説明

安定液の再利用方法

【課題】 安定液を使用した工事現場から回収した安定液を再利用可能とする。
【解決手段】 安定液を使用する工事現場から廃棄安定液40を回収し、この廃棄安定液40をソイルセメントのセメントミルク39を造るための水として再利用する。廃棄安定液40は、安定液を使用する現場において、地盤21の掘削に使用した安定液25、安定液25中の粘性の調整により生じた安定液25、及び再使用不可能なために廃液として回収した安定液25である。また、対象とする地盤21の土質に応じて、廃棄安定液40に添加剤又は混和剤を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定液の再利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、場所打ち杭を構築する工法の一例として、安定液(ベントナイト、増粘剤、ポリマー剤、分散剤等の懸濁液)を供給しながら掘削機により地盤を掘削することにより孔を形成し、この孔内にコンクリートを打設することにより杭を構築し、この後に、地盤を掘削することによって発生した土砂(発生土)にセメント等の固化材を添加し、これを埋め戻し材として杭の上部の孔内に埋め戻す工法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような工法においては、地盤を掘削することによって発生した土砂(発生土)と安定液との混合液(泥水)を泥水ポンプで吸い上げて回収し、地上に設置した泥水処理装置で所定の処理(発生土の固形分の分離、除去等)を施した後に、再利用可能な安定液は安定液貯留タンク内に回収し、再利用不可能な安定液は廃液として回収している。
【0004】
また、掘削対象とする地盤が粘性土を主体とするものである場合には、粘性土分によって安定液の比重が上昇し、粘度が増加するため、掘削効率が低下する。このため、低比重の安定液で希釈することにより比重を低下させ、粘度を調整し、掘削効率が低下するのを防止しているが、希釈によって安定液の量が増加し、余剰安定液が大量に発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−154763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような場所打ち杭の構築に用いた安定液、廃液として回収した安定液、及び安定液中の粘性の調整により生じた余剰安定液は、工事の完了後に産業廃棄物として処理しなければならないため、その処理に費用がかかり、環境負荷も増大する。
【0007】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、場所打ち杭の構築現場等で使用した安定液を工事の完了後に産業廃棄物として処理することなく、再利用することが可能な安定液の再利用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、安定液の再利用方法であって、安定液を使用する工事現場から廃棄安定液を回収し、この廃棄安定液をソイルセメントのセメントミルクを造るための水として再利用することを特徴とする。
【0009】
本発明の安定液の再利用方法によれば、安定液を使用する工事現場から回収した廃棄安定液をソイルセメントのセメントミルクを造るための水として再利用することができるので、回収した廃棄安定液を産業廃棄物として処理する必要がなくなり、廃棄安定液の処理に要する費用を削減することができる。また、セメントミルクを造るための水として上水を使用する必要がなくなるので、上水の調達に要する費用を削減することができる。
【0010】
また、本発明において、前記廃棄安定液は、安定液を使用する現場において、地盤の掘削に使用した安定液、安定液中の粘性の調整により生じた安定液、及び再使用不可能なために廃液として回収した安定液であることとしてもよい。
【0011】
本発明の安定液の再利用方法によれば、安定液を使用する現場から回収した各種の廃棄安定液(地盤の掘削に使用した安定液、安定液中の粘性の調整により生じた安定液、及び再使用不可能なために廃液として回収した安定液)をソイルセメントのセメントミルクを造るための水として再利用することができるので、廃棄安定液を産業廃棄物として処理する必要がなくなり、廃棄安定液の処理に要する費用を削減することができる。
【0012】
さらに、本発明において、前記廃棄安定液に添加剤又は混和剤を添加することとしてもよい。
【0013】
本発明の安定液の再利用方法によれば、添加剤又は混和剤を添加した廃棄安定液は、添加剤又は混和剤の特性により、地盤を掘削した際に生じる土砂の粘性を下げる性質を有しているので、地盤の掘削した溝内へのセメントミルクの注入量を標準配合のセメントミルクの注入量よりも少なくしても、所望の流動性及び強度が得られるので、使用するセメントの量を削減することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上、説明したように、本発明の安定液の再利用方法によれば、安定液を使用する現場から廃棄安定液を回収し、この廃棄安定液をソイルセメントのセメントミルクを造るための水として再利用することができる。従って、安定液を使用する現場から回収した廃棄安定液を産業廃棄物として処理する必要がなくなるので、廃棄安定液の処理に要する費用を削減することができるとともに、環境負荷を軽減させることもできる。また、ソイルセメントのセメントミルクを造るための水に上水を使用する必要がないので、上水の調達に要する費用を削減することができる。さらに、安定液に添加した添加剤の特性により、地盤を掘削した際に生じる土砂の粘性を下げることができるので、地盤へのセメントミルクの注入量を標準配合のセメントミルクよりも少なくしても、標準配合のセメントミルクと同程度の流動性及び強度が得られることになり、使用するセメントの量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による安定液の再利用方法の一実施の形態を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1には、本発明による安定液の再利用方法の一実施の形態が示されている。本実施の形態の安定液の再利用方法は、場所打ち杭の構築現場で用いられた安定液を、工事の完了後に産業廃棄物として処理することなく、同一現場に設けられたソイルセメント壁の構築現場で再利用可能としたものである。
【0017】
場所打ち杭の構築現場では、図1に示すように、掘削機1(例えば、ハイドロフレーズ掘削機)、安定液供給装置6、泥水処理装置12、及びそれらの付帯設備が設備として設けられ、これらの設備を利用して杭26が構築される。
【0018】
掘削機1の下端には、油圧駆動式のロータリーカッター3が回転自在に設けられている。また、掘削機1には、地上に設置された油圧ポンプ等からなる油圧ユニット(図示せず)と、ロータリーカッター3の駆動源(油圧モータ)とを接続する油圧管が設けられ、地上の油圧ユニットから油圧管を介して油圧モータに油圧を供給することにより、ロータリーカッター3を回転駆動させることができる。
【0019】
さらに、掘削機1には、複数の吐出口を有する吐出管と、吐出管と地上に設置された安定液供給装置6との間を接続する安定液供給管とが設けられ、地上の安定液供給装置6から安定液供給管を介して吐出管に安定液を供給することにより、吐出管の各吐出口から安定液を吐出させることができる。
【0020】
さらに、掘削機1には、ロータリーカッター3で地盤21を掘削することによって発生した土砂(発生土24)と安定液25との混合液(泥水23)を吸い上げる泥水ポンプ4と、泥水ポンプ4で吸い上げた泥水23を地上の泥水処理装置12に導く泥水管5とが設けられている。
【0021】
ここで、安定液25とは、ベントナイト、増粘剤、ポリマー剤、分散剤等からなる液体であり、これらを対象とする地盤21の土質に応じた配合比で配合することにより、地盤21に形成した孔22の内壁の安定性を保つ性状を付与することができる。
【0022】
また、発生土24は、対象とする地盤21によって構成する固形分が異なるが、概ね、細粒分(粘土:粒径0.005mm、シルト:粒径0.075mm)と、粗粒分(砂:粒径0.075〜2.0mm、礫:粒径2.0〜75mm)と、石分(石:粒径75mm〜300mm)とから構成される(「絵とき土質工学」、第10頁、土粒子の粒径による区分、発行所:株式会社オーム社、平成11年6月28日発行)。
【0023】
安定液供給装置6は、安定液25を貯留させる安定液貯留タンク7と、安定液貯留タンク7から安定液25を掘削機本体2の安定液供給管に供給する安定液供給ポンプ8とを備えている。泥水ポンプ4によって吸い上げ、後述する泥水処理装置12で発生土24の固形分を分離した安定液25が安定液貯留タンク7内に回収され、貯留される。
【0024】
なお、図中9は、安定液貯留タンク7の底部に沈殿した発生土24のスラリー状の固形分を後述する第2処理装置14に供給するスラリーポンプであり、図中10は、安定液貯留タンク7から劣化した安定液25を廃液として排出させる廃液ポンプである。安定液貯留タンク7から廃液ポンプ10により排出された廃液としての安定液25は、後述するSMWプラント30に供給される。
【0025】
泥水処理装置12は、泥水23から発生土24の砂質土分を分離する第1処理装置13と、泥水23から発生土24の粘性土分を分離する第2処理装置14とを備え、対象とする地盤21の土質に応じて、第1処理装置13及び第2処理装置14の一方又は両方を使用する。
【0026】
第1処理装置13は、例えば、振動篩機であって、泥水ポンプ4で吸い上げた泥水23を第1処理装置13に導き、第1処理装置13を駆動させることにより、泥水23に含まれる発生土24の砂質土分が分離される。砂質土分が含まれていない安定液25は、第1処理装置13から安定液供給装置6の安定液貯留タンク7内に回収され、貯留される。
【0027】
第2処理装置14は、例えば、遠心分離機(デカンター)であって、泥水ポンプ4で吸い上げた泥水23を第2処理装置14に導き、第2処理装置14を駆動させることにより、遠心力によって安定液25と発生土24の粘性土分とが固液分離され、泥水23に含まれる発生土24の粘性土分が分離される。粘性土分が含まれていない安定液25は、第2処理装置14から安定液供給装置6の安定液貯留タンク7内に回収され、貯留される。
【0028】
なお、第1処理装置13と第2処理装置14の両方を使用する場合には、第1処理装置13で泥水23から砂質土分を分離し、この砂質土分を分離した泥水23を第2処理装置14に導き、第2処理装置14で泥水23に含まれる粘性土分を更に分離し、この砂質土分及び粘性土分が含まれていない安定液25を第2処理装置14から安定液供給装置6の安定液貯留タンク7内に回収し、貯留させる。
【0029】
第1処理装置13で泥水23から分離された砂質土分は、第1処理装置13から回収されてミキサー15(2軸強制練ミキサー等)に供給され、ミキサー15によって添加剤(水、セメント、及び分散剤(例えば、ポリマー、好ましくは高粘度の生分解性ポリマー))と共に混ぜることにより、対象とする地盤21に適した比重、粘性、造壁性、及び流動性を有する埋め戻し材27が製造される。
【0030】
また、第2処理装置14で泥水23から分離された粘性土分は、第2処理装置14から回収されてミキサー15(2軸強制練ミキサー等)に供給され、ミキサー15によって添加剤(水及びセメント)と共に混ぜることにより、対象とする地盤21に適した比重、粘性、造壁性、及び流動性を有する埋め戻し材28が製造される。
【0031】
なお、ミキサー15で製造された埋め戻し材27、28は、埋め戻し材貯留ダンク16内に貯留される。
【0032】
そして、上記のような構成の掘削機1を地盤21上の所定の位置に配置し、ロータリーカッター3を回転駆動させながら、クローラクレーンのウインチを操作して掘削機1を下降させることにより地盤21を下方に向けて掘削し、地盤21に孔22を形成する。
【0033】
この際、安定液供給装置6から掘削機1の安定液供給管に安定液25を供給し、この安定液25を安定液供給管を通じて安定液吐出管に導き、安定液吐出管の各吐出口から地盤21に向けて吐出させることにより、ロータリーカッター3によって掘削した土砂(発生土24)と安定液25とを混ぜる。
【0034】
また、地盤21の土質に応じて、孔22内に低比重の安定液25を供給し、孔22内の安定液25の比重を低下させ、粘度を調整することにより、施工効率の低下を防止する。この際に、孔22内から溢れ出た余剰安定液25は回収し、後述するSMWプラント30に供給する。
【0035】
そして、地盤21に孔22を形成した後に、クローラクレーンのウインチを操作して掘削機本体2を上昇させながら、泥水ポンプ4によって孔22内から泥水23を吸い上げ、この泥水23を泥水処理装置12の第1処理装置13又は第2処理装置14に導き、泥水23に含まれる発生土24の砂質土分又は粘性土分を分離する。
【0036】
そして、第1処理装置13で砂質土分を分離した安定液25を第1処理装置13から安定液供給装置6の安定液貯留7タンク内に回収し、貯留させる。又は、第2処理装置14で粘性土分を分離した安定液25を第2処理装置14から安定液供給装置6の安定液貯留タンク7内に回収し、貯留させる。又は、第1処理装置13で砂質土分を分離した安定液25を第1処理装置13から第2処理装置14に導き、第2処理装置14で粘性土分を分離した後に第2処理装置14から安定液供給装置6の安定液貯留タンク7内に回収し、貯留させる。
【0037】
そして、第1処理装置13で泥水23から分離した砂質土分を第1処理装置13から回収してミキサー15に供給し、添加剤として水、セメント、及び分散剤(例えば、ポリマー、好ましくは高粘度の生分解性ポリマー)を添加し、これらをミキサー15で混ぜることにより、砂質土分の粒子が全体に均一に分散された埋め戻し材27を製造する。
【0038】
また、第2処理装置14で泥水23から分離した粘性土分を第2処理装置14から回収してミキサー15に供給し、添加剤として水、及びセメントを添加し、これらをミキサー15で混ぜることにより、粘性土分の粒子が全体に均一に分散された埋め戻し材28を製造する。
【0039】
そして、上記の埋め戻し材27、28の製造作業に並行して、地盤21に形成した孔22内にトレミー管(図示せず)を挿入し、このトレミー管を引き上げながらトレミー管を介して孔22内にコンクリートを打設することにより、孔22内に杭26を構築する。この場合、杭26の上部の孔22内には、安定液供給装置6の安定液貯留タンク7から安定液25が供給されて充填された状態となっており、孔22の内壁の安定性が保たれている。
【0040】
そして、杭26を構築した孔22内にトレミー管17を挿入し、このトレミー管17の先端を杭26の上端に近接する位置に位置決めし、圧送ポンプ18を作動させることにより、ミキサー15で製造した埋め戻し材27又は埋め戻し材28を、埋め戻し材貯留タンク16からトレミー管17を介して杭26の上部の孔22内に下端から上端に向けて順次充填し、杭26の上部の孔22内の全体を埋め戻し材27又は埋め戻し材28で埋め戻す。
なお、埋め戻し材27、28を圧送ポンプ18によらずに、運搬によってトレミー管17に供給するように構成してもよい。
【0041】
この際、埋め戻し材27又は埋め戻し材28、又は埋め戻し材27及び埋め戻し材28を孔22内に充填することによって孔22から溢れ出た安定液25は、安定液回収ポンプ19によって吸い上げ、安定液回収管20を介して安定液供給装置6の安定液貯留タンク7内に回収し、貯留させる。
【0042】
このようにして、地盤21に複数の杭26を構築することができるとともに、各杭26の上部の孔22内を、発生土24の砂質土又は粘性土を原料として製造した埋め戻し材27又は埋め戻し材28で埋め戻すことができることになる。
【0043】
次に、上記のような手順によって杭26を構築した後に、杭26の構築現場で使用した安定液25、安定液25の粘土調整により生じた余剰安定液25、再使用な不可能な廃液として回収した安定液25を回収し、これらを杭26の構築現場と同一現場に設けられているソイルセメント壁35の構築現場に輸送し、例えば、その現場のSMWプラント30に供給する。
【0044】
SMWプラント30には、地盤21を削孔攪拌する削孔攪拌機31、削孔攪拌機31にセメントミルク39を供給するセメントミルク供給装置35、及びそれらの付帯設備が設備として設けられている。
【0045】
削孔攪拌機31は、例えば、本体機32(例えば、杭打ち機)と、本体機32に回転可能に取り付けられるアースオーガー33とを備え、アースオーガー33にセメントミルク供給装置35からセメントミルク39が供給される。
【0046】
セメントミルク供給装置35は、セメントミルク39を貯留させるセメントミルク貯留タンク36と、セメントミルク貯留タンク36から削孔攪拌機31のアースオーガー33にセメントミルク39を供給するセメントミルク供給ポンプ37とを備えている。
【0047】
セメントミルク39は、一般には、水とセメントとベントナイトとを配合したセメント系懸濁液であるが、本実施の形態においては、水の代わりに杭25の構築現場から回収した廃棄安定液40を用い、この廃棄安定液40に必要に応じて添加剤として分散剤及び流動化剤を添加し、又は混和剤を添加し、この添加剤又は混和剤を添加した廃棄安定液40とベントナイト41とセメント42とを混ぜることによってセメントミルク39を製造する。この場合、廃棄安定液40とベントナイト41とセメント39との配合比は、地盤条件、施工条件等に応じて適宜の調整することにより、構築するソイルセメント壁45の強度及び止水性を確保することができる。
【0048】
ここで、廃棄安定液40には、前述したように、杭26の構築現場で地盤21の掘削に使用した安定液25、安定液25の粘度の調整により生じた余剰安定液25、埋め戻し材27、28を埋め戻す際に使用した安定液25を使用する。但し、これに限定することなく、他の工事現場から回収した廃棄安定液や、外部から調達した安定液を使用してもよい。
【0049】
なお、ソイルセメント壁45の構築に使用する攪拌削孔機31のアースオーガー33には、先端から地盤21に向けてセメントミルク39を吐出せるためのセメントミルク吐出管(図示せず)が設けられ、このセメントミルク吐出管にセメントミルク供給装置35のセメントミルク貯留タンク36から、セメントミルク供給ポンプ37の作動によってセメントミルク39が供給される。
【0050】
そして、上記のような構成の削孔攪拌機31を地盤21上の所定の位置に配置し、アースオーガー33を回転させて地盤21を削孔しながら、セメントミルク供給装置35からアースオーガー33にセメントミルク39を供給し、アースオーガー33の先端からセメントミルク39を吐出させることにより、1エレメントの削孔混練を行い、このような作業を連続して行うことにより、複数エレメントからなるソイルセメント壁45を構築することができる。
【0051】
上記のように構成した本実施の形態の廃棄安定液の再利用方法にあっては、杭26の構築現場で使用した安定液25、安定液25の粘土調整により生じた余剰安定液25、及び再使用不可能な廃液として回収した安定液25を廃棄安定液40として回収し、これらの廃棄安定液40とベントナイト41とセメント42とによりセメントミルク39を製造し、このセメントミルク39を削孔攪拌機31のアースオーガー33に供給し、アースオーガー33により地盤21を削孔しながらセメントミルク39吐出させることにより、地盤21を削孔混練してソイルセメント壁45を構築するように構成したので、杭26の構築現場で使用した安定液25、余剰安定液25、及び廃液として回収した安定液25を産業廃棄物として処理する必要がなくなり、安定液25の処理に要する費用を削減できるとともに、環境負荷を軽減させることができる。
【0052】
また、セメントミルク39を造るための水として上水を使用する必要がないので、上水の調達に要する費用を削減することができ、工費を削減することができるとともに、環境負荷を軽減させることもできる。
【0053】
さらに、廃棄安定液40とベントナイト41とセメント42とからなるセメントミルク39は、廃棄安定液40に添加剤として添加した分散剤及び流動化剤、又は混和剤の特性により、泥水23(安定液25と土砂(発生土24)との混合液)に含まれる土砂(発生土24)の粘性を低くする性質があるので、地盤21への注入量を標準配合のセメントミルク(水とベントナイトとセメントとからなるセメントミルク)よりも少なくしても、所望の流動性が得られるので、地盤21を容易に削孔混練することができ、所望の強度のソイルセメント壁45を構築することができる。この結果、セメント42の量を大幅に削減することができ、工費を低減させることができる。
【0054】
また、地盤21へ注入するセメントミルク39の量を低減させることができるので、オーバーフローするモルタル(泥水23とセメントミルク39との混合物)の量を削減することができ、産業廃棄物として処理するモルタルの量を削減することができ、モルタルの処理費用を削減することができるとともに、環境負荷を軽減させることもできる。
【0055】
表1に、事前検討、室内試験、及び実施の結果を示す。本実施の形態では、施工対象地盤が粘性土であるので、安定液に添加剤として分散剤及び流動化剤を添加してセメントミルクを製造した。このセメントミルクは、標準配合のセメントミルク(水とベントナイトとセメントとからなるセメントミルク)と比較して、土砂に対する注入量を10%少なくしても、流動性に優れ、また、セメント量を20%少なくしても、標準のセメントミルクと同程度の強度が得られることが分かった.また、安定液1m当たり、添加剤コスト(+3000円)、セメント量低減(−500円)、廃液コスト(7000円)であるから、(+3000−500)/7000=36%のコスト低減が可能となることが分かった。
【0056】
【表1】

【0057】
なお、上記の説明においては、杭26の構築現場から回収した安定液25を廃棄安定液40として使用したが、他の現場から回収した廃棄安定液や外部から調達した安定液を使用してもよい。
【0058】
なお、上記の説明においては、ソイルセメント壁45のセメントミルク39に本発明の安定液の再利用方法を適用したが、ソイルセメント柱、ソイルセメント柱列等の他のソイルセメント構造物のセメントミルクに本発明の安定液の再利用方法を適用してもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0059】
1 掘削機
3 ロータリーカッター
4 泥水ポンプ
5 泥水管
6 安定液供給装置
7 安定液貯留タンク
8 安定液供給ポンプ
9 スラリーポンプ
10 廃液ポンプ
12 泥水処理装置
13 第1処理装置
14 第2処理装置
15 ミキサー
16 埋め戻し材貯留タンク
17 トレミー管
18 圧送ポンプ
19 安定液回収ポンプ
20 安定液回収管
21 地盤
22 孔
23 泥水
24 発生土
25 安定液
26 杭
27 埋め戻し材
28 埋め戻し材
30 SMWプラント
31 削孔攪拌機
32 本体機
33 アースオーガー
35 セメントミルク供給装置
36 セメントミルク貯留タンク
37 セメントミルク供給ポンプ
39 セメントミルク
40 廃棄安定液
41 ベントナイト
42 セメント
45 ソイルセメント壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定液の再利用方法であって、安定液を使用する工事現場から廃棄安定液を回収し、この廃棄安定液をソイルセメントのセメントミルクを造るための水として再利用することを特徴とする安定液の再利用方法。
【請求項2】
前記廃棄安定液は、安定液を使用する現場において、地盤の掘削に使用した安定液、安定液中の粘性の調整により生じた安定液、及び再使用不可能なために廃液として回収した安定液であることを特徴とする請求項1に記載の安定液の再利用方法。
【請求項3】
前記廃棄安定液に添加剤又は混和剤を添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の安定液の再利用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−57407(P2012−57407A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203281(P2010−203281)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】