説明

定着装置

【課題】 熱ローラを横にして机の上に置いた際に、その中央部の加熱面が机に触れないようにする。
【解決手段】 熱ローラ11の両端に設けたボス部11bに、外径が熱ローラ11よりも大きく、かつ軸線が熱ローラ11の軸線と一致するブッシュ16を取り付ける。これによって、熱ローラ11を横にして机の上に置いても、机にはブッシュ16が触れることとなり、加熱面11aは机に触れず、傷がつかない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に用いられる定着装置は、特許文献1に示されているようにヒータを内蔵した熱ローラと、表面が弾性体からなる加圧ローラとが圧接してニップを形成している。画像形成ユニットで形成され、用紙に転写されたトナー画像は、この定着装置のローラ対のニップにおいて加熱、加圧され、用紙に定着される。
【特許文献1】特開平5−80669号公報(第3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この定着装置のニップにおいて用紙のトナー画像が転写された面が熱ローラに接するため、熱ローラの表面に傷が付くとトナー画像が乱れてしまう。特許文献1で提案された定着装置では、枠体から取り付ける前の熱ローラはベアリングもブッシュも取り付けられていない単独の状態であり、机や作業台の上に横にして置くとその表面に熱ローラの表面が触れる状態であった。したがって、組み付け作業や修理で熱ローラを定着装置の枠体から取り外している時には、熱ローラの表面に傷を付けないように置き方に気を遣わなければならなかった。
【0004】
そこで、本発明では、ブッシュを熱ローラに直接取り付けるようにし、このブッシュの最外径を熱ローラの外径よりも大きくすることにより、このブッシュを取り付けた熱ローラを横にして机などの上に置いても、熱ローラの表面がその表面に触れないようにした定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)前記目的を達成するため、本発明は、ヒータを内蔵した熱ローラを備えた定着装置において、前記熱ローラはその両端に、外径がこの熱ローラの外径よりも大きく、かつ軸線がこの熱ローラの軸線と一致するブッシュを備えることを特徴とする。
【0006】
(2)また本発明は、前記ブッシュの最外周の周面に軸線方向に平行な平面部が設けられたことを特徴とする。
【0007】
(3)また本発明は、前記ブッシュは、その中心に前記熱ローラを受け入れる貫通孔を備え、軸線方向と直角をなす断面形状をC字型にする切り欠き部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
(1)本発明によると、熱ローラの両端には、外径がこの熱ローラよりも大きく、かつ軸線がこの熱ローラの軸線と一致するブッシュが備えられており、定着装置の枠体から取り外した熱ローラを机などの上に置いてもその表面には、ブッシュが触れ、熱ローラの表面は触れないため、熱ローラの置き方に気を遣う必要がなくなる。
【0009】
(2)また、本発明によると、ブッシュの最外周の周面に軸線方向に平行な平面部が設けられており、この平面部が机などの表面に接すると熱ローラが転がりにくくなるため、熱ローラを置いた後で転がり落ちてしまうことにも気を遣う必要がなくなる。
【0010】
(3)また、本発明によると、ブッシュには切り欠き部が備えられており、軸線方向と直角をなす断面形状がC字型であるため、切り欠き部を広げることによってブッシュを熱ローラに取り付けやすくなる。また、熱ローラが内蔵したヒータの熱によって膨張すると、ブッシュの膨張率が熱ローラの膨張率よりも低い場合には、ブッシュが割れてしまうことがあるが、この切り欠き部で広がって、膨張を吸収することができるため、割れる可能性が低くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図1〜図4に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態にかかる定着装置10の正面概略構成図、図2は定着装置10の右側面概略構成図、図3は定着装置10の右側面から見た熱ローラ11の端部の拡大断面図、図4は本発明の実施形態に係るブッシュ16の外観斜視図である。
【0012】
定着装置10は、図1、図2に示すように、熱ローラ11と、熱ローラ11に回動可能に圧接された加圧ローラ13と、熱ローラ11を回動可能に支持するためのベアリング14(図1では不図示)と、ベアリング14を支持する枠体15から構成されている。
【0013】
熱ローラ11はアルミニウムや鉄などからなる金属製の管であり、ヒータ12を内蔵し、側面は用紙に転写されたトナー像を加熱する加熱面11aである。加圧ローラ13は金属製の軸13aとその周りに設けられたゴムなどの弾性体層13bからなり、軸13aは保持部材17により回転可能に支持されている。保持部材17は軸13aと平行な軸線を中心として垂直面内で回動可能に設けられ、保持部材17の自由端を上向きに付勢する圧縮コイルばねなどの付勢手段18が取り付けられている。これらの保持部材17と付勢手段18とによって、加圧ローラ13は熱ローラ11方向に付勢され、熱ローラ11の加熱面11aに圧接され、熱ローラ11とニップを形成している。
【0014】
画像形成ユニット(不図示)において、トナー画像が転写された用紙Pが定着装置10に搬送されると、用紙Pは熱ローラ11と加圧ローラ13とが形成するニップにおいて加熱、加圧され、トナー画像が用紙Pに定着される。トナー画像が定着した用紙Pは用紙搬送方向下流部に搬送され、用紙トレイ(不図示)に排出される。
【0015】
本実施形態において、図2に示すように、熱ローラ11の両端にはボス部11bが設けられており、ボス部11bにはブッシュ16が熱ローラ11の軸線とその軸線を一致させるように取り付けられている。このブッシュ16は軸線を含む断面がL字型であり、最外周の直径は熱ローラ11の外径よりも大きい。また、ブッシュ16は、熱ローラ11を横にして平面上に置いた際に熱ローラ11の自重では変形しない程度の硬度を有する材質でできている。ここで、図2に示すように、熱ローラ11の両端のボス部11bに取り付けられたブッシュ16の間隔は、加圧ローラ13の軸13aの長さよりも広いため、ブッシュ16は加圧ローラ13には接触しない。また、ボス部11bには段差11cが設けられており、ブッシュ11がこの段差11cよりも内側には移動しないようになっている。
【0016】
熱ローラ11の加熱面11aは、用紙Pに転写されたトナー画像が接するため平滑であり、傷が付くとトナー画像が乱れ、画像の劣化の原因となる。従来、熱ローラ11は、組み付けや分解の際にはブッシュ16もベアリング14も取り付けられていない単独の状態であり、横にして置くと加熱面11aが机や作業台の表面に触れる状態であった。そのため、従来、組み付けや分解の際には加熱面11aに傷を付けないように置き方に気を遣わなければならなかった。しかし、本実施形態のようにブッシュ16を熱ローラ11に取り付けることにより、組み付けや分解の際に熱ローラ11を机などの上に横にして置いても、その表面にはブッシュ16が触れ、熱ローラ11の加熱面11aは触れないため、熱ローラ11の置き方に気を遣う必要がなくなる。また、枠体15に組み付けたり分解したりする際にも、枠体15にはブッシュ16が接触するため、加熱面11aは接触しにくく、には傷が付きにくい。
【0017】
本発明の実施形態において、ブッシュ16には、図4に示すように、最外周の周面に軸線方向に平行な平面部16aが設けられていてもよい。このとき、ブッシュ16の軸線から平面部16aまでの距離は、熱ローラ11の加熱面11a部分の半径よりも大きくなるように設けられている。この平面部16aが机の表面に接すると熱ローラ11は転がりにくくなるため、熱ローラ11を机などの平面上に置いた後で転がり落ちてしまうことにも気を遣う必要がなくなる。
【0018】
また、ブッシュ16には、熱ローラ11のボス部11bを受け入れる貫通孔16bと、ブッシュ16の軸線方向と直角をなす断面形状をC字型にする切り欠き部16cが設けられていてもよい。切り欠き部16cで貫通孔16bを広げることによって、ブッシュ16を熱ローラ11のボス部11bに取り付けやすくなる。また、熱ローラ11がヒータ12の熱によって膨張すると、ブッシュ16の膨張率が熱ローラ11の膨張率よりも低い場合には、ブッシュ16が割れてしまうことがあるが、切り欠き部16cで貫通孔16bが広がって、膨張を吸収することができるため、割れる可能性が低くなる。
【0019】
また、本発明の実施形態において、ブッシュ16はポリフェニルサルファイド(PPS)やポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの断熱性樹脂からなるものであってもよい。ヒータ12により熱せられた熱ローラ11の熱がベアリング14や枠体15に逃げると、加熱面11aの温度が両端部で大きく低下することとなりトナー画像が用紙Pの搬送方向の両端部で十分に定着されなくなることがあるが、これにより、熱が熱ローラ11から逃げにくくなり、加熱面11aの両端部での温度が下がりにくくなるため、トナー画像の用紙Pへの定着性が向上する。また、ベアリング14に熱が伝わりにくくなるため、ベアリング14の部品の膨張や潤滑油の熱による劣化が少なくなり、熱ローラ11の回転が鈍くなる可能性が低くなる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、画像形成装置の定着装置一般に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態にかかる定着装置の正面概略構成図
【図2】定着装置の右側面概略構成図
【図3】右側面から見た熱ローラの端部の拡大断面図
【図4】本発明の実施形態に係るブッシュの外観斜視図
【符号の説明】
【0022】
10 定着装置
11 熱ローラ
12 ヒータ
16 ブッシュ
16a 平面部
16b 貫通孔
16c 切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータを内蔵した熱ローラを備えた定着装置において、
前記熱ローラは、その両端に外径がこの熱ローラの外径よりも大きく、かつ軸線がこの熱ローラの軸線と一致するブッシュを備えることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ブッシュの最外周の周面に軸線方向に平行な平面部が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ブッシュは、その中心に前記熱ローラを受け入れる貫通孔を備え、軸線方向と直角をなす断面形状をC字型にする切り欠き部を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−126309(P2006−126309A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311806(P2004−311806)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】