、鼻腔内、直腸、膣または眼経路を介して粘膜に投与することができる。
【0122】
ワクチンは、配合物に適合する方法で、治療上有効、保護的且つ免疫原性であるような量で投与する。投与する量は、処置すべき対象または種、例えば抗体を合成する対象または種の免疫系の能力、および必要な場合、細胞媒介の免疫応答を生み出す対象または種の免疫系の能力などに依存する。
【0123】
乳化油、無機塩またはゲル化ポリマーおよび、効果を得るために投与が必要とされる生物学的活性を有する材料の正確な量は、医師または獣医師の判断に依存する。しかしながら、適当な用量範囲は、当業者に容易に決定され、マイクログラムからミリグラムのオーダーであるのがよい。最初の投与およびブースター投与のための適当な投与計画もまた変動するが、最初の投与、それに続く次の投与を含むことができる。ワクチンの用量もまた、投与経路に依存するので宿主または種によって変化する可能性がある。
【実施例】
【0124】
上述の開示は、本発明を一般的に記載する。以下の具体的な実施例を参照することにより、さらに完全な理解を得ることができる。これらの実施例は、単に例示の目的のために記載され、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。状況が示唆するほどに特定の目標を達成するのに必要である形態の変化および等価物の代用が企図される。特定の用語が本明細書で用いられているが、このような用語は説明の意味で意図され、限定の目的ではない。
【0125】
本開示およびこれらの実施例において用いたが、明示的に記載していない化学、有機化学、高分子化学、タンパク質生化学および免疫学の方法は、科学文献で十分に報告されており、十分に当業者の能力内である。
【0126】
免疫刺激複合体の調製
一般に、水溶液中の合成ペプチド免疫原およびCpGオリゴヌクレオチドの免疫刺激複合体は、適当な水性溶媒中のペプチド貯蔵溶液を、穏やかに攪拌した、適当な水性溶媒に溶解したCpGオリゴヌクレオチドの貯蔵溶液の入ったバイアルに滴下することにより、調製する。逆の添加方法も同等に有効である。適合する水性溶媒として、蒸留脱イオン水、生理食塩水(NS=0.9%NaCl)またはリン酸緩衝食塩水(PBS=10mMリン酸緩衝液、0.9%NaCl)またはその混合物が挙げられるがこれらに限定されない。複合化の過程は主に生理学的緩衝液による影響を受けず、合成ペプチド免疫原およびCpGオリゴヌクレオチドの双方に適合する溶媒系を選択した場合、可能性(flexibility)が提供される。
【0127】
複合体は即座に形成され、溶液に懸濁された微細の沈殿物を観察することにより視覚的に同定することができる。このように形成された懸濁液の量は、溶液中のカチオン性ペプチド:CpGオリゴヌクレオチドの相対量の関数である。沈殿過程は、逆に荷電した分子の静電気的中和により制御される。熱力学的に好ましい過程では、高度に荷電した多価アニオン性一本鎖DNAは、正に荷電したカチオン性ペプチド免疫原と結合する61
【0128】
CpGオリゴヌクレオチドは、5’TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT TTG TCG TT 3’(CpG1)配列番号1(32塩基鎖長のオリゴマー)、および5’nTC GTC GTT TTG TCG TTT TGT CGT T 3’(CpG2)配列番号2(24塩基鎖長のオリゴマーにホスホロチオエート基(5’末端でnと表される)を加えたもの)からなる群から選択される。CpGオリゴヌクレオチドは、Oligo’s Etc.(Wilsonville、オレゴン州)により合成され、凍結乾燥状態で得られる。これらの材料は、使用前に適当な水性溶媒で再構成した。CpG1は、8個のヌクレオチド塩基の配列内の隔離されたCpGモチーフを有し、高い親和性でカチオン性ペプチドを結合することにより、短いオリゴヌクレオチドよりも、インビボで強力なアジュバント作用及び向上した安定性を提供することができる。CpG2の5’末端でホスホロチオエート修飾された基は、モル負電荷密度を上昇させ、潜在的に結合の改善を促進する。
【0129】
ペプチド免疫原を合成し、適当な水性緩衝液を用いてペプチドが溶液中でカチオン性であることを確実にした。これは、ペプチド免疫原のCpGオリゴヌクレオチドへの複合化が望ましいワクチンにおいて、重要な検討材料である。各ペプチド免疫原に関するイオン化点すなわちIPおよび溶媒のpHは、適当な緩衝液の選択を導くのに用いられる。蒸留脱イオン水または生理食塩水(NS)に溶解したペプチド貯蔵溶液の水性混合物のpHはおよそ5.5である一方、リン酸緩衝食塩水(PBS)ではペプチド貯蔵溶液のpHはおよそ7.2で著しく高かった。水性溶媒系を注意深く選択して、弱塩基性側鎖、特にヒスチジンを有するアミノ酸由来のペプチドに関して完全なプロトン化を確実にする。
【0130】
表1は、免疫刺激複合体を形成するために用いた合成ペプチド免疫原およびCpGオリゴヌクレオチドの物理特性をリストアップする。3個の例のペプチド免疫原のターゲットを表1に示す。2または3個のペプチド免疫原のカクテル、または、ある例では、ペプチドの類似体を含むペプチドの組換ライブラリーを用いて各ワクチンを調製した。各ペプチド免疫原は、2個のセグメントである標的B細胞エピトープおよびTヘルパーエピトープを有する。Thエピトープは、ペプチド免疫原の免疫原性を改善するために含まれる。
【0131】
適当な動物モデルのペプチドライブラリーをスクリーニングした後、B細胞およびTヘルパーエピトープを選択した。これらの構築物の同定および組成に関する詳細な情報は、米国特許第6,090,388号53、米国特許第5,759,551号54およびWO99/67293号51並びに米国特許第6,107,021号57を参照することにより見出すことができる。表1の配列番号7〜9は、LHRH免疫原ペプチドを有し、ホルモン・アブレーション処置のために計画された前立腺ガン免疫治療用のワクチンに有用である。配列番号10〜11は、アレルギー処置用の抗IgE免疫治療ワクチンに有用である。配列番号4〜6は、HIV感染処置用の抗CD4免疫治療ワクチンに有用である。配列番号12〜13は、FMDペプチドの組換ライブラリーを有し、口蹄疫に対する保護免疫用の抗FMDワクチンに有用である。
【0132】
本発明の免疫刺激複合体は、種々の比率でのカチオン性ペプチド:CpGオリゴヌクレオチドで調製することができ、異なる物理特性、例えば微粒子複合体のサイズを提供することができる。表2は、混合物中のペプチド免疫原に対して計算された平均モル正電荷および平均式量を示す。表2はまた、CpG1(配列番号1)およびCpG2(配列番号2)からの計算された各々の平均モル負電荷寄与を提供する。
【実施例1】
【0133】
LHRH免疫原およびCpG1オリゴヌクレオチドの免疫刺激複合体の調製
本実施例は、種々の割合のLHRHペプチド免疫原およびCpG1オリゴヌクレオチドからの免疫刺激複合体の調製を例示する。本明細書に記載する複合体形成の過程の流れ図を図1に示す。
【0134】
全てのガラス製品、攪拌子およびピペットチップを使用前に121℃で40分間、オートクレーブ処理した。夾雑を避けるために、層流フード内で全試薬の重量測定、分配、移動または反応容器への添加を行った。
【0135】
配列番号7〜9のペプチドを1:1:1モル比で、且つ蒸留脱イオン水中3mg/mlの濃度で混合することにより、LHRHペプチド免疫原貯蔵溶液を調製した。マイクロ攪拌子を備えた一連の2mlバイアルの各々に貯蔵溶液33μL(ペプチド免疫原100μg)を添加した。この溶液に希釈剤として蒸留脱イオン水0.5mlを加えた。蒸留脱イオン水中2.0μg/μl CpG1オリゴヌクレオチドの貯蔵溶液を調製した。種々の量のCpG1オリゴヌクレオチドの貯蔵溶液を各バイアルに加え、免疫刺激複合体を形成した。各バイアルに加えるCpG1オリゴヌクレオチドの量は、LHRH:CpG1の電荷比が、LHREが大過剰である8:1〜CpG1が過剰である1:2の範囲で提供されるように計算することにより、決定した。これらの組成物を調製するために用いたCpG1の各々の量を表3に示す。LHRH:CpG1の比率は、モル電荷比として表され、表3に示す計算に基づくことに留意すべきである。
【0136】
絶えず攪拌しながら室温で添加を行い、30分間平衡化した。すべてのケースにおいて、CpG1オリゴヌクレオチド貯蔵溶液の添加時に、反応混合物の即座な混濁が観察された。CpG1オリゴヌクレオチドの添加完了後、微細な白色粒状懸濁液が観察された。粒子は徐々に沈着し、穏やかに振盪すると容易に再懸濁できた。
【0137】
固体微粒子複合体は、沈着した後本質的に除去することができ、分離した上澄溶液は、残留非複合ペプチド免疫原に関して(λ=280nm)または残留CpG1オリゴヌクレオチドに関して(λ=260nm)紫外線分光法により分析することができる。LHRH:CpG1=8:1、4:1または2:1である過剰のLHRHを用いて調製された免疫刺激複合体に関して、過剰量のペプチドが検出された。
【0138】
紫外線分光法により得られた結果は推定値であり、以下の理由により、得られた数字の±20%になる可能性がある。ペプチド発色団は、CpGオリゴヌクレオチドと比較してかなり小さな減衰係数を有し、ペプチドおよびCpG1を検出するために用いた最大波長は互いに極めて近似している。よって、遊離の残留ペプチドに関する推定値は恐らく誇張されているだろう。さらに、ペプチドCpG複合体の少量のナノ粒子が上澄に存在する可能性がある。CpGに相対して過剰量のペプチド免疫原の増加により、一般的に、平均粒径の小さい複合凝集に至るという観察により、これらの結果の解釈はさらに複雑である。
【0139】
平均凝集粒径分布に関するLHRH/CpG1複合体の順位付けは、LHRH:CpG1 2:1>4:1>8:1の順であることが図2から観察される。複合過程の効率は、選択したペプチド免疫原およびCpGオリゴヌクレオチドの物理特性及びワクチン組成物における各々の相対比率に基づいて変化すると予測される。LHRH:CpG1系に関して、紫外線分光法により測定した非複合ペプチドの残留レベルは、各々バックグラウンドを超えて60〜90%(LHRH:CpG1=8:1)、40〜80%(LHRH:CpG1=4:1)および25〜65%(LHRH:CpG1=2:1)の範囲である。1:1電荷比で調製されたLHRH:CpG1複合体に関して、残留ペプチド免疫原(〜3%)または残留CpGオリゴヌクレオチド(〜2%)は、ほとんど検出できない濃度であった。本質的に完全な免疫原の複合化を有する、この複合体の凝集サイズの大きな増加は、中和電荷で予測される多電解質挙動と合致する。電荷比がLHRH:CpG1=1:2の免疫刺激複合体に関して、過剰のCpG1、即ちCpG1の残留レベル48%がλ=260nmで見出された。残留CpG1のこの量は、最初の等価量のCpG1が溶液中でペプチド免疫原と完全に複合化したかどうかが予測されるCpG1量を概算する。
【0140】
UV法の結果から、オリゴヌクレオチドに対して大過剰のペプチド(例えばLHRH:CpG1=8:1電荷比)で調製した免疫刺激複合体は、溶液中に著しい量の遊離ペプチドをもたらすことがわかる。同様に、ペプチドに対して中程度に過剰なオリゴヌクレオチド(例えばLHRH:CpG1=1:2電荷比)で調製した免疫刺激複合体は、遊離オリゴヌクレオチドが過剰の組成物になる。図2で示すように、オリゴヌクレオチドが過剰に存在すると、より小さな凝集物を安定化させることができる。
【0141】
本実施例は、著しい量のペプチドが溶液中で遊離のままである、大過剰量のLHRH(LHRH:CpG1=8:1電荷比)での免疫刺激複合体の調製に現実的な利点がないことを例示する。同様に、中程度に過剰のCpG1(LHRH:CpG1=1:2電荷比)で調製した免疫刺激複合体に現実的な利点がないことを例示する。ここで、図2で示すように、電気的中和点での完全な複合化の後、凝集物を安定化させるためにのみ過剰のオリゴヌクレオチドを提供できると考えることが妥当である。この結果から、組成物中の粒径を有効に低減させるために、実施した1:1電気的中性複合体に適合するアニオン性分子および/またはポリマーを連続的に添加できることが示される。これは、粒径調節を併せ持った完全な免疫刺激複合化のための新規な戦略を示している。
【0142】
本発明の目的は、インビボでワクチンの安定性を最大にするためのある応用に対して溶液中のペプチド免疫原を効果的に結合させることにある。よって、ペプチド免疫原:CpGオリゴヌクレオチドの電荷比が各々4:1から1:1の範囲で調製した免疫刺激複合体が好ましい。本発明の別の目的は、免疫系への提示のためにより小型でより多くの個々の粒子(〜10ミクロン以下)を用いることにより、インビボで免疫刺激複合体のアジュバント作用を最大にすることにある。
【0143】
残留する遊離且つ非複合化ペプチドが存在することが、より複合化されたワクチン配合物、例えば油中水滴型エマルションまたは無機塩への吸収に対してより望ましいことが見出されている。これらの配合物では、免疫応答のアジュバント作用は、免疫刺激複合体として結合した免疫原の結果であり、w/oエマルション中に分散された、または無機塩に直接吸収された非複合化免疫原の結果であろう。よって、ペプチド免疫原:CpGオリゴヌクレオチドの電荷比が各々8:1〜2:1の範囲で調製した免疫刺激複合体は、これらの応用に有用であることが見出されている。
【0144】
ペプチド免疫原:CpGオリゴヌクレオチドの電荷比が4:1〜2:1の範囲で調製した免疫刺激複合体に対して、安定性のためには最大ペプチド複合化およびアジュバント作用の改善のためには粒径が小であるという組合せがより好ましいことが見出されている。
【0145】
最も好ましい免疫刺激複合体は、代替のデリバリ様式に適合させる物理特性を有するように調製されたものである。具体的には、特に直腸、膣、口腔および鼻デリバリ用に平均粒径が10ミクロン以下のオーダーであるのが望ましい。
【実施例2】
【0146】
RP−HPLCによるペプチド免疫原およびオリゴヌクレオチド複合化効率の定量化
本実施例は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を用いてペプチド免疫原およびオリゴヌクレオチドワクチン成分に関する複合化効率を決定するための好ましい方法を例示する。本技術は、分離および同定すべきペプチドカクテル混合物中の各残留非複合化ペプチドの定量化を可能にし(λ=226nm)、CpGオリゴヌクレオチドの完全な複合化を確認するのに用いることができる(λ=260nm)。固体微粒子複合体は、遠心し、次いで濾過することにより、上澄溶液から分離することができる。2つの別個のRP−HPLCプログラムを上澄サンプルで実行して、溶液中の残留LHRHペプチド免疫原およびCpG1オリゴヌクレオチドを同定および定量する。
【0147】
ペプチドは、Vydac 4.6×250mm C−18カラム(カタログ番号218TP54)、95%溶液A(0.05%TFAのHPLC用水溶液)および5%溶液B(0.05%TFAのHPLC用アセトニトリル水溶液)から24%溶液Aおよび76%溶液Bまでのグラジエントを用いる、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、流速1ml/分で40分間、分離した。UV波長吸光度を226nmでモニターした。標準ペプチドを用いて保持時間によりペプチドの同定を行った。
【0148】
オリゴヌクレオチドは、PerSpective Biosystem 4.6×100mm Oligo R3カラム(カタログ番号R330−050)、95%溶液A(0.1MTEAAのHPLC用水溶液、pH=8)および5%溶液B(HPLC用アセトニトリル)から24%溶液Aおよび76%溶液Bのグラジエントを用いる、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、流速1ml/分で40分間、分離した。UV波長吸光度を260nmでモニターした。標準オリゴヌクレオチドを用いて保持時間によりペプチドの同定を行った。
【0149】
実施例1および実施例11に記載するように、LHRHおよびCpG1が8:1〜1:1の範囲の免疫刺激複合体をこの研究用に調製した。これらの組成物を調製するのに用いたCpG1の各々の量を表3および表9に示す。LHRH:CpG1の比率をモル電荷比として表し、表3および表9に示す計算に基づいていることに留意すべきである。
【0150】
LHRH:CpG1=8:1、4:1または2:1である、過剰のLHRHを用いて調製した免疫刺激複合体に関して、上澄溶液中に非等価量の残留ペプチドが、RP−HPLCにより検出された。これは、複合化過程が選択的であることを示している。この技術により、結合親和性に基づいて溶液中のCpG1オリゴヌクレオチドを選好するLHRHペプチド免疫原の順位付けが可能になる。すべてのケースにおいて、残留する非複合化CpG1オリゴヌクレオチドはRP−HPLCにより検出することができなかった。これは、この成分が完全に複合化していることを示している。
【0151】
電荷比(LHRH:CpG1=1:1)に基づいて、CpG1オリゴヌクレオチドに対してLHRHの等価量を用いて調製した免疫刺激複合体に関して、本質的にはペプチドもCpG1も、RP−HPLCにより検出されなかった。これは、全成分が完全に複合化していることを示している。
【0152】
これらの分析に関する結果の完全なセットを表8に表す。LHRHペプチド免疫原のCpG1オリゴヌクレオチドとの結合は、p607E>p667>p500と順位付けできることは明らかである。3個のペプチドはほぼ同一のイオン化点を有し、3個全てが表1で計算されるように正に荷電している。CpG1オリゴヌクレオチドのp667(電荷+5)に勝るp607E(電荷+4)に関する選好(p607Eおよびp667は双方共にp500(電荷+4)よりも選好される)は、分子量およびこれらのペプチド内の電荷の分布に関係する可能性がある。
【実施例3】
【0153】
乾燥免疫刺激複合体の調製
本実施例は、乾燥状態の免疫刺激複合体を調製するのに用いた手順を説明する。
【0154】
実施例1に記載するように調製した、水性溶媒、蒸留脱イオン水、生理食塩水またはリン酸塩緩衝食塩水中0.5〜1.0mlのLHRH/CpG1複合体の懸濁液をドライアイス/アセトン浴中におき、15分間凍結させた。次いで凍結したサンプルを凍結乾燥器(Vertis 25LEZ)に置き、3日間で200ml、昇華により水を除去した。この手順によりバイアルにほぼ透明なガラス状に仕上がった生成物が得られた。回収された残留固体の外観は用いた水性溶媒に依存し、ほぼ透明なガラス状から白色の綿毛状の固体までの範囲にすることができる。
【0155】
同一容量の水性溶媒中の乾燥材料の再構成により、個々の粒子の懸濁液を再生した。実施例2に記載するように、測定した粒径分布は、本質的な変化を示さなかった。
【0156】
これにより、乾燥および再懸濁方法が、調製された免疫刺激複合体の物理特性に影響しないことが例示された。よって、本発明の免疫刺激複合体を有するワクチン組成物は、懸濁液、固体または乾燥粉末の形態で提供することができる。
【実施例4】
【0157】
(実施例4a)
高せん断均質化を用いる油中水滴型エマルションの調製
本実施例は、均質化技術を用いて、LHRHペプチド免疫原(溶液中1:1:1のモル比の配列番号7〜9)、IgEペプチド免疫原(溶液中2:1のモル比の配列番号10〜11)、CD4ペプチド免疫原(溶液中2:1:1のモル比の配列番号4〜6)由来のカチオン性ペプチド、または種々の比率のLHRH、IgEもしくはCD4免疫原およびCpG1もしくはCpG2オリゴヌクレオチド由来の免疫刺激複合体から油中水滴型(w/o)エマルションを調製する方法を例示する。本明細書に記載する均質化を介するエマルションの形成方法を説明する流れ図を図3に示す。
【0158】
全てのガラス製品、攪拌子およびピペットチップを使用前に121℃で40分間、オートクレーブ処理した。夾雑を避けるために、層流フード内で全試薬の重量測定、分配、移動または反応容器への添加を行った。
【0159】
必要とされる、水相:油相の容量比に関する安定性について、w/oエマルションを最適化した。モンタニド(Montanide(登録商標))ISA 720オイル(SEPPIC, Inc.)を用いる組成物に関して、水:油の比率は容量で30:70であった。ISAモンタニド(登録商標)51またはISAモンタニド(登録商標)50vオイル(SEPPIC, Inc.)を用いる組成物に関して、水:油の比率は容量で50:50であった。
【0160】
(実施例4b)
ISAモンタニド(登録商標)720および免疫刺激複合体からの油中水滴型エマルションの調製
10ml容器に、適当な水性緩衝液に溶解したペプチド免疫原3,333μg(1,111μl、3mg/ml)または適当な水性緩衝液に溶解したペプチド免疫原3,333μg(1,111μl、3mg/ml)およびCpG1もしくはCpG2のいずれかのオリゴヌクレオチドから調製した免疫刺激複合体を加えた。表3および表4は、用いた各試薬の相対量を決定するための計算を示す。
【0161】
具体的には、LHRH:CpG1の電荷比4:1でLHRHペプチド免疫原から免疫刺激複合体を調製するのに、CpG1オリゴヌクレオチド244μg(122μl、2.0μg/ml)を用いた。
【0162】
具体的には、IgE:CpG1の電荷比4:1でIgEペプチド免疫原の免疫刺激複合体を調製するのに、CpG1オリゴヌクレオチド387μg(193.5μl、2.0μg/μl)を用いた。IgE:CpG1の1:1中性複合体を形成するのに、CpG1オリゴヌクレオチド1,548μg(774.0μl、2.0μg/μl)を用いた。
【0163】
具体的には、CD4:CpG2の電荷比2:1でCD4ペプチド免疫原の免疫刺激複合体を調製するのに、CpG2オリゴヌクレオチド402μg(201μl、2.0μg/μl)を用いた。CD4:CpG2の1:2の電荷比を形成するのに、CpG2オリゴヌクレオチド1608μg(804μl、2.0μg/μl)を用いた。
【0164】
各々のISAモンタニド(登録商標)720w/oエマルションを調製するのに、各容器に希釈水性溶媒をさらに加えて水相の最終容量を3.0mlに固定した。
【0165】
LHRHまたはIgEペプチドに関して、生理食塩水またはPBSが複合化に適していることが見出された。各ペプチド免疫原に関して計算されたIPは、9.0を超え(表1)、選択された水性溶媒のpHよりもはるかに大きい。
【0166】
CD4ペプチドの場合、水性溶媒の選択が重要であることが判明した。生理食塩水またはPBSのいずれかで希釈するとき、固体沈殿物が溶液中で速やかに形成されるのが観察された。この不安定性により非経口経路によるこの免疫原の組合せの使用が妨げられる。ペプチド免疫原の試験から、ペプチド配列番号6(表1)の計算されたイオン化点は6.91であることが示された。PBS(pH〜7.2)では、このペプチドは凝集する傾向があり、不安定性を呈すると予測される。この問題に対する解決法は、最初に蒸留脱イオン水中で免疫刺激複合体を調製し、続いて十分なイオン強度の食塩水またはPBSで希釈することにより、懸濁液が等張であり且つ注射に適することを確実にできることが見出された。
【0167】
本実施例は、LHRH、IgEまたはCD4ペプチドの免疫刺激複合体の形態で溶液中の免疫原を安定化することの利点を例示する。
【0168】
その後、希釈された水溶液または懸濁液を、ISAモンタニド(登録商標)720 7.0mlを充填した乾燥25ml反応容器にゆっくりと添加した。粗雑なエマルションを作製するために、混合物を低速(2,000〜3,000rpm)で均質化(High Shear Laboratory Mixer, Sealed Unit, Silverson)しながら添加を行った。水性サンプルが完全に添加されるまでこの処理速度を維持し、水相および油相の均一な予備混合を確実にするために丸2分間続けた。次いで均質化速度を上げ(5,000〜8,000rpm)、さらに5〜10分間維持し、結果的に均質な白色の微細に分散されたw/oエマルションが形成された。
【0169】
懸濁液として、または上述したような油中水滴型エマルションに一度配合された免疫原の最終濃度は、200μg/mlであった。
【0170】
(実施例4c)
均質化法により調製された油中水滴型エマルションの安定性評価
均質化により調製したw/oエマルションの一貫性および安定性を種々の方法により検査した。エマルションが水中油滴型(oil-in-water)(o/w)または水中油中水滴型(w/o/w)でなく、油中水滴型(w/o)エマルションであることを証明するために、組成物の小滴を、蒸留脱イオン水の入ったビーカーに加えた。w/oエマルションの小滴は、表面に浮き、水に分散しない。逆に、o/wエマルションからの小滴は、即座に水に分散し、w/o/w二重エマルションからの小滴は、表面上および水相のバルク中の双方で分散する。ISAモンタニド(登録商標)720から調製したエマルションからの小滴は、分散が最小限で表面に浮き、ISAモンタニド(登録商標)51オイルから調製したエマルションからの小滴は、本質的に分散せずに表面に浮くのが観察された。これらの結果により、エマルションがw/oであり、分散する傾向がISAモンタニド(登録商標)720から調製したw/oエマルションでより高いことがわかる。これは、油自体の最初の粘度および得られたエマルションの粘度に関係する。これは、得られるワクチン配合物の貯蔵庫(depot)能力を最大にするために、重要な検討材料である。
【0171】
ロット間の一貫性に関して、および長期安定性試験について、仕上がったエマルションおよび油の見かけの粘度を検査した(Brookfield DV−1+1回転式粘度計)。ISAモンタニド(登録商標)720は、25℃で〜15mPaの粘度を有する一方、ISAモンタニド(登録商標)720から調製したw/oエマルションは、25℃で〜45−50mPaの粘度を有した。かなり流動性のある生成物を提供した。これは、取り扱いを容易にし、ワクチンをシリンジで分配するのに望ましい。
【0172】
対照的に、ISAモンタニド(登録商標)51は、20℃で〜50mPaの粘度を有する一方、ISAモンタニド(登録商標)から調製したw/oエマルションは、25℃で〜1,500〜2,900mPaの粘度を有した。粘度の広範な変動は、緩衝液選択の作用であることが解った。(PBS=〜2,900mPa、NS=〜2,500mPaおよび蒸留脱イオン水=〜1,500mPa)この高粘度の材料は、移動およびシリンジでの分配に関していくつかの困難を提示する可能性がある。しかしながら、これらの組成物の長期安定性は改善された。1.5mlエッペンドルフバイアルに各エマルション1mlを入れ、高速(5,000rpm)で10分間内容物を遠心することによりエマルションの長期安定性を評価した。これらの条件は、実際の保存条件をシミュレートしないが、エマルションの分離に対する抵抗性を予測するのに用いることができる。ISAモンタニド(登録商標)720の場合、5〜10%の容量が透明または麦わら色の油相を伴って分離するのが表面で観察された。ISAモンタニド(登録商標)51の場合、0〜2%の容量が透明または麦わら色の油相を伴って分離するのが表面で観察された。高粘度のISAモンタニド(登録商標)51エマルション生成物は、より大きな沈殿に対する安定性および分離に対する抵抗性を説明する。
【0173】
w/oエマルションに関する粒径および分布を光学顕微鏡(Nikon DIAPHOT 200)によりさらに特徴付けした。各組成物の顕微鏡写真が得られ、コンピューターで作製したスケールを用いて粒子のサイズ範囲の見積もりを行った。スケール自体は公知の粒径(NIST追跡可能微粒子−Duke Scientific)の標準に対する外部参照である。ISAモンタニド(登録商標)720またはISAモンタニド(登録商標)51のいずれか、およびペプチド免疫原から調製したw/oエマルションに関して、粒径は本質的に同一(約1〜2ミクロン)であり、凝集または融合は最小限であった。ISAモンタニド(登録商標)720またはISAモンタニド(登録商標)51のいずれかおよび免疫刺激複合体から調製したw/oエマルションに関して、粒径はわずかかに大きく(約1〜3ミクロン)、凝集または融合は最小限であった。図4は、ISAモンタニド(登録商標)51および、最終電荷比LHRH:CpG1 4:1を有するLHRHペプチド免疫原100μg由来の免疫刺激複合体からの均質化により調製したw/oエマルションから得られた顕微鏡写真である。
【0174】
最初の平均粒径は10ミクロンのオーダーであった。高せん断下で免疫刺激複合体の水性懸濁液を均質化させる過程の結果、より小型の平均凝集粒径に至った。1〜3ミクロンの範囲のサイズの小滴を伴う、安定したw/oエマルションが得られた。
【実施例5】
【0175】
(実施例5a)
低せん断押出を用いる油中水滴型エマルションの一般的な調製
本実施例は、押出技術を用いる、LHRH、IgEもしくはCD4免疫原由来のカチオン性ペプチドまたは種々の割合のLHRH、IgEもしくはCD4免疫原およびCpG1もしくはCpG2オリゴヌクレオチド由来の免疫刺激複合体からのw/oエマルション形成の方法を説明する。表3および表4は、用いた各試薬の相対量を決定する一般的な計算を示す。本明細書で記載する押出によるエマルション形成の方法を説明する流れ図を図3に示す。
【0176】
全てのガラス製品、攪拌子およびピペットチップ並びに押出機械全体を使用前に121℃で40分間、オートクレーブ処理した。夾雑を避けるために、層流フード内で全試薬の重量測定、分配、移動または反応容器への添加を行った。
【0177】
押出法には、1つのシリンジに装填された水相を、2つのシリンジを連結する細管を通して、第2のシリンジに装填された油相に繰り返し通過させることが含まれる。流動体が細管を通って加圧下で、典型的には100psiで送られるので、乳化が起こる。対照的に、ホモジナイザー系は典型的には、1,000psiを超えた圧力で作動する。上述の押出法に必要な繰返し(return passage)の数は、視覚的に均一なw/oエマルションが作製されるまでしばしば20から30を超える。この手動の押出法は、顕著なせん断を作製することができず、w/oエマルションを効果的に生成するのに必要な交換数が大きく変動する。w/oエマルションの物理特性は、一貫性を欠き、全体の安定性および結果的にインビボでの可能性は典型的には高度に再現不能である。これらの問題にかかわらず、この方法により生成された生成物に関して多くの適用が可能である。
【0178】
これらの欠点に対処するために、押出機械が改良されている(LiposoFast(商標)Basic, Avestin, Inc.、オタワ、カナダ)。装置は2つのシリンジ(0.5mlまたは1.0ml)から構成され、その2つのシリンジはそれらの間に置かれた特定の孔径のポリカーボネート膜を有するホルダーに連結された細管の流路に、ルアー・ロックを介して取り付けられている。元来設計された装置は、調節された大きさのリポソームを調製するためのものであった63。w/oエマルションを調製するための、適合する油ベースの生成物を用いるこのような装置の適用は企図されていなかったようである。膜の孔径を選択することができる(Whatman Nucleopore、0.05μM〜10μM)。小さい孔径によりせん断を高めた分散物の押出が可能になる。粒子が大きなサイズになる配合物には大きい孔径を選択することができる。この装置を用いることにより乳化の効率が高まった。より均一且つ安定した生成物を提供するのに必要とされる繰返し(return passage)は少なくなった。このような調製物のインビボでの可能性はより再現性が高くなると予測される。しかしながら、実際に用いることができる最大容量が少ない(約10ml)ため、および油成分の選択における実際的な制約のために依然制限がある。
【0179】
ISAモンタニド(登録商標)720由来のw/oエマルションの調製にはこの方法がうまく作動する。しかしながら、ISAモンタニド(登録商標)51由来の、高粘度のエマルションは、著しい逆方向の圧力(backpressure)を招き、この押出装置の使用が不可能になる。このように、この方法は見かけの粘度が1,500mPa未満の油からの即時的なw/oエマルションの調製のための方法としては最良であると見なすことができる。
【0180】
特に、ワクチンの保存および安定性に伴う経費が懸念されるか、または患者のコンプライアンスが問題であるかもしくは緩和医療としての適用が関係する場合、この分配方法は、コスト的に有効且つ現実的であろう。一般的な使用のために現場で即時的なw/o配合物を調製するのに熟練者、例えば医師または薬剤師に頼ることができるのが理想的である。
【0181】
せん断および押出が制御されている必要がある、即時的なo/wおよびw/o/w、マイクロエマルションの調製のために、または精製された生成物の調製のためにこの装置およびプロトコルを用いることができる。
【0182】
(実施例5b)
ISAモンタニド(登録商標)720からの油中水滴型エマルションの調製
1.0mlガラスシリンジ(気密性)に、適当な水性緩衝液に溶解したLHRH、IgEもしくはCD4ペプチド免疫原333μg(111μl、3mg/ml)、または各々表3および表4に記載する適当な比率のCpG1もしくはCpG2オリゴヌクレオチド、および適当な溶媒に溶解したLHRHもしくはIgEペプチド免疫原333μgから調製した免疫刺激複合体(電荷比4:1)またはCD4ペプチド免疫原333μgから調製した免疫刺激複合体(電荷比2:1)を加えた。
【0183】
具体的には、LHRH:CpG1が4:1の電荷比でLHRHペプチド免疫原から免疫刺激複合体を調製するために、CpG1オリゴヌクレオチド24.3μg(12.2μl、2.0μg/ml)を加えた。
【0184】
IgE:CpG1が4:1の電荷比でIgEペプチド免疫原から免疫刺激複合体を調製するために、CpG1オリゴヌクレオチド38.7μg(19.4μl、2.0μg/μl)を加えるか、またはIgE:CpG1の1:1中性複合体を形成するために、CpG1オリゴヌクレオチド154.8μg(77.4μl、2.0μg/μl)を加えた。
【0185】
CD4:CpG2が2:1の電荷比でCD4ペプチド免疫原から免疫刺激複合体を調製するために、CpG2オリゴヌクレオチド40μg(20μl、2.0μg/μl)を加えるか、またはCD4:CpG2が1:2の電荷比で複合体を形成するために、CpG2オリゴヌクレオチド160μg(80μl、2.0μg/μl)を加えた。
【0186】
さらに希釈用水性溶媒を加えて水相の最終容量を300μlにした。
【0187】
第2の1.0mlガラスシリンジ(気密性)に、ISAモンタニド(登録商標)720 700μlを加えた。シリンジを、ルアー・ロックを介してポリカーボネートメンブレンフィルタの膜ホルダーおよび支持体を含む押出内蔵ユニットに連結した。水相でペプチド免疫原を用いてw/oエマルションを調製するのに孔径3μmまたは5μmのメンブレンフィルタを選択した。一方、水相に懸濁された免疫刺激複合体を用いてw/oエマルションを調製するのに孔径5μmまたは10μmのメンブレンフィルタを選択した。次いで、典型的には非常に容易に、水相が最初に膜を通って油相に通過した。エマルション過程の間に作製される逆方向の圧力(backpressure)の上昇を伴い、続く交換にはさらなる圧力が必要とされる。8〜12回の通過後、押出時の逆方向の圧力は均等化され、典型的には均質な白色エマルションが得られた。
【0188】
上述したように、溶液として、又は油中水滴型エマルション中の免疫刺激複合体として一度配合された免疫原の最終濃度は、200μg/mlであった。
【0189】
(実施例5c)
押出により調製した油中水滴型エマルションの安定性評価
実施例4cで行われた試験に類似の安定性試験により、押出法により調製したこれらの組成物がw/oエマルションであることを確認した。蒸留脱イオン水の表面上に置いた小滴は、最小限に分散するだけで浮くことが観察された。得られたエマルションの粘度は、〜35−40mPaの範囲であり、実施例4cの高エネルギー均質化を行った系と比較した場合わずかに低下したことが見出された。エマルション小滴の粒径分布は、類似の均質化された系よりも大きかった。ペプチド免疫原から調製したw/oエマルションに関しては約1〜3ミクロン、免疫刺激複合体から調製したw/oエマルションに関しては約2〜5ミクロンであった。比較のために図5は、ISAモンタニド(登録商標)720並びに最終電荷比LHRH:CpG1が4:1のLHRHペプチド免疫原200μgおよびCpG1オリゴヌクレオチド由来の免疫刺激複合体から押出により調製したw/oエマルションから得られた顕微鏡写真である。
【0190】
一般に、図5で示すような低エネルギー押出法により得られた小滴のサイズは、図4で示すような高エネルギー均質化した小滴よりも大きく、高度に凝集されていた。全体的に、これらの即時的w/oエマルションは、即座にまたは同一日に使用するのに十分安定である。
【実施例6】
【0191】
(実施例6a)
in-situポリマーゲルの調製
本実施例は、直接再構成技術を用いる、種々の比率のIgEまたはCD4免疫原およびCpG1またはCpG2オリゴヌクレオチド由来の免疫刺激複合体のin-situゲルマトリックス形成および封入の方法を説明する。本明細書に記載する、再構成によるペプチド免疫原または免疫刺激複合体のいずれかを用いるin-situゲル配合物を調製する方法を示す流れ図を図6に示す。
【0192】
全てのガラス製品、攪拌子およびピペットチップを使用前に121℃で40分間、オートクレーブ処理した。夾雑を避けるために、層流フード内で全試薬の重量測定、分配、移動または反応容器への添加を行った。
【0193】
一般に、種々の重量パーセンテージのPLGまたはPLGA共重合体(Boehringer Ingerheim)を生体適合性溶媒、例えば無水ジメチルスルホキシド(DMSO、Aldrich)に溶解した。高分子量ポリマーでは溶解過程は、激しい振盪を必要とし、完全な溶解を確実にするために継続的に4〜6時間攪拌を続けた。次いでポリマー溶液を孔径0.45ミクロンの有機溶媒に適合する膜(Phenomenex、PTFE)を通して濾過した。これに、適当な生体適合性溶媒中のカチオン性ペプチド免疫原の溶液またはより好ましくは免疫刺激複合体の懸濁液を加えた。ペプチド免疫原またはペプチド/CpG複合体またはこれらの混合物を最初に凍結乾燥し(実施例3に記載するように)、続いて適当な生体適合性溶媒、例えばDMSOに溶解または再懸濁した。
【0194】
極性非プロトン性溶媒、例えばDMSOの使用によりペプチドの長期安定性に関していくつかの問題が提示され得る。DMSOは強力な酸化剤として知られ、感受性のあるアミノ酸、例えばシステインおよびトリプトファンを含むペプチドは、これらの溶液中で化学的に非適合性であり得る。従って、これらの残基を含むペプチド免疫原は、即時使用のために現場で再構成されなければならない。
【0195】
凍結乾燥ペプチド免疫原もしくは免疫刺激複合体またはこれらの混合物を、使用時にバイアル中で直接DMSO中のポリマー溶液に再構成し、それによりペプチド免疫原のDMSOへの長期暴露を避けた。ペプチド免疫原の溶解または免疫刺激複合体もしくは免疫刺激複合体とペプチド免疫原との混合物の再懸濁は迅速で、サンプルの均一性を確実にするために穏やかな振盪を必要とした。
【0196】
これらの一般的な組成物に関しては、安定性が低く、予測される製造上の問題がある。無水DMSO中のポリマー溶液は、水溶液に溶解または懸濁したペプチド免疫原と比較されるほどには加水分解を受け易くない。ポリマー溶液は、解凍時に物理特性に検出される変化なく、凍結することができる(DMSOは約18℃で凍結する)。凍結乾燥状態で単離したペプチドまたは免疫刺激複合体もまた、水の不存在下で安定性が高くなることが示されると予測される。
【0197】
このようなポリマーおよびペプチド免疫原または免疫刺激複合体の混合物は、皮下または筋内注射に適した単一相溶液または懸濁液を構成する。
【0198】
いずれかの系に関して重要なことは、溶液または懸濁液の粘度である。これは皮下または筋肉内経路により組成物を注入および注射する能力に直接影響する。
【0199】
これらの系の見かけの粘度は、PLGまたはPLGA共重合体の構成、分子量、結晶性および対数粘度数などの種々因子の関数である。これらの因子は、各ポリマーに関して溶解できるが、実際の流動性を維持する有用な量を重量で範囲を定める。表5は選択したPLGまたはPLGAポリマーに関する物理特性および実際の使用の溶液粘度を得るためにDMSOに溶解できる対応する量を重量パーセンテージで示す。これらの溶液の見かけの粘度をBrookfield DV−1+回転式粘度計により測定した。
【0200】
これらの組成物に望ましい上限として任意に100mPaを選択した。たいていの場合、見かけの粘度が200mPa未満のin-situゲル化ポリマー溶液として配合した溶液または懸濁液を従来のシリンジにより均一に分配することができる。
【0201】
100mPaの見かけの粘度を提供するために必要とされる、溶液に対して過剰のポリマーを含むポリマー/DMSO溶液は、従来のシリンジまたはニードルレス法などの代替の様式による分配に価値がある。注射および免疫原のバースト放出時のゲル化挙動は、組成物中のポリマーの濃度に一部関係する。結果的に、ゲル化の速度を最大にし、免疫原のバースト放出を低減することが、1回投与を選択できる放出制御組成物の開発において考慮すべき2つのさらなる設計パラメータである。
【0202】
(実施例6b)
PLGAリソマー(PLGA Resomer(登録商標))−RG 503HまたはRG 504Hからのポリマーゲルの調製
攪拌子を備えた2個の別個の25mlフラスコに、各々RG 504H 2,200mgまたはRG 503H 2,750mgを加えた。トランスファーピペットで各フラスコに、無水DMSO(1.1gm/ml)10.0mlを加えた。室温で約2〜3時間、混合物を激しく攪拌し、その後共重合体を十分に可溶化した。完全に溶解した後、貯蔵溶液を0.45μm有機溶媒安定性メンブレンフィルタ(Phenomenex、PTFE)で濾過した。RG 504HおよびRG 503HポリマーのDMSO溶媒に対する最終重量パーセントは各々20%および25%であった。
【0203】
次いでこのように調製したポリマー/DMSO溶液10mlをシリンジを介して、凍結乾燥したIgEまたはCD4ペプチド免疫原(2,000μg)またはCpG1オリゴヌクレオチド232μg(116μl、2.0μg/μl)と混合したIgEペプチド2,000μgもしくはCpG2オリゴヌクレオチド241μg(120.5μl、2.0μg/μl)と混合したCD4ペプチド2,000μg由来の凍結乾燥化免疫刺激複合体(IgE:CpG1電荷比4:1またはCD4:CpG2電荷比2:1)の入ったバイアルに加えた。溶液中の、または懸濁液中の免疫刺激複合体の形態の免疫原の最終濃度は200μg/mlであった。免疫原または免疫刺激複合体を溶液または懸濁液で即座に再構成し、内容物の均一性を確実にするために穏やかに振盪した。
【0204】
特定の重量比でこれらのポリマーから調製した溶液の見かけの粘度は、100mPaに近似することが見出された。(表5参照)。およそ100mPaの溶液粘度のために、リソマー(Resomer(登録商標))RG 503H、リソマー(登録商標)RG 504Hおよびリソマー(登録商標)RG 756が臨界であり、リソマー(登録商標)RG 503Hおよびリソマー(登録商標)RG 504Hに関する濃度は、対数粘度数がかなり低く、並びに双方はアモルファスの特徴を有するPLGAに由来する。ここでモノマー組成物は約50%D,L-ラクチドおよび50%グリコリドであった。これらの材料は、インビボでポリマーの50%が6〜8週の速度で分解すると推定された。従って、封入された成分は、リソマー(登録商標)RG 503Hまたはリソマー(登録商標)RG 504Hから調製したゲルで2〜3か月の放出プロファイルを有する。これらの材料から調製したゲルは、短期間の1回投与用放出制御適用に最も適している。逆に、リソマー(登録商標)RG 756は25% グリコリド残基に対して75% D,L-ラクチドから成るより結晶性のポリマーである。インビボで分解するために、ポリマーの50%で4〜6か月必要であり、封入成分の放出速度は結果的により遅くなる。リソマー(登録商標)RG 756は長期間1回投与用放出制御適用により望ましいと予測される。
【実施例7】
【0205】
免疫刺激複合体としてまたはw/oエマルションとしてまたは組合せで配合されたIgEおよびCD4ペプチド免疫原の免疫原性
本実施例は、筋内に免疫したモルモットにおいて、CpG1またはCpG2オリゴヌクレオチドを用いて免疫刺激複合体として、w/oエマルションとして、またはw/oエマルションに分散した免疫刺激複合体として配合したIgEおよびCD4ペプチド免疫原の免疫原性を例示する。w/oエマルションは、実施例4a/4bに記載する均質化により、または実施例5a/5bに記載する押出により、調製した。
【0206】
6〜8週齢の雌モルモット(Covance Research Products Inc., Denver、ペンシルバニア州)3群を0、3および6週に以下の組成物で筋内(I.M.)免疫した。表4に記載するように調製したIgEペプチド/CpG1免疫刺激複合体(電荷比4:1および電荷比1:1)100μgをPBS(pH7.4)に最終容量250μlで懸濁;表4に記載するように調製したCD4ペプチド/CpG2免疫刺激複合体(電荷比2:1および電荷比1:2)75μlをPBS(pH7.4)に最終容量250μlで懸濁;PBS(pH7.4)75μl中のIgEペプチドをISAモンタニド(登録商標)720(175μl)で乳化;蒸留脱イオン水75μl中のCD4ペプチドをISAモンタニド(登録商標)720(175μl)で乳化;PBS(pH7.4)75μl中の、表4に記載するように調製したIgEペプチド/CpG1免疫刺激複合体(電荷比4:1および中和電荷比1:1)をISAモンタニド(登録商標)720(175μl)で乳化;または蒸留脱イオン水75μl中の、表4に記載するように調製したCD4ペプチド/CpG2免疫刺激複合体(電荷比2:1および電荷比1:2)をISAモンタニド(登録商標)720(175μl)で乳化。
【0207】
免疫刺激複合体、ペプチド免疫原を含むw/oエマルションまたは免疫刺激複合体を含むw/oエマルションを投与した後、モルモットは全体的な病理学または挙動変化を示さなかった。+3、+5、+9、+11および+17週に血清を入手し、IgE免疫原の場合は抗IgE抗体、またはCD4免疫原の場合は抗CD4抗体の存在を免疫原特異的ELISAにより評価した。
【0208】
抗IgE抗体の測定
抗IgEペプチド力価をIgEペプチドELISAにより、およびヒトIgEに対する交差反応性をヒトIgE ELISAにより決定した。上述したように64、抗IgEペプチド反応性の測定のためのペプチドELISAを、Tヘルパー部位を含まない標的抗原部位ペプチドでコートしたマイクロタイタープレートで、行った。抗ヒトIgE交差反応性を測定するために、同様の方法で、ヒトIgE ELISAを、ヒトIgEミエローマタンパク質(American Biosystems, Inc. カタログ番号A113)5μg/mlでコートしたマイクロタイタープレートで行った。
【0209】
捕捉した抗ペプチドまたは抗IgE抗体を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識化抗モルモットIgGヤギ抗体により検出した。相互希釈のlog10として表されるELISA力価を吸光度の直線回帰分析に基づいてカットオフA492を0.5に設定して計算した。各アッセイで用いた、希釈した正常モルモット対照サンプルに関する値が0.15未満であったので、このカットオフ値は正確である。超免疫モルモット抗IgEペプチド免疫原抗血清をポジティブ・コントロールとして使用した。免疫前血清をネガティブ・コントロールとして使用した。
【0210】
抗CD4抗体の測定
組換え可溶性CD4に対する結合に関するELISAを、0.25μg/ml rsCD4(American BioTechnologies)でコートした96ウェルマイクロタイタープレートで、ウェルあたり10mM NaHCO緩衝液(pH9.5)100μlを用いて行った。ウェルを3%ゼラチン250μlで遮断し、リン酸緩衝食塩水(PBS)中0.05% TWEEN20で洗浄し乾燥した。被験ウェルを希釈した免疫血清100μlで37℃で1時間反応させた。ウェルをPBS中0.05%TWEEN20で洗浄し、PBS中1%ヤギ血清、0.05%TWEEN(登録商標)20で1:1,000希釈したホースラディッシュペルオキシダーゼ標識化ヤギ抗マウスIgG(Pierce)100μlと反応させ、洗浄した。クエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)中0.04重量% オルソフェニレンジアミン(OPD)基質100μl(Pierce)および0.12% Hを15分間加えた。1.0M HSO 100μlの添加により反応を停止させ、A492を決定した。超免疫モルモット抗CD4ペプチド免疫原抗血清をポジティブ・コントロールとして使用した。免疫前血清をネガティブ・コントロールとして使用した。
【0211】
競合ELISAによる機能的抗原性の測定
この競合ELSIAでは、その公知の特異性がHIVに結合する宿主細胞表面でのCD4複合体に関するものである、機能的モノクローナル抗体、mAb B4を競合的に阻止する能力に関して惹起された抗体を試験することにより、CD4免疫原に関する機能的抗原性を定量化した。この抗結合部位モノクローナル抗体は、HIV結合複合体のその高度な親和性に関して、可溶性組換えCD4(rsCD4)のドメイン1に対する結合に関して、およびHIV−1 1次単離体を中和する能力に関して十分に特徴づけされている65
【0212】
抗結合部位モノクローナル抗体を、プロテインA親和性クロマトグラフィーにより精製し、ホースラディッシュペルオキシダーゼに抱合させた。mAb B4−HRP抱合体を0.5μg/mlの濃度でアッセイにおいてトレーサーとして使用した。96ウェルマイクロタイタープレートを0.1M 炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)中1μg/ml組換え可溶性CD4タンパク質で一晩インキュベートしてコートした。PBS/ヤギ血清/ゼラチン/TWEEN(登録商標)20の全容量100μl中、連続希釈した免疫血清(モルモット、ブタ、またはヒヒ)およびmAb B4−HRP作業用貯蔵物30μlを用いてマイクロタイターウェルで反応を行った。希釈した血清およびmAb B4−HRPを予めインキュベートした後、混合物をウェルに加えた。競合ELISAのポジティブ・コントロールは、正常血清中0.5μg/ml非標識化抗結合部位mAb 5μlであり、ネガティブ・コントロールは正常血清である。血清/抗体希釈混合物100μlをコートしたウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。プレートを空にし、洗浄し、色素原との反応により結合したmAb B4−HRPを検出した。色素原は3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)であり、TMB結合mAb B4抱合体をA450で検出した。適当な種の正常血清に10μg/mlから連続希釈した、精製されたmAb B4で検量線が得られ、それによりmAb B4−HRPのヒト組換え可溶性CD4に対する結合を競合的に阻止する免疫血清の希釈に関するmAbの等価値が得られた。
【0213】
ウイルス中和アッセイ
熱不活化血清を15%FBS、抗生物質、2%グルタミンおよび炭酸緩衝液を有する50%高グルコースDMEM、およびプールした50%脱繊維素正常ヒト血漿で連続希釈した以外は、記載された66ようにMT−2マイクロプラークアッセイを実施した。このアッセイでは、希釈した血清をHIV20pfuと共にマイクロタイターウェルでインキュベートする。HIV感受性MT−2細胞を加え、溶融アガロースの下で遠心力により単層を形成させる。1週間後、ヨウ化プロピジウム染色したプラークの存在により残留ウイルス感染性を検出する。終末点は、プラーク計数における50%減または90%減での血清希釈であった。
【0214】
免疫原性結果
IgE免疫原の免疫に続く血清抗体価を図7(均質化系)および図9(押出系)に示し、CD4免疫原に関しては図8(均質化系)および図10(押出系)に示す。表6は、各々9週、11週および17週のCD4ペプチド研究(均質化、および押出w/oエマルション系)から得られた血清に関して検定したB4モノクローナル抗体の競合阻止を比較する。表7は、各々9週および11週のCD4ペプチド研究(均質化、および押出w/oエマルション系)から得られた血清に関して検定したウイルス中和活性(各々50%および90%阻止)を比較する。コントロール実験から、すべてのケースにおいて、アジュバント化していないペプチドは免疫原性がないかまたは免疫原性が弱いことがわかった。
【0215】
IgEおよびCD4双方のワクチンに関して、免疫の結果により、免疫刺激複合体はアジュバント作用し、図7〜10に示すようにエマルションを均質化技術により、または押出技術により調製したかどうかに関わらず、9週までの力価はw/oエマルションで得られた力価よりもわずかに弱いかまたはそれに匹敵した。
【0216】
いずれかの方法により調製したw/oエマルションとして分散された免疫刺激複合体を用いる組合せ系により、最も高度な持続性免疫応答が一貫して提供された。図7〜10に表されるように、11から17週にIgEおよびCD4双方の免疫原に関して誘導された抗体価が対数単位のオーダーかまたは、免疫刺激複合体単独か、もしくはペプチド単独でのw/oエマルションのいずれかで得られた抗体価よも高いことが見出された。これに対する唯一の例外は均質化により調製したCD4w/oエマルションであり、ここでこの区別は17週まで見出されない。
【0217】
この観察は、表6および7で強調するCD4ペプチド競合阻止およびウイルス中和研究から得られたデータによりさらに支持される。ここでCD4ペプチド/CpGオリゴヌクレオチド(電荷比CD4:CpG2=2:1)とのw/oエマルション組合せ系に対する免疫血清は、単純なw/oエマルションまたはCD4ペプチド単独との免疫刺激複合体に対する免疫血清と比較して、B4モノクローナル抗体を最高レベルで競合的に阻止した。さらに、同一の配合物は感染性ウイルスに対して中和活性を誘導するのに最も有効であることが示される。
【0218】
均質化調製物又は押出調製物の間で小さな差異が認められ、その差異にはELISAにより得られた、IgEまたはCD4免疫原に対して誘導される力価がピークに達するのに観察された速度が含まれる。押出w/oエマルションでは免疫応答が早期(9週)にピークに達したが、得られた応答期間は良好である(本質的に11週までに等価であり、17週までにわずかに低下)。類似の均質化系はわずかに遅く(11週)にピークに達し、高力価で認めることができるような持続性応答が提供され、17週で持続していた。
【0219】
この傾向はまた、CD4ペプチド/mAb B4−HRP競合阻止アッセイおよび表6および7で強調するウイルス中和研究から得られたデータによっても支持される。
【0220】
9週までに、均質化を介する(87.2%)かまたは押出により(88.6%)非複合化CD4ペプチドから調製したw/oエマルション系により免疫された動物から得られた血清に関するアッセイにより、高レベルのB4モノクローナル抗体の競合阻止が示されている。これらは、均質化を介する(70.1%)かまたは押出により(94.9%)調製したCD4ペプチド/CpG2オリゴヌクレオチド(2:1)のw/oエマルション組合せ系で免疫化した動物から得られた血清と同一の大きさのオーダー(実験誤差内)であることが見出された。17週までに、均質化を介する(11.2%)かまたは押出により(42.6%)非複合化CD4ペプチドから調製したw/oエマルション系により免疫化した動物から得られた血清に関するアッセイにより、劇的に低レベルのB4モノクローナル抗体を競合阻止した。阻止の程度は、均質化法を介する(85.0%)かまたは押出法により(77.2%)調製したCD4ペプチド/CpG2オリゴヌクレオチド(2:1)のw/oエマルション組合せ系で免疫化した動物からの血清で得られた阻止の程度に概してもはや匹敵しなかった。
【0221】
さらに、感染性HIV−1ウイルスの中和に関してアッセイした場合、CD4ペプチドの配合物から得られた血清で同一の傾向が示される。
【0222】
9週までに、均質化を介する(50%ウイルス中和に73%、または90%ウイルス中和に27%)かまたは押出により(50%ウイルス中和に31%、または90%ウイルス中和に12%)非複合化CD4ペプチドから調製したw/oエマルション系により免疫化した動物から得られた血清に関するアッセイにより、本質的に同一のパーセンテージの感染性HIVウイルスが中和された(実験誤差内)。均質化を介する(50%ウイルス中和に12%、または90%ウイルス中和に<10%)かまたは押出により(50%ウイルス中和に103%、または90%ウイルス中和に33%)調製したCD4ペプチド/CpG2オリゴヌクレオチド(2:1)のw/oエマルション組合せ系で免疫化した動物から得られた血清に関するアッセイにより、この時点で、均質化系は、感染性HIV−1ウイルスに対して中和抗体を作製するのに著しく効果が低いことがわかる。11週までに、均質化を介する(50%ウイルス中和に57%、または90%ウイルス中和に17%)かまたは押出により(50%ウイルス中和に<10%、または90%ウイルス中和に<10%)非複合化CD4ペプチドから調製したw/oエマルション系により免疫化した動物から得られた血清に関するアッセイにより、感染性HIVウイルスを中和する能力が低減されるかまたは排除されることが実証された(実験誤差内)。均質化を介する(50%ウイルス中和に40%、または90%ウイルス中和に30%)かまたは押出により(50%ウイルス中和に120%、または90%ウイルス中和に39%)調製したCD4ペプチド/CpGオリゴヌクレオチド(2:1)のw/oエマルション組合せ系で免疫化した動物から得られた血清に関するアッセイにより、均質化および押出の双方の系は今や、感染性HIVウイルスに対して中和抗体応答を誘導するのに有効であることが明確に示された。均質化系の応答は、押出組成物に相対して遅延することがわかった。
【0223】
これらの傾向に関する1つの可能な説明は、次のようであろう。低エネルギー押出法を介して調製したw/oエマルションは、免疫エフェクター細胞に対して相互作用できるか又は早期の時点で免疫エフェクター細胞に対してより有効に複合化免疫原を提示することができる。一方、高エネルギー均質化法は、より均一なエマルションを提供し、本質的により有効な貯蔵庫(depot)として作用する。このような系により得られた免疫応答は、遅延され、より持続性である可能性があると予測される。
【0224】
w/oエマルションに分散した免疫刺激複合体と残留する非複合化ペプチドとの組合せは、IgEおよびCD4の双方の免疫原の全体的な力価を相乗的に増強することが見出された。調製方法は、応答の速度および期間に影響する可能性があり、均質化および押出の双方で有効なワクチンを調製するのに適合することが示された。
【0225】
加えて、別個の研究で、CpG投与量の免疫応答に及ぼす影響を試験した。IgEおよびCD4の双方の免疫原に関して、免疫刺激複合体を、種々の投与量のCpG1またはCpG2オリゴヌクレオチド(すなわちIgE:CpG1=4:1または1:1およびCD4:CpG2=2:1または1:2)から調製し、水性緩衝液で、またはw/oエマルションに分散してのいずれかで投与した。全ての組成物が免疫原性であることが見出されたが、しかし双方の研究で、相対投与量が少ないオリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチドに対して合成ペプチド免疫原が過剰である)が絶対力価および期間に関して優れた免疫応答を誘導した。IgEペプチド/CpG1オリゴヌクレオチドの場合、順位付けは4:1電荷比>1:1中性電荷比の順になる一方、CD4ペプチド/CpG2オリゴヌクレオチドの場合、順位付けは2:1電荷比>1:2電荷比の順になる。たいていの場合、アジュバント作用の改善がアジュバントの投与量増加に相関し得る。これらの実施例では、同時配合した安定化免疫刺激複合体および非複合化ペプチドが免疫応答の最大相乗性に関して予想外に有利であることが実証されている。
【0226】
従って、本実施例で記載するようにIgEまたはCD4免疫原から調製した免疫刺激複合体がインビボで免疫応答を有効にアジュバント作用できると結論付けることができる。得られた応答は、w/oエマルションに分散したこれらの同一の免疫原に関して見出される応答に匹敵するが、w/oエマルションとして合成免疫原を分散するのとは対照的に、合成免疫原の水に分散できる免疫刺激複合体を十分に使用した結果、反応原性の成果は少なくなると予測される。
【0227】
本実施例では、油中水滴型エマルションベヒクル内に分散した、非複合化ペプチドと組合せた免疫刺激複合体としてのIgEまたはCD4免疫原のデリバリにより、最も有効な免疫原の免疫系への提示が提供されることが実証されている。組合せ系で得られた免疫応答は、各系で別個に得られた免疫応答の合計よりも著しく大きい。
【0228】
なお、油中水滴型エマルションベヒクル内に分散されたCD4免疫原の免疫刺激複合体および非複合化CD4免疫原の組合せで免疫化した動物から得られた血清のアッセイにより、B4モノクローナル抗体の競合的な阻止において単純な非複合化CD4免疫原のw/oエマルションよりもさらに有効であることが示された。また、これらの同一の系は、感染性HIV−1ウイルスを中和するのに最も有効であることが示された。
【0229】
モルモットモデルでは、得られた免疫応答の量および寿命により、IgE/CpG1およびCD4/CpG2の組合せに由来する免疫刺激複合体が好ましいことが示された。IgE/CpG2およびCD4/CpG1の代替の対に由来する組成物は、同程度ではないが、アジュバント作用を有することが実験的に測定された。
【0230】
さらに少量および低度(免疫原/アジュバント)での投与計画の可能性が、これらの結果により示される。反応原性が問題である場合、組合せ系により、類似のまたはより高いレベルの免疫原性を有する、より少ない容量のエマルションを投与する可能性が開かれる。
【0231】
具体的には、本実施例は、有効な投与形態としての開発のために、これらの新たな組合せをベースとした配合物の可能性を強く示している。
【実施例8】
【0232】
免疫刺激複合体としてまたはin-situゲル化ポリマー溶液としてまたは組合せで配合されるIgEおよびCD4ペプチド免疫原の免疫原性
本実施例は、CpG1もしくはCpG2オリゴヌクレオチドを用いた免疫刺激複合体として、またはin-situゲル化ポリマーおよび生体適合性溶媒として、またはin-situゲル化ポリマーおよび生体適合性溶媒に懸濁した免疫刺激複合体として配合されたIgEおよびCD4ペプチド免疫原の、筋内免疫化したモルモットにおける免疫原性を例示する。凍結乾燥したペプチド免疫原またはペプチド免疫原およびCpGオリゴヌクレオチド由来の免疫刺激複合体を、実施例3に記載するように調製した。in-situゲル化ポリマーを実施例6a/6bに記載するように調製した。
【0233】
in-situゲル化ポリマー(リソマー(登録商標)RG 504H)として、または本発明に従って形成したin-situゲル化ポリマー(リソマー(登録商標)RG504H)に懸濁したCpG1もしくはCpG2オリゴヌクレオチドを用いた免疫刺激複合体として配合したIgEおよびCD4ペプチド免疫原の免疫原性を試験するために、6〜8週齢の雌モルモット(Covance Research Products Inc., Denver、ペンシルバニア州)3群を、0週に以下の量の免疫原で筋内(I.M.)免疫化した。PBS(pH7.4)に最終容量200μlで再構成および懸濁した、表4に記載するように調製したIgEペプチド/CpG1免疫刺激複合体(電荷比4:1)300μg、またはPBS(pH7.4)に最終容量200μlで再構成および懸濁した、表4に記載するように調製したCD4ペプチド/CpG2免疫刺激複合体(電荷比2:1)300μg、またはジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解したリソマー(登録商標)RG 504H(20重量%)200μlに再構成および懸濁したIgEペプチド300μg、またはジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解したリソマー(登録商標)RG 504H(20重量%)200μlに再構成および懸濁したCD4ペプチド300μg、またはジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解したリソマー(登録商標)RG 504H(20重量%)200μlに再構成および懸濁した、表4に記載するように調製した凍結乾燥したIgEペプチド/CpG1免疫刺激複合体(電荷比4:1)300μg、またはジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解したリソマー(登録商標)RG 504H(20重量%)200μlに再構成および懸濁した、表4に記載するように調製した凍結乾燥したCD4ペプチド/CpG2免疫刺激複合体(電荷比2:1)300μg。
【0234】
免疫刺激複合体、ペプチド免疫原を含むDMSO中のin-situゲル化ポリマーまたは免疫刺激複合体を含むDMSO中のin-situゲル化ポリマーを投与した後、モルモットは全体的な病理学または挙動変化を示さなかった。+3、+6、+9、+12週に血清を入手し、実施例7に記載した手順に従って、IgE免疫原の場合は抗IgE抗体、またはCD4免疫原の場合は抗CD4抗体の存在を免疫原特異的ELISAにより評価した。
【0235】
免疫原性結果
IgE免疫原の1回投与免疫化後の血清抗体価を図11に、CD4免疫原に関しては図12に示す。コントロール実験から、非アジュバント化ペプチドが非免疫原性かまたは弱い免疫原性のいずれかの場合であることがわかった。双方の研究では、免疫化の結果から、免疫刺激複合体単独で中程度にアジュバント作用し、力価は9週までにピークに達することが示された。逆に、in-situゲル化ポリマーに懸濁した非複合化免疫原もまた弱いアジュバント作用を有し、12週でピーク応答が観察された。
【0236】
IgEおよびCD4の双方の免疫原に関して、in-situゲル化ポリマーとして懸濁された、それに由来する免疫刺激複合体が最も高い免疫応答を誘導した。これらの応答は、9週近くでピークに達するのが認められ、12週を通して持続できた。得られた免疫応答の量および期間は、免疫刺激複合体単独、またはin-situゲル化ポリマー単独を含む組成物で投与された非複合化免疫原のいずれでも見出されなかった。
【0237】
ペプチドのような分子量の小さい免疫原は、ポリマー移植体およびゲル中に容易に拡散でき、注射時に多量のバースト放出に至ることが予測される。ゲル化を制御する物理的因子がこの過程を遅延させるように調整することができる;しかしながら、このように放出されるペプチドの塊は、本質的にはアジュバント作用がなく、インビボで通常経験される標準的な分解過程に供される。加えて、封入されて残る少量の材料は、ポリマーが一旦分解すると、有効なブーストには十分でないと予測され、さらに大投与量のペプチドが必要とされる。マトリックス内に捕捉された残留DMSOもまた、ペプチドに含まれる感受性のあるアミノ酸が酸化され得る安定性の問題を提示する。なお、水が、種々の因子、例えばゲル微構造、ポリマー疎水性および結晶性に依存する種々の速度で、これらの材料を浸透できることは十分に確立されている45、46。マトリックスを浸透する水は、インビボでPLG/PLGA共重合体で作動する主要な分解メカニズムであるバルクの加水分解を促進する。この過程は、劇的な局所pH変化に伴うことが解っており、これは本質的にpHを2または3に低下させることができる67。遊離の非複合可溶化ペプチドは、このような環境に安定でない可能性があり、これはさらにこれらの系の可能性を限定する。酸緩衝剤を用いてこれらの問題を埋め合わせることができるが、理想的であると考えることはできない。免疫刺激複合体の形態のペプチド免疫原の懸濁液を封入することにより、この系に多くの安定性およびアジュバント作用の利点が与えられる。ポリマーゲルの注入が一旦行われると、ゲルに有効に封入されていない少量の複合体(恐らくゲル化部位近くに位置する)を、非複合化ペプチド免疫原単独よりもさらに有効に、免疫応答を開始または初回刺激するために提供することができる。CpGオリゴヌクレオチドは、ペプチド免疫原と密接に接触したままであり、複合体粒子の形態でペプチド免疫原をインビボでの酵素消化から、またはマトリックスに含まれるDMSO溶媒に起因し得る化学的不安定性から、さらに保護および安定化させることができる。
【0238】
なお、粒子形態でマトリックスに捕捉されたままであるペプチド免疫原は、遊離の非複合化ペプチドよりも酸性化過程に対してより良好に保護されると予測される。この形態で存在する免疫原は、そうでなければ1回投与放出制御配合物で可能な応答よりも、さらに強力で長く持続する免疫応答を誘導する免疫系に、より効果的な免疫原のブーストを提供すると予測できる。
【0239】
コントロール実験では、DMSO中のRG 504H(20重量%)のポリマー組成物に溶解した非複合化ペプチド免疫原の溶液が、PBSの溶液と接触した場所で迅速にゲル化することが測定された。これらのサンプルに関してゲル相から溶液を分離し、紫外線分光法(λ=280nm)により溶液を分析することにより、相当量の非複合化ペプチド(約50〜70%)がDMSOで同時抽出されることが示された。
【0240】
in-situゲル化ポリマーに懸濁した免疫刺激複合体および非複合化ペプチド免疫原の組合せは、これらの放出制御調製物において、IgEおよびCD4双方の免疫原の全体的な力価を相乗的に増強することが見出された。
【0241】
免疫応答に及ぼすCpGオリゴヌクレオチド投与量の効果を試験する別の研究は、本研究では行わなかった。電気的中性近くで、またはCpGオリゴヌクレオチドもしくは代替の別の適合する賦形剤のいずれかにより供給された過剰の負電荷を伴って調製した免疫刺激複合体を用いることにより、絶対力価においてさらなる改善がなされ得ると予測される。これらの組成物では大部分のペプチド免疫原が免疫刺激複合体として結合しており、注射時のゲル化過程により、生体適合性溶媒での同時抽出による非アジュバント化ペプチドの大きな喪失には至らない。
【0242】
よって、免疫刺激複合体が免疫刺激複合体としてのペプチド免疫原を安定化すること、およびin-situゲル化ポリマーと組合せた場合、これらの組成物がインビボで免疫応答を効果的にアジュバント作用できることの双方を結論付けることができる。これは特に、1回投与での使用が意図されるこれらのポリマー系に重要である。in-situゲル化ポリマーベヒクル内に懸濁された免疫刺激複合体として免疫原を分配することにより、免疫原は免疫系に対して最も効果的に提示される。組合せ系に関して得られた応答は、独立した各系で得られた免疫応答の合計よりも著しく大きく、持続性であり、生体適合性溶媒中のポリマーからの非複合化ペプチド免疫原の単純な再構成により調製されたin-situゲル化ポリマーとは異なっている。
【0243】
モルモットモデルでは、得られた応答の量および寿命により、IgE/CpG1およびCD4/CpG2の組合せに由来する免疫刺激複合体が好ましいことが示された。IgE/CpG2およびCD4/CpG1の代替の対に由来する組成物は、アジュバント作用するが、同一の程度ではないことが実験的に測定された。
【0244】
1回投与計画の可能性がこれらの結果により示される。具体的には、本実施例により、有効な放出制御投与形態として開発するためにこれらの新たな即時的に再構成される組合せをベースとした配合物の可能性が強く示される。
【実施例9】
【0245】
組合せ免疫刺激複合体および無機塩懸濁液の調製
本実施例は、LHRHペプチド免疫原(溶液中1:1:1のモル比の配列番号7〜9)由来のカチオン性ペプチド、または種々の比率のLHRH免疫原およびCpG1オリゴヌクレオチド由来の免疫刺激複合体から無機塩懸濁液を調製する方法を例示する。本明細書に記載する混合懸濁液の調製方法を説明する流れ図を図16に示す。
【0246】
全てのガラス製品、攪拌子およびピペットチップを使用前に121℃で40分間、オートクレーブ処理した。夾雑を避けるために、層流フード内で全試薬の重量測定、分配、移動または反応容器への添加を行った。
【0247】
攪拌子を備えた5.0mlガラスバイアルに、水溶液に溶解したLHRHペプチド免疫原100μg(250μl、0.4mg/ml)または1,600μg(534μl、3.0mg/ml)を加えた。蒸留脱イオン水中LHRH免疫原およびCpG1オリゴヌクレオチドから2つの電荷比(すなわち4:1または1.5:1)のいずれかを有する免疫刺激複合体を調製した。
【0248】
具体的には、LHRH免疫原100μgまたは1,600μgからの4:1複合体の調製にはCpG1オリゴヌクレオチド(2.0mg/ml)7.3μgまたは116.8μgが必要であった。一方、LHRH免疫原1,600μgからの1.5:1複合体の調製にはCpG1オリゴヌクレオチド(2.0mg/ml)350.4μgが各々必要であった。
【0249】
表9は、特定の電荷比を有する一定の最終用量25μg/0.5mlまたは400μg/0.5mlのために、LHRHペプチド免疫原との複合化に必要なCpG1オリゴヌクレオチドの相対量を決定するために用いた計算を示す。
【0250】
第2の5.0mlガラスバイアルに、蒸留脱イオン水中アルヒドロゲル(登録商標)(アルミニウム(Al)3.2mg/mL)無機塩懸濁液1.0mlを加えた。0.1N NaOHを添加することにより、用いるアルヒドロゲル(登録商標)貯蔵懸濁液の最初のpHをpH7.1〜7.4に調整した。分解能+/−0.3pHユニットのpH試験片を用いてpH測定を行った。
【0251】
免疫刺激複合体および残留する非結合免疫原の入ったバイアルに無機塩懸濁液を加え、30分間かけて攪拌して平衡化した。
【0252】
アルヒドロゲル(登録商標)および免疫刺激複合体の混合物に、等張度(tonicity)のために20%NaCl90μl、2-フェノキシ-エタノール(2−PE)保存剤(選択される場合)5.0μlおよびさらなる蒸留脱イオン水を加えて配合物の最終容量が2.0mlに等しくなることを確実にした。
【0253】
上述したように、無機塩と組合せた免疫刺激複合体の懸濁液として一旦配合した免疫原の最終濃度は、各々25μg/0.5mlまたは400μg/0.5mlであった。調製したアルヒドロゲル(登録商標)の最終濃度は標的の種に依存した。ゲッ歯類を意図する配合物は、0.4mg AL/0.5mlで調製したが、非ヒト霊長類を意図する配合物は、0.8mg AL/0.5mlで調製した。すべてのケースにおいて、終了した配合物を、等張度(tonicity)に関して調整し(0.9% NaCl)、非ヒト霊長類に用いるものは保存剤(0.25容量/容量%、2−PE)を含んだ。
【実施例10】
【0254】
ゲッ歯類において無機塩で免疫刺激複合体の懸濁液として配合したLHRHペプチド免疫原の免疫原性
本実施例は、無機塩と組合せてCpG1オリゴヌクレオチドを用いて免疫刺激複合体として配合したLHRHペプチド免疫原の、雄ラットに筋内免疫化した免疫原性を例示する。無機塩懸濁液を実施例9に記載するように調製した。
【0255】
6〜8週齢のスプラーグ−ドーリー(Sprague-Dawley)雄ラット4群を、以下の組成物で0、4および8週に筋内(I.M.)免疫化した。LHRHペプチド25μgを500μlの容量の蒸留脱イオン水に懸濁した;LHRHペプチド25μgを250μlの容量の蒸留脱イオン水に懸濁し、アルヒドロゲル(登録商標)(1.6mg Al/ml)250μlを加えた;表9に記載するように調製したLHRHペプチド/CpG1免疫刺激複合体(電荷比4:1)25μgを500μlの容量の蒸留脱イオン水に懸濁した;表9に記載するように調製したLHRHペプチド/CpG1免疫刺激複合体(電荷比4:1)25μgを250μlの容量の蒸留脱イオン水に懸濁し、アルヒドロゲル(登録商標)(1.6mg Al/ml)250μlを加えた。各配合物に20%食塩水溶液45μlおよび蒸留脱イオン水455.0μlを加えた。各配合物の最終容量は0.1mlであった。
【0256】
ラットは、ペプチド免疫原を含む無機塩または免疫刺激複合体を含む無機塩を投与された後、全体的な病理学または挙動変化を示さなかった。+0、+4、+6、+8および+12週に血清を入手し、免疫原特異的ELISAにより抗LHRH抗体の存在およびRIAイムノアッセイにより血清テストステロンを評価した。
【0257】
抗LHRH抗体の測定
免疫吸着剤としてLHRHペプチド54でコートした96ウェルマイクロタイタープレートを用いてELISAにより抗体活性を測定した。
【0258】
5μg/mlの濃度のペプチド免疫原溶液のアリコート(100μl)を37℃で1時間インキュベートした。続いてウェルを3%ゼラチン/PBS溶液で、37℃で1時間遮断した。次いでプレートを乾燥し、アッセイに使用した。サンプル希釈緩衝液で1:100希釈で出発し、その後10倍連続希釈した被験免疫血清のアリコート(100μl)をペプチドでコートしたプレートに加えた。プレートを37℃で1〜1.5時間インキュベートした。PBS中0.05%TWEEN20でプレートを6回洗浄した。ラット血清で実施したアッセイにはホースラディッシュペルオキシダーゼ標識化ヤギ抗ラットIgG(Cappel)100μl、ブタ血清で実施したアッセイにはヤギ抗ブタホースラディッシュペルオキシダーゼ標識化IgG(Pierce)100μl、またはヒヒ血清で実施したアッセイにはホースラディッシュペルオキシダーゼ標識化ヤギ抗ヒトIgG(Anogen)100μlを、抱合希釈緩衝液(0.5M NaClおよび正常ヤギ血清を含むPBS)に適当な希釈で加えた。プレートを37℃で1時間インキュベートし、上述したように洗浄した。クエン酸緩衝液(pH5.0)中0.04重量%のオルトフェニレンジアミン(OPD)基質(Pierce)および0.12%Hのアリコート(100μl)を15分間加えた。2N HSO50μlの添加により反応を停止させ、各ウェルに関してA492を測定した。
【0259】
吸光度の直線回帰分析に基づいて、カットオフA492を0.5に設定してELISA力価を計算した。各アッセイで用いた、希釈した正常コントロールサンプルに関する値が0.15未満であったので、このカットオフ値は正確であった。
【0260】
血清テストステロンの測定
血清テストステロン値に関するRIAにより免疫原を効率に関して評価した。Diagnostic Products(ロサンゼルス、カリフォルニア州)のRIAキットを用いて、製造者の指示書に従って血清テストステロンレベルを測定した。テストステロンに関する低い検出限界は、0.01〜0.03nMol/lの範囲であった。各サンプルを2検体ずつ分析した。
【0261】
テストステロンレベルが検出限界以下である場合、血清サンプルを去勢レベルであると記録し、<0.1ナノモル/lで「去勢に近い」と記録した。
【0262】
免疫原性結果
LHRH免疫原の免疫化の後の血清抗体価を図13aに示す。対応する血清テストステロンレベルを図13bに示す。
【0263】
本研究において、雄ラットから得られた血清から測定した抗体価から、緩衝液中のLHRHペプチドの組成物も、アルヒドロゲル(登録商標)無機塩と組合せたLHRHペプチドも免疫原性ではないことがわかった。逆に、LHRH/CpG1免疫刺激複合体単独に由来するか、またはアルヒドロゲル(登録商標)無機塩との組合せの双方の組成物が、図13aで表されるように免疫原性であることが示された。
【0264】
これらの後者の2群の抗体応答は最初の8週間にわたって類似することが判明した。12週までに、LHRH免疫刺激複合体およびアルヒドロゲル(登録商標)無機塩の組合せ系に関して見出された抗体力価は、LHRH免疫刺激複合体単独で測定された力価よりも極わずか良好であった(すなわち〜0.5log単位)。
【0265】
緩衝液中のLHRHペプチドおよびアルヒドロゲル(登録商標)無機塩と組合せたLHRHペプチドの組成物に関して測定された対応する血清テストステロンレベルから、LHRHペプチドも無機塩配合物を伴うLHRHペプチドも雄ラットにおいて免疫去勢を達成できないことが同様にわかった。
【0266】
逆に、図13bで示すように、LHRHペプチド/CpG1単独に由来する免疫刺激複合体およびLHRHペプチド/CpG1オリゴヌクレオチドとアルヒドロゲル(登録商標)無機塩との組合せの双方が、各群の全てのラットで効果的に免疫去勢化(immunocastrate)した。
【0267】
アルヒドロゲル(登録商標)無機塩と組合せたLHRH免疫刺激複合体に由来する組成物で各ラットに関して完全な免疫去勢が6週までに(最初のブーストの2週後)達成された。10週までに(2回目のブーストの2週後)LHRH免疫刺激複合体単独に由来する組成物に関して類似のレベルの免疫去勢は達成されなかった。
【0268】
本実施例で、新規ワクチン接種計画により、LHRH免疫刺激複合体(3用量免疫計画)または無機塩と組合せたLHRH免疫刺激複合体(2用量免疫計画)から調製されたいずれかの組成物で有効な免疫去勢(血清テストステロンにより測定される)が得られることを実証した。
【0269】
LHRHペプチド免疫原と共に単独で投与されたアルヒドロゲル(登録商標)無機塩が無効なアジュバントであることが判明した。しかしながら、一旦免疫刺激複合体の形態のLHRH免疫原で配合すると、組合せにより相乗的にはるかに優れた結果が生み出された。無機塩自体は2つの様式で作用することができる。第1は、免疫刺激複合体を注射部位に局在する貯蔵庫(depot)を提供することであり、第2は、免疫原の免疫系への提示を促すことができる免疫系の特異細胞を補充することによる。
【0270】
代替の無機塩であるアジュ・ホス(登録商標)(リン酸アルミニウムに由来する)を用いて本実験を行い、8週までにアジュ・ホス(登録商標)無機塩と組合せたLHRH免疫刺激複合体に由来する系に関してのみ、全ラットで完全免疫去勢化が達成された。
【実施例11】
【0271】
無機塩との免疫刺激複合体の懸濁液として配合されたLHRHペプチド免疫原のヒヒにおける免疫原性
本実施例は、雄ヒヒに筋内免疫化した、無機塩と組合せた種々の比率でCpG1オリゴヌクレオチドとの免疫刺激複合体として配合したLHRHペプチド免疫原の免疫原性を例示する。無機塩懸濁液は実施例9に記載したように調製した。
【0272】
2歳雄ヒヒ2群を0、4および8週に以下の組成物で筋内(I.M.)免疫化した。500μlの蒸留脱イオン水に懸濁した表9に記載するように調製したLHRHペプチド/CpG1免疫刺激複合体(電荷比4:1または1.5:1)400μg;250μlの蒸留脱イオン水に懸濁した表9に記載するように調製したLHRHペプチド/CpG1免疫刺激複合体(電荷比4:1または1.5:1)400μg、アルヒドロゲル(登録商標)(3.2mg Al/ml)250μlを加えた。各配合物に20%食塩水溶液45μl、2-フェノキシ-エタノール2.5μlおよび蒸留脱イオン水452.5μlを加えた。各配合物の最終容量は1.0mlであった。
【0273】
いずれかの比率の免疫刺激複合体またはアルヒドロゲル(登録商標)無機塩との組合せを投与した後、ヒヒは全体的な病理学または挙動変化を示さなかった。+0、+4、+6、+8、+12および+14週(1.5:1複合体に関してのみ)に血清を入手し、免疫原特異的ELISAにより抗LHRH抗体の存在に関して、および血清テストステロンに関してRIAイムノアッセイにより評価した。
【0274】
免疫原性結果
LHRH免疫原の免疫化後の血清抗体力価を図14aに示す。各ヒヒに関して、対応する血清テストステロンレベルを各々図14bおよび14cに示す。
【0275】
図14aに示すように、電荷比4:1または1.5:1のいずれかで調製したLHRH免疫刺激複合体、または電荷比4:1または1.5:1のいずれかのLHRHペプチド免疫刺激複合体およびアルヒドロゲル(登録商標)無機塩の組合せにより免疫化した雄ヒヒから得られた血清から測定した抗体力価から、全ての組成物が免疫原性であることが示された。
【0276】
アルヒドロゲル(登録商標)無機塩が存在するかしないかにかかわらず、電荷比4:1で調製した双方の系では、1.5:1系で得られた抗体価に相対してわずかに高い抗体価が見出された。
【0277】
図14bに示すように、アルヒドロゲル(登録商標)無機塩を含まない電荷比4:1で調製したLHRH免疫刺激複合体で免疫化した雄ヒヒから得られた血清から測定した対応する血清テストステロンレベルにより、試験した双方のヒヒでは全体として無効であることが判明した。
【0278】
図14cに示すように、アルヒドロゲル(登録商標)無機塩を含まない電荷比1.5:1で調製したLHRH免疫刺激複合体から配合された系は、試験したヒヒの1頭では血清テストステロン応答がより効果的に下方制御されることが示されたが、完全な免疫去勢化は達成されなかった。
【0279】
図14bに示すように、アルヒドロゲル(登録商標)と組合せたLHRHペプチド免疫刺激複合体(電荷比4:1)から調製した組成物に関して、10週までに1頭のヒヒで完全な免疫去勢化が得られ、14週を通して持続することが実証された。図14bに示すように、この群の別のヒヒで去勢レベルに近い血清テストステロンが得られたが、この応答は一過性であることが判明した。
【0280】
図14cに示すように、アルヒドロゲル(登録商標)と組合せたLHRH免疫刺激複合体(電荷比1.5:1)から調製した組成物に関して、研究した双方のヒヒで免疫去勢化が成功し(一方のヒヒでは8週までに、他方のヒヒは10週までに達成された)、この効果は14週を通して持続することが実証された。
【0281】
4:1または1.5:1のいずれかの電荷比で調製したLHRH免疫刺激複合体由来の配合物に関して(LHRHペプチド濃度=400μg)、免疫刺激複合体の形態で結合したLHRHペプチド免疫原の実際の量は、著しく変化する。表8は、この形態で投与されたLHRH免疫原の比率を変動する電荷比の関数として示す。4:1の電荷比で調製した場合、溶液中およそ16%(〜63μg)のLHRH免疫原が免疫刺激複合体の形態で結合する一方、1.5:1の電荷比で調製した場合、溶液中およそ86%(〜344μg)が結合している。
【0282】
1.5:1比率系でのように免疫刺激複合体の形態の大部分のLHRH免疫原の提示により、ヒヒにおいてより長時間持続し、早期の免疫去勢応答が提供された。アルヒドロゲル(登録商標)無機塩が添加時に溶液中のさらに10%の遊離の非結合性LHRH免疫原を吸収することが実験的に測定された。従って、免疫刺激複合体と組合せた場合、無機塩がワクチンの効率を改善するメカニズムは、おそらく間接的な免疫変調効果に関連している可能性がある。
【0283】
代替の無機塩であるアジュ・ホス(登録商標)(リン酸アルミニウムに由来する)を用いて本実験を行い、10週までに一方のヒヒで完全免疫去勢化が実証されたが、試験した他方のヒヒはこの時点までに去勢レベルに近い血清テストステロンが実証された。
【0284】
本実施例において、無機塩と組合せたLHRH免疫刺激複合体が非ヒト霊長類で免疫去勢化(血清テストステロンにより測定)を達成するのに有効なワクチンであることが実証された。
【0285】
なお、免疫去勢応答の配合物速度論は、LHRH免疫原:CpG1オリゴヌクレオチドの最初の電荷比および無機塩の選択の関数であることが示された。
【0286】
具体的には、本実施例は、ホルモン・アブレーション動物またはヒトに有用な安全なワクチンの開発のための、これらの新しい組合せをベースとした配合物の可能性を示している。
【0287】
また、本実施例は、ヒトのアンドロゲン感受性前立腺ガンの処置に適した安全なワクチンの開発のための、これらの新しい組合せをベースとした配合物の可能性を示している。
【実施例12】
【0288】
IL−1β由来のペプチドフラグメントの存在下、ISAモンタニド(登録商標)50v、LHRH由来の免疫刺激複合体からの油中水滴型エマルションの調製
10ml容器に、免疫刺激複合体(電荷比16:1)を調製するのに適当な水性緩衝液に溶解したLHRHペプチド免疫原(溶液中モル比1:1:1の配列番号7〜9)1,000μg(2,500μl、0.4mg/ml)およびCpG1オリゴヌクレオチド、もしくは適当な水性緩衝液に溶解したペプチド免疫原1,000μg(2,500μl、0.4mg/ml)に加えて溶液中IL−1βに由来するペプチド(配列番号14、CVQGEESNDKIPC−COH.HCl(式中、Cは2つのシステイン間の環化を示す))を加えるか;または適当な水性緩衝液に溶解したペプチド免疫原1,000μg(2,500μl、0.4mg/ml)をCpG1およびIL−1βペプチドの混合物に加えて、LHRH免疫刺激複合体(電荷比16:1)およびIL−1βペプチドの組合せを調製した。表9は、特定の電荷比に関して固定された最終用量である100μg/1.0mlでLHRHペプチド免疫原との複合化に必要なCpG1オリゴヌクレオチドの相対量を決定するために用いた計算を示す。
【0289】
IL−1β由来のペプチドベースのフラグメントは、アジュバント作用特性を有することが解っている69。本明細書で用いたIL−1βペプチドは、比較的小さく(FW=1421.5)、標準的な生理学的緩衝液に溶解したとき負に荷電する。実施例2に記載する計算を用いると、1nmolのIL−1βペプチドは、2nmolの負電荷に寄与する。このように、この分子は、LHRH免疫原と物理的に相互作用しないと予測され、混合時に沈殿物の形態の複合化が見出された証拠はなかった。
【0290】
具体的には、LHRH:CpG1の電荷比が16:1でLHRHペプチド免疫原から免疫刺激複合体を調製するのに、CpG1オリゴヌクレオチド18.3μg(9.2μl、2.0μg/ml)を使用した。LHRHペプチド免疫原およびIL−1βの溶液を調製するのに、IL−1β 10μg(5.0μl、2.0μg/ml)を適当な水性緩衝液に加えた。LHRH:CpG1の電荷比が16:1でLHRHペプチド免疫原からの免疫刺激複合体にIL−1βを加えたものを調製するのに、CpG1オリゴヌクレオチド18.3μg(9.2μl、2.0μg/ml)およびIL−1βペプチド10μg(5.0μl、2.0μg/ml)を混合した。
【0291】
各々のISAモンタニド(登録商標)50v w/oエマルションを調製するのに、各容器にさらなる水性溶媒希釈剤を加えて水相の最終容量が5.0mlに固定するようにした。
【0292】
プラセボ群の調製のために、水相に生理食塩水5.0mlを用いた。
【0293】
LHRHペプチド免疫原には、複合化に生理食塩水が適していることが見出された。各ペプチドに関して計算されたIPは9.0よりも大きく(表1)、選択した水性溶媒のpHよりもかなり大きい。
【0294】
本実施例は、免疫刺激複合体の形態の溶液中の免疫原を安定化させる利点を例示する。複合化過程はさらなる免疫モデュレーターの存在に適合することが示されている。
【0295】
次いでLHRH免疫原の希釈した水性懸濁液またはプラセボ溶液をISAモンタニド(登録商標)50v(5.0ml)を充填した乾燥した25ml反応容器にゆっくりと加えた。粗雑なエマルションを作成するために低速(2,000〜3,000rpm)で混合物を均質化(High Shear Laboratory Mixer, Sealed Unit, Silverson)しながら添加を行った。水性サンプルが完全に添加されるまでこの処理速度を維持し、水相および油相の均一な予備混合を確実にするために丸2分間続けた。次いで均質化速度を上げ(5,000〜8,000rpm)、さらに5から10分間維持して、均質な白色の微細に分散されたw/oエマルションの形成に至った。
【0296】
前記したように油中水滴型エマルションとして一度配合された免疫原の最終濃度は100μg/mlであった。
【実施例13】
【0297】
免疫刺激複合体としてまたはIL−1βペプチドと共にまたはw/oエマルション中免疫刺激複合体のIL−1βペプチドとの組合せとして配合されたLHRHペプチド免疫原の免疫原性および成長促進効果
本実施例は、イノシシに筋内免疫化した、w/oエマルションと組合せたCpG1オリゴヌクレオチドと、もしくはw/oエマルションと組合せた免疫モデュレーター(IL−1βペプチド)との免疫刺激複合体として、またはw/oエマルション中のさらなる免疫モデュレーター(IL−1βペプチド)と組合せた免疫刺激複合体として;配合されたLHRHペプチド免疫原の免疫原性を例示する。実施例4aおよび実施例12に記載するように均質化によりw/oエマルションを調製した。
【0298】
8週齢のイノシシ(各30kg)5群を以下の組成物で0および8週に筋内(I.M.)免疫化した。最終用量500μlのNaClに懸濁し、ISAモンタニド(登録商標)50v(500μl)を分散した、表9に記載するように調製したLHRHペプチド/CpG1免疫刺激複合体(電荷比16:1)100μg;LHRHペプチド/IL−1βペプチド(1μg)を最終容量500μlのNaClに懸濁し、モンタニド(録商標))ISA 50v(500μl)を分散した;または表9に記載するように調製したLHRHペプチド/(CpG1+IL−1βペプチド(1μg))免疫刺激複合体(電荷比16:1)をモンタニド(登録商標)50v(500μl)を分散した最終容量500μlのNaClに懸濁した。ISAモンタニド(登録商標)50v(500μl)を分散したNaCl500μlのプラセボ・コントロール群を調製し、この研究に含まれた免疫化していないコントロール群は外科的に去勢した。
【0299】
プラセボw/oエマルション、IL−1βペプチドと組合せたペプチド免疫原を含むw/oエマルションまたは免疫刺激複合体もしくはIL−1βペプチドと組合せた免疫刺激複合体を含むw/oエマルションを投与した後、イノシシは全体的な病理学または挙動変化を示さなかった。+0、+8、+10、+12および+14週に血清を入手し、免疫原特異的ELISAにより抗LHRH抗体の存在に関して、RIAイムノアッセイにより血清テストステロンに関して、および体重増加に関して評価した。
【0300】
免疫原性結果
LHRH免疫原の免疫化後の血清抗体価を図15aに示す。対応する血清テストステロンレベルを図15bに示す。試験期間中の体重増加に及ぼす、LHRH免疫原の免疫化後の免疫去勢対外科的去勢の影響を図15cに示す。コントロール実験により、全てのケースにおいて、非アジュバント化ペプチドは、非免疫原性であるかまたは弱い免疫原性であることが実証された。
【0301】
LHRH免疫刺激複合体、サイトカインによりアジュバント化されたLHRHペプチド、またはw/oエマルションとして投与されたサイトカインと同時配合されたLHRH免疫刺激複合体により免疫化された雄イノシシから得られた血清から測定した抗体価により、3つ全ての組成物が免疫原性であることが示された。試験期間中全ての時点で得られた力価が同程度であることが判明した。図15aに示すようにプラセボおよび外科的に去勢されたネガティブ・コントロール群は力価なしに戻った。
【0302】
w/oエマルション中のLHRH免疫刺激複合体もしくはw/oエマルション中IL−1βペプチドによりアジュバント化されたLHRHペプチドにより、またはw/oエマルションとして投与されたLHRH免疫刺激複合体およびIL−1βペプチドの組合せにより免疫化されたイノシシから得られた血清から測定した対応する血清テストステロンレベルにより、これらの群の雄イノシシが12週までに効果的に免疫去勢されたことが示された。
【0303】
特に、w/oエマルション中のLHRH免疫刺激複合体およびw/oエマルション中IL−1βペプチドによりアジュバント作用されたLHRHペプチド由来の組成物は、この血清テストステロンレベルを維持することができなかった。14週までに双方の群からの血清テストステロンレベルがリバウンドすることが示され、いずれの群も免疫去勢されたとは記載されなかった。
【0304】
図15bに示すように、w/oエマルションとして免疫刺激複合体およびIL−1βペプチドの組合せとして配合されたLHRHワクチンは、早期のリバウンドを示さずに同一レベルの免疫去勢をさらに効果的に維持することが判明した。
【0305】
プラセボ・ネガティブ・コントロール群は、種々の時点で血清テストステロン値を大きく変動させて戻り、月間ホルモンレベルの予測される変化に合致して評価された。図15bで示すように、外科的に去勢したポジティブ・コントロール群は、試験期間の全時点で陰性血清テストステロンレベルに戻った。
【0306】
屠殺前のイノシシの血清テストステロンレベルは、製造された食肉の品質に直接相関した。高レベルのテストステロンは、魅力のない味の製品(イノシシ感染)を生み出し、従ってこの特性を制御することは重要な市場検討材料である。無視できる量のテストステロンを確実にするための標準的な方法は、外科的去勢であった。生ワクチン研究法は、イノシシが通常市場に運ばれる時間間隔を超えて有効であることが判明していなければならない。その時点でイノシシは110〜130kgの体重に到達している。
【0307】
この研究では8週齢で免疫したイノシシの成長促進が、14週間追跡調査された。w/oエマルション中LHRH免疫刺激複合体により、またはw/oエマルション中IL−1βペプチドによってのみアジュバント化されたLHRHペプチドにより免疫去勢されたイノシシは、体重増加が知らされ、外科的に去勢した群と同等であった。図15cに示すように、これらは14週までに平均110kgに達した。
【0308】
予期せず、w/oエマルション中LHRH免疫刺激複合体およびIL−1βペプチドの組合せとして配合されたLHRHワクチンにより免疫された群は、さらにかなり有効であることが判明した。この群の全てのイノシシは、試験したその他の群と比較して評価された全ての時点で迅速に応答し、最も高い平均体重増加が報告された。図15cに示すように、この群のイノシシは、12週までに120kgをわずかに下回る平均体重を獲得し、14週までに130kgに到達した。
【0309】
この群および試験したその他の群の間の格差は、LHRH/CpG1の免疫刺激複合体をw/oエマルション中IL−1βペプチドおよび遊離の非複合化LHRHペプチドと組合せて免疫系に提示する場合に得られる効果の相乗的組合せに起因し得る。
【0310】
懸濁液に存在する非常に少量のLHRH/CpG1の免疫刺激複合体を伴う組合せ配合物が有効であることが判明した。本実施例において、16:1のLHRH:CpG1電荷比が、全ブタにおいて著しい応答を提供した。
【0311】
プラセボ・コントロール群は、試験期間中成長促進させるのが最も劣っていた。図15cに示すように、この群に関する平均体重増加は、全てのその他のものに相対して著しく低下していた。
【0312】
プラセボ・コントロールに相対して免疫去勢の結果としての体重増加におけるわずかな改良が過去70に観察されているが、本実施例では、イノシシの感染の除去のために効果的な免疫去勢を得るための新規方法(血清テストステロンにより測定)が実証され、外科的去勢の標準的な方法に関して試験期間にわたって優れた成長促進(体重増加により測定)が得られた。
【0313】
なお、w/oエマルション中免疫刺激複合体およびIL−1βペプチドの組合せとして配合されたLHRHワクチンにより免疫去勢されたイノシシは、代替の配合物かまたは現行の優先される方法である外科的去勢のいずれかにより免疫化された雄イノシシよりも2週間早く市場に出すことができた。
【0314】
具体的には、手術のトラウマに因る喪失を避けるという観点での金銭上の節約、食餌および飼育経費の減少、並びに市場までの時間という観点でのターンオーバーの改善が顕著であり、免疫去勢および成長促進のこの改善された方法の利点が実証される。
【実施例14】
【0315】
ISAモンタニド(登録商標)50vおよびFMD由来の免疫刺激複合体からの油中水滴型エマルションの調製
20ml容器に、適当な水性緩衝液に溶解したFMDペプチド免疫原(溶液中配列番号12〜13)4,000μg(2,000μl、2.0mg/ml)を加えるか、または免疫刺激複合体(電荷比4:1)を調製するのに適当な水性緩衝液に溶解したペプチド免疫原4,000μg(2,000μl、2.0mg/ml)およびCpG1オリゴヌクレオチドを加えた。表9は、特定の電荷比に関して固定した最終用量200μg/1.0mlのFMDペプチド免疫原との複合化に必要なCpG1オリゴヌクレオチドの相対量を決定するために用いた計算を示す。
【0316】
具体的には、FMD:CpG1の電荷比4:1でFMDペプチド免疫原から免疫刺激複合体を調製するのに、CpG1オリゴヌクレオチド125μg(62.5μl、2.0μg/ml)を使用した。
【0317】
各々のISAモンタニド(登録商標)50v w/oエマルションを調製するのに、各容器にさらなる水性溶媒希釈剤を加えて水相の最終容量を10.0mlに固定した。
【0318】
プラセボ群を調製するのに、水相に生理食塩水10.0mlを使用した。
【0319】
FMDペプチド免疫原のライブライリー用に生理食塩水が複合化に適していることが見出された。ライブラリーの位置アナログに由来する各ペプチドに関して計算した平均IPは9.0を超え(表1)、選択した水性溶媒のpHよりもはるかに大きい。
【0320】
次いでFMD免疫原の希釈した水性懸濁液またはプラセボ溶液をISAモンタニド(登録商標)50v(10.0ml)を充填した乾燥した25ml反応容器にゆっくりと加えた。粗雑なエマルションを作製するために低速(2,000〜3,000rpm)で混合物を均質化(High Shear Laboratory Mixer, Sealed Unit, Silverson)しながら添加を行った。水性サンプルが完全に添加されるまでこの処理速度を維持し、水相および油相の均一な予備混合を確実にするために丸2分間続けた。次いで均質化速度を上げ(5,000〜8,000rpm)、さらに5〜10分間維持し、結果的に均質な白色の微細に分散されたw/oエマルションが形成された。
【0321】
上述したように、油中水滴型エマルションに一旦配合された免疫原の最終濃度は、200μg/mlであった。
【実施例15】
【0322】
w/oエマルション中に免疫刺激複合体として配合されたFMDペプチド免疫原の免疫原性および保護
本実施例は、ウシを筋内免疫化した、w/oエマルションとして、またはw/oエマルションと組合せたFMD免疫刺激複合体として配合されたFMDペプチド免疫原の免疫原性を例示する。実施例4aおよび実施例14に記載するように均質化することによりw/oエマルションを調製した。
【0323】
成熟したウシ3群を0および3週に以下の組成物で筋内(I.M.)免疫化した。最終容量1,000μlのNaClに懸濁し、ISAモンタニド(登録商標)50v(1,000μl)を分散したFMDペプチド400μg;または最終容量1,000μlのNaClに懸濁し、ISAモンタニド(登録商標)50v(1,000μl)を分散した、表9に記載するように調製したFMDペプチド/CpG1免疫刺激複合体(電荷比4:1)。ISAモンタニド(登録商標)50v(1,000μl)で乳化したNaCl 1,000μlのプラセボ・コントロール群を調製した。
【0324】
プラセボw/oエマルションまたはFMDペプチド免疫原もしくはFMD免疫刺激複合体を含むw/oエマルションを投与した後、ウシは、全体的な病理学または挙動変化を示さなかった。+5週に入手した血清をFMD中和抗体の存在に関して評価し、+6週に14日間継続する試験における保護レベルを決定するためにウシを生ウイルスで誘発した。
【0325】
抗FMD抗体の測定−中和アッセイ
FMD抗体の定量的中和アッセイ(NA)を、BHK−21細胞を用いて平底組織培養用マイクロタイタープレートで実施した。試験は50μl量の同一容量試験である。1:4希釈で始めて、2倍希釈シリーズで2検体ずつ血清を希釈した。試験する血清サンプルを同一容量のFMDV OManisa血清型(200 TCID50/0.05ml)と混合し、37℃で1時間インキュベートした。10%ウシ血清を含む培地で10セル/mlの細胞懸濁液を調製した。50μlの容量の細胞懸濁液を各ウェルに加えた。プレートを密閉し、37℃で2〜3日インキュベートした。
【0326】
48時間後に顕微鏡試験を行うことができた。10%ホルモル/食塩水で30分間固定を行った。染色のためにプレートを10%ホルマリン中0.05%メチレンブルーに30分間浸漬した。陽性のウェル(この場合ウイルスは中和されており、細胞は無傷のままであった)は青色に染色された細胞を含有するのが認められた。陰性ウェルは空である。力価を、50%終点で血清/ウイルス混合物に存在する血清の最終希釈として表した。
【0327】
ウシ誘発試験プロトコル
0日および21日にワクチンまたはプラセボを投与した全ウシを35日に、別個の密閉された部屋に群分けした。42日に、各動物を舌の背面の2箇所に注射した全部で10 BID50 FMDV Oで舌側皮内(IDL)に誘発した。
【0328】
誘発後、14日間FMDの臨床徴候の発達に関してウシを観察し、体温を毎日記録した。保護されなかった動物は、舌以外の部位で障害を示した。有効であると考えられるウイルス誘発のために、コントロール動物は、少なくとも3本の脚で障害により示される一般的な感染を発達させるはずである71
【0329】
免疫原性結果
FMD免疫原の免疫の後の中和抗体(N.A.)力価および対応する保護結果を表10に示す。
【0330】
w/oエマルションとして投与されたFMDペプチド免疫原により、またはFMD免疫刺激複合体により免疫化されたウシ(+5週)から得られた血清から測定したN.A.力価により、双方の組成物が免疫原性であることが示された。5週の時点で得られた力価は、高度に変動性であるが、すべてのケースにおいて、16よりも大きいことが示された。Office International des Epizooties(OIE)により確立されるような口蹄疫ワクチンの効力の証明のための最低要件は,N.A.力価16である71。表10に示すように、プラセボ・ネガティブ・コントロール群の各去勢ウシは、わずかなN.A.力価に戻り、その全ては16未満であった。
【0331】
保護の確証は、特定の力価の生ウイルスでの免疫群の誘発により得られるはずである。生ウイルスを舌の背面の2箇所に注射した全部で10 BID50 FMDV Oで舌側皮内(IDL)に投与した。
【0332】
N.A.力価が全群で確立された1週間後である6週に、誘発プロトコルを開始し、表10に示す結果により、w/oエマルションとして投与された非結合性FMDペプチドと組合せたFMDペプチド/CpG1免疫刺激複合体由来の配合物(3/3が保護された)が、w/oエマルション単独として投与されたFMDペプチド由来の配合物(1/3が保護された)よりも優れていることが判明した。
【0333】
プラセボ・コントロール群により、この群の3匹全てのウシが感染され、表10に示すように誘発後14日以内に疾病の徴候を示した(0/3が保護された)ので、誘発に用いた生ウイルスは十分に悪性であることが確認された。
【0334】
w/oエマルション中FMD免疫原またはFMD免疫刺激複合体で配合した双方の群は+5週までに著しいN.A.抗体価を得た。
【0335】
驚くべきことに、誘発研究により、優れた効果の配合物がw/oエマルション中FMD免疫刺激複合体を含む配合物から誘導されることが実証された。この組成物は同時にN.A.応答を改善し、ウイルス感染に対抗するのに重要な特定の種類の免疫応答を上方制御するのにさらに有効である可能性がある。
【0336】
具体的には、w/oエマルションの形態で提示されたFMDおよびCpG1由来の免疫刺激複合体は、免疫応答(例えばIFN−γ)のThアームを効果的に増強できる。CpGオリゴヌクレオチドのこの役割は、別のモデルで十分に確立されており、IFN−γ自体が、インフルエンザウイルスに対して免疫保護を達成する有効な免疫モデュレーターであることが示されている72
【0337】
口蹄疫の制御は、一旦発生が同定されると、しばしば感染した、および近隣の群れを処分することにより成し遂げられる。ウシ、ブタおよびヒツジのような重要な商品の経済的損失はしばしば重大である。既存のワクチン接種計画は死滅ウイルスを用いるが、これは場合によっては現地で製造され、品質が劣っている。生ウイルスからの製造は、それに伴って、製造に関連する種々の問題を有し、製品自体が安全性に関するリスクの可能性があることを提示する。合成ペプチド由来の免疫原に基づく戦略は、有効な免疫のための改善された方法を提示し、リスクは低いはずであると考えられる。
【0338】
具体的には、本実施例は、合成ペプチドをベースとしたワクチン接種計画が安全且つ有効にウシを口蹄疫に対して保護できることを例示する。
【0339】
なお、本実施例は、口蹄疫に対して感受性のある重要な家畜の一般的な保護のためのこのワクチン研究法の利用性を例示する。
【0340】
【表1】

【0341】
【表2】

【0342】
【表3】

【0343】
【表4】

【0344】
【表5】

【0345】
【表6】

【0346】
【表7】

【0347】
【表8】

【0348】
【表9】

【0349】
【表10】

【図面の簡単な説明】
【0350】
図面を参照することにより、本発明はさらに理解される。
【図1】図1は、カチオン性免疫原及びCpGオリゴヌクレオチドの複合化プロセスを示す概略図である。
【図2】図2は、レーザ回折測定法により測定した、種々の比率でのLHRHペプチド免疫原及びCpG1オリゴヌクレオチドから調製した安定化免疫刺激複合体の典型的な粒径分布を示す。
【図3】図3は、均質化又は押出技術を用いる水中油(w/o)エマルションの製法の概略図である。
【図4】図4は、ISAモンタニド(登録商標)51及びLHRH:CpG1免疫刺激複合体から均質化を介して調製したw/oエマルションの典型的な顕微写真を示す。ここで、LHRH:CpG1は、最終的に固定した全ペプチド濃度100μg/mLにおいて、4:1である。
【図5】図5は、ISAモンタニド(登録商標)720及びLHRH:CpG1免疫刺激複合体から押出化を介して調製したw/oエマルションの典型的な顕微写真を示す。ここで、LHRH:CpG1は、最終的に固定した全ペプチド濃度200μg/mLにおいて、4:1である。
【図6】図6は、再構成を行うin-situポリマーゲル化法の詳細の概略図である。
【図7】図7は、実施例7に記載した免疫化プロトコールによって筋内(I.M.)免疫処置したモルモットの血清IgG応答を示す。
【図8】図8は、実施例7に記載した免疫化プロトコールによって筋内(I.M.)免疫処置したモルモットの血清IgG応答を示す。血清なしは、CD4ペプチド及びCpG2由来の免疫刺激複合体で17週間、免疫処置した動物で得た。これは図8においてアスタリスクで示す。
【図9】図9は、実施例7に記載した免疫化プロトコールによって筋内(I.M.)免疫処置したモルモットの血清IgG応答を示す。
【図10】図10は、実施例7に記載した免疫化プロトコールによって筋内(I.M.)免疫処置したモルモットの血清IgG応答を示す。血清なしは、CD4ペプチド及びCpG2由来の免疫刺激複合体で17週間、免疫処置した動物で得た。これは、図10においてアスタリスクで示す。
【図11】図11は、実施例8に記載した免疫化プロトコールによって筋内(I.M.)免疫処置したモルモットの血清IgG応答を示す。
【図12】図12は、実施例8に記載した免疫化プロトコールによって筋内(I.M.)免疫処置したモルモットの血清IgG応答を示す。
【図13】図13aは、実施例10に記載した免疫化プロトコールによって筋内(I.M.)免疫処置した雄ラットの血清IgG応答を、図13bは合計血清テストステロンを示す。
【図14】図14aは、実施例11に記載した免疫化プロトコールによって筋内(I.M.)免疫処置した雄ヒヒの血清IgG応答を、図14b及び図14cは合計血清テストステロンを示す。
【図15】図15aは、実施例13に記載した免疫化プロトコールによって筋内(I.M.)免疫処置したイノシシの血清IgG応答を、図15bは合計血清テストステロンを、図15cは群内の平均体重増加を示す。
【図16】図16は、免疫刺激複合体及び無機塩の混合懸濁液の調製法の詳細を示す概略図である。
【配列表フリーテキスト】
【0351】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性ペプチド免疫原及びアニオン性CpGオリゴヌクレオチドを含有する安定化免疫刺激複合体であって、
前記カチオン性ペプチド免疫原は、ターゲットB細胞又はCTLエピトープ、及びTヘルパー細胞エピトープを含有し、該カチオン性ペプチド免疫原は、pH5.0〜8.0の範囲で、該ペプチド免疫原中のリジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)の各々に対して+1の電荷、アスパラギン酸(D)又はグルタミン酸(E)の各々に対して−1の電荷、及びその他のすべてのアミノ酸に対して0の電荷を割り当てることによって計算される正の正味電荷を有し、
前記アニオン性CpGオリゴヌクレオチドは、pH5.0〜8.0の範囲で負の正味電荷を有し且つシトシン−グアニジン部の繰り返しを有する8〜64個のヌクレオチド塩基を有する一本鎖DNAであり、CpG部の繰り返し数が1〜10の範囲であり、
前記カチオン性ペプチド免疫原:CpGオリゴヌクレオチドの電荷比が8:1〜1:2の範囲であり、
前記複合体は、沈殿物である(ただし、以下のi)〜iii)の条件を全て満たす組合せは除く:
i)前記カチオン性ペプチド免疫原が配列番号7、8及び9、並びにこれらの混合物からなる群から選ばれ、
ii)前記CpGオリゴヌクレオチドが、5’ TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT TTG TCG TT 3’(CpG1)(配列番号1)であり、
iii)複合体は、その平均粒径が1〜30μmの沈殿物である)
上記安定化免疫刺激複合体。
【請求項2】
前記カチオン性ペプチド免疫原が合成ペプチド免疫原の混合物を有する請求項1記載の免疫刺激複合体。
【請求項3】
前記カチオン性合成ペプチド免疫原の正の正味電荷が少なくとも+2である請求項1記載の免疫刺激複合体。
【請求項4】
合成ペプチド免疫原の混合物の正の正味電荷の平均が少なくとも+2である請求項2記載の免疫刺激複合体。
【請求項5】
前記アニオン性オリゴヌクレオチドの負の正味電荷が少なくとも−2である請求項3又は4記載の免疫刺激複合体。
【請求項6】
前記CpGオリゴヌクレオチドが18〜48個のヌクレオチド塩基を有する一本鎖DNAであり、CpG部の繰り返し数が3〜8である請求項1記載の免疫刺激複合体。
【請求項7】
前記CpGオリゴヌクレオチドが、式5’XCGX3’(式中、C及びGは非メチル化であり;XはA(アデニン)、G(グアニン)及びT(チミン)からなる群から選ばれ、XはC(シトシン)又はT(チミン)である)を有する請求項1記載の免疫刺激複合体。
【請求項8】
前記CpGオリゴヌクレオチドが、式5’(XCG(X3’(式中、C及びGは非メチル化であり;XはA、T又はGからなる群から選ばれ、XはC又はTである)を有する請求項1記載の免疫刺激複合体。
【請求項9】
前記CpGオリゴヌクレオチドが、5’ TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT TTG TCG TT 3’(CpG1)(配列番号1)、32塩基鎖長オリゴマー、及び5’nTC GTC GTT TTG TCG TTT TGT CGT T 3’(CpG2)(配列番号2)、24塩基鎖長オリゴマー+nで示されるホスホロチオエート基からなる群から選ばれる請求項1記載の免疫刺激複合体。
【請求項10】
前記CpGオリゴヌクレオチドが、5’ TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT TTG TCG TT 3’(CpG1)(配列番号1)である請求項9記載の免疫刺激複合体。
【請求項11】
前記カチオン性ペプチド免疫原が、Tヘルパー細胞エピトープと共役した合成ペプチドである請求項9記載の免疫刺激複合体。
【請求項12】
前記カチオン性ペプチド免疫原が、配列番号7、8及び9、並びにこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項11記載の免疫刺激複合体。
【請求項13】
カチオン性ペプチド免疫原及びアニオン性CpGオリゴヌクレオチドを含有する安定化免疫刺激複合体を調製する方法であって、
(a)ペプチド免疫原中のリジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)の各々に対して+1の電荷、アスパラギン酸(D)又はグルタミン酸(E)の各々に対して−1の電荷、及びその他のすべてのアミノ酸に対して0の電荷を割り当てることによってペプチド免疫原の電荷を測定し、ペプチド免疫原のN末端又はC末端に、リジン、アルギニン、ヒスチジン、及びこれらの混合物からなる群から選ばれるアミノ酸を付加することによって、該ペプチド免疫原がpH5.0〜8.0の範囲で正の電荷を有するように、該ペプチド免疫原の電荷を調整する工程;
(b)ホスホジエステル又はホスホロチオレート基の各々に−1の電荷を割り当てることによってシトシン−グアニジン部の繰り返しを有する8〜64個のヌクレオチド塩基を有する一本鎖DNAであり、CpG部の繰り返し数が1〜10の範囲であるCpGオリゴヌクレオチドの電荷を測定し、CpGオリゴヌクレオチドがpH5.0〜8.0の範囲で負の電荷を有するように、CpGオリゴヌクレオチドの5’末端をホスホロチオレート基で修飾する工程;
(c)蒸留脱イオン水、食塩水、PBS及びこれらの混合物からなる群から選ばれる水相であって、該水相のpHが前記ペプチド免疫原のイオン化点よりも低い水相に前記カチオン性ペプチド免疫原を溶解するか又は分散する工程;
(d)蒸留脱イオン水、食塩水、PBS及びこれらの混合物からなる群から選ばれる水相に前記アニオン性CpGオリゴヌクレオチドを溶解する工程;
(e)前記カチオン性ペプチド免疫原の溶液又は分散液に、水相中の前記CpGオリゴヌクレオチドを、カチオン性ペプチド免疫原:CpGオリゴヌクレオチドの電荷比が8:1〜1:2の範囲で、前記ペプチド免疫原と前記CpGオリゴヌクレオチドとの安定化免疫刺激複合体を形成する量で滴下する工程;を有し、
前記複合体は、沈殿物である(ただし、以下のi)〜iii)の条件を全て満たす組合せは除く:
i)前記カチオン性ペプチド免疫原が配列番号7、8及び9、並びにこれらの混合物からなる群から選ばれ、
ii)前記CpGオリゴヌクレオチドが、5’ TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT TTG TCG TT 3’(CpG1)(配列番号1)であり、
iii)複合体は、その平均粒径が1〜30μmの沈殿物である)
上記方法。
【請求項14】
工程(e)により得られた免疫刺激複合体の懸濁液の水相を除去する工程をさらに有する請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記水相を、凍結乾燥又はスプレードライによって除去する請求項14記載の方法。
【請求項16】
免疫刺激複合体が、平均粒径1〜50μmを有する請求項13記載の方法。
【請求項17】
添加するペプチド免疫原及びCpGオリゴヌクレオチドの量が、カチオン性ペプチド免疫原:CpGオリゴヌクレオチドが4:1の範囲での電荷比である請求項13又は14記載の方法。
【請求項18】
添加するペプチド免疫原及びCpGオリゴヌクレオチドの量が、カチオン性ペプチド免疫原:CpGオリゴヌクレオチドが2:1の範囲での電荷比である請求項13又は14記載の方法。
【請求項19】
添加するペプチド免疫原及びCpGオリゴヌクレオチドの量が、カチオン性ペプチド免疫原:CpGオリゴヌクレオチドが1.5:1の範囲での電荷比である請求項13又は14記載の方法。
【請求項20】
添加するペプチド免疫原及びCpGオリゴヌクレオチドの量が、カチオン性ペプチド免疫原:CpGオリゴヌクレオチドが1:1の範囲での電荷比である請求項13又は14記載の方法。
【請求項21】
カチオン性ペプチド免疫原及びアニオン性CpGオリゴヌクレオチドを含有する免疫刺激複合体を含有する油中水滴型(water-in-oil)エマルションの調製方法であって、
(a)ペプチド免疫原中のリジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)の各々に対して+1の電荷、アスパラギン酸(D)又はグルタミン酸(E)の各々に対して−1の電荷、及びその他のすべてのアミノ酸に対して0の電荷を割り当てることによってペプチド免疫原の電荷を測定し、ペプチド免疫原のN末端又はC末端に、リジン、アルギニン、ヒスチジン、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる基を付加することによって、該ペプチド免疫原がpH5.0〜8.0の範囲で正の電荷を有するように、該ペプチド免疫原の電荷を調整する工程;
(b)ホスホジエステル又はホスホロチオレート基の各々に−1の電荷を割り当てることによってシトシン−グアニジン部の繰り返しを有する8〜64個のヌクレオチド塩基を有する一本鎖DNAであり、CpG部の繰り返し数が1〜10の範囲であるCpGオリゴヌクレオチドの電荷を測定し、CpGオリゴヌクレオチドがpH5.0〜8.0の範囲で負の電荷を有するように、CpGオリゴヌクレオチドの5’末端をホスホロチオレート基で修飾する工程;
(c)蒸留脱イオン水、食塩水、及びリン酸緩衝食塩水からなる群から選ばれる水相に、沈殿物である免疫刺激複合体を調製する工程;
(d)合成油、植物油、鉱油、代謝可能な動物油(metabolizable animal oil)及びこれらの混合物からなる群から選ばれる連続油相に前記水相中の免疫刺激複合体を加える工程;
(e)機械的せん断下で、前記水相中の免疫刺激複合体を連続油相に分散させて均質な油中水滴型エマルションを形成する工程;を有し、
前記カチオン性ペプチド免疫原:CpGオリゴヌクレオチドの電荷比が8:1〜1:2の範囲である(ただし、以下のi)〜iii)の条件を全て満たす組合せは除く:
i)前記カチオン性ペプチド免疫原が配列番号7、8及び9、並びにこれらの混合物からなる群から選ばれ、
ii)前記CpGオリゴヌクレオチドが、5’ TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT TTG TCG TT 3’(CpG1)(配列番号1)であり、
iii)複合体は、その平均粒径が1〜30μmの沈殿物である)
上記方法。
【請求項22】
(a)第1のシリンジに免疫刺激複合体を含む前記水相を充填する工程;
(b)第2のシリンジに対数粘度数1,500mPa未満の前記油相を充填する工程;
(c)第1及び第2のシリンジを、細管を介して制御孔径(0.05〜20μm)の膜を内蔵する膜支持体までつなぐ工程;及び
(d)均質なw/oエマルションが形成されるまで、膜を介して交換を繰り返すことにより前記水相を油相へと押し出す工程;を有する、請求項21記載の油中水滴型(water-in-oil)エマルションの調製方法。
【請求項23】
前記油相は、医薬グレードの鉱油を伴う天然の代謝可能な動物油中の精製乳化剤;不完全フロイントアジュバント(Incomplete Freund’s Adjuvant)の化学特定物;鉱油及びマンニド・オレイン酸(mannide oleate)、並びにこれらの混合物からなる群から選ばれる代謝可能又は代謝不能な油からなる群から選ばれる請求項21又は22記載の方法。
【請求項24】
前記水相は、界面活性剤、エマルション安定化剤、又はこれらの組合せをさらに含有する請求項21又は22記載の方法。
【請求項25】
前記エマルション安定化剤は、マンニド−オレイン酸(mannide-oleate)及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記油相は、3-O-デスアシル-4’-モノホスホリルリピッドA(MPL)、N-アセチル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(MDP)、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)、N,N-ジオクタデシル-N’,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)プロパンジアミン(アブリジン(Avridine))、N-(2-デオキシ-2-1-ロイシルアミノ-β-D-グルコピラノシル)-N-オクタデシル-ドデカノイルアミド・ハイドロアセテート(ベイ−1005(BAY-1005))、3β-[N-(N,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、NAc-Mur-L-Thr-D-isoGln-sn-グリセロール・ジパルミトイル(ムラパルミチン(Murapalmitine))及びこれらの誘導体からなる群から選ばれるアジュバントをさらに含有する請求項21又は22記載の方法。
【請求項27】
前記水相は、PCPP、サポニン、コレラ毒、大腸菌(E.Coli)由来の熱不安定性エンテロトキシン並びにIL−1β、IL−2、IL−12、IFN−γ及びこれらの誘導体からなる群から選ばれるサイトカインからなる群から選ばれる水溶性アジュバントをさらに含有する請求項21又は22記載の方法。
【請求項28】
以下の工程(a)及び(b)をさらに含有する請求項14記載の方法:
(a)ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリジン(NMP)、トリアセチン、及びグリセリンからなる群から選ばれる生体適合性溶媒中のポリ-D,L-ラクチド-コグリコリド共重合体、ポリ-D,L-乳酸-コポリ-D,L-コ-グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリオルトエステル、およびポリ(α−ヒドロキシ酪酸)からなる群から選ばれるin-situゲル化ポリマーの溶液を調製する工程;
(b)生体適合性溶媒中のin-situゲル化ポリマーの溶液内で乾燥状態の免疫刺激複合体を再構成する工程。
【請求項29】
(b)工程において、用いた乾燥状態の免疫刺激複合体を凍結乾燥により得た請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記ポリマーが以下の式(式中、R1はOH又は炭素1〜5個のアルコキシであり、R2はHであり;x:yは共重合体の各々のモノマーユニットの比であり、x+y=1である)で表され、且つ前記ポリマーが生分解性である請求項28記載の方法。
【化1】

【請求項31】
前記コポリマーは、分子量が2,000〜100,000ダルトンの範囲であり、且つ対数粘度数が0.1〜1.0dl/gである請求項30記載の方法。
【請求項32】
生体適合性溶媒に溶解した前記in-situゲル化ポリマーの重量が5w/w%〜50w/w%であり、前記in-situゲル化ポリマーが生分解性である請求項28又は29記載の方法。
【請求項33】
前記生体適合性溶媒中に、3-O-デスアシル-4’-モノホスホリルリピッドA(MPL)、N-アセチル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(MDP)、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)、N,N-ジオクタデシル-N’,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)プロパンジアミン(アブリジン(Avridine))、N-(2-デオキシ-2-1-ロイシルアミノ-β-D-グルコピラノシル)-N-オクタデシル-ドデカノイルアミド・ハイドロアセテート(ベイ−1005(BAY-1005))、3β-[N-(N,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、NAc-Mur-L-Thr-D-isoGln-sn-グリセロール・ジパルミトイル(ムラパルミチン(Murapalmitine))及びIL−1β、IL−2、IL−12、IFN−γ及びこれらの誘導体からなるサイトカインからなる群から選ばれる油溶性アジュバントを溶解させる工程をさらに有する請求項28又は29記載の方法。
【請求項34】
カチオン性ペプチド免疫原及びアニオン性CpGオリゴヌクレオチドを含有する免疫刺激複合体を有する懸濁液の調製方法であって、
(a)ペプチド免疫原中のリジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)の各々に対して+1の電荷、アスパラギン酸(D)又はグルタミン酸(E)の各々に対して−1の電荷、及びその他のすべてのアミノ酸に対して0の電荷を割り当てることによってペプチド免疫原の電荷を測定し、ペプチド免疫原のN末端又はC末端に、リジン、アルギニン、ヒスチジン、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる基を付加することによって、該ペプチド免疫原がpH5.0〜8.0の範囲で正の電荷を有するように、該ペプチド免疫原の電荷を調整する工程;
(b)ホスホジエステル又はホスホロチオレート基の各々に−1の電荷を割り当てることによってシトシン−グアニジン部の繰り返しを有する8〜64個のヌクレオチド塩基を有する一本鎖DNAであり、CpG部の繰り返し数が1〜10の範囲であるCpGオリゴヌクレオチドの電荷を測定し、CpGオリゴヌクレオチドがpH5.0〜8.0の範囲で負の電荷を有するように、CpGオリゴヌクレオチドの5’末端をホスホロチオレート基で修飾する工程;
(c)蒸留脱イオン水、食塩水及びリン酸緩衝食塩水からなる群から選ばれる水相中で、沈殿物である前記免疫刺激複合体を調製する工程;
(d)蒸留脱イオン水、食塩水及びリン酸緩衝食塩水からなる群から選ばれる水相中の、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、およびリン酸カルシウムからなる群から選ばれる無機塩の懸濁液を調製する工程;
(e)水相中の免疫刺激複合体を無機塩懸濁液を含む水相へ添加する工程;
(f)免疫刺激複合体を無機塩懸濁液と混合して混合懸濁液を形成する工程を有し、
前記カチオン性ペプチド免疫原:CpGオリゴヌクレオチドの電荷比が8:1〜1:2の範囲である(ただし、以下のi)〜iii)の条件を全て満たす組合せは除く:
i)前記カチオン性ペプチド免疫原が配列番号7、8及び9、並びにこれらの混合物からなる群から選ばれ、
ii)前記CpGオリゴヌクレオチドが、5’ TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT TTG TCG TT 3’(CpG1)(配列番号1)であり、
iii)複合体は、その平均粒径が1〜30μmの沈殿物である)
上記方法。
【請求項35】
カチオン性ペプチド免疫原及びアニオン性CpGオリゴヌクレオチドを含有する免疫刺激複合体を有する懸濁液の調製方法であって、
(a)ペプチド免疫原中のリジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)の各々に対して+1の電荷、アスパラギン酸(D)又はグルタミン酸(E)の各々に対して−1の電荷、及びその他のすべてのアミノ酸に対して0の電荷を割り当てることによってペプチド免疫原の電荷を測定し、ペプチド免疫原のN末端又はC末端に、リジン、アルギニン、ヒスチジン、及びこれらの混合物からなる群から選ばれる基を付加することによって、該ペプチド免疫原がpH5.0〜8.0の範囲で正の電荷を有するように、該ペプチド免疫原の電荷を調整する工程;
(b)ホスホジエステル又はホスホロチオレート基の各々に−1の電荷を割り当てることによってシトシン−グアニジン部の繰り返しを有する8〜64個のヌクレオチド塩基を有する一本鎖DNAであり、CpG部の繰り返し数が1〜10の範囲であるCpGオリゴヌクレオチドの電荷を測定し、CpGオリゴヌクレオチドがpH5.0〜8.0の範囲で負の電荷を有するように、CpGオリゴヌクレオチドの5’末端をホスホロチオレート基で修飾する工程;
(c)蒸留脱イオン水、食塩水及びリン酸緩衝食塩水からなる群から選ばれる水相中で配列番号〜13からなる群から選ばれるペプチド免疫原の溶液を調製する工程;
(d)蒸留脱イオン水、食塩水及びリン酸緩衝食塩水からなる群から選ばれる水相中の、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、およびリン酸カルシウムからなる群から選ばれる無機塩の懸濁液を調製する工程;
(e)混合しながらペプチド溶液を無機塩懸濁液へ添加する工程;
(f)混合しながら配列番号1及び配列番号2からなる群から選ばれるCpGヌクレオチドを添加し免疫刺激複合体と無機塩との混合懸濁液を形成する工程を有し、
前記カチオン性ペプチド免疫原:CpGオリゴヌクレオチドの電荷比が8:1〜1:2の範囲であり、
得られる複合体は、沈殿物である(ただし、以下のi)〜iii)の条件を全て満たす組合せは除く:
i)前記カチオン性ペプチド免疫原が配列番号7、8及び9、並びにこれらの混合物からなる群から選ばれ、
ii)前記CpGオリゴヌクレオチドが、5’ TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT TTG TCG TT 3’(CpG1)(配列番号1)であり、
iii)複合体は、その平均粒径が1〜30μmの沈殿物である)
上記方法。
【請求項36】
無機塩がリン酸アルミニウムゲル;水酸化アルミニウムゲル;及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項34又は35記載の方法。
【請求項37】
水相が、界面活性剤、等張剤(tonifier)、保存剤又はこれらの組合せをさらに有する請求項34又は35記載の方法。
【請求項38】
水相が、PBS又は食塩水及びこれらの混合物からなる群から選ばれる等張剤を有する請求項37記載の方法。
【請求項39】
水相に、2-フェノキシ-エタノール及びこの誘導体からなる群から選ばれる保存剤を添加する工程をさらに有する請求項37記載の方法。
【請求項40】
水相に、3-O-デスアシル-4’-モノホスホリルリピッドA(MPL)、N-アセチル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(MDP)、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)、N,N-ジオクタデシル-N’,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)プロパンジアミン(アブリジン(Avridine))、N-(2-デオキシ-2-1-ロイシルアミノ-β-D-グルコピラノシル)-N-オクタデシル-ドデカノイルアミド・ハイドロアセテート(ベイ−1005(BAY-1005))、3β-[N-(N,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、NAc-Mur-L-Thr-D-isoGln-sn-グリセロール・ジパルミトイル(ムラパルミチン(Murapalmitine))、PCPP、サポニン(saponin)、コレラ毒、大腸菌(E. Coli)由来の熱不安定性エンテロトキシン、並びにIL−1β、IL−2、IL−12、IFN−γ及びこれらの誘導体からなる群から選ばれるサイトカインからなる群から選ばれるアジュバントを添加する工程をさらに有する請求項34又は35記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14a】
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【図14b】
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【図14c】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−265291(P2010−265291A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155332(P2010−155332)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【分割の表示】特願2003−567354(P2003−567354)の分割
【原出願日】平成15年2月14日(2003.2.14)
【出願人】(591015142)ユナイテッド・バイオメディカル・インコーポレーテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】UNITED BIOMEDICAL INCORPORATED
【Fターム(参考)】