説明

定着装置、加熱ベルトの製造方法、画像形成装置

【課題】加熱部材の断面方向の熱伝導率を向上し得て、ウォームアップ時間の短縮化に貢献することができ、画像形成処理直後に省電モードとしても、次のウォームアップ時でも短時間で画像形成処理が可能となり、節電に貢献することができる定着装置を提供する。
【解決手段】発熱部材を内装した無端状金属製スリーブを基材とする加熱部材としての加熱ローラ22と、加熱ローラ22に圧接する加圧部材とを備え、加熱ローラ22の表面には長手方向が断面方向に沿って連続するようにカーボンナノチューブ27を分散配合したコーティング層26が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱部材を内装した加熱部材と、この加熱部材に圧接する加圧部材とを備えた定着装置、その定着装置に用いられる加熱ベルトの製造方法、及び定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザープリンタや複写機等の画像形成装置では、トナーによって定着紙の表面に形成したトナー像を溶融して定着させる定着装置が用いられている。
【0003】
また、このような定着装置には、発熱部材としてハロゲンヒータ等を内装した無端状金属製スリーブ等からなる加熱ローラと、この加熱ローラに圧接する加圧部材とを備えたものが周知である。
【0004】
この際、加熱ローラの表面には、薄膜抵抗発熱体としてのカーボンナノチューブが配合されたコーティング剤組成物を基材に塗布・硬化させた離型層を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−58228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の如く構成された定着装置にあっては、抵抗発熱体としての利用目的でカーボンナノチューブを配合しているが、このカーボンナノチューブには導電性や熱伝導性に優れていることが知られている。
【0006】
そこで、本発明では、カーボンナノチューブを配合した離型層を用いると共に、その熱伝導性を大幅に向上させることができる定着装置、加熱ベルトの製造方法、画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の定着装置は、発熱部材を内装した無端状金属製スリーブを基材とする加熱部材と、該加熱部材に圧接する加圧部材と、を備えた定着装置において、前記加熱部材の表面に、長手方向が断面方向に沿って連続するようにカーボンナノチューブを分散配合した伝熱層が設けられていることを特徴とする。
【0008】
この際、前記伝熱層は、フッ素樹脂を主成分とする離型層を含むもの、或いは、シリコーンゴムを主成分とする中間弾性層を含むことができる。
また、本発明の加熱ローラの製造方法は、発熱部材を内装した無端状金属製スリーブを基材とする加熱部材の表面にカーボンナノチューブを分散配合した溶融樹脂材料を塗布したうえで前記溶融樹脂材料に電界をかけ、前記溶融樹脂材料を硬化させて離型層を形成することを特徴とする。
【0009】
尚、溶融樹脂材料の硬化には、電界中において硬化させても良いし、電界をかけた後に電界を取り去ってから加熱硬化させても良い。
【0010】
また、本発明は上記した何れかの構成からなる定着装置を採用した画像形成装置とすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の定着装置によれば、加熱部材の断面方向の熱伝導率を向上し得て、ウォームアップ時間の短縮化に貢献することができ、画像形成処理直後に省電モードとしても、次のウォームアップ時でも短時間で画像形成処理が可能となり、節電に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の一実施形態に係る定着装置について、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係る定着装置を採用した画像形成装置の説明図、図2は本発明の一実施形態に係る定着装置の一例の説明図、図3は本発明の一実施形態に係る定着装置の要部の拡大断面図、図4は本発明の一実施形態に係る定着装置の他の要部の拡大断面図、図5は本発明の一実施形態に係る定着装置における加熱ローラの製造例の説明図である。
【0014】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタ1は、画像形成装置本体としてのプリンタ本体2の内部にスライド変位可能に格納された給紙カセット3と、給紙カセット3の収納空間4内に収納された転写紙(図示せず)を取り出す給紙部5と、プリンタ本体2の正面に設置された手差しトレイ6と、手差しトレイ6にセットされた転写紙(図示せず)を取り出す手差し給紙部7と、各給紙部5,7から供給された転写紙が搬送される搬送経路8と、搬送経路8のシート搬送方向上流側で各給紙部5,7の合流部よりもシート搬送方向下流側に配置されたレジストローラ対9と、レジストローラ対9よりも搬送経路8のシート搬送方向下流側に配置されて搬送中の転写紙の一面に画像を形成する画像形成部10と、画像形成部10よりも搬送経路8のシート搬送方向下流側に配置されて搬送中の転写紙の一面に形成された画像(トナー画像)を定着する定着装置11と、定着装置11を通過した転写紙の他面に画像を形成する場合に搬送経路8の定着装置11よりも搬送経路下流側からレジストローラ対9よりも搬送経路8のシート搬送方向上流側に引き戻す反転経路12と、搬送経路8の終端部に設けられた排紙部13とを備えている。
【0015】
また、画像形成部10は感光体ドラム14を備えていると共に、その感光体ドラム14の周囲に配置された帯電デバイス15、露光デバイス16、現像デバイス17、転写デバイス18、クリーニングデバイス19等を備えている。
【0016】
これにより、画像形成部10は、感光体ドラム14が図示しない駆動手段によって所定のプロセススピード(周速度)で回転駆動され、その表面が帯電デバイス15によって所定の極性・電位に均一に帯電される。
【0017】
帯電後の感光体ドラム14は、その表面に露光デバイス16によって静電潜像が形成される。ここで、露光デバイス16は、パーソナルコンピュータ等から出力された画像データに基づいて、感光体ドラム14の表面にレーザー光(図示せず)を照射し、感光体ドラム14の表面のレーザー光照射部分の電荷を除去して画像情報に応じた静電潜像を形成する。
【0018】
そして、感光体ドラム14の表面に形成された静電潜像は、現像デバイス17によってトナーコンテナ20から供給された電荷を有するトナーが静電的に付着されてトナー像として現像される。さらに、そのトナー像は、転写デバイス18によって搬送シートに転写像として転写される。
【0019】
この際、搬送シートにトナー像を転写した感光体ドラム14は、クリーニングデバイス19によって残留トナー等の除去処理並びに次の画像形成時の帯電のための除電処理が施される。
【0020】
定着装置11は、図2に示すように、発熱部材としてのハロゲンヒータ21を内装した円筒状の加熱ローラ22と、加熱ローラ22に圧接する加圧ローラ(加圧部材)23とを備え、この加圧ローラ23の圧接により転写紙を協働搬送するためのニップ部24が形成されている。
【0021】
加熱ローラ22は、アルミ又は鉄等の金属から構成されたローラ本体25と、その表面に設けられたフッ素樹脂等の離型層としてのコーティング層26とを備えている。
【0022】
このコーティング層26には、図3に示すように、カーボンナノチューブ(カーボンナノカプセル・カーボンナノコイル等を含む)27が熱伝導方向(厚さ方向)に沿って連続し且つ周方向に沿って列状に配置されている。
【0023】
ところで、本実施の形態では、ローラ本体25の厚さは0.5mm〜1.0mm、コーティング層26は、好ましくは厚さ5μm〜30μm、より好ましくは20μm〜25μmである。また、図4に示すように、ローラ本体25とコーティング層26との間にシリコーンゴム層28(厚さ100μm〜1mm)を設けても良い。この際シリコーンゴム層28においても、カーボンナノチューブ(カーボンナノカプセル・カーボンナノコイル等を含む)27を熱伝導方向(厚さ方向)に沿って連続し且つ周方向に沿って列状に配置することができる。さらに、コーティング層26は、フッ素チューブフィルム(厚さ30μm〜100μm)を熱収縮させたもの等、コーティング処理以外の構成を採用することができる。尚、この図4に示した実施の形態では、シリコーンゴム層28を中間弾性層とし、コーティング層26を離型層とし、これら両者を含む伝熱層を構成している。
【0024】
カーボンナノチューブ26は、図5に示すように、基材としてのローラ本体25の表面側に電極29をセットし、ポリイミド樹脂等の溶融液にカーボンナノチューブ27を配合分散させた状態で電界中(電極29)において加熱硬化(又は電界をかけた後に電界を取り去ってから加熱硬化)させることで所定方向(断面方向)に連続し且つ周方向に沿って列状に配置することができる。
【0025】
具体的には、コーティング層26の熱伝導率を向上させる為に、カーボンナノチューブ27を界面活性剤が添加された水溶液に分散させた後、遠心分離法等で精製したものをフッ素樹脂塗料中に分散配合してコーティング層26とすることによって高い熱伝導率(0.5W/m℃)を確保することができ、加熱ローラ22の表面の良好な離型性を保ちながら熱の貫流量を増加させることが可能となった。さらに、カーボンナノチューブ27の方向を電界中でコーティング層26のローラ内径側と外表面側とを貫通する厚さ方向に揃えることにより更なる熱伝導率の向上を図ることができ(2.0W/m℃〜2.4W/m℃)、熱貫流量が増すことで更なる省エネにつながる。尚、この時のカーボンナノチューブ27の添加量はフッ素樹脂塗料に対して8wt%であった。
【0026】
また、カーボンナノチューブ27は、アーク放電・レーザー蒸着・CVD(MOCVD等を含む)等の各種製法で製造した単層又は多層で直径約2nm〜50nm、長さが1μm〜10μm程度のコーティング層26の膜厚よりも短いものを用いた。
尚、カーボンナノチューブ27内に金属原子を内包したものを用いる等の応用も可能である。さらに、ここで印加する電圧はローラ本体25と29との間の距離を0.5mmとして電極29に−500V〜−1000Vを印加すると効果があった。
【0027】
このように、本発明の定着装置11によれば、カーボンナノチューブ27を断面方向に連続し且つ周方向に沿って配列したコーティング層26をローラ本体25の表面に設けた加熱ローラ22を用いることにより、加熱ローラ22の伝熱効果を向上させることができ、ウォームアップ時間の短縮化を図ることが可能となった。また、結果的に熱伝導度も向上させることができるため、加熱ローラ22の外周のマルチ帯電の電荷を瞬時に取り除くことができ、よって加熱ローラ22の表面(外周)にトナー等が静電気的に吸着してしまうことを防止することも可能となった。
【0028】
ところで、上記実施の形態では、本発明の定着装置11をプリンタ1に適用して説明したが、例えば、加熱ローラ22を採用した定着装置並びに画像形成装置全般に適用することができることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る定着装置を採用した画像形成装置の説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る定着装置の一例の説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る定着装置の要部の拡大断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る定着装置の他の要部の拡大断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る定着装置における加熱ローラの製造例の説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1…プリンタ(画像形成装置)
11…定着装置
21…ハロゲンヒータ(発熱部材)
22…加熱ローラ(加熱部材)
23…加圧ローラ(加圧部材)
26…コーティング層(伝熱層・離型層)
27…カーボンナノチューブ
28…シリコーンゴム層(伝熱層・中間弾性層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱部材を内装した無端状金属製スリーブを基材とする加熱部材と、該加熱部材に圧接する加圧部材と、を備えた定着装置において、
前記加熱部材の表面に、長手方向が断面方向に沿って連続するようにカーボンナノチューブを分散配合した伝熱層が設けられていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記伝熱層は、フッ素樹脂を主成分とする離型層を含むことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記伝熱層は、シリコーンゴムを主成分とする中間弾性層を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
発熱部材を内装した無端状金属製スリーブを基材とする加熱部材の表面にカーボンナノチューブを分散配合した溶融樹脂材料を塗布したうえで前記溶融樹脂材料に電界をかけ、前記溶融樹脂材料を硬化させて離型層を形成することを特徴とする加熱ローラの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の定着装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−180965(P2008−180965A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15016(P2007−15016)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】