説明

定着装置及びこれを用いた画像形成装置

【課題】記録媒体上に形成された画像に対しレーザ光を用いて加熱溶融した後に加圧して定着するにあたり、加圧部位に対してレーザ光照射位置を接近配置可能とするレーザ照射を行う。
【解決手段】内部空間を有すると共にレーザ光が透過可能な素材にて構成される透過部3aを具備し、この透過部3aを回転移動させる回転部材3と、この回転部材3に対向して設けられ、当該回転部材3との間に接触加圧域Nを形成すると共にこの接触加圧域Nにて記録媒体1上の熱可塑性の作像材料による画像を加圧しながら回転部材3との間で記録媒体1を移動搬送する対向部材4と、回転部材3の内部空間に設けられ、記録媒体1の搬送路のうち記録媒体1上の画像が接触加圧域Nに至る前の予め規定されたレーザ光照射位置LPにて記録媒体1上の画像に回転部材3の透過部3aを介してレーザ光を照射するレーザ光照射手段5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、記録媒体上のトナー像に対し像変調レーザビームと同期して高エネルギレーザービームを走査させ、トナーを溶融若しくは軟化させた後、ロール対を通過させることでトナーに圧力を加え、記録媒体に強固に定着させるレーザ定着方式が開示されている。また、特許文献2には、記録紙の搬送によって記録紙全域にレーザビームが照射できるように配置された複数のレーザ装置に対し、セルフォックレンズ等の集光光学系を複数配置し、レーザ装置から出射されたレーザビームを記録紙上に集光させて未定着トナーを定着させるようにしたレーザ定着方式が開示されている。更に、特許文献3には、レーザビームを記録紙上の未定着トナー像に照射する際、レーザスポットを楕円形にすると共にビームの照射領域が記録紙搬送方向に沿って広がるように配置したレーザ定着方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−168469号公報(実施例、図2)
【特許文献2】特開平7−191560号公報(実施例、図3)
【特許文献3】特開2007−57903号公報(特許請求の範囲、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、記録媒体上に形成された画像に対しレーザ光を用いて加熱溶融した後に加圧して定着するにあたり、加圧部位に対してレーザ光照射位置を接近配置可能とするレーザ照射を行うようにした定着装置及びこれを用いた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、内部空間を有すると共にレーザ光が透過可能な素材にて構成される透過部を具備し、この透過部を回転移動させる回転部材と、この回転部材に対向して設けられ、当該回転部材との間に接触加圧域を形成すると共にこの接触加圧域にて記録媒体上の熱可塑性の作像材料による画像を加圧しながら前記回転部材との間で記録媒体を移動搬送する対向部材と、前記回転部材の内部空間に設けられ、記録媒体の搬送路のうち当該記録媒体上の熱可塑性の作像材料による画像が前記接触加圧域に至る前の予め規定されたレーザ光照射位置にて記録媒体上の熱可塑性の作像材料による画像に前記回転部材の透過部を介してレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、を備えることを特徴とする定着装置である。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る定着装置において、前記レーザ光照射手段は、前記記録媒体の搬送路のうち前記接触加圧域に至る前に近接し、かつ、記録媒体上の熱可塑性の作像材料による画像が加熱溶融状態のまま接触加圧域に至る位置に前記レーザ光照射位置を設定するものであることを特徴とする定着装置である。
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る定着装置において、前記回転部材の透過部を冷却する冷却装置を更に備えることを特徴とする定着装置である。
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに係る定着装置において、前記回転部材の透過部表面を清掃する清掃装置を更に備えることを特徴とする定着装置である。
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれかに係る定着装置において、前記対向部材は、記録媒体の搬送路のうち前記接触加圧域より上流側で当該接触加圧域に繋がる部位に記録媒体を湾曲状に支持する支持面を有するものであり、前記レーザ光照射手段は、前記対向部材の支持面に対応した位置に設けたレーザ光照射位置に向かってレーザ光を照射するものであることを特徴とする定着装置である。
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに係る定着装置において、前記レーザ光照射位置に照射されたレーザ光の反射レーザ光を再度当該レーザ光照射位置に向かって反射させる反射部材を更に備えることを特徴とする定着装置である。
請求項7に係る発明は、記録媒体上に熱可塑性の作像材料を用いて画像を形成する画像形成部と、この画像形成部にて記録媒体上に形成された熱可塑性の作像材料による画像を定着する請求項1ないし6のいずれかに係る定着装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、装置構成の小型化を図りながら、レーザ光照射手段による加熱部位と回転部材及び対向部材の接触加圧域による加圧部位とを接近配置することができる。
請求項2に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、画像光沢度を高くすることができる。
請求項3に係る発明によれば、回転部材の必要以上の温度上昇を防ぐことができる。
請求項4に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、画像汚れの発生を抑えることができる。
請求項5に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、画像へのレーザ光による定着効率を向上させることができる。
請求項6に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、定着効率を向上させることができる。
請求項7に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べて、装置構成の小型化を図りながら、レーザ光照射手段による加熱部位と回転部材及び対向部材の接触加圧域による加圧部位とを接近配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(a)は本発明が適用された定着装置の実施の形態の概要を示す説明図であり、(b)はレーザ光照射手段の各所配置を想定した場合の説明図である。
【図2】本発明に係る定着装置の実施の形態モデルと比較の形態モデルとの説明図である。
【図3】実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成の概略を示す説明図である。
【図4】実施の形態1の定着装置を示す説明図であり、(a)は概略図、(b)は(a)のb−b断面を示す。
【図5】図4(a)の要部拡大図である。
【図6】(a)(b)はレーザスタックの一例を示す説明図であり、(a)は一列構成のもの、(b)は二列構成のものを示す。
【図7】(a)(b)はレーザスタックの他の変形例を示す説明図である。
【図8】実施の形態2の定着装置の概要を示す説明図である。
【図9】(a)は実施の形態3の定着装置の概要を示し、(b)は実施の形態4の定着装置の概要を示す説明図である。
【図10】(a)(b)は実施の形態5の定着装置の概要を示す説明図であり、(a)は外部反射部材を用いた態様、(b)は内部反射部材を用いた態様を示す。
【図11】(a)(b)は実施の形態6の定着装置の概要を示す説明図であり、(a)は回転部材の斜視図、(b)は(a)の側面図を示す。
【図12】実施の形態7に係る画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図13】(a)は実施の形態7の定着装置の概要を示し、(b)は(a)の要部拡大図である。
【図14】(a)は実施の形態8の定着装置の概要を示し、(b)は実施の形態9の定着装置の概要を示す説明図である。
【図15】(a)は実施の形態10の定着装置の概要を示し、(b)は実施の形態11の定着装置の概要を示す説明図である。
【図16】実施例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
◎実施の形態の概要
先ず、本発明が適用された定着装置の実施の形態の概要について説明する。
図1(a)は本発明を具現化する実施の形態モデルに係る定着装置であって、記録媒体1上の熱可塑性作像材料2による画像を加熱加圧定着する定着装置となっている。そして、定着装置は、内部空間を有すると共にレーザ光が透過可能な素材にて構成される透過部3aを具備し、この透過部3aを回転移動させる回転部材3と、この回転部材3に対向して設けられ、当該回転部材3との間に接触加圧域Nを形成すると共にこの接触加圧域Nにて記録媒体1上の画像を加圧しながら回転部材3との間で記録媒体1を移動搬送する対向部材4と、回転部材3の内部空間に設けられ、記録媒体1の搬送路のうち記録媒体1上の画像が接触加圧域Nに至る前の予め規定されたレーザ光照射位置LPにて記録媒体1上の画像に回転部材3の透過部3aを介してレーザ光を照射するレーザ光照射手段5と、を備えた構成のものとなっている。
【0009】
ここで、「接触加圧域Nに至る前の予め規定された位置」とは、レーザ光の照射により加熱された画像が接触加圧域Nにて十分加圧できるように、レーザ光照射位置LPとして定めた位置を意味する。つまり、接触加圧域Nの入口に達した時点では画像の表面の固化が進んでいない状態となるようなレーザ光照射位置LPである。
このような構成を採ることにより、回転部材3と対向部材4とによって形成される接触加圧域Nの入口に対し、記録媒体1上のレーザ光照射位置LPを接近配置することが容易になり、レーザ光によって加熱された作像材料2による画像が後続の接触加圧域Nにて急激に放熱されることで、接触加圧域Nの出口では作像材料2表面が回転部材3の透過部3aの表面によって平滑化され、光沢度の向上がなされるようになる。
【0010】
また、作像材料2の代表的態様としては電子写真方式に用いられるトナーが挙げられるが、これに限られず、例えばインクジェット方式等に用いられる加熱溶融タイプのインキであっても差し支えない。そして、本実施の形態モデルでは、作像材料2はレーザ光照射手段5によるレーザ光の照射により少なくとも一旦加熱溶融されることが好ましいが、回転部材3と対向部材4との接触加圧域Nにて有効に加圧が作用される状態であれば、例えば溶融状態に達せずに半溶融または軟化状態であっても差し支えなく、融点やガラス転移点を参考に予め規定しておけばよい。
更に、使用する記録媒体1としては、代表的には枚葉紙(カット紙)や連続紙(ロール紙)が挙げられるが、紙媒体以外のフィルム媒体であってもよい。
【0011】
更にまた、回転部材3の透過部3aとしてはドラム状(パイプ状)の態様やベルト状の態様を含む。そして、この透過部3aはレーザ光が透過できる素材のもので構成されていればよいが、必ずしも透過部3a全域がレーザ光の透過できる素材のもので構成されなくてもよく、例えば記録媒体1のサイズ(幅や長さ)を超える部分はレーザ光が透過できない素材で構成する態様であっても差し支えない。
また、対向部材4は、回転部材3との間で記録媒体1を搬送でき、両者間で接触加圧域Nが形成できるようになっていればよく、ロール状であってもよいし、ベルト状であっても差し支えないが、接触加圧域Nを有効に形成する観点からすれば、弾性部を有する構成のものが好ましい。
【0012】
更に、レーザ光照射手段5の代表的態様としては、レーザ光の発光部位が記録媒体1の移動方向に対して交差する方向に一列に複数設けられたアレイタイプのものが挙げられるが、これに限られず、発光部位を記録媒体1の移動方向に沿って複数層重ねたスタックタイプであってもよい。また、アレイの代わりに、個別のレーザダイオードを複数配置するようにしても差し支えない。更には、十分な光量が確保できるようになっていれば、例えばスキャン方式であってもよい。
【0013】
次に、レーザ光照射位置LPでの作用について説明する。
先ず、図1(b)に示すように、本発明では、回転部材3の内部空間にレーザ光照射手段5が配置される(図中Aで示す位置)ようになり、このとき、レーザ光は記録媒体1上のレーザ光照射位置LPに向かって照射され、記録媒体1に対するレーザ光の入射角はθとなる。これに対し、レーザ光照射位置LPに同じ入射角θでレーザ光を回転部材3の外部から照射しようとすると、図のBで示す位置に仮想線で示すレーザ光照射手段5”を配置する必要があり、このとき、レーザ光は回転部材3によって遮断されるため、Bの位置のレーザ光照射手段5”を配置することはできなくなる。そのため、回転部材3の外部にレーザ光照射手段5を配置しようとすると、図のCで示すような位置にレーザ光照射手段5’を配置せざるを得なくなる。このとき、レーザ光は記録媒体1上のレーザ光照射位置LP’に向かって照射されるようになり、その時のレーザ光の入射角はθ’となる。したがって、Aの位置では記録媒体1上の接触加圧域Nに近い位置にレーザ光照射位置LPが設定されるようになるが、Cの位置では接触加圧域Nより遠い位置にレーザ光照射位置LP’が設定される。更に、Cの位置のレーザ光照射手段5’では記録媒体1に対する入射角がθ’となり、Aの位置のレーザ光照射手段5よりも大きく斜めになる。
【0014】
そこで、図2を用いて、実施の形態モデルのように回転部材3の内側よりレーザ光を照射する方式と、比較の形態モデルとして回転部材の外側よりレーザ光を照射する方式とを比較すると、次のようになる。
今、レーザ光の幅(記録媒体1の移動方向に沿った長さ)を同一とすると、実施の形態モデルでは、接触加圧域Nの入口に近接してレーザ光照射位置LPを設定することが容易になるが、比較の形態モデルでは接触加圧域Nの入口より遠い位置にレーザ光照射位置LP’を設定せざるを得なくなる。また、実施の形態モデルでは記録媒体1の表面に対し垂直方向に近く照射できるのに対し、比較の形態モデルでは記録媒体1の表面に対し斜めに照射せざるを得なくなる。
【0015】
そのため、実施の形態モデルでは記録媒体1上のレーザ光による実効照射幅Wは狭く抑えられるのに対し、比較の形態モデルでは実効照射幅W’が広くなると共に、記録媒体1の変動等の揺れの影響も受け易くなる。したがって、実施の形態モデルでは、加熱溶融された作像材料2が接触加圧域Nで加圧されると共に急激に放熱され、接触加圧域N通過後の表面が良好に形成される一方、レーザ光の照射強度も有効活用されるようになるのに対し、比較の形態モデルでは、加熱溶融された作像材料2が接触加圧域Nに達するまでに時間的余裕があり、接触加圧域Nに至るまでに作像材料2の温度低下を生じ易く、接触加圧域Nによる十分な加圧効果が発揮されず、接触加圧域N通過後の表面性状が実施の形態モデルより劣るようになる。更に、記録媒体1の変動の影響を受け易い等の問題もある。
それ故、本実施の形態モデルのように回転部材3の内側にレーザ光照射手段5を配置することに大きな有効性がある。
【0016】
次に、本実施の形態モデルをレーザ光照射位置LPと作像材料2との関係でみると、レーザ光照射手段5は、記録媒体1の搬送路のうち接触加圧域Nに至る前に近接し、かつ、記録媒体1上の画像が十分加熱溶融された状態のまま接触加圧域Nに至る位置にレーザ光照射位置LPを設定することが好ましい。このことにより、画像に対する接触加圧域Nでの加圧効果が十分生かされるようになる。
【0017】
回転部材3の透過部3aは、レーザ光が照射されるため温度が上昇することが予想されるが、回転部材3の温度が上昇し過ぎると記録媒体1にしわが発生したり、その他の部材や回転部材3そのものに様々な悪影響を及ぼしたりする虞がある。これを避けるために温度上昇を抑える観点からすれば、回転部材3の透過部3aを冷却する冷却装置を更に備えることが好ましい。これにより、回転部材3と対向部材4との接触加圧域Nにて、加熱により昇温した記録媒体1から回転部材3(具体的には透過部3a)が吸熱しても、透過部3aの余分の温度上昇を抑え、以降の接触加圧域Nでの放熱の効果的な継続がなされるようになる。このような冷却装置の設置場所は回転部材3の透過部3aの冷却がなされる位置であれば特に限定されず、透過部3aより内側の回転部材3の内部空間に設けるようにしてもよいし、透過部3aの外側に設けるようにしてもよい。例えば内側に設ける場合には、ヒートシンクやヒートパイプ等を用いる方式が採用され、外側に設ける場合には冷却ファン等を用いる方式が採用される。
【0018】
また、回転部材3の透過部3aの汚れ発生を抑える観点からすれば、回転部材3の透過部表面を清掃する清掃装置を更に備えることが好ましい。これにより、仮にレーザ光によって加熱溶融された作像材料2が接触する透過部表面に付着しても清掃装置にて透過部表面の清掃がなされるようになり、記録媒体1上の画像への汚れ付着を抑えるようになる。
このような清掃装置としては特に限定されないが、透過部表面での表面性状を保つ観点からすれば、ブラシロールが好適である。
【0019】
更に、レーザ光照射位置LPでの記録媒体1の姿勢を安定化させる観点からすれば、対向部材4は、記録媒体1の搬送路のうち接触加圧域Nより上流側で当該接触加圧域Nに繋がる部位に記録媒体1を湾曲状に支持する支持面を有するものであり、レーザ光照射手段5は、対向部材4の支持面に対応した位置に設けたレーザ光照射位置LPに向かってレーザ光を照射することが好ましい。このような対向部材4の支持面は記録媒体1として例えば枚葉紙を用いる場合に対応するようにしても差し支えないが、記録媒体1として例えば連続紙等の連なった態様の場合に容易に適用されるようになる。
【0020】
また、レーザ光照射位置LPに照射されたレーザ光の反射レーザ光を有効に活用する観点からすれば、レーザ光照射位置LPに照射されたレーザ光の反射レーザ光を再度当該レーザ光照射位置LPに向かって反射させる反射部材を更に備えることが好ましい。このとき、反射部材としては反射レーザ光をレーザ光照射位置LPに向かって反射させるようになっていればよく、例えば凹面鏡で構成される態様が好適である。尚、反射部材の設置場所は回転部材3の透過部3aより外側に設けるようにしてもよいし、透過部3aの内側の内部空間に設けるようにしてもよく、更には、双方に設けるようにしても差し支えない。
【0021】
次に、図面に示す実施の形態に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
◎実施の形態1
図3は前述の実施の形態モデルの定着装置が適用された実施の形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
同図において、画像形成装置は、例えば電子写真方式を用いるものであり、記録媒体1上に作像材料として例えば四色のトナーを用いて複数色のトナー像を形成する各色画像形成部10(具体的には黒色画像形成部10K、シアン画像形成部10C、マゼンタ画像形成部10M、イエロー画像形成部10Y)と、これら各色画像形成部10にて形成された各色トナー像を多重化された状態で搬送する中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21上の多重化トナー像を例えば記録紙等の記録媒体1に一括転写する一括転写装置(二次転写装置)22と、この二次転写装置22にて記録媒体1上に転写された未定着トナー像を定着する定着装置40等で構成されている。
【0022】
ここで、各色画像形成部10は使用するトナーを除き略同様の構成となっているため、代表的に黒色画像形成部10Kを例に説明する。黒色画像形成部10Kは、表面に図示しない感光層を有して矢印E方向に回転可能な円筒状の感光体11を具備している。この感光体11の周囲には、感光体11の感光層を予め定めた電位に帯電する帯電装置12、帯電装置12にて帯電された感光層を例えばレーザ光を用いて選択照射し、静電潜像を形成する露光装置13、露光装置13によって形成された静電潜像をトナーにて現像することで可視像化する現像装置14、感光体11上のトナー像を中間転写ベルト21上に転写する一次転写装置15、中間転写ベルト21への転写後の感光体11上の残留トナーを清掃する清掃装置16等が配置されている。
尚、図中、符号23〜27は中間転写ベルト21を張架する張架ロール、符号28は二次転写後の中間転写ベルト21上の残留トナーを清掃するベルト清掃装置、符号29は二次転写後の記録媒体1を定着装置40に向けて搬送する搬送ベルト、符号30は定着後の記録媒体1を画像形成装置外に排出する排出ロール、符号31は画像形成前の記録媒体1を収容する収容部、符号32〜34は記録媒体1を二次転写位置に向かって搬送する搬送ロールとなっている。
【0023】
そのため、本実施の形態では、各色画像形成部10にて感光体11上に形成された各色トナー像が一次転写装置15にて中間転写ベルト21上に転写されることで、中間転写ベルト21上に多重化トナー像が形成されるようになる。一方、記録媒体1は、収容部31から搬送ロール32〜34によって二次転写位置に搬送され、中間転写ベルト21上で多重化されたトナー像が二次転写装置22にて記録媒体1上に一括転写される。二次転写装置22にて多重化トナー像が一括転写された記録媒体1は、そのまま搬送ベルト29にて搬送され、定着装置40にて定着される。定着を終えた記録媒体1は排出ロール30にて画像形成装置外に排出されるようになる。
【0024】
次に、本実施の形態における定着装置40について図4を基に詳細に説明する。
ここで、図4(a)は、本実施の形態の定着装置40を記録媒体1の移動方向に対して横から見た概略図であり、(b)は(a)のb−b断面を後述する回転部材41について示した概略図である。
本実施の形態の定着装置40は、記録媒体1上の未定着トナー像が形成された面側に対応してレーザ光が透過可能な円筒状の透過部42を有する回転部材41が配置され、この回転部材41と記録媒体1を挟むように対向して配置されたロール状の対向部材49とで構成されている。そのため、回転部材41と対向部材49との互いの接触加圧域Nにて記録媒体1を加圧しながら搬送するようになっている。
【0025】
回転部材41の透過部42としては、例えばガラス(好適には石英ガラス)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等のパイプ形状のものが用いられ、使用するレーザ光が容易に透過でき、かつ、十分な剛性を有する素材で構成されている。そして、透過部42の両端には、この透過部42を固定支持するためのフランジ43、44が設けられており、一方のフランジ44側は図示外の例えばサブフレームに設けられたベアリング45によって自由に回転できるようになっている。また、もう一方のフランジ43には、図示外の駆動機構(例えばギアやベルト等を用いてフランジ43を回転させる機構)が取り付けられている。
更に、回転部材41の内部空間には、図示外のサブフレーム等に固定支持された取付シャフト46が回転部材41を貫通するように設けられており、この取付シャフト46にレーザヘッド47(図では三つのレーザヘッドを例として図示している)が固定支持されている。そして、レーザ光照射位置LPが、透過部42の外側で、かつ、接触加圧域Nの入口の近傍位置になるようにレーザヘッド47の取り付け角度が調整されている。
そのため、回転部材41の回転動作に拘わらず、レーザ光照射位置LPは一定位置に保たれるようになっている。尚、レーザヘッド47は、取付シャフト46に沿って設けられた配線や印刷配線板等によって、回転部材41より外部の電源制御系等と接続されている。
【0026】
レーザヘッド47は、内部から発生されるレーザ光を記録媒体1の移動方向に交差する幅方向に沿って所定量だけ拡散させると共に、移動方向に所定量絞り込んで照射させるようになっており、例えば複数のLD(半導体レーザ)を一列に並べ、レーザ光の放出端部側に光束を調整する光束調整部材を備えたものとなっている。そして、このようなレーザヘッド47を複数配置することで、記録媒体1の幅方向全域を照射できるようになっている。
本実施の形態では、レーザヘッド47を一列に複数並べた構成としたが、トナー像に対する加熱量が十分確保できるようになっていれば、記録媒体1の幅方向にレーザ光をスキャンする方式を採用するようにしても差し支えない。
【0027】
次に、このような構成の定着装置40における作用について説明する。
記録媒体1上の未定着トナー像は、回転部材41と対向部材49との接触加圧域Nの入口近傍のレーザ光照射位置LPにてレーザ光により加熱される。この加熱により未定着トナー粒子は十分加熱溶融され、加熱溶融されたトナー像は記録媒体1との密着性を高めながら表面温度の低下を生じつつ接触加圧域Nに至る。このとき、本実施の形態ではレーザ光照射位置LPと接触加圧域Nとが近接配置されているため、トナー粒子の温度が十分保たれた状態で接触加圧域Nに至り、ここでトナー表面が放熱されながら全体が加圧されるようになる。このため、トナー表面は、特に、接触加圧域Nで直接接触する透過部42の表面性に倣った外観で冷却固化されるようになる。このように冷却固化されると、特に、トナー密度が高い例えばベタ画像では表面光沢の向上がなされるようになる。更に、接触加圧域Nの近傍にレーザ光照射位置LPが設定されることにより、搬送される記録媒体1の振れも抑えられ、レーザ光の照射強度が記録媒体1全域に亘って安定化するようにもなる。
【0028】
また、本実施の形態では、回転部材41の透過部42として、その表面にトナーとの付着力を小さくし、かつ、耐摩耗性や表面性を向上させる観点から、例えばシリコーン系樹脂やフッ素系樹脂を塗布処理するようにしたり、例えばPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)チューブを施すようにしてもよい。
【0029】
また、図5は、図4(a)の回転部材41の要部を拡大したもので、実線で示す位置にレーザヘッド47を配置すれば、レーザヘッド47からのレーザ光は回転部材41の透過部42に対してほぼ直交する方向で照射されるようになり、透過部42での散乱光が少なくなり、レーザ光照射位置LPでの照射強度が大きくなる。このとき、記録媒体1に対するレーザ光の入射角はθ、レーザ光照射位置LPから接触加圧域Nまでの距離はMとなる。更に、このようにレーザヘッド47を回転部材41の内部空間に設けることで、レーザヘッド47を例えば二点鎖線で示す位置に配置するようにすれば、記録媒体1に対してほぼ直交する方向(入射角がほぼゼロ)からレーザ光を照射させることができ、記録媒体1上のスポットがより狭く、単位面積当たりの照射強度が上昇する。
つまり、本実施の形態によれば、レーザヘッド47の角度を調整することで、レーザ光照射位置LPの位置を所望の位置に合わせたり、また、レーザ光照射位置LPでの照射強度を考慮したりすることが容易になされるようになる。
【0030】
図6(a)は、レーザ光照射手段の一例として複数のレーザ発光素子401を記録媒体1の移動方向に交差する幅方向に沿って一列に配置したレーザアレー400を示すものである。このレーザアレー400は、一枚の基板402の端部に等間隔に並べられた複数のレーザ発光素子401と、このレーザ発光素子401のレーザ光放出端部に組み合わされた光束調整部材403とを備えている。この光束調整部材403は、レーザ発光素子401からのレーザ光を記録媒体1の移動方向に交差する幅方向に沿って予め規定された量だけ拡散させると共に、記録媒体1の移動方向に沿って予め規定された量だけ絞り込むようになっており、例えば基板402の幅方向に円柱状に延びるコリメートレンズからなるものとなっている。そのため、レーザ光404は、記録媒体1のレーザ光照射位置LPでは記録媒体1の幅方向に略直線状の照射領域405を呈するようになる。
また、図6(b)は、(a)を記録媒体1の移動方向に沿って二列配置したもので、このように複数の基板402(402a、402b)を並べるようにしてもよく、例えば一つのレーザ発光素子401で照射強度が不足する場合に、複数の照射を繰り返すことでトナーの加熱溶融を促進するような構成とすることもできるようになる。尚、(b)の構成要素は(a)と同様のため、同様の符号を付し、ここではその説明は省略する。
【0031】
また、図7(a)(b)は、レーザヘッド47の他の例を示すものであり、このようなレーザヘッド47を用いるようにしてもよい。
図7(a)は、記録媒体1の移動方向に沿って複数列(ここでは二列の例を示す)のレーザヘッド471、472を並べたもので、このとき、移動方向に対する照射域長さや単位面積当たりの照射強度は同様の構成のものとしている。つまり、レーザ光照射位置LPを二箇所(LP1、LP2)に配置したものとなっている。このような構成では、記録媒体1上のトナー像に対し先ず上流側のレーザヘッド471にてレーザ光の照射がなされ、所定時間が経過した後に、更に、下流側のレーザヘッド472にて次のレーザ光の照射がなされるようになる。
【0032】
このように照射すると、記録媒体1上のトナー密度の高い部分(例えばベタ画像部分)では、上流側のレーザヘッド471によってトナー像と記録媒体1との界面温度が少し上昇する。その後、照射がない期間では、この温度は徐々に下降するもののトナー密度が高い分表面積が小さいことから放熱量は少なく、温度低下は抑えられる。次に、下流側のレーザヘッド472によってもう一度加熱されることで、界面温度も十分上昇し、十分な密着性を確保できるようになる。一方、トナー密度の低い部分(例えばハイライト画像部分)では一旦界面温度が十分上昇するが、この温度は急激に低下する。そして、下流側のレーザヘッド472にて、もう一度加熱がなされ、界面温度の上昇がもう一度なされる。つまり、トナー密度の高い部分では二度の照射によって界面温度が確保されるのに対し、トナー密度の低い部分では一度の照射によって界面温度が確保され、これを繰り返すことになる。
したがって、記録媒体1上のトナー密度によらず、いずれも十分な密着性の確保がなされるようになる。
【0033】
また、図7(b)は、二種のレーザヘッド471、472を用い、夫々照射条件を変えた構成のものとなっている。つまり、上流側のレーザヘッド471の単位面積当たりの照射強度を下流側のレーザヘッド472に比べ小さくし、その分、記録媒体1の移動方向に対する照射域長さを長くすることで、下流側のレーザヘッド472に比べ照射時間が長くなるように構成されている。尚、このとき、トナー密度の高い部分に合わせて、上流側のレーザヘッド471にてトナーが十分加熱溶融できる照射強度及び照射域長さに設定されていることは言うまでもない。
【0034】
このように照射すると、トナー密度の高い部分では上流側のレーザヘッド471にて十分な密着性が確保され、下流側のレーザヘッド472で短時間の照射になっても問題はない。一方、トナー密度の低い部分では上流側のレーザヘッド471による照射では、トナー粒子と外気との接触面積が広い分放熱量が増大してトナーを十分加熱溶融させることがなされないが、下流側のレーザヘッド472によって照射強度が高められるため、十分に溶融が図られて密着性が確保されるようになる。つまり、記録媒体1上の画像密度によらず、トナーの十分な加熱溶融が図られる。
【0035】
◎実施の形態2
図8は、実施の形態1の定着装置40と異なる実施の形態2の定着装置40の概要を示す説明図である。本実施の形態の定着装置40は、回転部材41が実施の形態1と異なるもので構成されている。尚、実施の形態1と同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
【0036】
同図において、回転部材41の透過部42は、使用するレーザ光が透過でき耐熱性のあるベルト状の素材で構成され、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂シート、PEN(ポリエチレンナフタレート)樹脂シート、PC(ポリカーボネート)樹脂シート、ポリアミド(PA)樹脂シート、ポリイミド(PI)樹脂シート、ポリアミドイミド(PAI)樹脂シート等が用いられる。
そして、回転部材41の内部空間には、透過部42を回転させるための例えば駆動ロール51と張架ロール52が設けられる一方、対向部材49に対向する位置にはレーザ光を透過する例えばガラス等からなる押さえ部材48が固定配置されている。この押さえ部材48は、レーザヘッド47と同様に図示外のシャフトに固定されるようになっており、透過部42の回転に際して、対向部材49との間で記録媒体1を十分加圧できるようになっている。
【0037】
本実施の形態では、ベルト状の透過部42を用いることから、押さえ部材48と対向部材49との間で接触加圧域Nが形成され、記録媒体1上の未定着トナー像Tはレーザ光照射位置LPにてレーザ照射され、レーザ光照射位置LPに近い接触加圧域Nにて放熱されるようになる。そのため、良好な定着性が確保されるようになる。
尚、ここでは、押さえ部材48のレーザヘッド47側の形状を直線状としたが、この部位でのレーザ光の反射が大きい場合には例えば押さえ部材48を湾曲状にしてもよい。また、接触加圧域Nを構成する押さえ部材48をレーザ光が透過できない構成とし、この押さえ部材48を避ける位置から接触加圧域Nの記録媒体1の移動方向上流側近傍にレーザ光を照射するように構成してもよい。この場合、例えば押さえ部材48より上流側の透過部42の傾きを記録媒体1側へ近付けるような軌跡で透過部42が回転するようになっていればよい。
【0038】
◎実施の形態3
図9(a)は、実施の形態1の定着装置40と異なる実施の形態3の定着装置40の概要を示す説明図である。同図において、本実施の形態の定着装置40は、回転部材41の透過部42を強制的に冷却する例えば冷却ファンからなる冷却装置53を設けた構成のものとなっている。尚、このとき、冷却装置53からの風がレーザ光照射位置LPを冷却しないようになっている。
本実施の形態では、未定着トナー像Tが定着された後の回転部材41の透過部42に対して強制冷却を行い、接触加圧域Nにて加熱された記録媒体1からの熱を吸熱することで透過部42に温度上昇が生じても、冷却装置53によって冷却されることで、次の接触加圧域Nではトナー像Tの十分な放熱効果を維持することができ、加熱溶融されたトナー像Tの良好な定着がなされるようになる。
【0039】
このような冷却装置53として本実施の形態では回転部材41の透過部42の外から冷却ファンを用いる態様を示したが、これに限られず、例えば透過部42の内側に放熱フィンを設けるようにしてもよいし、放熱フィンにファンからの風を充てる構成としてもよい。また、放熱フィンに冷却媒体(水等)を流すようにしてもよく、更には、ヒートパイプ形式を用いるようにしても差し支えない。
【0040】
◎実施の形態4
図9(b)は、実施の形態1の定着装置40と異なる実施の形態4の定着装置40の概要を示す説明図である。同図において、本実施の形態の定着装置40は、回転部材41の透過部42の汚れを清掃する清掃装置54を設けた構成のものとなっている。尚、清掃装置54の設置場所は特に限定されず、記録媒体1の搬送に支障のない所であればよい。
本実施の形態では、このように清掃装置54を設けることで、加熱溶融されたトナー像Tと接触した回転部材41の透過部42に、例えばトナーが一部オフセットされて透過部42に付着したとしても清掃装置54によって透過部42の清浄化が保たれ、次の接触加圧域Nでは良好に加圧がなされ、トナー像Tの表面仕上りが良好に保たれるようになる。
このような清掃装置54としては、回転部材41の透過部42の汚れを除去し、かつ、透過部42の表面に傷付着を起こさないものが好ましく、例えば柔らかいブラシ形状のものが好適である。
【0041】
◎実施の形態5
図10(a)(b)は、実施の形態1の定着装置40と異なる実施の形態5の定着装置40の概要を示す説明図である。
図10(a)は、記録媒体1が回転部材41と接触する前の記録媒体1のトナー像T側に外部反射部材55を設けた構成のものとなっている。この外部反射部材55は、レーザ光照射位置LPに照射されたレーザ光が記録媒体1の表面等から散乱あるいは反射した反射レーザ光を再度レーザ光照射位置LPに反射させるようにしたもので、通常、凹面鏡等の構成が採られる。このような外部反射部材55を設けることで、レーザ光の有効利用が高められて、定着時の照射効率の向上がなされるようになる。
【0042】
図10(b)は、(a)と異なり、回転部材41内部に内部反射部材56を設けたものであり、回転部材41の透過部42がレーザ光を透過できることから、このような態様も可能になる。この内部反射部材56に例えばレーザヘッド47側に向かって開口するスリット56aを設け、このスリット56aをレーザ光が通過できるようにすることで、レーザ光照射位置LP近傍に内部反射部材56を設置することができるようになり、定着時の照射効率の向上がなされるようになる。
【0043】
◎実施の形態6
図11(a)(b)は、実施の形態6の定着装置40の概要を示す説明図である。本実施の形態の定着装置40は、実施の形態2(図8参照)の定着装置40と同様に、回転部材41の透過部42がベルト状の部材で構成されると共に、回転部材41内部に冷却装置53を設けた構成のものとなっている。ここでは回転部材41のみを示し、(a)は回転部材41の斜視図を示し、(b)は(a)を横方向から見た図を示す。
同図において、本実施の形態の回転部材41は、例えば透過部42の幅方向に延びる駆動ロール57と図示外の対向部材に対向配置される従動ロール58を有し、これらの駆動ロール57と従動ロール58にて透過部42を張架して回転させる構成のものとなっている。
【0044】
駆動ロール57は、その回転軸57aが回転部材41の透過部42の幅より外方に延びており、図示外のギアやベルト等を用いた駆動手段によって回転駆動されるようになっている。また、従動ロール58は、その回転軸58aが回転部材41の内部空間を貫通する構成となっており、透過部42の幅方向両端部では円板部58bが形成され、それより内側では回転軸58aのみが延びる構成となっている。更に、この回転軸58aが内側に延びる部分に対応して、対向部材(図示せず)に対向するようにレーザ光が透過可能な素材で構成される例えば湾曲状の押さえ部材48が設けられている。
更に、本実施の形態では、透過部42の内面に接するように冷却装置53が設けられている。この冷却装置53は、透過部42の内面に接触するように配置される冷却板531と、この冷却板531から回転部材41の内部空間へ突出する多数の冷却フィン532とで構成されており、いずれも例えば熱伝導率の良いアルミニウム合金等が用いられ、冷却フィン532での放熱効果により冷却板531が冷却されるようになっている。
更にまた、回転部材41内部には、レーザヘッド47が設けられ、このレーザヘッド47は、照射するレーザ光が従動ロール58の回転軸58aによって遮蔽されない位置になるように配置されている。
【0045】
このような構成のため、この回転部材41は、駆動ロール57の回転によって透過部42が回転し、駆動ロール57と従動ロール58の円板部58bとで透過部42が回転するようになる。そして、押さえ部材48と対向部材(図示せず)との対向部位にて良好な接触加圧域Nが形成される。そのため、レーザヘッド47によって接触加圧域Nより上流側のレーザ光照射位置LPにて加熱溶融されたトナー像は、接触加圧域Nにて十分な放熱がなされ、更に、透過部42が冷却装置53によって冷却されていることにより、接触加圧域Nでの十分な放熱が確保され、良好な定着がなされるようになる。
【0046】
以上の実施の形態1〜6では、冷却装置53(例えば図9(a)参照)、清掃装置54(例えば図9(b)参照)、外部反射部材55(例えば図10(a)参照)、内部反射部材56(例えば図10(b)参照)を一種のみ備える構成の定着装置40を説明したが、定着装置40としてはこれに限られず、冷却装置53と清掃装置54とを備える態様、冷却装置53と外部反射部材55や内部反射部材56を備える態様等、その組み合わせは適宜選択すればよく、全てを組み合わせるようにしてもよいことは言うまでもない。
また、画像形成装置として多色対応のものを示したが、単色対応のものであっても同様の定着装置40が適用できることは言うまでもない。
更に、対向部材49としてはロール形状のものを示したが、回転部材41との接触加圧域Nを良好に形成できるものであれば例えばベルト部材を用いるようにしても差し支えない。更にまた、対向部材49を冷却する冷却装置を別途設けるようにしてもよい。
【0047】
◎実施の形態7
図12は、本発明に係る定着装置40が用いられた実施の形態7に係る画像形成装置の概要を示すもので、実施の形態1の画像形成装置と異なる画像形成装置の構成のものとなっている。本実施の形態の画像形成装置は、記録媒体として例えば連続紙61を用いた構成のものとなっており、連続紙61上に画像を形成する画像形成本体装置60Aの両側に連続紙61を供給する供給装置60Bと画像が形成された連続紙61を収容する収容装置60Cとを備える構成のものとなっている。連続紙61としては、ロール形状のものでもよいし、例えば折り畳まれた形状のものであってもよいが、本実施の形態ではロール形状のもので説明する。
【0048】
同図において、本実施の形態の画像形成本体装置60Aは、例えば電子写真方式を用いるものであり、連続紙61上に作像材料として例えば四色のトナーを用いて複数色のトナー像を形成する各色画像形成部70(具体的にはイエロー画像形成部70Y、マゼンタ画像形成部70M、シアン画像形成部70C、黒色画像形成部70K)と、これら各色画像形成部70にて連続紙61上に形成され多重化されたトナー像を定着する定着装置40と、定着後の連続紙61を収容装置60Cへ向かって搬送するに際し適宜張力を付与する張力付与ロール78、79等で構成されている。尚、符号77は、例えば画像形成部70へ連続紙61を導く際に位置調整を行う位置調整ロールである。
【0049】
ここで、各色画像形成部70は使用するトナーを除き略同様の構成となっているため、代表的にイエロー画像形成部70Yを例に説明を行う。イエロー画像形成部70Yは、表面に図示しない感光層を有して矢印F方向に回転可能な円筒状の感光体71を具備している。この感光体71の周囲には、感光体71の感光層を予め定めた電位に帯電する帯電装置72、帯電装置72にて帯電された感光層を例えばレーザ光を用いて選択照射し、静電潜像を形成する露光装置73、露光装置73によって形成された静電潜像をトナーにて現像することで可視像化する現像装置74、感光体71上のトナー像を連続紙61上に転写する転写装置75、転写後の感光体71上の残留トナーを清掃する清掃装置76等が配置されている。
【0050】
また、供給装置60Bは、芯材にロール状に巻かれた連続紙61を保持する供給ロール81と、画像形成本体装置60A側へ連続紙61を供給するために搬送しながら張力を付与する張力付与ロール82、83等で構成されている。一方、収容装置60Cは、連続紙61を芯材に巻き取り収容する巻き取りロール84等で構成されている。
このような画像形成装置において、供給装置60Bから供給された連続紙61は、画像形成本体装置60Aの各色画像形成部70にて各色トナー像が転写され、連続紙61上で多重化される。この未定着の多重化されたトナー像が転写された連続紙61は、定着装置40にて定着された後、収容装置60Cにて巻き取り収容される。
【0051】
次に、このような画像形成装置における定着装置40について図13(a)を基に説明する。同図において、本実施の形態の定着装置40は、実施の形態1の定着装置40(図4(a)参照)と略同様に構成されるが、使用される記録媒体が連続紙61である点が異なる。尚、同様の構成要素には同様の符号を付し、ここではその詳細な説明は省略する。
本実施の形態の定着装置40では、対向部材49が連続紙61の搬送路のうち接触加圧域Nより上流側で当該接触加圧域Nに繋がる部位に連続紙61を湾曲状に支持する支持面を有するように構成され、更に、レーザヘッド47からのレーザ光照射位置LPが対向部材49の前記支持面に対応した位置になるように設定されている。つまり、本実施の形態では、連続紙61を対向部材49に一部巻き付ける構成を採用し、更に、レーザ光照射位置LPがこの巻き付き範囲内に設定されるようにしている。
【0052】
そのため、レーザ光照射位置LP近傍での連続紙61の搬送路が一層安定化するようになり、レーザ光照射位置LPでのレーザ光の照射強度も安定化する。そのため、一層安定した定着がなされるようになる。更に、レーザ光照射位置LPにて連続紙61を通過したレーザ光の通過成分は対向部材49の表面によってそのまま反射され易くなり、この通過成分がトナー像Tの加熱溶融に重畳されるようになり、照射効率の向上が一層なされるようにもなる。
【0053】
図13(b)は(a)の要部を拡大したもので、本実施の形態では実線で示す位置にレーザヘッド47が配置されている。このとき、レーザヘッド47からのレーザ光は回転部材41の透過部42に対してほぼ直交する方向で照射されるようになり、透過部42での散乱光が少なくなり、レーザ光照射位置LPでの照射強度が大きくなる。このとき、対向部材49上の連続紙61に対する入射角はθ、レーザ光照射位置LPから接触加圧域Nまでの距離はMとなる。更に、このようにレーザヘッド47を回転部材41の内部空間に設けることで、レーザヘッド47を例えば二点鎖線で示す位置に配置するようにすれば、連続紙61に対してほぼ直交する方向(入射角がほぼゼロ)からレーザ光を照射させることができ、連続紙61上のスポットがより狭く、単位面積当たりの照射強度が上昇する。
つまり、本実施の形態においても、レーザヘッド47の角度を調整することで、レーザ光照射位置LPの位置を所望の位置に合わせたり、また、レーザ光照射位置LPでの照射強度を考慮したりすることが容易になされるようになる。
【0054】
◎実施の形態8
図14(a)は、実施の形態8の定着装置40を示すもので、実施の形態7の定着装置40(図13(a)参照)に冷却装置53を付加したものとなっている。
本実施の形態の定着装置40は、実施の形態3の定着装置(図9(a)参照)と略同様の構成であり、作用も同様のため、ここでは説明を省略する。
【0055】
◎実施の形態9
図14(b)は、実施の形態9の定着装置40を示すもので、実施の形態7の定着装置40(図13(a)参照)に清掃装置54を付加したものとなっている。
本実施の形態の定着装置40は、実施の形態4の定着装置(図9(b)参照)と略同様の構成であり、作用も同様のため、ここでは説明を省略する。
【0056】
◎実施の形態10
図15(a)は、実施の形態10の定着装置40を示すもので、実施の形態7の定着装置40(図13(a)参照)に外部反射部材55を付加したものとなっている。
本実施の形態の定着装置40は、実施の形態5の定着装置(図10(a)参照)と略同様の構成のため、作用も同様であるが、本実施の形態では回転部材41と連続紙61との間隙が広く設けられることから、外部反射部材55として大きなものを設置することができるようになり、レーザ光の照射効率の向上がより一層なされるようになる。
【0057】
◎実施の形態11
図15(b)は、実施の形態11の定着装置40を示すもので、実施の形態7の定着装置40(図13(a)参照)に内部反射部材56を付加したものとなっている。
本実施の形態の定着装置40は、実施の形態6(図10(b)参照)と略同様の構成であり、作用も同様のため、ここでは説明を省略する。
【0058】
以上の実施の形態7〜11においても、冷却装置53、清掃装置54、外部反射部材55、内部反射部材56等については、適宜、選択的に組み合わせて用いるようにすればよい。また、画像形成装置として多色対応のものを示したが、単色対応のものであっても同様の定着装置40が適用できることは言うまでもない。更に、対向部材49としてはロール形状のものを示したが、回転部材41との接触加圧域Nを良好に形成できるものであれば例えばベルト部材を用いるようにしても差し支えない。更にまた、対向部材49を冷却するための他の冷却装置を別途設けるようにしてもよい。
【実施例】
【0059】
本実施例は、実施の形態1の定着装置を用い、記録媒体として上質紙(用紙)を用いた時の定着部分でのトナー表面温度と、用紙及びトナー間の界面温度(用紙界面温度)との関係を調査したものである。
試料としては、用紙として坪量64g/m のものを用い、トナーとしては溶融温度110℃のものを用いた。
温度の測定は次のように行った。トナーの表面温度t1は赤外放射温度計(キーエンス社製IT2−50)により測定し、用紙界面温度t2は熱電対を用紙とトナーの間に設置して測定した。
【0060】
結果は、図16に示すように、レーザ照射によってトナー表面温度t1と用紙界面温度t2はいずれも略同様のカーブで上昇し、レーザ照射終了時点ではトナー表面温度t1が約290℃であったのに対し、用紙界面温度t2は約260℃であった。その後、接触加圧域に至るまでの放熱により、接触加圧域の入口ではトナー表面温度t1は約160℃、用紙界面温度は約150℃に低下した。接触加圧域ではトナー表面温度の温度低下が早く生じ、用紙界面温度の方が却って高くなり、接触加圧域の出口では両者の温度は一致するようになった。
このことは、レーザ照射によってトナーが十分加熱され、また、トナーの溶融状態が確保された状態で接触加圧域の入口に到達していることが確認された。そして、接触加圧域では回転部材によってトナーが急激に放熱され、接触加圧域の出口では十分な冷却がなされ、トナーの固化も十分な状態であることが確認された。
このように、本実施例によれば、上述の定着装置を用いることで、良好な定着性が確保されることが判明した。
【符号の説明】
【0061】
1…記録媒体、2…作像材料、3…回転部材、3a…透過部、4…対向部材、5…レーザ光照射手段、N…接触加圧域、LP…レーザ光照射位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有すると共にレーザ光が透過可能な素材にて構成される透過部を具備し、この透過部を回転移動させる回転部材と、
この回転部材に対向して設けられ、当該回転部材との間に接触加圧域を形成すると共にこの接触加圧域にて記録媒体上の熱可塑性の作像材料による画像を加圧しながら前記回転部材との間で記録媒体を移動搬送する対向部材と、
前記回転部材の内部空間に設けられ、記録媒体の搬送路のうち当該記録媒体上の熱可塑性の作像材料による画像が前記接触加圧域に至る前の予め規定されたレーザ光照射位置にて記録媒体上の熱可塑性の作像材料による画像に前記回転部材の透過部を介してレーザ光を照射するレーザ光照射手段と、
を備えることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置において、
前記レーザ光照射手段は、前記記録媒体の搬送路のうち前記接触加圧域に至る前に近接し、かつ、記録媒体上の熱可塑性の作像材料による画像が加熱溶融状態のまま接触加圧域に至る位置に前記レーザ光照射位置を設定するものであることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の定着装置において、
前記回転部材の透過部を冷却する冷却装置を更に備えることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の定着装置において、
前記回転部材の透過部表面を清掃する清掃装置を更に備えることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の定着装置において、
前記対向部材は、記録媒体の搬送路のうち前記接触加圧域より上流側で当該接触加圧域に繋がる部位に記録媒体を湾曲状に支持する支持面を有するものであり、
前記レーザ光照射手段は、前記対向部材の支持面に対応した位置に設けたレーザ光照射位置に向かってレーザ光を照射するものであることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の定着装置において、
前記レーザ光照射位置に照射されたレーザ光の反射レーザ光を再度当該レーザ光照射位置に向かって反射させる反射部材を更に備えることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
記録媒体上に熱可塑性の作像材料を用いて画像を形成する画像形成部と、
この画像形成部にて記録媒体上に形成された熱可塑性の作像材料による画像を定着する請求項1ないし6のいずれかに記載の定着装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−128223(P2011−128223A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284374(P2009−284374)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】