説明

官能化不織布物品

0.7〜15マイクロメートルの平均繊維サイズと、50〜95%の空隙容量と、不織布基材の表面にグラフトされた、アニオン性モノマーユニットを含むポリマーと、を有するグラフトされた不織布基材が開示される。物品は、モノクローナル抗体(MAb)などの標的物質を流体混合物から精製又は分離するためのフィルタ要素として使用されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2009年6月23日に出願された米国特許仮出願第61/219497号の利益を主張するものであり、その開示の全体は本明細書に参照として組み入れる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、官能化不織布基材、及びその調製方法に関する。本開示は更に、官能化不織布基材を使用するフィルタ、及び流体の濾過方法に関する。この官能化基材は、生物汚染物質などの生体物質を生体サンプルから選択的に濾過及び除去するのに有用である。
【背景技術】
【0003】
ウイルス及び生体ポリマー(例えば、タンパク質、炭水化物、脂質、及び核酸のような生細胞の構成成分又は生成物を含む)などの標的生体物質の検出、定量化、単離及び精製は、長年にわたって研究者の課題であり続けている。検出及び定量化は、診断にとって、例えば、様々な生理学的条件(例えば疾患)の指標として重要である。細胞培養で精製される、モノクローナル抗体などの生体ポリマーの単離及び精製は、治療法にとって、及び生物医学研究において重要である。酵素のような生体ポリマーは、単離され、精製されて、甘味料、抗生物質及び様々な有機化合物、例えばエタノール、酢酸、リジン、アスパラギン酸及び生物学上有用な生成物(例えば抗体及びステロイド)の製造のために利用されてきた。
【0004】
クロマトグラフ分離及び精製操作は、気体又は液体であることができる移動相と固定相との間の溶質の交換に基づき、生体生成物混合物に対して行うことができる。固定相を有するそれぞれの溶質の様々な結合相互作用のため、溶液混合物の様々な溶質の分離が達成され、それ程強く相互に作用しない溶質と比較して、移動相の解離又は置換作用を受けたとき、より強い結合相互作用の滞留時間は一般により長くなり、このような方法で、分離及び精製が達成できる。
【0005】
大部分の現在の捕捉又は精製クロマトグラフィーは、従来のカラム技術によって行われる。これらの技術は、クロマトグラフィーを使用した処理量が低いことから、下流精製における深刻なボトルネックを有する。これらの問題を軽減する試みには、クロマトグラフィーカラムの直径を大きくすることが挙げられるが、これも、効果的かつ再現的にカラムを充填することが困難であるため、課題が残る。より大きいカラム直径も、問題となるチャネリングの発生を増やす。また、従来的なクロマトグラフィーカラムでは、種が貫流しないように、樹脂への結合化学種の規定の充填が行われるまで、吸収操作が行われる(これは、有用な生成物の喪失を防ぐか、又は汚染物質が通過液内に留まり続けることを防ぐために行われる)。これによって、吸着培地の動的又は有効容量が、全体的又は静的容量より大幅に低くなる。
【0006】
選択的プロテインAカラムを使用する際、第1の捕捉工程の後に残る少量の汚染物質がカラム中のプロテインA樹脂に結合する。この汚染物質(低濃度であるが)は、生成物の溶出中に解放される。安全に生成可能な医薬品又は生体生成物を作製するために、宿主細胞タンパク質及びウイルスなどの少量の不純物を排除するために、生成物の流体流れは「精製する」必要がある。
【0007】
ポリマー樹脂は、様々な標的化合物の分離及び精製に広く用いられる。例えば、ポリマー樹脂は、イオン基の存在に基づいて、目的化合物の大きさに基づいて、疎水性相互作用に基づいて、親和性相互作用に基づいて又は共有結合の形成に基づいて、目的化合物を精製又は分離するために用いることができる。当該技術分野では、拡散及び結合における限界を克服し、高い処理量及びより小さな圧力低下で操作され得る官能化膜の必要が存在する。当該技術分野では、宿主細胞タンパク質、細胞残屑、DNAフラグメント、ウイルス、及びモノクローナル抗体の製造中の生物学的供給流からの細胞残屑といった生物汚染物質の選択的除去に対して改善された親和力を有するポリマー基材の必要が存在する。結合及び溶出操作における拡散及び生産性の限界を克服する、官能化構造を有する必要性がまた存在し、抗体の所定の充填が達成された後に溶出する、浸出したプロテインAなどの不純物の浄化を可能にするように、有用な抗体生成物がリガンドに結合する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、0.7〜15マイクロメートルの平均繊維サイズと、50〜95%の空隙容量と、不織布基材の表面にグラフトされた、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのアニオン性モノマーユニットを含むポリマーと、を有する不織布基材を含む、物品を提供する。この物品は、例えば、宿主細胞タンパク質、DNAフラグメント、ウイルス、及び細胞残屑、オリゴヌクレオチド、又はモノクローナル抗体(MAb)などの治療用タンパク質などの標的物質を、一般的な細胞産物収集技術によって生成された流体などの流体混合物から精製又は分離するためのフィルタ要素として使用されてもよい。
【0009】
用語「標的物質」は、グラフトされた不織布基材が液体の供給流れ又は混合物溶液の供給流れから分離するように設計された1つ以上の化学種を指す。標的分子は、例えば医薬種、例えば、タンパク質及び(モノクローナル又はポリクローナル)抗体、DNA及びRNA、細菌、酵母、哺乳類、植物又は昆虫細胞により発現した生体高分子、ミネラル、及び、人工化学種、例えば合成小有機分子、ペプチド及びポリペプチド、オリゴ糖及び糖改質タンパク質を含むことができる。いくつかの実施形態では、標的分子は、タンパク質;無機化学種、例えば、金属、金属イオン、又は、イオン類、例えば炭酸、硫酸、酸化物、リン酸塩、炭酸水素、及び、一般に工業用、住居用及び生物学の供給フローで見つかる他のイオン;それに限定されるものではないが染料、殺虫剤、肥料、添加剤及び安定剤を含む小有機分子;処理の副産物及び汚染物質;DNA、RNA、リン脂質、ウイルス又はバイオプロセスからの他の細胞残屑を含む1つ以上の不純物又は廃棄物でありえる。更なる実施形態では、浸出するリガンド、例えば、上流親和性分離工程からのプロテインAも標的分子でありえた。他の実施形態において、本明細書において記載される物品は、廃棄物又は飲み水の流れから、様々な化学的又は生物学的種を除去するために使用され得る。
【0010】
本開示の物品の1つ以上の層をデプスタイプ濾過用途で使用してもよく、これらの層のそれぞれは、同一の又は異なる繊維サイズ、空隙容量、ポリマーグラフトの程度、グラフトされたポリマーのモノマー組成、多孔性、嵩、引張強度及び表面積を有していてもよい。官能化基材は、更に、多孔質膜又は微多孔性膜などの従来の濾過要素と組み合わされて使用されてもよい。
【0011】
本開示は、不織布基材を提供する工程と、不活性雰囲気中で不織布基材を電離放射線に暴露する工程と、続いて、暴露された基材を、グラフトするアニオン性モノマーを含む溶液に含浸し、前述のモノマーを不織布基材の表面にグラフト重合する工程と、を含む、物品の製造方法を更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】複数のひだに成形される本開示による濾材の例示的な実施形態の斜視図。
【図2】レンチキュラー形状で提供され、かつ本開示による濾材を備える例示的なフィルタ装置の断面図。
【図3】封入形態で提供され、かつ本開示による濾材を備える例示的なフィルタ装置の斜視及び部分切り欠き図。
【図4】封入形態で提供され、かつ本開示による第1のひだのついた媒体シリンダと、第2のひだのついた媒体シリンダと、を備える、例示的なフィルタ装置の、図3の9−9で切断した断面図。
【図5】封入形態で提供され、かつコアを備える例示的なフィルタ装置の、図3の9−9で切断した断面図。本開示による濾材がコアの周囲に螺旋状に巻き付いている。
【図6】実施例1〜7のIgG貫流曲線をプロットする図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、0.7〜15マイクロメートルの平均繊維サイズと、50〜95%の空隙容量と、不織布基材の表面にグラフトされた、アニオン性モノマーユニットを含むポリマーと、を有する不織布基材を含む物品を提供する。ポリマー官能化物品は、水性又は水性/有機溶剤溶液中のモノマーの電離放射線重合及び後続のグラフト重合によって不織布基材上に形成されたフリーラジカルで開始される、不連続の非架橋ヒドロゲルポリマーと記述することができる。本明細書で使用するとき、「ヒドロゲル」とは、含水ゲル、すなわち親水性で水を吸収するが、水に不水溶のポリマー鎖である。ヒドロゲルという用語は、水和の状態に関わらず用いられる。
【0014】
不織布基材は不織布ウェブであり、不織布ウェブの製造のための周知のプロセスのいずれかにより製造される不織布ウェブを含んでよい。本明細書で使用するとき、用語「不織布ウェブ」は、マット状の層間に、不規則に及び/又は一定方向に入れられた個々の繊維又はフィラメントの構造を有する布地を意味する。
【0015】
例えば、繊維性不織布ウェブは、カード、エアレイド、ウェットレイド、スパンレース、スパンボンド、電界紡糸、又はメルトスパン若しくはメルトブローンなどのメルトブローン法、あるいはこれらの組み合わせによって製造されることができる。スパンボンド繊維は、典型的には、押し出される繊維の直径を持つ微細で通常は円形をした複数個の紡糸口金の毛管から、溶融した熱可塑性ポリマーをフィラメントとして押し出し、急激に縮小させることにより形成された小径繊維である。メルトブロー繊維は、典型的には、溶融した熱可塑性物質を、融解した糸又はフィラメントとして、複数の微細で通常は円形のダイキャピラリーを通して、溶融した熱可塑性物質のフィラメントを弱めてその直径を縮小させる高速の、通常は加熱されたガス(例えば、空気)の流れの中に押し出すことによって形成されている。その後、高速ガス流によって、メルトブロー繊維は移動され収集面上に堆積し、無作為に分散されたメルトブロー繊維のウェブを形成する。任意の不織布ウェブは、熱可塑性ポリマーの種類及び/又は厚さが異なる単一の繊維又は2つ以上の繊維から製造されてよい。
【0016】
ステープルファイバーもまた、ウェブ内に存在してよい。一般に、ステープルファイバーが存在することで、メルトブローマイクロファイバーのみからなるウェブよりも、より嵩高でより密度の低いものとなる。約20重量%以下のステープルファイバーが存在することが好ましく、より好ましくは約10重量%以下である。ステープルファイバーを含むそのようなウェブは、米国特許第4,118,531号(Hauser)に開示され、これは本明細書において参照として組み込まれる。
【0017】
不織布物品は、任意に、スクリムの1つ以上の層を更に含んでもよい。例えば、主表面の一方又は両方は、それぞれ任意に、スクリム層を更に含んでもよい。典型的には、繊維から製造される織布又は不織布の補強材であるスクリムは、不織布物品に強度を提供するために含まれる。好適なスクリム材料には、ナイロン、ポリエステル、繊維ガラス等が挙げられるが、これらに限定されない。スクリムの平均厚さは様々であり得る。典型的には、スクリムの平均厚さは、約25〜約100マイクロメートル、好ましくは約25〜約50マイクロメートルの範囲である。スクリムの層は、任意に、不織布物品に接合されてもよい。様々な接着剤を使用して、スクリムをポリマー材料に接合することができる。別の方法としては、スクリムは、不織布に熱接合されてもよい。
【0018】
不織布基材のマイクロファイバーは、典型的には、Davies,C.N.、「The Separation of Airborne Dust and Particles」、(Institution of Mechanical Engineers,London,Proceedings 1B,1952)に記載された方法により計算した場合に、約0.5〜15マイクロメートル、好ましくは約1〜6マイクロメートルの有効繊維長を有する。不織布基材は、好ましくは、約10〜400g/m、より好ましくは約10〜100g/mの坪量を有する。不織布基材の平均厚さは、カレンダー加工されていない非官能化基材では、好ましくは約.1〜10mm、より好ましくは約0.25〜5mmである。不織布ウェブの最小引張強度は、約4.0ニュートンである。不織布の引張強度は、ウェブ横断方向における良好な繊維接合及び絡み合いに起因して、ウェブ横断方向よりも機械方向で低いことは一般に認識されている。
【0019】
不織布ウェブの嵩は、ソリディティ(ウェブの容積の固体分率を定義するパラメータ)で測定される。低いソリディティ値は、ウェブの嵩が大きいことを示す。有用な不織布基材は、20%未満、好ましくは15%未満のソリディティを有する。ソリディティは、典型的にはαとして表わされる無単位の分数である。
α=m÷ρ×L不織布
式中、mは、サンプル表面積あたりの繊維質量であり、ρは繊維密度であり、
不織布
は不織布の厚さである。ソリディティは、本明細書では不織布基材そのものを対象にして使用され、官能化不織布は対象とならない。不織布基材が2種類以上の繊維の混合物を含む場合、同じL不織布を用いて繊維のそれぞれの種類に対して個々のソリディティが決定され、これら個々のソリディティを合計すると、ウェブのソリディティαが得られる。
【0020】
1つの例として、カレンダー加工又はグラフトの前の不織布基材は、厚さ0.34mm、有効繊維長4.2um、及びソリディティ13%から計算された平均孔径14μmを有するのが好ましい。カレンダー加工後、不織布ウェブは、厚さ0.24mm及びソリディティが18%を有し、平均孔径は8μmとなる。用語「平均孔径」(平均孔直径としても知られている)は、算術中央値繊維直径及びウェブのソリディティに関連付けられ、その値は、次式によって決定され、式中Dは平均孔径であり、dは算術中央値繊維直径であり、αはウェブのソリディティである。
【数1】

【0021】
不織布基材は、1〜40マイクロメートル、好ましくは2〜20マイクロメートルの平均孔径を有するのが好ましい。平均孔径は、Freon TF(商標)を試験流体として使用して、Bubble Point and Mean Flow Pore Test Method Bによって、ASTM F 316−03「Standard Test Methods for Pore Size Characteristics of Membrane Filters」に従って測定されてもよい。
【0022】
不織布基材は、任意の好適な熱可塑性ポリマー材料から形成されてもよい。好適なポリマー材料には、ポリオレフィン、ポリ(イソプレン)、ポリ(ブタジエン)、フッ素化ポリマー、塩素化ポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリ(エーテルスルホン)、ポリ(スルホン)、ポリ(ビニルアセテート)、ビニルアセテートのコポリマー(例えば、ポリ(エチレン)−コ−ポリ(ビニルアルコール))、ポリ(ホスファゼン)、ポリ(ビニルエステル)、ポリ(ビニルエーテル)、ポリ(ビニルアルコール)、及びポリ(カーボネート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
好適なポリオレフィンとしては、ポリ(エチレン)、ポリ(プロピレン)、ポリ(1−ブテン)、エチレンとプロピレンのコポリマー、αオレフィンコポリマー(例えば1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、及び1−デセンとエチレン又はプロピレンのコポリマー)、ポリ(エチレン−コ−1−ブテン)及びポリ(エチレン−コ−1−ブテン−コ−1−ヘキセン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
好適なフッ素化ポリマーとしては、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンのコポリマー(ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)など)、及びクロロトリフルオロエチレンのコポリマー(例えばポリ(エチレン−コ−クロロトリフルオロエチレン))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
好適なポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,12、ポリ(イミノアジポイルイミノヘキサメチレン)、ポリ(イミノアジポイルイミノデカメチレン)、及びポリカプロラクタムが挙げられるが、これらに限定されない。好適なポリイミドには、ポリ(ピロメリットイミド)が挙げられる。
【0026】
好適なポリ(エーテルスルホン)としては、ポリ(ジフェニルエーテルスルホン)及びポリ(ジフェニルスルホン−コ−ジフェニレンオキシドスルホン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
好適なビニルアセテートのコポリマーには、ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、及びアセテート基の少なくとも一部が加水分解されていて、ポリ(エチレン−コ−ビニルアルコール)などの種々のポリ(ビニルアルコール)を与えるコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
好ましいポリマーは、本質的に親水性であり、電離放射線によって、例えばe−ビーム又はガンマ線に暴露することによって容易にグラフトされる。好ましいポリマーには、ポリアミド並びにエチレンビニルアルコールポリマー及びコポリマーが含まれる。1マイクロメートル以下の有効繊維長を有するナイロン不織布基材は、本明細書において参照として組み込まれる、米国特許第7,170,739号(Aroraら)、同第7,112,389号(Aroraら)、同第7,235,122号(Brynerら)、及び米国特許出願第20040116026号(WO 04/02714と同じ)に記載されるものから選択されてもよい。1マイクロメートル以下の有効繊維長を有する有用なナイロン不織布基材はまた、DuPont(Wilmington,DE)からHMT(商標)16434及びHMT(商標)16435ハイブリッド膜技術膜として市販されている。
【0029】
本発明の不織布の製造方法の更なる詳細は、Wenteの「Superfine Thermoplastic Fibers」(48 Indus.Eng.Chem.1342(1956))又はWenteらの「Manufacture Of Superfine Organic Fibers」(Naval Research Laboratories Report No.4364,1954)に見出すことができる。不織布基材を調製する有用な方法は、それぞれ本明細書において参照として組み込まれる、米国特許RE 39,399号(Allen)、米国特許第3,849,241号(Butinら)、同第7,374,416号(Cookら)、同第4,936,934号(Buehning)、及び同第6,230,776号(Choi)に記載されている。
【0030】
いくつかの実施形態において、不織布基材は、別の滑らかなロールにニップされている滑らかなロールを使用してカレンダー加工される。カレンダー加工された又は圧縮された不織布ウェブは、より均一な基材、及び未反応モノマーを除去するために後で行われる洗浄工程における寸法安定性をもたらす。したがって、好ましい実施形態では、本発明による不織布基材は、上記パターンエンボス加工に加えて、滑らかなロール及び固体バックアップロール(例えば、金属、ゴム、又は綿布で覆われた金属)で熱カレンダー加工される。カレンダー加工の間、滑らかなロールの温度及び圧力を厳密に制御することが重要である。広くは、繊維は、表面に被膜又は表皮を形成するなど、不織布基材に望ましくない特性を与えることなく、接点で最小限に熱融着される。例えば、ナイロン不織布基材を使用する場合、滑らかなロールの温度を約40℃〜100℃、より好ましくは約50℃〜75℃に保つのが好ましい。更に、滑らかなロールは、約10Kgf/cm(98.1N/cm)〜約50Kgf/cm(490.3N/cm)、より好ましくは約15Kgf/cm(147.1N/cm)〜約30Kgf/cm(294.2N/cm)の圧力で繊維ウェブと接触するべきである。カレンダー加工された不織布基材の平均厚さは、初期不織布の厚さの約2/3であるのが好ましい。
【0031】
官能化物品は、含浸溶液中でのアニオン性モノマーの電離放射線重合及び後続のグラフト重合によって不織布基材上に形成されたフリーラジカルで開始される、不連続の非架橋ヒドロゲルポリマーと記述することができる。本明細書で使用するとき、ヒドロゲルとは、含水ゲル、すなわち、親水性で水を吸収するが水に不溶性のポリマーである。ヒドロゲルという用語は、水和の状態に関わらず用いられる。
【0032】
グラフトされたポリマーは、不織布基材から始まる、及び不織布基材によって支持される、ポリマーの巻きひげ(tendrils)を含み、ポリマー鎖(巻きひげ)は、不織布基材の間質腔の中に延びる。グラフトされたポリマー鎖は、ペンダントアニオン性基と、任意のペンダントポリ(アルキレンオキシド)基と、他の官能基と、を有する。純水の存在下で、ヒドロゲルは、最大水和及び容積の状態に達する。ポリマーの巻きひげは橋かけせず、独立して移動自在であるので、グラフトされた不織布物品は、非常にわずかな量の刺激に対して大きな流動応答を有し得る。
【0033】
本発明の非架橋のグラフトされたヒドロゲルポリマーとは異なり、従来のヒドロゲルは、複数の架橋部位で架橋する個々のポリマーストランド又は巻きひげを含む。架橋の結果、ポリマーの分子量は無限大であり、「ゲル」は膨潤ポリマーネットワークを指し、ゲルの特性は、ポリマーの濃度、ポリマーの分子量及び架橋密度によって制御される。
【0034】
不織布基材の置換度、及びその表面にグラフトされたポリマーの重量に応じて、ヒドロゲルポリマーは、不織布基材の間質腔を完全に充満し、これにより、官能化不織布物品を通る純水の流れを有効に遮断するバリアを提供することができ、所与の流動速度(定速)で大きなバックプレッシャー、又は所与の圧力(定圧)で非常に低い流量となる。純水において、スルホン酸塩などの負に帯電したアニオン性基は互いに静電気的に反撥し、グラフトされたポリマー鎖の最大延長、及び結果としてヒドロゲルの最大水和を生じるものと考えられる。
【0035】
濾過で使用される場合、ヒドロゲルは、塩、緩衝液、有機溶媒、温度、pH、汚染、又は生体分子などの微小の「トリガ」に応答して可逆的に膨張し、その結果として収縮する場合があり、より低圧で高流束がヒドロゲルネットワークを通ることを可能にする。驚くべきことに、グラフトヒドロゲルネットワークは、「トリガされた」状態にあってその濾過性を失わない。そのような「トリガ」がない場合、十分に膨張したヒドロゲルネットワークは、水分流動に対する抵抗性を提供することができる。
【0036】
最大水和状態で、ヒドロゲルは不織布基材によってのみ拘束され、x軸及びy軸内(不織布基材と同一面内)で最も著しく拘束され、不織布基材の面に垂直な軸zではその傾向は低い。ゲルはz軸上に拘束されにくい。不織布基材に拘束されたゲルは、z軸上で最大800%以上膨張し得るが、x軸及びy軸上では望ましくは100%未満、より好ましくは50%未満である。
【0037】
メルトブローン不織布ウェブの調製では、状態は(a)繊維を適切に積層するためにダイ及びコレクタを調整する、(b)繊維が溶融しすぎる及び繊維同士が接合するのを防止するために、溶融温度及び空気温度を調整する、(c)コレクタがダイに近接して近づきすぎることによって引き起こされる非対称を最小限にすることによって、z方向(不織布の面に対して垂直)の弾力性を最大にするように調整され得る。繊維同士が結びつく程度を低減するために、コレクタに突き当たる前の不織布繊維の温度は、ポリマー溶融温度より低いのが好ましい。望ましくは、不織布は、ヒドロゲルを膨張させるために、「z」方向(不織布の面に対して垂直)に最大限に伸張してもよい。
【0038】
ヒドロゲルは可逆的に収縮し、中性化合物、塩、緩衝液及び正に帯電したイオンなどの溶存種の存在下で、生じた隙間を通って水が流れることを可能にする。溶解イオンなどの溶存種は、グラフトポリマー中の負に帯電したアニオン性基とより効率的に電荷結合し、その結果、4級アニオン性基の間の静電反発力が低減して、ヒドロゲルが収縮又は圧潰すると考えられている。あるいは、溶存種は、水(及び場合によっては溶媒)分子の水和層を置換することができ、その結果ヒドロゲルは不織布基材の周囲に圧潰する。したがって、物品は、本質的に不連続である、したがってヒドロゲルの孔又は隙間を可逆的に開いたり閉じたりすることができる、刺激応答性ヒドロゲル(「応答性ヒドロゲル」)を呈する。
【0039】
不織布基材は、不織布基材の表面にグラフトされたアニオン性モノマーユニットを含むポリマーを有する。ポリマーは、負に帯電したグラフトされたモノマーの、電離により開始される重合により、不織布基材の表面にグラフトされる。
【0040】
負に帯電したアニオン性モノマーは、フリーラジカル重合を経ることができる、少なくとも1つのエチレン性不飽和基及び追加的なアニオン性官能基を有する。いくつかの実施形態では、エチレン性不飽和基は、(メタ)アクリロイル基又はビニル基である。アニオン性モノマーは、弱酸、強酸、弱酸の塩、強酸の塩、又はこれらの組み合わせであることができる。すなわち、負に帯電したイオン性モノマーは、中性の状態であることができるが、pHを調整すると帯電可能となる。pHが適切に調整されると、得られるカチオン交換樹脂は、正に帯電した材料(すなわち、カチオン)と相互作用することが可能な、負に帯電した基を有する。カチオン交換樹脂を調製するために用いられるアニオン性モノマーが弱酸の塩又は強酸の塩を含む場合、これらの塩の対イオンは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムイオン、又はテトラアルキルアンモニウムイオンであることができるが、これらに限定されない。
【0041】
アニオン性モノマーは、以下の一般式を有し、
【化1】


式中、
はH又はCHであり、
Xは、−O−又は−NR−であり、
Yは、直鎖又は分枝鎖アルキレンであり、一般的には1〜10の炭素原子であり、
Zはアニオン性基であり、これは、スルホン酸基、ホスホン酸基、及びカルボン酸基、並びにこれらの塩から選択され得る。
【0042】
いくつかの代表的なアニオン性モノマーとしては、式(II)の(メタ)アクリルアミドスルホン酸又はその塩が挙げられる。
【化2】


式中、
は、H又はCHであり、Yは、1〜10の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖アルキレンである。式(II)による代表的なイオン性モノマーとしては、N−アクリルアミドメタンスルホン酸、2−アクリルアミドエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、及び2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が挙げられるがこれらに限定されない。これらの酸性モノマーの塩がまた使用されてもよく、例は、(3−スルホプロピル)−メタクリル酸カリウム塩及び2−(メタクリロイルオキシ)エチルスルホン酸ナトリウム塩である。
【0043】
グラフトポリマーのための他の好適なアニオン性モノマーとしては、ビニルスルホン酸及び4−スチレンスルホン酸などのスルホン酸;(メタ)アクリルアミドホスホン酸、例えば、(メタ)アクリルアミドアルキルホスホン酸(例えば、2−アクリルアミドエチルホスホン酸及び3−メタクリルアミドプロピルホスホン酸);アクリル酸及びメタクリル酸;並びに2−カルボキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルメタクリレート、3−カルボキシプロピルアクリレート、及び3−カルボキシプロピルメタクリレートなどのカルボキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。更に他の好適な酸性モノマーとしては、本明細書に参照として組み込まれる米国特許第4,157,418号(Heilmann)に記載されるもののような(メタ)アクリロイルアミノ酸が挙げられる。代表的な(メタ)アクリロイルアミノ酸には、N−アクリロイルグリシン、N−アクリロイルアルパラギン酸、N−アクリロイル−β−アラニン、及び2−アクリルアミドグリコール酸、3−アクリルアミド−3−メチルブチル酸が挙げられるが、これらに限定されない。これらの酸モノマーの任意の塩も用いることができる。
【0044】
グラフトされたポリマーは、任意に、ポリ(アルキレンオキシド)基を有する1官能性エチレン系不飽和グラフトするモノマーユニットを含む。これらモノマーは、グラフトするアニオン性モノマーと共重合して、不織布基材の表面上にグラフトされたコポリマー鎖を形成する。存在する場合、これらモノマーは、全モノマーの重量に対して、2〜20重量%、より好ましくは5〜10重量%の量で用いられる。
【0045】
ポリ(アルキレンオキシド)基を有するモノマーユニットは、次の式のものである。
Z−Q−(CH(R)−CH−Q)−R
III
式中、Zは、重合可能なエチレン性不飽和部分であり、Rは、H又はCH、RはH、C〜Cアルキル基、アリル基又はこれらの組み合わせであり、mは2〜100、好ましくは5〜20であり、Qは−O−、−NR−、−CO−及び−CONRから選択される二価結合基である。
【0046】
一実施形態では、ポリ(アルキレンオキシド)基は、ポリ(エチレンオキシド)(コ)ポリマーである。別の実施形態では、ペンダントポリ(アルキレンオキシド)基は、ポリ(エチレンオキシド−コ−プロピレンオキシド)コポリマーである。かかるコポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、又はグラジエントコポリマーであってもよい。
【0047】
モノマーの有用なエチレン性不飽和部分、Zには、以下のものを挙げることができる。
【0048】
【表1】


式中、Rは、H又はMe、及びr=1〜10である。
【0049】
ポリ(アルキレンオキシド)基を有するモノマーは、例えば、1又は2官能性アルキレンオキシド(コ)ポリマー(典型的には市販されている)を反応性エチレン性不飽和化合物(例えば、アクリレート)と反応させることにより調製することができる。ポリ(アルキレンオキシド)を終端させる官能基には、ヒドロキシ基、アミン基、及びカルボキシル基を挙げることができる。以下に限定されないが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルクロライド、(メタ)アクリル酸無水物、及び2−イソシアナトエチルアクリレートを含むアクリレート誘導体のような様々な反応性エチレン性不飽和化合物を、使用することができる。好ましくは、モノマーは、1又は2官能性アルキレンオキシド(コ)ポリマーを無水(メタ)アクリル酸と反応させることにより調製される。典型的には、化学量論的な量のエチレン性不飽和反応物質を単官能性アルキレンオキシド(コ)ポリマー(モノヒドロキシ末端アルキレンオキシド(コ)ポリマーなど)と合わせると、一置換された生成物に100%転換される。
【0050】
好適な1官能性ポリ(アルキレンオキシド)モノマーの例としては、ポリ(エチレンオキシド)(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレンオキシド)(メタ)アクリレート、ポリ(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)(メタ)アクリレート、及びそれらの組み合わせが挙げられる。このようなモノマーは好ましくは、(C〜C)アルコキシ、アリルオキシ(例えば、フェノキシ)及び(C〜C)アルカリルオキシなどの、1つの非反応性末端基を含む。これらの基は、直鎖又は分枝鎖であることができる。これらのモノマーは、広範な分子量のものであることができ、Sartomer Company(Exton,PA)、Shinnakamura Chemical Co.,Ltd.(Tokyo,Japan)、Aldrich(Milwaukee,WI)、及びOsaka Organic Chemical Ind.,Ltd.(Osaka,Japan)のような供給元から市販されている。
【0051】
グラフトされたポリマーは任意により、他のエチレン性不飽和親水性グラフトするモノマーユニット(第2の親水性モノマー)を含む。本明細書で使用するとき、「第2の親水性モノマー」とは、曇点に達することなく、少なくとも1重量%、好ましくは少なくとも5重量%の水混和性(モノマー中の水)を有し、ポリ(アルキレンオキシド)モノマーを含まず、グラフト重合を遅らせることになる基を含まない、重合可能なモノマーである。グラフトされたコポリマーは、このようなモノマーユニットを0〜10重量%含んでもよい。存在する場合、ポリマーは、一般に、1〜10重量%のかかるモノマーユニットを含む。
【0052】
好適な第2の親水性モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、アクリロニトリル、テトラヒドロフルフリルアクリレート、アクリルアミド、モノ−又はジ−N−アルキル置換アクリルアミド、グリセロールメタクリレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい極性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、メチルアクリルアミド、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0053】
ポリマーは非架橋であるので、モノマー混合物を含有する含浸溶液は、ポリエチレン性不飽和モノマー、すなわち、架橋剤を含有しない。
【0054】
一般的に、グラフトされた(コ)ポリマーは、
a)70〜100重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは80〜98重量%のアニオン性モノマーと、
b)0〜20重量%、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは5〜10重量%のグラフトするポリ(アルキレンオキシド)モノマーと、
c)0〜10重量%の第2の親水性モノマーと、を含み、
各重量%は、全モノマー含有量に対するものである。
【0055】
b)及び/又はc)のモノマーの含有は、通常は親水性の不織布基材の親水性を向上するために特に有用である。このような疎水性基材においては、含浸溶液内のモノマーの量がゼロでないことが好ましい。
【0056】
一般に、グラフトされたモノマーの全含有量は、不織布基材の重量の0.5〜5倍であってもよい。不織布基材の間質腔を充満するが、不織布基材の膨張を制限して流量を妨げないように、ポリマー鎖を橋かけして不織布の独立した繊維をグラフトされたポリマーストランドと結合させないのが望ましい。グラフトされたポリマーによるこの繊維同士の橋かけを低減するための1つの方法は、所定の繊維サイズに対するモノマー濃度を低くすることである。グラフトする含浸溶液に水混和性有機溶媒を加えて、グラフトされたヒドロゲルポリマーの巻きひげの分子量を最大にし、かつ巻きひげの橋かけを低減することによって、グラフトされたポリマーの量が最大になり得ることが分かっている。
【0057】
不織布の間質腔の中に詰まったヒドロゲルの巻きひげにより増大する流量圧力は、イオントリガ又は生体生成物そのものによって単純に軽減する。間質腔にヒドロゲルストランドを詰めることによって得られる利益は、汚染物質がヒドロゲルの水を置換することができる空隙容量の中にポリマーストランドを有する不織布の表面積が有効に拡大することである。詰まった構成のグラフトされたヒドロゲルポリマーの巻きひげを有する不織布の予想外の正味の効果は、汚損なしにかなり大量の可溶性及び不溶性生物的汚染物質を保持する能力であり、複数の長い可撓性のヒドロゲル巻きひげは、多重結合又は水素結合部位となる能力があり、著しく改善された耐塩性を有するアフィニティー吸着が可能となる。他の微多孔性の基材と異なり、不織布基材は、表面コーティングされた基材というよりはむしろ、グラフトポリマーの足場であると考えることができる。
【0058】
上記グラフトされたモノマーに関し、不織布基材の表面にグラフトされるモノマーは、通常、e−ビーム放射線によるグラフトのために、アクリル酸又は他の非アクリル酸重合性官能基のいずれかを有する。アクリルアミド又はメタクリレート基は、ゆっくりとしたより均一な反応性、及びe−ビーム照射に暴露された不織布に対するそのようなメタクリレート又はアクリルアミド部分の耐久性が理由で、(本明細書に記載の工程を用いて)不織布基材の表面にモノマーをグラフトするのに好ましい。
【0059】
以下に更に詳細に記載するように、本発明の官能化基材は上記モノマーを用いて調製され、多孔質不織布のベース基材の表面にグラフトされたポリマーを提供することができる。上記グラフトするモノマーの2種類以上を使用する場合、単一反応工程でモノマーを不織布ベース基材上にグラフトし(すなわち、電離放射線に暴露する)、続いて、本工程又は連続した工程において、全てのグラフトするモノマーを含浸させる(すなわち、電離放射線への1回目の暴露の後、1種類以上のグラフトするモノマーを含浸させ、次に電離放射線への2回目の暴露を行い、この2回目の暴露の後に2回目の含浸を行う)。
【0060】
このグラフトする工程は、不織布基材の表面上にラジカル種をもたらすことが更に理解されよう。モノマー溶液の含浸後、式I又はIIのアニオン性モノマーのカルボニルに対してα位の炭素にラジカルを形成して重合を開始し、式IIのアミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマーなどの1種類以上の更なるアニオン性モノマー、式IIIの1種類以上の任意のPEGモノマー、及び1種類以上の任意の第2の親水性モノマーで更に重合してもよく、以下に簡単に例示されるような、これらの基がポリマー鎖からペンダントするグラフトされたポリマーが得られる。
【0061】
基材−(Mアニオン−(MPEG−(M
式中、−(Mアニオン−は、「w個」の重合モノマーユニットを有する式I及びIIのグラフトされたアニオン性モノマーの残基を表し(wは少なくとも2である)、−(MPEGは、「x個」の重合モノマーユニットを有する式IIIの重合モノマーを表し(xはゼロであってもよく、及び好ましくは少なくとも1である)、−(Mは、y個の重合モノマーユニットを有する重合された第2の親水性モノマーを表す(yはゼロであってもよく、好ましくは少なくとも1である)。ポリマーはランダム又はブロックであってもよい。ポリマーは、図のように、アミノアルキル(メタ)アクリロイルモノマーの残基を介して直接グラフトされてもよく、又は、本明細書に記載のように、−(MPEG)−モノマー又は親水性モノマーを介して直接グラフトされてもよい。
【0062】
添字w、x及びyの値は、整数又は非整数値であり、上記の含浸溶液内の各モノマーの量と対応する。例えば、添字「w」の値は、含浸溶液中のアニオン性モノマーの量70〜100重量%に対応し、添字xの値は、式IIIのモノマー0〜20重量%、好ましくは2〜20重量%に対応し、添字yの値は、第2の親水性モノマー0〜10重量%に対応する。
【0063】
グラフトされた不織布基材の調製方法は、不織布基材を用意する工程と、不活性雰囲気中で不織布基材を電離放射線に暴露する工程と、続いて、暴露された基材を、グラフトするアニオン性モノマー(及び任意により上記の他のモノマー)を含む溶液に含浸し、前述のモノマーを不織布基材の表面にグラフト重合する工程と、を含む。
【0064】
第1の工程では、不織布基材を、不活性雰囲気中でe−ビーム放射線などの電離放射線に暴露する。一般に、基材は酸素をパージしたチャンバ内に置かれる。典型的には、チャンバは、フリーラジカル重合を阻害することが知られている少量の酸素(100ppm未満)とともに、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性雰囲気を含む。
【0065】
照射工程は、不織布基材表面上にフリーラジカル反応部位を形成するために、好ましくは電離e−ビーム又はガンマ線によるこの表面の電離放射を含み、続いてこの表面上にモノマーをグラフトする。「電離放射線」とは、ベース基材の表面(1つ又は複数)にフリーラジカル反応部位を形成するのに十分な線量及びエネルギーの放射線を意味する。電離放射線には、ガンマ、電子ビーム、X線及び他の形態の電磁放射線を挙げることができる。場合によっては、コロナ放射線は十分に高いエネルギー放射線であってよい。放射線は、十分に高エネルギーであり、そのため、ベース基材の表面に吸収されると、十分なエネルギーがその支持体に移動して、この支持体内の化学結合の開裂を生じ、結果として不織布基材上にフリーラジカル部位が形成される。不織布基材の1つ以上の層を電離放射線にさらしてもよい。
【0066】
高エネルギー放射線量がキログレイ(kGy)の単位で測定される。線量は、所望のレベルの単一線量で、又は累積すると所望のレベルになる複数線量で、管理されることができる。照射線量は、累積的に約1kGy〜約200kGyの範囲であり得る。照射線量は、例えばe−ビーム源から一度に供給され得ることができ、又は、ガンマ源から供給される線量のように、数時間にわたる低線量率で累積されてもよい。好ましくは、累積線量は、放射線損傷に耐性のある基材の場合、20kGy(2Mrad)を超える。
【0067】
電子ビームは、商業的供給源から容易に調達できるので、1つの好ましいグラフトする方法である。電子ビーム発生器は、Energy Sciences,Inc.(Wilmington,MA)製のESI「ELECTROCURE」EBシステム及びPCT Engineered Systems,LLC(Davenport,IA)製のBROADBEAM EB PROCESSORを含む種々の供給源から市販されている。いかなる所定の種類機器及び放射線試料位置であろうとも、放出される線量は、「放射線フィルム放射線線量測定装置の使用に関する基準」と題するASTM E−1275により測定することができる。エキストラクターグリッド電圧を変更することにより、供給源に対するビーム直径及び/又は距離、各種放射線線量率を得ることができる。
【0068】
照射工程では、十分な量の電離放射線に不織布基材を暴露して、不織布基材の表面上にフリーラジカルを形成する。チャンバは、十分な照射線量の放射線を提供することができる、少なくとも1つの装置を含んでもよい。単一装置は十分な照射線量の放射線を提供することができるが、2つ以上の装置、及び/又は単一装置を通る複数の経路を、特に比較的厚い不織布基材用に使用してもよい。典型的には、不織布基材を含む環境は、フリーラジカル重合を阻害することが知られている少量の酸素とともに、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性雰囲気を含む。
【0069】
線量は、質量単位あたりの吸収されるエネルギーの総量である。線量は一般的にキログレイ(kGy)の単位で表現される。グレイは、質量キログラムあたり1ジュールのエネルギーを供給するのに必要な放射線量と定義される。基材が受け取る全線量は、線源の放射能、滞留時間(すなわち、サンプルを照射する総使用時間)、線源からの距離、及び線源とサンプルとの間の材料の介在断面による減衰を含む、多くのパラメータに依存する。線量は、典型的には、滞留時間、線源までの距離、又はその両方を制御することにより調整される。
【0070】
一般に、約20〜40kGyの範囲内の線量が、グラフトヒドロゲルポリマーを生成するのに適することが見出された。所定のあらゆる組成物に関する全線量必要量は、所望のグラフトする目標、選択されたモノマー、使用する基材、及び照射線量率の関数として異なる。したがって、線量率を、特定の組成物に対する所望の特性に基づいて選択してよい。線量率は、典型的には、0.0005kGy/秒(ガンマ)〜200kGy/秒(e−ビーム)の範囲内である。
【0071】
グラフトする性能が同等な他の放射線源を使用してもよく、電子ビームは高度で高速な線量供給速度を生成することができるので、所望の電離放射線源は、電子ビーム源を含む。電子ビーム(e−ビーム)は一般的に、約10−6Torr(0.00013Pa)に維持された真空チャンバ内の反射板と抽出グリッドとの間に保持されているタングステンワイヤフィラメントに高電圧を印加することによって発生する。フィラメントが、高電流で加熱され、電子を生成する。電子は、リペラープレートとエキストラクターグリッドにより金属フォイルの薄いウィンドウに向かって誘導され、加速される。10メートル/秒(m/sec)を超える速度で進行し、約100〜300キロ電子ボルトを所有する加速電子は、真空チャンバからフォイルウィンドウを通過し、いかなる物質が位置付けられていても直ちにフォイルウィンドウを超えて透過する。
【0072】
生成する電子の量は、電流に直接的に関係する。エキストラクターグリッド電圧が増加すると、タングステンワイヤフィラメントから引き出される電子の加速度又は速度は増加する。e−ビームによる加工は、コンピュータ調整する場合にはきわめて正確であることができ、正確な照射線量及び照射線量率の電子を不織布基材に向けることができる。
【0073】
チャンバ内部の温度は、望ましくは、従来の手段により周囲温度に保持される。任意の特定の機構に制限されることを意図しないが、不織布基材を電子ビームに暴露することにより、基材表面上にフリーラジカル部位が生じ、次に含浸工程で、この基材表面をグラフトするモノマーと引き続き反応させることができると考えられている。
【0074】
不織布基材が受ける全線量は、主として、基材の表面上に形成されるラジカル部位の数に影響を与え、続いて、不織布基材上にグラフトするモノマーがグラフトされる程度に影響を与える。線量は、電圧、ウェブ又はラインの速度及びビーム電流を含む多くのプロセスパラメーターにより決まる。線量は、線速度(すなわち、不織布基材が照射装置の下を通過する速度)及び抽出グリッドに供給される電流を制御することにより、便利に調節することができる。実験的に測定された係数(機械定数)をビーム電流に乗せ、ウェブ速度で除することによって目標の線量(例えば、<10kGy)を利便的に算出し、暴露量を決定することができる。機械定数は、ビーム電圧の関数として変化する。
【0075】
電子ビーム放射線暴露の調整線量は滞留時間によって決まるが、不織布基材は、特定のポリマーに応じて、最小照射線量である約1キログレイ(kGy)から、実用的最大線量である約200kG未満の範囲の調整線量にさらされる。プロピレンポリマーなどの放射線感受性ポリマーに関し、その量は、典型的には約1キログレイ(kGy)の最小照射線量〜約10kGy未満の最大線量の範囲である。典型的には、プロピレンポリマーの劣化を防ぐ合計調整線量は、約9kGy未満〜約7kGyの範囲である。ナイロン又はPVDFなどの放射線感受性が低いポリマーは、より高い放射線線量、典型的には10〜70kGyにさらしてもよい。一般に、好適なガンマ線源は、400keV以上のエネルギーを有するガンマ線を放出する。典型的には、好適なガンマ線源は、500keV〜5MeVの範囲内のエネルギーを有するガンマ線を放出する。好適なガンマ線源の例として、コバルト−60アイソトープ(約1.17及び1.33MeVのほぼ同等の割合のエネルギーを有する光子を放出する)、及びセシウム−137アイソトープ(約0.662MeVのエネルギーを有する光子を放出する)が挙げられる。線源からの距離は、標的又は線源の位置を変えることにより、修正又は変化させることができる。線源から放出されるガンマ線の線束は、線源からの距離の2乗、及びアイソトープの半減期により決定される持続時間に伴って、一般に減衰する。
【0076】
本発明の方法では、不織布基材の表面上にフリーラジカル部位を有する照射された基材を、照射工程に続いて及び照射工程と同時ではなく、モノマー溶液に含浸する。不織布基材の表面上に生成されたフリーラジカル部位は、数分から数時間の範囲の平均寿命を有し、室温で約10時間以内に低濃度へと徐々に減衰する。ドライアイス温度などの低い温度は、ラジカルの寿命を助長する。あるいは、加湿及び亜酸化窒素は、ヒドロキシルラジカルの生成を介した基材のラジカル形成速度を速めることができる。グラフト重合プロセスによるグラフトされた不織布の有効な結合吸収能は、不活性条件下に保持された場合、約12時間の反応時間の後、ほとんど変化しない。不活性で72時間グラフト重合プロセスを維持すると、恐らくグラフトされたポリマーの増加により、12時間後に室温で(空気に暴露することによって)急冷されたサンプルの性能よりも、(実施例に記載されるような)結合能が約10〜20%上昇する結果となることが分かっている。
【0077】
一般に、照射工程の直後に、照射された不織布基材にモノマー溶液を含浸させる。一般に、e−ビームを使用する場合、1時間、好ましくは10分以内に照射された基材を含浸させる。一般に、線源としてガンマを使用する場合、照射滞留時間が長いので、照射の直後に基材を含浸させなければならない。グラフトするモノマーの存在下で基材を電離放射線で照射すると、グラフトされた不織布基材の濾過性能は、本方法によって調製された物品の濾過性能よりも劣ることが分かっている。
【0078】
含浸工程では、1種類以上のグラフトするモノマーを含有し、かつ上記の量の含浸溶液に不織布基材を接触させる。好適な含浸方法には、スプレーコーティング、フラッドコーティング、ナイフコーティング、マイヤーバーコーティング、ディップコーティング及びグラビアコーティングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
ラジカル部位がグラフトするモノマーと重合を開始するのに十分な時間の間、含浸溶液を不織布基材と接触させたままにする。モノマーの溶液に含浸した場合、12時間の暴露後にグラフト反応はほぼ完了し、一般的に50%+のモノマーのグラフトされたポリマーへの変換を生じる。その結果、不織布基材は、不織布基材の侵入型及び外側表面に結合したグラフトされたポリマー及び/又はコポリマーを含む。
【0080】
上述のように、含浸溶液は、不織布基材の表面上にグラフトするのに好適な1種類以上のグラフトするモノマーを含んでもよい。上述のいずれかの代表的なグラフトするモノマーのいずれかを含浸溶液に含むことができる。上記グラフトするモノマーの他に、含浸溶液は、例えば、紫外線硬化用の1種類以上の他のグラフトされていないモノマー、界面活性剤、染料、顔料及び溶媒などの他の物質を含有することができる。
【0081】
含浸溶液中の各グラフトするモノマーの濃度は、多くの要因(含浸溶液中のグラフトするモノマー(1又は複数)、望ましいグラフト度、グラフトするモノマーの反応性及び使用溶媒が挙げられるが、これらに限定されない)に応じて変化してよい。典型的には、含浸溶液中のモノマーの全濃度は、含浸溶液の全重量を基準として約1重量%〜約100重量%、望ましくは、約5重量%〜約30重量%、より望ましくは約15重量%〜約25重量%の範囲である。
【0082】
含浸溶液は、水混和性有機溶媒とグラフトするモノマーとの水性混合物を更に含む。溶媒混合物は、分離用途で使用すると、グラフトされたポリマーのモルホロジー及び得られる流動速度に影響を与えることが見出されている。水の有機溶媒に対する比は多様であり得るが、典型的には、水対有機溶媒は1:1(v/v)超過、好ましくは5:1超過、より好ましくは7:1超過である。この比は、一般に、得られるグラフトされた不織布基材が、目標とするバイオセパレーション用途のための結合能を最大限にする圧力及び流量応答を生成するように、調整される。
【0083】
水中の有機溶媒濃度は、不織布基材の繊維サイズを基準にして最適化されてもよい。広くは、有機溶媒の最適濃度は、繊維サイズが減少するにつれて高くなる。20%の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アンモニウム又はナトリウム塩(AMPS)モノマー含浸溶液を使用し、4μmの有効繊維長を有する不織布は、水中15%以下の有機溶媒を使用する。1μm有効繊維長の不織布ウェブのための、15%の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アンモニウム又はナトリウム塩モノマー含浸溶液は、任意により水中15%を超える有機溶媒を使用する。
【0084】
含浸溶液中の水混和性有機溶媒の量を調整することによって、基材の繊維を橋かけする及び空隙を閉鎖することなく、より多量のモノマーが不織布基材にグラフトされると考えられている。ウェブ空隙が橋かけされると、不織布は乾燥すると半透明の外観になり、流量は減少し、かつ水和の際の膨張能力は低減する。繊維が小さいほど、不織布の孔を橋かけするモノマーの数は少なくなる。水混和性有機溶媒を更に加えることで橋かけを低減し、グラフトされたポリマー含量を増加させることができ(不織布基材の重量パーセントの関数として)、物品がより自由に膨張できるようになる。
【0085】
任意のこのような水混和性有機溶媒は、三級水素原子、又はグラフト重合を遅らせる他の基を有さないのが好ましい。いくつかの実施形態において、水混和性溶媒は、1〜4個の炭素原子を有する低級アルコール、2〜6個の炭素原子を有する低級グリコール、及び最も好ましくは3〜6個の炭素原子と1〜2個のエーテル結合とを有する低級グリコールエーテルなどの、プロトン基含有有機液体である。いくつかの実施形態では、ポリ(エチレングリコール)などの高級グリコールを使用してもよい。具体的な例は、メタノール、エタノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、エチレングリコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、及びこれらの混合物である。
【0086】
他の実施形態では、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル、酢酸エトキシエチル、酢酸プロポキシエチル、酢酸ブトキシエチル、リン酸トリエチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン及びジメチルスルホキシドといった脂肪族エステル、ケトン類及びスルホキシド類などの非プロトン性水混和性有機溶媒を使用することも可能である。
【0087】
不織布基材が所望の時間含浸された時点で、グラフトされたポリマー基を有する不織布基材は、任意に、残留モノマーを除去するためにすすがれてもよい及び/又は乾燥されてもよい。
【0088】
任意のすすぎ工程では、官能化不織布基材は1回以上洗浄され又はすすがれて、あらゆる未反応モノマー、溶媒、又はその他の反応副生成物を除去する。典型的には、官能化基材は、水リンス剤、アルコールリンス剤、水及びアルコールリンス剤の組み合わせ及び/又は溶媒リンス剤(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)を使用して最高3回まで洗浄又はすすがれる。アルコールリンス剤を使用するとき、リンス剤には、イソプロパノール、メタノール、エタノール又は使用して実用的である全ての他のアルコール及び全ての残留モノマーに有効な溶媒を挙げることができるがこれらに限定されない。それぞれのすすぎ工程では、官能化基材は、すすぎ浴を通すか、又はすすぎ液を噴霧してもよい。いくつかの実施形態において、リンス剤はイオン緩衝溶液を含んでもよく、これは、ヒドロゲルの膨張、保有水の量を低減し、及び更にはこのすすぎ工程の間に不織布基材を弱めるのを回避する。
【0089】
任意の乾燥工程では、官能化基材を乾燥し、任意のすすぎ溶液を除去する。典型的には、官能化基材を比較的低いオーブン温度のオーブンで所望の時間(本明細書では「オーブン滞留時間」と称する)乾燥する。オーブン温度は、典型的に約60℃〜約120℃の範囲であるが、一方、オーブン滞留時間は、典型的に約120〜約600秒の範囲である。任意の従来のオーブンを任意の乾燥工程で用いてよい。他の実施形態では、乾燥工程を、すすぎ工程の前に行うことができ、グラフトされていない残基の抽出前に揮発性成分を除去する点にも留意するべきある。任意の乾燥工程の後に、乾燥した官能化基材をロール形状に巻き取り、将来用いるために保管することができる。
【0090】
官能化不織布基材は、濾材、例えば水濾過用デバイスにおける濾材として特に適している。ポリマーがグラフトされて親水性になるとき、濾材は耐久性を持つ。本明細書に記載する親水性多孔質基材は、洗浄又は洗い流しすることができ、表面エネルギー及び湿潤性で明らかなように親水性特性を保持することができる。
【0091】
濾過用途で使用する場合、官能化基材の1つ以上の層を使用してもよく、これらの層のそれぞれは、同一の又は異なる平均繊維サイズ、空隙容量、ポリマーグラフトの程度、グラフトされたポリマーのモノマー組成、多孔性、引張強度、及び表面積を有してもよい。いくつかの実施形態では、各後続層は、より細かい汚染物質を濾過できるように、より小さな有効孔径又はより小さな平均繊維サイズを有してもよい。グラフトされた不織布基材は、平面状又はレンズ状ディスクとして構成されてもよい。いくつかの実施形態では、不織布基材をひだ状にしてよい。ひだ付きのグラフトされた不織布フィルタ要素は、複数の同心のひだ付きの要素として組み合わせてもよい。グラフトされた不織布基材をらせん状に巻きつけてよい。更に、支持体を提供し、かつ取り扱いを助けるために、グラフトされた不織布基材を多孔質ウェブで封入してもよい。濾過用途では、不織布を垂直に又は水平に配置してもよい。
【0092】
図1は、本開示による例示的な濾材120を示す。図のように、濾材120は複数のひだ126を含んでいる。いくつかの実施形態において、ひだがつけられた濾材120を、フィルタ装置又は他のフィルタ装置に組み込むことができる。ひだ付き構成及びひだ付き部材を含むフィルタ装置の例は、例えば、米国特許第6,521,011号(Sundetら)に見出すことができ、その開示は本明細書において参照としてその全体を組み込まれる。複数のひだ126が、米国特許出願第61/016149号(Lucas)(PCT出願第US08/86923号)に記載(この開示は本明細書において参照としてその全体を組み込まれる)のような、平面的に配置されたひだを含み得るということも想定している。図の実施形態では、濾材120は、微多孔性膜層124とともにグラフトされた不織布基材122を含んでいる。典型的には、微多孔性膜層124は、グラフトされた不織布基材122の下流に位置付けられる。
【0093】
微多孔性膜層124は、本開示を通して記載される1つ以上の微多孔性膜を含んでもよい。いくつかの実施形態において、微多孔性膜層124は、対称的に分布した孔径を有する単一領域を含む。他の実施形態では、微多孔性膜層124は、非対称的に分布した孔径を含む単一領域を含む。更に他の実施形態では、微多孔性膜層124は、複数の分離領域を含む。そのような実施形態では、分離領域のそれぞれは、対称的に又は非対称的に分布した孔径を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、微多孔性膜層124の1つ以上の領域は、官能化されることで、例えば、改善された親水性を有してもよい。官能化微多孔性膜を提供する方法は、例えば、本開示の他の箇所に記載されている。
【0095】
微多孔性膜層124は微多孔性膜の複層を含んでもよく、各層が単一領域又は複数の分離領域を含んでもよい、ということも想定している。各領域は、対称的に又は非対称的に分布した孔径を含んでもよく、微多孔性膜の各層は、特定の用途向けに所望通りに官能化又は非官能化されてもよい。一実施形態において、「ナイロン微多孔性膜D1〜D6」と題する項で以下に記載されるように、微多孔性膜層124は微多孔性膜の3つの層を含んでもよく、各層は3つの分離領域を含む。
【0096】
グラフトされた不織布基材122は、本開示を通して記載される1つ以上の不織布基材を含んでもよい。いくつかの実施形態では、グラフトされた不織布基材122は、不織布の単層を含む。他の実施形態では、グラフトされた不織布基材122は、同一の又は異なる構造を有する不織布材料の追加の層を有してもよい。例えば、グラフトされた不織布基材122は、グラフトされた不織布層の上流に位置付けられたグラフトされていない不織布層を含んでもよい、ということを想定している。そのような実施形態では、より下流の層と比べて、密度が低い又は多孔性が増大した、より上流の層が設けられてもよい。
【0097】
図2は、本開示による例示的なフィルタ装置100を示している。図のように、フィルタ装置100は、レンズ形フィルタカートリッジの形態で提供される濾材120を含む。レンズ形フィルタカートリッジ及びレンズ形フィルタカートリッジの作製方法の例は例えば、米国特許第6,464,084号、同第6,939,466号、同第7,178,676号、及び同第6,712,966号(Pulekら)に見出すことができ、これらの開示は本明細書において参照としてその全体を組み込まれる。
【0098】
図のように、フィルタ装置100は、流体出口116と流体連通する中央コア142を有する分離要素140を備えている。典型的には、分離要素140は、第1の側144、及び第2の側146を含み、それらの上に濾材120が配置されてもよい。第1の側144及び第2の側146は、典型的には、濾過機能性を提供しないが、開口ネットワークが備わっており、そこを通って流体が自由に流れることができる。図のように、濾材120は、第1の側144に位置付けられる第1の濾材ディスク150、及び第2の側146に位置付けられる第2の濾材ディスク154として提供される。第1及び第2の濾材ディスク150及び154はそれぞれ、外周縁部151、155と、内周縁部152、156とを個々に含む。いくつかの実施形態では、縁部シール150が、第1及び第2の濾材ディスク150及び154の外周縁部151及び155を接続する。典型的には、内周縁部152及び156は、分離要素140の中央コア142に接続される。
【0099】
典型的な用途では、濾材120の下流表面は、分離要素140に近接して位置付けられる。濾材120はグラフトされた不織布基材122を含む。図の実施形態では、濾材120は、微多孔性膜層124とともにグラフトされた不織布基材122を含んでいる。典型的には、微多孔性膜層124は、グラフトされた不織布基材122の下流に位置付けられる。
【0100】
図3では、フィルタカプセル110と、フィルタカプセル110に接続されるフィルタキャップ112と、を含む例示的なフィルタ装置100が示されている。図のように、フィルタキャップ112は、流体入口114及び流体出口116を含む。濾材120は、フィルタカプセル110の中に封入されており、流体入口114と流体出口116を流体接続する。図8の切り欠きを通して見えるように、濾材120は、複数のひだ126を含む第1の媒体シリンダ130に成形される。フィルタ装置及びフィルタ装置作製方法の例は例えば、米国特許第6,458,269号(Bassettら)に見出すことができ、その開示は本明細書において参照としてその全体を組み込まれる。複数のひだを含む円筒形に形成される濾材の例は、例えば、米国特許第6,315,130号(Olsen)に見出すことができ、その開示は本明細書においてその全体を組み込まれる。
【0101】
いくつかの実施形態において、本開示は、フィルタカプセルと、フィルタカプセルに接続されたフィルタキャップと、含む、フィルタカートリッジを提供し、フィルタキャップは流体入口及び流体出口を含み、濾材はフィルタカプセルに封入される。いくつかの実施形態では、フィルタ装置のフィルタキャップは流体入口及び流体出口を含み、濾材はフィルタカプセルに封入される。いくつかの実施形態において、濾材は、グラフトされた不織布基材の下流に位置付けられる微多孔性膜層を更に含む。
【0102】
したがって、本開示は、流体入口と、流体出口と、流体入口及び流体出口を流体接続する濾材と、を含む、フィルタ装置を提供し、濾材はグラフトされた不織布基材を含む。いくつかの実施形態において、本開示は、分離要素(140)と、縁部シール(150)と、を更に含み、分離要素は、流体入口と流体連通する中央コア(142)、第1の側(144)、及び第2の側(146)を含み、濾材は、分離要素の第1の側に位置付けられ、外周縁部(151)及び内周縁部(152)を有する第1の媒体ディスク(150)、並びに分離要素の第2の側に位置付けられ、外周縁部(155)及び内周縁部(156)を有する第2の媒体ディスク(154)を含み、第1の媒体ディスク及び第2の媒体ディスクの外周縁部は、縁部シールにより接続され、第1の媒体ディスク及び第2の媒体ディスクの内周縁部は中央コアに接続される。
【0103】
図4は、図3に示されるフィルタ装置100の一実施形態の断面図を示しており、濾材120は、複数のひだ126を含む第1の媒体シリンダ130に成形される。図の実施形態では、濾材120は、微多孔性膜層124とともにグラフトされた不織布基材122を含んでいる。典型的には、微多孔性膜層124は、グラフトされた不織布基材122の下流に位置付けられる。図4に示されるように、フィルタ装置100は、任意に、第1の媒体シリンダ130の中に位置付けられる、第2の媒体シリンダ132を備える。そのような実施形態では、第2の媒体シリンダ132は、複数のひだを含んでもよい。複数のひだを含む内側及び外側媒体シリンダを含むフィルタモジュールの例は例えば、米国特許出願公開第2009/0020472(A1)号(Lucasら)に見出すことができ、その開示は本明細書において参照としてその全体を組み込まれる。
【0104】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、濾材が、グラフトされた不織布基材の下流に位置付けられる1つ以上の微多孔性膜層を更に含む、フィルタ装置を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、濾材が複数のひだを含むフィルタ装置を提供する。
【0105】
図5は、図3に示されるフィルタ装置100の代替実施形態の断面図を示しており、フィルタ装置はコア160を更に備え、濾材120はコア160の周囲に螺旋状に巻き付く。コア160は、典型的には濾過機能性を提供しないが、開口ネットワークが備わっており、そこを通って流体が自由に流れることができる。らせん状に巻きフィルタカートリッジ及びらせん状に巻いたフィルタカートリッジを作製する方法の例は、例えば、米国特許第6,391,200号(Pulekら)に見出すことができ、その開示は本明細書において参照としてその全体を組み込まれる。図の実施形態では、濾材120は、微多孔性膜層124とともにグラフトされた不織布基材122を含んでいる。典型的には、微多孔性膜層124は、グラフトされた不織布基材122の下流に位置付けられる。いくつかの実施形態では、渦巻状に巻き付けられた濾材120の隣接する層の間を流体が流れ易くするのを助けるために、排水層が更に設けられてもよい。
【0106】
いくつかの実施形態において、本開示は、コア(160)を備え、濾材がコアの周囲に螺旋状に巻き付いているフィルタ装置を提供する。
【0107】
いくつかの実施形態において、官能化不織布基材は、微多孔性膜などの従来のフィルタ要素と組み合わされてもよい。特に、本官能化不織布基材の1つ以上の層を含むフィルタは、プロテインAカラムの下流で汚染物質を除去するためのフィルタとして機能し得る。
【0108】
官能化不織布基材は、微多孔性膜を保護して、微多孔性膜の耐用年数を延ばし、そして、膜は、開いたヒドロゲルネットワークからの任意の貫流汚染物質を捕捉して、グラフトされた不織布の耐用年数を長くすることができる、という理由から(フィルタの濁度減少により測定した場合)、媒体の下でともに用いられる孔径絶対定格を有する微多孔性膜が望ましい。
【0109】
濾過で使用する場合、対象となる生体サンプルと汚染物質とを含有する流体は、この2つを分離する応答性官能化不織布物品を通過することができる。いくつかの実施形態において、汚染物質はグラフトされたポリマーのヒドロゲルネットワークに保持され、対象となる生体サンプルは通過する。他の実施形態において生体生成物は、グラフトされたポリマーヒドロゲルネットワークによって保持され、汚染物質は通過する。流体の生物学的汚染又は「トリガ」(例えばイオン強度、極性有機又は無機種、糖蜜、塩、緩衝液、タンパク質、細胞残屑、ウイルス等)の存在に応じて、グラフトされたポリマーのヒドロゲルの間質孔(interstitial pores)又はボイドを変更してもよい。背圧が高いと浄水流動(トリガなし)が低いことが分かっている。高い水圧は、ヒドロゲルを圧潰又は圧縮させて、流量を更に減少させる。この圧潰又は圧縮は、z方向の平均流路を減少させ、かつ累積生物汚染物質の保持容積を低減させて、滞留時間を更に短くする。したがって、グラフトされた不織布は低圧でより良好に機能し、これにより、初期濾過工程の間、任意の剪断に感受性のあるタンパク質に対する剪断力が低減する。
【0110】
本明細書に記載のポリマーがグラフトされた不織布物品は、生物学的な流体相からの粒子及び不溶性汚染物質を、その膨張したマトリックスの至る所に保持することができる。少量の極性「トリガ」が存在する場合、水圧は急速に軽減される。各アニオン性モノマーユニットは、グラフトされたポリマー鎖の中の点電荷としての役割を果たし、水で全体的に構成されるイオンと電気の二重層、つまり水和層で囲まれていると考えられる。これは水分流動に抵抗する「剪断半径」を形成し、不織布のヒドロゲルネットワークを水圧で圧縮するように機能する。わずかなイオン的性質の差異は、二重層の内側及び外側シェルの崩壊を引き起こして、流量を増加させる。濾過中、「トリガ」への暴露後に背圧が軽減すると、水圧の欠如が原因で、不織布構造体は再度膨張する。
【0111】
濾過用途において、タンパク質のpKa及び緩衝溶液のpHにより、タンパク質などの天然高分子は、水中に分散した際に電荷を帯び、フィルタは捕捉又は貫流モードのいずれかで稼働し得る。例えば、正に帯電した細胞残屑又は宿主細胞タンパク質は、負に帯電したヒドロゲルへの電荷親和性により結合され、中性帯電モノクローナル抗体(mAb)としてこのような実態の通過を可能にする。所望のタンパク質の等電点(pI)未満にpHを調節すると、これは正の電荷をとり、ヒドロゲルネットワーク内に保持される。ますます多くの物質がフィルタの深さを徐々に通過するにつれ、正に帯電した汚染物質又は生成物は捕捉され、負に帯電した物質は通過するので、不連続ゲルは圧潰する。フィルタ要素の動的容量に達するまでこれが継続する。
【0112】
生物濾過用途では、高い濾過圧力は、タンパク質の剪断及びそれに続く変性を引き起こす可能性があるので、望ましくない。非汚染水のポンピングから生じる超過圧力により、膨張した不織布が水圧下で圧潰する可能性があり、これによりz方向の平均流路が減少して親和性のための滞留時間が短くなり、かつ累積生物汚染物の保持容積が低減するので、流量が更に制限的で望ましくないものとなる。したがって、本発明の物品は、移動相からの粒子及び不溶性汚染物質を、低い濾過圧力で、膨張したマトリックスの至る所で保持することが可能となる。
【0113】
本発明のポリマー官能化不織布物品は、物品の有効期間にわたって過度の圧力を蓄積することなく、汚染物質を取り込む。濾材の通常の汚損機構は、媒体が移動相から粒子をふるい分けて取り出すと、粒子が孔の中又は媒体の表面上に固まることができるというものである。その後、流量は減少し、圧力が蓄積し、そしてこれは、ケーキ層が圧縮される場合に深刻になる可能性がある。本発明のポリマー官能化不織布物品は、汚染物質が不連続なヒドロゲルマトリックスに衝突できるようにし、そこで汚染物質はマトリックスの中に容易に拡散して、固化又は圧縮による汚損を妨げる。汚染物質が加わるほど、汚染物質がヒドロゲルポリマーの巻きひげ上に取り込まれ、かつ吸着されることから、不織布の間質腔の中により大きなスペースが得られる。
【0114】
バイオセパレーション用途では、一般に、定速又は定圧モードのいずれかで「垂直流(normal flow)」濾過が行われる。定速モードでは、設定された量の流体がポンプから供給され、フィルタが汚れるにつれてフィルタ内の圧力が増加し、濾過プロセスは公称圧力値(通常約30psi(206.8kPa)以下)で停止して、標的タンパク質を手付かずにしておく。定圧モードでは、供給速度が停止する又は低くなって実際的ではなくなり、濾過プロセスが停止するまで、設定圧力が流体に印加され、かつ流通させられる。アフィニティークロマトグラフィーで用いられる典型的な低から高までの流速は、約50〜600LMH(リットル/(メートル時間)であり、又は前面の流速は.08〜1mL/(分−cm)である。47mmの試験用ハウジングは、約13cmの利用可能表面積を有するので、13mL/分の速度は、商業的手順において用いられる規定された高い600LMHと等価な性能である。層の数、各層の厚さ、繊維サイズ、及びグラフトする量によっては、本発明の浄水流動は、1mL/(分−cm)(13mL/分)で75psi(517.1kPa)もの高さを観測した。極性トリガの導入により、この圧力は1psi(6.9kPa)未満まで減少する。緩衝液(トリガとして機能する)を非汚染水とともに放水することで、高圧に戻る。
【0115】
本明細書に記載のポリマーがグラフトされた不織布基材は、対称性又は非対称性微多孔性膜(傾斜多孔度を有する)、及びこのような膜の単一層又は複層のような微多孔性膜と組み合わされてもよい。有用な微多孔性膜は、ナイロン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、エチレン−トリクロロフルオロエチレンから製造されるものを、単層、複層等で含む。好ましくは、これらの膜は親水性である。微多孔性膜は、0.01〜150μm、好ましくは0.1〜100μmの範囲の対称孔径、及び25〜500μmの厚さを有してもよい。別の実施形態では、グラフトされた不織布基材は、0.01〜150μmの傾斜平均孔径を有する非対称性微多孔性膜と組み合わされてもよい。他の実施形態では、各層が15〜0.02μm、好ましくは10〜0.8μmといった連続的に細くなる多孔性、及び75〜1200μmの全厚さを有する、微多孔性膜の複層を組み合わせて使用してもよい。対称性多孔性及び傾斜した多孔性の両方を有する微多孔性膜の複層を組み合わせて使用してもよい。更に、微多孔性膜は、親水性、疎水性又は電荷結合能といった微多孔性膜表面特性を変化させるために、グラフトされたポリマーであってもよい。
【0116】
更に、グラフトされた不織布基材の1つ以上の層を、微多孔性膜の1つ以上の層と組み合わせてもよい。例えば、1〜6層のグラフトされた不織布基材を、微多孔層と組み合わせてもよい。グラフトされた不織布基材の各層は、同じであっても、又は異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、これらの層は、特定の不織布基材、不織布基材の厚さ、その中に使用されるポリマー、繊維サイズ、多孔性、空隙容量、嵩、引張強度、表面積、グラフトする重量又は密度、ポリマーグラフトの程度、及び/又はグラフトするポリマー中のモノマー濃度に関して同じであってもよく、又は異なっていてもよい。
【0117】
有用な市販の膜の例としては、CUNO Inc.(Meriden,CN)から入手可能なLifeAssure(商標)又はSterAssure(商標)キャストナイロン微小多孔性膜が挙げられる。有用な微小多孔性膜は、米国特許第6,413,070号、同第6,513,666号、同第6,776,940号、同第6,056,529号、及び同第6,264,044号(Meyeringら)、同第5,006,247号(Dennisonら)、同第3,876,738号(Marinaccioら)、同4,707,265号(Barnesら)、及び同第4,473,474号(Ostreicherら)に開示されており、それぞれ参照することによって組み込まれる。有用なグラフトポリマー官能化微小多孔性膜は、2008年12月23日に出願されたPCT/US2008/088106号に記載され、本明細書において参照として組み込まれる。
【0118】
微多孔性膜とグラフトされた不織布との組み合わせは、精密濾過膜を保護して、その耐用年数を延ばし、膜は、開いたヒドロゲルネットワークを通過するあらゆる貫流汚染物質を捕捉して、グラフトされた不織布の効率を改善する。濁度減少、UV、DNA定量化及びELISA法などの当該技術分野において既知の技術を用いて、汚染物質を測定することができる。
【0119】
物品は、改良された濾過効率をもたらす吸着性デプスタイプフィルタモジュールにおいて、高い媒質充填密度を提供する。物品は、より高い流速(流動性)をもたらす吸着性デプスタイプフィルタモジュールにおいて、ある媒質質量に対して増加した表面積を更に提供する。典型的には、高性能のこれら望ましいフィルタ特性の達成と、高い流動性との間には矛盾がある。しかしながら、本発明の官能化不織布基材は、流動性を犠牲にすることなく、高い媒質充填密度を有するデプスタイプフィルタモジュールを提供する。
【0120】
ポリマー官能化不織布基材は、主に、吸着、拡散、及び衝突機構によって機能し、したがって、サイズ排除、捕獲及び吸着の組み合わせによって動作する従来の膜フィルタとは異なると考えられる。本発明のグラフトされた不織布のプレ層としての利点は、広範囲の汚染種でその深さ全体を通じて十分に利用されることである。捕獲及びサイズ排除により動作する従来的なフィルタは、不可避的に詰まり、かつ媒体の深さを欠き、膜汚れを防ぐか、又は遅らせるための保持ネットワークを汚染する。
【実施例1】
【0121】
特に注記がない限り、実施例及び明細書の残りの中の全ての部、百分率、比などは重量による。実施例の中で用いられる全ての試薬は、例えば、Sigma−Aldrich Company(Saint Louis,MO)などの一般化学品供給業者から購入したか、又は入手できるか、あるいは従来の方法によって合成してもよい。
【0122】
以下の調製、溶液及び試験手順は、ポリマーがグラフトされた不織布基材を評価するために使用された。
【0123】
調製1:ナイロン不織布基材A
B−24K(商標)ナイロン−6ポリマー(BASF Corporation Engineering Plastics(Wyandotte,MI)を使用してメルトブローン不織布基材を作製した。標準的なメルトブローイング用のドリルで穴を開けたオリフィスダイの上の溶融温度は295℃、質量流量は0.25g/孔/分であった。ダイ幅1メートル当たり350℃及び毎分975立方フィート(SCFM)(毎分27.8立方メートル(CMM))の熱風を用いて繊維を細くした。毎分1200メートル(m/分)の衝撃の面速度を有する繊維を小孔のあるテンレス鋼ベルト上のダイから0.30メートル収集し、ウェブを通って137m/分の面速度で引き出される200℃の空気の下で0.14秒間、その後同じ面速度の29℃の冷風によって0.8秒接合した。収集したウェブの坪量は、1平方メートル当たり48gであり、4.1μmの有効繊維長を有していた。ウェブの1リニアセンチメートル当たり(N/lcm)170ニュートンのニップ圧力を有する1.5m/分で移動する82℃に設定された2つの直径25cmの滑らかなスチールロールの間でカレンダー加工する前の収集したウェブは、0.4mmの厚さを有していた。得られたウェブの厚さは0.25mであった。
【0124】
調製2:ナイロン微小多孔性膜
9領域の強化非対称性微小多孔性ナイロン膜を、米国特許第6,776,940号(Meyeringら)に記載のプロセスを用いて調製した。上述のように、単一ベースポリマー添加配合物を3つの部分に分割し、三方加熱操作装置に適用した。添加配合物を3つの異なる温度に加熱して、3つの個別領域を得た。非対称性微多孔性膜を形成するために、用いる温度のそれぞれを選択して、それぞれの領域に孔径を形成した。第1の領域(上方領域)は最大孔径を有し、第2の領域(中間)領域は中間孔径を有し、第3の領域(下方領域)は最小孔径を有した。この膜は、3つの連続する、漸次的に小さくなる孔径の排除領域を有する単一層であった。
【0125】
9領域の非対称微小多孔性膜は、3つの3領域非対称微小多孔性膜を積層することによって調製された。第1微小多孔性膜(およそ5.0:2.4:1.2μmの3領域における平均孔径を有する上層)が、第2中間層(およそ1.0:0.8:0.65μmの3領域における平均孔径を有する)に積層され、これはひいては第3の下層(およそ5.0:2.4:1.2μmの3領域における平均孔径を有する)に積層された。
【0126】
結果は、上面が最大孔径を有し、最下層に向かうにつれて孔径が小さくなる状態の9つの独立した多孔性領域を有していた。9つの連続する領域の平均孔径は、約5.0;2.4;1.2;1.0;0.8;0.65;0.45;0.30;及び0.20μmであった。
【0127】
積層方法は一般的に、米国特許第3,876,738号(Marinaccioら)に記載され、プロセスは防衛的な開示T−103,601(Repetti)に一般的に記載されている。要約すると、Marinaccio参照文献の方法は、ポリマードープを薄層にキャストすることと、溶媒浴の中でこのドープを急冷して連続微多孔性膜を形成することと、水浴の中で膜をすすいで残留溶媒を除去することと、を含む。これは、乾燥に機械を有する前は成形時のように湿潤している膜である。Marinaccio膜の成形時のように湿潤している層は、防衛的な開示T−103,601(Repetti)に記載されているやり方で積層されると、個々の層の間に強力な物理的接着を形成する能力を有している。要約すると、個別の層(個別の3つの領域の膜)を湿式積層し、キャスト及び急冷されているが場乾燥されていない膜を、軽い圧力下で結合し、その後一緒に乾燥する。
【0128】
調製3:ナイロン不織布基材Aのグラフト官能化
グローブボックスの中で窒素雰囲気下で調製1のナイロン不織布基材Aの30cm×43cmサンプルの空気をパージし、ZIPLOC(商標)プラスチックバッグに挿入して密封した。次に、密封バッグをグローブボックスから取り出し、加速電圧300kV及びウェブ速度20フィート/分(6.1m/分)に設定した電子ビームに通過させることによって40キログレイ(kGy)の照射線量レベルまで照射した。密封バッグを窒素雰囲気で制御されたグローブボックスに戻した後、照射された不織布基材を取り出して、照射されていない窒素パージZIPLOC(商標)バッグの内部に置いた。
【0129】
新しく調製した不織布サンプルを、表1に示される混合物を含む、100グラムの窒素パージした含浸溶液に含浸し、殆どの窒素を排出した後に袋を再封止した。この工程中、グローブボックス内の酸素濃度は、一般的に、40部/百万部(ppm)未満に維持された。
【0130】
サンプルは、袋内で平坦に維持され、12時間均等に飽和させた。得られるグラフトされたナイロン不織布基材をバッグから取り出し、2リットルの新しい脱イオン水を有するトレイの中に10分浸すことにより注意深く洗浄した。基材をトレイから取り出し、ペーパータオルの複層の間で圧縮し、新しい脱イオン水を用いて洗浄プロセスを更に2回繰り返し、風乾した。
【0131】
【表2】

【0132】
調製4:微小多孔性膜のグラフト官能化
調製2の微小多孔性膜は、膜を、20重量%の2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アンモニウム塩モノマー、15重量%のメタノール、65重量%の水からなるグラフト溶液に含浸することによって官能化された。膜を2つの4ミル(101.6μm)ポリエチレンテレフタレー(PET)ライナーの間には挟み、ゴムローラで圧延して空気及び溶液を除去し、大きな孔径の表面をビームに向けた状態で毎分20フィート(fpm)(6.1m/分)のウェブ速度で電子ビームに通過させ、300キロボルトの加速電圧でおよそ40キログレイ(kGy)の線量を受けることによって、直接照射した。脱イオン水の中ですすいで膜を3回洗浄し、次に空気乾燥した。
【0133】
静的結合能試験
約0.6mg/mL IgG(Equitech Bio(Kerrville,TX)からのヒト免疫グロブリンG)抗原投与溶液が、pH 4.5で、40mM NaClを有する50mMアセテート緩衝剤中で調製された。
【0134】
調製3からの官能化基材A、B及びCの25mm直径ディスクが、ダイカットパンチを使用して穿孔された。調製4の非対称ナイロン微小多孔性膜で調製したサンプルは「D」と指定される。
【0135】
表2に示されるように、15mL及び50mLポリプロピレンFalconチューブが、1枚及び2枚のディスクを備えた。15mLチューブは、5mLのIgG抗原投与溶液を充填された。50mLチューブは、40mLの同抗原投与溶液を充填された。チューブは、室温で一晩震盪させた。溶液中に残る結合されていないIgGの濃度は、280nmの紫外線吸収を測定することによって判定された。膜の静的結合能は、以下の等式を使用して計算された:
【数2】

【0136】
結果が表2に示される。「ウェブ容積」とは、IgGにより抗原投与されるウェブの測定される容積を指し、ディスク積み重ね体の前部面積及び積み重ね体厚さの測定値から決定される。
【0137】
【表3】

【0138】
動的結合能試験
ヒト免疫グロブリンG(Equitech Bio(Kerrville,TX))が、pH 4.5で、40mMのNaClを有する50mMアセテート緩衝剤中で、4mg/mLの濃度の抗原投与溶液として調製された。抗原投与溶液の280nmにおける、吸収率が実験により判定され、吸収率最大値として示される。膜は、AKTAクロマトグラフィー(GE Healthcare,NY)に取り付けられた25mm直径ホルダーに配置された、4層積み重ね体のディスク(調製3及び4から)に抗原投与溶液を流すことにより、動的結合を分析された。
【0139】
流量は1mL/分であり、紫外線検出器は280nmでモニタリングするように設定された。IgG貫流曲線は、吸収性最大値の5及び10%に対応する抗原投与を判定するように使用された。5%及び10%貫流における動的結合能(DBC)が、以下の等式により計算される:
【数3】

【0140】
DBCの結果が図3及び図6に示される。表3に示されるように、実施例1〜6において、グラフトされていない微小多孔性膜(調製2から)又はグラフトされた微小多孔性膜(調製4)が、3層積み重ね体のグラフトされた不織布基材の下流に配置された。
【0141】
比較目的のため、4層積み重ね体のグラフトされた不織布基材が、3層のグラフトされた微小多孔性膜「D」(調製4から)と交換され、グラフトされていない微小多孔性膜(調製2から)の下流層が続いた。
【0142】
その結果を表3及び図6に示す。
【0143】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)0.7〜15マイクロメートルの平均繊維サイズと、50〜95%の空隙容量と、不織布基材の表面にグラフトされた、アニオン性モノマーユニットを含むポリマーと、を有する不織布基材を含む、物品。
【請求項2】
前記不織布基材が、グラフトの前に少なくとも4.0ニュートンの引張強度を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記不織布基材が、不織布基材の1平方メートル当たり15〜50mの表面積を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記不織布基材が、ASTM F 316−03 5に従って1〜40マイクロメートルの平均孔径を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記不織布基材が20%未満のソリディティを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記不織布基材が、スパンレイド、スパンレース、水流交絡、ウェットレイド、電気紡績、又はメルトブローン不織布基材である、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記グラフトされたポリマーの重量が、前記不織布基材の重量の0.5〜5倍である、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記不織布基材が、親水性熱可塑性ポリマーから調製される、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記グラフトされたコポリマーが、
a)80〜98重量%のグラフトするアニオン性モノマーと、
b)2〜20重量%のグラフトするポリ(アルキレンオキシド)モノマーと、
b)0〜10重量%の第2親水性モノマーと、の重合モノマーユニットを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記グラフトコポリマーが以下の式
−(Mアニオン性−(MPEG−(M
式中、
−(Mアニオン性−がw個の重合モノマーユニットを有するグラフトするアニオン性モノマーの残基を表し、wは少なくとも2であり、
−(MPEGが、x個の重合モノマーユニットを有する重合ポリ(アルキレンオキシド)モノマーを表し、xはゼロであり得、
−(Mがy個の重合モノマーユニットを有する重合親水性モノマー「c」を表し、yはゼロであり得る、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記コポリマーが、ランダム又はブロックコポリマーである、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記グラフトするブラシ状ポリマーが非架橋である、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記不織布基材が、10〜400g/mの坪量を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記不織布基材が、1マイクロメートル以下の平均有効繊維長を有するナイロン不織布基材である、請求項1に記載の物品。
【請求項15】
a.不織布基材を用意する工程と、
b.不活性雰囲気中で前記不織布基材を電離放射線に暴露する工程と、
c.前記暴露された基材を、グラフトするアニオン性モノマーを含む溶液に含浸し、前記モノマーを前記不織布基材の表面にグラフト重合する工程と、を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の物品を作製する方法。
【請求項16】
前記含浸溶液が、第2の親水性グラフトするモノマーを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記含浸溶液が、
a)80〜98重量%のグラフトするアニオン性モノマーと、
b)2〜20重量%のグラフトするポリ(アルキレンオキシド)モノマーと、
b)0〜10重量%の第2の親水性モノマーと、を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記含浸溶液が、水性/水溶性有機溶媒溶液を含み、該有機溶媒が三級水素原子を有さない、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記不織布基材が、1〜200kGysの電離放射線に暴露される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記含浸溶液がポリエチレン性不飽和モノマーを含まない、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
e−ビームエネルギーへの暴露が、前記不織布基材の前記表面上にフリーラジカル部位を生成して、前記モノマーのグラフト重合を開始する、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記余剰モノマー溶液を除去し、かつ乾燥させる工程を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記グラフトするアニオン性モノマーが以下の一般式を有し、
【化1】


式中、
はH又はCHであり、
Xは、−O−又は−NR−であり、
Yは、直鎖又は分枝鎖アルキレンであり、
Zはアニオン性基である、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記グラフトするポリ(アルキレンオキシド)モノマーが以下の式を有し
Z−Q−(CH(R)−CH−Q)−R、III
式中、Zは、重合可能エチレン性不飽和部分であり、RはH又はCH、RはH、C〜Cアルキル基、アリル基又はこれらの組み合わせであり、mは2〜100であり、Qは−O−、−NR−、−CO−及び−CONRから選択される二価結合基である、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記含浸溶液の前記グラフトするモノマーの重量が、前記不織布基材の前記重量0.5〜5倍である、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記含浸溶液中の前記グラフトするモノマーの重量が、前記含浸溶液の全重量を基準として5重量%〜30重量%である、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
流体入口と、
流体出口と、
前記流体入口及び前記流体出口を流体接続する濾材と、を含む、フィルタ装置であって、
前記濾材は請求項1〜15のいずれか一項に記載のグラフトされた不織布基材を含む、フィルタ装置。
【請求項28】
前記濾材が、前記グラフトされた不織布基材の下流に位置付けられる微多孔性膜層を更に含む、請求項27に記載のフィルタ装置。
【請求項29】
前記濾材が複数のひだを含む、請求項27に記載のフィルタ装置。
【請求項30】
前記濾材が複数のひだを含む、請求項29に記載のフィルタ装置。
【請求項31】
フィルタカプセルと、
前記フィルタカプセルに接続されるフィルタキャップと、を更に含み、
前記フィルタキャップが前記流体入口及び前記流体出口を含み、前記濾材が前記フィルタカプセル内に封入される、請求項27に記載のフィルタ装置。
【請求項32】
前記濾材が、前記グラフトされた不織布基材の下流に位置付けられる微多孔性膜層を更に含む、請求項31に記載のフィルタ装置。
【請求項33】
前記濾材が、複数のひだを備える第1の媒体シリンダ内に形成される、請求項31に記載のフィルタ装置。
【請求項34】
複数のひだを備える第2の濾材を含んで、前記第1の媒体シリンダの中に位置付けられる、第2の媒体シリンダを更に備える、請求項33に記載のフィルタ装置。
【請求項35】
複数のひだを備える第2の濾材を含んで、前記第1の媒体シリンダの中に位置付けられる、第2の媒体シリンダを更に備える、請求項31に記載のフィルタ装置。
【請求項36】
コアを更に備え、前記濾材が前記コアの周囲に螺旋状に巻き付く、請求項27に記載のフィルタ装置。
【請求項37】
分離要素と、
縁部シールと、を更に含み、
前記分離要素が、
前記流体入口と流体連通する中央コア、
第1の側、及び
第2の側を含み、
前記濾材が、
前記分離要素の前記第1の側に位置付けられ、外周縁部及び内周縁部を有する第1の媒体ディスク、並びに
前記分離要素の前記第2の側に位置付けられ、外周縁部及び内周縁部を有する第2の媒体ディスクを含み、
前記第1の媒体ディスク及び前記第2の媒体ディスクの前記外周縁部が、前記縁部シールにより接続され、前記第1の媒体ディスク及び前記第2の媒体ディスクの前記内周縁部が前記中央コアに接続される、請求項27に記載のフィルタ装置。
【請求項38】
前記第1及び第2の媒体ディスクが、前記グラフトされた不織布基材の下流に位置付けられる微多孔性膜層を更に含む、請求項37に記載のフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−531531(P2012−531531A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517572(P2012−517572)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/038488
【国際公開番号】WO2010/151447
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】