説明

定着用サブシステム

【課題】向上した表面剥離特性および機械的堅牢度を備えた定着器部材を有する定着用サブシステムを提供する。
【解決手段】定着器部材110は、基体102と、基体102上に堆積された、疎水性複合体を含むトップコート層106とを備える。疎水性複合体は、疎水性ポリマー中に分散された複数のカーボンナノチューブを含み、疎水性複合物を含むトップコート層106は、水で測定すると約120°以上の接触角を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、より詳細にはオイルレスの定着用サブシステム、およびそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
競合する定着用製品は、オイルレス定着、エネルギー効率、急速なウォームアップ時間(例えば、誘導加熱による)、ベルト形態、信頼性、および生産性に焦点を合わせる傾向にある。現在、定着、特にオイルレス定着に関する高度の要求に応える材料の解決策は、ほんのわずかしか存在しない。オイルレス定着には、ペルフルオロアルコキシ(PFA)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)がもっとも一般的に使用され、一方、高級品の定着には、バイトン型フルオロエラストマーが使用される。さらに、ポリマーの機械的強度および熱伝導率を向上させるために、フィラーがしばしば添加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−304374号公報
【特許文献2】特開2005−084160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、PFAは、機械的剛性;易損傷性;加工困難性(被覆法を使用する場合、高い硬化温度を必要とする)などの若干の欠点を有し、かつ材料改良の余地を制約している。一方、バイトン(商品名)は、力学的に可撓性であり、衝撃のエネルギーを吸収するその能力により損傷が少ない傾向があり、低い硬化温度を有し、かつ広い材料改良の自由度を備える。それにもかかわらず、バイトンは、その低いフッ素含有量のため、剥離用オイルを必要とする。
【0005】
したがって、定着器の性能を高めるために、向上した表面剥離特性および機械的堅牢度を備えた材料を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
定着器部材を含む定着用サブシステムであって、該定着器部材が、基体と、該基体上に堆積された疎水性複合体を含むトップコート層を備え、前記疎水性複合体が、疎水性ポリマー中に分散された複数のカーボンナノチューブを含み、かつ該疎水性複合体が、少なくとも約120°の水接触角を有する、定着用サブシステムである。実施の形態では、前記複数のカーボンナノチューブが、織物状の網の形態で堆積される。また別の実施の形態では、疎水性複合体が、平均で約0.025μm〜約3μmの範囲の大きさを有する複数の細孔を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】種々の実施形態による典型的な印刷装置を概略的に例示する図である。
【図2】種々の実施形態による、図1に示す典型的な定着器部材の断面を概略的に例示する図である。
【図3】種々の実施形態による、典型的な疎水性複合体を概略的に例示する図である。
【図4】種々の実施形態による、もう1つの典型的な定着器部材の断面を概略的に例示する図である。
【図5】種々の実施形態による、印刷装置の典型的な定着用サブシステムを概略的に例示する図である。
【図6】種々の実施形態による、定着用サブシステムの部材の典型的な作製方法を示す図である。
【図7】種々の実施形態による、典型的な画像形成方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
種々の実施形態により、定着用サブシステムが存在する。定着用サブシステムは、定着器部材を含むことができ、該定着器部材には、基体(基材)、および該基体上に堆積された疎水性複合体を含むトップコート層が含まれる。該疎水性複合体は、疎水性ポリマー中に分散された多数のカーボンナノチューブを含むことができ、かつ該疎水性複合体は、少なくとも約120°の水接触角を有する。
【0009】
種々の実施形態により、定着用サブシステムの部材の製造方法が存在する。該方法は、基体を含む定着器部材を準備すること、および多数のカーボンナノチューブ、安定剤、疎水性ポリマー、および溶媒を含有する分散液を準備することを含み、ここで、該多数のカーボンナノチューブは、単一壁(単層)カーボンナノチューブおよび多重壁(多層)カーボンナノチューブからなる群から選択される。該方法は、また、基体上に該分散液を塗布して、被覆された基体を形成すること、および該被覆された基体を加熱して、定着器部材の一番上の表面が少なくとも120°の水接触角を有するような疎水性複合体型被覆を形成することを含むことができる。
【0010】
本明細書中で使用する場合、「疎水性の」および「疎水性」という用語は、ほぼ90°以上の水接触角を有する表面(例えば、被覆表面)の濡れ性を指し、「超疎水性の」および「超疎水性」という用語は、ほぼ150°以上の水接触角および極めて低い接触角ヒステリシス(Δθ=θ−θ<1)を有する表面(例えば、被覆表面)の濡れ性を指す。
【0011】
図1は、典型的な印刷装置100を概略的に例示する。典型的な印刷装置100は、電子写真感光体172と、電子写真感光体172を一様に帯電させるための帯電ステーション174と、を含むことができる。電子写真感光体172は、図1に示すようなドラム型感光体、またはベルト型感光体(図示せず)でよい。典型的な印刷装置100は、また、電子写真感光体172上に潜像を形成するために、原稿(図示せず)を光源(図示せず)に露光することができる画像形成ステーション176を含むことができる。典型的な印刷装置100は、さらに、潜像を電子写真感光体172上の可視画像に変えるための現像用サブシステム178と、該可視画像を記録媒体120上に移すための転写用サブシステム179と、を含むことができる。印刷装置100は、また、該可視画像を記録媒体120上に固着するための定着用サブシステム101を含むことができる。定着用サブシステム101は、定着器部材110、加圧部材112、注油用サブシステム(図示せず)、およびクリーニングウェブ(図示せず)の1つ以上を含むことができ、ここで、該定着器部材および/または加圧部材112は、ナノファブリック(ナノ織物、nano-fabric)の形態の疎水性複合体を含むトップコート層を有することができる。いくつかの実施形態において、定着器部材110は、図1に示すような定着器ロール110でよい。他の実施形態において、定着器部材110は、図5に示すような定着器ベルト515でよい。種々の実施形態において、加圧部材112は、図1に示すような加圧ロール112、または加圧ベルト(図示せず)でよい。
【0012】
定着器部材110について再度言及すると、図2は、典型的な定着器部材110の断面を概略的に例示する。種々の実施形態において、典型的な定着器部材110は、基体102上に堆積された、疎水性複合体を含むトップコート層106を含むことができる。種々の実施形態において、疎水性複合体は、疎水性ポリマー中に分散された複数のカーボンナノチューブを含むことができる。若干の実施形態において、疎水性複合物を含むトップコート層106は、水で測定すると約120°以上の接触角を有することができる。いくつかの事例において、トップコート層106は、約50nm〜約300μmの厚さを有することができ、他の事例において、トップコート層106は、約3μm〜約80μmの厚さを有することができる。
【0013】
図3は、疎水性ポリマー309中に分散された複数のカーボンナノチューブ307を含む典型的な疎水性複合体型被覆306’の概略図である。いくつかの実施形態において、疎水性複合体型被覆306’は、図3に示すように、複数の細孔308を伴う多孔性ナノファブリックを含むことができる。複数の細孔308は、例えば、空気、疎水性ポリマー、およびこれらの混合物などの、任意の適切な材料で満たされてもよい。いくつかの事例において、細孔の大きさは、約0.01μm〜約10μm、他の事例において、約0.025μm〜約3μmの範囲でよい。いくつかの実施形態において、カーボンナノチューブ307は、疎水性ポリマー309に物理的に結合されてもよい。他の実施形態において、カーボンナノチューブ307は、疎水性ポリマー309に化学的に結合されてもよい。「化学結合」という用語は、本明細書中で使用する場合、カーボンナノチューブ307と疎水性ポリマー309との間の化学反応の結果として形成される共有結合および/またはイオン結合を指す。「物理的結合」という用語は、本明細書中で使用する場合、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用などの化学結合を除く任意の種類の結合を指す。
【0014】
種々の実施形態において、複数のカーボンナノチューブ307は、複数の単一壁カーボンナノチューブ(SWNT)および複数の多重壁カーボンナノチューブ(MWNT)の1種以上を含むことができる。いくつかの実施形態において、カーボンナノチューブは、半導電性カーボンナノチューブおよび金属性カーボンナノチューブの1種以上でよい。若干の実施形態において、複数のカーボンナノチューブ307のそれぞれは、少なくとも約10のアスペクト比を有することができる。しかし、カーボンナノチューブは、異なる長さ、直径、および/またはキラリティをもつことができる。カーボンナノチューブは、約0.5nm〜約50nmの直径、および約100nm〜数mmの長さを有することができる。いくつかの事例において、カーボンナノチューブ307は、疎水性複合体型被覆306’の総固体重量の約5〜約95重量%の、他の事例において、疎水性複合体型被覆306’の総固体重量の約10〜約90重量%の量で存在することができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、疎水性ポリマー309には、シリコーン、ポリペルフルオロポリエーテル、あるいはエチレン、プロピレン、スチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、およびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上のモノマー繰返し単位を有するポリマーを含めることができる。他の実施形態において、疎水性ポリマー309には、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、およびこれらの混合物からなる群から選択される1種以上のモノマー繰返し単位を有するフルオロポリマーを含めることができる。典型的な疎水性ポリマー309には、限定はされないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA);テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー;ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)とのコポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのターポリマー;およびテトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VF2)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのテトラポリマーを挙げることができる。
【0016】
種々の実施形態において、疎水性複合体型被覆306’は、約1000Ω/sq.未満の表面電気抵抗率を有することができる。
【0017】
図4は、もう1つの典型的な定着器部材410の断面を概略的に例示する。典型的な定着器部材410は、基体402上に堆積されたコンプライアント層(compliant layer)404と、コンプライアント層404上に堆積された疎水性複合体306’を含むトップコート層406と、を含むことができる。種々の実施形態において、コンプライアント層404は、シリコーン、フルオロシリコーンまたはフルオロエラストマーの中の少なくとも1種を含むことができる。コンプライアント層のための典型的な材料としては、限定はされないが、室温加硫(RTV)シリコーンゴム、高温加硫(HTV)シリコーンゴムおよび低温加硫(LTV)シリコーンゴムなどのシリコーンゴムを挙げることができる。典型的な市販のシリコーンゴムには、限定はされないが、SILASTIC(登録商標)735ブラックRTVおよびSILASTIC(登録商標)732RTV(ダウ・コーニング社、ミッドランド、ミシガン州);ならびに106RTVシリコーンゴムおよび90RTVシリコーンゴム(ジェネラル・エレクトリック社、オールバニー、ニューヨーク州)が含まれる。その他の適切なシリコーン材料には、限定はされないが、Sylgard(登録商標)182(ダウ・コーニング社、ミッドランド、ミシガン州);シロキサン類(好ましくはポリジメチルシロキサン類);シリコーンゴム552(サンプソン・コーティングス(Sampson Coatings)社、リッチモンド、ヴァージニア州)などのフルオロシリコーン;ジメチルシリコーン類;ビニル架橋熱硬化性ゴムまたはシラノール室温架橋材料などの液状シリコーンゴム、などが含まれる。いくつかの事例において、コンプライアント層404は、約10μm〜約10mmの、他の事例において、約3mm〜約8mmの厚さを有することができる。
【0018】
図1,2,4に示すような定着器部材110,410に再度言及すると、基体102,402は、例えば、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、およびポリアリールエーテルケトンなどの高温可塑性の基体でよい。他の実施形態において、基体102,402は、例えば、鋼鉄およびアルミニウムなどの金属基体でよい。基体102,402は、例えば、円筒およびベルトなどの任意の適切な形状を有することができる。ベルト形態の基体102,402の厚さは、約50μm〜約300μm、いくつかの事例では約50μm〜約100μmでよい。円筒またはロール形状の基体102,402の厚さは、約2mm〜約20mm、いくつかの事例では約3mm〜約10mmでよい。
【0019】
種々の実施形態において、定着器部材110,410は、また、場合によっては任意に1つ以上の接着層(図示せず)を含むことができ;該接着層(図示せず)を、基体402とコンプライアント層404との間に、および/またはコンプライアント層404とトップコート層406との間に、および/または基体102とトップコート層106の間に、場合によっては任意に堆積させて、各層106,404,406が互いに適切に結合されることを確実にし、かつ性能目標に合致させることができる。任意に適用し得る接着層のための典型的な材料としては、限定はされないが、エポキシ樹脂およびポリシロキサン類を挙げることができる。
【0020】
印刷装置100に再度言及すると、印刷装置100は、図1に示すような電子写真プリンターでよい。若干の実施形態において、印刷装置100は、インクジェットプリンター(図示せず)でよい。
【0021】
図5は、電子写真プリンターにおけるベルト形態の典型的な定着用サブシステム501を概略的に例示する。典型的な定着用サブシステム501は、定着器ベルト515、および定着ニップ511を形成して取り付けることができる回転可能な加圧ロール512を含むことができる。種々の実施形態において、定着器ベルト515および加圧ロール512は、図2に示すように基体102上に、または図4に示すようなコンプライアント層404上に堆積された、疎水性複合体306’を含むトップコート層106,406を含むことができ、その結果、トップコート層106,406は、水で測定した場合に約120°以上の接触角を有することができる。未定着のトナー画像を担持する記録媒体520を、定着するために定着ニップ511を通して供給することができる。
【0022】
疎水性複合体306’を含む定着器部材110,410,515の開示された典型的なトップコート層106,406は、オイルレス定着に必要とされる、疎水性ポリマーの低い表面エネルギーおよび化学的不活性を有する。さらに、典型的なトップコート層106,406は、定着器部材110,410,515の長寿命のために所望される疎水性ポリマーの不活性と共に、カーボンナノチューブの機械的、電気的、および熱的特性を併せもつ。さらに、トップコート層106,406は、例えば、噴霧コーティング、浸漬コーティング、ブラシコーティング、ローラーコーティング、スピンコーティング、注型、流し込みコーティングなどの単純な技術を使用して形成することができる。
【0023】
種々の実施形態において、図1,5に示すような加圧部材112,512は、また、典型的な定着器部材110,410の図2,4に示すような断面を有することができる。
【0024】
図6は、定着用サブシステムの部材に関する典型的な作製方法600を概略的に例示する。該方法600は、基体を含む定着器部材を準備するステップ622、および複数のカーボンナノチューブ、安定剤、疎水性ポリマー、および溶媒を含む分散液を準備するステップ624を含むことができる。複数のカーボンナノチューブは、複数の単一壁カーボンナノチューブおよび複数の多重壁カーボンナノチューブの1種以上でよく、ここで、複数のカーボンナノチューブのそれぞれは、少なくとも約10のアスペクト比を有することができる。例えば、高分子アミン、高分子アミンの塩、高分子酸、複合ポリマー、および天然ゴム材料などの、任意の適切な安定剤を使用することができる。典型的な安定剤としては、限定はされないが、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリ(塩酸アリルアミン)、およびこれらの混合物;ポリ(アクリル酸)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)と高分子酸との複合体、アラビアゴム(Gum Arobic)、キトサン、およびこれらの混合物;などを挙げることができる。種々の実施形態において、疎水性ポリマーには、シリコーン、ポリペルフルオロポリエーテル、ならびにエチレン、プロピレン、スチレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、およびペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群から選択される1種以上のモノマー繰返し単位を有するポリマーの中の1種以上を含めることができる。典型的な疎水性ポリマーとしては、限定はされないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、;ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA);テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー;ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)とのコポリマー;テトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのターポリマー;およびテトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VF2)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのテトラポリマーを挙げることができる。いくつかの事例において、疎水性ポリマーは、コロイドでよい。他の事例において、疎水性ポリマーは、ラテックスでよい。さらに、いくつかの他の事例において、疎水性ポリマーは懸濁液でよい。限定はされないが、水、アルコール、C〜C18脂肪族炭化水素、C〜C18芳香族炭化水素、エーテル、ケトン、アミド、およびこれらの混合物をはじめとする任意の適切な溶媒を使用できる。
【0025】
定着用サブシステムの部材に関する作製方法600は、さらに、基体上に分散液を塗布して被覆された基体を形成するステップ626を含むことができる。例えば、噴霧コーティング、浸漬コーティング、ブラシコーティング、ローラーコーティング、スピンコーティング、注型、および流し込みコーティングなどの任意の適切な技術を使用して、基体のある領域に分散液を塗布することができる。若干の実施形態において、基体上に分散液を塗布して被覆された基体を形成するステップ626は、該基体上にコンプライアント層を形成すること、および該コンプライアント層上に分散液を塗布して被覆された基体を形成することを含むことができる。限定はされないが、シリコーン、フルオロシリコーン、およびフルオロエラストマーをはじめとする任意の適切な材料を使用して、コンプライアント層を形成することができる。
【0026】
方法600は、また、被覆された基体を約200℃〜約400℃の範囲の温度で加熱して、ナノファブリックの形態の疎水性複合体型被覆を形成するステップ628を含むことができ、ここで、該疎水性複合体型被覆は、120°以上の水接触角を有することができる。理論によって拘束されるものではないが、加熱および/または乾燥工程中に、安定剤および溶媒はどちらも蒸発または分解し、疎水性複合型被覆中にカーボンナノチューブと疎水性ポリマーのみを取り残すとも考えられる。種々の実施形態において、疎水性複合型被覆は、平均で約0.1μm〜約5μmの範囲の細孔の大きさを有する複数の細孔を含むことができる。
【0027】
図7は、本発明の種々の実施形態による、典型的な画像形成方法700を示す。方法700は、ステップ781におけるがごとく、記録媒体上にトナー画像を形成することを含む。方法700は、また、定着器部材を含む定着用サブシステムを準備するステップ782を含むことができ、ここで、該定着器部材は、基体上に堆積されたナノファブリックの形態の疎水性複合体を含むトップコート層を含むことができ、該疎水性複合体は、疎水性ポリマー中に分散された複数のカーボンナノチューブを含むことができる。種々の実施形態において、トップコート層は、少なくとも約120°の水接触角を有することができる。いくつかの実施形態において、定着用サブシステムを準備するステップ782は、ローラー形状の定着用サブシステムを準備することを含むことができる。他の実施形態において、定着用サブシステムを準備するステップ782は、ベルト形態の定着用サブシステムを準備することを含むことができる。種々の実施形態において、定着用サブシステムの定着器部材は、定着器ロール、定着器ベルト、加圧ロール、加圧ベルトの中の1つ以上を含むことができる。方法700は、さらに、記録媒体上のトナー画像が定着ニップ中で定着器部材のトップコート層に接触するように、定着用サブシステムを通して記録媒体を供給するステップ783、および定着ニップを加熱することによって該記録媒体上にトナー画像を定着するステップ784を含むことができる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)CNT水性分散液の調製
約20重量%のポリ(アリルアミン)水溶液(約10g)を、約117gの水と3gの6N塩酸からなる溶液に溶解して約1重量%のポリ(アリルアミン)溶液を調製した。約99g(約99部)のポリ(アリルアミン)溶液に約1g(約1部)の多重壁カーボンナノチューブ(CNT)を添加すること、および該溶液を、プローブ型超音波処理器を使用して各回約1分の継続時間で約10回超音波処理することによって、カーボンナノチューブ(CNT)の水性分散液を調製した。生じたCNT水性分散液は、粒子分析計(Nanotrac252、マイクロトラック社(Microtrac Inc.)、ノースラーゴ、フロリダ州)で測定すると、約250nmの平均粒子径を有した。
【0029】
(実施例2)被覆用分散液の調製
デュポン社から入手した約0.167gの約60wt%ペルフルオロアルコキシポリマー(PFA)分散液を、実施例1のCNT水性分散液約10gと混合し、生じた被覆用分散液を、回転子のモビルロッド(Movil-Rod)(エベルバッハ社(Eberbach Corp.)、アナーバー、ミシガン州)で約2分間、ロールミル加工した。
【0030】
(実施例3)定着器部材の形成
実施例2の被覆用分散液を、区分されプライマーで被覆されたシリコーンゴム製ロール上に噴霧コーティングし、生じたトップコート層を、約350℃で約20分間、続いて360℃で約10分間ベーキングした。トップコート層は、一様であり、クラックはなかった。該トップコート層は、約10μmの厚さを有することが見出された。被覆されたケイ素の走査電子顕微鏡法(SEM)は、カーボンナノチューブ(CNT)が、疎水性複合体型被覆中に均一に分布していることを明らかにした。水接触角は、約140°と測定された。さらなる実験は、疎水性複合体型被覆の水接触角(WCA)がCNT濃度の増大と共に増加し、約50%のCNT担持量で約150°に達することを明らかにした。
【符号の説明】
【0031】
100 印刷装置、101 定着用サブシステム、102,402 基体、106,406 トップコート層、110 定着器部材(定着器ロール)、112,512 加圧部材(加圧ロール)、120,520 記録媒体、172 電子写真感光体、174 帯電ステーション、176 画像形成ステーション、178 現像用サブシステム、179 転写用サブシステム、306 疎水性複合体(疎水性複合体型被覆)、307 カーボンナノチューブ、308 細孔、309 疎水性ポリマー、404 コンプライアント層、410 定着器部材、501 定着用サブシステム、511 定着ニップ、515 定着器ベルト(定着器部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着器部材を含む定着用サブシステムであって、該定着器部材が、
基体と、
該基体上に堆積された疎水性複合体を含むトップコート層を備え、前記疎水性複合体が、疎水性ポリマー中に分散された複数のカーボンナノチューブを含み、かつ該疎水性複合体が、少なくとも約120°の水接触角を有する、定着用サブシステム。
【請求項2】
前記複数のカーボンナノチューブが、織物状の網の形態で堆積される、請求項1に記載の定着用サブシステム。
【請求項3】
前記疎水性複合体が、平均で約0.025μm〜約3μmの範囲の大きさを有する複数の細孔を含む、請求項1に記載の定着用サブシステム。
【請求項4】
前記細孔が、空気、疎水性ポリマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される物質で満たされる、請求項3に記載の定着用サブシステム。
【請求項5】
疎水性複合体型被覆が、
該疎水性複合体型被覆の総重量の、約10〜約90重量%の範囲の量で存在する複数のカーボンナノチューブと、
該疎水性複合体型被覆の総重量の、約10〜約90重量%の範囲の量で存在する疎水性ポリマーを含有し、前記疎水性ポリマーが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのコポリマー、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)とのコポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのターポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VF2)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)とのテトラポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の定着用サブシステム。
【請求項6】
前記定着器部材が、
基体上に堆積されたコンプライアント層と、
該コンプライアント層上に堆積された疎水性複合体を含有するトップコート層と、
をさらに備える、請求項1に記載の定着用サブシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−170134(P2010−170134A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9013(P2010−9013)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】