説明

安定性の向上した固形製剤およびその製造方法

【課題】本発明の目的は、光安定性等の保存安定性に優れた固形製剤およびその製造方法等を提供することにある。
【解決手段】有効成分を含有する核部と、該核部を覆う粉末散布剤を含有する核被覆層とを含む素製剤と、該素製剤を覆う光触媒活性または半導体の性質を呈する化合物を含有する皮膜とを含むことを特徴とする固形製剤、および有効成分を含有する核部に、粉末散布剤を含有する核被覆層の構成成分を、パウダーコーティング法でコーティングする工程を含むことを特徴とする該固形製剤の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光安定性等の保存安定性に優れた固形製剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品、食品、農薬、動物用薬等の有効成分を含有する固形製剤は、それを使用する環境や保存する環境において、安定であることが望まれている。固形製剤に含有される有効成分によっては、光によって不安定な場合があり、これまでに有効成分を含有する素製剤と、酸化チタン等の遮光剤を含有する皮膜を組み合わせた製剤とすることによる安定化の方法が多く提案されている。例えば、セルチンドールを含有する素製剤と、遮光剤として酸化チタンを含有する皮膜からなる固形製剤(細粒剤、顆粒剤、錠剤)が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、例えば酸化チタン等は、金属塩であるので、有効成分と接触することで化学反応を惹起する場合がある。その対策として、素製剤の表面を不活性な物質で覆うことにより、酸化チタン等を含有する皮膜に有効成分が接触しないようにする方法が知られている。例えば、ビタミンKを含有する核部、遮光剤として酸化チタンを含有する皮膜、および有効成分含有核部と皮膜との間の水溶性高分子を含有する中間皮膜からなる固形製剤が知られている(特許文献2参照)。
【0004】
また、例えば酸化チタン等は、紫外線によりフリーラジカルを発生することが知られており、フリーラジカルおよびその2次反応生成物によって有効成分の化学反応が惹起されることがある。そこで、例えば、有効成分を含有する素製剤と、紫外線によりフリーラジカルを発生しうる遮光剤、およびフリーラジカル消去剤を含有する皮膜とからなる医薬製剤が報告されている(特許文献3参照)。しかしながら、フリーラジカル消去剤には、それ自身やフリーラジカルとの反応により生成する物質等によって、有効成分を不安定にする懸念がある。
【特許文献1】国際公開第97/39752号パンフレット
【特許文献2】特開2002-104960号公報
【特許文献3】特開平11-147819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、有効成分を含有する素製剤と、該素製剤を覆う皮膜を含む固形製剤であって、光安定性等の保存安定性に優れた固形製剤およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の(1)〜(9)に関する。
(1) 有効成分を含有する核部と、該核部を覆う粉末散布剤を含有する核被覆層とを含む素製剤と、該素製剤を覆う光触媒活性または半導体の性質を呈する化合物を含有する皮膜とを含むことを特徴とする固形製剤。
(2) 光触媒活性または半導体の性質を呈する化合物が、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛または酸化ケイ素である前記(1)記載の固形製剤。
(3) 有効成分が、フリーラジカルまたはその2次反応生成物と反応活性がある有効成分である前記(1)または(2)記載の固形製剤。
(4) 粉末散布剤が糖、デンプン、デンプン誘導体、セルロースおよびセルロース誘導体のいずれか1つ以上である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の固形製剤。
(5) 粉末散布剤が、糖と、デンプンおよび/または難水溶性無機塩との組み合わせである前記(1)〜(3)のいずれかに記載の固形製剤。
(6) 糖が乳糖または白糖である前記(4)または(5)記載の固形製剤。
(7) 固形製剤の形状が散剤、細粒剤または顆粒剤である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の固形製剤。
(8) 固形製剤の形状が錠剤である前記(1)〜(6)のいずれかに記載の固形製剤。
(9) 有効成分を含有する核部に、粉末散布剤を含有する核被覆層の構成成分を、パウダーコーティング法でコーティングする工程を含むことを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の固形製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、光安定性等の保存安定性に優れた固形製剤およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の固形製剤は、有効成分を含有する素製剤と、該素製剤を覆う皮膜を含む固形製剤である。本発明の固形製剤における素製剤とは、コーティングされることが可能な製剤のことである。該素製剤の形状は特に限定されないが、散剤、細粒剤、顆粒剤または錠剤の形状であるのが好ましい。本明細書において、散剤、細粒剤または顆粒剤の形状の素製剤を素顆粒といい、錠剤の形状の素製剤を素錠という。本発明の固形製剤における素製剤は、有効成分を含有する核部と、該核部を覆う粉末散布剤を含有する核被覆層とを含み、該核部とはパウダーコーティングされることが可能な製剤のことであって、核被覆層とは該核部を被覆する被覆層のことである。また、本発明の固形製剤における皮膜とは、該核被覆層のさらに外側を覆う皮膜であり、例えば光触媒活性または半導体の性質を呈する化合物を含有するコーティング組成物をコーティングして形成される皮膜のことである。
【0009】
本発明における有効成分としては、特に制限されるものではないが、好ましくは、例えば光触媒活性または半導体の性質を呈する化合物によって生成されるフリーラジカルまたはその2次反応生成物、例えばスーパーオキシドラジカル(O2・-, O2H)またはヒドロキシルラジカル(OH)と反応活性がある有効成分等があげられる。フリーラジカルまたはその2次反応生成物と反応活性がある有効成分は、フリーラジカルと直接または間接的に反応活性があるものを含み、例えばスーパーオキシドラジカルまたはヒドロキシルラジカルにより分解する有効成分、スーパーオキシドラジカルまたはヒドロキシルラジカルが製剤成分と反応して生じるアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等)、酸(例えばギ酸等)、過酸化物等により分解する有効成分等があげられる。より具体的には、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンB12、タンパク、アミノ酸、オリゴ糖、アスピリン、アセトアミノフェン、エテンザミド、イブプロフェン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ジヒドロコデイン、ノスカピン、メチルエフェドリン、カフェイン、セラペプターゼ、リゾチーム、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、インドメタシン、ブコローム、ペンタゾシン、クロルプロマジン、レセルピン、アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、イミプラミン、マプロチリン、エスタゾラム、ニトラゼパム、ジアゼパム、フェノバルビタールナトリウム、スコポラミン、パパベリン、シチコリン、メクロフェノキサート、フェニトイン、カルバマゼピン、イソプロテレノール、ジアスターゼ、耐性乳酸菌、ビフィズス菌、ランソプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、ファモチジン、シメチジン、ラニチジン、デキストロメトルファン、グアンファシン、コデイン、ジフェニドール、メトクロプラミド、レバロルファン、テオフィリン、サルブタモール、アンレキサノクス、セラトロダスト、オキシテトラサイクリン、トリアムシノロンアセトニド、クロルヘキシジン、リドカイン、ジフェンヒドラミン、プロメタジン、イソチペンジル、ジゴキシン、プロカインアミド、プロプラノロール、ピンドロール、イソソルビド、フロセミド、デラプリル、カプトプリル、ヒドララジン、ラベタロール、マニジピン、カンデサルタンシレキセチル、メチルドパ、ロサルタン、バルサルタン、エプロサルタン、イルベサルタン、タソサルタン、テルミサルタン、フォラサルタン、フェニレフリン、カルボクロメン、モルシドミン、ベラパミル、シンバスタチン、プラバスタチン、トレピブトン、セファレキシン、アモキシシリン、ピプメシリナム、セフォチアム、セフォゾプラン、セフメノキシム、セフスロジンナトリウム、アンピシリン、シクラシリン、スルベニシリンナトリウム、ナリジクス酸、エノキサシン、カルモナムナトリウム、トルブタミド、ボグリボース、ピオグリタゾン、トログリタゾン、アカルボース、ミグリトール、エミグリテート、イプリフラボン、メトカルバモール、メクリジン、ジメンヒドリナート、リオチロニンナトリウム、デキサメタゾン、プレドニゾロン、オキセンドロン、リュープロレリン、アヘン、モルヒネ、トコン、オキシコドン、アヘンアルカロイド、コカイン、アロプリノール、コルヒチン、5-フルオロウラシル、マイトマイシン、式(I)
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、Aは、単結合、-CH=CH-または(CH2)n-(式中、nは1〜3の整数を表す)を表し、R1およびR2は同一または異なって水素または低級アルキルを表すか、または隣接する窒素原子と一緒になって複素環基を形成する]で表されるジベンゾ[b,e]オキセピン誘導体(以下化合物(I)という)等およびそれらの薬学的に許容される塩等があげられる。また、中でも、アミノ基またはイミノ基を有する有効成分が好ましい。
【0012】
薬学的に許容される塩は、例えば薬学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等を包含する。薬学的に許容される酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、例えば酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩があげられ、薬学的に許容される金属塩としては、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、例えばマグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩があげられ、薬学的に許容されるアンモニウム塩としては、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられ、薬学的に許容される有機アミン付加塩としては、例えばモルホリン、ピペリジン等の付加塩があげられ、薬学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、例えばリジン、グリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の付加塩があげられる。
【0013】
式(I)の各基の定義において、低級アルキルとしては、例えば炭素数1〜6の直鎖状または分枝状のアルキル、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル等があげられる。隣接する窒素原子と一緒になって形成される複素環基としては、例えばピロリジニル、モルホリノ、チオモルホリノ、N-メチルピペラジニル、ピラゾリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、インドリル、イソインドリル等があげられる。
【0014】
化合物(I)は、特開昭63-10784号公報に開示された方法で、またはそれに準じて製造することができる。
【0015】
化合物(I)の中でも、AがCH2であり、R1およびR2がともにCH3である化合物が好ましく、化合物(I)またはその薬学的に許容される塩の好ましい具体例としては、式(A)
【0016】
【化2】

【0017】
で表される(Z)-11-(3-ジメチルアミノプロピリデン)-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸塩酸塩(以下化合物(A)という)があげられる。
【0018】
本発明における粉末散布剤とは、固形の添加剤または固形の添加剤と液体もしくは半固形の添加剤を混合したもののことであり、固形の添加剤は粉末または結晶状の粉末である。また、本発明の固形製剤の製造において、使用される粉末散布剤の粒子径は、顕微鏡法または篩い分け法で測定したときの体積平均粒子径で、約100μm以下であるのが好ましく、約50μm以下であるのがより好ましく、約40μm以下であるのがさらに好ましい。このことは、素製剤の製造において、該素製剤を高収率で得る観点からも好ましい。
【0019】
該粉末散布剤としての添加剤としては、例えば糖(例えば乳糖、白糖、マルトース等)、糖アルコール(例えばマンニトール、マルチトール、エリスリトール等)、デンプン(例えばトウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン等)、デンプン誘導体(例えばヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム等)、セルロース(例えば結晶セルロース、粉末セルロース等)、セルロース誘導体(例えばメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等)、難水溶性無機塩(例えばタルク、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸ナトリウム、リン酸カルシウム等)等があげられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられ、好ましくは、糖、デンプン、デンプン誘導体、セルロース、セルロース誘導体等(具体的には糖の白糖または乳糖、デンプンのトウモロコシデンプン、デンプン誘導体のヒドロキシプロピルスターチまたはカルボキシメチルスターチナトリウム、セルロースの結晶セルロース、セルロース誘導体のクロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースカルシウム等) から選ばれる1つ以上の物質があげられ、さらに好ましくは、糖、デンプン、セルロース等(具体的には乳糖、白糖、トウモロコシデンプン、結晶セルロース等) から選ばれる1つ以上の物質があげられ、最も好ましくは糖(具体的には白糖等)があげられる。該添加剤は、平衡含水率が好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である添加剤の中から選択することがより好ましい。該添加剤を組み合わせて用いる場合には、糖、デンプン、デンプン誘導体、セルロース、セルロース誘導体等(具体的には糖の白糖または乳糖、デンプンのトウモロコシデンプン、デンプン誘導体のヒドロキシプロピルスターチまたはカルボキシメチルスターチナトリウム、セルロースの結晶セルロース、セルロース誘導体のクロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースカルシウム等)から選ばれる1つ以上の物質を主として用いることが好ましく、糖、デンプン、セルロース等(具体的には乳糖、白糖、トウモロコシデンプン、結晶セルロース等)から選ばれる1つ以上の物質を主として用いることがさらに好ましく、糖(具体的には白糖等)を主として用いることが最も好ましい。糖を主として用いる場合には、デンプンおよび/または難水溶性無機塩と組み合わせることが好ましく、乳糖または白糖を主として用いる場合には、トウモロコシデンプン、タルクまたは軽質無水ケイ酸と組み合わせることがより好ましい。糖を主として用いる場合に、デンプンおよび/または難水溶性無機塩と組み合わせることは、素製剤の製造において、該素製剤を高収率で得る観点からも好ましい。
【0020】
本発明の固形製剤における素製剤は、有効成分を含有する核部と、粉末散布剤を含有する核被覆層とを含むが、該核部は、有効成分の他に、他の有効成分および/または添加剤(前記添加剤と同義)を含有していてもよい。
【0021】
核部に含有される添加剤としては、例えば賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等およびそれらの組み合わせがあげられる。
賦形剤としては、例えば糖(例えば乳糖、白糖、マルトース等)、糖アルコール(例えばマンニトール、マルチトール、エリスリトール等)、デンプン(例えばトウモロコシデンプン、コメデンプン、コムギデンプン等)、セルロース(例えば結晶セルロース、粉末セルロース等)、セルロース誘導体(例えばクロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム等)、難水溶性無機塩(例えばタルク、軽質無水ケイ酸、メタケイ酸アルミン酸ナトリウム、リン酸カルシウム等)等があげられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられ、好ましくは、糖、デンプン、セルロース、セルロース誘導体等(具体的には糖の白糖または乳糖、デンプンのトウモロコシデンプン、セルロースの結晶セルロース、セルロース誘導体のクロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースカルシウム等) から選ばれる1つ以上の物質があげられ、さらに好ましくは、糖、デンプン、セルロース等(具体的には乳糖、白糖、トウモロコシデンプン、結晶セルロース等) から選ばれる1つ以上の物質があげられる。
【0022】
崩壊剤として例えばセルロース(例えば結晶セルロース、粉末セルロース等)、セルロース誘導体(例えばクロスカルメロースナトリウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースカルシウム等)、デンプン(例えばトウモロコシデンプン、α化デンプン、部分α化デンプン等)、デンプン誘導体(ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム等)、クロスポビドン、ベントナイト等があげられ、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。
【0023】
結合剤として例えばセルロース誘導体(例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等)、セルロース(例えば結晶セルロース等)、デンプン(例えばα化デンプン等)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン、アラビアゴム、ゼラチン等があげられ、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。
【0024】
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、硬化油、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール等があげられ、これらを単独でまたは2種以上用いてもよい。
【0025】
また、核被覆層は、粉末散布剤以外の添加剤(例えば結合剤(前記核部における結合剤と同義)、滑沢剤(前記核部における滑沢剤と同義)等)を、製造段階で粉末散布剤を含む核被覆層の構成成分により前記核部がコーティングされるのを阻害しないかぎり含有してもよく、所望により前記有効成分を含有していてもよい。
【0026】
本発明の固形製剤における皮膜は、光触媒活性または半導体の性質を呈する化合物を含有するが、該化合物(以下化合物Bという)としては例えば光触媒活性または半導体の性質を呈する金属化合物、ケイ素化合物、有機化合物、錯体物質等があげられ、好ましくは光触媒活性または半導体の性質を呈する金属化合物、ケイ素化合物等があげられ、より好ましくは酸化チタン、酸化鉄(具体的には黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄等)、酸化亜鉛、酸化ケイ素等があげられ、さらに好ましくは酸化チタンがあげられる。本発明における酸化チタンは、ルチル型およびアナターゼ型のいずれの結晶形でもよく、その粒子径についても特に限定されない。これらの酸化チタンは、結晶形や粒子径の異なる2種以上を併せて用いてもよい。また、化合物Bについては、色相の異なる2種以上を併せて用いることが好ましい。化合物Bを2種以上併せて用いる場合の組み合わせは、特に限定されないが、好ましくは、酸化チタンと、例えば、酸化鉄(具体的には黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄等)、酸化亜鉛、酸化ケイ素等との組み合わせがあげられ、より好ましくは、酸化チタンと、酸化鉄 (具体的には黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等)との組み合わせがあげられる。
【0027】
本発明の固形製剤における皮膜は、前記化合物Bに加えて、別途遮光剤、滑沢剤または分散剤を含有していてもよく、例えば、ベンガラ、カーボンブラック、薬用炭、硫酸バリウム、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、銅クロロフィン等があげられる。
【0028】
本発明の固形製剤における皮膜は、さらに例えばコーティング基剤、可塑剤、結合剤等のコーティング剤を含有していてもよく、該コーティング剤は、それぞれ2種以上混合して用いてもよい。
【0029】
コーティング基剤としては、例えば胃溶性フィルムコーティング剤、腸溶性フィルムコーティング剤、徐放性フィルムコーティング剤等があげられ、胃溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系高分子、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、ポリビニルピロリドン等の合成高分子、プルラン等の多糖類等があげられ、腸溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース フタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース アセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース等のセルロース系高分子、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS等のアクリル酸系高分子、セラック等の天然物等があげられ、徐放性フィルムコーティング基剤としては、例えば、エチルセルロース等のセルロース系高分子、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー等のアクリル酸系高分子等があげられる。
【0030】
可塑剤としては、例えばクエン酸トリエチル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、トリアセチン、ブチルフタリルブチルグリコレート、グリセリルカプリル酸エステル等のエステル;グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のアルコール等があげられる。
【0031】
結合剤およびその他のコーティング剤としては、例えば乳糖、白糖、タルク、炭酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、カルナバロウ等があげられる。
【0032】
本発明の固形製剤における核部は、球形、円柱形、不定形等いずれの形状でもよく、その粒子径は、通常用いられる任意の粒子径(例えば、顕微鏡法または篩い分け法で測定したときの体積平均粒子径で、0.4〜約2.0mm)である。また、さらに核部が芯部と芯被覆層から構成されていてもよい。核部の製造は、例えば湿式造粒法、乾式造粒法等により行うことができる。湿式造粒法としては、例えば押し出し造粒法(スクリュー押し出し造粒装置、ロール押し出し式造粒装置等による)、転動造粒法(回転ドラム型造粒装置、遠心転動型造粒装置等による)、流動層造粒法(流動層造粒装置、転動流動層造粒装置等による)、攪拌造粒法(攪拌造粒装置等による)等があげられるが、より具体的には、例えば有効成分および添加剤を混合し、得られた混合物に溶媒または結合剤溶液を添加して造粒し、得られた造粒物を乾燥する方法等があげられる。溶媒としては、例えば水、エタノール、イソプロピルアルコール、これらの混合溶媒等があげられ、結合剤溶液としては、例えば水、エタノール、イソプロピルアルコール、これらの混合溶媒等に結合剤を溶解したものがあげられるが、結合剤の水溶液が最適である。乾式造粒法としては、例えば市販の乾式造粒機を用いフレークを製造するか、打錠機によってスラッグ錠を製造し、得られたフレークまたはスラッグ錠を市販の解砕機または整粒機で破砕することで造粒物を得る破砕造粒法等があげられる。また、好ましくはそれぞれの造粒物は、適宜粉砕および/または篩い分けすることにより所望の粒子径を有するようにされる。
【0033】
一方、核部が芯部と芯被覆層から構成される場合の芯部は、前記核部の製造と同様にして製造される(該芯部は有効成分を含有しないことが好ましい)か、市販の球形シード粒子として得られる。芯被覆層は、芯被覆層の成分(有効成分を含有する)を、芯部にパウダーコーティング法またはスプレーコーティング法でコーティングして製造することができ、パウダーコーティング法によって製造することが好ましい。芯被覆層のパウダーコーティング法による製造は、後記の顆粒剤の製造方法における核被覆層を有する素顆粒を製造する工程での粉末散布剤を含む核被覆層の構成成分によるコーティングの際と同様に、芯部に芯被覆層の成分をコーティングして製造することができ、核被覆層における好ましい形態は、それぞれ芯被覆層の好ましい形態でもある。芯被覆層のスプレーコーティング法による製造は、有効成分と必要により添加剤を、溶媒(前記溶媒と同義)または結合剤溶液(前記結合剤溶液と同義)に溶解または懸濁させて、芯部にスプレーすることにより行われる。スプレーコーティング法は、例えば従来型のパン型コーティング機、通気式コーティング機、流動層型コーティング装置、転動流動型コーティング装置等を用いて行われる。球形シード粒子は、例えば、精製白糖、白糖・トウモロコシデンプン混合物、乳糖・結晶セルロース混合物、結晶セルロース等からなり、該シード粒子の粒子径は、一般に顕微鏡法または篩い分け法で測定したときの体積平均粒子径で、180〜1180μmである。
【0034】
本発明の固形製剤は、例えば前記核部に粉末散布剤をコーティングして、所望により整粒、解砕および/または(所望により他の添加剤と共に)打錠して、素製剤を製造する工程と、得られた素製剤に化合物Bを含有するコーティング組成物をコーティングして皮膜を有する固形製剤を製造する工程が含まれる製造方法により製造することができる。
【0035】
以下、本発明の固形製剤の製造方法について、形状ごとに詳細に説明する。ただし、以下の製造方法は、例を示すものであって本発明の固形製剤の製造方法を限定するものではない。
【0036】
[顆粒剤の製造方法]
本発明の固形製剤のうち、形状が顆粒剤である固形製剤は、例えば前記核部に前記粉末散布剤をコーティングして核被覆層を有する素顆粒を製造する工程、次いで前記化合物Bを含有するコーティング組成物を該素顆粒にコーティングして皮膜を有する顆粒剤を製造する工程を含む製造方法で製造される。
【0037】
核被覆層を有する素顆粒は、例えば粉末散布剤を含む核被覆層の構成成分(有効成分を含有しないことが好ましい)を、核部にパウダーコーティング法でコーティングして製造することができる。パウダーコーティング法は、添加剤と必要により有効成分を混合して粉末散布剤とし、溶媒(前記溶媒と同義)または結合剤溶液(前記結合剤溶液と同義)をスプレーしながら、粉末散布剤を散布して核部に積層させる方法である。パウダーコーティング法は、例えば回転ドラム型造粒装置、遠心転動型造粒装置、転動造粒装置、転動流動層造粒装置等を用いて行われる。核被覆層は1つの層に限らず複数の層で形成されていてもよい。この場合、各層に用いる成分の種類および/または配合量を変えてもよい。
【0038】
核部は、球形、円柱形、不定形等いずれの形状でもよいが、核被覆層および皮膜が均一に形成されやすいように、球形であるのが好ましい。この点で、有効成分と添加剤の混合物を練合(攪拌造粒装置等による)し、押し出し造粒(スクリュー押し出し造粒装置、ロール押し出し式造粒装置等による)を行った後に球形化整粒(回転円板型整粒装置、遠心転動型造粒装置、転動流動層造粒装置等による)して製造した核部か、球形のシード粒子を芯部として用い、該芯部に芯被覆層の成分(有効成分を含有する)をコーティングして製造した核部がより好ましい。該核部の粒子径は、顕微鏡法または篩い分け法で測定したときの体積平均粒子径で180〜1180μmであるのが好ましく、300〜650μmであるのがより好ましい。
【0039】
皮膜を有する顆粒剤は、例えば化合物Bを含有するコーティング組成物を溶媒(前記溶媒と同義)に溶解および/または分散させて、上記のようにして製造した素顆粒にコーティングして製造することができる。コーティングは、例えば従来型のパン型コーティング機、通気式コーティング機、流動層型コーティング装置、転動流動型コーティング装置、遠心転動型コーティング装置等を用いて行われる。
【0040】
[散剤または細粒剤の製造方法]
本発明の固形製剤のうち、形状が散剤である固形製剤は、一般的な散剤であればいずれでもよく、例えば30号(500μm)ふるいを通過しないものが全量の5%以下であるものが好ましい。
【0041】
本発明の固形製剤のうち、形状が細粒剤である固形製剤は、一般的な細粒剤であればいずれでもよく、例えば30号(500μm)ふるいを通過しないものが全量の5%以下で、200号(75μm)ふるいを通過するものが全量の10%以下であるものが好ましい。
【0042】
本発明の固形製剤のうち、形状が散剤または細粒剤である固形製剤は、例えば前記顆粒剤の製造方法と同様にして製造し、各工程において適宜粉砕および/または篩い分けすることにより所望の粒子径にすることで製造することができる。
【0043】
[錠剤の製造方法]
本発明の固形製剤のうち、形状が錠剤である固形製剤は、例えば前記顆粒剤、前記散剤または細粒剤の製造方法における核被覆層を有する素顆粒に必要により添加剤(前記核部における添加剤と同義)の粉末および/または造粒物を加えて混合する工程、得られた混合物を打錠することにより素錠を製造する工程、次いで化合物Bを含有するコーティング組成物を該素錠にコーティングして皮膜を有する錠剤を製造する工程を含む製造方法で製造することができる。
【0044】
造粒物の製造は、例えば湿式造粒法、乾式造粒法等により行うことができる。湿式造粒法としては、例えば押し出し造粒法(スクリュー押し出し造粒装置、ロール押し出し式造粒装置等による)、転動造粒法(回転ドラム型造粒装置、遠心転動型造粒装置等による)、流動層造粒法(流動層造粒装置、転動流動層造粒装置等による)、攪拌造粒法(攪拌造粒装置等による)等があげられるが、より具体的には、添加剤を混合し、得られた混合物に溶媒(前記溶媒と同義)または結合剤溶液(前記結合剤溶液と同義)を添加して造粒し、得られた造粒物を乾燥する方法等があげられる。乾式造粒法としては、例えば市販の乾式造粒機を用いフレークを製造するか、打錠機によってスラッグ錠を製造し、得られたフレークまたはスラッグ錠を市販の解砕機または整粒機で破砕することで造粒物を得る破砕造粒法等があげられる。また、好ましくはそれぞれの造粒物は、適宜粉砕および/または篩い分けすることにより所望の粒子径を有するようにされる。
【0045】
素錠は、上述のように核被覆層を有する素顆粒に必要により添加剤の粉末および/または造粒物を加えて混合し、得られた混合物を打錠することにより製造することができるが、打錠の際の打錠圧は、例えば3〜30kNの範囲から適当に選択できる。素錠の重量は特に制限されないが、例えば1錠あたり30〜3000mgである。
【0046】
皮膜を有する錠剤は、例えば化合物Bを含有するコーティング組成物を溶媒(前記溶媒と同義)に溶解および/または分散させて、前記素錠にコーティングして製造することができる。コーティングは、例えば従来型のパン型コーティング機、通気式コーティング機、流動層型コーティング装置、転動流動型コーティング装置等を用いて行われる。
【0047】
本発明の固形製剤は、経口投与できればいかなる形状のものでもよいが、中でも、散剤、細粒剤、顆粒剤または錠剤の形状であるのが好ましく、細粒剤または顆粒剤の形状であるのがより好ましい。また、本発明の固形製剤をカプセルに充填して、本発明の固形製剤を含有するカプセル剤や、必要により他の添加剤等とともに混合および/または造粒して本発明の固形製剤を含有する粒子状製剤またはドライシロップや、本発明の固形製剤を含有するマルチプルユニット錠としてもよい。
【0048】
[マルチプルユニット型の錠剤の製造方法]
本発明の固形製剤を含有するマルチプルユニット錠は、本発明の固形製剤に必要により添加剤(前記核部における添加剤と同義)の粉末および/または造粒物(形状が錠剤である本発明の固形製剤における素錠を製造する際の造粒物と同義)を加えて混合する工程、得られた混合物を形状が錠剤である本発明の固形製剤における素錠を製造する際と同様に打錠する工程を含む製造方法で製造できる。このとき、外部滑沢打錠法で打錠することが好ましい。また、顕微鏡法または篩い分け法で測定したときの体積平均粒子径で、400μm以下の形状が細粒剤である本発明の固形製剤と糖アルコール(例えばマンニトール、マルチトール、エリスリトール等)、崩壊剤(前記核部における崩壊剤と同義)および必要により他の添加剤(前記核部における添加剤と同義)を混合する工程を含む製造方法でマルチプルユニット型の口腔内速崩錠を製造することができる。
【0049】
本発明の固形製剤における皮膜において、皮膜中の化合物Bの量は、素製剤100重量部に対して0.6重量部以上であるのが好ましく、0.8〜50重量部であるのがより好ましく、1〜25重量部であるのがさらに好ましい。また、化合物Bとして、酸化チタンまたは酸化チタンと酸化鉄 (具体的には黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等)との組み合わせを用いた場合には、酸化チタンまたは酸化チタンと酸化鉄とで、素製剤100重量部に対して0.6重量部以上であるのが好ましく、0.8〜50重量部であるのがより好ましく、1〜25重量部であるのがさらに好ましい。
【0050】
素製剤に対する皮膜量は、素製剤100重量部に対して1〜1000重量部であるのが好ましく、1.5〜100重量部であるのがより好ましく、1.5〜50重量部であるのがさらに好ましい。素製剤にコーティングするための化合物Bを含有するコーティング組成物を溶媒に溶解および/または分散させるときの該コーティング組成物の濃度は、一般に0.1〜50重量%であるのが好ましく、0.5〜20重量%であるのがより好ましい。
【0051】
本発明の固形製剤における素製剤中の有効成分については、核被覆層中の有効成分の量が、該核被覆層での全成分100重量部に対して0.5重量部以下であることが好ましく、核被覆層中の有効成分の量が該核被覆層での全成分100重量部に対して0.05〜0.5重量部であり、核部中に残りの有効成分を含有するか、または核被覆層中に有効成分を含有せず、核部中に有効成分のすべてを含有することがより好ましく、核被覆層中に有効成分を含有せず、核部中に有効成分のすべてを含有することがさらに好ましい。前述したように本発明の固形製剤における素製剤では、核被覆層中に有効成分を含有せず、核部中に有効成分のすべてを含有することが好ましいが、この場合、皮膜中の成分や製剤外部の空気や湿気との接触による有効成分の安定性の低下や、有効成分が製剤外部に移動して失われることもより抑制することができる。
【0052】
本発明の固形製剤中に含まれる各添加剤の量は、製剤における一般的な使用の量の範囲内で構わない。また、結合剤を結合剤溶液として用いる場合には、結合剤溶液中の結合剤の濃度は、一般に0.1〜50重量%であるのが好ましく、0.5〜20重量%であるのがより好ましく、本発明の固形製剤は結合剤溶液のスプレーにより添加された結合剤の他に、粉末で添加された結合剤を含有していてもよい。
【0053】
また、核被覆層の量は、素製剤100重量部に対して5〜90重量部であるのが好ましく、10〜75重量部であるのがより好ましく、10〜50重量部であるのがさらに好ましい。該核被覆層の量が5重量部以上では、核部全体を粉末散布剤でコーティングすることがより容易となり、90重量部以下では、細粒剤または顆粒剤として適正な粒子サイズの素製剤をより製造しやすい。
【0054】
核部が芯部と芯被覆層からなる場合の芯被覆層の量は、芯被覆層の製造をパウダーコーティング法で行う場合は、芯部100重量部に対して5〜90重量部であるのが好ましく、10〜75重量部であるのがより好ましく、10〜50重量部であるのがさらに好ましく、芯被覆層の製造をスプレーコーティングで行う場合は、0.1〜90重量部であるのが好ましく、0.5〜50重量部であるのがより好ましく、1〜30重量部であるのがさらに好ましい。
【0055】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0056】
表1に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;芯部としての精製白糖球状顆粒(ノンパレル-103、32〜42メッシュ、フロイント産業製、以下同じ)600gに遠心転動型造粒装置(CF-360;CFグラニュレーター360、フロイント産業製、以下同じ)を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL、日本曹達製、以下同じ)水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A)(協和発酵製、以下同じ) 6gと白糖粉末(日局白糖、日新製糖製、以下同じ)114gとの混合粉末を散布し、化合物(A)を含有する核部を得た。次いで、この核部に対し、同様にヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、白糖粉末480gをパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
皮膜を有する顆粒剤;表1の処方に従って、皮膜成分を精製水に溶解および分散し、固形分濃度11.6重量%のスプレー液を用意した。上記で得られた素顆粒800gに CF-360を用いて、スプレー液を素顆粒100重量部に対して皮膜が乾燥状態で17.4重量部になるまでスプレーすることにより顆粒剤を得た。
【実施例2】
【0057】
表1に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;芯部としての精製白糖球状顆粒600gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A) 6gと白糖粉末294gとの混合粉末を散布し、化合物(A)を含有する核部を得た。次いで、この核部に対し、同様にヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、白糖粉末300gをパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
皮膜を有する顆粒剤;実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
【実施例3】
【0058】
表1に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;芯部としての精製白糖球状顆粒600gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A)6gと白糖粉末78gとトウモロコシデンプン(Starch1500、カラコン製、以下同じ)36gとの混合粉末を散布し、化合物(A)を含有する核部を得た。次いで、この核部に対し、同様にヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、白糖粉末336gとトウモロコシデンプン144gとの混合粉末をパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
皮膜を有する顆粒剤;実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
【実施例4】
【0059】
表1に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;芯部としての精製白糖球状顆粒600gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A)6gと白糖粉末113gと軽質無水ケイ酸(サンリシア350、富士シリシア化学製)1gとの混合粉末を散布し、化合物(A)を含有する核部を得た。次いで、この核部に対し、同様にヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、白糖粉末475gと軽質無水ケイ酸5gとの混合粉末をパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
皮膜を有する顆粒剤;実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
【実施例5】
【0060】
表1に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;芯部としての精製白糖球状顆粒600gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A)6gと白糖粉末108gとタルク(リスブラン、キハラ化成製、以下同じ)6gとの混合粉末を散布し、化合物(A)を含有する核部を得た。次いで、この核部に対し、同様にヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、白糖粉末456gとタルク24gとの混合粉末をパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
皮膜を有する顆粒剤;実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
【0061】
比較例1
表1に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;核部としての精製白糖球状顆粒1080gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A) 6gと白糖粉末114gとの混合粉末をパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
皮膜を有する顆粒剤;実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
【0062】
比較例2
表1に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;核部としての精製白糖球状顆粒900gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A) 6gと白糖粉末294gとの混合粉末をパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
皮膜を有する顆粒剤;実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
【0063】
比較例3
表1に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;核部としての精製白糖球状顆粒600gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5重量%)をスプレーしながら、化合物(A) 6gと白糖粉末594gとの混合粉末をパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。
皮膜を有する顆粒剤;実施例1と同様にして顆粒剤を得た。
【0064】
【表1】

【0065】
試験例1(光安定性試験)
実施例1〜5および比較例1〜3で得た各顆粒剤を用い、光安定性試験を行った。光安定性試験は、シャーレ上に各顆粒剤を均一に配置して、25℃、相対湿度60%の恒温槽内で昼白色光(D65)ランプ1000Lux光を50日間(120万Lux・hr)照射することにより行った。曝光後、サンプリングを行い、高速液体クロマトグラフィーにより化合物(A)の類縁物質生成量を求めた。光安定性試験の結果を表2に示す。類縁物質(B)は化合物(A)の幾何異性体であり、光異性化により生成し、固形製剤において遮光保存下では生じない。
高速液体クロマトグラフィー条件
カラム;Inertsil C8 4.6×250mm GL Sciences Inc.
カラム温度;40℃付近の一定温度
移動相;0.05mol/Lリン酸緩衝液(pH3.5) : アセトニトリル = 550mL : 450mL + ラウリル硫酸ナトリウム 2.3g
検出方法 :紫外線吸光光度法 (波長299nm)
【0066】
【表2】

【0067】
表2より、素製剤が核部と核被覆層からなる実施例1〜5で得られた各顆粒剤では、核被覆層のない比較例1〜3で得られた各顆粒剤と比較して、曝光下における類縁物質(B)およびその他の類縁物質生成の顕著な抑制が認められた。すなわち有効成分を含有する核部と、該核部を覆う粉末散布剤を含有する核被覆層とを含む素製剤と、該素製剤を覆う光触媒活性または半導体の性質を呈する化合物を含有する皮膜とを含むことを特徴とする固形製剤は、光安定性等の保存安定性に優れた固形製剤であることが明らかとなった。
【実施例6】
【0068】
表3に示す顆粒剤を以下の手順に従って製造した。
素顆粒;芯部としての精製白糖球状顆粒2000gにCF-360を用いて、ヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5.9重量%)をスプレーしながら、化合物(A)23.55gと白糖粉末[前記白糖を粉砕機(サンプルミルKIIWG-1F、不二パウダル製)を用いて粉砕し、体積平均粒子径を約30μmにした、以下同じ]368.8gと軽質無水ケイ酸(アドソリダー101、フロイント産業製、以下同じ)2.83gとの混合粉末を散布し、化合物(A)を含有する核部を得た。次いで、この核部に対し、同様にヒドロキシプロピルセルロース水溶液(5.9重量%)をスプレーしながら、白糖粉末1587.8gと軽質無水ケイ酸12.25gとの混合粉末をパウダーコーティングすることにより素顆粒を得た。(以上の素顆粒の製造を3回繰り返した)
得られた素顆粒を通風乾燥機(VD-1000SJ、日東理科工業株式会社)で乾燥後、振動篩502CBH(不二パウダル製)を用いて分級(355〜820μm)した。得られた素顆粒は高収率(分級収率96%)であった。
皮膜を有する顆粒剤;表3の処方に従って、皮膜成分を精製水に溶解および分散し、固形分濃度11.6重量%のスプレー液を用意した。上記で得られた素顆粒9300gに流動層造粒乾燥機(フローコータFLO-15EX、フロイント産業製)を用いて、素顆粒100重量部に対して皮膜が乾燥状態で17.4重量部になるまでスプレー液をスプレーコーティングすることにより顆粒剤を得た。
得られたコーティング顆粒を、振動篩502CBH(不二パウダル製)を用いて分級(355〜850μm、分級収率96%)し、軽質無水ケイ酸をコーティング顆粒99.9%重量部あたり0.1%重量部添加して混合し製剤を得た。
【0069】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明により、光安定性等の保存安定性に優れた固形製剤およびその製造方法が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)




で表される(Z)-11-(3-ジメチルアミノプロピリデン)-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸塩酸塩を含有する核部と、該核部を覆う粉末散布剤を含有する核被覆層とを含む素製剤と、該素製剤を覆う酸化チタンを含有する皮膜とを含み、該核被覆層が、粉末散布剤である糖または糖および難水溶性無機塩を、該核部にパウダーコーティング法でコーティングして得られた核被覆層であることを特徴とする散剤、細粒剤または顆粒剤
【請求項2】
核部が芯部と芯被覆層からなり、該芯部が球形シード粒子であり、芯被覆層が有効成分および糖または有効成分、糖および難水溶性無機塩を、該芯部にパウダーコーティング法でコーティングして得られた芯被覆層である請求項1記載の散剤、細粒剤または顆粒剤
【請求項3】
芯被覆層の量が、芯部100重量部に対して5〜90重量部である請求項2記載の散剤、細粒剤または顆粒剤
【請求項4】
核被覆層中に有効成分を含有せず、核部中に有効成分のすべてを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の散剤、細粒剤または顆粒剤
【請求項5】
核被覆層の量が、素製剤100重量部に対して5〜90重量部である請求項1〜4のいずれかに記載の散剤、細粒剤または顆粒剤
【請求項6】
式(A)




で表される(Z)-11-(3-ジメチルアミノプロピリデン)-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸塩酸塩を含有する核部と、該核部を覆う粉末散布剤を含有する核被覆層とを含む素製剤と、該素製剤を覆う酸化チタンを含有する皮膜とを含む散剤、細粒剤または顆粒剤において、
有効成分を含有する核部に、粉末散布剤である糖または糖および難水溶性無機塩を、パウダーコーティング法でコーティングする工程を含むことを特徴とする該散剤、細粒剤または顆粒剤の曝光保存中における(Z)-11-(3-ジメチルアミノプロピリデン)-6,11-ジヒドロジベンゾ[b,e]オキセピン-2-酢酸塩酸塩の安定化方法。
【請求項7】
核部が芯部と芯被覆層からなり、該芯部が球形シード粒子であり、芯被覆層が有効成分および糖または有効成分、糖および難水溶性無機塩を、該芯部にパウダーコーティング法でコーティングして得られた芯被覆層とすることを特徴とする請求項6記載の安定化方法。
【請求項8】
芯被覆層の量を、芯部100重量部に対して5〜90重量部とすることを特徴とする請求項7記載の安定化方法。
【請求項9】
核被覆層中に有効成分を含有せず、核部中に有効成分のすべてを含有させることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の安定化方法。
【請求項10】
核被覆層の量を、素製剤100重量部に対して5〜90重量部とすることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の安定化方法。

【公開番号】特開2012−184267(P2012−184267A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−149388(P2012−149388)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【分割の表示】特願2006−512139(P2006−512139)の分割
【原出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000001029)協和発酵キリン株式会社 (276)
【Fターム(参考)】