説明

定着装置の誘導加熱装置

【課題】 加熱コイルを軸方向に分けて設けた構造の誘導加熱を用いた加熱装置において、軸方向に均一に加熱可能な定着装置の誘導加熱装置を提供すること。
【解決手段】 トナー画像を加熱する加熱回転体と、この加熱回転体を誘導加熱により加熱するために前記加熱回転体の回転軸方向に配設される複数の誘導コイルと、これら複数の誘導コイルに対応して前記加熱回転体の表面温度を検知する複数の温度センサと、これらの複数の温度センサにより検知された温度に応じて対応する前記誘導コイルを駆動する加熱駆動手段とを備え、前記複数の誘導コイルの隣接する誘導コイルは、その端部で前記加熱回転体の回転方向に対して互いに重なるように設けられて成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写装置などでトナー画像を記録媒体に定着させる定着装置に係り、特に誘導加熱によってトナーなどを加熱する誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トナー画像を熱定着するために加熱が必要であり、そのために誘導加熱によって軸方向に均一に加熱する加熱ローラが用いられる。この加熱ローラは、複写範囲に応じて加熱範囲を変えるなどのために、中央に設けられた加熱コイルのほかその両側に別の加熱コイルを用いる構造がよく用いられる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
しかし、このような構造の加熱ローラを用いる場合、その加熱コイルの隣接部位の温度が他の部位より低くなり、軸方向に均一に熱を加えることが困難になる問題があった。特に、加熱ローラでなくベルトを用いて定着を行う加熱装置ではこの温度ムラの問題は顕著となる。
【特許文献1】特開2004−6353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような構造の従来の加熱装置では均一に加熱することが困難であるという問題点があり、本発明はこのような従来の加熱装置の問題点にかんがみてなされたもので、加熱コイルを軸方向に分けて設けた構造の誘導加熱を用いた加熱装置において、軸方向に均一に加熱可能な定着装置の誘導加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1によれば、トナー画像を加熱する加熱回転体と、この加熱回転体を誘導加熱により加熱するために前記加熱回転体の回転軸方向に配設される複数の誘導コイルと、これら複数の誘導コイルに対応して前記加熱回転体の表面温度を検知する複数の温度センサと、これらの複数の温度センサにより検知された温度に応じて対応する前記誘導コイルを駆動する加熱駆動手段とを備え、前記複数の誘導コイルの隣接する誘導コイルは、その端部で前記加熱回転体の回転方向に対して互いに重なるように設けられて成ることを特徴とする定着装置の誘導加熱装置を提供する。
【0006】
本発明の請求項2によれば、請求項1記載の定着装置の誘導加熱装置において、前記複数の隣接する誘導コイルの端部は、それらの隣接する誘導コイルの重ねられる部分において外周方向の合計の幅が各誘導コイルの幅とほぼ同じになるよう設けられて成ることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3によれば、トナー画像を加熱する加熱回転体と、この加熱回転体を誘導加熱により加熱するために前記加熱回転体の内部で回転軸方向に配設される複数の誘導コイルと、これら複数の誘導コイルの隣接する誘導コイルの端部の部分に設置されたコアと、前記複数の誘導コイルに対応して前記加熱回転体の表面温度を検知する複数の温度センサと、これらの複数の温度センサにより検知された温度に応じて対応する前記誘導コイルを駆動する加熱駆動手段とを備えて成ることを特徴とする定着装置の誘導加熱装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加熱コイルを軸方向に分けて設けた構造の誘導加熱を用いた加熱装置において、軸方向に均一に加熱することが可能な定着装置の誘導加熱装置を提供することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1(a)(b)に、本発明一実施形態の加熱装置の、構造例の正面図と側断面図を示す。誘導加熱装置10は、図示しない回転駆動機構により回転される円筒状の加熱ローラ11と、この加熱ローラ11の外周面上で、接触することなく近接して設けられた誘導コイル12a,12b,12cとから成る。
【0010】
誘導コイル12a,12b,12cは各々、渦状に捲回されており、これらのコイルは加熱ローラの外周面で軸方向に一線状になっておらず、図1(a)に示すように誘導コイル12bの各端部が誘導コイル12a及び誘導コイル12cと一部分が重複するように設けられ、したがって上記誘導コイルの加熱領域13a,13b,13cが一部、オーバーラップ(重複)することになる。
【0011】
そして、これらの誘導コイル12a,12b,12cに、図2により後述する電流を流すことによって、図示しない回転駆動機構により加熱ローラ11が矢印14方向(回転方向)に回転し外周面から加熱され、例えば位置15においてトナー画像を溶かして記録媒体に固着させる(図示せず)。また、加熱ローラ10の外周に設けられた誘導コイル12a,12b,12c各々に対応してその部分の温度を検知する温度センサ18a,18b,18cが設けられている。
【0012】
上記誘導コイル12a,12b,12cに電流を流す加熱駆動回路の構成例を図2に示す。この加熱駆動回路は、低周波交流電源ASに接続される高周波電源HFSと、この高周波電源HFSの出力周波数を変化させる外部信号源OSSと、高周波電源HFSの出力高周波を、給電線FC0,FC1,FC2,FC3を介して選択的に誘導コイル12a,12b,12cに供給する誘導コイル選択部F1,F2,F3とから成る。
【0013】
4つの給電線FC0,FC1,FC2,FC3のうち、給電線FC0は3つの誘導コイル12a,12b,12cのそれぞれに共通接続され、かつ誘導コイル選択部F1,F2,F3を経由して高周波電源HFSの出力端の安定電位側に接続されている。
【0014】
給電線FC1は誘導コイル12bの他端に接続され、同様に、給電線FC2は誘導コイル12aの他端に、また給電線FC3は誘導コイル12cの他端にそれぞれ接続されている。
【0015】
誘導コイル選択部F1,F2,F3は帯域通過型のフィルタから成り、その通過帯域が互いに相違する。例えば、誘導コイル選択部F1の通過帯域が1MHz、誘導コイル選択部F2の通過帯域が2MHz、誘導コイル選択部F3の通過帯域が3MHzに設定される。
【0016】
そして、誘導コイル選択部F1は、高周波電源HFSと誘導コイル12bとの間に直列に介在し、同様に、誘導コイル選択部F2は、高周波電源HFSと誘導コイル12aとの間に、また誘導コイル選択部F3は、高周波電源HFSと誘導コイル12cとの間に直列に介在する。加熱ローラ10各部の温度は温度センサ18a,18b,18cにより検知され、記録媒体が接触すると温度が低くなるので、それを検知して温度を上げるように各誘導コイルが駆動される。
【0017】
高周波電源HFSの高周波出力電圧が誘導コイル選択部F1,F2,F3を経由して静止状態の誘導コイル12b,12a,12cに選択的に印加される。即ち、外部信号源OSSを操作して高周波電源HFSの高周波出力の周波数を、例えば10MHzの周波数で交互に1MHz及び2MHzにサイクリックに切り換えると誘導コイル選択部F1は1MHzを通過させる。したがって、高周波電源HFSが1MHzを出力しているときには誘導コイル12aが時分割的に付勢され、対応する加熱領域13aが加熱される。
【0018】
また、高周波電源HFSが2MHzを出力しているときには、誘導コイル12bとこれに対向する加熱ローラの加熱領域13bが加熱される。したがって、加熱領域13aと加熱領域13bが加熱されるので、これらの端部においても温度が下がることなく13a,13bが均一に加熱されることになる。
【0019】
これに対して、外部信号源OSSを操作して高周波電源HFSの高周波出力の周波数を例えば10MHzの低周波で交互に1MHz、2MHz及び3MHzにサイクリックに切り換えると、誘導コイル選択部F1,F2,F3がそれぞれ通過周波数の高周波電力を通過させるので、誘導コイル12a,12b,12cが交互に時分割的に付勢される。
【0020】
上述のように、誘導コイル12aと誘導コイル12bによる加熱領域13a,13b、誘導コイル12bと誘導コイル12cによる加熱領域13b,13cは一部オーバーラップしているので、その結果、これら誘導コイルの端部においても温度が下がることなく、均一に加熱されることになる。
【0021】
なお、外部信号源OSSを操作して、高周波電源HFSの高周波出力の周波数を例えば、2Mhzに切り換えると、誘導コイル選択部F2のみが高周波電力を通過させ、誘導コイル12bのみが付勢される。したがってこの場合には、誘導コイル12bに対応する加熱領域13bのみが加熱されることになる。これらの加熱領域の選択は温度センサ21a,21b,21cにより検知された温度によりなされることになる。
【0022】
このように、本発明のこの実施形態によれば、誘導コイル12a,12b,12cの互いの端部が一部、重複するように設けられているので、端部における温度の低下は生ぜず、定着範囲に対応する加熱範囲に応じてその範囲で均一に加熱されることになる。
【0023】
図3に、本発明の他の実施形態の誘導加熱装置の構造を示す。すなわち、この場合には誘導コイル32a,32b,32cの互いに重複部分におけるコイルの形状を、なだらかに変形したものである。図3における番号30〜33a,33b,33cは図1における番号10〜13a,13b,13cに対応する。加熱ローラ30の外周に設けられた誘導コイル32a,32b,32c各々に対応してその部分の温度を検知する温度センサ38a,38b,38cが設けられている。
【0024】
誘導コイル32a,32b,32cをこのような形状にする場合、加熱ローラの回転方向における誘導加熱時間に対応する距離36ab,36bcが、誘導コイル32a,32b,32cの誘導加熱時間に対応する距離36a,36b,36cとほぼ等しくすることができるので、図1に示した構造の場合よりも誘導コイルの重複の程度を比較的緩やかにすることができる利点がある。
【0025】
なお、上記実施形態では、誘導コイルが加熱ローラの外周に設けられている場合について説明したが、加熱ローラの内部に誘導コイルが設けられる場合にも同様に適用することができる。図3に示す構造の加熱装置の場合にも図2に示したような温度センサが各加熱領域に対応して設けられている。
【0026】
本発明の更に他の実施形態について、次に説明する。図4はこの実施形態おける加熱装置の構造を示す正面図である。同図において、この加熱装置40は、回転駆動される円筒状の加熱ローラ41と、この加熱ローラ41内に配設された誘導コイル42a,42b,42cと、誘導コイル42aと誘導コイル42bの間及び誘導コイル42bと誘導コイル42cとの間に設けられたコア43a,43bとから成る。加熱ローラ40の内部に設けられた誘導コイル42a,42b,42c各々に対応してその部分の温度を検知する温度センサ48a,48b,48cが設けられている。
【0027】
誘導コイル42a,42b,42cの駆動は図2に示した回路により上述の場合と同様に行うことが可能である。即ち、必要に応じて、誘導コイル42a,42b,42cを個別に駆動することも、誘導コイル42a,42bを同時に、あるいは誘導コイル42a,42b,42cを同時に駆動することも可能である。
【0028】
この実施形態においては、誘導コイル42aと誘導コイル42bの間、及び誘導コイル42bと誘導コイル42cの間にコア43a,43bが各々設けられているので、この部分において誘導磁束を密にすることができ、したがって加熱ローラのこれに対応する部分を誘導加熱によって周囲よりも少し高くすることができ、誘導コイルの端部における温度低下を押さえて結果的に、加熱ローラを軸方向に均一にすることが可能となる。
【0029】
なお、本発明の実施形態の図2に示す駆動回路は、高周波電源を用いるものであるが、本発明は低周波で誘導加熱装置を駆動制御することも可能である。この種の回路例を図5に示す。この駆動回路は、図示しないセンサに接続された領域選択部51と、この領域選択部51に接続された電源52aと電源52bと、これらの電源に接続された誘導コイル53a,53bと、これらの誘導コイルにより渦電流を生ぜしめ、トナー画像を加熱する誘導加熱装置54とから成る。センサによって温度低下を検知し、領域選択部51は、電源52a,52bを選択的に駆動することにより加熱範囲を制御する。この実施形態によれば、高周波の電源が不要となる利点がある。
【0030】
ところで、上記実施形態の説明では、回転する加熱ローラを誘導コイルにより加熱する例について説明したが、回転し加熱するものは、ベルトのようなものであってもよく、本発明では、一般的に加熱回転体という。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明一実施形態における定着装置の加熱装置の構造例を示す図。
【図2】上記本発明一実施形態の加熱装置の駆動回路例を示す図。
【図3】本発明の他の実施形態の加熱装置の構造例を示す図。
【図4】本発明の更に他の実施形態の加熱装置の構造例を示す図。
【図5】本発明に用いる加熱装置の他の駆動回路例を示す図。
【符号の説明】
【0032】
10,30,40,54・・・誘導加熱装置、
11,31,41・・・加熱ローラ、
12a,12b,12c,32a,32b,32c,42a,42b,42c,53a,53b・・・誘導コイル、
18a,18b,18c,38a,38b,38c,48a,48b,48c・・・温度センサ、
51・・・領域選択部、
52a,52b・・・電源、
AS・・・低周波交流電源、
HFS・・・高周波電源、
OSS・・・外部信号源、
F1,F2,F3・・・誘導コイル選択部、
FC0,FC1,FC2,FC3・・・給電線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー画像を加熱する加熱回転体と、
この加熱回転体を誘導加熱により加熱するために前記加熱回転体の回転軸方向に配設される複数の誘導コイルと、
これら複数の誘導コイルに対応して前記加熱回転体の表面温度を検知する複数の温度センサと、
これらの複数の温度センサにより検知された温度に応じて対応する前記誘導コイルを駆動する加熱駆動手段とを備え、
前記複数の誘導コイルの隣接する誘導コイルは、その端部で前記加熱回転体の回転方向に対して互いに重なるように設けられて成ることを特徴とする定着装置の誘導加熱装置。
【請求項2】
前記複数の隣接する誘導コイルの端部は、それらの隣接する誘導コイルの重ねられる部分において外周方向の合計の幅が各誘導コイルの幅とほぼ同じになるよう設けられて成ることを特徴とする請求項1記載の定着装置の誘導加熱装置。
【請求項3】
トナー画像を加熱する加熱回転体と、
この加熱回転体を誘導加熱により加熱するために前記加熱回転体の内部で回転軸方向に配設される複数の誘導コイルと、
これら複数の誘導コイルの隣接する誘導コイルの端部の部分に設置されたコアと、
前記複数の誘導コイルに対応して前記加熱回転体の表面温度を検知する複数の温度センサと、
これらの複数の温度センサにより検知された温度に応じて対応する前記誘導コイルを駆動する加熱駆動手段とを備えて成ることを特徴とする定着装置の誘導加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−91116(P2006−91116A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273483(P2004−273483)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)
【Fターム(参考)】