説明

官能化ポリ(1,3−アルカジエン)の合成方法および耐衝撃性ビニル芳香族ポリマーの調製におけるその使用

【課題】制御された方法でエラストマーにグラフトされたビニル芳香族(コ)ポリマーの調製方法
【解決手段】無極性溶媒に可溶の、ブロモアルカンとニトロキシラジカルで官能基化されたエラストマーを(少なくとも1つの)ビニル芳香族モノマー/重合溶媒の混合物からなる液相に溶解する工程; 溶液中に官能基化されたエラストマーを含有する混合物に少なくとも1つのラジカル開始剤を供給し、このようにして得られた混合物を120℃以上の温度で重合する工程; 液化させた後に得られるビニル芳香族(コ)ポリマーを回収する工程; および液化から生じる溶媒/(少なくとも1つの)モノマー混合物を工程(a)に再循環する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能基化ポリ(1,3-アルカジエン)の合成方法および耐衝撃性ビニル芳香族ポリマーまたはコポリマーの調製におけるその使用に関する。
より詳細には、本発明は、制御された方法で官能化ポリ(1,3-アルカジエン)(ここで、アルカジエン基は炭素原子4〜8個を含む)にグラフトされたビニル芳香族ポリマーまたはコポリマー(以後(コ)ポリマー)の調製方法に関する。
更により詳細には、本発明は、リビングラジカル重合に適している系の存在下に官能基化ポリブタジエンにグラフトされたスチレン(コ)ポリマーの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本説明および特許請求の範囲に用いられる用語「リビングラジカル重合」は、成長するポリマー鎖のラジカルと可逆的に反応することができる化学種の存在下に行われる従来のラジカル重合を意味する。この化学種は、例えば、安定なニトロキシドまたはアルコキシアミンからなる。リビングラジカル重合に関するより詳細な情報は、米国特許第4,581,429号、欧州特許第869,137号または「Handbook of Radical Polymerization」Wiley Interscience 2002に見ることができる。
本説明において、明確に示されなくても、述べられた条件はすべて好ましい条件を意味しなければならない。
制御された方法でエラストマー(ゴム)にグラフトされたビニル芳香族(コ)ポリマーの調製方法は、文献に既知である。米国特許第6,262,179号には、例えば、ゴムで強化されたビニル芳香族ポリマーの調製方法であって、安定なラジカル発生剤を含む開始剤系によってゴムを含有する溶液中でビニル芳香族モノマーの重合を含むモノモーダル形態またはバイモーダル形態を特徴とする、前記方法が記載されている。重合終了後、ゴム粒子が分散されているポリマー硬質マトリックスからなる生成物が得られるが、その形態は、なお、不安定な重合開始剤を用いる従来のプロセスのように、用いられるゴムのタイプによって決定される。
【0003】
米国特許第6,255,402号には、表面光沢特性が改善された耐衝撃性最終生成物を得るように「サラミ」として知られるものと異なるが「ラビリンス」「オニオン」または好ましくは「コアシェル」タイプの形態を有する、ゴム粒子が分散されているポリマービニル芳香族マトリックスからなる組成物を調製する方法が記載されている。同米国特許は、上述の形態学的形を確認する用語の意味に関する情報を示している。
この方法の特徴は、ゴムとして、従来は実質的に「サラミ」タイプの形態を示す1,3-ブタジエン(以後ブタジエン)のホモポリマーを用いて異なる形態を得ることに成功することである。
問題の米国特許に説明された方法は、モノマーを全く存在させずにポリブタジエンゴムを溶媒に溶解する工程および溶解したゴムを従来のラジカル開始剤、例えば、ペルオキシドおよび安定なラジカル開始剤、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ(TEMPOとして知られる)からなる開始剤系によって、例えば、50〜150℃の温度で数時間撹拌しながら操作することによって官能基化する工程を含む。
終わりに、ビニル芳香族モノマーが添加され、次に、望ましい変換まで重合される。この特許の欠点は、溶媒のみの存在下にエラストマーの官能基化を行うことである。
【0004】
特許出願WO 00/14134およびWO 00/14135には、ニトロキシラジカルまたはニトロキシエステルで官能基化されたポリブタジエンを用いたゴムで強化されたビニル芳香族ポリマーの反応押出による合成が記載されている。次に、得られたエラストマーがスチレンと溶媒に溶解され、次に重合される。重合終了後、ゴム粒子が分散している硬質ポリマーマトリックスからなる生成物が得られ、その形態は、用いられるゴムのタイプから独立しているが、反応押出相に用いられるニトロキシラジカルまたはニトロキシエステルの量にのみ関連する。
これらの特許出願の欠点は、ゴムで強化されたスチレン材料の製造工程において一体的操作を加えることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出願人は、ここで、ブロモアルカンとニトロキシラジカル、例えば、無極性溶媒に可溶である1,1,3,3-テトラエチルイソインドリン-2-イルオキシル(TEDIO)の使用によるエラストマーの合成相の間に直接得られるニトロキシラジカルで官能基化されたエラストマーを用いた、制御された方法でエラストマーにグラフトされたビニル芳香族(コ)ポリマーの調製方法を見いだした。
本発明は、また、少なくとも1つの1,3-アルカジエン、例えばブタジエンを脂肪族または脂環式溶媒またはその混合物の溶液中で、リチウムアルキル開始剤によって重合することによって得られるポリ(1,3-アルカジエン)、好ましくはポリブタジエンの調製に関する。
一般に、このタイプの重合は、バッチリアクタまたは連続リアクタ内で行われ得る。バッチリアクタにおいて、通常第一または第二リチウムブチルからなる開始剤は、重合終了後の固体生成物の合計量が20質量%を超えないような量で充填される溶媒とモノマーからなる反応混合物に添加される。当業者は、この反応がルイス塩基の存在下にポリマー鎖中に存在するべきであるビニルまたは1,2単位の含量に依存する量で行われ得ることを知っている。ルイス塩基の中で、エーテルが最も広く用いられ、特にテトラヒドロフランは、すでに溶媒に対して100ppmの量で、反応をかなり加速することができ、ビニル単位含量が12%(モル)より低いレベルに維持される。より多量のTHFの場合、例えば、5,000ppmに等しい量のTHFの場合、ミクロ構造が40%より大きいビニル単位の含量まで次第に変性される。多量のビニル単位は必要でなく、使用に、例えば、プラスチック材料の変性の領域におけるポリブタジエンの使用に有害でさえあり得る。より高いグラフト効率の場合、1,2単位の含量がより高いポリブタジエンを用いることが可能であるとしても、これらの単位の含量が15%の値を超えないことが好ましい。
【0006】
当業者は、また、エーテルまたは第三級アミンを存在させずに行われる反応が最後の温度が120℃を超えない1時間より長くない時間でモノマーの完全な重合を保証するのに充分に急速であり、いずれにせよ、最初の反応が充分に急速でなく、且つ通常の製造サイクルと適合できるので、35-40℃より低くすることができない反応混合物の初期温度によって調節されることを知っている。
上記のために、リアクタに、容積が20m3より決して小さくない工業用リアクタに典型的な、特に好適でない表面/容積比のために効率的でない、冷却ジャケットを備えることができる。凝結され、その後反応リアクタに供給される溶媒の部分的な蒸発によって、より効果的な温度制御が得られる。「ボイリングリアクタ」と呼ばれるこの種のリアクタは、反応温度を制御するのに非常に効率的であり、当該技術の状態では、ブタジエンのようなモノマーの重合熱のために温度の自然の上昇を効果的に制限するのに最良の方法を表すものである。
バッチタイプのリアクタにおいて重合を行うことにより、カップリング剤の添加が可能な前に、モノモーダル分子量分布を有するポリマーが形成され、ここで、質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の間の比は、1に非常に近く、一般に1〜1.2である。
これに対して、重合がCSTRタイプの連続リアクタ内でまたは連続して配置されたCSTRタイプのいくつかの連続リアクタ内で行われる場合には、モノモーダル分子量分布を有するポリマーが得られ、ここで、Mw/Mn比は1.8〜2.5の範囲にある。
【0007】
いずれの場合も、重合終了後のポリマーは線状であり、なお活性な鎖末端を有し、前記末端は化学種リチウムポリアルカジエニル(ブタジエンモノマーの場合、ポリブタジエニル)からなる。プロトン性剤(例えば、アルコール)またはハロゲンとシリコンの間の比が1に等しいシリコンのハロ誘導体(限定されない例は、トリメチルクロロシラン、TMCSである)を添加するとリチウム-ブタジエニル末端が終結することになり、同時に分子の線状マクロ構造が保存される。
これに対して、活性末端と反応することができる多官能性物質を添加すると、用いられる多官能性物質の官能性に等しい多くの枝分れが出ているノードを有することを特徴とする枝分れマクロ構造が形成する。限定されない例として、当業者は、四塩化ケイ素を反応環境にSi:Li比= 1:4で添加すると、ラジアルポリマーが形成され、バッチリアクタ内で調製されるポリマーの場合、同じ長さをもつ4つの枝分れを有するが、連続して調製されるポリマーの場合、4つの枝分れは異なっていることを知っている。
【0008】
ハロアルカン、好ましくはブロモアルカン、更により好ましくは第一ブロモアルカンの、前記ブロモアルカンと反応の最後に添加されるブチルリチウムとの反応によってその場で一次ラジカルを生成するための使用もまた、例えば、米国特許第6,858,683号から知られている。形成されると、アルキルタイプの一次ラジカルは、ポリマー鎖に存在するプロトン(トランスファ)と、アリル位置で、例えば、ポリブタジエンと反応し、アリルタイプの二次ポリマーマクロラジカルが形成する。枝分れ構造は、前記反応が行われたエラストマー(ポリマー)のレオロジーを変性することができるポリマーマクロラジカルの続いてのカップリングによって得られる。反応機構は、Viola G.T.によってCoupling reaction of polyisoprenillithium with 1,2 dibromoethane,Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry, Vol. 35, 17-25 (1997)の論文に記載されており、この結論がスチレンブタジエン統計的コポリマーに適用され得る。
米国特許第6,858,683号には、線状重合体に関して弾性係数が増加し、その特性がカーボンブラックをからなる充填剤の分散によって改善されるスチレンブタジエンコポリマーの調製が記載されている。前記方法は、なお活性であるポリマー(リチウムブタジエニル末端によって)と、単官能性物質と多官能性物質、この場合にはより多くの相互接続した構造の生成による双方によって終結したポリマーに適用され得る。
【0009】
ここで、驚くべきことに、特許請求の範囲により良く示されるように、これらの相互カップリングの前に、前記二次アリルマクロラジカルが「ラジカルスカベンジャ」または「スピントラッパ」の群に属している物質と反応することができることを見いだした。これらの物質が二次アリルラジカルと反応する速度は、実際には、例示した実施例で証明されるように(実施例2および4)、完了の前に通常数分を必要とする同じアリルラジカルのカップリングより数倍速い。それ故、アリルマクロラジカルの生成の直後に化学量論量の「ラジカルスカベンジャ」を添加すると、アリルマクロラジカルがカップリングされ枝分れを生じることが防止され、マクロラジカルの形成の前のものと実際に一致するポリマーの構造が維持される結果になる。例外的な重合阻害剤として使用を可能にするような速度でまたは一般に、ラジカルによって成長が生じる反応の速度で、存在するアリルラジカルと反応することができる種々の物質が当該技術において知られている: 奇数の電子の存在は、これらの物質が存在する他の可能なラジカルと反応することができる分離した電子を有する特性をもつので、「リビングラジカル」として定義されるグループの生成物の特徴を有する。窒素原子が2つのメチレン基に単純な結合によって結合している、N-O基が存在する物質(N-オキシドまたはニトロキシラジカルとして知られる)の場合、窒素原子に由来する前記分離した電子が炭素ラジカルの分離した電子と反応することができ、温度に関して、ホモリシスによって2つの最初のラジカルを改良するO-C結合が形成されることが知られている。ポリマー溶液を不活性化ラジカルで処理し、リチウムブチルで、その後ブロモアルカンで処理しないと、アリルマクロラジカルが形成され、N-オキシド基を含有する物質を添加した後、これはなお出発ポリマーと同じ構造を有するが、N-O-C基がポリマー鎖に存在するので官能基化されており、窒素原子は飽和環状構造の一部であり、炭素原子はアリル位置でポリジエン構造の一部である。
【0010】
例えば、この場合には官能基化されたポリブタジエンの、通常の製造工程は、フェノールタイプの一次酸化防止剤および二次酸化防止剤、典型的には三価のリンの有機化合物からなる一組の抗酸化剤を添加した後、撹拌容器内で水と蒸気の合わせた作用によって行われる溶媒の除去を含む。水中のエラストマー顆粒の懸濁液が生成され、ネット上に流出させた後に、エラストマーが2つの機械的押出機からなる乾燥反応に送られる。第1の押出機(エクスペラ)において、押出機のサイドスリットによる水の大多数を除去するために圧搾操作が行われるが、完全乾燥は機械的作用に供したエラストマーが160-180℃の温度に加熱する第2の押出機(エクスパンダ)において行われる。蒸気のアリコートは押出機の終わりに位置する開口部(ベント)によって除去されるが、一部は頭部の出力で除去される。次に、エラストマー顆粒がコンベヤベルトまたは他の運搬法によってパッカに送られ、ここでベールに包装される。
【0011】
調製終了後、官能基化エラストマー、好ましくは官能基化ポリブタジエンは、耐衝撃性熱可塑性ポリマー、耐衝撃性ビニル芳香族ポリマー、例えば、HIPSとしても知られる調製に使用し得る。これらのポリマーにおいて、ポリブタジエンは、「コア & シェル」形態を有する、粒子の分散相の形であり、前記粒子は0.1〜1μmの平均直径を有する。これは、このタイプの適用において、非官能基化ポリブタジエンのようなエラストマーが常に平均直径2〜5μmの「サラミ」形態を有する粒子を生じることが当業者の中で周知であるので非常に驚くべき結果である。この形態が耐衝撃性に関して良好な性能を可能にするが、最終ポリマーは非常に不充分な光学特性を有する。
ポリブタジエン(エラストマーまたは不飽和ゴム)の性質は、当業者が、仕上げ部分において、特にエクスパンダ内で通常形成される不溶性物質(ゲル)の塊の形成に由来する欠点に気づいているように仕上げ条件の厳しい制御を必要とする。これらのゲルは、大きな表面欠陥の形成によるプラスチック変性に用いることになっているゴムの品質の低下を引き起こす。それ故、プロセスと生成物制御に対して多数の分析を行う必要が結果として生じるポリブタジエンの仕上げ条件を定めるためにかなりの注意が払われなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
それ故、本発明の目的は、制御された方法で不飽和エラストマーにグラフトされたビニル芳香族(コ)ポリマーの調製方法であって:
a. 無極性溶媒に可溶な、ブロモアルカンとニトロキシラジカルによって官能基化されたエラストマーを、60/40〜100/0、好ましくは60/40〜90/10の質量比の(少なくとも1つの)ビニル芳香族モノマー/重合溶媒の混合物からなる液相に溶解する工程;
b.官能基化エラストマーを溶液として含有する混合物に少なくとも1つのラジカル開始剤を供給し、このようにして得られた混合物を120℃以上、好ましくは120〜200℃の温度で重合する工程;
c.重合終了後に得られたビニル芳香族(コ)ポリマーを回収し、溶媒と未反応モノマーを回収するためにこれを減圧下で液化に供する工程; および
d.液化から生じる溶媒/モノマー混合物を工程(a)に再循環させる工程
を含む、前記方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明によれば、ビニル芳香族(コ)ポリマーの調製方法は、不連続(バッチ)または連続で行われ得る。第1の場合において、官能基化エラストマーを従来の添加剤と共に(少なくとも1つの)ビニル芳香族モノマー/重合溶媒の混合物からなる液相に溶解し、続いてモノマーを重合することは、加熱系を備えた、単一容器、例えば、撹拌ミキサ内で行われ、固形分が60〜80質量%のレベルに達したときに液化に供される最終(コ)ポリマーの回収のために重合混合物が集められる。これに対して、第2の場合において、エラストマーを従来の添加剤と共に液相((少なくとも1つの)ビニル芳香族モノマー + 重合溶媒)に溶解することは、撹拌容器、例えばCSTR(連続タンクリアクタ)、および/またはチューブラ(プラグフロー)リアクタより選ばれる連続する1つ以上の撹拌反応器に供給する撹拌ミキサー内で行われる。この第2の場合においても、最終の(コ)ポリマーの回収は、固形分が上述のレベルに達した後に液化工程によって行われる。例えば、欧州特許EP 400,479に記載される連続プロセスは、本発明の好ましいプロセスである。
本説明および特許請求の範囲に用いられる用語「ビニル芳香族(コ)ポリマー」は、
実質的に、下記一般式(I)によって表される少なくとも1つのモノマーの(共)重合から得られる(コ)ポリマーを意味する
【0014】
【化1】

(式中、Rは、水素またはメチル基であり、nは、ゼロまたは1〜5の整数であり、Yは、ハロゲン、例えば、塩素または臭素、または炭素原子1〜4個を有するアルキルまたはアルコキシル基である)。
【0015】
上記一般式を有するビニル芳香族モノマーの例は、スチレン、α-メチルスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ブチルスチレン、ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン等である。好ましいビニル芳香族モノマーは、スチレンおよび/またはα-メチルスチレンである。
一般式(I)を有するビニル芳香族モノマーは、単独でまたは他の共重合性単量体と最大50質量%の混合物で使用し得る。これらのモノマーの例は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のC1-C4アルキルエステル、例えば、メタクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、(メタ)アクリル酸のアミドまたはニトリル、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、エチレン、ジビニルベンゼン、無水マレイン酸等である。アクリロニトリルおよびメチルメタクリレートは、好ましい共重合性単量体である。
ビニル芳香族(コ)ポリマーにおける強化生成物として用いるのに適しているエラストマーは、官能基化することができ、本発明の方法の目的に用いることができる。しかしながら、経済的な便宜による好ましい生成物は、数平均分子量(Mn)が50,000〜350,000および質量平均分子量(Mw)が100,000〜500,000のポリブタジエンホモポリマーである。
【0016】
ポリブタジエンの代わりにまたはそれとの混合物で使用し得る他のエラストマーは、分子量MwまたはMnがポリブタジエンホモポリマーに等しい、40-100質量%の1,3-アルカジエンモノマー、ブタジエン、例えば、イソプレンまたはペンタジエン、および0-60質量%のスチレン、アクリロニトリル、α-メチルスチレン、メチルメタクリレートおよびエチルアクリレートより選ばれる1つ以上のモノエチレン系不飽和モノマーを含有する1,3-アルカジエンのホモポリマーおよびコポリマーより選ぶことができる。1,3-アルカジエンのコポリマーの限定されない例は、スチレンブタジエンブロックコポリマー、例えば、S-Bタイプの2元ブロック線状エラストマーであり、ここで、Sは平均分子量Mwが5,000〜80,000のポリスチレンブロックを表し、Bは平均分子量Mwが2,000〜250,000のポリブタジエンブロックを表す。これらのエラストマーにおいて、ブロックSの量は、合計S-Bエラストマーに対して10〜50質量%の範囲にある。好ましい生成物は、40質量%のスチレン含量および23℃で5質量%のスチレンの溶液において測定された35〜50cPsの溶液における粘度を有するスチレン-ブタジエンブロックコポリマーである。本発明の方法の目的において使用し得るエラストマーの他の例は、欧州特許第606,931号に述べられるものである。
上記官能基化エラストマーが(少なくとも1つの)モノマーおよび重合溶媒を含む液相に溶解される。本発明の好ましい溶媒はエチルベンゼンであるが、他の芳香族溶媒、例えば、トルエンまたはキシレン、または脂肪族溶媒、例えば、ヘキサンまたはシクロヘキサンも使用し得る。
【0017】
このようにして調製された溶液に、少なくとも重合触媒系が、1つ以上のフリーラジカル開始剤からなる合計対して0〜0.5質量%、好ましくは0.02〜0.5%の量で添加することができる。フリーラジカル開始剤は、特に、50℃より高い活性化温度を有するものより選ばれる。重合開始剤の典型例は、アゾ誘導体、例えば、4,4'-ビス-(ジイソブチロニトリル)、4,4'-ビス(4-シアノペンタン酸)、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、またはペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルカーボネート、またはペルエステルである。一般に、好ましいフリーラジカル開始剤は、t-ブチルイソプロピルモノペルオキシカルボネート、t-ブチル2-エチルヘキシルモノペルオキシカルボネート、ジクミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、(ジ-ter-ブチルペルオキシシクロヘキサン)、t-ブチルペルオキシアセテート、クミルt-ブチルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエートおよびt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエートより選ばれるペルオキシドである。
【0018】
重合混合物に添加することができる他の添加剤は、透明な耐衝撃性ビニル芳香族コポリマーの調製において従来から知られ用いられているものである。例えば、重合混合物は、分子量調節剤、例えば、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等より選ばれるメルカプタンを含むことができる。他の添加剤は、例えば、抗酸化剤、紫外線安定剤、帯電防止剤等より選ばれる。
-NO・基が特徴の安定なニトロキシラジカルは、無極性溶媒に可溶であり下記一般式(II)を有するものより選ばれる
【0019】
【化2】

(II)
(式中、基R1、R2、R5およびR6は、同じかまたは異なり、炭素原子1〜20個を有する置換されているかまたは置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基またはアルキル芳香族基(ここで、アルキル基は炭素原子1〜4個を有する)であり、基R3およびR4は、同じかまたは異なり、R1、R2、R5およびR6に等しくあるいはR3-CNC-R4は、芳香環または炭素原子3〜20個を有する飽和環で縮合されていてもよい、例えば、炭素原子4または5個を有する環構造に属する)。
【0020】
本発明の方法の目的に特に好ましく使用し得る一般式(II)を有する開始剤の例は、例えば、TEDIO(その合成は、特許出願WO 2004/078720に記載されている)および40H-TEMPO(4-ヘキサデカノイケート-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)のパルミチン酸エステルである。
エラストマーの官能基化終了後、その仕上げ工程が行われ、その後エラストマーにグラフトされたビニル芳香族(コ)ポリマーの重合プロセスが既知の技術の通常のプロセスのように、エラストマーを(少なくとも1つの)モノマーと溶媒に溶解し、1つ以上の工程で温度を増加させることにより重合反応を開始することによって進行する。重合終了後、ポリマーは、相互に分離されなければならないことなくミキサーに再循環されるような割合である(少なくとも1つの)未反応モノマーおよび溶媒の回収のために液化に供される。終わりには、官能化エラストマーの合計に対して1〜25質量%の、例えば、好ましくは官能化ポリブタジエンが、非連続相として、平均直径が0.1〜1μmの「コアシェル」形態を有する粒子の形で分散されている剛性ビニル芳香族マトリックスからなる連続相を含む耐衝撃性ビニル芳香族(コ)ポリマーが回収される。
本発明をより良く理解するために、また、その実施態様のためにいくつかの例示的な限定されない実施例を示す。
【0021】
合成ポリマーの評価
1. 結合したスチレンとポリブタジエンのミクロ構造の定量
方法は、ブタジエンの3つの異性体(トランス、ビニルおよびシス)によるバンドの強度の測定に基づく。ブタジエンの異性体シス、トランスおよび1,2の分析定量に用いられるスペクトル領域は、トランス異性体に対して1018cm-1および937cm-1、1,2 異性体に対して934cm-1および887cm-1およびシス異性体に対して800cm-1および640cm-1である。1H-NMRによって確認される標準ポリマーで測定される、ピークにおける吸光度の測定および減衰係数値の知識により、種々のブタジエン構造の量およびスチレンの量をランバート‐ベールの法則によって算出することができる。
【0022】
2. 分子量(MWD)の分布の定量
分子量分布の定量は、排除クロマトグラフィとしても知られるゲル溶出クロマトグラフィ(GPC)によって実施され、分析のポリマー対象物のTHF中の溶液を孔が異なる寸法の架橋ポリスチレンからなる固相を含有する一連のカラムを通過することによって行われる。
機器の配置:
クロマトグラフ: HP 1090;
溶媒: THF;
温度: 25℃;
カラム: PL-ゲル105-105-104-103;
IR検出器: HP 1047 A.
分子量の定量は、以下のkとaの値を用いて普遍検量法に従って行われる:
k = 0.000457 a = 0.693.
【0023】
3. 平均分子量の定量およびSEC/MALLS技術による分岐度の測定.
アプリケーションノート、n° 9, Wyatt Technology e Pavel Kratochvil, Classical Light Scattering from Polymer Solutions, Polymer Science Library, 5, Elsevier Science Publishers B.V.1987に記載される研究から用いられる内部仕様による。通常の溶出システムSEC/RIを有するマルチ角度光散乱検出器(MALLS)を結合することによって、分子量およびクロマトグラフィーシステムによって分離される高分子の旋回半径の絶対測定を同時に行うことが可能である。溶液における高分子の種類によって拡散される光の量は、分子量を得るために、直接用いられることができるが、散乱の角変動は、溶液における分子の平均寸法と直接相関している。通常用いられる基本的な関係は、以下の通りである:
【0024】
【数1】

(式中、
・K* = 光学定数、用いられる光の波長、ポリマーのdn/dc、用いられる溶媒に左右される;
・Mw = 質量平均分子量;
・c = ポリマー溶液の濃度;
・Rθ= 光散乱強度、角度θで測定される;
・Pθ= 散乱した光の角度変動を記載する関数;
・A2 = 溶媒の第2ビリアル係数、角度θがゼロの場合には1である)。
(SECシステムに典型的な)非常に低い濃度については、(1)は、
【0025】
【数2】

になり、いくつかの角度に対して測定を行うことによって、sen 2θ/2に対する関数K*c/Rθを角度ゼロに外挿すると、勾配から切片値および旋回半径から分子量が直接得られる。
更にまた、この測定がクロマトグラムの切片毎に行われるので、分子量および旋回半径の分布を得ることが可能である。
【0026】
溶液中の高分子の寸法は、分岐度と直接相関している: 同じ分子量については、線状対応物に対して高分子の寸法が小さいほど、分岐度は大きくなる。内部(放射構造および分岐構造)にノードを有する高分子が、同じ分子量の場合、線状分子に対してより小さな流体力学的容積を有するので、上記直線の傾き(係数α)は、構造のより小さなまたはより大きな相互接続度によってより大きくまたはより小さくなる。特に、線状高分子については、旋回半径と分子量の間の比例係数は、0.58に等しく、分岐分子については、この値は次第に小さくなり、高分子に存在するノードの数が増加する。例えば、エマルジョンにおける統計的コポリマー、ラジカル重合によって調製されるスチレン-ブタジエン(E-SBR)は、0.35-0.38に等しいα値を有する。
機器の配置:
IR分光計: MALLS Wyatt Technology model DAWN-DSPのHP 1047 A
示差屈折計: KMX16-CROMATIX。
【0027】
4. ムーニー粘度の定量
ムーニー粘度の定量は、100℃でローターLと時間(1+4)により行われる(ASTM D1646)。
5. スチレン溶液中の粘度の定量
方法は、スチレン中のポリブタジエンの溶液を5質量%で調製し、続いて毛細管による溶出時間が100-200秒の範囲内にあることを避ける寸法が選ばれなければならないキャノンフェンスケ毛細管チューブを用いて25℃における粘度を測定することを含む。調べられるポリマーの場合、粘度50-250cPに適切なModel 300が用いられる。
6. ポリスチレンマトリックスの平均分子量の定量.
ポリスチレンマトリックスの平均分子量の定量は、デガッサシステム、ポンプ、インジェクタ: WATERS Alliance 2695(5マイクロメートルのPhenogelカラム(300×7.6 mm)セット)、細孔106、105、104、103オングストローム、Waters 410示差屈折率検出器、UV Waters 2487検出器、クロマトグラフィー分析ソフトウェア: Millenium 32バージョン3.2(Waters)からなるクロマトグラフィーの装置で行った。
【0028】
7. HIPSに分散したエラストマー相の形態の定量
ポリスチレンマトリックスに分散したエラストマー相の寸法および形態は、F. Lenz, A. Wiss-Mikroscopie 63, 1956, page 56に従って、T.E.M.(透過電子顕微鏡解析)によって求めた。エラストマー粒子の形態は、顕微鏡検査の視覚による検査によって求め、種々の構造の評価は、「Teilchenbildung bei der Herstellung von Kautschukmodifiziertem Polystyrol」of Adolf Echte 58/89 (1977), page 175-198, and in EP 716.664に記載される分類に従って行った。統計パラメータ粒子DVの平均容積径の計算については、以下の式:
【0029】
【数3】

(式中、Diは、i番目の粒子の直径を示す)
にあてはめ、「コアシェル」タイプの粒子または「混合」構造(ラビリンスまたはブレーン)をもつ粒子の割合の計算については、C. Maestrini et al. Journal of Material Science, Vol. 27に記載された立体解析学的方法を用いた。T.E.M.分析は、透過型電子顕微鏡Philips CM120で行った。
【0030】
8. 他の評価
* 残留スチレンモノマーおよび他の揮発性有機物質の濃度は、ガスクロマトグラフィーによって求めた;
* 鉱油含量は、FTIR分析計によって求めた。求めた実験値は、油の特定の量が液化工程の間にストリッピングされるので計算値より常にわずかに小さい;
* HIPSにおけるポリブタジエンの濃度は、Wijs, Berichte, 1898, Vol. 31, page 750の方法に従いヨウ素還元滴定によって求めた;
* ゲル相含量(エラストマーの熱架橋後)および浸潤指数(エラストマーの熱架橋なし)は、米国特許第4,214,056号に記載されるRuffing試験によって求めた;
* メルトフローインデックス(MFI)は、5kgの質量下、200℃において標準法ASTM D 1238に従って測定した;
* ノッチ付アイゾッド値(射出成形試験試料について)は、標準法ISO 180/1A - ISO 179に従って求めた(値はkJ/m2として表される)。材料の抵抗性に関する他のパラメーターは、ボール落下によって表され、試験片(2mmと3mm)の2つの異なる厚さについて標準法ISO 6603/2に従って求めた。
* 引張強さ特性(降伏点、降伏伸び、極限応力、極限伸び、引張係数)および曲げ強さ特性(極限応力、弾性係数)は、射出成形試験片について標準法ASTM D 638、ISO 527、ISO 178に従って測定し、パーセントとして表される降伏伸びと極限伸びを除いて、MPaとして表した。
* 材料光沢は、Dr. Lange光沢計を用いることにより2つの読出角度(20℃と60℃)において標準法ASTM D523に従って求めた。95mm×75mm×3mmに等しい読出領域が測定される射出成形によって得られた3工程による試験片について測定を行った。試験試料の成形条件は、以下であった: 溶融温度220℃および成形温度29℃。
【実施例】
【0031】
実施例1(比較)
ジアテルミー油が50℃の温度で循環されるスターラと加熱ジャケットを備えた容積が100リットルの無水に保持されたリアクタへ、窒素フローにおいて、以下の生成物を順番に導入する: 50kgの無水シクロヘキサン、阻害剤とアセチレン系炭化水素を含まない6.5kgの無水ブタジエンおよび5gのTHF。この反応混合物が40℃の温度に達したときに、2.6gのリチウムブチルをシクロヘキサン中の15質量%溶液で添加する。変換が完了したときに、鎖末端を完全に終結するために、105℃の温度で2.77gに等しいトリメチルクロロシランのアリコートをリアクタに供給する。
次に、試薬混合物を加圧容器に注ぎ、ここで、Irganox(登録商標) 565およびIrgafos(登録商標)168からなる抗酸化剤の混合物をエラストマー中の含量がそれぞれ0.1%および0.4%に等しいような量で添加する。
次に、ポリマーを蒸気流におけるストリッピングによって溶媒から分離し、引き続きカレンダで機械的に乾燥する。ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって行われる分子量分布の定量は、数平均分子量値Mnが256,000に等しく、分散指数値(Mw/Mn)が1.02に等しい。GPC-MALLS分析は、線状ポリマーに典型的な0.58に等しいアルファ値を示した。1,2単位の含量についてのIR分析は、11.5%の割合を示した。
【0032】
ムーニー粘度(4+1 @100℃)は、42cPに等しく、スチレンの粘度は97cPに等しかった。
このようにして得られた1.8kgのポリブタジエンを、25.8kgのスチレンモノマー、1.8kgのエチルベンゼン、0.8kgのPrimoil 382油および14gのTx22E50(1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン)で60℃において6時間溶解する。このようにして得られた溶液を、スターラと温度調節システムを備えた第1のPFRリアクタに移し、リアクタの熱プロファイルを125℃から135℃に上げ、ここで、予備重合がグラフト化と相反転によって行われる。
15gのNDM(n-ドデシルメルカプタン)を第1のリアクタに残っている混合物に添加し、次に、スターラと温度調節システムを備えた第2のPFRリアクタに供給し、リアクタの熱プロファイルを135℃から160℃に上げる。
未反応スチレンと溶媒をポリマーから取り除くために、得られた混合物を235℃の温度で減圧下に操作するデボラタイザーに供給し、このようにして特性が表1および表2に示される最終生成物が得られる。
【0033】
実施例2
ジアテルミー油が50℃の温度で循環されるスターラと加熱ジャケットを備えた容積が100リットルの無水に保持されたリアクタへ、窒素フローにおいて、以下の生成物を順番に導入する: 50kgの無水シクロヘキサン、阻害剤とアセチレン系炭化水素を含まない6.5kgの無水ブタジエンおよび5gのTHF。この反応混合物が40℃の温度に達したときに、2.6gのリチウムブチルをシクロヘキサン中の15質量%溶液で添加する。変換が完了したときに、105℃の温度で、0.83gに等しいリチウムブチルのアリコートを5%のシクロヘキサン溶液でリアクタに供給し、5分後、6.6gに等しいリチウムブチルの第2アリコートを5%のシクロヘキサンの溶液で供給する。リチウムブチルの2回目の添加の直後に、20%シクロヘキサン溶液中の20gの臭化オクチルを添加し、直後に25.6gの1,1,3,3-テトラエチルイソインドリン-2-イルオキシル(TEDIO)を添加する。
次に、試薬混合物を加圧容器に注ぎ、ここで、Irganox(登録商標) 565およびIrgafos(登録商標)168からなる抗酸化剤の混合物をエラストマー中の含量がそれぞれ0.1%および0.4%に等しいような量で添加する。
次に、ポリマーを蒸気流におけるストリッピングによって溶媒から分離し、引き続きカレンダで機械的に乾燥する。ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって行われる分子量分布の定量は、数平均分子量値Mnが250,000に等しく、分散指数値(Mw/Mn)が1.03に等しい。GPC-MALLS分析は、線状ポリマーに典型的な0.58に等しいアルファ値を示した。1,2単位の含量についてのIR分析は、11.2%の割合を示した。ムーニー粘度(4+1 @100℃)は、40cPに等しく、スチレンの粘度は103cPに等しかった。
【0034】
このようにして得られた1.8kgのポリブタジエンを、25.8kgのスチレンモノマー、1.8kgのエチルベンゼン、0.8kgのPrimoil 382油および14gのTx22E50で60℃において6時間溶解する。このようにして得られた溶液を、スターラと温度調節システムを備えた第1のPFRリアクタに移し、リアクタの熱プロファイルを125℃から135℃に上げ、ここで、予備重合がグラフト化と相反転によって行われる。
15gのNDMを第1のリアクタに残っている混合物に添加し、次に、スターラと温度調節システムを備えた第2のPFRリアクタに供給し、リアクタの熱プロファイルを135℃から160℃に上げる。
未反応スチレンと溶媒をポリマーから取り除くために、得られた最終混合物を235℃の温度で減圧下に操作するデボラタイザーに供給し、このようにして特性が表1および表2に示される最終生成物が得られる。
【0035】
実施例3(比較)
ジアテルミー油が50℃の温度で循環されるスターラと加熱ジャケットを備えた容積が100リットルの無水に保持されたリアクタへ、窒素フローにおいて、以下の生成物を順番に導入する: 50kgの無水シクロヘキサン、阻害剤とアセチレン系炭化水素を含まない6.5kgの無水ブタジエンおよび5gのTHF。この反応混合物が40℃の温度に達したときに、1.5gのリチウムブチルをシクロヘキサン中の15質量%溶液で添加する。変換が完了したときに、鎖末端を完全に終結するために、102℃の温度で2gに等しいトリメチルクロロシランのアリコートをリアクタに供給する。
次に、試薬混合物を加圧容器に注ぎ、ここで、Irganox(登録商標) 565およびIrgafos(登録商標)168からなる抗酸化剤の混合物をエラストマー中の含量がそれぞれ0.1%および0.4%に等しいような量で添加する。
次に、ポリマーを蒸気流におけるストリッピングによって溶媒から分離し、引き続きカレンダで機械的に乾燥する。ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって行われる分子量分布の定量は、数平均分子量値Mnが360,000に等しく、分散指数値(Mw/Mn)が1.02に等しい。GPC-MALLS分析は、線状ポリマーに典型的な0.59に等しいアルファ値を示した。1,2単位の含量についてのIR分析は、11.7%の割合を示した。
【0036】
ムーニー粘度(4+1 @100℃)は、60cPに等しく、スチレンの粘度は204cPに等しかった。
このようにして得られた1.8kgのポリブタジエンを、25.8kgのスチレンモノマー、1.8kgのエチルベンゼン、0.8kgのPrimoil 382油および14gのTx22E50で60℃において6時間溶解する。このようにして得られた溶液を、スターラと温度調節システムを備えた第1のPFRリアクタに移し、リアクタの熱プロファイルを125℃から135℃に上げ、ここで、予備重合がグラフト化と相反転によって行われる。
15gのNDMを第1のリアクタに残っている混合物に添加し、次に、スターラと温度調節システムを備えた第2のPFRリアクタに供給し、リアクタの熱プロファイルを135℃から160℃に上げる。
未反応スチレンと溶媒をポリマーから取り除くために、得られた最終混合物を235℃の温度で減圧下に操作するデボラタイザーに供給し、このようにして特性が表1および表2に示される最終生成物が得られる。
【0037】
実施例4
実施例1および2に記載されるものと完全に同じリアクタ配置において、1.57gのリチウムブチルを、50kgのシクロヘキサンおよび6.5kgのブタジエンおよび5gのTHFからなる反応混合物に40℃の温度で添加する。
変換が完了したときに、101℃の温度で、0.80gのリチウムブチルを5%のシクロヘキサン溶液で添加し、5分後に、9.5gに等しいリチウムブチルの第2のアリコートを5%のシクロヘキサン溶液で添加する。リチウムブチルの2回目の添加の直後に、28.5gのオクチルブロマイドを20%のシクロヘキサンの溶液で添加し、直後に36.4gのTEDIOを添加する。
溶媒をIrganox(登録商標) 565およびIrgafos(登録商標)168からなる抗酸化剤の混合物をエラストマー中の含量がそれぞれ0.1%および0.4%に等しいような量で含有する試薬混合物から蒸気流におけるストリッピングによって除去し、引き続きカレンダで機械的に乾燥する。ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって行われる分子量分布の定量は、355,000に等しい数平均分子量値Mnと1.02に等しい分散指数値(Mw/Mn)を示した。GPC-MALLS分析は、線状ポリマーに典型的な0.58に等しいアルファ値を示した。1,2単位の含量についてのIR分析は、11.5%の割合を示した。
【0038】
ムーニー粘度(4+1 @100℃)は、58cPに等しく、スチレンの粘度は198cPに等しかった。
このようにして得られた1.8kgのポリブタジエンを、25.8kgのスチレンモノマー、1.8kgのエチルベンゼン、0.8kgのPrimoil 382油および14gのTx22E50で60℃において6時間溶解する。このようにして得られた溶液を、スターラと温度調節システムを備えた第1のPFRリアクタに移し、リアクタの熱プロファイルを125℃から135℃に上げ、ここで、予備重合がグラフト化と相反転によって行われる。
15gのNDMを第1のリアクタに残っている混合物に添加し、次に、スターラと温度調節システムを備えた第2のPFRリアクタに供給し、リアクタの熱プロファイルを135℃から160℃に上げる。
未反応スチレンと溶媒をポリマーから取り除くために、得られた最終混合物を235℃の温度で減圧下に操作するデボラタイザーに供給し、このようにして特性が表1および表2に示される最終生成物が得られる。
【0039】
表1

【0040】
表2

【0041】
表1および表2に示される結果から、ブロモアルカン、n-ブチルリチウムおよび無極性溶媒に可溶な安定なニトロキシラジカルの間の反応によって行われるポリブタジエンの官能基化が、特に費用のかかるスチレン-ブタジエンブロックコポリマーで得られるエラストマー相の「コアシェル」形態および優れた表面光沢を有する耐衝撃性ポリスチレンの製造を可能にすることを容易に推測することができる。しかしながら、記載された技術で官能基化されない同じポリブタジエンの使用は、美的特性(光沢)が非常に不充分な「サラミ」タイプの分散相の形態を有する耐衝撃性ポリスチレンを生じる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能基化ポリ(1,3-アルカジエン)の合成方法であって、1,3-アルカジエンの少なくとも1つのモノマーを有機リチウムおよび低沸点無極性溶媒の存在下にアニオン重合する工程、および重合終了後、重合混合物にブロモアルカン(ここで、アルカンは炭素原子1〜12個を含有する)を添加し、続いて前記無極性溶媒に可溶な-NO・基が特徴の安定なニトロキシラジカルを含有する生成物を添加することによって、1,3-アルカジエンに基づくポリマーの連鎖停止相を行う工程を含む、前記方法。
【請求項2】
1,3-アルカジエンが、ブタジエンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
有機リチウムが、リチウムブチルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ブロモアルカンが、1-ブロモオクタンである、請求項1、2または3記載の方法。
【請求項5】
-NO・基が特徴の安定なニトロキシラジカルを含有する生成物が、下記一般式(II)を有するものより選ばれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法
【化1】

(II)
(式中、基R1、R2、R5およびR6は、同じかまたは異なり、炭素原子1〜20個を有する置換されたまたは置換されていない直鎖または分枝鎖アルキル基またはアルキル芳香族基(ここで、アルキル基は、炭素原子1〜4個を有する)であり、基R3およびR4は、同じかまたは異なり、R1、R2、R5またはR6に等しく、あるいはR3-CNC-R4は、芳香環または炭素原子3〜20個を有する飽和環で縮合されていてもよい、例えば、炭素原子4または5個を有する、環状構造に属する)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法に従って得られる官能基化ポリ(1,3-アルカジエン)。
【請求項7】
制御された方法で不飽和エラストマーにグラフトされたビニル芳香族(コ)ポリマーの調製方法であって:
a.無極性溶媒に可溶なブロモアルカンとニトロキシラジカルによって官能基化されたエラストマーを、60/40〜100/0、好ましくは60/40〜90/10の質量比の(少なくとも1つの)ビニル芳香族モノマー/重合溶媒の混合物からなる液相に溶解する工程;
b.官能基化エラストマーを溶液として含有する混合物に少なくとも1つのラジカル開始剤を供給し、このようにして得られた混合物を120℃以上の温度で重合する工程;
c.重合終了後に得られたビニル芳香族(コ)ポリマーを回収し、溶媒と未反応モノマーを回収するためにこれを減圧下で液化に供する工程; および
d.液化から生じる溶媒/(少なくとも1つの)モノマー混合物を工程(a)に再循環させる工程
を含む、前記方法。
【請求項8】
ビニル芳香族モノマーが、スチレンおよび/またはα-メチルスチレンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
本質的に少なくとも50質量%のビニル芳香族モノマーを含有するマトリックスをからなる連続相、および本質的に、粒子が0.1〜1μmの平均直径を有する「コアシェル」形態をもつ、全体に対して1〜25質量%の官能化エラストマーからなる分散相を含む耐衝撃性ビニル芳香族(コ)ポリマー。

【公表番号】特表2012−500310(P2012−500310A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523337(P2011−523337)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005893
【国際公開番号】WO2010/020374
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(508128303)ポリメーリ エウローパ ソシエタ ペル アチオニ (24)
【Fターム(参考)】