説明

定形ガスケット

【課題】鍔付きスリーブ管の鍔の両側に下地材と外壁面材を嵌挿して、鍔の両面と下地材及び外壁面材をそれぞれ接着剤にて接着したのち、接着剤が硬化する前にスリーブ管に密嵌してスリーブ管と外壁との間をシールする定形ガスケットにおいて、接着剤が硬化する前に鍔部がずれ動いて壁孔内でスリーブ管に偏りが生ずるとしても、その偏りを許容範囲内に収めることができるようにする。
【解決手段】リング状の取付基部12と、該取付基部外周より突設されて、壁孔2にガスケット11を押し込む方向と逆向きに後退し、前記壁孔2に押し込んだ状態で壁孔内周面と弾接する断面リップ状のシール片13とよりなり、シール片13には、取付基部側に向けて突出形成される突起15を備え、シール片13が撓んで壁孔内でスリーブ管3が偏るとしても、その偏りは突起15が取付基部12に当るまでのシール片13の最大撓み量に制約される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の外壁を貫通する壁孔に通した換気用のスリーブ管に密嵌され、該スリーブ管と外壁との間をシールする定形ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁に換気扇を含む換気装置や換気用の外部フードを取付けるために外壁を貫通する壁孔にスリーブ管を通し、該スリーブ管の屋外側に換気装置や換気用の外部フードを取付けることが行われている。図1は、その一例を示すもので、下地材1(下地1aとフレーム材1bにて構成され、フレーム材1aはフレームとグラスウールにて構成されている)にあけられた壁孔2に鍔3a付きのスリーブ管3を通し、ついで下地材1から突出するスリーブ管3に外壁面材4の壁孔5を通して外壁面材4を鍔部3aに当て、鍔部3aの両面と下地材1及び外壁面材4を接着剤にてそれぞれ接着することによりスリーブ管3を壁孔内に固定して支持する。この工程までを工場にて実施した後に建築現場にて湿式のシーリング材6をスリーブ管3と外壁面材4との間に押し込んでシールし、その後スリーブ管3の屋外側部分に外部フード7の筒部8を差し込んで取付けている。
【0003】
壁孔とスリーブ管との間をシールする別の例として特許文献1には、壁孔とスリーブ管との間にシール材を充填する方法、スリーブ管の屋外側部分に取付けられる換気装置のアダプタと外壁との間にシール材を充填する方法などが開示されている。
【0004】
また特許文献2には、壁孔に内挿した換気用のスリーブ管と、該スリーブ管に通した換気口カバーの差込み筒との間をシールするガスケットに上記スリーブ管に弾接するリップを設けたものが開示されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−349943号
【特許文献2】特開2004−44955号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
下地材1と外壁面材4とで構成される図1に示される外壁は通常、上述するようにスリーブ管3が鍔部3aを下地材1及び外壁面材4に接着剤にて接着して固定した状態で出荷され、建築現場に運ばれるが、接着剤は硬化してスリーブ管3が固定されるまでに時間がかかり、接着剤が硬化するまでに鍔部3aが下地材1及び外壁面材4に対しずれ動いてスリーブ管3が径方向にずれて偏った状態で固定されることがあり、建築現場で外壁据え付け後、湿式シーリング材を充填する際、十分な隙間が確保されない箇所では湿式シーリング材の充填が困難で、充填が不十分となるおそれがあり、充填が不十分であると、シール性を損なうおそれがある。また湿式のシーリング材によるシーリングは壁との間に隙間を生じ易く、シールが不十分となりがちである。
【0007】
壁孔とスリーブ管との間に充填される特許文献1に開示のシール材は、シーラントであるが、こうした不定形のシール材を充填するのには手間がかかり、また硬化するまでに時間がかかるためスリーブ管の偏りを生じないようにできるものではない。特許文献2に開示されるガスケットは定形で、装填時の手間は軽減されるが、リップの撓み量の大小によってダクトが径方向に偏るおそれがある。しかもこのガスケットはスリーブ管と換気口カバーの差込筒との間をシールするもので、スリーブ管と壁孔の外壁との間をシールするものではない。
【0008】
本発明は、建物の外壁を貫通する壁孔に通した換気用のスリーブ管に密嵌され、該スリーブ管と外壁との間をシールする環状の定形ガスケットにおいて、壁孔に取付けたスリーブ管の取付位置に偏りが生ずるとしても、その偏りを許容範囲内に収めることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係わる発明は、建物の外壁を貫通する壁孔に通した換気用のスリーブ管に密嵌され、該スリーブ管と外壁との間をシールする環状の定形ガスケットにおいて、スリーブ管に密嵌状態で嵌着されるリング状の取付基部と、該取付基部外周より突設されて、前記壁孔にガスケットを押し込む方向と逆向きに後退し、前記壁孔に押し込んだ状態で壁孔内周面と弾接する断面リップ状のシール片とよりなり、該シール片は更に、一側の壁孔内周面との接触面が径方向に凹状をなし、またシール片他側と取付基部外周のうち、いずれか一方には前記シール片を前記取付基部側に押し込んで倒したとき、他方に突き当たってシール片を支持する突起が突出形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係わる発明は、請求項1に係わる発明において、取付基部内周にスリーブ管に圧着する突部が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係わる発明のガスケットは、スリーブ管の鍔部の両面を下地材及び外壁面材にそれぞれ接着剤にて接着したのち、接着剤が硬化する前に、スリーブ管に嵌挿して該スリーブ管と外壁の外壁面材との間の隙間に押し込みシールするものであるが、ガスケット自体は定形であるため、不定形のシーラントに比べ作業性がよいこと、定形ガスケットはスリーブ管と外壁の外壁面材との間の隙間に押込む際、シール片は外壁面材の壁孔内周面によって径方向内方に撓んで押込まれるが、撓みはシール片他側と取付基部外周のうち、いずれか一方に設けた突起が他方に当たることにより規制され、シール片が撓んでスリーブ管が偏るとしても、その偏りはシール片他側と取付基部外周のうちのいずれか一方に設けた突起が他方に当たるまでの限られた範囲に制限され、これによりスリーブ管の偏りを許容範囲内に抑制することができること、シール片一側の壁孔内周面との接触面は凹状をなしているため、壁孔に押し込んで装着したときの壁孔内周面との接触面積がを増してシール性を向上させることができること等の効果を奏する。
【0012】
請求項2に係わる発明によると、突部がスリーブ管に圧着することによってスリーブ管とのシール性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】壁孔への従来のスリーブ管の取付構造を示す断面図。
【図2】本発明に係わる定形ガスケットの径方向における断面図。
【図3】図2に示す定形ガスケットを取付けたスリーブ管の取付構造を示す断面図。
【図4】スリーブ管が最大に偏心したときの図2に示す定形ガスケットの正面と断面の対応関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の定形ガスケットについて図面により説明する。図中、図1に示す構造と同一部分は同一符号を付した。
【0015】
図2は、本発明に係わる定形ガスケットの径方向の断面を示すもので、該定形ガスケット11は、内径rがスリーブ管3の外径Rより若干小さなリング状の取付基部12と、該取付基部外周より突設されて、壁孔2にガスケット11を押し込む方向と逆向きに後退し、前記壁孔2に押し込んだ状態で壁孔内周面と弾接する断面リップ状のシール片13とよりなり、全体がEPDM等のゴム又は熱可塑性エラストマーの成形品よりなっている。
【0016】
前記ガスケット11の押し込み方向前端にシール片13を突出形成した取付基部12は、後端外周が径方向外向きに膨出し、スリーブ管3と接触する内周面には突出量の小さな突部14が形成され、これによりガスケット11のスリーブ管3との密着性が上げられるようにしている。
【0017】
シール片13は、壁孔押し込み時に壁孔2と接触する一側の接触面が前記押し込み方向と逆向き、すなわち自由端である先端に向かう程、後方に後退すると共に、凹状に湾曲し、また取付基部側の他側には、取付基部側に向けて突出形成される突起15を備えている。
【0018】
本実施形態の定形ガスケット11は以上のように構成され、スリーブ管3への取付けは通常、次のようにして行われる。すなわち、工場で下地1aとフレーム材1bにて構成される下地材1と外壁面材4を組み付けて外壁を生産する過程において、スリーブ管3の鍔部3aの両側に下地材1と外壁面材4の壁孔を通して、鍔部3aと下地材1及び外壁面材4をそれぞれ接着剤にて接着し、接着剤が硬化する前に定形ガスケット11のリング状の取付基部12をスリーブ管3に強制嵌挿しながら外壁面材4の壁孔に押込むことにより行われる。
【0019】
上述するようにして定形ガスケット11を取付け、接着剤が硬化したのち、組合わされた外壁4のユニットを建築現場へ運び、スリーブ管3の外側端部に外部フードが取付けられるか、換気扇を含む換気装置が取付けられる。図3は外部フード6を取付けた状態を示す。
【0020】
前記方法で定形ガスケット11を取付けた場合であっても、シール片13は壁孔内面に押込まれて撓むが、この撓み量は突起15が取付基部12に当ることにより規制され、それ以上撓むことはない。換言すれば、シール片13は、図4に示すように突起15が取付部12に当って支持された部分で撓み量が最大となり、円周上の反対側の部分において撓み量が最小となる。そして図4の状態でスリーブ管3の偏心量が最大となり、これ以上偏心することはない。したがってスリーブ管3が偏るとしても、その偏りは最大で、図4の状態となり、偏心量を許容範囲内に収めることができる。
【0021】
また、シール片13は一側の壁孔内面との接触面が凹状をなして先端側が前記押し込み方向に反っているため、壁孔内面との接触面積が大きくなってシール性が向上する。
【0022】
以上のように本実施形態の定形ガスケットによれば、スリーブ管の偏りを抑制する機能と、壁孔2との接触面積を大きくしてシール性を向上させる機能を有している。
【0023】
前記実施形態では、突起15がシール片13に形成されているが、突起15をシール片13に形成する代わりに取付基部12の外周に形成し、シール片13が押し込まれたとき前記突起15に当たってシール片13を支持するようにしてもよい。
また前記実施形態では、定形ガスケット11はスリーブ管3を外壁面材4等に設置したのちに嵌挿しているが、予めスリーブ管に嵌挿しておいて、これらを外壁面材4等に組み込むこともできる。
【符号の説明】
【0024】
1・・下地材
1a・・下地
1b・・フレーム材
2・・壁孔
3・・スリーブ管
4・・外壁面材
7・・外部フード
11・・定形ガスケット
12・・取付基部
13・・シール片
14・・突部
15・・突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁を貫通する壁孔2に通した換気用のスリーブ管3に密嵌され、該スリーブ管3と外壁1との間をシールする環状の定形ガスケット11において、スリーブ管3に密嵌状態で嵌着されるリング状の取付基部12と、該取付基部外周より突設されて、前記壁孔2にガスケット11を押し込む方向と逆向きに後退し、前記壁孔2に押し込んだ状態で壁孔内周面と弾接する断面リップ状のシール片13とよりなり、該シール片13は更に、一側の壁孔内周面との接触面が径方向に凹状をなし、またシール片他側と取付基部外周のうち、いずれか一方には前記シール片13を前記取付基部側に押し込んで倒したとき、他方に突き当たってシール片13を支持する突起15が突出形成されることを特徴とする定形ガスケット。
【請求項2】
取付基部内周にスリーブ管3に圧着する突部14が形成されることを特徴とする請求項1記載の定形ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−215367(P2012−215367A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82093(P2011−82093)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】