説明

定着装置及びそれを用いた記録装置

【課題】シリコンオイルなどの離型剤による定着ローラのシリコンゴム層の膨潤を防止する。
【解決手段】離型性オイルの浸入口となる加熱ロール2のフッ素樹脂層8の両端側よりも内側で押圧をかけるようにしているので、加熱ロール2のフッ素樹脂層8の両端側でのシリコンオイルの浸入は抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電情報記録装置、電子写真複写装置などの記録装置に用いられる熱定着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の定着装置は、例えば特許文献1に記載されている装置がある。この装置での定着ローラは、芯金とこの芯金を被覆する、基体としての耐熱多孔質のシリコンゴム製の弾性体層と弾性体層の表面に形成され弾性体層を離型剤から隔離する為のフッ素ゴム製隔離層とを有し、芯金の中心に位置する軸内にヒータが内蔵されている。隔離層は弾性体層の表面のみならず、定着ローラの側面をも覆い、定着ローラの内部は隔離層により離型剤から完全に遮断し、この離型剤によるシリコンゴムの膨潤を防止している。
【0003】
しかしながら、このように定着ローラに形成された弾性体層を離型剤から隔離する為のフッ素ゴム製隔離層等を定着ローラの側面をも覆い、定着ローラの内部を隔離層により離型剤から完全に遮断するには、コストも高くなり、両側端を絞ることになって定着ローラの両端側の外径寸法を精度良く製作することが難しくなる。このため、定着ローラのフッ素ゴム製隔離層等を側面は覆わずに製作する場合が多々ある。
【0004】
この場合は端部の離型剤は印刷用紙に付着することがなく、消費されないため、定着ローラへの転移は容易且つ多量に生じ、定着ローラはニップ幅を確保する為にシリコンゴムなどの弾性体材質とすることが多く、このような材質には隔離剤を吸収する性質が有り、経時的に定着ローラでのシリコンゴムは、フッ素ゴム製隔離層の端部から浸入した離型剤により膨潤し、中央側へと進展することになる。定着ローラでのシリコンゴムが膨潤すると、ニップにおける圧力によって用紙走行が不安定になり用紙にしわが発生したり、定着不良など印刷品質に重大な問題が生じる場合がある。
【0005】
【特許文献1】特開2002−49257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シリコンオイルなどの離型剤による定着ローラのシリコンゴム層の膨潤を防止する定着装置とそれを搭載した記録装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の第1の手段は、ヒータを内蔵しゴム層の表面をコーティング或いはゴム層を包囲した保護チューブを有した加熱ロールと、これに離間可能に支持され圧接して回転する加圧ロールと、上記加熱ロールに離型剤を供給する離型剤供給手段と、上記加熱ロール汚れ除去手段とを具備し、上記加熱ロールと加圧ロールとの間に転写された用紙を通すことにより、該転写紙上に形成されたトナー像を定着する画像形成装置の定着装置において、
上記離型剤供給手段と該加熱ロール汚れ除去手段は、上記加熱ロールへの作用範囲を該加熱ロールのゴム層の表面をコーティング或いはゴム層を包囲した保護チューブ両端幅より小さく、該両端幅より内側で作用するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、上記離型剤供給手段と上記加熱ロール汚れ除去手段は、シリコンオイルが供給され含浸するオイラーベルトを上記加熱ロールに押し付ける押付け部材の幅を、上記加熱ロールのゴム層の表面をコーティング或いはゴム層を包囲した保護チューブ両端幅より小さく、該両端幅より内側としたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第3の手段は前記第2の手段において、上記押付け部材は、上記加熱ロールに上記オイラーベルトを押し付けるオイルポート及びシールフェルトの幅を、上記加熱ロールのゴム層の表面コーティング或いはゴム層を包囲した保護チューブ両端幅より小さく、該両端幅より内側としたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第4の手段は記録装置において、前記第1ないし第3の手段の定着装置を搭載したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、加熱ロールのシリコンゴム層のシリコンオイル膨潤を防止することができ、加熱ロールの長寿命化はもとより、定着ローラのニップ部における圧力が安定することにより用紙走行が安定し、用紙にしわや定着不良などが発生することが無くなり、高信頼で高品質の印刷が可能な定着装置と記録装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図とともに説明する。図1は本発明の一実施例である連続紙レーザビームプリンタ(以下、連続紙LBP)の定着部における定着装置1の概略構成図であり、印刷時の状態を示す。
【0013】
図1において、加熱ロール2は、アルミニウム製の芯金6にシリコンゴム層7とこれを保護するフッ素樹脂層8とからなり、中心部にはヒータランプ4a〜4dを内蔵して内部から加熱するようにしている。加熱ロール2の端部には特定温度検出器3が取り付けてあり、加熱ロール2がある一定の温度に達したことを検出する。また、加熱ロール2の上方には軸方向に加熱ロール2の表面温度を検出する複数のサーミスタ5a、5b、5cが設けてある。
【0014】
また、加熱ロール2での離型性を高めるために、離型剤供給装置であるオイルコータ60は、図示しないシリコンオイルポンプにより、シリコンオイルがチューブ11を通して、バネ12により加熱ロール2の方にオイラーベルト13とともに押し付けるオイルポート14に送られ、オイラーベルト13にシリコンオイルが含浸されて加熱ロールに塗布するようにしている。
【0015】
この際、オイルポート14にはフェルト15を軸方向に貼って有り、シリコンオイルが均一にオイラーベルト13に含浸するようにするとともに、シリコンオイルの下方への滴下を防止している。ここでオイルポート14及びフェルト15の斜線部は、削除してある部分を示しており、これに対向する加熱ロール2には押圧がかからないようになる。オイラーベルト13は、加熱ロールの異物除去も兼ねるため、印刷時はモータ16により低速で下方に巻き、加熱ロール2には常にオイラーベルト13の新しい面がくるようにしている。
【0016】
図1の左側上部は、従来と本発明の場合での加熱ロールへの押圧力範囲と押圧力分布を示している。従来は、押圧力範囲が加熱ロール2のフッ素樹脂層8の両端よりも広くしていたが、本発明では加熱ロール2のフッ素樹脂層8の両端よりも内側としているため、フッ素樹脂層8の両端部には圧力がかからないようにしている。
【0017】
上記構成において、離型剤であるシリコンオイルは図示しないオイル供給手段によりチューブ11を通ってオイルポート14に供給されオイラーベルト13に含浸し、オイルポート14はバネ12によって加熱ロール2側にオイラーベルトを介して押圧している。このとき、離型性オイルの浸入口となる加熱ロール2のフッ素樹脂層8の両端側よりも内側で押圧をかけるようにしているので、加熱ロール2のフッ素樹脂層8の両端側でのシリコンオイルの浸入は抑制できる。したがって、加熱ロール2のシリコンゴム層7でのシリコンオイルによる膨潤は長期にわたって抑制でき、加熱ロールの長寿命化はもとより、定着ローラのニップ部における圧力が安定することにより用紙走行が安定し、用紙にしわや定着不良などが発生することが無くなり高信頼で高品質の印刷ができる。
【0018】
本実施例では連続紙LBPで説明したが、カット紙LBPでも同様な効果が得られることは言うまでも無い。また、加熱ロールへの離型剤の塗布手段をオイラーベルトを有したオイルコータで示したが、ロール状のオイラーロールでも同様な効果が得られ、この際のオイラーロールの幅は、加熱ロール2のフッ素樹脂層8の幅よりも小さく、加熱ロール2のフッ素樹脂層8の両端より内側で押圧するようにする。
【0019】
本発明によれば、加熱ロール2のシリコンゴム層でのシリコンオイルによる膨潤は長期にわたって抑制でき、加熱ロールの長寿命化はもとより、定着ローラのニップ部における圧力が安定することにより用紙走行が安定し、用紙にしわや定着不良などが発生することが無くなり高信頼で高品質の印刷ができるという顕著な効果を有するものである。
【0020】
図2は、本発明の一実施例である連続紙LBP用定着装置を搭載した高速レーザビームプリンタの概略構成図である。図2において、感光体51は帯電器52により所定電圧に均一に帯電され、上位装置(図示せず)から送信された画像情報を光源53により照射ビームを放射させ、照射ビームを受けた感光体51には静電潜像が形成される。そして、この静電潜像は現像機54で樹脂及び着色剤、帯電制御剤、流動性向上剤等からなるトナーを用いて現像され可視像となる。
【0021】
感光体51上にトナーにより可視像化された画像は、転写器55により連続紙7上に転写される。その後、感光体51の表面は、除電器56により表面の電荷が除去され、クリーニング機構57により感光体51の表面に残留したトナーが取り除かれ、再度帯電、露光、現像と工程が繰り返される。そしてトナー像を転写された連続用紙7は、前方に搬送されプレヒータ20を経て離型剤供給装置であるオイルコータ60でシリコンオイルが塗布された加熱ロール2と加圧ロール10が接触した加熱点より加熱加圧作用を受けながら挟持搬送され、転写されたトナー像は連続紙7に定着される。定着された連続紙7は、テンションローラ58を通り、用紙受けであるスタッカ59へ順次排出される。
【0022】
ここでは、上述した定着装置1を搭載しているので、加熱ロール2のシリコンゴム層でのシリコンオイルによる膨潤は長期にわたって抑制でき、加熱ロールの長寿命化はもとより、定着ローラのニップ部における圧力が安定することにより用紙走行が安定し、用紙にしわや定着不良などが発生することが無くなり高信頼で高品質の印刷ができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施例に係る連続紙レーザビームプリンタの定着装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施例に係る連続紙レーザビームプリンタの概略構成図である。
【符号の説明】
【0024】
1…定着装置、2…加熱ロール、3…特定温度検出器、4a,4b,4c,4d…ヒータランプ、5a,5b,5c…サーミスタ、6…芯金、7…シリコンゴム層、8…フッ素樹脂層、9…連続紙、10…加圧ロール、11…チューブ、12…バネ、13…オイラーベルト、14…オイルポート、15…フェルト、16…モータ、20…プレヒータ、50…連続紙レーザビームプリンタ、51…感光体、52…帯電器、53…光源、54…現像器、55…転写器、56…除電器、57…クリーニング機構、58…テンションローラ、59…スタッカ、60…オイルコータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータを内蔵しゴム層の表面をコーティング或いはゴム層を包囲した保護チューブを有した加熱ロールと、これに離間可能に支持され圧接して回転する加圧ロールと、上記加熱ロールに離型剤を供給する離型剤供給手段と、上記加熱ロール汚れ除去手段とを具備し、上記加熱ロールと加圧ロールとの間に転写された用紙を通すことにより、該転写紙上に形成されたトナー像を定着する画像形成装置の定着装置において、
上記離型剤供給手段と該加熱ロール汚れ除去手段は、上記加熱ロールへの作用範囲を該加熱ロールのゴム層の表面をコーティング或いはゴム層を包囲した保護チューブ両端幅より小さく、該両端幅より内側で作用するようにしたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置において、上記離型剤供給手段と上記加熱ロール汚れ除去手段は、シリコンオイルが供給され含浸するオイラーベルトを上記加熱ロールに押し付ける押付け部材の幅を、上記加熱ロールのゴム層の表面をコーティング或いはゴム層を包囲した保護チューブ両端幅より小さく、該両端幅より内側としたことを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項2記載の定着装置において、上記押付け部材は、上記加熱ロールに上記オイラーベルトを押し付けるオイルポート及びシールフェルトの幅を、上記加熱ロールのゴム層の表面コーティング或いはゴム層を包囲した保護チューブ両端幅より小さく、該両端幅より内側としたことを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項記載の定着装置を搭載したことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−222821(P2009−222821A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65020(P2008−65020)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】