説明

官能化フラーレンの放射線誘導性の加熱または点火に基づくシステムおよび方法

少なくとも1つのフラーレン含有分子を含む標的領域に対して照射する方法によって、標的領域の加熱または燃焼を促進する。加熱方法は、がん細胞の選択的な標的化および破壊、爆発性物質の爆轟、燃焼性混合物の点火、フォトリソグラフィープロセス、ならびに光記憶媒体の書き込みを含む様々な用途に使用可能である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、カーボンナノ材料の放射線誘導性の加熱または点火に基づくシステムおよび方法、より詳しくは官能化フラーレンの加熱または点火に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
燃料または酸化反応を使用する多くの現行の工業プロセスは、エネルギー(例えば熱、光)を放出する反応を始めるために開始刺激または点火源をしばしば必要とする。この目的を実現する装置は、多くの燃焼プロセスにおいて重要なシステムの構成要素である。多くの異なる点火法が存在するが、電気スパーク点火器が最も有名である。しかしながら、スパーク点火器は、高電圧回路が供給する高エネルギー入力を必要としており、本質的に一点刺激法である。他の点火法、例えばプラズマジェット噴射または火炎ジェット点火、および高出力レーザー点火は、いずれも操作するには嵩高く、重く、高価である。
【0003】
酸化ガス雰囲気、例えば空気中でのカーボンナノチューブの光点火についていくつかの最近の報告がある。例えば、慣行的な写真用フラッシュに露光する際に単一壁カーボンナノチューブが点火することを、研究者は報告している(Ajayan et al., "Nanotubes in a Flash-Ignition and Reconstruction", Science, Vol. 296, Apr. 26, 2002 (非特許文献1))。この光効果は、炭素アーク、レーザーアブレーション、または化学蒸着技術により調製される単一壁カーボンナノチューブにおいて、近距離でのカメラのフラッシュに対する露光時に生じることが開示されている。点火および燃焼は、温度の局所的増加がカーボンの酸化を開始させるために十分である場合に生じ、発熱反応によるさらなる熱の放出に従って伝播することが報告されている。したがって、ナノ構造での熱の閉じ込めは、急激な構造の再構築につながることがあり、また酸化環境では、バルク材料で想定されない条件で点火を誘発することがある。ナノチューブによる近接した光フラッシュからの光吸収により熱パルスが作り出される。
【0004】
カーボンナノチューブに対する光加熱または光点火の適用は、サイズ、高アスペクト比、水または他の液体に対する不溶性、および生体適合性の欠如を含む、カーボンナノチューブのいくつかの特性により限定される。空気と同様に水または他の液体中で放射線誘導性の加熱または点火を与え、小さいサイズおよび低いアスペクト比を有し、水または他の液体に可溶性である、組成物が求められている。さらに、そのような組成物は、医療用途での使用を可能にするために生体適合性であることが好ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Ajayan et al., "Nanotubes in a Flash-Ignition and Reconstruction", Science, Vol. 296, Apr. 26, 2002
【発明の概要】
【0006】
局所加熱方法は、少なくとも1つの標的領域に複数のフラーレン含有分子を配置する工程、およびフラーレン含有分子にて電磁放射線を熱エネルギーに変換するために十分な波長および強度を有する電磁放射線をフラーレン含有分子に照射することで、標的領域を加熱する工程を含む。フラーレン含有分子は燃焼状態まで加熱可能である。フラーレン含有分子は、内包(endohedral)フラーレン、置換フラーレン、官能化フラーレン、またはこれらのフラーレンの任意の混合物であり得る。標的領域は、有機ガス、有機液体、または有機固体;無機ガス、無機液体、または無機固体;ポリマーまたはポリマー複合体;水、水溶液、または水懸濁液;金属または金属合金、ガラスまたはセラミック;あるいは生物材料もしくは生物由来材料またはこれらの材料の混合物であり得る材料の内側にあるか、またはそれと接触している。電磁放射線は、γ線、X線、極紫外線(extreme ultraviolet)、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波放射線、または電波放射線のうち少なくとも1つであり得る。
【0007】
本方法は、フォトレジストとして使用可能であり、標的領域はレジストコーティング内にあり、フラーレン含有分子はコーティングの内側に配置されているか、またはそれと接触しており、レジストコーティングにおけるネガ型の特徴または空隙の形成は、加熱が標的区域に対する照射により得られる場合、コーティングの標的領域における熱誘導性の分解により行うことができる。照射がコーティングの標的領域における熱誘導性の反応または物理的相転移をもたらす場合、エッチング液を使用して標的領域を除去し、コーティング中のネガ型の特徴またはコーティング内のチャネルを残すことができる。照射が熱架橋などの反応を誘導する場合、エッチング液を使用して標的領域以外のすべてを除去し、レジストコーティングのポジ型の特徴を残すことができる。あるいは、ネガ型の特徴を、フラーレン含有分子を含むフォトレジスト上に、照射時に直接、さらなるエッチング工程を必要とせずに作り出すことができる。あるいは、フラーレン含有分子の溶液をフォトレジストとして使用できる。
【0008】
本方法は、複数のポリマーまたはポリマー複合体の断片の溶着を断片の界面にレーザー光を照射することにより行うために使用可能であり、フラーレン含有分子は界面の内側に配置されているか、またはそれと接触しており、それにより界面のポリマーが溶融し、冷却時に溶着部に融合する。
【0009】
本方法は、はんだ付けに使用可能であり、はんだの内側にあるか、またはそれと接触しているフラーレン含有分子に対する照射時に発生する熱は、標的領域ではんだを溶融させる。表面のはんだ付けは、このようにして遠隔で行うことができる。
【0010】
本方法は、CDやDVDなどの書き込み可能な記憶媒体に対する書き込みの、代替的な強化された方法に使用可能である。フラーレン含有分子が有機染料または金属合金の層の地点または内部にあることによって、層の標的領域の物理的または化学的変化を増幅または加速させて、情報をエンコードする標的領域内の層の光学特性を変化させることができる。そのような変化は可逆的でも不可逆的でもよい。層は、染料または合金を有さないフラーレン含有分子であって、層の標的領域内のフラーレン含有分子の分解が標的領域内の層の光学特性の不可逆的または可逆的変化をもたらすフラーレン含有分子であり得る。
【0011】
本方法は、スパークプラグと同様に働く装置内で使用可能であり、標的領域はフラーレン含有分子で満たされたチューブの一端であり、チューブの一端は燃焼室と連通している。燃焼室が燃料-酸化剤混合物を含む場合、チューブの一端に対するレーザー光の照射は、室内のフラーレン含有分子および燃料酸化剤混合物を点火し得る。装置は、室内での次の点火用に未燃焼のフラーレン含有分子をチューブの一端のある位置に動かす、チューブ内のプランジャを有していてもよい。
【0012】
フラーレン含有分子が燃焼室への導入前に燃料に溶解または懸濁していることにより、室内での照射がフラーレン含有分子および燃料酸化剤混合物を点火する、本方法もまた使用可能である。そのような燃料および点火システムは、温度感受性をほとんどまたは全く有さないと考えられる。
【0013】
本方法は、有害な生体微粒子の検出および破壊に使用可能であり、アプタマー、または抗体、または官能化蛍光抗体、または染料/量子ドットでドープされたシリカ粒子である部分を含むフラーレン含有分子と生体微粒子とを接触させる。複数のフラーレン含有分子が生体微粒子を抱合している場合、抱合された生体微粒子の蛍光を強度の低い照射によって促進することで標的領域を位置づける。いったん位置づけると、位置づけた標的に対する十分に強度の高い方向性の照射により、フラーレン含有分子の点火および生体粒子の破壊を行うことができる。
【0014】
本方法を使用して患者内のがん細胞を標的化することができる。フラーレン含有分子は、がん細胞の標的領域に方向付け可能であり、標的領域に対する照射時に、がん細胞に、アポトーシスもしくは壊死を経験させるか、またはバーストを引き起こすか、またはそれらの増殖を阻害するような加熱もしくは点火の他の結果をもたらすことができる。フラーレン含有分子をがん細胞に方向付ける一方法は、フラーレン含有分子の一部として標的化基を有するということであり、標的化基はフラーレン含有分子とがん細胞とを結合させる。放射線を使用することでフラーレン含有分子を熱で活性化して、組織の非標的化領域に対する損傷を促進することなく標的を破壊することができる。
【0015】
本方法は爆発の開始に使用することができる。爆発性材料と直接または間接に接触しているフラーレン含有分子は、爆発性材料を爆轟させる照射により燃焼可能である。
【0016】
本方法は、マイクロスラスターまたはナノスラスターとして使用可能であり、標的領域は、標的領域に対する照射時に燃焼して、推力を与えるガスを発生させる、フラーレン含有分子、および任意で別の推進薬を含む。
【0017】
本方法は、太陽加熱用途に使用可能であり、フラーレン含有分子は金属の表面を装飾する。装飾された表面に対する太陽照射は、金属、および最終的には金属の反対側にある水または他の媒体に対する熱の移動を引き起こす。
【0018】
標的領域を加熱するためのシステムは、標的領域に配置される少なくとも1つのフラーレン含有分子と、放射エネルギーを標的領域に所望に応じて方向付けることが可能な照射源とを含む。照射は、レーザー、ランプ、または太陽光などの任意の源から行うことができる。照射時間は、手動または自動で起動するスイッチで制御するか、コンピュータまたは他の装置で制御するか、あるいは放射エネルギー源と標的領域との間に位置する、やはり手動または自動で起動するシャッターを開閉することで制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明、ならびにその特徴および利点のより完全な理解は、下記の詳細な説明を添付の図面と共に検討すると得られるであろう。
【0020】
【図1】本発明の各種態様の例示的な官能性フラーレン(a)C60(OH)n(n〜1-48)および(b)C63(COOH)6の構造を示す。
【図2】肺中皮腫細胞(A549)の上部に設置したポリ水酸化フラーレン(PHF)のレーザー点火による気泡(局所加熱により得られる)の画像を示す。
【図3】図3(a)〜(d)は、A549細胞内のPHFコーティング葉酸結合シリカナノ粒子の放射線誘導性の点火の前、1秒後、10秒後、および近傍細胞の10秒後の画像を示す。
【図4】図4(a)は、本発明に係るPHFの光点火を用いて「UF」と記入されたPHFコーティング紙の正側面図の写真画像である。図4(b)は、記入された線の幅(50μm)が使用レーザーのビームスポットのサイズに近いことを示す画像である。図4(c)は、「UF」と記入されたPHFコーティング紙の裏側を示す画像であり、紙が光点火現象により裏側まで貫通して焼けたことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
遠隔起動型の局所加熱方法は、標的領域に複数のフラーレン含有分子を配置する工程を含む。フラーレン含有分子に、加熱に十分な波長および強度を有する電磁放射線を照射する。いくつかの態様では、加熱はフラーレン含有分子の燃焼を伴う。フラーレン含有分子は、放射エネルギーを吸収し、放射エネルギーを熱エネルギーに変換することで、標的領域に熱を供給する。
【0022】
本発明は、官能化フラーレン含有分子が、好適な源を用いる照射時に、著しい局所加熱を生成するスパーク、炎、または他の慣行的な点火薬を必要とせずに加熱、点火、または燃焼するという、予想外の発見に基づいている。加熱または点火は、ガス環境、液体環境、または固体環境で生じ得る。空気中で、点火は迅速な分解をもたらす。燃焼前には可視光線の明るいフラッシュを観察できる。
【0023】
可視光線および近赤外線(NIR)が、本発明の態様に係る点火を含む著しい加熱を与えることが実証されているが、他の波長範囲が著しい加熱または点火を与える可能性がある。例えば、一般に赤外線、ならびに紫外線、マイクロ波放射線、および電波放射線が、著しい加熱の生成または点火の誘導に有用であり得る。
【0024】
フラーレンは、一般に球状炭素含有構造の形態であり、したがって本質的にグラフェン表面を有するチューブであるカーボンナノチューブと異なる。カーボンナノチューブの表面とは対照的に、フラーレンは5炭素環構造と6炭素環構造との両方を有する。カーボンナノチューブおよびフラーレンは、物理的および化学的に安定な分子である。カーボンナノチューブおよびフラーレンとは異なり、官能化フラーレンは、生体適合性であることが知られており、治療性を有し得る。
【0025】
「フラーレン」という用語は、20〜1500個の炭素原子を含み、それを構成する主要な原子部分として炭素原子を含む、三次元多面体の形状で本質的に存在する分子の一般的クラスを定義する。フラーレン含有分子は、C-28、C-32、C-44、C-50、C-58、C-60、C-70、C-84、C-94、C-250、およびC-540などのフラーレンを含むが、それに限定されるわけではない。(この命名法によれば、例えば、60個の炭素原子を含むフラーレンをC-60と呼び、70個の炭素原子を含むフラーレンをC-70と呼ぶ。)本発明のフラーレン含有分子には置換フラーレンも含まれる。これらは、炭素以外の原子で置換されている、フラーレンかご構造を含む原子のうち1つまたは複数を有しているが、そのように置換された際に多面体の幾何学的配置を本質的に保持する、分子フラーレンである。本発明のフラーレン含有分子には、炭素以外の元素(例えば鉄)の原子がフラーレンのかご構造の内側に存在する、内包フラーレンも含まれる。本発明のフラーレン含有分子は、異なる官能基が共有結合、またはイオン結合、またはDewar結合、またはKubas相互作用、またはこれらの結合の混合を介してフラーレンかごに結合している、官能化フラーレンも含む。官能化フラーレンは、かごに連結している側基を有するフラーレン(Cx、xは20〜1500)を意味する。側基は、-OH、-Br、-H、-Tiを含むがそれに限定されるわけではない無機基、または-C(COOH)2を含むがそれに限定されるわけではない有機基、または有機基および/もしくは無機基の組み合わせのいずれかであり得る。フラーレンかご当たりの連結している側基の数は、1からフラーレンかごの炭素数のうち過半数までの範囲で変動し得る。官能化フラーレンは、側基の種類および数に基づいて異なる物理的および化学的特性を有する。フラーレン含有粒子は、直径がナノメートルを超え得る寸法を有しており、ナノ粒子と考えることができる。
【0026】
本発明の一態様では、官能化フラーレンはそれらの構造に窒素を有しておらず、それらと結合されている測定可能な金属不純物を有さない。以下、2つの例示的だが非限定的な官能化フラーレンをある程度詳細に説明する。これらのフラーレンはいずれも一般に市販されている。
【0027】
ポリ水酸化フラーレン誘導体(PHF)、例えば図1(a)に示す式C60(OH)n(n〜1-48)は、Chiang, L.ら(J. Chem Soc, Chem. Commun. 1992, 1791)により最初に報告された。フラロールまたはフラレノールとも呼ばれるPHFは、ゲル、スターバーストポリマー、および複合体の形成に有用であり、治療薬として使用可能である。-OH基の数は、典型的には1と48との間である。ポリ水酸化フラーレン誘導体をさらに誘導体化させて、本発明の態様に係る他の官能化フラーレンを形成することができる。例えば、OHをエーテルまたはエステルに変換して、非水性環境または水性環境との増大した混和性を有する官能化フラーレンを得ることができる。
【0028】
カルボキシフラーレン、例えば図1(b)に示す式C63(COOH)6は、水溶性であり、また治療性を有することがDuganら(Proc. Natl. Acad. Sci., 1997 Vol 94, 9434-9439)により報告されている。そのようなカルボキシフラーレンもやはり、例えばエステル化反応またはアミド化反応でさらに官能化させて、本発明の各種態様で使用される他の官能化フラーレンを形成することができる。
【0029】
他の例示的な官能化フラーレンは、N-エチル-ポリアミノ-C60、[6,6]フェニルC60酪酸メチルエステル(PCBM)、水素化フラーレン、およびN-メチルフラロピロリジンを含む。ある種のポリマー鎖も官能基として使用可能である。
【0030】
本発明の方法が提供する高局所加熱は、様々な有用な用途に使用可能である。例えば、本発明の一態様では、フラーレン含有分子をフォトリソグラフィーに使用できる。水溶性のいくつかの官能化フラーレン、例えばPHFは、各種基材のコーティングに使用可能であり、フォトリソグラフィープロセスのエッチング工程の完了時に水を用いて除去可能である。あるいは、フォトリソグラフィーに好適な異なる溶媒に可溶性の官能化フラーレンも使用可能である。通常、現行のナノリソグラフィーは、電子線リソグラフィー(商業スケール)、集束イオンビームリソグラフィー、およびディップペンリソグラフィーにより行う。後者の2つは、プロセスに相当な時間を費やすため、商業的には行われない。電子線リソグラフィーは、レジスト膜のポリマー鎖を破壊する電子線のエネルギーに依存する。
【0031】
PHFなどの官能化フラーレンは、本発明の一態様に係るレジスト上のコーティングシステムの成分として使用可能であり、プロセスは、周囲圧力で作動可能であり、費用対効果が高いものであり得る。これは、X線、紫外線、可視光線、近赤外線、およびマイクロ波などの、ある範囲の波長の放射線をフラーレン粒子が吸収可能であるためである。官能化フラーレンは、レーザーまたは他の放射線源の焦点をそれらに当てることが可能である限り、レジストの上または下にあるコーティングシステムに含めるか、またはレジストと混合することができる。電子線ナノリソグラフィーにより実現される最小幅は、現在約20nmである。官能化フラーレン分子内での局所化により発生する熱の結果としてのエッチングは、照射のスポットサイズにより制御可能である。原則として、本発明に係るエッチングを通じて実現される線幅は1.0nmと小さく、これは官能化C-60分子の断面である。より少ない炭素数のフラーレンはより小さい断面を有する。コーティングが熱分解を経験する程度までフラーレンを点火または加熱して、コーティングにネガ型の特徴を形成することができる。本発明に係るフラーレンが与える点火に満たない加熱は、コーティングシステムでの他の変化を誘導可能である。例えば、この現象をナノリソグラフィーに、化学エッチング、例えばポリマーレジストの苛性エッチング、またはポリマーレジストの物理エッチング、例えば熱および/または真空で促進される揮発を支援するために適用可能であり、変化は、照射された特徴のみがエッチング後に残るポジ型レジスト、または照射された特徴のみがエッチングで除去されるネガ型レジストのいずれかとして働くことができる。ウェハまたはMEMS/NEMS基材に直接塗布される官能化フラーレンのコーティングも、ナノリソグラフィー用のレジストとして使用可能である。例えば、粘度増強剤を有するPHFの水溶液をレジストとしてコーティングできる。
【0032】
一態様では、本発明のコーティングを使用して、ナノ流体装置もしくはマイクロ流体装置を作り出すか、またはナノリソグラフィーによるナノスケールパターンを作り出すことができる。PHFコーティングなどの官能化フラーレン含有コーティングを、パターン形成、エッチング、または切断を包含する他のプロセスに適用することができる。
【0033】
PHFなどの本発明の一態様に係る官能化フラーレンは、ポリマー溶着にも使用可能である。溶着方法は、ポリマー複合体に含まれるか、ポリマーの端部に密着している官能化フラーレンを含み得る。2つの接触面の界面の内側または地点に位置する官能性フラーレンを有する2つ以上の断片に照射する際に、官能化フラーレン周辺の領域の界面で局所溶融が生じる。例えば、官能化フラーレンを有する2つのポリマー片の間の界面に、官能化フラーレンの点火なしに加熱を引き起こす強度で選択的にレーザーを照射することで、界面でポリマーを溶融させ、冷却時に溶着部を形成することができる。
【0034】
本発明の別の態様では、官能化フラーレンの光加熱または光点火特性を、各種基材上での局所はんだ付けに使用することができる。官能化フラーレンを用いるはんだ付けの適用の一例は、容器の微小穴の修復である。低融点を有する合金を修復対象の区域に塗布できるように、官能化フラーレンを薄いテープまたは他のパッチ構造に含めることができる。テープに対するレーザー照射は、溶融したテープが微小穴を封止できるように、テープの局所溶融を誘導することができる。この態様では、官能化フラーレンをはんだ付け合金と混合することができ、官能化フラーレンに対するレーザー照射によりはんだ付け用の熱を発生させることができる。本方法は、はんだ付け用の電気加熱に対する代替案を提供する。はんだを溶融させる放射線源を電気加熱の代わりに使用する利点は、水中はんだ付け用途で明らかである。そのようなはんだ付けは、はんだ付けの時点でヒトの存在を必要としないように、レーザーを用いて遠隔で行うことができる。遠隔はんだ付けは、衛星、宇宙ステーション、および惑星間輸送機などの宇宙機の修復において用途を見出すことができる。
【0035】
本発明の方法が影響を与え得る一技術は、コンパクトディスク(CD)およびデジタルビデオディスク(DVD)などの書き込み可能な記憶媒体のそれである。半透明有機染料のコーティングを有するアルミニウム層を典型的に含む書き込み可能なCDまたはDVDに対する書き込みは、それぞれ780nmまたは650nmのレーザー光で不透明な特徴のパターンを作り出すことで行う。書き換え可能CDまたはDVDは、典型的には有機染料層の代わりに金属合金を使用し、レーザー誘導性の加熱は、結晶質から非晶質への金属合金の相変化を引き起こして、明暗のデジタルパターンを作り出す。ブルーレイディスクも、405nm波長レーザーを用いる書き込み目的で相変化合金を使用する。書き込み可能な記憶媒体に使用可能な代替のディスク技術は、蛍光多層ディスク、3D光データ記憶媒体、および極性高精細DVDを含む。すべてのそのような技術の共通の特徴は、ディスク内の層にレーザー誘導性の加熱で情報を書き込むためのレーザーの使用である。
【0036】
本発明の一態様では、これらのディスク記憶装置の有機染料層または合金層上の、PHFなどの官能化フラーレンのコーティングは、書き込みの速度と効率との両方を向上させることができる。書き込み可能なディスクの一態様では、レーザーの強度は、フラーレンの局所光点火の閾値を超えることがある。書き換え可能ディスクの別の態様では、レーザーの強度を減衰させて、光点火なしに官能化フラーレンの局所加熱のみを引き起こすことができる。
【0037】
別の態様では、官能化フラーレンのコーティングを、タンパク質コーティングディスクと同様に、デジタル情報を書き込むための唯一の層として使用することができる。参考までに、タンパク質コーティングディスクで使用されるタンパク質であるバクテリオロドプシンのサイズは約3nmであり、これにより1テラバイト/インチ2を超えるデータ記憶が可能になる。書き込み(「焼き付け」)中に分解可能な官能化フラーレンのサイズは、典型的にはバクテリオロドプシンタンパク質より小さく(約1nm対約3nm)、これにより9倍の情報の記憶が潜在的に可能になる。ディスクからのデジタル情報の読み取りは、タンパク質コーティングディスクで使用するものと同様の技術で行うことができる。
【0038】
本発明の一態様では、官能化フラーレンの光点火性をスパークプラグのような用途に使用することができる。装置の一例を下記のように説明する。ポリ水酸化フラーレン(PHF)などの官能化フラーレンを、小さいオリフィスを有する一端、および、燃焼室と接触しているオリフィスにフラーレン含有分子を送達する手段を有する、小さいチューブに充填することができる。任意の波長のレーザー源(例えばLEDレーザー)が近傍に位置しており、レーザー光はオリフィスに向けられている。点火を開始するには、レーザーをオンにして、それによりチューブの一端に存在するPHF粒子にレーザー光を照らす。レーザー照射は高強度短パルスの形態であり得る。チューブの一端での光点火により、内燃エンジンシリンダー内のスパークプラグのそれと類似の様式で、燃焼室内の燃料-酸化剤混合物の燃焼が開始する。チューブの他端は、PHF粒子をオリフィスに送達する手段、例えばプランジャまたはスクリューシステムを含み得る。チューブの長さを調整して、チューブをPHFで置換または補充する上で必要な間隔を変えることができる。慣行的なスパークプラグに対するそのような装置の主要な利点の1つは、操作温度が変動しにくいことである。慣行的なスパークプラグは低温で有効性がより低いことが知られている。官能化フラーレンを有する提案の装置は、非常に低い温度で完全に操作可能であると考えられる。これは、点火機構が慣行的なスパークプラグのそれと著しく異なるためである(光点火vs.高電圧スパーク)。
【0039】
本発明の一態様では、官能化フラーレンを燃料添加剤として使用することで、燃料の燃焼性および燃焼効率を向上させて、液体燃料のエネルギー密度をそれらの揮発性を変えることなく増加させることができる。そのような官能化フラーレン燃料添加剤は、極寒の温度での燃焼を増大させることができる。そのような場合、官能化フラーレンを加えた燃料は、安定した燃焼を開始および確立して、暖まったエンジン内で燃焼が安定化した時点でフラーレンを含まない燃料に切り替えるためだけに使用すればよい。官能化フラーレンを加えた燃料の別の用途は、無人航空機(UAV)での使用である。燃料のエネルギー密度の増加が、より長い航続距離またはロイター(loiter)時間をUAVに与えると考えられる。燃料マトリックスに可溶性である官能化フラーレンの使用は、燃料揮発性または他の特性の変化を最小限にするか、またはなくした形で、エネルギー密度の実質的な増加を可能にすると考えられる。
【0040】
医療用途に関して、本発明は、官能化フラーレンを設置可能なヒトまたは動物の体内の領域に、遠隔操作された熱を即時送達することを可能にする。これはナノ手術およびナノ療法のための正確な方法を可能にし得る。例えば、官能化フラーレンから高強度のエネルギーを放出する以外は身体に無害である、外部の電磁界および電磁放射線の使用により、がん組織およびがん細胞を選択的に破壊することができる。官能化フラーレンは、例えばナノ粒子または他のナノスケールの物体を化学的に付着させる際に様々な手段により体内に設置可能であり、体中を容易に移動可能であり、また、がん細胞を標的化し、それに付着する、特定の基を有し得る。
【0041】
本発明の一態様では、官能化フラーレンを、標的化剤、例えば、抗体またはアプタマーで官能化された、蛍光抗体、または染料/量子ドットでドープされたシリカ粒子に抱合させ、細菌、ウイルス、および胞子などの有害な生体微粒子に露出させることができる。例えば、カルボキシフラーレンを、蛍光染料または量子ドットと共にシリカマトリックス中に封入することができる。マトリックスの表面を、アプタマーおよび抗体などの標的化剤に抱合させることができる。次に、炭疽菌胞子などの有害な生体微粒子の検出用に、これらの多官能粒子を空気または水に分散させることができる。標的化剤は、多官能粒子を生体微粒子の表面に結合させるために使用できる。染料または量子ドットの励起波長での低強度電磁波源の照射は、有害な生体微粒子上に凝集する多官能粒子の一部である励起した染料または量子ドットからの局所的で比較的高強度の発光による、有害な生体微粒子の検出を可能にし得る。電磁波源の強度を増加させることで、官能化フラーレンの加熱または点火、および生体粒子の不活性化を行うことができる。
【0042】
特定の一態様では、近赤外線(NIR)を用いて温熱療法を実現する。部位標的化送達を通じてPHF分子をがん細胞に内在化させることができる。次に、内在化したPHFに近赤外線レーザーなどの近赤外線源を照射することができる。近赤外線は組織に浸透するため、技術は非侵襲的であり得る。閾値エネルギーを超える照射は、PHFの加熱をもたらし、がん細胞を死滅させるために十分ながん細胞内部の温度を増加させると考えられる。現在、磁性ナノ粒子および金ナノ粒子が、温熱療法用の最も有望な候補である。通常、両種類のナノ粒子は、生体適合性層でコーティングされ、標的化分子に抱合されている。印加される磁界/電界および近赤外線は、これらのナノ粒子の温度上昇を開始させるために使用される。しかしながら、これらのナノ粒子の行方はほとんど注目されていない。これらのナノ粒子は、長期間の処置後、クリアランスの速度および機構に応じて体内を循環することができる。これに対し、本発明に係るPHF分子を温熱療法の発生に使用される放射線誘導性の点火により分解することで、それらをシステムから容易に排除することができる。体内を循環する任意の過剰量のPHFナノ粒子は無毒であり得る。これは、PHFが抗酸化剤などの治療性を示し、おそらく非標的化細胞および非標的化組織に対するストレスを軽減すると報告されているためである。
【0043】
レーザーは、レーザー角膜内切削形成術(LASIK)、レーザー組織溶着(LTW)、レーザー組織はんだ付け(LTS)、レーザーリサーフェシング、および組織または腫瘍を切断するためのレーザーメスの使用(光線力学的療法)を含む多くの手術用途を有する。レーザーの主要な1つの副作用は、近傍組織の過熱、いくつかの場合では熱損傷である。深部組織の加熱を向上させ、周囲組織に対する熱損傷を減少させるために、LTWおよびLTSでは金ナノシェルが使用されてきた。本発明の一態様では、官能化フラーレンの光加熱または光点火特性を金ナノシェルの代わりに手術に使用して、組織の局所加熱または切断に必要なレーザーの強度を減少させ、それにより周囲組織に対する損傷を限定または予防することができる。官能化フラーレンは、レーザーを援用するこれらの態様に直接使用可能であり、あるいはシリカもしくは二酸化チタンなどの無機マトリックス、またはポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)もしくはキトサンなどの有機マトリックスに封入可能である。
【0044】
本発明の別の態様では、官能化フラーレンを爆発性開始剤として使用できる。例えば、強度閾値を超える放射線でPHFを点火できる。放射性誘導性の点火は、電気効果に対して感受性がなく、化学的に安定であるため、爆発の開始において好ましい。慣行的な爆発性物質は、放射線誘導性の爆発開始のためにGW/cm2オーダーの強度を必要とする。それに比べ、PHFは、同等の爆発をkW/cm2オーダーの強度で開始させ、それにより放射線源のサイズおよびエネルギーの要件を減少させることができる。慣行的な爆発性物質の過半数は、それらの分子構造に窒素を有する。窒素のある種の結合(N-N、NO2)は不安定であり、このことがそれらの構造に不安定性を付与する。この不安定性を爆発作用に利用する。本発明の一態様に係るPHFおよび他の官能化フラーレンは、それらの構造に窒素原子を有しておらず、点火は分子内の熱の局所化によると仮定される。PHF分子に存在する酸素は分解を支援することができる。
【0045】
本発明の別の態様では、官能化フラーレンの光加熱または光点火を使用して推力ベクトルを与えることができる。推力の速度は、照射される官能化フラーレンの量に応じて調節可能である。このようにして、官能化フラーレンの光加熱または光点火特性を、他の推進薬の有無にかかわらず、衛星または他の宇宙機の正確な位置付けおよび回転のための宇宙内のマイクロスラスターおよびナノスラスターに使用することができる。官能化フラーレンは、点火薬および推進薬として単独で、またはポリ塩化ビニル、ポリグリシジルアジド、もしくはポリ硝酸ビニルなどの他の推進薬と組み合わせて使用可能である。
【0046】
本発明の別の態様では、官能化フラーレンが全波長にわたる放射線を吸収し、吸収したエネルギーを熱として放出することができるため、官能化フラーレンの放射線吸収性を太陽加熱用途に使用することができる。官能化フラーレンを、太陽ヒーターの金属、例えば銅の表面上のコーティングとして、効率を増加させるために塗布することができる。
【0047】
実施例
下記の実施例は、例示目的で与えられるものであり、決して本発明の範囲を定義するものではないと理解すべきである。
【0048】
実施例1
ポリ水酸化フラーレン(PHF)およびカルボキシフラーレン(CF)などの官能化フラーレンは、閾値強度を超える広範囲の可視光線および近赤外線の波長の放射線に露光する際に点火することがわかった。点火は空気中での即時の分解をもたらした。PHFの点火プロセスは、3つの異なる波長、すなわち785nm(近赤外線)、540.5nm(緑)、および488nm(青)でのレーザー放射線で観察された。カルボキシフラーレンおよびN-エチル-ポリアミノ-C60を用いる、放射線誘導性の点火の実験を、785nmレーザーを用いて行った。両方の場合で、観察された点火の閾値強度は1kW/cm2未満であった。
【0049】
実施例2
A549(肺中皮腫)細胞を用いて実験を行った。第1の段階で、異なる量のPHFを、フッ化マグネシウム結晶上で培養したA549細胞の多層の上部に設置した。細胞を水性増殖培地RPMI-1640中に浸し、5%ウシ胎児血清および1%抗生物質で補充し、785nm波長で発光するレーザーに露光した。焦点においてスパークの発生と、それに引き続くはじける音が観察された。これは、光音響効果、またはA549細胞のバーストのいずれかに起因するものであった。細胞に対する観察された損傷はPHFの濃度に依存していた。PHFのレーザー点火が作り出す気泡を示し、がん細胞の死滅を明らかに実証する図2に示すように、比較的低濃度のPHFでは、損傷は細胞の上部層に限定されていたのに対し、比較的高濃度のPHFでは、点火により細胞の複数の層が損傷を受けた。
【0050】
実施例3
葉酸結合シリカナノ粒子上をコーティングしたPHFを用いて別のセットの実験を行った。葉酸結合は、生体細胞、特にがん細胞によるナノ粒子の取り込みを支援する。PHFコーティングナノ粒子を、A549細胞と共に増殖培地中で、内在化のために24時間インキュベートした。次に、培地中のA549細胞を、図3で提示する一連の画像に示すように、1秒間および10秒間、785nmレーザーからの放射線に露光した。1秒間の露光後、照射されたA549細胞は顆粒化したようであり、細胞がストレス下にあり、細胞死の過程にあることを示唆している。これは、官能化フラーレンの点火に満たない加熱が、結合された細胞の顆粒化を引き起こすことを示している。10秒間のさらなるレーザー照射が、放射線誘導性の点火、および気泡の創出をもたらした。しかしながら、近傍細胞は影響を受けなかった。これは、放射線の焦点合わせにより温熱療法を制御可能であることを示唆している。
【0051】
実施例4
PHFコーティング紙を用いて予備実験を行った。PHF溶液(水中1000ppm)50マイクロリットルを紙上に加えることでコーティングを作り出し、続いてこれを乾燥させた。次に、コーティング紙を785nmでのレーザー放射線に露光した。紙を手で動かして紙上に「UF」と記入した。照射時に、PHFの点火および紙の燃焼がレーザースポットの区域に限定されたことに留意することが重要である。しかしながら、発生した熱は紙を燃やすのに十分であった。これは240℃を超える温度の証拠となる。記入の浸透の程度は、PHF濃度および照射強度により制御可能である。図4(c)に示すように、比較的高いPHF濃度または比較的高い放射線強度で、「UF」パターンは紙を貫通して焼け、紙の裏側で観察することができた。
【0052】
本発明をその好ましい具体的な態様と組み合わせて説明してきたが、前述の説明、ならびに後続の実施例が、本発明の範囲を例示することを意図しており、それを制限することを意図しているわけではないことを理解すべきである。本発明の範囲内の他の局面、利点、および改変は、本発明が関係する技術分野の当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの標的領域に複数のフラーレン含有分子を配置する工程;および
該フラーレン含有分子にて電磁放射線を熱エネルギーに変換する電磁放射線を該フラーレン含有分子に照射することで、該標的領域を加熱または点火する工程
を含む、局所加熱方法。
【請求項2】
フラーレン含有分子が、フラーレン、内包(endohedral)フラーレン、置換フラーレン、官能化フラーレン、またはその任意の混合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
標的領域が、有機ガス、有機液体、または有機固体;無機ガス、無機液体、または無機固体;ポリマーまたはポリマー複合体;水、水溶液、または水懸濁液;非水溶液または非水懸濁液;金属または金属合金;ガラスまたはセラミック;あるいは生物材料もしくは生物由来材料またはその混合物を含む材料の内側にあるか、またはそれと接触している、請求項1記載の方法。
【請求項4】
電磁放射線が、10-12m〜1012mの範囲の波長を有し、γ線、X線、極紫外線(extreme ultraviolet)、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、電波、またはその任意の組み合わせを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
熱エネルギーがフラーレン含有分子を燃焼状態まで加熱させる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
標的領域がレジストコーティングの内側にあり、フラーレン含有分子が該コーティングの内側に配置されているか、またはそれと接触しており、該フラーレン含有分子に対する照射が該標的領域内の該コーティングの加熱および分解を促進し、該レジストコーティング内にネガ型の特徴が形成される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
エッチングする工程をさらに含む方法であって、標的領域がレジストコーティングの内側にあり、フラーレン含有分子が該コーティングの内側に配置されているか、またはそれと接触しており、該フラーレン含有分子に対する照射が、該標的領域内の該コーティングにおける加熱によって誘導される変化であって、加熱された該標的領域のエッチング時に該コーティングまたは該コーティング内のチャネルの表面からネガ型の特徴をもたらし、該コーティングの非標的領域のエッチング時に該コーティングからポジ型の特徴をもたらす変化を促進する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
標的領域が、少なくとも1つの有機材料、無機材料、金属、金属合金、複合材料、または生体組織から構成される複数の固体断片の接触により規定される界面を含み、フラーレン含有分子が該界面の内側に配置されているか、またはそれと接触しており、該フラーレン含有分子での熱エネルギーが、該固体断片の溶融であって、照射の中断時に冷えて該断片の間に溶着部を形成する溶融を促進する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
標的領域が、有機材料、無機材料、金属、金属合金、または複合材料を含むはんだの表面または部分であり、フラーレン含有分子が該はんだの内側に配置されているか、またはそれと接触しており、該標的領域での熱エネルギーが該はんだを溶融させる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
標的領域が、書き込み可能な記憶媒体内の無機染料、有機染料、または金属合金の層を含み、フラーレン含有分子が該層の内側に配置されているか、またはそれと接触しており、該フラーレン含有分子での熱エネルギーが、該層の少なくとも1つの物理的または化学的変化であって、該標的領域内の該層の光学特性を変化させる変化を促進する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
標的領域が書き込み可能な記憶媒体内のフラーレン含有分子の層を含み、放射線が該標的領域内の該フラーレン含有分子を分解して該標的領域内の該層の光学特性を改変する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
リザーバから標的領域にフラーレン含有分子を送達する工程をさらに含む方法であって、該標的領域が燃料-酸化剤混合物を含む燃焼室と接触しており、照射によって該フラーレン含有分子および該燃料酸化剤混合物を該室内で点火する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
標的領域が燃料-酸化剤混合物を含む燃焼室内にあり、フラーレン含有分子が該室への導入前に該燃料の少なくとも一部に溶解または懸濁しており、放射線が該フラーレン含有分子および該燃料酸化剤混合物を該室内で点火する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
フラーレン含有分子を生体微粒子と接触させる工程をさらに含む方法であって、標的領域が、アプタマー、抗体、官能化蛍光抗体、または染料/量子ドットでドープされた粒子をさらに含む該フラーレン含有分子であり、複数の該フラーレン含有分子が該生体微粒子を抱合し、抱合された該生体微粒子の蛍光を強度の低い放射線による照射によって促進して該標的領域を位置づけ、位置づけた該標的に対する第2の照射を、位置づけた該標的領域内の該フラーレン含有分子の加熱または点火を通じて該生体微粒子を不活性化するために十分な強度で行う、請求項1記載の方法。
【請求項15】
標的領域が患者内にあり、該標的領域ががん細胞を含み、該標的領域での熱エネルギーが該がん細胞に、該がん細胞の増殖を阻害するアポトーシス、壊死、バースト、または他の形質転換を経験させる、請求項1記載の方法。
【請求項16】
フラーレン含有分子が抱合型標的化剤をさらに含み、該標的化剤が該フラーレン含有分子をがん細胞に結合させる、請求項15記載の方法。
【請求項17】
標的領域が爆発性材料を含み、熱エネルギーが該標的領域でのフラーレン含有分子の燃焼、および該爆発性材料の爆轟をもたらす、請求項1記載の方法。
【請求項18】
標的領域が、チューブ内に存在するフラーレン含有分子を含み、該標的領域に対する照射が該フラーレン含有分子を燃焼させることで、該チューブの一端から外に向かうことにより推力を与える燃焼ガスを生成し、それにより該チューブがスラスターとして働く、請求項1記載の方法。
【請求項19】
標的領域が推進薬をさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
標的領域が、フラーレン含有分子で装飾される金属の表面を含み、太陽光による該標的領域に対する照射が該金属の加熱を促進する、請求項1記載の方法。
【請求項21】
標的領域が、有機材料、無機材料、金属、金属合金、もしくは複合材料の上にコーティングされているか、またはその中に分散しているフラーレン含有分子を含み、該標的領域に対する照射が該標的領域の分割を引き起こす、請求項1記載の方法。
【請求項22】
標的領域が患者内にあり、該標的領域がフラーレン含有分子を含む組織を含み、該標的領域での熱エネルギーが該組織を分裂または共に溶着させる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
標的領域に配置される少なくとも1つのフラーレン含有分子、照射源、および該標的領域に対する照射を制御する手段を含む、標的領域を加熱するためのシステム。
【請求項24】
照射源がレーザーである、請求項23記載のシステム。
【請求項25】
照射を制御する手段がスイッチまたはシャッターを含む、請求項23記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−511720(P2010−511720A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540371(P2009−540371)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/084956
【国際公開番号】WO2008/140576
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(304006056)ユニバーシティー オブ フロリダ リサーチ ファウンデイション インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】