説明

完全調理された穀粉性製品を製造する方法

本発明は、フライ製品に匹敵する知覚特性を有するが、フライ対応物よりも実質的に低い脂肪含有量を有する完全調理された穀粉性製品の製造を可能にする方法を提供する。より詳しくは、本発明は、完全調理された穀粉性食品の製造方法であって、前記方法が、・小麦粉、水および任意の1または1以上の他のベーカリー材料を混合することにより穀粉性ドウまたはバッターを準備することと、・前記ドウまたはバッターを1または1以上の部分に分割することと、・前記1または1以上の部分を(i)合計で20〜600秒間に亘って、赤外線照射に暴露することと、前記赤外線照射の50%よりも多くのエネルギー分は0.7〜10μmの範囲の波長を有する赤外線照射に由来する、(ii)合計で20〜600秒間に亘って少なくとも150℃の温度を有する熱風の衝突に暴露することとによって前記1または1以上の部分を調理することと、の連続的な工程を含み、ここにおいて、当該赤外線照射または当該熱風の衝突への暴露は、同時、順次またはその何れかの組み合わせで行われる;ここにおいて、当該部分の調理前、調理中または調理後に、脂肪含有コーティング組成物が前記部分の表面に適用される、方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の技術背景】
【0001】
本発明は、完全調理された穀粉性製品、とりわけ、褐色のクラストを含む完全調理された穀粉性製品を製造する方法に関する。更に詳しくは、本発明は、完全調理された穀粉性食品を製造する方法であって、前記方法が、穀粉性ドウまたはバッターを準備すること;前記ドウまたはバッターを1または1以上の部分に分割すること;および、前記1または1以上の部分を(i)赤外線照射、および(ii)熱風の衝突、に対して暴露することにより、前記1または1以上の部分を調理すること;の連続的な工程を含み、ここで、脂肪含有コーティングが、前記部分を調理することよりも前、前記部分を調理することの間、前記部分を調理することの後に、当該部分の表面に適用される方法を提供する。
【発明の背景】
【0002】
完全調理された穀粉性製品が、オーブンベーキング、フライ(frying)、赤外線照射、熱風衝突(hot air impingement)、加熱蒸気などを含む非常に異なる種類の熱処理を使用して製造できることが確立されている。これらの熱処理技術の各々が、それぞれの利点およびそれぞれの欠点を有する。
【0003】
完全調理された穀粉性製品のフライによる製造は、褐色でクリスピーなクラストを有するフライ製品を生じる。更に、フライ製品は、非常に独特な快適な食味を有し、それは他の加熱技術により製造された完全調理された穀粉性製品では見られない。ドーナッツは、フライ穀粉性製品の典型的な例である。
【0004】
フライ穀粉性製品の重要な欠点は、これらの製品の高い脂肪含有量と、これらの脂肪が通常は高水準で飽和脂肪酸を含むという事実にある。従って、栄養学的観点から、これらのフライ穀粉性製品における脂肪量を減少することが非常に望ましい。この課題は、従来技術ではよく認識されている。従って、従来技術が、著しく少ない脂肪を含むという事実を除いて、フライ製品と見分けがつかない完全調理された穀粉性製品を生じるために、多様な代替的な熱処理技術を提供することは驚くにはあたらない。
【0005】
US5,910,264は、例えば、加熱処理済み食品、低温冷凍食品または生鮮食品のための、フライヤータイプの、油浴および予熱部を伴わない、家庭用電気調理装置であって、赤外線照射により加熱された取り外し可能な回転式バスケットを具備する装置を記載する。当該米国特許において、当該装置が赤外線より加熱されるという事実により、油浴を伴わずに、市販の加熱処理済み低温冷凍食品、例えば、チップス(chips)、ドーナッツ、ポーム(pommes)、ドーフィネ(dauphines)など、または生鮮食品または未調理食品、例えば、チップス、チェスナッツ(chestnuts)、春巻きなどを、衛生学的および栄養学的な様式において何れの欠点および何れの危険性も伴わずに調理することが可能になる。
【0006】
US5,910,264に記載される装置の欠点は、そのような装置において製造された調理済み製品のクラストの知覚特性が次善のものであるという事実にある。より詳しくは、これらの調理された製品のクラストの外観および食味が共に、それらのフライ対応物よりも劣っている傾向がある。
【0007】
JP03−127941は、ドウを所望の形状に成型することと、成形されたドウに熱せられた脂肪または油を噴霧することと、その後に、噴霧されたドウを熱風で加熱することとにより食品を製造する方法を記載する。製造された食品、例えば、ドーナッツまたはポテトチップなどは、脂肪または油のフレイバーを有するが、脂肪または油の臭いはない。
【0008】
GB−A 2 359 975は、ドーナッツを製造する方法であって、所定のドウ混合物に調理脂肪を噴霧することと、ベーキング工程とを含む方法を記載する。この方法により製造されたドーナッツの脂肪含有量は、フライされたドーナッツに比べて減少される。
【0009】
US5,413,800は、食品の高速全表面加熱のための方法であって、100kW/m〜1000kW/mの強度および0.8〜2,5μmの波長を有する赤外線熱源に対して食品を暴露することを含む方法を記載する。当該US特許では、食品の外面が、高速熱処理の前または後の何れかにおいて、食品の0.1〜4重量%で油を任意に噴霧されてもよいことが観察されている。US 5,413,800に記載される方法は、加熱で焼けたクリスプな外面を有する低脂肪食品を製造するために使用できる。
【0010】
前述の方法は、脂肪含有量が低減された食品を製造するために使用できるが、これらの製品の知覚特性は満足なものではない。従って、それらのフライ製品に匹敵する知覚特性を有するが、それらのフライ対応物よりも少ない脂肪を含む、完全調理された穀粉性製品を製造するために適切に使用できる加熱処理技術の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、前述の必要性を満たす方法を意図する。本発明は、完全調理された穀粉性食品を製造する方法であって、前記方法が、
A.小麦粉、水および任意の1または1以上の他のベーカリー材料を混合することにより、穀粉性のドウまたはバッターを準備すること;
B.前記ドウまたはバッターを1または1以上の部分に分割すること;および
C.前記1または1以上の部分を(i)赤外線照射および(ii)熱風の衝突、に暴露することにより、当該1または1以上の部分を調理すること、ここにおいて、当該赤外線照射および当該熱風の衝突への暴露は、同時に、順次にまたはその何れかの組合せで行われる;
の連続的な工程を含み、および
ここにおいて、当該部分を調理することよりも前に、当該部分を調理することの間に、または当該部分を調理することよりも後に、脂肪含有コーティング組成物が、当該部分の表面に適用される、方法を提供する。
【0012】
本発明者らは、2つの異なる加熱技術、即ち、赤外線照射と熱風衝突との組み合わせにおける脂肪含有コーティングの使用が、フライ製品と殆ど見分けのつかない完全調理された製品を齎すことを発見した。脂肪含有コーティングの適用が、完全調理された製品のクラストがフライ製品のクラストと同様の食感品質を有することを保証すると考える。本発明者らは、理論により制約されることを望んではいないが、本方法により得られた完全調理された製品のクラストは、有効な量の脂肪を含むという事実のためにフライ製品のクラストに非常に似ていると考えられる。しかしながら、フライ製品とは異なり、本発明は、それらのフライ対応物と比較して大幅に低い全体的な脂肪含有量を有する高い品質の完全調理された穀粉性製品を製造することが可能である。
【0013】
赤外線照射と熱風衝突との組み合わせは、ドウおよびバッターの脂肪をコーティングした外側の部分からの多くの水分の喪失を引き起こし、加えて、クラストの望ましい食特性、例えば、褐色化およびメイラード反応などに寄与する熱誘導性反応を促進する条件を作り出すために完全に適切であることが見出された。水の蒸発、並びに前述の褐色化およびメイラード反応は、全て相関性があり、且つ使用される加熱処理の種類および条件により、並びにドウまたはバッターの組成により、非常に多くの影響を受ける。本発明は、仮に、本方法において、非脂肪含有性コーティング組成を適用した場合には、得られる完全調理された穀粉性製品は明らかに劣った品質になることを見出している。
【0014】
更に、本方法が、ドウまたはバッターの脂肪コーティング部分を調理するために赤外線照射または熱風衝突の一方のみを利用した場合では、結果として得られる完全調理された穀粉性製品は、それらのフライ対応物よりも劣ることが見出された。赤外線照射のみが使用される場合、クラストは、薄く且つ硬くなる傾向がある。熱風衝突のみが使用された場合、調理された製品は、比較的厚いクラストと低い水分含有量によって特徴づけられる。熱風衝突のみで許容されるクラストの色を達成するためには、非常に高い温度の風を使用する必要があり、それは部分的に調理された製品、即ち、その製品の中心部が未調理のまま残される製品に終わる可能性がある。本発明者らは、赤外線加熱と熱風衝突の組み合わせを使用することにより、且つこれらの熱処理前、熱処理中または熱処理後に脂肪含有コーティングを適用することにより、均一なクラストの色および最適なクラストの厚さおよびクラストの空隙率が達成されることを見出した。
【0015】
オルソンらは、赤外線照射と熱風衝突とを組み合わせた使用を記載している(「Effect of near-infrared radiation and jet impingement heat transfer on crust formation of bread」, J. of Food Sc. Vol. 70, no. 8, October 2005, 484-491)。オルソンらは、ポストベーキングの間にパーベーキングされたバゲットのクラスト形成において(単独または組み合わせにおける)空気ジェット衝突および赤外線照射の効果を検討した研究の結果を記載する。
【発明の詳細な説明】
【0016】
本発明は、完全調理された穀粉性食品の製造方法であって、前記方法が、
A.小麦粉、水および任意の1または1以上の他のベーカリー材料を混合することにより、穀粉性ドウまたはバッターを準備すること;
B.当該ドウまたはバッターを1または1以上の部分に分割すること;および
C.前記1または1以上の部分を(i)合計で20〜600秒間に亘って、赤外線照射、好ましくは前記赤外線照射の50%よりも多くのエネルギー分が0.7〜10μmの範囲の波長を有する赤外線照射に由来する赤外線照射に暴露することと、(ii)合計で20〜60秒間に亘って、少なくとも150℃の温度を有する熱風の衝突に暴露することとにより前記1または1以上の部分を調理すること、ここにおいて、当該赤外線照射および熱風の衝突への暴露が、同時、順次またはその何れかの組み合わせで行われる;
の連続的な工程を含み、および
ここにおいて、当該部分を調理することよりも前に、当該部分を調理することの間に、または当該部分を調理することよりも後に、脂肪含有コーティング組成物が当該部分の表面に適用される、
方法に関する。
【0017】
ここにおいて使用されるとき、用語「赤外線照射」は、0.7μmから1mmの波長を有する電磁波照射をいう。ここにおいてある範囲の波長を有する赤外線照射について言及されるときには、50%よりも大きい、好ましくは80%より大きい赤外線照射のエネルギー分が、前記範囲内の波長を有する赤外線照射に由来することを意味する。
【0018】
本方法において、赤外線照射および熱風の衝突への暴露は、同時、順次またはその何れかの組み合わせで行われ得る。従って、工程Cにおいて、本方法は、例えば、その後に続いて熱風衝突のみに暴露される、赤外線照射と熱風衝突との同時の暴露を使用してもよい。
【0019】
熱風衝突に関して使用されるとき、「風」の語は、狭義に解釈されるべきではなく、空気以外の気体または気体混合物の衝突であっても、同様の結果を生ずる。好ましくは、本方法において使用される熱風は、少なくとも50重量%の空気を含む。最も好ましくは、使用される熱風は、空気からなる。
【0020】
ここで使用されるとき、用語「脂肪」は、トリグリセリド、ジグルセリド、モノグリセリドおよびリン脂質をいう。
【0021】
本方法において、赤外線照射は、適切な波長を有する赤外線照射を生じ得る何れかの種類の赤外線ヒーターにより適切に提供できる。終わりの波長は、放射物体の温度に依存する。大部分の市販の赤外線ヒーターは、放射物体として炎または電気的に加熱されたフィラメントを使用する。本方法は、放射物体として電気的に加熱されたフィラメントを含む赤外線ヒーターを有利に使用する。このフィラメントは、耐熱性石英ガラス菅により保護されてよい。更に、前記石英菅は、不活性ガスで満たされて、フィラメントの劣化を防止してもよい。本方法において、赤外線照射は、赤外線チューブヒーターにより有利に提供される。
【0022】
本方法は、非常に高いエネルギー分を有する赤外線照射を好ましく使用する。その結果として、特に好ましい態様において、使用される赤外線照射は0.7〜5.0μmの波長を有する。
【0023】
本発明者らは、工程Cにおいて使用される赤外線照射の強度が変化することが有益であることを見出した。特に好ましい態様に従うと、当該部分の未調理の表面は、非常に高い強度の赤外線照射に最初に暴露され、続いて、強度が徐々にまたは段階的な方法で低下される。高い強度の赤外線照射の初期使用は、調理処理の初期にオーブンスプリング(oven spring)を実現する利点を提供する。
【0024】
本方法は2つの相を適切に含んでよく、そのうちの第1の相において、当該部分の片側が赤外線照射および熱風衝突に暴露され、その第2の相において、当該部分のもう片側が基本的に同様の処理に暴露される。
【0025】
本発明のもう1つの好ましい態様に従うと、赤外線照射が使用されて、ドウまたはバッターの部分は高出力密度に暴露される。有利には、当該部分は、少なくとも20秒間に亘り、少なくとも2kW/m、より好ましくは少なくとも5kW/m、最も好ましくは8〜80kW/mの熱流束に暴露される。有利には、当該部分が前述の熱流束に対して暴露される間の合計時間は、少なくとも40秒間、より好ましくは少なくとも60秒間、最も好ましくは少なくとも90秒間である。典型的に、当該部分が前述の熱流束に暴露される間の期間は、500秒間を超えない。好ましくは、前記期間は350秒間を超えない。
【0026】
また、本方法において使用される熱風衝突は、有利に使用されて当該部分に対して極めて強い熱伝達を達成する。従って、当該部分は、180〜340℃、より好ましくは200〜320℃の温度を有する熱風の衝突に好ましく暴露される。
【0027】
本発明において得られる完全調理された製品は、最終熱処理直後に、少なくとも85℃、より好ましくは少なくとも90℃、最も好ましくは95〜99℃の中心温度を典型的に有する。
【0028】
本方法において、相当量の熱が、赤外線照射および熱風衝突の両方によってドウまたはバッターに対して伝達される。典型的に、これらの2つの加熱技術の各々が、本方法において生じる熱伝達の少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%の割合を占める。
【0029】
熱風衝突の有効性は、熱風の温度に依存するが、しかしながら、熱風の流速にも依存する。有利には、熱風衝突は、少なくとも1m/s、好ましくは5〜20m/sの流速を有する熱風が当該部分に衝突することを含む。
【0030】
本方法の重要な利点は、それが著しい「オーブンスプリング(oven spring)」を生じ得るという事実にある。従って、好ましい態様において、当該部分の体積は、本方法のC工程における調理することの間に少なくとも5%、好ましくは少なくとも25%分の増加を齎す。典型的に、完全調理された穀粉性食品は、少なくとも1.4ml/gの特異的な体積を有する。
【0031】
本方法において、調理することの条件は、褐色化されたクラストの形成についてのみを齎すものではなく、それらはまた、当該部分の内部に含まれるデンプンの糊化も引き起こす。典型的に、本方法において、当該部分内部の温度は工程Cにおける調理することの間に少なくとも80℃までに上昇する。更に好ましくは、当該部分内部の温度は、工程Cにおける調理することの間に少なくとも90℃、より好ましくは少なくとも95℃までに上奏する。
【0032】
脂肪含有コーティング組成物の必須要素は、それが相当な量の脂肪、例えば、少なくとも10重量%の脂肪を含むことである。特に好ましい態様に従うと、コーティング組成物は、
・20〜100重量%の脂肪、好ましい20〜100重量%のトリグリセリド;
・0〜80重量%の水;
・0〜30重量%の炭水化物;
・0〜20重量%のタンパク質物質;および
・0〜20重量%の他のベーカリー材料;
を含む。
【0033】
ここで使用されるとき、用語「タンパク質物質」は、タンパク質、オリゴペプチド、ペプチドおよびアミノ酸を含む。
【0034】
より好ましい態様に従うと、脂肪および水は共に、コーティング組成物の少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%に相当する。特に好ましい態様に従うと、コーティング組成物は、少なくとも40重量%の脂肪、最も好ましくは少なくとも40重量%のトリグリセリドを含む。コーティング組成物中の炭水化物および/またはタンパク質物質の含有物は、それが表面を褐色化およびフレーバー形成を促進できる点で有利である。
【0035】
コーティング組成物に組み込まれ得る他の成分は、例えば、当該部分に対する当該組成物の付着に影響する成分を含む。そのような成分の例は、増粘剤、ゲル化剤および乳化剤を含む。
【0036】
脂肪含有コーティング組成物は、ドウまたはバッターの部分の調理前、調理の間または調理後に、当該部分に適切に適用される。本方法において使用される脂肪含有コーティング組成物の好ましくは少なくとも50%は、当該部分の調理の前に適用される。
【0037】
本方法の重要な利点は、それらのフライ対応物に比べて著しく低い脂肪含有量を有する完全調理された穀粉性製品の製造を可能にするという事実にある。従って、当該部分に対して供給される脂肪の量が比較的に低い量のコーティング組成物が適用されることが非常に好ましい。従って、本方法の特に好ましい態様において、コーティング組成物が適用されて、その表面に当該部分の2〜13重量%、より好ましくは2〜10重量%、最も好ましくは3〜8重量%の脂肪が供給される。
【0038】
脂肪含有コーティング組成物は、当該部分に前記組成物を層として堆積させることを可能にする何れかの技術により適用されてよい。適切な技術の例は、スプレー(カーテンスプレーを含む)、ブラッシング、ディッピング法などを含む。脂肪含有組成物は、熱組成物、温組成物または冷組成物として当該部分に適用できる。1つの特に有利な態様に従うと、脂肪含有コーティング組成物は、熱油、例えば、少なくとも120℃、または実に少なくとも150℃の温度を有する油と、20秒未満の間、当該部分を接触させることにより、当該部分に対して適用される。熱油との接触は、当該部分を熱油に浸すことにより、または当該部分を熱油のスプレーまたは流下薄膜を通り抜けて通過させることにより適切に行われてよい。
【0039】
本方法は、工程Cの調理することに暴露される前に、酵母および/または化学膨張剤の助けにより発酵されたドウ部分を調理するために特に適切である。
【0040】
前述においてここで説明された通り、本方法は、比較的に低い脂肪含有量を有する完全調理された穀粉性製品を製造することが可能であるという利点を提供する。従って、比較的に低い脂肪含有量を有するドウまたはバッター使用することが好ましい。好ましくは、工程Aにおいて準備されるドウまたはバッターは、小麦粉の10重量%未満の脂肪を含有する。
【0041】
本発明に従う方法は、適切に使用されてドウの一部分またはバッターの一部分を調理できる。バッターは通常流体であるために、その一部分が形態を維持できる程度になるまでにデンプンが糊化されるまで、容器内にバッターの一部分を保持することが有利である。
【0042】
本方法は、ドウの一部分を調理するために特に適切である。典型的には、本方法において使用されるドウは、小麦粉の40重量〜60重量%の水と、小麦粉の0重量%〜50重量%の他のベーカリー材料とを含む。
【0043】
本方法において、ドウまたはバッターの一部分(複数)が形成される。これらの一部分は、何れかの形状または外形をとる。一部分の大きさに関しては、各々10〜100gの部分を使用することが好ましい。
【0044】
本方法において得られる完全調理された穀粉性製品は、好ましくは、ドーナッツ、フライ麺(fried noodles)、ラーディケーキ(lardy cakes)、スプリッツクーヘン(Spritzkuchen)、クラプフェン(Krapfen)、チュロス、バニュレロ(bunuelos)およびシューショス(xuxos)からなる群より選択される。好ましい態様に従うと、完全調理された穀粉性製品は、ドーナッツ、特に2〜15重量%の脂肪含有量を有する完全調理されたドーナッツである。最も好ましくは、完全調理された穀粉性製品は、2〜10重量%の低減された脂肪含有量を有するドーナッツである。
【0045】
本発明は、以下の非限定的な例により更に説明される。
【0046】
[例]
[例1]
リングドーナッツ(41グラム)が以下のレシピを用いて製造された。
【表A】

【0047】
上記のレシピに従って製造されたリングドーナッツの総脂肪含有量は6重量%であった。それらが最終フライのために他の場所に出荷されることを可能にするために、そのために準備された生ドーナッツを−20℃の冷凍庫内に貯蔵された。3週間後、冷凍されたドーナッツが冷凍庫から出されて、25℃で30分間解凍された。その後、そのドーナッツを60分間に亘って強化キャビネット(30℃、80%の相対湿度)内に配置することによってそれらを強化した。
【0048】
強化されたドーナッツを、熱風衝突ノズルを追加的に装備した移動式赤外線オーブンを用いて調理した。当該オーブンは、移動式ワイヤーメッシュベルトで構成され、その速度は調節できる。赤外線加熱ランプおよび熱風衝突ノズルは、移動ベルトの上部に取り付けられた。ベルトに沿って途中にスイッチバックがあり、これがドーナッツを効果的に軽くはじく。発熱体は、調節可能な角度で取り付けられた2つのランプの6つの組からなり、その各組は強度を調節可能である。ランプの組は、移動ベルトの長さ方向に交差して均等に配置された。加えて、2つの熱風衝突ノズルが取り付けられ、ベルトの中央の近くに1つが、末端近くに1つが取り付けられ、それによりドーナッツの各側面が直接に熱風に暴露された。熱風の温度は調節可能であった。
【0049】
多くの実験が、表1に記載されたランプ強度および衝突温度を使用して行われた(区画1はベルトが通過するオーブンの最初の区画を表し、区画8は最後の区画を表す)。全ての実験において、オーブン内での滞留時間は3分であった。生ドーナッツは、オーブンに入る前に油をスプレーされた。約1.6グラムの油で各生ドーナッツを被覆した。
【表1】

【0050】
外観および食管品質について、そのように得られた完全調理されたドーナッツは、普通のフライされたドーナッツと基本的に区別できなかった。オーブンから離れた際の完全調理されたドーナッツは、中心温度約98℃を有した。調理する工程の間に観察されたベーキング喪失は、約8重量%であった。完全調理されたドーナッツの脂肪含有量は約7.5重量%であった。
【0051】
[例2]
表2に記載するランプ強度と衝突温度を使用して例1を繰り返した。再度、オーブンに入れる前に生ドーナッツに油をスプレーした。今回のオーブン内での滞留時間は4分10秒であった。
【表2】

【0052】
再度、そのようにして得られた完全調理されたドーナッツの外観と食感は、普通のフライされたドーナッツと基本的に区別できなかった。オーブンから離れた際の完全調理されたドーナッツは、中心温度約97℃を有した。完全調理されたドーナッツの調理する間のベーキング喪失および脂肪含有量は例1において言及された値に匹敵した。
【0053】
[比較例A]
この例では生ドーナッツが油でスプレーされなかったことを除いて例1を繰り返した。そのように得られた完全調理されたドーナッツは、普通にフライされたドーナッツよりも明らかに食味および外観に関して劣っていた。
【0054】
[例4]
表3に記載されたランプ強度および衝突温度を使用して例1を繰り返した。今回は、生ドーナッツをオーブンに入れる直前に油−水乳剤でスプレーした。使用した乳剤は以下の組成を有していた;
・100mLのデキストロース溶液(15gのデキストロース/150mLの水)
・50mLのデンプン溶液(10gのデンプン/100gの水)
・100mLの油
・1滴のツウィーン。
【表3】

【0055】
そのようにして得られた完全調理されたドーナッツの外観および食感は、普通のフライされたドーナッツと基本的に区別できなかった。オーブンを離れた際の完全調理されたドーナッツは約97℃の中心温度を有していた。
【0056】
[比較例B]
オーブンに入る前に生ドーナッツを脂肪含有コーティング組成物でスプレーしなかったこと以外は例4と同様に繰り返した。オーブンを離れた際の完全調理されたドーナッツは、約97℃の中央温度を有していた。そのようにして得た完全調理されたドーナッツの外観および食感は、例4で記載された完全調理されたドーナッツと比較して明らかに劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全調理された穀粉性食品の製造方法であって、前記方法が、
A. 小麦粉、水および任意の1または1以上の他のベーカリー材料を混合することにより、穀粉性ドウまたはバッターを準備すること;
B. 前記ドウまたはバッターを1または1以上の部分に分割すること;および
C.前記1または1以上の部分を(i)合計で20〜600秒間に亘って、赤外線照射に暴露することと、前記赤外線照射の50%よりも多くのエネルギー分は0.7〜10μmの範囲の波長を有する赤外線照射に由来する、(ii)合計で20〜600秒間に亘って少なくとも150℃の温度を有する熱風の衝突に暴露することとにより、前記1または1以上の部分を調理すること、ここにおいて、当該赤外線照射および熱風の衝突への暴露は、同時、順次またはその何れかの組み合わせで行われる;
の連続的な工程を含み、および
ここにおいて、当該部分を調理することよりも前に、当該部分を調理することの間に、または当該部分を調理することよりも後に、脂肪含有コーティング組成物が当該部分の表面に適用され、当該脂肪は、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質およびその組み合わせから選択される、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、当該赤外線照射が赤外線チューブヒーターにより提供される方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、当該赤外線照射が0.7〜5.0μmの波長を有する方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の方法であって、当該部分が、180〜340℃、好ましくは200〜320℃の温度を有する熱風の衝突に暴露される方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の方法であって、当該熱風の衝突は、少なくとも1m/s、好ましくは5〜20m/sの速度を有する熱風と当該部分が衝突することを含む方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の方法であって、当該部分の体積が、工程Cにおける調理することの間に、少なくとも5%、好ましくは少なくとも25%分増加する方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の方法であって、当該部分内部の温度が、工程Cにおける調理することの間に、少なくとも95℃にまで上昇する方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項に記載の方法であって、当該コーティング組成物が、
− 20〜100重量%の脂肪、
− 0〜80重量%の水、
− 0〜30重量%の炭水化物、
− 0〜20重量%のタンパク性物質、および
− 0〜20重量%の他のベーカリー材料
を含む方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか1項に記載の方法であって、当該コーティング組成物が、当該部分の表面に適用されて、当該部分の重量に対して2〜10重量%、好ましくは3〜8重量%の脂肪が供給される方法。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項に記載の方法であって、当該ドウ部分が、工程Cの調理することに曝されるよりも前に、酵母および/または化学膨張剤の助けにより発酵される方法。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の方法であって、工程Aにおいて準備された当該ドウまたはバッターが、小麦粉の少なくとも10重量%未満の脂肪を含む方法。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか1項に記載の方法であって、当該ドウまたはバッターが各10〜100gの部分に分割される方法。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか1項に記載の方法であって、当該完全調理された穀粉性食品が、ドーナッツ、フライ麺、ラーディケーキ、スプリッツクーヘン、クラプフェン、チュロス、バニュレロおよびシューショスからなる群より選択される方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、当該完全調理された穀粉性食品がドーナッツである方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、当該方法が、2〜10重量%の脂肪を含む完全調理されたドーナッツを生じる方法。

【公表番号】特表2012−527893(P2012−527893A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512989(P2012−512989)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050322
【国際公開番号】WO2010/137982
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(505152480)シーエスエム・ネーデルランド・ビー.ブイ. (9)
【Fターム(参考)】