説明

官能化多孔質材料及び医療用具におけるその使用

【課題】生体適合性のある多孔質ポリマー材料、その製造方法の提供。
【解決手段】ポリマー及び官能性添加剤から成り、前記官能性添加剤の少なくとも一部によって規定された領域を有する表面をもつ多孔質基材と、前記領域に共有結合又は非共有結合により結合した生物学的又は化学的成分とを有する材料。該材料は医療用具等における有用性がある。特定の実施形態は、化学的又は生物学的成分が直接的に又はスペーサーを介して結合した表面構造を有する多孔質ポリマー基材を含む材料を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学的又は生物学的成分が結合した多孔質ポリマー材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多孔質ポリマー材料は、様々な用途において使用することができる。これらの用途としては、代用血管として役立つ医療用具、合成眼内レンズ、電極、カテーテル、及び外科手術又は透析を補助するために人体に連結する用具のような体外用具が挙げられる。多孔質ポリマー材料は、血液を血球成分と血漿成分に分離するためのフィルター、血液から微生物を除去するためのマイクロフィルター、及び移植の際の内皮の損傷を防ぐためのオプサルミックレンズ(opthalmic lenses)用コーティングとしても使用することができる。
【0003】
ポリマー以外の材料を多孔質ポリマー材料に結合させることにより、多孔質ポリマーの特性を変えることができる。特性を組み合わせると、上述の目的に適した多孔質ポリマーが得られる。しかしながら、こうした組み合わせは、ポリマーの元来の特性のために、達成するのが困難である。
【0004】
しかしながら、典型的なポリマーの疎水性により、ポリマーから製造される多孔質材料の有用性が限定されてしまう。例えば、タンパク質は、そのような材料と接触するとしばしば変性してしまう。しかし、コンタクトレンズ、移植片、及び人体に密着する関連用具は、生体適合性のある親水性表面を有していなければならない。
【0005】
プラスチック表面の物理的及び/又は化学的特性は、該表面に異なる材料を接着させるか、又は結合させることにより変えることができる。こうした技術の例は、多孔質樹脂膜に関する米国特許第4,619,897号や、生体適合性のある表面を有する器具に関する米国特許第4,973,493号により開示されている。表面修飾の他の例は、米国特許第5,077,215号、第5,183,545号、及び第5,203,997号に示されており、これらにおいては、フルオロカーボン支持体表面にアニオン性及び非イオン性フルオロカーボン界面活性剤を吸着させることが開示されている。
【0006】
表面修飾のさらなる例は、支持体にポリマー鎖を吸着させることが開示されている米国特許第5,263,992号や、アミノ化した基材にポリアルキルイミンを共有結合させることが開示されている米国特許第5,308,641号に見出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭52−34978号公報
【特許文献2】国際公開第97/28898号
【特許文献3】特表2000−517352号公報
【特許文献4】欧州特許出願公開第950421号明細書
【特許文献5】特開昭59−197439号公報
【特許文献6】特開2000−42422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ポリマー材料の表面の修飾には様々な技術が利用できるにもかかわらず、その多くは、表面修飾の度合いを制御する能力が限定されており、また多くは、高価であり、効率が悪く、多孔質表面を修飾するのにその細孔を覆ったり塞いだりせずに使用することができない。添加剤の組み込み及び/又はこれらの添加剤の後処理に応じてその官能性(functionalities)を変えることができるポリマー材料が必要とされている。本発明は、このような要求に対処する新しい多孔質ポリマー材料及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、新規な多孔質材料及びその製造方法を包含する。本発明の材料は、化学的又は生物学的成分が直接又はスペーサーにより結合した多孔質基材を含む。
【0010】
本発明の第一の実施形態は、ポリマー及び官能性添加剤(functional additive)から成り、前記官能性添加剤の少なくとも一部によって規定された領域を有する表面をもつ多孔質基材と;前記領域に共有結合又は非共有結合により結合した生物学的又は化学的成分とを有する材料を包含する。この実施形態に包含される好ましい材料においては、表面は、官能性添加剤の少なくとも一部によって規定された複数の領域を有しており、各領域には化学的又は生物学的成分が共有結合により結合している。
【0011】
本発明の第二の実施形態は、ポリマー及び官能性添加剤から成り、前記官能性添加剤の少なくとも一部によって規定された領域を有する表面をもつ多孔質基材と;前記領域に共有結合又は非共有結合により結合したスペーサーと;前記スペーサーに共有結合又は非共有結合により結合した生物学的又は化学的成分とを有する材料を包含する。この実施形態に包含される好ましい材料においては、表面は、官能性添加剤の少なくとも一部によって規定された複数の領域を有しており、各領域にはスペーサーが共有結合により結合しており、スペーサーには生物学的成分が結合している。
【0012】
本発明の材料を製造することのできるポリマーの例としては、以下に限定されないが、ポリオレフィン、ポリエーテル、ナイロン、ポリカーボネート、ポリ(エーテルスルホン)、又はこれらの混合物が挙げられる。ポリエーテルとしては、以下に限定されないが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、ポリ(オキシ-1,4-フェニレン-オキシ-1,4-フェニレン-カルボニル-1,4-フェニレン))、ポリエーテルスルホン(PES)、又はこれらの混合物が挙げられる。ポリオレフィンとしては、以下に限定されないが、エチレンビニルアセテート、エチレンメチルアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ポリ(1-ブテン)、ポリスチレン、ポリ(2-ブテン)、ポリ(1-ペンテン)、ポリ(2-ペンテン)、ポリ(3-メチル-1-ペンテン)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、1,2-ポリ-1,3-ブタジエン、1,4-ポリ-1,3-ブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましいポリオレフィンは、ポリエチレン又はポリプロピレンである。
【0013】
官能性添加剤は、官能基を含む材料であり、以下に限定されないが、ヒドロキシル、カルボン酸、無水物、ハロゲン化アシル、ハロゲン化アルキル、アルデヒド、アルケン、アミド、アミン、グアニジン、マレイミド(malimide)、チオール、スルホネート、スルホン酸、スルホニルエステル、カルボジイミド、エステル、シアノ、エポキシド、プロリン、ジスルフィド、イミダゾール、イミド、イミン、イソシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、又はアジドが挙げられる。好ましい官能基は、ヒドロキシル、アミン、アルデヒド、又はカルボン酸である。特に好ましい官能基は、ヒドロキシルである。官能性添加剤の例としては、以下に限定されないが、シリカ粉末、シリカゲル、チョップドガラス繊維(chopped glass fiber)、制御多孔質ガラス(controlled porous glass, CPG)、ガラスビーズ、すりガラス繊維(ground glass fiber)、ガラスバブル(glass bubble)、カオリン、酸化アルミナ、又は他の無機酸化物が挙げられる。
【0014】
本発明の第二の実施形態において有用なスペーサーの例としては、以下に限定されないが、シラン、官能シラン(アルデヒド、アミノ、エポキシ、ハロゲン化物などの官能基)、ジアミン、アルコール、エステル、グリコール(ポリエチレングリコールなど)、無水物、ジアルデヒド、末端二官能化ポリウレタン、ジオン、マクロマー、末端基(以下に限定されないが、アミノ、カルボン酸、エステル、アルデヒドが挙げられる)を有する二官能及び多官能ポリマー、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましい材料においては、多孔質基材及び生物学的又は化学的成分が結合しているスペーサーは、式I:
【化1】

(式中、波線により切断された結合は、スペーサーと基材又は他の成分との間の結合であり、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素、置換又は未置換のアルキル、アリール、又はアラルキルであり、R3は置換又は未置換の脂肪族鎖又は結合であり、nは約1〜約18の整数であり、好ましくはnは約1〜約10の整数であり、さらに好ましくは約2〜約5である)
で表される。
【0015】
様々な化学的及び生物学的成分を本発明の材料の多孔質基材又はスペーサーに結合させることができる。例としては、以下に限定されないが、薬物(例えば、医薬品)、親水性成分、触媒、抗生物質、抗体、抗真菌剤、炭水化物、サイトカイン、酵素、糖タンパク質、脂質、核酸、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、リガンド、細胞、リボザイム、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0016】
本発明の特定の材料は、官能性添加剤が埋め込まれた表面を有する多孔質ポリエチレン基材と、前記官能性添加剤の少なくとも一部に共有結合により結合した式II:
【化2】

(式中、R1、R2、及びR4はそれぞれ独立して水素、置換又は未置換のアルキル、アリール、又はアラルキルであり、R3は置換又は未置換の脂肪族鎖又は結合であり、XはOH、NH2、CHO、CO2H、NCO、エポキシ等のような生物学的又は化学的成分に結合できる基であり、好ましくはXはNH2又はCHOであり、nは約1〜約18の整数であり、好ましくはnは約1〜約10の整数であり、さらに好ましくは約2〜約5である)
で表されるスペーサーとを有する。
【0017】
本発明のさらに別の特定の材料は、官能性添加剤が埋め込まれた表面を有する多孔質ポリエチレン基材と、前記官能性添加剤の少なくとも一部及び化学的又は生物学的成分に共有結合により結合している式Iで表されるスペーサーとを有する。好ましくは、化学的又は生物学的成分は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ペプチド、細胞、リガンド、又はタンパク質である。
【0018】
本発明の第三の実施形態は、多孔質基材(ここで、この多孔質基材はポリマー及び官能性添加剤から成り、またこの多孔質基材は前記官能性添加剤の少なくとも一部によって規定された領域を有する表面をもち、前記領域は少なくとも1個の官能基を有する)を形成する工程;前記官能基とスペーサーとを、前記官能基の原子と前記スペーサーの原子との間に共有結合を形成させるのに適した反応条件下で接触させる工程;及び前記スペーサーと化学的又は生物学的成分とを、前記スペーサーの原子と前記化学的又は生物学的成分の原子との間に共有結合又は非共有結合を形成させるのに適した反応条件下で接触させる工程を含む材料の製造方法を包含する。
【0019】
好ましい方法においては、官能基は、ヒドロキシル、カルボン酸、無水物、ハロゲン化アシル、ハロゲン化アルキル、アルデヒド、アルケン、アミド、アミン、グアニジン、マレイミド(malimide)、チオール、スルホネート、ハロゲン化スルホニル、スルホニルエステル、カルボジイミド、エステル、シアノ、エポキシド、プロリン、ジスルフィド、イミダゾール、イミド、イミン、イソシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、又はアジドである。好ましい官能基は、ヒドロキシル、アミン、アルデヒド、及びカルボン酸である。
【0020】
本発明の第四の実施形態は、多孔質基材(ここで、この多孔質基材はポリマー及び官能性添加剤から成り、またこの多孔質基材は前記官能性添加剤の少なくとも一部によって規定された領域を有する表面をもち、前記領域は少なくとも1個のヒドロキシル基を有する)を形成する工程;及びヒドロキシル基と、式II:
【化3】

(式中、R1、R2、R4、X及びnは先に定義したとおりである)
で表される化合物とを、式III:
【化4】

(式中、R1、R2、X、及びnは式IIについて先に定義したとおりであり、Surfaceは基材の表面である)
で表される材料の形成に適した条件下で接触させる工程を含む材料の製造方法を包含する。
【0021】
多孔質基材は少なくとも二つの方法により形成できる。ある方法においては、式II又はIVで表される化合物を結合させるのに先立ち、ビーズを他のポリマービーズと共に焼結する。別の方法においては、ビーズを焼結して多孔質基材を形成するのに先立ち、ビーズの表面に式II又はIVで表される化合物を結合させる。
【0022】
本実施形態の特定の方法においては、式IIIで表される材料を、Xがアルデヒド又はカルボン酸である場合にはアミン基を有する化学的又は生物学的成分と、あるいはXがアミンである場合にはアルデヒド又はカルボン酸基を有する化学的又は生物学的成分と、式IV:
【化5】

(式中、R1、R2、R3及びnは式IIについて先に定義したとおりであり、Rは多孔質基材表面であり、Moietyは化学的又は生物学的成分である)
で表される材料の形成に適した反応条件下で接触させる。
【0023】
本実施形態の別の特定の方法においては、XがNH2である式IVで表される材料と、式V:
Z−Spacer−Z 式V
(式中、Spacerは親水性セグメントであり、Zはタンパク質、アミノ酸、オリゴヌクレオチド等に共有結合又は非共有結合により結合することのできる末端基である)
で表される化合物とを、式VI:
【化6】

(式中、Rは多孔質基材の表面であり、R1、R2及びnは式IIについて先に定義したとおりである)
で表される材料の形成に適した反応条件下で接触させる。
【0024】
好ましくは、スペーサーは、タンパク質、アミノ酸、オリゴヌクレオチドに結合することのできる末端基(Z)を有する親水性のポリウレタン、ポリエチレングリコール、又は高分子電解質であり、ここでZとしては、以下に限定されないが、イソシアヌレート、アルデヒド、アミン、カルボン酸、N-ヒドロキシスクシミド(N-hydroxysuccimide)等が挙げられる。
【0025】
本発明の第六の実施形態は、ポリオレフィン粒子と官能性添加剤粒子の混合物を形成する工程、及び前記混合物を焼結する工程を含み、官能性添加剤が官能基を有し、混合物中の官能性添加剤の濃度が、焼結したポリオレフィン基材の表面における官能基の密度にほぼ比例している、焼結ポリオレフィン基材の官能化を制御する方法を包含する。好ましい実施形態においては、官能性添加剤は、シリカ粉末、シリカゲル、チョップドガラス繊維、制御多孔質ガラス(CPG)、ガラスビーズ、すりガラス繊維、ガラスバブル、カオリン、酸化アルミナ、又は他の無機酸化物である。
【0026】
定義
本明細書で使われる「アルキル」という用語は、特に指示がない限り、直鎖状、環状、又は分枝部分又は前記部分の組み合わせを有する飽和した一価又は二価の炭化水素基を含む。アルキル基は、1個又は2個の二重結合又は三重結合を含んでいてもよい。環状アルキル基は少なくとも3個の炭素原子を含むものと理解される。
【0027】
本明細書で使われる「アラルキル」という用語は、特に指示がない限り、アルキル基で置換されたアリール、又はアリール基で置換されたアルキルを含む。アラルキルの例は、基-(CH2)pArであり、式中、pは1から約4、8、又は10までの整数である。
【0028】
本明細書で使われる「アリール」という用語は、特に指示がない限り、一つの水素を除去することにより芳香族炭化水素から誘導された有機基を含み、フェニル、ナフチル等がある。
【0029】
本明細書で使われる「ハロ」という用語は、特に指示がない限り、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを意味する。好ましいハロ基は、フルオロ、クロロ、又はブロモである。
【0030】
本明細書で使われる「非共有結合(により)」という用語は、特に指示がない限り、結合を記述するのに使うときは、二つの原子又は分子間のイオン性相互作用、Van der Waals相互作用、水素結合相互作用、立体相互作用、親水性相互作用、又は疎水性相互作用により形成される結合を意味する。
【0031】
本明細書で使われる「置換された」という用語は、特に指示がない限り、化学的成分を記述するのに使うときは、その成分の一つ以上の水素原子が置換基で置き換えられていることを意味する。置換基の例としては、以下に限定されないが、アルキル及びハロが挙げられる。
【0032】
本明細書で使われる「ヘテロアリール」という用語は、特に指示がない限り、少なくとも一つの炭素原子が、O、S、P、Si、又はN原子で置き換えられたアリール基を意味する。
【0033】
本明細書で使われる「ヘテロ環基」及び「ヘテロ環」という用語は、特に指示のない限り、O、S、P、Si、又はNからそれぞれ選ばれた一つ以上のヘテロ原子を含む芳香族及び非芳香族のヘテロ環基を含む。非芳香族のヘテロ環基は、その環系に少なくとも三つの原子を有していなければならないが、芳香族のヘテロ環基(即ち、ヘテロアリール基)は、その環系に少なくとも五つの原子を有していなければならない。ヘテロ環基としては、ベンゾ-縮合環系及び一つ以上のオキソ部分によって置換された環系が挙げられる。3員環のヘテロ環基の例は、エポキシドであり、4員環のヘテロ環基の例は、アゼチジニル(アゼチジンから誘導される)である。5員環のヘテロ環基の例は、チアゾリルであり、10員環のヘテロ環基の例は、キノリニルである。非芳香族のヘテロ環基の例は、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、3H-インドリル、及びキノリジニルである。芳香族へテロ環基の例は、ピリジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンズオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、及びフロピリジニルである。前述の基は、先に列挙した化合物から誘導されるものであるが、そのような結合が可能であれば、C-結合又はN-結合である。例えば、ピロールから誘導される基は、ピロール-1-イル(N-結合)又はピロール-3-イル(C-結合)であり得る。
【0034】
本明細書で使われる「高分子電解質」という用語は、特に指示のない限り、電荷を有するポリマーを意味する。高分子電解質は、錯体の形態で存在し、これはシンプレックスとも呼ばれる。高分子電解質は、ポリ酸、ポリ塩基、及び高分子両性電解質に分けられる。鎖中の電荷密度に応じて、高分子電解質は強高分子電解質と弱高分子電解質に分けられる。弱高分子電解質の電荷は、イオン性基の解離定数及び溶液のpHにより決定される。水溶液中の強高分子電解質は、溶液のpHとは独立に、たいていはイオン化されている。典型的な弱ポリ酸高分子電解質としては、以下に限定されないが、ポリ(アクリル酸)及びポリ(メタクリル酸)が挙げられる。強ポリ酸高分子電解質としては、以下に限定されないが、ポリ(エチレンスルホン酸)、ポリ(スチレンスルホン酸)、及びポリ(リン酸)が挙げられる。弱ポリ塩基高分子電解質としては、以下に限定されないが、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリエチレンイミン(PEI)、及びポリビニルアミンが挙げられる。強ポリ塩基高分子電解質は、弱ポリ塩基高分子電解質の窒素、硫黄、又はリン原子をアルキル化することにより得ることができる。 “Concise Polymeric Materials Encyclopedia”(Joseph C. Salamone, 1999 by CRC Press LLC, ISBN 0-84932-226-X, pages 1140-1141)を参照されたい。
【0035】
本発明の様々な態様は、以下の図面を参照することにより理解される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、官能性添加剤からなる領域が多孔質のプラスチック基材内に埋め込まれている本発明の材料の側面図である。
【図2】図2は、様々な長さのスペーサーを多孔質の基材に結合し、その後これらのスペーサーに化学的又は生物学的成分を結合した様子を表現する図である。
【図3】図3は、多孔質基材には共有結合により結合しているが、化学的又は生物学的成分には非共有結合により結合しているスペーサーを含む本発明の材料を表す図である。
【図4】図4は、アミン末端を有するシランスペーサーを介して本発明の多孔質基材に化学的又は生物学的成分を共有結合により結合させる合成スキームを示す図である。
【図5】図5は、アルデヒド末端を有するシランスペーサーを介して本発明の多孔質基材に化学的又は生物学的成分を共有結合により結合させる合成スキームを示す図である。
【図6】図6は、多孔質基材と化学的又は生物学的成分とを連結するスペーサーの伸長を可能にする合成スキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
多くのプラスチックは、それから製造される材料の表面に化学的又は生物学的成分を結合させるのに利用することのできる反応性官能基(例えば、ヒドロキシル又はアミン基)を含んでいない。それ故、そのような材料の表面を修飾するのは困難である。本発明は、多孔質のプラスチック材料の表面の特性が、種々の量の官能性添加剤をかかる材料に組み込むことによって制御可能な方法で変更可能であるという発見に基づくものである。官能性添加剤とは、生物学的及び/又は化学的成分が共有結合により結合することのできる官能基を含む材料である。
【0038】
図1は、本発明の材料の様々な態様を描いたものである。特に、図1は、プラスチックと官能性添加剤から製造された多孔質基材を表現したものである。基材の表面上に露出した官能性添加剤の一部は、化学的又は生物学的成分(「CBM」と表記)が共有結合により結合することのできる官能基(図1では「Fn」と表記)を提供する。もう一つの方法として、スペーサーにより化学的又は生物学的成分を表面に連結させることができる。好ましくは、官能性添加剤の領域を取り巻くプラスチックは、たとえあるとしても官能基をほんのわずかしか含んでいない。あるいは、プラスチックは、ある反応条件下で官能性添加剤の官能基よりも反応性の低い官能基を含んでもよく、その結果、化学的又は生物学的成分は、主として独占的に官能性添加剤からなる領域に結合することができる。
【0039】
本明細書中の他のところで議論したように、多孔質基材を製造する元になるポリマー(例えばプラスチック)は、所望の強度、柔軟性、多孔性、及び耐劣化性を有する基材が得られるように選択される。価格や生体適合性のような他の因子も、その選択において役割を果たし得る。基材に結合される化学的又は生物学的成分は、所望の化学的及び/又は物理的特性を有する最終の材料が得られるように選択されるが、官能性添加剤の種類及び量は、基材に結合される化学的又は生物学的成分の数及び/又は密度に影響を与えるように選択される。例えば、官能性添加剤により与えられる官能基の化学反応性は、基材の表面に結合する成分の数に影響し得る。
【0040】
多孔質基材の表面への化学的又は生物学的成分の共有結合によりもたらされる化学的及び/又は物理的特性の例としては、以下に限定されないが、親水性及び生体適合性の向上が挙げられる。実際、本発明の好ましい材料の表面は親水性であり、表面張力の高い流体を容易に受け入れることができる。表面張力の高い流体の例としては、以下に限定されないが、水、塩水溶液、及びタンパク質溶液が挙げられる。親水性の基材は、典型的には約40 dyn/cm2以上、より典型的には約60 dyn/cm2以上の表面エネルギーを有しいる。
【0041】
本発明の材料は、様々な用途に使用することができる。例えば、生体適合性の材料は、以下に限定されないが、軟質又は硬質の組織プロステーシス、人工器官又は器官構成要素、又はコンタクトレンズや眼内レンズのような眼用のレンズなどの一時的又は永久的インプラントを得るのに使用することができる。本発明の生体適合性の材料により、以下に限定されないが、血液の凝固、組織の死滅、腫瘍の形成、アレルギー反応、異物拒否、及び炎症反応のような望ましくない反応が減少又は回避される。本発明の好ましいインプラントは、容易に製造し殺菌することができ、埋め込まれている間、又は組織や生物学的流体と接触している間、実質的にその物理的特性及び機能を維持する。
【0042】
本発明の材料は、医療用具として及び医療用具内にて使用することができる。医療用具の例としては、以下に限定されないが、透析チューブ及び膜、血液酸素付加チューブ及び膜、限外ろ過膜、診断センサー(例えば、ELISA及びサンドウィッチ検定)、及び薬物送達デバイスが挙げられる。
【0043】
多孔質基材
図1に示したように、本発明の典型的な材料は、少なくとも一種のプラスチックと少なくとも一種の官能性添加剤から製造された多孔質基材を含む。基材を得るのに使用されるプラスチック及び官能性添加剤の相対量及び種類は、材料の所望の特性(例えば、強度、柔軟性、及び実用性)に依存する。例えば、基材の強度及び柔軟性は、典型的には、含まれる官能性添加剤の量が減少するにつれて増大する。しかし、基材の表面上にある官能基の数は、典型的には、含まれる官能性添加剤の量が増加するにつれて増加するが、基材の特定の表面に官能性添加剤を集中させることは可能である。
【0044】
典型的な基材を得るのに使用されるポリマー(例えば、プラスチック)は、化学的成分、生物学的成分、及び他の成分(例えば、スペーサー)が結合することのできる官能基を、たとえ有するとしてもほんのわずかしか有していない。典型的なプラスチックは疎水性であり、約40 dyn/cm2以下、より典型的には約30 dyn/cm2以下の表面エネルギーを有している。好ましいプラスチックは、焼結する、あるいはそうでなければ成型することにより、強固で耐久性のある及び/又は柔軟な多孔質材料を容易に得ることができる。
【0045】
適切な基材を得るのに使用することのできるプラスチックの例としては、以下に限定されないが、ポリオレフィン、ポリエーテル、ナイロン、ポリカーボネート、ポリ(エーテルスルホン)、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましいプラスチックは、ポリオレフィンである。ポリエーテルの例としては、以下に限定されないが、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK、ポリ(オキシ-1,4-フェニレン-オキシ-1,4-フェニレン-カルボニル-1,4-フェニレン))、ポリエーテルスルホン(PES)、又はこれらの混合物が含まれる。ポリオレフィンの例としては、以下に限定されないが、エチレンビニルアセテート、エチレンメチルアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ポリ(1-ブテン)、ポリスチレン、ポリ(2-ブテン)、ポリ(1-ペンテン)、ポリ(2-ペンテン)、ポリ(3-メチル-1-ペンテン)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、1,2-ポリ-1,3-ブタジエン、1,4-ポリ-1,3-ブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましいポリオレフィンは、ポリエチレン又はポリプロピレンである。適切なポリエチレンの例としては、以下に限定されないが、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、又はこれらの誘導体が挙げられる。
【0046】
典型的なプラスチックは官能性を有しておらず、疎水性であるため、本発明に従ってプラスチックから製造される多孔質基材は、少なくとも1種の官能性添加剤を含む。官能性添加剤とは、生物学的及び/又は化学的成分が共有結合により結合することのできる官能基を含む材料である。官能基の例としては、以下に限定されないが、ヒドロキシル、カルボン酸、無水物、ハロゲン化アシル、ハロゲン化アルキル、アルデヒド、アルケン、アミド、アミン、グアニジン、マレイミド、チオール、スルホネート、ハロゲン化スルホニル、スルホニルエステル、カルボジイミド、エステル、シアノ、エポキシド、プロリン、ジスルフィド、イミダゾール、イミド、イミン、イソシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、又はアジドが挙げられる。好ましい官能基は、ヒドロキシル、アミン、アルデヒド、又はカルボン酸である。特に好ましい官能基は、ヒドロキシルである。
【0047】
官能基混合物は、基材内に二種以上の添加剤を含めるか、あるいは二種以上の官能基を含む添加剤を使うことにより、制御された比率で得ることができる。基材の表面上の官能基の存在、種類、及び密度は、滴定、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)、全反射減衰分光法(ATR)、及びX線光電子分光法により、又はD-1557スルホニルクロライド、フルオレセインイソチオシアネート、フルオレセインジクロロトリアジン等のような分子プローブを用いることにより、容易に決定することができる。
【0048】
好ましい官能性添加剤は、安価であり、熱処理の間、劣化(例えば、その官能性の損失)なしに多孔質基材に容易に組み込むことができる。官能性添加剤の例としては、以下に限定されないが、シリカ粉末、シリカゲル、チョップドガラス繊維、ガラスビーズ、すりガラス繊維、又はガラスバブルが挙げられる。好ましい官能性添加剤は、シリカ粉末又はガラス繊維であり、これらはヒドロキシル基を提供する。
【0049】
本発明の材料を得るのに使用される基材は、多孔質であり、その結果、気体又は液体分子が通過することのできるチャネルが一つ以上含まれる。好ましい基材は、平均孔径が、約10μm〜約200μmであり、より好ましくは約15μm〜約50μmであり、さらに好ましくは約20μm〜約30μmである。平均孔径及び孔密度は、例えば、水銀ポロシメーター、又は走査電子顕微鏡を用いて決定することができる。
【0050】
本発明の多孔質基材は、官能性添加剤の包有物(inclusions)が捕捉されている多孔質ポリマーマトリックスから成るので、典型的な基材の表面には、ポリマーマトリックス領域により取り囲まれた官能性添加剤の領域が含まれる。官能性添加剤の領域の表面密度及び大きさは、結合させる化学的又は生物学的成分の所望の密度などの、様々な因子に依存する。本発明の典型的な基材においては、官能性添加剤は、基材の表面積の約5%〜約60%を被覆し、より典型的には約10%〜約50%を被覆する。
【0051】
多孔質基材の製造
当業者に知られた様々な方法を多孔質基材の製造に使用することができる。そのいくつかの例としては、焼結、発泡剤及び/又は浸出剤の使用、米国特許第4,473,665号及び第5,160,674号(両者は参照により本明細書に組み込まれる)により開示されているようなマイクロセルを形成する方法、レーザー穿孔などの穿孔法、及び逆相沈殿法が挙げられる。どのように製造されるかに応じて、多孔質基材は、規則正しく配列された、ランダムな又は所定の直径を有するチャネルを有していてもよいし、及び/又はランダムに配置された、種々の形状及び大きさの孔を有していてもよい。孔径は、典型的にはその平均直径を意味するが、孔自体は必ずしも球状である必要はない。
【0052】
多孔質基材の孔やチャネルを形成するのに使用される特定の方法及びそれにより得られる多孔質基材の多孔度(即ち、平均孔径及び孔密度)は、最終的に多孔質材料が用いられる所望の用途によって様々であり得る。多孔度は、種々の材料の物理的特性(例えば、引張り強度及び耐久性)に様々な方法で影響を与え得るので、基材の所望の多孔度は、基材の材料自体によっても影響を受け得る。
【0053】
本発明の好ましい基材は、少なくとも一種のポリマー(例えば、プラスチック)の粒子と官能性添加剤(例えば、シリカ粉末やチョップドガラス繊維)の粒子を含む混合物を焼結することによって製造される。この混合物には、以下に限定されないが、潤滑剤、着色剤、及び充填剤のような任意の追加の材料を添加することもできる。ポリマーと官能性添加剤の相対量は、基材表面上の官能基の所望の数及び密度や最終材料の所望の強度に依存する。本明細書の他のところで議論したように、基材の強度は、官能性添加剤の量が増加するにつれて低下するが、官能性添加剤がそれを取り巻くプラスチックに接着し得る場合はそうではない。
【0054】
多孔質基材を得るのに使用されるプラスチック及び官能性添加剤の相対量は、使用される特定の材料、基材表面の所望の官能性、基材自体の強度及び柔軟性によって様々である。しかしながら、典型的には、多孔質基材を製造する元になる混合物は、約5%〜約60%、好ましくは約10%〜約40%、さらに好ましくは約20%〜約30%(重量%)の官能性添加剤を含む。
【0055】
ポリマー、官能性添加剤、及び任意の追加材料をブレンドして、均一な混合物を得て、次いでこれを焼結させる。最終製品の所望の大きさ及び形状(例えば、ブロック、チューブ、円錐、円柱、シート、又は膜)に応じて、米国特許第3,405,206号(参照により本明細書に組み込まれる)によって開示されているようなモールド、ベルトラインを用いて、あるいは当業者に知られた他の技術を用いて、これを達成することができる。好ましい実施形態においては、混合物をモールド中で焼結させる。適切なモールドは市販されており、当業者によく知られている。モールドの特定の例としては、以下に限定されないが、約1/8インチ〜約0.5インチの範囲の厚さのフラットシートや種々の高さ及び直径の丸型シリンダーが挙げられる。適切なモールド材料としては、以下に限定されないが、アルミニウムやステンレススチールのような金属や合金、高温熱可塑性樹脂、及び当業者に知られ且つ本明細書で開示された他の材料が挙げられる。
【0056】
好ましい実施形態においては、焼結材料を得るために圧縮成形型が使用される。この実施形態においては、モールドをプラスチックの焼結温度にまで加熱して、放置して平衡にし、それから圧力をかける。典型的には、この圧力は約1 psi〜約10 psiの範囲であり、焼結する混合物の組成及び最終製品の所望の多孔度に依存する。一般には、モールドにかける圧力が大きくなるほど、平均孔径は小さくなり、最終製品の機械強度は高くなる。圧力をかける時間も、最終製品の所望の多孔度に応じて様々であり、典型的には約2分〜約10分であり、より典型的には約4分〜約6分である。本発明の別の実施形態においては、圧力をかけずに、混合物をモールド中で焼結する。
【0057】
一旦、多孔質基材が形成されたら、モールドを放置して冷却する。モールドに圧力がかけられていたら、圧力がまだかけられている間か、あるいは圧力を除いた後に、冷却を行い得る。次いで基材をモールドから取り出し、場合によっては加工処理する。任意の加工処理の例としては、以下に限定されないが、殺菌、切断、ミリング、研磨、カプセル化、及び塗装が挙げられる。
【0058】
先に記述したような方法を用いて、様々な大きさ及び形状の種々の材料を適切な多孔質基材を得るのに使用することができる。ある実施形態においては、プラスチック及び/又は官能性添加剤の似たような大きさの粒子を焼結する。この実施形態においては、粒子の粒度分布が狭いのが好ましい(例えば、市販のふるいを用いて決定される)。これは、ほぼ同じ大きさの粒子はむらなくモールドに詰め込むことができることが見出されたからであり、また粒子の粒度分布が狭いと、均一な多孔度の基材(即ち、全体にわたり均一に分布した及び/又はほぼ同じ大きさの孔を含む基材)の製造が可能になるからである。溶液や気体は、透過性が高い領域と透過性が低い領域を含む多孔質材料よりも、均一な多孔性の材料中をより一様に流れる傾向があるので、このことは有利である。また、均一な多孔質基材は、実質的に異なった大きさの不均一に分布した孔を含む基材よりも、構造上弱い場所が少なそうである。こうした利点から見ると、ポリマーが粉末(即ち、粒子状)の形態で市販されている場合、使用に先立ち、ふるいにかけ、確実に望ましい平均粒径及び粒度分布にすることが好ましい。しかしながら、多くのポリマーは、粉末の形態で市販されていない。よって、極低温粉砕及び水中ペレット化のような方法を用いることで、ポリマーの粉末を調製することができる。
【0059】
極低温粉砕はよく知られた方法であり、異なる大きさのプラスチック及び官能性添加剤の粒子を調製するのに使用することができる。しかし、極低温粉砕は、それによって製造される粒子の大きさをほとんど制御できないので、それによって製造される粉末は、ふるいにかけることによって焼結粒子を確実に望ましい粒度及び粒度分布にしなければならない。
【0060】
プラスチック粒子は、水中ペレット化によっても製造することができる。水中ペレット化は、例えば、1998年4月23日に提出された米国特許出願第09/064,786号や1999年4月24日に提出された米国仮特許出願第60/044,238号において記述されており、両者は参照により本明細書に組み込まれる。この方法は、典型的には、少なくとも約36μMの直径の粒子の製造に限定されてはいるが、いくつかの利点がある。第一に、水中ペレット化は、製造される粒子の平均粒度を正確に制御することができ、多くの場合、これによって、さらなるふるいかけ工程の必要性がなくなり、廃棄される材料の量が減る。水中ペレット化の第二の利点は、粒子の形状をかなり制御することが可能になるということである。
【0061】
水中ペレット化を用いた熱可塑性粒子の形成には、典型的には、押し出し機、又は溶融ポンプ、水中ペレタイザー、及びドライヤーが必要である。熱可塑性樹脂を押し出し機又は溶融ポンプに供給して、半溶融状態になるまで加熱する。次いで、半溶融状態の材料をダイに通す。材料がダイから出てきたときに、少なくとも一つの回転羽根により細かく切断され、ここではこれを「予備粒子」と呼ぶ。押し出しの速度及び回転羽根の速度により、予備粒子から形成される粒子の形状が決定されるが、一方、ダイ穴の直径により平均粒度が決定される。水、あるいは予備粒子の冷却速度を速くすることのできる他の液体や気体を、刃身上や切断室に流す。これにより、切断された材料(即ち、予備粒子)は、粒子へと凝固し、次いで冷却剤(例えば、水)から分離し、乾燥し、保持容器内に放出する。
【0062】
水中ペレット化により製造される粒子の平均的大きさは、正確に制御することができ、多孔質基材に応じて、約0.014”(35.6μM)から約0.125”(318μM)の範囲とすることができる。平均粒度は、単にダイを変えることによって調整することができ、大きな孔のダイを使えば、それに比例して大きな粒子が得られる。粒子の平均的な形状は、押し出し速度及びこの方法で使用される水の温度を操作することによって最適化することができる。
【0063】
多孔質材料の特性は、それを製造するのに使用された粒子の平均粒度及び粒度分布に依存し得ると同時に、粒子の平均的な形状によっても影響を受け得る。その結果、本発明の別の実施形態においては、プラスチックの粒子及び官能性添加剤粒子は、実質的には球状である。この形状により、粒子をモールド内に効率的に詰め込むことが容易になる。実質的に球状の粒子、及び特に縁が滑らかな球状の粒子は、明確な温度範囲で一様に焼結する傾向もあり、望ましい機械特性及び多孔度を有する最終製品が得られる。
【0064】
本発明の特定の実施形態においては、プラスチック及び/又は官能性添加剤の粒子は、実質的に球状であり、粗い縁がない。その結果、この好ましい方法において使用される粒子が市販されているか、あるいは極低温粉砕により製造されているのであれば、熱細砕して、確実に滑らかな縁とし、ふるいにかけ、確実に適切な平均粒度及び粒度分布とする。熱細砕(thermal fining)は、粒子の粗い縁が滑らかになるように粒子を急速に混合し、場合によって加熱するよく知られた方法である。熱細砕に適したミキサーとしては、Littleford Day, Inc., Florence, Kentuckyから入手可能なWシリーズ強力ミキサーが挙げられる。
【0065】
粒度を正確に制御でき、滑らかで実質的に球状の粒子を製造することを可能にする水中ペレット化により製造された粒子は、典型的には、熱細砕したり、ふるいにかけたりする必要がない。
【0066】
基材表面の修飾
多孔質基材を形成したら、化学的及び/又は生物学的成分を、直接的に又は間接的に表面に結合させる。図2はこのプロセスを表現したものであり、スペーサー分子(例えば、少なくとも一つの官能基で置換されたアルカン)を基材の表面に結合させて、中間材料を得る。次いで、タンパク質のような化学的又は生物学的成分をスペーサーに結合させる。図2においても示されているように、スペーサーの長さは、中間材料を追加の化学的成分と反応させることによって場合によっては伸ばすこともでき、これにより第二の中間材料が得られ、これに化学的又は生物学的成分を結合させることができる。
【0067】
本明細書において、特定の例における使用によってのみ、スペーサーは、化学的又は生物学的成分と区別される。具体的に言うと、化学的又は生物学的成分は、少なくとも実質的な度合いまで、特定の材料の有用な物理的又は化学的特性をもたらすものである。例えば、バイオセンサーとして使用される材料における化学的又は生物学的成分とは、検出すべき分子を認識する、あるいは検出すべき分子と結合する、又は会合することが可能な成分である。それに対して、スペーサーは、多孔質基材の表面と化学的又は生物学的成分との間にある距離を与える化学的成分である。それでも、基材の表面から化学的又は生物学的成分を取り除くことによって、化学的又は生物学的成分の活性や有用性を増大させたり、容易にすることができる。しかしながら、当業者にとって容易にわかるように、ある例でスペーサーとして使用された成分が、別の例で化学的又は生物学的成分になり得る。
【0068】
基材の表面に直接結合したスペーサー及び生物学的又は化学的成分は、共有結合により結合しているか、あるいは強固な何箇所もの非共有結合的な相互作用により結合している。しかしながら、表面に結合した成分と表面に結合していない他の成分の間の結合は、共有結合である必要はない。例えば、図3は、多孔質基材に共有結合により結合したスペーサーから成る材料を表しているが、ここでは、スペーサーはリガンド−受容体を形成するか、薬理学的に活性な化学的又は生物学的な成分とハイブリダイゼーション型の結合を形成することができる。図3の表現に包含される材料の特定の例においては、スペーサーはオリゴヌクレオチドであり、化学的又は生物学的成分は、スペーサーに相補的なオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含む。
【0069】
さらに本発明は、固定された化学的又は生物学的成分を選択的に放出することのできるスペーサーを包含する。例えば、生理学的条件下で容易に加水分解する結合によって、あるいは特定のエネルギーの放射にさらされたときに破壊される結合によって、薬物はスペーサーに結合する。こうした材料は、薬物の制御放出に有用であり得る。
【0070】
基材表面と成分の間に共有結合を形成するためには、表面上の官能基は、その成分の化学的前駆体上の官能基に相補的でなければならない。別の言い方をすると、何が結合されるのであれ、表面及び前駆体上の官能基は、適切な反応条件下で共有結合を形成することができるものでなければならない。補完的な基の例としては、アミンとアルデヒドがあり、これは適切な条件下で反応して結合を形成することができる。その他の官能基の補完的な組み合わせは、当業者にとって明白である。
【0071】
スペーサーの例としては、以下に限定されないが、シラン、シランアルデヒド、ジアミン、アルコール、エステル、グリコール(ポリエチレングリコール等)、無水物、ジアルデヒド、末端二官能ポリウレタン、コハク酸、ジアミノヘキサン、グリオキシル酸、グリシン、デンドリマー、多官能ポリマー、及びジオンが挙げられる。好ましいスペーサーは、式I:
【化7】

(式中、波線により切断された結合は、スペーサーと基材又は他の成分との間の結合であり、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素、置換又は未置換のアルキル、アリール、又はアラルキルであり、R3は置換又は未置換の脂肪族鎖又は結合であり、nは約1〜約18の整数であり、好ましくはnは約1〜約10の整数であり、さらに好ましくはnは約2〜約5である。)
で表される。より好ましいスペーサーは、式VIII:
【化8】

(式中、R1、R2、及びnは先に定義したとおりであり、Rは多孔質基材の表面であり、XはOH、NH2、CHO、CO2H、NCO、エポキシ等のような、生物学的又は化学的成分に結合できる官能基であり、mは約1〜約5の整数であり、oは0〜約3の整数であり、さらに好ましくは、XはNH2又はCHOである)
で表される。その他のより好ましいスペーサーは、式IX:
【化9】

(式中、R、R1、R2、及びnは先に定義した通りである)
で表される。
【0072】
広範な種類の化学的及び生物学的成分を直接又はスペーサーを介して多孔質基材の表面に結合させることができる。そのような成分の例としては、以下に限定されないが、薬物(例えば、医薬品)、親水性部分、触媒、抗生物質、抗体、抗真菌剤、炭水化物、サイトカイン、酵素、糖タンパク質、脂質、核酸、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、タンパク質、細胞、リガンド、リボザイム、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0073】
基材の官能化
多孔質基材は、その表面への分子(例えば、スペーサーや化学的もしくは生物学的成分)の共有結合により本発明に従って官能化される。分子が基材の表面に直接結合していることもしばしばあり得る。しかしながら、スペーサーによって基材に間接的に化学的又は生物学的成分を結合させることが時には望ましい。
【0074】
例えば、生物学的成分が溶液中の分子と相互作用するのであれば、生物学的成分が結合している表面からある距離をおいたところに位置した場合、そのような分子とより容易に相互作用する。あるいは、生物学的成分の形状及び大きさによっては、生物学的成分と基材の表面の官能基との間の共有結合の形成が妨害されることがあり得る。そのような場合、当該成分を表面に連結するのにスペーサーが使用される。
【0075】
図4は、アミンで官能化された化学的又は生物学的成分を本発明の基材の表面に結合させ得る方法を図解したものである。この方法においては、末端アミンを有するシランが、表面に埋め込まれたシリカ粉末のような官能性添加剤によって与えられたヒドロキシル基と反応する。その結果生じた材料の末端アミンは、次いで例えば過剰のグルタルアルデヒドを用いて、アルデヒドに変換することができる。その後、得られた生成物を、適切な条件下でアミン官能化された化学的又は生物学的成分(例えば、タンパク質)に接触させると、本発明の材料が形成される。図5は、関連する方法を示したものであり、ここでは、基材表面と最初に反応させるシランが既に末端アルデヒドを有しており、それがアミン官能化された化学的又は生物学的成分と反応することができる。
【0076】
ある場合は、図4及び図5に示されたようなスペーサーは、有用な材料を得るためには、即ち、生物活性な物質にとって望ましい環境を得るためには、不十分な長さであることがある。そのような場合は、当業者にとって容易にわかる方法を用いて、スペーサーの長さを伸ばすことができる。ある例が図6に示されている。この方法によれば、末端アミンを有するシランが、表面に埋め込まれたシリカ粉末のような官能性添加剤によって与えられるヒドロキシル基と反応する。その結果生じた材料を、その後、適切な条件下で、式VI:
Z−Spacer−Z 式VI
(式中、Spacerは、親水性セグメントであり、Zは、タンパク質、アミノ酸、オリゴヌクレオチド等に共有結合又は非共有結合により結合することのできる末端官能基である。)
で表される化合物と接触させる。好ましくは、スペーサーは、タンパク質、アミノ酸、オリゴヌクレオチドに結合することのできる末端基(Z)を有する親水性ポリウレタン、ポリエチレングリコール、又は高分子電解質であり、ここで、Zとしては、以下に限定されないが、イソシアヌレート、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、N-ヒドロキシスクシミド等が挙げられる。式VIのより好ましい化合物においては、スペーサーは、親水性ポリウレタン(NCO-親水性ポリウレタン-NCO)又はN-ヒドロキシスクシミド-PEG-N-ヒドロキシスクシミド(PEG-NHS)である。次いで、その結果生じた錯体を、共有結合の形成に適した反応条件下でアミン官能化された化学的又は生物学的成分と接触させる。
【実施例】
【0077】
本発明のある実施形態ならびに本発明のある新規な予期されない利点を、以下の限定されない実施例により説明する。材料はSigma-Aldrich Co.(Milwaukee, Wisconsin)から購入した。
【0078】
実施例1:親水性ポリウレタンスペーサーの製造
窒素下で、反応フラスコに4,4-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(5.8g)、ジブチル錫ビス(エチルヘキサノアート)(30mg)、及びTHF(10g)を充填した。加熱マントルを用いて、反応フラスコを穏やかに65℃まで温めた。その後、25gのTHFに溶解したポリエチレングリコール(PEG 1000)(MW=1000、11.2g)の溶液を反応フラスコに滴下して加えた。添加が終了した後、窒素下、65℃で12時間かけて反応を進行させた。得られた溶液は、明黄色の透明なゲルであったが、これを反応フラスコから注ぎ出し、乾燥窒素で充満したガラス瓶に密封して保存した。
【0079】
実施例2:ガラス粉末をドーパントとして含む多孔質プラスチックの製造
3M(St. Paul, Minnesota)から供給されているガラスバブル(アモルファスシリカ、CAS No. 7631-86-9)をTICONA(Summit, New Jersey)による超高分子量ポリエチレン粉末GUR 2122と20%重量比でブレンドした。混合物をよくブレンドした後、0.25インチのフラットモールドに入れた。電熱プレートを用いて、モールドを加熱し、140℃で4分間保持した。当業者は、最終製品の厚さに応じて、モールドを加熱する時間の長さを容易に決定することができる。加熱後、モールドを冷却し、固定されたガラスバブルを有する多孔質プラスチックを取り出した。
【0080】
実施例3:官能化多孔質材料の製造(方法1)
結合緩衝液(10mMのリン酸塩;pH 7.5、0.015M NaCl)。0.192gのNaH2PO4、2.252gのNa2HPO4・7H2O、及び0.27gのNaClを800mlの脱イオン化(DI)水に溶解する。pH 7.5に1N HCl/1N NaOHにより調整し、DI水を用いて体積を1000mlにする。次いで、結合の手順の前に、窒素を用いて緩衝液をパージする。
【0081】
洗浄緩衝液:(10mMのリン酸塩、pH 7.5、1.0M NaCl)。5.844gのNaClを100mlの結合緩衝液に溶解する。
【0082】
貯蔵緩衝液:(10mMのリン酸塩、pH 7.5、0.15M NaCl、0.02% NaN3)。
【0083】
実施例2で製造したシリカ粉末が組み込まれた基材をアルコールで洗浄し、ろ過し、空気で乾燥させた。基材が完全に乾燥したら、基材が完全に濡れるまでシラン溶液(5%の3-アミノプロピルトリエトキシシラン/イソプロパノール溶液、CAS#:919-30-2)に浸漬する。基材を溶液から取り出し、空気で乾燥させる。基材が半分乾燥したら、約60〜70℃のオーブンに約30分間入れる。基材が完全に乾燥したら、グルタルアルデヒド/アルコール溶液(20%)に約20分間沈める。基材をオーブンで30分間再び乾燥させる。最後に、反応性基材をタンパク質/結合緩衝溶液(0.1mg/ml IgG溶液)に浸けて、4℃で24時間穏やかに混合する。未反応のタンパク質溶液の結合緩衝液をマトリックスから排出する。次いで、官能化多孔質材料を洗浄緩衝液(pH 7.5)に浸漬し、シアノホウ化水素ナトリウムを最終濃度が約1.0Mとなるまで加える。全ての過剰なシアノ水素化ホウ素ナトリウムが除去されるまで、官能化多孔質材料を洗浄緩衝液(pH 7.5)で洗浄し、4℃で貯蔵緩衝液に浸漬する。
【0084】
実施例4:官能化多孔質材料の製造(方法2)
実施例2で製造したシリカ粉末が組み込まれた基材を先に記述したように洗浄し、乾燥する。基材が完全に濡れるまで、基材をシラン溶液(5%のアルデヒドトリメトキシシラン/イソプロパノール溶液)に浸漬する。アルデヒドメトキシシランは、United Chemical Corporation, Piru, Californiaにより供給された。基材をろ過して溶液から除き、無水イソプロパノールですすぐ。それから基材を空気で乾燥させる。基材が半分乾燥した後、基材を約60℃〜70℃のオーブンに30分間入れる。反応性基材をタンパク質/結合緩衝溶液(0.1mg/ml IgG溶液)に浸けて、4℃で24時間穏やかに混合する。未反応のタンパク質溶液の結合緩衝液を排出し、基材を洗浄緩衝液(pH 7.5)に浸漬する。最終濃度が約1.0Mとなるまでシアノ水素化ホウ素ナトリウムを加える。それから、全ての過剰なシアノ水素化ホウ素ナトリウムが除去されるまで、官能化多孔質材料を洗浄緩衝液(pH 7.5)で洗浄し、4℃で貯蔵緩衝液に浸漬する。
【0085】
実施例5:官能化多孔質材料の製造(方法3)
別の手順で、シリカ粉末が組み込まれた基材をアルコールで洗浄し、ろ過し、空気で乾燥させる。基材が完全に乾燥した後、完全に濡れるまで、基材をシラン溶液(5%の3-アミノプロピルトリエトキシシラン/イソプロパノール溶液、CAS#:919-30-2)に浸漬する。基材をろ過して溶液から除き、空気で乾燥させる。基材を半分乾燥させて、約60〜70℃のオーブンに30分間入れる。基材が完全に乾燥した後、親水性ポリウレタン/テトラヒドロフラン(THF)溶液に約6時間沈める。親水性ポリウレタンの製造は、実施例1に記述した。他の適切な親水性ポリウレタンの合成は、米国特許出願第09/375,383号において記述されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。そらから、基材をろ過して溶液から除き、乾燥したTHFですすぐ。それから、残留するTHFを追い出すために、真空オーブン中で洗浄した基材を乾燥する。最後に、反応性基材をタンパク質/結合緩衝溶液(0.1mg/ml IgG溶液)に浸けて、4℃で24時間穏やかに混合する。未反応のタンパク質溶液の結合緩衝液を排出し、基材を洗浄緩衝液(pH 7.5)に浸漬する。最終濃度が約1.0になるまでシアノ水素化ホウ素ナトリウムを加える。全ての過剰なシアノ水素化ホウ素ナトリウムが除去されるまで、官能化多孔質基材を洗浄緩衝液(pH 7.5)で洗浄し、4℃で貯蔵緩衝液に浸漬する。
【0086】
実施例6:官能基の検出
基材のヒドロキシル官能基は、いくつかの方法で特徴付けることができる。例えば、X線光電子分光法(XPS)により、酸素についての基本的な情報が得られる。また、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)により、ヒドロキシルのような特定の化学構造を明らかにすることができる。ヒドロキシルで官能化されたポリマー表面のD-1557プローブ(1.0%のピリジンを含む乾燥アセトン中で1mg/ml)の反応により形成されるスルホン酸エステルの塩基加水分解反応(これにより発色団が放出される)の後に、Molecular Probes Inc., of Eugene, Oregonから出されている分子プローブD-1557塩化スルホニルを用いて、表面のR-OH濃度を直接計測することができる。
【0087】
アミン基の検出は、いくつかの方法で行うことができる。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)及びフルオレセインジクロロトリアジン(DTAF)のようなアミン選択性分子プローブは、多孔質ポリエチレン製品全体にわたり、全ての官能化された表面と反応するが、未修飾の表面とは反応しない。0.1MのNaOH水溶液を用いて、FITCとアルキルアミン官能基の反応により形成されたイソチオウレアを開裂することにより、フルオレセインが直接分光測定用の溶液中に放出され、多孔質固体のグラム当たりのアミン官能基のマイクロモル数を計算することができる。アミノ化された試料上のアミノ基は、R. Allul(DNA Probes, H.G.Keller et al. eds., Macmillan, New York(1993))に従って、化学的に決定することができる。従って、アミノ化された試料を3-O-4-(ニトロフェニルスクシニル化)-5'-O-DMT−デオキシリボヌクレオチドで処理し、引き続いて、未反応のアミンをピリジン/無水酢酸/N-メチルイミダゾール(8:1:1、v:v:v)でブロックする。70%の過塩素酸水溶液、アセトニトリル中のトルエンスルホン酸、市販の脱ブロック化製剤等により処理して、支持体からDMT基を放出させた後、498 nmでの吸収により、結合したデオキシリボヌクレオチド量を決定する。
【0088】
アミノ官能基を検出する別の方法は、次のように行われる。3 mgのスルホ-SDTBを25 mlの0.025MのNaHCO3緩衝溶液(pH 8.5)に室温で1時間かけて溶解させることにより製造した0.2mMのスルホ-SDTB溶液と、1 mmの粒子に細断されたアミノ官能性多孔質プラスチック(1 g)とを混合する。多孔質プラスチックを取り除き、3回、15 mlの脱イオン化水で10分間すすぐ。すすいだ多孔質プラスチックを10 mlの50%過塩素酸水溶液に加え、室温で15分間振盪する。3 mlの試料を取り出し、1 cmの光路長のUVキュベットを用いて、498 nmの波長での吸光度を計測する。アミノ官能基の密度は、C(アミノ基(M)/多孔質プラスチック(g))=3.3(As-Af)/70000により計算することができる。
【0089】
本発明の精神及び範囲内での変形や修正が、本発明の関係する当業者の心に浮かぶかもしれないことを理解すべきである。従って、本発明の範囲及び精神内にあるここで示された開示から、技術に熟練した人が容易に得ることのできる全ての都合の良い修正は、本発明のさらなる実施形態として含めるべきである。従って、本発明の範囲は、添付した請求項に示されたように定義されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー及び官能性添加剤から成り、前記官能性添加剤の少なくとも一部によって規定された領域を有する表面をもつ多孔質基材と;前記領域に共有結合又は非共有結合により結合した生物学的又は化学的成分とを有する材料。
【請求項2】
表面が官能性添加剤の少なくとも一部によって規定された複数の領域を有し、各領域に共有結合又は非共有結合により化学的又は生物学的成分が結合している請求項1に記載の材料。
【請求項3】
ポリマー及び官能性添加剤から成り、前記官能性添加剤の少なくとも一部によって規定された領域を有する表面をもつ多孔質基材と;前記領域に共有結合により結合したスペーサーと;前記スペーサーに共有結合又は非共有結合により結合した生物学的又は化学的成分とを有する材料。
【請求項4】
表面が官能性添加剤の少なくとも一部によって規定された複数の領域を有し、各領域に共有結合によりスペーサーが結合しており、スペーサーに共有結合又は非共有結合により生物学的成分が結合している請求項3に記載の材料。
【請求項5】
ポリマーがポリオレフィン、ポリエーテル、ナイロン、ポリカーボネート、ポリ(エーテルスルホン)、又はこれらの混合物である請求項1又は3に記載の材料。
【請求項6】
ポリオレフィンがエチレンビニルアセテート、エチレンメチルアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ポリ(1-ブテン)、ポリスチレン、ポリ(2-ブテン)、ポリ(1-ペンテン)、ポリ(2-ペンテン)、ポリ(3-メチル-1-ペンテン)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、1,2-ポリ-1,3-ブタジエン、1,4-ポリ-1,3-ブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、又はこれらの混合物である請求項5に記載の材料。
【請求項7】
ポリオレフィンがポリエチレン又はポリプロピレンである請求項5に記載の材料。
【請求項8】
ポリエーテルがポリエーテルエーテルケトン(PEEK、ポリ(オキシ-1,4-フェニレン-オキシ-1,4-フェニレン-カルボニル-1,4-フェニレン))、ポリエーテルスルホン(PES)、又はこれらの混合物である請求項5に記載の材料。
【請求項9】
官能性添加剤がヒドロキシル、カルボン酸、無水物、ハロゲン化アシル、ハロゲン化アルキル、アルデヒド、アルケン、アミド、アミン、グアニジン、マレイミド、チオール、スルホネート、スルホン酸、スルホニルエステル、カルボジイミド、エステル、シアノ、エポキシド、プロリン、ジスルフィド、イミダゾール、イミド、イミン、イソシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、又はアジド官能基を含む請求項1又は3に記載の材料。
【請求項10】
官能性添加剤がヒドロキシル、アミン、アルデヒド、又はカルボン酸官能基を含む請求項9に記載の材料。
【請求項11】
官能性添加剤がヒドロキシル官能基を含む請求項10に記載の材料。
【請求項12】
官能性添加剤がシリカ粉末、シリカゲル、チョップドガラス繊維、制御多孔質ガラス(CPG)、ガラスビーズ、すりガラス繊維、ガラスバブル、カオリン、酸化アルミナ、又はこれらの混合物である請求項1又は3に記載の材料。
【請求項13】
スペーサーがシラン、官能シラン、ジアミン、アルコール、エステル、グリコール、無水物、ジアルデヒド、末端二官能化ポリウレタン、ジオン、マクロマー、又は多官能ポリマーである請求項3に記載の材料。
【請求項14】
多孔質基材及び生物学的又は化学的成分が結合しているスペーサーが式I:
【化1】

(式中、基材は酸素原子に結合しており、化学的又は生物学的成分はR3に結合しており、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素、置換又は未置換のアルキル、アリール、又はアラルキルであり、R3は置換又は未置換の脂肪族鎖又は結合であり、nは約1〜約18の整数である)
で表される請求項13に記載の材料。
【請求項15】
化学的又は生物学的成分が、薬物、親水性成分、触媒、抗生物質、抗体、抗真菌剤、炭水化物、サイトカイン、酵素、糖タンパク質、脂質、核酸、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質、リガンド、細胞、リボザイム、又はこれらの組み合わせである請求項1又は3に記載の材料。
【請求項16】
官能性添加剤が埋め込まれた表面を有する多孔質ポリエチレン基材と、前記官能性添加剤の少なくとも一部に共有結合により結合した式II:
【化2】

(式中、R1、R2、及びR4はそれぞれ独立して、水素、置換又は未置換のアルキル、アリール、又はアラルキルであり、R3は置換又は未置換の脂肪族鎖又は結合であり、nは約1〜約18の整数であり、XはOH、NH2、CHO、CO2H、NCO、又はエポキシである)
で表されるスペーサー前駆体とを有する材料。
【請求項17】
官能性添加剤が埋め込まれた表面を有する多孔質ポリエチレン基材と、前記官能性添加剤の少なくとも一部及び化学的又は生物学的成分に共有結合により結合した式I:
【化3】

(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素、置換又は未置換のアルキル、アリール、又はアラルキルであり、R3は置換又は未置換の脂肪族鎖又は結合であり、nは約1〜約18の整数である)
で表されるスペーサーとを有する材料。
【請求項18】
化学的又は生物学的成分がヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ペプチド、細胞、リガンド、又はタンパク質である請求項17に記載の材料。
【請求項19】
ポリマー及び官能性添加剤から成り、前記官能性添加剤の少なくとも一部によって規定され且つ少なくとも1個の官能基を有する領域を有する表面をもつ多孔質基材を形成する工程;前記官能基とスペーサーとを、前記官能基の原子と前記スペーサーの原子との間に共有結合を形成させるのに適した反応条件下で接触させる工程;及び前記スペーサーと化学的又は生物学的成分とを、前記スペーサーの原子と前記化学的又は生物学的成分の原子との間に共有結合又は非共有結合を形成させるのに適した反応条件下で接触させる工程を含む、材料の製造方法。
【請求項20】
官能基がヒドロキシル、カルボン酸、無水物、ハロゲン化アシル、ハロゲン化アルキル、アルデヒド、アルケン、アミド、アミン、グアニジン、マレイミド、チオール、スルホネート、スルホン酸、スルホニルエステル、カルボジイミド、エステル、シアノ、エポキシド、プロリン、ジスルフィド、イミダゾール、イミド、イミン、イソシアネート、イソチオシアネート、ニトロ、又はアジドである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
多孔質基材を、ビーズを焼結し、次いでスペーサーを結合させるか、又はスペーサーをビーズに結合した後にビーズを焼結することによって形成する請求項19に記載の方法。
【請求項22】
ポリマー及び官能性添加剤から成り、前記官能性添加剤の少なくとも一部によって規定され且つ少なくとも1個のヒドロキシル基を有する領域を有する表面をもつ多孔質基材を形成する工程;及びヒドロキシル基と、式II:
【化4】

(式中、R1、R2、R4はそれぞれ独立して、水素、置換又は未置換のアルキル、アリール、又はアラルキルであり、R3は置換又は未置換の脂肪族鎖又は結合であり、nは約1〜約18の整数であり、XはOH、NH2、CHO、CO2H、NCO、又はエポキシである)
で表される化合物とを、式III:
【化5】

(式中、Surfaceは多孔質基材の表面である)
で表される材料の形成に適した条件下で接触させる工程を含む、材料の製造方法。
【請求項23】
式IIIで表される材料を、Xがアルデヒド又はカルボン酸である場合にはアミン基を有する化学的又は生物学的成分と、又はXがアミンである場合にはアルデヒド又はカルボン酸基を有する化学的又は生物学的成分と、式IV:
【化6】

(式中、Moietyは化学的又は生物学的成分である)
で表される材料の形成に適した反応条件下で接触させる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
XがNH2である式IIIで表される材料と、式V:
Z−Spacer−Z 式V
(式中、Spacerは親水性セグメントであり、Zはタンパク質、アミノ酸、オリゴヌクレオチドに共有結合又は非共有結合により結合することのできる末端基である)
で表される化合物とを、式VI:
【化7】

(式中、Rは多孔質基材の表面である)
で表される材料の形成に適した反応条件下で接触させる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
Spacerが、親水性ポリウレタン、ポリエチレングリコール、又は高分子電解質であり、Zが、イソシアヌレート、アルデヒド、アミノ、カルボン酸、又はN-ヒドロキシスクシミドである請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ポリオレフィン粒子と官能性添加剤粒子の混合物を形成する工程、及び前記混合物を焼結する工程を含み、官能性添加剤が官能基を有し、混合物中の官能性添加剤の濃度が、焼結したポリオレフィン基材の表面における官能基の密度にほぼ比例している、焼結ポリオレフィン基材の官能化を制御する方法。
【請求項27】
官能性添加剤がシリカ粉末、シリカゲル、チョップドガラス繊維、制御多孔質ガラス(CPG)、ガラスビーズ、すりガラス繊維、ガラスバブル、カオリン、酸化アルミナ、又はこれらの混合物である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
多孔質基材及び生物学的又は化学的成分が結合しているスペーサーが式VIII:
【化8】

(式中、Rは多孔質基材の表面であり、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素、置換又は未置換のアルキル、アリール、又はアラルキルであり、XはOH、NH2、CHO、CO2H、NCO、又はエポキシであり、nは約1〜約5の整数であり、mは約1〜約5の整数であり、そしてoは0〜約3の整数である)
で表される、請求項13に記載の材料。
【請求項29】
XがCHO又はNH2である請求項25に記載の材料。
【請求項30】
多孔質基材及び生物学的又は化学的成分が結合しているスペーサーが式IX:
【化9】

(式中、Rは多孔質基材の表面であり、R1及びR2はそれぞれ独立して、水素、置換又は未置換のアルキル、アリール、又はアラルキルであり、nは約1〜約18である)
で表される、請求項13に記載の材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−279703(P2010−279703A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−142711(P2010−142711)
【出願日】平成22年6月23日(2010.6.23)
【分割の表示】特願2003−500156(P2003−500156)の分割
【原出願日】平成14年5月29日(2002.5.29)
【出願人】(503440060)ポレックス コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】