説明

官能化されたポリウレタンポリ尿素分散液

本発明は、不可欠な官能性基を有するポリウレタン尿素の水性分散液と、それらから調製される塗料、それらの製造方法、および塗料を製造するためのそれらの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体の官能基(integral functional group)を有する、ポリウレタン尿素の水性分散液、それらから調製される塗料組成物、それらの調製方法、および塗料組成物の調製におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンを基剤とする塗料組成物は、それらの優れた性質、例えば、高い引っ掻き抵抗性および低い低温撓み性などにより、大きな役割を果たしている。生物学的および他の法的要求の増加に伴い、無溶媒の水性ポリウレタンが特に重要である。ポリウレタン分散液を基剤とする塗料は、種々の用途、例えば、繊維製品のコーティング、プラスチックおよび自動車の塗装、またはガラス繊維の塗布などにおいて使用されている。
【0003】
一般に、塗料の性質を改良させるために、塗料用の官能化されたポリマーは、更なる工程段階においてポリマー類似反応を行うこともある。通常、高いモル質量は、塗料の最終的な性質、例えば溶媒安定性および加水分解安定性などに対して良い効果を付与するので、高いモル質量を得るための試みがしばしば行われている。
【0004】
米国特許第7393894号A明細書は、後に添加される架橋剤、例えばジヒドラジドおよびジアミンなどと乾燥状態で反応する構成成分として使用されるカルボニル含有イソシアネート反応性化合物を含有する、自己架橋型ポリウレタン分散液を開示する。この発明における欠点は、所望の特性、例えば加水分解安定性を付与するために、架橋用の更なる成分を添加しなければならないということである。
【0005】
米国特許第6462127号A明細書は、酸素(酸化乾燥)の影響により架橋する、脂肪酸変性ポリウレタン分散液を開示する。これらの系の欠点は、架橋が7日に至るまでの比較的ゆっくりとした期間でおこなわれることである。
【0006】
米国特許第6586523号A明細書は、一部のイソシアネート基が遮断された、ヒドロキシ基官能化ポリウレタンから成る自己架橋型のポリウレタン分散液を開示する。この明細書にいて開示されるポリマーの欠点は、高温において遮断剤が遊離することであり、このことは職場における衛生学的な観点から望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7393894号A明細書
【特許文献2】米国特許第6462127号A明細書
【特許文献3】米国特許第6586523号A明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の目的は、極めて良好な加水分解安定性を有する塗料へと処理できる、自己架橋型のポリウレタン尿素の水性分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、エポキシ-官能化ポリウレタンポリ尿素は、更なる化合物の添加を行わずに熱的に架橋するか(1成分(1K)系)、または多官能性架橋剤、例えばポリアミンおよび/またはポリイソシアネートを添加することにより架橋できる(2成分(2K)系)ことを見出した。さらに、本発明によるポリウレタンポリ尿素分散液から調製される塗料組成物は、優れた加水分解安定性を示す。
【0010】
本発明は、下記一般式(I)で表わされる構造単位を含有することを特徴とする、ポリウレタンポリ尿素の水性分散液を提供する:
【0011】
【化1】

式中、
R'は(CHOおよび(CHであり、式中、nは1〜10の整数を示し、
R''は(CHOおよび(CHであり、式中、nは1〜10の整数を示し、
R'''はH、CHCHSO-、CH、CHCH、シクロヘキシルまたはCHCHOHを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によるポリウレタン尿素の水性分散液は、下記構成成分a)〜g)を含有する:
a)2以上の官能価を有する1種以上のポリイソシアネート、
b)400〜8000g/モルのモル質量(M)と1.5〜6の官能価を有する1種以上のポリヒドロキシ化合物
c)400g/モル未満のモル質量と2〜4の官能価を有する、所望による1種以上のポリヒドロキシ化合物
d)1種以上の非イオン性の、イソシアネート反応性親水化剤、
e)1種以上のイソシアネート反応性の潜在的イオン性親水化剤、
f)32〜400g/モルのモル質量と1〜3の官能価を有する、1種以上のポリアミン、および
g)2以上のエポキシド官能価を有する、1種以上のイソシアネート反応性ポリエポキシド化合物。
【0013】
本発明によるポリウレタン尿素の水性分散液は、以下の成分a)〜g)を含有する:
成分a);5〜40wt.%、好ましくは10〜35wt.%、特に好ましくは15〜25wt.%、
成分b);20〜88.4wt.%、好ましくは31〜81wt.%、特に好ましくは46〜73wt.%、
成分c);所望により0〜5wt.%、好ましくは0.5〜4.0wt.%、特に好ましくは1〜3wt.%、
成分d);1〜5wt.%、好ましくは1.5〜4.5wt.%、特に好ましくは2〜4wt.%、
成分e);0.1〜5wt.%、好ましくは0.5〜4wt.%、特に好ましくは1〜3wt.%、
成分f);5〜10wt.%、好ましくは5.5〜9.5wt.%、特に好ましくは6〜9wt.%、および
成分g);0.5〜15wt.%、好ましくは1〜12wt.%、特に好ましくは2〜10wt.%。
【0014】
適当なポリイソシアネートa)は、当業者において既知である芳香族、芳香脂肪族(araliphatic)、脂肪族または脂環式ポリイソシアネートである。適当なポリイソシアネートa)には、以下のものが含まれる:例えば、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス−(4,4'−イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたは所望の異性体含有量を示すそれらの混合物、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−および/または2,6−トルエンジイソシアネート若しくは水素添加された2,4−および/または2,6−トルエンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、2,4'−および/または4',4'-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−および2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよび/または4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−および1,4-ビス-(2−イソシアナト-プロプ−2−イル)ベンゼン(TMXDI)、1,3−ビス(イソシアナト-メチル)ベンゼン(XDI)、(S)−アルキル2,6−ジイソシアナトヘキサノエートまたは(L)−アルキル2,6−ジイソシアナトヘキサノエート。
【0015】
2よりも大きい官能価を有するポリイソシアネートも比例して使用できる。このようなポリイソシアネートには、ウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有する変性ジイソシアネート、並びに、1分子あたり2個よりも多いNCO基を有する未変性ポリイソシアネート、例えば、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)またはトリフェニルメタン−4,4',4''−トリイソシアネートが含まれる。
【0016】
2〜4、好ましくは2〜2.6、特に好ましくは2〜2.4の平均官能価を有し、脂肪族的および/または脂環式的にのみ結合したイソシアネート基を含有する上記種類から構成されるポリイソシアネート混合物またはポリイソシアネートが好ましい。
【0017】
成分b)として使用できるポリマーポリオールは、400〜8000g/モル、好ましくは400〜6000g/モル、および特に好ましくは500〜3000g/モルのモル質量(M)を有する。これらのヒドロキシル価は22〜400mgKOH/g、好ましくは30〜300mgKOH/g、および特に好ましくは40〜250mgKOH/gであり、それらは、1.5〜6、好ましくは1.8〜3および特に好ましくは1.9〜2.1のOH官能価を有する。
【0018】
本発明の範囲に含まれるポリオールb)は、ポリウレタン塗料技術において既知の有機ポリヒドロキシル化合物であり、例えば、常套のポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリアクリレートポリオール、並びにポリウレタンポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、フェノール/ホルムアルデヒド樹脂が含まれ、それらを単独で使用してもよく、混合状態で使用してもよい。ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールまたはポリカーボネートポリオールが好ましく、ポリエステルポリオールが特に好ましい。
【0019】
ポリエーテルポリオールとして以下のものを言及できる:例えばスチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、エピエピクロロヒドリンの重付加生成物およびそれらの混合付加物およびグラフト生成物、並びに、多価アルコールの縮合により得られたポリエーテルポリオールまたはそれらの混合物、および多価アルコール、アミンおよびアミノアルコールのアルコキシ化により得られるもの。
【0020】
適当なヒドロキシ官能性ポリエーテルは、1.5〜6.0、好ましくは1.8〜3.0のOH官能価、50〜700mg/KOHg固形分、好ましくは100〜600mg/KOHg固形分のOH価、および400〜4000g/モル、好ましくは400〜3500g/モルのモル質量Mを有し、例えば、ヒドロキシ官能性スターター分子、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトールまたはこれらの混合物および他のヒドロキシ官能性化合物と、プロピレンオキシドまたはブチレンオキシドとのアルコキシル化生成物等である。400〜4000g/モルのモル質量を有するポリプロピレンオキシドポリオールおよびポリテトラメチレンオキシドポリオールが、ポリエーテル成分b)として好ましい。特に低分子量ポリエーテルポリオールは、高いOH含有量に応じて比較的水溶性である。しかしながら、500〜3000g/モルの分子量を有する水に不溶性のポリプロピレンオキシドポリオールおよびポリテトラメチレンオキシドポリオールならびにこれらの混合物が特に好ましい。
【0021】
ポリエステルポリオールb)の高く適当な例は、ジオール(および所望によりトリオールおよびテトラオール)およびジカルボン酸(および所望によりトリカルボン酸およびテトラカルボン酸)またはヒドロキシカルボン酸またはラクトンの重縮合物である。遊離ポリカルボン酸の代わりに、低級アルコールの対応するポリカルボン酸エステルまたは対応するポリカルボン酸無水物を使用してポリエステルを調製してもよい。適当なジオールの例は、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、更に1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオールおよび異性体、ネオペンチルグリコールまたはヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルであり、最後に記載した3種の化合物が好ましい。2よりも高い官能価をもたらすために、官能価が3であるポリオールを所望により比例して使用してもよく、例えばトリメチロールプロパン、グリセロール、エリトリトール、ペンタエリトリトール、トリメチロールベンゼンまたはトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートが含まれる。
【0022】
適当なジカルボン酸は、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2−メチルコハク酸、3,3−ジエチルグルタル酸、2,2−ジメチルコハク酸である。それらが存在する場合、それらの酸の無水物も同様に使用できる。その結果、本発明の目的のために、無水物は「酸」という表現に含まれる。モノカルボン酸、例えば安息香酸およびヘキサンカルボン酸も使用でき、ポリオールの平均官能価を2以上にもたらすことができる。飽和脂肪酸または芳香族酸が好ましく、例えばアジピン酸またはイソフタル酸である。所望により、少量で付随して使用できるポリカルボン酸として、トリメリット酸を挙げることができる。
【0023】
末端ヒドロキシル基を有するポリエステルポリオールの調製における反応剤として付随して使用できるヒドロキシカルボン酸は、例えば、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシステアリン酸などである。適当なラクトンは、例えばε-カプロラクトン、ブチロラクトンおよびそれらの同族体である。
【0024】
ブタンジオールおよび/またはネオペンチルグリコールおよび/またはヘキサンジオールおよび/またはエチレングリコールおよび/またはジエチレングリコールと、アジピン酸および/またはフタル酸および/またはイソフタル酸に基づくポリエステルポリオールb)が好ましい。ブタンジオールおよび/またはネオペンチルグリコールおよび/またはヘキサンジオールと、アジピン酸および/またはフタル酸に基づくポリエステルポリオールb)が特に好ましい。
【0025】
適当なポリカーボネートポリオールは、炭酸誘導体、例えばジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはホスゲンと、ジオールの反応により得ることができる。適当なジオールは、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールおよび1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、およびラクトン変性ジオールである。好ましくは、ジオール成分は、40〜100wt.%の1,6-ヘキサンジオールおよび/またはヘキサンジオール誘導体(好ましくは、末端OH基に加えてエーテル基またはエステル基を含有する該誘導体)、例えば、1モルのヘキサンジオールと、少なくとも1モル(好ましくは1〜2モル)のε-カプロラクトンの反応によって得られる生成物、またはジ-若しくはトリ-ヘキシレングリコールを生成するヘキサンジオール同士のエーテル化によって得られる生成物を含有する。ポリエーテルポリカーボネートポリオールも使用できる。
【0026】
ジメチルカーボネートとヘキサンジオールおよび/またはブタンジオールおよび/またはε-カプロラクトンに基づくポリカーボネートポリオールb)も好ましい。ジメチルカーボネートとヘキサンジオールおよび/またはε-カプロラクトンに基づくポリカーボネートポリオールがとりわけ最も好ましい。
【0027】
しかしながら、全てのポリエステルポリオールが、成分b)として特に好ましい。
【0028】
一般に、ポリウレタン樹脂を生成する、所望により使用できる低分子量ポリオールc)は、ポリマー鎖の硬化および/または枝分かれを生じさせる。モル質量は、好ましくは62〜200であり、それらの官能価は好ましくは2〜3である。適当なポリオールc)には脂肪族、脂環式または芳香族基を含有できる。例えば、1分子あたり約20個までの炭素原子を有する低分子量ポリオール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)、およびそれらの混合物、並びにトリメチロールプロパン、グリセロールまたはペンタエリスリトールが含まれる。エステルジオール、例えば、δ-ヒドロキシブチル−ε−ヒドロキシ−カプロン酸エステル、ω−ヒドロキシヘキシル−γ−ヒドロキシ酪酸エステル、アジピン酸(β−ヒドロキシエチル)エステルまたはテレフタル酸ビス(β−ヒドロキシエチル)エステルなどを使用してもよい。ヘキサンジオールおよび/またはトリメチロールプロパンおよび/またはブタンジオールが好ましい。トリメチロールプロパンおよび/またはブタンジオールが特に好ましい。
【0029】
非イオン性で、親水化作用を示す適当な化合物d)は、例えば、少なくとも1つのヒドロキシ基またはアミノ基を含有するポリオキシアルキレンエーテルである。このようなポリエーテルは、エチレンオキシドから誘導される構造単位を、30wt.%〜100wt.%の量で含有する。下記一般式(I)で表わされる化合物のように、1〜2の官能価を有する直鎖状ポリエーテルが適当である。
【0030】
【化2】

式中、
およびRは、相互に独立して、酸素原子および/または窒素原子によって中断されてもよい、1〜18個の炭素原子を有する二価の脂肪族基、脂環式基または芳香族基を示す。Rは、アルコキシ末端化ポリエチレンオキシド基を表わす。
【0031】
非イオン性で、親水化作用を示す化合物d)は、例えば、1分子あたり、統計に基づき、5〜70、好ましくは7〜55個のエチレンオキシド単位を有する、一価のポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールであり、適当なスターター分子のアルコキシル化により、常套の方法で得ることができる(例えばUllmanns Encyclopaedie der technischen Chemie, 第4版, 第19巻, Verlag Chemie, Weinheim 第31頁〜第38頁参照)。
【0032】
適当なスターター分子には、以下のものが含まれる:例えば、飽和一価アルコール、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、異性体ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールおよびノナノール、n-デカノール、n-ドデカノール、n-テトラデカノール、n-ヘキサデカノール、n-オクタデカノール、シクロヘキサノール、異性体メチルシクロヘキサノールまたはヒドロキシメチルシクロヘキサン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、またはテトラヒドロフルフリルアルコール等、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等、不飽和アルコール、例えばアリルアルコール、1,1-ジメチルアリルアルコールまたはオレイルアルコール、芳香族アルコール、例えばフェノール、異性体クレゾール又はメトキシフェノール等、芳香脂肪族アルコール、例えばベンジルアルコール、アニシルアルコール又はシンナミルアルコール等、第二級モノアミン、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス-(2-エチルヘキシル)アミン、N-メチル-及びN-エチルシクロヘキシルアミン又はジシクロヘキシルアミン等、並びに複素環式第二級アミン、例えばモルホリン、ピロリジン、ピペリジン、又は1H-ピラゾール等。好ましいスターター分子は、飽和モノアルコールである。ジエチレングリコールモノブチルエーテルが、スターター分子として特に好ましい。
【0033】
アルコキシル化反応に対して適当なアルキレンオキシドは、特にエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、これらは、任意所望の順番または混合状態でアルコキシル化反応において使用できる。
【0034】
これらの構造単位のモル質量(M)は、300g/モル〜6000g/モル、好ましくは500g/モル〜4000g/モル、特に好ましくは750g/モル〜3000g/モルであり、官能価は1である。
【0035】
この種の、適当な、非イオン性で親水化作用を示す単官能化合物d)は、例えば、単官能性アルコキシポリエチレングリコール、例えばメトキシポリエチレングリコール(MPEG Carbowax(登録商標)2000またはMethoxy PEG-40、モル質量範囲1800〜2200、The Dow Chemical Company)など、単官能性ポリエーテルモノアルキルエーテル、例えばBayer Material Science社製の2250g/molの平均モル質量Mを有する、ブタノールおよびエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドから構成されたLB25、単官能性ポリエーテルアミン(Jeffamine(登録商標)M1000、PO/EOモル比3/19、およびM2070、PO/EOモル比10/31、フンツマン社)である。
【0036】
MPEG Carbowax(登録商標)2000、LB 25またはJeffamine(登録商標)M 2070が、成分d)として好ましく使用される。MPEG Carbowax(登録商標)2000またはLB 25が、特に好ましい。
【0037】
成分e)は、本来はカチオンまたはアニオンであることができる潜在的イオン性基を含有する。カチオン的、アニオン的または非イオン的な分散作用を示す化合物は、例えば、スルホニウム、アンモニウム、ホスホニウム、カルボキシレート、スルホネート、ホスホネート基または塩形成により上記基に変換できる(潜在的イオン性基)、またはポリエーテル基を含有する化合物であり、およびこれらの基は、存在するイソシアネート反応性基によって高分子中に組み込むことができる。好ましい適当なイソシアネート反応性基は、ヒドロキシル基およびアミン基である。
【0038】
適当なイオン性または潜在的イオン性化合物e)には、以下のものが含まれる:例えば、モノおよびジヒドロキシカルボン酸、モノおよびジアミノカルボン酸、モノおよびジヒドロキシスルホン酸、モノおよびジアミノスルホン酸およびモノおよびジヒドロキシホスホン酸またはモノおよびジアミノホスホン酸およびそれらの塩、例えばジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバリン酸、N-(2-アミノエチル)-β-アラニン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミンプロピルまたはブチルスルホン酸、1,2-または1,3-プロピレンジアミン-β-エチルスルホン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、リシン、3,5-ジアミノ安息香酸、IPDIおよびアクリル酸の付加生成物(欧州特許出願公開第0916647号A明細書、実施例1参照)、およびそのアルカリ塩および/またはアンモニウム塩;2-ブテン-1,4-ジオールと亜硫酸水素ナトリウムの付加生成物、ポリエーテルスルホネート、2-ブテンジオールおよびNaHSOのプロポキシル化付加生成物(例えば、独国特許出願公開第2446440号A明細書(第5頁〜第9頁、式I〜III)に記載される)、並びに、親水性構成成分としてカチオン性基(例えばN-メチルジエタノールアミン)に変換することができる構造単位。好ましいイオン性または潜在的イオン性化合物は、カルボキシまたはカルボキシレートおよび/またはスルホネート基および/またはアンモニウム基を有すると共に、1.9〜2.1の官能価を有するものである。特に好ましいイオン性化合物は、1.9〜2.1のアミン官能価を有すると共に、イオン性または潜在的イオン性基としてスルホネート基を含有する化合物、例えばN-(2-アミノエチル)-β-アラニンの塩、2-(2-アミノ−エチルアミノ)エタンスルホン酸の塩またはIPDIおよびアクリル酸の付加生成物の塩(欧州特許出願公開第0916647号A明細書の実施例1参照)を含有する。
【0039】
好ましくは、連鎖延長に使用されるポリアミンf)は、1〜2の官能価を有すると共に、例えば、ジ-またはポリ-アミン並びにヒドラジド、例えば、エチレンジアミン、1,2-および1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,3−および1,4−キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチル−1,3−および−1,4−キシリレンジアミン、および4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチルエチレンジアミン、ヒドラジンまたはアジピン酸ジヒドラジドである。
【0040】
原則として、NCO基に対して異なる反応性を示す活性水素を含有する化合物、例えば第1級アミノ基に加えて第2級アミノ基を含有するか、またはアミノ基(第1級若しくは第2級)に加えてOH基を含有する化合物なども成分f)として使用できる。これらの例としては、第1級/第2級アミン、例えば3−アミノ−1−メチルアミノプロパン、3−アミノ−1−エチルアミノプロパン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、3−アミノ−1−メチルアミノブタンなど、およびアルカノールアミン、例えば、N−アミノエチルエタノールアミン、エタノールアミン、3−アミノプロパノールまたはネオペンタノールアミンなどである。
【0041】
ジエタノールアミンおよび/またはヒドラジンおよび/またはイソホロンジアミン(IPDA)および/またはエチレンジアミンが好ましい。ヒドラジンおよび/またはイソホロンジアミンおよび/またはエチレンジアミンが特に好ましい。ヒドラジンとIPDAの混合物が最も特に好ましい。
【0042】
適当な成分g)は、2〜4のエポキシ官能価と1〜2のイソシアネート反応性官能価を有し、好ましくは2〜4のエポキシド官能価と1のイソシアネート反応性官能価を有し、特に好ましくは2のエポキシド官能価と1のイソシアネート反応性官能価を有する、イソシアネート反応性ポリエポキシド化合物である。これらは、特にヒドロキシ官能性ポリエポキシド化合物、例えばグリセロールジグリシジルエーテル、1,4-ビス(オキシラン-2-イルオキシ)ブタン-2-オール、1,5-ビス(オキシラン-2-イルメトキシ)ペンタン-2-オール、1-(オキシラン-2-イルメトキシ)-6-(オキシラン-2-イルオキシ)ヘキサン-2-オール、1-(オキシラン-2-イルメトキシ)-6-(オキシラン-2-イルオキシ)ヘプタン-2-オール、1-(オキシラン-2-イルメトキシ)-6-(オキシラン-2-イルオキシ)オクタン-2-オール、1-(オキシラン-2-イルメトキシ)-6-(オキシラン-2-イルオキシ)ノナン-2-オール、1-(オキシラン-2-イルメトキシ)-6-(オキシラン-2-イルオキシ)デカン-2-オール、1,3-ジ(オキシラン-2-イル)プロパン-2-オール、1,2:7,8-ジアンヒドロ-3,4,6-トリデオキシオクチトール、1,5-ジ(オキシラン-2-イル)ペンタン-3-オールであり、グリセロールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0043】
本発明によるポリウレタンポリ尿素分散液において使用される成分g)の量は、用途に応じて変化する。1K系において使用する場合、好ましくは0.1〜7.0wt.%、特に好ましくは0.5〜5wt.%の量で使用される。2K系として使用する場合、好ましくは0.5〜15wt.%、特に好ましくは3〜12wt.%の成分g)が使用される。
【0044】
本発明によるPU分散液を調製することに関しては、先行技術から既知の方法を使用でき、例えば、プレポリマー混合法、アセトン法または溶融分散法を使用できる。好ましくは、PUR分散液はアセトン法によって調製される。
【0045】
また、本発明は、まず、イソシアネートとエポキシ基を含有するポリウレタンプレポリマーを、成分a),b),c),d),e),およびg)を反応させることによって調製し、続く工程において、得られたポリウレタンプレポリマーをNH-およびNH-官能性成分e)およびf)を用いて連鎖延長させ、水性相へ分散させることを特徴とする、本発明によるポリウレタンポリ尿素の水性分散液を調製する方法に関する。
【0046】
アセトン法によりPUR分散液を調製する場合、第1級または第2級アミノ基を含有しない成分b),c),d),e)のうちの一部または全てと、ポリイソシアネート成分a)は、通常、イソシアネート-官能性ポリウレタンプレポリマーを調製する反応容器内に導入され、所望により、水と混和するがイソシアネート基に対して不活性である溶媒で希釈され、次いで、50〜120℃の温度範囲に加熱される。イソシアネート付加反応を加速させるために、ポリウレタン化学において既知の触媒を使用できる。ジブチルスズジラウレートが好ましい。
【0047】
適当な溶媒は、常套の脂肪族、ケト-官能性溶媒、例えばアセトン、ブタノンであり、それらは調製の開始時に添加してもよく後に添加してもよく、所望により一部を使用してもよい。アセトンまたはブタノンが好ましい。
【0048】
成分a)〜g)の幾つかは反応の開始時には添加されず、その後軽量添加されてもよい。
【0049】
ポリウレタンプレポリマーの調製において、イソシアネート反応性基に対するイソシアネート基の比率は、1.0〜3.5、好ましくは1.1〜3.0、特に好ましくは1.1〜2.5である。
【0050】
プレポリマーを生成する成分a),b),c),d),e)およびg)の反応は、部分的または完全に行われるが、好ましくは完全に行われる。このようにして、溶媒を有さない又は溶液状態で、遊離イソシアネートおよびエポキシド基を含有するポリウレタンプレポリマーが得られる。
【0051】
次いで、更なるプロセス工程において、いまだ反応が行われていない場合、または一部のみが行われている場合、得られるプレポリマーを、脂肪族ケトン、例えばアセトンまたはブタノンを用いて溶解させる。
【0052】
次いで、可能なNH-およびNH-官能性成分e)およびf)を、残存するイソシアネートおよびエポキシド基と反応させる。この連鎖延長/連鎖停止は、分散工程前の溶媒中、分散工程中、または分散工程後の水中で行うことができる。好ましくは、連鎖延長は水中に分散させる前に行われる。
【0053】
NH基またはNH基を有する成分e)およびf)の定義に対応する成分が連鎖延長に使用される場合、好ましくは、プレポリマーの連鎖延長は分散させる前に行われる。
【0054】
連鎖延長度、すなわち、プレポリマーの遊離NCO基に対する、連鎖延長に使用される化合物のNCO-反応性基の当量比は、40〜100%、好ましくは60〜100%、特に好ましくは70〜100%である。
【0055】
本発明による方法において、アミン成分e)およびf)は、所望により水溶液状態若しくは溶媒を用いる溶液状態で使用でき、単独または混合物で使用でき、原則として、任意の添加順を採用できる。
【0056】
水または有機溶媒を希釈剤として付随して使用する場合、希釈剤含有量は好ましくは70〜95wt.%である。
【0057】
プレポリマーから、本発明によるポリウレタン尿素分散液を調製することは、連鎖延長後に行われる。これを受けて、溶解させ連鎖延長させたポリウレタンポリマーを、所望により勢いのある剪断(例えば勢いのある攪拌)に付しながら、分散水内へ導入するか、または、逆に、分散水をプレポリマー溶液内へ攪拌させてもよい。好ましくは、水を、溶解させたプレポリマーに添加する。
【0058】
その後、分散工程後の分散液中に含有される溶媒は、通常、蒸留によって除去される。分散させる間の除去も同様に可能である。
【0059】
本発明によるポリウレタンポリ尿素分散液の固形分は、20〜70wt.%、好ましくは30〜65wt.%、および特に好ましくは35〜62wt.%である。
【0060】
更に本発明は、木材、プラスチック、金属、ガラス、織物、皮革、紙および繊維(例えば、ガラス繊維、プラスチック繊維、およびグラファイト繊維など)に適用される塗料組成物の調製、特に、繊維製品用の塗料の製造における、本発明によるポリウレタンポリ尿素分散液の使用を提供する。
【0061】
本発明による分散液は、熱的に自己架橋するもの(1K系)を調製でき、またはエポキシド反応性および/またはイソシアネート反応性の多官能性化合物と架橋できるもの(2K系)を調製できる。
【0062】
本発明は、熱的に自己架橋する1K系の製造における、本発明によるポリウレタンポリ尿素の水性分散液の使用を提供する。
【0063】
同様に本発明は、2K系の製造における、本発明によるポリウレタンポリ尿素の水性分散液の使用を提供する。
【0064】
本発明によるポリウレタンポリ尿素分散液を含有する2K系は、水溶性または水分散性の架橋剤、例えば、親水性ポリイソシアネート、ポリアミン、ポリエポキシドまたはメラミンなどを含有する。
【0065】
本発明によるポリウレタンポリ尿素分散液を含有する水性塗料組成物は、更なる成分として、補助物質および添加剤を含有できる。このような補助物質および添加剤は、コバインダー(cobinder)、増粘剤、接着促進剤、滑剤、湿潤添加剤、着色剤、光安定剤および老化防止剤、顔料、フロー剤、帯電防止剤、UV吸収剤、膜形成助剤、消泡剤または可塑剤、ならびに光安定剤および老化防止剤を含有できる。
【0066】
本発明によるポリウレタンポリ尿素分散液は、表面被覆用の、水を基剤とする表面被覆組成物における成分として使用できる。この目的のために、本発明によるポリウレタンポリ尿素分散液は、更なる成分、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレタンポリアクリレート、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエステルポリアクリレート、アルキド樹脂、ポリマー、ポリアミド/イミドまたはポリエポキシドに基づく水性分散液などと混合される。
【0067】
コーティングは、1成分または所望により2成分噴霧システムを使用する、種々の噴霧法、例えば圧縮空気法、無気噴霧法または静電噴霧法などにより製造できる。しかしながら、本発明によるポリウレタンポリ尿素分散液を含有するラッカーおよび塗料組成物は、他の方法、例えば、スプレッド・コーティング、ローラーコーティング、噴霧、浸漬、印刷またはドクターブレード塗布により塗布してもよい。
【実施例】
【0068】
原料および方法
Desmophen(登録商標)PE170HN:
アジピン酸、ヘキサンジオールおよびネオペンチルグリコールのポリエステル、OH価66、M=1700g・モル-1(バイエルマテリアルサイエンスAG社、レバークーヘン)
ポリエーテルLB25:
84%のエチレンオキシド含有量有するエチレンオキシド/プロピレンオキシドに基づく単官能ポリエーテル、OH価25、M=2250g・モル-1(バイエルマテリアルサイエンスAG社、ドイツ)
Desmodur(登録商標)I:
IPDI、イソホロンジイソシアネート(バイエルマテリアルサイエンスAG社、ドイツ)
Desmodur(登録商標)H:
HDI、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(バイエルマテリアルサイエンスAG社、ドイツ)
IPDA:
イソホロンジアミン(バイエルマテリアルサイエンスAG社、ドイツ)
AAS:
ジアミノスルホネート、45%水溶液、HN-CH-CH-NH-CH-CH-SONa(バイエルマテリアルサイエンスAG社、ドイツ)
GDGE:
グリセロールジグリシジルエーテル、CAS番号[27043-36-3](シグマアルドリッヒ社、ドイツ)
Bayhydur(登録商標)3100:
17.4%のNCO含有量を有する1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートに基づく親水性の脂肪族ポリイソシアネート(バイエルマテリアルサイエンスAG社、ドイツ)
Imprafix(登録商標)HS-C:
アルキルアミン(バイエルマテリアルサイエンスAG社、ドイツ)
【0069】
PU分散液の力学的性質は、下記のようにして調製される独立皮膜に基づいて測定した:厳密に設定できる間隔を備える2つの研磨ローラーから構成される塗膜形成装置において、剥離紙を後部ローラーの前に配置した。隙間ゲージを用いて、該剥離紙と前部ローラーとの間の間隔を調整する。その間隔は、得られる塗装膜の膜厚(湿潤膜厚)に相当し、各被膜の所望される厚さに応じて調整できる。また、コーティングは、複数のコーティングを連続させてもよい。
【0070】
個々の被膜を塗布するために、アニオン性のアクリルポリマーを添加することによって粘度を4500mPa・sまで調節した後、該生成物を紙と前部ローラーとの間の間隙内へ注入する:そして、剥離紙を真っ直ぐ下方へ引き離すことで、対応する皮膜が剥離紙上に形成される。複数の皮膜を施す場合、各皮膜を乾燥させた後、得られた剥離紙を再度挿入する。
【0071】
乾燥条件
A:室温で3日(23℃)
B:乾燥するまで50℃、その後150℃で3分間
C:乾燥するまで50℃、その後150℃で3分間および165℃で10分間
【0072】
他に記載のない限り、全てのパーセンテージは重量%である。
【0073】
固形分はDIN-EN ISO3251に従い測定した。
【0074】
特に記載がない限り、NCO含有量はDIN EN ISO11909に従い容量分析で測定される。
【0075】
膨潤度を測定するために、独立皮膜を、室温条件下にて、酢酸エチル中で24時間かけて膨潤させ、膨潤後のフィルム断片の体積変化を、ルーラーを用いて測定した。
【0076】
0.1〜0.2mmの厚みを有するフィルムを、50×20mmの寸法に打ち抜き、室温条件下、酢酸エチル中に2時間貯蔵した。膨潤体積の算定は、全次元における変化が比例しているものと仮定しておこなう。
【0077】
加水分解条件下における皮膜の貯蔵は、DIN EN12280-3に従いおこなう。これらの皮膜サンプルの力学特性は、標準的な気候条件(20℃および65%の大気湿度)下にて24時間貯蔵を行った後に、DIN53504に従い測定する。フィルムの力学的性質は、150℃で30分間乾燥させた後に測定する;εは極限伸び(単位%)を示し、σmaxは引張強度(単位MPa)を示す。
【0078】
本発明によるPU分散液の調製
実施例1(本発明に係る)
37gのHDIおよび49.8gのIPDIを、282.4gのポリエステルポリオールPE170HN、11.3gの単官能親水化剤LB25、および12.9gのGDGEへ50℃にて添加し、次いで、得られた混合液を、理論NCO値(NCO-1=5.28%)に到達するまで、100℃で反応させ、プレポリマーを形成させる。次いで、80℃にて、700gのアセトンを添加し、得られた混合液を40℃まで冷却し、プレポリマーを溶解させる。50gのアセトンを用いて29.6gの連鎖延長剤IPDAを添加し、次いで攪拌を5分間おこなう。その直後、42gの水を用いて10.5gのAASと1gのヒドラジン水和物を添加し、同様に攪拌を5分間おこなう。得られた生成物を600gの水中に分散させ、次いで、アセトンを40℃、120mbarにて蒸留し除去する。40.0%の固形分と、6.7のpH値と、340nmの平均粒径を有する水性分散液が得られる。
【0079】
実施例2(本発明に係る)
241gのポリエステルPE170HNと34.3gのGDGEを使用する以外は、実施例1の手順を採用する。40.2%の固形分と、6.6のpH値と、260nmの平均粒径を有する水性分散液が生成される。
【0080】
実施例3(本発明に係る)
217gのポリエステルPE170HNと47.8gのGDGEを使用する以外は、実施例1の手順を採用する。39.2%の固形分と、6.6のpH値と、340nmの平均粒径を有する水性分散液が生成される。
【0081】
比較例:
実施例4(反例、イソシアネート反応性ポリエポキシドを使用せず)
34gのHDIおよび45gのIPDIを、303.9gのポリエステルポリオールPE170HNおよび10.3gの単官能親水化剤LB25へ50℃にて添加し、次いで、得られた混合液を、理論NCO値(NCO=4.79%)に到達するまで、100℃で反応させ、プレポリマーを形成させる。次いで、80℃にて、700gのアセトンを添加し、得られた混合液を40℃まで冷却し、プレポリマーを溶解させる。50gのアセトンを用いて26.8gの連鎖延長剤IPDAを添加し、次いで攪拌を5分間おこなう。その直後、38gの水を用いて9.5gのAASと0.9gのヒドラジン水和物を添加し、同様に攪拌を5分間おこなう。得られた生成物を590gの水中に分散させ、次いで、アセトンを40℃、120mbarにて蒸留し除去する。40.0%の固形分と、6.5のpH値と、350nmの平均粒径を有する水性分散液が得られる。
【0082】
実施例5(反例、イソシアネート反応性ポリエポキシドの代わりにエチルヘキサノールを使用)
37gのHDIおよび49.8gのIPDIを、282.4gのポリエステルポリオールPE170HN、11.3gの単官能親水化剤LB25および8.2gのエチルヘキサノールへ50℃にて添加し、次いで、得られた混合液を、理論NCO値(NCO=5.35%)に到達するまで、100℃で反応させ、プレポリマーを形成させる。次いで、80℃にて、690gのアセトンを添加し、得られた混合液を40℃まで冷却し、プレポリマーを溶解させる。50gのアセトンを用いて29.6gの連鎖延長剤IPDAを添加し、次いで攪拌を5分間おこなう。その直後、42gの水を用いて10.5gのAASと1gのヒドラジン水和物を添加し、同様に攪拌を5分間おこなう。得られた生成物を600gの水中に分散させ、次いで、アセトンを40℃、120mbarにて蒸留し除去する。39.8%の固形分と、6.7のpH値と、600nmの平均粒径を有する水性分散液が得られる。
【0083】
実施例から、記載されているようにして独立皮膜を調製した。さらに、いずれの場合も、攪拌させながら、3wt.%の架橋剤Bayhydur(登録商標)3100またはImprafix(登録商標)HS-Cを分散液中へ添加し、独立皮膜を再び調製した。その後、得られた皮膜の機械的特性を評価し、酢酸エチル中での膨潤を測定した。
【0084】
【表1】

【0085】
1K系から測定された膨潤度によると、本発明によるポリウレタンは、反例と比べて、より低い膨潤度を示すと共に、より高い架橋度を示すことが判る。
【0086】
従って、分散液は、その調製後においても、より高いモル質量を示すと共に、熱的に後架橋でき、ポリエポキシド化合物の量が増加するにつれて、膨潤度が減少する。
【0087】
2K系から測定された膨潤度によると、本発明によるポリウレタンは、より高いイソシアネート-反応性と、より高いアミン-反応性を有することが判る。このことは、エポキシ基およびヒドロキシ基ならびにアミン基が存在するに違いないという結論を導く。
【0088】
【表2】

【0089】
本発明による分散液は、顕著により高い加水分解安定性を示し、ポリエポキシド化合物の比率が増加するにつれ、加水分解安定性が上昇することを明らかにする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表わされる構造単位を有することを特徴とするポリウレタンポリ尿素の水性分散液:
【化1】

[式中、
R'は(CHOおよび(CH、(式中、nは1〜10の整数を示す)を示し
R''は(CHOおよび(CH、(式中、nは1〜10の整数を示す)を示し、
R'''はH、CHCHSO-、CH、CHCH、シクロヘキシルまたはCHCHOHを示す]。
【請求項2】
下記成分a)〜g)を構成成分として含有することを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタンポリ尿素の水性分散液:
a)2以上の官能価を有する1種以上のポリイソシアネート化合物、
b)400〜8000g/モルのモル質量(M)と1.5〜6の官能価を有する1種以上のポリヒドロキシ化合物、
c)400g/モル未満のモル質量と2〜4の官能価を有する、所望による1種以上のポリヒドロキシ化合物、
d)1種以上の、非イオン性のイソシアネート反応性親水化剤、
e)1種以上の、イソシアネート反応性の潜在的イオン性親水化剤、
f)32〜400g/モルのモル質量と1〜3の官能価を有する、1種以上のポリアミン、および
g)2以上のエポキシド官能価を有する、1種以上のイソシアネート反応性ポリエポキシド化合物。
【請求項3】
成分b)が、ブタンジオールおよび/またはネオペンチルグリコールおよび/またはヘキサンジオールおよび/またはエチレングリコールおよび/またはジエチレングリコールと、アジピン酸および/またはフタル酸および/またはイソフタル酸に基づくポリエステルポリオールであることを特徴とする、請求項2に記載のポリウレタンポリ尿素の水性分散液。
【請求項4】
成分g)が、2〜4のエポキシド官能価と1のイソシアネート反応性官能価を有することを特徴とする、請求項2に記載のポリウレタンポリ尿素の水性分散液。
【請求項5】
成分g)が、2のエポキシド官能価と1のイソシアネート反応性官能価を有することを特徴とする、請求項2に記載のポリウレタンポリ尿素の水性分散液。
【請求項6】
ことを特徴とする請求項2に記載のポリウレタンポリ尿素の水性分散液。
【請求項7】
下記の工程(1)〜(3)を含む、請求項1に記載のポリウレタンポリ尿素の水性分散液の調製方法:
(1)イソシアネート基およびエポキシ基を含有するポリウレタンプレポリマーを、成分a)、b)、c)、d)、e)およびg)を反応させることによって調製し、(2)得られたポリウレタンプレポリマーを、NH-官能性および/またはNH-官能性成分e)およびf)を用いて連鎖延長させ、次いで、(3)得られた連鎖延長物を水性相へ分散させる。
【請求項8】
木材、プラスチック、金属、ガラス、織物、皮革、紙および繊維に適用される塗料組成物の調製における、請求項1に記載のポリウレタンポリ尿素の水性分散液の使用。
【請求項9】
熱的に自己架橋する1K系の製造における、請求項1に記載のポリウレタンポリ尿素の水性分散液の使用。
【請求項10】
2K系の製造における、請求項1に記載のポリウレタンポリ尿素の水性分散液の使用。
【請求項11】
請求項1に記載のポリウレタンポリ尿素の水性分散液を含有する1K系。
【請求項12】
水溶性または水分散性の架橋剤、例えば、親水性ポリイソシアネート、ポリアミン、ポリエポキシドまたはメラミンと共に、請求項1に記載のポリウレタンポリ尿素の水性分散液を含有する2K系。

【公表番号】特表2012−518064(P2012−518064A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550454(P2011−550454)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000801
【国際公開番号】WO2010/094417
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】