説明

安息香酸類の製造方法

【課題】芳香族環上にアルコキシ、ヒドロキシ、ホルミルオキシ、またはアルカノイルオキシ置換基を有する芳香族カルボン酸または芳香族酸塩化物の製造方法の提供。
【解決手段】銅触媒の存在下、式(III)を有する化合物を形成する工程、


[上記の式中、それぞれのXは独立してクロロ、ブロモまたはヨードであり、Rは水素原子、(C−C)アルキル等であり、Rはアリール、アリール(C−C)アルキル等である]を含む、式(III)を有する化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族環上にアルコキシ、ヒドロキシ、ホルミルオキシ、またはアルカノイルオキシ置換基を有する芳香族カルボン酸または芳香族酸塩化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族環上にアルコキシ、ヒドロキシ、ホルミルオキシ、またはアルカノイルオキシ置換基を有する安息香酸が農薬および医薬の製造をはじめとする、種々の商業的用途において使用されている。多くの場合、酸塩化物の使用が、農薬および医薬として有用なアミドまたはヒドラジドの形成のために都合がよい。たとえば、米国特許第5,530,028号に記載されているようなジアゾ化反応を使用したアミノ置換された安息香酸またはそのエステルのアルコキシまたはヒドロキシ置換された安息香酸またはそのエステルへの転化、またはM.S.CarpenterらのJ.Org.Chem.20(4),401−411(1955)に記載された、3−メトキシ−2−メチルベンゾニトリルの3−メトキシ−2−メチル安息香酸への加水分解のような種々の反応が知られているが、より安価に、より高純度で得られ、工程数や操作数がより少ない、上記の酸を製造するための方法が依然として求められていた。さらに、グリニャール反応条件での6−クロロ−2−メトキシトルエンの3−メトキシ−2−メチル安息香酸への転化がオーストラリア特許A−12496/83に開示されているが、実施例に示された収率は、グリニャール反応を含む本発明における収率よりも低いものである。
【発明の概要】
【0003】
すなわち、本発明は所望の安息香酸を調製するためのより有用なルートを提供するものである。さらに、我々は、ホスゲンをグリニャール試薬のクエンチ剤(quenching agent))として使用することができ、安息香酸を最初に単離し、ついでそれを塩化チオニル、塩化燐、または他の塩素化剤で塩素化する方法であって、硫黄または燐副生成物の除去が問題となる方法を用いることなく、直接塩素化安息香酸を提供する方法を見いだした。
【0004】
すなわち、本発明の第1の態様は、(i)式(I)を有する化合物をアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属アルコキシド、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属アロキシド(aroxide)、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属アリールアルコキシド、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属ヘテロアリールアルコキシドと、任意の銅を含む触媒の存在下で反応させ、式(IIa)を有する化合物を形成する工程、
【0005】
【化19】


【0006】
(ii)式(IIa)を有する化合物を無水条件下で金属マグネシウムと反応させ、式(IIb)を有する中間体化合物を形成する工程、および
【0007】
【化20】


【0008】
(iii)式(IIb)を有する中間体化合物と二酸化炭素を反応させ、加水分解し、式(III)を有する化合物を形成する工程、
【0009】
【化21】


【0010】
[上記の式中、それぞれのXは独立してクロロ、ブロモまたはヨードであり、Rは水素原子、(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキル;または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換された(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、RはCHR、アリール、アリール(C−C)アルキル、もしくはヘテロアリール(C−C)アルキル;または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換されたアリール、アリール(C−C)アルキル、もしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、(C−C)アルキル、または(C−C)アルコキシで置換された(C−C)アルキルである]を含む、式(III)を有する化合物の製造方法に関する。
【0011】
この態様は、さらに、式(IV)を有する化合物を調製するための方法であって、さらに以下の工程を含む方法:(iv)式(III)を有する化合物をエーテル開裂試薬を用いて加水分解する工程、
【0012】
【化22】


【0013】
[式中、Rは水素原子、(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキル;または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換された(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、RはCHR、アリール、アリール(C−C)アルキル、もしくはヘテロアリール(C−C)アルキル;または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換されたアリール、アリール(C−C)アルキル、もしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、(C−C)アルキル、または(C−C)アルコキシで置換された(C−C)アルキルである]を提供する。
【0014】
この態様は、さらに、式(V)を有する化合物を調製するための方法であって、さらに以下の第2の追加の工程を含む方法:(v)式(IV)を有する化合物を有機酸無水物と反応させる工程、
【0015】
【化23】


【0016】
[式中、Rは水素原子、(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキル;または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換された(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、Rは水素原子、または(C−C)アルキルであり、有機酸無水物が無水蟻酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、または無水酪酸である]、を提供する。
【0017】
本発明は、前述の式(III)、(IV)、および(V)を有する化合物を導く方法において、出発物質が式(I)の化合物ではなく、式(IIa)の化合物である方法をも包含する。すべての場合において、所望であれば、塩化チオニルのような当業者に公知の反応体を使用して、式(III)の化合物は式(VII)の対応する塩化物に転化することができる。
【0018】
【化24】


【0019】
本発明の第2態様においては、グリニャール反応を製造方法の第1工程として式(I)の化合物に作用させる。すなわち、本発明の第2の態様は、(i)式(I)を有する化合物を無水条件下で金属マグネシウムと反応させ、式(VIa)を有する中間体化合物を形成する工程、
【0020】
【化25】


【0021】
(ii)式(VIa)を有する中間体化合物と二酸化炭素を反応させ、加水分解し、式(VIb)を有する化合物を形成する工程、および
【0022】
【化26】


【0023】
(iii)式(VIb)を有する化合物をアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属アルコキシド、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属アロキシド、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属アリールアルコキシド、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属ヘテロアリールアルコキシドと、任意の銅を含む触媒の存在下で反応させ、式(III)を有する化合物を形成する工程、
【0024】
【化27】


【0025】
[上記の式中、Xは独立してクロロ、ブロモまたはヨードであり、Rは水素原子、(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキル;または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換された(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、RはCHR、アリール、アリール(C−C)アルキル、もしくはヘテロアリール(C−C)アルキル;または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換されたアリール、アリール(C−C)アルキル、もしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、(C−C)アルキル、または(C−C)アルコキシで置換された(C−C)アルキルである]を含む、式(III)を有する化合物の製造方法を提供する。
【0026】
本発明の第2の態様は、さらに、式(IV)を有する化合物を調製するための方法であって、さらに以下の工程を含む方法:(iv)式(III)を有する化合物をエーテル開裂試薬を用いて加水分解する工程、
【0027】
【化28】


【0028】
[式中、Rは水素原子、(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキル;または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換された(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、RはCHR、アリール、アリール(C−C)アルキル、もしくはヘテロアリール(C−C)アルキル;または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換されたアリール、アリール(C−C)アルキル、もしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、(C−C)アルキル、または(C−C)アルコキシで置換された(C−C)アルキルである]、製造方法を提供する。
【0029】
本発明の第2の態様は、さらに、式(V)を有する化合物を調製するための方法であって、さらに以下の第2の追加の工程を含む方法:(v)式(IV)を有する化合物を有機酸無水物と反応させる工程、
【0030】
【化29】


【0031】
[式中、Rは水素原子、(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキル;または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換された(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、Rは水素原子、または(C−C)アルキルであり、有機酸無水物が無水蟻酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、または無水酪酸である]製造方法を提供する。
【0032】
本発明の第2の態様の変法においては、式(IV)の化合物は式(VIb)の化合物から直接製造される。すなわち、本発明の第2の態様の変法は、(i)式(I)を有する化合物を無水条件下で金属マグネシウムと反応させ、式(VIa)を有する中間体化合物を形成する工程、
【0033】
【化30】


【0034】
(ii)式(VIa)を有する中間体化合物と二酸化炭素を反応させ、加水分解し、式(VIb)を有する化合物を形成する工程、および
【0035】
【化31】


【0036】
(iii)式(VIb)を有する化合物を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムまたはそれらの混合物と、任意の銅を含む触媒の存在下で反応させ、式(IV)を有する化合物を形成する工程、
【0037】
【化32】


【0038】
[上記の式中、それぞれのXは独立してクロロ、ブロモまたはヨードであり、Rは水素原子、(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキル;または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換された(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキルである]を含む、式(IV)を有する化合物の製造方法を提供する。
【0039】
本発明の第2の態様の変法は、さらに、式(V)を有する化合物を調製するための方法であって、さらに以下の工程を含む方法:(iv)式(IV)を有する化合物を有機酸無水物と反応させる工程、
【0040】
【化33】


【0041】
[式中、Rは水素原子、(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキル;または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換された(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、Rは水素原子、または(C−C)アルキルであり、有機酸無水物が無水蟻酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、または無水酪酸である]、製造方法を提供する。
【0042】
本発明の第3の態様では、ホスゲンをクエンチ剤として使用し、式(II)の化合物にグリニャール反応を作用させ、式(VII)の酸塩化物化合物を直接に提供する。すなわち、本発明の第3の態様は、(i)式(I)を有する化合物をアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属アルコキシド、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属アロキシド、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属アリールアルコキシド、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属ヘテロアリールアルコキシドと、任意の銅を含む触媒の存在下で反応させ、式(IIa)を有する化合物を形成する工程、
【0043】
【化34】


【0044】
(ii)式(IIa)を有する化合物を無水条件下で金属マグネシウムと反応させ、式(IIb)を有する中間体化合物を形成する工程、および
【0045】
【化35】


【0046】
(iii)式(IIb)を有する中間体化合物とホスゲンを反応させ、式(VII)を有する化合物を形成する工程、
【0047】
【化36】


【0048】
[上記の式中、それぞれのXは独立してクロロ、ブロモまたはヨードであり、Rは水素原子、(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキル;または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換された(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、RはCHR、アリール、アリール(C−C)アルキル、もしくはヘテロアリール(C−C)アルキル;または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換されたアリール、アリール(C−C)アルキル、もしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、(C−C)アルキル、または(C−C)アルコキシで置換された(C−C)アルキルである]を含む、式(VII)を有する化合物の製造方法を提供する。
【0049】
本発明を、以下の式に要約して示す。
【0050】
【化37】


【0051】
上記の本発明のすべての態様において、好ましくは、それぞれのXが独立してクロロまたはブロモであり、Rは水素原子または(C−C)アルキルであり、RはCHR、アリール、またはアリール(C−C)アルキルであり、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、もしくは(C−C)アルキル、またはメトキシで置換された(C−C)アルキルであり、Rは、(C−C)アルキルである。
【0052】
より好ましくは、それぞれのXがクロロであり、Rは水素原子または(C−C)アルキルであり、RはCHRであり、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、または(C−C)アルキルであり、Rは、(C−C)アルキルである。さらに好ましい態様においては、Rはメチルまたはエチルであり、Rは水素原子であり、Rは水素原子、またはメチルであり、Rはメチルである。
【0053】
本発明の第4の態様は、式(IX)を有する塩化アシルの直接形成方法であって、式(VIII)を有するグリニャール試薬をホスゲンでクエンチングすることによる方法:
【0054】
【化38】


【0055】
[式中、R10はアルキル、アリール、およびアルアルキルから選択される有機基であり、Xはクロロ、ブロモまたはヨードである]を提供する。
【0056】
アルキルの用語は、直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基をいう。たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、イソアミル、およびn−ヘキシルがあげられる。アルコキシの用語は、酸素原子に結合した直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基をいう。たとえば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシなどがあげられる。アリールの用語は、芳香族環系をいい、たとえば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチルなどをいい、これらは1以上のアルキルおよびハロゲンで置換されることができる。
【0057】
アルアルキルの用語は、アルキレン基に結合したアリール基をいい、たとえばベンジル、フェネチルなどをいい、これらのアリール部位は1以上のアルキルおよびハロゲンで置換されることができる。ヘテロアリールの用語は、芳香族複素環式基をいう。芳香族複素環およびたとえばヘテロアリールアルキルのような他の基の芳香族複素環部位は、典型的には5または6員の芳香族環であって、1以上の酸素、窒素または硫黄を含み、これらはたとえばベンゼン環のような1以上の他の芳香族環、複素芳香族環、または複素環と縮合することができる。芳香族複素環の例としては、チエニル、フリル、ピロリル、トリアゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアジゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、インドリル、キナゾリニル、アクリジニル、プリニル(purinyl)、およびキノキサリニルがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0058】
ヘテロアリールアルキルの用語は、アルキレン基に結合した芳香族複素環式基をいい、たとえば、フルフリル、テニル、ニコチニルなどがあげられる。アルカリ金属の用語は、リチウム、カリウム、またはナトリウム原子をいう。アルカリ土類金属の用語は、マグネシウム、カルシウム、バリウムまたはストロンチウム原子をいう。
【0059】
式(I)の化合物を式(IIa)の化合物を式(IIa)の化合物に、または式(VIb)の化合物を式(III)の化合物に転化するために使用するモノアルコキシル化またはモノアロキシル化(monoaroxylation)反応は、触媒の存在下でも非存在下でも行うことができる。触媒を使用しない場合には、好ましい溶剤はジメチルスルホキシド(DMSO)である。触媒を使用する場合には、適当な触媒は銅を含む触媒であり、たとえば塩化第1銅、臭化第1銅、沃化第1銅、シアン化第1銅、塩化第2銅、酸化第2銅、硫酸第2銅、および銅元素があげられる。シアン化第1銅が好ましい触媒である。銅を含む触媒は粉末、または担体に銅を沈積させたものなど多くの形態であることができ、担体に銅を沈積させた粉末が特に好ましい。触媒を使用する際には、使用量は式(I)または式(VIb)の化合物の0.1から100モル%の範囲である。好ましい使用量は0.5から25モル%の範囲である。より好ましい使用量は1から10モル%の範囲である。銅触媒を担持するために使用することのできる多くの好適な担体があり、たとえば、シリカ、カーボン、アルミナ、炭酸カルシウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
式(I)の化合物を式(IIa)の化合物に、または式(VIb)の化合物を式(III)の化合物に転化するために使用するアルカリ金属およびアルカリ土類金属アルコキシド試薬としては、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、マグネシウムメトキシド、バリウムメトキシド、カルシウムエトキシド、ストロンチウムエトキシドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。同様に好適なアルカリ金属およびアルカリ土類金属アロキシドとしては、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシド、リチウムフェノキシド、カルシウムフェノキシド、マグネシウムフェノキシドなどが挙げられる。好適なアルカリ金属およびアルカリ土類金属アリールアルコキシド試薬としては、ナトリウムベンズオキシドおよびカルシウムベンズオキシドなどが挙げられる。好適なアルカリ金属およびアルカリ土類金属ヘテロアリールアルコキシド試薬としては、カリウムテノキシド(thenoxide)などが挙げられる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属アルコキシド、アロキシド、アリールアルコキシド、およびヘテロアリールアルコキシドは、ハロゲンで置換された芳香族化合物に基づいて100から200モル%の範囲の量で通常使用される。
【0061】
本発明の方法では、式(I)の化合物の芳香族環上の単一のハロゲンをアルコキシ、アロキシ、アリールアルコキシ、またはヘテロアリールアルコキシで選択的に置換することができる。たとえば、本発明では1−アルキル−2,6−ジハロベンゼンを1−アルキル−6−(アルコキシ、アロキシ、アリールアルコキシ、またはヘテロアリールアルコキシ)2−ハロベンゼンに、80%よりも高い選択率でモノアルコキシ、モノアロキシ、モノアリールアルコキシ、またはモノヘテロアリールアルコキシ化することができる。好ましい条件下では、選択率は85%よりも大きくなる。より好ましい条件下では、選択率は90%よりも大きくなる。当業者には公知のように、より高い選択率は通常より低い転化率において達成される。たとえば、2,6−ジクロロトルエンをメトキシドと反応させたときには、6−クロロ−2−メトキシトルエンへの選択率は転化率70%で99%よりも大きい。転化率を93%に上昇させると、選択率は約95%に低下する。
【0062】
単一のハロ基の置換速度は好適な溶剤または溶剤混合物が使用された場合には大きくなる。ジメチルホルムアミド(DMF)、DMSO、1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、ジメチルスルフェート(DMS)、酢酸エチル、および好適なアルコール、たとえばメタノールおよびエタノールが好ましい溶剤であり、DMSOとNMPがより好ましい溶剤である。DMSOが最も好ましい溶剤である。反応は通常65℃から160℃で、好ましくは90℃よりも高い温度で行われる。
【0063】
式(VIb)を有する化合物の式(IV)を有する化合物への転化は、一般に、有機酸化物の代わりに水酸化物を使用することを除いては、式(I)を有する化合物の式(IIa)を有する化合物への転化、または式(VIb)を有する化合物の式(III)を有する化合物への転化において使用される反応条件と同様の条件において行われる。極性溶剤、たとえばDMSO、NMP、DMF、メタノール、およびエタノールまたはこれらの混合物を全ての試薬を溶解するために使用することができる。好ましい溶剤はDMSOおよびNMPである。反応は銅触媒の存在下、または非存在下で行うことができる。銅触媒としては、シアン化第1銅、臭化第1銅および他の第1銅塩が挙げられる。水酸化物は任意の金属対イオンを有することができる。好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウムまたはこれらの混合物である。試薬の添加順序は重要ではない。反応温度は一般に100−160℃であり、好ましくは140−160℃である。式(IIa)のアリールハライドを式(IIb)のグリニャール中間体に転化するか、または式(I)のアリールジハライドを式(VIa)のモノ−グリニャール中間体に転化するために使用されるグリニャール反応は、無水条件において行われる。水はグリニャール中間体と反応し、1,2−ジ置換ベンゼンを生成するので、水の存在は所望の生成物の形成を顕著に減少させる。
【0064】
【化39】


【0065】
反応に都合のよい温度は、アリールハライドと溶剤との混合物の還流温度である。約60℃から約115℃の温度が好ましい。圧力は周囲圧力が都合がよいが、所望であれば、大気圧以上の圧力と、その結果生ずるより高い反応温度を用いることもできる。アリールハライドの化学的性質のために、反応時間はグリニャール試薬の形成のために時々用いられる時間よりも幾分長い。しかし、式(I)の化合物からの式(VIa)のモノグリニャール塩の形成は、式(IIa)の化合物からの式(IIb)のグリニャール塩の形成よりも幾分か容易である。グリニャール中間体への高い転化率を達成するために、反応時間は通常約5時間から約24時間、好ましくは約7時間から約10時間である。反応を容易にするために、金属マグネシウムは金属の表面に形成される酸化マグネシウムを含まないことが好ましい。一般にアリールハライドに関しては過剰のマグネシウムが用いられる。バッチプロセスにおいては、アリールハライドの当量に対して、約1%から約50%の過剰、好ましくは約5%から約20%の過剰のマグネシウムが用いられる。トルエンやキシレンのような芳香族炭化水素も使用することができるが、使用される溶剤は、通常エーテル類である。所望であれば、エーテル類と芳香族炭化水素とを含む混合溶剤を使用することもできる。エーテル類は、好ましくは、6−12個の炭素原子を有するエーテル、たとえばジ−n−ブチルエーテル、多オキシエーテル(multiple oxyether)、たとえばビス(2−メトキシエチルエーテル)(ジグライム:diglyme)、または環状エーテル、たとえばテトラヒドロフラン(THF)である。THFが好ましい溶剤である。使用する溶剤の量はそれほど重要ではなく、アリールハライドに基づいて約1から約10当量の範囲である。たとえば6−クロロ−2−メトキシトルエンまたは2,6−ジクロロトルエンのようなアリールクロライドが使用される場合には、たとえば1,2−ジブロモエタン、沃化アルキル、または臭化アルキルのような開始剤の少量を、反応が開始するまでの時間を最短にするために反応混合物中に任意に存在させることができる。通常、アリールハライドに基づいて約0.01から約0.05当量の範囲の開始剤で十分である。別法として、バッチ法では前のバッチからの少量のグリニャール中間体(活性化されたヒール)を開始剤として使用することができる。本発明の方法は、式(I)または式(IIa)のアリールハライドの溶液をマグネシウム粒子のカラムに通すことにより、グリニャール試薬の溶液を連続的に生成するようにして用いることもできる。
【0066】
カルボキシル化反応に引き続いて加水分解を行い、式(IIb)の化合物を式(III)の化合物に転化するか、または式(VIa)の化合物を式(VIb)の化合物に転化する。カルボキシル化反応自体は前述の副生成物の形成を避けるために、無水条件下で行われる。反応は二酸化炭素の任意の無水のソースを用いて行うことができる。すなわち、グリニャール試薬の溶液に無水二酸化炭素をガスシリンダーまたは昇華されたドライアイスからバブリングすることができる。中程度ないし低い二酸化炭素の流量が好ましい。別法として、グリニャール試薬の溶液を無水条件においてドライアイスの上に注ぐことができ、また、無水のドライアイスをグリニャール試薬の溶液に加えることもできる。反応を行うさらなる方法としては、当初のグリニャール中間体の形成の間、大気圧もしくは加圧条件において二酸化炭素雰囲気を保持する方法がある。グリニャール中間体に対して過剰の二酸化炭素が好適に用いられる。以下に示すグリニャールカルボキシレート塩はかなり粘稠かつ不溶性であるので、追加の無水の溶剤を加えて撹拌可能な状態を保つことがしばしば好ましい。
【0067】
【化40】


【0068】
所望のグリニャールカルボキシレート塩の収率は、反応系を冷たく保つと大きくなる。0℃近傍の反応温度が好ましい。反応時間は二酸化炭素の供給速度、反応器特性、使用溶剤、反応混合物の温度、式(IIb)または式(VIa)の化合物の構造により変化する。しかし、無水二酸化炭素がグリニャール溶液にバブリングされた時には、約30分から約5時間の反応時間が一般に好ましい。
【0069】
得られたグリニャールカルボキシレート塩は、水または水性酸を使用して、当業者に公知の通常の方法により、式(III)または式(VIb)のカルボン酸化合物に容易に転化することができる。
【0070】
グリニャールクエンチング試薬(Grignard quenching agent)としてホスゲンを使用する、式(IIa)の化合物の式(VII)の化合物への直接転化のためには、グリニャール塩の形成はヨードメタンで開始される。たとえばジブロモエタンのような他のハロアルカンも開始に好適である。別法として、反応を金属マグネシウムを切断または粉砕して新鮮な表面を与えることにより開始することもできる。好ましくは、反応をクエンチする前に、同じ物質上に先のグリニャール反応のヒール(heel)を加えることにより開始される。グリニャール形成反応は80℃から160℃、好ましくは90℃から115℃の温度で行われる。
【0071】
グリニャール反応のために使用される溶剤はグリニャール条件下で非反応性でなくてはならず、試薬を溶解するために幾分極性を有していなければならない。たとえば、THFおよび他のエーテル類が使用できる。溶液が得られたら、より高い沸点の不活性の溶剤を加え、温度を上げ、グリニャール試薬が形成されるようにすることができる。このために好ましい溶剤は、任意の非反応性アルカン、エーテル、またはトルエンのような芳香族化合物である。
【0072】
ホスゲンの添加はホスゲンの沸点以下の任意の温度で行うことができ、容器がホスゲンの添加の間加圧することができるものであるか、またはホスゲンを容器内に保持することができるような非常に低温の凝縮器があれば、より高い温度で行うことができる。通常、周囲圧力で、−30℃から30℃の温度でホスゲンが加えられる。加圧容器が使用される場合には、より高い温度で行うことができる。ホスゲンは、形成されるグリニャール中間体の1当量あたり1.1から10当量、好ましくは1.1から3当量の範囲の化学量論量で使用することができる。
【0073】
エーテル開裂反応は、当業者に公知の反応により行うことができる。たとえば、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、硫酸、およびトリフルオロ酢酸のようなブレンステッド酸、3フッ化硼素錯化合物、3塩化アルミニウム、および塩化マグネシウムのようなルイス酸、ナトリウムメトキシド、ピリジン、およびメチルアミンのような塩基、またはピリジンヒドロクロライドのような強酸−弱塩基の塩と、式(III)の化合物を加熱し、式(IV)のヒドロキシ置換化合物を形成することにより行われる。好適な反応温度は周囲温度から200℃以上の範囲である。
【0074】
式(IV)の化合物と有機酸無水物との、式(V)の化合物を形成する反応は、一般に約0℃から約150℃、好ましくは約10℃から約100℃、より好ましくは約15℃から約75℃で行われる。所望のエステル化反応に関与しない任意の溶剤を使用することができる。エステル化は触媒の存在下、または非存在下で行うことができる。触媒を使用する場合には、たとえばピリジン、キノリン、ピコリン、N−メチルピロール、N−メチルピロリジン、またはトリエチルアミンのようなトリアルキルアミンである3級アミンから選択されるものが最も普通に使用される。好ましい触媒はピリジン、およびトリエチルアミンである。
【0075】
実施例1:2,6−ジクロロトルエン(DCT)の6−クロロ−2−メトキシトルエン(MCT)へのメトキシル化
【0076】
【化41】


【0077】
温度コントローラー、凝縮器、およびマグネチックスターラーを取り付けた500mlのフラスコに、50gのDCT(0.31モル)、30gの95%カリウムメトキシド(0.41モル)、および25gの1−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を投入した。混合物を100℃で2時間撹拌し、次いで120℃で18時間撹拌した。ジメチルスルフェート(10g,0.08モル)を次いで加え、得られた混合物をさらに120℃で5時間撹拌した。その後、混合物を周囲温度に冷却し、濾過した。フィルターケーキを65mlのイソプロパノールで3回洗浄した。濾液と洗浄液を一緒にし、分析したところ、40gのMCTが得られたことを示した。収率は82%であった。
【0078】
実施例2:DMF中のCuCNを使用したDCTのメトキシル化温度コントローラー、凝縮器、およびマグネチックスターラーを取り付けた25mlのフラスコに、2.00gのDCT(12.4ミリモル)、1.30gのNaOCH(24.1ミリモル)、0.10gのCuCN(1.2ミリモル)、および10.0gのDMFを投入した。混合物を120℃に加熱し、窒素下で撹拌した。ガスクロマトグラフィーの分析結果によれば、17時間後において、MCTの収率は88.6%であり、DCTの10.0%が残っていた。19時間後においては、MCTの収率は92.8%に上昇し、DCTの1.4%が依然として未反応であった。
【0079】
実施例3:DMF中のCuCNを使用したDCTのメトキシル化温度コントローラー、凝縮器、およびマグネチックスターラーを取り付けた25mlのフラスコに、5.00gのDCT(31.0ミリモル)、2.00gのNaOCH(37.0ミリモル)、0.15gのCuCN(1.7ミリモル)、および5.00gのDMFを投入した。混合物を150℃に加熱し、窒素下で撹拌した。ガスクロマトグラフィーの分析結果によれば、17時間後において、MCTの収率は64.8%であり、DCTの28.1%が残っていた。26時間後においては、MCTの収率は76.0%に上昇し、DCTの16.3%が依然として未反応であった。
【0080】
実施例4:DMSO中のCuCNを使用したDCTのメトキシル化温度コントローラー、凝縮器、およびマグネチックスターラーを取り付けた25mlのフラスコに、5.00gのDCT(31.0ミリモル)、2.00gのNaOCH(37.0ミリモル)、0.15gのCuCN(1.7ミリモル)、および5.0gのDMSOを投入した。混合物を140℃に加熱し、窒素下で撹拌した。ガスクロマトグラフィーの分析結果によれば、6時間後において、MCTの収率は82.8%であり、DCTの12.4%が残っていた。12時間後においては、MCTの収率は86.1%に上昇し、DCTの7.2%が依然として未反応であった。
【0081】
実施例5:メタノール中のCuBrを使用したDCTのメトキシル化温度計、凝縮器、およびマグネチックスターラーを取り付けた25mlのフラスコに、2.00gのDCT(12.4ミリモル)、5.00gの25%NaOCH溶液(メタノール中、23.1ミリモル)、0.25gのCuBr(1.7ミリモル)、および0.44gの酢酸エチルを投入した。混合物を加熱して還流させ、窒素下で撹拌した。ガスクロマトグラフィーの分析結果によれば、5時間後において、MCTの収率は7.3%であり、DCTの92.1%が残っていた。24時間後においては、MCTの収率は25.2%に上昇し、DCTの65.2%が依然として未反応であった。
【0082】
実施例6:DMSO中のDCTのメトキシル化実施例6A還流凝縮器、メカニカルスターラー、および温度コントローラーを取り付けた3つ口のフラスコに、DCT(483g)、DMSO(193g)およびナトリウムメトキシド(154g)を投入した。混合物を窒素でパージし、ついで窒素雰囲気下で撹拌しながら、140−160℃に加熱した。残留DCTが23%未満になったら反応を停止した。通常は4−6時間であった。混合物を次いで減圧下(15−20mmHg)で、10段のOldershawカラムを使用して蒸留し、ポット温度100−120℃、ヘッド温度75−100℃で約300gの蒸留液を回収した。ポット残留物に18gのジメチルスルフェート(DMS)を加え、この混合物を120℃で1時間保持した。400gの水をフラスコに加え、75℃で30分撹拌した。相分離した後、下方の水性相を回収し廃棄した。粗生成物は所望により希釈された過酸化水素水で洗浄し、すべての不純物を酸化し、および/またはすべての臭気を除去することができる。MCTの生成物は蒸留により採取され、または乾燥され、引き続くグリニャール反応において使用されることができる。MCTの収率は、消費DCTに基づいて、94%よりも大きかった。上記の300gの蒸留液は、DMSO(50−60%)、DCT(25−40%)、およびMCT(10−25%)からなり、次のメトキシル化のバッチに直接リサイクルすることができる。
実施例6B発熱を制御するために、ナトリウムメトキシドを数回に分けて添加したことを除き、実施例6Aと同様にして行った。
実施例6C残留DCTが6−10%になるまで反応を行ったことを除き、実施例6Aと同様にして行った。
【0083】
実施例7:DMSO中のDCTのメトキシル化還流凝縮器、メカニカルスターラー、および温度コントローラーを取り付けた3つ口のフラスコに、DCT(483g)、DMSO(93g)およびナトリウムメトキシド(154g)を投入した。混合物を窒素でパージし、ついで窒素雰囲気下で撹拌しながら、140−160℃に加熱した。残留DCTが23%未満になったら反応を停止した。通常は4−6時間であった。400gの水をフラスコに加え、75℃で30分撹拌した。相分離した後、下方の水性相を回収し廃棄した。生成物を再度水で洗浄した。粗生成物を希釈された過酸化水素水で洗浄し、全ての不純物を酸化し、および/または全ての臭気を除去することができる。MCTの生成物は蒸留により採取され、乾燥され、引き続くグリニャール反応において使用されることができる。
【0084】
実施例8:MCTを3−メトキシ−2−メチル安息香酸(MMBA)へ転化するグリニャール反応
【0085】
【化42】


【0086】
温度計、凝縮器、窒素入り口、およびメカニカルエアースターラーを取り付けた100mlの4つ口の丸底フラスコをヒートガン(heat gun)で乾燥し、湿分に由来するすべての水分を除去した。反応に使用する他の全てのガラス器具も、使用前にヒートガンで乾燥された。マグネシウムを投入し、フラスコおよびマグネシウムを再度ヒートガンを使用して乾燥した。無水のTHF(40ml)をシリンジで、水分に暴露させないように注意しながら加えた。反応を開始させ、マグネシウムの表面を清浄にするため、数滴(約0.25ml)の1,2−ジブロモエタンを加え、2つのマグネシウム片を壊して清浄な表面を露出し、加えた。MCTを乾燥された均圧添加ロートに加えた。ほぼ3分の1のMCTをフラスコに加えた。反応混合物は次いでヒートガンで加熱され、還流された。わずかに黄色に着色した反応溶液が得られるまで、この操作を繰り返した。ついでフラスコをオイルバスで70℃に加熱し、残りのMCTを20分にわたりゆっくりと加えた。グリニャール試薬の形成の間、反応系を還流に保持した。MCTのグリニャール試薬への転化率が96%に達するまでの時間は約8時間であった。8.5時間後、反応混合物をアイスバスで冷却し、無水THFを20ml追加で加えた。1000mlのフラスコをドライアイスのペレットで満たした。ドライアイスを昇華させ、硫酸カルシウムを有するガス乾燥塔を通した。乾燥された二酸化炭素は撹拌下、反応混合物にバブリングされた。生成物のカルボキシレート塩が沈殿するに伴い、反応混合物は非常に粘稠になった。二酸化炭素を約2時間フラスコにバブリングさせた。約115mlの水をカルボキシル化された混合物に加え、約30分撹拌した。50mlの酢酸エチルで3回抽出し、残留していた中性の有機化合物を除去した。有機相を一緒にし、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の50mlで3回洗浄し、所望の生成物を回収した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、減圧下に溶剤を除去した。水相と炭酸水素ナトリウムの洗浄液水性相の両方を、濃塩酸でpH1にした。両方の相から白色の固体が沈殿した。それぞれの水性相を別々に、100mlの酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エチルの有機相を一緒にし、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、減圧下に溶剤を除去した。所望のMMBAを、融点145−147℃のオフホワイトの固体として、19.3g得た。収率は81.8%であった。
【0087】
【表1】


【0088】
実施例9:2,6−ジクロロトルエン(DCT)から3−クロロ−2−メチル安息香酸(CMBA)を形成するグリニャール反応
【0089】
【化43】


【0090】
40gのDCTを、30gのトルエンを有するフラスコに投入した。混合物をディーンスタークトラップを使用して共沸的に乾燥した。水を完全に除去した後、溶液を冷却した。温度計、凝縮器、窒素入り口、および攪拌機を取り付けた乾燥された250mlの4つ口の丸底フラスコに、マグネシウム(6.6g)、無水THF(40ml)、およびトルエン(40ml)を投入した。ヨードメタン(1g)を加え、混合物を30分間、室温で撹拌した。上記で得られた乾燥DCT/トルエン溶液を加え、混合物を還流(100−115℃)に加熱した。4−5時間後、グリニャール中間体の形成が完了した。反応混合物をアイスバスで冷却し、THFを40ml追加で加えた。固体二酸化炭素を昇華させ、硫酸カルシウムを有するガス乾燥塔を通し、撹拌下、反応混合物にバブリングした。CMBAの塩が溶液から沈殿するに伴い、反応混合物は粘稠になった。バブリングは2時間継続された。230mlの水を加え、30分撹拌した。100mlの酢酸エチルで抽出し、中性の不純物を除去した。酢酸エチル相を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで抽出した。炭酸水素相と残りの水性相を一緒にし、濃塩酸でpH1にした。白色の沈殿が得られた。スラリーを200mlの酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エチル相を乾燥し、減圧下に溶剤を除去し、CMBAを得た。融点は202−204℃であった。
【0091】
実施例10:DCTからCMBAを形成するグリニャール反応温度計、凝縮器、窒素入り口、および攪拌機を取り付けた乾燥された250mlの4つ口の丸底フラスコに、マグネシウム(6.6g)、無水THF(80ml)を投入した。ヨードメタン(1g)を加え、混合物を30分間、室温で撹拌した。乾燥DCT/THF溶液(30mlのTHF中40g)を加え、混合物を還流(65−67℃)に加熱した。4−8時間後、グリニャール中間体の形成が完了した。反応混合物をアイスバスで冷却し、THFを40ml追加で加えた。固体二酸化炭素を昇華させ、硫酸カルシウムを有するガス乾燥塔を通し、撹拌下、反応混合物にバブリングした。CMBAの塩が溶液から沈殿するに伴い、反応混合物は粘稠になった。バブリングは2時間継続された。230mlの水を加え、30分撹拌した。100mlの酢酸エチルで抽出し、中性の不純物を除去した。酢酸エチル相を、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで抽出した。炭酸水素相と残りの水性相を一緒にし、濃塩酸でpH1にした。白色の沈殿が得られた。スラリーを200mlの酢酸エチルで3回抽出した。酢酸エチル相を乾燥し、減圧下に溶剤を除去し、CMBAを得た。
【0092】
実施例11:CMBAとナトリウムメトキシドとの、MMBAを形成する反応
【0093】
【化44】


【0094】
還流凝縮器、メカニカルスターラー、および温度コントローラーを取り付けた3つ口のフラスコにCMBA(450g)、DMSO(200g)および粉末ナトリウムメトキシド(285g)を投入した。混合物を窒素でパージし、ついで窒素雰囲気下で撹拌しながら、140−160℃に加熱した。残留CMBAが10%未満になったら反応を停止した。通常は4−6時間であった。混合物を次いで減圧下(15−20mmHg)で、10段のOldershawカラムを使用して蒸留し、約200gの蒸留液を回収した。ポット残留物に18gのジメチルスルフェート(DMS)を加え、この混合物を120℃で1時間保持した。400mlの水および400mlの酢酸エチルを加え、得られた混合物を撹拌した。相分離した後、酢酸エチル相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで抽出した。水性相を一緒にし、濃塩酸でpH1にした。得られたスラリーを200mlの酢酸エチルで2回抽出した。酢酸エチル抽出物を一緒にし、硫酸ナトリウムを通して乾燥させた。減圧下に溶剤を除去し、MMBAを得た。
【0095】
実施例12:CMBAとナトリウムメトキシドとの、MMBAを形成する反応還流凝縮器、メカニカルスターラー、および温度コントローラーを取り付けた3つ口のフラスコにCMBA(450g)、DMSO(200g)、CuBr(13.5g)、および粉末ナトリウムメトキシド(285g)を投入した。混合物を窒素でパージし、ついで窒素雰囲気下で撹拌しながら、140−160℃に加熱した。残留CMBAが10%未満になったら反応を停止した。通常は4−6時間であった。混合物を次いで減圧下(15−20mmHg)で、10段のOldershawカラムを使用して蒸留し、約200gの蒸留液を回収した。ポット残留物に18gのジメチルスルフェート(DMS)を加え、この混合物を120℃で1時間保持した。400mlの水および400mlの酢酸エチルを加え、得られた混合物を撹拌した。相分離した後、酢酸エチル相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで抽出した。水性相を一緒にし、濃塩酸でpH1にした。得られたスラリーを200mlの酢酸エチルで2回抽出した。酢酸エチル抽出物を一緒にし、硫酸ナトリウムを通して乾燥させた。減圧下に溶剤を除去し、MMBAを得た。
【0096】
実施例13:CMBAとナトリウムヒドロキシドとの、3−ヒドロキシ−2−メチル安息香酸(HMBA)を形成する反応
【0097】
【化45】


【0098】
還流凝縮器、メカニカルスターラー、および温度コントローラーを取り付けた3つ口のフラスコにCMBA(450g)、DMSO(200g)および粉末ナトリウムヒドロキシド(247g)を投入した。混合物を窒素でパージし、ついで窒素雰囲気下で撹拌しながら、140−160℃に加熱した。残留CMBAが10%未満になったら反応を停止した。通常は4−6時間であった。混合物を次いで減圧下(15−20mmHg)で、10段のOldershawカラムを使用して蒸留し、約200gの蒸留液を回収した。室温に冷却後、400mlの水および400mlの酢酸エチルを加え、得られた混合物を撹拌した。相分離した後、酢酸エチル相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで抽出した。水性相を一緒にし、濃塩酸でpH1にした。得られたスラリーを200mlの酢酸エチルで2回抽出した。酢酸エチル抽出物を一緒にし、硫酸ナトリウムを通して乾燥させた。減圧下に溶剤を除去し、HMBAを得た。融点は126−132℃であった。
【0099】
実施例14:CMBAとナトリウムヒドロキシドとの、HMBAを形成する反応還流凝縮器、メカニカルスターラー、および温度コントローラーを取り付けた3つ口のフラスコにCMBA(450g)、DMSO(200g)、臭化銅(13.5g)、および粉末ナトリウムヒドロキシド(247g)を投入した。混合物を窒素でパージし、ついで窒素雰囲気下で撹拌しながら、140−160℃に加熱した。残留CMBAが10%未満になったら反応を停止した。通常は4−6時間であった。混合物を次いで減圧下(15−20mmHg)で、10段のOldershawカラムを使用して蒸留し、約200gの蒸留液を回収した。室温に冷却後、400mlの水および400mlの酢酸エチルを加え、得られた混合物を撹拌した。相分離した後、酢酸エチル相を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで抽出した。水性相を一緒にし、濃塩酸でpH1にした。得られたスラリーを200mlの酢酸エチルで2回抽出した。酢酸エチル抽出物を一緒にし、硫酸ナトリウムを通して乾燥させた。減圧下に溶剤を除去し、HMBAを得た。
【0100】
実施例15:MMBAのHMBAへの転化
【0101】
【化46】


【0102】
実施例15A20mlの圧力チューブに0.50gの3−メトキシ−2−メチル安息香酸(3.0ミリモル)および1.52gの48%臭化水素酸(9.0ミリモル、3.0当量)を投入した。チューブを密封し、オイルバス中で170℃に加熱した。混合物をマグネチックスターラーを使用して4時間撹拌した。次いで周囲温度に冷却した。一部を真空下、揮発成分を除去して乾燥した。残留物のGCおよびNMRの分析は、純粋な3−ヒドロキシ−2−メチル安息香酸が得られたことを示した。
【0103】
実施例15B還流コンデンサー、加熱マントル、スクラバー、スターラー、および添加ロートを備えた500mlの3つ口フラスコに、50gのMMBA(0.30モル)と100gの氷酢酸(1.67モル)を投入した。混合物を還流(110℃)に加熱し、全ての固体MMBAが溶解するまで撹拌した。添加ロートに152gの48%臭化水素酸(0.90モル)を入れ、3時間にわたり、徐々に反応混合物に加えた。GC分析によって脱メチル化反応が完了したと判断されるまで、得られた混合物を還流下で加熱した。混合物は真空下(110℃、100mmHg)で乾燥され、粗HMBAを得た。
【0104】
実施例16:HMBAの3−アセトキシ−2−メチル安息香酸(AMBA)への転化
【0105】
【化47】



還流コンデンサー、加熱源、マグネチックスターラー、および添加ロートを備えた50mlの3つ口フラスコに、5.00gの3−ヒドロキシ−2−メチル安息香酸(32.9ミリモル)と10mlの酢酸エチルを投入した。混合物を30℃で、HMBAが溶解するまで撹拌した。無水酢酸(7.50g、73.5ミリモル)を添加ロートから10分間で加えた。得られた混合物を50℃で30時間撹拌した。GC分析(FIDによる面積%)は、この時点で、この混合物の組成は、3−アセトキシ−2−メチル安息香酸が93.32%、3−ヒドロキシ−2−メチル安息香酸が0.13%であることを示した。
【0106】
実施例17:HMBAのAMBAへの転化還流コンデンサー、加熱源、マグネチックスターラー、および添加ロートを備えた100mlの3つ口フラスコに、5.72gの3−ヒドロキシ−2−メチル安息香酸(37.6ミリモル)、1.0gのピリジン(12.6ミリモル)、および20mlの酢酸エチルを投入した。混合物を周囲温度で、3−ヒドロキシ−2−メチル安息香酸が溶解するまで撹拌した。無水酢酸(4.80g、47.0ミリモル)を添加ロートから10分間で加えた。得られた混合物を30℃で3時間、次いで50℃で2時間撹拌した。GC分析(FIDによる面積%)は、この時点で、この混合物の組成は、3−アセトキシ−2−メチル安息香酸が96.52%、3−ヒドロキシ−2−メチル安息香酸が0.52%であることを示した。
【0107】
実施例18:MCTの3−メトキシ−2−メチルベンゾイルクロライド(MMBC)への転化
【0108】
【化48】


【0109】
実施例18A44.4gのMCTを、30gのトルエンを有するフラスコに投入した。混合物をディーンスタークトラップを使用して共沸的に乾燥した。水を完全に除去した後、溶液を冷却した。温度計、凝縮器、窒素入り口、および攪拌機を取り付けた乾燥された250mlの4つ口の丸底フラスコに、マグネシウム(7.6g)、無水THF(40ml)、およびトルエン(40ml)を投入した。ヨードメタン(3.5g)を加え、混合物を30分間、室温で撹拌した。上記で得られた乾燥MCT/トルエン溶液を加え、混合物を還流(90−115℃)に加熱した。8−10時間後、グリニャール中間体の形成が完了した。グリニャール試薬をガスタイトシリンジ(gas tight syringe)中に吸い上げ、50mlのトルエンと30gのホスゲンを有するフラスコに取り付けられた添加ロートに移した。グリニャール試薬はホスゲン溶液に、15−30℃で、30分にわたり、滴下され、その後4時間撹拌された。反応混合物を濾過し、濾液を蒸留し、回収された溶剤を得、続いてMMBCを得た(収率は30%よりも大きかった)。
【0110】
実施例18B33gのホスゲンを使用し、実施例18Aと同様にして行った。MMBCは30%よりも大きな収率で得られた。
【0111】
実施例18Cグリニャール試薬をホスゲンに0−10℃の温度で加え、実施例18Aと同様にして行った。MMBCは30%よりも大きな収率で得られた。
【0112】
実施例18D41gのホスゲンを使用し、グリニャール試薬をホスゲンに−10℃の温度で加え、実施例18Aと同様にして行った。MMBCは40%よりも大きな収率で得られた。
【0113】
実施例18E60gのホスゲンを使用し、グリニャール試薬をホスゲンに−20℃の温度で加え、実施例18Aと同様にして行った。MMBCは40%よりも大きな収率で得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)式(I)を有する化合物を無水条件下で金属マグネシウムと反応させ、式(VIa)を有する中間体化合物を形成する工程、
【化6】



(ii)式(VIa)を有する中間体化合物と二酸化炭素を反応させ、加水分解し、式(VIb)を有する化合物を形成する工程、および
【化7】



(iii)式(VIb)を有する化合物をアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属アルコキシド、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属アロキシド、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属アリールアルコキシド、またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属ヘテロアリールアルコキシドと、任意の銅を含む触媒の存在下で反応させ、式(III)を有する化合物を形成する工程、
【化8】



[上記の式中、Xは独立してクロロ、ブロモまたはヨードであり、Rは水素原子、(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキル、または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換された(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、RはCHR、アリール、アリール(C−C)アルキル、もしくはヘテロアリール(C−C)アルキル、または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換されたアリール、アリール(C−C)アルキル、もしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、(C−C)アルキル、または(C−C)アルコキシで置換された(C−C)アルキルである]を含む、式(III)を有する化合物の製造方法。
【請求項2】
それぞれのXが独立してクロロまたはブロモであり、Rは水素原子または(C−C)アルキルであり、RはCHR、アリール、またはアリール(C−C)アルキルであり、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、もしくは(C−C)アルキル、またはメトキシで置換された(C−C)アルキルである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
それぞれのXがクロロであり、Rは水素原子または(C−C)アルキルであり、RはCHRであり、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、または(C−C)アルキルである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
Rはメチルまたはエチルであり、Rは水素原子であり、Rは水素原子、またはメチルである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
式(IV)を有する化合物を調製するための請求項1記載の方法であって、さらに以下の工程を含む方法:(iv)式(III)を有する化合物をエーテル開裂試薬を用いて加水分解する工程、
【化9】



[式中、Rは水素原子、(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキル、または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換された(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、RはCHR、アリール、アリール(C−C)アルキル、もしくはヘテロアリール(C−C)アルキル、または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換されたアリール、アリール(C−C)アルキル、もしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、(C−C)アルキル、または(C−C)アルコキシで置換された(C−C)アルキルである]
【請求項6】
Rは水素原子または(C−C)アルキルであり、RはCHR、アリール、またはアリール(C−C)アルキルであり、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、もしくは(C−C)アルキル、またはメトキシで置換された(C−C)アルキルである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
Rは水素原子または(C−C)アルキルであり、RはCHRであり、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、または(C−C)アルキルである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
Rはメチルまたはエチルであり、Rは水素原子であり、Rは水素原子、またはメチルである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
式(V)を有する化合物を調製するための請求項5記載の方法であって、さらに以下の工程を含む方法:(v)式(IV)を有する化合物を有機酸無水物と反応させる工程、
【化10】



[式中、Rは水素原子、(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキル、または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換された(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、Rは水素原子、または(C−C)アルキルであり、有機酸無水物が無水蟻酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、または無水酪酸である]。
【請求項10】
Rは水素原子または(C−C)アルキルであり、Rは(C−C)アルキルである、請求項9記載の方法。
【請求項11】
Rは水素原子または(C−C)アルキルであり、Rは(C−C)アルキルである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
Rはメチルまたはエチルであり、Rはメチルである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
(i)式(I)を有する化合物を無水条件下で金属マグネシウムと反応させ、式(VIa)を有する中間体化合物を形成する工程、
【化11】



(ii)式(VIa)を有する中間体化合物と二酸化炭素を反応させ、加水分解し、式(VIb)を有する化合物を形成する工程、および
【化12】



(iii)式(VIb)を有する化合物を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムまたはそれらの混合物と、任意の銅を含む触媒の存在下で反応させ、式(IV)を有する化合物を形成する工程、
【化13】



[上記の式中、それぞれのXは独立してクロロ、ブロモまたはヨードであり、Rは水素原子、(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキル、または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換された(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキルである]を含む、式(IV)を有する化合物の製造方法。
【請求項14】
それぞれのXが独立してクロロまたはブロモであり、Rは水素原子または(C−C)アルキルである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
それぞれのXがクロロであり、Rは水素原子または(C−C)アルキルである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
Rはメチルまたはエチルである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
式(V)を有する化合物を調製するための請求項13記載の方法であって、さらに以下の工程を含む方法:(iv)式(IV)を有する化合物を有機酸無水物と反応させる工程、
【化14】



[式中、Rは水素原子、(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキル、または(C−C)アルキルおよび(C−C)アルコキシから独立に選択された1から3個の置換基で置換された(C−C)アルキル、アリール、アリール(C−C)アルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリール(C−C)アルキルであり、Rは水素原子、または(C−C)アルキルであり、有機酸無水物が無水蟻酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、または無水酪酸である]。
【請求項18】
Rは水素原子または(C−C)アルキルであり、Rは(C−C)アルキルである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
Rは水素原子または(C−C)アルキルであり、Rは(C−C)アルキルである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
Rはメチルまたはエチルであり、Rはメチルである、請求項19記載の方法。
【請求項21】
式(IX)を有する塩化アシルの直接形成方法であって、式(VIII)を有するグリニャール試薬をホスゲンでクエンチングすることによる方法:
【化18】



[式中、R10はアルキル、アリール、およびアルアルキルから選択される有機基であり、Xはクロロ、ブロモまたはヨードである]。

【公開番号】特開2010−13464(P2010−13464A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202490(P2009−202490)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【分割の表示】特願平11−61086の分割
【原出願日】平成11年3月9日(1999.3.9)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】