説明

完全なデータ保護スキームを構築するための方法および装置

完全なデータ保護スキームを構築するための方法および装置。データセットの履歴中のさまざまな時点において1次データセットを複製し得る複製ポリシーを用いて物理的および論理的障害から1次データセットを保護することが可能である。グラフィカルユーザインターフェースは、データの管理および回復を容易にするため、ユーザのために論理的ソースボリューム、物理的障害ポリシー、論理的障害ポリシー、複製発生ポリシー、複製技術、スケジューリングポリシー並びにデータの保護および複製ポリシーの時間インスタンス化を例示することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、共通の発明者および主題により、出願番号10/616,131、「論理的データ破壊に対抗する複製スキーマを決定するための方法および装置」という名称の2003年7月8日付け出願と、出願番号10/616,079、「あらゆるカテゴリーの破壊からデータを保護するための方法および装置」という名称の2003年7月8日付け出願と、出願番号10/617,203、「割当て記憶ボリュームに対して複製スキーマを動的マッピングすることによる記憶プールの作成方法および装置」という名称の2003年7月8日付け出願と、同時提出および同時係属出願と関連する。上記の出願は各々、その全てを本発明の参考として取り入れられている。
【0002】
本発明は、完全なデータ保護スキームを構築するための方法および装置に関する。特に、本発明は、データの管理および回復を容易にするためのデータの保護および複製ポリシーの時間インスタンス化(time instantiation)に関する。
【背景技術】
【0003】
破壊から保護するためにデータセットをバックアップする方法は数多く存在する。当該技術分野で既知のとおり、従来のバックアップ対策には、同期化、物理的バックアップおよび再同期化、という3つの異なる段階がある。記憶されているデータは、物理的および論理的破壊の両方から保護される必要がある。物理的破壊は、ディスクといったデータ記憶媒体が物理的障害を起こした場合に発生する。その例としては、ディスクのクラッシュが発生した場合やデータ記憶媒体上に記憶されたデータへの物理的なアクセスが不能になる等その他の事象がある。論理的破壊は、例えばコンピュータウイルスまたは人的エラーを通してデータ記憶媒体上にてデータ破損を起こした状態になった場合に発生する。その結果、データ記憶媒体中のデータへは物理的になおアクセス可能であるものの、データの一部にエラーおよびその他の問題点が含まれることになる。
【特許文献1】米国特許出願番号10/616,131
【特許文献2】米国特許出願番号10/616,079
【特許文献3】米国特許出願番号10/617,203
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
データを保護し、回復させるための従来のデータ方法は存在するものの、それらは使用が困難かつ煩雑である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
完全なデータ保護スキームを構築するための方法および装置が開示されている。データセットの履歴中のさまざまな時点で1次データセットを複製し得る複製ポリシーを用いて、メモリ中に記憶されている1次データセットを、物理的および論理的障害から保護することが可能である。グラフィカルユーザインタフェースは、データの管理および回復を容易にするため、論理的ソースボリューム、物理的障害ポリシー、論理的障害ポリシー、複製発生ポリシー、複製技術、スケジューリングポリシーおよびデータ保護および複製ポリシーの時間インスタンス化をユーザのために例示することができる。
【0006】
本発明は、同じ番号により同じ要素を示す以下の図面を参照しながら詳細に記述される。
【0007】
完全なデータ保護スキームを構築するための方法および装置が開示されている。データセットの履歴中のさまざまな時点で1次データセットを複製し得る複製ポリシーを用いて、メモリ中に記憶されている1次データセットを物理的および論理的障害から保護することができる。グラフィカルユーザインタフェースは、データの管理および回復を容易にするため、データ保護および複製ポリシーの時間インスタンス化をユーザのために例示することができる。
【0008】
データを回復することを目的として、情報技術(以下、「IT」と称す)部門は、ハードウェア障害からのみならず人的エラー等からもまたデータを保護しなければならない。全般的に見て、破壊は2つの広義のカテゴリーに分類することができる。すなわち、ハードウェア障害に対処するためのミラーによって解決することのできる「物理的」破壊と、アプリケーションエラー、ユーザエラーおよびウイルスといったインスタンス用のスナップショットすなわちポイントインタイム(以下、「PIT」と称す)コピーによって解決することのできる「論理的」破壊である。この分類は、使用すべき特定のタイプの複製技術との関係において、特定のタイプの破壊に焦点を当てている。該分類では、ミラーおよびPITコピーの動的および静的な性質間の根本的な差異もまた認識している。物理的および論理的破壊は異なる要領で管理されなければならないが、本明細書中に記述する発明は、両方の破壊タイプを単一解決策の一部として管理する。
【0009】
物理的破壊による影響を解消するための対策は、複数のミラー階層を設定することおよびフェールオーバーシステム技術の使用等といった、以下の実証済の業界の慣行に訴えている。ミラーリングは、該ボリュームの物理的なコピーを作成するために実時間で連続的にデータをコピーするプロセスである。ミラーは、物理的複製策のための主要なツールとして貢献するが、論理的破壊を解消するためには有効ではない。
【0010】
論理的破壊を取り扱うための対策には、先行する安定した状態へのロールバックを補助すべく、定期的PIT複製を生成するスナップショット技術の使用が含まれる。スナップショット技術は、ファイルボリュームの論理的PITコピーを提供する。スナップショット能力のあるボリュームコントローラまたはファイルシステムは、新しいボリュームを構成するが、オリジナルと同一の場所をポイントする。いかなるデータも移動されず、コピーは数秒のうちに作成される。該データのPITコピーはこのとき、テープへのバックアップソースとして使用するかまたはディスクバックアップとしてそのままの状態で維持することができる。スナップショットは物理的破壊を取り扱わないことから、スナップショットおよびミラーは両方とも複製策において相乗的な役割を果たす。各データ喪失ファクタが一意な特性を有することを認めて、本発明の方法および装置は、データの利用性および信頼性を増大させる一方で記憶環境に単純性をもたらしながら、一般的な技術を用いて大半のケースに対処することができる。さらに重要なことは、物理的および論理的破壊は、完全なデータ保護策の一部として同等に処理されることである。
【発明の効果】
【0011】
この技術は、データ修復能力において高度の信頼性をもたらす。その結果、物理的および論理的障害のための極めて適切な対策、および記憶の費用対効果性の非常に高い利用がもたらされる。さらに、このアプローチは、特定のアプリケーションサーバのために利用可能でかつ適切な記憶複製技術の範囲を評価する上でのはるかに高い柔軟性をサポートする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、データ保護システム100の1つの考えられる実施形態の図を示す。アプリケーションサーバ105は、ソースデータセット110を記憶する。該サーバ105は、ソースデータセット110と整合するミラーデータセット115もまた作成する。ミラーリングは、該ボリュームの物理的コピーを作成するために、データを実時間で連続的にコピーするプロセスである。ミラーリングは、特別に停止されない限り終了しない場合が多い。第2のミラーデータセット120もまた、第1のミラーデータセット115から作成される。様々な時点での該データの状態を記録するために、ミラーデータセット115およびソースデータ110のスナップショット125が取られる。スナップショット技術は、ソースデータセット110を含むボリュームまたはファイルの論理的PITコピーを提供する。スナップショット能力をもつボリュームコントローラまたはファイルシステムは、新規ボリュームを構成するが、オリジナルソースデータ110と同一の場所をポイントする。回復アプリケーションを実行している記憶コントローラ130が、次に欠落データ135を回復させる。
【0013】
図2は、データの管理および回復を容易にすることを目的として統合されたデータ保護および複製ポリシーセットを作成するためのプロセスの1つの考えられる実施形態をフローチャートの形で示す。ステップ2000で該プロセスは開始し、ステップ2010において、記憶コントローラ130は、データ記憶媒体またはメモリ中に1次データセットを記憶することによって、ソースボリューム110を列挙する。このメモリは、ハードディスクドライブ、リムーバブルディスクドライブ、テープ、EEPROM、またはその他のメモリ記憶デバイスを含み得る。ステップ2020で、記憶コントローラ130は、例えば図1に示すように、ソースデータに対するあらゆる物理的損傷から保護するために局所的に記憶されたソースデータの1またはそれ以上のミラーといった物理的エラーポリシーを決定する。ステップ2030で、記憶コントローラ130は、例えば様々なメモリ記憶媒体中に記憶されているソースデータの任意の数のPIT複製であってそのデータ複製のそれぞれは特定の期間にまたがったデータ複製のような論理的エラーポリシーを決定する。ステップ2040で、記憶コントローラ130は、例えばデフォルトパラメータを用いるか、または特定パラメータを設定することによって複製技術を割り当てる。ステップ2050で、記憶コントローラ130は、頻度、実行範囲および特定の時間などといったスケジューリングパラメータを特定するために従来のスケジューリング方法論を活用する。ステップ2060で、記憶コントローラ130は、破壊が発生したかどうか判断するために、複製ポリシーを実行し、ミラー115の状態を監視することによって、データを監視しおよび回復させる。破壊は、例えば物理的または論理的エラーであり得る。破壊が発生していなかった場合、記憶コントローラ130は、再度ステップ2060を行う。破壊が発生していた場合、制御はステップ2070に移行する。ステップ2070では、記憶コントローラ130が、適切なエラーポリシーを実行して破壊を補正する。ステップ2080で該プロセスは終了する。
【0014】
図3は、データの管理および回復を容易にするために、統合されたデータ保護および複製ポリシーセットを、ユーザ入力に従って修正するためのプロセスの考えられる1つの実施形態をフローチャートの形で示す。ステップ3000でプロセスは開始し、ステップ3010で記憶コントローラ130が、データ記憶媒体またはメモリ内に1次データセットを記憶することによって、ソースボリューム110を列挙する。上述の通り、このメモリには、ハードディスクドライブ、リムーバブルディスクドライブ、テープ、EEPROM、またはその他のメモリ記憶デバイスが含まれ得る。ステップ3020で、記憶コントローラ130は、グラフィカルユーザインタフェースを表示する。ステップ3030で、記憶コントローラ130は、ポリシーを修正する何らかの入力がユーザから受信されたか否かを判定する。修正対象のポリシーとしては、物理的エラーポリシー、論理的エラーポリシー、スケジューリングポリシー、またはその他のいずれかのタイプのデータ保護またはデータ複製ポリシーが含まれる。ユーザは、マウス、キーボード、ポインティングデバイス、タッチスクリーン、スタイラス、ジョイスティック、ゲームパッド、トラックボール、ライトペン、マイクロホン、または音声認識デバイスといった入力装置を用いて、ポリシーを修正することができる。ユーザがかかる入力を提供しない場合、記憶コントローラ130は、ステップ3030で当該判定を繰り返す。ユーザがポリシーを修正する入力を提供する場合、記憶コントローラ130は、ステップ3040まで進み、ここで記憶コントローラ130は、ユーザの入力に従ってポリシーを修正する。ステップ3050でプロセスは終了する。
【0015】
図4は、データの管理および回復を容易にするために、データ保護および複製ポリシーを時間インスタンス化する能力をもつGUI(グラフィカルユーザインタフェース)400の1つの実施形態を示す。このGUIにおいて、各ブロックは、1次データセットの各複製を表わす。ブロック410は、特定のデータセット420に関する1次データセットの部分または完全複製を表わす。特定のデータセットのためのブロック数を変更させて、与えられた期間全体にわたり多少の複製を発生させることが可能である。ブロックのタイプもまた、それが完全コピーであれデータの部分セットにすぎないものであれ、実行すべき複製のタイプを示すために変更可能である。ソース430は、1次ミラー440および2次ミラー450により破壊から保護される。ユーザが保護プロセスの実行を制御できるようにするために、ドロップダウンメニュー、カーソル起動フィールド、ルックアップボックスおよび当該技術分野で既知のその他のインタフェースを付加することが可能である。ユーザが必要とする場合には、完全なデータ保護スキームに対しその他の制約を課すことも可能である。
【0016】
図1に示すとおり、本発明の方法は、プログラムされたプロセッサを用いて実現可能である。但し、この方法はまた、汎用または特殊用途向けのコンピュータ、プログラムされたマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラ、周辺集積回路素子、特定用途向け集積回路(ASIC)は、その他の集積回路、個別素子回路といったハードウェア/電子論理回路、PLD、PLA、FPGAまたはPALといったプログラマブル論理デバイスなどの上でもまた実現可能である。
【0017】
本発明は、上述の実施形態を参照して説明してきたが、これらの実施形態は純粋に例示を目的とするものであることは理解させるべきである。従って、本発明は、上述の実施形態中に示す特定の形態に制限されるものではない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、これに対して様々な修正および変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態による考えられる1つのデータ保護プロセスを示す図である。
【図2】データの管理および回復を容易にするために、統合されたデータ保護および複製ポリシーセットを作成するための、考えられる1つのプロセスのフローチャートである。
【図3】本発明の1つの実施形態によるデータの管理および回復を容易にするべく、統合されたデータ保護および複製ポリシーセットを修正するための、考えられる1つのプロセスのフローチャートである。
【図4】本発明の1実施形態によるデータの管理および回復を容易にするためのデータ保護および複製ポリシーを時間インスタンス化できる考えられる1つのGUIを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データセットをデータ記憶媒体上に記憶する段階と、
ユーザに対してグラフィカルユーザインタフェースを表示する段階であって、該グラフィカルユーザインタフェースが、データ保護ポリシーおよび複製ポリシーのグラフィック表示である段階と、
前記グラフィカルユーザインタフェースを介して、前記データ保護ポリシーおよび前記複製ポリシーを修正する能力をユーザに提供する段階と、
を含んでなる方法。
【請求項2】
前記グラフィカルユーザインタフェースを介して前記ユーザから受信した入力に基づいて前記データ保護ポリシーを修正する段階を、さらに含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記グラフィカルユーザインタフェースを介して前記ユーザから受信した入力に基づいて前記複製ポリシーを修正する段階を、さらに含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記グラフィカルユーザインタフェースは、論理的ソースボリュームを表示する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記データ保護ポリシーは、物理的障害ポリシーである請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記データ保護ポリシーは、論理的障害ポリシーである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記複製ポリシーは、スケジューリングポリシーである請求項1に記載の方法。
【請求項8】
データ処理方法を実現するためにコントローラにより実行可能であり、かつ記憶媒体中に常駐する命令セットにおいて、前記データ処理方法は、
データセットをデータ記憶媒体上に記憶する段階と、
ユーザに対してグラフィカルユーザインタフェースを表示する段階であって、該グラフィカルユーザインタフェースが、データ保護ポリシーおよび複製ポリシーのグラフィック表示である段階と、
前記グラフィカルユーザインタフェースを介して前記データ保護ポリシーおよび前記複製ポリシーを修正する能力をユーザに提供する段階と、
からなる命令セット。
【請求項9】
前記方法が、前記グラフィカルユーザインタフェースを介して前記ユーザから受信した入力に基づいて前記データ保護ポリシーを修正する段階を、さらに含んでなる請求項8に記載の命令セット。
【請求項10】
前記方法が、前記グラフィカルユーザインタフェースを介して前記ユーザから受信した入力に基づいて前記複製ポリシーを修正する段階をさらに含んでなる請求項8に記載の命令セット。
【請求項11】
前記グラフィカルユーザインタフェースは、論理的ソースボリュームを表示する請求項8に記載の命令セット。
【請求項12】
前記データ保護ポリシーが、物理的障害ポリシーである請求項8に記載の命令セット。
【請求項13】
前記データ保護ポリシーは、論理的障害ポリシーである請求項8に記載の命令セット。
【請求項14】
前記複製ポリシーは、スケジューリングポリシーである請求項8に記載の命令セット。
【請求項15】
データセットを記憶する記憶デバイスと、
前記データセットを破壊から保護するために、データ保護ポリシーおよび複製ポリシーを制定するコントローラと、
前記データ保護ポリシーおよび前記複製ポリシーのグラフィック表示を提供するグラフィカルユーザインタフェースをユーザに示すディスプレイと、
前記グラフィカルユーザインタフェースを介して前記データ保護ポリシーおよび前記複製ポリシーを修正する能力を前記ユーザに提供する入力装置を、
を含んでなる処理システム。
【請求項16】
前記グラフィカルユーザインタフェースは、論理的ソースボリュームを表示する請求項15に記載の処理システム。
【請求項17】
前記データ保護ポリシーは、物理的障害ポリシーである請求項15に記載の処理システム。
【請求項18】
前記データ保護ポリシーは、論理的障害ポリシーである請求項15に記載の処理システム。
【請求項19】
前記複製ポリシーは、スケジューリングポリシーである請求項15に記載の処理システム。
【請求項20】
前記入力装置が、マウス、キーボード、ポインティングデバイス、タッチスクリーン、スタイラス、ジョイスティック、ゲームパッド、トラックボール、ライトペン、マイクロホンおよび音声認識デバイスのうちの少なくとも1つを含む請求項15に記載の処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−527568(P2007−527568A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518828(P2006−518828)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【国際出願番号】PCT/US2004/021519
【国際公開番号】WO2005/008382
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(504441037)ソフテック ストレージ ソリューションズ コーポレイション (2)
【Fターム(参考)】