説明

官能基含有アクリル系共重合体およびその製造方法ならびに該共重合体を含有してなる粘着剤組成物

【課題】接着力の経時上昇抑制、剥離性(被着体耐汚染性)と高速剥離性のバランスに優れた官能基含有アクリル系共重合体およびその製造方法ならびに該共重合体を含有する粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】重量平均分子量が20万以上、200万以下の官能基含有アクリル系共重合体(A)であって、該官能基含有アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量をSとした場合、分子量が2S/3以上の官能基含有アクリル系共重合体(A1)を構成する官能基含有モノマーの含有量Xと、分子量が2S/3未満の官能基含有アクリル系共重合体(A2)を構成する官能基含有モノマーの含有量Yとの重量比X/Yが1未満である官能基含有アクリル系共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラベル・シート用、テープ用、建材用、包装材料用、エレクトロニクス用として金属板、ガラス板、合成樹脂板、ラミネート鋼板などに使用される剥離性粘着シートの粘着剤組成物に関するものであり、さらに詳しくは、高速剥離性に優れ、接着力の経時変化が少なく、被着体汚染のない粘着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前記のような剥離性粘着シートの粘着剤には、粘着力が経時により上昇しないこと、被着体汚染がないといった剥離性が良好であること、および工業用粘着シートとして用いた場合には高速で剥離されるが、その際の作業性および被着体への負荷軽減が必要であり、高速剥離性の特性および上記物性のバランスに優れることが求められる。このような要求を達成するために種々の検討がなされている。
【0003】
たとえば、特許文献1では、溶液重合する際に共重合可能な官能基モノマーの含有量が40重量%までのモノマー混合物を重合率が20重量%以上になるまで重合し、さらに共重合可能な官能基モノマーを2回以上に分割して添加し、重合させた粘着剤組成物の製造方法が検討されている。また、特許文献2には、初期モノマーの重合率を50重量%未満とした重合方法により、勾配組成を形成し、良好な接着力で再剥離性も優れた粘着製品を得ることが検討されている。一方、重合方法ではなくポリマーそのものの改質を目的とした技術として、特許文献3には、分子内に脂環式構造を含むアクリレートを含有し、特定のゲル分率、弾性率を有する再剥離用粘着剤、特許文献4には、N,N−ジ置換(メタ)アクリルアミドを共重合し、特定のゲル分率を有するアクリル系ポリマー再剥離用粘着剤が検討されている。また、特許文献5には、分子内に芳香環構造を含むアクリレートを含有し、特定のゲル分率、弾性率を有する再剥離性粘着剤、特許文献6には、アルキル基の炭素数が14〜22でかつ分岐を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる単量体を含有する再剥離性粘着剤が検討されている。
【0004】
しかし、前記技術は、いずれも接着力の経時上昇抑制、剥離性(被着体耐汚染性)と高速剥離性のバランスを充分に満足させるものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平5−132657号公報
【特許文献2】特開2002−155253号公報
【特許文献3】特開平8−143842号公報
【特許文献4】特開平8−143843号公報
【特許文献5】特開平8−253750号公報
【特許文献6】特開平8−325544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、接着力の経時上昇抑制、剥離性(被着体耐汚染性)と高速剥離性のバランスに優れた官能基含有アクリル系共重合体およびその製造方法ならびに該共重合体を含有する粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、重量平均分子量が20万以上、200万以下の官能基含有アクリル系共重合体(A)であって、該官能基含有アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量をSとした場合、分子量が2S/3以上の官能基含有アクリル系共重合体(A1)を構成する官能基含有モノマーの含有量Xと、分子量が2S/3未満の官能基含有アクリル系共重合体(A2)を構成する官能基含有モノマーの含有量Yとの重量比X/Yが1未満である官能基含有アクリル系共重合体に関する。
【0008】
官能基含有アクリル系共重合体(A)を構成する全モノマー成分合計量に対して、官能基含有アクリル系共重合体(A1)を構成する官能基含有モノマーの含有量Xが0.1〜5重量%であり、官能基含有アクリル系共重合体(A2)を構成する官能基含有モノマーの含有量Yが0.2〜15重量%であることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、前記官能基含有アクリル系共重合体(A)の製造方法であって、以下の条件(i)〜(iii)を満足する官能基含有アクリル系共重合体の製造方法に関する。
【0010】
(i)官能基含有モノマーを含むモノマー混合物(α)を重合率60%以上となるように溶液重合し、次いで、官能基含有モノマーを含むモノマー混合物(β)を混合し、さらに重合する。
【0011】
(ii)モノマー混合物(α)に含有される官能基含有モノマー量をQ、モノマー混合物(β)に含有される官能基含有モノマー量をRとした場合、Q/R<1である。
【0012】
(iii)モノマー混合物(α)の含有量が、モノマー混合物(α)とモノマー混合物(β)の合計量100重量部に対して、50〜90重量部である。
【0013】
前記製造方法において、炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、共重合可能な官能基含有モノマーを0.3〜20重量%含有してなるモノマー混合物を溶液重合することが好ましい。
【0014】
官能基含有アクリル系共重合体(A)を構成する全モノマー成分に対して、モノマー混合物(α)に含有される官能基含有モノマー量(Q)が0.1〜5重量%であり、モノマー混合物(β)に含有される官能基含有モノマー量(R)が0.2〜15重量%であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、以下の条件(i)〜(iii)を満足する官能基含有アクリル系共重合体の製造方法に関する。
【0016】
(i)官能基含有モノマーを含むモノマー混合物(α)を重合率60%以上となるように溶液重合し、次いで、官能基含有モノマーを含むモノマー混合物(β)混合し、さらに重合する。
【0017】
(ii)モノマー混合物(α)に含有される官能基含有モノマー量をQ、モノマー混合物(β)に含有される官能基含有モノマー量をRとした場合、Q/R<1である。
【0018】
(iii)モノマー混合物(α)の含有量が、モノマー混合物(α)とモノマー混合物(β)の合計量100重量部に対して、50〜90重量部である。
【0019】
また、本発明は、前記官能基含有アクリル系共重合体(A)を含有してなる粘着剤組成物に関する。
【0020】
前記組成物に、さらに、架橋剤(B)を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、官能基含有アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量をSとした場合、分子量が2S/3以上の官能基含有アクリル系共重合体(A1)を構成する官能基含有モノマーの含有量Xと、分子量が2S/3未満の官能基含有アクリル系共重合体(A2)を構成する官能基含有モノマーの含有量Yとの重量比X/Yが1未満であるので、高速剥離性に優れ、さらに、接着力の経時変化が少なく、被着体汚染がないといった剥離性に優れた粘着剤組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の官能基含有アクリル系共重合体(A)は、重量平均分子量が20万以上、200万以下である。重量平均分子量は、150万以下が好ましく、120万以下がより好ましい。一方、重量平均分子量は、25万以上が好ましく、30万以上がより好ましい。重合平均分子量が、下限値未満の場合は、凝集力不足となり、充分な剥離性が得られなくなり、上限値をこえる場合は、粘着剤が硬くなりすぎるため、被着体に対して充分な密着が得られなくなる。
【0023】
前記官能基含有アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量をSとした場合、分子量が2S/3以上の官能基含有アクリル系共重合体(A1)を構成する官能基含有モノマーの含有量Xと、分子量が2S/3未満の官能基含有アクリル系共重合体(A2)を構成する官能基含有モノマーの含有量Yとの重量比X/Yは、1未満である。X/Yは2/3以下であることが好ましい。X/Yの下限は特に限定されるものではないが、粘着剤に所望の凝集力を付与する目的から0.1以上であることが好ましい。X/Yが1以上の場合は、剥離性(被着体耐汚染性)、高速剥離性、経時安定性などの物性のバランスが得られない。
【0024】
官能基含有アクリル系共重合体(A1)および(A2)を構成する官能基含有モノマーとしては、架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマーであれば特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのカルボキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルのポリカプロラクトン変性物などのヒドロキシル基含有モノマー、(メタ)アクリル酸グリシジル、脂環エポキシ基含有モノマーなどのエポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、t−ブチルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアミノ基含有モノマー、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどの炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基を有する水酸基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基含有モノマーが、共重合性、汎用性の点から好ましく用いられる。
【0025】
官能基含有アクリル系共重合体(A)を構成する全モノマー成分合計量に対して、官能基含有アクリル系共重合体(A1)を構成する官能基含有モノマーの含有量Xが0.1〜5重量%であることが好ましく、官能基含有アクリル系共重合体(A2)を構成する官能基含有モノマーの含有量Yが0.2〜15重量%であることが好ましい。Xは0.2〜4.5重量%がより好ましく、0.5〜4重量%がさらに好ましい。また、Yは0.4〜12重量%がより好ましく、0.5〜10重量%がさらに好ましい。Xが下限値未満では、粘着剤の凝集力が不足する傾向があり、上限値をこえる場合では、初期の充分な密着が得られなくなる傾向がある。Yが下限値未満の場合は、充分な高速剥離性が得られない傾向があり、上限値をこえる場合は、粘着剤が硬くなりすぎ、充分な密着性が得られない傾向がある。
【0026】
官能基含有アクリル系共重合体(A)を構成するモノマーとしては、アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルがあげられ、前記エステルにおけるアルキル基の炭素数が4〜14であることが好ましく、炭素数が4〜12であることがより好ましい。
【0027】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの直鎖または分岐脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルなどがあげられる。なかでも、汎用性、共重合性の点から、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく用いられる。
【0028】
官能基含有アクリル系共重合体(A)を構成するモノマーとしては、前記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび官能基含有モノマー以外に、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの炭素数15以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルニトリルなどを、必要に応じて含有することができる。
【0029】
また、本発明は、以下の(i)〜(iii)を満たす条件下で行なう前記官能基含有アクリル系共重合体(A)共重合体の製造方法に関する。
【0030】
(i)官能基含有モノマーを含むモノマー混合物(α)を重合率60%以上となるように溶液重合し、次いで、官能基含有モノマーを含むモノマー混合物(β)を混合し、さらに重合する。
【0031】
モノマー混合物(β)を溶液重合する前のモノマー混合物(α)の重合率は、65%以上がより好ましい。重合率が、60%未満の場合は、剥離性を維持した状態での充分な高速剥離性が得られない傾向がある。また、重合率の上限としては、通常、共重合性、相溶性の点から95%が好ましい。
【0032】
(ii)モノマー混合物(α)に含有される官能基含有モノマー量をQ、モノマー混合物(β)に含有される官能基含有モノマー量をRとした場合、Q/R(重量比)<1である。
【0033】
Q/Rは、Q/R≦2/3であることがより好ましい。Q/Rが1以上の場合は、剥離性(被着体耐汚染性)、高速剥離性、経時安定性の物性バランスが得られない傾向がある。
【0034】
(iii)モノマー混合物(α)の含有量が、モノマー混合物(α)とモノマー混合物(β)の合計量100重量部に対して、50〜90重量部である。
【0035】
モノマー混合物(α)の含有量は、モノマー混合物(α)とモノマー混合物(β)の合計量100重量部に対して、55〜85重量部であることがより好ましく、60〜80重量部であることがさらに好ましい。モノマー混合物(α)の含有量が下限値未満の場合は、低分子量成分の割合が多くなり、凝集力が不足する傾向があり、上限値をこえる場合は、共重合性の問題により、相溶不良の傾向がある。
【0036】
官能基含有アクリル系共重合体(A)を構成する全モノマー成分に対して、モノマー混合物(α)に含有される官能基含有モノマー量(Q)が0.1〜5重量%であり、モノマー混合物(β)に含有される官能基含有モノマー量(R)が0.2〜15重量%であることが好ましい。Qは0.2〜4.5重量%がより好ましく、0.5〜4重量%がさらに好ましい。Rは0.4〜12重量%がより好ましく、0.5〜10重量%がさらに好ましい。Qが上記下限値未満の場合は、粘着剤の凝集力が不足する傾向があり、上限値をこえる場合は、初期の充分な密着力が得られない傾向がある。Rが上記下限値未満の場合は、充分な高速剥離性が得られない傾向があり、上限値をこえる場合は、粘着剤が硬くなりすぎ、充分な密着力が得られない傾向がある。
【0037】
本発明は、前記条件下で溶液重合することにより、反応後段で生成する比較的低分子量である成分に官能基を多く導入させるものであり、その比較的低分子量である成分をより多く架橋させて、高速剥離性を付与することができるのである。さらに、反応後段で生成する低分子量成分を架橋することにより、接着力の経時上昇幅を小さくすることができ、被着体の耐汚染性も良好となるのである。ここで、反応後段とは、官能基含有モノマーを含むモノマー混合物(α)を重合率60%以上となるように重合した後の、官能基含有モノマーを含むモノマー混合物(β)を含んだ重合反応段階をいう。
【0038】
重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル(ABNE)などのアゾ系化合物;メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロリルパーオキサイドなどの有機過酸化物など、公知のラジカル重合開始剤用いることができる。
【0039】
重合開始剤の含有量は、特に限定されるものではないが、反応前段の合計モノマー量に対して0.01〜1重量%、反応後段の合計モノマー量に対して0.01〜1重量%とすることが好ましい。
【0040】
前記製造方法には、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどの脂肪族アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類などが挙げられ、使用するモノマーにあわせて選択して用いることができる。これらの溶媒は、単独でも複数をあわせて用いてもよい。
【0041】
前記製造方法において、炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、共重合可能な官能基含有モノマーを0.3〜20重量%含有してなるモノマー混合物を溶液重合することが好ましい。
【0042】
前記アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの炭素数は、4〜12であることがより好ましく、炭素数が4〜8であることがさらに好ましい。
【0043】
炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの直鎖または分岐脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルなどがあげられる。なかでも、汎用性、共重合性の点から、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく用いられる。
【0044】
本発明において主成分とは、官能基含有アクリル系共重合体(A)を構成する全モノマー成分合計量に対して、50重量%以上含有することをいう。
【0045】
共重合可能な官能基含有モノマーとしては、前記官能基含有アクリル系共重合体(A1)および(A2)を構成する官能基含有モノマーと同様のものがあげられる。
【0046】
共重合可能な官能基含有モノマーは、全モノマー成分合計量に対して0.3〜20重量%とすることが好ましい。含有量は、0.6〜16.5重量%がより好ましく、0.9〜14重量%がさらに好ましい。共重合可能な官能基含有モノマーの含有量が、上記下限値未満の場合は、粘着剤が凝集力不足となる傾向があり、上限値をこえる場合は、粘着剤が硬くなりすぎ、十分な密着性が得られない傾向がある。
【0047】
また、本発明では、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび官能基含有モノマー以外に、必要に応じて、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの炭素数15以上のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリルニトリルなどを共重合してもよい。
【0048】
本発明の重合反応においては、上記の如く、官能基含有モノマーを含むモノマー混合物(α)を重合率60%以上となるように重合する前段重合と、さらに官能基含有モノマーを含むモノマー混合物(β)を含んだ重合反応段階の後段重合の2段階で行っているが、2段階に限られるものではなく、3段階以上といった多段階に行うことも可能である。
【0049】
さらに、本発明においては、上記の如き多段にて重合を行う代わりに、官能基含有モノマーを共重合成分として多く含有させた比較的低分子量の官能基含有アクリル系共重合体を、高分子量のアクリル系共重合体にブレンドすることも可能である。ここで、低分子量の官能基含有アクリル系共重合体は、前記官能基含有アクリル系共重合体(A1)をいい、高分子量のアクリル系共重合体とは、前記官能基含有アクリル系共重合体(A2)をいう。
【0050】
また、本発明は、前記官能基含有アクリル系共重合体(A)を含有してなる粘着剤組成物に関する。
【0051】
本発明の粘着剤組成物には、前記官能基含有アクリル系共重合体(A)にさらに架橋剤(B)を含有することが好ましい。
【0052】
かかる架橋剤(B)としては、特に限定されず、例えばエポキシ系化合物、金属塩、金属アルコシド、アルデヒド系化合物、非アミノ樹脂系アミノ化合物、尿素系化合物、イソシアネート系化合物、金属キレート系化合物、メラミン系化合物、アジリジン系化合物など、通常の粘着剤に使用される架橋剤を挙げることができる。なかでも反応性の点から好ましくものとしては、イソシアネート系化合物があげられ、具体的にはトリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンビスメチルイソシアネート、4,4−メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、トリレンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、イソフォロンジイソシアネート−2官能アルコール付加物、イソフォロンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート−2官能アルコール付加物、ヘキサメチレンジイソシアネート−3官能アルコール付加物、トリレンジイソシアネート三量体、イソフォロンジイソシアネート三量体、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、ビュレット型ヘキサメチレンジイソシアネート三量体などがあげられる。なかでも特に、トリレンジイソシアネート−3官能アルコール付加物が反応性の点から好適に用いられる。
【0053】
かかる架橋剤(B)の含有量は、前記官能基含有アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、0.05〜15重量部であることが好ましく、0.1〜10重量部であることがより好ましい。架橋剤(B)の含有量が下限値未満の場合は、架橋が不充分となって、凝集力が不足する傾向があり、上限値をこえる場合は、架橋密度が高くなり過ぎて、密着性が不足する傾向がある。
【0054】
なお、架橋反応を促進するために酸触媒、例えばパラトルエンスルホン酸、リン酸、塩酸、塩化アンモニウムなどを架橋促進剤として併用することも可能であり、かかる架橋促進剤の添加量は架橋剤(B)に対して10〜50重量%であることが好ましい。
【0055】
また、本発明の粘着剤組成物には、さらに、必要に応じて、通常配合される充填剤、顔料、希釈剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などの従来公知の添加剤を添加してもよい。これらの添加剤は、1種類または2種以上を使用することが可能である。これらの添加量は、所望する物性が得られるように適時設定すればよい。
【0056】
本発明において、官能基含有アクリル系共重合体(A)と架橋剤(B)に、必要に応じて、前記各種添加剤や溶剤を混合して調製された粘着剤組成物は、とりわけ、剥離型の粘着剤組成物として有効であり、かかる粘着剤組成物からなる層を基材シートの少なくとも片面に設けることにより、剥離型の粘着シートとして好適に用いられる。
【0057】
前記剥離型の粘着シートを構成する基材シートの材料としては、シートを形成する材料であれば特に制限はなく、例えば、アルミニウム、銅、鉄などの金属箔;ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体などのポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファンなどのセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミドなどの合成樹脂フィルム又はシート、上質紙、グラシン紙などの紙、硝子繊維、天然繊維、合成繊維などから選択される単層体又は複層体が挙げられる。
【0058】
また、基材シートに対する粘着剤層の投錨性を上げるために、基材シートの表面をコロナ放電処理、プラズマ処理、プライマーコート、脱脂処理、表面粗面化処理などの公知の易接着性を改良する処理を施しても良い。また、帯電防止のために、帯電防止層が設けられても良い。
【0059】
上記基材シートの厚さは特に限定されないが、一般には500μm以下、好ましくは5〜300μm、さらに好ましくは10〜200μm程度の厚さである。
【0060】
本発明の剥離型の粘着シートを構成する粘着剤組成物層は、前記本発明の粘着剤組成物から形成され、例えば、上記基材シート上に、溶液上の本発明の粘着剤組成物を塗工し、加熱乾燥して製造することができる。
【0061】
上記粘着剤組成物層の厚みは、特に制限はないが、一般には1〜50μm、好ましくは3〜40μm、さらに好ましくは5〜30μmである。粘着剤組成物層の厚みが上限値を超えると、剥離シートを剥離する際に粘着シートの粘着剤組成物が被着体表面に糊残りが生じる傾向にあり、下限値未満であると、被着体に対する接着力が低下する傾向にある。
【0062】
本発明の剥離型の粘着シートを被着体に貼り合わせるまで、その粘着剤組成物を汚染から保護する目的で、粘着剤組成物層の表面にセパレーターを積層することができる。
【0063】
前記セパレーターとしては、基材シートで例示した合成樹脂シート、紙、布、不織布などに離型処理したものを使用することができる。
【0064】
本発明の粘着シートの調製については、上記基材シート上に本発明の粘着剤組成物を積層することによって得られる。粘着剤組成物が溶液状である場合には、溶液状の粘着剤組成物を基材シートに直接塗工する直接塗工法や、溶液状の粘着剤組成物をセパレーターに塗工したのち基材シートと貼り合わせる転写塗工法などにより製造される。
【0065】
直接塗工法においては、基材シートに粘着剤組成物を塗工し加熱乾燥した後にセパレーターを貼り合わせる。塗工は、ロールコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷などの慣用の方法により行われる。
【0066】
一方、転写塗工法においては、セパレーターに粘着剤組成物を塗工し加熱乾燥した後に基材シートを貼り合わせる。塗工方法については、直接塗工と同様の方法が使用できる。
【0067】
得られた剥離型の表面保護用粘着シートは、40℃以下の温度でエージング処理し、架橋反応を充分進めた後使用することが好ましい。
【0068】
本発明の剥離型の粘着シートを利用するにあたっては、特に被着体の種類に制限はないが、例えば、アルミニウム、銅、鉄の金属箔;ポリエチレンナフタート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体などのポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体;三酢酸セルロース、セロファンなどのセルロース系樹脂;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミドなどの合成樹脂フィルム、シート又は板が挙げられる。
【0069】
かくして本発明の官能基含有アクリル系共重合体(A)を含有する粘着剤組成物は、ラベル・シート用、テープ用、建材用、包装材料用、エレクトロニクス用として金属板、ガラス板、合成樹脂板、ラミネート鋼板などに使用される剥離性粘着シートの粘着剤に好適に使用することができる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の官能基含有アクリル系共重合体および該共重合体の製造方法ならびに該共重合体を含有する粘着剤組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。なお、実施例において「部」は、特に断らない限り、「重量部」をいう。
【0071】
実施例1
酢酸エチル35部、を反応器内に入れ、攪拌しながら80℃まで昇温した後、この温度を保ったままで、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)66.5部、メタクリル酸メチル(MMA)3部,アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)0.5部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに90℃で1時間重合反応を行ない、滴下開始より3時間後、反応率が70%になった時点で、反応溶液を攪拌混合しながら、さらに2EHA24.5部、MMA3部、HEA2.5部の混合物を1時間かけて滴下した。滴下終了後の混合物に、トルエン10部にAIBN0.1部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら9時間重合した後、トルエンで希釈してアクリル系共重合体の40%溶液を得た。
【0072】
得られたアクリル系共重合体の重量平均分子量(S)は、60万であり、重量比X/Yは0.60であった。
【0073】
なお、重量平均分子量は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本ウォーターズ(株)製、「Waters 2695(セパレーションモジュール)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列)を用いて測定した。
【0074】
得られたアクリル系共重合体40%溶液100部に対してコロネートL55E(トリレンジイソシアネート系化合物、日本ポリウレタン工業(株)製)6部を配合し、アクリル系粘着剤組成物を得た。
【0075】
得られた粘着剤組成物を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材に塗布し加熱乾燥処理して、厚さ25μmの粘着剤層を有する粘着シートを得た。該粘着シートの特性を以下の方法により評価した。結果を表1に示す。
【0076】
(高速剥離性)
得られた粘着シートより25mm×100mmの大きさの試験片を作製し、この試験片を被着体(SUS304BA板)に2kgのローラーを2往復させる方法で圧着し、23℃、50%RH雰囲気下で30分放置した後、剥離接着力(ア)(引張速度0.3m/分)と高速剥離力(イ)(引張速度30m/分)を測定した。
【0077】
高速剥離性の評価は、高速剥離力(イ)が剥離接着力(ア)の7倍以下を○、7倍を超え10倍未満を△、10倍以上を×とした。
【0078】
(経時安定性)
得られた粘着シートより25mm×100mmの大きさの試験片を作製し(切り出し)、この試験片を被着体(SUS304BA板)に2kgローラーを2往復させる方法で圧着し、70℃で5日間放置後、23℃、50%R.H.雰囲気下で剥離接着力(ウ)(引張速度0.3m/分)を測定した。
【0079】
経時安定性の評価は、剥離接着力(ウ)が、剥離接着力(ア)の3倍以下を○、3倍を超え5倍未満を△、5倍以上を×とした。
【0080】
(剥離性(被着体耐汚染性))
剥離性(被着体耐汚染性)は、上記剥離接着力(ウ)を測定した後の各被着体表面の様子を観察し、以下の基準で評価した。
○:全く汚染が確認されなかった。
△:僅かに汚染が確認された。
×:明らかに汚染が確認された。
【0081】
実施例2
酢酸エチル50部を反応器内に入れ、攪拌しながら昇温し、80℃になった時点で、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)40部、アクリル酸ブチル(BA)14部、酢酸ビニル(VAc)5部、アクリル酸4−ヒドロキシブチル(4HBA)1部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1部の混合物を2時間掛けて滴下した。滴下終了後、さらに90℃で1時間攪拌反応を行い、滴下開始より3時間後、反応率が75%になった時点で、反応溶液にさらに、2EHA22部、BA8部、VAc5部、4HBA5部の混合物を1時間かけて滴下した。さらにトルエン10部にAIBN0.1部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら9時間重合させた。反応終了後、反応混合物に希釈溶剤を追加し、アクリル系共重合体の40%溶液を得た。
【0082】
得られたアクリル系共重合体の重量平均分子量(S)は、70万であり、重量比X/Yは0.55であった。
【0083】
得られたアクリル系共重合体40%溶液100部に対してコロネートL55E(トリレンジイソシアネート系化合物、日本ポリウレタン工業(株)製)4部を配合し、アクリル系粘着剤組成物を得た。
【0084】
得られた粘着剤組成物を、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様の評価を行った。
【0085】
実施例3
酢酸エチル30部、アセトン10部を反応器内に入れ、攪拌しながら昇温し、70℃になった時点で、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)64.5部、アクリル酸ステアリル(STA)5部アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)0.5部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.1部の混合物を2時間掛けて滴下した。滴下終了後、さらに85℃で1時間攪拌反応を行い、滴下開始より3時間後、反応率が65%になった時点で、反応溶液にさらに、2EHA22.5部、STA5部、4HBA2.5部の混合物を1時間掛けて滴下した。さらにトルエン10部にAIBN0.1部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら9時間重合させた。反応終了後、反応混合物に希釈溶剤を追加し、アクリル系共重合体の40%溶液を得た。
【0086】
得られたアクリル系共重合体の重量平均分子量(S)は、80万であり、重量比X/Yは0.52であった。
【0087】
得られたアクリル系共重合体40%溶液100部に対してコロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネート系化合物、日本ポリウレタン工業(株)製)5部を配合し、アクリル系粘着剤組成物を得た。
【0088】
得られた粘着剤組成物を、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様の評価を行った。
【0089】
比較例1
酢酸エチル60部を反応器内に入れ、80℃に昇温し、攪拌混合しながら、アクリル酸ブチル(BA)74.8部、メタクリル酸メチル(MMA)20部、アクリル酸(AAc)0.2部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)5部を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.04部の混合物を2時間掛けて反応器内に滴下、90℃に加温して重合させ、重合途中にトルエン10部にAIBN0.1部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら7時間重合させた後、トルエンで希釈して、アクリル系共重合体の40%溶液を得た。
【0090】
得られたアクリル系共重合体の重量平均分子量(S)は、80万であり、重量比X/Yは1.40であった。
【0091】
得られた粘着剤組成物を、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様の評価を行った。
【0092】
比較例2
酢酸エチル45部を反応器内に入れ、80℃に昇温し、攪拌混合しながら、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)84.8部、メタクリル酸メチル(MMA)10部、アクリル酸(AAc)0.2部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)5部を、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.04部の混合物を2時間掛けて反応器内に滴下、90℃に加温して重合させ、重合途中にトルエン10部にAIBN0.1部を溶解させた重合触媒液を逐次追加しながら7時間重合させた後、トルエンで希釈して、アクリル系共重合体の40%溶液を得た。
【0093】
得られたアクリル系共重合体の重量平均分子量(S)は、90万であり、重量比X/Yは1.8であった。
【0094】
得られた粘着剤組成物を、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様の評価を行った。
【0095】
比較例3
アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)65部、酢酸ビニル(VAc)20部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)3部、アクリル酸(AAc)2部、アゾビスイソブチロニトリル0.1部、酢酸エチル150部を反応器に入れ、攪拌しながら昇温して重合反応を行い、重合率50%の時点でHEMA10部を5回に分割して1時間おきに添加を行い、熟成2時間を施し、全反応時間10時間でアクリル共重合体の40%溶液を得た。
【0096】
得られたアクリル系共重合体の重量平均分子量(S)は、60万であり、重量比X/Yは1.10であった。
【0097】
得られた粘着剤組成物を、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様の評価を行った。
【0098】
実施例および比較例の評価結果を表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
表1の結果から分かるように、本発明の官能基含有アクリル系共重合体(A)を含有する粘着剤組成物の場合では、高速剥離性、経時安定性、剥離性(被着体耐汚染性)のすべての特性において優れた粘着シートを得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明においては、高速剥離性に優れ、接着力の経時変化が少なく、被着体汚染のない粘着剤組成物を得ることができるため、ラベル・シート用、テープ用、建材用、包装材料用、エレクトロニクス用として金属板、ガラス板、合成樹脂板、ラミネート鋼板などに使用される剥離性粘着シートの粘着剤組成物として非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が20万以上、200万以下の官能基含有アクリル系共重合体(A)であって、該官能基含有アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量をSとした場合、分子量が2S/3以上の官能基含有アクリル系共重合体(A1)を構成する官能基含有モノマーの含有量Xと、分子量が2S/3未満の官能基含有アクリル系共重合体(A2)を構成する官能基含有モノマーの含有量Yとの重量比X/Yが1未満である官能基含有アクリル系共重合体。
【請求項2】
官能基含有アクリル系共重合体(A)を構成する全モノマー成分合計量に対して、官能基含有アクリル系共重合体(A1)を構成する官能基含有モノマーの含有量Xが0.1〜5重量%であり、官能基含有アクリル系共重合体(A2)を構成する官能基含有モノマーの含有量Yが0.2〜15重量%である請求項1記載の官能基含有アクリル系共重合体。
【請求項3】
請求項1または2記載の官能基含有アクリル系共重合体(A)の製造方法であって、以下の条件(i)〜(iii)を満足する官能基含有アクリル系共重合体の製造方法。
(i)官能基含有モノマーを含むモノマー混合物(α)を重合率60%以上となるように溶液重合し、次いで、官能基含有モノマーを含むモノマー混合物(β)を混合し、さらに重合する。
(ii)モノマー混合物(α)に含有される官能基含有モノマー量をQ、モノマー混合物(β)に含有される官能基含有モノマー量をRとした場合、Q/R<1である。
(iii)モノマー混合物(α)の含有量が、モノマー混合物(α)とモノマー混合物(β)の合計量100重量部に対して、50〜90重量部である。
【請求項4】
炭素数4〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、共重合可能な官能基含有モノマーを0.3〜20重量%含有してなるモノマー混合物を溶液重合する請求項3記載の官能基含有アクリル系共重合体の製造方法。
【請求項5】
官能基含有アクリル系共重合体(A)を構成する全モノマー成分に対して、モノマー混合物(α)に含有される官能基含有モノマー量Qが0.1〜5重量%であり、モノマー混合物(β)に含有される官能基含有モノマー量Rが0.2〜15重量%であることを特徴とする請求項3または4記載の官能基含有アクリル系共重合体の製造方法。
【請求項6】
以下の条件(i)〜(iii)を満足する官能基含有アクリル系共重合体の製造方法。
(i)官能基含有モノマーを含むモノマー混合物(α)を重合率60%以上となるように溶液重合し、次いで、官能基含有モノマーを含むモノマー混合物(β)混合し、さらに重合する。
(ii)モノマー混合物(α)に含有される官能基含有モノマー量をQ、モノマー混合物(β)に含有される官能基含有モノマー量をRとした場合、Q/R<1である。
(iii)モノマー混合物(α)の含有量が、モノマー混合物(α)とモノマー混合物(β)の合計量100重量部に対して、50〜90重量部である。
【請求項7】
請求項1または2記載の官能基含有アクリル系共重合体(A)を含有する粘着剤組成物。
【請求項8】
さらに、架橋剤(B)を含有する請求項7記載の粘着剤組成物。

【公開番号】特開2007−99998(P2007−99998A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293915(P2005−293915)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】