説明

定位可能で情報を伝達する(LOCATABLEANDINFORMATION)音響装置と方法

【課題】定位可能な情報信号を提供する装置を提供することである。
【解決手段】定位可能な情報信号を提供する装置装置は、広帯域音を含む位置を示す音響信号と少なくとも言語情報を含む情報音響信号とを連続的に出すようになされている。また前記装置により発生させた信号、複数の前記装置を組み込んだシステム、および前記システムまたは信号を用いてある環境で人が正しい方向に向くことを可能にする方法について記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は言語情報(verbal information)と定位可能な音(locatable sound)の両方を近くにいる人に発信することができる装置の信号のパターン、そのような信号を発生させる定位可能な情報装置、およびそのような信号を発生させる方法に関する。特に本発明は、限定するわけではないが、特に一般家屋や商業ビルまたは航空機や定期船などの大型の輸送機関、道路横断装置などの歩行者を援助するもの(pedestrian aids)、および可聴警報装置またはサイレンなどの指示器に用いられ、また特に非常口、回避すべき危険やマスターポイントなどの位置(location)との関連で用いられる、信号、装置または方法を組み込んだシステムに適用できる。
【背景技術】
【0002】
緊急の場合や、単に所定の場所に人を誘導することだけが必要な場合でさえ、人に特定の状況に対して注意を喚起するために、および/またはその状況に応じて移動しなければならない方向を示すために、聴覚手段および/または視覚手段が設けられている。例えば一般家屋や商業施設で火事のため危険や災害(danger or hazard)がある場合、または例えば放射能のような形で化学的または物理的な有害物質が環境に漏れている場合、まず最初に人に潜在的な危険や災害に注意を喚起して、それから人が安全な環境にたどり着けることを確実にする必要がある。
【0003】
この目的のために、一般住宅または実際に上記建物には煙感知器が設けられていて、また商業ビルには煙/化学物質/放射能の感知器と安全な出口地点を示す信号を組み合わせたものが設けられている。感知器の作動は通常、単に人に潜在的な危険に注意を喚起するアラーム音を鳴らすことに終止し、その後に人はその人自身の家庭環境(domestic environment)の知識から、または多くのサイン(signs)に従うことによって安全な出口地点を見つけ出すことが求められる。
【0004】
残念ながら、火災や、化学物質の漏洩や、視界を悪くする他の条件がある場合、煙/化学物質が視覚に影響を与えるために、サインが視界から遮られたり、そして/またはサインを見る能力が損なわれたりする可能性がある。視界が良好な場合でさえ、遮られたり、視線から外れたりする可能性がある。従って、従来のアラームの提供はサインの有無に拘わらず人が建物から出ることを確実にするには不十分な防護手段であるということになる。
【0005】
ある環境の周囲に人を誘導するために聞き取れる手掛かり(cue)が利用できれば望ましいことは理解できる。しかしながら緊急時に一般に使用されるアラームは通常狭い範囲の周波数からなり、定位が難しいことが知られている。とにかく、それらは慣習的にドアやその他の出口には置かれない。
【0006】
従ってEP0846311とEP1225551には、ある環境でユーザが音で自分の所在位置を特定して、正しい方向に向くことを可能にする広帯域音の使用について記載されており、後者の場合は(サイレンやベルなどの)狭帯域音の警報信号と連動した定位可能なコンビネーション・アラームで発信されたときに自分の所在位置を特定して、正しい方向に向くことができる。
【0007】
この従来技術は、音が複雑で人の可聴範囲の少なくとも2つの特定部分にわたる(across)周波数帯からなるときだけ、高い精度まで脳が音源の方向を感知できる、人間の音響信号処理の特徴を利用している。従来技術の一般的な基礎理論を以下に記載する。
【0008】
音源定位能力は生存するための進化上の必要条件である。例えば捕食者が接近している最中に小枝の折れる音を聞いたとき、単に待っていて辺りを見回し音がどこから来るか確認する暇などない。生き残るために聞こえる信号を受信するやいなや我々は即座に反応しなければならない。同様に捕食者にとっても、葉のカサカサいう音は潜在的餌食がどこに隠れているかを示し、その場所の定位がそのとき食べるか否かを決定するだろう。従って音の所在を突き止めることが、我々がうまく生きることと結論付けても間違いない。実際、正しいタイプの音を前提として、我々は約5度の精度で音を定位することができる。この精度のレベルは視覚空間能力のそれよりも低いが、生存目的としては十二分である。
【0009】
音源反応の検出で決定的な役割を果たし、また重要な、中枢神経系の特定箇所がある。この領域は中脳の一部であり、上丘(SC)と呼ばれている。SCのニューロン特性を研究する神経生理学者は音に対する人間の反応を研究する音響心理学者と共に、脳がどのように音源に関する情報を処理するのか、そして重要なことには、どのようなタイプの音が実現されるべき一定の精度に必要であるかの理解を可能にした。SCは新規な知覚刺激に反応するので、パルス音は脳の上記領域の刺激に最も効果的である。音源の定位には膨大な神経処理が必要であると長い間認識されてきた。あるタイプの音だけが生来的に定位可能であり、そして重要なことはそれらの音が周波数の大きい帯域、即ち広帯域音を含んでいるということである。 純音(pure tones)、純音の組み合わせ(simple tone combinations)または狭帯域の雑音は直ちにまたは正確に定位できない。これがなぜそうなるかを理解するために、脳が認識した音によって与えられる手掛かり(cues)を考慮しなければならない。
【0010】
年を取るに従って範囲が小さくなるが、我々は約20Hzから20kHzの非常に広範囲の周波数を聞くことができる。脳が音を定位可能な情報は主として3種類に分類できる。最初の2つは頭幅によって隔てられた2つの耳があるという事実を利用するので、バイノーラル・キュー(binaural cue)として知られている。中間線の片側から出る音は最初に音に最も近い耳に到達して、また音に最も近い耳のところで最も大きくなる。低周波数(1000Hz以下)では脳は両耳間の音の到達時間差(ITD)を認識し、より高い周波数(3000Hz以上)における顕著な手掛かり(cue)は各耳での音の大きさ/強度の差(IID)である。上記2種類の手掛かり(cue)を用いることは「二重」理論として知られており、1877年というかなり前からロード・ローリーによって提案されていた。
【0011】
しかしながら単一周波数において、これらの手掛かりは空間的に曖昧である。固有の曖昧さは「混乱の円錐(cone of confusion)」と言われている。これはどの所定の周波数にも同一の時間差/強度差を生じる多数の空間位置があるという事実に起因する。これらは円錐形で図式化でき、その頂点は外耳の位置(level)にある。混乱の円錐は我々が純音を定位できない主な理由である。
【0012】
脳が音の定位(sound localization)について処理した最終の主な情報は頭部伝達関数(HRTF)(5000Hz以上の周波数に用いられる)と呼ばれる。HRTFは外耳が音に与える影響を示す。耳介の隆起または渦巻き(convolutions)を通り過ぎる結果として音が変更されて、ある周波数は減衰し、またある周波数は増幅される。音が耳介によって変更される方法に一定の普遍性はあるが、どの人のHRTFもその人に特有のものである。HRTFの役割はすぐ前に音があるか、または真後ろに音があるかを決定しようとしているときに特に重要である。この場合、時間差と強度差は無視でき、その結果「前にある」または「後ろにある」の決定を基礎付ける中枢神経系に利用可能な情報はほとんどない。従って音源の方向を特定する(locate)ために周波数コンテンツが大きければ大きいほど、単音に固有の曖昧さを克服するために精度がより良くなる。
【0013】
その程度まで従来技術の定位可能な信号は各手掛かりに必要な1000Hzより下の周波数と、3000Hzより上、特に5000Hzより上の周波数の両方にわたる(across)十分な幅を持つように少なくとも十分に広帯域である必要がある。ここで用いられる場合には広帯域音はこの要件を考慮して解釈されるべきである。
【0014】
従来技術の装置は、放出された広帯域音の音源を放出体(emitter)の近くの人が定位できるようにしたという点で成功している。警報システムと連動してこれになぜ価値があるかは明白である。そこでは定位可能な音が従来技術に記載されているように出口を特定し、そして/または案内するのに用いられる。しかしながら、広帯域音が定位できること(localizability)は音の固有の特性であり、かつ人間の聴覚器官(aural apparatus)が音を処理する方法の固有の特性であるが、聞き手が直ちに広帯域音が非常口を特定するなど特定の誘導を目的としたものであると認識することは必ずしも固有であるというわけではない。 一般にそのような二次推測は、例えば適当な避難訓練や通知により教えられる必要がある。
【特許文献1】EP0846311
【特許文献2】EP1225551
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、定位可能であり(locatable)かつ情報を伝達する(informative)音響信号、対応する装置および方法を提供することによってこの不都合を緩和することである。
【0016】
本発明の特定の好ましい目的は、定位可能であり、かつ情報を伝達するので、潜在的危険、例えば火事や化学物質の漏洩などの緊急事態の場合での、ビル、トンネルなどの他の構造物、または航空機やライナーなどの大型輸送機関からの緊急避難状況に限定されないが、そのような危険に対して近くの聞き手が自分の位置を特定して、上手く切り抜けるのを助ける音響信号、装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って、本発明の第1の態様によれば、広帯域音を含む位置を示す音響信号(locating sound signal)と、少なくとも言語情報を含む情報音響信号とを連続的に出すようになされた装置が提供される。
【0018】
前記位置を示す音(locating sound)は、従来技術の装置と本明細書に記載した音の定位の理論に関連して上述したような広帯域音を含む。即ち位置を示す音は必要な聴覚手掛かりを発するために1000Hzより下の周波数と3000Hzより上、特に5000Hzより上の周波数の両方にわたる(across)十分な幅を持つ信号エレメントを含む。好ましくは、位置を示す音は人間の聴力範囲内に限定される低周波数と高周波数の両範囲の実質的部分にわたり広がる(spread across)エレメントを含み、例えば、少なくとも200〜1000Hzの周波数の範囲と、3000〜12000Hzの周波数の範囲の幅の実質的部分にわたり広がる。なお範囲の幅は対数軸で考慮される。最も好ましくは、位置を示す音は様々な年齢層で考慮される人間の聴力範囲の大部分を含む幅にわたり広がる周波数からなる。なおこれも範囲の幅は対数軸で考慮される。
【0019】
信号が必ずしも同一の振幅または実際にカバーされる全幅にわたる(across)振幅を有する必要はない。例えば必要な周波数の範囲にわたり広がる(spread across)複数の比較的離散的な信号で信号幅がもたらされることは差し支えない。しかしながらある種の信号幅は記載した低域周波数と高域周波数で要求される。単一の狭域の比較的低い周波数トーンと単一の狭域の比較的高い周波数トーンは容易に定位できない。
【0020】
情報音響信号は何らかの形で言語情報を出す。即ち聞き手は音響信号から1つまたは複数の単語を含む情報メッセージを得ることができる。大部分の実用的な用途のために情報音響信号は通常1つまたは複数の話し言葉として言語情報メッセージを直接発声することを含む。しかしながら、音響信号には例えばモールス信号などの記号化システムが用いられるので、本発明は言語情報が別の態様か、より複雑な態様か、さもなければ音響信号から引き出せる態様で発声される情報音響信号を含む。
【0021】
従って情報音響信号には、好ましくは記録され、そして/または合成された音声(voice)が含まれる。話し言葉には調節され、そして/または他の信号エレメントと結合した複雑な情報音響信号が用いられてもよい。メッセージを強調し、そして/または他の目的のために、非言語音を追加して出してもよい。
【0022】
二つの信号は連続していて、それらは離散的バースト(discrete bursts)で次々と出される。即ち一つの信号サイクルには、少なくとも1回の位置を示す音の離散的バーストからなる位置を示す音響信号と、続いて中断、続いて少なくとも1回の言語情報のバーストを含む情報音響信号とが含まれる。
【0023】
ここで、耳が特に敏感である周波数の範囲を含むスピーチが、500〜3000Hzの狭い周波数の範囲にわたり作用することに注目する価値がある。この範囲はほとんど音の定位には役に立たない。通常話し手と視覚接触しているので、スピーチが定位可能になるための進化上の圧力がなかった。
【0024】
本発明によれば、言語情報信号はEP1225551に記載されたタイプの狭い周波数帯アラームの代わりに用いられる。そして2つの信号は、脳が定位可能な音と、音とプロセスの両方を有効に伝達する情報とを確実に認識できるように慎重に連続的に分離される。この従来技術は狭帯域アラームが位置を示す音と組み合わせて構想されていることは明らかである。本発明はどの動作理論によっても制限されないが、一つには上記理由により、2つの信号が連続的であり同時ではなく、脳が別々に処理できるくらい十分離れた間隔で分離されるならば、複雑なスピーチ信号が切り離されて、脳は位置を示す音を定位する(locate to the locating sound)能力を損なうことなく驚異的な精度で別々に処理できると考えられる。
【0025】
位置を示す音響信号と情報音響信号とを連続的にかつ別々に分離することは本発明の成功に決定的な意味を持つ。同時のまたは重なり合った言語音や位置を示す音は脳による2つの信号の別々の処理を妨げる傾向があり、両方の信号の効果が損なわれる。
【0026】
最大の効果を得るために、本装置は信号サイクル(即ち、上述の位置を示す音響信号と上述の情報音響信号を含むサイクル)を連続的に繰り返すように構成されるのが好ましい。反復間隔が十分短く保たれるなら、本発明の目的のために信号を離散化して別々に維持することが必要であるにしても、同時にそれらが実用目的のために作用され得る態様で人が位置を示す音と情報音の両方を処理できることが分かる。
【0027】
好ましくは、本装置は60秒以下(no more than)、より好ましくは20秒以下(no more than)、特に3〜10秒の反復間隔で全信号サイクルを繰り返すように構成される。このような比較的短い反復間隔は、重要な情報が情報信号によって伝達される時間を十分に取りつつも、位置を示す信号が十分高い頻度で繰り返されるようにして人が方位と方向(orientation and direction)の感覚を維持できることを確保する必要性により決定される。
【0028】
総合すれば、慎重に配置された位置を示す信号と情報信号の別々のパターンはその間の中断と制御された反復サイクルの長さと相まって、驚くべきことに、かなりの程度の言語情報が総合的で(overall)複雑な信号の定位を実質的に損なうことなく位置を示す音と共に複雑な信号で伝達されることが分かったことを意味する。
【0029】
好ましくは、位置を示す音響信号はそれぞれ、短い中断でそれぞれ切り離された位置を示す音の複数の短い離散的バーストから構成される。好ましくは、位置を示す音響信号はそれぞれ、複数のそのような位置を示す音のバースト、例えば3〜5回のそのようなバーストから構成される。これは位置を示す音が連続しているときよりはむしろ目新しいときに最も効果的に定位されるからである。従って、複数の密接に連続した短いバーストから構成される位置を示す音響信号(a localising sound)はより有効に定位される(effectively localized)。またこの効果は本発明による総合的で(overall)複雑な信号の定位(the localizability)に貢献できて、ユーザは言語情報音響信号がサイクル中に含まれているときでさえ引き続き得ることができる。
【0030】
適当なことには、位置を示す音響信号サイクルにおいて位置を示す音響信号のバーストを発生させ、それから最初の遅延後に別の位置を示す音響信号のバーストを発生させ、それから第2の遅延後に別の位置を示す音響信号のバーストを発生させる。
【0031】
好ましくは、間に入る遅延はそれぞれ5ms〜500ms、特に10〜250msの継続時間がある。最適遅延時間は状況に応じて50〜200msの位数(order)であることが分かった。
【0032】
好ましくは、最後の位置を示す信号のバースト後に、さらに信号を切り離す遅延があり、それから情報音響信号が続く。信号を切り離す遅延は1ms〜60s、例えば100〜1000ms、特に200〜500msの継続時間がある。最適遅延時間は反響環境によって決まる。
【0033】
好ましくは、情報音響信号の後に、さらにサイクルを切り離す遅延があり、その後サイクルが繰り返される。サイクルを切り離す遅延は信号を切り離す遅延と同じ位数(order)か、もしくは僅かに長く、1ms〜60s、例えば200〜1000ms、特に300〜700msの継続時間がある。最適遅延時間は反響環境によって決まる。
【0034】
位置を示す音は10ms〜5sec、理想的には10ms〜500ms、より好ましくは150ms〜300msの間隔で、あるいはより好ましくはさらに約200〜250msの継続時間で放出される。
【0035】
位置を示す音は例えば5〜10msのオンセット時間(onset time)の後に150〜500msの音響放出と5〜10msのオフセット時間(offset time)が続くように傾斜が付けられる(ramped)。上記傾斜プロファイルを有する位置を示す音が好ましいが、本発明の範囲から逸脱せずに自明の変更を行ってもよい。傾斜(ramping)が有利に共鳴の影響(ringing effect)を回避することが分かった。
【0036】
位置を示す音の選択される構成要素は、装置のスピーカの特性および/または聞き手が位置している環境の吸収特性および/または聴覚に関する聞き手の現在の環境若しくは予想される環境を考慮して増幅されるか、あるいは減衰される。
【0037】
位置を示す音には位置を示すノイズ(locating noise)のバーストが含まれることがあり、その場合前記バーストのそれぞれの間隔は連続して小さくなり、そして/あるいは位置を示すノイズの各バーストの長さが連続して小さくなり、その結果音または連続性を速めるノイズパターンがもたらされる。
【0038】
一実施形態では40Hz〜16kHzを使用することが好ましいが、位置を示す音のほんの一例として40Hz〜20kHzの広帯域音が与えられてもよい。しかしながら、本発明が単なる例示目的で提示されたこれらの周波数に限定されるべきことは意図せず、むしろ定位を可能にする十分に複雑な音はいずれも用いることができる。
【0039】
言語情報音には1つまたは複数の話し言葉が含まれる。情報信号に複数のそのような言葉が含まれる場合、言葉はそれぞれその間に遅延が入る離散的信号バーストとして伝達されるのが好ましい。間に入る遅延は脳が各言葉を別々に処理するのに十分なものでなくてはならず、例えば50ms〜5s、好ましくは100〜500mn、特に350〜450secsの継続時間を有する。
【0040】
情報信号に複数の言葉が含まれる場合、第1に情報メッセージを単純にしておくために、第2に本発明の本質的特徴である複雑なサイクルが連続反復されるとき位置を示す音響信号エレメントが総合的な(overall)信号を定位する個人の能力を維持するように十分高い頻度で確実に出されるために、ほんの2,3の言葉、例えば5単語以下(no more than)の言葉が使用されるのがやはり多くの場合望ましい。同様に、各言葉は短く、例えば1または2音節の長さが好ましい。
【0041】
本装置が少なくとも位置を示す(localizing)信号と言語情報信号を含む複雑な信号を出すことは本発明の本質的特徴である。位置を示す(localizing)信号は総合的で(overall)複雑な信号が完全にかつ有効に定位されることを確実にする必要がある。上述の異なる信号が慎重に連続して続けば、情報も有する複雑な信号がさらに有効に定位されることが分かった。単に狭帯域アラーム信号と言語情報信号だけを含む複雑な信号は、そのような信号の構成要素がいずれも有効に定位されないので適当ではない。
【0042】
そうは言うものの、従来の狭帯域アラーム信号が本発明の装置と共に、あるいは別々に操作されるかどうか、また信号が聴覚的か、視覚的か、あるいは組み合わせかに関係なく、本発明は狭帯域アラーム信号が付加的に存在することを排除しない。例えば従来のサイレンやベルなどの狭帯域音を含む聴覚アラーム信号を付加的に発生させてもよい。これは本発明の装置とは別々に、そして別の場所から発生させてもよく、一般的には本発明の装置とは共に位置しているが別々に発生させるか、あるいは少なくとも上述の位置を示す(locating)音響信号と情報音響信号を含む複雑な信号の一部として本装置で一緒に操作可能にして発生させてもよい。
【0043】
上述の広帯域の位置を示す音と音声情報音から人は狭帯域の聴覚アラーム信号を合理的かつ有効に分離することができるので、そのようなアラーム信号は本発明の信号パターンと同時に発生させることができる。あるいは、アラーム信号は規則正しく組み合わさった信号パターンの一部として順次音を出すように調整することができる。
【0044】
本発明の実施可能な態様では、さらに本装置に、該装置のメッセージを補強するために視覚的手掛かり(visual cue)を提供する視覚表示手段が設けられる。視覚的手掛かりはアラームの補強および/または言語情報信号の補強をすることができ、例えば言語情報、方向指示標識、照明などを繰り返す、補強する、明確にする、または別の方法で補足する単語または記号を含んでもよい。
【0045】
本発明の実施可能な態様では、さらに本装置に、予め設定されている時間間隔の後におよび/または一定の条件で信号を無効にするカットアウト(cut-out)手段が設けられる。本装置と結合した熱/化学物質/放射能の感知器または他の感知器が煙や化学物質や放射能などの対応するインジケータの予め設定されているレベルを記録するとすぐに、カットアウト手段は作動する。これにより人は危険になった出口経由で誘導されることはない。
【0046】
都合の良いことに、本発明は上記態様によって説明したような聴覚(audio)信号パターンを持つ音を発生させるようにした音響発生手段を含む。
都合の良いことに、本発明は上記態様によって説明したような聴覚信号または聴覚信号パターンまたは音を発生するようにした信号発生手段を含む。
都合の良いことに、本発明は上記態様によって説明したような聴覚信号または信号パターンの信号(signal pattern signal)を伝えるようにした信号保存手段を含む。信号保存手段は複数の信号と、例えばユーザの選択で引き出される複数の言語メッセージを保存する。
都合の良いことに、本発明はホスト処理装置にデータを転送できるインターフェースを含む。
都合の良いことに、本発明は離れた場所から生のまたは録音された聴覚信号パターンを転送/送信できるインターフェースを含む。
都合の良いことに、本発明は互いにまたは離れた場所にあるホスト処理装置と共にシステムのユニット間またはユニットのグループ間の聴覚信号パターンの同期化を可能にするインターフェースを含む。
【0047】
本発明の第2の態様によれば、広帯域音を含む位置を示す音と言語情報を含む情報音とを連続的に含む複雑な定位可能な音響信号が提供される。
特に複雑な信号は、前述のように、3〜5回の位置を示す音の離散的バーストからなる位置を示す信号と、信号を分離する中断と、言語情報信号とを含む。好ましくは2つの信号は同一の指向性音源から発生させる。
【0048】
別の実施態様では、複雑な信号は、サイクルを分離する中断によりそれぞれ切り離される、連続的に発生する上記信号の連続サイクルを含む。
この実施態様のさらに好ましい特徴は上記内容から理解されるだろう。
【0049】
本発明の第3の態様によれば、特に緊急時に例えば安全な出口ルートを特定し、誘導されるために、ある環境で自分の所在位置を特定して、正しい方向に向くこと(to locate and orientate himself)を可能にする方法が提供される。前記方法は、第1に広帯域音を含む位置を示す音響信号を発生させ、第2にそれに引き続いてすぐに、しかし個別の中断の後に言語情報を含む情報音響信号を発生させ、任意で、連続的にではあるがさらに個別の中断の後に上記を繰り返すことを含む。
【0050】
上述の通り、第1の信号は好ましくは3〜5回の位置を示す音の離散的バーストを含み、第2の信号は一語または数語でもよく、後者の場合は短い中断でさらに切り離される。2つの信号は好ましくは同一のまたは通常共同設置される(co-located)発信源から発生させるか、あるいは聞き手により通常そのような共通の発信源を持つと聴覚で感知されるように発生させる。
【0051】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第1の態様による少なくとも1つの好ましくは複数の適当に配置された装置および/または本発明の第2または第3の態様による信号発生手段を含み、作動すると位置を示す信号が信号発信源を定位可能にして、情報信号がその位置に関する情報を与え、そして2つの信号が一緒に環境ナビゲーションで人をアシストするように配置された、ある環境内で、特に緊急避難システムの下で人を誘導するシステムが提供される。
【0052】
このシステムは本発明の重要な応用であり、誘導システムや特に避難システムで用いられる。複雑な位置を示す信号は定位できるが、さらなる訓練なしにそのような位置を示す信号に人がどう反応すればよいのか分からない上記の従来技術とは対照的に、本発明の複雑な信号は人にどんな行動を取るべきかを知らせる。複雑な信号は位置を示す信号の存在により定位可能である。しかしながら、通常は例えば信号の発信源の方へ誘導する情報信号により、人にどんな行動を取るべきかをも知らせる。
本発明の後続の態様の他の好ましい特徴は、第1の態様のより詳細な説明を類推して理解されるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
ここで、装置、システムおよび信号パターンの本質をより簡単に理解できるように、ほんの一例として本発明について説明する。しかしながら、本発明の範囲は単なる例示目的の下記情報により制限されるべきではない。
【0054】
図1は、定位可能な信号と情報信号とがそれぞれサイクルを構成する例を説明する挿入部を用いて、本発明による複雑な聴覚(audio)信号サイクルの全体像を示す。
【0055】
図1は本発明による適当な複雑な信号サイクルを示しており、実施例では地階やトンネルなどの比較的大きい閉鎖空間からの人の避難をアシストするように構成される。信号パラメータは聴覚環境、特に最適なパルスパターンと長さによって異なる可能性が高い。
【0056】
実施例では複雑な信号は、例えば200msのインターパルス間隔(I1)で分離される、同じ225msの長さの、3つの広帯域パルス(B1,B2,B3)からなる位置を示す音の信号を含む。400から450msの中断(I2)が、実施例では約1300から1500msの長さの記録または合成された音声メッセージ(V)の前に起こる。音声メッセージ後の約550msのさらなる中断(I3)の後に、全サイクルは繰り返される。従って実施例では全サイクルが約3.5秒毎に繰り返される。この反復間隔(This repeat interval)は、位置を示す信号が十分頻繁に繰り返されて、それによって人が定位感覚と方向感覚を保持できることを確実にするが、このインターバル時間(the interval times)は情報信号から重要な情報を解析するのに十分である。
【0057】
音声メッセージの目的は広帯域パルスによって人が定位できた音源に関する情報を与えることである。これは多くの実用的な用途では人を音源の方へ誘導することを意図した情報メッセージになり、他の用途では他のメッセージ、例えば人が危険から離れるように誘導するものが想定される。本例では、音声メッセージの目的は位置を示す音によって定位できた出口の方へ人を誘導することである。
【0058】
従って、音声メッセージはこのメッセージの伝達を意図した少数の個別の(discrete)単語を含んでいる。実施例では音声メッセージは2単語(V1,V2)であり、例えば1つか2つの音節のメッセージなど短いのが好ましい。「ここを出ろ(exit here)」「この道(this way)」「安全な出口(safe exit)」「出口(way out)」のようなメッセージが簡単に想定できるが、もちろんこの原理は言葉によって限定されない。
【0059】
音声メッセージの分析とそれを理解する能力は重要である。この点で、言葉の正確な長さは重要ではないが、明確さは不可欠であることが分かる。従って、この実施例では350〜450msの、別々のスペース(I4)が単語と単語の間に挿入される。本実施例では2単語で約450〜500msかかる。これは挿入部Aに示されている。
【0060】
挿入部Bに関して、40Hz〜20kHzの広帯域音の信号は、5msの前縁(2)を持ち、不可聴音か、辛うじて聞き取れる音を発生させるか、あるいは音を発生させない最小振幅レベルから、最大振幅レベル(1)である最大振幅レベル215msまで振幅が遷移して、それから5msの後縁(3)に遷移して信号の最大レベルから最小レベルに遷移する、適当な225msの広帯域音のバーストの振幅/時間プロットを含む位置を示す聴覚信号バーストの例を示す。
【0061】
挿入部Bの位置を示す聴覚信号バーストは、聞き手に音響発生装置の位置を定位させることを目的としている。聞き手はその後この位置に関して非常に簡単な音声命令で誘導されることができる。
【0062】
本発明を単一の音響発生手段について言及することにより説明したが、本発明は複数の音響発生手段が設けられ、第1と第2の音響発生手段が第1の音と第2の音、即ち位置を示す音と情報音をそれぞれ出すようになされたシステムか、あるいは、前記音の性質と持続時間を予め定めることができ、1つまたは複数の前記装置のそれぞれの相互作用が前記装置の全て、または選択された装置から出された音全体を示す予め定められた音パターンを提供するように制御できるように複数の音響発生手段が制御された方法で前記第1と第2の音を両方出すようになされたシステムも含む。
【産業上の利用可能性】
【0063】
従って、本発明は単に定位可能なだけではなく、事前の訓練や、出口ルートについて照会する必要性や、定位可能な信号だけが提供された場合に必要なことなしで、位置(location)に関して何をしたらよいかについての行動可能な情報を位置の影響を受ける人に与える音響装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明による複雑な聴覚信号サイクルの全体像を示す。
【符号の説明】
【0065】
1 最大振幅レベル
2 前縁
3 後縁
B1,B2,B3 広帯域パルス
V 音声メッセージ
V1,V2 単語
I1 インターパルス間隔
I2,I3 中断
I4 スペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広帯域音を含む位置を示す音響信号(locating sound signal)と、少なくとも言語情報を含む情報音響信号(information sound signal)を連続的に放出するようになされた装置。
【請求項2】
前記位置を示す音(locating sound)は200〜1000Hzと3000〜12000Hzの周波数の範囲の幅の実質的部分にわたり広がるエレメントを含む請求項1記載の装置。
【請求項3】
少なくとも1回の位置を示す音の離散的バースト(discrete burst)からなる位置を示す音響信号と、続いて中断、続いて少なくとも1回の言語情報のバーストを含む情報音響信号とを含む信号サイクルを出すようになされた請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
信号サイクルを連続的に繰り返すようになされた請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、間に入る短い中断でそれぞれ切り離された、位置を示す音の複数の短い離散的バーストとして、位置を示す音響信号をそれぞれ出すようになされた先行するいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項6】
間に入る遅延でそれぞれ切り離された位置を示す音響信号をそれぞれ含む前記バーストを3〜5回放出するようになされた請求項5記載の装置。
【請求項7】
最後の位置を示す信号がバーストした後、さらに信号を切り離す遅延があり、それから前記装置が情報音響信号を出すようになされた請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記装置は話し言葉を含む言語情報音を出すようになされた先行するいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項9】
複数の話し言葉を含み、各言葉がその間に遅延の入る離散的信号バーストとして伝達される言語情報音を出すようになされた請求項8記載の装置。
【請求項10】
さらに聴覚アラーム信号を付加的に出すようになされた請求項8記載の装置。
【請求項11】
広帯域音を含む位置を示す音(locating sound)と言語情報を含む情報音(information sound)とを連続的に含む複雑な定位可能な音響信号(locatable sound signal)。
【請求項12】
前記信号は3〜5回の位置を示す音の離散的バーストからなる位置を示す信号と、信号を切り離す中断と、言語情報信号とを含む請求項11記載の複雑な定位可能な音響信号。
【請求項13】
第1に広帯域音を含む位置を示す音響信号を発生させ、第2にそれに引き続いてすぐに、しかしその間に入る個別の中断(discrete intervening pause)の後に言語情報を含む情報音響信号を発生させ、任意で、連続的にではあるがさらに個別の中断の後に上記を繰り返すことを含む、ある環境において人が自分の所在位置を特定して、正しい方向に向くこと(to locate and orientate himself)を可能にする方法。
【請求項14】
作動すると位置を示す信号が信号発信源を定位可能にして、情報信号がその位置に関する情報を与え、そして2つの信号が一緒に環境ナビゲーションで人をアシストするように配置された請求項1〜10のいずれかに記載の少なくとも1つの装置を含む、ある環境内で人を誘導するシステム。

【図1】
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【公表番号】特表2009−503570(P2009−503570A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523430(P2008−523430)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002605
【国際公開番号】WO2007/012806
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(508026319)サウンド アラート リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SOUND ALERT LIMITED
【住所又は居所原語表記】Taurus Park,Europa Boulevard,Warrington,WA5 5YT UNITED KINGDOM