説明

定着装置

【課題】面状発熱体を加熱ローラの発熱要素とする定着装置において、加熱ローラを構成する外管の肉厚寸法を小さくして加熱ローラの熱容量の低減化を図りながら、定着動作に必要な加熱ローラの曲げ強度が損なわれることを防ぐ。
【解決手段】加熱ローラ15は、該加熱ローラ15の剛性支持要素となる金属製の内管20と、前記内管20のパイプ肉厚よりも小さなパイプ肉厚を有する金属製の外管21と、前記内管20と前記外管21との間に設けられた面状発熱体22とを備える。外管21のパイプ肉厚は0.1mm以上、0.2mm以下に設定し、内管20のパイプ肉厚は0.5mm以上に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の温度に加熱される加熱ローラと、当該加熱ローラに対して所定の圧力で接する加圧ローラとを備え、上記加熱ローラ及び上記加圧ローラの間にトナーが転写された記録紙を通過させることにより、上記トナーを記録紙に定着させるための定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ又は複写機などの画像形成装置として、感光体の表面に形成された静電潜像をトナーで現像することによりトナー像を形成し、当該トナー像を記録紙に転写することにより画像を形成する構成が知られている。トナー像が転写された記録紙は、所定の温度に加熱される加熱ローラと、当該加熱ローラに対して所定の圧力で接する加圧ローラとを備えた定着装置へと搬送される。これらの加熱ローラと加圧ローラの間を記録紙が通過することにより、記録紙上のトナーが定着されるようになっている。
【0003】
本願発明に係る定着装置は、加熱ローラのヒータとして面状発熱体を備えるが、このように面状発熱体をヒータとする加熱ローラは、例えば特許文献1から5に公知である。これら特許文献に記載の加熱ローラは、内管と外管と、両管の間に設けられた円筒状の面状発熱体とを備える。そのうえで、特許文献1においては、加熱ローラの熱ムラが小さくなるように、外管を内管よりも長く形成し、また、外管の熱膨張率を内管の熱膨張率よりも大きくしている。特許文献2に係る加熱ローラでは、面状発熱体の内面に、外管である芯金よりも熱膨張率の高い金属箔肉パイプ(内管)を挿入することで、面状発熱体等の膨れ現象を防止している。
【0004】
特許文献3に係る加熱ローラでは、内管を変形しやすいように比較的に軟らかいアルミ系の材料で形成し、外管を加熱ローラが円筒形を維持するように比較的に硬いアルミ系の材料で形成している。特許文献4には、芯金(内管)と離型層基体(外管)とを備える加熱ローラが開示されている。この特許文献4に係る加熱ローラでは、芯金の肉厚寸法をローラの長さ方向の両端部に行くに従って、漸次大きくなるように設定し、離型層基体の肉厚寸法をローラの長さの両端部に行くに従って、漸次小さくなるように設定している。特許文献5に係る加熱ローラでは、消費電力を抑えつつ、短時間に加熱ローラの温度に定着温度に偏りなく調整するために、外管と内管とをアルミニウムで形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】再公表2003−102698号公報
【特許文献2】特開2001−134124号公報
【特許文献3】特許第3770270号公報(段落番号0020参照)
【特許文献4】特開2002−169398号公報
【特許文献5】特開2004−163940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜3に係る加熱ローラでは、該ローラの全体剛性を外管のみ、或いは外管と内管とで担っている。このように、ローラの全体剛性を担う必要から、外管のパイプ肉厚は、内管のパイプ肉厚よりも大きく設定されている。
【0007】
しかし、外管のパイプ肉厚を大きくすると、外管の熱容量が大きくなるため、加熱ヒータの外表面温度を定着温度とするための面状発熱体の発熱量や加熱時間が大きくなることが避けられない。このことは、加熱ローラの消費電力量が多大となることを意味し、結果として、定着装置を含む画像形成装置のランニングコストの増加を招く。
【0008】
一方、上記各特許文献に記載の加熱ローラのように、外管のみ、或いは内外の両管で全体剛性を担う形態では、外管のパイプ肉厚を小さくすると、加熱ローラの全体剛性が低下することが避けられない。このため、定着動作に必要な曲げ強度を確保することが困難になるという、新たな不都合を招く。
加えて、上記各特許文献に記載の加熱ローラにおいては、軸受は加熱ローラの外管と接するように構成されているため、加熱ローラから発せられる熱が外管に接する軸受に奪われることが避けられない。このため、軸受に近い外管の両端部(加熱ローラの長手方向の両端部)と、外管の中央部における温度状態を均一化することが困難であり、加熱ローラの両端部において、定着不良が発生するおそれがある。また、軸受に熱を奪われる分だけ、加熱ローラの両端部を定着温度まで昇温させるためには余計な熱量が必要となり、加熱ローラの消費電力量が増加する不利もある。
【0009】
本発明は、面状発熱体を加熱ローラの発熱要素とする定着装置において、加熱ローラを構成する外管の肉厚寸法を小さくして加熱ローラの熱容量の低減化を図りながら、定着動作に必要な加熱ローラの曲げ強度が損なわれることを防ぐことにある。
本発明のもう一つの目的は、軸受への熱伝導を抑えて、加熱ローラの長手方向の両端部における温度不足に起因する定着不良の発生を確実に防ぎ、以って信頼性に優れた定着装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、所定の温度に加熱される加熱ローラ15と、該加熱ローラ15に対して所定の圧力で接する加圧ローラ16とを備え、上記加熱ローラ15及び上記加圧ローラ16の間にトナーが転写された記録紙4を通過させることにより、上記トナーを記録紙4に定着させるための定着装置を対象とする。前記加熱ローラ15は、該加熱ローラ15の剛性支持要素となる中空円筒状の金属製の内管20と、前記内管20のパイプ肉厚よりも小さなパイプ肉厚を有する、中空円筒状の金属製の外管21と、前記内管20と前記外管21との間に設けられて、中空円筒状に形成された面状発熱体22とを備える。前記加熱ローラ15は、内管20の両端部に装着された端部ブロック400と、該端部ブロック400を回転自在に支持する軸受45により、定着装置に対して回転可能に支持されている。前記端部ブロック400と前記外管21とは非接触となっている。
なお、本発明において「中空円筒状の金属製の外管21と、前記内管20と前記外管21との間に設けられて、中空円筒状に形成された面状発熱体22」とは、面状発熱体22が、内外管20・21に接触或いは非接触の状態で設けられている形態を意味する。尤も、面状発熱体22は外管21の内面に接触している形態を採ることが好ましい。また、面状発熱体22と内管20との間に、断熱体23が設けられている形態を採ることができる。
【0011】
前記面状発熱体22は、絶縁材からなるシート体30と、該シート体30の表面に所定パターンに形成された抵抗体31とを有し、前記抵抗体31と前記外管21とが同素材で構成されている形態を採ることができる。
【0012】
前記シート体30の表面に形成される前記抵抗体31が、加熱ローラ15の軸心方向に並行状に形成された複数本の長ライン部34と、長ライン部34の端部どうしを繋ぐ短ライン部35とを有するラインパターンに形成されている形態を採ることができる。
【0013】
前記外管21のパイプ肉厚は、0.1mm以上、0.2mm以下に設定し、前記内管20のパイプ肉厚は、0.5mm以上に設定することが好ましい。
【0014】
前記内管20がアルミ合金を素材として構成されており、前記面状発熱体22の抵抗体31と前記外管21とがステンレス鋼を素材として構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る定着装置においては、加熱ローラ15の外周側寄りに位置する外管21のパイプ肉厚を内管20のパイプ肉厚よりも小さなものとして、その薄肉化を図ったので、外管21の熱容量を小さくすることができる。これにて、より効率的に面状発熱体22の発熱を加熱ローラ15の外表面に伝えることができるので、加熱ローラ15の温度上昇率の向上を図ることができる。従って、面状発熱体22の発熱量や加熱時間(通電時間)の短縮化が可能となり、加熱ローラ15の消費電力量を減らすことができるので、定着装置6を含む画像形成装置のランニングコストの低減化に貢献できる。
【0016】
加えて、本発明においては、内管20のパイプ肉厚を大きなものとして、該内管20で加熱ローラ15の全体剛性を担うものとした。これによれば、外管21のパイプ肉厚の薄肉化を図った場合にも、加熱ローラ15の剛性が低下する不都合は生じず、定着動作に必要な十分な曲げ強度を加熱ローラ15に与えることができる。また、加熱ローラ15の剛性とは無関係に外管21のパイプ肉厚を自由に設定することができるので、面状発熱体22の発熱能力や厚み寸法等に応じて、最適な肉厚寸法を有する外管21を選択することが可能となる。
【0017】
加熱ローラ15は、内管20の両端部に装着された端部ブロック400と、該端部ブロック400を回転自在に支持する軸受45により、定着装置に対して回転可能に支持する。そのうえで、端部ブロック400と外管21とは非接触とする。このように、軸受45で支持される端部ブロック400を外管21と非接触としていると、外管21から軸受け45への熱伝導を確実に抑えることができる。これにて、加熱ローラ15の両端部の昇温が不十分となることに起因する定着不良の発生を抑えて、定着装置の信頼性向上を図ることができる。すなわち、加熱ローラ15の外表面温度が、その長手方向の両端部において不均一となることを防ぐことができるので、該両端部における定着不良の発生を確実に防ぐことができる。加熱ローラ15の消費電力量を減らすことができるので、定着装置6を含む画像形成装置のランニングコストの低減化に貢献できる。
【0018】
面状発熱体22の抵抗体31の熱膨張係数と、外管21の熱膨張係数が異なるものであると、面状発熱体22の膨張量と外管21の膨張量との差異により、両者の間に機械的なストレスが生じ、最悪の場合には面状発熱体22に皺が発生して断線する、又はパターンに亀裂が生じて断線するおそれがある。これに対して、本願発明のように、面状発熱体22の抵抗体31と外管21とが同素材で構成されていると、両者31・21の熱膨張係数を同一とできるので、温度変化に伴って外管21に加わる機械的なストレスを減らすことができる。従って、面状発熱体22に皺又は亀裂が入るといった不都合が生じることを確実に防ぐことができ、定着装置の信頼性向上に貢献できる。
【0019】
特に、抵抗体31が加熱ローラ15の軸心方向に並行状に形成された複数本の長ライン部34と、長ライン部34の端部どうしを繋ぐ短ライン部35とを有するラインパターンに形成することが好ましい。これによれば、面状発熱体22は、温度変化に伴って長ライン部34の伸び方向である加熱ローラ15の軸心方向に熱膨張する。従って、当該面状発熱体22の熱膨張方向と、外管21の熱膨張方向とを、同一方向(加熱ローラ15の軸心方向)とすることができる。これにて、抵抗体31と外管21とを同素材で構成して、両者31・21の熱膨張率を同一としたことと相俟って、温度変化に伴って外管21に加わる機械的なストレスを軽減できる。
【0020】
外管21のパイプ肉厚は、0.1mm以上、0.2mm以下に設定されていることが好ましい。本発明者の知見によれば、外管21のパイプ肉厚が0.1mmを下回ると、面状発熱体22の抵抗体31のパターンが外管21の表面に現出して、結果として加熱ローラ15に加熱ムラが生じるおそれがある。また、0.2mmを超えると、外管21の熱容量が大きくなりすぎて、加熱ローラ15の温度上昇率の向上効果が損なわれるおそれがある。
また、内管20のパイプ肉厚は、0.5mm以上に設定されていることが好ましい。これは、0、5mm厚を下回ると、内管20の強度が不足することに拠る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る定着装置の要部の縦断側面図である。
【図2】本発明に係る定着装置が適用される画像形成装置の概念図である。
【図3】本発明に係る定着装置の平面図である。
【図4】本発明に係る定着装置の加熱ローラを構成する面状発熱体を説明するための図である。
【図5】本発明に係る定着装置を構成する加熱ローラの縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施例) 図1から図5に、本発明に係る定着装置を、コピー機能とファクシミリ機能とを備えた複合機の定着装置に適用した実施形態を示す。なお、本発明における前後、左右、上下とは、図2および図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0023】
図2において、複合機1は、給紙カセット2と、該給紙カセット2から用紙給送路3を経て送られてきた記録用紙4に対してトナー像を転写して画像形成を行う画像記録装置5と、画像記録装置5を経た記録用紙4に対して加熱・加圧処理を施してトナー像を記録用紙4に定着させる定着装置6と、これら画像記録装置5および定着装置6の上方に配置された画像読取装置7とを含む。画像読取装置7の上面には、各種操作ボタンを有する操作パネル8と、自動原稿搬送装置9(ADF)が設けられている。画像記録装置5は、帯電ドラム10を含む感光体ユニット11と、感光体ユニット11にトナーを供給するトナーカートリッジ12とを含む。
【0024】
図2および図3において、定着装置6は、記録用紙4を加熱する加熱ローラ(加熱ローラ)15と、該加熱ローラ15に対して用紙給送路Rを挟んで配設された加圧ローラ16と、加圧ローラ16に加熱ローラ15に向かう向きの付勢力を与える前後一対の圧縮コイルばね17・17とを含む。図3に示すように、これら加熱ローラ15、加圧ローラ16等は、ケース25内に組み付けられてユニット部品化されている。
【0025】
図1および図5に示すように、加熱ローラ15は、前後水平方向に走る中空円筒状の内管20と、該内管20よりも外径寸法の大きな中空円筒状の外管21と、内外管20・21の間に設けられて、中空円筒状に形成された面状発熱体22とを備える。内管20には、シリコン発泡体などからなる中空円筒状の断熱体23が外嵌状に装着されており、外管21の外表面には、記録紙4との剥離性を向上するための剥離層24が形成されている。
【0026】
内管20は、加熱ローラ15の剛性支持要素となるものであり、換言すれば、内管20は加熱ローラ15の全体剛性を担っている。かかる観点から、本実施形態においては、内管20を0.5mmのパイプ肉厚を有するアルミ合金製の金属管で構成した。
【0027】
図4に示すように、面状発熱体22は、可撓性および耐熱性を有する絶縁材からなるシート体30の表面に、所定パターンに抵抗体31を形成してなるものである。シート体30はポリイミド製の耐熱樹脂からなり、抵抗体31はステンレス鋼で構成されている。抵抗体31に通電すると、ジュール熱により発熱し、これにより加熱ローラ15の外表面が定着温度まで加熱されるようになっている。
【0028】
図4に示すように、シート体30は、加熱ローラ15の軸心方向である前後方向に伸びる長方形状のパターン形成領域32と、該パターン形成領域32の四周縁を構成する前後の短辺から前後外方向に張り出し形成された長方形状の電極形成領域33とを備える。シート体30は、図4において仮想線で示すように、抵抗体31が内面側に位置する姿勢状態で円筒状に丸めて使用に供される。つまり、シート体30は、円筒状に丸められた状態で、外管21の内面に配置される。パターン形成領域32の前後方向の長さ寸法は、定着処理可能な記録用紙4の最大幅寸法(100)と略同寸法に設定されている。
【0029】
シート体30のパターン形成領域32には、抵抗体31が、加熱ローラ15の軸心方向(前後方向)に並行状に形成された複数本の長ライン部34と、隣り合う長ライン部34の前後方向の端部どうしを繋ぐ短ライン部35とを有するラインパターンに形成されている。すなわち、パターン形成領域32には、複数本の線条の抵抗体31(図示例では7本)を一群の単位列とするヒータエレメントが、前後方向に伸張する長ライン部34と、長ライン部34の前後方向の端部どうしを繋ぐ短ライン部35とを有する蛇行状に形成されている。各線状の抵抗体31の端部は、シート体30の電極形成領域33に形成された四角面状の電極体36に至っており、該電極体36が後述の給電ブロック42(図1参照)と接触することで、給電ブラシ37との間で通電状態が確立されるようになっている。
【0030】
外管21は、パイプ肉厚が0.1mmの薄肉の中空円筒体であり、面状発熱体22からの発熱を均等に加熱ローラ15の表面に伝導するために設けられる。本実施形態では、面状発熱体22の抵抗体31と同じステンレス鋼を素材とする、中空円筒状の深絞り成形品を外管21とした。外管21の前後方向の長さ寸法は、面状発熱体22のパターン形成領域32の前後方向の長さ寸法よりも大きく、且つ内管20の前後方向の長さ寸法よりも小さく設定した。加熱ローラ15を組み立てた状態において、中空円筒状に丸められた面状発熱体22は、外管21の内面に沿うように配設される。外管21の表面には、予め剥離層24が形成されている。
【0031】
図1において、符号40は、内外管20・21、面状発熱体22、および断熱体23を支持する支持構造を示す。支持構造40は、内管20の両端部に装着される端部ブロック400と、該端部ブロック400を回転自在に支持する定着装置6側の軸受45とで構成される。端部ブロック400は、外管21と非接触となっている。
【0032】
端部ブロック400は、内管20に装着される絶縁ブロック41と、面状発熱体22への給電を担う給電ブロック42と、外管21と面状発熱体22の端部を保護するカバーブロック43とを含み、該端部ブロック400の端部に軸心ブロック44が装着されている。絶縁ブロック41は、凹部50を有する有底円筒状のベース51と、ベース51の前後端から外方向に張り出し形成された円柱状の連結片52とを備え、これらベース51と連結片52を一体に成形してなる樹脂成形品である。給電ブロック42は、銅やステンレス鋼などを素材とする扁平状の金属成形品である。給電ブロック42は、内側面に連結片52に外嵌状に装着される第1の連結穴53を備え、外側面に軸心ブロック44の挿入を許す第2の連結穴54を備える。
【0033】
カバーブロック43は、貫通孔55を有する中空円筒状の樹脂成形品であり、その外面に取り付けられた軸受45を介して加熱ローラ15の全体を回転自在に支持する目的で給電ブロック42に後述のビス46により締結固定される。外管21および剥離層24との接触を防ぐため、外管21に臨むカバーブロック43の筒端面(加熱ローラ15の中央側を指向する筒端面)には、凹部60が陥没状に形成されている。換言すれば、カバーブロック43を給電ブロック42に組み付けたとき、該カバーブロック43は、外管21および剥離層24と非接触となるように構成されている。
【0034】
軸心ブロック44は、有底円筒状のベース58と、ベースの前後方向の中央部から張り出し形成されたフランジ59とを備え、これらベース58とフランジ59とを一体に成形してなる金属成形品である。ベース58は給電ブロック42の連結穴54に差込装着可能に構成されており、かかる装着状態において、フランジ59は、給電ブロック42と面状発熱体22の外端面を覆うようになっている。
図1において符号46は、カバーブロック43および面状発熱体22を電導ブロック42に締結固定するためのビスを示す。ビス46を、カバーブロック43の外面より面状発熱体22の電極体36に形成された孔38を介して、電導ブロック42に形成された雌ねじ部に捩じ込むことにより、カバーブロック43および面状発熱体22を電導ブロック42に締結固定することができる。
【0035】
加熱ローラ15は、以下のような手順で組み立てることができる。まず、断熱体23に内管20を差し込み装着したうえで、絶縁ブロック41の凹部50に内管20を差し込む。次いで、絶縁ブロック41の連結片52に給電ブロック42の連結穴53を嵌め込む。断熱体23と絶縁ブロック41と給電ブロック42の外径寸法は等しく設定されており、図1に示すように、三者の外周面は段差の無いフラット状となるように構成されている。次に、面状発熱体22を断熱体23の外表面に巻き付ける。このとき、面状発熱体22の電極形成領域33の前後方向の端面が、給電ブロック42から食み出さないようにする。次に、面状発熱体22の外面に、剥離層24を有する外管21を装着したうえで、カバーブロック43を面状発熱体22および外管21の端部を覆うように装着する。かかる装着状態から。ビス46をカバーブロック43の外面より面状発熱体22の電極体36に形成された孔38を介して、電導ブロック42に形成された雌ねじ部に捩じ込み、カバーブロック43および面状発熱体22を電導ブロック42に締結固定する。図1に示すように、カバーブロック43を電導ブロック42に締結固定した状態では、凹部60の存在により、該カバーブロック43と外管21および剥離層24とは非接触となるようになっている。最後に、給電ブロック42の連結穴54に軸心ブロック44のベース58を差し込み装着する。
【0036】
加熱ローラ15は、図3に示すように、定着装置3のケース25に内管20の外装部であるカバーブロック43を軸受45とともに装着することで、定着装置6に対して回転可能に組み付けることができる。かかる組み付け状態において、図1に示すように、給電ブラシ37が軸心ブロック44に接触し、該軸心ブロック44と給電ブロック42を介して、面状発熱体22の抵抗体31に電力が供給されるようになっている。
【0037】
以上のような構成からなる加熱ローラ15を備える定着装置6では、外管21を0.1mmのパイプ肉厚を有するものとしたので、外管21の熱容量を極小化することができる。これにて、パイプ肉厚の大きな外管21を有する従来の加熱ローラ15に比べて効率良く、面状発熱体22からの発熱を加熱ローラ15の外表面に伝えることが可能となる。従って、加熱ローラ15を含む定着装置6の消費電力量を抑えて、複合機1のランニングコストの低減化に貢献できる。
【0038】
このように外管21のパイプ肉厚の薄肉化を図った場合には、加熱ローラ15の剛性が不足する不都合が生じる。かかる不都合を解消するため本実施形態においては、内管20のパイプ肉厚を大きくして、該内管20に加熱ローラ15の全体剛性を担わせることとした。これにて、定着動作に必要な十分な曲げ強度を加熱ローラ15に付与することができる。また、加熱ローラ15の剛性とは無関係に外管21のパイプ肉厚を自由に設定することができるので、面状発熱体22の発熱能力や厚み寸法等に応じて、最適な肉厚寸法を有する外管21を選択することができる。
【0039】
また本実施形態においては、軸受45で支持される端部ブロック400を、外管21および剥離層24と非接触となるようにしたので、外管21から軸受け45への熱伝導を確実に抑えることができる。これにて、加熱ローラ15の両端部の昇温が不十分となることに起因する定着不良の発生を抑えて、信頼性に優れた定着装置6を得ることができる。すなわち、加熱ローラ15の外表面温度、より具体的には剥離層24の外表面温度を、加熱ローラ15の長手方向の全体に亘って、より確実に均一化することができる。従って、加熱ローラ15の長手方向の長端部において、昇温が不十分となることに起因する定着不良の発生を抑えて、信頼性に優れた定着装置6を得ることができる。
【0040】
面状発熱体22の抵抗体31と外管21とが同素材(ステンレス鋼)で構成したので、両者22・21の熱膨張係数を同一とすることができる。これにて、両者22・21の温度変化に伴う機械的なストレスを減らすことができるので、面状発熱体22に皺が発生して断線する、又はパターンに亀裂が生じて断線するなどの不都合が生じることを確実に防ぐことができる。
【0041】
また、本実施形態では、抵抗体31を、加熱ローラ15の軸心方向に並行状に形成された複数本の長ライン部34と、長ライン部34の端部どうしを繋ぐ短ライン部35とを有するラインパターンに形成した。これにて、面状発熱体22を、温度変化に伴って長ライン部34の伸び方向である軸心方向に熱膨張させることができる。従って、当該面状発熱体22の熱膨張方向と、外管21の熱膨張方向とを、同一方向(加熱ローラ15の軸心方向)とすることができる。以上より、抵抗体31と外管21とを同一部材として、両者31・21の熱膨張率を同一としたことと相俟って、温度変化に伴って外管21に加わる機械的なストレスを確実に減らすことができる。従って、面状発熱体22に皺が発生して断線する、又はパターンに亀裂が生じて断線することなどを確実に防ぐことができる。
【0042】
外管21のパイプ肉厚は、0.1mm以上、0.2mm以下に設定されていることが好ましい。本発明者の知見によれば、外管21のパイプ肉厚が0.1mmを下回ると、面状発熱体22の抵抗体31の抵抗パターンが外管21の表面に現出して、結果として加熱ローラ15に加熱ムラが生じるおそれがある。また、0.2mmを超えると、外管21の熱容量が大きくなりすぎて、加熱ローラ15の温度上昇率の向上効果が損なわれるおそれがある。また、内管20のパイプ肉厚は、0.5mm以上に設定されていることが好ましい。これは、0、5mm厚を下回ると、内管20の強度が不足することに拠る。
【0043】
支持構造40は、上記実施形態に示したものに限られない。面状発熱体22の抵抗パターンも上記実施形態に示したものに限られず、要は、加熱ローラ15の軸心方向に長ライン部34が形成されていればよい。
【符号の説明】
【0044】
6 定着装置
15 加熱ローラ
16 加圧ローラ
20 内管
21 外管
22 面状発熱体
30 シート体
31 抵抗体
34 長ライン部
35 短ライン部
45 軸受
400 端部ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度に加熱される加熱ローラと、該加熱ローラに対して所定の圧力で接する加圧ローラとを備え、上記加熱ローラ及び上記加圧ローラの間にトナーが転写された記録紙を通過させることにより、上記トナーを記録紙に定着させるための定着装置であって、
前記加熱ローラが、
該加熱ローラの剛性支持要素となる中空円筒状の金属製の内管と、
前記内管のパイプ肉厚よりも小さなパイプ肉厚を有する、中空円筒状の金属製の外管と、
前記内管と前記外管との間に設けられて、中空円筒状に形成された面状発熱体と、
を備えるものであり、
前記加熱ローラは、内管の端部に装着された端部ブロックと、該端部ブロックを回転自在に支持する軸受により、前記定着装置に対して回転可能に支持されており、
前記端部ブロックと前記外管とが非接触となっていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記面状発熱体は、絶縁材からなるシート体と、該シート体の表面に所定パターンに形成された抵抗体とを有し、
前記抵抗体と前記外管とが同素材で構成されている、請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
前記シート体の表面に形成される前記抵抗体が、加熱ローラの軸心方向に並行状に形成された複数本の長ライン部と、長ライン部の端部どうしを繋ぐ短ライン部とを有するラインパターンに形成されている、請求項2記載の定着装置。
【請求項4】
前記外管のパイプ肉厚が、0.1mm以上、0.2mm以下に設定されており、
前記内管のパイプ肉厚が、0.5mm以上に設定されている、請求項1又は2又は3記載の定着装置。
【請求項5】
前記内管がアルミ合金を素材として構成されており、
前記面状発熱体の抵抗体と、前記外管とがステンレス鋼を素材として構成されている、請求項1乃至4のいずれかに記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−227412(P2011−227412A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99420(P2010−99420)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】