定着ローラ及びこれを用いた定着装置
【課題】 加熱ローラ等の定着ローラの弾性層が歪むことに起因して、記録シートに伸びや波打ち等が発生するのを防止することができ、ニップ領域を長尺化した場合であっても、用紙の伸びが悪化するのを回避することができ、高画質な定着画像を得ることが可能な新規な定着ローラ及びこれを用いた定着装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 定着装置に用いられる定着ローラにおいて、芯金部材の表面側に被覆される弾性層と、当該弾性層の表面側に被覆される弾性層よりも弾性の高い中間層を備えるように構成して課題を解決した。
【解決手段】 定着装置に用いられる定着ローラにおいて、芯金部材の表面側に被覆される弾性層と、当該弾性層の表面側に被覆される弾性層よりも弾性の高い中間層を備えるように構成して課題を解決した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子写真方式や静電記録方式などを採用したプリンターや複写機等の画像形成装置に好適に使用される定着ローラ及びこれを用いた定着装置に関し、特に記録用紙等の記録シート上に転写された未定着トナー像を加熱及び加圧することによって、トナー像を記録シートに定着させるために使用される新規な低歪みの定着ローラ及びこれを用いた定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特許第3084692号公報
【特許文献2】特開平9−34291号公報
【特許文献3】特許第3159125号公報
【0003】
従来、この種の電子写真方式や静電記録方式などを採用したプリンターや複写機等の画像形成装置では、更なる高画質化及び高生産性(高速化)が求められており、スクリーン印刷やオフセット印刷などによって印刷されたカラー画像と同等の高画質な画像(以下、「グラフィックアーツ」という。)を、高い生産性で形成することが可能な装置が、印刷に代替する市場として必要とされている。
【0004】
かかるグラフィックアーツ市場に対応した画像形成装置において、最終的に高画質化及び高生産性の要求を実現するのは、フルカラーのトナー像を記録用紙等の記録シート上に定着する定着装置であり、このグラフィックアーツ市場に対応した高速のカラー対応型の定着装置としては、次に示すような、いわゆる“ベルトニップ方式" の定着装置に関する技術が既に種々提案されている。
【0005】
このいわゆるベルトニップ定着装置では、表面が弾性層からなる加熱ローラに、定着ベルトを所定のニップ幅にわたって巻き付けることにより、加熱ローラの外周に長いニップ領域を形成し、更にニップ領域の出口部でのみ小径の加圧ローラを加熱ローラに圧接して、弾性層からなる加熱ローラの表面に局所的な加圧を加えることにより、充分な定着性能と剥離性能を両立するように構成した技術が、特許第3084692号公報に開示されているように既に提案されている。
【0006】
この特許第3084692号公報に係る定着装置は、転写材上の未定着トナー像を定着する熱定着ロール型定着装置において、表面に弾性体が被覆された熱定着ロールと、複数の支持ロールによって張架された耐熱ベルトとを設け、該耐熱ベルトと前記熱定着ロールとの間にニップ領域を形成するよう前記耐熱ベルトを前記熱定着ロールの廻りに所定角度だけ巻付け、前記ニップ領域の出口に該ニップ領域の他の部分よりも大きな圧力を局部的に加えて前記熱定着ロール表面の弾性体に歪みを生じさせる手段を設け、それにより、予め表面歪みを有している熱定着ロールの表面にトナーが接触している状態で、その表面歪みを瞬間的に開放してトナーと熱定着ロールとの付着力を減少させるように構成したものである。
【0007】
しかしながら、上記特許第3084692号公報に係るベルトニップ方式の定着装置の場合には、熱定着ローラと耐熱ベルトのニップ領域の入口から、加圧ローラが圧接するニップ領域の出口までのベルトラップ部分は、熱定着ローラが加熱ローラの表面に接触する圧力が弱いため、記録用紙から発生する水蒸気によって定着中のトナー画像が乱されてしまい、画像乱れが発生するという問題点を有していた。
【0008】
そこで、かかる画像乱れが発生するのを防止するためには、特開平9−34291号公報に開示されているように、固定パッド等の広い面積を持つ圧力付与部材によって、ベルトラップの圧力が低い部分を加圧する技術が既に提案されている。
【0009】
この特開平9−34291号公報に係る画像定着装置は、表面付近に弾性体層を有し、回転可能に支持された加熱定着ロールと、外周面が前記加熱定着ロールに押圧され、トナー像を担持した記録シートが前記加熱定着ロールとの間に挟み込まれるニップを形成するエンドレスベルトと、前記エンドレスベルトの内面側に当接され、前記加熱定着ロールの表面に沿って前記エンドレスベルトを押圧する圧接面を備えた圧力付与部材とを有し、前記圧力付与部材の圧接面に作用する圧力は、前記加熱定着ロールと前記エンドレスベルトとの間に取り込まれた気体の温度上昇による体積膨張を抑止する圧力以上に設定されるように構成したものである。
【0010】
しかし、上記特開平9−34291号公報に係るベルトニップ方式の定着装置では、加熱ローラのニップ領域の出口部に小径の加圧ローラを圧接させるように構成すると、加圧ローラが圧接する加熱ローラの歪み量と、その手前の圧力付与部材が圧接する加熱ローラの歪み量との間に差が生じ、当該加熱ローラの外周における歪み量の差によって、加熱ローラの表面にはスピード差が生じてしまい、ニップ領域中で均一なスピードを持つ用紙と加熱ローラ表面との間にずれが生じて、画像ずれが発生するという問題点を有していた。
【0011】
そこで、かかる問題点を回避し得る技術としては、特許第3159125号公報に開示されているように、圧力付与部材としての固定パッドの荷重を調整して用紙スピードと加熱ローラ表面のスピードを合わせるように構成したものが既に提案されている。
【0012】
この特許第3159125号公報に係る画像定着装置は、弾性体層を有すると共に発熱手段を有し、所定の角速度で回転駆動される加熱ロールと、複数のロールによって張架されると共に該加熱ロールの周面の一部に対して巻き付くように配設され、搬送されてきた記録シートを該加熱ロールと相俟って挟み込むためのニップ領域を形成する無端状の定着ベルトと、かかるニップ領域の終端部で該定着ベルトを介して加熱ロールに圧接し、該加熱ロールの弾性体層を変形させる加圧ロールと、この加圧ロールよりも該ニップ領域の始端部側で定着ベルトを介して加熱ロールに圧接する補助加圧部材とから構成され、該加圧ロールの回転に対して所定の負荷トルクを与えることにより、該加熱ロールと定着ベルトとの間に挟み込まれた記録シートの搬送速度が、該加圧ロールと補助加圧部材との間の位置における加熱ロールの表面速度と略同一の速度に制御されるように構成したものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上記従来技術の場合には、次のような問題点を有している。すなわち、上記特許第3159125号公報に係る定着装置の場合には、加熱ローラの表面側にゴム等からなる弾性層が被覆されているため、当該加熱ローラの表面に加圧ローラや固定パッドが圧接されると、加熱ローラの弾性層に歪みが発生することになる。この加熱ローラの弾性層に発生する歪みの量は、図12に示すように、加熱ローラの表面に対する加圧ローラや固定パッドの圧接力に依存して変化し、加圧ローラが圧接する部分では、幅が狭く急激に高さが高くなるピークを示すのに対し、固定パッドが圧接する部分では、幅が広く高さが低いブロードなピークを示している。したがって、上記加熱ローラの表面に圧接した状態で搬送される用紙は、加圧ローラが圧接する部分において、加熱ローラの弾性層に発生する歪み量が大きく、この大きな歪み量を吸収するために、加熱ローラの弾性層が速い速度で下流側に移動し、下流方向に引張られることになる。これに対して、固定パッドが圧接する部分では、加熱ローラの弾性層に発生する歪み量が小さいので、この小さな歪み量を吸収するために、加熱ローラの弾性層が移動する速度も遅く、結果的に用紙が上流方向に引張られることになる。そのため、上記加熱ローラの表面に圧接した状態で搬送される用紙には、加圧ローラが圧接する部分と、固定パッドが圧接する部分とで、互いに反対方向に引っ張る力が作用し、用紙に伸びが発生するという問題点を有していた。この用紙の伸びは、当該用紙上に定着された画像を変形させることになり、画質の低下を将来するという問題点を有していた。
【0014】
また、上記用紙に発生する伸びは、当該用紙上に均一に発生する訳ではなく、例えば、加熱ローラの軸方向に沿っても不均一に発生する場合があり、用紙の波打ち等の原因となったり、用紙の両面に画像を形成する場合には、表裏の画像のずれとなって現れるいう問題点をも有していた。
。
【0015】
さらに、上記特許第3159125号公報に係る定着装置の場合には、定着温度の低下を目的として、加圧領域であるニップ領域の長さを長くするために、固定パッドが圧接するニップ領域の幅を延長する傾向があるが、この固定パッドが圧接するニップ領域幅の延長に伴って、固定パッドの総荷重も増加するため、加圧ローラが圧接する部分との引っ張り力が増大し、用紙の伸びが更に悪化してしまい、ニップ領域の長尺化を妨げる要因となるという問題点をも有していた。
【0016】
そこで、この発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、本発明者らが加熱ローラ等の定着ローラの弾性層に歪みが発生し、その結果として用紙等の記録シートに伸びが発生するメカニズムを鋭意研究することによって、加熱ローラ等の定着ローラの弾性層が歪むことに起因して、記録シートに伸びや波打ち等が発生するのを防止することができ、ニップ領域を長尺化した場合であっても、用紙の伸びが悪化するのを回避することができ、高画質な定着画像を得ることが可能な新規な定着ローラ及びこれを用いた定着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、定着装置に用いられる定着ローラにおいて、芯金部材の表面側に被覆される弾性層と、当該弾性層の表面側に被覆される弾性層よりも弾性の高い中間層を備えたことを特徴とする定着ローラである。
【0018】
ここで、「芯金部材の表面側に被覆される弾性層」とは、必ずしも、芯金部材の表面に弾性層が直接被覆されず、間に接着層や他の層を介在しても良い趣旨である。また、「弾性層の表面側に被覆される湾曲可能な非弾性層」についても同様である。
【0019】
また、「弾性の高い中間層」とは、フレキシブルに湾曲可能なことを意味し、当該「弾性の高い」とは、弾性層の変形に追随して湾曲(変形)するが変形量が少なく、荷重を加えた際に「伸びる」性質が少ないことを意味している。といっても、上記「弾性の高い」ことが要件であって、完全に荷重を加えた際に「伸びる」性質を有していないものである必要はなく、「弾性層」と比較してその「伸び」(変形)が大幅に小さいものであれば良い。
【0020】
また、請求項2に記載された発明は、定着装置に用いられる定着ローラにおいて、芯金部材の表面側に被覆される弾性層と、当該弾性層の表面側に被覆される弾性層よりも弾性の高い中間層と、表面に被覆される離型層を備えたことを特徴とする定着ローラである。
【0021】
この請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明に対して、「表面に被覆される離型層」を備えている点のみが相違するものである。
【0022】
さらに、請求項3に記載された発明は、上記中間層は、弾性層よりも弾性の高い合成樹脂、又は金属製の薄層からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着ローラである。
【0023】
又、請求項4に記載された発明は、上記中間層は、ポリイミドによって形成された薄層からなることを特徴とする請求項3に記載の定着ローラである。
【0024】
更に、請求項5に記載された発明は、上記中間層は、ステンレス又はニッケルによって形成された金属製の薄層からなることを特徴とする請求項3に記載の定着ローラである。
【0025】
また、請求項6に記載された発明は、上記弾性層は、所定の厚さを有するシリコンゴムの層からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の定着ローラである。
【0026】
さらに、請求項7に記載された発明は、弾性層を有すると共に発熱手段を有し、所定の角速度で回転駆動される加熱ローラと、加熱ローラの周面の一部に対して巻き付くように配設され、搬送されてきた記録シートを該加熱ローラと相俟って挟み込むためのニップ領域を形成する無端状の定着ベルトと、かかるニップ領域の終端部で該定着ベルトを介して加熱ローラに圧接し、該加熱ローラの弾性層を変形させる加圧部材と、この加圧部材よりも該ニップ領域の始端部側で定着ベルトを介して加熱ローラに圧接する補助加圧部材とから構成された定着装置において、
前記加熱ローラが、前記請求項1乃至6のいずれかに記載の定着ローラからなることを特徴とする定着装置である。
【0027】
又、請求項8に記載された発明は、少なくとも一方が発熱手段を有し、回転可能に配設された一対の定着ローラを互いに圧接させることにより、搬送されてきた記録シートを挟み込むためのニップ領域を形成するように構成された定着装置において、
前記一対の定着ローラのうち、少なくとも一方の定着ローラが、前記請求項1乃至6のいずれかに記載の定着ローラからなることを特徴とする定着装置である。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、加熱ローラ等の定着ローラの弾性層が歪むことに起因して、記録シートに伸びや波打ち等が発生するのを防止することができ、ニップ領域を長尺化した場合であっても、用紙の伸びが悪化するのを回避することができ、高画質な定着画像を得ることが可能な新規な定着ローラ及びこれを用いた定着装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0030】
実施の形態1
図1はこの発明の実施の形態1に係る定着ローラを適用した定着装置を示すものである。
【0031】
この定着装置1は、図1に示すように、発熱手段としてのハロゲンランプ3を内蔵した定着ローラとしての加熱ローラ2と、この加熱ローラ2の周面の一部に巻き付くようにして圧接され、かかる加熱ローラ2と相俟って記録シートとしての記録用紙4のニップ領域5を形成する無端状の定着ベルト6と、かかるニップ領域5の終端部において上記定着ベルト6の内側から加熱ローラ2に圧接する加圧ロール7と、やはり上記ニップ領域5内において加熱ローラ2に圧接し、未定着トナー像8の記録用紙4に対する定着を促進する補助加圧パッド9とから構成されている。そして、上記定着装置1では、未定着トナー像8を担持した記録用紙4が上記加熱ローラ2と定着ベルト6の間に形成されたニップ領域5を挿通するようになっている。
【0032】
ところで、この実施の形態では、定着装置に用いられる定着ローラにおいて、この定着ローラは、芯金部材の表面側に被覆される弾性層と、当該弾性層の表面側に被覆される湾曲可能な中間層と、表面に被覆される離型層を備えるように構成されている。
【0033】
また、この実施の形態では、上記中間層は、弾性を有しない合成樹脂、又は金属製の薄層からなるように構成されており、当該中間層は、例えば、ポリイミドによって形成された薄層からなるか、あるいはステンレス又はニッケルによって形成された金属製の薄層からなるように構成されている。
【0034】
さらに、この実施の形態では、上記弾性層は、所定の厚さを有するシリコーンゴムの層からなるように構成されている。
【0035】
又、この実施の形態では、弾性層を有すると共に発熱手段を有し、所定の角速度で回転駆動される加熱ローラと、複数のローラによって張架されると共に該加熱ローラの周面の一部に対して巻き付くように配設され、搬送されてきた記録シートを該加熱ローラと相俟って挟み込むためのニップ領域を形成する無端状の定着ベルトと、かかるニップ領域の終端部で該定着ベルトを介して加熱ローラに圧接し、該加熱ローラの弾性層を変形させる加圧ローラと、この加圧ローラよりも該ニップ領域の始端部側で定着ベルトを介して加熱ローラに圧接する補助加圧部材とから構成された定着装置において、前記加熱ローラが、芯金部材の表面側に被覆される弾性層と、当該弾性層の表面側に被覆される湾曲可能な中間層と、表面に被覆される離型層を備えるように構成されている。
【0036】
先ず、上記加熱ローラ2は、図1に示すように、芯金部材としての金属製コア10の周囲を弾性層11で被覆すると共に、かかるコア10の内部に出力850Wのハロゲンランプ3を収容したもので、外径が95mm、軸長が400mmに形成されており、上記コア10としては、外径87mm、内径81mmのアルミニウム製円筒体が用いられている。なお、上記金属製コア10としては、ステンレス製など他の材質からなるものを使用しても勿論良い。上記弾性層11は、耐熱性を備えた弾性材料からなり、当該弾性層11としては、ゴム硬度17°(JIS−A)で、厚さ3.9mmのHTVシリコーンゴムが用いられている。
【0037】
また、上記弾性層11の表面には、湾曲可能な中間層12が被覆されており、当該中間層12は、弾性層11の変形に伴ってフレキシブルに湾曲可能であるとともに、弾性を有しない(荷重を加えた際にほとんど伸張しない)非弾性体からなる層である。この中間層12としては、厚さ70μmのポリイミド樹脂からなる層が用いられているが、当該中間層12は、厚さが薄い方がフレキシブルに湾曲可能であるため望ましい。さらに、上記中間層12としては、厚さが50〜100μm程度のステンレスやニッケル等の金属からなる薄層を用いても良い。
【0038】
さらに、上記中間層12の表面には、溶融したトナーの付着を防止するための離型層として、厚さ30μmのPFA層13が被覆されており、加熱ローラ2の周面は、PFA層13によって鏡面に近い表面状態に保たれている。また、この加熱ローラ2には、図示外の駆動モータが接続されており、所定の回転速度(例えば、約450mm/sec)で回転駆動されるようになっている。
【0039】
なお、上記中間層12とPFA層13との間には、画質を向上させるため、図2に示すように、第2の弾性層11bとして、厚さ100μm程度のシリコーンゴム層を被覆しても良い。
【0040】
この加熱ローラ2の表面温度は、常に温度センサ14によって検出されており、かかる検出温度に基づいて上記ハロゲンランプ3の点灯を制御することで、加熱ローラ2の表面温度を常に比較的低い定着温度である約130℃に維持し得るようになっている。また、加熱ローラ2の周面には、オイル供給装置15によって粘度300cstのジメチルシリコンオイル16が均一に塗布されるようになっており、上記ニップ領域5において加熱され溶融したトナー8が加熱ローラ2の表面に付着するのを可及的に防止するように構成されている。
【0041】
一方、上記定着ベルト6は、厚さ70μm、幅300mm、周長188mmのポリイミドフィルムの表面に、離型層として厚さ30μmのPFA層を被覆したものであり、上記加圧ローラ7を含む外径10mmの3本のアルミニウム製ローラ7,21,22に対して40Nの張力で架け回されると共に、加熱ローラ2の回動に連れ回されて自在に回転するように構成されている。各ローラ7,21,22は、中央部の外径が両端部の外径よりも僅かに大きな樽型に形成されている。このように各ローラ7,21,22を樽型に形成すると、定着ベルト6の張力によって各ローラに撓みが生じても、かかる定着ベルト6の周面は波打つことなく平坦となり、該定着ベルト6を円滑に走行させることが可能となる。
【0042】
なお、上記3本のアルミニウム製ローラ7,21,22のうち、例えば、ニップ領域5の上流側に位置するローラ21には、図示しない発熱手段としてのハロゲンランプが内蔵されており、定着ベルト6の温度が約100℃に加熱されるように構成されている。
【0043】
この定着ベルト6は、加熱ローラ2の中心角度45°に相当する長さだけ該加熱ローラ2に対して巻き付いており、このときの記録用紙4の搬送方向に沿ったニップ領域5の長さを実測したところ、比較的長い約50mmであって、定着温度を低目に設定した場合であっても、フルカラーのトナー像8に対して、良好な定着性を得ることが可能となっている。
【0044】
また、上記定着ベルト6が架け回された加圧ローラ7は、コイルスプリング71によって加熱ローラ2の中心へ向け付勢されている。上記コイルスプリング71の付勢力は約50kgf(500N)に設定されており、これによって加圧ローラ2が当接した加熱ローラ2の弾性層11にはその内径に向かう歪みが生じている。このとき、上記加圧ローラ7が形成するニップ幅は、約5mm、ニップ圧力は、約2.5kgf/cm2 に設定されている。
【0045】
一方、上記補助加圧パッド9は、加圧ロール7よりもニップ領域5の始端部側に隣接して配設され、定着ベルト6の加熱ローラ2に対する圧接力を向上させるべく、かかる定着ベルト6の裏面側から加熱ローラ2に圧接している。この補助加圧パッド9は、ステンレス製の基材91の上に厚さ3mm、ゴム硬度20°(JIS−A)のシリコーンゴムからなる弾性層92を設けたものであり、やはりコイルスプリング93によって加熱ローラ2の中心に向け約120kgf(1200N)の力で付勢されている。また、補助加圧パッド9の弾性層92が定着ベルト6との摺接によって摩耗するのを防止するため、かかる補助加圧パッド9の摺接面は、テフロン(登録商標)シート等の摩擦係数の低い樹脂シート94によって被覆されている。上記補助加圧パッド9が形成するニップ幅は、ニップ領域5の4/5程度を占めるように、実測約40mmと十分なニップ領域5が確保されており、ニップ圧力は、約0.075N/mm2 と低く設定されている。
【0046】
また、この補助加圧パッド9は、その側面が隣接する加圧ローラ7に対して摺接するように配置されている。尚、加圧ロール7と摺接する補助加圧パッド9の側面も摩擦係数の低い樹脂シート94によって被覆されている。
【0047】
そして、以上のように構成された本実施の形態に係る定着装置1においては、上記加熱ローラ2と定着ベルト6との圧接によって形成されたニップ領域5に対して記録用紙4を挿通させると、かかる記録用紙4に担持されていたフルカラーの未定着トナー像8が加熱・加圧されて記録用紙4に定着され、更にかかるニップ領域5の終端部で上記加圧ロール7を加熱ローラ2に圧接させたことによる十分な定着作用によって、良好な定着性能を得ることが可能となっている。なお、上記定着装置1では、良好な剥離性能が得られ、記録用紙4の剥離不良が問題となることはないが、剥離爪等の強制的な剥離手段を補助的に用いても良い。
【0048】
ところで、上記定着装置1のように、表面側にシリコーンゴムなどからなる弾性層11を持った加熱ローラ2に、加圧ローラ7や補助加圧パッド9を圧接させると、図3に示すように、当該加圧ローラ7等の圧力によって弾性層11が変形し、当該弾性層11に歪みが発生する。このとき、上記加熱ローラ2を一定の角速度で回転駆動し、図1に示すように、その間に記録用紙4などを通紙すると、図3に示すように、その歪みの大きさに比例して記録用紙4のスピードが速くなる。これは、加熱ローラ2の弾性層11が加圧ローラ7や補助加圧パッド9の加圧により変形して、その部分の断面積が小さくなり、一定の角速度で移動しているゴム(弾性層11)の体積が、この断面積の小さくなった狭い部分を一定時間内に通り抜けるために、その部分での移動スピードが速くなるためであり、記録用紙4は、この弾性層11の表面のスピードとほぼ同じスピードで搬送され、スピードの増加が起こる。
【0049】
上記のような表面側に弾性層11を持つ加熱ローラ2が、図1に示すように、ベルトニップタイプの定着装置1に使用されると、図5に示すようなニップ領域5の出口部での加圧ローラ7による圧力によって、加熱ローラ2の弾性層11は歪み、記録用紙4のスピードが速くなる。このスピードが補助加圧パッド9の部分でも同様なスピードであると、記録用紙4と加熱ローラ2表面のスピードとが異なり、背景技術において既に説明したように、記録用紙3上のトナー画像8が擦れて画像ずれが発生することになる。
【0050】
そこで、これを防止するためには、補助加圧パッド9の部分における記録用紙4のスピードを、加熱ローラ2表面のスピードと一致させる必要がある。これを実現するには、約0.075N/mm2 程度の低い圧力で加圧される補助加圧パッド9によって、加熱ローラ2の弾性層11を歪ませること無く加圧し、記録用紙4と加熱ローラ2の表面とを密着させることにより、加圧ローラ7の部分で速くなった記録用紙4のスピードを遅くし、補助加圧パッド9の部分での記録用紙4のスピードを、加熱ローラ2表面と一致させることができる。
【0051】
しかしながら、そのままでは、背景技術において既に説明したように、記録用紙4は、加圧ローラ7の部分と補助加圧パッド9の部分とのスピードの差によって引っ張られるために、伸びが発生してしまう。この記録用紙4の伸びは、図6に示すように、加圧ローラ7の荷重を一定とすると、補助加圧パッド9の荷重が増加するに従って増加する傾向にある。
【0052】
さらに、上記定着装置1において、そのままでは、定着温度を低下させるために、補助加圧パッド9のニップ領域5の幅を、約40mmと増加させた場合も、定着不良を防ぐためには、所定以上の圧力が必要となるため、圧力を低下させることができず、補助加圧パッド9の荷重が増加し、記録用紙4の伸びが悪化するために、パッドニップ幅を増加させることができないことになる。
【0053】
そこで、本実施の形態に係る定着ローラとしての加熱ローラでは、加圧されて下層の弾性層11であるシリコーンゴム層が変形しても、その上部に被覆されている中間層12としてのポリイミドが非弾性体であるために、弾性変形歪みが発生せず、これによってニップ領域5の内部で、図7に示すように、加熱ローラ2表面のスピード変動が起こらず、記録用紙4に伸びが発生するのを防止することが可能となる。
【0054】
このように、上記実施の形態に係る定着ローラを用いた定着装置1では、加熱ローラ2の弾性層11が歪むことに起因して、記録用紙4に伸びや波打ち等が発生するのを防止することができ、ニップ領域5を長尺化した場合であっても、記録用紙4の伸びが悪化するのを回避することができ、高画質な定着画像を得ることが可能となっている。
【0055】
実施の形態2
図9はこの発明の実施の形態2を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、少なくとも一方が発熱手段を有し、回転可能に配設された一対の定着ローラを互いに圧接させることにより、搬送されてきた記録シートを挟み込むためのニップ領域を形成するように構成された定着装置において、前記一対の定着ローラのうち、少なくとも一方の定着ローラが、芯金部材の表面側に被覆される弾性層と、当該弾性層の表面側に被覆される湾曲可能な中間層と、表面に被覆される離型層を備えるように構成されている。
【0056】
すなわち、この実施の形態2に係る定着装置1は、図9に示すように、回転可能に配設された一対の加熱ローラ2と加圧ローラ30を互いに圧接させることにより、搬送されてきた記録シート4を挟み込むためのニップ領域5を形成するように構成されており、加熱ローラ2と加圧ローラ30の内部には、双方とも、発熱手段としてのハロゲンランプ3、31とが配設されている。なお、上記加熱ローラ2の内部にのみ発熱手段を設けるように構成しても良い。また、加熱ローラ2と加圧ローラ30とは、その表面の設定温度に差を設け、加熱ローラ2を加圧ローラ30よりも高く設定しても良い。
【0057】
ところで、この実施の形態2に係る加熱ローラ2は、図9に示すように、芯金部材としての金属製コア10と、弾性層11と、中間層12と、離型層13とを備えるように構成されている。また、加圧ローラ30は、芯金部材としての金属製コア32と、弾性層33と、離型層34とを備えるように構成されている。
【0058】
従来の表面に中間層のない定着ローラを2本使用して、これら2本の定着ローラを互いに圧接して回転し、その間に記録用紙を通紙した場合には、図4に示したものと同様に、その圧接荷重に比例して定着ローラの歪みは増加する。ただし、このときニップ領域内の歪みは、ニップ領域5の出口からニップ領域5の入口まで均一でなく、図10に示すように、ニップ領域5の中央部が最も大きな歪み量を示すようになっている。
【0059】
これは、ニップ領域5の入口から中央部にかけて圧接されるために、弾性層12を構成するゴムの断面積が減少し、それに伴い弾性層12を構成するゴムが移動するスピードが図11に示すように増すためである。つまり、加熱ローラ2のニップ領域5の入口から中央部のかけて、記録用紙4は、徐々に加熱ローラ2表面の歪みに従ってスピードが増加し、ニップ領域5の入口部と中央部でスピードに差が発生し、記録用紙4が伸びることになる。また、ニップ領域5の中央部から出口部にかけて記録用紙4は、加熱ローラ2表面の歪みが減少するためにスピードが減少するが、一度伸びた記録用紙4は、再度縮めても繊維自体が伸びているため、元の状態にはもどらず伸びたままの状態となる。
【0060】
これに対して、本発明の定着ローラとしての加熱ローラ2では、表面側に中間層12があるため、加熱ローラ2を定着ローラ30に圧接させ加圧しても、図10に示すような歪みが発生せず、記録用紙4に伸びが発生するのを防止することができる。
【0061】
このように、上記実施の形態2に係る定着ローラを用いた定着装置1でも、加熱ローラ2の弾性層11が歪むことに起因して、記録用紙4に伸びや波打ち等が発生するのを防止することができ、高画質な定着画像を得ることが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1はこの発明の実施の形態1に係る定着ローラを適用した定着装置を示す構成図である。
【図2】図2はこの発明の実施の形態1に係る定着ローラの他の態様を示す構成図である。
【図3】図3は加熱ローラの圧力と歪みとの関係を示すグラフである。
【図4】図4は加熱ローラの歪みと用紙スピードの関係を示すグラフである。
【図5】図5は加熱ローラの圧力分布と用紙スピードの関係を示すグラフである。
【図6】図6はパッド荷重と用紙の伸びの関係を示すグラフである。
【図7】図7は加熱ローラの歪みと用紙スピードの関係を示すグラフである。
【図8】図8はニップ入口からの距離と加熱ローラの歪みの関係を示すグラフである。
【図9】図9はこの発明の実施の形態2に係る定着ローラを適用した定着装置を示す構成図である。
【図10】図10はニップ入口からの距離と加熱ローラの歪みの関係を示すグラフである。
【図11】図11は従来の定着ローラの歪みを示す模式図である。
【図12】図12は従来の定着ローラにおけるニップ入口からの距離と歪みを示すグラフである。
【符号の説明】
【0063】
2:加熱ローラ、10:金属製コア、11:弾性層、12:中間層、13:離型層。
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子写真方式や静電記録方式などを採用したプリンターや複写機等の画像形成装置に好適に使用される定着ローラ及びこれを用いた定着装置に関し、特に記録用紙等の記録シート上に転写された未定着トナー像を加熱及び加圧することによって、トナー像を記録シートに定着させるために使用される新規な低歪みの定着ローラ及びこれを用いた定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特許第3084692号公報
【特許文献2】特開平9−34291号公報
【特許文献3】特許第3159125号公報
【0003】
従来、この種の電子写真方式や静電記録方式などを採用したプリンターや複写機等の画像形成装置では、更なる高画質化及び高生産性(高速化)が求められており、スクリーン印刷やオフセット印刷などによって印刷されたカラー画像と同等の高画質な画像(以下、「グラフィックアーツ」という。)を、高い生産性で形成することが可能な装置が、印刷に代替する市場として必要とされている。
【0004】
かかるグラフィックアーツ市場に対応した画像形成装置において、最終的に高画質化及び高生産性の要求を実現するのは、フルカラーのトナー像を記録用紙等の記録シート上に定着する定着装置であり、このグラフィックアーツ市場に対応した高速のカラー対応型の定着装置としては、次に示すような、いわゆる“ベルトニップ方式" の定着装置に関する技術が既に種々提案されている。
【0005】
このいわゆるベルトニップ定着装置では、表面が弾性層からなる加熱ローラに、定着ベルトを所定のニップ幅にわたって巻き付けることにより、加熱ローラの外周に長いニップ領域を形成し、更にニップ領域の出口部でのみ小径の加圧ローラを加熱ローラに圧接して、弾性層からなる加熱ローラの表面に局所的な加圧を加えることにより、充分な定着性能と剥離性能を両立するように構成した技術が、特許第3084692号公報に開示されているように既に提案されている。
【0006】
この特許第3084692号公報に係る定着装置は、転写材上の未定着トナー像を定着する熱定着ロール型定着装置において、表面に弾性体が被覆された熱定着ロールと、複数の支持ロールによって張架された耐熱ベルトとを設け、該耐熱ベルトと前記熱定着ロールとの間にニップ領域を形成するよう前記耐熱ベルトを前記熱定着ロールの廻りに所定角度だけ巻付け、前記ニップ領域の出口に該ニップ領域の他の部分よりも大きな圧力を局部的に加えて前記熱定着ロール表面の弾性体に歪みを生じさせる手段を設け、それにより、予め表面歪みを有している熱定着ロールの表面にトナーが接触している状態で、その表面歪みを瞬間的に開放してトナーと熱定着ロールとの付着力を減少させるように構成したものである。
【0007】
しかしながら、上記特許第3084692号公報に係るベルトニップ方式の定着装置の場合には、熱定着ローラと耐熱ベルトのニップ領域の入口から、加圧ローラが圧接するニップ領域の出口までのベルトラップ部分は、熱定着ローラが加熱ローラの表面に接触する圧力が弱いため、記録用紙から発生する水蒸気によって定着中のトナー画像が乱されてしまい、画像乱れが発生するという問題点を有していた。
【0008】
そこで、かかる画像乱れが発生するのを防止するためには、特開平9−34291号公報に開示されているように、固定パッド等の広い面積を持つ圧力付与部材によって、ベルトラップの圧力が低い部分を加圧する技術が既に提案されている。
【0009】
この特開平9−34291号公報に係る画像定着装置は、表面付近に弾性体層を有し、回転可能に支持された加熱定着ロールと、外周面が前記加熱定着ロールに押圧され、トナー像を担持した記録シートが前記加熱定着ロールとの間に挟み込まれるニップを形成するエンドレスベルトと、前記エンドレスベルトの内面側に当接され、前記加熱定着ロールの表面に沿って前記エンドレスベルトを押圧する圧接面を備えた圧力付与部材とを有し、前記圧力付与部材の圧接面に作用する圧力は、前記加熱定着ロールと前記エンドレスベルトとの間に取り込まれた気体の温度上昇による体積膨張を抑止する圧力以上に設定されるように構成したものである。
【0010】
しかし、上記特開平9−34291号公報に係るベルトニップ方式の定着装置では、加熱ローラのニップ領域の出口部に小径の加圧ローラを圧接させるように構成すると、加圧ローラが圧接する加熱ローラの歪み量と、その手前の圧力付与部材が圧接する加熱ローラの歪み量との間に差が生じ、当該加熱ローラの外周における歪み量の差によって、加熱ローラの表面にはスピード差が生じてしまい、ニップ領域中で均一なスピードを持つ用紙と加熱ローラ表面との間にずれが生じて、画像ずれが発生するという問題点を有していた。
【0011】
そこで、かかる問題点を回避し得る技術としては、特許第3159125号公報に開示されているように、圧力付与部材としての固定パッドの荷重を調整して用紙スピードと加熱ローラ表面のスピードを合わせるように構成したものが既に提案されている。
【0012】
この特許第3159125号公報に係る画像定着装置は、弾性体層を有すると共に発熱手段を有し、所定の角速度で回転駆動される加熱ロールと、複数のロールによって張架されると共に該加熱ロールの周面の一部に対して巻き付くように配設され、搬送されてきた記録シートを該加熱ロールと相俟って挟み込むためのニップ領域を形成する無端状の定着ベルトと、かかるニップ領域の終端部で該定着ベルトを介して加熱ロールに圧接し、該加熱ロールの弾性体層を変形させる加圧ロールと、この加圧ロールよりも該ニップ領域の始端部側で定着ベルトを介して加熱ロールに圧接する補助加圧部材とから構成され、該加圧ロールの回転に対して所定の負荷トルクを与えることにより、該加熱ロールと定着ベルトとの間に挟み込まれた記録シートの搬送速度が、該加圧ロールと補助加圧部材との間の位置における加熱ロールの表面速度と略同一の速度に制御されるように構成したものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、上記従来技術の場合には、次のような問題点を有している。すなわち、上記特許第3159125号公報に係る定着装置の場合には、加熱ローラの表面側にゴム等からなる弾性層が被覆されているため、当該加熱ローラの表面に加圧ローラや固定パッドが圧接されると、加熱ローラの弾性層に歪みが発生することになる。この加熱ローラの弾性層に発生する歪みの量は、図12に示すように、加熱ローラの表面に対する加圧ローラや固定パッドの圧接力に依存して変化し、加圧ローラが圧接する部分では、幅が狭く急激に高さが高くなるピークを示すのに対し、固定パッドが圧接する部分では、幅が広く高さが低いブロードなピークを示している。したがって、上記加熱ローラの表面に圧接した状態で搬送される用紙は、加圧ローラが圧接する部分において、加熱ローラの弾性層に発生する歪み量が大きく、この大きな歪み量を吸収するために、加熱ローラの弾性層が速い速度で下流側に移動し、下流方向に引張られることになる。これに対して、固定パッドが圧接する部分では、加熱ローラの弾性層に発生する歪み量が小さいので、この小さな歪み量を吸収するために、加熱ローラの弾性層が移動する速度も遅く、結果的に用紙が上流方向に引張られることになる。そのため、上記加熱ローラの表面に圧接した状態で搬送される用紙には、加圧ローラが圧接する部分と、固定パッドが圧接する部分とで、互いに反対方向に引っ張る力が作用し、用紙に伸びが発生するという問題点を有していた。この用紙の伸びは、当該用紙上に定着された画像を変形させることになり、画質の低下を将来するという問題点を有していた。
【0014】
また、上記用紙に発生する伸びは、当該用紙上に均一に発生する訳ではなく、例えば、加熱ローラの軸方向に沿っても不均一に発生する場合があり、用紙の波打ち等の原因となったり、用紙の両面に画像を形成する場合には、表裏の画像のずれとなって現れるいう問題点をも有していた。
。
【0015】
さらに、上記特許第3159125号公報に係る定着装置の場合には、定着温度の低下を目的として、加圧領域であるニップ領域の長さを長くするために、固定パッドが圧接するニップ領域の幅を延長する傾向があるが、この固定パッドが圧接するニップ領域幅の延長に伴って、固定パッドの総荷重も増加するため、加圧ローラが圧接する部分との引っ張り力が増大し、用紙の伸びが更に悪化してしまい、ニップ領域の長尺化を妨げる要因となるという問題点をも有していた。
【0016】
そこで、この発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、本発明者らが加熱ローラ等の定着ローラの弾性層に歪みが発生し、その結果として用紙等の記録シートに伸びが発生するメカニズムを鋭意研究することによって、加熱ローラ等の定着ローラの弾性層が歪むことに起因して、記録シートに伸びや波打ち等が発生するのを防止することができ、ニップ領域を長尺化した場合であっても、用紙の伸びが悪化するのを回避することができ、高画質な定着画像を得ることが可能な新規な定着ローラ及びこれを用いた定着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、請求項1に記載された発明は、定着装置に用いられる定着ローラにおいて、芯金部材の表面側に被覆される弾性層と、当該弾性層の表面側に被覆される弾性層よりも弾性の高い中間層を備えたことを特徴とする定着ローラである。
【0018】
ここで、「芯金部材の表面側に被覆される弾性層」とは、必ずしも、芯金部材の表面に弾性層が直接被覆されず、間に接着層や他の層を介在しても良い趣旨である。また、「弾性層の表面側に被覆される湾曲可能な非弾性層」についても同様である。
【0019】
また、「弾性の高い中間層」とは、フレキシブルに湾曲可能なことを意味し、当該「弾性の高い」とは、弾性層の変形に追随して湾曲(変形)するが変形量が少なく、荷重を加えた際に「伸びる」性質が少ないことを意味している。といっても、上記「弾性の高い」ことが要件であって、完全に荷重を加えた際に「伸びる」性質を有していないものである必要はなく、「弾性層」と比較してその「伸び」(変形)が大幅に小さいものであれば良い。
【0020】
また、請求項2に記載された発明は、定着装置に用いられる定着ローラにおいて、芯金部材の表面側に被覆される弾性層と、当該弾性層の表面側に被覆される弾性層よりも弾性の高い中間層と、表面に被覆される離型層を備えたことを特徴とする定着ローラである。
【0021】
この請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明に対して、「表面に被覆される離型層」を備えている点のみが相違するものである。
【0022】
さらに、請求項3に記載された発明は、上記中間層は、弾性層よりも弾性の高い合成樹脂、又は金属製の薄層からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着ローラである。
【0023】
又、請求項4に記載された発明は、上記中間層は、ポリイミドによって形成された薄層からなることを特徴とする請求項3に記載の定着ローラである。
【0024】
更に、請求項5に記載された発明は、上記中間層は、ステンレス又はニッケルによって形成された金属製の薄層からなることを特徴とする請求項3に記載の定着ローラである。
【0025】
また、請求項6に記載された発明は、上記弾性層は、所定の厚さを有するシリコンゴムの層からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の定着ローラである。
【0026】
さらに、請求項7に記載された発明は、弾性層を有すると共に発熱手段を有し、所定の角速度で回転駆動される加熱ローラと、加熱ローラの周面の一部に対して巻き付くように配設され、搬送されてきた記録シートを該加熱ローラと相俟って挟み込むためのニップ領域を形成する無端状の定着ベルトと、かかるニップ領域の終端部で該定着ベルトを介して加熱ローラに圧接し、該加熱ローラの弾性層を変形させる加圧部材と、この加圧部材よりも該ニップ領域の始端部側で定着ベルトを介して加熱ローラに圧接する補助加圧部材とから構成された定着装置において、
前記加熱ローラが、前記請求項1乃至6のいずれかに記載の定着ローラからなることを特徴とする定着装置である。
【0027】
又、請求項8に記載された発明は、少なくとも一方が発熱手段を有し、回転可能に配設された一対の定着ローラを互いに圧接させることにより、搬送されてきた記録シートを挟み込むためのニップ領域を形成するように構成された定着装置において、
前記一対の定着ローラのうち、少なくとも一方の定着ローラが、前記請求項1乃至6のいずれかに記載の定着ローラからなることを特徴とする定着装置である。
【発明の効果】
【0028】
この発明によれば、加熱ローラ等の定着ローラの弾性層が歪むことに起因して、記録シートに伸びや波打ち等が発生するのを防止することができ、ニップ領域を長尺化した場合であっても、用紙の伸びが悪化するのを回避することができ、高画質な定着画像を得ることが可能な新規な定着ローラ及びこれを用いた定着装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0030】
実施の形態1
図1はこの発明の実施の形態1に係る定着ローラを適用した定着装置を示すものである。
【0031】
この定着装置1は、図1に示すように、発熱手段としてのハロゲンランプ3を内蔵した定着ローラとしての加熱ローラ2と、この加熱ローラ2の周面の一部に巻き付くようにして圧接され、かかる加熱ローラ2と相俟って記録シートとしての記録用紙4のニップ領域5を形成する無端状の定着ベルト6と、かかるニップ領域5の終端部において上記定着ベルト6の内側から加熱ローラ2に圧接する加圧ロール7と、やはり上記ニップ領域5内において加熱ローラ2に圧接し、未定着トナー像8の記録用紙4に対する定着を促進する補助加圧パッド9とから構成されている。そして、上記定着装置1では、未定着トナー像8を担持した記録用紙4が上記加熱ローラ2と定着ベルト6の間に形成されたニップ領域5を挿通するようになっている。
【0032】
ところで、この実施の形態では、定着装置に用いられる定着ローラにおいて、この定着ローラは、芯金部材の表面側に被覆される弾性層と、当該弾性層の表面側に被覆される湾曲可能な中間層と、表面に被覆される離型層を備えるように構成されている。
【0033】
また、この実施の形態では、上記中間層は、弾性を有しない合成樹脂、又は金属製の薄層からなるように構成されており、当該中間層は、例えば、ポリイミドによって形成された薄層からなるか、あるいはステンレス又はニッケルによって形成された金属製の薄層からなるように構成されている。
【0034】
さらに、この実施の形態では、上記弾性層は、所定の厚さを有するシリコーンゴムの層からなるように構成されている。
【0035】
又、この実施の形態では、弾性層を有すると共に発熱手段を有し、所定の角速度で回転駆動される加熱ローラと、複数のローラによって張架されると共に該加熱ローラの周面の一部に対して巻き付くように配設され、搬送されてきた記録シートを該加熱ローラと相俟って挟み込むためのニップ領域を形成する無端状の定着ベルトと、かかるニップ領域の終端部で該定着ベルトを介して加熱ローラに圧接し、該加熱ローラの弾性層を変形させる加圧ローラと、この加圧ローラよりも該ニップ領域の始端部側で定着ベルトを介して加熱ローラに圧接する補助加圧部材とから構成された定着装置において、前記加熱ローラが、芯金部材の表面側に被覆される弾性層と、当該弾性層の表面側に被覆される湾曲可能な中間層と、表面に被覆される離型層を備えるように構成されている。
【0036】
先ず、上記加熱ローラ2は、図1に示すように、芯金部材としての金属製コア10の周囲を弾性層11で被覆すると共に、かかるコア10の内部に出力850Wのハロゲンランプ3を収容したもので、外径が95mm、軸長が400mmに形成されており、上記コア10としては、外径87mm、内径81mmのアルミニウム製円筒体が用いられている。なお、上記金属製コア10としては、ステンレス製など他の材質からなるものを使用しても勿論良い。上記弾性層11は、耐熱性を備えた弾性材料からなり、当該弾性層11としては、ゴム硬度17°(JIS−A)で、厚さ3.9mmのHTVシリコーンゴムが用いられている。
【0037】
また、上記弾性層11の表面には、湾曲可能な中間層12が被覆されており、当該中間層12は、弾性層11の変形に伴ってフレキシブルに湾曲可能であるとともに、弾性を有しない(荷重を加えた際にほとんど伸張しない)非弾性体からなる層である。この中間層12としては、厚さ70μmのポリイミド樹脂からなる層が用いられているが、当該中間層12は、厚さが薄い方がフレキシブルに湾曲可能であるため望ましい。さらに、上記中間層12としては、厚さが50〜100μm程度のステンレスやニッケル等の金属からなる薄層を用いても良い。
【0038】
さらに、上記中間層12の表面には、溶融したトナーの付着を防止するための離型層として、厚さ30μmのPFA層13が被覆されており、加熱ローラ2の周面は、PFA層13によって鏡面に近い表面状態に保たれている。また、この加熱ローラ2には、図示外の駆動モータが接続されており、所定の回転速度(例えば、約450mm/sec)で回転駆動されるようになっている。
【0039】
なお、上記中間層12とPFA層13との間には、画質を向上させるため、図2に示すように、第2の弾性層11bとして、厚さ100μm程度のシリコーンゴム層を被覆しても良い。
【0040】
この加熱ローラ2の表面温度は、常に温度センサ14によって検出されており、かかる検出温度に基づいて上記ハロゲンランプ3の点灯を制御することで、加熱ローラ2の表面温度を常に比較的低い定着温度である約130℃に維持し得るようになっている。また、加熱ローラ2の周面には、オイル供給装置15によって粘度300cstのジメチルシリコンオイル16が均一に塗布されるようになっており、上記ニップ領域5において加熱され溶融したトナー8が加熱ローラ2の表面に付着するのを可及的に防止するように構成されている。
【0041】
一方、上記定着ベルト6は、厚さ70μm、幅300mm、周長188mmのポリイミドフィルムの表面に、離型層として厚さ30μmのPFA層を被覆したものであり、上記加圧ローラ7を含む外径10mmの3本のアルミニウム製ローラ7,21,22に対して40Nの張力で架け回されると共に、加熱ローラ2の回動に連れ回されて自在に回転するように構成されている。各ローラ7,21,22は、中央部の外径が両端部の外径よりも僅かに大きな樽型に形成されている。このように各ローラ7,21,22を樽型に形成すると、定着ベルト6の張力によって各ローラに撓みが生じても、かかる定着ベルト6の周面は波打つことなく平坦となり、該定着ベルト6を円滑に走行させることが可能となる。
【0042】
なお、上記3本のアルミニウム製ローラ7,21,22のうち、例えば、ニップ領域5の上流側に位置するローラ21には、図示しない発熱手段としてのハロゲンランプが内蔵されており、定着ベルト6の温度が約100℃に加熱されるように構成されている。
【0043】
この定着ベルト6は、加熱ローラ2の中心角度45°に相当する長さだけ該加熱ローラ2に対して巻き付いており、このときの記録用紙4の搬送方向に沿ったニップ領域5の長さを実測したところ、比較的長い約50mmであって、定着温度を低目に設定した場合であっても、フルカラーのトナー像8に対して、良好な定着性を得ることが可能となっている。
【0044】
また、上記定着ベルト6が架け回された加圧ローラ7は、コイルスプリング71によって加熱ローラ2の中心へ向け付勢されている。上記コイルスプリング71の付勢力は約50kgf(500N)に設定されており、これによって加圧ローラ2が当接した加熱ローラ2の弾性層11にはその内径に向かう歪みが生じている。このとき、上記加圧ローラ7が形成するニップ幅は、約5mm、ニップ圧力は、約2.5kgf/cm2 に設定されている。
【0045】
一方、上記補助加圧パッド9は、加圧ロール7よりもニップ領域5の始端部側に隣接して配設され、定着ベルト6の加熱ローラ2に対する圧接力を向上させるべく、かかる定着ベルト6の裏面側から加熱ローラ2に圧接している。この補助加圧パッド9は、ステンレス製の基材91の上に厚さ3mm、ゴム硬度20°(JIS−A)のシリコーンゴムからなる弾性層92を設けたものであり、やはりコイルスプリング93によって加熱ローラ2の中心に向け約120kgf(1200N)の力で付勢されている。また、補助加圧パッド9の弾性層92が定着ベルト6との摺接によって摩耗するのを防止するため、かかる補助加圧パッド9の摺接面は、テフロン(登録商標)シート等の摩擦係数の低い樹脂シート94によって被覆されている。上記補助加圧パッド9が形成するニップ幅は、ニップ領域5の4/5程度を占めるように、実測約40mmと十分なニップ領域5が確保されており、ニップ圧力は、約0.075N/mm2 と低く設定されている。
【0046】
また、この補助加圧パッド9は、その側面が隣接する加圧ローラ7に対して摺接するように配置されている。尚、加圧ロール7と摺接する補助加圧パッド9の側面も摩擦係数の低い樹脂シート94によって被覆されている。
【0047】
そして、以上のように構成された本実施の形態に係る定着装置1においては、上記加熱ローラ2と定着ベルト6との圧接によって形成されたニップ領域5に対して記録用紙4を挿通させると、かかる記録用紙4に担持されていたフルカラーの未定着トナー像8が加熱・加圧されて記録用紙4に定着され、更にかかるニップ領域5の終端部で上記加圧ロール7を加熱ローラ2に圧接させたことによる十分な定着作用によって、良好な定着性能を得ることが可能となっている。なお、上記定着装置1では、良好な剥離性能が得られ、記録用紙4の剥離不良が問題となることはないが、剥離爪等の強制的な剥離手段を補助的に用いても良い。
【0048】
ところで、上記定着装置1のように、表面側にシリコーンゴムなどからなる弾性層11を持った加熱ローラ2に、加圧ローラ7や補助加圧パッド9を圧接させると、図3に示すように、当該加圧ローラ7等の圧力によって弾性層11が変形し、当該弾性層11に歪みが発生する。このとき、上記加熱ローラ2を一定の角速度で回転駆動し、図1に示すように、その間に記録用紙4などを通紙すると、図3に示すように、その歪みの大きさに比例して記録用紙4のスピードが速くなる。これは、加熱ローラ2の弾性層11が加圧ローラ7や補助加圧パッド9の加圧により変形して、その部分の断面積が小さくなり、一定の角速度で移動しているゴム(弾性層11)の体積が、この断面積の小さくなった狭い部分を一定時間内に通り抜けるために、その部分での移動スピードが速くなるためであり、記録用紙4は、この弾性層11の表面のスピードとほぼ同じスピードで搬送され、スピードの増加が起こる。
【0049】
上記のような表面側に弾性層11を持つ加熱ローラ2が、図1に示すように、ベルトニップタイプの定着装置1に使用されると、図5に示すようなニップ領域5の出口部での加圧ローラ7による圧力によって、加熱ローラ2の弾性層11は歪み、記録用紙4のスピードが速くなる。このスピードが補助加圧パッド9の部分でも同様なスピードであると、記録用紙4と加熱ローラ2表面のスピードとが異なり、背景技術において既に説明したように、記録用紙3上のトナー画像8が擦れて画像ずれが発生することになる。
【0050】
そこで、これを防止するためには、補助加圧パッド9の部分における記録用紙4のスピードを、加熱ローラ2表面のスピードと一致させる必要がある。これを実現するには、約0.075N/mm2 程度の低い圧力で加圧される補助加圧パッド9によって、加熱ローラ2の弾性層11を歪ませること無く加圧し、記録用紙4と加熱ローラ2の表面とを密着させることにより、加圧ローラ7の部分で速くなった記録用紙4のスピードを遅くし、補助加圧パッド9の部分での記録用紙4のスピードを、加熱ローラ2表面と一致させることができる。
【0051】
しかしながら、そのままでは、背景技術において既に説明したように、記録用紙4は、加圧ローラ7の部分と補助加圧パッド9の部分とのスピードの差によって引っ張られるために、伸びが発生してしまう。この記録用紙4の伸びは、図6に示すように、加圧ローラ7の荷重を一定とすると、補助加圧パッド9の荷重が増加するに従って増加する傾向にある。
【0052】
さらに、上記定着装置1において、そのままでは、定着温度を低下させるために、補助加圧パッド9のニップ領域5の幅を、約40mmと増加させた場合も、定着不良を防ぐためには、所定以上の圧力が必要となるため、圧力を低下させることができず、補助加圧パッド9の荷重が増加し、記録用紙4の伸びが悪化するために、パッドニップ幅を増加させることができないことになる。
【0053】
そこで、本実施の形態に係る定着ローラとしての加熱ローラでは、加圧されて下層の弾性層11であるシリコーンゴム層が変形しても、その上部に被覆されている中間層12としてのポリイミドが非弾性体であるために、弾性変形歪みが発生せず、これによってニップ領域5の内部で、図7に示すように、加熱ローラ2表面のスピード変動が起こらず、記録用紙4に伸びが発生するのを防止することが可能となる。
【0054】
このように、上記実施の形態に係る定着ローラを用いた定着装置1では、加熱ローラ2の弾性層11が歪むことに起因して、記録用紙4に伸びや波打ち等が発生するのを防止することができ、ニップ領域5を長尺化した場合であっても、記録用紙4の伸びが悪化するのを回避することができ、高画質な定着画像を得ることが可能となっている。
【0055】
実施の形態2
図9はこの発明の実施の形態2を示すものであり、前記実施の形態1と同一の部分には同一の符号を付して説明すると、少なくとも一方が発熱手段を有し、回転可能に配設された一対の定着ローラを互いに圧接させることにより、搬送されてきた記録シートを挟み込むためのニップ領域を形成するように構成された定着装置において、前記一対の定着ローラのうち、少なくとも一方の定着ローラが、芯金部材の表面側に被覆される弾性層と、当該弾性層の表面側に被覆される湾曲可能な中間層と、表面に被覆される離型層を備えるように構成されている。
【0056】
すなわち、この実施の形態2に係る定着装置1は、図9に示すように、回転可能に配設された一対の加熱ローラ2と加圧ローラ30を互いに圧接させることにより、搬送されてきた記録シート4を挟み込むためのニップ領域5を形成するように構成されており、加熱ローラ2と加圧ローラ30の内部には、双方とも、発熱手段としてのハロゲンランプ3、31とが配設されている。なお、上記加熱ローラ2の内部にのみ発熱手段を設けるように構成しても良い。また、加熱ローラ2と加圧ローラ30とは、その表面の設定温度に差を設け、加熱ローラ2を加圧ローラ30よりも高く設定しても良い。
【0057】
ところで、この実施の形態2に係る加熱ローラ2は、図9に示すように、芯金部材としての金属製コア10と、弾性層11と、中間層12と、離型層13とを備えるように構成されている。また、加圧ローラ30は、芯金部材としての金属製コア32と、弾性層33と、離型層34とを備えるように構成されている。
【0058】
従来の表面に中間層のない定着ローラを2本使用して、これら2本の定着ローラを互いに圧接して回転し、その間に記録用紙を通紙した場合には、図4に示したものと同様に、その圧接荷重に比例して定着ローラの歪みは増加する。ただし、このときニップ領域内の歪みは、ニップ領域5の出口からニップ領域5の入口まで均一でなく、図10に示すように、ニップ領域5の中央部が最も大きな歪み量を示すようになっている。
【0059】
これは、ニップ領域5の入口から中央部にかけて圧接されるために、弾性層12を構成するゴムの断面積が減少し、それに伴い弾性層12を構成するゴムが移動するスピードが図11に示すように増すためである。つまり、加熱ローラ2のニップ領域5の入口から中央部のかけて、記録用紙4は、徐々に加熱ローラ2表面の歪みに従ってスピードが増加し、ニップ領域5の入口部と中央部でスピードに差が発生し、記録用紙4が伸びることになる。また、ニップ領域5の中央部から出口部にかけて記録用紙4は、加熱ローラ2表面の歪みが減少するためにスピードが減少するが、一度伸びた記録用紙4は、再度縮めても繊維自体が伸びているため、元の状態にはもどらず伸びたままの状態となる。
【0060】
これに対して、本発明の定着ローラとしての加熱ローラ2では、表面側に中間層12があるため、加熱ローラ2を定着ローラ30に圧接させ加圧しても、図10に示すような歪みが発生せず、記録用紙4に伸びが発生するのを防止することができる。
【0061】
このように、上記実施の形態2に係る定着ローラを用いた定着装置1でも、加熱ローラ2の弾性層11が歪むことに起因して、記録用紙4に伸びや波打ち等が発生するのを防止することができ、高画質な定着画像を得ることが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1はこの発明の実施の形態1に係る定着ローラを適用した定着装置を示す構成図である。
【図2】図2はこの発明の実施の形態1に係る定着ローラの他の態様を示す構成図である。
【図3】図3は加熱ローラの圧力と歪みとの関係を示すグラフである。
【図4】図4は加熱ローラの歪みと用紙スピードの関係を示すグラフである。
【図5】図5は加熱ローラの圧力分布と用紙スピードの関係を示すグラフである。
【図6】図6はパッド荷重と用紙の伸びの関係を示すグラフである。
【図7】図7は加熱ローラの歪みと用紙スピードの関係を示すグラフである。
【図8】図8はニップ入口からの距離と加熱ローラの歪みの関係を示すグラフである。
【図9】図9はこの発明の実施の形態2に係る定着ローラを適用した定着装置を示す構成図である。
【図10】図10はニップ入口からの距離と加熱ローラの歪みの関係を示すグラフである。
【図11】図11は従来の定着ローラの歪みを示す模式図である。
【図12】図12は従来の定着ローラにおけるニップ入口からの距離と歪みを示すグラフである。
【符号の説明】
【0063】
2:加熱ローラ、10:金属製コア、11:弾性層、12:中間層、13:離型層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着装置に用いられる定着ローラにおいて、芯金部材の表面側に被覆される弾性層と、当該弾性層の表面側に被覆される弾性層よりも弾性の高い中間層を備えたことを特徴とする定着ローラ。
【請求項2】
定着装置に用いられる定着ローラにおいて、芯金部材の表面側に被覆される弾性層と、当該弾性層の表面側に被覆される弾性層よりも弾性の高い中間層と、表面に被覆される離型層を備えたことを特徴とする定着ローラ。
【請求項3】
上記中間層は、弾性層よりも弾性の高い合成樹脂、又は金属製の薄層からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着ローラ。
【請求項4】
上記中間層は、ポリイミドによって形成された薄層からなることを特徴とする請求項3に記載の定着ローラ。
【請求項5】
上記中間層は、ステンレス又はニッケルによって形成された金属製の薄層からなることを特徴とする請求項3に記載の定着ローラ。
【請求項6】
上記弾性層は、所定の厚さを有するシリコンゴムの層からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の定着ローラ。
【請求項7】
弾性層を有すると共に発熱手段を有し、所定の角速度で回転駆動される加熱ローラと、加熱ローラの周面の一部に対して巻き付くように配設され、搬送されてきた記録シートを該加熱ローラと相俟って挟み込むためのニップ領域を形成する無端状の定着ベルトと、かかるニップ領域の終端部で該定着ベルトを介して加熱ローラに圧接し、該加熱ローラの弾性層を変形させる加圧部材と、この加圧部材よりも該ニップ領域の始端部側で定着ベルトを介して加熱ローラに圧接する補助加圧部材とから構成された定着装置において、
前記加熱ローラが、前記請求項1乃至6のいずれかに記載の定着ローラからなることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
少なくとも一方が発熱手段を有し、回転可能に配設された一対の定着ローラを互いに圧接させることにより、搬送されてきた記録シートを挟み込むためのニップ領域を形成するように構成された定着装置において、
前記一対の定着ローラのうち、少なくとも一方の定着ローラが、前記請求項1乃至6のいずれかに記載の定着ローラからなることを特徴とする定着装置。
【請求項1】
定着装置に用いられる定着ローラにおいて、芯金部材の表面側に被覆される弾性層と、当該弾性層の表面側に被覆される弾性層よりも弾性の高い中間層を備えたことを特徴とする定着ローラ。
【請求項2】
定着装置に用いられる定着ローラにおいて、芯金部材の表面側に被覆される弾性層と、当該弾性層の表面側に被覆される弾性層よりも弾性の高い中間層と、表面に被覆される離型層を備えたことを特徴とする定着ローラ。
【請求項3】
上記中間層は、弾性層よりも弾性の高い合成樹脂、又は金属製の薄層からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着ローラ。
【請求項4】
上記中間層は、ポリイミドによって形成された薄層からなることを特徴とする請求項3に記載の定着ローラ。
【請求項5】
上記中間層は、ステンレス又はニッケルによって形成された金属製の薄層からなることを特徴とする請求項3に記載の定着ローラ。
【請求項6】
上記弾性層は、所定の厚さを有するシリコンゴムの層からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の定着ローラ。
【請求項7】
弾性層を有すると共に発熱手段を有し、所定の角速度で回転駆動される加熱ローラと、加熱ローラの周面の一部に対して巻き付くように配設され、搬送されてきた記録シートを該加熱ローラと相俟って挟み込むためのニップ領域を形成する無端状の定着ベルトと、かかるニップ領域の終端部で該定着ベルトを介して加熱ローラに圧接し、該加熱ローラの弾性層を変形させる加圧部材と、この加圧部材よりも該ニップ領域の始端部側で定着ベルトを介して加熱ローラに圧接する補助加圧部材とから構成された定着装置において、
前記加熱ローラが、前記請求項1乃至6のいずれかに記載の定着ローラからなることを特徴とする定着装置。
【請求項8】
少なくとも一方が発熱手段を有し、回転可能に配設された一対の定着ローラを互いに圧接させることにより、搬送されてきた記録シートを挟み込むためのニップ領域を形成するように構成された定着装置において、
前記一対の定着ローラのうち、少なくとも一方の定着ローラが、前記請求項1乃至6のいずれかに記載の定着ローラからなることを特徴とする定着装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−84981(P2006−84981A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271621(P2004−271621)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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