説明

定着ローラ、定着装置及び画像形成装置

【課題】ニップ痕跡が残存しにくく現像剤を所望のように定着させることができると共に装着される定着装置における定着温度の広範囲化に貢献できる定着ローラ、並びに、現像剤を所望のように定着させることができると共に広範囲の定着温度を可能にする定着装置及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】軸体2の外周面に形成された発泡弾性層3を備えて成り、常温(23℃)における下記試験方法による常温反発量(cm)が40以上であることを特徴とする定着ローラ1、この定着ローラを備えて成ることを特徴とする定着装置、及び、この定着装置を備えて成ることを特徴とする画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、定着ローラ、定着装置及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、ニップ痕跡が残存しにくく現像剤を所望のように定着させることができると共に装着される定着装置における定着温度の広範囲化に貢献できる定着ローラ、現像剤を所望のように定着させることができると共に広範囲の定着温度を可能にする定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタ、複写機、ビデオプリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、軸体とその外周面に形成された弾性層とを有する、例えば、クリーニングローラ、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、加圧ローラ、紙送り搬送ローラ、定着ローラ等の各種ローラを備えている。
【0003】
これらのローラの中でも定着ローラには、記録体に現像剤を定着させて高品質の画像を形成することを目的として、定着ローラと加圧ローラとが所定の圧力で当接するように大きなニップ幅を確保できること等が求められている。大きなニップ幅を確保するには定着ローラの弾性層の硬度を小さくすることが有効である。硬度の小さな定着ローラとして、例えば、特許文献1には「円柱状又は円筒状の金属芯金の外周面に、硬化後のゴム反発弾性率(JIS K6301)が30%以下である付加反応硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化して得られるシリコーンゴムを被覆し、その外周面に低表面エネルギー性の有機樹脂層を設けてなることを特徴とする低硬度シリコーンゴム定着用ロール」が記載されている。
【0004】
このように、定着ローラと加圧ローラとのニップ幅を大きくすると、加圧ローラに接触していた定着ローラの接触が解除されても定着ローラの弾性層が元の形状に早期に復帰しにくく、その表面にニップ痕跡が残存することがある。弾性層に残存するニップ痕跡部分は現像剤を記録体に定着させることができないから形成される画像にニップ痕跡に対応する現像剤未定着部が筋状に発生する。
【0005】
ところで、近年、画像形成装置が高速化又は高精細化等されているため、また、使用環境の多様化に対応するため、定着装置における定着温度の広範囲化が図られつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−194643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、ニップ痕跡が残存しにくく現像剤を所望のように定着させることができると共に装着される定着装置における定着温度の広範囲化に貢献できる定着ローラを提供することを、目的とする。
【0008】
この発明は、現像剤を所望のように定着させることができると共に広範囲の定着温度を可能にする定着装置及び画像形成装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、軸体の外周面に形成された発泡弾性層を備えて成り、常温(23℃)における下記試験方法による常温反発量(cm)が40以上であることを特徴とする定着ローラであり、
請求項2は、前記常温反発量(cm)と180℃に1時間加熱されたときの前記試験方法による加熱反発量(cm)とが下記式を満足することを特徴とする請求項1に記載の定着ローラであり、
請求項3は、前記発泡弾性層は付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を前記軸体の外周面で発泡硬化して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着ローラであり、
請求項4は、前記付加反応型発泡シリコーンゴム組成物はビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材と発泡剤と付加反応架橋剤と付加反応触媒と反応制御剤とを含有することを特徴とする請求項3に記載の定着ローラであり、
請求項5は、前記付加反応架橋剤は前記ビニル基含有シリコーン生ゴム及び前記シリカ系充填材の合計100質量部に対して2質量部を超え8質量部未満の割合で含有されていることを特徴とする請求項4に記載の定着ローラであり、
請求項6は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の定着ローラを備えて成ることを特徴とする定着装置であり、
請求項7は、請求項6に記載の定着装置を備えて成ることを特徴とする画像形成装置である。
【0010】
<測定方法>
垂直に固定した前記定着ローラの軸線方向の略中央部に高さ100cmから垂直に落下させた鉄球(直径11mm、質量5.45g)が跳ね返ったときの前記定着ローラの表面からの高さ(cm)を10回測定し、上位5点の測定値の算術平均値を前記定着ローラの常温反発量(cm)とする。
【0011】
式:(加熱反発量(cm)−常温反発量(cm))/常温反発量(cm)≧0.20
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る定着ローラは、発泡弾性層を備えて成り、前記試験方法による常温反発量(cm)が40以上であるから、大きなニップ幅を確保することができ、発泡弾性層の薄肉化による高い伝熱性を発揮すると共に、回転により加圧ローラとの接触が解除されると元の形状に早期に復帰できる。したがって、この発明によれば、ニップ痕跡が残存しにくく現像剤を所望のように定着させることができると共に装着される定着装置における定着温度の広範囲化に貢献できる定着ローラを提供することができる。
【0013】
この発明に係る定着装置はこの発明に係る定着ローラを備えて成り、この発明に係る画像形成装置はこの発明に係る定着装置を備えて成るから、この発明によれば、現像剤を所望のように定着させることができると共に広範囲の定着温度を可能にする定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、この発明に係る定着ローラにおける一実施例の定着ローラを示す斜視図である。
【図2】図2は、この発明に係る定着装置を具備したこの発明に係る画像形成装置を示す概略説明図である。
【図3】図3は、この発明に係る定着ローラの反発量を測定する測定方法を説明する説明図であり、図3(a)はこの発明に係る定着ローラの反発量を測定する測定方法において測定具を定着ローラに垂直に配置した状態を示す正面図であり、図3(b)はこの発明に係る定着ローラの反発量を測定する測定方法において測定具を定着ローラに垂直に配置した状態を示す側面図である。
【図4】図4は、実施例において定着ローラの試験を実施するための試験機を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明に係る定着ローラは、軸体の外周面に形成された発泡弾性層を備えて成る。したがって、この発明に係る定着ローラは、軸体と前記発泡弾性層とを備えていればよく、これらに加えて他の層又は膜等を備えていてもよい。
【0016】
この発明に係る定着ローラは、常温(23℃)における下記試験方法による常温反発量(cm)が40以上であることを特徴とする。発泡弾性層を備えて成る定着ローラの常温反発量(cm)が40未満であると、その反発量が小さすぎて加圧ローラとの接触が解除されても加圧ローラとの接触によって生じた凹陥部が元の形状に早期に復帰しにくく、復帰しない凹陥部は現像剤を溶融定着させることができず、画像に筋状の現像剤未定着部が発生することがある。また、発泡弾性層を備えて成る定着ローラの常温反発量(cm)が40未満であると、加圧ローラとの大きなニップ幅を確保するために、発泡弾性層の厚さを厚くする必要があるから、現像剤定着時の加熱温度よりも高い温度に定着ローラ自体を加熱しなければならず定着温度の広範囲化に貢献できなくなる。これに対して、発泡弾性層を備えて成る定着ローラが40以上の常温反発量(cm)を有していると、定着装置に装着されたときに、大きなニップ幅を確保することができるから、前記ニップ幅における有効幅も大きくなると共に必要なニップ幅を確保するための発泡弾性層の厚さすなわち外径を小さくすることができる。その結果、この発明に係る定着ローラは大きなニップ幅を確保できると共に発泡弾性層の薄肉化によって高い伝熱性を発揮できる。また、この定着ローラは40以上の常温反発量(cm)を有しているから、その反発量は大きく、例えば長期間にわたって加圧ローラに接触していても回転により加圧ローラとの接触が解除されると元の形状に早期に復帰できる。したがって、この発明に係る定着ローラはニップ痕跡が残存しにくく現像剤を所望のように定着させることができると共に装着される定着装置における定着温度の広範囲化に貢献できる。
【0017】
ニップ痕跡がより一層残存しにくく定着温度のさらなる広範囲化に貢献できる点で、前記常温反発量(cm)は、45以上であるのが好ましく、48以上であるのが特に好ましい。前記常温反発量(cm)の上限値は特に限定されないが、あまりにも大きすぎると定着ローラ自体の耐久性に影響することがあるので、十分な耐久性を考慮すると、65cmであるのが好ましく、60cmであるのが特に好ましい。
【0018】
前記常温反発量(cm)は垂直に固定した定着ローラの軸線方向の略中央部に高さ100cmから垂直に落下させた鉄球(直径11mm、質量5.45g)が跳ね返ったときの定着ローラの表面からの高さ(cm)を10回測定し、上位5点の測定値の算術平均値を定着ローラの常温反発量(cm)とする。なお、前記高さは定着ローラの表面で跳ね返った鉄球の球面の最高到達点すなわち最も高い位置に到達した部分(最上部分ともいう)の高さである。
【0019】
前記常温反発量(cm)を測定するには例えば測定具20及び鉄球21を準備する。鉄球21は11mmの直径と5.45gの質量を有する鉄製の球体である。前記測定具20は、図3に示されるように、摩擦力が小さく透明な材料、例えば、アクリル樹脂で形成され、両端が開口した管状体である。この測定具20は鉄球21の外径よりも大きな12mmの内径と100cmの軸線長さと有しており、その外径は16mmになっている。測定具20の外周面には鉄球の跳ね返り高さを測定できるように目盛りが付されている。
【0020】
この発明に係る定着ローラ例えば後述する定着ローラ1の常温反発量(cm)を測定するには、図3に示されるように、まず、測定環境を常温(23℃)に設定し、定着ローラ1、測定具20及び鉄球21をこの測定環境下にしばらく放置する。次いで、例えば固定具等で軸体2を把持又は挟持して定着ローラ1を水平に固定する。次いで、固定された定着ローラ1における軸線方向略中央部の外周面上に測定具20を垂直に配置する。この測定具20の自由端20aの開口部から鉄球21を自然落下させ、定着ローラ1に突き当って跳ね返った鉄球21の最上部分の高さを、定着ローラ1の表面を基準にして、目視で測定する。この測定を10回行い、測定値のうち最も大きな方から5点を選択して、それらの算術平均を求める。この算術平均値を定着ローラ1の常温反発量(cm)とする。この測定方法においては、測定具20の外周面に付された目盛りで目視にて測定するが、センサ等によって高さを測定することもできる。
【0021】
この発明に係る定着ローラは、180℃に1時間加熱されたときの前記試験方法による加熱反発量(cm)が54以上であるのが好ましく、57以上であるのがより一層好ましく、60以上であるのが特に好ましい。発泡弾性層を備えて成るこの発明に係る定着ローラが前記範囲の加熱反発量(cm)を有していると、定着装置に装着されたときの状態においてニップ痕跡がより一層残存しにくいという効果を奏する。
【0022】
前記加熱反発量(cm)は定着ローラ1を180℃に1時間加熱した後に前記方法で測定された、鉄球21が跳ね返ったときの高さ(cm)の算術平均値である。
【0023】
この発明に係る定着ローラは、前記常温反発量(cm)と前記加熱反発量(cm)とが下記式を満足するのが好ましい。すなわち、この発明に係る定着ローラは下記式で求められる増大量が0.20以上であるのが好ましい。発泡弾性層を備えて成るこの発明に係る定着ローラが下記式を満足すると、より一層高い伝熱性を発揮できるうえ加圧ローラとの接触によって生じた凹陥部がより一層早期に復帰して、この発明の目的をよく達成することができる。この効果により一層優れる点で、前記増大量[(加熱反発量(cm)−常温反発量(cm))/常温反発量(cm)]は0.23以上であるのがより好ましく、0.24以上であるのが特に好ましい。
式:(加熱反発量(cm)−常温反発量(cm))/常温反発量(cm)≧0.20
【0024】
前記式における常温反発量(cm)は常温環境下における前記測定方法での算術平均値であり、前記加熱反発量(cm)は定着ローラ1を180℃に1時間加熱した後に前記測定方法で測定された算術平均値である。
【0025】
前記常温反発量(cm)は、例えば、発泡弾性層を形成するゴムの架橋度の値、発泡ゴム組成物に含有される架橋剤等の種類又は含有量等によって、調整することができる。例えば、常温反発量(cm)は、発泡弾性層を形成する発泡ゴム組成物に含有される架橋剤例えば付加反応架橋剤の含有量を多くすると大きくなり、発泡弾性層を形成するゴムの架橋度を大きくすると大きくなり、発泡弾性層を形成する発泡ゴム組成物に含有される発泡剤又は中空充填材の含有量を多くすると大きくなる。
【0026】
この発明に係る定着ローラは、25〜55のアスカーC硬度を有しているのが好ましい。この定着ローラが前記範囲のアスカーC硬度を有していると、定着装置に装着されたときに大きなニップ圧及びニップ幅を長期間にわたって確保することができる。この発明に係る定着ローラのアスカーC硬度は、25〜50であるのが好ましく、25〜45であるのが特に好ましい。アスカーC硬度(1kg荷重)は、JIS K6253に準拠して測定することができる。この発明に係る定着ローラのアスカーC硬度は、例えば、発泡弾性層を形成する発泡ゴム組成物に含有されるゴム、発泡剤及び/若しくは添加剤の種類を選択し、並びに/又は、それらの配合量等を変更することにより、また、発泡弾性層の成形条件等により、調整することができる。
【0027】
この発明に係る定着ローラは発泡弾性層を備えている。この発泡弾性層は、その内部及び/又は外表面にセルを有している。発泡弾性層がセルを有していると、発泡弾性層の硬度を低下させることができる。ここで、発泡弾性層に有するセルは、発泡弾性層を形成する発泡ゴム組成物に含有される発泡剤の発泡又は分解等によって生じる中空領域をいう。発泡弾性層に有する複数のセルは、他のセルに接することのない若しくは連通することのない状態(独立セル状態と称する。)、他のセルに接し若しくは連通している状態(連通セル状態と称する。)、又は、前記独立セル状態と前記連通セル状態とが共存する状態の何れの状態にあってもよい。この発泡弾性層は定着ローラが前記範囲のアスカーC硬度となるような硬度を有しているのが好ましい。
【0028】
発泡弾性層は、発泡弾性層に形成されるセルの平均セル径、発泡弾性層の発泡倍率、密度等が調整されているのが、この発明の効果をより一層高めることができる点で、好ましい。例えば、発泡弾性層の平均セル径は、60〜800μmであるのが好ましく、100〜400μmであるのが特に好ましく、発泡弾性層の発泡倍率は、180〜420%であるのが好ましく、200〜350%であるのが特に好ましい。発泡弾性層の発泡倍率が前記範囲内にあると、広範囲の定着温度を可能にする硬度と反発弾性が得られるという効果が得られる。
【0029】
発泡弾性層において、その発泡倍率及び平均セル径は発泡弾性層を形成する発泡ゴム組成物に含有される発泡剤又は発泡ゴム組成物の硬化条件等により、調整することができる。前記発泡倍率は、発泡弾性層の体積及び質量を常法によって測定し、これらから算出することができる。また、セルの平均セル径は、発泡弾性層の表面又は任意の面で切断したときの切断面において、約20mmの領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在する各セルにおける開口部の最大長さを測定して、測定された最大長さを算術平均して得られた平均長さとして、求めることができる。
【0030】
発泡弾性層の密度は、0.395〜0.7(g/cm)であるのが好ましく、0.42〜0.6(g/cm)であるのが特に好ましい。密度が前記範囲内にあると、この発明の効果をより一層高めることができる。発泡弾性層の密度は、電子密度計(水中置換法 水温23℃)によって測定することができる。
【0031】
発泡弾性層の形態は特に限定されず、例えば、その軸線方向にわたって均一な外径に調整された所謂ストレート形状でもよく、また、中央部における外径がその両端部における外径よりも大きくなるように調整された所謂クラウン形状であってもよく、さらに、中央部における外径がその両端部における外径よりも小さくなるように調整された所謂逆クラウン形状であってもよい。
【0032】
発泡弾性層の厚さは、特に限定されず、通常、2〜20mmに調整されることができる。この定着ローラ1は前記範囲の常温反発量(cm)を有しているから、大きなニップ幅を確保でき、その厚さを薄くすることができる。例えば、大きなニップ幅を確保するために発泡弾性層をこれまで困難とされていた薄肉状に形成することもでき、例えば、10mm以下に調整することもできる。この発明において、発泡弾性層の厚さは3〜7mmに調整されるのが特に好ましい。
【0033】
発泡弾性層を形成する発泡ゴム組成物は、ゴムと、発泡剤又は中空充填材と、所望により各種添加剤等とを含有する組成物であればよく、例えば、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム系組成物及び発泡ウレタンゴム系組成物等が好ましく挙げられる。特に、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム系組成物は、耐熱性、耐久性及び耐残留歪み特性等に優れ、画像形成装置の高速運転にも耐えられる好適なゴム組成物である。このような発泡シリコーンゴム系組成物として付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が特に好ましい。中空充填材としては、例えば、ゴム組成物を硬化した後に、セルを形成することのできる充填材であればよく、例えば、ポリオルガノシロキサン系球状粉末が挙げられる。ポリオルガノシロキサン系球状粉末は、ポリオルガノシロキサンからなる球状の粉末であればよく、例えば、シリコーンパウダ等が挙げられる。より具体的には、直鎖状のジメチルポリシロキサンを架橋した構造を持つシリコーンゴムの粉末(シリコーンゴムパウダとも称する。)、シロキサン結合が(CHSiO3/2で表される三次元網目状に架橋した構造を持つ、いわゆるポリメチルシルセスキオキサン等のシリコーンレジンの粉末、及び、前記シリコーンゴムの表面をシリコーンレジン等で被覆した被覆シリコーンゴムの粉末等が挙げられる。
【0034】
この発明に係る定着ローラを具体的に説明する。この発明に係る定着ローラの一実施例としての定着ローラ1は、図1に示されるように、軸体2と、軸体2の外周面に形成された発泡弾性層3とを備えて成る。この定着ローラ1は、前記常温反発量(cm)が40以上、前記加熱反発量(cm)が54以上、前記増大量が0.20以上である。
【0035】
軸体2は、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体とされる。また、軸体2は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよく、さらには、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成された軸体であってもよい。
【0036】
前記発泡弾性層3は、後述する発泡ゴム組成物で軸体2の外周面に前記範囲内の厚さとなるように形成されている。この発泡弾性層3は、図1に示されるように、前記ストレート形状を成し、その内部及び/又は外表面に独立セル状態のセル(なお、図1において発泡弾性層3の外周面及び端面に開口したセルは図示しない。)を有し、セルの平均セル径、発泡倍率及び密度が前記範囲内になっている。この発泡弾性層3は定着ローラ1の最外層であるから定着ローラ1の前記アスカーC硬度と同じアスカーC硬度を有している。
【0037】
前記発泡弾性層3を形成する発泡シリコーンゴム組成物は、シリコーンゴムと、発泡剤又は中空充填材と、所望により各種添加剤等とを含有する組成物であればよく、好ましくは、ビニル基含有シリコーン生ゴムと、シリカ系充填材と、発泡剤と、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、反応制御剤とを含有する付加反応型発泡シリコーンゴム組成物である。この付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は、所望により、さらに、有機過酸化物架橋剤と耐熱性向上剤と各種添加剤とを含有していてもよい。
【0038】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴムは、例えば、ミラブル型シリコーンゴム、熱架橋シリコーンゴム(HTV:High Temperature Vulcanizing)等が挙げられる。これらのビニル基含有シリコーン生ゴムは、後工程で、発泡剤及び付加反応架橋剤等をロールミル等で容易に混練りすることができるという特性を有し、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。前記ビニル基含有シリコーン生ゴムとして、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KE−77VBS」等が挙げられる。
【0039】
前記シリカ系充填材は、補強性を有する煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」、並びに、東新化成株式会社製の商品名「セライトスーパーフロス」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。シリカ系充填材の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、40〜100質量部であり、45〜70質量部であるのが好ましく、50〜60質量部であるのが特に好ましい。シリカ系充填材は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0040】
前記発泡剤としては、従来、発泡ゴムに用いられる発泡剤であればよく、例えば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。通常、ゴムに連続気泡を形成する場合には無機系発泡剤が用いられ、独立気泡を形成する場合には有機系発泡剤が用いられる。この発明においては、前記発泡弾性層3を容易に形成することができる点で、発泡剤は、有機系発泡剤であるのがよく、具体的には、例えば、アゾジカルボン酸アミド、アゾビス−イソブチロニトリル等のアゾ化合物が好適に使用される。特に、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)が好適に使用できる。発泡剤の配合量は、例えば、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に0.5〜5質量部であるのがよい。発泡剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0041】
前記付加反応架橋剤は、例えば、一分子中に二個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適に挙げられる。付加反応架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。付加反応架橋剤の配合量はビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材との合計100質量部に対して2.0質量部を超え8.0質量部未満であるのが前記常温反発量(cm)等を前記範囲内に調整できる点で好ましい。この付加反応架橋剤の配合量は前記合計100質量部に対して2.1〜7.9質量部であるのがより一層好ましく、2.5〜7.5質量部であるのが特に好ましい。
【0042】
前記付加反応触媒は、シリコーン生ゴムの付加反応に通常用いられる触媒であればよく、例えば、周期律表第9属又は第10属の金属単体及びその化合物が挙げられる。付加反応触媒の配合量は、触媒量で十分であり、通常、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物全体に対して1〜1,000ppmであるのがよい。付加反応触媒は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0043】
前記反応制御剤は、公知の反応制御剤を特に制限されることなく用いることができ、例えば、メチルビニルシクロテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。反応制御剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.1〜2質量部であるのがよい。反応制御剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0044】
前記有機過酸化物架橋剤は、単独でビニル基含有シリコーン生ゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すれば、シリコーンゴムの強度、歪み等の物性がより向上する。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物架橋剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.3〜10質量部であるのがよい。有機過酸化物架橋剤は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0045】
耐熱性向上剤は、発泡弾性層3の耐熱性を向上させる化合物であればよく、例えば、カーボンブラック、酸化鉄(ベンガラとも称する。)、酸化セリウム及び水酸化セリウム等が挙げられる。これらは一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0046】
前記各種添加剤は、例えば、カーボンブラック等の導電性付与剤等の前記添加剤を特に制限されることなく、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0047】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴム、前記シリカ系充填材及び前記各種添加剤を含有するシリコーンゴム組成物として、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KEシリーズ」及び「KEGシリーズ」等を容易に入手することができる。特に、前記範囲のシリカ系充填材を含有するシリコーンゴム組成物として、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KE−904FU」、「KE-151KU」、「KE-9510U」及び「KE-981U」等が挙げられる。
【0048】
発泡シリコーンゴム組成物は、二本ロール、三本ロール、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分以上1時間以下にわたって、常温又は加熱下で混練して、得られる。
【0049】
この発明に係る定着ローラは、軸体の外周面に配置された発泡ゴム組成物を発泡硬化して発泡弾性層を形成する工程を含む製造方法によって、製造することができる。例えば、前記常温反発量(cm)等を前記範囲内に調整する方法の1つとして付加反応架橋剤が前記範囲の含有量で含有されている付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を軸体2の外周面で発泡硬化する方法が挙げられる。
【0050】
この発明に係る定着ローラは具体的には次のようにして製造することができる。まず、前記材料で作製した軸体2の外周面に必要に応じて接着剤又はプライマーを塗布して接着層又はプライマー層を形成する。次いで、この軸体2の外周面に発泡弾性層3を形成する発泡ゴム組成物を配置する。その方法としては、例えば、押出機等により軸体2と発泡ゴム組成物とを一体に分出して、軸体2の外周面に発泡ゴム組成物を配置する方法、また、軸体2を収納する金型に発泡ゴム組成物を注入して、軸体2の外周面に発泡ゴム組成物を配置する方法等が挙げられる。これらの中でも、押出機等により軸体2と発泡ゴム組成物とを一体に分出しする方法が、作業が容易で連続して行うことができる点で好ましい。このようにして軸体2の外周面に発泡ゴム組成物を配置した後、この状態を維持しつつ軸体2ごと発泡ゴム組成物を加熱する。発泡ゴム組成物の加熱は発泡ゴム組成物に含まれるゴム、例えば、ビニル基含有シリコーン生ゴムが架橋し、かつ、発泡剤が分解又は発泡するのに十分な条件で行われればよい。例えば、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物等の発泡シリコーンゴム組成物は、通常、赤外線加熱炉又は熱風炉等の加熱炉、乾燥機等の加熱機等により、170〜500℃程度、特に200〜400℃に加熱され、数分以上1時間以下、特に5〜30分間、加熱される。前記発泡シリコーンゴム組成物は、所望により、さらに、二次加熱が行われてもよい。二次加熱によって発泡弾性層3の物性が安定する。二次加熱は、例えば、前記の条件で架橋された発泡シリコーンゴム組成物を、さらに、押出成形された状態のままで、例えば、180〜250℃、好ましくは190〜230℃で、1〜24時間、好ましくは3〜10時間にわたって、又は、金型を用いて、例えば、130〜200℃、好ましくは150〜180℃で、5分以上24時間以下、好ましくは10分以上10時間以下にわたって、再度加熱されることによって、行われる。このようにして成形された発泡弾性層3は、所望により、仕上げ工程として、所望の大きさ及び形状等に調整する研削工程、研磨工程及び/又は切削工程等が施されて、クリーニングローラ1が製造される。
【0051】
この発明に係る定着ローラは、前記高温反発量(cm)を有しているから、従来困難とされてきた耐久性と高反発力とを高い水準で両立することができる。また、この発明に係る定着ローラは、前記特性を有しているから、ニップ部に搬送されていた記録体を強い狭圧力で搬送することができ、定着装置における記録体詰まりを防止することができる。さらに、この発明に係る定着ローラは、ニップ痕跡が残存しにくいから、定着ローラが高速で回転される高速化画像形成装置に装着されても、所期の目的を十分に達成することができる。また、前記したように、細径化、小型化も可能になり、省エネにも有効である。特に、前記常温反発量(cm)に加えて、加熱反発量(cm)、さらには前記式を満たしていると、この発明の目的をよく達成できる。
【0052】
この発明に係る定着ローラは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において種々の変更が可能である。例えば、発泡弾性層3は単層構造とされているが、この発明において二層以上の複層構造とされてもよい。
【0053】
また、定着ローラ1は軸体2と発泡弾性層3とを備えているが、この発明に係る定着ローラは、軸体と、その外周面に形成された発泡弾性層と、発泡弾性層の外周面上に形成されたチューブ層とを備えていてもよい。発泡弾性層の外表面にチューブ層が形成されていると現像剤の離型性を向上させることができる。チューブ層は一層構造とされても二層以上が積層された積層構造とされてもよい。チューブ層は、例えば、1〜100μmの厚さに形成される。チューブ層を形成する材料は、特に制限されるものではないが、弾性ローラは被当接体に当接又は圧接されるから、永久変形しにくい材料であるのが好ましく、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミドイミド系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。また、チューブ層は、金属製スリーブであってもよく、スリーブを形成する金属としては、例えば、鉄、ステンレス鋼、ニッケル等の高い熱伝導を有する金属材料が挙げられる。チューブ層は前記材料を発泡弾性層の外径とほぼ同じ内径を有する円筒状に予め形成した管体に発泡弾性層を挿入して発泡弾性層の外表面に形成することができる。このようにチューブ層を形成すると発泡弾性層の表面に存在する凹凸形状に大きく影響されず、平滑な表面を有するチューブ層を形成することができる。なお、チューブ層は、前記材料を、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、発泡弾性層の外周面に塗布した後、硬化及び/又は架橋して、形成されてもよい。
【0054】
定着ローラ1は、用途に応じて、軸体2内及び/又は軸体2と発泡弾性層3との間に加熱体、例えば、電熱器、発熱コイル等を備えていてもよい。例えば、定着ローラ1が熱ローラ定着器の定着ローラとして使用される場合には軸体2内に加熱体を備えている。
【0055】
次に、この発明に係る定着ローラを備えた定着装置(以下、この発明に係る定着装置と称することがある。)、及び、この定着装置を備えた画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図2を参照して、説明する。
【0056】
図2に示されるように、この発明に係る画像形成装置30は、静電潜像が形成される回転可能な像担持体31例えば感光体と、前記像担持体31の周囲にそれぞれ配置された、帯電手段32例えば帯電ローラ、露光手段33、現像手段40、転写手段34例えば転写ローラ及びクリーニング手段37と、記録体の搬送方向下流側に定着手段35とを備えている。この現像手段40は従来の現像手段と基本的に同様に形成され、具体的には、図2に示されるように、現像剤収納部41と、像担持体31に現像剤42を供給する現像剤担持体44と、現像剤担持体44に現像剤42を供給する現像剤供給手段43と、現像剤42を帯電させる現像剤規制部材45とを備えている。
【0057】
前記定着手段35は加熱手段57と無端ベルト55とを備えた定着装置である。すなわち、この定着装置35は、図2にその断面が示されるように、記録体36を通過させる開口52を有する筐体50内に、定着ローラ53と、定着ローラ53の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ54と、定着ローラ53及び無端ベルト支持ローラ54に巻回された無端ベルト55と、無端ベルト55を介して定着ローラ53に圧接する加圧ローラ56と、無端ベルト55に非接触となるように配置され、無端ベルト55を介して外部から定着ローラ53を加熱する加熱手段57とを備え、無端ベルト55を介して定着ローラ53と加圧ローラ56とが互いに当接又は圧接するように回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。無端ベルト支持ローラ54は画像形成装置に通常用いられるローラであればよく、例えば、弾性ローラ等が用いられる。無端ベルト55は、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド等の樹脂により、無端状に形成されたベルトであればよく、その厚さ等も適宜定着手段35に適合するように調整することができる。定着ローラ53及び加圧ローラ56はそれぞれ軸支され、加圧ローラ56はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって無端ベルト55を介して定着ローラ53に圧接している。この定着装置35においてこの発明に係る定着ローラが定着ローラ53として装着されている。前記加熱手段57はハロゲンヒーター及び反射板等を用いた輻射加熱方法、加熱器等を直接接触させて加熱する直接接触加熱方法、並びに、誘導加熱方法等が採用される。この加熱手段57は定着ローラ53における軸線方向の長さとほぼ同じ長さを有する部材であり、定着装置35のいずれに配置されてもよいが、図2に示されるように、定着ローラ53の表面より一定の間隔を隔てて定着ローラ53に略並行に配置されるのがよい。前記誘導加熱方法には加熱用コイルが用いられ、この加熱用コイルは、通常、フェライト等の強磁性体で、スイッチング電源用として用いられている代表的な形状であるI型、E型及びU型等に形成され、導線が巻かれて成る。無端ベルト55と加圧ローラ56との圧接された間を記録体36が通過することにより、加圧と同時に加熱され、記録体36に転写された現像剤42(静電潜像)を定着させることができる。
【0058】
この発明に係る画像形成装置30は次のように作用する。まず、画像形成装置30において、帯電手段32により像担持体31が一様に帯電され、露光手段33により像担持体31の表面に静電潜像が形成される。次いで、現像手段40から現像剤42が像担持体31に供給されて静電潜像が現像され、この現像剤像が像担持体31と転写手段34との間に搬送される記録体36上に転写される。この記録体36は定着手段35に搬送され、現像剤像が永久画像として記録体36に定着される。このようにして、記録体36に画像を形成することができる。
【0059】
この発明に係る定着装置35及び画像形成装置30は、定着ローラ53としてこの発明に係る弾性ローラが採用されているから、現像剤を所望のように定着させることができると共に広範囲の定着温度を可能にする。
【0060】
画像形成装置30は電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置30は現像手段40に単色の現像剤42のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置はモノクロ画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、色毎の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置30は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置とされる。
【0061】
また、画像形成装置30において、現像剤42は一成分系の現像剤が有利に用いられるが、トナーと、鉄、ニッケル等のキャリアとを含む二成分系の現像剤も使用することができる。
【実施例】
【0062】
(実施例1)
無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体(直径20mm×長さ350mm、SUM22)をトルエンで洗浄し、プライマー「No.101A/B」(信越化学工業株式会社製:商品名)を塗布した。プライマー処理した軸体を、ギアーオーブンを用いて180℃の温度にて30分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、プライマー層を形成した。
【0063】
次いで、ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材との混合物(信越化学工業株式会社製のシリコーンゴム組成物「KE−904FU」)100質量部と、付加反応架橋剤「C−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)5質量部と、発泡剤アゾビス−イソブチロニトリル2.5質量部と、付加反応触媒としての白金触媒適量と、反応制御剤「R−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)0.5質量部と、有機過酸化物架橋剤「C−3」(信越化学工業株式会社製:商品名)適量と、耐熱性向上剤「KEP−12」(信越化学工業株式会社製:商品名)1.0質量部とを、二本ロールで十分に混練して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を調整した。
【0064】
次いで、プライマー層を形成した軸体2と付加反応型発泡シリコーンゴム組成物とを押出成形機にて一体分出し、赤外線加熱炉(IR炉)を用いて付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を250℃で10分間加熱して発泡架橋させた。その後、さらに、ギアーオーブンを用いて、200℃で7時間にわたって発泡架橋後の付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を二次加熱し、常温にて1時間以上放置した後、円筒研削機で外径30mmに研削して所謂ストレート形状の発泡弾性層3を備えて成る実施例1の定着ローラを製造した。
【0065】
(実施例2及び3)
前記付加反応架橋剤の含有量をそれぞれ前記ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材との混合物100質量部に対して2.5質量部及び7.5質量部に変更したこと以外は実施例1と基本的に同様にして実施例2及び3の定着ローラを製造した。
【0066】
(比較例1)
前記付加反応架橋剤の含有量を前記ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材との混合物100質量部に対して1.5質量部に変更したこと以外は実施例1と基本的に同様にして比較例1の定着ローラを製造した。
【0067】
(比較例2)
前記付加反応架橋剤の含有量を前記ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材との混合物100質量部に対して8.0質量部に変更したところ、発泡弾性層を成形できなかった。
【0068】
このようにして製造した各定着ローラにおける前記常温反発量(cm)、前記加熱反発量(cm)、前記増大量、前記アスカーC硬度、前記平均セル径(μm)及び前記発泡倍率(%)を前記方法に従って測定した結果を第1表に示す。
【0069】
(ニップ痕跡評価)
実施例1〜3及び比較例1の定着ローラについて図4に示される試験機70を用いてニップ痕跡の残存の程度を過酷条件下において評価した。この試験機70は、図4に示されるように、筐体内部の下面に固定され、内部ヒータ72を備えた加熱ローラ71と、この加熱ローラ71の軸方向に沿って、その両側に設けられた保温材73と、加熱ローラ71と対向するように、筐体内部の上面に上下動可能に設けられた試験ローラ装着部74と、試験ローラ装着部74を上下に移動可能な押圧力調整手段75、例えば、押圧調整用マイクロメータとを備えている。なお、加熱ローラ71として、直径30mmの金属(ステンレス鋼、SUS304)製ローラを備えている。実施例1〜3及び比較例1の各定着ローラを試験ローラ装着部74のベアリングに弾性ローラ76として装着し、加熱ローラ71を回転しないように固定して、保温材73及び内部ヒータ72を起動して加熱ローラ71の表面温度を180℃に調節した。加熱ローラ71の表面温度が180℃に到達した後に、押圧力調整手段75を硬化させて弾性ローラ76を加熱ローラ71に対して中心方向に4.2mm圧接させた。すなわち、弾性ローラ76の軸線と加熱ローラ71の軸線との距離が弾性ローラ76の半径と加熱ローラ71の半径との和よりも4.2mm短くなるように、弾性ローラ76を加熱ローラ71に圧接させた。このように弾性ローラ76を圧接したまま5分放置した後、圧接を開放し試験機から取り外して23℃にて24時間放置した。評価は、弾性ローラ76の圧接した部分を観察し、凹みがなかった場合を「◎」、凹み痕はあるが周方向の幅が5mm未満であった場合を「○」、周方向の幅が5mm以上であった場合を「×」とした。評価結果を第1表に示す。
【0070】
(定着範囲評価)
実施例1〜3及び比較例1の定着ローラ及び試験機70を用いて各定着ローラの用紙に対する定着可能幅を過酷条件下において評価した。具体的には、前記ニップ痕跡評価と同様の条件設定において加熱ローラ71と弾性ローラ76を圧接させたのと同時にして弾性ローラ76を加熱ローラ71に圧接させた。次いで弾性ローラ76と加熱ローラ71との圧接部分に住友スリーエム株式会社製OHPフィルム「CG3700(A4サイズ(縦297mm、横210mm、JIS)、厚さ0.125mm、ポリエチレンテレフタレート樹脂製)」を縦方向に挟入して、OHPフィルムの縦方向の略中央部を横方向に沿って圧接部分で圧接した圧接状態を30秒間維持した後にOHPフィルムを圧接部分から離脱させた。離脱したOHPフィルムの表面温度が23℃になるまで放置し、OHPフィルムの圧接部分すなわち挟入部分が変色(白濁)した領域の縦方向長さを測定した。この定着範囲評価においてOHPフィルムの「定着範囲」は、OHPフィルムの前記圧接部分のうち横方向における中央部及び両端それぞれから50mm内側の2つの端部の合計3箇所の縦方向長さを測定し、これらの算術平均とした。評価は、幅が14mm以上であった場合を「◎」、12mm以上14mm未満であった場合を「○」、12mm未満であった場合を「×」とした。測定結果及び評価結果を第1表に示す。
【0071】
【表1】

【符号の説明】
【0072】
1 定着ローラ
2 軸体
3 発泡弾性層
20 測定具
20a 自由端
21 鉄球
30 画像形成装置
31 像担持体
32 帯電手段
33 露光手段
34 転写手段
35 定着手段
36 記録体
37 クリーニング手段
40 現像手段
41 現像剤収納部
42 現像剤
43 現像剤供給手段
44 現像剤担持体
45 現像剤規制部材
50 筐体
52 開口
53 定着ローラ
54 無端ベルト支持ローラ
55 無端ベルト
56 加圧ローラ
57 加熱手段
70 耐久試験装置
71 加熱ローラ
72 内部ヒータ
73 外部ヒータ
74 試験ローラ装着部
75 押圧力調整手段
76 弾性ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体の外周面に形成された発泡弾性層を備えて成り、常温(23℃)における下記試験方法による常温反発量(cm)が40以上であることを特徴とする定着ローラ。
<測定方法>
垂直に固定した前記定着ローラの軸線方向の略中央部に高さ100cmから垂直に落下させた鉄球(直径11mm、質量5.45g)が跳ね返ったときの前記定着ローラの表面からの高さ(cm)を10回測定し、上位5点の測定値の算術平均値を前記定着ローラの常温反発量(cm)とする。
【請求項2】
前記常温反発量(cm)と、180℃に1時間加熱されたときの前記試験方法による加熱反発量(cm)とが下記式を満足することを特徴とする請求項1に記載の定着ローラ。
式:(加熱反発量(cm)−常温反発量(cm))/常温反発量(cm)≧0.20
【請求項3】
前記発泡弾性層は、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を前記軸体の外周面で発泡硬化して成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着ローラ。
【請求項4】
前記付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は、ビニル基含有シリコーン生ゴムと、シリカ系充填材と、発泡剤と、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、反応制御剤とを含有することを特徴とする請求項3に記載の定着ローラ。
【請求項5】
前記付加反応架橋剤は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム及び前記シリカ系充填材の合計質量100質量部に対して2質量部を超え8質量部未満の割合で含有されていることを特徴とする請求項4に記載の定着ローラ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の定着ローラを備えて成ることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項6に記載の定着装置を備えて成ることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−145669(P2012−145669A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2729(P2011−2729)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】