説明

定着装置および画像形成装置

【課題】加熱ローラの寿命を向上できて、装置全体の寿命を向上できる定着装置を提供する。
【解決手段】加圧ベルト12の表面硬度は、加熱ローラ11の表面硬度よりも大きい。加圧ベルト12の全長L12は、加熱ローラ11のゴム層112の全長L112よりも長く、かつ、加圧ベルト12の両端部は、加熱ローラ11のゴム層112の両端部よりも外側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、複写機、レーザプリンタやファクシミリ等に用いられる定着装置、および、この定着装置を有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定着装置としては、加熱ローラと、この加熱ローラに接触する加圧ベルトと、この加圧ベルトの内部に配置されてこの加圧ベルトの内面を上記加熱ローラに向けて押圧する押圧部材とを備えたものがある(特開平11−231702号公報:特許文献1参照)。
【0003】
一般的に、上記加熱ローラの軸方向に関して、上記加圧ベルトの全長は、上記加熱ローラのゴム層の全長よりも短く、かつ、上記加圧ベルトの両端部は、上記加熱ローラのゴム層の両端部よりも内側に位置する。また、上記加圧ベルトの表面硬度は、上記加熱ローラの表面硬度よりも大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−231702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の定着装置では、上記加熱ローラの軸方向に関して、上記加圧ベルトの全長は、上記加熱ローラのゴム層の全長よりも短く、かつ、上記加圧ベルトの両端部は、上記加熱ローラのゴム層の両端部よりも内側に位置するので、加圧ベルトの両端部(エッジ)による応力集中が、加熱ローラに発生していた。
【0006】
そして、応力が集中する加熱ローラの部分では、その他の部分に比べて、加熱ローラのゴム層の歪みや、加熱ローラの外周面(表層)の摩耗が大きくなっていた。このため、加熱ローラの寿命が低減して、定着装置の寿命が低減していた。
【0007】
そこで、この発明の課題は、加熱ローラの寿命を向上できて、装置全体の寿命を向上できる定着装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の定着装置は、
互いに接触して共に回転する加熱回転体および加圧回転体と、
上記加熱回転体を加熱する加熱部と、
上記加圧回転体の内部に配置されると共に、上記加圧回転体を上記加熱回転体に向けて押圧する押圧部材と
を備え、
上記加熱回転体は、少なくともゴム層を有し、
上記加圧回転体の表面硬度は、上記加熱回転体の表面硬度よりも大きく、
上記加熱回転体の軸方向に関して、上記加圧回転体の全長は、上記加熱回転体のゴム層の全長よりも長く、かつ、上記加圧回転体の両端部は、上記加熱回転体のゴム層の両端部よりも外側に位置することを特徴としている。
【0009】
この発明の定着装置によれば、上記加熱回転体の軸方向に関して、上記加圧回転体の全長は、上記加熱回転体のゴム層の全長よりも長く、かつ、上記加圧回転体の両端部は、上記加熱回転体のゴム層の両端部よりも外側に位置するので、加圧回転体の両端部(エッジ)による応力集中が、加熱回転体に発生することがない。
【0010】
このため、加熱回転体のゴム層の歪みや、加熱回転体の外周面(表層)の摩耗を、抑えることができる。なお、加熱回転体の両端部(エッジ)による応力集中が、加圧回転体に発生しても、加圧回転体の表面硬度は、加熱回転体の表面硬度よりも大きいため、加圧回転体の表面の摩耗を防止できる。
【0011】
したがって、加熱回転体の寿命を向上できて、定着装置の寿命を向上できる。
【0012】
また、一実施形態の定着装置では、上記加熱回転体の軸方向に関して、上記押圧部材の全長は、上記加圧回転体の全長よりも長く、かつ、上記押圧部材の両端部は、上記加圧回転体の両端部よりも外側に位置する。
【0013】
この実施形態の定着装置によれば、上記加熱回転体の軸方向に関して、上記押圧部材の全長は、上記加圧回転体の全長よりも長く、かつ、上記押圧部材の両端部は、上記加圧回転体の両端部よりも外側に位置するので、押圧部材の両端部(エッジ)による応力集中が、加圧回転体に発生することがない。
【0014】
このため、加圧回転体の外周面(表層)の摩耗を、抑えることができる。したがって、加圧回転体の寿命を向上できて、定着装置の寿命を一層向上できる。
【0015】
また、一実施形態の定着装置では、上記押圧部材は、弾性を有する第1のパッドと、この第1のパッドよりも硬度の高い第2のパッドとから構成され、上記第1のパッドは、上記第2のパッドよりも、上記加熱回転体と上記加圧回転体との接触面における上記加圧回転体の回転方向の上流側に配置されている。
【0016】
また、一実施形態の定着装置では、上記押圧部材は、弾性を有する第1のパッドから構成される。
【0017】
また、この発明の画像形成装置は、上記定着装置を備えることを特徴としている。
【0018】
この発明の画像形成装置によれば、上記定着装置を備えるので、寿命を向上できる。
【発明の効果】
【0019】
この発明の定着装置によれば、上記加熱回転体の軸方向に関して、上記加圧回転体の全長は、上記加熱回転体のゴム層の全長よりも長く、かつ、上記加圧回転体の両端部は、上記加熱回転体のゴム層の両端部よりも外側に位置するので、加熱回転体の寿命を向上できて、定着装置の寿命を向上できる。
【0020】
この発明の画像形成装置によれば、上記定着装置を備えるので、寿命を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施形態を示す簡略構成図である。
【図2】本発明の定着装置の一実施形態を示す断面図である。
【図3】摺動部材の断面図である。
【図4】定着装置の平面図である。
【図5】定着装置の他の実施形態を示す平面図である。
【図6A】加熱ローラの断面図である。
【図6B】加圧ベルトの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0023】
(第1の実施形態)
図1は、この発明の画像形成装置の一実施形態である簡略構成図を示している。この画像形成装置は、定着装置10と作像装置30とを有する。作像装置30は、記録材Pに未定着のトナーを付着して画像を形成する。定着装置10は、トナーを溶融して記録材Pに定着させる。
【0024】
上記作像装置30は、トナー像を形成する感光体31と、この感光体31によって形成されたトナー像を上記記録材Pに転写する転写ローラ35とを備える。
【0025】
上記感光体31の表面は、帯電器32によって、一様に所定電位に帯電され、露光部33によって、原稿画像に応じた画像露光が施され、感光体31上に静電潜像が形成される。この静電潜像は、トナーを有する現像部34によって、現像される。つまり、この現像部34は、現像ローラ34aを有し、この現像ローラ34aは、現像バイアスを印加され、感光体31上に可視トナー像を現像する。
【0026】
上記転写ローラ35は、上記感光体31に圧接される。転写ローラ35は、転写電圧を印加され、感光体31上のトナー像を、記録材Pに転写する。
【0027】
上記定着装置10は、(加熱回転体としての)加熱ローラ11と(加圧回転体としての)加圧ベルト12とを有する。加熱ローラ11と加圧ベルト12とは、互いに外周面が接触して共に回転する。加熱ローラ11および加圧ベルト12は、互いに接触して記録材Pを搬送しつつこの記録材Pのトナーを定着させる。
【0028】
次に、この画像形成装置の作用を説明する。
【0029】
記録材Pを収容したカセット40から、給紙ローラ42にて、記録材Pを1枚ずつ引き出して、タイミングローラ41へ供給する。
【0030】
このタイミングローラ41は、感光体31にトナー像を形成するタイミングと同期をとって、記録材Pを感光体31と転写ローラ35との間に送り込む。
【0031】
感光体31と転写ローラ35との間に記録材Pを通過することで、記録材Pにトナー像が転写され、その後、定着装置10によって、記録材Pにトナー像を定着する。
【0032】
なお、感光体31上のトナー像の転写後、感光体31上に残留するトナーは、クリーナ37によって、除去清掃され、感光体31上に残留する電荷は、イレーサ38によって、消去される。
【0033】
図2は、この発明の定着装置の簡略構成図を示している。この定着装置は、互いに外周面が接触して共に回転する(加熱回転体としての)加熱ローラ11および(加圧回転体としての)加圧ベルト12と、上記加熱ローラ11を加熱する(加熱部としての)加熱ヒータ18と、上記加圧ベルト12の内部に配置されると共に上記加圧ベルト12を上記加熱ローラ11に向けて押圧する押圧部材13とを有する。上記加圧ベルト12と上記押圧部材13との間に、摺動部材17が配置され、この摺動部材17は、回転する上記加圧ベルト12の内面に摺動される。
【0034】
上記加熱ローラ11は、図示しないモータ等の駆動部によって、回転され、上記加圧ベルト12は、上記加熱ローラ11との摩擦によって、上記加熱ローラ11の回転に従動して回転する。
【0035】
そして、上記加熱ローラ11および上記加圧ベルト12は、互いに接触して記録材Pを搬送しつつこの記録材Pのトナーtを定着させる。具体的に述べると、上記加熱ローラ11と上記加圧ベルト12との接触によりニップ部Nを形成し、このニップ部Nによって、上記記録材Pの上記トナーtを溶融して定着しつつ上記記録材Pを搬送する。
【0036】
上記記録材Pは、例えば、用紙やOHPシートなどのシートである。この記録材Pの一面には、トナーtが付着され、このトナーtは、例えば、樹脂、磁性体または着色料などの加熱溶融性を有する材料からなる。
【0037】
上記加熱ローラ11は、上記記録材Pの一面(画像面)に接触する。上記加熱ローラ11は、中空ローラであり、内側から外側に順に、芯金111、ゴム層112および表層113を有する。加熱ローラ11の外径は、例えば、10〜50mmが望ましい。
【0038】
上記芯金111は、例えば、アルミや鉄等の金属が望ましく、パイプ形状であり、その厚さは、0.1〜5mm程度である。なお、軽量化およびウォームアップ時間を考慮すると、その厚さは、0.2〜1.5mm程度が望ましい。
【0039】
上記ゴム層112は、例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴム等であり、弾性を有しかつ耐熱性の高い材質が望ましい。その厚さは、0.05〜2mm程度が望ましい。上記ゴム層112の硬度は、例えば、10〜40°(JIS−A)であり、好ましくは25±3°(JIS−A)である。
【0040】
上記表層113は、例えば、PFA、PTFE、ETFE等のフッ素系チューブやフッ素系コーティング、または、シリコーン系チューブやシリコーン系コーティングであり、離型性を有し、導電性を有してもよい。その厚さは、5〜100μm程度が望ましい。
【0041】
フッ素系チューブとしては、例えば、三井・デュポンフロロケミカル(株)製PFA350−J、451HP−J、951HP Plus、等がある。水との接触角は、90度以上であり、望ましくは110度以上である。表面粗さは、Ra:0.01〜50μm程度が望ましい。
【0042】
上記加圧ベルト12は、内側から外側に順に、基材121および表層122を有する。加圧ベルト12の外径は、例えば、20〜100mmが望ましい。
【0043】
上記基材121は、例えば、ポリイミド、ポリフェニレンスルファイド、ニッケル、鉄やSUS等からなる。
【0044】
上記表層122は、例えば、PFA、PTFE、ETFE等のフッ素系チューブやフッ素系コーティング、または、シリコーン系チューブやシリコーン系コーティングであり、離型性を有し、導電性を有してもよい。その厚さは、50〜150μm程度が望ましい。
【0045】
なお、上記基材121と上記表層122との間に、ゴム層を設けてもよく、このゴム層は、例えば、シリコーンゴムやフッ素ゴム等であり、弾性を有しかつ耐熱性の高い材質が望ましい。その厚さは、0.05〜2mm程度が望ましいが、上記加熱ローラ11の上記ゴム層112よりも厚みが薄いものが選択される。上記加圧ベルト12にゴム層を用いる場合、その硬度は、例えば、20〜60°(JIS−A)であり、好ましくは43±3°(JIS−A)である。
【0046】
以上のように、上記加熱ローラ11および上記加圧ベルト12の各構成要素の材質、硬度、厚さの条件により、上記加熱ローラ11および上記加圧ベルト12の表面硬度が決定されるものであり、上記加熱ローラ11の表面硬度よりも、上記加圧ベルト12の表面硬度を、大きくしている。
【0047】
特に、上記加熱ローラ11には、上記ゴム層112が存在することにより、上記加熱ローラ11の表面硬度よりも、上記加圧ベルト12の表面硬度が、大きくなっている。加圧ベルトにゴム層を設ける場合であっても、上述の通り、上記加熱ローラ11の上記ゴム層112の方がより厚くかつより硬度が低いものを使用することにより、上記加熱ローラ11の表面硬度よりも、上記加圧ベルト12の表面硬度を、大きくする。
【0048】
上記押圧部材13は、弾性を有する第1のパッド131と、この第1のパッド131よりも硬度の高い第2のパッド132とから構成される。
【0049】
上記第1のパッド131は、例えば、シリコーン系ゴムやフッ素系ゴム等であり、弾性を有しかつ耐熱性の高い材質が望ましい。その厚さは、0.1〜10mm程度が望ましい。その硬度は、アスカーCで15〜30°が望ましい。
【0050】
上記第2のパッド132は、例えば、ポリフェニレンスルファイド、ポリイミドや液晶ポリマー等の樹脂、または、アルミや鉄等の金属、または、セラミック等からなる。
【0051】
上記第1のパッド131は、上記第2のパッド132よりも、上記加熱ローラ11と上記加圧ベルト12との接触面における上記加圧ベルト12の回転方向の上流側に配置されている。
【0052】
上記第1のパッド131は、上記第2のパッド132に取り付けられ、上記第2のパッド132は、保持フレーム16に取り付けられている。この保持フレーム16は、例えば、アルミや鉄等の金属からなり、引抜材や押出材や板金等で構成されている。
【0053】
上記第1のパッド131は、上記加熱ローラ11に向けて上記加圧ベルト12を弾性変形して押圧する。上記第2のパッド132は、上記第1のパッド131よりも、上記加熱ローラ11と上記加圧ベルト12との接触面における上記加圧ベルト12の回転方向の下流側で、上記加熱ローラ11に向けて上記加圧ベルト12を押圧する。
【0054】
上記第1のパッド131の弾性変形による押圧によって、上記記録材Pに上記トナーtを良好に定着する。上記第2のパッド132の押圧によって、上記加熱ローラ11にひずみを生じさせて、上記記録材Pと上記加熱ローラ11との付着力を低下し、上記記録材Pを容易に剥離できる。
【0055】
なお、上記押圧部材13としては、上記第2のパッド132を除いて、上記第1のパッド131のみから構成されるようにしてもよい。
【0056】
上記加圧ベルト12の内面には、図示しない潤滑剤供給部により、潤滑剤が塗布され、上記加圧ベルト12と上記摺動部材17との間の潤滑性を確保する。この潤滑剤供給部は、例えば、オイル塗布フェルトである。上記潤滑剤は、例えば、シリコンオイルである。上記潤滑剤の粘度は、200cs以上400cs以下である。
【0057】
図3に示すように、上記摺動部材17は、基材としてのガラスクロス171と、このガラスクロス171を被覆した耐熱性樹脂172とを有する。ここで、上記摺動部材17の摺動面が平滑であると、上記ニップ部Nの領域内の上記潤滑剤が圧力により押し出されてしまって、上記潤滑剤の層を形成できなくなる。そこで、上記摺動部材17では、上記ガラスクロス171に上記耐熱性樹脂172としてPTFEを含浸させ焼成することで、上記ガラスクロス171の凹凸を活かしながら、凹凸のある摺動面を形成している。
【0058】
図4に、上記加熱ローラ11の軸方向に関して、上記加熱ローラ11の全長(幅)L11、上記加熱ローラ11のゴム層112の全長(幅)L112、上記加圧ベルト12の全長(幅)L12、上記摺動部材17の全長(幅)L17、および、上記押圧部材13の全長(幅)L13の関係を、示す。
【0059】
なお、上記加熱ローラ11の両端部において、ゴム層112および表層113がなく、芯金111が露出している。つまり、ゴム層112の全長と表層113の全長とは、同じであり、芯金111の全長は、ゴム層112の全長および表層113の全長よりも長い。一方、上記加圧ベルト12において、基材121の全長と表層122の全長とは、同じである。
【0060】
上記押圧部材13の全長L13は、上記加熱ローラ11のゴム層112の全長L112よりも長く、かつ、上記押圧部材13の両端部は、上記加熱ローラ11のゴム層112の両端部よりも外側に位置する。
【0061】
上記押圧部材13の全長L13は、上記加圧ベルト12の全長L12よりも長く、かつ、上記押圧部材13の両端部は、上記加圧ベルト12の両端部よりも外側に位置する。
【0062】
上記押圧部材13の全長L13は、上記加熱ローラ11の全長L11よりも短い。
【0063】
上記加圧ベルト12の全長L12は、上記加熱ローラ11のゴム層112の全長L112よりも長く、かつ、上記加圧ベルト12の両端部は、上記加熱ローラ11のゴム層112の両端部よりも外側に位置する。
【0064】
上記押圧部材13の両端部は、上記摺動部材17の両端部よりも外側に位置し、かつ、上記摺動部材17の両端部は、上記加圧ベルト12の両端部よりも外側に位置する。上記摺動部材17の全長L17は、上記加圧ベルト12の全長L12よりも長く、上記押圧部材13の全長L13よりも短い。
【0065】
ここで、定着装置の寿命を決定しているのは、主に、加熱ローラ11および加圧ベルト12である。
【0066】
例えば、加熱ローラ11の寿命は、主に、表層113の摩耗、ゴム層112の破壊、芯金111からのゴム層112の浮き、および、ゴム層112からの表層113の浮きで、決定される。加圧ベルト12の寿命は、主に、表層122の摩耗で、決定される。
【0067】
上記現象は、荷重(圧力)が最も大きくなる位置で発生するため、従来では、軸方向の圧分布が均等になるように、押圧部材を、ローラに接触する方向に中凸状に形成し、または、押圧部材の両端部を、面取りまたはR状に形成していた。
【0068】
しかしながら、これだけでは十分ではなく、押圧部材の両端部が、加熱ローラ11および加圧ベルト12に接触し、その部分で応力集中が起こってしまっていた。
【0069】
そこで、本実施形態の構成の定着装置によれば、上記押圧部材13の全長L13は、上記加熱ローラ11のゴム層112の全長L112よりも長く、かつ、上記押圧部材13の両端部は、上記加熱ローラ11のゴム層112の両端部よりも外側に位置するので、押圧部材13の両端部(エッジ)による応力集中が、加熱ローラ11に発生することがない。このため、加熱ローラ11のゴム層112の歪みや、加熱ローラ11の外周面(表層113)の摩耗を、抑えることができる。
【0070】
また、上記押圧部材13の全長L13は、上記加圧ベルト12の全長L12よりも長く、かつ、上記押圧部材13の両端部は、上記加圧ベルト12の両端部よりも外側に位置するので、押圧部材13の両端部(エッジ)による応力集中が、加圧ベルト12に発生することがない。このため、加圧ベルト12の外周面(表層122)の摩耗を、抑えることができる。
【0071】
したがって、加熱ローラ11および加圧ベルト12の寿命を向上できて、定着装置の寿命を向上できる。
【0072】
また、上記押圧部材13の全長L13は、上記加熱ローラ11の全長L11よりも短いので、押圧部材13に邪魔されずに、加熱ローラ11の端部に、ベアリングやギヤなどの機械的駆動部分を設けることができ、加熱ローラ11の全長L11を大きくする必要がない。したがって、定着装置の大型化を抑制できる。
【0073】
また、上記加圧ベルト12の全長L12は、上記加熱ローラ11のゴム層112の全長L112よりも長く、かつ、上記加圧ベルト12の両端部は、上記加熱ローラ11のゴム層112の両端部よりも外側に位置するので、加圧ベルト12の両端部(エッジ)による応力集中が、加熱ローラ11に発生することがない。
【0074】
このため、加熱ローラ11のゴム層112の歪みや、加熱ローラ11の外周面(表層113)の摩耗を、抑えることができる。したがって、加熱ローラ11の寿命を向上できる。なお、加熱ローラ11の両端部(エッジ)による応力集中が、加圧ベルト12に発生しても、加圧ベルト12の表面硬度は、加熱ローラ11の表面硬度よりも大きいため、加圧ベルト12の表面の摩耗を防止できる。
【0075】
また、上記押圧部材13の両端部は、上記摺動部材17の両端部よりも外側に位置し、かつ、上記摺動部材17の両端部は、上記加圧ベルト12の両端部よりも外側に位置するので、上記押圧部材13の両端部が最も外側に位置し、押圧部材13の両端部(エッジ)による応力集中が、摺動部材17および加圧ベルト12のどちらにも発生することがない。このため、摺動部材17および加圧ベルト12の摩耗を抑えることができる。したがって、摺動部材17および加圧ベルト12の寿命を向上できる。
【0076】
また、上記摺動部材17の両端部は、上記加圧ベルト12の両端部よりも外側に位置するので、加圧ベルト12が軸方向に移動可能であり、かつ、摺動部材17が押圧部材13に取り付けられて軸方向に移動不能である場合、加圧ベルト12が回転中に軸方向に移動しても、加圧ベルト12の内面には、摺動部材17が介在し、押圧部材13が直接に接触しない。このため、押圧部材13による加圧ベルト12内面の傷や摩耗の発生を防止する。
【0077】
また、本実施形態の構成の画像形成装置によれば、上記定着装置を備えるので、寿命を向上できる。
【0078】
(第2の実施形態)
図5は、この発明の定着装置の第2の実施形態を示している。上記第1の実施形態と相違する点を説明すると、この第2の実施形態では、加熱ローラおよび加圧ベルトの構成が相違する。なお、この第2の実施形態において、上記第1の実施形態と同一の符号は、上記第1の実施形態と同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0079】
図5に示すように、加熱ローラ11Aにおいて、芯金111の全長は、ゴム層112の全長よりも長く、ゴム層112の全長は、表層113の全長よりも長い。芯金111の両端部は、ゴム層112の両端部の外側に位置し、ゴム層112の両端部は、表層113の両端部の外側に位置する。そして、加熱ローラ11Aの表面に露出しているゴム層112が、グリップ部G11を構成する。
【0080】
一方、加圧ベルト12Aにおいて、表層122の両端外側に、ゴム層123が設けられている。そして、加圧ベルト12Aの表面に露出しているゴム層123が、グリップ部G12を構成する。
【0081】
上記加熱ローラ11Aのグリップ部G11と、上記加圧ベルト12Aのグリップ部G12とは、互いに、接触する。
【0082】
なお、上記加熱ローラ11Aの全長L11、上記加熱ローラ11Aのゴム層112の全長L112、上記加圧ベルト12Aの全長L12、上記摺動部材17の全長L17、および、上記押圧部材13の全長L13の関係は、上記第1の実施形態(図4)と同じである。
【0083】
図6Aに示すように、上記加熱ローラ11Aは、内側より順に、芯金111、ゴム層112および表層113を有する。ゴム層112は、加熱ローラ11Aの中央部に相当する部分に、凹部を有し、この凹部に、表層113が、位置している。
【0084】
つまり、加熱ローラ11Aの端部は、内側から順に、芯金111およびゴム層112からなる。加熱ローラ11Aの中央部は、内側から順に、芯金111、ゴム層112および表層113からなる。
【0085】
図6Bに示すように、上記加圧ベルト12Aは、基材121と、この基材121の外側に位置する表層122およびゴム層123とを有する。ゴム層123は、加圧ベルト12Aの端部に相当する部分に、位置し、表層122は、加圧ベルト12Aの中央部に相当する部分に、位置している。
【0086】
つまり、加圧ベルト12Aの端部は、内側から順に、基材121およびゴム層123からなる。加圧ベルト12Aの中央部は、内側から順に、基材121および表層122からなる。
【0087】
このように、上記加熱ローラ11Aのグリップ部G11と、上記加圧ベルト12Aのグリップ部G12とは、互いに、接触することで、摩擦係数を大きくできる。
【0088】
したがって、上記加熱ローラ11Aのグリップ部G11と、上記加圧ベルト12Aのグリップ部G12とを、確実に圧接し、上記加熱ローラ11Aのグリップ部G11と、上記加圧ベルト12Aのグリップ部G12との間の摩擦抵抗を向上できて、上記加熱ローラ11Aの回転に従動して上記加圧ベルト12Aを確実に回転できる。
【0089】
なお、この発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、上記加熱ローラ11は、少なくともゴム層112を有していればよく、加熱ローラ11を構成する層の増減は、自由である。また、加熱ローラ11におけるゴム層112の位置は、変更可能である。また、加圧ベルト12を構成する層の増減は、自由である。また、上記加熱回転体として、上記加熱ローラ11の代わりに、エンドレスベルトを用いてもよい。また、上記加熱ローラ11の外部に、上記加熱ヒータ18を配置してもよい。
【0090】
また、画像形成装置としては、モノクロ/カラーの複写機、プリンタ、FAXやこれらの複合機など、どれであってもかまわない。
【符号の説明】
【0091】
10 定着装置
11,11A 加熱ローラ(加熱回転体)
111 芯金
112 ゴム層
113 表層
12,12A 加圧ベルト(加圧回転体)
121 基材
122 表層
123 ゴム層
13 押圧部材
131 第1のパッド
132 第2のパッド
17 摺動部材
18 加熱ヒータ(加熱部)
30 作像装置
N ニップ部
P 記録材
11 加熱ローラの全長
112 加熱ローラのゴム層の全長
12 加圧ベルトの全長
13 押圧部材の全長
17 摺動部材の全長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接触して共に回転する加熱回転体および加圧回転体と、
上記加熱回転体を加熱する加熱部と、
上記加圧回転体の内部に配置されると共に、上記加圧回転体を上記加熱回転体に向けて押圧する押圧部材と
を備え、
上記加熱回転体は、少なくともゴム層を有し、
上記加圧回転体の表面硬度は、上記加熱回転体の表面硬度よりも大きく、
上記加熱回転体の軸方向に関して、上記加圧回転体の全長は、上記加熱回転体のゴム層の全長よりも長く、かつ、上記加圧回転体の両端部は、上記加熱回転体のゴム層の両端部よりも外側に位置することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の定着装置において、
上記加熱回転体の軸方向に関して、上記押圧部材の全長は、上記加圧回転体の全長よりも長く、かつ、上記押圧部材の両端部は、上記加圧回転体の両端部よりも外側に位置することを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の定着装置において、
上記押圧部材は、弾性を有する第1のパッドと、この第1のパッドよりも硬度の高い第2のパッドとから構成され、
上記第1のパッドは、上記第2のパッドよりも、上記加熱回転体と上記加圧回転体との接触面における上記加圧回転体の回転方向の上流側に配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の定着装置において、
上記押圧部材は、弾性を有する第1のパッドから構成されることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一つに記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2010−191186(P2010−191186A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35322(P2009−35322)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】