説明

定着装置及び定着装置用フィルム管状体

【課題】オンデマンド方式の定着装置の長期作動安定性を向上させる。
【解決手段】駆動ロ−ル1にフィルム管状体2を外接して配設し、該フィルム管状体2に内接してヒ−タ3を配設し、該ヒ−タ3と前記駆動ロ−ルとでフィルム管状体2の管壁を挾持し、駆動ロ−ル1の駆動で駆動ロ−ル1とフィルム管状体2との間に記録紙4を通過させると共にフィルム管状体2を前記ヒ−タ3に摺動させつつ無張力状態で回転させる定着装置において、フィルム管状体内周面とヒ−タとの間の摩擦係数をフィルム管状体外周面と記録紙との間の摩擦係数の0.9倍以下とした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はプリンタ、複写機、ファクシミリ等における電子写真画像形成に使用するトナ−像定着装置及びその装置に用いるフィルム管状体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】プリンタ、複写機、ファクシミリ等における電子写真画像形成では、未定着トナ−像を形成した記録紙を定着装置に通して加熱加圧によりそのトナ−像を定着させる過程を経ることが必要である。この定着装置として、図4の(イ)乃至(ハ)に示す方式が公知である。
【0003】図4の(イ)に示す方式では、ベルト2'を駆動ロ−ル1'、テンションロ−ル10'に掛架すると共にヒ−タ3'を当該ベルト2'に内接配設し、そのヒ−タ3'と背合わせの位置でベルト2'にバックロ−ル11'を外接配設し、駆動ロ−ル1'の駆動でベルト2'をヒ−タ3'に摺動接触させつつ回転させ、バックロ−ル11'とベルト2'との間に記録紙4'を通過させ、記録紙4'上のトナ−像をヒ−タ3'による加熱とバックロ−ル11'による加圧とで定着させている。
【0004】図4の(ロ)に示す方式では、駆動ロ−ル1"にフィルム管状体2"を外接配設し、該フィルム管状体2"にヒ−タ3"を内接配設し、該ヒ−タ3"と前記駆動ロ−ル1"とでフィルム管状体2"の管壁を挾持し、駆動ロ−ル1"の駆動で駆動ロ−ル1"とフィルム管状体2"との間に記録紙4"を通過させると共にフィルム管状体2"を前記ヒ−タ3"に摺動接触させつつ無張力状態で回転させ、記録紙4"上のトナ−像をヒ−タ3"による加熱と駆動ロ−ル1"による加圧とで定着させている。
【0005】図4の(ハ)に示す方式では、ヒータ30'を内蔵した駆動ロ−ル1"にフィルム管状体2"を外接配設し、該フィルム管状体2"に弾性体30"を内接配設し、該弾性体30"と前記駆動ロ−ル1"とでフィルム管状体2"の管壁を挾持し、駆動ロ−ル1"の駆動で駆動ロ−ル1"とフィルム管状体2"との間に記録紙4"を通過させると共にフィルム管状体2"を前記弾性体3"に摺動接触させつつ無張力状態で回転させ、記録紙4"上のトナ−像をヒ−タ30'による加熱と駆動ロ−ル1"による加圧とで定着させている。この方式では、駆動ロ−ル1”の加圧で弾性体30”を凹ませることによりニップ巾dを広くしており、特にカラ−用として有用である。また、この方式では、フィルム管状体2"と弾性体30”との間の摺動摩擦抵抗を小さくするために、弾性体30”に低摩擦シ−ト、例えばフッ素樹脂含浸ガラスクロスを被覆することが公知である(特開平10−213984号)。
【0006】上記図4の(イ)に示すサ−フ方式ではベルト伝動機構を使用しており、ベルト2'の張り側張力をFt、ゆるみ側張力をFsとすると、駆動ロ−ル1'上でのベルト張力は駆動ロ−ル1'の回転に従いFtからFsに徐々に変化していき、ベルト2'の内周面と駆動ロ−ル1'との間の摩擦係数をμとすると、角度位置θでのベルト張力Fxは
【数1】
Fx=Fte-μθ ■で与えられ、有効巻き掛け角をθ'とすると、
【数2】
Fs=Fte-μθ' ■が成立する。そして、有効巻き掛け角θ'が実際の巻き掛け角θ〔図3の(イ)参照〕に等しくなったときにスリップが生じ、動力伝達限界となる。従って、
【数3】
μ>〔log(Ft/Fs)〕/θ ■が作動安定条件となる。
【0007】これに対し、図4の(ロ)や(ハ)に示すオンデマンド方式では、単純な剪断力伝達機構を使用しており、ヒ−タ3"または弾性体30"とフィルム管状体2"との摺動接触(この接触面の摩擦係数をμとする)により発生する剪断反力をTをすれば、フィルム管状体2"と記録紙4"との接触面(この接触面の摩擦係数をμとする)及び記録紙4"と駆動ロ−ル1"との接触面(この接触面の摩擦係数をμとする)に前記剪断反力Tに釣り合う剪断応力が発生し、これらの各接触面がその剪断応力に耐えれば、前記剪断力の伝達を安定に維持させ得る。従って、
【数4】
μ,μ>μ ■が作動安定条件となる(ただし、説明の簡易化のため、前記各接触面の面積を等しいとしてある)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記オンデマンド方式〔図4の(ロ)または(ハ)〕はサ−フ方式〔図4の(イ)〕とは異なり、無張力方式であり、ベルト制御が容易である。
【0009】ところで、上記定着装置のエンドレスベルト〔図4の(イ)〕やフィルム管状体〔図4の(ロ)及び(ハ)〕には、通常樹脂のキャスティングフィルム、例えばポリアミド酸溶液を回転遠心力法により管状にキャスティングし、更にイミド転化したポリイミドフィルム管状体が、製造の容易性等から好んで使用されている。しかしながら、本発明者等の経験によれば、このポリイミドフィルム管状体においては、摺動接触による摩耗屑の発生で比較的早期に摩擦係数が増加し易い。
【0010】而るに、サ−フ方式では、摩擦係数μの増加が前記式■で示した作動安定化条件の安全側へのシフトに終わるのに対し、オンデマンド方式では、摩擦係数μの増加が式■で示した作動安定化条件が不安定側にシフトされることになる。尤も、前記図4の(ハ)の方式において、弾性体30”の表面(フィルム管状体2”に接する面)をフッ素樹脂含浸ガラスクロスで被覆し、その被覆表面とフィルム管状体2”の内周面との摺動界面に潤滑液(アミノ変性シリコ−ンオイル)を介在させることが公知である(特開平10−213989号)。
【0011】しかしながら、流動性の潤滑液を前記摺動界面に安定に保持させることは容易ではなく、この潤滑液の枯渇のもとでは、フィルム管状体がポリイミドフィルム管状体であると、前記式■を比較的早期に維持させ得なくなると推定される。
【0012】本発明の目的は、オンデマンド方式の定着装置、すなわち、駆動ロ−ルにフィルム管状体を外接して配設し、該フィルム管状体に内接してヒ−タまたは弾性体を配設し、該ヒ−タまたは弾性体と前記駆動ロ−ルとでフィルム管状体の管壁を挾持し、駆動ロ−ルの駆動で駆動ロ−ルとフィルム管状体との間に記録紙を通過させると共にフィルム管状体を前記ヒ−タまたは弾性体に摺動させつつ無張力状態で回転させる定着装置の長期作動安定性を向上させることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明に係る定着装置は、駆動ロ−ルにフィルム管状体を外接して配設し、該フィルム管状体に内接してヒ−タを配設し、該ヒ−タと前記駆動ロ−ルとでフィルム管状体の管壁を挾持し、駆動ロ−ルの駆動で駆動ロ−ルとフィルム管状体との間に記録紙を通過させると共にフィルム管状体を前記ヒ−タに摺動させつつ無張力状態で回転させる定着装置において、フィルム管状体内周面とヒ−タとの間の摩擦係数をフィルム管状体外周面と記録紙との間の摩擦係数の0.9倍以下としたことを特徴とする構成である。
【0014】本発明に係る他の定着装置はヒータが内蔵された駆動ロ−ルにフィルム管状体を外接して配設し、該フィルム管状体に内接して弾性体を配設し、該弾性体と前記駆動ロ−ルとでフィルム管状体の管壁を挾持し、駆動ロ−ルの駆動で駆動ロ−ルとフィルム管状体との間に記録紙を通過させると共にフィルム管状体を前記弾性体に摺動させつつ無張力状態で回転させる定着装置において、フィルム管状体内周面と弾性体との間の摩擦係数をフィルム管状体外周面と記録紙との間の摩擦係数の0.9倍以下としたことを特徴とする構成、または同定着装置において、フィルム管状体内周面に接触する弾性体面に低摩擦耐摩耗性シ−トを被覆し、この低摩擦耐摩耗性シ−トとフィルム管状体との間の摩擦係数をフィルム管状体外周面と記録紙との間の摩擦係数の0.9倍以下としたことを特徴とする構成である。
【0015】上記何れの構成においても、フィルム管状体は、その内周面の摩擦係数が0.3以下、好ましくは0.2以下とされ、また、潤滑剤を添加したポリイミド樹脂製とされ、その潤滑剤がフッ素樹脂でその添加量が0.1〜20重量%とされる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明に係る定着装置の一例を示している。図1において、1は駆動ロ−ルであり、ロ−ル外周面をゴム面としたゴムロ−ルを使用できる。2は潤滑剤を添加した樹脂液からキャスティング成形したフィルム管状体であり、駆動ロ−ル1の頂上に外接して配設してある。3はヒ−タであり、例えば抵抗を焼き付けたセラミックス体を使用でき、フィルム管状体2に内接して配設し、駆動ロ−ル1とでフィルム管状体2の管壁を挾持してある。4はフィルム管状体2と駆動ロ−ル1との間を通過させる記録紙を示している。5はフィルム管状体2がだれて記録紙4に接触するのを防止するために設けたサッポ−タであり、フィルム管状体の外径や剛性に応じて省略できる。
【0017】図2は本発明に係る定着装置の別例を示している。図2において、1は駆動ロ−ルであり、ロ−ル外周面をゴム面としたゴムロ−ルを使用できる。2は潤滑剤を添加した樹脂液からキャスティング成形したフィルム管状体であり、駆動ロ−ル1の頂上に外接して配設してある。31は駆動ロール内に装備させたヒ−タである。30は弾性体であり、フィルム管状体2に内接して配設し、駆動ロ−ル1とでフィルム管状体2の管壁を挾持してある。6は支持板、31は圧縮バネ、5は支持板6で支持したフィルム管状体の摺動ガイドである。
【0018】図3に示す本発明に係る定着装置は、図2に示す定着装置に対しフィルム管状体2の内周面に摺動接触する弾性体30の表面に低摩擦耐摩耗性シ−ト300、例えばフッ素樹脂含浸ガラスクロスを被覆してあり、他の構成は実質的に図2と同じであり、図2と同一の符号は同一の構成要素を示している。
【0019】上記において、ヒ−タ3または弾性体30或いは低摩擦耐摩耗性シ−ト300とフィルム管状体2との間の摩擦係数μをフィルム管状体2と記録紙4との間の摩擦係数μの0.9好ましくは0.6倍以下にしてある。上記駆動ロ−ル1と記録紙4との間の摩擦係数μは駆動ロ−ル1の外面を高摩擦面としてあるから極めて大であり、結局
【数5】
μ<0.9μ≪μ ■の関係を付与してある。
【0020】物理的に摺動接触面では、摩擦係数が0でない以上、速度の差は別として摩耗の進行が余儀なくされる。而るに、ポリイミドキャスティグフィルム管状体ではフッ素樹脂フィルムに較べ摩耗の進行が早い。しかしながら、本発明においては、フィルム管状体に潤滑剤を添加してあるから、無添加の場合に較べ摩耗速度を遅くできる。また、式■の関係を付与してあるから、上記ヒ−タ、または弾性体、或いは弾性体表面の低摩擦耐摩耗性シ−トとフィルム管状体との間の摩擦係数が約10%増加するまでは、前記した式■、すなわち
【数6】
μ<μ,μ ■の条件を満足させ得る。従って、本発明によれば、式■の条件を従来例(フィルム管状体に潤滑剤を添加しない場合)に較べてそれだけ長期間にわたり満足させ得、その間、ヒ−タ3または弾性体30或いは低摩擦耐摩耗性シ−ト300とフィルム管状体2との間のみをすべらせ、フィルム管状体2と記録紙4との間及び駆動ロ−ル1と記録紙4との間でのすべりを排除して安定な作動を保証できる。
【0021】本発明に係る定着装置用フィルム管状体は、前記図1または図2或いは図3に示すオンデマンド方式の定着装置に使用するフィルム管状体であり、潤滑剤を添加した樹脂液から成形し、内周面の摩擦係数(JIS K7118による)を0.3以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.15以下にしてある。
【0022】本発明に係る定着装置用フィルム管状体を使用したオンデマンド方式定着装置においては、フィルム管状体とヒ−タまたは弾性体或いは弾性体表面の低摩擦耐摩耗性シ−トとの間の摩擦力を著しく小さくでき、フィルム管状体内周面の摩耗屑の発生をよく排除して、上記式■の安定条件を長期間にわたり維持できる。また、液状潤滑剤をフィルム管状体と弾性体との間に介在させる従来例(特開平10−213984号)とは異なり、潤滑剤の枯渇の畏れがないから、かかる点からも安定作動を保証できる。
【0023】本発明に係る定着装置用フィルム管状体は、耐熱性樹脂、例えばポリイミド、ポリイミドアミド、ポリベンズイミダゾ−ル、ポリアミドに潤滑剤を添加した樹脂溶液から成形でき、潤滑剤にはフッ素樹脂粉体、例えばポリテトラフルオロエチレン粉体、テトラフルオロエチレン−パ−フルオロアルキルビニルエ−テル共重合体粉体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン重合体粉体の一種または二種以上を使用でき、粉体径は均一分散のために0.01〜20μm、好ましくは0.1〜10μmとすることが望ましい。このフッ素樹脂粉体の添加量は通常0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%とされる。0.1重量%未満では上記摩擦係数0.3以下を達成し難く、20重量%を越えると、前記摺動接触により発生する剪断応力で破損し易くなる。
【0024】本発明に係る定着装置用フィルム管状体においては、ヒ−タ発生熱の伝導性を高めるために熱伝導性粒、例えば窒化ホウ素やアルミナを添加でき、また、摩擦静電気の発生を防止するために導電性粒、例えばカ−ボンや金属粉を添加でき、また、機械的強度を高めるために補強剤、例えばガラス繊維やガラスビ−ズを添加できる。
【0025】本発明に係る定着装置用フィルム管状体の成形には、例えば回転円筒金型の内面に潤滑剤添加樹脂溶液を塗布しこれを均一厚みに遠心成形し次いで乾燥固化する遠心成形方法、円筒金型の内面に潤滑剤添加樹脂溶液を塗布しこれを垂直に支持しコア金型を落下走行させて内面の塗布液を均一厚みに展延し次いで乾燥固化するコア展延方法等を使用できる。このようにして成形したフィルム管状体の外面に高弾性層、離型層、耐油性層または耐摩耗性層、例えばシリコ−ンゴム層、フッ素ゴム層またはフッ素樹脂層を付加することもでき、この付加層にも熱伝導性粒、導電性粒体、または補強剤を添加することができる。
【0026】本発明に係る定着装置用フィルム管状体は、潤滑剤分散ポリイミド樹脂製、特にポリテトラフルオロエチレン粉体を分散させたポリイミド樹脂製とし、ポリテトラフルオロエチレン粉体分散ポリアミド酸溶液から成形できる。このポリテトラフルオロエチレン粉体分散ポリアミド酸溶液は、テトラカルボン酸二無水物あるいはその誘導体とジアミンの略等モルを有極溶媒中で反応させてポリアミド酸溶液を得る際にポリテトラフルオロエチレン粉体を分散させるか、合成したポリアミド酸溶液にポリテトラフルオロエチレン粉体を分散させることにより得ることができる。
【0027】このポリテトラフルオロエチレン粉体分散ポリイミド樹脂製のフィルム管状体を成形するには、ポリテトラフルオロエチレン粉体分散ポリアミド酸溶液を回転円筒金型の内面に塗布し、これを均一厚みに遠心成形し、次いで加熱してポリアミド酸をイミド転化すると共に溶媒を除去する方法を使用できる。この場合、約80〜180℃の比較的低温でイミド転化に伴い発生する閉環水及び溶媒を蒸発除去し、次いで250〜400℃に昇温させてイミド転化を完結させる二段加熱法を使用することが好ましい。
【0028】
【実施例】〔実施例1〕N−メチル−2−ピロリドン1581gと3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物294.2gとp−フェニレンジアミン108.2gとポリテトラフルオロエチレン微粉体29.3gを混合し、窒素雰囲気中で室温にて4時間撹拌しつつ重合反応させてポリテトラフルオロエチレン粉体分散ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を内径300mm、長さ500mmの円筒金型の内周面に塗布し、弾丸状走行体を自重により下降走行させることにより厚さほぼ800μmに塗布し、1500rpmで10分間回転させ、次いで150℃×60分にて加熱した後、加熱速度2℃/minで300℃に昇温し、この温度を30分間保持して溶媒の除去、脱水閉環水の除去及びイミド転化を行い、而るのち、室温にまで冷却し金型より離型し、厚み80μm、外径300mmφ、巾300mmのフィルム管状体を得た。
【0029】このフィルム管状体内面の周方向摩擦係数を往復動摩擦試験機を用い、圧着鋼球:10mmφ、荷重:200g、試験速度:150mm/分の条件で5回往復の平均値にて求めたところ、0.11であった。また、ユニバ−サルウェアテスタを用い、相手材:フッ素含浸ガラスクロス、摺動時圧力:2kg/cm、摺動距離:25mm、摺動速度:100mm/sec、摺動回数:10000回の条件でフィルム管状体内面の摩耗試験を行い、その後、前記した条件で摩擦係数を測定したところ、摩耗屑の発生は観られず、摩擦係数も実質上変わらなかった。
【0030】〔比較例1〕実施例1に対し、ポリテトラフルオロエチレン粉体の添加を省略した以外、実施例と同様の成形方法でポリイミド製のフィルム管状体を得た。実施例と同様にして、このフィルム管状体内面の周方向摩擦係数を測定したところ0.35と高く、更に摩耗試験を行ったところ、顕著な摩耗屑の発生があり、摩擦係数の顕著な増大が観られた。
【0031】
【実施例2】図3に示す構成の定着装置であり、定着ロ−ルには外径30mmφ,周速160mm/秒,長さ360mm,外面温度ほぼ150℃のものを使用し、フィルム管状体には実施例1のものを使用し、弾性押圧部材には巾10mm,厚み5mm,長さ300mmのシリコ−ンゴム帯を、低摩擦耐摩耗性シ−トにはポリテトラフルオロエチレン含浸焼成ガラスクロスを使用し、バネには圧縮力30kgのものを使用した。
【0032】
【比較例2】実施例2に対し、フィルム管状体に比較例1のものを使用した以外、実施例2に同じとした。
【0033】実施例2及び比較例2の定着装置を使用して長時間複写を行ったところ、比較例2ではかなり早期に画像のずれが認められたが、実施例2ではその長期間経過後も鮮明な画像が得られ続け、画像のずれは全く観られなかった。
【0034】
【発明の効果】本発明はオンデマンド方式の定着装置において、フィルム管状体にキャスティングフィルム管状体、特にキャスティングポリイミドフィルム管状体を用いる場合、フィルム管状体とヒ−タまたは弾性体との摺動接触に基づき発生する摩耗屑でフィルム管状体とヒ−タまたは弾性体との間の摩擦係数が増加して作動の不安定化が惹起されるのを抑制するために、フィルム管状体に潤滑剤を添加し、かつフィルム管状体内面の摩擦係数を規制しているから、オンデマンド方式定着装置のスリップ等の発生の無い安定作動条件をそれだけ長期間維持でき、長期安定作動性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る定着装置の一実施例を示す図面である。
【図2】本発明に係る定着装置の別実施例を示す図面である。
【図3】本発明に係る定着装置の他の別実施例を示す図面である。
【図4】従来の互いに異なる定着装置を示す図面である。
【符号の説明】
1 駆動ロ−ル
2 フィルム管状体
3 ヒ−タ
30 弾性体
300 低摩擦耐摩耗性シ−ト
4 記録紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】駆動ロ−ルにフィルム管状体を外接して配設し、該フィルム管状体に内接してヒ−タを配設し、該ヒ−タと前記駆動ロ−ルとでフィルム管状体の管壁を挾持し、駆動ロ−ルの駆動で駆動ロ−ルとフィルム管状体との間に記録紙を通過させると共にフィルム管状体を前記ヒ−タに摺動させつつ無張力状態で回転させる定着装置において、フィルム管状体内周面とヒ−タとの間の摩擦係数をフィルム管状体外周面と記録紙との間の摩擦係数の0.9倍以下としたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】ヒータが内蔵された駆動ロ−ルにフィルム管状体を外接して配設し、該フィルム管状体に内接して弾性体を配設し、該弾性体と前記駆動ロ−ルとでフィルム管状体の管壁を挾持し、駆動ロ−ルの駆動で駆動ロ−ルとフィルム管状体との間に記録紙を通過させると共にフィルム管状体を前記弾性体に摺動させつつ無張力状態で回転させる定着装置において、フィルム管状体内周面と弾性体との間の摩擦係数をフィルム管状体外周面と記録紙との間の摩擦係数の0.9倍以下としたことを特徴とする定着装置。
【請求項3】ヒータが内蔵された駆動ロ−ルにフィルム管状体を外接して配設し、該フィルム管状体に内接して弾性体を配設し、該弾性体と前記駆動ロ−ルとでフィルム管状体の管壁を挾持し、駆動ロ−ルの駆動で駆動ロ−ルとフィルム管状体との間に記録紙を通過させると共にフィルム管状体を前記弾性体に摺動させつつ無張力状態で回転させる定着装置において、フィルム管状体内周面に接触する弾性体面に低摩擦耐摩耗性シ−トを被覆し、この低摩擦耐摩耗性シ−トとフィルム管状体との間の摩擦係数をフィルム管状体外周面と記録紙との間の摩擦係数の0.9倍以下としたことを特徴とする定着装置。
【請求項4】請求項1乃至3何れか記載の定着装置において使用するフィルム管状体であり、内周面の摩擦係数を0.3以下とした定着装置用フィルム管状体。
【請求項5】潤滑剤を添加したポリイミド樹脂製である請求項4記載の定着装置用フィルム管状体。
【請求項6】潤滑剤がフッ素樹脂であり、その添加量が0.1〜20重量%である請求項5記載の定着装置用フィルム管状体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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