説明

定着ヒータ、定着装置、画像形成装置

【課題】 厚膜印刷により形成し、焼成することで簡単に定着ヒータの温度検出を行う温度検出素子を実現する。
【解決手段】 21,22は電極、23,24は接続部、25は温度検出素子であり、これらはそれぞれ銀(Ag)とパラジウム(Pd)の合金を用いて基板11上にスクリーンマスクを用いて厚膜印刷を行い同時に一体形成し、焼成することで所望の形状を得る。温度変化に対し温度検出素子25の抵抗値を変化させ、温度検出素子25が形成された基板11の裏面側に形成された発熱抵抗体の温度の検出を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報機器、家電製品や製造設備等に用いられる薄型の定着ヒータ、この定着ヒータを実装したプリンタ、複写機、ファクシミリ等の定着装置、この定着装置を用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術による厚膜印刷ヒータは、温度検出素子部品をヒータに実装するもしくはヒータに接触させることでヒータの温度を検出している。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開平9−44028号公報(第3〜4頁、図1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記した特許文献1の技術は、特にヒータに温度検出素子が実装されている場合、温度検出素子自体の耐熱性が低いためヒータの使用温度範囲が限られるばかりか、部品が接着されている構造であるため、ヒータの使用環境によっては接合部の信頼性が悪くなる、という問題がある。
【0004】
この発明の目的は、簡単な構造で任意の位置に温度検出素子を容易に形成できる定着ヒータ、この定着ヒータを用いた加熱装置、この加熱装置を用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、この発明の定着ヒータは、耐熱・絶縁性材料で形成される長尺平板状の基板の長手方向に発熱抵抗体と該発熱抵抗体に電力を供給するための電極を形成し、少なくとも前記発熱抵抗体上にオーバーコート層を施したものにあって、前記発熱抵抗体が形成された前記基板の裏面側に、抵抗温度係数が大きな材利で導体パターンを形成し、前記発熱抵抗体の温度を検出する温度検出素子としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、任意の位置に温度検出素子が形成可能となるとともに、耐熱性、信頼性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1〜図3は、この発明のヒータの一実施形態について説明するための、図1は正面図、図2は図1の裏面図、図3は図1のx−x’断面図である。
【0008】
図1において、11は、耐熱、電気絶縁性材料例えば酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素などの電気絶縁性を有する高剛性のセラミック等の基材で高い熱伝導性の短冊状基板である。121,122は、基板11の表面側の長手方向に沿って平行に形成された銀系や金属酸化物などの抵抗体ペーストを高温で焼成し所定の抵抗値を有する厚膜からなる帯状の発熱抵抗体、13は発熱抵抗体121,122それぞれ一端の一部を重層した銀系の導体ペーストを焼成して形成した接続部である。14は発熱抵抗体121の他端を重層形成したAg/Pd合金などを主体とする良導電体膜からなる給電用の電極、15は発熱抵抗体122の他端を重層形成したAg/Pd合金などを主体とする良導電体膜からなる給電用の電極である。16,17は電極14,15と発熱抵抗体121,122はそれぞれ接続部13と同材料で同様に焼成して形成された接続部である。電極14,15を残した発熱抵抗体121,122および接続部13,16,17上には、オーバーコート層18が形成されている。
【0009】
図2を参照して図1の裏面について説明する。21,22は電極、23,24は接続部、25は温度検出素子である。電極21は、接続部23を介して温度検出素子25の一端に、電極22は、接続部24を介して温度検出素子25の他端にそれぞれ接続される。電極21,22、接続部23,24、温度検出素子25は、それぞれ銀(Ag)とパラジウム(Pd)の合金を用いてスクリーンマスクを用いて厚膜印刷を行って同時に一体形成し、焼成することで所望の形状を得る。温度検出素子25は接続部23,24のパターン幅に比べて細く形成する。温度検出素子25および接続部23,24上には、オーバーコート層26が形成されている。
【0010】
温度検出素子25のAgに含まれるPdの量が増加すればするほど温度係数が図4に示すように低下する。Agの温度係数は2000〜3000ppm/℃であり、温度が上昇する毎に抵抗値が上昇する。
【0011】
図5は、温度検出素子25の温度変化に基づく抵抗値の変化を示すもので、温度が上昇するに伴い抵抗値が上昇することを示している。なお、温度上昇に伴う抵抗値の変化はPdの含有量が増加するのにともなって小さくなる。
【0012】
この実施形態によれば、温度検出素子25が電極21,22や接続部23,24と同時に形成することが可能なことから、量産性に優れるばかりか、任意の位置に容易に形成可能となる。
【0013】
図6は、この発明の定着ヒータの他の実施形態について説明するためのもので、図2に相当する部分を示す。この実施形態は、温度検出素子を発熱抵抗体にそれぞれ対応させて形成した部分が一実施形態と異なる。
【0014】
図6において、61〜63は電極、64〜66は接続部、67,68は温度検出素子である。電極61は、接続部64を介して温度検出素子67の一端に、電極62は、接続部65を介して温度検出素子67の他端にそれぞれ接続される。また、電極62は、接続部64を介して温度検出素子68の一端に、電極63は、接続部66を介して温度検出素子68の他端にそれぞれ接続される。電極61〜63、接続部64〜66、温度検出素子67,68は、それぞれ銀(Ag)とパラジウム(Pd)の合金を用いてスクリーンマスクを用いて厚膜印刷で同時に形成し、焼成することで所望の形状を得る。温度検出素子67,68は接続部64〜66のパターン幅に比べて細くし、図5に示す特性に形成される。温度検出素子67,68および接続部64〜66上には、オーバーコート層69が形成されている。
【0015】
この実施形態の場合は、上記した一実施形態の効果に加え、温度検出素子67,68が基板11を挟んで対向する位置にあることから、より確実な温度検出が可能となる。
【0016】
なお、上記した定着ヒータの実施形態では、電極、接続部それに温度検出素子を形成する材料としては、Ag/Pdの合金としたが、これに限らず、Ag/プラチナ(Pt)の合金やAg等の良導体でも構わない。
【0017】
上記した構成のヒータ100は、加熱装置に組み込まれ、例えば図7に示す回路構成により通電され発熱温度が調整される。すなわち、商用電源61を温度制御回路62の制御端子に接続されたソリッドステートリレー63を介してヒータ100の電極14,15に通電されると、直列接続された発熱抵抗体121,122に電流が流れて発熱する。発熱抵抗体121,122の発熱により基板11も温度上昇する。この熱は、基板11の裏面側に形成された温度検出素子67,68に伝わり、温度検出素子の抵抗値を変化させる。温度検出素子67,68の抵抗値の変化を、基板11の裏面側に形成された配線導体を介して出力させ、これを温度制御回路62に入力して設定温度にあるか否かを判定する。温度が設定温度より低い場合はソリッドステートリレー63にオン信号を出力し、設定温度より高い場合はソリッドステートリレー63にオフ信号を出力する。
【0018】
このように、発熱抵抗体121,122に加える電力を制御することによって、発熱抵抗体121,122を温度調整する。なお、温度制御回路62はソリッドステートリレー63のオン・オフ制御について述べたが、他にパルス幅変調制御方式等による温度調整でも構わない。
【0019】
そして、ヒータ100は電極12,13に電力が供給されると、発熱抵抗体121,122にそれぞれ電流が流れ、発熱抵抗体121,122は長手方向にほぼ均一の発熱温度分布を呈することになる。この実施形態では、例えば発熱抵抗体121,122の抵抗値を25Ωとし、100Vの電圧を印加することにより4Aの電流が流れ、400Wの発熱量を得ることが可能となる。
【0020】
通常は、上述したように基板11の裏面側に形成された温度検出素子67,68がヒータ100の温度を検出して温度制御回路62を通じてソリッドステートリレー63をオン・オフ制御し所定の温度に制御している。
【0021】
次に、図8を参照し、上記したヒータの実施形態を定着装置200に実装した場合の、この発明の加熱装置の一実施形態について説明する。図中ヒータ100については、図1、図2と同じであり、同一部分には同一の符号を付してその説明は省略する。
【0022】
図7において、201は回転軸202で回転自在に回転される加圧ローラで、その表面に耐熱性弾性材料たとえばシリコーンゴム層203が嵌合してある。加圧ローラ201の回転軸202と対向してヒータ100が並置して図示しない基台内に取り付けられている。
【0023】
ヒータ100の周囲にはポリイミド樹脂等の耐熱性のシートからなるエンドレスのロール状の定着フィルム204が循環自在に巻装されており、発熱抵抗体121,122を介した基板11真上のオーバーコート層21の表面は、この定着フィルム204を介して加圧ローラ201のシリコーンゴム層203と弾接している。
【0024】
定着装置200においてヒータ100は電極14,15に接触したりん青銅板等に銀メッキを施した弾性が付与された図示しないコネクタを通じて通電され、発熱した発熱抵抗体121,122のオーバーコート層21上に設けられた定着フィルム204面とシリコーンゴム層203との間で、トナー像T1がまず定着フィルム204を介してヒータ100により加熱溶融され、少なくともその表面部は融点を大きく上回り完全に軟化溶融する。この後、加圧ローラ201の用紙排出側では複写用紙Pがヒータ100から離れ、トナー像T2は自然放熱して再び冷却固化し、定着フィルム204も複写用紙Pから離反される。
【0025】
このように、トナー像T1は一旦完全に軟化溶融された後、加圧ローラ201の用紙排出側で再び冷却されることから、トナー像T2の凝縮力は非常に大きくなものとなっている。
【0026】
この定着装置200では、ヒータ100の温度を検出するための温度検出素子を、耐熱性を備えた構造を実現できることから、信頼性の向上を図ることができる。
【0027】
次に、図9を参照して、この発明に係るヒータ、このヒータを用いた加熱装置を搭載した複写機を例とした、この発明の画像形成装置について説明する。図中、加熱装置200の部分は、上記した説明と同じであり、同一部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0028】
図9において、301は複写機300の筐体、302は筐体301の上面に設けられたガラス等の透明部材からなる原稿載置台で、矢印Y方向に往復動作させて原稿P1を走査する。
【0029】
筐体301内の上方向には光照射用のランプと反射鏡とからなる照明装置302が設けられており、この照明装置302により照射された原稿P1からの反射光源が短焦点小径結像素子アレイ303によって感光ドラム304上スリット露光される。なお、この感光ドラム304は矢印方向に回転する。
【0030】
また、305は帯電器で、例えば酸化亜鉛感光層あるいは有機半導体感光層が被覆された感光ドラム304上に一様に帯電を行う。この帯電器305により帯電された感光ドラム304には、結像素子アレイ303によって画像露光が行われた静電画像が形成される。この静電画像は、現像器306による加熱で軟化溶融する樹脂等からなるトナーを用いて顕像化される。
【0031】
カセット307内に収納されている複写用紙Pは、給送ローラ308と感光ドラム304上の画像と同期するタイミングをとって上下方向で圧接して回転される対の搬送ローラ309によって、感光ドラム304上に送り込まれる。そして、転写放電器310によって感光ドラム304上に形成されているトナー像は複写用紙P上に転写される。
【0032】
この後、感光ドラム304上から離れた用紙Pは、搬送ガイド311によって加熱装置200に導かれて加熱定着処理された後に、トレイ312内に排出される。なお、トナー像が転写された後、感光ドラム304上の残留トナーはクリーナ313を用いて除去される。
【0033】
定着装置200は複写用紙Pの移動方向と直交する方向に、この複写機300が複写できる最大判用紙の幅(長さ)に合わせた有効長、すなわち最大判用紙の幅(長さ)より長い発熱抵抗体121,122を延在させてヒータ100の加圧ローラ201が設けられている。
【0034】
そして、ヒータ100と加圧ローラ201との間を送られる用紙P上の未定着トナー像T1は、発熱抵抗体121,122の熱を受け溶融して複写用紙P面上に文字、英数字、記号、図面等の複写像を現出させる。
【0035】
このように、この発明の定着用のヒータ100を備えた複写機300は、定着ヒータ100の温度を検出するための温度検出素子を、耐熱性を備えた構造を実現できることから、耐久性を期待でき延いては信頼性の向上を図ることができる。
【0036】
なお、この発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、オーバーコート層材は相対する定着フィルムの材質やその他条件によって変える必要があるため特定はできないが、定着フィルムが樹脂の場合、オーバーコート層はガラスや定着フィルムが金属の場合、オーバーコート層は樹脂を組み合わせるのが望ましい。この樹脂としては一般的に摺動性に優れるとされる材料である、ポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびポリフェニレンサルファイド、エラストマー系、ポリオレフィン系、フッ素等が考えられる。基本的にはどれを使用しても良いが、耐熱性から弾性に富むPI(ポリイミド)、PAI(ポリアミドイミド)等のイミド系が好ましいが、硬度が低すぎると樹脂被膜の方が削れてしまうため、例えば3H以上の硬度は必要である。
【0037】
また、ヒータの用途としては、複写機等の画像形成装置の定着用に用いたが、これに限らず、家庭用の電気製品、業務用や実験用の精密機器や化学反応用の機器等に装着して加熱や保温の熱源としても使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明のヒータに関する一実施形態の概略について説明するための正面図。
【図2】図1の裏面図。
【図3】図1のx−x’断面図。
【図4】この発明の温度検出素子に用いる材料の温度係数について説明するための説明図。
【図5】この発明の温度検出素子の温度変化に伴う抵抗値の変化について説明するための説明図。
【図6】この発明の定着ヒータに関する他の実施形態の概略について説明するための構成図。
【図7】図1に用いる温度調整について説明するための回路構成図。
【図8】この発明の加熱装置に関する一実施形態について説明するための説明図。
【図9】この発明の画像形成装置に関する一実施形態について説明するための説明図。
【符号の説明】
【0039】
11 基板
121,122 発熱抵抗体
13,16,17,23,24 接続部
14,15,21,22,61〜63 電極
18,26 オーバーコート層
25,67,68 温度検出素子
100 ヒータ
200 定着装置
300 複写機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱・絶縁性材料で形成される長尺平板状の基板の長手方向に発熱抵抗体と該発熱抵抗体に電力を供給するための電極を形成し、少なくとも前記発熱抵抗体上にオーバーコート層を施した定着ヒータにおいて、
前記発熱抵抗体が形成された前記基板の裏面側に、抵抗温度係数が大きな材利で導体パターンを形成し、前記発熱抵抗体の温度を検出する温度検出素子としたことを特徴とする定着ヒータ。
【請求項2】
前記温度検出素子は、AgまたはAg/PtまたはAg/Pdで形成した導体パターンであることを特徴とする定着ヒータ。
【請求項3】
加熱ローラと、
前記加熱ローラに対向配置された発熱抵抗体が圧接された請求項1または2いずれかに記載の定着ヒータと、
前記定着ヒータと前記加熱ローラとの間を移動可能に設けられた定着フィルムとを具備したことを特徴とする定着装置。
【請求項4】
媒体に形成された静電潜像にトナーを付着させてこのトナーを用紙に転写して所定の画像を形成する形成手段と、
画像が形成された用紙を加圧ローラにより定着フィルムを介して前記定着ヒータに圧接しながら通過させることによって、トナーを定着するようにした請求項3記載の定着装置とを具備したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−91256(P2006−91256A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274849(P2004−274849)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】