説明

定着ロール用シリコーンゴム発泡体、その製造方法及び定着ロール

【解決手段】(a)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(b)1分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(c)白金系触媒、及び(d)無機充填剤を含むシリコーンゴム組成物に超臨界流体を混合し、超臨界流体の気化による発泡作用により、シリコーンゴム組成物を発泡させて硬化させて定着ロール用シリコーンゴム発泡体を得る。
【効果】シリコーンゴム発泡体を環境や安全性を損なうことなく製造することができると共に、十分に硬化し、良好に発泡した熱伝導性の小さい定着ロール用シリコーンゴム発泡体を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯金基材上に形成するシリコーンゴム発泡体であって、更にその上にフッ素系コーティング剤の硬化物又はフッ素系高分子からなる表面層(最外層)を積層した、複写機、レーザービームプリンター、ファックス等用の定着用ロールに用いられるシリコーンゴム発泡体、その製造方法、及びこのシリコーンゴム発泡体を用いた定着ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、レーザービームプリンター、ファックス等に使用するトナー定着部品として、トナーとの離型性、耐熱性、圧縮永久歪などが他のゴム材料に比較して優れていることから、シリコーンゴム製ロールが使用されている。
【0003】
電子写真プロセスを利用した機器においては、感光体表面から複写紙に転写されたトナー像を複写紙に固定する必要がある。このトナー像を固定する方法として、互いに圧接回転している加熱されたヒーターロールと加圧ロールとの間に複写紙を通過させ、複写紙上のトナー像を熱融着し、固定する方法が広く採用されている。この熱融着方法においては、一般にロール材料の熱伝導率を高くすることで、応答の速い複写機、プリンターなどとすることができるが、一方で熱伝導性の高いものは放熱も速く、小型化、低価格化の流れの中で、逆に熱伝導性の低い、即ち蓄熱性のよい材料が必要とされていた。
【0004】
かかる材料として、熱分解型発泡剤を添加して発泡体を成形する方法や、硬化時に副生する水素ガスを発泡剤として発泡体を成形する方法などがある。ところが、熱分解型発泡剤を添加する方法は、その分解ガスの毒性や臭いが問題点とされており、また硬化触媒に白金触媒を使用するものでは発泡剤による硬化阻害が問題とされていた。更に、硬化時に副生する水素ガスを利用する方法においては、水素ガスの爆発性、未硬化物の保存時の取り扱いに注意を要するなどの問題があった。しかも、射出成形のように金型内で発泡させる成形においては、微小かつ均一なセルを有するシリコーンゴム発泡体を得ることが難しいという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平8−12890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みなされたもので、熱伝導性の小さい定着ロール用シリコーンゴム発泡体を環境や安全性を損なうことなく製造することができる方法、十分に硬化し、良好に発泡した熱伝導性の小さい定着ロール用シリコーンゴム発泡体、及びこのシリコーンゴム発泡体を用いた定着ロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、(a)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(b)1分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(c)白金系触媒、及び(d)無機充填剤を含む付加硬化型のシリコーンゴム組成物に対し、超臨界流体を混合し、超臨界流体の気化による発泡作用により、シリコーンゴム組成物を発泡させて硬化させることにより、熱伝導性が小さく、蓄熱性の良好なシリコーンゴム発泡体が得られ、これが定着用ロールのシリコーンゴム発泡層として優れていることを知見し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記の定着ロール用シリコーンゴム発泡体及びその製造方法を提供する。
[1] (a)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(b)1分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(c)白金系触媒、及び
(d)無機充填剤
を含むシリコーンゴム組成物に超臨界流体を混合し、超臨界流体の気化による発泡作用により、シリコーンゴム組成物を発泡させて硬化させることにより得られることを特徴とする定着ロール用シリコーンゴム発泡体。
[2] (a)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(b)1分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(c)白金系触媒、及び
(d)無機充填剤
を含むシリコーンゴム組成物に超臨界流体を混合し、超臨界流体の気化による発泡作用により、シリコーンゴム組成物を発泡させて硬化させることを特徴とする定着ロール用シリコーンゴム発泡体の製造方法。
[3] 芯金基材上に[1]記載のシリコーンゴム発泡体が被覆形成され、該シリコーンゴム発泡体上に、更にフッ素高分子からなる表面層が積層されてなることを特徴とする定着ロール。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリコーンゴム発泡体を環境や安全性を損なうことなく製造することができると共に、十分に硬化し、良好に発泡した熱伝導性の小さい定着ロール用シリコーンゴム発泡体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
【0011】
本発明におけるシリコーンゴム組成物は、(a)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、(b)1分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(c)白金系触媒、及び(d)無機充填剤を含有する付加硬化型のシリコーンゴム組成物である。
【0012】
(a)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、本発明の付加硬化型シリコーンゴム組成物のベースポリマーとして用いられるものであり、下記平均組成式(1)
1aSiO(4-a)/2 (1)
(式中、R1は置換又は非置換の好ましくは炭素原子数1〜10の、珪素原子に結合した1価炭化水素基を表し、aは1.9〜2.4、好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
で表され、常温(25℃)で100〜1,000,000mPa・s、好ましくは500〜100,000mPa・sの粘度を有するものである。
【0013】
上記平均組成式(1)中のR1としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等の上記アルキル基又はアリール基の水素原子がハロゲン原子、シアノ基等で置換された基が挙げられる。なかでも、アルケニル基はビニル基、他の置換基はメチル基又はフェニル基であることが好ましい。
【0014】
上記平均組成式(1)で表されるオルガノポリシロキサン中の個々のR1は、同一でも異なっていてもよいが、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を含んでいることが必要であり、2個以上(通常2〜50個)、特に2〜20個程度のアルケニル基を含んでいることが好ましい。また、上記平均組成式(1)において、全R1基のうち0.001〜10モル%、特に0.01〜5モル%がアルケニル基であることが好ましい。このオルガノポリシロキサンは、上記aの数値範囲を満足すれば、直鎖状であっても、三官能性構造単位(R1SiO3/2(R1は上記平均組成式(1)のR1と同じ))、四官能性構造単位(SiO4/2)を含んだ分岐状であってもよいが、通常は、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好ましい。(a)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0015】
(a)成分のオルガノポリシロキサンは、オルガノシクロポリシロキサンとヘキサオルガノジシロキサンとをアルカリ触媒又は酸触媒の存在下に平衡化反応を行う公知の方法によって得ることができる。
【0016】
(a)成分のオルガノポリシロキサンとして具体的には、例えば、以下のものが挙げられる。
【化1】

(式中、nは上記した粘度範囲を満足するような0又は1以上の整数であり、Rは上記平均組成式(1)のR1で表される基からアルケニル基を除いた基である。)
【0017】
【化2】

(式中、nは0又は1以上の整数、mは0又は1以上の整数、n+mは上記した粘度範囲を満足するような数であり、Rは上記平均組成式(1)のR1で表される基からアルケニル基を除いた基である。)
【0018】
【化3】

(式中、nは0又は1以上の整数、mは1以上の整数、n+mは上記した粘度範囲を満足するような数であり、Rは上記平均組成式(1)のR1で表される基からアルケニル基を除いた基である。)
【0019】
【化4】

(式中、nは0又は1以上の整数、mは1以上の整数、n+mは上記した粘度範囲を満足するような数であり、Rは上記平均組成式(1)のR1で表される基からアルケニル基を除いた基である。)
【0020】
(b)成分の1分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(a)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンと反応し、架橋剤として作用するものである。その分子構造に特に制限はなく、従来製造されている例えば、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造(樹脂状)等各種のものが使用可能であるが、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上の珪素原子に結合した水素原子(SiHで表されるヒドロシリル基)を有する必要があり、通常、2〜500個、好ましくは3〜200個、より好ましくは4〜100個程度のSiH基を有することが望ましい。
【0021】
この(b)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(2)で示されるものが用いられる。
2bcSiO(4-b-c)/2 (2)
(式中、R2は脂肪族不飽和結合を含む基を除く、非置換又は置換の好ましくは炭素数1〜10の、珪素原子に結合した1価炭化水素基である。bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cが0.8〜3.0を満足する正数であり、bは1.0〜2.0、cは0.01〜1.0で、かつb+cが1.5〜2.5を満足する正数であることが好ましい。)
【0022】
上記平均組成式(1)中のR2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。R2としては、好ましくはアルキル基、アリール基であり、より好ましくはメチル基、フェニル基である。
【0023】
SiH基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、また両方に位置するものであってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子横造は直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、得られるシリコーンゴム組成物の物理特性、組成物の取扱作業性の点から、1分子中の珪素原子の数(又は重合度)は適常2〜1,000個、好ましくは3〜300個、より好ましくは4〜150個程度のものが望ましく、25℃における粘度が、通常、0.1〜5,000mPa・s、好ましくは0.5〜1,000mPa・s、より好ましくは5〜500mPa・s程度の、室温(25℃)で液状のものが使用される。
【0024】
(b)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、公知の製造方法によって得ることが可能である。一般的な製造方法を挙げると、例えば、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラハイドロシクロテトラシロキサン(場合によっては、このシクロテトラシロキサンとオクタメチルシクロテトラシロキサンとの混合物)と、へキサメチルジシロキサン、1,3−ジハイドロ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等の末端基源となるシロキサン化合物とを、又はオクタメチルシクロテトラシロキサンと、1,3−ジハイドロ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンとを、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の触媒の存在下に−10〜+40℃程度の温度で平衡化させることによって容易に得ることができる。
【0025】
(b)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、ビス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、ビス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C653SiO1/2単位とからなる共重合体などが挙げられる。これらは、1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0026】
この(b)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、該成分中に含まれる珪素原子に結合した水素原子(SiH基)の数が、上記(a)成分のオルガノポリシロキサンが有するアルケニル基1個当たり、通常0.4〜5.0個、好ましくは0.8〜3.0個となる量である。(b)成分の配合量が少なすぎると、架橋密度が低くなりすぎてシリコーンゴム組成物の耐熱性に悪影響を与えるおそれがある。逆に、多すぎると、脱水素反応による発泡の問題が生じたり、やはり耐熱性に悪影響を与えたりするおそれが生じる。
【0027】
(c)成分の白金系触媒は、上記(a)成分のオルガノポリシロキサン中の珪素原子に結合したアルケニル基と、(b)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進させるために用いられるものであり、通常かかる付加反応に用いられるものを制限なく使用することができる。
【0028】
具体的には、例えば、白金ブラック、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン類、アルデヒド化合物、ビニルシロキサン類、アセチレンアルコール類等との錯体等が挙げられる。(c)成分の配合量は、有効量(いわゆる触媒量)でよく、希望する硬化速度に応じて適宜増減すればよい。通常、(a)成分のオルガノポリシロキサンの質量に対して、白金金属で0.1〜1000ppm、好ましくは1〜200ppmの範囲とすればよい。
【0029】
(d)成分の無機充填剤は、シリコーンゴム組成物に所定の硬度及び引張り強さなどの物理的強度を付与するものである。(d)成分の無機充填剤としては、通常シリコーンゴム組成物に補強性充填剤として使用されるものは制限なく使用することができ、例えば、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ(石英粉)、沈降性シリカ、疎水化処理したシリカ等のシリカ系充填剤などが挙げられ、これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0030】
このような材料の例示として、親水性のシリカとしては、Aerosil 130,200,300(日本アエロジル(株)製)、Cabosil MS−5,MS−7(Cabot社製)、Rheorosil QS−102,103((株)トクヤマ製)、Nipsil LP(日本シリカ(株)製)等が挙げられる。また、疎水性シリカとしては、Aerosil R−812,R−812S,R−972,R−974(日本アエロジル(株)製)、Rheorosil MT−10((株)トクヤマ製)、Nipsil SSシリーズ(日本シリカ(株)製)等、結晶性シリカとしては、クリスタライト(龍森(株)製)、Minu−sil(US SILICA社製)、Imsil(ILLINOIS MINERAL社製)等が挙げられる。
【0031】
また、シリコーンゴム組成物の調製に当たっては、親水性シリカと共にヘキサメチルジシラザン等の疎水化剤を配合することにより、親水性シリカの疎水化処理を同時に行ってもよい。
【0032】
(d)成分の無機充填剤の配合量は、(a)成分100質量部に対して、通常5〜300質量部、好ましくは20〜200質量部である。
【0033】
本発明のシリコーンゴム組成物に、上記(a)〜(d)成分以外にも、必要に応じて他の成分を添加・配合することは任意である。例えば、成形作業等の実用に供するために、可使時間(ポットライフ)を確保し、硬化時間の調整を行う必要がある場合には、反応制御剤として、例えば、ビニルシクロテトラシロキサン等のビニル基含有オルガノポリシロキサン、トリアリルイソシアヌレート、アルキルマレエート、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のアセチレンアルコール類、そのシラン、シロキサン変性物、ハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、テトラメチレンジアミン、ベンゾトリアゾール等のアミン類を用いることができる。上記反応制御剤は、1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0034】
他に、珪藻土、炭酸カルシウム等の非補強性の充填剤、コバルトブルー等の無機顔料、有機染料などの着色剤、酸化セリウム、炭酸亜鉛、炭酸マンガン、ベンガラ、酸化チタン、カーボンブラック等の耐熱性又は難燃性向上剤等の添加も任意である。
【0035】
本発明においてシリコーンゴム組成物には超臨界流体が混合され、この超臨界流体の気化による発泡作用により、シリコーンゴム組成物を発泡させて硬化させて硬化物(シリコーンゴム発泡体)を得る。
【0036】
超臨界流体とは、気体と液体が共存できる限界の温度及び圧力(臨界点)を超えた状態にあり、通常の気体や液体とは異なる性質を示す特殊な流体である。本発明において用いられる超臨界流体としては、例えば、二酸化炭素、窒素、エタン、エチレンなどの超臨界流体が挙げられるが、臨界温度が31℃で臨界圧力が7.38MPaである二酸化炭素、臨界温度が−147℃で臨界圧力が3.35MPaである窒素を使用することが、シリコーンゴム組成物との混合物の均一性や安全性からも好ましい。
【0037】
シリコーンゴム組成物と超臨界流体との混合、発泡、硬化による成形は、射出成形法による成形が好適である。この場合、シリコーンゴム組成物と超臨界流体とは、射出成形機や混合注型機の混合ユニット内で混合することができる。混合温度は、例えば室温付近(5〜45℃、特には15〜40℃)とすることが可能である。
【0038】
超臨界流体の混合量はシリコーンゴム組成物100質量部に対し、0.1〜50質量部が好ましい。超臨界流体の量が0.1質量部より少ないと、シリコーンゴム組成物が発泡体とならない場合があり、50質量部より多いと、異常発泡となり、発泡体の物理的強度が低下し、定着ロール用のシリコーンゴム発泡体としては実用上使用困難なものとなるおそれがある。
【0039】
シリコーンゴム組成物と超臨界流体との混合物は、例えば射出成形の場合、例えば室温付近(5〜45℃、特には15〜40℃)で、所定の圧力(例えば常圧)の金型キャビティ内に混合物を射出することにより、超臨界流体が気化してシリコーンゴム組成物が発泡し、これに合わせて金型キャビティ内のシリコーンゴム組成物を加熱硬化させることにより、シリコーンゴム発泡体を得ることができる。加熱硬化条件は、従来公知の条件を適用することが可能であるが、通常70〜140℃で30秒〜60分程度である。また、必要に応じて、180〜230℃、1〜4時間程度でポストキュアーしてもよい。
【0040】
本発明のシリコーンゴム発泡体は、定着ロール用のシリコーンゴム発泡体として好適であり、芯金基材上にシリコーンゴム発泡体が被覆形成され、このシリコーンゴム発泡体上に、更にフッ素系高分子からなる表面層(最外層)が積層された定着ロールのシリコーンゴム発泡体として優れた特性を有する。
【0041】
本発明に適用される芯金基材としては、その材質が耐熱性樹脂又は金属製であるものが用いられる。例えば、耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂などが用いられる。金属の場合は、アルミニウム、SUS(ステンレススチール)、鉄などが用いられる。いずれの場合も、円筒又は円柱形状に成形される。
【0042】
また、定着ロールのシリコーンゴム発泡体の表面層を形成するフッ素系高分子からなる表面層としては、フッ素樹脂、フッ素ゴムを含有するフッ素系コーティング剤の硬化物などによって形成される。フッ素樹脂としては、例えば、ポリ(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル)(PFA)などが用いられ、フッ素系コーティング剤としては、市販のフッ素系ゴムラテックス又はフッ素系ゴム溶液が用いられる。
【0043】
定着ロールは、例えば、以下の工程により製造することができる。芯金基材を金型内に固定し、金型キャビティ内の芯金基材外周面上に超臨界流体を混合したシリコーンゴム組成物を注入して発泡させ、加熱にて硬化させる。その後、芯金基材を被覆したシリコーンゴム発泡体上にフッ素高分子からなる表面層を積層する。
【0044】
表面層の積層では、シリコーンゴム発泡体の表面に、例えば、フッ素樹脂用のプライマー:GLP−103 SR(ダイキン工業(株)製)等を用いて、プライマー処理を施した後に、フッ素系高分子の表面層を接着等により積層する方法や、シリコーンゴム発泡体層上にプライマー処理を施し、更にその上にフッ素系コーティング剤を塗布し、加熱硬化させる方法が適用できる。
【0045】
また、芯金基材に対してフッ素樹脂フィルムを芯金基材の外周面を取り囲むように金型内に固定し、金型キャビティ内の芯金基材とフィルムとの間に超臨界流体を混合したシリコーンゴム組成物を注入して発泡させ、加熱にて硬化させることもできる。この場合も、フッ素樹脂フィルムの表面にプライマー処理を施してもよい。
【実施例】
【0046】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
[シリコーンゴム組成物の調製]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された25℃の粘度が30Pa・s(平均重合度 約750)であるジメチルポリシロキサン90質量部、比表面積が300m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル300)40質量部、ヘキサメチルジシラザン8質量部、水2質量部を室温(25℃)で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続けて冷却し、シリコーンゴムベースを得た。
【0048】
このジメチルポリシロキサン及びヒュームドシリカを130質量部配合したシリコーンゴムベース、両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された25℃の粘度が100Pa・s(平均重合度 約1,000)であるジメチルポリシロキサン60質量部、架橋剤として両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン[粘度0.011Pa・s、重合度20、Si−H基量0.0050mol/g]2.0質量部[Si−H基/アルケニル基=2.2(モル比)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.10質量部、白金触媒(Pt濃度1%)0.1質量部をA液とB液の2液に分けて混合し、2液タイプのシリコーンゴム組成物を調製した。
【0049】
[実施例1]
調製したA液とB液の2液タイプのシリコーンゴム組成物を射出成形機の材料供給ポンプにセットし、A液とB液の材料を等量供給し、超臨界流体供給装置から材料供給ラインへ、超臨界流体として40℃に加温した二酸化炭素を圧力8MPaで圧入した。超臨界状態の二酸化炭素はA液とB液の材料合計量100質量部に対し、30質量部を供給した。
【0050】
スタティックミキサーでA液とB液の材料と超臨界状態の二酸化炭素をプレ混合し、射出成形機のシリンダー部へ供給した。シリンダー部で再度、スクリュウでA液とB液の材料と超臨界状態の二酸化炭素を回転混合し、混合物を金型へ射出した。射出したシリコーンゴム組成物は、120℃、240秒の条件で硬化させ、更に、200℃、4時間ポストキュアーしてシリコーンゴム発泡体を得た。得られた発泡体の密度と熱伝導性を計測した。その結果を表1にまとめた。
【0051】
[実施例2]
超臨界状態の二酸化炭素の供給量をA液とB液の材料合計量100質量部に対し、40質量部とした以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴム発泡体を得、密度と熱伝導性を計測した。その結果を表1にまとめた。
【0052】
[実施例3]
超臨界流体供給装置から超臨界流体として温度23℃の窒素を圧力5MPaで圧入し、超臨界状態の窒素の供給量をA液とB液の材料合計量100質量部に対し30質量部供給した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴム発泡体を得、密度と熱伝導性を計測した。その結果を表1にまとめた。
【0053】
[実施例4]
超臨界状態の窒素の供給量をA液とB液の材料合計量100質量部に対し、40質量部とした以外は、実施例3と同様にしてシリコーンゴム発泡体を得、密度と熱伝導性を計測した。その結果を表1にまとめた。
【0054】
[比較例1]
超臨界流体を供給せず、A液とB液の材料のみ用いた以外は、実施例1と同様にしてシリコーンゴムを得、密度と熱伝導性を計測した。その結果を表1にまとめた。
【0055】
【表1】

【0056】
密度:自動比重測定装置により測定した。
熱伝導率:熱伝導計により測定した。
【0057】
[実施例5]
調製したA液とB液の2液タイプのシリコーンゴム組成物を射出成形機の材料供給ポンプにセットし、A液とB液の材料を等量供給し、超臨界流体供給装置から材料供給ラインへ、超臨界流体として40℃に加温した二酸化炭素を圧力8MPaで圧入した。超臨界状態の二酸化炭素はA液とB液の材料合計量100質量部に対し、40質量部を供給した。
【0058】
スタティックミキサーでA液とB液の材料と超臨界状態の二酸化炭素をプレ混合し、射出成形機のシリンダー部へ供給した。シリンダー部で再度、スクリュウでA液とB液の材料と超臨界状態の二酸化炭素を回転混合し、混合物を金型へ射出した。この場合、混合物は、付加反応型液状シリコーンゴム用プライマーNo.101A/B(信越化学工業(株)製)を塗布した直径18mm、長さ300mmのアルミニウムシャフト状の芯金と、その外周面を取り囲むように厚さ25μmのPFA樹脂フィルムを金型内セットし、金型キャビティの芯金基材とフィルムとの間に射出した。射出したシリコーンゴム組成物は、120℃、30分の条件で硬化させ、更に、200℃、4時間ポストキュアーして、芯金基材上にシリコーンゴム発泡体、PFA樹脂からなる表面層が積層された外径22mm、長さ250mmの定着ロールを得た。
【0059】
また、得られた定着ロールをプリンターの定着ロールとして組み込み、複写評価を行なった。ヒーターロールのヒーターを停止した状態で複写したところ、50枚の通紙の間、良好な複写ができ、良好に定着した画像が得られた。
【0060】
[比較例2]
超臨界流体を供給せず、A液とB液の材料のみ用いた以外は、実施例5と同様にして芯金基材上にシリコーンゴム、PFA樹脂からなる表面層が積層された外径22mm、長さ250mmの定着ロールを得た。
【0061】
また、得られた定着ロールをプリンターの定着ロールとして組み込み、複写評価を行なった。ヒーターロールのヒーターを停止した状態で複写したところ、30枚目から定着むらがある画像となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(b)1分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(c)白金系触媒、及び
(d)無機充填剤
を含むシリコーンゴム組成物に超臨界流体を混合し、超臨界流体の気化による発泡作用により、シリコーンゴム組成物を発泡させて硬化させることにより得られることを特徴とする定着ロール用シリコーンゴム発泡体。
【請求項2】
(a)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(b)1分子中に珪素原子に結合した水素原子を2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(c)白金系触媒、及び
(d)無機充填剤
を含むシリコーンゴム組成物に超臨界流体を混合し、超臨界流体の気化による発泡作用により、シリコーンゴム組成物を発泡させて硬化させることを特徴とする定着ロール用シリコーンゴム発泡体の製造方法。
【請求項3】
芯金基材上に請求項1記載のシリコーンゴム発泡体が被覆形成され、該シリコーンゴム発泡体上に、更にフッ素高分子からなる表面層が積層されてなることを特徴とする定着ロール。

【公開番号】特開2009−227723(P2009−227723A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71667(P2008−71667)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】