説明

定着材の製造および製品

【課題】亀裂および泡などの欠陥が改善された均質なコーティングを有する定着部材を提供する。
【解決手段】定着部材は、基材25と、基材25上に配置された中間層22と、中間層22上に配置されたプライマー層26と、プライマー層26上に配置された外層24と、を含む。中間層22はシリコーン層であってよく、プライマー層26は、架橋アミノシランとフルオロエラストマーとを含んでよく、外層24は、フルオロプラスチックを含んでよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ディジタル、多重像(image on image)等を含む、電子写真用画像形成装置において有用な定着部材に関する。本発明はまた、定着部材を作製する方法および使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な電子写真用画像形成装置においては、複写されるべき元の画像または電子文書画像が、感光部材上に静電潜像の形態で記録され、それに続いて潜像が、通常トナーと呼ばれる熱可塑性樹脂の粒子またはそれらの複合体の適用により可視化される。可視的トナー画像は、緩い粉末化形態であり、容易に乱されまたは破壊され得る。トナー画像は、普通紙などの、カットされたシートでも連続的媒体でもよい基材または支持部材の支持体上に通常固定化または定着される。
【0003】
トナー画像を支持部材上に固定化するための熱エネルギーの使用は周知である。トナー材料を支持体表面上に熱により永久的に定着するためには、トナー材料の温度を、トナー材料の構成要素が合着して(coalesce)粘着性になる点まで上昇させることが必要である。この加熱により、トナーが支持部材の繊維または孔の中にある程度流入する。その後、トナー材料が冷えるにつれ、トナー材料の固化によりトナー材料は支持体に強固に結合する。
【0004】
トナー画像の熱定着に対する数通りのアプローチが、先行技術に記載されている。これらの方法は、加圧接触に保たれたロールの一対、ロールと加圧接触しているベルト部材等の種々の手段による熱と圧力との実質的に同時の適用を提供することを含む。熱は、ロールの一方もしくは両方、プレート部材またはベルト部材を加熱することにより付与することができる。トナー粒子の定着は、熱、圧力および接触時間の適当な組合せが提供されたときに起こる。トナー粒子の定着を生じさせるこれらのパラメーターの均衡は、当技術分野において周知であり、特定の機械またはプロセス条件に適合するように調節することができる。
【0005】
熱が適用されてトナー粒子の支持体上への熱定着を起こさせる定着システムの作動中に、トナー画像および支持体の両者が、ロール対、またはプレートまたはベルト部材の間に形成されたニップを通して通過する。ニップにおける同時的熱転写および圧力の付与は、トナー画像の支持体上への定着をもたらす。定着プロセスにおいては、支持体から定着部材へのトナー粒子のオフセットが通常の作動中に起こらないことが重要である。定着部材上にオフセットするトナー粒子は、それに続いてその後の複写サイクルにおいて機械の他の部分または支持体に転写することがあり、そのようにしてバックグラウンドを増大させ、またはそこに複写される材料(material)を損なう。「高温オフセット(またはホットオフセット)」と称される事象は、トナーの温度が、トナー粒子が液化する点まで上昇して、溶融したトナーの分裂が定着作動中に起こって一部が定着部材上に残留するときに起こる。高温オフセット温度または高温オフセット温度への劣化は、定着部材の剥離性の尺度であり、したがって低い表面エネルギーを有して必要な剥離が起こる定着表面を提供することが望ましい。
【0006】
ロールでもベルトでもよい定着部材または画像固定化部材は、適当な基材に少なくとも1層を適用することにより作製することができる。円筒状の定着ロールおよび固定化ロールは、例えば、エラストマーまたはフルオロエラストマーをアルミニウムシリンダに塗布することにより調製することができる。コーティングされたロールはエラストマーを硬化させるために加熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5501881号明細書
【特許文献2】米国特許第5512409号明細書
【特許文献3】米国特許第5729813号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
定着部材は、剥離層としてフルオロポリマーのトップコートを有する弾力のあるシリコーン層で構成することができる。フルオロポリマーは、高温(>200℃)および高圧の条件に耐え、化学的安定性および低い表面エネルギーすなわち剥離性を示すことができる。例えば、デュポン社(E.I. DuPont de Nemours,Inc)のテフロン(登録商標)などのフルオロプラスチックは、高いフッ素含有率に基づくより低い表面エネルギーを有し、オイルレス定着のために広く使用される。
【0009】
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)およびPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などのフルオロプラスチックは、コーティング技法により定着部材の基材上に適用されて剥離層を形成することができる。フルオロプラスチックは、連続したフィルムを形成するために、通常、シリコーンゴムの分解温度(約250℃)をかなり超える高い焼成温度(すなわち300℃を超える)を必要とするので、シリコーンを含有する基材上にフルオロプラスチックのトップコートを形成して欠陥のない均質なコーティングを得るための加工処理範囲は極端に狭い。亀裂および泡が、そのような定着部材の製作中に観察される2つの主な欠陥である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
定着部材を作製する方法であって、基材上に配置されたシリコーン層を得るステップと、フルオロエラストマーと硬化剤との水性分散体を含むプライマー組成物を前記シリコーン層上にコーティングするステップと、フルオロプラスチック分散体を含むトップコート組成物を前記プライマー組成物上にコーティングするステップと、前記プライマー組成物および前記トップコート組成物を加熱して定着部材を形成するステップと、を含む、方法である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像装置の模式的例示である。
【図2】定着部材の実施形態の模式図である。
【図3】亀裂を含むフルオロプラスチックのトップコートの写真である。
【図4】泡を含むフルオロプラスチックのトップコートの写真である。
【図5】滑らかな外表面を示す定着部材の写真である。
【図6】亀裂を示す定着部材の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態により、定着部材を作製する方法を開示する。該方法は、基材上に配置されたシリコーン層を得るステップ、およびフルオロエラストマーと硬化剤との水性分散体を含むプライマー組成物をシリコーン層上にコーティングするステップを含む。フルオロプラスチックの分散物を含むトップコート組成物は、プライマー組成物上にコーティングされる。プライマー組成物およびトップコート組成物は加熱されて定着部材を形成する。
【0013】
実施形態により、基材を含む定着部材が提供される。シリコーン層が基材上に配置される。プライマー層がシリコーン層上に配置され、プライマー層は架橋したアミノシランおよびフルオロエラストマーを含む。フルオロプラスチックを含む外層がプライマー層上に配置される。
【0014】
実施形態により、基材および基材上に配置されたシリコーン層を含む定着部材が提供される。二重プライマー層がシリコーン層上に配置される。二重プライマー層は、シリコーン層上に配置された、アミノシランとフルオロエラストマーとの架橋生成物を含む第1プライマー層、および第1プライマー層上に配置された、導電性充填剤とフルオロポリマーとを含む第2プライマー層を含む。外層は第2プライマー層上に配置されて、フルオロプラスチックを含む。
【0015】
図面に例示した本発明の実施形態について、詳細に言及する。図面全体を通して、可能な場合には、同一のまたは類似の部分には同一の符号を使用する。
【0016】
以下の記載においては、記載の一部を形成する、本発明が実施され得る特定の典型的実施形態が例示されている添付図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施することができるように十分詳細に記載されており、また、理解されるべきは、他の実施形態も利用され得ること、および本開示の範囲から逸脱することなく変化がなされ得ることである。したがって、以下の記載は単に典型的なものであるにすぎない。
【0017】
図1を参照すると、典型的な電子写真再生装置においては、複写されるべき元の光像(light image)は感光部材上に静電潜像の形態で記録され、それに続いて、潜像が、通常トナーと称される検電性熱可塑性樹脂粒子の適用により可視化される。具体的には、受光部10が、電力供給装置11から電圧が供給された帯電器12によりその表面に帯電する。次に、受光部10は、レーザおよび発光ダイオードなどの光学系または画像入力装置13からの光で露光されて、その上に静電潜像を形成する。一般的に、静電潜像は、現像剤ステーション14からの現像剤混合物をそれと接触させることにより現像される。現像は、磁気ブラシ、粉末雲(powder cloud)、または他の知られた現像プロセスの使用により実行することができる。乾式現像剤混合物は、トナー粒子が摩擦帯電で付着しているキャリア顆粒(carrier granules)を通常含む。トナー粒子は、キャリア顆粒から潜像に引きつけられて、その上にトナー粉末画像を形成する。あるいは、中にトナー粒子が分散している液体キャリアを含む液体現像剤を使用することもできる。液体現像剤は、静電潜像との接触にもたらされ、トナー粒子がその上に画像の形状で付着する。
【0018】
トナー粒子は光導電性の表面上に画像形状で付着した後、それらは転写手段15により複写シート16に転写され、それは圧力転写または静電転写であり得る。あるいは、現像された画像は、中間転写部材またはバイアス転写部材に転写して、それから複写シートに転写することもできる。複写基材の例として、紙、ポリエステルもしくはポリカーボネートなどの透明材料(transparency material)、布、木材、または完成画像がその上に描かれる他の任意の所望の材料が挙げられる。
【0019】
現像された画像の転写が完了した後、複写シート16は定着ロール20および加圧ロール21として図1に描かれた定着ステーション19に進み(加圧ロールと接触している定着ベルト、加圧ベルトと接触している定着ロールなどの任意の他の定着構成要素も、本装置で使用するのに適しているが)、そこで、現像された画像は、複写シート16を定着部材と加圧部材との間に通すことにより複写シート16に定着されて、それにより永続性画像を形成する。別法では、転写および定着は転写定着アプリケーション(transfix application)により実行することができる。
【0020】
転写に続いて、受光部10はクリーニングステーション17に進み、受光部10に残されたいかなるトナーも、ブレード(図1に示すような)、ブラシ、または他のクリーニング装置の使用により、そこから除去される。
【0021】
図2は、定着部材の実施形態の拡大された模式図であり、種々のあり得る層を示す。図2に示したように、基材25はその上に中間層22を有する。中間層22は、例えば、シリコーンゴムであってよい。中間層22の上に、例えば、フルオロプラスチックの外層24がある。外層24と中間層との間にプライマー層26が配置される。プライマー層26は、アミノシランとフルオロエラストマーラテックス分散体との混合物を、中間層22の上に直接コーティングすることにより調製される。例えば、アミノシランとフルオロエラストマーとの分散体がシリコーンロール基材上にスプレーコーティングされる。それに続いて、プライマー層の上にフルオロプラスチック(例えばPFA)のコーティング分散体をスプレーコーティングすることにより、定着トップコートが調製される。
【0022】
次に、定着材は約200℃から250℃まで約15分から20分間加熱される。次に、定着材は、フルオロプラスチックの溶融温度を超える260℃から370℃の範囲の温度にさらに加熱され、フルオロプラスチックが溶融し、トップコートが形成される。最適のプライマー厚さの範囲は、3μmから10μmまで、好ましいトップコート厚さは15μm未満である。
【0023】
プライマー層の利点には、環境に優しいコーティングが含まれる。プライマー層は、スプレーコートして均質な層を形成することができる水性分散体を使用して適用される。プライマー層の前焼成は、溶媒系コーティングによる場合のようには必要とされない。開示した水性分散体では追加のプライマーは必要とされない。シリコーン層およびトップコートの両方に対する強力な接着性が付与される。最後に、開示した実施形態では、フルオロプラスチックのトップコートを有する定着部材を製作するための加工処理の許容範囲が改善される。
【0024】
さらに、本明細書中の実施形態は、定着部材の導電性を制御する能力を提供する。フルオロプラスチックは固体の形態で、例えば粉末コーティングにより、適用されるので、十分な量の導電性粒子を定着トップコートに添加することは困難である。本明細書中に開示したプライマー層を使用し、それに導電性粒子を添加すると、導電性が高くて薄いプライマー層を形成することができる。例として、プライマー層は、水性分散体中の導電性粒子、例えばカーボンナノチューブ(CNT)とフルオロエラストマーラテックスとを含む混合物をシリコーンロール基材上に直接スプレーコーティングすることにより調製することができる。それに続いて、定着トップコートのPFA粉末コーティングを、所望の表面導電率を有するトップコートを形成するために適用することができる。プライマー層の表面抵抗率の範囲は、10〜10Ω/sqである。この導電性が高くて薄いプライマー層(2〜10μm)は、たとえ本来のトップコートの抵抗率が>10Ωであったとしても、完成したトップコートを、定着材の必要条件(<10Ω)に合う所望の表面導電率を有するように働きかける。
【0025】
プライマーコーティング分散体は、フルオロエラストマーと硬化剤との水性分散体を含む。フルオロエラストマーは、プライマーコーティング分散体中に、分散体全体の約15質量パーセントから約70質量パーセント、または約20質量パーセントから約60質量パーセント、または約25質量パーセントから約50質量パーセントまでの量で存在する。硬化剤は、プライマー分散体中に、フルオロエラストマーの約1質量パーセントから約20質量パーセントまたは約2質量パーセントから約18質量パーセントまたは約3質量パーセントから約15質量パーセントまでの量で存在する。水系溶媒は、プライマー分散体中に、分散体全体の約20質量パーセントから約80質量パーセント、または約25質量パーセントから約70質量パーセント、または約30質量パーセントから約60質量パーセントまでの量で存在する。コーティング分散体は、水系溶媒中に分散された導電性充填剤を、フルオロエラストマーの約0.1質量パーセントから約10質量パーセント、または約0.5質量パーセントから約9質量パーセント、または約1質量パーセントから約5質量パーセントまでの量で、さらに含有することができる。安定剤は、プライマー分散体中に、フルオロエラストマーの約0.1から約10質量パーセント、または約0.5質量パーセントから約9質量パーセント、または約1質量パーセントから約5質量パーセントまでの量で、さらに存在することができる。
【0026】
硬化剤としては、アミノシラン、フェノールシラン、および金属酸化物が含まれる。アミノシランの典型的な例として、(N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、(N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−メチルジメトキシシラン)、(N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピル−ジメチルメトキシシラン)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピル−メチルジメトキシシランおよび3−アミノプロピル−ジメチルメチルメトキシシランが挙げられる。フェノールシランの例としては、HO−Ar−O−L−SiR(OR)3−nの式が挙げられ、式中、Arは炭素原子が約6から約30個の芳香族基を表し、Lはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン類、ペンチレン、およびヘキシレンからなる群から選択される連結基であり、Rはメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチルからなる群から選択されるアルキル基を表し、nは0から2までの整数である。金属酸化物の例としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化スズおよびそれらの混合物が挙げられる。フルオロエラストマーは、i)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのコポリマー、ii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのターポリマー、およびiii)フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシ、フッ素化エチレンプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのテトラポリマーからなる群から選択される。水系溶媒は、アルコール、約6から約20個の炭素を含む炭化水素、およびそれらの混合物をさらに含むことができる。安定剤の典型的な例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコールを含有する界面活性剤、およびポリアリルアミン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)などの導電性ポリマーが挙げられる。
【0027】
導電性粒子または充填剤の例としては、カーボンナノチューブ(CNT);カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック、グラファイト、グラフェン、フッ素化カーボンブラックなどのカーボンブラック類;金属、酸化スズ、二酸化アンチモン、アンチモンでドープされた酸化スズ、二酸化チタン、酸化インジウム、酸化亜鉛、インジウムでドープされた三酸化スズ、などの金属酸化物およびドープされた金属酸化物、金属炭化物等ならびにそれらの混合物;ならびにポリアニリンが挙げられる。導電性粒子は、プライマー層中に、プライマー層の固体全体の約0.1質量パーセントから約30質量パーセントおよびまたは約0.5質量パーセントから約20質量パーセント、または約1質量パーセントから約10質量パーセントまでの量で存在することができる。
【0028】
特に断らない限り、本明細書において使用される用語「カーボンナノチューブ(またはCNT)」は、少なくとも1つの小さい寸法を有する、例えば、幅または直径が100ナノメートルまでの細長い炭素材料を指す。種々の実施形態において、CNTは、約1nmから約100nm、または幾つか場合には、約10nmから約50nm、もしくは約10nmから約30nmまでの範囲の平均直径を有することができる。カーボンナノチューブは、少なくとも10、または約10から約1000、または約10から約100までの縦横比を有する。縦横比は長さの直径に対する比として定義される。
【0029】
種々の実施形態において、カーボンナノチューブは、カーボンナノシャフト、カーボンナノピラー、カーボンナノワイヤ、カーボンナノロッド、およびカーボンナノニードル、ならびにより糸、糸、布帛その他の典型的形態を有するカーボンナノファイバーを含むそれらの種々の官能化されおよび誘導体化されたフィブリル形態を含み得るが、それらに限定されない。1実施形態において、カーボンナノチューブ(CNT)類は、ナノメートルサイズのシリンダ、チューブ、または他の形状に巻き上げられた、グラフェンシートと呼ばれるグラファイトの1原子の厚さの層とみなすことができる。
【0030】
種々の実施形態において、カーボンナノチューブ(CNT)は、上に記載した全ての可能なカーボンナノチューブから変形されたカーボンナノチューブおよびそれらの組合せを含むことができる。カーボンナノチューブの変形は、物理的および/または化学的変形を含むことができる。
【0031】
種々の実施形態において、カーボンナノチューブ(CNT)は、単一壁カーボンナノチューブ(SWCNT)、多壁カーボンナノチューブ(MWCNT)、およびそれらの種々の官能化されたおよび誘導体化された、カーボンナノファイバーなどのフィブリル形態を含むことができる。
【0032】
カーボンナノチューブ(CNT)は、導電性または半導電性材料の形態を呈することができる。幾つかの実施形態において、CNTは、低いおよび/または高い純度の乾燥した紙の形態で得ることができ、または種々の溶液で購入することができる。他の実施形態において、CNTは加工されたままの精製されていない状態で入手可能であり、その場合、精製プロセスをそれに続いて実施することができる。
【0033】
カーボンナノチューブは、カーボンナノチューブとプライマー層との合計質量を基準にして、約0.1から約30質量パーセントまたは約0.5から約10質量パーセント、または約1から約5質量パーセントまでの量で存在する。
【0034】
フルオロプラスチックは、それらの優れた剥離性のために、オイルレス定着のためのトップコート材料として使用されてきた。定着用途に最も代表的なフルオロプラスチックであるPFAおよびPTFEは、化学的におよび熱的に安定でもあり、低い表面エネルギーを有する。しかしながら、これらの材料は、高度に結晶性でもあり、それ故加工するのが困難である。高温焼き付け(>350℃)が連続したフィルムにする唯一の方法である。シリコーンゴム層はおよそ250℃で分解し始める。トップコートが300℃を超える温度で溶融する間に、シリコーンゴムがガスまたは低分子を放出することは理論化されている。このことが、トップコート層に、図3(亀裂)および図4(泡)に示すように、亀裂または泡を生じさせる。フルオロプラスチック表面層のコーティング中に形成された亀裂および泡は、フルオロプラスチック表面層を高温で焼成する間に、シリコーンゴムの分解により惹起される。PFAに対して必要とされる焼き付け温度は320℃を超え、それはシリコーンゴムの分解温度(約250℃)をかなり超える。フルオロプラスチック表面層の形成中に、分解した材料が遊離するときに、亀裂または泡が形成される。現行のフルオロプラスチックのコーティング配合物は、欠陥のないフルオロプラスチックのトップコートを得るのに極端に狭い加工処理範囲を示す。フルオロプラスチックの定着トップコートの製作収率は非常に低い。
【0035】
トップコート配合物の典型的実施形態はフルオロポリマー粒子を含む。本明細書に記載した配合物における使用に適したフルオロポリマー粒子は、フッ素を含有するポリマーを含む。これらのポリマーは、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、およびそれらの混合物からなる群から選択されるモノマー反復ユニットを含むフルオロポリマーを含む。フルオロポリマーは、直鎖または分岐ポリマー、および架橋フルオロエラストマーを含むことができる。フルオロポリマーの例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA);テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー;ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)とのコポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VDF)、およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)のターポリマー;ならびにテトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニリデン(VF2)、およびヘキサフルオロプロピレン(HFP)のテトラポリマー、ならびにそれらの混合物が挙げられる。フルオロポリマー粒子は、化学的安定性および熱安定性を提供し、低い表面エネルギーを有する。フルオロポリマー粒子は、約255℃から約360℃または約280℃から約330℃までの溶融温度を有する。
【0036】
本明細書における定着部材の外側フルオロプラスチック表面層の厚さは、約10μmから約250μm、または約15μmから約100μmまでである。
【0037】
中間層は、室温加硫(RTV)シリコーンゴム、高温加硫(HTV)シリコーンゴム、低温加硫(LTV)シリコーンゴムおよび液体シリコーンゴム(LSR)などのシリコーンゴムを含むことができる。これらのゴムは知られており、市販で容易に入手することができ、例えば、SILASTIC(登録商標)735blackRTVおよびSILASTIC(登録商標)732RTV(両者ともDow Corning);ならびに106RTVシリコーンゴムおよび90RTVシリコーンゴム(両者ともGeneral Electric)などである。他の適当なシリコーン材料は、シロキサン(ポリジメチルシロキサンなど);Sampson Coatings、Richmond、Va.から入手可能なシリコーンゴム552などのフルオロシリコーン;ビニル架橋熱硬化性ゴムまたはシラノール室温架橋材料などの液体シリコーンゴム等を含む。他の具体的な例はDow Corning Sylgard 182である。
【0038】
外層のヤング率は、約50kpsiから約100kpsi、または約70kpsiから約95kpsi、または約85kpsiから約95kpsiまでである。外層の引っ張り応力は、約1000psiから約5000psi、または約2000psiから約4000psi、または約2700psiから約3300psiまでである。(なお、1psiは約6.9kPaである。)
【0039】
種々の実施形態において、コーティング組成物は、例えば、コーティング技法、押出し技法および/または成形技法(molding techniques)を使用してコートすることができる。本明細書において使用される用語「コーティング技法」は、分散体(dispersion)を材料または表面に、塗工、形成、または沈着する技法またはプロセスを指す。それ故、用語「コーティング」または「コーティング技法」は、本教示に特に限定されず、浸漬コーティング、塗装、ブラシコーティング、ローラコーティング、パッド印刷(pad application)、スプレーコーティング、スピンコーティング、キャスティング、または流動コーティングを使用することができる。
【0040】
具体的に、プライマー層はスプレーコーティング技法によりコートすることができる。典型的には、シリコーン成形された(silicone-molded)金属ロールがコーティング前に約40から80℃で加熱され、次に支持具上に載せられ、それは次に垂直方向に回転される。次にプライマー分散体がシリコーンロールに噴霧される。その結果、PFAなどのフルオロポリマーが、液体分散体を噴霧することによるかまたはフルオロポリマー樹脂粉末を粉末コーティングすることによるかのいずれかでコートされてトップコートを形成する。次に、コートされた定着材部分が約250℃で約30分間焼成されて室温に冷却され、次にオーブン中355℃で15分間焼成される。
【実施例】
【0041】
[実施例1]フルオロプラスチックの定着トップコートのためのアミノシラン架橋フルオロエラストマープライマー層を調製する一般的手順
【0042】
プライマーコーティングの調製:AO700(アミノシラン、0.35グラム)を10グラムのフルオロエラストマーラテックス(Solvay Solexisから得たTNラテックス)および10グラムの脱イオン水と混合して、プライマーコーティング分散体を形成した。
【0043】
CNT水性分散体:約1.14グラムのポリアクリル酸を約38.4グラムの脱イオン水中に溶解することにより、界面活性剤溶液を調製した。次に、約0.4グラムのCNTを界面活性剤溶液中に添加して、次に、高出力の超音波処理器を60%出力で用いて、約3分間溶液を超音波処理する。超音波処理は10回繰り返した。その結果生じる1wt%CNT水性分散体は安定でかつ均質である。
【0044】
CNT/PFAコーティング配合物:上に記載した約17.5グラムのCNT分散体を、約22.5グラムの質量を有するPFA分散体とさらに混合し、それによりPFA中約2%のCNTが生じる。CNT/PFA分散体は室温で安定である。コーティングに先だって、CNT/PFA分散体を約1分間超音波処理した。
【0045】
定着ロールの調製:モールド成形されたシリコーンを有する金属ロールを120℃で20分間予備加熱した。プライマー分散体を、ロールに回転させながらスプレーコートした。下塗りされたロールを120℃で20分間加熱して、トップコート分散体のCNT/PFA分散体をスプレーコーティングにより塗工した。コートされたロールは、先ずオーブン中250℃で20分間加熱して室温に冷却し、次に、オーブン中355℃で15分間焼成した。図5は生じた定着部材の写真であり、欠陥(亀裂または泡)は存在しない。
【0046】
[比較例]
定着ロールは、プライマーコーティングが透明なプライマー(Dupontから購入した990CL)であった以外は、上記の例で記載したようにして調製した。図6は、生じた定着部材の写真であり、それは表面の欠陥、例えば亀裂を示す。
【0047】
[実施例2]CNTで下塗りされた導電性定着ロールの調製
CNT水性分散体:約1.14グラムのポリアクリル酸を約38.4グラムの脱イオン水中に溶解することにより、界面活性剤溶液を調製した。約0.4グラムのCNTを界面活性剤溶液中に添加して、次に、高出力の超音波処理器を60%出力で用いて約3分間、溶液を超音波処理する。超音波処理は、間に10分の間隔をおいて10回繰り返す。生じる1wt%CNT水性分散体は安定でかつ均質である。
【0048】
定着ロールの調製:モールド成形されたシリコーンを有する金属ロールを120℃で20分間予備加熱し、続いてAO700(アミノシラン、0.35グラム)、10グラムのフルオロエラストマーラテックス(Solvay Solexisから得たTNラテックス)、および10グラムの脱イオン水の混合物のコーティングを噴霧して第1プライマー層を形成する。CNT水性分散体(5グラム)および3.5グラムのフルオロエラストマーラテックス(Solvay Solexisから得たTNラテックス)を、アミノシラン−フルオロエラストマープライマー上にスプレーコートして第2プライマー層を形成した。定着ロールはPFA(DuPontからのMP610)で粉末コートした。コートされたロールを赤外線オーブン中343℃で10分間硬化させて、約10Ωの表面抵抗率を有する良好な表面品質の定着ロールを製造した。
【符号の説明】
【0049】
10 受光部、11 電力供給装置、12 帯電器、13 画像入力装置、14 現像剤ステーション、15 転写手段、16 複写シート、17 クリーニングステーション、19 定着ステーション、20 定着ロール、21 加圧ロール、22 中間層、24 外層、25 基材、26 プライマー層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着部材を作製する方法であって、
基材上に配置されたシリコーン層を得るステップと、
フルオロエラストマーと硬化剤との水性分散体を含むプライマー組成物を前記シリコーン層上にコーティングするステップと、
フルオロプラスチック分散体を含むトップコート組成物を前記プライマー組成物上にコーティングするステップと、
前記プライマー組成物および前記トップコート組成物を加熱して定着部材を形成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
基材と、
前記基材上に配置されたシリコーン層と、
前記シリコーン層上に配置されたプライマー層であって、架橋アミノシランとフルオロエラストマーとを含む、プライマー層と、
前記プライマー層上に配置された、フルオロプラスチックを含む外層と、
を含む、定着部材。
【請求項3】
基材と、
前記基材上に配置されたシリコーン層と、
二重プライマー層であって、前記シリコーン層上に配置された、アミノシランとフルオロエラストマーとの架橋生成物を含む第1プライマー層と、前記第1プライマー層上に配置された、導電性充填剤とフルオロポリマーとを含む第2プライマー層と、を含む、二重プライマー層と、
前記第2プライマー層上に配置された、フルオロプラスチックを含む外層と、
を含む、定着部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−186462(P2011−186462A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45984(P2011−45984)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】