安定性のある眼科用の製剤

緑内障および高眼圧症の治療に好適な安定性のある製剤が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年4月7日出願のイタリア特許出願第RM2008A000182号の利益、および2008年10月31日出願の米国仮特許出願第61/110,395号の利益を特許請求の範囲とし、双方いずれについてもそれらの全体が参照によって本願明細書に組み込まれることとする。
【0002】
本明細書は、眼疾患を治療するための組成物および方法を記載する。
【背景技術】
【0003】
緑内障は、しばしば眼圧の上昇として発現する進行性の眼疾患である。緑内障は治療しなければ眼に重度の構造的障害、特に視神経乳頭障害をもたらし、視野欠損および視神経萎縮にいたる。場合によっては、その病理は眼からの房水流出が不十分なことに関係している。房水産生および上強膜静脈圧などその他の要因も、病態の進行の一因となりうる。
【発明の概要】
【0004】
本願明細書で提供するのは、眼圧(IOP)が21mmHgよりも大きい(「高眼圧症」)疾患を含む眼疾患を治療するための安定性のある眼科用の製剤である。このような組成物としては、あくまで例示であるが、ゲル、軟膏、溶液、粘性水溶液、点眼剤、乳濁液、ゲル化点眼液などがあげられる。いくつかの実施形態では、この組成物は懸濁液の形態をとらない。安定性のある眼科用の製剤は、緑内障、高眼圧症、またはこれらが組み合わされた疾患の治療に使用される。さらに、本明細書に記載する安定性のある眼科用の製剤は、外傷性前房出血、眼窩浮腫、術後の粘弾性のうっ滞、眼内炎症、コルチコステロイド投与、瞳孔ブロック、または特発性の原因によって発症する高眼圧症の治療に使用される。いくつかの実施形態では、安定性のある眼科用の製剤は、化学的安定性、物理的安定性および生理的安定性から選択される少なくとも1つの安定性を有する。さらなる実施形態においては、安定性のある眼科用の製剤は前述の安定性のうち少なくとも2つの安定性を有する。また、さらなる実施形態においては、安定性のある眼科用の製剤は前述の3つの安定性すべてを有する。
【0005】
ある実施形態では、安定性のある眼科用の製剤は、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4、約6.5から選択されるpHを含む、約5.8から6.5の間のpHを有し、さらに、例えば、1種のシクロデキストリンと複合体を形成したドルゾラミドなどの可溶ドルゾラミド(またはその薬剤理学的に許容される塩)を有する。ある実施形態では、製剤は約20℃以上(約25℃以上、約28℃以上、約30℃以上を含む)の長期にわたる保管期間中に安定しており、長期にわたる治療期間中でも、眼に投与した際に忍容性に優れる。ある実施形態では、シクロデキストリンはヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HP‐β‐シクロデキストリン)である。上記の安定性のある眼科用の製剤としては、あくまで例示であるが、ゲル、軟膏、溶液、粘性水溶液、点眼剤、乳濁液、ゲル化点眼液などがあげられる。いくつかの実施形態では、安定性のある眼科用の製剤は懸濁液の形態をとらない。
【0006】
ある実施形態では、安定性のある眼科用の製剤は、ドルゾラミドまたはその薬理学的に許容される塩と治療上有効な濃度のラタノプロストとの組み合わせからなる。ある実施形態では、製剤は、20℃以上(約25℃以上、約28℃以上、約30℃以上を含む)の長期にわたる保管期間中に安定しており(すなわち、化学的、物理的および生理的に安定している)、長期にわたる治療期間中でも、眼に投与した際に忍容性に優れる。本明細書に開示する製剤は、活性剤の同時投与を簡便化する安定化および可溶化システムからなる。安定化および可溶化システムは、シクロデキストリンと、該活性剤の完全性を維持し、眼において忍容性であるpH範囲とを含む。ある実施形態では、シクロデキストリンはヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン(HP‐β‐シクロデキストリン)である。いくつかの実施形態では、pHは約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4または約6.5から選択されるpHを含む、約5.8から6.5までの間のpHである。上記の安定性のある眼科用の製剤には、あくまで例示であるが、ゲル、軟膏、溶液、粘性水溶液、点眼剤、乳濁液、ゲル化点眼液などがあげられる。いくつかの実施形態では、安定性のある眼科用の製剤は懸濁液の形態をとらない。
【0007】
いくつかの実施形態では、緑内障、高眼圧症、またはそれらの併発を含めた高眼圧症治療用の、本明細書に開示の安定性のある眼科用の組成物は、シクロデキストリンと、治療上有効な量の治療用成分とからなり、該組成物は、眼における忍容性に優れるとともに該治療用成分の安定性を維持するpHを有する組成物であり、かつ、該治療用成分がドルゾラミドまたはその薬理学的に許容される塩とラタノプロストとからなる組成物である。ある実施形態では、製剤は、20℃以上(約25℃以上、約28℃以上、約30℃以上を含む)の長期にわたる保管期間中に安定しており、長期にわたる治療期間中でも、眼に投与した際に忍容性に優れる。いくつかの実施形態では、25℃で6か月間保管した後、本明細書に開示の安定性のある眼科用の組成物は、初期量の少なくとも97%のドルゾラミドと、初期量の少なくとも98%のラタノプロストとを含む。いくつかの実施形態では、40℃で6か月間保管した後、本明細書に開示の安定性のある眼科用の組成物は、初期量の少なくとも97%のドルゾラミドと、初期量の少なくとも98%のラタノプロストとを含む。上記の安定性のある眼科用の組成物としては、あくまで例示であるが、ゲル、軟膏、溶液、粘性水溶液、点眼剤、乳濁液、ゲル化点眼液などがあげられる。いくつかの実施形態では、安定性のある眼科用の組成物は懸濁液の形態をとらない。
【0008】
ある実施形態では、緑内障、高眼圧症、またはそれらの併発を含めた高眼圧症治療用の、本明細書に開示する眼科用の組成物は、シクロデキストリンと、治療上有効な量の治療用成分とからなり、該組成物は5.8から6.5までの間のpHを有し、また該治療用成分はドルゾラミドまたはその薬理学的に許容される塩とラタノプロストとからなる。いくつかの実施形態では、pHは約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4または約6.5から選択されるpHを含む、約5.8から6.5までの間のpHである。いくつかの実施形態では、ドルゾラミドの薬理学的に許容される塩はドルゾラミド塩酸塩である。ある実施形態では、シクロデキストリンはHP‐β‐シクロデキストリンである。いくつかの具体的な実施形態において、本明細書に開示する組成物はドルゾラミド塩酸塩0.025〜5重量%、ラタノプロスト0.001〜5重量%、およびHP‐β‐シクロデキストリン0.01〜50重量%とからなる。ある実施形態では、本明細書に開示する組成物はドルゾラミド塩酸塩1〜3重量%、ラタノプロスト0.003〜0.01重量%、およびHP‐β‐シクロデキストリン2〜10重量%からなる。
【0009】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する組成物は、さらに、粘膜付着性薬剤、保存剤、pH調整剤、等張化剤、緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤、抗菌性防腐剤、化学防腐剤、またはそれらの組み合わせのうちから選択される少なくとも1つの薬剤を含む。いくつかの実施形態では、該粘膜付着性薬剤は、ヒアルロン酸またはその薬理学的に許容される塩(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポロキサマー、アルギン酸、キトサン、キサンタンガム、カラギーナン、アクリル酸、アクリル酸誘導体、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、該保存剤は塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、ポリヘキサニド、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、EDTA、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、該pH調整剤は塩酸、ホウ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、該等張化剤は塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、該緩衝剤はホウ酸、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、該抗酸化剤は二亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、BHA、BHT、ビタミンE、アスコルビン酸、6‐ヒドロキシ‐2,5,7,8‐テトラメチルクロマン‐2‐カルボン酸、またはそれらの組み合わせである。上記の組成物としては、あくまで例示であるが、ゲル、軟膏、溶液、粘性水溶液、点眼剤、乳濁液、ゲル化点眼液などがあげられる。いくつかの実施形態では、該組成物は懸濁液の形態をとらない。
【0010】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する組成物または製剤は緩衝系を含まない。さらなる実施形態においては、本明細書に開示する組成物または製剤は抗酸化剤を含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示する組成物は緩衝系も抗酸化剤も含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示する組成物または製剤は抗菌性防腐剤を含まない。
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する組成物はさらに、治療上有効な量の別の抗緑内障剤を含む。ある実施形態では、その別の抗緑内障剤はβ遮断薬である。ある具体的な実施形態では、該β遮断薬はチモロールである。
【0012】
本明細書は、さらに、本明細書に開示の組成物をそれを必要としている患者の眼に局所投与することを含む、緑内障、高眼圧症、またはそれらの併発を含めた高眼圧症の治療方法を開示する。
【0013】
本明細書でさらに開示するのは、ドルゾラミドまたはその薬理学的に許容される塩とラタノプロストとからなる眼科用の組成物を安定化する方法であり、該方法は、シクロデキストリンを製剤中に取り込む工程と、pHを眼における忍容性が良好であるとともに各活性剤の安定性を維持する範囲に調整する工程とからなる。いくつかの実施形態では、前記方法で安定化された組成物は、25℃で6か月間保管された後、初期量の少なくとも97%のドルゾラミドと、初期量の少なくとも98%のラタノプロストとを含む。いくつかの実施形態では、前記方法で安定化された組成物は、40℃で6か月間保管された後、初期量の少なくとも97%のドルゾラミドと、初期量の少なくとも98%のラタノプロストとを含む。いくつかの実施形態では、ドルゾラミドまたはその薬理学的に許容される塩とラタノプロストとからなる組成物を安定化する前記方法で使用されるシクロデキストリンはHP‐β‐シクロデキストリンである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書は、少なくとも2つの異なる活性剤からなる組成物を提供する。言い換えれば、本明細書で提供するのは第1の活性剤および第2の活性剤からなる組成物である。具体的な実施形態では、該第1の活性剤は、炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、ドルゾラミド、またはドルゾラミド塩酸塩などのその薬理学的に許容される塩)である。具体的な実施形態では、該第2の活性剤は、降圧剤(例えば、眼圧下降剤)である。さらにいくつかの具体的な実施形態では、該降圧剤はプロスタグランジン(例えば、ラタノプロストなどのPGF2αプロスタグランジン)である。さらなる実施形態においては、本明細書に記載する組成物は、1つまたはそれ以上の別の活性剤(例えば、第3の活性剤、第4の活性剤など)を随意に含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物は医薬組成物である。ある実施形態では、本明細書に記載する医薬組成は局所投与用に調製される。さらなる、または別の実施形態においては、本明細書に記載する組成物は眼投与用に調製される(例えば、点眼液として)。ある実施形態では、本明細書に記載する眼科用の組成物および製剤は眼における忍容性に優れる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する眼科用の製剤は、緑内障、高眼圧症、またはそれらを併発している高眼圧症の治療に有用である。上記の眼科用の製剤には、あくまで例示であるが、ゲル、軟膏、溶液、粘性水溶液、点眼剤、乳濁液、ゲル化点眼液などがあげられる。いくつかの実施形態では、眼科用の製剤は懸濁液の形態をとらない。
【0015】
場合によっては、本明細書に記載する組成物および製剤は、緑内障、高眼圧症、またはそれらを併発している高眼圧症の治療に好適な第1の活性剤と、緑内障、高眼圧症、またはそれらを併発している高眼圧症の治療に好適な第2の活性剤とからなる。場合によっては、ここに記載した組成物および製剤により、緑内障、高眼圧症、またはそれらを併発している高眼圧症治療用の少なくとも2つの異なる活性剤を簡便に同時投与できる。ある場合には、少なくとも2つの異なる活性剤を単一製剤にして同時に投与すると、薬剤を個々におよび/または別々に投与する場合よりも治療効果が相加的または相乗的になる。ある場合には、活性剤を単一製剤にして同時に投与することで、別々の製剤になった化合物を投与するために起こる投与量のミスまたは治療ミスの可能性が減少する。したがって、場合によっては、活性剤を本明細書に開示の製剤にして同時に投与することは、少なくとも2つの異なる活性剤を使用した、緑内障、高眼圧症、またはそれらを併発している高眼圧症治療に対する全体的により優れた患者のコンプライアンスをもたらす。
【0016】
ある実施形態では、本明細書に記載する組成物または製剤は、第1の活性剤および/または第2の活性剤とからなり、いずれも液体の媒体(水性媒体)で可溶化される。いくつかの実施形態では、可溶化された活性剤のうちの少なくとも1つは錯化剤と複合体を形成し、それらの結合体は溶解される。いくつかの実施形態では、該活性剤は、錯化剤と複合体を形成せずに溶解される。いくつかの実施形態では、錯化剤はシクロデキストリンである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの活性剤がシクロデキストリンと包接複合体を形成する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物および製剤は、第1の活性剤および第2の活性剤からなり、前記第1および第2の活性剤は、眼および/または局所で活性を有するように組成物または製剤に調製される(例えば、本明細書に記載の組成物または製剤を、第1の活性剤および第2の活性剤を溶質として含む溶液、ゲル、またはその他の剤形で調製することによって)。上記の組成物および製剤は、該第1および該第2の薬剤の、実質的な分量、治療上有効な分量、大部分または全てを液体の媒体(例えば、水性媒体)に溶解させた組成物および製剤を含むということが理解されるべきである。
【0018】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物および製剤は安定化剤を含む。ある実施形態では、安定化剤は、組成物または製剤の化学的安定性(例えば、1つまたはそれ以上の存在する活性剤の分解の抑制)、生理的安定性(すなわち、投与後の分解)および/または物理的安定性(例えば、実質的に液体の媒体に溶解した1つまたはそれ以上の活性剤の濃度の維持)を向上させる。具体的な実施形態では、本明細書に記載の有用な安定化剤には、1つまたはそれ以上のシクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリン)があげられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
具体的な実施形態では、本明細書は、炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、ドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩などのその薬理学的に許容される塩)、および降圧剤(例えば、非限定的な例として、ラタノプロストなどのPGF2αプロスタグランジンなど)からなる安定性のある組成物および製剤を提供する。さらにいくつかの具体的な実施形態では、本明細書は、炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、ドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩などのその薬理学的に許容される塩)、降圧剤(例えば、非限定的な例として、ラタノプロストなどのPGF2αプロスタグランジン)、および水性媒体からなる安定性のある組成物および製剤を提供する。さらに別のいくつかの具体的な実施形態では、本明細書は、炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、ドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩などのその薬理学的に許容される塩)、降圧剤(例えば、非限定的な例として、ラタノプロストなどのPGF2αプロスタグランジン)、水性媒体、および安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピル‐β‐シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)からなる安定性のある組成物および製剤を提供する。ある実施形態では、上記の組成物は、眼における忍容性に優れる。
【0020】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物または製剤はいずれも安定性のある組成物または製剤である。組成物または製剤の化学的安定性、生理的および/または物理的安定性は、安定性のある組成物または製剤という概念に含まれるものとする。いくつかの実施形態では、安定化剤の使用により、および/またはpHを約5.8と約6.5の間になるように調整することにより安定性が提供される。いくつかの実施形態では、安定化剤はシクロデキストリンである。いくつかの実施形態では、安定化剤は、1つの有効成分に対して1つの安定性(例えば、物理的安定性)および第2の有効成分に対して別の安定性(例えば、化学的安定性)を与える。
【0021】
場合によっては、化学的安定性とは、1つまたはそれ以上の存在する活性剤の分解が阻害されることをいう。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物または製剤の化学的安定性には、少なくとも1つの活性剤、前記第1の活性剤、前記第2の活性剤、または該組成物もしくは製剤に存在する全活性剤の化学的安定性が含まれる。場合によっては、化学的安定性とは、組成物、製剤、または薬剤の、分解に対する安定性をいう。したがって、ある場合には、薬剤の化学的安定性の測定は、初回(例えば、調製時)に存在する薬剤の量と、その後の第2の時間に存在する薬剤の量とを測定すること、および初回からその後の第2の時間までに薬剤が減少した量または割合を求めることにより行われる。
【0022】
ある場合には、物理的安定性とは、製剤または組成物の構造が実質的に維持されることをいう。本明細書に記載する組成物または製剤が少なくとも2つの異なる活性剤と液体の媒体(例えば、水性媒体)とからなる実施形態では、物理的安定性とは、液体の媒体に溶解した活性剤が実質的に同量かつ/または治療上有効な量で維持されることをいう。したがって、場合によっては、本明細書に記載する組成物または製剤の物理的安定性を向上させる薬剤には、可溶化剤が含まれる。
【0023】
ある場合には、生理的安定性とは、ドルゾラミドおよび/またはラタノプロストの治療活性が、その眼科用の製剤の眼内投与後に実質的に維持されていることをいう。即ち、生理的分解に対する活性剤の安定化をさす。
【0024】
いくつかの実施形態では、安定性のある組成物または製剤を、pHが約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4または約6.5から選択されるpHを含む、約5.8から約6.5までの間のpHで調製する。ある実施形態では、安定性は、化学的、生理的および/または物理的安定性を含む。ある実施形態では、組成物または製剤は20℃以上での長期の保管期間中安定しており、長期にわたる治療期間中でも、眼投与の際の忍容性に優れる。
【0025】
ある実施形態では、本明細書は、本明細書に記載する任意の組成物または製剤を、投与を必要とする患者に有効量で投与することを含む、患者の緑内障の治療方法を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書は、本明細書に記載する任意の組成物または製剤を、投与を必要とする患者に有効量で投与することを含む、患者の高眼圧症の治療方法を提供する。
【0026】
活性剤
ある実施形態では、本明細書に記載する組成物および製剤は少なくとも2つの異なる活性剤からなる。いくつかの実施形態では、該少なくとも2つの活性剤は、緑内障、高眼圧症、またはそれらを併発している高眼圧症の治療に好適な少なくとも2つの活性剤を含む。ある実施形態では、該少なくとも2つの活性剤は、炭酸脱水酵素阻害薬、プロスタグランジン、およびβ遮断薬からなる群から選択される少なくとも2つの活性剤を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物および製剤は少なくとも2つの異なる活性剤からなる(すなわち、第1の活性剤および第2の活性剤)。ある場合には、それらの少なくとも2つの異なる活性剤はいずれも緑内障、高眼圧症、またはそれらを併発している高眼圧症の治療に好適な活性剤である。いくつかの実施形態では、第1の活性剤(すなわち、前記少なくとも2つの異なる活性剤のうちの1つ)は炭酸脱水酵素阻害薬である。ある実施形態では、その炭酸脱水酵素阻害薬はドルゾラミドまたはその薬理学的に許容される塩である。具体的な実施形態では、ドルゾラミドの薬理学的に許容される塩はドルゾラミド塩酸塩である。
【0028】
【化1】

ある実施形態では、炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、ドルザラミドまたはドルゾラミド塩酸塩)は本明細書に記載する組成物または製剤中に約0.025〜5重量%、または約1〜3重量%、約2重量%、または約2.2重量%の量で存在する。
【0029】
ある実施形態では、第2の活性剤(すなわち、前記少なくとも2つの異なる活性剤のうちの1つ)は降圧剤(例えば、眼圧下降剤)である。いくつかの実施形態では、降圧剤はプロスタグランジンである。いくつかの実施形態では、プロスタグランジンはPGF2αプロスタグランジンである。いくつかの実施形態では、PGF2αプロスタグランジンはラタノプロストである。
【0030】
【化2】

いくつかの実施形態では、降圧剤(例えば、ラタノプロストなどのPGF2αプロスタグランジンのようなプロスタグランジン)は、本明細書に記載する組成物または製剤内に約0.001〜5重量%、約0.003〜0.01重量%、または約0.005重量%の量で存在する。
【0031】
いくつかの実施形態では、緑内障治療用の少なくとも2つの異なる活性剤はβ遮断薬を含む。
ある実施形態では、本明細書に記載する組成物または製剤は、さらに、第3の活性剤を含む。いくつかの実施形態では、第3の活性剤はβ遮断薬である。ある実施形態では、β遮断薬はチモロールまたはその薬理学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、チモロールの薬理学的に許容される塩はチモロールマレイン酸である。
【0032】
ある場合には、緑内障、高眼圧症、またはそれらを併発している高眼圧症治療用の少なくとも2つの異なる活性剤は、炭酸脱水酵素阻害薬およびプロスタグランジンを含む。ある実施形態では、緑内障、高眼圧症、またはそれらを併発している高眼圧症治療用の少なくとも2つの異なる活性剤は、炭酸脱水酵素阻害薬としてドルゾラミドまたはその薬理学的に許容される塩と、プロスタグランジンとしてラタノプロストとを含む。ドルゾラミドおよびラタノプロストは高眼圧症の治療および抗緑内障の局所治療に有用である。ブドウ膜強膜流の増加と房水産生の減少とは、それぞれこれらの各薬剤によって軽減される相補的なメカニズムである。
【0033】
ある場合には、緑内障、高眼圧症、またはそれらを併発している高眼圧症治療用の少なくとも2つの異なる活性剤は、炭酸脱水酵素阻害薬、プロスタグランジン、およびβ遮断薬を含む。ある実施形態では、緑内障、高眼圧症、またはそれらを併発している高眼圧症治療用の少なくとも2つの異なる活性剤は、ドルゾラミドまたはその薬理学的に許容される塩、ラタノプロスト、およびチモロールからなる。
【0034】
ある実施形態では、本明細書に記載する活性剤は、本明細書に記載する組成物または製剤に治療上有効な量で存在する。ある場合には、ある異なる活性剤と組み合わせた際の活性剤の治療上有効な量は、その活性剤を別々にまたは個々に投与した場合の治療上有効な量よりも少ないということが理解されるべきである。
【0035】
安定性
ある実施形態では、本明細書に開示する製剤により、少なくとも2つの活性剤の化学的安定性が得られる。言い換えれば、ある実施形態では、本明細書に開示の組成物および製剤は、少なくとも2つの活性剤の安定性を維持し、かつ/またはそれに含有されている少なくとも2つの活性剤の分解を阻害する。場合によっては、本明細書で提供される、化学的に安定である組成物および製剤は、その組成物または製剤内で化学的に安定である第1の活性剤と、その組成物または製剤内で化学的に安定である第2の活性剤とからなる。ある場合には、化学的安定性には熱安定性が含まれる。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物、製剤および活性剤(例えば、調製剤など)は熱安定性がある。ある実施形態では、本明細書に記載する組成物、製剤および活性剤(例えば、調製剤など)は、低温、室温、常温、約25℃、高温、約40℃などの温度で熱安定性がある。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する組成物および製剤は、物理的に安定である。ある実施形態では、物理的安定性には、少なくとも2つの活性剤のうちの一方または両方が、本明細書に記載する組成物または製剤中において好適な物理的形態を維持することが含まれる。ある実施形態では、本明細書に記載の第1の活性剤、第2の活性剤および液体の媒体(例えば、水性媒体)を含む、物理的に安定である眼科用の製剤および/または局所活性製剤において、その眼科的および/または局所的活性が保管後も実質的に維持される。ある場合には、上記の組成物において、その眼科的および/または局所的活性が保管後も実質的に保持され、これは、第1および/または第2の活性剤が液体の媒体中において最初の調製または測定の際の溶解度を実質的に維持するか否かによって判断される。ある実施形態では、本明細書に記載する第1の活性剤、第2の活性剤および液体の媒体(例えば、水性媒体)からなる、物理的に安定である眼科用の製剤および/または局所活性剤は、液体の媒体中において最初に調製または測定した際の溶解度を実質的に保持する。ある場合には、組成物の物理的安定性および/または本明細書に記載する組成物もしくは製剤中での薬剤の溶解度の測定は、組成物のオスモル濃度をある期間測定することによって求めることができる。
【0037】
ラタノプロストは安定性に乏しいが、これは塩化ベンザルコニウム(保存剤として)を含む等張液で調製し、pH6.8で緩衝した際に分解されることに起因する。こうした製剤は、分解を避けるために2.5mLのプラスチック容器に封入して2℃から8℃で保管する必要がある。ラタノプロストは、4℃および25℃では緩徐に分解して直線的進行を示すが、50℃および75℃での分解は二次多項式的に進行する。4℃から25℃の間での分解速度は重大ではないが、より高温では、分解速度は大幅に上昇する。例えば、50℃および75℃の温度において、ラタノプロストの濃度が最初の量の90%まで下降するのに要する時間は、それぞれ198時間および32時間である。そのため、従来技術ではラタノプロスト製剤は冷却してから保管されており、従来技術のラタノプロスト製剤を約20℃以上(約25℃以上、約28℃以上、約30℃以上を含む)で長期間保管することはなかった。
【0038】
本明細書は、プロスタグランジン(例えば、ラタノプロスト)を含む安定性のある組成物および製剤を提供し、該プロスタグランジン(例えば、ラタノプロスト)は組成物中で安定している(例えば、保管時)。具体的な実施形態では、プロスタグランジン(例えば、ラタノプロスト)は組成物または製剤中で熱安定性がある(例えば、保管時)。いくつかの実施形態では、プロスタグランジン(例えば、ラタノプロスト)を安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)を使用して調製する。さらにいくつかの具体的な実施形態では、本明細書に記載する組成物または製剤を25℃で6か月間保管した後のラタノプロストの量は、組成物または製剤に含有されるラタノプロストの初期量の約97%以上、約98%以上、約99%以上である。場合によっては、組成物または製剤中のラタノプロストの初期量とは、ラタノプロストの量を測定した任意の時期(t)の量であり、後に比較の対照とされる、組成物または製剤内のラタノプロストの量を指す(例えば、組成物または製剤を最初に調製した時、または組成物または製剤を最初に調製してから1か月後)。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物または製剤に含有されるラタノプロストの量は、25℃で5ヶ月間保管された後、組成物または製剤に含有されるラタノプロストの初期量の約97%以上、約98%以上、約99%以上である。ある実施形態では、本明細書に記載する組成物または製剤に含有されるラタノプロストの量は、25℃で4ヶ月間保管された後、組成物または製剤に含有されるラタノプロストの初期量の約99%以上である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物または製剤に含有されるラタノプロストの量は、40℃で6ヶ月間保管された後、組成物または製剤に含有されるラタノプロストの初期量の約97%以上、約98%以上、約99%以上である。ある実施形態では、本明細書に記載する組成物または製剤に含有されるラタノプロストの量は、40℃で5ヶ月間保管された後、組成物または製剤に含有されるラタノプロストの初期量の約99%以上である。具体的な実施形態では、上記のような安定性を有する製剤のpHは、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4または約6.5から選択されるpHを含む、約5.8から6.5までの間のpHである。さらなる、または別の実施形態において、組成物は、さらに、炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、ドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩)およびシクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)を含む。さらにいくつかの具体的な実施形態では、組成または組成物は、炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、ドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩)、プロスタグランジン(例えば、PGF2α、ラタノプロストなどのプロスタグランジン)、安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)、および液体の媒体(例えば、水性媒体)を含む。
【0039】
本明細書で提供するのは、炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、ドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩)を含む組成物および製剤であり、該炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、ドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩)は組成物中で安定している(例えば、保管時)。具体的な実施形態では、炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、ドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩)は組成物または製剤中で熱安定性がある(例えば、保管時)。さらにいくつかの具体的な実施形態では、25℃で6か月間保管した後の、本明細書に記載する組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の量は、組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の初期量の約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上である。場合によっては、組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の初期量とは、ドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の量を測定した、任意の測定時(t)における組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の量をさし、後に比較の対照とされる量のことである(例えば、組成物または製剤を最初に調製した時、または組成物または製剤を最初に調製してから1か月後)。いくつかの実施形態では、25℃で5か月間保管した後の、本明細書に記載する組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の量は、組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の初期量の約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上である。ある実施形態では、25℃で4か月間保管した後の、本明細書に記載する組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の量は、組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の初期量の約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上である。いくつかの実施形態では、25℃で3か月間保管した後の、本明細書に記載する組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の量は、組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の初期量の約97%以上、約98%以上、約99%以上である。ある実施形態では、25℃で2か月間保管した後の、本明細書に記載する組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の量は組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の初期量の約99%以上である。いくつかの実施形態では、40℃で6か月間保管した後の、本明細書に記載する組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の量は、組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の初期量の約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上である。ある実施形態では、40℃で5か月間保管した後のドルゾラミド、あるいは本明細書に記載する組成物または製剤中のドルゾラミドの量は、ドルゾラミドあるいは組成物または製剤中のドルゾラミドの初期量の約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上である。いくつかの実施形態では、40℃で4か月間保管した後の、本明細書に記載する組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の量は組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の初期量の約91%以上、約92%以上、約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上である。ある実施形態では、40℃で3か月間保管した後のドルゾラミド、あるいは本明細書に記載する組成物または製剤中のドルゾラミドの量は、ドルゾラミド、あるいは組成物または製剤中のドルゾラミドの初期量の約93%以上、約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上である。いくつかの実施形態では、40℃で2か月間保管した後の、本明細書に記載する組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の量は、組成物または製剤中のドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩の初期量の約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上である。ある実施形態では、40℃で1か月間保管した後のドルゾラミド、あるいは本明細書に記載する組成物または製剤中のドルゾラミドの量は、ドルゾラミド、あるいは組成物または製剤中のドルゾラミドの初期量の約99%以上である。具体的な実施形態では、前記の安定性を有する製剤のpHは、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4または約6.5から選択されるpHを含む、約5.8から6.5までの間のpHである。さらなる、または別の実施形態において、該組成物は、プロスタグランジン(例えば、PGF2α、ラタノプロストなどのプロスタグランジン)およびシクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)をさらに含む。さらにいくつかの具体的な実施形態では、該組成物または組成物は、炭素脱水酵素阻害薬(例えば、ドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩)、プロスタグランジン(例えば、PGF2a、ラタノプロストなどのプロスタグランジン)、安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)、および液体の媒体(例えば、水性媒体)を含む。
【0040】
本明細書は、炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、ドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩)、プロスタグランジン(例えば、PGF2α、ラタノプロストなどのプロスタグランジン)、安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)、および液体の媒体(例えば、水性媒体)からなる組成物および製剤を提供する。ある実施形態では、上記の組成物および製剤は物理的に安定している。ある場合には、物理的安定性は、組成物または製剤が一定のオスモル濃度を維持する能力として測定される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の物理的に安定した組成物および製剤は、オスモル濃度(例えば、25℃で約5か月間の変化が約2%より小さい)を実質的に維持する。ある実施形態では、本明細書に記載の物理的安定性のある組成物および製剤は、生理的に許容できるオスモル濃度および/またはpHを含み、またそれを実質的に維持する。具体例をあげると、生理的に許容できるオスモル濃度は約280mOsm/Lから約320mOsm/Lである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物および製剤は、生理的に許容できるオスモル濃度および/または生理的に許容できるpH値で実質的に安定している(物理的および/または化学的に)。
【0041】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の製剤は、プロスタグランジン(例えば、PGF2α、ラタノプロストなどのプロスタグランジン)に好適な安定性を与える。ある実施形態では、ラタノプロストの安定性は安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)の存在下で6.7〜6.8より低いpHに維持される。驚くべきことに、いくつかの実施形態では、プロスタグランジン(例えば、PGF2α、ラタノプロストなどのプロスタグランジン)の安定性は、安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)および炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、ドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩)の存在下で、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4または約6.5から選択されるpHを含む、約5.8から6.5までの間のpHに維持される。したがって、具体的な実施形態では、本明細書に記載する組成物および製剤は約5.8から約6.5までのpHを有する。したがって、具体的な実施形態では、本明細書に記載する組成物および製剤は約5.8から約6.4までのpHを有する。したがって、具体的な実施形態では、本明細書に記載する組成物および製剤は約5.8から約6.3までのpHを有する。したがって、具体的な実施形態では、本明細書に記載する組成物および製剤は約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4または約6.5から選択されるpHを含む、約5.8から6.5までの間のpHを有する。
【0042】
本明細書は、炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、ドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩)、プロスタグランジン(例えば、PGF2α、ラタノプロストなどのプロスタグランジン)、安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)、および液体の媒体(例えば、水性媒体)からなる組成物および製剤を提供し、該組成物または製剤は、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4または約6.5から選択されるpHを含む、約5.8から6.5までの間のpHを有する。
【0043】
忍容性
さらなる、または別の実施形態において、本明細書に開示の製剤は、眼における忍容性に優れるpHを有している。いくつかの実施形態では、眼における忍容性に優れるpHは、製剤を眼に投与した際に眼の刺激症状を生じさせない。ある実施形態において、眼の刺激症状には結膜の灼熱感および/または眼表面の充血が含まれる。いくつかの実施形態では、眼における忍容性に優れるpHを有していることにより、緑内障、高眼圧症、またはそれらを併発している高眼圧症治療用の少なくとも2つの異なる活性剤の投与を含む治療レジメンにおける患者のコンプライアンスが、本明細書に開示の製剤によって改善される。
【0044】
ドルゾラミド塩酸塩(例えば、2.2重量%、遊離塩基の2重量%)からなる医薬組成物の溶解度はpH5.6にて最大(約50mg/mL)となる。ドルゾラミド塩酸塩はその構造的特徴のため、中性pH濃度ではあまり溶解しない。実際、pH値が5.6強ではドルゾラミド塩酸塩の溶解度は有意に減少するため、他の溶解法を使用しない場合、ドルゾラミド塩酸塩からなる眼科用の組成物はpH5.65を超えるpHでは使用されていない。しかしながら、このような組成物は眼における忍容性に乏しく、灼熱感および/または眼表面の充血を生じさせ、患者のコンプライアンスが悪い。さらに、ドルゾラミド塩酸塩製剤は1日の投与が多数回にわたることが多く(例えば、1日3回)、患者は、製剤の刺すような灼熱感をかなり顕著に、しかも不快に感じるようになる。
【0045】
場合によっては、眼における忍容性に優れるpH値は5.65より大きい。ある場合には、pHが5.65以下の組成物または製剤の投与が原因で生じた灼熱感および/または眼表面の充血と比較した場合、眼における忍容性に優れるpH値では灼熱感および/または眼表面の充血の発生率は減少する。ある場合には、眼における忍容性に優れるpH値は、眼に投与した際に灼熱感および/または眼表面の充血を生じさせないpH値である。場合によっては、眼における忍容性に優れるpH値を有する組成物および製剤は、忍容性がより低い組成物(例えば、pH値が5.65以下の組成物)と比較した場合の患者のコンプライアンスが高い(そのため、有効性も高くなる)。
【0046】
後に記載する一連の実験例では、意外にも、ドルゾラミドまたはその薬理学的に許容される塩をラタノプロストとともに調製することが、ドルゾラミドの溶解に適切であるとは考えられていなかったpH値(例えばpH5.65強)またはラタノプロストの調製に適切であるとは考えられていなかったpH値(例えばpH6.7から6.8)において可能であることを示している。さらに、ドルゾラミドおよびラタノプロストに適切な溶解度および安定性を与えるpH範囲では、緑内障、高眼圧症、またはそれらを併発している高眼圧症治療に局所投与した際の眼にける忍容性も良好である。本明細書に開示する製剤は、眼における忍容性に優れることから、両活性剤を含む治療レジメンによる患者のコンプライアンスをさらに改善する。このことは、5.65より低いpH濃度で投与すると結膜の灼熱感および眼表面の充血など一連の副作用を生じさせるドルゾラミドの場合に関して特に言えることである。
【0047】
安定剤
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物および製剤は安定化剤を含む。ある実施形態では、安定化剤によって組成物または製剤の化学的安定性、生理的および/または物理的安定性が向上する。具体的な実施形態では、本明細書に記載の有用な安定化剤には、1つまたはそれ以上のシクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する製剤はシクロデキストリンを含む。ある実施形態では、そのシクロデキストリンはHP−β−シクロデキストリンである。他に可能な安定化剤としては、ポリビニルアルコールの脂肪乳剤があるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
ある実施形態では、安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)の量は約1%以上から約8%以上までで、それぞれpH6.0からpH6.8までである(例えば、平均置換度6.1(NMRで測定)、平均分子量1630g/molで特徴づけられるヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなど)。その他のヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン(例えば、置換度の相違によって特徴づけられる)もまた、本明細書に記載する製剤で好適に使用され、また、ある実施形態では、同様の結果を得るためにシクロデキストリン濃度を調整して利用される。
【0050】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物または製剤は、約2重量%から約10重量%の安定化剤(例えば、HP−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)を含む。
【0051】
製剤
ある実施形態では、本明細書に記載する組成物および製剤は、炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、ドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩などのその薬理学的に許容される塩)、降圧剤(例えば、PGF2α、ラタノプロストなどのプロスタグランジン)、および安定化剤(例えば、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン)からなる。いくつかの実施形態では、炭酸脱水酵素阻害薬(例えば、ドルゾラミドまたはドルゾラミド塩酸塩などのその薬理学的に許容される塩)および降圧剤(例えば、PGF2α、ラタノプロストなどのプロスタグランジン)は治療的に許容しうる量で存在する。
【0052】
ある実施形態では、本開示により調製される製剤(例えば、水溶性製剤)は、以下に記載する(表1)重量パーセントの成分からなり、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4または約6.5から選択されるpHを含む、約5.8から6.5までの間のpHを有する。
【0053】
【表1】

ある具体的な実施形態において、本明細書に開示する組成物は表2に記載の重量パーセントの成分からなり、約5.8、約5.9、約6.0、約6.1、約6.2、約6.3、約6.4または約6.5から選択されるpHを含む、約5.8から6.5までの間のpHを有する。
【0054】
【表2】

本明細書に開示の製剤は、随意で、さらに別の抗緑内障剤を含む。いくつかの実施形態では、その別の抗緑内障剤はβ遮断薬である。ある実施形態では、β遮断薬はチモロールまたはその薬理学的に許容される塩である。ある具体的な実施形態では、チモロールはチモロールマレイン酸塩として0.1重量%で存在する。
【0055】
本明細書に開示の製剤は、随意で、さらにヒアルロン酸または、例えばヒアルロン酸ナトリウムなどのその薬理学的に許容される塩を含む。粘膜付着性薬剤としての機能などの既知の機能に加え、ドルゾラミドの眼での生体内利用率が、組成物中にヒアルロン酸が存在することで高くなる。いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸ナトリウムは0.01〜0.10重量%で製剤中に存在する。ある具体的な実施形態では、ヒアルロン酸ナトリウムは製剤中に約0.05重量%で存在する。
【0056】
本明細書に開示の製剤は、また、随意で、さらに1つまたはそれ以上の眼科用添加剤を含む。眼科用添加剤としては、粘膜付着性薬剤、保存剤、pH調整剤、等張化剤、緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤、抗菌性防腐剤、化学防腐剤、またはそれらの組み合わせのうちから選択される少なくとも1つの薬剤があげられるが、これらに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、粘膜付着性薬剤は、ヒアルロン酸またはその薬理学的に許容される塩(例えば、ヒアルロン酸ナトリウム)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポロキサマー、アルギン酸、キトサン、キサンタンガム、カラギーナン、アクリル酸、アクリル酸誘導体、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、粘膜付着性剤は0.01〜10重量%で製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、保存剤は、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、ポリヘキサニド、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、EDTA、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、pH調整剤は、塩酸、ホウ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、等張化剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、抗酸化剤は、二亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、BHA、BHT、ビタミンE、アスコルビン酸、6‐ヒドロキシ−2,5,7,8‐テトラメチルクロマン‐2‐カルボン酸(トロロックス(TROLOX:登録商標))、またはそれらの組み合わせである。具体的な実施形態では、本明細書に記載する組成物は約0.03重量%のEDTAを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する組成物または製剤は、約0.13重量%の、例えば塩化ナトリウムなどの張度調整剤(またはこの量の張度調整剤を使用して調製したもの)を含む。ある実施形態では、防腐剤は約0.003重量%の量で存在する。
【0057】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示する組成物または製剤は緩衝系を含まない。さらなる実施形態においては、本明細書に開示する組成物または製剤は抗酸化剤を含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示する組成物は緩衝系も抗酸化剤も含まない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示する組成物または製剤は抗菌性防腐剤を含まない。
【0058】
本明細書は、本明細書に開示する製剤を投与を必要としている患者の眼に局所投与することを含む、緑内障、高眼圧症、またはそれらを併発している高眼圧症の治療方法もまた開示する。用量および投与回数は、疾患の重症度や個々の患者の特徴によって異なる。緑内障、高眼圧症、またはそれらを併発している高眼圧症治療の一般的な投与頻度は毎日で、例えば、1日1回、1日2回、1日3回などある。本明細書に開示する製剤を、好適なキャリア、添加剤、溶剤、またはそれらを組み合わせたものと混合して、眼の局所投与用剤を調製する。調整剤の好適な例は点眼剤、眼科用ゲルや軟膏、および洗眼剤を含む。
【0059】
具体的な実施形態では、本明細書に記載する組成物または製剤を、表3に記載の成分を組み合わせて調製する。さらにいくつかの具体的な実施形態では、組成物または製剤を水性媒体(例えば、水)で、例えば水溶液として調製する。さらに別のいくつかの具体的な実施形態では、組成物または製剤は、約280mOsm/Lから約320mOsm/Lのオスモル濃度を有する。
【0060】
【表3】

【実施例】
【0061】
実施例1−pH6.1の眼科用ラタノプロスト−ドルゾラミド製剤の代表例
ある例では、表4に記載の薬剤を組み合わせて眼科用洗眼液を調製する。
【0062】
【表4】

実施例2−眼科用ラタノプロスト−ドルゾラミド製剤
実施例1の製剤を2つの異なる温度(25℃および40℃)で6か月間保管し、
製剤中に残存する活性成分の割合(%)を保管開始から1か月ごとに評価する。実施例1の製剤の安定性分析の結果を表5〜6にまとめた。
【0063】
【表5】

【0064】
【表6】

安定性分析における対照用として、実施例1で例示した生成物と類似しているがpHが6.8である製剤を調製する。その製剤組成を表7に示す。
【0065】
【表7】

pH=6.8の製剤を2つの異なる温度(25℃および40℃)で6か月間保管し、製剤中に残存する活性成分の割合(%)を保管開始から1か月ごとに評価した。その安定性分析の結果を表8および表9にまとめた。
【0066】
【表8】

【0067】
【表9】

上記の表からわかるように、ラタノプロスト、ドルゾラミド、HP−β−シクロデキストリン、およびヒアルロン酸ナトリウムからなるpH6.1の製剤は、長期にわたって常温および高温で保管しても安定している。対照的に、pH6.8で同様に調製した組成物では、同一の保管条件下で活性剤が有意に分解されていた。したがって、ラタノプロストとドルゾラミドとを本明細書に記載するように調製すると、活性剤の長期安定性が優れ、かつ、緑内障、高眼圧症、またはそれらを併発している高眼圧症治療剤の同時投与に好適な眼科用の組成物が得られる。
【0068】
実施例3−実施例1の製剤において、HP−β−シクロデキストリン8.0%をpH濃度を変えて使用した場合の、ドルゾラミドの25℃での安定性
実施例1の製剤を、HP−β−シクロデキストリン濃度を8.0%とし、pHを6.1から6.8の間で変えたものを複数調製する。製剤は、最高6か月間25℃で保管し、製剤中のドルゾラミドの残存率(%)を保管開始から1か月ごとに測定する。その結果をまとめたものが表10〜13である。
【0069】
表10〜13でわかるように、pHが6.20を超えている製剤では、ドルゾラミドは、ドルゾラミド−ラタノプロスト併用剤を常温で保管するには分解許容度が限界もしくはそれを超えている。6.20より低いpHで調製した製剤では、長期間保管してそれらの活性剤を同時に投与するための安定性がドルゾラミドにおいて好適に達成されている。
【0070】
【表10】

【0071】
【表11】

【0072】
【表12】

【0073】
【表13】

実施例4−実施例1のドルゾラミド製剤において、HP−β−シクロデキストリン8.0%をpHを変えて使用した場合の40℃での安定性
HP−β−シクロデキストリン8.0%を使用しpH濃度をさまざまに変えた実施例1の製剤の安定性についても、表14に記載のように高温(40℃)で評価した。製剤中のドルゾラミドの残存率(%)を保管開始から10日目、15日目、および30日目に測定した。常温での安定性試験の場合と同様に、pH6.2を超えている場合、ドルゾラミドは加速条件下で有意に分解した。しかしながら、本明細書に開示の調製製剤は、それよりも過酷な条件下でも好適なドルゾラミド濃度を維持した。
【0074】
【表14】

実施例5−pH=6.1の眼科用ラタノプロスト-ドルゾラミド製剤と、pH=6.8の同等製剤およびpH=6.8のプラセボとの、急性の眼忍容性についての比較
上記に記載した各製剤を各動物の右眼に同じ日に2時間おきに3回、2滴ずつ滴下した。各々のウサギ群は8匹(オス4匹、メス4匹)で構成される。
【0075】
ドレイズ試験により眼組織の病変が観察された。検査は、処置日の3回目の滴下後のほか、1回目の滴下から24時間後、48時間後および72時間後に行い、結膜、虹彩および角膜にみられるさまざまな変化について任意に記録した。プラセボ群同様、pH=6.1製剤で処置された眼、およびpH=6.8製剤で処置された眼の両方とも、全試験期間を通して有意な結膜充血は認められなかった。角膜レベルでは浮腫も混濁も見られなかった。そのうえ、虹彩の異常は認められなかった。流出物質の状態は正常レベルであった。pH=6.1製剤で処置した3種類の眼とpH=6.8製剤で治療した2種類の眼において軽度の上皮剥離(de-epithelization)が観察された。
【0076】
実施例より得られた結果から、pH=6.1の眼科用溶液は、繰り返し滴下(6時間に3回)した後も忍容性に優れており、pH=6.8製剤およびpH=6.8プラセボと比較しても差は見られないことがわかる。
【0077】
実施例6−緑内障動物モデルにおける眼科用ラタノプロスト−ドルゾラミド製剤試験
上強膜静脈の4分の3を焼灼してラットに眼圧亢進を誘発する。眼圧の安定化後、高眼圧(典型的には正常値の1.5〜1.8倍)が持続しているラットを試験用に選択する。高眼圧ラットには、本明細書に開示する眼科用ラタノプロスト−ドルゾラミド製剤またはコントロールの製剤キャリア単体のいずれかを毎日投与する。本明細書に開示する、高眼圧症および緑内障治療用の安定性のある眼科用ラタノプロスト−ドルゾラミド製剤について投与効果を評価するために、いずれの群についても絶対的および相対的な(ベースラインからのパーセンテージ)眼圧下降を3か月間測定し、試験群でのさまざまな測定ポイントから得た平均値と、それに対応する測定ポイントから得た対照群での平均値とを比較する。試験期間終了時、ラットを屠殺し、網膜神経節細胞死の範囲を測定する。その網膜神経節細胞死の範囲を試験群と対照群との間で比較し、本明細書に開示する製剤が、高眼圧症で誘発された緑内障の進行または発症を阻害する効果について評価する。
【0078】
実施例7−高眼圧症および原発開放隅角緑内障を治療するための眼科用ラタノプロスト−ドルゾラミド製剤の臨床試験
試験のために選択した患者は、高眼圧症または原発開放隅角緑内障のために眼圧が20mmHgよりも高くなっていた。また、被験者は未処置状態(高眼圧症の治療を1度も受けたことがない)であり、治療の開始が必要とされる状態であった。試験の一次転帰は、治療3か月後の眼圧下降の絶対値および相対的程度(ベースラインからのパーセンテージ)である。治療開始から1か月目と2か月目にも眼圧下降を評価した。
【0079】
試験群の被験者に、実施例1のラタノプロスト−ドルゾラミド製剤を局所投与する。対照群の被験者には、眼科用ラタノプロスト製剤(0.005%ラタノプロスト、キサラタン(XALATAN:登録商標))またはドルゾラミド製剤(2%ドルゾラミド、トルソプト(TRUSOPT:登録商標))のいずれかを推奨用量にしたがって3か月間、毎日局所投与する。眼圧測定は、標準的な眼圧測定法(圧平眼圧測定法、電子眼圧計、または非接触眼圧測定法)で行った。
【0080】
本明細書に開示するラタノプロスト−ドルゾラミド併用製剤投与後の絶対的および相対的な眼圧下降と、個々の製剤の単剤治療でもたらされた眼圧下降とを比較した。併用製剤投与後の絶対的および相対的な眼圧下降の平均値についても、単剤療法から得られた平均値の組み合わせと比較を行い、単剤にした、安定した眼科用の製剤中の活性剤を同時投与した際の相乗作用を評価する。
【0081】
本発明の好ましい実施形態を本明細書に例示および記載してきたが、このような実施形態はあくまで例示であることは当業者には明らかであろう。多数の変更、変形、および置換は、当業者であれば本発明から逸脱することなく行うことができるであろう。本明細書に記載の発明の実施形態に対するさまざまな代替を採用して本発明を実施することができることが理解されるべきである。以下の請求項は本発明の範囲を記載したものであり、かつ、これらの請求項およびその対応特許の範囲内の方法および構造はすべてそれらに含まれることを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑内障、高眼圧症、またはそれらの合併症を治療するための眼科用の組成物であって、前記組成物はシクロデキストリンと治療上有効な量の治療用成分とからなるとともに、5.8から6.5までの間のpHを有し、かつ、前記治療用成分はドルゾラミドまたはその薬理学的に許容される塩とラタノプロストとからなる組成物。
【請求項2】
前記組成物が、さらに、粘膜付着性薬剤、保存剤、pH調整剤、等張化剤、緩衝剤、抗酸化剤、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、さらに、治療上有効な量の別の抗緑内障剤を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記別の抗緑内障剤がβ遮断薬である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記β遮断薬がチモロールである、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
前記ドルゾラミドの薬理学的に許容される塩がドルゾラミド塩酸塩である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記シクロデキストリンがヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記粘膜付着性薬剤が、ヒアルロン酸またはその薬理学的に許容される塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポロキサマー、アルギン酸、キトサン、キサンタンガム、カラギーナン、アクリル酸、アクリル酸誘導体、またはそれらの組み合わせである、請求項2から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記保存剤が、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、ポリヘキシニド、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、EDTA、またはそれらの組み合わせである、請求項2から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記pH調整剤が、塩酸、ホウ酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはそれらの組み合わせである、請求項2から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記等張化剤が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、またはそれらの組み合わせである、請求項2から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記緩衝剤が、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、またはそれらの組み合わせである、請求項2から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記抗酸化剤が、二亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、BHA、BHT、ビタミンE、アスコルビン酸、6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸、またはそれらの組み合わせである、請求項2から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
以下の成分を以下の重量パーセントで含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物:
ドルゾラミド塩酸塩 0.025〜5%
ラタノプロスト 0.001〜5%
HP−β−シクロデキストリン 0.01〜50%。
【請求項15】
以下の成分を以下の重量パーセントで含む、請求項14記載の組成物:
ドルゾラミド塩酸塩 1〜3%
ラタノプロスト 0.003〜0.01%
HP−β−シクロデキストリン 2〜10%。
【請求項16】
シクロデキストリンおよび治療上有効な量の治療用成分からなる眼科用の組成物であって、前記組成物は、治療用成分の化学的安定性、物理的安定性、および生理的安定性の少なくともいずれか1つを維持するとともに眼における忍容性に優れる範囲のpHを有し、かつ、前記治療用成分が、ドルゾラミドまたはその薬理学的に許容される塩とラタノプロストとからなる組成物。
【請求項17】
前記組成物が、25℃で6か月間保管された後、初期量の少なくとも97%のドルゾラミド、および初期量の少なくとも98%のラタノプロストを含む、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、40℃で6か月間保管された後、初期量の少なくとも97%のドルゾラミド、および初期量の少なくとも98%のラタノプロストを含む、請求項16記載の組成物。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物を、投与を必要としている患者の眼に局所的に投与することからなる、緑内障の治療方法。
【請求項20】
請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物を、投与を必要としている患者の眼に局所的に投与することからなる、高眼圧症の治療方法。
【請求項21】
ドルゾラミドまたはその薬理学的に許容される塩とラタノプロストとからなる眼科用の組成物を安定化する方法であって、シクロデキストリンを製剤中に取り込む工程と、pHを眼における忍容性が良好であるとともに各活性剤の安定性が維持される範囲に調整する工程とからなる方法。
【請求項22】
前記方法で安定化された組成物が、25℃で6か月間保管された後、初期量の少なくとも97%のドルゾラミドと、初期量の少なくとも98%のラタノプロストとを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記方法で安定化された組成物が、40℃で6か月間保管された後、初期量の少なくとも97%のドルゾラミドと、初期量の少なくとも98%のラタノプロストとを含む、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
前記シクロデキストリンがヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである、請求項21から23のいずれか一項に記載の組成物。

【公表番号】特表2011−516537(P2011−516537A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503508(P2011−503508)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003381
【国際公開番号】WO2009/125246
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(510268495)テクノファーマ ソシエテ アノニム (1)
【氏名又は名称原語表記】TECHNOPHARMA SA
【Fターム(参考)】