説明

定着装置

【課題】ニップ板を効率良く加熱することができる定着装置を提供することを目的とする。
【解決手段】定着装置100は、可撓性を有する筒状部材(定着ベルト110)と、筒状部材の内部に配置された発熱体と、筒状部材の内部に配置され、発熱体からの輻射熱を受けるニップ板130と、発熱体を囲んだ状態でニップ板130を支持する断面視U字状のステイ160と、ニップ板130との間で筒状部材を挟むことで筒状部材との間にニップ部Nを形成するバックアップ部材(加圧ローラ140)を備える。そして、ニップ板130の搬送方向の上流側には、ステイ160の上流側の上流側壁(前壁162)に向けて屈曲する屈曲部132が形成され、当該屈曲部132の上端縁132Aがステイ160の上流側壁で支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性を有する筒状部材と、筒状部材の内周面に摺接するニップ板と、ニップ部材との間で筒状部材を挟むことで筒状部材との間にニップ部を形成するバックアップ部材とを備える定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状部材、ニップ板およびバックアップ部材を備える定着装置として、ニップ板をバックアップ部材とは反対側から支持する断面視U字状のステイを備えるものが知られている(特許文献1参照)。具体的に、この技術では、ステイのニップ板側の両端面で、ニップ板の面を支持するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−95534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、ニップ板の面をステイの両端面で支持するので、ニップ板からステイに伝わる熱量が大きくなり(詳しくは、ニップ板とステイの間に挟まれる反射板とニップ板との伝熱面積が大きくなり)、ニップ板を効率的に加熱することができないといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、ニップ板を効率良く加熱することができる定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、記録シートを所定方向に移動させながら、記録シート上に現像剤像を熱定着するための定着装置であって、可撓性を有する筒状部材と、前記筒状部材の内部に配置された発熱体と、前記筒状部材の内部に配置され、前記発熱体からの輻射熱を受けるニップ板と、前記発熱体を囲んだ状態で前記ニップ板を支持する断面視U字状のステイと、前記ニップ板との間で前記筒状部材を挟むことで前記筒状部材との間にニップ部を形成するバックアップ部材と、を備える。
そして、前記ニップ板の前記記録シートの前記所定方向の上流側には、前記ステイの前記上流側の上流側壁に向けて屈曲する屈曲部が形成され、当該屈曲部の端縁が前記ステイの前記上流側壁で支持されている。
【0007】
この構成によれば、ステイでニップ板の面を支持するものに比べ、ニップ板とステイ(もしくはニップ板とステイとの間に配設される部材)との伝熱面積を小さくすることができるので、ニップ板からステイに伝わる熱量を小さくすることができ、ニップ板を効率良く加熱することができる。
【0008】
また、前記した構成において、前記屈曲部は前記発熱体と対向しているのが望ましい。
【0009】
これによれば、発熱体で屈曲部が加熱されるので、ニップ部に入る前の記録シートを屈曲部で事前に加熱(プレヒート)することができ、熱定着性を向上させることができる。
【0010】
また、前記した構成において、前記屈曲部は、所定の第1曲率半径で形成される第1屈曲部と、当該第1屈曲部の前記上流側に設けられ、前記第1曲率半径よりも小さな第2曲率半径で形成される第2屈曲部とを有しているのが望ましい。
【0011】
これによれば、屈曲部を1種類の大きな曲率半径で形成するものに比べ、小さな第2曲率半径によって屈曲部の端縁を下流側に位置させることができるので、定着装置の小型化を図ることができる。
【0012】
また、前記した構成において、前記第2屈曲部と前記筒状部材との間には、潤滑剤が設けられているのが望ましい。
【0013】
これによれば、第2屈曲部の曲率半径が小さいことにより、当該第2屈曲部と筒状部材との間に形成される隅部の角度を大きくして隅部を大きくすることができるので、この大きな隅部によって潤滑剤を良好に保持することができる。
【0014】
また、前記した構成において、前記ステイの前記上流側壁の端部には、前記上流側に延びるフランジが形成され、前記ニップ板の屈曲部の端縁が前記フランジの面で支持されているのが望ましい。
【0015】
これによれば、ニップ板の屈曲部の端縁の位置が誤差により所定方向に多少ずれても、端縁をフランジの面で確実に支持することができる。
【0016】
また、前記した構成において、前記発熱体を囲うように前記筒状部材の内部に配置され、前記発熱体からの輻射熱を前記ニップ板へ向けて反射する断面視U字状の反射板を備え、前記反射板の前記ニップ板側の各端縁には、前記所定方向に沿って外側に延びるフランジが形成され、前記反射板の前記フランジが、前記ステイと前記ニップ板とで挟まれていてもよい。
【0017】
この場合であっても、ニップ板の端縁が反射板に接触している部分に関しては、ニップ板から反射板に伝わる熱量が小さいので、ニップ板から反射板を介してステイに伝わる熱量も小さくすることができる。
【0018】
また、前記した構成において、前記ニップ部の前記筒状部材の回転方向上流側に設けられ、前記筒状部材を前記ニップ部に向けて案内する上流ガイドを備え、前記上流ガイドが、前記反射板の前記フランジよりも前記ニップ板側に突出しているのが望ましい。
【0019】
これによれば、筒状部材が反射板のフランジに引っ掛かるのを上流ガイドによって抑えることができる。
【0020】
また、前記した構成において、前記ニップ板は、前記ニップ部から前記所定方向に沿って下流側に延びる延長部を備え、当該延長部の面が前記ステイの前記所定方向の下流側の下流側壁で支持されているのが望ましい。
【0021】
これによれば、延長部をニップ部から所定方向に沿って延出することで、ニップ板の下流側の部位をニップ部近傍で屈曲させる構造に比べ、ニップ幅を大きく確保することができる。また、ニップ幅を大きく確保すべく、ニップ板をニップ部よりも所定方向に沿って下流側に延ばした後でステイに向けて大きな曲率半径で屈曲する屈曲部を設け、屈曲部の端縁をステイで支持する構造に比べ、ニップ板をステイで支持する位置をニップ部寄りにすることができるので、定着装置が前記所定方向に大型化するのを抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ニップ板を効率良く加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る定着装置を備えたレーザプリンタを示す断面図である。
【図2】定着装置を示す断面図である。
【図3】ニップ板を示す斜視図である。
【図4】ニップ板やステイ等の関係を詳細に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、まず、本発明の実施形態に係る定着装置100を備えたレーザプリンタ1(画像形成装置)の概略構成を簡単に説明した後、定着装置100の詳細な構成について説明する。
【0025】
また、以下の説明において、方向は、レーザプリンタ1を使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における左側を「前」、右側を「後」とし、奥側を「左」、手前側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0026】
<レーザプリンタの概略構成>
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体筐体2内に、記録シートの一例としての用紙Sを供給する給紙部3と、露光装置4と、用紙S上にトナー像(現像剤像)を転写するプロセスカートリッジ5と、用紙Sを後方(所定方向)に移動させながら、用紙S上にトナー像を熱定着する定着装置100とを主に備えている。
【0027】
給紙部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、給紙トレイ31と、用紙押圧板32と、給紙機構33とを主に備えている。給紙トレイ31に収容された用紙Sは、用紙押圧板32によって上方に寄せられ、給紙機構33によってプロセスカートリッジ5(感光体ドラム61と転写ローラ63との間)に向けて供給される。
【0028】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、図示しないレーザ発光部や、符号を省略して示すポリゴンミラー、レンズ、反射鏡などを備えている。この露光装置4では、レーザ発光部から出射される画像データに基づくレーザ光(鎖線参照)が、感光体ドラム61の表面で高速走査されることで、感光体ドラム61の表面を露光する。
【0029】
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に配置され、本体筐体2に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能に装着される構成となっている。このプロセスカートリッジ5は、ドラムユニット6と、現像ユニット7とから構成されている。
【0030】
ドラムユニット6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63とを主に備えている。また、現像ユニット7は、ドラムユニット6に対して着脱可能に装着される構成となっており、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、現像剤の一例としてのトナーを収容するトナー収容部74とを主に備えている。
【0031】
このプロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が、帯電器62により一様に帯電された後、露光装置4からのレーザ光の高速走査によって露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部74内のトナーは、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給され、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
【0032】
現像ローラ71上に担持されたトナーは、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、感光体ドラム61と転写ローラ63の間を用紙Sが搬送されることで感光体ドラム61上のトナー像が用紙S上に転写される。
【0033】
定着装置100は、プロセスカートリッジ5の後方に設けられている。用紙S上に転写されたトナー像は、定着装置100を通過することで用紙S上に熱定着される。その後、用紙Sは、搬送ローラ23,24によって排紙トレイ22上に排出される。
【0034】
<定着装置の詳細構成>
図2に示すように、定着装置100は、筒状部材の一例としての定着ベルト110と、発熱体の一例としてのハロゲンランプ120と、ニップ板130と、バックアップ部材の一例としての加圧ローラ140と、反射板150と、ステイ160と、カバー部材200とを主に備えている。
【0035】
定着ベルト110は、耐熱性と可撓性を有する無端状(筒状)のステンレス綱製のベルトであり、カバー部材200に形成されたガイド部(上流ガイド310、下流ガイド320および上部ガイド330)により回転が案内されている。
【0036】
ハロゲンランプ120は、輻射熱を発してニップ板130および定着ベルト110(ニップ部N)を加熱することで用紙S上のトナーを加熱する部材であり、定着ベルト110の内側において定着ベルト110およびニップ板130の内面から所定の間隔をあけて配置されている。
【0037】
ニップ板130は、定着ベルト110の内側に配置され、ハロゲンランプ120からの輻射熱を受ける板状の部材であり、その下面が定着ベルト110の内周面に摺接するように配置されている。本実施形態において、ニップ板130は、金属製であり、例えば、後述するスチール製のステイ160より熱伝導率が大きい、アルミニウム板などを折り曲げることで形成されている。なお、ニップ板130をアルミニウム製とした場合には、ニップ板130の熱伝導性を向上させることが可能となっている。
【0038】
図2および図3に示すように、ニップ板130は、板状部131と、屈曲部132と、潤滑剤規制部133と、3つの被検知部134とを有している。
【0039】
板状部131は、上下方向に直交するとともに左右方向に長い長尺の板状の部材であり、加圧ローラ140との間で定着ベルト110を上下に挟み込むことで、定着ベルト110との間でニップ部Nを形成している。そして、この板状部131は、ハロゲンランプ120の下方に配置されて、当該ハロゲンランプ120からの熱を定着ベルト110を介して用紙S上のトナーに伝達するようになっている。
【0040】
なお、板状部131の内面(上面)には、黒色の塗装を施したり、熱吸収部材を設けたりしてもよい。これによれば、ハロゲンランプ120からの輻射熱を効率良く吸収することができる。
【0041】
屈曲部132は、板状部131の前端側(所定方向の上流側)から上方に向けて略円弧状に屈曲するように形成されている。詳しくは、図4に示すように、屈曲部132は、後述するステイ160の上流側壁の一例としての前壁162に向けて屈曲し、その上端縁132Aが後述する反射板150のフランジ152およびステイ160のフランジ164を介して前壁162で支持されている。
【0042】
このようにニップ板130の上端縁132Aを反射板150を介してステイ160で支持することで、例えばニップ板の面を反射板を介してステイで支持するものに比べ、ニップ板130と反射板150との伝熱面積を小さくすることが可能となっている。そして、このように伝熱面積が小さくなることで、ニップ板130からステイ160に伝わる熱量を小さくすることができるので、ニップ板130を効率良く加熱することが可能となっている。
【0043】
また、屈曲部132の上端縁132Aを、各フランジ152,164の面で支持するので、屈曲部132の上端縁132Aの位置が誤差により搬送方向に多少ずれても、上端縁132Aを各フランジ152,164の面で確実に支持することが可能となっている。
【0044】
また、屈曲部132は、ハロゲンランプ120(図2参照)と対向するように配置されている。これにより、ハロゲンランプ120で直接屈曲部132が加熱されるので、ニップ部Nに入る前の用紙Sを屈曲部132で事前に加熱(プレヒート)することができ、熱定着性を向上させることが可能となっている。
【0045】
また、屈曲部132は、第1屈曲部135と、当該第1屈曲部135の前側に設けられる第2屈曲部136とを有している。
【0046】
第1屈曲部135は、板状部131と潤滑剤規制部133との間の第3屈曲部137の第3曲率半径R3よりも大きな第1曲率半径R1で形成されている。このようにニップ板130の前側にある第1屈曲部135の曲率半径R1を大きくすることで、当該第1屈曲部135で定着ベルト110をニップ部Nに向けて良好に案内することが可能となっている。また、後側の第3屈曲部137の曲率半径R3を小さくするので、例えば第3屈曲部の曲率半径を第1屈曲部の曲率半径と同じように大きくする形態に比べ、定着装置100を前後方向(搬送方向)で小型化することが可能となっている。
【0047】
第2屈曲部136は、第1曲率半径R1よりも小さな第2曲率半径R2で形成されている。これにより、例えば屈曲部132を1種類の大きな曲率半径で形成するものに比べ、小さな第2曲率半径R2によって屈曲部132の上端縁132Aを後側に位置させることができるので、定着装置100の小型化を図ることが可能となっている。
【0048】
さらに、第2屈曲部136の曲率半径R2を小さくすることにより、第2屈曲部136と定着ベルト110との間に形成される隅部の角度を大きくして隅部を大きくすることが可能となっている。そして、このように大きく形成された隅部(第2屈曲部136と定着ベルト110との間)には、潤滑剤Gが設けられている。これにより、大きな隅部によって潤滑剤Gを良好に保持することが可能となっている。
【0049】
なお、本実施形態では、第1屈曲部135と第2屈曲部136とを、共に定着ベルト110の径方向外側に凸となるような円弧状に形成している。ここで、例えば第2屈曲部の凸の方向を第1屈曲部とは逆方向(径方向内側)に向けた場合には、第2屈曲部の端縁から搬送方向上流側に延びる延出部が形成されることになり、この延出部をステイで押すと、屈曲部を開く方向にモーメントがかかってニップ板が曲がりやすい。しかし、本実施形態では、第1屈曲部135と第2屈曲部136とを同じ方向に凸となるようにしたので、搬送方向上流側に延びる延出部が形成されず、屈曲部132の上端縁132Aを介してニップ板130を曲げずに良好に押すことが可能となっている。
【0050】
また、本実施形態では、ニップ板130の前側においては前述したようにニップ板130の上端縁132Aをステイ160で支持しているが、ニップ板130の後側においては、ニップ板130の面をステイ160で支持している。詳しくは、板状部131は、ニップ部Nから後側に延びる延長部131Aを備えており、この延長部131Aの上面が、後述する反射板150のフランジ152を介してステイ160の下流側壁の一例としての後壁163で支持されている。
【0051】
このように延長部131Aの上面をステイ160で支持することで、例えばニップ板の後側の屈曲部を前側の屈曲部と同じように大きな曲率半径としてニップ板の後側の端縁をステイで支持する構造に比べ、ニップ板130をステイ160で支持する位置をニップ部N寄りにすることができるので、定着装置100が搬送方向に大型化するのを抑えることが可能となっている。また、ニップ部Nから搬送方向に沿って後側に延出する延長部131Aを設けることで、例えば板状部の後側の部位をニップ部近傍で屈曲させる構造に比べ、ニップ幅を大きく確保することが可能となっている。
【0052】
図3および図4に示すように、潤滑剤規制部133は、板状部131の後側の端縁から上方(定着ベルト110の径方向内側)に向けて延びるように形成されている。詳しくは、潤滑剤規制部133は、板状部131の後側の端縁のうち左右方向(軸方向)における一端側から他端側まで延びるように形成されている。これにより、定着ベルト110の内周面に付着した潤滑剤Gが板状部131の上面(黒色の塗装等が施された面)に流入するのを潤滑剤規制部133によって効果的に抑えることができるので、ニップ板130の加熱効率低下を抑えることが可能となっている。
【0053】
3つの被検知部134は、それぞれ、サーミスタやサーモスタッドなどの温度検知部材400によって温度が検知される部位であり、潤滑剤規制部133の上端縁133Aの一部から後側に延びるように形成されている。そして、各被検知部134は、左右方向(定着ベルト110の軸方向)において板状部131よりも短く形成されるとともに、左右方向における両端縁134A,134Bのすべてが空間に隣接している。
【0054】
詳しくは、被検知部134の上面134C(温度検知部材400と対向する面)が、潤滑剤規制部133の上端縁133Aよりも上方(上端縁133Aが向く方向)に離れて配置されている。これにより、潤滑剤規制部133の上端縁133Aを伝って潤滑剤Gが被検知部134の上面134Cに流れるのを抑えることが可能となっている。
【0055】
また、潤滑剤規制部133は、搬送方向に対して直角に形成されている。これにより、潤滑剤Gの板状部131への流入をより効果的に堰き止めることが可能となっている。
【0056】
さらに、潤滑剤規制部133の上端縁133Aのうち被検知部134に隣接する部位には、下方(潤滑剤規制部133の基端側)に向けて凹む切欠部133Bが形成されている。これにより、被検知部134の高さ(上下方向の位置)を抑えつつ、切欠部133Bで良好に潤滑剤Gの被検知部134への移動を止めることが可能となっている。
【0057】
なお、温度検知部材400は、被検知部134に接触して被検知部134(ニップ板130)の温度を検知する接触式のセンサであってもよいし、被検知部134には接触しないで被検知部134の温度を検知する非接触式のセンサであってもよい。
【0058】
また、本実施形態では、温度検知部材400は、コイルバネ410によって被検知部134に押圧されている。
【0059】
図2に示すように、加圧ローラ140は、ニップ板130との間で定着ベルト110を挟むことで定着ベルト110との間にニップ部Nを形成する部材であり、ニップ板130の下方に配置されている。本実施形態においては、ニップ部Nを形成するために、ニップ板130および加圧ローラ140の一方を他方に向けて付勢している。そして、この加圧ローラ140は、ニップ板130との間で定着ベルト110を挟んだ状態で回転することで、当該定着ベルト110とともに回転して用紙Sを後方に搬送するようになっている。
【0060】
加圧ローラ140は、本体筐体2内に設けられた図示しないモータから駆動力が伝達されて回転駆動するように構成されており、回転駆動することで定着ベルト110(または用紙S)との摩擦力により定着ベルト110を従動回転させる。トナー像が転写された用紙Sは、加圧ローラ140と加熱された定着ベルト110の間(ニップ部N)を搬送されることでトナー像(トナー)が熱定着されることとなる。
【0061】
反射板150は、ハロゲンランプ120からの輻射熱をニップ板130に向けて反射する部材であり、定着ベルト110の内側でハロゲンランプ120を囲うように、ハロゲンランプ120から所定の間隔をあけて配置されている。
【0062】
この反射板150は、赤外線および遠赤外線の反射率が大きい、例えば、アルミニウム板などを断面視U字状に湾曲させて形成されている。より詳細に、反射板150は、U字形状をなす反射部151と、反射部151の前後方向における両端縁(ニップ板130側の各端縁)から前後方向外側に向けて延びるフランジ152とを有している。
【0063】
そして、各フランジ152は、前述したようにステイ160とニップ板130とで挟まれている。
【0064】
ステイ160は、ニップ板130を反射板150を介して支持することで加圧ローラ140からの荷重を受ける部材であり、定着ベルト110の内側でハロゲンランプ120や反射板150を囲うように配置されている。なお、ここでいう荷重は、ニップ板130が加圧ローラ140を付勢する構成においては、ニップ板130が加圧ローラ140を付勢する力の反力をいうものとする。
【0065】
詳しくは、図4に示すように、ステイ160は、上壁161と、上壁161の前端から下方に延びる前壁162と、上壁161の後端から下方に延びる後壁163とによって断面視U字状に形成されている。そして、前壁162の下端部には、前側に延びるフランジ164が形成されている。
【0066】
このようなステイ160は、比較的剛性が高い、例えば、鋼板などを折り曲げることで形成されている。
【0067】
図2に示すように、カバー部材200は、第1カバー部材210と、第2カバー部材220とを主に備えて構成されている。
【0068】
第1カバー部材210は、断面視U字状をなして左右方向に長く延びるように形成されており、ステイ160を挟んでハロゲンランプ120とは反対側でステイ160を覆うように配置されている。第1カバー部材210は、後側壁211と、前側壁212と、後側壁211および前側壁212の上端同士を連結するように延びる上壁213と、後側壁211の下端から後方に向けて延びる延出壁214とを主に有している。
【0069】
そして、前側壁212の下端部には、定着ベルト110の前側下部を案内する上流ガイド310が形成されている。また、延出壁214の後端には、定着ベルト110の後側下部を案内する下流ガイド320が形成されている。
【0070】
上流ガイド310は、ニップ部Nよりも定着ベルト110の回転方向上流側に設けられ、定着ベルト110をニップ部Nに向けて案内している。そして、この上流ガイド310は、反射板150のフランジ152よりも下側(ニップ板130側)に突出している。
【0071】
これにより、定着ベルト110が反射板150のフランジ152に引っ掛かるのを上流ガイド310によって抑えることが可能となっている。
【0072】
図4に示すように、下流ガイド320は、ニップ板130よりも後側、かつ、被検知部134よりも下側(径方向外側)に配置され、定着ベルト110の内周面を案内している。これにより、被検知部134に定着ベルト110が接触するのをより確実に抑えることができるので、定着ベルト110の内周面から潤滑剤Gが直接被検知部134に流れるのを確実に抑えることが可能となっている。
【0073】
図2に示すように、第2カバー部材220は、左右方向に長く延びるように形成されており、第1カバー部材210の一部を覆うように配置されている。第2カバー部材220は、上壁221と、上壁221の後端から下方に向けて延びる後壁222と、後壁222の下端から後方に向けて延びる延出壁223とを主に有している。そして、上壁221の左右方向両端部には、定着ベルト110の上部を案内する上部ガイド330が形成されている。
【0074】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0075】
前記実施形態では、ニップ板130の屈曲部132の上端縁132Aを、反射板150のフランジ152およびステイ160のフランジ164を介してステイ160の前壁162で間接的に支持したが、本発明はこれに限定されず、例えば屈曲部の端縁をステイの上流側壁の端部で直接支持してもよい。
【0076】
前記実施形態では、記録シートの一例として、厚紙、はがき、薄紙などの用紙Sを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えばOHPシートであってもよい。
【0077】
前記実施形態では、発熱体の一例としてハロゲンランプ120を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば発熱抵抗体などを採用してもよい。
【0078】
前記実施形態では、バックアップ部材として加圧ローラ140を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ベルト状の加圧部材などであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
100 定着装置
110 定着ベルト
120 ハロゲンランプ
130 ニップ板
132 屈曲部
132A 端縁
140 加圧ローラ
160 ステイ
162 前壁
N ニップ部
S 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録シートを所定方向に移動させながら、記録シート上に現像剤像を熱定着するための定着装置であって、
可撓性を有する筒状部材と、
前記筒状部材の内部に配置された発熱体と、
前記筒状部材の内部に配置され、前記発熱体からの輻射熱を受けるニップ板と、
前記発熱体を囲んだ状態で前記ニップ板を支持する断面視U字状のステイと、
前記ニップ板との間で前記筒状部材を挟むことで前記筒状部材との間にニップ部を形成するバックアップ部材と、を備え、
前記ニップ板の前記所定方向の上流側には、前記ステイの前記上流側の上流側壁に向けて屈曲する屈曲部が形成され、当該屈曲部の端縁が前記ステイの前記上流側壁で支持されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記屈曲部が前記発熱体と対向していることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記屈曲部は、所定の第1曲率半径で形成される第1屈曲部と、当該第1屈曲部の前記上流側に設けられ、前記第1曲率半径よりも小さな第2曲率半径で形成される第2屈曲部とを有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記第2屈曲部と前記筒状部材との間には、潤滑剤が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記ステイの前記上流側壁の端部には、前記上流側に延びるフランジが形成され、
前記ニップ板の屈曲部の端縁が前記フランジの面で支持されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記発熱体を囲うように前記筒状部材の内部に配置され、前記発熱体からの輻射熱を前記ニップ板へ向けて反射する断面視U字状の反射板を備え、
前記反射板の前記ニップ板側の各端縁には、前記所定方向に沿って外側に延びるフランジが形成され、
前記反射板の前記フランジが、前記ステイと前記ニップ板とで挟まれていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記ニップ部の前記筒状部材の回転方向上流側に設けられ、前記筒状部材を前記ニップ部に向けて案内する上流ガイドを備え、
前記上流ガイドは、前記反射板の前記フランジよりも前記ニップ板側に突出していることを特徴とする請求項6に記載の定着装置。
【請求項8】
前記ニップ板は、前記ニップ部から前記所定方向に沿って下流側に延びる延長部を備え、当該延長部の面が前記ステイの前記所定方向の下流側の下流側壁で支持されていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−114057(P2013−114057A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260508(P2011−260508)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】