説明

官能化コロイダルシリカ、分散物並びに方法

本発明では、官能化コロイダルシリカを含んでなる組成物を提供する。当該コロイダルシリカは、1種以上のオルガノアルコキシシラン官能化剤で官能化した後、1種以上の封鎖剤で官能化したものである。本発明のその他の実施形態としては、上記官能化コロイダルシリカを含む分散物並びにその製造方法が包含される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は官能化コロイダルシリカに関する。さらに具体的には、本発明は官能化コロイダルシリカの有機分散物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子素子の小型化・高性能化の要望に伴って、電子産業では小さなダイ面積で優れた性能を示すとともに、入出力(I/O)の高密度化が可能な改良集積回路パッケージが求められている。フリップチップ技術はかかる要件を満足する。フリップチップ構造の弱点は、シリコンダイと基板の熱膨張係数(CTE)の不均衡のため温度サイクリング時にはんだバンプが大きな機械的応力を受け、電子素子の機械的又は電気的故障を引き起こすことである。現在、シリコンチップと基板の間の隙間を充填するためキャピラリーアンダーフィルが用いられており、はんだバンプの疲労寿命が改善される。残念なことに、多くの封止剤化合物は、充填材含有率が高く、封止剤の粘度が高いため、チップと基板の間の微細な隙間(50〜100μm)を充填することができない。
【0003】
用途によっては、アンダーフィル材を施工したウエハーの効率的ダイシングを可能にするため、透明度の向上が必要とされることもある。さらに、ノーフローアンダーフィル用途では、はんだ接合時に充填材粒子の取り込みを防ぐことが望ましい。そこで、充分に低い粘度と膨張係数を有し、チップと基板の間の微細な隙間を充填することができる材料を開発することが求められている。
【特許文献1】国際公開第01/14480号パンフレット
【特許文献2】米国特許第5486551号明細書
【特許文献3】特開2002−226708号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/107316号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、官能化コロイダルシリカを含んでなる組成物であって、該コロイダルシリカが1種以上のオルガノアルコキシシラン官能化剤で官能化した後、1種以上の封鎖剤で官能化したものである、組成物を提供する。
【0005】
別の実施形態では、本発明は、さらに、1種以上のオルガノアルコキシシラン官能化剤と1種以上の封鎖剤と1種以上のエポキシモノマーの存在下でコロイダルシリカを含んでなるコロイダルシリカの有機分散物を提供する。
【0006】
さらに別の実施形態では、本発明は、以下の段階(A)〜(F):
(A)脂肪族アルコールの存在下でコロイダルシリカを1種以上のオルガノアルコキシシラン官能化剤で官能化して予備分散物を形成する段階、
(B)予備分散物に1種以上の硬化性エポキシモノマー及び適宜追加の脂肪族溶媒を添加して最終分散物を形成する段階、
(D)予備分散物又は最終分散物から低沸点成分を少なくとも部分的に除去する段階、
(E)次いで、有効量の1種以上の封鎖剤を添加する段階、及び
(F)低沸点成分を実質的に除去して、最終濃縮分散物を形成する段階
を含んでなるコロイダルシリカ分散物の製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
今回、1種以上のエポキシ樹脂と1種以上の官能化コロイダルシリカと1種以上の硬化触媒と任意成分の試薬の使用によって、硬化前の硬化性エポキシ配合物全体の粘度が低く、その硬化部材の熱膨張係数(CTE)が低い硬化性エポキシ配合物が得られることが判明した。本明細書中で用いる「熱膨張係数が低い」とは、ppm/℃単位で測定して、硬化組成物全体の熱膨張係数がベース樹脂の熱膨張係数よりも低いことをいう。通例、硬化組成物全体の熱膨張係数は約50ppm/℃未満である。「硬化前の組成物全体の粘度が低い」とは、典型的には硬化前のエポキシ配合物の25℃での粘度が約50〜100000センチポアズの範囲内、好ましくは約100〜20000センチポアズの範囲内にあることをいう。本発明の他の態様では、トランスファー成形封止用に処方された成形コンパウンドは、成形温度において約10〜5000ポアズの範囲内の粘度を有するべきであり、好ましくは約50〜200ポアズの範囲内の粘度を有する。さらに、上記の成形コンパウンドは約15〜100インチの範囲内、好ましくは約25〜75インチの範囲のスパイラルフローを有する。本明細書中で用いる「硬化」とは、反応性基を有する配合物全体において反応性基の約50〜100%が反応したことをいう。
【0008】
エポキシ樹脂は硬化性モノマー又はオリゴマーであり、官能化コロイダルシリカとブレンドされる。エポキシ樹脂には、エポキシ官能基を有する有機系又は有機系が包含される。本発明で有用なエポキシ樹脂としては、“Chemistry and Technology of the Epoxy Resins,” B.Ellis(Ed.) Chapman Hall 1993, New York及び“Epoxy Resins Chemistry and Technology,” C.May and Y.Tanaka, Marcell Dekker 1972, New Yorkに記載のものが挙げられる。本発明に使用できるエポキシ樹脂には、ヒドロキシル含有、カルボキシル含有又はアミン含有化合物とエピクロロヒドリンとの、好ましくは金属水酸化物(水酸化ナトリウムなど)のような塩基性触媒存在下での、反応によって製造できるものが挙げられる。その他、1個以上、好ましくは2個以上の炭素−炭素二重結合を有する化合物とペルオキシ酸のような過酸化物との反応によって製造されるエポキシ樹脂も挙げられる。
【0009】
本発明の好ましいエポキシ樹脂は脂環式及びび脂肪族エポキシ樹脂である。脂肪族エポキシ樹脂には、1個以上の脂肪族基と1個以上のエポキシ基とを有する化合物がある。脂肪族エポキシの具体例としては、ブタジエンジオキシド、ジメチルペンタンジオキシド、ジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル及びジペンテンジオキシドが挙げられる。
【0010】
脂環式エポキシ樹脂は当技術分野で周知であり、後述の通り、1個以上の脂環基と1個以上のオキシラン基とを有する化合物である。さらに好ましくは、脂環式エポキシは1分子当たり約1個の脂環基と2個以上のオキシラン環を有する化合物である。具体例としては、3−シクロヘキセニルメチル−3−シクロヘキセニルカルボキシレートジエポキシド、2−(3,4−エポキシ)シクロヘキシル−5,5−スピロ−(3,4−エポキシ)シクロヘキサン−m−ジオキサン、3,4−エポキシシクロヘキシルアルキル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキシド、アジピン酸ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)、アジピン酸ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)、exo−exoビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、endo−exoビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、2,2−ビス(4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル)プロパン、2,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシシクロヘキシル−p−ジオキサン)、2,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ノルボルネン、リノール酸ダイマーのジグリシジルエーテル、リモネンジオキシド、2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジオキシド、1,2−エポキシ−6−(2,3−エポキシプロポキシ)ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン、p−(2,3−エポキシ)シクロペンチルフェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル、1−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル−5,6−エポキシヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン、o−(2,3−エポキシ)シクロペンチルフェニル−2,3−エポキシプロピルエーテル)、1,2−ビス(5−(1,2−エポキシ)−4,7−ヘキサヒドロメタノインダノキシル)エタン、シクロペンテニルフェニルグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル及びジグリシジルヘキサヒドロフタレートが挙げられる。典型的には、脂環式エポキシ樹脂は3−シクロヘキセニルメチル−3−シクロヘキセニルカルボキシレートジエポキシドである。
【0011】
芳香族エポキシ樹脂も本発明で使用し得る。本発明で有用なエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールAエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾール−ノボラックエポキシ樹脂、ビフェノールエポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、4,4′−ビフェニルエポキシ樹脂、多官能性エポキシ樹脂、ジビニルベンゼンジオキシド及び2−グリシジルフェニルグリシジルエーテルが挙げられる。本明細書及び特許請求の範囲を通して、芳香族樹脂、脂肪族樹脂、脂環式樹脂を始めとする樹脂について記載する場合、具体的に記載した樹脂又は記載した樹脂の部分構造を有する分子のいずれも想定される。
【0012】
本発明のシリコーン−エポキシ樹脂は、典型的には以下の式を有する。
【0013】
M′D′T′
式中、下付文字a、b、c、d、e、f及びgは、bとdとfの合計が1以上であることを条件として、0又は正の整数であり、
Mは式RSiO1/2であり、
M′は式(Z)RSiO1/2であり、
Dは式RSiO2/2であり、
D′は式(Z)RSiO2/2であり、
Tは式RSiO3/2であり、
T′は式(Z)SiO3/2であり、
Qは式SiO4/2であり、
、R、R、R、Rは各々独立に水素原子、C1−22アルキル、C1−22アルコキシ、C2−22アルケニル、C6−14アリール、C6−22アルキル置換アリール又はC6−22アリールアルキルであって、これらの基はハロゲン化されていてもよく、例えばC1−22フルオロアルキルのようなフッ素化されたフルオロカーボンであってもよいし、或いはアミノ基を含んでいてアミノプロピルやアミノエチルアミノプロピルのようなアミノアルキルを形成してもよいし、或いは式(CHCHRO)のポリエーテル単位(式中、RはCH又はHであり、kは約4〜20である。)を含んでいてもよく(式中、RはCH又はHであり、kは約4〜20である。)、Zは各々独立にエポキシ基を表す。本発明の様々な実施形態で用いる「アルキル」とは、ノルマルアルキル基、枝分れアルキル基、アラルキル基及びシクロアルキル基をいう。ノルマルアルキル基及び枝分れアルキル基は好ましくは炭素原子数約1〜12のもので、その非限定的な具体例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル及びヘキシルが挙げられる。シクロアルキル基は好ましくは環炭素原子数約4〜12のものである。かかるシクロアルキル基の非限定的な具体例としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル及びシクロへプチルが挙げられる。アラルキル基は好ましくは炭素原子数約7〜14のものであり、具体例としてはベンジル、フェニルブチル、フェニルプロピル及びフェニルエチルが挙げられる、これらに限定されない。本発明の様々な実施形態で用いられるアリール基は好ましくは環炭素原子数約6〜14のものである。アリール基の非限定的な具体例としては、フェニル、ビフェニル及びナフチルが挙げられる。好適なハロゲン化部分の非限定的な具体例としては、トリフルオロプロピルが挙げられる。本発明ではエポキシモノマーとエポキシオリゴマーの組合せを使用してもよい。
【0014】
コロイダルシリカはサブミクロンの大きさのシリカ(SiO)粒子を水性又は他の溶媒中に分散させたものである。コロイダルシリカは約85重量%以下、通常は約80重量%以下の二酸化ケイ素(SiO)を含む。コロイダルシリカの粒度は、通例約1〜250nm、さらに一般的には約5〜150nmである。コロイダルシリカはオルガノアルコキシシランで官能化され、後述の通り有機官能化コロイダルシリカを形成する。
【0015】
コロイダルシリカを官能化するために用いるオルガノアルコキシシランは式:(R
コロイダルシリカの官能化に用いられるオルガノアルコキシシランには次式のものがある。
【0016】
(RSi(OR4−a
式中、Rは各々独立にC1−18一価炭化水素基であって、適宜アルキルアクリレート基、アルキルメタクリレート基又はエポキシド基でさらに官能化されていてもよく、或いはC6−14アリール又はアルキル基であり、Rは各々独立にC1−18一価炭化水素基又は水素基であり、aは1〜3の整数である。好ましくは、本発明で用いられるオルガノアルコキシシランは、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン及びメタクリルオキシプロピルトリメトキシシランである。官能基の組合せも可能である。通例、オルガノアルコキシシランは、コロイダルシリカ中の二酸化ケイ素の重量を基準にして、約5〜60重量%存在する。得られる有機官能化コロイダルシリカは、pHを中和すべく酸又は塩基で処理してもよい。官能化プロセスを補助すべく、酸又は塩基だけでなく、シラノール基とアルコキシシラン基の縮合を促進する触媒を用いてもよい。かかる触媒としては、チタン酸テトラブチル、チタニウムイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)、ジブチルスズジラウレート、これらの組合せのような有機チタン化合物及び有機スズ化合物が挙げられる。
【0017】
コロイダルシリカの官能化は、脂肪族アルコールを添加しておいた市販の水性コロイダルシリカ分散物にオルガノアルコキシシラン官能化剤を上述の重量比で添加することによって実施し得る。得られる官能化コロイダルシリカとオルガノアルコキシシラン官能化剤を脂肪族アルコール中に含む組成物は、本明細書では予備分散物として定義される。脂肪族アルコールは、特に限定されないが、イソプロパノール、t−ブタノール、2−ブタノール及びこれらの組合せから選択し得る。脂肪族アルコールの量は、通例、水性コロイダルシリカ予備分散物中に存在する二酸化ケイ素の量の約1倍〜10倍である。場合によっては、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ(すなわち4−ヒドロキシTEMPO)のような安定化剤を予備分散物に添加してもよい。場合によって、透明予備分散物のpHを調整するため少量の酸又は塩基を加えてもよい。本明細書中で用いる「透明」とは、最大ヘイズ%が15であることをいい、最大ヘイズ%は通例10、最も一般的には3である。得られた予備分散物は通例約50〜100℃で1〜5時間程度加熱される。
【0018】
冷却した透明有機予備分散物は、次いで硬化性エポキシモノマー又はオリゴマーと適宜追加の脂肪族溶媒の添加によって処理して、官能化コロイダルシリカの最終分散物を形成する。脂肪族溶媒は、特に限定されないが、イソプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、l−メトキシ−2−プロピルアセテート、トルエン及びこれらの組合せから選択し得る。この官能化コロイダルシリカの最終分散物は、酸又は塩基で処理してもよいし、或いは酸性又は塩基性不純物を除去すべくイオン交換樹脂で処理してもよい。官能化コロイダルシリカの最終分散物は、次いで、溶媒、残留水、これらの組合せのような低沸点成分を実質的に除去すべく0.5〜250Torrの真空下約20〜140℃で濃縮して、硬化性エポキシモノマー中に官能化コロイダルシリカが分散した透明分散物を得る。本明細書中では、この分散物を最終濃縮分散物と呼ぶ。本明細書において低沸点成分を実質的に除去するとは、低沸点成分全量の90%以上を除去することと定義される。
【0019】
場合によっては、官能化コロイダルシリカの予備分散物又は最終分散物をさらに官能化してもよい。低沸点成分を少なくとも部分的に除去した後、官能化コロイダルシリカの残存ヒドロキシル基と反応する適当な封鎖剤を、予備分散物又は最終分散物中の二酸化ケイ素を基準にして0.05倍〜10倍量加える。本明細書中で用いる「低沸点成分を少なくとも部分的に除去」とは、低沸点成分全量の10%以上を除去することをいい、好ましくは50%以上を除去する。有効量の封鎖剤で官能化コロイダルシリカを封鎖するが、本明細書において「封鎖官能化コロイダルシリカ」とは、封鎖されていない官能化コロイダルシリカに存在する遊離ヒドロキシル基の10%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは35%以上が封鎖剤との反応によって官能化されたことを意味する。官能化コロイダルシリカの封鎖によって、硬化性エポキシ配合物の室温安定性が向上し、それによって硬化性エポキシ配合物全体の硬化特性が向上する。封鎖官能化コロイダルシリカを含む配合物は、コロイダルシリカが封鎖されていない類似配合物よりも格段に優れた室温安定性を示す。
【0020】
封鎖剤の例としては、シリル化剤のようなヒドロキシル反応性材料が挙げられる。シリル化剤の具体例としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)、テトラメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン、N−(トリメチルシリル)ジエチルアミン、1−(トリメチルシリル)イミダゾール、トリメチルクロロシラン、ペンタメチルクロロジシロキサン、ペンタメチルジシロキサン及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。透明分散物を次いで約20〜140℃で約0.5〜48時間加熱する。得られた混合物を次に濾過する。予備分散物を封鎖剤と反応させる場合、1種以上の硬化性エポキシモノマーを加えて最終分散物を形成する。硬化性モノマー中の官能化コロイダルシリカの混合物を約0.5〜250Torrの圧力下で濃縮して最終濃縮分散物を形成する。このプロセスに際して、溶媒、残留水、封鎖剤とヒドロキシル基との反応の副生物、過剰な封鎖剤又はこれらの組合せのような低沸点成分が実質的に除去される。
【0021】
硬化性エポキシ配合物全体を形成するため、最終濃縮分散物に硬化触媒を加える。硬化触媒は硬化性エポキシ配合物全体の硬化を促進する。通例、触媒は硬化性エポキシ配合物全体の約10ppm〜約10重量%の範囲内で存在する。硬化触媒の具体例としては、特に限定されないが、ビスアリールヨードニウム塩(例えばビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(オクチルオキシフェニル,フェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビスアリールヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなど)、トリアリールスルホニウム塩及びこれらの組合せのようなオニウム触媒が挙げられる。好ましくは触媒はビスアリールヨードニウム塩である。有効量のラジカル発生化合物を任意成分の試薬として適宜添加してもよく、その例としては芳香族ピナコール、ベンゾインアルキルエーテル、有機過酸化物及びこれらの組合せが挙げられる。ラジカル発生化合物はオニウム塩の低温での分解を促進する。
【0022】
適宜、カルボン酸無水物硬化剤のようなエポキシ硬化剤及びヒドロキシル基含有有機化合物を任意成分の試薬として硬化触媒と併用する。この場合、硬化触媒は通常のエポキシ硬化触媒から選択すればよく、例として、アミン、アルキル置換イミダゾール、イミダゾリウム塩、ホスフィン、金属塩及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい触媒はトリフェニルホスフィン、アルキルイミダゾール及びアルミニウムアセチルアセトナトである。
【0023】
無水物硬化剤の例として、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、フタル酸無水物、ピロメリト酸二無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ジクロロマレイン酸無水物、クロレンド酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物などが挙げられる。2種以上の無水物硬化剤の組合せを用いてもよい。具体例については、“Chemistry and Technology of the Epoxy Resins” B.Ellis(Ed.) Chapman Hall, New York, 1993及び“Epoxy Resins Chemistry and Technology”, edited by C.A. May, Marcel Dekker, New York, 2nd edition, 1988に記載されている。
【0024】
ヒドロキシル基含有有機化合物の例としては、アルカンジオール及びビスフェノールが挙げられる。アルカンジオールは直鎖、枝分れ又は脂環式であればよく、炭素原子数2〜12のものでよい。かかるジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール(すなわち1,2−又は1,3−プロピレングリコール)、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル,2−メチル,1,3−プロパンジオール、1,3−及び1,5−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジメタノールデカリン、ジメタノールビシクロオクタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール(特にそのシス及びトランス異性体)、トリエチレングリコール、1,10−デカンジオール及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。ジオールのその他の例としてはビスフェノール類がある。
【0025】
適当なビスフェノールの例としては、次式のものがある。
【0026】
HO−D−OH
式中、Dは二価芳香族基とし得る。D基の約50パーセント以上は芳香族有機基であり、残余は脂肪族、脂環式又は芳香族有機基である。好ましくは、Dは次式の構造を有する。
【0027】
【化1】

【0028】
式中、Aは、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレンのような芳香族基を表す。Eはメチレン、エチレン、エチリデン、プロピレン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチレン、ブチリデン、イソブチリデン、アミレン、アミリデン及びイソアミリデンのようなアルキレン基又はアルキリデン基である。Eがアルキレン基又はアルキリデン基の場合、アルキレンやアルキリデンとは異なる芳香族結合、第三級アミノ結合、エーテル結合、カルボニル結合、シランやシロキシなどの含ケイ素結合、スルフィド、スルホキシドもしくはスルホンなどの含イオウ結合、又はホスフィニルやホスホニルなどの含リン結合などの部分で連結された2以上のアルキレン基又はアルキリデン基からなるものでもよい。さらに、Eは、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン、メチルシクロヘキシリデン、2−[2.2.1]−ビシクロへプチリデン、ネオペンチリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン及びアダマンチリデンなどの脂環式基であってもよい。Rは水素、又はアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルカリール基、シクロアルキル基もしくはビシクロアルキル基のような一価炭化水素基を表す。「アルキル基」という用語は直鎖アルキル基及び枝分れアルキル基を意味する。直鎖及び枝分れアルキル基は好ましくは炭素原子数が約2〜約20のもので、非限定的な具体例としては、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ドデシルがある。アリール基の具体例としてはフェニルやトリルなどがある。シクロアルキル基又はビシクロアルキル基は、好ましくは環炭素原子数が約3〜約12で全炭素原子数が約50以下のものである。シクロアルキル基の非限定的な具体例としては、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル及びシクロヘプチルが挙げられる。好ましいアラルキル基は好ましくは炭素原子数が約7〜約14のものであり、具体例として、ベンジル、フェニルブチル、フェニルプロピル及びフェニルエチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
は、フッ素、臭素、塩素及びヨウ素のようなハロゲン、ジメチルアミノのような第三級窒素基、上述のRのような基、又はORのようなアルコキシ基(Rはアルキル基又はアリール基)であればよい。Yがポリエステルカーボネートの製造に用いられる反応体及び反応条件に対して不活性で反応体及び反応条件によって影響を受けないことが非常に好ましい。添字「m」は零からA上で置換可能な部位の数までの整数を表し、「p」は零からE上で置換可能な部位の数までの整数を表し、「t」は1以上の整数を表し、「s」は0又は1であり、「u」は0を含めた整数を表す。
【0030】
Dが上記の通り表されるビスフェノールにおいて、2以上のY置換基が存在する場合、それらは同一でも異なるものでもよい。例えば、Y置換基は異なるハロゲンの組合せであってもよい。また、R置換基も2以上存在する場合、同一でも異なるものでもよい。「s」が0で、「u」が0でないときは、アルキリデンその他の橋かけ基は介在せず、芳香族環同士が直接結合している。炭化水素残基の2以上の環炭素原子がY基及びヒドロキシ基で置換されている場合、芳香核残基A上のヒドロキシ基とYの位置はオルト位、メタ位又はパラ位と変更でき、これらの基同士は隣接、対称又は非対称のいずれの関係にあってもよい。
【0031】
ビスフェノールの非限定的な具体例としては、米国特許第4217438号に上位概念又は下位概念で開示されたジヒドロキシ置換芳香族炭化水素がある。芳香族ジヒドロキシ化合物の好ましい具体例としては、4,4′−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(一般にビスフェノールAとして知られる。)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,2,2′,2′−テトラヒドロ−3,3,3′,3′−テトラメチル−1,1−スピロビ[1H−インデン]−6,6′−ジオール(SBI)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(一般にDMBPCとして知られる。)、レゾルシノール及びC1−3アルキル置換レゾルシノール類が挙げられる。
【0032】
最も典型的には、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましいビスフェノールである。本発明では、複数のヒドロキシル基含有オルガノ化合物の組合せも使用できる。
【0033】
また、組成物の粘度を下げるために反応性有機希釈剤を硬化性エポキシ配合物に添加してもよい。反応性希釈剤としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチル−オキセタン、ドデシルグリシジルエーテル、4−ビニル−1−シクロヘキサンジエポキシド、ジ(β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル)−テトラメチルジシロキサン及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。非反応性希釈剤を組成物に添加して粘度を下げてもよい。非反応性希釈剤としては、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸1−メトキシプロピル、エチレングリコール、ジメチルエーテル及びこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。硬化性エポキシ配合物全体を充填材とブレンドしてもよく、充填材の例としては、ヒュームドシリカ、球状溶融シリカのような溶融シリカ、アルミナ、カーボンブラック、グラファイト、銀、金、アルミニウム、雲母、チタニア、ダイヤモンド、炭化ケイ素、アルミニウム水和物、窒化ホウ素及びこれらの組合せが挙げられる。充填材が存在する場合、その量は硬化性エポキシ配合物全体の重量を基準にして通例約10〜95重量%である。さらに典型的には、充填材は、硬化性エポキシ配合物全体の重量を基準にして約20〜85重量%の範囲内で存在する。
【0034】
有効量の接着促進剤を硬化性エポキシ配合物に使用してもよく、その例として、トリアルコキシオルガノシラン(例えばγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)フマレートなど)及びこれらの組合せが挙げられる。有効量は通例硬化性エポキシ配合物全体を基準にして約0.01〜2重量%である。
【0035】
本発明の硬化性エポキシ配合物全体には、当該配合物全体を基準にして約0.5〜20重量%の難燃剤を適宜使用してもよい。本発明における難燃剤の例として、ホスホルアミド、トリフェニルホスフェート(TPP)、レゾルシノールジホスフェート(RDP)、ビスフェノールAジホスフェート(BPA−DP)、有機ホスフィンオキシド、ハロゲン化エポキシ樹脂(テトラブロモビスフェノールA)、金属酸化物、金属水酸化物及びこれらの組合せが挙げられる。
【0036】
本発明の組成物は手練りしてもよいし、またドウミキサー、チェーンカンミキサー、プラネタリーミキサー、二軸押出機、二本又は三本ロールミルのような慣用装置で混合してもよい。
【0037】
本発明において、混合工程は回分法、連続法又は半連続法に実施し得る。例えば、回分法では、全ての反応体を混合して反応体の大半が消費されるまで反応させる。反応を続行するには、反応を停止して反応体をさらに加える必要がある。連続法では、追加の反応体を添加するのに反応を停止する必要はない。
【0038】
本発明に記載の配合物は分注可能であり、コンピュータ、半導体、又はアンダーフィル、オーバーモールドもしくはその組合せが必要とされる機器のような電子機器に有用である。通例チップと基板を接続するはんだバンプの物理的、機械的及び電気的特性を補強するため、アンダーフィル封止剤が使用される。アンダーフィル作業は当技術分野で公知の方法で実施し得る。従来のアンダーフィル法では、アンダーフィル材をチップの2以上の端部に延在するフィレット又はビードに分注し、毛管作用によってチップの下に流入させ、チップと基板の間のあらゆる隙間を充填する。その他の例示的な方法としては、ノーフローアンダーフィル、トランスファー成形アンダーフィル、ウエハーレベルアンダーフィルなどがある。ノーフローアンダーフィル法では、まずアンダーフィル封止材料を基板又は半導体素子の上に分注し、次いではんだバンプの再流動とアンダーフィル封止剤の硬化を同時に実施する。トランスファー成形アンダーフィル法では、チップと基板をモールドキャビティ内に配置し、モールドキャビティにアンダーフィル材を押し込む。アンダーフィル材を押し込むことでチップと基板の間の空隙が埋まる。ウエハーレベルアンダーフィル法では、アンダーフィル材をウエハー上に分注してから、個々のチップへとダイシングし、チップをフリップチップタイプの作業を介して最終構造体に載置する。この材料は約30〜500ミクロンの隙間を充填する能力を有する。
【0039】
そこで、ボイド、応力、収縮その他の欠陥が最小限に抑制されるように温度、雰囲気、電圧、圧力のような環境条件が至適化されるように、封止材を形成する成形材料をモールドに注入もしくは射出する。通例、封止材の成形のプロセス工程は真空中で、好ましくは約300℃を超えないプロセス温度で実施される。成形後、熱硬化、紫外線硬化、マイクロ波硬化のような方法で封止剤を硬化する。硬化は、通例約50〜250℃、さらに典型的には約120〜225℃の温度、約1atm〜5トン/平方インチ、さらに典型的には約1atm〜1000psiの圧力で起こる。また、硬化は典型的には約30秒〜5時間、さらに典型的には約90秒〜30分の時間で起こる。適宜、硬化封止剤を約150〜250℃、さらに典型的には約175〜200℃の温度で約1〜4時間後硬化してもよい。
【0040】
当業者が本発明を実施できるように以下の実施例を示すが、これらの実施例は単なる例示にすぎず本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0041】
以下、官能化コロイダルシリカ試料の調製の実験をそれらの材料を添加したエポキシ配合物の特性と併せて詳細に記載する。以下の表のデータから、適当な官能化コロイダルシリカの使用によって、熱膨張係数CTEの低下と材料透明性の保持という有益な組合せが実証される。適当な官能化コロイダルシリカを配合した樹脂によって、妥当なスパイラルフローとCTEの低い成形コンパウンドの処方が可能となる。
【0042】
データは、ヘキサメチルジシラザンとの反応で官能化コロイダルシリカを部分的又は完全に封鎖することによって、初期配合物の粘度安定性が大幅に改善されることも示している。封鎖コロイダルシリカ材料をベースにした樹脂も、フィルム透明性、CTEの低下及び妥当なスパイラルフローに同様の利点を示す。
【0043】
実施例1:官能化コロイダルシリカ予備分散物の調製
以下の一般手順を用いて、表1に示す試薬を表1の比率で含む官能化コロイダルシリカ予備分散物を調製した。例えば、水性コロイダルシリカ(465g、34%シリカ、Nalco 1034a)とイソプロパノール(800g)とフェニルトリメトキシシラン(56.5g)の混合物を60〜70℃で2時間加熱撹拌して透明懸濁液を得た。
【0044】
【表1】

【0045】
得られた混合物は室温で保存した。
【0046】
実施例2:官能化コロイダルシリカ分散物の調製
予備分散物(実施例1)を、Dow Chemical社製のエポキシ樹脂UVR6105及びオキセタン樹脂UVR6000(表2、表3)、及び1−メトキシ−2−プロパノールと混合した。混合物を75℃、1mmHgの条件下で恒量となるまで真空ストリッピングして粘稠又はチキソトロープ流体(表2、表3)を得た。
【0047】
【表2】

【0048】
【表3】

【0049】
実施例3a:安定化官能化コロイダルシリカ分散物の調製
250mlフラスコに、50gの予備分散物(実施例1)、50gの1−メトキシ−2−プロパノール及び0.5gの塩基性樹脂(表4)を仕込んだ。混合物を70℃で撹拌した。1時間後に、懸濁液を50gの1−メトキシ−2−プロパノール及び2gのセライト545(登録商標)と混合し、室温に冷却し、濾過した。得られた官能化コロイダルシリカ分散物を12gのUVR6105(Dow Chemical社)と混合し、75℃、1mmHgで恒量となるまで真空ストリッピングして粘稠樹脂を得た(表4)。樹脂の25℃における粘度を調製直後及び6週間測定した。
【0050】
実施例3b:安定化官能化コロイダルシリカ分散物の調製
250mlフラスコに、50gの予備分散物(実施例1)、50gの1−メトキシ−2−プロパノール及び5gの塩基性アルミナ(表4、実験16)を仕込んだ。混合物を室温で5分間撹拌した。懸濁液を50gの1−メトキシ−2−プロパノール及び2gのCelite(登録商標)545と混合して濾過した。得られた官能化コロイダルシリカ分散物を12gのUVR6105(Dow Chemical社)と混合し、75℃、1mmHgで恒量となるまで真空ストリッピングして粘稠樹脂を得た(表4、実験16)。樹脂の25℃における粘度を調製直後及び3週間測定した。
【0051】
実施例3c:安定化官能化コロイダルシリカ分散物の調製
250mlフラスコに、50gの予備分散物(実施例1)及び所望量のアンモニア(表5、実験17、19、20、21)又はトリエチルアミン(表5、実験18)を仕込んだ。混合物を室温で5分間撹拌した。次に、混合物を50gの1−メトキシ−2−プロパノール及び12gのUVR6105(Dow Chemical社)と混合し、75℃、1mmHgで恒量となるまで真空ストリッピングして粘稠樹脂を得た。樹脂の25℃における粘度を調製直後及び3週間測定した。
【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

【0054】
実施例4:フェニルシラン−官能化コロイダルシリカとエポキシ樹脂との安定化ブレンドの濃度が粘度に与える影響
250mlフラスコに、50gの予備分散物(実施例1、試料2)、50gの1−メトキシ−2−プロパノール及び0.5gのPVP25%を仕込んだ。混合物を70℃で撹拌した。1時間後、懸濁液を50gの1−メトキシ−2−プロパノール及び2gのCelite(登録商標)545と混合し、室温に冷却して濾過した。得られた官能化コロイダルシリカ分散物を所望量のUVR6105(Dow Chemical社)と混合し、75℃、1mmHgで恒量となるまで真空ストリッピングして粘稠樹脂を得た(表6)。樹脂の25℃における粘度を調製直後及び6週間測定した。
【0055】
【表6】

【0056】
表4、表5及び表6のデータから、これらの処理によって、何の処理も行っていない例(表4、実験12)に比べ、粘度が実質的に低下すると粘度の安定性が高まり、樹脂安定性が大幅に向上することが分かる。何の処理も行っていない例では、樹脂は溶媒の除去によって凝固した。
【0057】
実施例5:官能化コロイダルシリカのシリル化剤での封鎖
2通りの手順を用いて、官能化コロイダルシリカ(FCS)分散物(実験19、20、21)をヘキサメチルジシラザン(HMDZ)で封鎖した。手順(a)では、コロイダルシリカ分散物を溶媒に再溶解した後、HMDZを加え、次いで溶媒を蒸発させ、完全に封鎖された官能化コロイダルシリカを得る。例えば、FCS(実験19)(10.0g、50%SiO)をジグライム(10ml)に再懸濁し、透明溶液を得た。激しく撹拌しながらHMDZ(0.5g又は2.0g)を添加し、溶液を一晩静置した。翌日、強いアンモニア臭を放つ溶液を40℃、1Torrで蒸発させてモービル油とした。
【0058】
核磁気共鳴(NMR)分析で、トリメチルシリル基のコロイダルシリカ官能基との比率が高まり(等モルレベル)、2gのHMDZとの反応で封鎖度が増したことが判明した。
【0059】
手順(b)では、溶媒蒸発中にFCSを封鎖する。例えば、脂肪族エポキシドを加えて得られた実験19の溶液を部分的に濃縮して180g(メトキシプロパノールの添加量と同じ)を除去した。激しく撹拌しながらHMDZ(9.3g、FCS中のSiO量の約5%)を添加し、溶液を一晩静置した。翌日、強いアンモニア臭を放つ溶液を40℃、1Torrで濃縮してモービル油とした。NMR分析でトリメチルシリル基とコロイダルシリカ官能基とのモル比が0.5:1となり封鎖度が若干低かったことが判明した(表7)。
【0060】
【表7】

【0061】
表7のデータから、手順Bでコロイダルシリカを充分に封鎖できることが分かる。
【0062】
実施例6:官能化コロイダルシリカのシリル化剤での封鎖
丸底フラスコに、予備分散物(実施例1、試料2)及び1−メトキシ−2−プロパノールを仕込んだ。混合物全体の50重量%を60℃、50Torrで留去した。濃縮した官能化コロイダルシリカ分散物に、所望量のヘキサメチルジシラザンを滴下した。混合物を70℃で1時間撹拌した。1時間後、Celite(登録商標)545をフラスコに加え、混合物を室温に冷却し、濾過した。透明官能化コロイダルシリカ分散物をUVR6105(Dow Chemical社)と混合し、75℃、1mmHgで恒量となるまで真空ストリッピングして粘稠樹脂を得た(表8)。樹脂の25℃での粘度を調製直後及び40℃で2週間保存した後に測定した。
【0063】
【表8】

【0064】
実施例7:官能化コロイダルシリカのシリル化剤での封鎖
丸底フラスコに、予備分散物(実施例1、試料2及び4)及び1−メトキシ−2−プロパノールを仕込んだ。混合物全体の50重量%を60℃、50Torrで留去した。濃縮した官能化コロイダルシリカ分散物に、所望量のヘキサメチルジシラザンを滴下した。混合物を70℃で1時間撹拌した。1時間後、Celite(登録商標)545をフラスコに加え、混合物を室温に冷却し、濾過した。透明官能化コロイダルシリカ分散物をUVR6105(Dow Chemical社)と混合し、75℃、1mmHgで恒量となるまで真空ストリッピングして粘稠樹脂を得た(表9)。樹脂の25℃での粘度を調製直後及び40℃で2週間保存した後に測定した。
【0065】
【表9】

【0066】
実施例8:硬化性エポキシ配合物全体の調製
エポキシ配合物試料を2通りの方法で調製した。従来の溶融シリカを用いた材料を、UVR6105(2.52g)を4−メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(2.2g)に加えた後、ビスフェノールA(0.45g)を添加して調製した。懸濁液を加熱してBPAを溶解し、アルミニウムアセチルアセトナト(0.1g)を添加した後、再加熱して触媒を溶解した。溶融シリカ(2.3g、電気化学工業株式会社FS−5LDX)を加え、懸濁液を撹拌して充填材を分散させた。得られた分散物を150〜170℃で3時間硬化した。
【0067】
FCSを用いたエポキシ配合物試料(表10)を以下の通り調製した。メチルヘキサヒドロフタル酸無水物(2.2g、MHHPA)にアルミニウムアセチルアセトナト又はトリフェニルホスフィン(0.1g)を加え、懸濁液を加熱して触媒を溶解させた。FCS又は封鎖FCSを加えて、混合物を暖めてFCSを懸濁させた。試料を150〜170℃で3時間硬化した。硬化試料の特性を表11に示す。
【0068】
【表10】

【0069】
表10の結果から、官能化コロイダルシリカの封鎖によって最終エポキシ配合物の安定性が大幅に向上することが分かる。
【0070】
【表11】

【0071】
実施例9:硬化性エポキシ配合物全体の調製
官能化コロイダルシリカとエポキシ樹脂のブレンドを、Speed Mixer DAC400FV(Hauschild社)で、UV9392C[(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、GE Silicones社製]及びベンゾピナコール(Aldrich社製)と混合した(表12)。得られた液体乃至半固形状樹脂を5℃未満で保存した。得られた樹脂を130℃で20分間硬化し、175℃で2時間後硬化した。
【0072】
【表12】

【0073】
表12のデータから、溶融コロイダルシリカとコロイダルシリカの組合せを使用することでCTEを改善し得ることが分かる。
【0074】
実施例10:成形コンパウンドの調製
電気化学工業株式会社製の溶融シリカFB−5LDXを、Speed Mixer DAC400FV(Hauschild社)で、官能化コロイダルシリカエポキシ樹脂と混合した。得られたペーストを、同じミキサーで、(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(GE Silicones社)、ベンゾピナコール(Aldrich社)、カーボンブラック及びカンデリラワックスと混合した。得られた成形コンパウンドを5℃未満で保存した。
【0075】
【表13】

【0076】
表13の結果から、コロイダルシリカを含有する試料は、流動性の向上とCTEの低下という有益な性質を併せもつことが分かる。
【0077】
実施例11:圧縮成形
Tetrahedron空気プレスを用いた圧縮成形によって、CTE測定用の可撓性試験片を製造した。典型的な成形条件は以下の通り。成形温度:350℃、成形圧力:10000psi、成形時間:15分。
【0078】
実施例12:トランスファー成形
トランスファー成形プレスGluco E5(Tannewits−Ramco−Gluco社製)を用いてスパイラルフロー実験を行った。動作圧100psiでのクランプ力:5ton。最大プランジャー力:1200psi。
【0079】
典型的な硬化条件は以下の通り。プランジャー圧:660psi、プランジャ時間:25秒、クランプ時間:100秒、クランプ力:5ton、モールド:標準スパイラルフローモールド。
【0080】
【表14】

【0081】
実施例13:CTEの評価
成形試験片のCTEは、Perkin Elmer社製Thermo−mechanical Analyzer TMA7を用いて10〜260℃の温度域、10℃/分の加熱速度で測定した。
【0082】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の技術的思想及び技術的範囲から逸脱せずに、様々な修正及び置換を施すことができる。したがって、以上の本発明に関する説明は単なる例示にすぎず、本発明を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化コロイダルシリカを含んでなる組成物であって、該コロイダルシリカが1種以上のオルガノアルコキシシラン官能化剤で官能化した後、1種以上の封鎖剤で官能化したものである、組成物。
【請求項2】
前記オルガノアルコキシシランがフェニルトリメトキシシランを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記封鎖剤がシリル化剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記シリル化剤がヘキサメチルジシラザンを含む、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記官能化コロイダルシリカの遊離ヒドロキシル基の10%以上が封鎖されている、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記官能化コロイダルシリカの遊離ヒドロキシル基の20%以上が封鎖されている、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記官能化コロイダルシリカの遊離ヒドロキシル基の35%以上が封鎖されている、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
官能化コロイダルシリカを含んでなる組成物であって、該コロイダルシリカがフェニルトリメトキシシランでした後、ヘキサメチルジシラザンで官能化したものである、組成物。
【請求項9】
1種以上のオルガノアルコキシシラン官能化剤と1種以上の封鎖剤と1種以上のエポキシモノマーの存在下でコロイダルシリカを含んでなる、コロイダルシリカの有機分散物。
【請求項10】
前記オルガノアルコキシシラン官能化剤がフェニルトリメトキシシランを含む、請求項9記載の分散物。
【請求項11】
前記封鎖剤がシリル化剤を含む、請求項9記載の分散物。
【請求項12】
前記シリル化剤がヘキサメチルジシラザンを含む、請求項11記載の分散物。
【請求項13】
前記エポキシモノマーが脂環式エポキシモノマー、脂肪族エポキシモノマー、芳香族エポキシモノマー、シリコンエポキシモノマー又はこれらの組合せを含む、請求項9記載の分散物。
【請求項14】
前記官能化コロイダルシリカの遊離ヒドロキシル基の10%以上が封鎖されている、請求項9記載の組成物。
【請求項15】
前記官能化コロイダルシリカの遊離ヒドロキシル基の20%以上が封鎖されている、請求項9記載の組成物。
【請求項16】
前記官能化コロイダルシリカの遊離ヒドロキシル基の35%以上が封鎖されている、請求項9記載の組成物。
【請求項17】
フェニルトリメトキシシランとヘキサメチルジシラザンと1種以上のエポキシモノマーの存在下でコロイダルシリカを含んでなる、コロイダルシリカの有機分散物。
【請求項18】
以下の段階(A)〜(F):
(A)脂肪族アルコールの存在下でコロイダルシリカを1種以上のオルガノアルコキシシラン官能化剤で官能化して予備分散物を形成する段階、
(B)予備分散物に、1種以上の硬化性エポキシモノマー及び適宜追加の脂肪族溶媒を添加して、最終分散物を形成する段階、
(D)予備分散物又は最終分散物から低沸点成分を少なくとも部分的に除去する段階、
(E)次いで、有効量の1種以上の封鎖剤を添加する段階、及び
(F)低沸点成分を実質的に除去して、最終濃縮分散物を形成する段階
を含んでなるコロイダルシリカ分散物の製造方法。
【請求項19】
前記封鎖剤を予備分散物に添加する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記封鎖剤を最終分散物に添加する、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記1種以上の封鎖剤がシリル化剤を含む、請求項18記載の方法。
【請求項22】
前記シリル化剤がヘキサメチルジシラザンを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記オルガノアルコキシシランがフェニルトリメトキシシランを含む、請求項18記載の方法。
【請求項24】
前記脂肪族アルコールがイソプロパノール、t−ブタノール、2−ブタノール又はこれらの組合せを含む、請求項18記載の方法。
【請求項25】
前記封鎖剤が、官能化コロイダルシリカの遊離ヒドロキシル基の10%以上を封鎖する請求項18記載の方法。
【請求項26】
前記封鎖剤が、官能化コロイダルシリカの遊離ヒドロキシル基の20%以上を封鎖する請求項18記載の方法。
【請求項27】
前記封鎖剤が、官能化コロイダルシリカの遊離ヒドロキシル基の35%以上を封鎖する請求項18記載の方法。
【請求項28】
以下の段階(A)〜(F):
(A)イソプロパノールの存在下でコロイダルシリカをフェニルトリメトキシシラン官能化剤で官能化して予備分散物を形成する段階、
(B)予備分散物から少なくても部分的にイソプロパノールを除去する段階、
(C)次いで、有効量のヘキサメチルジシラザンを予備分散物に添加する段階、及び
(D)1種以上のエポキシモノマーを添加して最終分散物を形成する段階、及び
(E)低沸点成分を実質的に除去して最終濃縮分散物を形成する段階
を含んでなるコロイダルシリカ分散物の製造方法。
【請求項29】
以下の段階(A)〜(F):
(A)イソプロパノールの存在下でコロイダルシリカをフェニルトリメトキシシラン官能化剤で官能化して予備分散物を形成する段階、
(B)予備分散物に1種以上のエポキシモノマーを添加して最終分散物を形成する段階、
(C)最終分散物から少なくとも部分的にイソプロパノールを除去する段階、
(D)次いで、有効量のヘキサメチルジシラザンを添加する段階、及び
(E)低沸点成分を実質的に除去して最終濃縮分散物を形成する段階
を含んでなるコロイダルシリカ分散物の製造方法。

【公表番号】特表2006−507210(P2006−507210A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555435(P2004−555435)
【出願日】平成15年11月14日(2003.11.14)
【国際出願番号】PCT/US2003/036198
【国際公開番号】WO2004/048266
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】