説明

定着ロール又は定着ベルト用熱硬化型液状シリコーンゴム組成物、並びに定着ロール及び定着ベルト

【課題】 熱伝導性に優れると共に、流動性に優れ、ゴム層が薄くても気泡の巻き込みが少なく、表面に流動すじのような模様が生じない均質な定着ロール及び定着ベルトのシリコーンゴム層となり得る熱硬化型液状シリコーンゴム組成物、及びこの組成物を用いて形成された定着ロール及び定着ベルトを提供する。
【解決手段】 25℃における粘度が10〜200Pa・sであり、チキソ係数が1.4以下である定着ロール又は定着ベルト用熱硬化型液状シリコーンゴム組成物、及びこの組成物を用いて形成された定着ロール及び定着ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着ロール又は定着ベルト用熱硬化型液状シリコーンゴム組成物、並びにこの硬化物を用いた定着ロール及び定着ベルトに関し、詳しくは、高熱伝導性を有すると共に、成形性に優れるシリコーンゴムを得ることができる熱硬化型の液状シリコーンゴム組成物、並びにこの組成物の硬化物であるシリコーンゴム層を芯金又は基板の外周面上に形成した定着ロール及び定着ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、電気絶縁性、耐熱性、耐候性、難燃性に優れており、複写機やレーザービームプリンターのヒーターロールや加圧ロールなどの定着ロールの被覆材として用いられてきた。最近では、コピーの高速化、カラーコピーの普及に伴い、定着ロールにも低硬度化が求められ、従来のタイプのものでは対応しきれなくなり、芯金にシリコーンゴムを被覆し、シリコーンゴムの上に更にフッ素樹脂を被覆したタイプのものが多く採用されている。一方、温度上昇までの待ち時間の短縮や、プリンターのコンパクト化に対応するなどのために、ゴム層の厚さはより薄くなる方向にある。また、従来の芯金にゴム層を被覆したロールではなく、より薄い金属や耐熱性の樹脂を無端ベルト状にした上にゴム層や離型層を被覆する定着ベルトタイプも使用されている。
【0003】
一方、ゴム材料を定着ロールや定着ベルトに用いる場合には、機械立ち上げ時の待ち時間を短くするため、又は機械自体の省エネルギーの観点から、高熱伝導性であることが要求され、この場合も、特に最近では、熱伝導性だけでなく、装置の小型化、省エネなどの観点から定着ロールのゴム層は薄くなり、一方でロールに替わり、よりゴム層が薄い定着ベルトが使用され始めている。
【0004】
しかしながら、シリコーンゴムは、基材ゴム自体の熱伝導性は高くないため、高熱伝導性を付与するために、熱伝導性を有するフィラーを添加する方法が一般的に行われてきた。これら熱伝導性を付与した液状のシリコーンゴム組成物は、このようなフィラーを添加した定着ロール用シリコーンゴムとして、種々の提案がなされてきた(例えば、特許文献1〜5参照)。これらは、従来から用いられてきたシリコーンゴムに熱伝導性フィラーとして、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウムなどを配合したものであるが、高い熱伝導性を得るために、これらの熱伝導性フィラーを高充填にすると、材料の粘度が上昇してしまうだけでなく流動性を失い、成形時に泡を巻き込んだり、筋状の模様ができてしまうなどの問題が生じてしまう。特にゴム層が薄い定着ロールや定着ベルトを製造する際には、容易に回避できない問題であった。
【0005】
【特許文献1】特開平9−12893号公報
【特許文献2】特開平10−39666号公報
【特許文献3】特開平11−116806号公報
【特許文献4】特開平11−158377号公報
【特許文献5】特開2002−72728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、熱伝導性に優れると共に、流動性に優れ、ゴム層が薄くても気泡の巻き込みが少なく、表面に流動すじのような模様が生じない均質な定着ロール及び定着ベルトのシリコーンゴム層となり得る熱硬化型液状シリコーンゴム組成物、並びにこの組成物を用いて形成された定着ロール及び定着ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、25℃における粘度が10〜200Pa・sであり、チキソ係数が1.4以下である熱硬化型液状シリコーンゴム組成物を用いることにより、ゴム層が薄くても気泡の巻き込みが少なく、表面に流動すじのような模様が生じない均質なシリコーンゴム層を有する定着ロール及び定着ベルトが得られることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
従って、本発明は、下記に示す定着ロール又は定着ベルト用熱硬化型液状シリコーンゴム組成物、並びに定着ロール及び定着ベルトを提供する。
〔1〕25℃における粘度が10〜200Pa・sであり、チキソ係数が1.4以下であることを特徴とする定着ロール又は定着ベルト用熱硬化型液状シリコーンゴム組成物。
〔2〕硬化物の熱伝導率が0.4W/(m・k)以上である〔1〕記載の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物。
〔3〕ディスクレオメータによる硬化性測定で、150℃において3分経過時のトルク値を100%とした時の50%トルクに達する時間(T50)が10秒〜90秒である〔1〕又は〔2〕記載の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物。
〔4〕熱硬化型液状シリコーンゴム組成物が、
(A)1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有し、25℃での粘度が100,000mPa・s以下である液状オルガノポリシロキサン:100質量部
(B)1分子中に少なくとも珪素原子と結合する水素原子を2個含有し、25℃での粘度が1,000mPa・s以下である液状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜30質量部
(C)1分子中に少なくとも1個の珪素原子に結合するアルコキシ基を有する、オルガノシラン及び/又はオルガノポリシロキサン:0〜30質量部
(D)熱伝導性無機粉体:50〜1,000質量部
(E)付加反応触媒:触媒量
を含有するものである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物。
〔5〕(D)熱伝導性無機粉体が、石英粉、酸化亜鉛又はアルミナであることを特徴とする〔4〕記載の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物。
〔6〕芯金の外周面にシリコーンゴム層が形成されてなる定着ロールであって、該シリコーンゴム層を形成するシリコーンゴムが〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする定着ロール。
〔7〕芯金の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層もしくはフッ素ゴム層が形成されてなる定着ロールであって、該シリコーンゴム層を形成するシリコーンゴムが〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする定着ロール。
〔8〕シリコーンゴム層の厚さが2mm以下である〔6〕又は〔7〕に記載の定着ロール。
〔9〕耐熱性樹脂又は金属からなる基板の外周面上にシリコーンゴム層が形成されてなる定着ベルトであって、該シリコーンゴム層を形成するシリコーンゴムが〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする定着ベルト。
〔10〕耐熱性樹脂又は金属からなる基板の外周面上にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層もしくはフッ素ゴム層が形成されてなる定着ベルトであって、該シリコーンゴム層を形成するシリコーンゴムが〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする定着ベルト。
〔11〕シリコーンゴム層の厚さが1mm以下である〔9〕又は〔10〕に記載の定着ベルト。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱伝導性に優れると共に、ゴム層が薄くても気泡の巻き込みが少なく、表面に流動すじのような模様が生じない均質なシリコーンゴム層を有する定着ロール及び定着ベルトが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の定着ロール又は定着ベルト用熱硬化型液状シリコーンゴム組成物は、25℃における粘度が10〜200Pa・sのものであり、かつチキソ係数が1.4以下のものである。
【0011】
組成物の25℃における粘度は、BH型粘度計、ローター7番による20rpmの測定で10〜200Pa・sの範囲であり、好ましくは20〜200Pa・sの範囲であり、より好ましくは20〜150Pa・sの範囲である。25℃における粘度が10Pa・s未満であるとゴム硬化物が脆くなり、ロールやベルトとしての耐久性が不十分であり、200Pa・sを超えるとチキソ係数が1.4以下であってもロールやベルトの成形が困難である。
【0012】
ここで、チキソ性は、同型粘度計の同じローターを用いて、2種の異なる回転数で測定することにより求められるが、測定条件による混乱を避けるため、次のように定義する。
BH型粘度計、ローター7番、20rpmでの測定値が、50〜200Pa・sの場合、BH型粘度計、ローター7番、20rpmでの測定値をαとし、BH型粘度計、ローター7番、10rpmでの測定値をβとした時、β/αより算出される。
BH型粘度計、ローター7番、20rpmでの測定値が、10Pa・s以上50Pa・s未満の場合、BH型粘度計、ローター6番、20rpmでの測定値をγとし、BH型粘度計、ローター6番、10rpmでの測定値をδとした時、δ/γより算出される。
【0013】
これにより求められたチキソ係数(β/α又はδ/γ)が、1.4以下(即ち、1.0〜1.4)、好ましくは1.05以上1.35以下の液状材料であると、成形性が良好である。チキソ係数が1.05未満の場合、流動性が良すぎて短時間で材料が分離してしまい、比重・硬度が不均一な硬化ゴム層になってしまう場合がある。また、1.4を超えるとレベリング性が低下して気泡の巻き込みやシリコーンゴム硬化物表面に筋状の模様ができてしまうなどの問題がある。
【0014】
特に、本発明の組成物は、その硬化物の熱伝導率が0.4W/(m・k)以上であることが好ましく、このような高熱伝導材料においては、高熱伝導性の無機粉体を多量に配合する必要があるため粘度が上昇してしまうことから、チキソ係数が低い材料を使用することは重要である。なお、従来のこの種の定着ロール又は定着ベルト用熱硬化性液状シリコーンゴム組成物は、熱伝導度が0.4W/(m・k)以上の場合、チキソ係数は通常1.5〜2.0である。
【0015】
また、硬化性については、早すぎると巻き込んだ泡が抜ける前に硬化してしまったり、材料注入時に分離したシリコーンと無機充填材が、再び十分な分散ができずに筋模様として硬化後も残ってしまうなどの問題が生じてしまう場合がある。一方、遅すぎると、硬化が不均一になってしまったり、生産性が悪く、コスト高になってしまうなどの問題が発生してしまう場合がある。このような問題を解消できる適切な材料の硬化時間は、ディスクレオメータによる硬化性測定で、150℃において3分経過時のトルクを100%とした時の50%トルクに達する時間(T50)が10秒〜90秒であることが好ましく、より好ましくは20秒〜75秒である。
【0016】
硬化前の組成物の25℃における粘度が10〜200Pa・s、チキソ係数が1.4以下で、更に好ましくは150℃での硬化時間(T50)が10〜90秒の範囲であれば、材料を型内に流し込む際に、エアーの巻き込みが少なく、また巻き込んだ場合でも、硬化する前に脱泡することが可能である。あるいは、芯金上にコーティングする場合でも、コーティング痕ができにくく、またコーティング痕ができてしまった場合でも、硬化前に解消することが可能である。
【0017】
このような熱硬化型液状シリコーンゴム組成物としては、付加硬化タイプのものが好適であり、特に高熱伝導性の組成物として、
(A)1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有し、25℃での粘度が100,000mPa・s以下である液状オルガノポリシロキサン:100質量部
(B)1分子中に少なくとも珪素原子と結合する水素原子を2個含有し、25℃での粘度が1,000mPa・s以下である液状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜30質量部
(C)1分子中に少なくとも1個の珪素原子に結合するアルコキシ基を有するオルガノシラン及び/又はオルガノポリシロキサン:0〜30質量部
(D)熱伝導性無機粉体:50〜1,000質量部
(E)付加反応触媒:触媒量
を主成分とするものが最適である。
【0018】
ここで、(A)成分の液状オルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を有し、25℃での粘度が100,000mPa・s以下、好ましくは100〜50,000mPa・sのものである。ここで、25℃における粘度が100,000mPa・sを超えると最終的に組成物の粘度が高すぎて成形性が悪くなってしまう場合がある。
【0019】
上記オルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(1)
aSiO(4-a)/2 (1)
(式中、Rは互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換1価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
で示され、Rとして、1分子中に少なくとも2個(通常2〜50個、好ましくは2〜20個程度)のアルケニル基(炭素原子数が好ましくは2〜8、特に好ましくは2〜6)を有するものが挙げられる。
【0020】
このアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等が挙げられるが、特にビニル基が好ましい。
【0021】
また、上記アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中1.0×10-6〜5.0×10-3mol/g、特に5.0×10-6〜1.0×10-3mol/gであることが好ましい。アルケニル基の含有量が1.0×10-6mol/gより少ないと架橋が不十分でゲル状になってしまうおそれがあり、また5.0×10-3mol/gより多いと架橋密度が高くなりすぎて、脆いゴムとなってしまうおそれがある。なお、上記アルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖途中の珪素原子に結合していても、両者に結合していてもよい。
【0022】
一方、上記Rで示される非置換又は置換1価炭化水素基のうち、アルケニル基以外のものとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられる。なお、全R中の90%以上がメチル基であることが好ましい。
【0023】
また、上記オルガノポリシロキサンの構造は、基本的には主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状構造を有するものが好ましいが、部分的には分岐状の構造、環状構造などであってもよく、1分子中の珪素原子の数(又は重合度)は50〜1,200個、特に100〜800個程度の室温(25℃)で液状のものが好適に用いられる。
【0024】
(B)成分の液状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に少なくとも珪素原子と結合する水素原子(Si−H基)を2個含有し、25℃での粘度が1,000mPa・s以下(通常、0.1〜1,000mPa・s、好ましくは0.5〜500mPa・s程度)のものである。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子中のSi−H基と前記(A)成分中のオルガノポリシロキサンの珪素原子に結合したアルケニル基とが、ヒドロシリル付加反応により架橋することにより組成物を硬化させるための硬化剤として作用するものである。
【0025】
(B)成分の上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、例えば、下記平均組成式(2)
R’bcSiO{4-(b+c)}/2 (2)
(式中、R’は互いに同一又は異種の炭素原子数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換1価炭化水素基であり、b,cは、b=0.7〜2.1、好ましくは0.8〜2.0、c=0.001〜1.0、好ましくは0.01〜1.0、かつb+c=0.8〜3.0、好ましくは1.0〜2.5を満足する正数である。)
で示され、1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上(通常、3〜300個)、より好ましくは3〜100個の珪素原子に結合した水素原子(Si−H基)を有するものが挙げられる。
【0026】
ここで、R’の非置換又は置換1価炭化水素基としては、上記平均組成式(1)のRとして例示したものと同様のものを挙げることができるが、脂肪族不飽和基を有しないものが好ましい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状等いずれの構造であってもよく、1分子中の珪素原子の数(又は重合度)は2〜300個、特に4〜150個程度の室温(25℃)で液状のものが好適に用いられる。なお、珪素原子に結合する水素原子は分子鎖末端、分子鎖の途中のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。
【0027】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしてより具体的には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。
【0028】
(B)成分の液状オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、25℃での粘度が1,000mPa・s以下、通常、0.1〜1,000mPa・s、好ましくは0.5〜500mPa・sのものである。25℃における粘度が1,000mPa・sを超えるものは製造が困難となる場合がある。
【0029】
なお、上記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部、好ましくは0.3〜20質量部である。配合量が0.1質量部未満では架橋が不十分となり、シリコーンゴム硬化物の強度が劣る場合があり、30質量部を超えると同様にゴム強度が低下してしまう場合がある。
なお、同様の理由により、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分中の珪素原子結合アルケニル基に対する(B)成分中のSi−H基がモル比で0.5〜5、好ましくは0.8〜3程度となるように配合してもよい。
【0030】
(C)成分は、1分子中に少なくとも1個の珪素原子に結合するアルコキシ基を有するオルガノシラン及び/又はオルガノポリシロキサンであり、オルガノシランとしては、例えば、下記一般式(3)で表されるものを用いることができる。
1dSiXe (3)
【0031】
ここで、上記式中のdは1〜3の整数、eは1〜3の整数、好ましくは2又は3でd+e=4である。R1は炭素数1〜20、特に1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基、エポキシ基、グリシドキシ基、(メタ)アクリロキシ基、アミノ基、β−アミノエチル置換アミノ基、メルカプト基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基、シアノエチル基、γ−(メタ)アクリロキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、γ−グリシドキシプロピル基、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピル基、γ−アミノプロピル基、γ−メルカプトプロピル基などが挙げられる。dが2以上の時、R1は同一であっても異なってもよい。Xは、アルコキシ基で、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基などが挙げられる。eが2以上の時、Xは同一であっても異なってもよい。
【0032】
また、1分子中に少なくとも1個の珪素原子に結合するアルコキシ基を有するオルガノポリシロキサンとしては、例えば、上記したオルガノアルコキシシランの部分加水分解縮合物(即ち、分子中に少なくとも1個、好ましくは2個以上の残存アルコキシ基を有するオルガノポリシロキサン)や、下記平均組成式(4)で表されるものを用いることができる。
1fgSiO{4-(f+g)}/2 (4)
(式中、R1,Xは上記R1,Xで例示したものと同様のものが例示され、f,gは、f=1.0〜2.8、好ましくは1.4〜2.5、g=0.01〜0.5、好ましくは0.02〜0.3、かつf+g=1.5〜3、好ましくは1.8〜2.5を満足する正数である。)
【0033】
上記オルガノポリシロキサンは、1分子中に少なくとも1個、好ましくは1〜8個、より好ましくは2〜6個の珪素原子に結合するアルコキシ基を有することが好ましく、また、このオルガノポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網目状等いずれの構造であってもよく、1分子中の珪素原子の数(又は重合度)は2〜100個、特に5〜50個のものが好適に用いられる。なお、珪素原子に結合するアルコキシ基は分子鎖末端、分子鎖の途中のいずれに位置していてもよく、両方に位置するものであってもよい。
【0034】
(C)成分の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0〜30質量部、特に1〜20質量部であることが好ましい。配合量が30質量部を超えると硬化物のゴム物性が低下してしまう場合がある。
【0035】
(D)成分の熱伝導性無機粉体としては、熱伝導性を有する各種充填剤を使用することができる。具体的には、石英粉、珪藻土、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭化珪素、窒化珪素、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などが挙げられ、特に、石英粉、酸化亜鉛、アルミナが好適に用いられる。
【0036】
このような熱伝導性無機粉体としては、その平均粒子径が0.1〜50μm、特に0.5〜40μmであるものを使用することが好ましい。平均粒子径が0.1μm未満の粒子では、製造が困難であると共に、多量に配合するのが困難となる場合があり、50μmを超える粒子では、ゴム硬化物の機械的強度が損なわれる場合があるだけでなく、ロールとしての表面性能等に問題が生じてしまうおそれがある。なお、上記平均粒子径は、例えばレーザー光回折法等の分析手段を使用した粒度分布計により、重量平均値(又はメジアン径)等として求めることができる。
【0037】
また、これら熱伝導性無機粉体は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。更に、同種のもの、例えばアルミナでも、平均粒子径、製造方法、純度、表面処理の有無などが異なる2品種以上を併用してもよい。
【0038】
なお、上記(D)成分の熱伝導性無機粉体の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して50〜1,000質量部、好ましくは100〜800質量部である。50質量部未満では、高熱伝導性が得られない場合があり、1,000質量部を超えると配合が困難となるばかりでなく、得られるゴム硬化物のロール被覆材としてのゴム物性も著しく低下させてしまう場合がある。
【0039】
これら熱伝導性無機粉体は、常温でプラネタリーミキサーやニーダーなどの機器を用いて組成物中に混合することができる。また、混合温度は常温でも加熱下でもよいが、上記(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び後述する(E)成分である触媒を添加する前であれば、100〜200℃の高温下で混合することもできる。
【0040】
(E)成分の付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と1価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属系触媒が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量、即ち、組成物を硬化するために必要な量であり、通常、金属量として(A)成分及び(B)成分の合計量に対し、0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppm程度であることが好ましい。
【0041】
上記シリコーンゴム組成物には、必要に応じてシリカヒドロゲル(含水珪酸)、シリカエアロゲル(無水珪酸−煙霧質シリカ)等の補強性シリカ充填剤、クレイ、炭酸カルシウム、二酸化チタン等の充填剤、酸化鉄、酸化セリウム、オクチル酸鉄等の耐熱性向上剤、エチニルシクロヘキサノール、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン等の反応制御剤、接着性や成形加工性を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、難燃性を付与させる窒素化合物、ハロゲン化合物などを本発明の目的を損なわない範囲で適宜添加混合してもよい。
【0042】
本発明の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物の調製方法は特に限定されるものではなく、常法に準じて調製することができる。また、この組成物の成形方法も特に限定されず、公知の方法により行うことができるが、硬化条件としては80〜200℃、特に120〜160℃で、1分〜120分間、特に3分〜60分間(1次硬化)、次いで180〜200℃で、1〜4時間加熱(ポストキュアー)することが好ましい。
【0043】
ここで、本発明の組成物の硬化物の熱伝導率は、0.4W/(m・k)以上、特に0.4〜2.0W/(m・k)であることが好ましい。熱伝導率が0.4W/(m・k)未満であるとロールやベルトに熱が蓄積されてしまい、熱劣化してしまう場合がある。なお、本発明において、熱伝導率は、熱伝導計(例えば、京都電子社製QTM−3等)により測定することができる。
【0044】
本発明の定着ロール及び定着ベルトは、芯金(ロール軸)又は耐熱性樹脂や金属からなるベルト基材に上記シリコーンゴム組成物の硬化物であるシリコーンゴム層を形成したものであるが、この場合、芯金又はベルトの材質、寸法等はロールの種類に応じて適宜選定し得る。また、シリコーンゴム組成物の成形、硬化方法も適宜選定し得、例えば、注入成形、移送成形、射出成形、コーティング等の成形法により成形でき、組成物は上述した加熱条件により硬化できる。
【0045】
この時、シリコーンゴム層の厚さは、特に限定されないが、一般にゴム層の厚さが薄いほど、注入の気泡の巻き込みが多く、コーティング時に筋状等のコーティング痕が生成しやすい。従って、金型に材料注入する定着ロールの場合、厚さが2mm以下、特に1.5mm以下のときに本材料は効果的である。なお、厚さの下限は0.05mm以上、特に0.1mm以上とすることが好ましい。また、金属や耐熱性樹脂製のベルト基材上にバーコート、リングコートなどのコーティングによりゴム層を成形する定着ベルトの場合、厚さが1mm以下、特に0.5mm以下のときに本材料が効果的である。なお、厚さの下限は0.001mm以上、特に0.05mm以上とすることが好ましい。
【0046】
また、上記シリコーンゴム層の外周面上に、更にフッ素樹脂層又はフッ素ゴム層を設けてもよい。この場合、フッ素樹脂層は、フッ素系樹脂コーティング材やフッ素系樹脂チューブなどにより形成できる。フッ素系樹脂コーティング材を用いる場合は、例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)のラテックスや、ダイエルラテックス(ダイキン工業社製、フッ素系ラテックス)等を上記シリコーンゴム層の外周面上に積層すればよい。
【0047】
フッ素系樹脂チューブとしては市販品を使用し得、この場合は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、フッ化エチレン−プロピレン共重合体樹脂(FEP)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリフッ化ビニル樹脂等のチューブを用い、芯金又はベルト基材と上記チューブとの間に前記シリコーンゴム組成物を充填して硬化させる方法によりシリコーン樹脂層を形成することができる。なお、上記シリコーン樹脂層としては、特にPFAチューブを用いたものが好ましい。
【0048】
一方、フッ素ゴムとしては、市販品のフッ素ゴムチューブを使用し得、樹脂チューブの場合と同様の方法で、フッ素ゴム層を形成することができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、以下の例において、部はいずれも質量部である。また、下記例において、平均粒子径はレーザー光回折法による粒度分布測定による累積重量平均値D50(又はメジアン径)として測定した値であり、比表面積はBET法により測定した値である。
【0050】
[実施例1]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度200)100部、補強性シリカ充填剤として比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、R−972)2部、フェニルトリメトキシシラン5部、平均粒子径が4μmのアルミナ40部及び平均粒子径が15μmのアルミナ120部をプラネタリーミキサーに入れ、150℃で2時間撹拌した。
【0051】
冷却後、この混合物を3本ロールにかけて、更に充填剤を分散させた後、再びプラネタリーミキサーに戻し、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度17、Si−H基量0.0060mol/g)を2.5部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05部、白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を添加し、15分撹拌してシリコーンゴム組成物を得た。
【0052】
このシリコーンゴム組成物の25℃での粘度をBH型粘度計、ローター7番で、20rpm及び10rpmで測定し、粘度及びチキソ係数を表1に記した。次に、この材料の150℃での硬化性をディスクレオメーター(東洋精機製)で測定し、T50を表1に記した。
【0053】
また、このシリコーンゴム組成物を用い、120℃で10分間プレスキュアし、更に200℃で4時間オーブンキュアしてシリコーンゴム硬化物サンプルを作製し、熱伝導率を熱伝導計QTM−3(京都電子社製)で測定した結果を表1に示した。
【0054】
次に、このシリコーンゴム組成物を幅250mm、周囲150mm、厚み100μmのプライマー処理をしたポリイミド樹脂薄膜無端ベルト上に、リングコート法により0.4mmの厚さで塗布し、150℃で30分加熱硬化した。また、プライマー処理をした厚み25μmのPFAチューブにシリコーンゴムを積層したポリイミド樹脂薄膜ベルトを挿入し、120℃で60分加熱し、更に200℃で4時間オーブン内でポストキュアして定着ベルトを作製した。ベルトの表面を観察したところ、材料の分離やコーティング痕のような模様は見られず、均一であった。この定着ベルトを電子複写機に装着し、複写を行なったところ、10,000枚通紙しても全く問題はなかった。
【0055】
[実施例2]
両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、側鎖にビニル基(ビニル基含有量0.0001mol/g)を有するジメチルポリシロキサン(重合度500)80部及び両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度200)20部、補強性シリカ充填剤として比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル社製、R−972)2部、下記一般式(I)
【化1】

で示されるアルコキシ基含有シロキサン化合物5部、平均粒子径が12μmの石英粉40部及び平均粒子径が15μmのアルミナ160部をプラネタリーミキサーに入れ、室温(25℃)で1時間撹拌した。
【0056】
この混合物を3本ロールにかけ、更に充填剤を分散させた後、再びプラネタリーミキサーに戻し、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度17、Si−H基量0.0060mol/g)を2.1部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.08部、白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を添加し、15分撹拌してシリコーンゴム組成物を得た。
【0057】
このシリコーンゴム組成物を用い、実施例1と同様の方法で粘度、チキソ係数、硬化性、熱伝導率を測定した結果を表1に示した。
【0058】
次に、内面に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNo.101A/B(信越化学工業社製)を塗付した直径12mm、長さ250mm、厚さ50μmのPFA樹脂チューブの内側に、表面に上記プライマーを塗付した直径10mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトを上記チューブの内面から等距離になる位置に配置して固定し、チューブとシャフトとの間にこのシリコーンゴム組成物を5kgf/cm2で充填し、150℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアして、アルミニウムシャフトの外周面上にシリコーンゴム層が形成され、このシリコーンゴム層の外周面上に、更にフッ素樹脂層が形成された定着ロールを得た。このときのシリコーンゴム層の厚さは1.3mmであった。ロール表面を観察したが、気泡や材料分離による筋模様などは全く見られなかった。この定着ロールを電子写真複写機に装着してA4サイズの複写紙を1万枚連続複写したが、複写された画像はすべて鮮明で、全く問題なかった。
【0059】
[実施例3]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度300)100部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本エアロジル社製、R−972)0.5部、下記一般式(II)
【化2】

で示されるアルコキシ基含有シロキサン化合物8部、平均粒子径が4μmのアルミナ60部、平均粒子径が15μmのアルミナ240部をプラネタリーミキサーに入れ、室温(25℃)で2時間撹拌を行った。この混合物を3本ロールにかけて充填剤の分散を行った後、再びプラネタリーミキサーに戻し、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度17、Si−H量0.0060mol/g)を2.5部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05部、白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を添加し、15分撹拌を続けてシリコーンゴム組成物を得た。
【0060】
このシリコーンゴム組成物を用い、実施例1と同様の方法で粘度、チキソ係数、硬化性、熱伝導率を測定した結果を表1に示した。
【0061】
次に、内面に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNo.101A/B(信越化学工業社製)を塗付した直径11.5mm、長さ250mm、厚さ50μmのPFA樹脂チューブの内側に、表面に上記プライマーを塗付した直径10mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトを上記チューブの内面から等距離になる位置に配置して固定し、チューブとシャフトとの間にこのシリコーンゴム組成物を5kgf/cm2で充填し、150℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアして、アルミニウムシャフトの外周面上にシリコーンゴム層が形成され、このシリコーンゴム層の外周面上に、更にフッ素樹脂層が形成された定着ロールを得た。このときのシリコーンゴム層の厚さは1.0mmであった。ロール表面を観察したが、気泡や材料分離による筋模様などは全く見られなかった。この定着ロールを電子写真複写機に装着してA4サイズの複写紙を1万枚連続複写したが、複写された画像はすべて鮮明で、全く問題なかった。
【0062】
[比較例1]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度300)100部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本エアロジル社製、R−972)0.5部、平均粒子径が4μmのアルミナ60部、平均粒子径が15μmのアルミナ220部をプラネタリーミキサーに入れ、室温(25℃)で2時間撹拌を行った。この混合物を3本ロールにかけて充填剤の分散を行った後、再びプラネタリーミキサーに戻し、両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度17、Si−H量0.0060mol/g)を2.5部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.10部、白金触媒(Pt濃度1%)0.1部を添加し、15分撹拌を続けてシリコーンゴム組成物を得た。
【0063】
このシリコーンゴム組成物を用い、実施例1と同様の方法で粘度、チキソ係数、硬化性、熱伝導率を測定した結果を表1に示した。
【0064】
次に、内面に付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNo.101A/B(信越化学工業社製)を塗付した直径11.5mm、長さ250mm、厚さ50μmのPFA樹脂チューブの内側に、表面に上記プライマーを塗付した直径10mm×長さ300mmのアルミニウムシャフトを上記チューブの内面から等距離になる位置に配置して固定し、チューブとシャフトとの間にこのシリコーンゴム組成物を5kgf/cm2で充填し、150℃で30分加熱硬化し、更に200℃で4時間ポストキュアして、アルミニウムシャフトの外周面上にシリコーンゴム層が形成され、このシリコーンゴム層の外周面上に、更にフッ素樹脂層が形成された定着ロールを得た。このときのシリコーンゴム層の厚さは1.0mmであった。しかしながら、ロール表面を観察すると、気泡が見られ、とくに材料を注入した出口部分に多数の気泡があった。この定着ロールを電子写真複写機に装着してA4サイズの複写紙を連続複写したが、1,000枚付近で気泡の多い部分にしわが見られ、2,000枚に達する前にPFA樹脂チューブが破損してしまった。
【0065】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃における粘度が10〜200Pa・sであり、チキソ係数が1.4以下であることを特徴とする定着ロール又は定着ベルト用熱硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
硬化物の熱伝導率が0.4W/(m・k)以上である請求項1記載の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
ディスクレオメータによる硬化性測定で、150℃において3分経過時のトルク値を100%とした時の50%トルクに達する時間(T50)が10秒〜90秒である請求項1又は2記載の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
熱硬化型液状シリコーンゴム組成物が、
(A)1分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有し、25℃での粘度が100,000mPa・s以下である液状オルガノポリシロキサン:100質量部
(B)1分子中に少なくとも珪素原子と結合する水素原子を2個含有し、25℃での粘度が1,000mPa・s以下である液状オルガノハイドロジェンポリシロキサン:0.1〜30質量部
(C)1分子中に少なくとも1個の珪素原子に結合するアルコキシ基を有する、オルガノシラン及び/又はオルガノポリシロキサン:0〜30質量部
(D)熱伝導性無機粉体:50〜1,000質量部
(E)付加反応触媒:触媒量
を含有するものである請求項1,2又は3記載の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
(D)熱伝導性無機粉体が、石英粉、酸化亜鉛又はアルミナであることを特徴とする請求項4記載の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
芯金の外周面にシリコーンゴム層が形成されてなる定着ロールであって、該シリコーンゴム層を形成するシリコーンゴムが請求項1乃至5のいずれか1項記載の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする定着ロール。
【請求項7】
芯金の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層もしくはフッ素ゴム層が形成されてなる定着ロールであって、該シリコーンゴム層を形成するシリコーンゴムが請求項1乃至5のいずれか1項記載の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする定着ロール。
【請求項8】
シリコーンゴム層の厚さが2mm以下である請求項6又は7に記載の定着ロール。
【請求項9】
耐熱性樹脂又は金属からなる基板の外周面上にシリコーンゴム層が形成されてなる定着ベルトであって、該シリコーンゴム層を形成するシリコーンゴムが請求項1乃至5のいずれか1項記載の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする定着ベルト。
【請求項10】
耐熱性樹脂又は金属からなる基板の外周面上にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層もしくはフッ素ゴム層が形成されてなる定着ベルトであって、該シリコーンゴム層を形成するシリコーンゴムが請求項1乃至5のいずれか1項記載の熱硬化型液状シリコーンゴム組成物を硬化させてなるものであることを特徴とする定着ベルト。
【請求項11】
シリコーンゴム層の厚さが1mm以下である請求項9又は10に記載の定着ベルト。

【公開番号】特開2006−52254(P2006−52254A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−233220(P2004−233220)
【出願日】平成16年8月10日(2004.8.10)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】